IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7458818ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体
<>
  • 特許-ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体 図1
  • 特許-ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体 図2
  • 特許-ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体 図3
  • 特許-ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体 図4
  • 特許-ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体 図5
  • 特許-ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体 図6
  • 特許-ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体 図7
  • 特許-ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体 図8
  • 特許-ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】ロボット装置、インタフェース装置、制御装置、エンドエフェクタ、制御方法、ロボット装置を用いた物品の製造方法、プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020028370
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021130186
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕也
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-167674(JP,A)
【文献】特開2017-074660(JP,A)
【文献】特開2000-176872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、
前記ロボットアームに設けられ、ワークを保持可能なエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタに前記ワークを保持させた状態で前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少し、かつ前記ユーザによる前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とするロボット装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記エンドエフェクタに前記ワークを保持させた状態で前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少した後に、前記ユーザが前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボット装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記エンドエフェクタに前記ワークを保持させた状態で前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少した状態が所定時間継続し、かつ前記ユーザが前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のロボット装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記ユーザが前記ワークをひねることで前記エンドエフェクタに作用する前記ワークの姿勢を変えようとする力を取得する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ユーザが両手で前記ワークを支持し、前記ユーザが両手で前記ワークの姿勢を変える動作を実行することで、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記ユーザが前記ワークを、前記エンドエフェクタが前記ワークを把持する方向と直交する方向を基準として前記ワークの姿勢を変更することで前記エンドエフェクタに作用する前記ワークの姿勢を変えようとする力を取得する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記ロボットアームを所定姿勢に維持した状態で前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記ロボットアームに外力が作用しても前記ロボットアームを前記所定姿勢に維持する、
ことを特徴とする請求項7に記載のロボット装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記ユーザにより前記ワークの姿勢を変更する動作が行われても前記ロボットアームを前記所定姿勢に維持する、
ことを特徴とする請求項7または8に記載のロボット装置。
【請求項10】
前記ユーザが前記ワークの姿勢を変更する動作を行うことで、前記ワークの受け取りの準備が完了したことを前記制御部に指示する、
ことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項11】
前記所定姿勢は、前記ユーザに前記ワークの受け渡しの準備が完了したことを認識させる姿勢である、
ことを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項12】
前記所定姿勢は、前記エンドエフェクタの把持部が、重量方向に対して下側となる姿勢である、
ことを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記ユーザが前記エンドエフェクタを所定角度回転させた場合、前記エンドエフェクタを振動させる、
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項14】
前記ユーザが前記ワークの姿勢を変えようとする力は、前記ワークを介して前記エンドエフェクタに作用するトルクであり、
前記制御部は、
前記トルクが所定の値を超えた場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項15】
前記ユーザにより、前記ワークの姿勢を変える動作は、前記エンドエフェクタが回転しない場合を含む、
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記エンドエフェクタに作用する、前記ユーザが前記ワークの姿勢を変えようとする力に倣って前記エンドエフェクタが回転するよう前記ロボットアームを制御する、
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項17】
前記制御部は、
前記ユーザが前記ワークの姿勢を変えようとする力に倣って前記エンドエフェクタが回転するに連れ、前記ワークを介して前記エンドエフェクタに作用するトルクによる前記エンドエフェクタの回転方向とは逆方向に前記エンドエフェクタに加えるトルクを増加させるよう、前記ロボットアームを制御する、
ことを特徴とする請求項16に記載のロボット装置。
【請求項18】
前記制御部は、
前記ユーザが前記ワークの姿勢を変えようとする力に倣って前記エンドエフェクタが所定の位置まで回転した場合、前記エンドエフェクタの回転を停止させるよう前記ロボットアームを制御する、
ことを特徴とする請求項16又は17に記載のロボット装置。
【請求項19】
前記制御部は、
前記エンドエフェクタの回転を所定の位置において停止させた後に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する、
ことを特徴とする請求項18に記載のロボット装置。
【請求項20】
前記ロボットアームは、前記ユーザが前記ワークの姿勢を変えようとする力に応じた信号を出力するセンサを含み、
前記制御部は、前記センサからの信号に基づいて前記ワークの姿勢を変えようとする力の情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項21】
前記ロボットアームは、前記ロボットアームの複数の関節のうち対応する関節に作用するトルクに応じた信号を出力する複数のセンサを含み、
前記制御部は、前記複数のセンサからの信号に基づいて前記重力方向の力を取得する、
ことを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項22】
前記ロボットアームは、前記エンドエフェクタを支持し、前記エンドエフェクタに作用する3軸の方向の並進力及び前記3軸まわりの回転力に応じた信号を出力するセンサを含み、
前記制御部は、前記センサからの信号に基づいて前記重力方向の力を取得する、
ことを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載のロボット装置。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか1項に記載のロボット装置を用いて物品の製造を行うことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項24】
インタフェース装置であって、
ワークを保持したエンドエフェクタに、前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少し、かつ前記ユーザによる前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう指令を送信する、
ことを特徴とするインタフェース装置。
【請求項25】
エンドエフェクタにワークを保持させた状態で前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少し、かつ前記ユーザによる前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項26】
ロボットアームに設けられ、ワークを保持可能なエンドエフェクタであって、
前記ワークを保持した状態で前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少し、かつ前記ユーザによる前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記ワークを解放する、
ことを特徴とするエンドエフェクタ。
【請求項27】
ロボットアームと、前記ロボットアームに設けられ、ワークを保持可能なエンドエフェクタとを制御する制御方法であって、
前記エンドエフェクタに前記ワークを保持させ、
前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少し、かつ前記ユーザによる前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項28】
請求項27に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項29】
請求項28に記載のプログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ロボットアーム及びエンドエフェクタを有するロボットが、生産の自動化のために工場等で広く利用されている。特に、人と協働作業するロボットを利用するケースが増えてきている。人とロボットとの協働作業の一例として、エンドエフェクタに保持されたワークを人に直接受け渡す作業がある。特許文献1には、ロボットから人へワークを渡す際のロボットの制御について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-200847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットから人へワークを受け渡す作業においては、ワークがロボットから落下しないように、ワークを人に確実に受け渡すことが求められている。そして、このような受け渡し作業においてタクト時間を短縮することが求められている。
【0005】
本発明は、ロボットから人へワークを受け渡す作業において、タクト時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様は、ロボットアームと、前記ロボットアームに設けられ、ワークを保持可能なエンドエフェクタと、前記エンドエフェクタに前記ワークを保持させた状態で前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少し、かつ前記ユーザによる前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する制御部と、を備える、ことを特徴とするロボット装置である。
【0007】
本開示の第2態様は、インタフェース装置であって、ワークを保持したエンドエフェクタに、前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少し、かつ前記ユーザによる前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう指令を送信する、ことを特徴とするインタフェース装置である。
【0008】
本開示の第3態様は、エンドエフェクタにワークを保持させた状態で前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少し、かつ前記ユーザによる前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する、ことを特徴とする制御装置である。
本開示の第4態様は、ロボットアームに設けられ、ワークを保持可能なエンドエフェクタであって、前記ワークを保持した状態で前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少し、かつ前記ユーザによる前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記ワークを解放する、ことを特徴とするエンドエフェクタである。
【0009】
本開示の第5態様は、ロボットアームと、前記ロボットアームに設けられ、ワークを保持可能なエンドエフェクタとを制御する制御方法であって、前記エンドエフェクタに前記ワークを保持させ、前記ワークをユーザが支持することで前記ワークから前記エンドエフェクタに作用する重力方向の力が減少し、かつ前記ユーザによる前記ワークの姿勢を変えようとする力が取得された場合に、前記エンドエフェクタに前記ワークを解放させるよう前記エンドエフェクタを制御する、ことを特徴とする制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロボットから人へワークを受け渡す作業において、タクト時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るロボット装置の説明図である。
図2】第1実施形態におけるロボット装置の制御系を示すブロック図である。
図3】(a)は、第1実施形態におけるロボットと作業者との協働作業を示す模式図である。(b)は、(a)に示すロボットにおけるロボットハンド付近を示す拡大模式図である。
図4】第1実施形態に係る制御装置の機能を説明するためのブロック図である。
図5】第1実施形態に係る制御方法のフローチャートである。
図6】第2実施形態に係るロボット装置の説明図である。
図7】第2実施形態に係る制御装置の機能を説明するためのブロック図である。
図8】第3実施形態に係る制御方法のフローチャートである。
図9】第3実施形態に係るロボットハンドの回転動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るロボット装置100の説明図である。ロボット装置100は、ロボット110と、インタフェース装置の一例である制御装置400と、を備える。ロボット110は、マニピュレータであり、ロボットアーム200と、エンドエフェクタの一例であるロボットハンド300と、を有する。ロボットハンド300は、ロボットアーム200に設けられている。制御装置400は、ロボットアーム200及びロボットハンド300を制御する。ロボットハンド300は、部品やツール等のワークWを保持するものである。
【0014】
ロボットアーム200は、例えば垂直多関節のロボットアームである。ロボットアーム200は、複数、例えば7つのリンク210~216を有する。複数のリンク210~216は、複数、例えば6つの関節J1~J6で回転可能に連結されている。複数のリンク210~216は、直列に連結されている。
【0015】
具体的に説明すると、リンク211は、リンク210に対して軸線C1を中心に回転可能に関節J1でリンク210と連結されている。リンク212は、リンク211に対して軸線C2を中心に回転可能に関節J2でリンク211と連結されている。リンク213は、リンク212に対して軸線C3を中心に回転可能に関節J3でリンク212と連結されている。リンク214は、リンク213に対して軸線C4を中心に回転可能に関節J4でリンク213と連結されている。リンク215は、リンク214に対して軸線C5を中心に回転可能に関節J5でリンク214と連結されている。リンク216は、リンク215に対して軸線C6を中心に回転可能に関節J6でリンク215と連結されている。
【0016】
複数のリンク210~216のうち、基端に位置するベース部であるリンク210は、架台150に固定されている。複数のリンク210~216のうち、先端に位置するフランジ部であるリンク216には、ロボットハンド300が固定されている。よって、ロボットアーム200の姿勢を変えることにより、可動範囲内の任意の位置にロボットハンド300を移動させることができる。特に、リンク216がリンク215に対して回転することで、リンク216と共にロボットハンド300を回転させることができる。なお、第1実施形態では、ロボットハンド300がリンク216に直接接続されているが、ロボットハンド300とリンク216との間に別の部材が介在していてもよい。
【0017】
ここで、リンク210を基準とする座標系、即ち設置環境を基準とするグローバルな座標系を、XYZ座標系とする。XYZ座標系は、直交座標系である。Z軸は、重力方向Gと平行な方向に延びる軸である。X軸及びY軸は、Z軸と直交する軸である。ロボットハンド300を基準とするローカルな座標系をαβγ座標系とする。αβγ座標系は、直交座標系である。γ軸は、軸線C6と平行な方向に延びる軸である。α軸及びβ軸は、γ軸と直交する軸である。
【0018】
ロボットハンド300は、ワークWを保持可能に構成されている。ロボットハンド300は、ハンド本体301と、ハンド本体301に開閉可能に支持された複数、例えば2つのフィンガ302と、を有する。ハンド本体301は、リンク216に固定されている。2つのフィンガ302は、互いに接離することで、即ち開閉することで、ワークWを保持又は解放することができる。
【0019】
図2は、第1実施形態におけるロボット装置100の制御系を示すブロック図である。制御装置400は、コンピュータで構成されており、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)401を備える。CPU401は、制御部の一例である。また制御装置400は、記憶部として、ROM(Read Only Memory)402、RAM(Random Access Memory)403、HDD(Hard Disk Drive)404を備える。また、制御装置400は、記録ディスクドライブ405、入出力インタフェースであるI/O406を備える。CPU401、ROM402、RAM403、HDD404、記録ディスクドライブ405、及びI/406は、互いに通信可能にバス410で接続されている。
【0020】
ROM402は、非一時的な記憶装置である。ROM402には、コンピュータ起動時にCPU401によって読み出される基本プログラムが格納されている。RAM403は、CPU401の演算処理に用いられる一時的な記憶装置である。HDD404は、CPU401の演算処理結果等、各種データを記憶する非一時的な記憶装置である。第1実施形態では、HDD404には、CPU401に後述する制御方法を実行させるためのプログラム411が格納されている。記録ディスクドライブ405は、記録ディスク412に記録された各種データやプログラム等を読み出すことができる。
【0021】
I/O406には、ロボットアーム200、ロボットハンド300、入力装置501、表示装置502、外部記憶装置503が接続されている。
【0022】
入力装置501は、作業者によってデータ入力が可能な装置、例えばティーチングペンダント等の教示装置である。ティーチングペンダントは、作業者が操作することでロボットアーム200やロボットハンド300の位置を教示するのに用いられる。表示装置502は、CPU401の制御により、各種画像を表示するディスプレイである。外部記憶装置503は、非一時的な記憶装置であり、例えば外付けHDDやUSBメモリ等のストレージである。
【0023】
ロボットアーム200は、入出力インタフェースであるI/O231と、複数、第1実施形態では関節の数と同じ6つの駆動ユニット251~256と、を有する。各駆動ユニット251~256は、各関節J1~J6と対応している。
【0024】
駆動ユニット251は、ドライバ261、モータ271、エンコーダ281及びトルクセンサ291を含む。駆動ユニット252は、ドライバ262、モータ272、エンコーダ282及びトルクセンサ292を含む。駆動ユニット253は、ドライバ263、モータ273、エンコーダ283及びトルクセンサ293を含む。駆動ユニット254は、ドライバ264、モータ274、エンコーダ284及びトルクセンサ294を含む。駆動ユニット255は、ドライバ265、モータ275、エンコーダ285及びトルクセンサ295を含む。駆動ユニット256は、ドライバ266、モータ276、エンコーダ286及びトルクセンサ296を含む。
【0025】
各ドライバ261~266は、不図示のマイクロコンピュータ、不図示のA/D変換回路、不図示のモータ駆動回路等を含む。複数のドライバ261~266とI/O231とは、互いに通信可能にバス240で接続されている。I/O231は、制御装置400のI/O406と通信可能に接続されている。各ドライバ261~266は、いずれの位置に配置されていてもよいが、例えばロボットアーム200のいずれかのリンク内に配置されている。
【0026】
各駆動ユニット251~256は、同様の構成及び機能である。各モータ271~276は、各関節J1~J6を駆動する。具体的に説明すると、各モータ271~276は、直接、又は不図示の減速機等の伝達機構を介して、各関節J1~J6で連結された2つのリンクのうち先端側のリンクを基端側のリンクに対して駆動する。各エンコーダ281~286は、各モータ271~276の回転軸の回転位置、即ち回転角度θ1~θ6に応じた信号を出力するセンサであるロータリエンコーダである。各トルクセンサ291~296は、各関節J1~J6に配置されている。各トルクセンサ291~296は、各関節J1~J6で連結された2つのリンクのうち基端側のリンクに対して先端側のリンクに作用するトルク、即ち各関節J1~J6に作用するトルクτ1~τ6に応じた信号を出力するセンサである。特に、トルクセンサ296は、ロボットハンド300に作用する図1の軸線C6まわりの回転方向のトルクτ6に応じた信号を出力するセンサである。
【0027】
各ドライバ261~266は、各エンコーダ281~286からの信号を所定周期で取り込んで、各回転角度θ1~θ6を示すデジタル信号に変換する。また、各ドライバ261~266は、各トルクセンサ291~296からの信号を所定周期で取り込んで、各トルクτ1~τ6を示すデジタル信号に変換する。
【0028】
また、各ドライバ261~266は、制御装置400のCPU401から各角度指令値を受信した場合、各角度指令値と各回転角度θ1~θ6との差に基づき、各モータ271~276を制御する。これにより、各モータ271~276の回転角度θ1~θ6が各角度指令値に近づけられる。また、各ドライバ261~266は、制御装置400のCPU401から各トルク指令値を受信した場合、各トルク指令値と各トルクτ1~τ6との差に基づき、各モータ271~276を制御する。これにより、各関節J1~J6に作用するトルクτ1~τ6が各トルク指令値に近づけられる。以上の制御は、所定周期で周期的に行われる。
【0029】
よって、制御装置400のCPU401は、各ドライバ261~266に角度指令値を送信することにより、ロボットアーム200の姿勢を制御することができる。この制御を位置制御という。また、制御装置400のCPU401は、各ドライバ261~266にトルク指令値を送信することにより、ロボットハンド300に生じる力を制御することができる。この制御をトルク制御または力制御という。
【0030】
ロボットハンド300は、入出力インタフェースであるI/O331と、駆動ユニット351と、を有する。駆動ユニット351は、ドライバ361、モータ371、エンコーダ381及び力センサ391を含む。ドライバ361は、不図示のマイクロコンピュータ、不図示のA/D変換回路、不図示のモータ駆動回路等を含む。ドライバ361とI/O331とは、互いに通信可能にバス340で接続されている。I/O331は、制御装置400のI/O406と通信可能に接続されている。ドライバ361は、どこに配置されていてもよいが、例えばハンド本体301内に配置されている。
【0031】
モータ371は、図1の複数のフィンガ302を駆動する。具体的に説明すると、モータ371は、直接、又は不図示のラックアンドピニオン機構等の伝達機構を介して、複数のフィンガ302を開閉駆動する。エンコーダ381は、モータ371の回転軸の回転位置、即ち回転角度に応じた信号を出力するセンサであるロータリエンコーダである。力センサ391は、複数のフィンガ302に作用する力、即ちワークWの保持力に応じた信号を出力するセンサである。
【0032】
ドライバ361は、エンコーダ381からの信号を所定周期で取り込んで、回転角度を示すデジタル信号に変換する。また、ドライバ361は、力センサ391からの信号を所定周期で取り込んで、力を示すデジタル信号に変換する。ドライバ361は、回転角度を示すデジタル信号、及び力を示すデジタル信号を制御装置400のCPU401に送信する。
【0033】
また、ドライバ361は、制御装置400のCPU401から角度指令値を受信した場合、角度指令値とエンコーダ381からの信号に基づくモータ371の回転角度との差に基づき、モータ371を制御する。これにより、モータ371の回転角度が角度指令値に近づけられる。即ち、複数のフィンガ302の開閉方向の位置、即ち複数のフィンガ302の開閉動作が制御される。また、ドライバ361は、制御装置400のCPU401から力指令値を受信した場合、力指令値と力センサ391からの信号に基づく力との差に基づき、モータ371を制御する。これにより、フィンガ302によりワークWを保持する保持力が力指令値に近づけられる。以上の制御は、所定周期で周期的に行われる。
【0034】
よって、制御装置400のCPU401は、ドライバ361に角度指令値を送信することにより、ロボットハンド300によるワークWの保持及び解放を制御することができる。また、制御装置400のCPU401は、ドライバ361に力指令値を送信することにより、ロボットハンド300によるワークWの保持力を制御することができる。
【0035】
なお第1実施形態では、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体がHDD404であり、HDD404にプログラム411が格納される場合について説明するが、これに限定するものではない。プログラム411は、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体であれば、いかなる記録媒体に記録されていてもよい。例えば、プログラム411を格納する記録媒体としては、ROM402、記録ディスク412、外部記憶装置503等を用いてもよい。具体例を挙げて説明すると、記録媒体として、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリ、ROM等を用いることができる。
【0036】
図3(a)は、第1実施形態におけるロボット110と作業者Aとの協働作業を示す模式図である。協働作業の一例として、図3(a)に示すように、ロボット110から作業者AへワークWを受け渡す作業がある。ロボット110から作業者AへワークWを受け渡す際、ロボット110は、作業者AがワークWをしっかり支えた状態でワークWを解放するのが好ましい。特にワークWが重量物である場合、ロボット110がワークWを解放した瞬間にワークWの全荷重が作業者Aに掛かるため、作業者Aはその荷重に対して準備をしておく必要があるためである。
【0037】
ロボット110から作業者AへワークWを受け渡す際、ロボットアーム200は、所定姿勢P0に維持される。所定姿勢P0は、作業者AにワークWを受け渡す姿勢である。例えば、所定姿勢P0は、ロボットハンド300がロボットアーム200の先端であるリンク216に対して重力方向Gで下側となる姿勢、即ちハンド本体301に対してフィンガ302が重力方向Gで下側となる姿勢である。
【0038】
図3(b)は、図3(a)に示すロボット110におけるロボットハンド300付近を示す拡大模式図である。ロボットハンド300、即ちロボットアーム200のリンク216には、ロボットハンド300の重量、及びワークWの重量により、重力方向Gに力Fzが作用する。重力方向Gとγ軸の延びる方向とは、互いに平行である。ロボットハンド300は、軸線C6まわりの回転方向R6に回転可能である。軸線C6まわりの回転方向R6は、γ軸まわりの回転方向Rγと同じである。そして、回転方向R6のトルクτ6は、回転方向Rγのトルクτγと同じである。回転方向R6、即ち回転方向Rγは、所定方向である。
【0039】
第1実施形態では、制御装置400は、作業者AによってワークWがひねられたことを検知したときに、ロボットハンド300にワークWを解放させるようにしている。ワークWがひねられるとは、ワークWにγ軸まわりに閾値以上のトルクが加えられることであり、ロボットアーム200の位置制御によりロボットハンド300が回転しない場合も含む。
【0040】
ワークWが重量物である場合、作業者Aは、図3(a)に示すように、両手でワークWを支持することになる。両手がふさがっているので、作業者Aは、別途、ボタン操作をするのは困難である。第1実施形態では、作業者Aは、ワークWを下支えしてワークWを受け取る準備が整ったことを、ワークWをひねることによって、制御装置400に知らせることができる。
【0041】
図4は、第1実施形態に係る制御装置の機能を説明するためのブロック図である。図2に示すCPU401がプログラム411を実行することにより、図4に示す検出部420及び動作制御部430として機能する。なお、1つのCPU401で検出部420及び動作制御部430の機能を実現する場合について説明するが、複数のCPUで検出部420及び動作制御部430の機能を実現してもよい。また、CPU401がソフトウェアで検出部420及び動作制御部430の機能を実現する場合について説明するが、回路構成、即ちハードウェア構成で検出部420及び動作制御部430を実現してもよい。また、図4は、制御の流れを説明するための図であって、ドライバ261~266及びドライバ361の図示を省略している。検出部420は、力検出部421及び姿勢検出部422を有する。
【0042】
姿勢検出部422は、エンコーダ281~286の検知結果である回転角度θ1~θ6の情報を取得する。姿勢検出部422は、回転角度θ1~θ6の情報、及びロボット110のサイズ情報に基づき、ロボットアーム200の姿勢Pを検出する。第1実施形態では、ロボットアーム200の姿勢Pの検出には、演算処理も含まれる。この演算処理には、例えばロボットの順運動学の計算が含まれる。なお、ロボット110のサイズ情報は、図2のHDD404に予め登録されている情報である。
【0043】
力検出部421は、トルクセンサ291~296の検知結果であるトルクτ1~τ6の情報、ロボットアーム200の姿勢Pの情報を取得する。力検出部421は、トルクτ1~τ6の情報、姿勢Pの情報、ロボット110の各部位の重量の情報に基づき、ロボットハンド300に作用する力Fを検出する。第1実施形態では、力Fの検出には、演算処理も含まれる。力Fは、αβγ座標系における6次元の力ベクトルであり、各軸α、γ、βの方向の3つの並進力Fα、Fβ、Fγと、各軸α、β、γまわりの3つの回転力、即ち3つのトルクτα、τβ、τγを含む。なお、ロボット110の各部位の重量の情報は、図2のHDD404に予め登録されている情報である。
【0044】
力検出部421は、力Fの情報に基づいて、ロボットハンド300に作用する重力方向Gの力Fzを検出する。なお、ロボットアーム200が所定姿勢P0に制御されていれば、重力方向Gの力Fzは、力Fγである。ロボットアーム200が所定姿勢P0のときにロボット110に外力が加わっていなければ、力Fz以外の力は0である。
【0045】
出部42は、ロボットアーム200の姿勢Pの情報、ロボットハンド300に作用するトルクτγの情報、及びロボットハンド300に作用する重力方向Gの力Fzの情報を、動作制御部430に出力する。
【0046】
図5は、第1実施形態に係る制御方法のフローチャートである。CPU401がプログラム411を実行することにより、CPU401が図4の検出部420及び動作制御部430として機能して、図5に示す制御方法の各ステップS101~S109を実行する。
【0047】
動作制御部430は、モータ371を制御してロボットハンド300にワークWを保持させる(S101)。
【0048】
次に、動作制御部430は、ロボットハンド300にワークWを保持させた状態でロボットアーム200の姿勢が目標姿勢である所定姿勢P0となるように、ロボットアーム200の各モータ271~276を制御する(S102)。この位置制御により、ロボットアーム200は、所定姿勢P0に位置決めされ、その後、所定姿勢P0に維持される。そして、ロボット110に外力が作用しても、位置制御により、ロボットアーム200は外力に抗して所定姿勢P0に維持される。所定姿勢P0は、図3(a)に示すように、作業者AにワークWを受け渡す姿勢である。所定姿勢P0の情報は、HDD404に予め設定されている。このステップS102の処理により、ロボットアーム200は、所定姿勢P0で静止した状態となる。ロボットアーム200が所定姿勢P0で静止する、即ちロボットアーム200が所定姿勢P0で一旦停止することにより、作業者AはワークWをロボット110から受け取ることができると認識することができる。
【0049】
検出部420は、ロボットハンド300に作用する重力方向Gの力Fzを検出する(S103)。このステップS103では、ステップS102で動作制御部430がロボットアーム200を所定姿勢P0に制御した後、検出部420がロボットハンド300にワークWが保持された状態の力Fzを検出する。動作制御部430は、力Fzの情報を検出部420から取得する。ここで、時刻tにおける力Fzを力Fz(t)とする。第1実施形態では、検出部420は所定周期Δtで力Fzを検出する。つまり、動作制御部430は、所定周期Δtごとに検出部420から力Fzの情報を取得することになる。
【0050】
動作制御部430は、力Fz(t)と、力Fz(t-Δt)とを比較する(S104)。例えば、動作制御部430は、Fz(t)-Fz(t-Δt)<0であるかどうかを判定する。力Fz(t-Δt)は、力Fz(t)の一つ前の周期で取得した力Fzである。即ち、動作制御部430は、ロボットアーム200が所定姿勢P0に制御された状態から重力方向Gの力Fzが減少したかどうかを判定する。作業者AがワークWを下支えしたときに検出される力Fzは、ロボットアーム200が所定姿勢P0で静止した時点で検出される力Fzよりも減少する。よって、このステップS104では、動作制御部430は、作業者AによってワークWが支えられているかどうかを判定していることになる。
【0051】
動作制御部430は、Fz(t)-Fz(t-Δt)≧0である場合(S104:NO)、即ち力Fzが減少していない場合、作業者AによってワークWが十分に支えられた状態とはなっていないため、ステップS103の処理に戻る。
【0052】
動作制御部430は、Fz(t)-Fz(t-Δt)<0である場合(S104:YES)、即ち、力Fzが減少した場合、計時を開始する(S105)。
【0053】
動作制御部430は、計時を開始してから所定時間が経過したかどうかを判定し(S106)、所定時間が経過した場合(S106:YES)、ステップS103の処理に戻る。
【0054】
所定時間が経過していない場合(S106:NO)、検出部420は、ロボットハンド300に作用する回転方向Rγのトルクτγを検出する(S107)。このステップS106では、ロボットハンド300は、ワークWを保持した状態である。動作制御部430は、トルクτγの情報を検出部420から取得する。検出部420は、所定周期Δtでトルクτγを検出する。つまり、動作制御部430は、所定周期Δtごとに検出部420からトルクτγの情報を取得することになる。
【0055】
動作制御部430は、トルクτγが所定の値である閾値THを超えるか否かを判定する(S108)。閾値THは、HDD404に予め設定された値である。
【0056】
ステップS108では、動作制御部430は、ロボットハンド300に保持されたワークWが作業者Aによってひねられたかどうかを判定していることになる。第1実施形態では、動作制御部430は、ステップS102によって、ロボットアーム200が所定姿勢P0を維持するようにロボットアーム200を制御している。したがって、作業者AがワークWをひねっても、即ちロボットハンド300にトルクτγが作用しても、ロボットアーム200の姿勢は所定姿勢P0に維持される。
【0057】
動作制御部430は、トルクτγが閾値THを超えていない場合(S108:NO)、即ちτγ≦THの場合、ステップS106の処理に戻る。動作制御部430は、トルクτγが閾値THを超えない状態で所定時間が経過した場合(S106:YES)、ステップS103の処理に戻る。つまり、作業者Aが一定時間ワークWを回転操作しなければ、ステップS103の処理に戻る。
【0058】
動作制御部430は、トルクτγが閾値THを超える場合(S108:YES)、即ちτγ>THの場合、ロボットハンド300にワークWを解放させるようロボットハンド300のモータ371を制御する(S109)。以上のステップS105からステップS109の一連の処理が、制御処理である。動作制御部430は、制御処理として、トルクτに基づいてロボットハンド300にワークWを解放させるようロボットハンド300を制御する。そして、ステップS102からステップS109まで、動作制御部430は、ロボットアーム200を位置制御により制御する。
【0059】
このように、作業者Aが、ワークWを支えている状態でロボットハンド300をひねる単純な動作を実行するだけで、ワークWがロボットハンド300から解放される。よって、作業者Aは、ボタンを押すなどの操作を行うことなく、両手がふさがっていても、ワークWを受け取る準備ができたことを、簡単に制御装置400に知らせることが可能となる。制御装置400は、作業者AによるワークWの操作を、ロボットハンド300を解放するトリガとすることで、ロボット110から作業者AにワークWを確実に受け渡すことができる。そして、作業者Aによる操作でワークWの受け渡し作業が行われるので余計な待機時間を設ける必要がなく、ワークWの受け渡し作業においてタクト時間を短縮することができる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係るロボット装置100Aの説明図である。上記第1実施形態では、制御装置400がロボットアーム200に内蔵されたトルクセンサ291~296を用いてロボットハンド300に作用する力を検出する場合について説明した。第2実施形態では、ロボットアーム200Aは、トルクセンサの代わりに6軸の力覚センサ290Aを有する。ロボットアーム200Aにおいて、これ以外の構成は、第1実施形態のロボットアーム200と略同一であるため、説明を省略する。
【0061】
力覚センサ290Aは、リンク216に固定されている。即ち、力覚センサ290Aは、ロボットハンド300のハンド本体301とリンク216との間に配置されている。力覚センサ290Aは、ロボットハンド300を支持し、ロボットハンド300に作用する3軸の方向の並進力と、3軸まわりの回転力に応じた信号を出力するセンサである。3軸は、α軸、β軸及びγ軸である。第2実施形態では、制御装置400は、力覚センサ290Aを用いてロボットハンド300に作用する力を検出する。
【0062】
図7は、第2実施形態に係る制御装置の機能を説明するためのブロック図である。図2に示すCPU401がプログラム411を実行することにより、図7に示す検出部420A及び動作制御部430として機能する。なお、1つのCPU401で検出部420A及び動作制御部430の機能を実現する場合について説明するが、複数のCPUで検出部420A及び動作制御部430の機能を実現してもよい。また、CPU401がソフトウェアで検出部420Aの機能を実現する場合について説明するが、回路構成、即ちハードウェア構成で検出部420A及び動作制御部430を実現してもよい。また、図7は、制御の流れを説明するための図であって、ドライバの図示を省略している。検出部420Aは、力検出部421A及び姿勢検出部422を有する。
【0063】
姿勢検出部422は、第1実施形態で説明した通り、ロボットアーム200Aの姿勢Pを検出する。力検出部421Aは、力覚センサ290Aからの信号に基づき、力Fを検出する。第2実施形態では、力Fの検出には、演算処理も含まれる。力Fは、αβγ座標系における6次元の力ベクトルであり、各軸α、γ、βの方向の3つの並進力Fα、Fβ、Fγと、各軸α、β、γまわりの3つの回転力、即ち3つのトルクτα、τβ、τγを含む。
【0064】
力検出部421Aは、力Fの情報に基づいて、ロボットハンド300に作用する重力方向Gの力Fzを検出する。ロボットアーム200Aが所定姿勢P0に制御されていれば、重力方向Gの力Fzは、力Fγである。ロボットアーム200Aが所定姿勢P0のときにロボット110Aに外力が加わっていなければ、力Fz以外の力は0である。
【0065】
出部42Aは、ロボットアーム200Aの姿勢Pの情報、ロボットハンド300に作用するトルクτγの情報、及びロボットハンド300に作用する重力方向Gの力Fzの情報を、動作制御部430に出力する。
【0066】
動作制御部430及び検出部420Aは、第1実施形態で説明した図5に示す制御方法を実行する。よって、第2実施形態においても、図3(a)に示す作業者Aが、ワークWを支えている状態でロボットハンド300をひねる単純な動作を実行するだけで、ワークWがロボットハンド300から解放される。よって、作業者Aは、ボタンを押すなどの操作を行うことなく、両手がふさがっていても、ワークWを受け取る準備ができたことを、簡単に制御装置400に知らせることが可能となる。制御装置400は、作業者AによるワークWの操作を、ロボットハンド300を解放するトリガとすることで、ロボット110Aから作業者AにワークWを確実に受け渡すことができる。そして、作業者Aによる操作でワークWの受け渡し作業が行われるので余計な待機時間を設ける必要がなく、ワークWの受け渡し作業においてタクト時間を短縮することができる。
【0067】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。図8は、第3実施形態に係る制御方法のフローチャートである。第3実施形態では、ロボット装置の構成は、第1実施形態と同様であり、制御装置によるロボットの制御方法が異なる。そのため、第3実施形態の説明において、装置構成については、図1図4を適宜参照し説明を省略する。また、図8に示すフローチャートにおいて、図5に示すフローチャートのステップと同様の処理をするステップについては、説明を省略する。
【0068】
図2に示す制御部の一例であるCPU401がプログラム411を実行することにより、図4に示す検出部420及び動作制御部430として機能する。図8において、ステップS201~S204の処理は、図5に示すステップS101~S104の処理と同様である。
【0069】
第3実施形態では、ステップS205において、動作制御部430は、ロボットアーム200の制御を、位置制御から力制御に切り替える。ステップS205において、動作制御部430は、ロボットアーム200の関節J6に対応するトルク指令値を、十分小さい値τC1に設定する。これにより、ロボットハンド300は、図3(b)に示す回転方向Rγにトルクτγが作用すると、トルクτγが作用する回転方向Rγに回転可能となる。即ち、動作制御部430は、ロボットハンド300に作用するトルクτγに倣ってロボットハンド300が回転するようロボットアーム200を制御する。
【0070】
図8において、ステップS206~S209の処理は、図5に示すステップS105~S108の処理と同様である。なお、第3実施形態では、値τC1と閾値THは同じ値である。
【0071】
動作制御部430は、トルクτγが閾値THを超える場合(S209:YES)、即ちτγ>THの場合、回転角度が増加するのに応じて関節J6に対応するトルク指令値を値τC1よりも増加させる(S210)。図9は、第3実施形態に係るロボットハンド300の回転動作の説明図である。なお、図9において、回転させる前のロボットハンド300及びワークWを実線で示し、回転させた後のロボットハンド300及びワークWを破線で示す。
【0072】
ステップS210の処理について詳細に説明する。動作制御部430は、ロボットハンド300がトルクτγに倣って回転するに連れ、トルクτγによるロボットハンド300の回転方向Rγとは逆方向Rγ’にロボットハンド300に加えるトルクを増加させるよう、ロボットアーム200を制御する。その際、動作制御部430は、ロボットハンド300の回転方向Rγの回転角度が増加するに従って、トルク指令値を予め設定された上限値τC2以下の範囲で増加させる。ここで、第3実施形態では、τC1<τC2の関係を満たしている。これにより、動作制御部430は、作業者によってロボットハンド300に回転力が加えられた際に、ロボットハンド300が回転方向Rγに徐々に重たくなるような感触を作業者に与えることができる。
【0073】
動作制御部430は、ロボットハンド300がトルクτγに倣って所定角度θγ回転した場合、ロボットハンド300の回転を停止させるようロボットアーム200を制御する(S211)。即ち、動作制御部430は、ロボットアーム200の関節J6の回転を停止させる。具体的には、動作制御部430は、関節J6が所定角度θγ回転した場合、ロボットアーム200の関節J6の制御を、トルク制御から位置制御に切り替えることで、関節J6の回転を停止させる。
【0074】
以上のステップS210及びS211、特にステップS211の処理により、作業者は、これからロボットハンド300がワークWを解放することを認識することができる。なお、動作制御部430は、ステップS211において、ロボットハンド300が所定角度回転した後にロボットハンド300の回転を停止させる際に、ロボットハンド300が小刻みに振動するようにロボットアーム200を制御してもよい。
【0075】
動作制御部430は、ロボットハンド300の回転を停止させた後、ロボットハンド300にワークWを解放させるようロボットハンド300のモータ371を制御する(S212)。以上のステップS205からステップS212の一連の処理が、制御処理である。
【0076】
以上、第3実施形態によれば、第1実施形態と同様、作業者Aが、ワークWを支えている状態でロボットハンド300をひねる単純な動作を実行するだけで、ワークWがロボットハンド300から解放される。よって、作業者Aは、ボタンを押すなどの操作を行うことなく、両手がふさがっていても、ワークWを受け取る準備ができたことを、簡単に制御装置400に知らせることが可能となる。制御装置400は、作業者AによるワークWの操作を、ロボットハンド300を解放するトリガとすることで、ロボット110から作業者AにワークWを確実に受け渡すことができる。そして、作業者Aによる操作でワークWの受け渡し作業が行われるので余計な待機時間を設ける必要がなく、ワークWの受け渡し作業においてタクト時間を短縮することができる。
【0077】
なお、第3実施形態では、ロボットアームが第1実施形態と同様の構成である場合について説明したが、これに限定するものではなく、ロボットアームが第2実施形態と同様の構成であってもよい。
【0078】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されない。
【0079】
第1~第3実施形態では、ロボットアームが垂直多関節のロボットアームである場合について説明したが、これに限定するものではない。ロボットアームが、例えば、水平多関節のロボットアーム、パラレルリンクのロボットアーム、直交ロボット等、種々のロボットアームであってもよい。
【0080】
第1~第3実施形態では、ロボットアームの所定姿勢P0がロボットハンドを真下に向ける姿勢である場合について説明したが、これに限定するものではない。例えばロボットアームの所定姿勢が、ロボットハンドが重力方向に対して傾く姿勢であってもよいし、ロボットハンドを真上に向ける姿勢であってもよい。いずれの姿勢であっても、ロボットハンドに作用する重力方向の力を検出することは可能である。
【0081】
第1実施形態では、図5に示すように、ステップS103において力Fzを検出する場合について説明したが、これに限定するものではなく、ステップS103及びステップS104の処理を省略してもよい。同様に、第3実施形態では、ステップS203において力Fzを検出する場合について説明したが、これに限定するものではなく、ステップS203及びステップS204の処理を省略してもよい。
【0082】
また上述した種々の実施形態では、インタフェース装置を制御装置400で構成した場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、上述した種々の実施形態を実行可能なCPUを有するマイクロコンピュータを搭載したエンドエフェクタで、インタフェース装置を構成してもよい。この際、作業者がエンドエフェクタにトルクを与えることでワークを解放させる指令をマイクロコンピュータに入力するように構成してもよい。
【0083】
また上述した種々の実施形態では、ロボット装置100から作業者へワークを受け渡す場合を例に説明したが、このワークの受け渡しは、物品を製造する工程の中の一部であってもよい。物品を製造する工程としては、例えばロボット装置100に第1部材を保持させ、ロボット装置100により第1部材を第2部材に組み付ける工程であってもよい。物品を製造する工程において、ロボット装置100から作業者へ受け渡されるワークは、製造した物品であってもよい。また、ロボット装置100から作業者へ受け渡されるワークは、物品の製造に用いられる部材、例えば第1部材であってもよいし、第2部材であってもよい。
【0084】
また上述した種々の実施形態は、制御装置に設けられる記憶装置の情報に基づき、伸縮、屈伸、上下移動、左右移動もしくは旋回の動作またはこれらの複合動作を自動的に行うことができる機械に適用可能である。
【0085】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0086】
100…ロボット装置、110…ロボット、200…ロボットアーム、300…ロボットハンド(エンドエフェクタ)、400…制御装置(インタフェース装置)、401…CPU(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9