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特許7458814触媒容器及び当該触媒容器に用いられる風向制御部材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】触媒容器及び当該触媒容器に用いられる風向制御部材
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20240325BHJP
   C01B 3/48 20060101ALI20240325BHJP
   B01J 8/02 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C01B3/38
C01B3/48
B01J8/02 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020024588
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2020131191
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019027658
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松本 明
(72)【発明者】
【氏名】桝本 幸嗣
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-140311(JP,A)
【文献】特公昭49-011143(JP,B1)
【文献】実開昭59-108193(JP,U)
【文献】実開昭56-042634(JP,U)
【文献】特開平10-043551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-58
B01J 8/00-46
H01M 8/06-0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の触媒が収容され、処理対象ガスが通流可能な触媒容器であって、
前記処理対象ガスが下方から上方に向かって通流する容器本体と、
前記容器本体の下面に接続され、前記処理対象ガスを前記容器本体に供給する供給流路とを備え、
前記容器本体は、
前記供給流路が一部に接続され、前記処理対象ガスが導入される導入部と、
前記導入部に対して上方に位置し、前記粒状の触媒を収容する触媒収容部と、
前記導入部と前記触媒収容部とを区画する仕切り体とを有し、
前記仕切り体は、前記粒状の触媒の前記導入部への落下を阻止するとともに、前記処理対象ガスを前記導入部から前記触媒収容部へと通過させる複数の開口部を有しており、
前記供給流路は、前記導入部の長手方向のうち中央部に対して一方側の前記導入部の下面に連通接続されており、
上面が水平に形成された前記導入部において、前記長手方向のうち前記一方側に対して反対側である他方側から前記仕切り体の下面に沿う水平面方向に吹き出す前記処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さが、前記導入部の上面から前記仕切り体までの空間長さよりも大きい、触媒容器。
【請求項2】
前記供給流路は、上端部が前記導入部に挿入されており、前記供給流路から前記導入部への前記処理対象ガスの吹き出し方向が、前記仕切り体の下面に沿う水平面方向となるように前記処理対象ガスを誘導する、請求項1に記載の触媒容器。
【請求項3】
前記供給流路は上下方向に延びており、前記導入部に挿入された前記供給流路の上端部には、前記水平面方向に向かって開口する吹出開口が形成されている、請求項に記載の触媒容器。
【請求項4】
前記供給流路は上下方向に延びており、前記導入部に挿入された前記供給流路の上端部には、前記上下方向に対して斜めに切り欠かれた切欠開口が形成されている、請求項に記載の触媒容器。
【請求項5】
前記導入部に挿入された前記供給流路の上端部は、上下方向に延びた上下部分と、前記上下部分に連続して前記水平面方向に延び、前記処理対象ガスを前記水平面方向に吹き出す水平部分とを有している、請求項に記載の触媒容器。
【請求項6】
前記供給流路は、上下方向に延びている上端部が前記導入部に挿入されており、
前記供給流路の上端開口部に取り付け可能であり、少なくとも一部が前記導入部に挿入可能である風向制御部材を備え、
前記風向制御部材は、前記上端開口部に取り付けられた状態で、前記上端開口部に対して上方に位置する水平面である上面部と、前記上面部から前記上端開口部に向かって前記上下方向に延びる側面部とを有し、
前記側面部には、前記処理対象ガスを前記仕切り体の下面に沿う水平面方向に吹き出す吹出開口が形成されている、請求項1に記載の触媒容器。
【請求項7】
前記側面部は、前記上端開口部に挿入され、前記上端開口部の内面に係止する係止部を有する、請求項に記載の触媒容器。
【請求項8】
前記側面部は、前記風向制御部材が前記上端開口部に取り付けられた状態で、前記上端開口部の外側に位置し、前記吹出開口と対向する対向面部を有する、請求項に記載の触媒容器。
【請求項9】
前記係止部の上下方向の長さは、前記対向面部の上下方向の長さよりも長い、請求項に記載の触媒容器。
【請求項10】
前記風向制御部材は、前記供給流路を通過可能な大きさである、請求項6~9のいずれか1項に記載の触媒容器。
【請求項11】
前記風向制御部材は、弾性変形可能な板バネから形成されている、請求項6~10のいずれか1項に記載の触媒容器。
【請求項12】
請求項6~11のいずれか1項に記載の触媒容器に用いられる、前記供給流路の上端開口部に取り付け可能であり、少なくとも一部が前記導入部に挿入可能である風向制御部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒容器及び当該触媒容器に用いられる風向制御部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池に供給する燃料ガスを生成する燃料改質システムが開示されている。燃料改質システムは、原燃料である処理対象ガスの供給を受け、触媒を用いて当該処理対象ガスに所定の処理を施すガス処理装置を有している。触媒はガス処理装置に収容されているが、装置の起動及び停止の繰り返しによって、触媒が収容された空間を形成する部材が膨張収縮し、当該空間に収容された粒状の触媒が圧壊して細分化する。細分化した細分化触媒が粒状の触媒の隙間に溜まると、処理対象ガスの通流が妨げられる。
【0003】
そこで、特許文献1のガス処理装置では、触媒収容空間を、粒状の触媒を収容する上方の触媒収容部分と、細分化触媒を収容する下方の細分化触媒収容部分とに分離する。そして、触媒収容空間への処理対象ガスの供給を停止した状態で、加振手段により触媒収容空間の触媒を振動させる。これにより、処理対象ガスの流れにのって下流側に細分化触媒が流動するのを防止しつつ、粒状の触媒間に溜まっている細分化触媒を細分化触媒収容部分にふるい落とすことができる。よって、触媒収容空間を通流する処理対象ガスに偏流が生じるのを十分に抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6381458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のガス処理装置では、細分化触媒を下方の細分化触媒収容部分にふるい落とすことができるものの、ガス処理装置の下方に接続された処理対象ガスが通流する流路が、細分化触媒等によって閉塞する可能性がある。よって、処理対象ガスを触媒収容空間に通流させることができず、触媒による処理に供することができない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、触媒収容空間に処理対象ガスを供給する流路の閉塞を抑制可能な触媒容器及び当該触媒容器に用いられる風向制御部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る触媒容器の特徴構成は、
粒状の触媒が収容され、処理対象ガスが通流可能な触媒容器であって、
前記処理対象ガスが下方から上方に向かって通流する容器本体と、
前記容器本体の下面に接続され、前記処理対象ガスを前記容器本体に供給する供給流路とを備え、
前記容器本体は、
前記供給流路が一部に接続され、前記処理対象ガスが導入される導入部と、
前記導入部に対して上方に位置し、前記粒状の触媒を収容する触媒収容部と、
前記導入部と前記触媒収容部とを区画する仕切り体とを有し、
前記仕切り体は、前記粒状の触媒の前記導入部への落下を阻止するとともに、前記処理対象ガスを前記導入部から前記触媒収容部へと通過させる複数の開口部を有しており、
前記供給流路は、前記導入部の長手方向のうち中央部に対して一方側の前記導入部の下面に連通接続されており、
上面が水平に形成された前記導入部において、前記長手方向のうち前記一方側に対して反対側である他方側から前記仕切り体の下面に沿う水平面方向に吹き出す前記処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さが、前記導入部の上面から前記仕切り体までの空間長さよりも大きい点にある。
【0008】
処理対象ガスは、供給流路を介して容器本体の下面から導入部に導入される。導入部に導入された処理対象ガスは、仕切り体の複数の開口部を通過して触媒収容部へと導入され、触媒により所定の処理を施される。このように処理対象ガスは、供給流路から導入部及び触媒収容部へと導入されるが、仕切り体との接触及び導入部の内壁との接触により導入部内で処理対象ガスの旋回流が発生する場合がある。発生した旋回流が、仕切り体の複数の開口部を通過して触媒収容部に導入されると、粉粒が巻き上がり、仕切り体の複数の開口部を介して導入部に落下し、供給流路を閉塞させる。粉粒としては、触媒が細分化した細分化触媒、及び粒状の触媒と処理対象ガスとの反応物等が挙げられる。なお、触媒容器が備えられた装置の起動及び停止等により触媒容器に膨張及び収縮の力が加わるが、これにより触媒収容部に収容された触媒が圧壊して細分化し、細分化触媒となる。
【0009】
上記特徴構成によれば、供給流路は、導入部の長手方向のうち中央部に対して一方側の導入部の下面に連通接続されている。さらに、上面が水平に形成された導入部において、導入部の長手方向のうち一方側に対して反対側である他方側から仕切り体の下面に沿う水平方向に吹き出す処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さが、導入部の上面から仕切り体までの空間長さよりも大きく形成されている。これにより、供給流路から導入部に吹き出された処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さを、吹き出し方向以外よりもある程度確保することができる。そして、処理対象ガスはある程度長い空間長さの中で、吹出方向の先端に向かって流速が低下していく。よって、処理対象ガスの流速は、仕切り体及び導入部等と接触するときに低下しているため、当該接触による旋回流の発生を抑制できる。これにより、旋回流によって触媒収容部内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられ、導入部に落下するのを抑制でき、粉粒が供給流路に導入されて供給流路が閉塞するのを抑制できる。
【0015】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記供給流路は、上端部が前記導入部に挿入されており、前記供給流路から前記導入部への前記処理対象ガスの吹き出し方向が、前記仕切り体の下面に沿う水平面方向となるように前記処理対象ガスを誘導する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、処理対象ガスは、導入部に挿入されている供給流路の上端部を介して、仕切り体の下面に沿う水平面方向に吹き出される。つまり、供給流路から導入部を介して仕切り体に向かう処理対象ガスは、仕切り体の下面に向かうように吹き出される訳ではない。
また、導入部において、処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さが、吹き出し方向以外の空間長さの少なくとも一部よりも大きく構成されている。つまり、処理対象ガスの吹き出し方向である水平面方向の空間長さが、吹き出し方向以外の空間長さの少なくとも一部よりも大きく構成されている。
【0017】
これらにより、処理対象ガスの吹き出し方向である水平面方向の空間長さを、吹き出し方向以外よりもある程度確保することができる。よって、処理対象ガスが仕切り体及び導入部等と接触するときには、その流速が低下しており、当該接触による旋回流の発生を抑制できる。これにより、旋回流の触媒収容部への導入を抑制し、触媒収容部から粉粒が導入部に落下することによって供給流路が閉塞するのを抑制できる。
【0018】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記供給流路は上下方向に延びており、前記導入部に挿入された前記供給流路の上端部には、前記水平面方向に向かって開口する吹出開口が形成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、導入部に挿入された供給流路の上端部において、水平面方向に向かって開口する吹出開口が形成されている。よって、処理対象ガスは、吹出開口を介して仕切り体の下面に沿う水平面方向に吹き出される。これにより、処理対象ガスが仕切り体及び導入部等と接触するときの流速を低下させ、旋回流の発生の抑制、さらには、粉粒が導入部に落下することによる供給流路の閉塞を抑制できる。
【0020】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記供給流路は上下方向に延びており、前記導入部に挿入された前記供給流路の上端部には、前記上下方向に対して斜めに切り欠かれた切欠開口が形成されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、上下方向に延びた供給流路の上端部は斜めに切り欠かれている。よって、処理対象ガスは、供給流路から上下方向に吹き出されるだけでなく、斜めに切り欠かれた切欠開口から仕切り体の下面に沿う水平面方向にも吹き出される。これにより、処理対象ガスが仕切り体及び導入部等と接触するときの流速を低下させ、旋回流の発生の抑制、さらには、粉粒が導入部に落下することによる供給流路の閉塞を抑制できる。
【0022】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記導入部に挿入された前記供給流路の上端部は、上下方向に延びた上下部分と、前記上下部分に連続して前記水平面方向に延び、前記処理対象ガスを前記水平面方向に吹き出す水平部分とを有している点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、供給流路の端部は、上下部分及び水平部分から形成されており、水平部分に形成された開口から処理対象ガスが仕切り体の下面に沿う水平面方向に吹き出される。これにより、処理対象ガスが仕切り体及び導入部等と接触するときの流速を低下させ、旋回流の発生の抑制、さらには、粉粒が導入部に落下することによる供給流路の閉塞を抑制できる。
【0024】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記供給流路は、上下方向に延びている上端部が前記導入部に挿入されており、
前記供給流路の上端開口部に取り付け可能であり、少なくとも一部が前記導入部に挿入可能である風向制御部材を備え、
前記風向制御部材は、前記上端開口部に取り付けられた状態で、前記上端開口部に対して上方に位置する水平面である上面部と、前記上面部から前記上端開口部に向かって前記上下方向に延びる側面部とを有し、
前記側面部には、前記処理対象ガスを前記仕切り体の下面に沿う水平面方向に吹き出す吹出開口が形成されている点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、風向制御部材は、少なくとも一部が導入部に位置するように供給流路の上端開口部に取り付けられる。風向制御部材は、上端開口部の上方の上面部と、上面部から上端開口部に向かって下方に延びる側面部とを有しているため、供給流路の上端開口部をキャップ状に覆うように配置できる。そして、側面部には、水平面方向に向かって開口する吹出開口が形成されている。よって、少なくとも一部が導入部に位置する風向制御部材が供給流路の上端開口部に取り付けられることで、処理対象ガスが仕切り体の下面に沿う水平面方向に吹き出される。これにより、処理対象ガスが仕切り体及び導入部等と接触するときの流速を低下させ、旋回流の発生の抑制、さらには、粉粒が導入部に落下することによる供給流路の閉塞を抑制できる。
【0026】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記側面部は、前記上端開口部に挿入され、前記上端開口部の内面に係止する係止部を有する点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、上下方向に延びる側面部は、上端開口部の内面に係止する係止部を有している。よって、係止部を上端開口部の内面に係止することで、供給流路の上端開口部に容易に風向制御部材を取り付けることができる。
【0028】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記側面部は、前記風向制御部材が前記上端開口部に取り付けられた状態で、前記上端開口部の外側に位置し、前記吹出開口と対向する対向面部を有する点にある。
【0029】
上記特徴構成によれば、側面部は、吹出開口と対向する対向面部を有しており、対向面部は、上端開口部の外側に位置する。つまり、風向制御部材は、係止部によって上端開口部の内面に係止するとともに、対向面部が上端開口部の外側に位置するため、風向制御部材の上端開口部の内部への落下を阻止できる。
【0030】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、前記係止部の上下方向の長さは、前記対向面部の上下方向の長さよりも長い点にある。
【0031】
上記特徴構成によれば、係止部の上下方向の長さが、対向面部の上下方向の長さよりも長い。よって、上面部を上流側に向けて供給流路の内部を風向制御部材を通過させ、上端開口部まで到達させた場合に、係止部よりも先に対向面部が上端開口部を抜けて供給流路の外側に位置する。これにより、風向制御部材は、係止部によって上端開口部の内面に係止するとともに、対向面部が上端開口部の外側に位置するため、風向制御部材の上端開口部の内部への落下を阻止できる。
【0032】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、前記風向制御部材は、前記供給流路を通過可能な大きさである点にある。
【0033】
上記特徴構成によれば、風向制御部材を供給流路内を通過させて上端開口部に配置できる。よって、供給流路を導入部から取り外すことなく、供給流路の上端開口部に風向制御部材を配置できるため、風向制御部材の取り付けが容易である。
【0034】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、前記風向制御部材は、弾性変形可能な板バネから形成されている点にある。
【0035】
上記特徴構成によれば、風向制御部材は板バネから形成されているため、折り曲げ加工が容易である。また、弾性変形を利用して供給流路内に風向制御部材を通過させ、供給流路の上端開口部に容易に配置できる。例えば供給流路が屈曲している場合には、風向制御部材を弾性変形させて屈曲部を通過させることができる。よって、風向制御部材の取り付けが容易である。
また、係止部を板バネの弾性力を利用して供給流路の内面側に向かって付勢させ、風向制御部材を供給流路に係止できる。
【0036】
本発明に係る風向制御部材の特徴構成は、上記の触媒容器に用いられ、供給流路の上端開口部に取り付け可能であり、少なくとも一部が導入部に挿入可能である点にある。
風向制御部材を触媒容器の供給流路に適用することで、処理対象ガスが仕切り体及び導入部等と接触するときの流速を低下させ、旋回流の発生の抑制、さらには、粉粒が導入部に落下することによる供給流路の閉塞を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ガス処理装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】触媒容器の全体構成を示す斜視図である。
図3】+X及び-X方向からの触媒容器の側面図である。
図4】+X及び-X方向からの別の触媒容器の側面図である。
図5】仕切り体の構成図である。
図6】仕切り体の構成図である。
図7A】仕切り体の構成図である。
図7B】仕切り体の構成図である。
図8】供給流路の構成図である。
図9】供給流路の構成図である。
図10】供給流路の構成図である。
図11】供給流路に取り付けられた風向制御部材の構成図である。
図12】供給流路に取り付けられた風向制御部材の構成図である。
図13】風向制御部材の構成図である。
図14】風向制御部材の展開図である。
図15】風向制御部材の供給流路への取り付けを示す流れ図である。
図16】従来の触媒容器の全体構成を示す斜視図である。
図17】従来の触媒容器に異なる流速で処理対象ガスを導入した場合の温度分布の違いを示す説明図である。
図18】従来の触媒容器に異なる流速で処理対象ガスを導入した場合の速度ベクトルの違いを示す説明図である。
図19】従来の触媒容器に異なる流速で処理対象ガスを導入した場合の流跡線の違いを示す説明図である。
図20】仕切り体の傾斜角度が異なる触媒容器に処理対象ガスを導入した場合の流跡線の違いを示す説明図である。
図21】仕切り体の高さ位置が異なる触媒容器に処理対象ガスを導入した場合の流跡線の違いを示す説明図である。
図22】風向制御部材が取り付けられていない供給流路の閉塞状態を示す説明図である。
図23】風向制御部材が取り付けられている供給流路の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
〔実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明に係る触媒容器を水素含有ガス(燃料ガス)生成用のガス処理装置に適用した場合の実施形態を説明する。
【0039】
(1)ガス処理装置の全体構成
ガス処理装置10の全体構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、水素含有ガス生成用のガス処理装置10は、処理対象ガスに所定の処理を施す処理部として、炭化水素系の原燃料ガス(例えば、13A等の天然ガスベースの都市ガス)に対して脱硫処理を施す脱硫器11と、脱硫器11から供給される脱硫後の原燃料ガスを改質して改質ガスを生成する改質器13と、改質ガス中の一酸化炭素ガスを二酸化炭素ガスに変成するCO変成器15と、改質済みの改質ガスに含まれる一酸化炭素ガスを選択的に酸化するCO選択酸化反応器17とを備えている。
なお、本実施形態では、原燃料ガスに硫黄が含まれる場合を例示しており、原燃料ガスを脱硫処理するために脱硫器11が設けられている。
【0040】
脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17は、通流する各ガスに処理を施すための触媒を収容する触媒収容部Ruを有する触媒容器30(図2等)から構成されている。触媒容器30の構成については後述する。なお、図1における脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の接続配管の構成は、簡略化して記載している。
【0041】
脱硫器11の触媒収容部Ruには、脱硫処理用の脱硫触媒11cが収容されている。
そして、脱硫器11は、脱硫触媒11cを所定の脱硫処理用の脱硫処理温度(例えば200~270℃)に昇温させた状態で、原燃料ガスを脱硫する。この場合、改質器13を経た改質ガスの一部をリサイクルガスとして脱硫器11に供給してもよい。これにより、リサイクルガス中の水素ガスにより原燃料ガス中の硫黄化合物が水素化されると共に、脱硫触媒11cがその水素化物を吸着して脱硫する。なお、脱硫触媒11cは、例えば、ニッケル、コバルト、モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、クロム等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0042】
改質器13の触媒収容部Ruには、改質処理用の改質触媒13cが収容されている。
改質器13には、脱硫器11により脱硫後の原燃料ガスが供給されるとともに、水蒸気化された改質水が供給される。改質器13は、改質触媒13cを所定の改質処理用の改質処理温度(例えば600~700℃の範囲)に昇温させた状態で、脱硫後の原燃料ガスを水蒸気改質する。
原燃料ガスがメタンガスを主成分とする天然ガスである場合、改質器13は、下記の反応式によりメタンガスを水蒸気と反応させて改質処理することで改質ガスを生成する。下記反応式では、改質ガスには、水素ガス、一酸化炭素ガス及び二酸化炭素ガスが含まれる。なお、改質触媒13cは、ルテニウム、ニッケル、白金等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0043】
CH+2HO→CO+4H
CH+HO→CO+3H
【0044】
CO変成器15の触媒収容部Ruには、変成処理用の変成触媒15cが収容されている。
CO変成器15は、変成触媒15cを所定の変成処理用の変成処理温度(例えば150~250℃の範囲)に昇温させた状態で、下記の反応式にて改質ガス中の一酸化炭素ガスを水蒸気と反応させて、二酸化炭素ガスに変成させる。なお、変成触媒15cは、白金、ルテニウム、ロジウム等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0045】
CO+HO→CO+H
【0046】
CO選択酸化反応器17の触媒収容部Ruには、選択酸化処理用の選択酸化触媒17cが収容されている。
CO選択酸化反応器17は、選択酸化触媒17cを所定の選択酸化処理用の選択酸化処理温度(例えば、80~100℃の範囲)に昇温させた状態で、変成処理後の改質ガス中に残っている一酸化炭素ガスを選択酸化させる。これにより、CO選択酸化反応器17は、燃料電池20に供給可能な水素含有ガス(燃料ガス)を生成する。水素含有ガスは、一酸化炭素ガス濃度の低い(例えば10ppm以下)水素リッチな水素含有ガスとして生成される。なお、選択酸化触媒17cは、白金、ルテニウム、ロジウム等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0047】
CO選択酸化反応器17を出た水素含有ガスは、燃料電池20に供給される。燃料電池20は、供給された水素含有ガスと空気を反応させて発電する。燃料電池20は、水素含有ガスを燃料ガスとして発電できる装置であれば特に限定されず、例えば固体高分子膜からなる電解質層をアノードとカソードで挟持したセルを積層して構成される固体高分子形燃料電池である。
【0048】
(2)触媒容器
次に、触媒容器30について説明する。上述の通り脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の各処理部は、それぞれ触媒容器30を有しており、各処理部で所定の処理を行うために所定の触媒11c、13c、15c、17cが収容されている。触媒容器30の構成は各処理部で構成が同様であるため、以下では脱硫器11の触媒容器30を例に挙げて説明する。
【0049】
図2図3に示すように、脱硫器11の触媒容器30は、処理対象ガスが下方から上方に向かって通流する容器本体Rと、容器本体Rの下面に接続され、処理対象ガスを容器本体に供給する供給流路31とを備えている。触媒容器30には、さらに触媒により所定の処理が施された処理済みの処理対象ガスが排出される排出流路39が容器本体Rの上面に接続されていてもよい。
【0050】
本実施形態では、容器本体Rは直方体状である。容器本体Rは、図2図3等の+X及び-X方向(以下、幅方向という場合もある)が長手方向であり、長手方向の長さはL4である。また、+Y及び-Y方向(以下、奥行方向という場合もある)が短手方向であり、短手方向の長さはW1(L4>W1)である。また、+Z及び-Z方向(以下、上下方向という場合もある)が高さ方向である。以下では、+X及び-X方向と+Y及び-Y方向が含まれる平面を水平面とし、水平面に沿う方向を水平面方向という。そして、水平面方向における容器本体Rの形状は概ね長方形状である。
【0051】
容器本体Rは、容器本体R内の空間を上下に区画する仕切り体41と、仕切り体41よりも上側の直方体状の空間であり、粒状の触媒である脱硫触媒11cを収容する触媒収容部Ruと、仕切り体41よりも下側の直方体状の空間であり、供給流路31が接続される導入部Rbとを備えている。触媒収容部Ruは、長手方向である+X及び-X方向の長さがL4であり、短手方向である+Y及び-Y方向の長さがW1(L4>W1)であり、高さは任意であり、例えばL4及びW1よりも大きい。導入部Rbは、長手方向の長さがL4であり、短手方向の長さがW1(L4>W1)であり、高さがL4よりも小さい。触媒収容部Ruは導入部Rbよりも広い空間に形成されており、より多くの触媒を収容可能となっている。
【0052】
仕切り体41は、板状部材から形成されており、複数の孔(開口部の一例)43を有している。複数の孔43は、触媒収容部Ruに収容された粒状の触媒が導入部Rbに落下するのを阻止するとともに、処理対象ガスが導入部Rbから触媒収容部Ruに通過可能な大きさに形成されている。
【0053】
供給流路31は、筒状部材であり、導入部Rbと接続部分を介して連通している。また、供給流路31は、少なくとも導入部Rbとの接続部分の近傍においては、+Z及び-Z方向(上下方向)に延びている。そして、供給流路31は、供給流路31の下方から導入された処理対象ガスを導入部Rbに向かって上方向に吹き出すように導入部Rbに接続されている。
【0054】
供給流路31は、導入部Rbの下面のうち周縁に近い位置に接続されている。本実施形態では、供給流路31は、導入部Rbの+X及び-X方向(幅方向)のうち、中央部よりも-X方向側に接続されている。また、本実施形態では、図3に示すように、導入部Rbの下面は、-Yから+Y方向に向かって同一の高さの水平面である。しかし、図4に示すように、導入部Rbの下面は、-Yから+Y方向に向かって高さが高くなるように傾斜していてもよい。これにより、供給流路31を導入部Rbの下面に溶接等により接続することが容易である。
【0055】
本実施形態では、導入部Rbには、導入部Rbの下面に接続された上下方向に延びる供給流路31から、下方から上方に向かって処理対象ガスが吹き出される。このような構成において、導入部Rbにおいて、処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さが、吹き出し方向以外の空間長さの少なくとも一部よりも大きくなるように、仕切り体41、供給流路31及び導入部Rb等が設計されている。
【0056】
ここで、処理対象ガスは、供給流路31から導入部Rb及び触媒収容部Ruへと導入されるが、仕切り体41との接触及び導入部Rbの内壁との接触により導入部Rb内で処理対象ガスの旋回流が発生する場合がある。そして、流速がある程度速い状態で処理対象ガスが仕切り体41及び導入部Rbの内壁等と接触することで、旋回流は発生し易くなる。発生した旋回流が、仕切り体41の複数の孔43を通過して触媒収容部Ruに導入されると、粉粒が巻き上がり、仕切り体41の複数の孔43を介して導入部Rbに落下し、供給流路31を閉塞させる。粉粒としては、触媒が細分化した細分化触媒、及び粒状の触媒と処理対象ガスとの反応物等が挙げられる。脱硫器11の場合、反応物として硫化銅が生じる。
なお、触媒容器30が備えられた装置の起動及び停止等により触媒容器30に膨張及び収縮の力が加わるが、これにより触媒収容部Ruに収容された触媒が圧壊して細分化し、細分化触媒となる。
【0057】
上記のように導入部Rbにおいて、処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さが、吹き出し方向以外の空間長さの少なくとも一部よりも大きくなるように、仕切り体41、供給流路31及び導入部Rb等が設計される。これにより、供給流路31から導入部Rbに吹き出された処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さを、吹き出し方向以外よりもある程度確保することができる。そして、処理対象ガスはある程度長い空間長さの中で、吹出方向の先端に向かって流速が低下していく。よって、処理対象ガスの流速は、仕切り体41及び導入部Rb等と接触するときに低下しているため、当該接触による旋回流の発生を抑制できる。これにより、旋回流によって触媒収容部Ru内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられ、導入部Rbに落下するのを抑制でき、粉粒が供給流路31に導入されて供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
【0058】
以下に、処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さが、吹き出し方向以外の空間長さの少なくとも一部よりも大きくなる構成の具体例についてさらに説明する。
具体例としては、例えば仕切り体41の検討例、供給流路31の検討例及び風向制御部材50(図11等)の検討例が挙げられる。以下に、それぞれについて説明する。
【0059】
(2-1)仕切り体の検討例
図5図7図2に示す+Y方向視であるが、図5図7に示すように、供給流路31は上下方向に延びており、水平面である仕切り体41の下面と交差している。図5図7では、供給流路31の上端部は容器本体Rの下面に接続されて、導入部Rbと連通している。つまり、供給流路31の上端部は導入部Rb内に入り込んでおらず、導入部Rbの下面で連結されている。
そして、仕切り体41の下面と、仕切り体41の下面と対向する導入部Rb内の上面との上下方向の高さにおいて、供給流路31が接続された部分の上方に対応する第1部分が、第1部分を除く第2部分よりも高くなるように設計されている。
【0060】
図5では、仕切り体41は、水平面である導入部Rbの上面に対して、位置41cから位置41bに向かって一方向に傾斜している。供給流路31は、導入部Rbの+X及び-X方向(幅方向)のうち、中央部よりも-X方向側に接続されている。よって、仕切り体41は、供給流路31が接続されている-X方向側が、+X方向側よりも高くなるように傾斜している。より具体的には、供給流路31が導入部Rbに接続された部分の上方の仕切り体41の下面の位置41a(第1部分に含まれる)と、導入部Rbの上面との高さをL1とする。また、供給流路31から離れた+X方向側において仕切り体41が触媒容器30と接触する部分の下面の位置41b(第2部分に含まれる)と、導入部Rbの上面との高さをL2とする。この場合、L1はL2よりも大きい(L1>L2)。そして、仕切り体41が一方向に傾斜していることから、-X方向側において仕切り体41が触媒容器30と接触する部分の下面の位置41cから、+X方向側の位置41bに向かって高さは徐々に小さくなる。
【0061】
図6では、仕切り体41は、水平面である導入部Rbの上面に対して二方向に傾斜している。仕切り体41は、供給流路31が接続された部分の上方の下面が、-X方向側及び+X方向側よりも高くなるように傾斜している。より具体的には、供給流路31が導入部Rbに接続された部分の上方の仕切り体41の下面の位置41a(第1部分に含まれる)と、導入部Rbの上面との高さをL1とする。また、供給流路31から離れた+X方向側において仕切り体41が触媒容器30と接触する部分の下面の位置41b(第2部分に含まれる)と、導入部Rbの上面との高さをL2とする。また、供給流路31から離れた-X方向側において仕切り体41が触媒容器30と接触する部分の下面の位置41c(第2部分に含まれる)と、導入部Rbの上面との高さをL3とする。この場合、L1は、L2よりも大きく、かつL3よりも大きい(L1>L2、L1>L3)。そして、仕切り体41が二方向に傾斜していることから、供給流路31が導入部Rbに接続された部分の上方の仕切り体41の下面の位置41aから、+X方向側の位置41b及び-X方向側の位置41cに向かって高さは徐々に小さくなる。
なお、仕切り体41は、図5及び図6に示すような+X及び-X方向での一方向の傾斜及び二方向の傾斜に限定されず、+Y及び-Y方向(奥行方向)にも傾斜していてもよい。
【0062】
図7Aでは、仕切り体41は、水平面である導入部Rbの上面に対して2段の階段状に形成されている。仕切り体41は、供給流路31が接続された部分の上方の下面が、+X方向側よりも高い。より具体的には、供給流路31が導入部Rbに接続された部分の上方の仕切り体41の下面の位置41a,41c(41a及び41cを含む面であり、第1部分に含まれる)と、導入部Rbの上面との高さをL1とする。下面の位置41a,41cに対して+X方向側に連続する下面の位置41e,41b(41e及び41bを含む面であり、第2部分に含まれる)と、導入部Rbの上面との高さをL2とする。この場合、L1、L2の順に小さくなる(L1>L2)。
【0063】
図7Bでは、仕切り体41は、図7Aよりもさらに、水平面である導入部Rbの上面に対して3段の階段状に形成されている。仕切り体41は、供給流路31が接続された部分の上方の下面が、+X方向側よりも高い。より具体的には、供給流路31が導入部Rbに接続された部分の上方の仕切り体41の下面の位置41a,41c(41a及び41cを含む面であり、第1部分に含まれる)と、導入部Rbの上面との高さをL1とする。下面の位置41a,41cに対して+X方向側に連続する下面の位置41e,41d(41e及び41dを含む面であり、第2部分に含まれる)と、導入部Rbの上面との高さをL2とする。下面の位置41e,41dに対して+X方向側に連続する下面の位置41f,41b(41f及び41bを含む面であり、第2部分に含まれる)と、導入部Rbの上面との高さをL3とする。この場合、L1、L2、L3の順に小さくなる(L1>L2>L3)。
【0064】
なお、図7Aでは仕切り体41は2段の階段状となっており、図7Bでは仕切り体41は3段の階段状となっているが、段数はこれに限定されない。また、図7A図7Bでは、仕切り体41は+X及び-X方向において一方向に向かって下る階段状となっているが、二方向に向かって下る階段状であってもよいし、さらには+Y及び-Y方向(奥行方向)にも傾斜していてもよい。
【0065】
図5図7Bに示すように、供給流路31は、導入部Rbと面する仕切り体41の下面と交差する+Z及び-Z方向(上下方向)に延びている。よって、供給流路31から導入部Rbへの処理対象ガスの吹き出し方向が、仕切り体41の下面と交差する上下方向となる。つまり、処理対象ガスは、導入部Rbにおいて供給流路31から上下方向に沿って仕切り体41の下面に向かって吹き出される。
【0066】
上記図5図7B等の構成によれば、仕切り体41の下面と導入部Rbの上面との上下方向の高さが、供給流路31の上方に対応する部分(第1部分)において、その他の部分(第2部分)よりも大きくなっている。そのため、処理対象ガスの吹き出し方向である上下方向の空間長さを、吹き出し方向以外よりもある程度確保することができ、導入部Rbでの旋回流の発生を抑制できる。よって、旋回流の触媒収容部Ruへの導入を抑制し、触媒収容部Ruから粉粒が導入部Rbに落下することによって供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
なお、図5図7BにおけるL1、L2、L3等の寸法は各図で独立に用いられており、例えば図5のL1と図6のL1とは別個の長さである。
【0067】
(2-2)供給流路の検討例
図8図10図2に示す+Y方向視であるが、図8図10に示すように、供給流路31は、+Z及び-Z方向(上下方向)に延びており、上端部が導入部Rbに挿入されている。ここで、供給流路31は、供給流路31から導入部Rbへの処理対象ガスの吹き出し方向が、導入部Rbと面する仕切り体41の下面に沿う水平面方向(+X及び-X方向と+Y及び-Y方向が含まれる平面)となるように処理対象ガスを誘導する構成となっている。本実施形態の場合、処理対象ガスの吹き出し方向が+X方向となるように供給流路31が設計されている。
【0068】
図8に示すように、供給流路31は、導入部Rbの+X及び-X方向のうち、中央部よりも-X方向側に接続されている。つまり、+X及び-X方向において、導入部RbはL4の長さがあり、供給流路31は、-X方向側の端部から長さL5の位置に、かつ+X方向側の端部から長さL6の位置において導入部Rbに接続されている。L6はL5より大きい(L6>L5)。また、仕切り体41は水平面方向に沿って配置されており、導入部Rbの上面と対向している。そして、L6の長さは、導入部Rbの下面から仕切り体41の上面までの長さL7よりも長い(L6>L7)。
【0069】
このような構成において、図8では、導入部Rbに挿入された供給流路31の上端部には、+Z及び-Z方向(上下方向)に沿った外周面に、供給流路31内に連通する吹出開口31aが水平面方向のうち+X方向側に向いて形成されている。よって、供給流路31は上端部が閉じられており、+X方向側が吹出開口31aにより開口している。処理対象ガスは、導入部Rb内において、吹出開口31aから+X方向側に向かって水平面方向に沿って吹き出される。
【0070】
図9では、図8と同様に、供給流路31は、導入部Rbの+X及び-X方向のうち、中央部よりも-X方向側に接続されており、L6はL5より大きい(L6>L5)。また、仕切り体41は水平面方向に沿って配置されている。そして、L6の長さはL7よりも長い(L6>L7)。
【0071】
このような構成において、図9では、導入部Rbに挿入された供給流路31の上端部には、切欠開口31bが形成されている。切欠開口31bは、供給流路31が延びる上下方向に対して斜めに切り欠かれており、+X方向側に向いて開口している。よって、処理対象ガスは、導入部Rb内において、供給流路31から上方向に吹き出されるだけでなく、斜めに切り欠かれた切欠開口31bから仕切り体41の下面に沿って+X方向側に向かって水平面方向に沿って吹き出される。
【0072】
なお、切欠開口31bの切欠角度θaは、XZ面内における+Z及び-Z方向(上下方向)に対して鋭角を成しており、処理対象ガスの少なくとも一部を水平面方向に吹き出すことができれば限定されないが、例えば15°~60°である。
【0073】
図10では、図8と同様に、供給流路31は、導入部Rbの+X及び-X方向のうち、中央部よりも-X方向側に接続されており、L6はL5より大きい(L6>L5)。また、仕切り体41は水平面方向に沿って配置されている。そして、L6の長さはL7よりも長い(L6>L7)。
【0074】
このような構成において、図10では、導入部Rbに挿入された供給流路31の上端部は、上下方向に延びた上下部分31cと、水平部分31dとを有している。水平部分31dは、上下部分31cに連続しており、かつ、+X方向側に向いて水平面方向に沿って延びて終端において開口している。よって、処理対象ガスは、導入部Rb内において、水平部分31dから+X方向側に向かって水平面方向に沿って吹き出される。
【0075】
図8図10に示すように、処理対象ガスは、導入部Rbに挿入されている供給流路31の端部を介して、仕切り体41の下面に沿う水平面方向に沿って吹き出される。つまり、供給流路31から導入部Rbを介して仕切り体41に向かう処理対象ガスは、仕切り体41の下面に向かうように吹き出される訳ではない。
【0076】
また、供給流路31は、L6>L5となるように、導入部Rbの+X及び-X方向のうち、中央部よりも-X方向側に接続されている。また、導入部Rbにおける処理対象ガスの吹き出し方向は、+X及び-X方向(幅方向)の長さが長いL6側、つまり、+X方向側である。さらに、L6の長さはL7よりも長い(L6>L7)。よって、導入部Rbにおいて、処理対象ガスの吹き出し方向である水平面方向の空間長さ(L6)が、吹き出し方向以外の空間長さの少なくとも一部(例えばL5、L7)よりも大きく構成されている。
【0077】
これらにより、処理対象ガスの吹き出し方向である水平面方向の空間長さを、吹き出し方向以外よりもある程度確保することができる。よって、処理対象ガスが仕切り体41及び導入部Rb等と接触するときには、その流速が低下しており、当該接触による旋回流の発生を抑制できる。これにより、旋回流の触媒収容部Ruへの導入を抑制し、触媒収容部Ruから粉粒が導入部Rbに落下することによって供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
【0078】
(2-3)風向制御部材の検討例
図11図12図2に示す+Y方向視であるが、図11図12に示すように、供給流路31は、導入部Rbと接続される近傍において上下方向に延びており、水平面である仕切り体41の下面と交差している。また、図11図12では、供給流路31は、上下方向だけでなく、水平面方向に沿って延びている延長部分35も有している構成を例示している。図11図12に示すように、供給流路31は、図8と同様に、導入部Rbの+X及び-X方向のうち、中央部よりも-X方向側に接続されており、L6はL5より大きい(L6>L5)。ここで、触媒容器30は、供給流路31の上端開口部33に取り付け可能な風向制御部材50を備えている。風向制御部材50は、少なくとも一部が導入部Rbに挿入可能であり、処理対象ガスを+X方向側に向かって水平面方向に沿って吹き出すように構成されている。なお、L6の長さは、導入部Rbの下面から仕切り体41の上面までの長さL7よりも長い(L6>L7)。
【0079】
図11では、供給流路31は導入部Rb内に突出しておらず、供給流路31と導入部Rbとの接続部分である上端開口部33に風向制御部材50が配置されている。この場合、風向制御部材50は、供給流路31の上端部に支持されるとともに、導入部Rbの上面に支持されている。
図12では、供給流路31は導入部Rb内に突出しており、供給流路31の上端開口部33に、風向制御部材50が配置されている。この場合、風向制御部材50は、供給流路31の上端部により支持されている。
【0080】
風向制御部材50についてさらに説明する。
図13に示すように、風向制御部材50は、水平面である上面部51と、上面部51から下方に延びる側面部53とを有する。側面部53は、上端開口部33の内面に係止する一対の係止部53a、53bと、対向面部53cとを有する。一対の係止部53a、53bは互いに離隔して形成されており、一対の係止部53a、53bとの間に+X方向に向かって開口する吹出開口54が形成されている。対向面部53cは、一対の係止部53a、53bとの間において、吹出開口54と対向するように形成されている。また、風向制御部材50は、供給流路31内を挿入棒65によって押し込まれる際に、挿入棒65と嵌合する嵌合部51aを有していてもよい。また、嵌合部51aは、貫通孔であってもよいし、凹部であってもよい。これにより、風向制御部材50は、供給流路31内を上端開口部33まで安定に押し出される。
【0081】
このような風向制御部材50は、図14の展開図に示すような板状の弾性部材、いわゆる板バネを折り曲げ加工することにより形成されている。
図14の展開図において、一対の係止部53a、53bは、四角形状の上面部51を中心に、一対の対向する辺それぞれから延びて形成されている。対向面部53cは、四角形状の上面部51の残りの一対の辺のうち一方から延びており、扇形形状に形成されている。嵌合部51aは、上面部51の中央部を切り抜くことで形成されており、その形状は特に限定されないが、図14では正三角形状の切り抜きにより形成されている。
四角形状の上面部51の各辺で係止部53a、53b及び対向面部53cを折り曲げることで、図13に示す風向制御部材50が形成される。
【0082】
一例であるが、図14に示す風向制御部材50は、La,Lc=10mm、Lb,Ld=4mm、Le=6.5mm、Lg=1.5mm、θh=60°に設計されている。係止部53a、53bのLa,Lc(図13のように組み立てた場合の上下方向の長さ)は、対向面部53cのLe(図13のように組み立てた場合の上下方向の長さ)よりも大きくなるように設計されている。風向制御部材50をこのように小型に形成することで、供給流路31内を通過させることができる。よって、供給流路31を導入部Rbから取り外すことなく、供給流路31の上端開口部33に風向制御部材50を配置できるため、風向制御部材50の取り付けが容易である。
【0083】
図15を用いて風向制御部材50を供給流路31の上端開口部33に取り付ける方法について説明する。風向制御部材50を供給流路31内を通過させる際に支持する挿入棒65を用意する。挿入棒65の先端には、嵌合部51aと嵌合する突出部65aが形成されている。本実施形態では、突出部65aは、正三角形状の嵌合部51aに対応して、正三角形状に突出して形成されている。
【0084】
まず、挿入棒65の先端の突出部65aに風向制御部材50の嵌合部51aを嵌め込む。
次に、風向制御部材50を挿入棒65の先端に嵌め込んだ状態で、供給流路31内に押し込み、上端開口部33まで風向制御部材50を運ぶ。
次に、上端開口部33において、係止部53a、53bは供給流路31の内面に係止させた状態で、対向面部53cは上端開口部33の外側に位置するように、挿入棒65により風向制御部材50の位置を調整する。
【0085】
次に、挿入棒65を引き抜く。これにより、風向制御部材50が供給流路31の上端開口部33をキャップ状に覆うように取り付けられる。この状態において、上面部51は、上端開口部33に対して上方に位置している。また、側面部53は、上端開口部33に向かって下方に延びている。特に、係止部53a、53bは、その弾性力により外側に向けて付勢されており、上端開口部33の内面を押圧することで上端開口部33の内面に係止している。これにより、供給流路31の上端開口部33に容易に風向制御部材50を取り付けることができる。
【0086】
また、係止部53a、53bの上下方向の長さLa,Lcは対向面部53cの上下方向の長さLeよりも大きいため、風向制御部材50の位置を調整することで、上記の通り、係止部53a、53bを上端開口部33の内面に係止させた状態で、外側への付勢力により対向面部53cを上端開口部33の外側に位置させることができる。つまり、風向制御部材50を上端開口部33まで到達させた場合に、係止部53a、53bよりも先に対向面部53cが上端開口部33を抜けて供給流路31の外側に位置する。これにより、風向制御部材50が上端開口部33に取り付けられた後も、風向制御部材50の上端開口部33の内部への落下を阻止できる。
【0087】
そして、係止部53a、53bの間に、かつ対向面部53cに対向する位置に吹出開口54が形成される。
風向制御部材50は、図11図12図15に示すように、+X方向側に吹出開口54が向くように配置される。よって、対向面部53cは-X方向側に面しており、係止部53a、53bはそれぞれ+Y及び-Y方向において対向する。
【0088】
このような構成により、風向制御部材50は、図11図12図15等に示すように、供給流路31の下方から上方に向かって流れた処理対象ガスは、上面部51、係止部53a、53b、対向面部53cが無い部分、つまり吹出開口54から吹き出すように誘導される。よって、処理対象ガスは、吹出開口54から、+X及び-X方向(幅方向)の長さが長いL6側、つまり、+X方向側に向かって水平面方向に沿って吹き出す。このように処理対象ガスは、仕切り体41の下面に向かうように吹き出される訳ではなく、水平面方向に吹き出され、処理対象ガスの吹き出し方向である水平面方向の空間長さ(L6)が、吹き出し方向以外の空間長さの少なくとも一部(例えばL5、L7)よりも大きく構成されている。これにより、処理対象ガスが仕切り体41及び導入部Rb等と接触するときの流速を低下させ、旋回流の発生の抑制、さらには、粉粒が導入部Rbに落下することによる供給流路31の閉塞を抑制できる。
【0089】
また、風向制御部材50は板バネから形成されているため、折り曲げ加工が容易である。また、弾性変形を利用して供給流路31内に風向制御部材50を通過させ、供給流路31の上端開口部33に容易に配置できる。例えば図11図12に示すように、延長部分35を有するように供給流路31が屈曲している場合には、風向制御部材50を弾性変形させて屈曲部を通過させることができる。よって、風向制御部材50の取り付けが容易である。
なお、上記では、風向制御部材50は、供給流路31内を通過させて上端開口部33の下方から取り付ける。しかし、風向制御部材50は、上端開口部33の上方から供給流路31に取り付けることもできる。また、風向制御部材50の上面部51は、仕切り体41に接触していてもよい。
【0090】
(3)実験結果
(3-1)旋回流の発生及び影響の抑制
(a)旋回流の発生の抑制
旋回流は、供給流路31から導入部Rbに導入された処理対象ガスが、ある程度流速の速い状態で仕切り体41及び導入部Rbの内壁等と接触することにより生じ易い。そこで、本実施形態では、上述の通り、仕切り体41及び導入部Rbの内壁等と接触する際の処理対象ガスの流速を低下させる構成を採用した。流速を低下させることにより旋回流の発生を抑制できる点について以下に実験結果を示して説明する。
【0091】
図16は、従来の脱硫器11の触媒容器60の構成を示すものである。従来の触媒容器60は、本実施形態の触媒容器30と同様に、複数の孔73を有する仕切り体71と、脱硫触媒11cを収容する触媒収容部Ruと、導入部Rbと、供給流路61と、排出流路69とを備える。従来の触媒容器60では、供給流路61は上下方向に延びた状態で、-X方向側において導入部Rbと接続されている。また、仕切り体71は、水平面に沿って形成されており、仕切り体71の下面と導入部Rbの上面との間の高さは一定である。
【0092】
図17は、図16の従来の触媒容器60の正面図において、ガス流量2.65L/min及びガス流量1.0L/minそれぞれで供給流路61から導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の温度分布を示している。触媒容器60内の触媒は、所定の処理温度に加熱されており、供給流路61からは低温の処理対象ガスが導入部Rb及び触媒収容部Ruに導入される。
【0093】
図17に示すように、ガス流量2.65L/minで供給流路61から導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の方が、ガス流量1.0L/minの場合よりも低温の温度分布の広がりが大きいことが分かる。つまり、流量が大きいほど、触媒収容部Ruに流速が大きい状態で処理対象ガスが導入され、処理対象ガスと仕切り体41及び導入部Rbとの接触抵抗が大きく、旋回流が発生する可能性が高いことが分かる。
【0094】
図18は、図3の触媒容器の側面図において、ガス流量2.65L/min及びガス流量1.0L/minそれぞれで供給流路61から導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の速度ベクトルを示している。
供給流路61から処理対象ガスが導入部Rbに導入されているが、ガス流量2.65L/minの場合には、流速の速い領域Aの部分が仕切り体71に向かって勢いよく衝突し、領域B及びCにおいて旋回流が生じている。一方、ガス流量1.0L/minの場合には、領域Aの処理対象ガスが仕切り体71に向かっているものの、流速が遅いため仕切り体71との衝突の大きさが小さい。よって、領域B及びCにおいて旋回流はほとんど生じていない。
【0095】
図19は、図16の従来の触媒容器60の正面図において、ガス流量2.65L/min及びガス流量1.0L/minそれぞれで供給流路61から導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の流跡線を示している。
供給流路61から処理対象ガスが導入部Rbに導入されているが、ガス流量2.65L/minの場合には、流速の速い領域Aの部分が仕切り体71に向かって勢いよく衝突し、領域Dにおいて旋回流が生じている。なお、領域Eは、導入部Rbの空間が領域Dよりも+X及び-X方向において広く、処理対象ガスと導入部Rbとの接触抵抗が小さい。よって、領域Eでは旋回流は生じていない。
【0096】
一方、ガス流量1.0L/minの場合には、領域Aの処理対象ガスが仕切り体71に向かっているものの、流速が遅いため仕切り体71との衝突の大きさが小さい。よって、領域Dにおいて旋回流はほとんど生じていない。領域Dよりも空間が広い領域Eでも旋回流はほとんど生じていない。
【0097】
以上の実験結果から、仕切り体41及び導入部Rbの内壁等と接触する際の処理対象ガスの流速を低下させる本実施形態の構成(仕切り体41の検討例、供給流路31の検討例及び風向制御部材50の検討例等)を採用することで、旋回流の発生を抑制できることが分かった。
【0098】
(b)旋回流の影響の抑制
(b1)図5の例
次に、図5の例における触媒容器30について、各部の寸法及び仕切り体41の傾斜角度の一例についてさらに説明する。
図5の例において、仕切り体41は、前述の通り、位置41cから位置41bに向かって一方向に傾斜しており、傾斜角度θ=30°である。このような傾斜角度を有するように仕切り体41が配置される導入部Rbは、L1=112mm、L2=20mm、L4=200mmである。また、導入部Rbにおいて、-X方向側の端部からの長さをL5とするとL5=40mmであり、L6=L4-L5=160mmである。
なお、容器本体R(触媒収容部Ru及び導入部Rbが含まれる)の+Y及び-Y方向(奥行方向)の長さをWとすると、W=20mmである。また、仕切り体41の開口率=23%である。
【0099】
上記の形状の触媒容器30(仕切り体41の傾斜角度θ=30°)を本実施形態の構成として旋回流の状態を確認する実験を行った。また、比較例として、仕切り体41の傾斜角度θ=15°、L1=63mmとした触媒容器を準備し、旋回流の状態を確認する実験を行った。比較例のその他の構成、例えばL2=20mm、L4=200mm、L5=40mm、L6=160mm、W=20mm、開口率=23%は、上記図5の本実施形態の構成と同様である。
【0100】
図20は、触媒容器の正面方向視であり、図5の本実施形態の触媒容器30(仕切り体41の傾斜角度θ=30°)、及び、比較例の触媒容器(仕切り体41の傾斜角度θ=15°)それぞれにおける、処理対象ガスの流跡線が示されている。いずれの触媒容器においても、処理対象ガスはガス流量2.65L/minで供給流路31から導入されている。
【0101】
図20に示すように、図5の本実施形態の触媒容器30では、-X方向に向かうほど仕切り体41が傾斜角度θ=30°で上がり傾斜となっている。よって、供給流路31に対して+X方向側の領域Fよりも-X方向側の領域Gの方が、供給流路31の上方の空間がかなり広くなっている。これにより、領域Gでは旋回流が発生しているものの、旋回流は仕切り体41に衝突していないか、あるいは、旋回流は流速が低下した状態で仕切り体41に向かっている。図20においては、図5の本実施形態の触媒容器30(仕切り体41の傾斜角度θ=30°)内の処理対象ガスの流速は、仕切り体41及び導入部Rb等と接触するときに低下している。そのため、旋回流の+Z方向の先端であるGaは仕切り体41に対して-Z方向側にあり、仕切り体41に接触していない。これにより、旋回流によって触媒収容部Ru内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられ、導入部Rbに落下するのを抑制でき、粉粒が供給流路31に導入されて供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
【0102】
比較例の触媒容器では、-X方向に向かうほど仕切り体41が傾斜角度θ=15°で上がり傾斜となっているが、図5の本実施形態の触媒容器30に比べて上がり傾斜の程度は小さい。よって、供給流路31に対して+X方向側の領域Fよりも-X方向側の領域Gの方が、供給流路31の上方の空間が広いものの、当該空間を広く確保できていない。よって、領域Gで発生している旋回流が仕切り体41に衝突している。図20においては、旋回流の+Z方向の先端であるGbは仕切り体41に接触している。そのため、旋回流によって触媒収容部Ru内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられて導入部Rbに落下し、粉粒が供給流路31を閉塞すると考えられる。
以上の結果から、仕切り体41の傾斜角度θは20°~45°であるのが好ましい。
【0103】
(b2)図6の例
次に、図6の例における触媒容器30について、各部の寸法及び仕切り体41の傾斜角度の一例についてさらに説明する。
図6の例では、仕切り体41が水平面である導入部Rbの上面に対して二方向に傾斜している点が図5の例と異なる。仕切り体41の傾斜角度θ=30°、L1=112mm、L2=20mm、L4=200mm、L5=40mm、L6=160mm、W=20mm、開口率=23%で図5の例と同じである。なお、L3は、112mm未満の任意の値であり、例えば100mmとした。
【0104】
図6の例では、図5の例と同様に、処理対象ガスの旋回流は仕切り体41に衝突していないか、あるいは、旋回流は流速が低下した状態で仕切り体41に向かうと考えられる。よって、旋回流によって触媒収容部Ru内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられ、導入部Rbに落下するのを抑制でき、粉粒が供給流路31に導入されて供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
【0105】
(b3)図7の例
(b3-1)図7Aの例
次に、図7Aの例における触媒容器30及び仕切り体41について説明する。図7Aの例では、仕切り体41は、水平面である導入部Rbの上面に対して2段の階段状に形成されている。L1/L2=3.0以上であり、L1は触媒容器30の+Z及び-Z方向の長さ未満である。例えば、L1-L2=80mm以上150mm以下である。一例として、L1-L2=100mmであり、L2=20mmとすると、L1は120mmである。図7Aのその他の構成、例えばL4=200mm、L5=40mm、L6=160mm、W=20mm、開口率=23%は、上記図5の本実施形態の構成と同様である。
【0106】
上記の形状の触媒容器30(L1-L2=100mm、L1=120mm、L2=20mm)を本実施形態の構成として旋回流の状態を確認する実験を行った。また、比較例として、L1-L2=50mm、L2=20mm、L1=70mmとした触媒容器を準備し、旋回流の状態を確認する実験を行った。比較例のその他の構成、例えばL4=200mm、L5=40mm、L6=160mm、W=20mm、開口率=23%は、上記図7Aの本実施形態の構成と同様である。
【0107】
図21は、触媒容器の正面方向視であり、図7Aの本実施形態の触媒容器30(L1-L2=100mm、L1=120mm、L2=20mm)、及び、比較例の触媒容器(L1-L2=50mm、L2=20mm、L1=70mm)それぞれにおける、処理対象ガスの流跡線が示されている。いずれの触媒容器においても、処理対象ガスはガス流量2.65L/minで供給流路31から導入されている。
【0108】
図7Aの本実施形態の触媒容器30では、-X方向側の位置41a,41cを含む仕切り体41の下面は、+X方向側の位置41e,41bを含む仕切り体41の下面に対して+Z方向に100mm上方に位置した状態で供給流路31の上方に位置している。よって、供給流路31に対して+X方向側の領域Jよりも-X方向側の領域Hの方が、供給流路31の上方の空間がかなり広くなっている。これにより、領域Hでは旋回流が発生しているものの、旋回流は仕切り体41に衝突していないか、あるいは、旋回流は流速が低下した状態で仕切り体41に向かっている。図21においては、図7Aの本実施形態の触媒容器30(L1-L2=100mm、L1=120mm、L2=20mm)では、処理対象ガスの流速は、仕切り体41及び導入部Rb等と接触するときに低下している。そのため、旋回流の+Z方向の先端であるHaは仕切り体41に対して-Z方向側にあり、仕切り体41に接触していない。これにより、旋回流によって触媒収容部Ru内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられ、導入部Rbに落下するのを抑制でき、粉粒が供給流路31に導入されて供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
【0109】
比較例の触媒容器では、-X方向側の位置41a,41cを含む仕切り体41の下面は、+X方向側の位置41e,41bを含む仕切り体41の下面に対して+Z方向に50mm上方に位置した状態で供給流路31の上方に位置している。よって、比較例の触媒容器では、供給流路31に対して+X方向側の領域Jよりも-X方向側の領域Hの方が広いものの、供給流路31の上方の空間である領域Hの空間は、図7Aの本実施形態の触媒容器30の場合に比べて狭くなっている。よって、供給流路31の上方の空間を広く確保できていない。そのため、領域Hで発生している旋回流が仕切り体41に衝突している。図21においては、旋回流の+Z方向の先端であるHbは仕切り体41に接触している。よって、旋回流によって触媒収容部Ru内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられて導入部Rbに落下し、粉粒が供給流路31を閉塞すると考えられる。
【0110】
以上の結果から、触媒容器30において、L1/L2=3.0以上であり、L1は触媒容器30の+Z及び-Z方向の長さ未満であることが好ましい。また、L1-L2=0mm以上80mm未満の場合は、供給流路31の上方である領域Hの空間が狭く旋回流が仕切り体41に接触するので、L1-L2=80mm以上150mm以下であることが好ましい。
【0111】
(b3-2)図7Bの例
図7Bの例では、仕切り体41は、水平面である導入部Rbの上面に対して3段の階段状に形成されている。この例において、例えばL1-L2=20mm以上、L2-L3=20mm以上であることが好ましい。この場合、-方向側から、供給流路31が設けられている-X方向側にむかうほど、導入部Rbの空間が広くなる。結果として、供給流路31の上方の空間を広く確保でき、上述の図7Aと同様に、粉粒が供給流路31に導入されて供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
なお、図7Aの場合と同様に、L1/L2=3.0以上であり、L1は触媒容器30の+Z及び-Z方向の長さ未満であることが好ましい。また、L1-L2=80mm以上150mm以下であることが好ましい。
【0112】
(3-2)風向制御部材の取り付けによる供給流路の閉塞抑制
次に、脱硫器11の供給流路31の上端開口部33に風向制御部材50を採用した場合、供給流路31の閉塞が抑制される点について実験結果を示して説明する。
図22図23は、供給流路31側から導入部Rb及び仕切り体41を見た場合の写真である。図22の供給流路31には風向制御部材50が取り付けられていない。一方、図23の供給流路31には風向制御部材50が取り付けられている。
【0113】
図22図23は、粉粒である異物αを除去した後に脱硫器11を稼働した時の供給流路31の状態を時間経過とともに示している。供給流路31に風向制御部材50が取り付けられていない場合は、図22に示すように時間の経過とともに、細分化触媒及び硫化銅などの異物αが供給流路31の内壁に付着し、閉塞していく様子が分かる。一方、供給流路31に風向制御部材50が取り付けられている場合は、図23に示すように時間が経過しても異物が供給流路31の内壁に付着するのが抑制されているのが分かる。
よって、供給流路31に風向制御部材50が取り付けられることにより、供給流路31の閉塞を抑制できていることが分かった。
【0114】
〔他の実施形態〕
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0115】
(1)上記実施形態では、脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の各処理部の触媒容器30が同様の構成であると説明した。しかし、脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の触媒容器30の少なくとも1つが上記実施形態で説明した構成を採用していればよい。
【0116】
(2)上記実施形態では、触媒容器30は直方体状であるが、供給流路31から導入部Rbに吹き出された処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さを、吹出方向以外よりもある程度確保することができれば、触媒容器30の形状はこれに限定されない。例えば、触媒容器30は、正方形状、円筒形状及び楕円形状等であってもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、供給流路31は、導入部Rbの下面のうち周縁に近い位置に接続されている。しかし、供給流路31から導入部Rbに吹き出された処理対象ガスの吹き出し方向の空間長さをある程度確保することができればよく、供給流路31の接続位置はこれに限定されない。例えば、供給流路31は、導入部Rbの下面の中央部等、導入部Rbの下面のうちいずれかの位置に接続されていればよい。
【0118】
また、上記実施形態では、排出流路39は、触媒容器30の上面に接続されている。しかし、触媒容器30で所定の処理が施されたガスを排出できればよく、排出流路39の接続位置はこれに限定されない。例えば、排出流路39は、触媒容器30の上部の側面等に接続されていてもよい。
【0119】
(3)上記実施形態では、風向制御部材50は、一対の係止部53a、53bを有している。しかし、風向制御部材50を供給流路31の上端開口部33に係止できればよく、係止部53a、53bは一対でなくてもよく、1の係止部から形成されていてもよい。さらに、係止部53a、53bの数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0120】
また、上記実施形態において、対向面部53cの上下方向の長さは、一対の係止部53a、53bよりも短い。しかし、対向面部53cの上下方向の長さは一対の係止部53a、53bと同程度であってもよいし、長くてもよい。この場合、一対の係止部53a、53b及び対向面部53cは互いに分離されておらず一体の側面部53を構成していてもよい。そして、側面部53が全て供給流路31の上端開口部33の内面に係止されるように構成されていてもよい。
また、上面部51の形状は四角形状に限られず、例えば円形状であってもよい。
【0121】
(4)上記実施形態では、燃料電池として固体高分子形燃料電池を例に挙げた。しかし、燃料電池20は、ジルコニア系及びセレン系等のセラミックス膜をアノードとカソードで挟持したセルを積層して構成される固体酸化物形燃料電池であってもよい。
【0122】
(5)上記実施形態では、脱硫器11を設けている。しかし、原燃料として硫黄を含まない、例えばプロパン等の炭化水素系ガスやアルコールなどが用いられる場合には、ガス処理装置10から脱硫器11を省略してもよい。よって、上記実施形態において、ガス処理装置10の処理部を、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17から構成することもできる。
【0123】
さらに、水蒸気改質後の改質ガス中に含まれる一酸化炭素濃度が低い場合には、ガス処理装置10からCO変成器15を省略してもよい。よって、上記実施形態において、ガス処理装置10の処理部を、改質器13及びCO選択酸化反応器17から構成することもできる。
【0124】
(6)上記実施形態のガス処理装置10には、CO変成器15とCO選択酸化反応器17との間に水蒸気凝縮分離器(図示せず)が設けられていてもよい。水蒸気凝縮分離器は、改質器13で水蒸気改質された改質ガスに含まれる水蒸気を凝縮分離して除去する。水蒸気を除去することで、各処理部を接続するラインの閉塞を抑制できる。
【0125】
また、水蒸気凝縮分離器を経て水蒸気が除去された改質ガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。また、改質器13を経て改質された改質ガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。また、CO変成器15を経たガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。さらには、CO選択酸化反応器17を経たガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。
【0126】
(7)上記実施形態のガス処理装置10で用いる原燃料ガスが気体であり、圧縮が必要な場合は、脱硫器11の上流側に圧縮機が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0127】
11c~17c :触媒
30 :触媒容器
31 :供給流路
31a :吹出開口
31b :切欠開口
31c :上下部分
31d :水平部分
33 :上端開口部
41 :仕切り体
43 :孔
50 :風向制御部材
51 :上面部
53 :側面部
53a、53b :係止部
53c :対向面部
54 :吹出開口
Rb :導入部
Ru :触媒収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23