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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】射出成形品及びその成形方法と成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20240325BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C45/27
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020020214
(22)【出願日】2020-02-08
(65)【公開番号】P2021123081
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】八木 孝将
(72)【発明者】
【氏名】小菅 守
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114100(JP,A)
【文献】特開2020-019227(JP,A)
【文献】特開昭59-026233(JP,A)
【文献】特開平08-057904(JP,A)
【文献】特開2005-178037(JP,A)
【文献】特開平11-058477(JP,A)
【文献】特開2009-132004(JP,A)
【文献】特開2001-009875(JP,A)
【文献】特開2009-023282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方向に長い形状に成形された成形品であって、当該成形品には、その長手方向に沿って複数のゲート痕が存在しており、前記複数のゲート痕の断面形状は台形であり、前記成形品の長手方向中央に存在する第1ゲート痕の断面積とその台形の上下方向の厚み寸法は、当該第1ゲート痕の両側に存在する第2ゲート痕の断面積とその台形の上下方向の厚み寸法よりも大きいことを特徴とする射出成形品。
【請求項2】
前記各第2ゲート痕の長手方向の外側にそれぞれ断面形状が台形の第3ゲート痕が存在しており、この第3ゲート痕の断面積とその台形の上下方向の厚み寸法は前記第2ゲート痕の断面積とその台形の上下方向の厚み寸法よりも大きい請求項1に記載の射出成形品。
【請求項3】
少なくとも一方向に長い形状をしたキャビティを有し、当該キャビティの長手方向に沿って複数のゲートが配設され、これら複数のゲートからそれぞれ前記キャビティに対して樹脂を射出する成形装置であって、前記ゲートは、前記キャビティの長手方向中央寄りに配設された所要の開口面積を有する第1ゲートと、前記第1ゲートを挟んだ両側に配設されて第1ゲートよりも開口面積の小さい第2ゲートを備え、前記複数のゲートの開口形状は台形に形成されており、前記第1ゲートの台形の高さ寸法は前記第2ゲートの台形の高さ寸法よりも大きいことを特徴とする成形装置。
【請求項4】
前記各第2ゲートの長手方向の外側にそれぞれ開口形状が台形をした第3ゲートが配設されており、当該第3ゲートの開口面積とその台形の高さ寸法は、前記第2ゲートの開口面積と台形の高さ寸法よりも大きい請求項3に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形による成形される射出成形品と、この射出成形品を射出成形する成形方法及び成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用灯具の構成部品の一つである透光性のあるレンズ等の樹脂成形品の製造方法として、金型内に形成されたキャビティに透明樹脂を射出注入する射出成形法が用いられる。このような射出成形法により長さの長い樹脂成形品を成形する際には、成形品質を高める目的で、いわゆるシーケンシャル成形が採用されることがある。このシーケンシャル成形は、金型のキャビティに対して複数のゲートを配設し、これらゲートから樹脂を注入するとともに、各ゲートから注入された樹脂がキャビティ内で衝突することにより生じるウェルドラインを防止するために、各ゲートからの樹脂の注入タイミングに時間差を持たせる成形法である。
【0003】
特許文献1では、このシーケンシャル成形におけるゲートの樹脂注入タイミングを調整するために、注入された樹脂を検出するセンサーを金型に配設し、第1ゲートから射出された樹脂が第2ゲートに達するタイミングを検出し、検出したタイミングで第2ゲートから樹脂の射出を開始するように樹脂注入のタイミングを制御している。特許文献2では、開口部を備える成形品を多点ゲート方式の成形(シーケンシャル成形)により好適に成形する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-47858号公報
【文献】特許第5751043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件発明者がシーケンシャル成形について検討したところ、成形品の形状によってはウェルドラインを完全に防止することができない事象があることが判明した。この原因についてさらに検討を加えたところ、第1ゲートから射出された樹脂が第2ゲートに達する際に樹脂の温度低下が生じ、第2ゲートから新たに射出された樹脂との間に温度差が生じ、これら温度が相違する樹脂が衝突した界面にウェルドラインが発生することが判明した。
【0006】
近年の自動車用灯具として、車体幅のほぼ全長にわたって延長された1m以上の長さのテールランプが提案されており、そのレンズや前面カバーを樹脂成形することが要求されている。このような樹脂成形品をシーケンシャル成形する際には、ゲート数をなるべく多くすることが好ましいが、ゲート数の増加に伴ってシーケンシャル成形のタイミング制御が難しくなり、結果としてウェルドラインが発生する確率が高くなる。また、ゲート数が増加すると、成形後に成形品に残っているゲート片を除去するための工程数が増えることになり、製造コストの増加の要因になる。
【0007】
本発明の目的は、ウェルドラインの発生を防止した高品質の射出成形品を提供する。また、本発明は高品質の射出成形品を成形する成形方法と成形装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも一方向に長い形状に成形された成形品であって、当該成形品には、その長手方向に沿って複数のゲート痕が存在しており、射出成形品の長手方向中央に存在する第1ゲート痕の断面積は、第1ゲート痕の両側に存在する第2ゲート痕の断面積よりも大きい。また、本発明は、第2ゲート痕の長手方向の外側にそれぞれ第3ゲート痕が存在しており、この第3ゲート痕の断面積は少なくとも第2ゲート痕の断面積よりも大きくてもよい。
【0009】
その上で、複数のゲート痕の断面形状は台形であり、成形品の長手方向中央に存在する第1ゲート痕の台形の上下方向の厚み寸法は、当該第1ゲート痕の両側に存在する第2ゲート痕の台形の上下方向の厚み寸法よりも大きくされている。また、断面形状が台形をした第3ゲート痕の台形の上下方向の厚み寸法は第2ゲート痕の台形の上下方向の厚み寸法よりも大きい
【0010】
また、本発明は、少なくとも一方向に長い形状をしたキャビティを有し、当該キャビティの長手方向に沿って複数のゲートが配設され、これら複数のゲートからそれぞれキャビティに対して樹脂を射出する成形装置であって、ゲートは、キャビティの長手方向中央寄りに配設された所要の開口面積を有する第1ゲートと、第1ゲートを挟んだ両側に配設されて第1ゲートよりも開口面積の小さい第2ゲートを備える。複数のゲートの開口形状は台形に形成されており、第1ゲートの台形の高さ寸法は第2ゲートの台形の高さ寸法よりも大きい。また、第2ゲートの外側にそれぞれ第3ゲートが配設されており、第3ゲートの開口形状は台形に形成され、第3ゲートの台形の高さ寸法は第2ゲートの台形の高さ寸法よりも大きくされてい
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1ゲートと第2ゲートの開口面積を適切に設定することにより、シーケンシャル成形におけるウェルドラインの発生を抑制して高品質の射出成形品を成形することができるとともに、シーケンシャル成形におけるタイミング制御が容易になる。さらに、成形後におけるゲート片の除去工程を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の射出成形品を適用したテールランプを備える自動車の後面図。
図2図1のテールランプの外観図。
図3図2のIII-III線に沿った断面図。
図4】レンズの一部の拡大斜視図。
図5】成形用金型の一部を破断した模式的な平面図。
図6図5のVI-VI線に沿う拡大断面図。
図7A】第1ゲートとゲート片を説明する断面図と概略斜視図。
図7B】第2ゲートとゲート片を説明する断面図と概略斜視図。
図8】異なる形状のレンズ1,2,3を成形する成形装置におけるゲート構造を説明する図。
図9】成形時における樹脂の流動を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の射出成形品としてのレンズを備えたテールランプTLを装備した自動車CARの後面図である。自動車CARの車体後部に、車幅方向のほぼ全長にわたって水平方向に1m以上の長さ、ここでは約1.5mの長さのテールランプTLが配設されている。このテールランプTLはストップランプとしても機能される。このテールランプTLは意匠効果を狙って、左右両端部の上下方向の幅寸法がテーパ状に拡大した形状とされている。また、この実施形態では、テールランプTLの左右の両端部の下側に別体に形成されたターンシグナルランプTSLとバックアップランプBULが配設されている。
【0014】
図2は前記テールランプTLの概略外観図、図3図2のIII-III線に沿った断面図である。このテールランプTLは左右方向に長い樋状をしたボディ1と、このボディ1の開口部に一体的に取り付けられた細長いレンズ2とを備えており、これらボディ1とレンズ2とでランプハウジング3が構成されている。前記レンズ2は本発明における射出成形品であり、透光性のある赤色樹脂で成形されている。
【0015】
前記ハウジング3内には光源ユニット4が配設されている。この光源ユニット4は、前記ボディ1に固定支持された基板41と、この基板41の正面に搭載された光源、ここでは白色光又は赤色光を発光するLED(発光素子)42を備えている。このLED42は、図には表れないが、テールランプTLの長手方向に沿って複数個が配列された状態で前記基板41に搭載されている。そして、各LED42は図示を省略する発光回路により発光が制御され、テールランプとして機能する際には相対的に低輝度で発光され、ストップランプとして機能するときには相対的に高輝度で発光される。
【0016】
図4は前記レンズ2の一部の拡大斜視図である。このレンズ2は、前記ボディ1の開口部に対応する形状でテールランプの正面形状を構成する正面部21と、この正面部21の周縁に沿って形成された壁状の周壁部22と、この周壁部22から外側に突出された脚部23とを備えて構成されている。
【0017】
図1,2に示したように、正面部21は長さ寸法に対して幅寸法が極めて小さくされた細長い形状であり、その長さ方向の両端部は両端に向かって徐々に幅寸法が大きくなるテーパ状に形成されている。また、この実施形態では正面部21は自動車CARの車体後部の曲面形状に倣って上下方向及び左右方向に幾分湾曲した形状とされている。
【0018】
前記脚部23は前記ボディ1の周縁部11に接着あるいは溶着され、これによりボディ1とレンズ2は一体化される。この脚部23には、レンズ2の幅方向の一方の側面、ここでは図2の下側に向けられる側面には、レンズ2の長手方向に所要の間隔をおいて複数のゲート痕、ここでは5つのゲート痕24が存在している。
【0019】
これらのゲート痕24は、レンズ2の長手方向の中央に配設された1つの第1ゲート痕24(G1)と、この第1ゲート痕24(G1)を長手方向に挟んで配設された2つの第2ゲート痕24(G2)と、さらにこれら第2ゲート痕24(G2)のそれぞれ長手方向の外側に配設された2つの第3ゲート痕24(G3)として存在している。これらのゲート痕24は、後述するように、レンズ2を成形する際にキャビティ内に樹脂を射出するためのゲートにより形成されたゲート片を、成形後に切断除去することにより形成される。
【0020】
これらゲート痕24の断面形状、すなわち切断面の形状は、図4にそれぞれ示すように、レンズ2の脚部23の厚み方向を上下方向とする台形である。そして、第1ゲート痕24(G1)の断面積は第2ゲート痕24(G2)の断面積よりも大きくされており、特に第1ゲート痕24(G1)の上下方向の厚み寸法は第2ゲート痕24(G2)の厚み寸法よりも大きい。第3ゲート痕24(G3)の断面積と厚み寸法は、レンズ2の形状の違いにより適宜に設定されるが、ここでは第2ゲート痕24(G2)の断面積と厚み寸法よりも大きくされており、第1ゲート痕24(G1)に対して等しいかあるいは若干小さい断面積と厚み寸法にされている。
【0021】
図5は前記レンズ2を射出成形する射出成形装置100の金型の概念構造を説明するための一部を破断した模式的な平面図である。また、図6図5のVI-VI線に沿う拡大断面図である。この射出成形装置100は、対をなす下型101と上型102を備えており、これら下型101と上型102が当接されるパーティング面に前記レンズ2に対応した細長い形状のキャビティ103が形成されている。また、下型には前記キャビティにつながる5つのゲート104が形成されている。これら5つのゲート104は前記キャビティ103の長手方向に沿って所要の間隔をおいて配設されており、それぞれはランナー105を介して図には現れない樹脂射出部に連通され、キャビティ103に対してそれぞれ独立したタイミングで樹脂を射出することが可能に構成されている。
【0022】
以降においては、前記5つのゲート104について、キャビティ103の長さ方向の中央に配設された1つの第1ゲート104(G1)と、この第1ゲート104(G1)を長さ方向に挟んだ両側に配設された2つの第2ゲート104(G2)と、さらにこれら第2ゲート104(G2)のそれぞれ外側に配設された2つの第3ゲート104(G3)と称する。なお、以降においては単に第1ゲートG1、第2ゲートG2、第3ゲートG3と記載する場合もある。
【0023】
この射出成形装置100では、下型101と上型102のパーティング面を当接させてキャビティ103を構成した状態で、シーケンシャル成形を実行する。シーケンシャル成形については、前記したように既に知られている技術であるので詳細な説明は省略するが、先ず第1ゲートG1からキャビティ103内に樹脂を射出し、所定の時間後に2つの第2ゲートG2からそれぞれ樹脂を射出し、さらに所定の時間後に2つの第3ゲートG3からそれぞれ樹脂を射出する。このシーケンシャル成形を行うことにより、第1ないし第3の各ゲートG1~G3からキャビティ103内に射出された樹脂におけるウェルドラインの発生が抑制ないし防止され、高品質のレンズが成形される。
【0024】
そして、キャビティ103内に射出された樹脂が硬化した後に下型101と上型102を分離し、キャビティ103内から成形されたレンズ2を離型する。成形されたレンズには、図4に鎖線で示したように、第1ないし第3の各ゲートG1~G3に対応する位置にそれぞれゲート片(ゲートにより成形されている片部)25(G1,G2,G3)が形成されているので、ゲートカット工程によりこのゲート片25を切断除去する。このゲート片25を除去した部位に前記したゲート痕24(G1~G3)が形成される。
【0025】
図7Aは前記第1ゲートG1を説明する図であり、図7Bは前記第2ゲートG2を説明する図である。各図において、(a)は図6と同様の断面図であり、(b)はこれに直交する方向の断面図である。図7A図7Bに示すように、第1ゲートG1と第2ゲートG2は開口形状が逆台形に形成されていることは同じであり、台形の両側辺のテーパ形状により、レンズ2の成形後に下型101上に存在するレンズ2を上方に向けて離型する際の抜け勾配が確保されている。
【0026】
前記第1ゲートG1は、図7A(a),(b)に示すように、所要の開口面積となるように逆台形の高さ寸法と上下辺寸法が所要の寸法に設定されている。この所要の開口面積は、第1ゲートG1から射出された樹脂がキャビティ103内を長手方向に流動され、樹脂の流動先端が所定の時間内に第2ゲートG2に達することが可能とされる面積に設定されている。この所定の時間は第2ゲートG2に達した樹脂が所定温度以下まで低下しない時間である。
【0027】
前記第2ゲートG2は、図7B(a),(b)に示すように、台形をした開口の高さ寸法と上下底辺寸法が共に第1ゲートG1よりも小さくされており、これにより第2のゲートG2の開口面積は第1ゲートG1の開口面積よりも小さくされている。この第2ゲートG2の開口面積は、第2ゲートG2から射出された樹脂がキャビティ103内において第3ゲートG3にまで流動されたときに、その温度が所定温度にまで低下されないような量の樹脂を射出することができる開口面積に設定されている。
【0028】
この実施形態では、第2ゲートG2には下型101と上型102のそれぞれに断面形状がテーパ状をした絞り部106が形成されている。この絞り部106はゲートG2の内方に向けて突出形成されており、これら絞り部106の突出寸法を調整することにより第2ゲートG2の逆台形をした開口の上下辺及び左右斜辺の各寸法が設定され、最終的に第2ゲートG2の開口面積が設定される。
【0029】
前記第3ゲートG3の開口面積は、第3ゲートG3から射出された樹脂がキャビティ103の長手方向の両端にまで流動する流動長に基づいて設定されており、ここでは流動長に比例する開口面積に設定されている。したがって、第3ゲートG3の逆台形をした開口の高さ寸法と上下底辺寸法は、当該設定された開口面積を満たす寸法に設定されている。
【0030】
この実施形態では、第3ゲートG3の開口面積は第1ゲートG1の開口面積にほぼ等しい面積に設定している。したがって、第3ゲートG3の構造は図7A(a),(b)に示した第1ゲートG1と同じ構造である。第3ゲートG3の開口面積が第2ゲートG2の開口面積に近い大きさに設定する場合には、図7B(a),(b)のように、ゲートに絞り部106を形成して、その開口面積を調整すればよい。
【0031】
図8は異なる形状のレンズ2A,2B,2Cを成形する3つの成形装置におけるゲート構造を説明する図である。各成形装置で成形するレンズの長手方向の寸法、すなわち金型のキャビティの長手方向の寸法Wはいずれも1000mmを超える長さであって同じである。また、各レンズ2A,2B,2Cにおけるキャビティの長手方向の中央の幅寸法は同じであるが、両端の幅寸法はレンズ2A,2B,2Cの順に大きくされている。そして、各レンズ2A,2B,2Cのキャビティに対し、長手方向の中央に第1ゲートG1が配設され、その両側の290mm離れた位置に第2ゲートG2が配設され、さらにその両側の290mm離れた位置に第3ゲートG3が配設されていることも同じである。
【0032】
したがって、第1ゲートG1から射出されてキャビティ内を流動する樹脂の流動長はほぼ第1ゲートG1と第2ゲートG2の間隔寸法L1であり、第2ゲートG2から射出されてキャビティ内を流動する樹脂の流動長はほぼ第2ゲートG2と第3ゲートG3の間隔寸法L2となる。これらの寸法L1,L2はレンズ2A,2B,2Cにおいて同じである。
【0033】
一方、第3ゲートG3から射出された樹脂はキャビティ内を流動して両端に達した後にキャビティの内面に沿って幅方向にも流動される。そのため、レンズの長手方向の両端部における幅寸法の相違によって樹脂の流動長L3は相違されることになり、レンズ2Bではレンズ2Aよりも、またレンズ2Cではレンズ2Bよりも流動長L3は長くなる。ここでは、レンズ2A,2B,2Cのそれぞれの第3ゲートG3の開口面積はその流動長L3に比例した面積とされており、レンズ2A,2B,2Cの各第3ゲートG3の開口面積は、15mm平方、28.5mm平方、33.3mm平方とされている。
【0034】
以上の構成の成形装置を用いてレンズを成形するには、前記したシーケンシャル成形が用いられる。図9はキャビティ103内における樹脂の流動を説明するための模式図である。先ず、図示を省略した樹脂射出部により第1ゲートG1からキャビティ103内に樹脂を射出する。射出された樹脂R1はキャビティ103内を長手方向の両側に向けて流動され、その流動先端は所定時間を経過したタイミングで第2ゲートG2に達する。
【0035】
このタイミングで、第2ゲートG2から樹脂を射出する。第2ゲートG2から射出された樹脂R2は、第1ゲートG1から射出された樹脂R2に混合されて一体となり、さらにキャビティ103の長手方向の両側に向けて流動される。第1ゲートG1から流動されてきた樹脂R1は、第1ゲートG1の開口面積が第2ゲートG2よりも大きいので、第2ゲートG2からの樹脂よりも大容量であり、熱容量も大きく、第2ゲートG2に達するまでの間の温度低下は少ない。そして、第2ゲートG2から射出された高温の樹脂R2と混合されることにより樹脂R1の温度低下が抑制されるとともに、ウェルドの発生が抑制される。
【0036】
混合された第1ゲートG1及び第2ゲートG2の樹脂R1,R2の流動先端が第3ゲートG3に達するタイミングで第3ゲートG3から樹脂を射出する。第3ゲートG3から射出された樹脂R3は流動されてきた樹脂R1,R2に混合されて一体となり、キャビティ103の長手方向の両端部に向けて流動される。第1ゲートG1及び第2ゲートG2からの樹脂R1,R2は大容量であり、熱容量も大きいので、第3ゲートG3に達するまでの間の温度低下は少なく、さらに第3ゲートG3から射出された高温の樹脂R3と混合されることによりさらなる温度低下が抑制され、ウェルドの発生が抑制される。
【0037】
第3ゲートG3からの樹脂はキャビティの両端に向けて流動され、両端においてキャビティ103の内面に沿って長手方向から幅方向に流動されるため、樹脂R3の流動長は第3ゲートG3からキャビティ103の両端までの寸法よりも長くなる。第3ゲートG3はキャビティ103の両端における樹脂の流動長L3にほぼ比例する開口面積に設定されているので、流動長L3の違いに対応した樹脂量が第3ゲートG3から射出されることになる。これにより、レンズ2A,2B,2Cの各成形時には、それぞれにおいてほぼ同じ時間でキャビティ103内に充填されることになり、レンズ2A,2B,2Cのいずれの成形においても射出された樹脂の温度の低下が抑制され、ウェルドの発生が抑制される。
【0038】
このように、第1ゲートないし第3ゲートG1~G3の開口面積を適切に設定することにより、シーケンシャル成形に際してキャビティ内を流動する樹脂の温度を高い精度で管理することが可能になり、ウェルドラインの発生を効果的に抑制することができるとともに、シーケンシャル成形における各ゲートG1~G3での射出タイミングの制御が容易になる。これらにより、高品質の成形品、すなわちウェルドラインの無い高品質のレンズを成形することができる。
【0039】
成形装置100によって成形されたレンズ2A,2B,2Cには、図2及び図4に示したレンズ2のように、レンズ2の側辺に沿って第1ないし第3の各ゲートG1~G3による5つのゲート片25(G1~G3)が存在している。これらのゲート片25は、前記したようにゲートカット工程により切断除去するが、このゲートカット工程ではロボットによる機械力を利用した自動カットと、手作業による手動カットが行われる。
【0040】
この実施形態においては、ゲート開口面積が相対的に大きな第1ゲートG1と第3ゲートG3により生じるゲート片25(G1,G3)は、図7A(c)に概略形状を示すように、脚部23につながる部分の断面積は、図7B(c)に示す第2ゲートG2により生じるゲート片25(G2)の断面積よりも大きい。特にゲート片25(G1,G3)の厚み寸法はゲート片25(G2)よりも大きい。そのため、手動カットは困難であり、自動カットにより除去する。これに対し、第2ゲートG2により生じるゲート片25(G2)の断面積は絞り部106によって相対的に厚み寸法が小さくされるので、手作業での切断が可能であり手動カットにより除去する。
【0041】
このように5つのゲート片25(G1~G3)のうち、2つのゲート片25(G2)を手作業で切断除去することにより、ロボットによる自動カットの工数はゲート片25(G1)と第3ゲート片25(G3)に対する3工程でよく、全ての、すなわち5つのゲート片25(G1~G3)を自動カットする際に必要とされる5工程に比較して工程数が削減できる。これにより、ゲートカット工程の時間を短縮し、結果としてレンズの製造コストが削減できる。なお、手動カットは、成形した後の適宜なタイミング、例えばレンズを搬送する際に切断除去することができ、工程への影響は少ない。
【0042】
実施形態では射出成形品としてのレンズの長手方向に5つのゲートが配設された例を示したが、長手方向の中央に第1ゲートが配設され、その両側に第2ゲートが配設された構成、すなわち少なくとも3つのゲートを備える射出成形品であれば本発明が適用できる。したがって、実施形態よりも多数のゲートを備える構成であってもよい。
【0043】
本発明は、射出成形品の形状や幅寸法の違いにもよるが、少なくとも100mmを超える長さの射出成形品や、この射出成形品を成形する成形方法や成形装置に適用することが好ましい。また、第1ゲート痕や第1ゲートは射出成形品や成形装置の長手方向の中央位置でなくてもよく、中央に近い位置であればよい。
【0044】
本発明は、細長い射出成形品を射出成形により成形する技術に適用できるので、成形品の種類、成形用金型の構造、成形材料等は実施形態の構成に限定されるものではない。特に、射出成形品の形状の違いにより、第1と第2のゲートの間隔寸法、さらに第2と第3のゲートの間隔寸法を適宜に設定することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ボディ
2 レンズ
3 ランプハウジング
4 光源ユニット
21 正面部
22 周壁部
23 脚部
24(G1~G3) ゲート痕
25(G1~G3) ゲート片
100 成形装置
101 下型
102 上型
103 キャビティ
104(G1~G3) ゲート
105 ランナー
106 絞り部
TL テールランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9