(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】液体収容パック
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
B41J2/175 143
B41J2/175 153
(21)【出願番号】P 2020033479
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】池亀 健
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065373(JP,A)
【文献】特開2005-199496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置に供給される液体を収容する扁平な可撓性の袋体と、前記袋体の内部
から液体を導出する構造体とを有する液体収容パックであって、
前記構造体は、
前記液体吐出装置に液体を供給するための供給口と、
前記袋体に接合され、前記供給口と連通する流路を有する流路形成部材と、
前記流路形成部材に連結された棒状の連結部材と、
前記連結部材に連結され、所定の基準面に対して対称な外形を有する
スペーサ部材と、
前記流路形成部材と前記スペーサ部材とに接続された液体導入管と、を有し、
前記液体収容パックを水平面に載置した状態で、
前記スペーサ部材は、前記袋体の内部の液体を取り込むために開口し、前記基準面に対して上方に位置する第1の液体取込口と、前記基準面に対して下方に位置する第2の液体取込口とを有し、
前記液体導入管は、前記流路形成部材の前記流路と前記第1の液体取込口とを連通する第1の液体導入管と、前記流路形成部材の前記流路と前記第2の液体取込口とを連通する第2の液体導入管とを有し、
前記スペーサ部材の前記基準面
は、前記供給口および前記連結部材の中心軸に沿って延びているとともに、前記袋体の厚み方向の中心を通り前記厚み方向に垂直な前記袋体の中心面
に対して下方にずれ
ている、液体収容パック。
【請求項2】
前記スペーサ部材は、該スペーサ部材がずれた
下方側で対向する前記袋体の内面と接触していない、請求項1に記載の液体収容パック。
【請求項3】
前記第2の液体取込口は、前記第1の液体取込口よりも大きい開口径を有する、請求項
1に記載の液体収容パック。
【請求項4】
前記スペーサ部材は、前記液体導入
管を両側から挟むように前記連結部材に沿って前記流路形成部材に向かって延びる部分を有する、請求項
1に記載の液体収容パック。
【請求項5】
前記袋体は、前記中心面に対して対称な形状を有する、請求項
1に記載の液体収容パック。
【請求項6】
上面が開口する直方体状のケースに、前記スペーサ部材がずれた
下方側が前記ケースの底面に対向するように収容される、請求項
1に記載の液体収容パック。
【請求項7】
液体吐出装置に供給される液体を収容する扁平な可撓性の袋体と、前記袋体の内部から液体を導出する構造体とを有する液体収容パックであって、
前記構造体は、
前記液体吐出装置に液体を供給するための供給口と、
前記袋体に接合され、前記供給口と連通する流路を有する流路形成部材と、
前記流路形成部材に連結された棒状の連結部材と、
前記連結部材に連結され、所定の基準面に対して対称な外形を有するスペーサ部材と、
前記流路形成部材と前記スペーサ部材とに接続された液体導入管と、を有し、
前記液体収容パックを水平面に載置した状態で、
前記スペーサ部材は、前記袋体の内部の液体を取り込むために開口し、前記基準面に対して上方に位置する第1の液体取込口と、前記基準面に対して下方に位置する第2の液体取込口とを有し、
前記液体導入管は、前記流路形成部材の前記流路と前記第1の液体取込口とを連通する第1の液体導入管と、前記流路形成部材の前記流路と前記第2の液体取込口とを連通する第2の液体導入管とを有し、
前記流路形成部材は、前記供給口および前記流路形成部材の中心軸が前記袋体の厚み方向の中心を通り前記厚み方向に垂直な前記袋体の中心面に含まれるように前記袋体に接合され、
前記スペーサ部材の前記基準面は、前記連結部材が前記中心軸に対して斜め下方に延びることで前記中心面に対して下方にずれている、液体収容パック。
【請求項8】
前記スペーサ部材は、該スペーサ部材がずれた下方側で対向する前記袋体の内面と接触していない、請求項7に記載の液体収容パック。
【請求項9】
前記第2の液体取込口は、前記第1の液体取込口よりも大きい開口径を有する、請求項7に記載の液体収容パック。
【請求項10】
前記スペーサ部材は、前記液体導入管を両側から挟むように前記連結部材に沿って前記流路形成部材に向かって延びる部分を有する、請求項7に記載の液体収容パック。
【請求項11】
前記袋体は、前記中心面に対して対称な形状を有する、請求項7に記載の液体収容パック。
【請求項12】
上面が開口する直方体状のケースに、前記スペーサ部材がずれた下方側が前記ケースの底面に対向するように収容される、請求項7に記載の液体収容パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容パックに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置などの液体吐出装置には、可撓性を有する扁平な袋体の内部にインクなどの液体を収容した液体収容パックを備えたものがある。このような液体収容パックでは、液体の消費に伴って可撓性の袋体が収縮しても、液体吐出装置に安定して液体を供給することが求められる。特許文献1には、袋体の内部にスペーサ部材を設けることで、袋体内の流路が閉塞することを抑制する液体収容パックが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の液体収容パックでは、袋体の収縮が進行すると、特にスペーサ部材の下側の部分や端部に意図しない撓みが発生する可能性がある。その結果、袋体の撓んだ部分に沈降成分を多く含む濃度の高い液体が使用されずに残留してしまい、液体吐出装置に供給される液体の濃度が不均一になるおそれがある。
そこで、本発明の目的は、液体の残量によらず均一な濃度で安定して液体を供給することができる液体収容パックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の液体収容パックは、液体吐出装置に供給される液体を収容する扁平な可撓性の袋体と、袋体の内部から液体を導出する構造体とを有し、構造体は、液体吐出装置に液体を供給するための供給口と、袋体に接合され、供給口と連通する流路を有する流路形成部材と、流路形成部材に連結された棒状の連結部材と、連結部材に連結され、所定の基準面に対して対称な外形を有するスペーサ部材と、流路形成部材とスペーサ部材とに接続された液体導入管と、を有し、液体収容パックを水平面に載置した状態で、スペーサ部材は、袋体の内部の液体を取り込むために開口し、基準面に対して上方に位置する第1の液体取込口と、基準面に対して下方に位置する第2の液体取込口とを有し、液体導入管は、流路形成部材の流路と第1の液体取込口とを連通する第1の液体導入管と、流路形成部材の流路と第2の液体取込口とを連通する第2の液体導入管とを有している。一態様では、スペーサ部材の基準面は、供給口および連結部材の中心軸に沿って延びているとともに、袋体の厚み方向の中心を通り厚み方向に垂直な袋体の中心面に対して下方にずれている。他の態様では、流路形成部材は、供給口および流路形成部材の中心軸が袋体の厚み方向の中心を通り厚み方向に垂直な袋体の中心面に含まれるように袋体に接合され、スペーサ部材の基準面は、連結部材が中心軸に対して斜め下方に延びることで中心面に対して下方にずれている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液体の残量によらず均一な濃度で安定して液体を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の液体収容パックが使用される液体吐出装置の斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る液体収容パックおよびケースの斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係る液体収容パックの断面図および正面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る袋体内部の構成を示す図である。
【
図5】液体の残量に応じた袋体の状態の変化を示す正面図である。
【
図6】第1の実施形態に係るスペーサ部材の一変形例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係るスペーサ部材の他の変形例を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る液体収容パックの断面図および正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本明細書では、本発明の液体収容パックとして、インクジェット記録装置(液体吐出装置)に供給されるインク(液体)を収容する場合を例に挙げて説明するが、液体収容パックの用途はこれに限定されるものではない。本発明の液体収容パックは、例えば、インク以外の他の液体を吐出する各種の液体吐出装置にも使用可能である。なお、ここでいう「液体」とは、液相の状態にある材料だけでなく、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども含み、その代表例としては、インクの他、液晶などが挙げられる。また、ここでいう「インク」とは、沈降成分としての顔料が溶媒中に分散されたものであり、一般的な水性インクおよび油性インクの他、ジェルインク、ホットメルトインクなどの各種の液状組成物を包含するものである。
【0009】
図1は、本発明の液体収容パックが使用される液体吐出装置の斜視図である。
液体吐出装置11は、直方体状の筐体12と、筐体12内に設けられた液体吐出ヘッド(図示せず)とを有し、液体吐出ヘッドから液体としてのインクを吐出して記録媒体(図示せず)に画像を記録するインクジェット記録装置である。液体吐出ヘッドは、記録媒体の搬送方向と交差する方向に往復移動するシリアルヘッドであってもよく、往復移動することなく装置本体に固定されたラインヘッドであってもよい。
また、液体吐出装置11は、液体吐出ヘッドに供給される液体を収容する液体収容パック20と、液体収容パック20を着脱可能に収容するケース13とを有している。液体収容パック20を収容したケース13は、筐体12の前面に開口する装着部14内に挿入されて着脱可能に装着される。なお、ケース13は、液体収容パック20を収容しない単体の状態でも装着部14に装着可能である。装着部14は、筐体12の幅方向に複数(図示した例では4つ)並んで設けられ、装着部14の開口には、装着部14を開閉可能に覆うカバー15が設けられている。
【0010】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る液体収容パックとケースの斜視図であり、
図2(a)は、液体収容パックがケースに収容された様子を示し、
図2(b)は、液体収容パックがケースから取り出された様子を示している。
液体収容パック20は、液体を収容する扁平な可撓性の袋体60と、アダプタ61とを有し、上面が開口する直方体状のケース13の底面に袋体60の一方の面が対向するようにケース13に収容される。なお、以下の説明では、便宜上、液体収容パック20について、ケース13の長辺に沿った液体吐出装置11に対する装着方向(図中の白抜き矢印参照)の下流側を「前」とし、上流側を「後」とする。また、装着方向を向いたときの左右方向(ケース13の短辺方向)における左側を「左」、右側を「右」とし、水平面に載置した状態での上下方向(袋体60の厚み方向)における上側を「上」、下側を「下」とする。
【0011】
袋体60は、長方形状の2枚のフィルム60a,60bからなり、互いに重ねられた2枚のフィルム60a,60bの周縁部同士を接合することで形成されたピロータイプの袋である。アダプタ61は、液体収容パック20を液体吐出装置11に接続するためのものであり、袋体60の前端部に取り付けられている。袋体60に収容された液体は、アダプタ61の前面に露出する液体供給部52を通じて、液体吐出装置11に導入される。
袋体60を構成するフィルム60a,60bは、可撓性とガスバリア性を有する材料から形成され、そのような材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリエチレンなどが挙げられる。袋体60を構成するフィルム60a,60bは、複数の層からなる積層フィルムであってもよく、例えば、外層が耐衝撃性に優れたPETまたはナイロンから形成され、内層が耐インク性に優れたポリエチレンから形成されていてもよい。さらに、複数の層の1つがアルミニウムなどを蒸着した層であってもよい。
【0012】
図3(a)は、本実施形態の液体収容パックを示す、
図2(b)のA-A線に沿った断面図である。
図3(b)は、本実施形態の袋体を前方から見た正面図である。なお、
図3は、液体収容パック20が使用される前の、袋体60が液体で満たされている状態を示している。
液体収容パック20は、袋体60の前端部に接合された流路形成部材66と、袋体60の内部に設けられたスペーサ部材90と、流路形成部材66とスペーサ部材90とを連結する棒状の連結部材85とを有している。流路形成部材66は、液体吐出装置11に液体を供給するための供給口52aを有する円筒状の液体供給部52を一体的に有するとともに、供給口52bに連通する流路(図示せず)を内部に有している。流路形成部材66内の流路は、2本の液体導入管81,82からなる液体導入部80を通じて、スペーサ部材90に形成された2つの液体取込口92,93(
図4参照)に連通している。流路形成部材66は、供給口52aの中心軸Xに対して上下非対称な形状を有している。これにより、流路形成部材66が2枚のフィルム60a,60bの間に接合されると、供給口52aの中心軸Xは、液体で満たされているときの袋体60の厚み方向(上下方向)の中心を通り厚み方向に垂直な袋体60の中心面P1から下方にずれることになる。ここで、下方とは、図中の上下矢印で示される方向に関して中心面P1より下となる方向を示しているが、例えば
図2において液体収容パック20を収容するケース13に関して中心面P1から底面に向かう方向であると表現することもできる。また、ケース13に収容された液体パック20を液体吐出装置11に装着した状態で、重力方向に関して中心面P1より下となる方向を下方と表現することもできる。なお、流路形成部材66の形状は、流路形成部材66が袋体60に接合されたときに供給口52bの中心軸Xが袋体60の中心面P1からずれるようになっていれば、他の形状であってもよい。
【0013】
スペーサ部材90は、袋体60の内部に一定の容積を区画するためのものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂によって形成されている。スペーサ部材90は、詳細は後述するが、所定の基準面P2に対して対称な上面91aおよび下面91bからなる外形を有している。加えて、スペーサ部材90は、基準面P2が袋体60の中心面P1と平行になるとともに、基準面P2を含む平面(以下、単に「基準面」ともいう)上に流路形成部材66の供給口52bの中心軸Xが位置するように、流路形成部材66に支持されている。換言すると、スペーサ部材90は、袋体60が液体で満たされている状態において、面対称の基準面P2が袋体60の中心面P1から下方にずれて配置されている。スペーサ部材90のこのような配置による効果については後述する。
なお、ここでいう「外形」とは、平坦または平滑な面で構成されたものだけでなく、溝や凹部などが形成された面、突起や凸部が形成された面、枠で囲われた仮想的な面で構成されたものをも含む概念である。つまり、「外形」を構成する面が全体として把握可能であれば、その面が占める一定領域に凹凸や貫通穴が形成されていてもよい。また、連結部材85は省略されていてもよく、スペーサ部材90が流路形成部材66に直接固定されていてもよい。
【0014】
図4(a)および
図4(b)は、それぞれ袋体内部の構成を示す側面図および平面図であり、
図4(c)は、スペーサ部材を後方から見た正面図である。
スペーサ部材90は、上述したように、基準面P2に対して対称な上面91aおよび下面91bを有している。上面91aは、後斜め上方、左斜め上方、および右斜め上方をそれぞれ向いた3つの傾斜面から構成され、下面91bも、後斜め下方、左斜め下方、および右斜め下方をそれぞれ向いた3つの傾斜面から構成されている。上面91aおよび下面91bは、前方から後方にかけてスペーサ部材90の厚み(上下方向の長さ)が小さくなるように形成されている。このため、スペーサ部材90は、左右方向から見たとき(
図4(a)参照)、後方に向けて尖った形状を有している。また、上面91aおよび下面91bは、前後方向から見たとき(
図4(c)参照)、左右方向の中央部から端部に向けてスペーサ部材90の厚みが小さくなるように形成されている。なお、スペーサ部材90の上面91aおよび下面91bは、
図4(b)に示すように、流路形成部材66の供給口52aの中心軸Xを含み基準面P2に垂直な面に対しても対称に形成されている。
【0015】
また、スペーサ部材90には、それぞれ後方に向けて開口する2つの液体取込口92,93が形成されている。第1の液体取込口92は、袋体60内部の比較的上側にある液体を取り込むために、基準面P2よりも上側の領域に形成されている。第2の液体取込口93は、袋体60内部の比較的下側にある液体を取り込むために、基準面P2を挟んで第1の液体取込口92の反対側、すなわち、基準面P2よりも下側の領域に形成されている。スペーサ部材90の上面91aおよび下面91bには、液体取込口92,93に連通する縦溝96と、縦溝96に連通する横溝97とが形成され、縦溝96と横溝97は、液体取込口92,93に向かって液体が流れる流路を構成する。
液体導入部80は、例えば、それぞれがエラストマーで形成された弾性を有するチューブからなる2本の液体導入管81,82を有している。2本の液体導入管81,82は、本実施形態では同じ長さを有し、前端部で流路形成部材66に接続され、後端部でスペーサ部材90に接続されている。第1の液体導入管81は、前端部で流路形成部材66内の流路に連通し、後端部で第1の液体取込口92に連通している。第2の液体導入管82は、前端部で流路形成部材66内の流路に連通し、後端部で第2の液体取込口93に連通している。
【0016】
このようなスペーサ部材90および液体導入部80の構成により、液体の消費に伴って袋体60の収縮が進行しても、袋体60内部の流路が閉塞しにくくなり、液体吐出装置11に対して安定した液体供給ができなくなる可能性を低減することができる。また、第1の液体取込口92から濃度の低い液体が取り込まれ、第2の液体取込口93から濃度の高い液体が取り込まれ、それらが流路形成部材66内で混合されて液体吐出装置11に供給される。このとき、取り込まれた液体は、第1および第2の液体導入管81,82を上下方向に並んで流れる状態から水平方向に並んで流れる状態に変換された後で、流路形成部材66内で混合される。そのため、液体吐出装置11に供給される液体の濃度をより安定させることができる。
なお、第1および第2の液体導入管81,82の配置は、後端部で上下方向に並んで配置され、前端部で左右方向に並んで配置される形態に限定されず、後端部だけでなく前端部でも上下方向に並んで配置される形態であってもよい。また、第1の液体取込口92と第2の液体取込口93の大きさ(開口径)にも特に制限はなく、液体中の沈降成分の状態に応じて適切な大きさを選択することができる。ただし、沈降成分をより多く含む高濃度の液体を吸い込みやすくして、元来の濃度に近い濃度での液体供給が可能になる点で、第2の液体取込口93の開口径が第1の液体取込口92の開口径よりも大きいことが好ましい。また、液体導入部80を構成する液体導入管の本数は2本に限定されず、3本以上であってもよい。一方、連結部材85が省略され、スペーサ部材90が流路形成部材66に直接固定されている場合には、流路導入部80も省略されていてよい。
【0017】
ところで、液体の消費に伴って袋体60は収縮するが、収縮が発生する位置や収縮の状態は、袋体60内部のスペーサ部材90の位置によって異なる。そのため、場合によっては、袋体60に意図しない撓みが発生することがある。例えば、スペーサ部材90の基準面P2が袋体60の中心面P1と一致する位置や、中心面P1に対して上方にずれた位置にある場合、スペーサ部材90の下側の部分や端部に好ましくない撓みが発生することがある。すなわち、このような撓んだ部分に、沈降成分をより多く含む濃度の高い液体が使用されずに残留してしまい、液体吐出装置11に供給される液体の濃度が不均一になるおそれがある。
これに対し、本実施形態のスペーサ部材90は、上述したように、袋体60が液体で満たされている状態において、面対称の基準面P2が袋体60の中心面P1から下方にずれて配置されている。これにより、袋体60の収縮に伴って袋体60に意図しない撓みが発生することを抑制することができる。以下、スペーサ部材90によるこのような効果について、
図5を参照しながら説明する。
図5(a)から
図5(d)は、液体の残量に応じた袋体の状態の変化を前方から見た正面図である。
図5(a)は、液体の残量が最も多い使用前の状態(袋体が液体で満たされている状態)を示し、
図5(d)は、液体の残量が最も少ない使用後の状態を示している。
【0018】
図5(a)に示す使用前の状態では、袋体60の内面は、スペーサ部材90の上端部と下端部のいずれとも接触していない。この状態から液体を消費すると、袋体60が潰れていき、
図5(b)に示すように、まず上側フィルム60aの内面がスペーサ部材90の上端部と接触し始める。さらに液体を消費すると、袋体60は、上側フィルム60aの内面がスペーサ部材90の上面91aと接触しながら潰れていく。そして、
図5(c)に示すように、スペーサ部材90の上面91aのほぼ全てが上側フィルム60aの内面と接触した状態になる。このとき、袋体60内部の下側の領域には重力の影響で液体が溜まりやすいため、下側フィルム60bの内面は、スペーサ部材90の下面91bと全面では接触していない状態である。そして、液体を使い切るまで消費すると、
図5(d)に示すように、スペーサ部材90の下面91bのほぼ全てが下側フィルム60bの内面と接触した状態になる。
このように、本実施形態のスペーサ部材90の配置によれば、袋体60は、液体の消費に伴って収縮する際に、下側フィルム60bの最下部が撓まずにスペーサ部材90と接触しつつ、左右方向の端部も撓まずに潰れることができる。したがって、袋体60の収縮が進行しても、袋体60の左右方向の端部は常に上側に反り上がり、沈降成分をより多く含む濃度の高い液体をスペーサ部材90の第2の液体取込口93の近傍に集めることができる。その結果、袋体60のうちスペーサ部材90の下側の部分や端部に濃度の高い液体が使用されずに残留することを抑制することができ、液体収容パック20内の液体の残量によらず均一な濃度で液体吐出装置11に液体を供給することができる。
【0019】
なお、袋体60が液体で満たされているときにスペーサ部材90の下端部が下側フィルム60bの内面と接触しない限り、袋体60の中心面P1からのスペーサ部材90のずれはどの程度であってもよい。ただし、2つの液体取込口92,93から取り込まれる液体の濃度を考慮すると、スペーサ部材90は、あまり大きくずれていないことが好ましく、具体的には、第1の液体取込口92が袋体60の中心面P1よりも下側になるまでずれていないことが好ましい。すなわち、スペーサ部材90のずれは、第1の液体取込口92と基準面P2との間に袋体60の中心面P1が位置する程度であることが好ましい。また、袋体60は、液体で満たされているときに中心面P1に対して対称になることが好ましいが、袋体60の形状はこれに限定されない。
【0020】
ここで、
図6および
図7を参照して、本実施形態のスペーサ部材90の変形例について説明する。
図6(a)は、本実施形態のスペーサ部材の一変形例を示す平面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のB-B線に沿った断面図である。
図7(a)は、本実施形態のスペーサ部材の他の変形例を示す平面図であり、
図7(b)は、
図7(a)のC-C線に沿った断面図である。
図6および
図7に示す変形例では、スペーサ部材90は、液体導入部80を左右方向の両側から挟むように連結部材85に沿って前方に延びる前端部94を有している。前端部94におけるスペーサ部材90の上面91aおよび下面91bは、
図6に示す変形例では、上述した実施形態と同様に基準面P2に対して対称であるのに対し、
図7に示す変形例では、供給口52aの中心軸Xに対して対称である。また、前端部94における上面91aおよび下面91bはそれぞれ、いずれの変形例でも、後方から前方にかけてスペーサ部材90の厚み(上下方向の長さ)と幅(左右方向の長さ)の少なくとも一方が小さくなるように形成された傾斜面から構成されている。このような前端部94を設けることで、液体の消費に伴う袋体60の収縮の過程を袋体60全体で制御することが可能になり、より最後まで均一な濃度で液体吐出装置11に液体を供給することができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図8(a)は、本発明の第2の実施形態に係る液体収容パックの、
図3(a)に対応する断面図である。
図8(b)は、本実施形態の袋体を前方から見た正面図である。なお、
図8も、
図3と同様に、液体収容パック20が使用される前の、袋体60が液体で満たされている状態を示している。
本実施形態では、流路形成部材66と連結部材85の構成が第1の実施形態と異なっている。具体的には、流路形成部材66は、供給口52aの中心軸Xに対して対称に形成され、その中心軸Xが袋体60の中心面P1上に位置するように袋体60に接合されている。これに伴い、連結部材85は、第1の実施形態では、流路形成部材66の供給口52bの中心軸Xに沿って延びているが、本実施形態では、流路形成部材66の供給口52aの中心軸Xに対して斜めに延びている。これにより、本実施形態においても、スペーサ部材90の基準面P2を袋体60の中心面P1から下方にずらすことができ、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態のその他の構成および効果は、第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態に対して適用可能な変更は、本実施形態においても同様に可能である。したがって、例えば、本実施形態においても、連結部材85と流路導入部80が省略され、スペーサ部材90が流路形成部材66に直接固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0022】
20 液体収容パック
60 袋体
90 スペーサ部材
P1 (袋体の)中心面
P2 (スペーサ部材の)基準面