(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】太陽電池および太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0747 20120101AFI20240325BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
H01L31/06 455
H01L31/04 420
(21)【出願番号】P 2020043254
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】小西 克典
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦裕
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-504636(JP,A)
【文献】特開2005-101151(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163786(WO,A1)
【文献】特開2018-050005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0034119(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0206375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域、および前記第1領域の第1導電型半導体層上に形成された第2導電型半導体層とを備える裏面接合型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域および前記第2領域に、真性半導体層を形成する真性半導体層形成工程と、
前記真性半導体層の上にリフトオフ層を形成した後、エッチング溶液を用いて前記第1領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第2領域に、パターン化された前記リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、
前記第1領域における前記真性半導体層の上、および前記第2領域における前記リフトオフ層の上に、前記第1導電型半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記第2領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第2領域における前記第1導電型半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域における前記真性半導体層を残しつつ、前記第1領域に、パターン化された前記第1導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記第1領域における前記第1導電型半導体層の上、および前記第2領域における前記真性半導体層の上に、前記第2導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、
を含
み、
前記第1半導体層形成工程において、
剥離された前記第2領域における前記第1導電型半導体層の材料膜の粒子が、前記第1領域における前記第1導電型半導体層の表面側に付着し、
前記第1領域における前記第1導電型半導体層の表面側に付着する前記第1導電型半導体層の材料膜の粒子のサイズは、1μm以上50μm以下であり、
前記第1領域における前記第1導電型半導体層の表面側に付着する前記第1導電型半導体層の材料膜の粒子の被覆率は、3%以上10%以下である、
太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記第2半導体層形成工程において、前記第2導電型半導体層の膜厚を3.5nm以上に形成する、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域、および前記第1領域の第1導電型半導体層上に形成された第2導電型半導体層とを備える裏面接合型の太陽電池であって、
前記第1領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、真性半導体層を介して、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層が順に積層されており、
前記第2領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記真性半導体層を介して、前記第2導電型半導体層が積層されており、
前記第1領域における前記真性半導体層と前記第2領域における前記真性半導体層とは、連なっており、
前記第1領域における前記第2導電型半導体層と前記第2領域における前記第2導電型半導体層とは、連なっており、
前記第1領域における前記第1導電型半導体層の表面側には、前記第1導電型半導体層の粒子が付着して
おり、
前記第1領域における前記第1導電型半導体層の表面側に付着している前記第1導電型半導体層の粒子のサイズは、1μm以上50μm以下であり、
前記第1領域における前記第1導電型半導体層の表面側に付着している前記第1導電型半導体層の粒子の被覆率は、3%以上10%以下である、
太陽電池。
【請求項4】
前記第2導電型半導体層の膜厚は、3.5nm以上である、
請求項3に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面接合型(バックコンタクト型、裏面電極型ともいう。)の太陽電池および太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いた太陽電池として、受光面側および裏面側の両面に半導体層が形成された例えばヘテロ接合型(以下、裏面接合型に対して両面接合型と称する。両面電極型ともいう。)の太陽電池と、裏面側のみに半導体層が形成された裏面接合型の太陽電池とがある。両面接合型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されるため、この電極により太陽光が遮蔽されてしまう。一方、裏面接合型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されないため、両面接合型の太陽電池と比較して太陽光の受光率が高い。特許文献1には、裏面接合型の太陽電池が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の太陽電池は、光電変換層として機能する半導体基板と、半導体基板の裏面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、半導体基板の裏面側の他の一部である第2領域、および第1領域の第1導電型半導体層上に形成された第2導電型半導体層とを備える。このような太陽電池によれば、第1導電型半導体層をパターニングした後、第2導電型半導体層を半導体基板の裏面側の全面に製膜すればよいので、製造プロセスの簡略化が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、第1導電型半導体層のパターニングにおいて、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法が用いられる。しかし、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法では、例えばスピンコート法によるフォトレジスト塗布、フォトレジスト乾燥、フォトレジスト露光、フォトレジスト現像、フォトレジストをマスクとして用いた半導体層のエッチング、およびフォトレジスト剥離のプロセスが必要であり、プロセスが複雑であった。
【0006】
本発明は、製造プロセスの簡略化が可能な太陽電池の製造方法および太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域、および前記第1領域の第1導電型半導体層上に形成された第2導電型半導体層とを備える裏面接合型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域および前記第2領域に、真性半導体層を形成する真性半導体層形成工程と、前記真性半導体層の上にリフトオフ層を形成した後、エッチング溶液を用いて前記第1領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第2領域に、パターン化された前記リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、前記第1領域における前記真性半導体層の上、および前記第2領域における前記リフトオフ層の上に、前記第1導電型半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、前記第2領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第2領域における前記第1導電型半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域における前記真性半導体層を残しつつ、前記第1領域に、パターン化された前記第1導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、前記第1領域における前記第1導電型半導体層の上、および前記第2領域における前記真性半導体層の上に、前記第2導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、を含む。
【0008】
本発明に係る太陽電池は、半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域、および前記第1領域の第1導電型半導体層上に形成された第2導電型半導体層とを備える裏面接合型の太陽電池であって、前記第1領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、真性半導体層を介して、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層が順に積層されており、前記第2領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記真性半導体層を介して、前記第2導電型半導体層が積層されており、前記第1領域における前記真性半導体層と前記第2領域における前記真性半導体層とは、連なっており、前記第1領域における前記第2導電型半導体層と前記第2領域における前記第2導電型半導体層とは、連なっており、前記第1領域における前記第1導電型半導体層の表面側には、前記第1導電型半導体層の粒子が付着している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、太陽電池の製造プロセスの簡略化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
【
図2】
図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。
【
図3A】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図である。
【
図3B】本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるリフトオフ層形成工程を示す図である。
【
図3C】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程を示す図である。
【
図3D】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
【
図3E】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0012】
(太陽電池)
図1は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図1に示す太陽電池1は、裏面接合型の太陽電池である。太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。
【0013】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向(X方向)に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向(Y方向)に延在する。
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第1方向(X方向)に交互に設けられている。
なお、第1領域7および第2領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0014】
図2は、
図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。
図2に示すように、太陽電池1は、半導体基板11と、半導体基板11の主面のうちの受光する側の一方の主面である受光面側に順に積層された真性半導体層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の他方の主面である裏面側に積層された真性半導体層23と、半導体基板11の裏面側の一部(第1領域7)の真性半導体層23上に積層された第1導電型半導体層25と、半導体基板11の裏面側の他の一部(第2領域8)の真性半導体層23上、および半導体基板11の裏面側の一部(第1領域7)の第1導電型半導体層25上に積層された第2導電型半導体層35とを備える。また、太陽電池1は、第1領域7に形成された第1電極層27と、第2領域8に形成された第2電極層37とを備える。
【0015】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0016】
半導体基板11は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、半導体基板11に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
また、半導体基板11は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板11における光閉じ込め効果が向上する。
【0017】
真性半導体層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。真性半導体層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7および第2領域8に連なって形成されている。真性半導体層13,23は、例えば真性(i型)アモルファスシリコンを主成分とする材料で形成される。
真性半導体層13,23は、いわゆるパッシベーション層として機能し、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0018】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側の真性半導体層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側および真性半導体層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0019】
第1導電型半導体層25は、半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。具体的には、第1導電型半導体層25は、第1領域7における真性半導体層23上に形成されている。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層である。
【0020】
第2導電型半導体層35は、半導体基板11の裏面側の第1領域7および第2領域8に連なって形成されている。具体的には、第2導電型半導体層35は、第1領域7における第1導電型半導体層25上、および第2領域8における真性半導体層23上に形成されている。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体層である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。
【0021】
第2導電型半導体層35の膜厚は、3.5nm以上であることが好ましい。第2導電型半導体層35の膜厚とは、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35等の積層方向の厚さであって、第1方向(X方向)および第2方向(Y方向)に交差する方向の厚さである。
また、第1領域7における第1導電型半導体層25の表面側には、第1導電型半導体層25の粒子25Aが付着している(詳細は後述する。)。
【0022】
なお、第1導電型半導体層25がp型半導体層であり、第2導電型半導体層35がn型半導体層であってもよい。この場合、半導体基板11は、結晶シリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体基板であってもよい。
【0023】
換言すれば、第1領域7には、半導体基板11の裏面側に、真性半導体層23を介して、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35が順に積層されている。第2領域8には、半導体基板11の裏面側に、真性半導体層23を介して、第2導電型半導体層35が積層されている。
【0024】
第1電極層27は、第1領域7における第2導電型半導体層35上に形成されており、第2電極層37は、第2領域8における第2導電型半導体層35上に形成されている。
第1電極層27は、第2導電型半導体層35上に順に積層された透明電極層28と金属電極層29とを有する。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に積層された透明電極層38と金属電極層39とを有する。
透明電極層28,38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)が挙げられる。金属電極層29,39は、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成される。
【0025】
(太陽電池の製造方法)
以下、
図3A~
図3Eを参照して、
図1および
図2に示す本実施形態の太陽電池1の製造方法について説明する。
図3Aは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図であり、
図3Bは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるリフトオフ層形成工程を示す図である。
図3Cは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程を示す図であり、
図3Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。また、
図3Eは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
【0026】
まず、
図3Aに示すように、例えばCVD法(化学気相堆積法)を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち第1領域7および第2領域8に、真性半導体層23を積層(製膜)する(真性半導体層形成工程)。
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、真性半導体層13および光学調整層15を積層(製膜)する。
【0027】
次に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち真性半導体層23上の全面に、リフトオフ層40を積層(製膜)する(リフトオフ層形成工程)。
【0028】
次に、
図3Bに示すように、エッチング溶液を用いて、半導体基板11の裏面側において、第1領域7におけるリフトオフ層40を除去することにより、第2領域8に、パターン化されたリフトオフ層40を形成する(リフトオフ層形成工程)。リフトオフ層40に対するエッチング溶液としては、例えばフッ酸、またはフッ酸と他の種類の酸との混合物が用いられる。
【0029】
次に、
図3Cに示すように、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち第1領域7における真性半導体層23上、および第2領域8におけるリフトオフ層40上に、第1導電型半導体層材料膜25Zを積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。
【0030】
次に、
図3Dに示すように、リフトオフ層40を用いたリフトオフ法を利用して、半導体基板11の裏面側の第2領域8における第1導電型半導体層材料膜25Zを除去し、第2領域8における真性半導体層23を残しつつ、第1領域7に、パターン化された第1導電型半導体層25を形成する(第1半導体層形成工程)。
【0031】
具体的には、エッチング溶液を用いて、半導体基板11の裏面側の第2領域8におけるリフトオフ層40をエッチング(除去)することにより、リフトオフ層40上の第1導電型半導体層材料膜25Zを除去し、第2領域8における真性半導体層23を残しつつ、第1領域7に第1導電型半導体層25を形成する。リフトオフ層40のエッチング溶液としては、例えばフッ酸等の酸性溶液が用いられる。
【0032】
また、このとき、リフトオフによって剥離された第2領域8の第1導電型半導体層の粒子25Aが第1領域7の第1導電型半導体層25の表面側に付着する。この粒子の付着を制御するために、エッチング後のリンス溶液として界面活性剤入りの水溶液が用いられる。界面活性剤としては、アニオン系の界面活性剤、カチオン系の界面活性剤、両性イオン系の界面活性剤、ノニオン系の界面活性剤、またはこれらの混合剤が挙げられる。
界面活性剤は、芳香族構造および長鎖直鎖状アルキル構造を含む有機酸であってもよい。これにより、高い界面活性作用と表面自由エネルギーの大きい溶媒(例えば、水)との親和性が向上する。
また、粒子の付着抑制剤としては、界面活性剤に加えて、安定剤、乳化剤、有機酸イオンと有機酸塩の緩衝液、および/またはpH調整剤などを含んでもよい。
【0033】
次に、
図3Eに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち第1領域7における第1導電型半導体層25上、および第2領域8における真性半導体層23上に、第2導電型半導体層35を形成する(第2半導体層形成工程)。
【0034】
次に、半導体基板11の裏面側に、第1電極層27および第2電極層37を形成する(電極層形成工程)。
具体的には、例えばスパッタリング法等のPVD法(物理気相成長法)を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、透明電極層材料膜を積層(製膜)する。その後、例えばエッチングペーストを用いたエッチング法を用いて、透明電極層材料膜の一部を除去することにより、透明電極層28,38のパターニングを行う。透明電極層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。
その後、例えばパターン印刷法または塗布法を用いて、透明電極層28上に金属電極層29を形成し、透明電極層38の上に金属電極層39を形成することにより、第1電極層27および第2電極層37を形成する。
【0035】
以上の工程により、
図1および
図2に示す本実施形態の裏面接合型の太陽電池1が得られる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池1および太陽電池の製造方法によれば、第1導電型半導体層25をパターニングした後、第2導電型半導体層35を半導体基板11の裏面側の全面に製膜すればよいので、製造プロセスの簡略化、短縮化、低コスト化が可能である。
また、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、製造プロセスの途中で、特に第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35を形成する際に、半導体基板11の主面が露出しないので、太陽電池の高いライフタイムを維持できる。
【0037】
更に、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、リフトオフ層40を用いたリフトオフ法を利用して第1導電型半導体層25のパターニングを行うので、太陽電池の製造プロセスの簡略化、短縮化、低コスト化が可能となる。
【0038】
また、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1半導体層形成工程において、真性半導体層23を残しつつリフトオフを行うので、リフトオフ層40を除去するエッチング溶液(HF)がリフトオフと同時に真性半導体層23の表面を洗浄し、太陽電池の性能が向上する。
【0039】
ここで、第2領域8の第2導電型半導体層(例えば、P型半導体層)35の性能低下を防ぐためには、第2導電型半導体層35の膜厚を厚くする必要がある(例えば、3.5nm以上)。しかし、第2導電型半導体層35の膜厚を厚くすると、第1領域7における第1導電型半導体層(例えば、N型半導体層)25と第2導電型半導体層(例えば、P型半導体層)35との間のトンネリング効率が低下し、膜厚方向の抵抗が高くなる。
【0040】
これに対して、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1半導体層形成工程においてリフトオフ法を利用するので、リフトオフによって剥離された第2領域8の第1導電型半導体層の粒子25Aが第1領域7の第1導電型半導体層25の表面側に付着する。これにより、第1領域7の第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35の間に第1導電型半導体層の粒子25Aが介在し、第1領域7における第1導電型半導体層(例えば、N型半導体層)25と第2導電型半導体層(例えば、P型半導体層)35との間のトンネル伝導性が向上し、界面抵抗および膜厚方向の抵抗増加が低減される。これにより、太陽電池のFF特性が上昇する。
このように、第1半導体層形成工程においてリフトオフ法を利用し、第2導電型半導体層35の膜厚を3.5nm以上とすることにより、第2領域8における第2導電型半導体層(例えば、P型半導体層)35の性能低下を防ぎ、第1領域7における第2導電型半導体層(例えば、P型半導体層)35の膜厚方向の抵抗増加を低減することができる。これにより、高性能な太陽電池を実現することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、
図2に示すようにヘテロ接合型の太陽電池1の製造方法を例示したが、本発明の特徴は、ヘテロ接合型の太陽電池に限らず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池の製造方法に適用可能である。
【0042】
また、上述した実施形態では、結晶シリコン基板を有する太陽電池を例示したが、これに限定されない。例えば、太陽電池は、ガリウムヒ素(GaAs)基板を有していてもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
図3A~
図3Eに示す太陽電池の製造方法により、
図1および
図2に示す太陽電池1を作製した。実施例1の太陽電池およびその製造方法の主な特徴は以下および表1の通りである。
第1導電型半導体層25:N型半導体層
第2導電型半導体層35:P型半導体層、膜厚3.5nm
第1領域7における第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35との間に介在する第1導電型半導体層の粒子25A:被覆率3%
ここで、被覆率とは、第1領域7における、すなわち第1導電型半導体層25上における粒子25Aの被覆率である。
【0045】
被覆率は、リフトオフ法を利用した第1半導体層形成工程において、エッチング後のリンス液の界面活性剤濃度を1.5vol%とすることにより調整した。界面活性剤としてはアニオン系のママレモン(ライオン株式会社製)(登録商標)を使用した。
【0046】
リフトオフ法を利用した第1半導体層形成工程後の、第1領域7における第1導電型半導体層25の表面を光学顕微鏡により観察すると、第1導電型半導体層25上には、第1導電型半導体層の粒子25Aが拡散して付着していた。粒子25Aのサイズとしては、1μm以上50μm以下であり、10μm以上20μm以下の粒子が多かった。
【0047】
被覆率及び粒子のサイズは、光学顕微鏡装置(型番:DSX510、オリンパス社製)を用いて測定した。
【0048】
(実施例2)
実施例1において、第1導電型半導体層25上の第1導電型半導体層の粒子25Aの被覆率が異なる。実施例2の太陽電池およびその製造方法の主な特徴は以下および表1の通りである。
第1領域7における第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35との間に介在する第1導電型半導体層の粒子25A:被覆率5%
被覆率は、リフトオフ法を利用した第1半導体層形成工程において、エッチング後のリンス液の界面活性剤濃度を1.0vol%とすることにより調整した。界面活性剤としてはアニオン系のママレモンを使用した。
【0049】
(実施例3)
実施例1において、第1導電型半導体層25上の第1導電型半導体層の粒子25Aの被覆率が異なる。実施例3の太陽電池およびその製造方法の主な特徴は以下および表1の通りである。
第1領域7における第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35との間に介在する第1導電型半導体層の粒子25A:被覆率10%
被覆率は、リフトオフ法を利用した第1半導体層形成工程において、エッチング後のリンス液の界面活性剤濃度を0.5vol%とすることにより調整した。界面活性剤としてはアニオン系のママレモンを使用した。
【0050】
(実施例4)
実施例1において、第1導電型半導体層25上の第1導電型半導体層の粒子25Aの被覆率が異なる。実施例4の太陽電池およびその製造方法の主な特徴は以下および表1の通りである。
第1領域7における第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35との間に介在する第1導電型半導体層の粒子25A:被覆率20%
被覆率は、リフトオフ法を利用した第1半導体層形成工程において、エッチング後のリンス液の界面活性剤濃度を0.1vol%とすることにより調整した。界面活性剤としてはアニオン系のママレモンを使用した。
【0051】
(実施例5)
実施例1において、第1導電型半導体層25上の第1導電型半導体層の粒子25Aの被覆率が異なる。実施例5の太陽電池およびその製造方法の主な特徴は以下および表1の通りである。
第1領域7における第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35との間に介在する第1導電型半導体層の粒子25A:被覆率30%
被覆率は、リフトオフ法を利用した第1半導体層形成工程において、エッチング後のリンス液の界面活性剤濃度を0.02vol%とすることにより調整した。界面活性剤としてはアニオン系のママレモンを使用した。
【0052】
(比較例1)
実施例1において、第1導電型半導体層25上に第1導電型半導体層の粒子25Aが介在しない点が異なる。比較例1の太陽電池およびその製造方法の主な特徴は以下および表1の通りである。
第1領域7における第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35との間に介在する第1導電型半導体層の粒子25A:被覆率0%
被覆率は、リフトオフ法を利用した第1半導体層形成工程において、エッチング後のリンス液の界面活性剤濃度を2.5vol%とすることにより調整した。界面活性剤としてはアニオン系のママレモンを使用した。
【0053】
AM1.5のスペクトル分布を有するパルスソーラーシミュレーターを用いて、25℃の下で擬似太陽光を100mW/cm2のエネルギー密度で照射して、上記の実施例および比較例の太陽電池の性能特性(開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FF、および変換効率Eff)を測定した。測定結果を表1に示す。
表1では、比較例1の出力特性結果を基準(1.00)とし、各実施例の評価結果を比較する事により、出力の相関を評価した。
【0054】
【0055】
表1によれば、第1領域7における第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35との間に第1導電型半導体層の粒子25Aが介在すると、太陽電池のFF特性が上昇することがわかる。特に、粒子25Aの被覆率が3%以上10%以下の場合に、FF特性の上昇が顕著であった。
【符号の説明】
【0056】
1 太陽電池
7 第1領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
8 第2領域
11 半導体基板
13,23 真性半導体層
15 光学調整層
25 第1導電型半導体層
25Z 第1導電型半導体層材料膜
27 第1電極層
28,38 透明電極層
29,39 金属電極層
35 第2導電型半導体層
37 第2電極層