(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】触媒容器
(51)【国際特許分類】
C01B 3/38 20060101AFI20240325BHJP
C01B 3/48 20060101ALI20240325BHJP
B01J 8/02 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C01B3/38
C01B3/48
B01J8/02 E
(21)【出願番号】P 2020024589
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019027659
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松本 明
(72)【発明者】
【氏名】桝本 幸嗣
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-245709(JP,A)
【文献】特表2003-535161(JP,A)
【文献】特開平10-323553(JP,A)
【文献】特開2003-190729(JP,A)
【文献】特開2003-027920(JP,A)
【文献】特開2003-001090(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-58
B01J 8/00-46
H01M 8/06-0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の触媒が収容され、処理対象ガスが通流可能な触媒容器であって、
前記処理対象ガスが下方から上方に向かって通流する容器本体と、
前記容器本体の下面に接続され、前記処理対象ガスを前記容器本体に供給する供給流路とを備え、
前記容器本体は、
前記供給流路が一部に接続され、前記処理対象ガスが導入される導入部と、
前記導入部に対して上方に位置し、前記粒状の触媒を収容する触媒収容部と、
前記導入部と前記触媒収容部とを区画する仕切り体とを有し、
前記仕切り体は、前記粒状の触媒の前記導入部への落下を阻止するとともに、前記処理対象ガスを前記導入部から前記触媒収容部へと通過させる複数の開口部を有しており、
前記供給流路は、前記導入部と面する前記仕切り体の下面と交差する上下方向に延びており、
前記仕切り体は、前記供給流路が前記導入部に接続された部分の上方に対応する第1通流部分と、前記第1通流部分以外の第2通流部分とを有し、
前記第1通流部分の開口率は、前記第2通流部分の開口率よりも大きい、触媒容器。
【請求項2】
上下方向視において、前記供給流路の中心位置に近いほど徐々に開口率が大きくなる、請求項1に記載の触媒容器。
【請求項3】
前記供給流路からの前記処理対象ガスの流速が速いほど、前記第1通流部分の開口率及び面積の少なくともいずれかが大きく設計されている、請求項1又は2に記載の触媒容器。
【請求項4】
前記第1通流部分では、前記第2通流部分に比べて、前記複数の開口部のピッチが小さい構成であるか、及び前記複数の開口部の開口径が大きい構成であるかの少なくともいずれかで設計されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池に供給する燃料ガスを生成する燃料改質システムが開示されている。燃料改質システムは、原燃料である処理対象ガスの供給を受け、触媒を用いて当該処理対象ガスに所定の処理を施すガス処理装置を有している。触媒はガス処理装置に収容されているが、装置の起動及び停止の繰り返しによって、触媒が収容された空間を形成する部材が膨張収縮し、当該空間に収容された粒状の触媒が圧壊して細分化する。細分化した細分化触媒が粒状の触媒の隙間に溜まると、処理対象ガスの通流が妨げられる。
【0003】
そこで、特許文献1のガス処理装置では、触媒収容空間を、粒状の触媒を収容する上方の触媒収容部分と、細分化触媒を収容する下方の細分化触媒収容部分とに分離する。そして、触媒収容空間への処理対象ガスの供給を停止した状態で、加振手段により触媒収容空間の触媒を振動させる。これにより、処理対象ガスの流れにのって下流側に細分化触媒が流動するのを防止しつつ、粒状の触媒間に溜まっている細分化触媒を細分化触媒収容部分にふるい落とすことができる。よって、触媒収容空間を通流する処理対象ガスに偏流が生じるのを十分に抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のガス処理装置では、細分化触媒を下方の細分化触媒収容部分にふるい落とすことができるものの、ガス処理装置の下方に接続された処理対象ガスが通流する流路が、細分化触媒等によって閉塞する可能性がある。よって、処理対象ガスを触媒収容空間に通流させることができず、触媒による処理に供することができない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、触媒収容空間に処理対象ガスを供給する流路の閉塞を抑制可能な触媒容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る触媒容器の特徴構成は、
粒状の触媒が収容され、処理対象ガスが通流可能な触媒容器であって、
前記処理対象ガスが下方から上方に向かって通流する容器本体と、
前記容器本体の下面に接続され、前記処理対象ガスを前記容器本体に供給する供給流路とを備え、
前記容器本体は、
前記供給流路が一部に接続され、前記処理対象ガスが導入される導入部と、
前記導入部に対して上方に位置し、前記粒状の触媒を収容する触媒収容部と、
前記導入部と前記触媒収容部とを区画する仕切り体とを有し、
前記仕切り体は、前記粒状の触媒の前記導入部への落下を阻止するとともに、前記処理対象ガスを前記導入部から前記触媒収容部へと通過させる複数の開口部を有しており、
前記供給流路は、前記導入部と面する前記仕切り体の下面と交差する上下方向に延びており、
前記仕切り体は、前記供給流路が前記導入部に接続された部分の上方に対応する第1通流部分と、前記第1通流部分以外の第2通流部分とを有し、
前記第1通流部分の開口率は、前記第2通流部分の開口率よりも大きい点にある。
【0008】
処理対象ガスは、供給流路を介して容器本体の下方から導入部に導入される。導入部に導入された処理対象ガスは、仕切り体の複数の開口部を通過して触媒収容部へと導入され、触媒により所定の処理を施される。このように処理対象ガスは、供給流路から導入部及び触媒収容部へと導入されるが、仕切り体との接触及び導入部の内壁との接触により導入部内で処理対象ガスの旋回流が発生する場合がある。発生した旋回流が、仕切り体の複数の開口部を通過して触媒収容部に導入されると、粉粒が巻き上がり、仕切り体の複数の開口部を介して導入部に落下し、供給流路を閉塞させる。粉粒としては、触媒が細分化した細分化触媒、及び粒状の触媒と処理対象ガスとの反応物等が挙げられる。
【0009】
なお、触媒容器が備えられた装置の起動及び停止等により触媒容器に膨張及び収縮の力が加わるが、これにより触媒収容部に収容された触媒が圧壊して細分化し、細分化触媒となる。
【0010】
上記特徴構成によれば、上下方向に延びる供給流路からは、処理対象ガスが上方の仕切り体に向かって吹き出され、仕切り体の第1通流部分に向かう。第1通流部分では第2通流部分に比べて比較的に開口率が大きいため、処理対象ガスが導入部から触媒収容部に導入され易い。
【0011】
ここで、供給流路から吹き出されて流速が速い状態で処理対象ガスが上方の仕切り体に到達した場合に、処理対象ガスが仕切り体を通過し難い状態であると、処理対象ガスが仕切り体及び導入部等と接触することで旋回流が発生する場合がある。しかし、前述の通り、第1通流部分の開口率が比較的に大きく、処理対象ガスが仕切り体を通過し導入部から触媒収容部に導入され易いため、処理対象ガスと仕切り体及び導入部等との衝突を小さくできる。これにより、旋回流の発生を抑制できる。よって、旋回流の触媒収容部への導入が抑制され、触媒収容部内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられ、導入部に落下するのを抑制できる。さらには、落下した粉粒が供給流路に導入されて供給流路が閉塞するのを抑制できる。
【0012】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
上下方向視において、前記供給流路の中心位置に近いほど徐々に開口率が大きくなる点にある。
【0013】
供給流路の中心位置に近いほど、供給流路から仕切り体に向かう処理対象ガスの流速が速い。上記特徴構成によれば、供給流路の中心位置に近いほど徐々に開口率が大きくなるように第1通流部分が形成されている。よって、流速の速い処理対象ガスを開口率の大きい第1通流部分から触媒収容部に導入することで、処理対象ガスと仕切り体及び導入部等との衝突を小さくし、旋回流の発生を抑制できる。これにより、旋回流の触媒収容部への導入を抑制し、触媒収容部から粉粒が導入部に落下することによって供給流路が閉塞するのを抑制できる。
【0014】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記供給流路からの前記処理対象ガスの流速が速いほど、前記第1通流部分の開口率及び面積の少なくともいずれかが大きく設計されている点にある。
【0015】
処理対象ガスの流速が速いほど、仕切り体及び導入部等との衝突が大きく旋回流が発生し易い。上記特徴構成によれば、処理対象ガスの流速が速いほど第1通流部分の開口率及び面積の少なくともいずれかが大きいため、流速の速い処理対象ガスをより広い面積の範囲において開口率が大きい第1通流部分から触媒収容部に導入できる。これにより、旋回流の発生を抑制し、旋回流の触媒収容部への導入を抑制できる。
【0016】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記第1通流部分では、前記第2通流部分に比べて、前記複数の開口部のピッチが小さい構成であるか、及び前記複数の開口部の開口径が大きい構成であるかの少なくともいずれかで設計されている点にある。
【0017】
上記特徴構成のように、開口率は開口部のピッチ及び開口径の少なくともいずれかにより簡単に調整可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ガス処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図3】+X及び-X方向からの触媒容器の側面図である。
【
図4】+X及び-X方向からの別の触媒容器の側面図である。
【
図8】従来の触媒容器の全体構成を示す斜視図である。
【
図9】従来の触媒容器に異なる流速で処理対象ガスを導入した場合の温度分布の違いを示す説明図である。
【
図10】従来の触媒容器に異なる流速で処理対象ガスを導入した場合の速度ベクトルの違いを示す説明図である。
【
図11】従来の触媒容器に異なる流速で処理対象ガスを導入した場合の流跡線の違いを示す説明図である。
【
図12】
図8の従来の触媒容器(開口率=22.7%)と、
図5,6の本実施形態の触媒容器30(第1通流部分I=開口率40.3%、第2通流部分II=開口率22.7%)それぞれの正面図において、ガス流量2.65L/minで供給流路から導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の流跡線の違いを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明に係る触媒容器を水素含有ガス(燃料ガス)生成用のガス処理装置に適用した場合の実施形態を説明する。
【0020】
(1)ガス処理装置の全体構成
ガス処理装置10の全体構成について
図1を用いて説明する。
図1に示すように、水素含有ガス生成用のガス処理装置10は、処理対象ガスに所定の処理を施す処理部として、炭化水素系の原燃料ガス(例えば、13A等の天然ガスベースの都市ガス)に対して脱硫処理を施す脱硫器11と、脱硫器11から供給される脱硫後の原燃料ガスを改質して改質ガスを生成する改質器13と、改質ガス中の一酸化炭素ガスを二酸化炭素ガスに変成するCO変成器15と、改質済みの改質ガスに含まれる一酸化炭素ガスを選択的に酸化するCO選択酸化反応器17とを備えている。
なお、本実施形態では、原燃料ガスに硫黄が含まれる場合を例示しており、原燃料ガスを脱硫処理するために脱硫器11が設けられている。
【0021】
脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17は、通流する各ガスに処理を施すための触媒を収容する触媒収容部Ruを有する触媒容器30(
図2等)から構成されている。触媒容器30の構成については後述する。なお、
図1における脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の接続配管の構成は、簡略化して記載している。
【0022】
脱硫器11の触媒収容部Ruには、脱硫処理用の脱硫触媒11cが収容されている。
そして、脱硫器11は、脱硫触媒11cを所定の脱硫処理用の脱硫処理温度(例えば200~270℃)に昇温させた状態で、原燃料ガスを脱硫する。この場合、改質器13を経た改質ガスの一部をリサイクルガスとして脱硫器11に供給してもよい。これにより、リサイクルガス中の水素ガスにより原燃料ガス中の硫黄化合物が水素化されると共に、脱硫触媒11cがその水素化物を吸着して脱硫する。なお、脱硫触媒11cは、例えば、ニッケル、コバルト、モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、クロム等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0023】
改質器13の触媒収容部Ruには、改質処理用の改質触媒13cが収容されている。
改質器13には、脱硫器11により脱硫後の原燃料ガスが供給されるとともに、水蒸気化された改質水が供給される。改質器13は、改質触媒13cを所定の改質処理用の改質処理温度(例えば600~700℃の範囲)に昇温させた状態で、脱硫後の原燃料ガスを水蒸気改質する。
原燃料ガスがメタンガスを主成分とする天然ガスである場合、改質器13は、下記の反応式によりメタンガスを水蒸気と反応させて改質処理することで改質ガスを生成する。下記反応式では、改質ガスには、水素ガス、一酸化炭素ガス及び二酸化炭素ガスが含まれる。なお、改質触媒13cは、ルテニウム、ニッケル、白金等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0024】
CH4+2H2O→CO2+4H2
CH4+H2O→CO+3H2
【0025】
CO変成器15の触媒収容部Ruには、変成処理用の変成触媒15cが収容されている。
CO変成器15は、変成触媒15cを所定の変成処理用の変成処理温度(例えば150~250℃の範囲)に昇温させた状態で、下記の反応式にて改質ガス中の一酸化炭素ガスを水蒸気と反応させて、二酸化炭素ガスに変成させる。なお、変成触媒15cは、白金、ルテニウム、ロジウム等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0026】
CO+H2O→CO2+H2
【0027】
CO選択酸化反応器17の触媒収容部Ruには、選択酸化処理用の選択酸化触媒17cが収容されている。
CO選択酸化反応器17は、選択酸化触媒17cを所定の選択酸化処理用の選択酸化処理温度(例えば、80~100℃の範囲)に昇温させた状態で、変成処理後の改質ガス中に残っている一酸化炭素ガスを選択酸化させる。これにより、CO選択酸化反応器17は、燃料電池20に供給可能な水素含有ガス(燃料ガス)を生成する。水素含有ガスは、一酸化炭素ガス濃度の低い(例えば10ppm以下)水素リッチな水素含有ガスとして生成される。なお、選択酸化触媒17cは、白金、ルテニウム、ロジウム等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0028】
CO選択酸化反応器17を出た水素含有ガスは、燃料電池20に供給される。燃料電池20は、供給された水素含有ガスと空気を反応させて発電する。燃料電池20は、水素含有ガスを燃料ガスとして発電できる装置であれば特に限定されず、例えば固体高分子膜からなる電解質層をアノードとカソードで挟持したセルを積層して構成される固体高分子形燃料電池である。
【0029】
(2)触媒容器
次に、触媒容器30について説明する。上述の通り脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の各処理部は、それぞれ触媒容器30を有しており、各処理部で所定の処理を行うために所定の触媒11c、13c、15c、17cが収容されている。触媒容器30の構成は各処理部で構成が同様であるため、以下では脱硫器11の触媒容器30を例に挙げて説明する。
【0030】
図2、
図3に示すように、脱硫器11の触媒容器30は、処理対象ガスが下方から上方に向かって通流する容器本体Rと、容器本体Rの下面に接続され、処理対象ガスを容器本体に供給する供給流路31とを備えている。触媒容器30には、さらに触媒により所定の処理が施された処理済みの処理対象ガスが排出される排出流路39が容器本体Rの上面に接続されていてもよい。
【0031】
本実施形態では、容器本体Rは直方体状である。容器本体Rは、
図2、
図3等の+X及び-X方向(以下、幅方向という場合もある)が長手方向であり、長手方向の長さはL2である。また、+Y及び-Y方向(以下、奥行方向という場合もある)が短手方向であり、短手方向の長さはW1(L2>W1)である。また、+Z及び-Z方向(以下、上下方向という場合もある)が高さ方向であるように形成されている。以下では、+X及び-X方向と+Y及び-Y方向が含まれる平面を水平面とし、水平面に沿う方向を水平面方向という。そして、水平面方向における容器本体Rの形状は概ね長方形状である。
【0032】
容器本体Rは、容器本体R内の空間を上下に区画する仕切り体41と、仕切り体41よりも上側の直方体状の空間であり、粒状の触媒である脱硫触媒11cを収容する触媒収容部Ruと、仕切り体41よりも下側の直方体状の空間であり、供給流路31が接続される導入部Rbとを備えている。触媒収容部Ruは、長手方向である+X及び-X方向の長さがL2であり、短手方向である+Y及び-Y方向の長さがW1(L2>W1)であり、高さは任意であり、例えばL2及びW1よりも大きい。導入部Rbは、長手方向の長さがL2であり、短手方向の長さがW1(L2>W1)であり、高さがL2よりも小さい。触媒収容部Ruは導入部Rbよりも広い空間に形成されており、より多くの触媒を収容可能となっている。
【0033】
仕切り体41は、板状部材から形成されており、複数の孔(開口部の一例)43を有している。複数の孔43は、触媒収容部Ruに収容された粒状の触媒が導入部Rbに落下するのを阻止するとともに、処理対象ガスが導入部Rbから触媒収容部Ruに通過可能な大きさに形成されている。
また、触媒収容部Ruは導入部Rbよりも広い空間に形成されており、より多くの触媒を収容可能となっている。
【0034】
供給流路31は、筒状部材であり、導入部Rbと接続部分を介して連通している。また、供給流路31は、少なくとも導入部Rbとの接続部分の近傍においては、+Z及び-Z方向(上下方向)に延びている。そして、供給流路31は、供給流路31の下方から導入された処理対象ガスを導入部Rbに向かって上方向に吹き出すように導入部Rbに接続されている。
【0035】
供給流路31は、導入部Rbの下面のうち周縁に近い位置に接続されている。本実施形態では、供給流路31は、導入部Rbの+X及び-X方向(幅方向)のうち、中央部よりも-X方向側に接続されている。また、本実施形態では、
図3に示すように、導入部Rbの下面は、-Yから+Y方向に向かって同一の高さの水平面である。しかし、
図4に示すように、導入部Rbの下面は、-Yから+Y方向に向かって高さが高くなるように傾斜していてもよい。これにより、供給流路31を導入部Rbの下面に溶接等により接続することが容易である。
【0036】
本実施形態では、導入部Rbには、導入部Rbの下面に接続された上下方向に延びる供給流路31から、下方から上方に向かって処理対象ガスが吹き出される。このような構成において、仕切り体41は、第1通流部分I及び第2通流部分IIを有する。第1通流部分Iは、仕切り体41の面内のうち、供給流路31が導入部Rbに接続された部分の上方に対応する部分に位置する。第1通流部分Iの開口率は、当該第1通流部分I以外の第2通流部分IIの開口率よりも大きく設計されている。よって、第2通流部分IIよりも開口率が大きい第1通流部分Iは、処理対象ガスの通過量が第2通流部分IIよりも大きい。
なお、開口率は、開口している部分と閉塞している部分との面積比で表される。
【0037】
ここで、処理対象ガスは、供給流路31から導入部Rb及び触媒収容部Ruへと導入されるが、仕切り体41との接触及び導入部Rbの内壁との接触により導入部Rb内で処理対象ガスの旋回流が発生する場合がある。そして、流速がある程度速い状態で処理対象ガスが仕切り体41及び導入部Rbの内壁等と接触することで、旋回流は発生し易くなる。発生した旋回流が、仕切り体41の複数の孔43を通過して触媒収容部Ruに導入されると、粉粒が巻き上がり、仕切り体41の複数の孔43を介して導入部Rbに落下し、供給流路31を閉塞させる。粉粒としては、触媒が細分化した細分化触媒、及び粒状の触媒と処理対象ガスとの反応物等が挙げられる。脱硫器11の場合、反応物として硫化銅が生じる。
なお、触媒容器30が備えられた装置の起動及び停止等により触媒容器30に膨張及び収縮の力が加わるが、これにより触媒収容部Ruに収容された触媒が圧壊して細分化し、細分化触媒となる。
【0038】
上記のように、供給流路31が導入部Rbに接続された部分の上方に対応する第1通流部分Iの開口率が第2通流部分IIの開口率よりも大きく設計されている。
よって、上下方向に延びる供給流路31からは、処理対象ガスが上方の仕切り体41に向かって吹き出され、仕切り体41の第1通流部分Iに向かう。第1通流部分Iでは第2通流部分IIに比べて比較的に開口率が大きいため、処理対象ガスが導入部Rbから触媒収容部Ruに導入され易い。
【0039】
ここで、供給流路31から吹き出されて流速が速い状態で処理対象ガスが上方の仕切り体41に到達した場合に、処理対象ガスが仕切り体41を通過し難い状態であると、処理対象ガスが仕切り体41及び導入部Rb等と接触することで旋回流が発生する場合がある。しかし、前述の通り、第1通流部分Iの開口率が比較的に大きく、処理対象ガスが仕切り体41を通過し導入部Rbから触媒収容部Ruに導入され易いため、処理対象ガスと仕切り体41及び導入部Rb等との衝突を小さくできる。これにより、旋回流の発生を抑制できる。よって、旋回流の触媒収容部Ruへの導入が抑制され、触媒収容部Ru内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられ、導入部Rbに落下するのを抑制できる。さらには、落下した粉粒が供給流路31に導入されて供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
【0040】
また、第1通流部分Iの開口率が比較的に大きく通流抵抗が小さいため、供給流路31からの処理対象ガスが仕切り体41を通過し導入部Rbから触媒収容部Ruに導入され易い。よって、第1通流部分Iから触媒収容部Ruに導入された処理対象ガスは、触媒収容部Ruから第2通流部分IIを通過して導入部Rbには戻りにくいと考えられる。通流抵抗が小さい第1通流部分Iに比べて、開口率が小さい第2通流部分IIは比較的に通流抵抗が大きいからである。このため、触媒収容部Ruから導入部Rbに戻る流れに沿って粉粒が導入部Rbに落下するのを抑制できる。
【0041】
また、第1通流部分Iの開口率が比較的に大きく通流抵抗が小さいため、触媒収容部Ruに導入された処理対象ガスの流速は低下すると考えられる。よって、触媒収容部Ru内の粉粒の巻き上げにより粉粒が導入部Rbに落下するのを抑制できる。
【0042】
以下に、仕切り体41の具体例についてさらに説明する。
図5は触媒容器30の斜視図であり、
図6及び
図7は仕切り体41の-Z方向視の上面図である。
図5に示すように、供給流路31は上下方向に延びており、供給流路31の上端部は容器本体Rの下面に接続されて、導入部Rbと連通している。そして、供給流路31の上下方向と、水平面である仕切り体41の下面とは交差している。ここで、
図5~
図7に示すように、仕切り体41の水平面は、供給流路31が導入部Rbに接続された部分の上方に対応する第1通流部分Iと、第2通流部分IIとを有する。第2通流部分IIは、仕切り体41の水平面のうち第1通流部分I以外の部分である。第1通流部分Iの開口率は、第1通流部分Iでの処理対象ガスの通過量が多くなるように、第2通流部分IIの開口率よりも大きく設計されている。
【0043】
図5に示すように、供給流路31は、導入部Rbの+X及び-X方向(幅方向)のうち、中央部よりも-X方向側に接続されている。より具体的には、+X及び-X方向において、導入部RbはL2の長さがあり、供給流路31は、-X方向側の端部から長さL3の位置に、かつ+X方向側の端部から長さL4の位置において導入部Rbに接続されている。L4はL3より大きい(L4>L3)。また、仕切り体41は水平面方向に沿って配置されており、導入部Rbの上面と対向している。そして、L4の長さは、導入部Rbの下面から仕切り体41の上面までの長さL5よりも長い(L4>L5)。
【0044】
このような構成において、
図5では、導入部Rbに接続された供給流路31の上部において、仕切り体41が第1通流部分Iを有している。
図5においては、第1通流部分Iは、+X及び-X方向の中央部よりも-X方向側に位置し、-X方向側の端部からL1(L1>L3)であり、かつ+Y及び-Y方向(奥行方向)がW1である領域である。この第1通流部分Iは、供給流路31の上方を中心とした領域であり、仕切り体41の水平面方向の長さL2及び奥行W1の領域の半分より小さい領域である。例えば、第1通流部分Iの面積は、仕切り体41の面積の1/3~1/2である。さらに言えば、第1通流部分Iの面積は供給流路31の上部に対応する位置であればよく、仕切り体41の面積の1/4~1/2であってもよい。
なお、第1通流部分Iの端部は、触媒容器30の-X方向側の端部に接触して配置されている。これにより、触媒容器30の導入部Rbの-X方向側には、導入部Rbの底面と、-X方向の側面と、-Y方向の側面と、+Y方向の側面と、仕切り体41の第1通流部分Iとにより閉塞空間が形成されている。そして、供給流路31は、
図5等に示すように、触媒容器30の-X方向側に偏った位置に取り付けられており、第1通流部分Iは、供給流路31の上方を中心に覆うように配置されている。
【0045】
このような構成により、上述の通り、供給流路31から第1通流部分Iに到達した処理対象ガスは、開口率の大きい第1通流部分Iを抵抗が少ない状態で通流する。これにより、旋回流の発生を抑制して、ひいては触媒収容部Ru内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)の巻き上げ、及び導入部Rbに落下を抑制し、供給流路31の閉塞が抑制される。
【0046】
開口率は、隣接する孔43のピッチ及び孔43の開口径の少なくともいずれかに基づいて決定することができる。例えば、仕切り体41の上面図である
図6に示すように、第1通流部分Iにおいて隣接する孔43のピッチPIが、第2通流部分IIにおいて隣接する孔43のピッチPIIよりも小さくなるように設計することで、第1通流部分Iの開口率を、第2通流部分IIの開口率よりも大きくできる。この場合、開口径を一定にし、ピッチのみを変更するように設計できる。
なお、第1通流部分Iの開口率が第2通流部分IIの開口率よりも大きければよく、第1通流部分Iの全てのピッチPIが第2通流部分IIの全てのピッチPIIよりも小さくなくてもよく、ピッチPIの一部がピッチPIIの一部よりも大きくてもよい。
【0047】
あるいは、第1通流部分Iの孔43の開口径rIが、第2通流部分IIの孔43の開口径rIIよりも大きくなるように設計することで、第1通流部分Iの開口率は、第2通流部分IIの開口率よりも大きくできる。この場合、ピッチを一定にし、開口径のみを変更するように設計できる。
なお、第1通流部分Iの開口率が第2通流部分IIの開口率よりも大きければよく、第1通流部分Iの全ての開口径rIが第2通流部分IIの全ての開口径rIIよりも大きくなくてもよく、開口径rIの一部が開口径rIIの一部よりも小さくてもよい。
【0048】
あるいは、ピッチPIがピッチPIIよりも小さく、かつ、開口径rIが開口径rIIよりも大きくなるように設計することで、第1通流部分Iの開口率を第2通流部分IIの開口率よりも大きくできる。なお、第1通流部分Iの開口率が第2通流部分IIの開口率よりも大きければよく、全てのピッチPIが全てのピッチPIIよりも小さくなくてもよく、また全ての開口径rIが全ての開口径rIIよりも大きくなくてもよい。
【0049】
また、
図7に示すように、供給流路31の中心位置に近いほど徐々に開口率が大きくなるように設計することができる。つまり、第2通流部分IIから第1通流部分Iに向かうほど開口率が大きくなる。よって、
図7において、ピッチPIa<ピッチPIb<ピッチPIIa<ピッチPIIbの関係に設計することができる。また、
図7において、開口径rIa>開口径rIb>開口径rIIa>開口径rIIbの関係に設計することができる。さらに、これらのピッチ径の関係及び開口径の関係を両方満たすように設計することもできる。
なお、ピッチPIa及びピッチPIbは第1通流部分Iにおいて隣接する孔43のピッチであり、ピッチPIIa及びピッチPIIbは第2通流部分IIにおいて隣接する孔43のピッチである。また、開口径rIa及び開口径rIbは第1通流部分Iにおける孔43の開口径であり、開口径rIIa及び開口径rIIbは第2通流部分IIにおける孔43の開口径である。
【0050】
供給流路31の上方の中心位置に近いほど、供給流路31から仕切り体41に向かう処理対象ガスの流速が速い。上述のように、供給流路31の中心位置に近いほど徐々に開口率が大きくなるように第1通流部分Iが形成されている。よって、流速の速い処理対象ガスを開口率の大きい第1通流部分Iから触媒収容部Ruに導入することで、処理対象ガスと仕切り体41及び導入部Rb等との衝突を小さくし、旋回流の発生を抑制できる。これにより、旋回流の触媒収容部Ruへの導入を抑制し、触媒収容部Ruから粉粒が導入部Rbに落下することによって供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
【0051】
また、供給流路31からの処理対象ガスの流速が速いほど、第1通流部分Iの開口率及び面積の少なくともいずれかを大きく設計できる。処理対象ガスの流速が速いほど、仕切り体41及び導入部Rb等との衝突が大きく旋回流が発生し易い。上記の通り、処理対象ガスの流速が速いほど第1通流部分Iの開口率及び面積の少なくともいずれかを大きく設計することで、流速の速い処理対象ガスをより広い面積において開口率が大きい第1通流部分Iから触媒収容部Ruに導入できる。これにより、旋回流の発生を抑制し、旋回流の触媒収容部Ruへの導入を抑制できる。
【0052】
なお、上記では、仕切り体41の水平面を第1通流部分I及び第2通流部分IIの2つに分けているが、開口率の違いにより3つ以上に分けることもできる。
【0053】
(3)実験結果
(3-1)旋回流の抑制
旋回流は、供給流路31から導入部Rbに導入された処理対象ガスが、ある程度流速の速い状態で仕切り体41及び導入部Rbの内壁等と接触することにより生じ易い。そこで、本実施形態では、上述の通り、供給流路31が導入部Rbに接続された部分の上方に対応する第1通流部分Iの開口率を大きくし、供給流路31から供給される処理対象ガスが通流する過程において仕切り体41及び導入部Rb等から受ける抵抗を少なくした状態で触媒収容部Ruに導入し、旋回流の発生を抑制する。
【0054】
従来、仕切り体41の開口率は、本実施形態の開口率よりも小さい。従来の仕切り体41のように開口率が比較的に小さい場合には、供給流路31からの処理対象ガスの流速が大きいと、処理対象ガスと仕切り体41及び導入部Rb等との接触が大きく、つまり処理対象ガスが搬送方向に流れる過程で仕切り体41及び導入部Rb等から受ける抵抗が大きい。そのため、処理対象ガスと仕切り体41及び導入部Rb等との接触により旋回流が生じ易い。一方、供給流路31からの処理対象ガスの流速が小さいと、処理対象ガスと仕切り体41及び導入部Rb等との接触が小さく、つまり処理対象ガスが搬送方向に流れる過程で仕切り体41及び導入部Rb等から受ける抵抗が比較的に小さい。
【0055】
上記の点を考慮すると、開口率が小さい場合には処理対象ガスが流れる過程で仕切り体41及び導入部Rb等から受ける抵抗が大きく、供給流路31からの処理対象ガスの流速が大きい場合と同様に旋回流が生じ易い。一方、開口率を大きい場合には処理対象ガスが流れる過程で仕切り体41及び導入部Rb等から受ける抵抗が小さく、供給流路31からの処理対象ガスの流速が小さい場合と同様に旋回流が生じ難い。
以下では、従来の開口率が小さい仕切り体41を用い、処理対象ガスの流速が大きい場合及び小さい場合について旋回流の発生の様子を実験した。
【0056】
図8は、従来の脱硫器11の触媒容器60の構成を示すものである。従来の触媒容器60は、複数の孔73を有する仕切り体71と、脱硫触媒11cを収容する触媒収容部Ruと、導入部Rbと、供給流路61と、排出流路69とを備える。従来の触媒容器60では、供給流路61は上下方向に延びた状態で、-X方向側において導入部Rbと接続されている。また、仕切り体71は、水平面に沿って形成されており、仕切り体71の下面と導入部Rbの上面との間の高さは一定である。そして、従来の触媒容器60において、仕切り体71の開口率は、仕切り体71の面内で一定である。よって、供給流路61の上部の仕切り体71の開口率と、その他の部分の開口率とは同一である。
【0057】
図8の従来の触媒容器60の各部の寸法の一例について説明する。
図8では、導入部Rbは、L2=200mm、L3=40mm、L4=160mm、L5=20mm、W1=20mmである。また、
図8の仕切り体71では、開口径=2mm、ピッチP=4mm、開口率=22.7%である。
【0058】
図9は、
図8の従来の触媒容器60の正面図において、ガス流量2.65L/min及びガス流量1.0L/minそれぞれで供給流路61から導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の温度分布を示している。触媒容器60内の触媒は、所定の処理温度に加熱されており、供給流路61からは低温の処理対象ガスが導入部Rb及び触媒収容部Ruに導入される。
図9に示すように、ガス流量2.65L/minで供給流路61から導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の方が、ガス流量1.0L/minの場合よりも低温の温度分布の広がりが大きいことが分かる。つまり、流量が大きいほど、触媒収容部Ruに流速が大きい状態で処理対象ガスが導入され、処理対象ガスと仕切り体41及び導入部Rbとの接触抵抗が大きく、旋回流が発生する可能性が高いことが分かる。
【0059】
図10は、従来の触媒容器60の側面図において、ガス流量2.65L/min及びガス流量1.0L/minそれぞれで供給流路61から導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の速度ベクトルを示している。なお、
図10では、
図4の触媒容器30と同様に、導入部Rbの下面が-Yから+Y方向に向かって高さが高くなるように傾斜している従来の触媒容器60を用いている。
供給流路61から処理対象ガスが導入部Rbに導入されているが、ガス流量2.65L/minの場合には、流速の速い領域Aの部分が仕切り体71に向かって勢いよく衝突し、領域B及びCにおいて旋回流が生じている。一方、ガス流量1.0L/minの場合には、領域Aの処理対象ガスが仕切り体71に向かっているものの、流速が遅いため仕切り体71との衝突の大きさが小さい。よって、領域B及びCにおいて旋回流はほとんど生じていない。
【0060】
図11は、
図8の従来の触媒容器60の正面図において、ガス流量2.65L/min及びガス流量1.0L/minそれぞれで供給流路61から導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の流跡線を示している。
供給流路61から処理対象ガスが導入部Rbに導入されているが、ガス流量2.65L/minの場合には、流速の速い領域Aの部分が仕切り体71に向かって勢いよく衝突し、領域Dにおいて旋回流が生じている。なお、領域Eは、導入部Rbの空間が領域Dよりも+X及び-X方向において広く、処理対象ガスと導入部Rbとの接触抵抗が小さい。よって、領域Eでは旋回流は生じていない。
【0061】
一方、ガス流量1.0L/minの場合には、領域Aの処理対象ガスが仕切り体71に向かっているものの、流速が遅いため仕切り体71との衝突の大きさが小さい。よって、領域Dにおいて旋回流はほとんど生じていない。領域Dよりも空間が広い領域Eでも旋回流はほとんど生じていない。
【0062】
以上の実験結果から、仕切り体41及び導入部Rbの内壁等と接触する際の処理対象ガスの流速が遅いほど旋回流の発生を抑制できることが分かった。このことは、前述した通り、開口率大きいほど処理対象ガスが流れる過程での、処理対象ガスと仕切り体41及び導入部Rb等との抵抗が小さく、旋回流の発生を抑制できることを示している。よって、本実施形態のように供給流路31の上方において開口率が大きい第1通流部分Iを設けることで、旋回流の発生を抑制し、供給流路31の閉塞を抑制できることが分かる。
【0063】
(3-2)旋回流の抑制と開口率との関係
本実施形態の
図5、
図6の例を用いて、旋回流の抑制と開口率との関係についてさらに実験を行った。
図5、
図6の触媒容器30の各部の寸法の一例について説明する。
図5、
図6では、導入部Rbは、L1=100mm、L2=200mm、L3=40mm、L4=160mm、L5=20mm、W1=20mmである。ここで、第1通流部分Iは、仕切り体41の-X方向側の50%を占めており、第2通流部分IIは、仕切り体41の+X方向側の50%を占めている。
第1通流部分Iでは、一例として、開口径rI=2mm、ピッチPI=3mm、開口率=40.3%である。第2通流部分IIでは、一例として、開口径rII=2mm、ピッチPII=4mm、開口率=22.7%である。
【0064】
図12は、
図8の従来の触媒容器60(開口率=22.7%)と、
図5,6の本実施形態の触媒容器30(第1通流部分I=開口率40.3%、第2通流部分II=開口率22.7%)それぞれの正面図において、ガス流量2.65L/minで供給流路から導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の流跡線を示している。
図8の従来の触媒容器60(開口率=22.7%)の場合、供給流路61から処理対象ガスが導入部Rbに導入されているが、流速の速い領域Aの部分が仕切り体71に向かって勢いよく衝突し、領域Kにおいて旋回流が生じている。
【0065】
一方、
図5,6の本実施形態の触媒容器30(第1通流部分I=開口率40.3%、第2通流部分II=開口率22.7%)の場合、供給流路31から処理対象ガスが導入部Rbに導入されているが、流速の速い領域Aの部分が仕切り体41に向かって勢いよく流れる。ここで、供給流路31の中心位置に近い部分の第1通流部分Iの開口率が大きく形成されている。よって、流速の速い処理対象ガスを開口率の大きい第1通流部分Iから触媒収容部Ruに導入することで、処理対象ガスと仕切り体41及び導入部Rb等との衝突を小さくし、旋回流の発生を抑制できる。これにより、旋回流の触媒収容部Ruへの導入を抑制し、触媒収容部Ruから粉粒が導入部Rbに落下することによって供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
【0066】
上記では一例として第1通流部分Iの開口率を40.3%としたが、第1通流部分Iの開口率を40~55%とすることもできる。
【0067】
〔他の実施形態〕
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0068】
(1)上記実施形態では、孔43は円形状であるが、孔43の形状はこれに限定されない。孔43の形状は、例えば三角形状、四角形状、楕円形状等の形状であってもよい。
【0069】
(2)上記実施形態では、脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の各処理部の触媒容器30が同様の構成であると説明した。しかし、脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の触媒容器30の少なくとも1つが上記実施形態で説明した構成を採用していればよい。
【0070】
(3)上記実施形態では、触媒容器30は直方体状であるが、仕切り体41の供給流路31の上方に第1通流部分Iを確保できれば、触媒容器30の形状はこれに限定されない。例えば、触媒容器30は、正方形状、円筒形状及び楕円形状等であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、供給流路31は、導入部Rbの下面のうち周縁に近い位置に接続されている。しかし、仕切り体41の供給流路31の上方に第1通流部分Iを確保できればよく、供給流路31の接続位置はこれに限定されない。例えば、供給流路31は、導入部Rbの下面の中央部等、導入部Rbの下面のうちいずれかの位置に接続されていればよい。この場合、第1通流部分Iは、供給流路31の接続位置の上方に対応するように位置付けられる。
【0072】
また、上記実施形態では、排出流路39は、触媒容器30の上面に接続されている。しかし、触媒容器30で所定の処理が施されたガスを排出できればよく、排出流路39の接続位置はこれに限定されない。例えば、排出流路39は、触媒容器30の上部の側面等に接続されていてもよい。
【0073】
(4)上記実施形態では、燃料電池として固体高分子形燃料電池を例に挙げた。しかし、燃料電池20は、ジルコニア系及びセレン系等のセラミックス膜をアノードとカソードで挟持したセルを積層して構成される固体酸化物形燃料電池であってもよい。
【0074】
(5)上記実施形態では、脱硫器11を設けている。しかし、原燃料として硫黄を含まない、例えばプロパン等の炭化水素系ガスやアルコールなどが用いられる場合には、ガス処理装置10から脱硫器11を省略してもよい。よって、上記実施形態において、ガス処理装置10の処理部を、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17から構成することもできる。
【0075】
さらに、水蒸気改質後の改質ガス中に含まれる一酸化炭素濃度が低い場合には、ガス処理装置10からCO変成器15を省略してもよい。よって、上記実施形態において、ガス処理装置10の処理部を、改質器13及びCO選択酸化反応器17から構成することもできる。
【0076】
(6)上記実施形態のガス処理装置10には、CO変成器15とCO選択酸化反応器17との間に水蒸気凝縮分離器(図示せず)が設けられていてもよい。水蒸気凝縮分離器は、改質器13で水蒸気改質された改質ガスに含まれる水蒸気を凝縮分離して除去する。水蒸気を除去することで、各処理部を接続するラインの閉塞を抑制できる。
【0077】
また、水蒸気凝縮分離器を経て水蒸気が除去された改質ガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。また、改質器13を経て改質された改質ガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。また、CO変成器15を経たガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。さらには、CO選択酸化反応器17を経たガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。
【0078】
(7)上記実施形態のガス処理装置10で用いる原燃料ガスが気体であり、圧縮が必要な場合は、脱硫器11の上流側に圧縮機が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0079】
11c~17c :触媒
30 :触媒容器
31 :供給流路
41 :仕切り体
43 :孔
Rb :導入部
Ru :触媒収容部
I :第1通流部分
II :第2通流部分