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特許7458810遊星歯車装置のキャリア及び遊星歯車装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】遊星歯車装置のキャリア及び遊星歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/28 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
F16H1/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020021371
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021008955
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2019081070
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019128462
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 徹
(72)【発明者】
【氏名】シン, ミン チョル
(72)【発明者】
【氏名】増田 周平
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-153241(JP,A)
【文献】特表2016-500428(JP,A)
【文献】特開2015-113851(JP,A)
【文献】特開2007-056885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンギヤとプラネタリギヤとを収容するギヤ収容スペースが形成された遊星歯車装置のキャリアにおいて、
前記ギヤ収容スペースは、前記プラネタリギヤをギヤ支持軸で回動可能に支持する一対のギヤ支持部の間に形成され、
前記一対のギヤ支持部は、複数の梁によって一体に接続され、
前記梁は、前記サンギヤの回転軸心に直交する仮想平面をX-Y平面とし、前記X-Y平面に沿って前記回転軸心から放射状に延びる方向を径方向とすると、前記サンギヤの径方向外方の位置に前記径方向に沿って形成され、
前記プラネタリギヤは、前記梁の間に位置
前記梁は、前記ギヤ収容スペースに収容した前記プラネタリギヤの歯先に当接し且つ前記プラネタリギヤを前記ギヤ支持軸への組み付け位置に位置決めする組み付け位置決め面が、前記プラネタリギヤに対向する側で且つ前記プラネタリギヤに対向する領域に少なくとも1箇所形成された、
ことを特徴とする遊星歯車装置のキャリア。
【請求項2】
サンギヤとプラネタリギヤとを収容するギヤ収容スペースが形成された遊星歯車装置のキャリアにおいて、
前記ギヤ収容スペースは、前記プラネタリギヤをギヤ支持軸で回動可能に支持する一対のギヤ支持部の間に形成され、
前記一対のギヤ支持部は、複数の梁によって一体に接続され、
前記梁は、前記サンギヤの回転軸心に直交する仮想平面をX-Y平面とし、前記X-Y平面に沿って前記回転軸心から放射状に延びる方向を径方向とすると、前記サンギヤの径方向外方の位置に前記径方向に沿って形成され、
前記プラネタリギヤは、前記梁の間に位置し、且つ、前記ギヤ支持部に対向する側面で且つ前記ギヤ支持軸を嵌合する軸穴の周囲に、円筒状の張出部が形成され、
前記ギヤ支持部の前記ギヤ収容スペース側に位置する側面には、前記ギヤ収容スペース内に収容した前記プラネタリギヤの前記張出部に当接し且つ前記プラネタリギヤを前記ギヤ支持軸への組み付け位置に位置決めする位置決め凸部が、隣り合う一対の前記梁の対向する側面に沿って前記径方向へ延びるように形成された、
ことを特徴とする遊星歯車装置のキャリア。
【請求項3】
前記複数の梁は、前記サンギヤの回転軸心を通り且つ前記X-Y平面上をY字状に延びる径方向線上にそれぞれ形成された、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の遊星歯車装置のキャリア。
【請求項4】
前記複数の梁は、前記サンギヤの回転軸心を通り且つ前記X-Y平面上を十字状に延びる径方向線上にそれぞれ形成された、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の遊星歯車装置のキャリア。
【請求項5】
前記プラネタリギヤは、隣り合う前記梁の間に複数配置された、
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の遊星歯車装置のキャリア。
【請求項6】
前記請求項1からのいずれかに記載の遊星歯車装置のキャリアと、
前記キャリアの前記ギヤ収容スペース内に収容され、前記ギヤ支持軸によって前記一対のギヤ支持部に回動可能に支持された前記プラネタリギヤと、
を備えたことを特徴とする遊星歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遊星歯車装置を構成するキャリアに関し、特に、遊星歯車装置の組立工数の削減を可能にする構造のキャリア、及びそのキャリアを備えた遊星歯車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、遊星歯車装置は、モータ等の駆動源から伝達される回転を他の被動装置の駆動のために都合の良い回転に変えるものである。
【0003】
図14は、従来の遊星歯車装置101を示す図である。この図14に示す遊星歯車装置101は、中心に位置するサンギヤ102と、このサンギヤ102と噛み合う3個のプラネタリギヤ(ピニオンギヤ)103と、各プラネタリギヤ103を自転可能に支持し且つ各プラネタリギヤ103をサンギヤ102に対して公転可能に支持するキャリア104と、を有している。キャリア104は、プラネタリギヤ103の支持軸105が形成されたキャリア本体106と、キャリア本体106との間にサンギヤ102及びプラネタリギヤ103を収容するキャリアカバー107と、を有している。そして、キャリアカバー107は、複数のボルト108でキャリア本体106に固定されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-90011号公報
【文献】特開2002-13598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図14に示すように、従来の遊星歯車装置101は、キャリア本体106とキャリアカバー107との間にサンギヤ102及び3個のプラネタリギヤ103を収容した後、キャリアカバー107を複数のボルト108でキャリア本体106に固定するようになっていたため、組立工数が嵩んでいた。
【0006】
そこで、本発明は、遊星歯車装置の組立工数の削減を可能にする構造のキャリア、及びそのキャリアを備えた遊星歯車装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サンギヤとプラネタリギヤとを収容するギヤ収容スペースが形成された遊星歯車装置のキャリアにおいて、
前記ギヤ収容スペースは、前記プラネタリギヤをギヤ支持軸で回動可能に支持する一対のギヤ支持部の間に形成され、
前記一対のギヤ支持部は、複数の梁によって一体に接続され、
前記梁は、前記サンギヤの回転軸心に直交する仮想平面をX-Y平面とし、前記X-Y平面に沿って前記回転軸心から放射状に延びる方向を径方向とすると、前記サンギヤの径方向外方の位置に前記径方向に沿って形成され、
前記プラネタリギヤは、前記梁の間に位置し、
前記梁は、前記ギヤ収容スペースに収容した前記プラネタリギヤの歯先に当接し且つ前記プラネタリギヤを前記ギヤ支持軸への組み付け位置に位置決めする組み付け位置決め面が、前記プラネタリギヤに対向する側で且つ前記プラネタリギヤに対向する領域に少なくとも1箇所形成されている。
また、本発明は、サンギヤとプラネタリギヤとを収容するギヤ収容スペースが形成された遊星歯車装置のキャリアにおいて、
前記ギヤ収容スペースは、前記プラネタリギヤをギヤ支持軸で回動可能に支持する一対のギヤ支持部の間に形成され、
前記一対のギヤ支持部は、複数の梁によって一体に接続され、
前記梁は、前記サンギヤの回転軸心に直交する仮想平面をX-Y平面とし、前記X-Y平面に沿って前記回転軸心から放射状に延びる方向を径方向とすると、前記サンギヤの径方向外方の位置に前記径方向に沿って形成され、
前記プラネタリギヤは、前記梁の間に位置し、且つ、前記ギヤ支持部に対向する側面で且つ前記ギヤ支持軸を嵌合する軸穴の周囲に、円筒状の張出部が形成され、
前記ギヤ支持部の前記ギヤ収容スペース側に位置する側面には、前記ギヤ収容スペース内に収容した前記プラネタリギヤの前記張出部に当接し且つ前記プラネタリギヤを前記ギヤ支持軸への組み付け位置に位置決めする位置決め凸部が、隣り合う一対の前記梁の対向する側面に沿って前記径方向へ延びるように形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る遊星歯車装置のキャリアは、複数の部品で組み立てられる従来のキャリアと比較し、遊星歯車装置の組立工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る遊星歯車装置のキャリアを説明するための図であり、図1(a)はキャリアの正面図、図1(b)はキャリアの側面図、図1(c)はキャリアの背面図、図1(d)は図1(b)のA2-A2線に沿って切断して示すキャリアの断面図、図1(e)は図1(a)のA1-A1線に沿って切断して示すキャリアの断面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る遊星歯車装置を示す図であり、図2(a)は遊星歯車装置の正面図、図2(b)は遊星歯車装置の側面図、図2(c)は遊星歯車装置の背面図、図2(d)は図2(b)のA3-A3線に沿って切断して示す遊星歯車装置の断面図、図2(e)はプラネタリギヤの正面図、図2(f)はプラネタリギヤの縦断面図(図2(g)のA4-A4線に沿って切断して示すプラネタリギヤの断面図)、図2(g)はプラネタリギヤの側面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る遊星歯車装置のキャリアを示す図であり、図3(a)はキャリアの正面図、図3(b)はキャリアの側面図、図3(c)はキャリアの背面図、図3(d)は図3(b)のA6-A6線に沿って切断して示すキャリアの断面図、図3(e)は図3(a)のA5-A5線に沿って切断して示すキャリアの断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る遊星歯車装置のギヤ支持軸を示す図であり、図4(a)はギヤ支持軸の正面図、図4(b)はギヤ支持軸の側面図、図4(c)はギヤ支持軸の背面図、図4(d)はギヤ支持軸を正面側斜め上方から見て示す外観斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る遊星歯車装置の組立状態を示す図であり、図5(a)は第1の組立状態を示す遊星歯車装置の縦断面図、図5(b)は図5(a)のA7-A7線に沿って切断して示す断面図、図5(c)は第2の組立状態を示す遊星歯車装置の縦断面図、図5(d)は図5(c)のA8-A8線に沿って切断して示す断面図である。
図6図6(a)は本発明の第2実施形態に係る遊星歯車装置のキャリアにおける組み付け位置決め面の第1検討図であり、図6(b)は組み付け位置決め面の第2検討図である。
図7】本発明の第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置の第1変形例を簡略化して示す図であり、図2(d)に対応する図である。
図8】本発明の第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置の第2変形例を簡略化して示す図であり、図2(d)に対応する図である。
図9】本発明の第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置の第3変形例を簡略化して示す図であり、図2(d)に対応する図である。
図10】本発明の第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置の第4変形例を簡略化して示す図であり、図2(d)に対応する図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る遊星歯車装置を示す図であり、図11(a)は遊星歯車装置の正面図、図11(b)は遊星歯車装置の側面図、図11(c)は遊星歯車装置の背面図、図11(d)は図11(b)のA9-A9線に沿って切断して示す遊星歯車装置の断面図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る遊星歯車装置のキャリアを示す図であり、図12(a)はキャリアの正面図、図12(b)はキャリアの側面図、図12(c)はキャリアの背面図、図12(d)は図12(b)のA11-A11線に沿って切断して示すキャリアの断面図、図12(e)は図12(a)のA10-A10線に沿って切断して示すキャリアの断面図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る遊星歯車装置におけるキャリアとプラネタリギヤの組み付け状態を示す図であり、図13(a)は第1組み付け状態図、図13(b)は第2組み付け状態図である。
図14】従来の遊星歯車装置を示す図であり、図14(a)は遊星歯車装置の正面図、図14(b)は図14(a)のA12-A12線に沿って切断して示す遊星歯車装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2を説明するための図である。なお、図1(a)は、キャリア2の正面図である。また、図1(b)は、キャリア2の側面図である。また、図1(c)は、キャリア2の背面図である。また、図1(d)は、図1(b)のA2-A2線に沿って切断して示すキャリア2の断面図である。また、図1(e)は、図1(a)のA1-A1線に沿って切断して示すキャリア2の断面図である。
【0012】
図1に示すように、遊星歯車装置1は、中心に位置するサンギヤ3と、このサンギヤ3と噛み合う3個のプラネタリギヤ(ピニオンギヤ)4と、各プラネタリギヤ4を自転可能に支持し且つ各プラネタリギヤ4をサンギヤ3に対して公転可能に支持するキャリア2と、を有している。3個のプラネタリギヤ4は、サンギヤ3の外周に沿って等間隔で配置されている。ここで、図1(d)に示すように、キャリア2の軸部5の回転軸心6(サンギヤ3の回転軸心6)を通り且つX-Y平面上をY軸方向に沿って延びる第1仮想線7上に配置されるプラネタリギヤ4は、第1プラネタリギヤ4aと適宜呼称する。また、図1(d)において、第1プラネタリギヤ4aから反時計回り方向(左回り方向)に順に配置される2個のプラネタリギヤ4は、第2プラネタリギヤ4bと第3プラネタリギヤ4cと適宜呼称する。
【0013】
キャリア2は、サンギヤ3の回転軸心6と同心の軸部5と、この軸部5の一端に一体に形成された第1ギヤ支持部(第1ギヤ支持プレート)8と、この第1ギヤ支持部8に複数の梁10を介して一体に形成された第2ギヤ支持部(第2ギヤ支持プレート)11と、を有している。そして、キャリア2は、一対のギヤ支持部(第1ギヤ支持部8、第2ギヤ支持部11)の間にサンギヤ3と3個のプラネタリギヤ4とを収容するギヤ収容スペース12が形成されている。第1ギヤ支持部8及び第2ギヤ支持部11は、共に円板状に形成されており、周方向に沿って等間隔で3箇所のピン穴13,14が形成され、各ピン穴13,14にプラネタリギヤ4を回動可能に支持する図示しないギヤ支持軸(ギヤ支持ピン)が挿入されるようになっている。なお、第2ギヤ支持部11は、サンギヤ3をギヤ収容スペース12に挿入するためのサンギヤ挿入穴15(サンギヤ3の外径寸法よりも大径に形成された穴)が形成されている。また、軸部5は、キャリア2の使用状態に応じて加工が施される。例えば、軸部5は、外周側に図示しない歯車と噛み合う歯が形成されるか、又はセレーション穴が回転軸心6に沿って形成される。
【0014】
梁10は、隣り合うプラネタリギヤ4,4間に位置するように3箇所形成され、第1ギヤ支持部8と第2ギヤ支持部11とを軸部5の回転軸心6(サンギヤ3の回転軸心6と同心)に沿って一体に接続している。この梁10は、回転軸心6に直交する仮想平面をX-Y平面とし、このX-Y平面に沿って回転軸心6から放射状に延びる方向を径方向とすると、サンギヤ3の径方向外方の位置(サンギヤ3との間に隙間が生じる径方向外方側の位置で且つサンギヤ挿入穴15と同径の位置)から径方向外方へ向かって(第1ギヤ支持部8及び第2ギヤ支持部11の径方向外方端まで)板厚が均一の平板状に形成されている。ここで、第2プラネタリギヤ4bと第3プラネタリギヤ4cとの間で且つ第1仮想線7上に位置する梁を第1梁10aと適宜呼称し、第1プラネタリギヤ4aと第2プラネタリギヤ4bとの間に位置する梁10を第2梁10bと適宜呼称し、第1プラネタリギヤ4aと第3プラネタリギヤ4cとの間に位置する梁10を第3梁10cと適宜呼称する。このような第1乃至第3梁10a~10cは、サンギヤ3の回転軸心6を通り且つX-Y平面上をY字状に延びる径方向線上にそれぞれ位置している。
【0015】
図1(d)に示すように、第2梁10bは、軸部5の回転軸心6を通り且つX-Y平面上をX軸方向に沿って延びる第2仮想線16に対して時計回り方向(右回り方向)にθだけ傾斜している。また、第3梁10cは、軸部5の回転軸心6を通り且つX-Y平面上をX軸方向に沿って延びる第2仮想線16に対して反時計回り方向(左回り方向)にθだけ傾斜している。そして、第2梁10bと第3梁10cは、第1仮想線7に対して線対称の形状になっている。また、第2梁10b及び第3梁10cは、第2仮想線16に近い位置にあるため、後述する第1スライド駒17と第2スライド駒18の移動を円滑に行うことが可能になる。
【0016】
第1ギヤ支持部8と第2ギヤ支持部11との対向する側面8a,11aには、位置決め突起(位置決め凸部)20がプラネタリギヤ4に対応して形成されている。この第1ギヤ支持部8及び第2ギヤ支持部11に形成された位置決め突起20は、プラネタリギヤ4がギヤ支持ピン(図示せず)に沿ってずれ動くのをプラネタリギヤ4の側面に当接して規制し、プラネタリギヤ4を回転軸心6に沿った方向に位置決めすることにより、プラネタリギヤ4とサンギヤ3とを正確に噛み合わせるようになっている。
【0017】
第1プラネタリギヤ4aに対応して形成された第1の位置決め突起20は、サンギヤ3の径方向外方の位置から径方向外方へ向かって且つ前記第1仮想線7に沿って形成され、第1仮想線7に対して線対称の形状になっている。また、第1の位置決め突起20は、その径方向内方端が第2ギヤ支持部11のサンギヤ挿入穴15の外径寸法と同径の円弧形状になっており、その径方向外方端がピン穴13,14と同心の半円形状に形成されている。そして、第1の位置決め突起20は、第1プラネタリギヤ4aの側面に対向する突起表面(凸部表面)20aがX-Y平面と平行に形成され、第1ギヤ支持部8と第2ギヤ支持部11の対向する各側面8a,11aから起立して突起表面20aまで延びる突起側面(凸部側面)20bが第1仮想線7と平行に形成されている。なお、第1ギヤ支持部8の第1の位置決め突起20と第2ギヤ支持部11の第1の位置決め突起20は、同一形状になっている。
【0018】
また、第2プラネタリギヤ4bに対応して形成された第2の位置決め突起20は、第1プラネタリギヤ4aと第2プラネタリギヤ4bとの間に位置する第2梁10bから第1の位置決め突起20と逆方向に第1仮想線7に沿って形成されている。そして、第2の位置決め突起20は、第2プラネタリギヤ4bの側面に対向する突起表面20aがX-Y平面と平行に形成され、第1ギヤ支持部8と第2ギヤ支持部11の対向する各側面8a,11aから起立して突起表面20aまで延びる突起側面20bが第1仮想線7と平行に形成されている。なお、第1ギヤ支持部8の第2の位置決め突起20と第2ギヤ支持部11の第2の位置決め突起20は、同一形状になっている。
【0019】
また、第3プラネタリギヤ4cに対応して形成された第3の位置決め突起20は、第1プラネタリギヤ4aと第3プラネタリギヤ4cとの間に位置する第3梁10cから第1の位置決め突起20と逆方向に第1仮想線7に沿って形成されている。そして、第3の位置決め突起20は、第3プラネタリギヤ4cの側面に対向する突起表面20aがX-Y平面と平行に形成され、第1ギヤ支持部8と第2ギヤ支持部11の対向する各側面8a,11aから起立して突起表面20aまで延びる突起側面20bが第1仮想線7と平行に形成されている。なお、第1ギヤ支持部8の第3の位置決め突起20と第2ギヤ支持部11の第3の位置決め突起20は、同一形状になっている。そして、第2の位置決め突起20と第3の位置決め突起20は、第1仮想線7に対して線対称の形状になっている。
【0020】
以上のような構造のキャリア2は、金型のキャビティ(図示せず)内に溶融樹脂を射出することによって成形されるか、又は金型のキャビティ内に溶融金属を注入することによって成形される。このキャリア2の成形時において、図1(b)及び図1(d)に示すように、キャビティ内には、第2梁10b、第3梁10c及び第1の位置決め突起20側の上側部分を形作る第1スライド駒17が挿入されると共に、第2の位置決め突起20、第3の位置決め突起20及び第1梁10a側の下側部分を形作る第2スライド駒18が挿入される。そして、これら第1スライド駒17と第2スライド駒18は、図1(b)及び図1(d)に示すように、成形後において、突き合わせられた状態から上下方向(矢印+Y方向、矢印-Y方向)にスライド移動させられる(離される)際に、第1~3の位置決め突起20及び第1~3梁10(10a~10c)によってスライド移動を妨げられないため、キャビティ内から円滑に退避することができる。したがって、本実施形態に係るキャリア2は、ギヤ収容スペース12が二つ割のスライド駒(第1スライド駒17及び第2スライド駒18)によって容易に成形される。
【0021】
以上のように本実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2は、ギヤ収容スペース12内の第1の位置決め突起20から第3の位置決め突起20及び第1梁10(10a)から第3梁10(10c)がギヤ収容スペース12を形作る第1スライド駒17及び第2スライド駒18のスライド移動を妨げない形状になっているため、金型内で一体成形することが可能になる。したがって、本発明に係る遊星歯車装置1のキャリア2は、一対のギヤ支持部(第1ギヤ支持部8、第2ギヤ支持部11)が複数の梁10によって一体に接続されているため、複数の部品で組み立てられる従来のキャリア104と比較し、遊星歯車装置1の組立工数を削減することができる。
【0022】
[第2実施形態]
図2は、本実施形態に係る遊星歯車装置1を示す図である。また、図3は、本実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2を示す図である。本実施形態に係る遊星歯車装置1は、第1実施形態に係る遊星歯車装置1と共通する構成部分に第1実施形態に係る遊星歯車装置1の構成部分と同一符号を付し、第1実施形態に係る遊星歯車装置1と重複する説明を適宜省略する。なお、図2(a)は、遊星歯車装置1の正面図である。図2(b)は、遊星歯車装置1の側面図である。図2(c)は、遊星歯車装置1の背面図である。図2(d)は、図2(b)のA3-A3線に沿って切断して示す遊星歯車装置1の断面図である。図2(e)は、プラネタリギヤ4の正面図である。図2(f)は、プラネタリギヤ4の縦断面図(図2(g)のA4-A4線に沿って切断して示すプラネタリギヤ4の断面図)である。図2(g)は、プラネタリギヤ4の側面図である。また、図3は、図1に対応する図である。
【0023】
本実施形態に係る遊星歯車装置1は、第1実施形態に係る遊星歯車装置1と同様に、サンギヤ3と、複数のプラネタリギヤ4(第1から第3プラネタリギヤ4a~4c)と、キャリア2と、を有している。また、複数のプラネタリギヤ4は、キャリア2の一対のギヤ支持部8,11(第1ギア支持部8、第2ギヤ支持部11)の間に形成されたギヤ収容スペース12で、且つ、隣り合う一対の梁10,10間のスペースに収容され、ギヤ支持軸9で一対のギヤ支持部8,11に回動可能に支持されている。
【0024】
プラネタリギヤ4は、ギヤ支持軸9が相対回動可能に嵌合される軸穴21が形成されている(図4及び図5参照)。そして、プラネタリギヤ4の両側面22,22で且つ軸穴21の周囲には、円筒状の張出部23が形成されており、その張出部23が一対のギヤ支持部8,11間をギヤ支持軸9に沿ってずれ動くのを抑えるようになっている。その結果、本実施形態に係るキャリア2は、第1実施形態に係るキャリア2の位置決め突起20(位置決め凸部)が省略され、一対のギヤ支持部8,11の対向する側面8a,11aがX-Y平面と平行の平面になっている。また、本実施形態において、プラネタリギヤ4は、はすば歯車が使用されている。
【0025】
図2及び図3に示すように、キャリア2の複数の梁10(第1梁10a、第2梁10b、第3梁10c)は、回転軸心6の回りに等間隔で形成されており、各プラネタリギヤ4,4間に位置している。そして、隣り合う一対の梁10,10は、X-Y平面上への投影形状が逆ハ字形状(V字形状)となるように形成されている。また、キャリア2の各梁10は、ギヤ収容スペース12内に収容したプラネタリギヤ4の歯先に当接し且つプラネタリギヤ4をギヤ支持軸9への組み付け位置に位置決めする組み付け位置決め面24が、プラネタリギヤ4に対向する側で且つプラネタリギヤ4に対向する領域に3箇所形成されている(図5(a)及び図5(b)参照)。この3箇所の組み付け位置決め面24は、径方向に沿って形成されている。また、3箇所の組み付け位置決め面24のうちの少なくとも1箇所の組み付け位置決め面24は、後述する幅寸法Wで形成されている。そして、各組み付け位置決め面24,24の間には、梁10の肉厚を調整する凹所25が径方向に沿って形成されている。その結果、キャリア2は、金型内で成形する際に、梁10とギヤ支持部8,11との収縮率を調整でき、高精度に成形される。また、本実施形態に係るキャリア2は、3箇所の組み付け位置決め面24を各梁10に形成するようになっているが、これに限定されず、後述する幅寸法Wの組み付け位置決め面24を各梁10の各プラネタリギヤ4に対向する領域に少なくとも1箇所形成すればよい。
【0026】
図4は、ギヤ支持軸9を示す図である。この図4に示すギヤ支持軸9は、大径部28と、大径部28から先端側に向かって延びる小径部30とからなっている。ギヤ支持軸9の小径部30の先端側には、先端に向かうに従って外径寸法を漸減するテーパ面31が形成されている。ギヤ支持軸9の小径部30は、第1ギヤ支持部8のピン穴13及びプラネタリギヤ4の軸穴21に嵌合され、プラネタリギヤ4を回動可能に支持する。また、ギヤ支持軸9の大径部28は、第2ギヤ支持部11のピン穴14に圧入されることにより、第2ギヤ支持部11に固定される。
【0027】
図5は、本発明の第2実施形態に係る遊星歯車装置1の組立状態を示す図である。なお、図5(a)は、第1の組立状態を示す遊星歯車装置1の縦断面図である。図5(b)は、図5(a)のA7-A7線に沿って切断して示す遊星歯車装置1の断面図である。図5(c)は、第2の組立状態を示す遊星歯車装置1の縦断面図である。図5(d)は、図5(c)のA8-A8線に沿って切断して示す遊星歯車装置1の断面図である。
【0028】
図5(a)及び図5(b)の第1の組立状態に示すように、一対の梁10,10の間に収容されたプラネタリギヤ4は、軸穴21の中心が第1ギヤ支持部8のピン穴13の中心及び第2ギヤ支持部11のピン穴14よりも径方向内方側にずれて位置した状態で、歯先が梁10の組み付け位置決め面24に当接し、ギヤ支持軸9への組み付け位置に位置決めされる。この一対の梁10,10によって組み付け位置に位置決めされたプラネタリギヤ4の軸穴21には、第2ギヤ支持部11のピン穴14からギヤ収容スペース12内へ向けて挿入されたギヤ支持軸9の先端のテーパ面31が係合する。この状態からギヤ支持軸9をさらにギヤ収容スペース12内へ向けて押し込むと、ギヤ支持軸9のテーパ面31がプラネタリギヤ4を径方向外方へ移動させながら軸穴21内に進入し、ギヤ支持軸9の小径部30が軸穴21に係合する。
【0029】
図5(c)及び図5(d)の第2の組立状態に示すように、ギヤ支持軸9の小径部30をプラネタリギヤ4の軸穴21及び第1ギヤ支持部8のピン穴13に挿入し、ギヤ支持軸9の大径部28を第2ギヤ支持部11のピン穴14に圧入することにより、プラネタリギヤ4がX-Y平面の径方向に沿って位置決めされた状態で(プラネタリギヤ4の軸穴21の中心と第1ギヤ支持部8のピン穴13の中心及び第2ギヤ支持部11のピン穴14の中心とが合致した状態で)ギヤ支持軸9によって回動可能に支持される。
【0030】
図6(a)は、本発明の第2実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2における組み付け位置決め面24の第1検討図である。この図6(a)に示すように、梁10の組み付け位置決め面24は、その幅寸法Wが隣り合う歯のピッチ円筒の母線方向に沿った間隔よりも大きい場合、プラネタリギヤ4の歯先に必ず当接し、プラネタリギヤ4をギヤ支持軸9への組み付け位置に正確に位置決めすることができる。
すなわち、組み付け位置決め面24の幅寸法Wは、ピッチ円筒の直径をD、ねじれ角をβ、歯数をZとすると、W>(π・D)・cotβ/Z=(π・D)/(Z・tanβ)となるように決定される。
【0031】
図6(b)は、本発明の第2実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2における組み付け位置決め面24の第2検討図である。この図6(b)に示すように、組み付け位置決め面24を複数箇所(例えば、3箇所)に形成する場合には、プラネタリギヤ4の隣り合う歯先のピッチ円筒の母線方向に沿った距離(L/Z)と、寸法aと、寸法bとの関係は、はすば歯車のリードをL、ピッチ円筒の直径をD、ねじれ角をβ、歯数をZとすると、図6(b-2)及び図6(b-3)から、下記条件(1)の関係を満たすように寸法a~cを決定し、プラネタリギヤ4のいずれかの歯先が3箇所の組み付け位置決め面24のいずれかに当接するように設計することにより、プラネタリギヤ4をギヤ支持軸9への組み付け位置に正確に位置決めできる。
a/2<L/Z<b・・・条件(1)
なお、L/Zは、
L/Z=π・D/(Z・tanβ)=π・D・cotβ/Z=W
で表すことができる。
【0032】
以上のような本実施形態に係るキャリア2は、金型のキャビティ(図示せず)内に溶融樹脂を射出することによって成形されるか、又は金型のキャビティ内に溶融金属を注入することによって成形される。このキャリア2の成形時において、図3(b)及び図3(d)に示すように、キャビティ内には、第2梁10b、第3梁10c側の上側部分を形作る第1スライド駒17が挿入されると共に、第1梁10a側の下側部分を形作る第2スライド駒18が挿入される。そして、これら第1スライド駒17と第2スライド駒18は、図3(b)及び図3(d)に示すように、成形後において、突き合わせられた状態から上下方向(矢印+Y方向、矢印-Y方向)にスライド移動させられる(離される)際に、第1乃至第3梁10(10a~10c)によってスライド移動を妨げられないため、キャビティ内から円滑に退避することができる。したがって、本実施形態に係るキャリア2は、ギヤ収容スペース12が二つ割のスライド駒(第1スライド駒17及び第2スライド駒18)によって容易に成形される。なお、第2ギヤ支持部11のサンギヤ挿入穴15を形作る軸型34は、サンギヤ3の回転軸心6に沿ってスライド移動できるようになっている。
【0033】
以上のように本実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2は、ギヤ収容スペース12内の第1梁10(10a)から第3梁10(10c)がギヤ収容スペース12を形作る第1スライド駒17及び第2スライド駒18のスライド移動を妨げない形状になっているため、金型内で一体成形することが可能になる。したがって、本実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2は、第1実施形態に係る遊星歯車装置のキャリアと同様に、一対のギヤ支持部(第1ギヤ支持部8、第2ギヤ支持部11)が複数の梁10によって一体に接続されているため、複数の部品で組み立てられる従来のキャリア104と比較し、遊星歯車装置1の組立工数を削減することができる。
【0034】
なお、本実施形態に係る遊星歯車装置1は、プラネタリギヤ4としてはすば歯車を使用する例を示したが、これに限られず、プラネタリギヤ4として平歯車を使用することができる。また、本実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2は、軸部5の外周側にはすば歯車が形成されているが、これに限定されず、平歯車、スプライン等を軸部5の外周側に形成するか、又は軸部の外周側に何も形成しなくてもよい。
【0035】
[第1変形例]
図7は、本発明の第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置1の第1変形例を簡略化して示す図であり、図2(d)に対応する図である。
【0036】
図7に示すように、本変形例に係る遊星歯車装置1のキャリア2の第1乃至第4梁10a~10dは、サンギヤの回転軸心6を通り且つX-Y平面上を十字状に延びる径方向線35,36上にそれぞれ形成されている。また、この遊星歯車装置は、隣り合う一対の梁10,10が逆ハ字形状(V字形状)になっており、隣り合う一対の梁10,10の間のギヤ収容スペース内にプラネタリギヤ4が配置されるようになっている。
【0037】
このような遊星歯車装置1のキャリア2は、金型のキャビティ(図示せず)内に溶融樹脂を射出することによって成形されるか、又は金型のキャビティ内に溶融金属を注入することによって成形される。このキャリア2の成形時において、キャビティ内には、サンギヤの回転軸心6を通り且つX軸方向に沿って延びる径方向線35で上下(+Y方向と-Y方向)に分割される第1スライド駒17と第2スライド駒18とが突き合わせられる位置まで挿入される。そして、これら第1スライド駒17と第2スライド駒18は、成形後において、突き合わせられた状態から上下方向(矢印+Y方向、矢印-Y方向)にスライド移動させられる(離される)際に、第1乃至第4梁10(10a~10d)によってスライド移動を妨げられないため、キャビティ内から円滑に退避することができる。したがって、本変形例に係るキャリア2は、ギヤ収容スペース12が二つ割のスライド駒(第1スライド駒17及び第2スライド駒18)によって容易に成形される。
【0038】
[第2変形例]
図8は、本発明の第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置1の第2変形例を簡略化して示す図であり、図2(d)に対応する図である。
【0039】
図8に示すように、本変形例に係る遊星歯車装置1は、第1変形例に係る遊星歯車装置1のプラネタリギヤ4を半減し、サンギヤの回転軸心6の回りに等間隔で2個配置するようになっている。本変形例に係るキャリア2は、第1変形例に係るキャリア2と同様に、ギヤ収容スペース12が二つ割のスライド駒(第1スライド駒17及び第2スライド駒18)によって容易に成形される。
【0040】
[第3変形例]
図9は、本発明の第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置1の第3変形例を簡略化して示す図であり、図2(d)に対応する図である。
【0041】
図9に示すように、本変形例に係る遊星歯車装置1は、第2変形例に係る遊星歯車装置1のプラネタリギヤ4を半減し、サンギヤの回転軸心6の回りに1個配置するようになっている。本変形例に係るキャリア2は、第1変形例に係るキャリア2と同様に、ギヤ収容スペース12が二つ割のスライド駒(第1スライド駒17及び第2スライド駒18)によって容易に成形される。
【0042】
[第4変形例]
図10は、本発明の第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置1の第4変形例を簡略化して示す図であり、図2(d)に対応する図である。
【0043】
図10に示すように、本変形例に係る遊星歯車装置1は、第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置1のプラネタリギヤ4が3個であるのに対し、プラネタリギヤ4をサンギヤの回転軸心6の回りに1個配置するようになっている。本変形例に係るキャリア2は、第1及び第2実施形態に係るキャリア2と同様に、ギヤ収容スペース12が二つ割のスライド駒(第1スライド駒17及び第2スライド駒18)によって容易に成形される。
【0044】
[第3実施形態]
図11は、本発明の第3実施形態に係る遊星歯車装置を示す図である。また、図12は、本発明の第3実施形態に係る遊星歯車装置のキャリアを示す図である。本実施形態に係る遊星歯車装置は、第2実施形態に係る遊星歯車装置の組み付け位置決め面24に代えて、後に詳述する位置決め凸部をギヤ支持部に形成した構成に特徴を有するが、他の基本的構成が第2実施形態に係る遊星歯車装置と同様である。したがって、本実施形態に係る遊星歯車装置は、第2実施形態に係る遊星歯車装置と共通する構成部分に第2実施形態に係る遊星歯車装置の構成部分と同一符号を付し、第2実施形態に係る遊星歯車装置と重複する説明を適宜省略する。なお、図11(a)は、遊星歯車装置1の正面図である。図11(b)は、遊星歯車装置1の側面図である。図11(c)は、遊星歯車装置1の背面図である。図11(d)は、図11(b)のA9-A9線に沿って切断して示す遊星歯車装置1の断面図である。また、図12は、図3に対応する図である。
【0045】
図11及び図12に示すように、キャリア2は、一対のギヤ支持部8,11のギヤ収容スペース12側に位置する側面8a,11aに、プラネタリギヤ4をギヤ支持軸9への組み付け位置に位置決めする位置決め凸部36が形成されている。なお、プラネタリギヤ4は、図2(e)~(g)で示したように、ギヤ支持部8,11に対向する側面で且つギヤ支持軸9を嵌合する軸穴21の周囲に、軸穴21の中心と同心の円筒状の張出部23が形成されている。
【0046】
位置決め凸部36は、隣り合う一対の梁10,10の対向する側面に沿って径方向へ延びるように形成されている。すなわち、位置決め凸部36は、ギヤ支持部8,11の側面8a,11aで且つ梁10の両側面に沿った位置に形成され、梁10と共に径方向に沿って形成されている。そして、位置決め凸部36は、ギヤ支持部8,11の側面8a,11aからの突出高さがプラネタリギヤ4の張出部23の張り出し長さ(軸方向長さ)よりも小さくなっている。
【0047】
図13(a)は、キャリア2とプラネタリギヤ4との第1組み付け状態図である。この図13(a)に示すように、隣り合う一対の梁10,10の対向する側面に沿って形成された一対の位置決め凸部36,36は、V字状になっており、キャリア2の回転軸心6を通る第1仮想線7に対して線対称の形状になっている。そして、この一対の位置決め凸部36,36は、側面36a,36aがギヤ収容スペース12内に収容したプラネタリギヤ4の張出部23に当接し、プラネタリギヤ4をギヤ支持軸9への組み付け位置に位置決めするようになっている。ここで、組み付け位置は、第1ギヤ支持部8のピン穴13の中心及び第2ギヤ支持部11のピン穴14の中心よりも径方向内方側にずれて位置しているが、第2ギヤ支持部11のピン穴14からギヤ収容スペース12内へ向けて挿入されたギヤ支持軸9の先端のテーパ面31が係合し、更にギヤ支持軸9がギヤ収容スペース12側へ押し込まれると、ギヤ支持軸9のテーパ面31がプラネタリギヤ4を径方向外方側へ移動させ、ギヤ支持軸9の小径部30がプラネタリギヤ4の軸穴21に係合される位置である(図5参照)。
【0048】
図13(b)は、キャリア2とプラネタリギヤ4との第2組み付け状態図であり、ギヤ支持軸9の小径部30が第1ギヤ支持部8のピン穴13に係合されると共に、プラネタリギヤ4の軸穴21に係合され、ギヤ支持軸9の大径部28が第2ギヤ支持部11のピン穴14に圧入されることにより、プラネタリギヤ4がサンギヤ3との噛み合い位置に回動可能に支持された状態を示す図である。この図13(b)に示すように、プラネタリギヤ4は、ギヤ支持軸9によってサンギヤ3との噛み合い位置に回動可能に支持されることにより、位置決め凸部36から離れ、位置決め凸部36と摺接することがなく、円滑に回動できるようになっている。
【0049】
以上のような本実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2は、第2実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2と同様に、ギヤ収容スペース12内の第1梁10(10a)から第3梁10(10c)及び各位置決め凸部36がギヤ収容スペース12を形作る第1スライド駒17及び第2スライド駒18のスライド移動を妨げない形状になっているため、金型内で一体成形することが可能になる。したがって、本実施形態に係る遊星歯車装置1のキャリア2は、第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置のキャリアと同様に、一対のギヤ支持部(第1ギヤ支持部8、第2ギヤ支持部11)が複数の梁10によって一体に接続されているため、複数の部品で組み立てられる従来のキャリア104と比較し、遊星歯車装置1の組立工数を削減することができる。
【0050】
なお、本発明の第1及び第2実施形態に係る遊星歯車装置1の第1~4変形例は、本発明の第3実施形態に係る遊星歯車装置1にも適用できる。
【符号の説明】
【0051】
1……遊星歯車装置、2……キャリア、3……サンギヤ、4……プラネタリギヤ(ピニオンギヤ)、6……回転軸心、8……第1ギヤ支持部(第1ギヤ支持プレート)、9……ギヤ支持軸、10……梁、11……第2ギヤ支持部(第2ギヤ支持プレート)、12……ギヤ収容スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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