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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】電子モジュール
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/00 20060101AFI20240325BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240325BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240325BHJP
   H01L 23/24 20060101ALI20240325BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
H05K5/00 B
H01L25/04 C
H01L23/24
G08B17/00 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020044096
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021145085
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大祐
(72)【発明者】
【氏名】松橋 寛丸
(72)【発明者】
【氏名】吉野 桜子
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-066442(JP,A)
【文献】特開平03-201595(JP,A)
【文献】特開2001-015880(JP,A)
【文献】特開2013-175693(JP,A)
【文献】特開2019-016689(JP,A)
【文献】特開2017-028796(JP,A)
【文献】特開2009-277881(JP,A)
【文献】特開2013-115270(JP,A)
【文献】特開2007-59701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00
H01L 25/07
H01L 23/24
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、
前記電子部品が実装された基板と、
前記電子部品と電気的に接続されるようにして前記基板に取り付けられた端部を有するリード線と、
一面に開口を有し、前記電子部品、前記基板、及び前記リード線の一部を収容するケースと、
前記ケース内に充填された充填物とを備え、
前記基板が前記ケースに収納された状態において、前記リード線の前記端部及び前記端部に連なる第1部分が前記ケース内に収容され、前記リード線の前記第1部分に連なる第2部分が前記開口から前記ケースの外に出ており、
前記基板の端部には切欠きが設けられ、
前記リード線の前記第1部分の一部が前記切欠きに配置されていて、前記基板の厚み方向において、前記第1部分の前記一部は前記切欠きと重なっており、
前記第1部分の前記一部と前記切欠きが設けられた前記基板の端面との間の空間に、前記充填物が充填されている
電子モジュール。
【請求項2】
前記ケースは、
前記基板の前記電子部品の実装面に沿って延びる上壁と、
前記上壁と対向する底と、
前記底から起立して前記上壁に至る一対の側壁と、
前記上壁、前記底及び前記一対の側壁に連なる後壁とを有し、
前記開口は、前記後壁に対向しており、
前記底の内面には、前記開口側から前記後壁側に向かって延びる第1リブが設けられ、
前記一対の側壁それぞれの内面には、前記開口側から前記後壁側に向かって延びる第2リブが設けられ、
前記側壁と前記上壁と前記後壁とに挟まれた角には、前記ケースの内側に突出した第3リブが設けられており、
前記第1リブの上に前記基板が載置され、
一対の前記第2リブの間に前記基板が配置され、
前記第3リブの下面の下に前記基板が配置されている
請求項1記載の電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装された基板を有する電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサなどの電子部品を異物から保護する技術として、電子部品をケースに収納してケース内を充填物で封止する、又は電子部品をエポキシ樹脂にディッピングして外装を形成する、という技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭64-12518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に例示されるような、ケース又は樹脂外装によって保護された電子モジュールは、様々な環境で使用されうる。例えば、電子モジュールは、湿度の高い空間、塩分を含んだ空気が流通する空間、又は腐食性ガスが流通する空間などで使用されることがあり、電子部品及びこれに接続されるリード線の、水、塩分及び腐食性ガスによる腐食を、長期間にわたって防ぐことが望まれる。
【0005】
また、特許文献1に例示されるような電子モジュールは、限られたスペースに組み込まれることもある。小さな収納スペースの筐体に電子モジュールを組み込む際には、電子モジュールのリード線が曲げられたり、電子モジュールが押し込まれたり、といったことが生じうる。特許文献1に示されたエポキシ樹脂のディッピングによって外装が形成された電子モジュールは、筐体へ組み込まれる際にリード線が曲げられると、リード線とその周囲の外装との間に隙間ができやすい。また、エポキシ樹脂のディッピングによって形成された外装は、固いため、電子モジュールが筐体へ組み込まれる際に強く押し込まれると、外装にひび割れが生じやすい。このようにして生じた隙間は、水、塩分及び腐食性ガスの侵入経路となってしまう。したがって、水、塩分、及び腐食性ガス等の異物が電子部品に接触しにくい電子モジュールが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を背景とした発明であり、電子部品への異物の接触を抑制できる電子モジュールを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子モジュールは、電子部品と、前記電子部品が実装された基板と、前記電子部品と電気的に接続されるようにして前記基板に取り付けられた端部を有するリード線と、一面に開口を有し、前記電子部品、前記基板、及び前記リード線の一部を収容するケースと、前記ケース内に充填された充填物とを備え、前記基板が前記ケースに収納された状態において、前記リード線の前記端部及び前記端部に連なる第1部分が前記ケース内に収容され、前記リード線の前記第1部分に連なる第2部分が前記開口から前記ケースの外に出ており、前記基板の端部には切欠きが設けられ、前記リード線の前記第1部分の一部が前記切欠きに配置されていて、前記基板の厚み方向において、前記第1部分の前記一部は前記切欠きと重なっており、前記第1部分の前記一部と前記切欠きが設けられた前記基板の端面との間の空間に、前記充填物が充填されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子部品が実装された基板と、この基板に取り付けられたリード線の一部とが、ケースに収容され、ケース内には充填物が充填される。そして、基板に設けられた切欠きにリード線の一部が配置されている。ケース内のリード線と基板の切欠きとが重なっていることにより、切欠きがない場合と比べて多くの充填物によってリード線の周囲が封止され、リード線の周囲からの異物の侵入が抑制される。このため、ケース内の電子部品への異物の接触を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る電子モジュールの平面図である。
図2】実施の形態に係る電子モジュールのケースの構成を説明する図である。
図3】実施の形態に係る電子モジュールのケースの斜視図である。
図4】実施の形態に係る電子モジュールの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態.
(電子モジュール1の構造)
図1は、実施の形態に係る電子モジュール1の平面図である。電子モジュール1は、基板2と、基板2に取り付けられたリード線10と、リード線10の一部及び基板2を収容するケース20とを備えている。ケース20の一面には開口29が形成されており、この開口29からリード線10の一部がケース20の外に出ている。図1では、ケース内に収容された基板2及びリード線10を、破線で示している。
【0011】
ここで、図1及びこれ以降の説明において、ケース20の開口29とこれに対向する面とを結ぶ方向を、ケース20の前後方向、又は奥行き方向と称する。図1では、紙面上下方向とケース20の奥行き方向とが一致している。
【0012】
基板2には、電子部品4が実装されている。電子部品4は、例えば、コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ等の電気回路部品である。本実施の形態では、基板2の平板面のうち、電子部品4が実装された面を、実装面と称する。また、基板2の実装面の反対側の面を、非実装面と称する。
【0013】
基板2には、切欠き3が形成されている。切欠き3は、ケース20に収容された状態の基板2において、ケース20の開口29側の端部に設けられている。切欠き3は、基板2に取り付けられたリード線10と同数設けられている。本実施の形態では、2本のリード線10が設けられており、2つの切欠き3が基板2に設けられている。基板2に切欠き3が設けられていることにより、平面視において基板2の開口29側の辺は、階段状になっている。つまり、切欠き3は、平面視において矩形の基板から図1の基板2のように階段状になるように切り取った部分を指す。ここで、基板2のうち、2つの切欠き3の間の部分を、突出部2aと称する。切欠き3の奥行き方向の長さは、例えば、5mm程度とすることができる。
【0014】
リード線10は、基板2に実装された電子部品4と電源とを電気的に接続するための電線である。本実施の形態のリード線10は、端部11と、第1部分12と、第2部分13とで構成されている。端部11は、リード線10のうち基板2に取り付けられた部分である。端部11は、はんだ等によって基板2に取り付けられている。第1部分12は、リード線10のうち、端部11に連なる部分であってケース20に収容された部分である。第2部分13は、リード線10のうち、第1部分12に連なる部分であってケース20の外に出ている部分である。本実施の形態のリード線10は、端部11及び第1部分12がケース20内に収容され、第2部分13がケース20の外に位置する。リード線10の外周は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の絶縁材料で構成された被覆14で覆われている。
【0015】
ケース20の後部には、ケース20の内側に凹んだ凹部31が形成されている。凹部31については、後述する。また、ケース20内には、後述する充填物5が充填されている。
【0016】
(ケース20の構造)
図2は、実施の形態に係る電子モジュール1のケース20の構成を説明する図である。図2(a)はケース20の平面図、図2(b)はケース20の側面図、図2(c)はケース20の背面図である。図3は、実施の形態に係るケース20の斜視図である。図4は、実施の形態に係る電子モジュール1の正面図である。図1図4を参照して、ケース20の構造を説明する。
【0017】
ケース20は、上壁21と、上壁21と対向する底22と、底22から起立して上壁21に至る右側及び左側の側壁23と、上壁21、底22及び側壁23に連なる後壁24とを備える。上壁21と、底22と、左右一対の側壁23と、後壁24とによって、図1で示した基板2が収容される収容空間が形成されている。ケース20の開口29は、後壁24に対向している。上壁21と側壁23と後壁24とによって挟まれた角を、角27と称する。
【0018】
上壁21は、基板2の実装面と対面しており、基板2の実装面に概ね沿って延びている。すなわち基板2の実装面は、上を向いている。本実施の形態の上壁21の上面は、開口29から後壁24に向かって下降している。また、上壁21には、上へ突出した凸部211が形成されている。凸部211は、上壁21の開口29側の端部から後壁24側の端部に至る領域に前後方向に沿って設けられている。図4に示すように、凸部211は、上壁21の上面及び下面の両方を上へ隆起させて形成されている。したがって、凸部211の下側には、凸部211以外の領域よりも高さのある空間が形成されている。この凸部211の下に、基板2に実装された電子部品4の一部が収容されている。凸部211の突出高さは、電子部品4の高さに応じて設定される。このように、電子部品4の高さに合わせて、上壁21のうちの一部のみに凸部211を設けることで、上壁21の高さを最高位の電子部品4の高さに合わせるよりも、ケース20を小型化することができる。また、上壁21の一部を隆起させた凸部211を設けて上壁21に段差を形成することで、平坦な上壁21と比べて上壁21の強度を向上させることができる。なお、複数の電子部品4の高さが均一である場合には、上壁21に凸部211を設けなくてもよい。
【0019】
凸部211の後ろ側の領域には、前から後ろに向かって下降した凸部傾斜面212を有する。凸部傾斜面212の左右の幅は、後部側ほど狭くなっている。また、上壁21のうち、凸部傾斜面212の左右の領域には、前から後ろに向かって下降した傾斜面213が設けられている。凸部傾斜面212と傾斜面213は、底22に対する傾斜角度が概ね同じである。図2(b)及び図3に示されるように、ケース20の後部は、後壁24に向かって高さが小さくなっている。このような傾斜をケース20の先端に設けることで、ケース20を小型化できるとともに、電子モジュール1を設置する際に作業者がケース20を設置スペースに挿入しやすい。
【0020】
底22の内面(以降、ケース20における内側を示す)には、第1リブ25が設けられている。第1リブ25は、底22の内面からケース20の内部に向かって突出している。第1リブ25は、底22の内面において、ケース20の前後方向に沿って延びている。第1リブ25の一端は、後壁24の内面に接しており、第1リブ25の他端は、開口29よりも後ろ側に位置している。すなわち、第1リブ25は、開口29には到達しておらず、第1リブ25の開口29側の端部と開口29との間の底22の内面には、第1リブ25が設けられていない領域がある。図2(b)に示すように、第1リブ25の開口29側の端部において、底22からの突出量は一定ではなく、開口29に近いほど突出量が小さくなっている。第1リブ25の開口29側の端部において、突出量が変化している部分を傾斜部251と称する。傾斜部251は、後側から開口29側に向かって底22に近づくように下降している。本実施の形態では、2条の第1リブ25が設けられた例を示しているが、第1リブ25の数はこれに限定されない。
【0021】
左右の側壁23の内面には、第2リブ26が設けられている。第2リブ26は、側壁23の内面からケース20の内部に向かって突出している。第2リブ26は、側壁23の内面において、ケース20の前後方向に沿って延びている。第1リブ25に載置された基板2の上下方向の位置と、第2リブ26の上下方向の位置とは、一致している。すなわち、図4に示すように、基板2と同じ高さに、第2リブ26が設けられている。第2リブ26の一端は、後壁24の内面に接しており、第2リブ26の他端は、開口29よりも後ろ側に位置している。すなわち、第2リブ26は、開口29には到達しておらず、第2リブ26の開口29側の端部と開口29との間における、側壁23の内面には、第2リブ26が設けられていない領域がある。第2リブ26の開口29側の端部において、側壁23からの突出量は一定ではなく、開口29に近いほど突出量が小さくなっている。第2リブ26の開口29側の端部において、突出量が変化している部分を傾斜部261と称する。傾斜部261は、後部側から開口29側に向かって側壁23に近づくように傾斜している。
【0022】
ケース20の左右の角27の外表は、凹んでおり、当該凹んだ部分を凹部31と称する。ケース20の外表面を凹ませることで、ケース20を小型化している。
【0023】
ケース20の左右の角27の内側には、図4に示すように、ケース20の内側に向かって突出した第3リブ28が設けられている。第3リブ28は、上壁21の内面から下へ向かって突出するとともに、側壁23の内面からケース20の内側へ向かって突出し、また後壁24の内面から開口29側に向かって突出している。第3リブ28の下端は、ケース20内に基板2が収容されたときに基板2の実装面に実質的に接触する位置にある。このため、第3リブ28は、基板2を上下方向に位置決めすることができる。本実施の形態において、第3リブ28は、凹部31と対応する位置に設けられている。すなわち、角27において、ケース20の外郭を内側に凹ませることで、ケース20の外表面においては凹部31を形成し、ケース20の内面には第3リブ28を形成している。
【0024】
ケース20の後壁24の内面には、ケース20の内側、すなわち開口29側に向かって突出する第4リブ32が設けられている。第4リブ32は、本実施の形態では、2条設けられているが、第4リブ32の数はこれに限定されない。また、本実施の形態では、第4リブ32は、第1リブ25の延長線上に位置している。第1リブ25と後壁24との接触位置の上に、第4リブ32が設けられており、図2(b)に示すように第1リブ25と第4リブ32とで側面視にてL字状をなしている。
【0025】
ケース20は、金型を用いた射出成形によって製造されうる。この場合、金型からケース20を取り出しやすくするために、ケース20の外形に抜きテーパー(抜き勾配)を設けるとよい。ケース20の外形に設ける抜きテーパーの角度は、例えば2度程度である。また、第1リブ25、第2リブ26及び第3リブ28の外表面にも、抜きテーパーを形成するとよい。
【0026】
(ケース20、基板2及びリード線10の配置関係)
図4を参照して、ケース20、基板2及びリード線10の上下方向及び左右方向の位置関係を説明する。ケース20の内部において、第1リブ25の上に基板2が載置されている。基板2の非実装面が、第1リブ25の上面と接している。基板2と底22との間には、第1リブ25の高さ分の隙間30が設けられている。
【0027】
基板2の左右の端部は、第2リブ26と接している、又は第2リブ26に近接している。第2リブ26は、基板2を左右方向に位置決めしている。
【0028】
第3リブ28の下面には、基板2の後部側の実装面と接している、又は基板2の後部側の実装面と近接している。第3リブ28は、基板2を上下方向に位置決めしている。
【0029】
図4において、基板2の切欠き3と対応する位置に、リード線10が配置されている。より詳しくは、基板2の厚み方向において、切欠き3と重なる位置に、リード線10の一部が配置されている。基板2の左右方向において、リード線10と、切欠き3とが重なる位置に配置されている。
【0030】
基板2及びリード線10の一部を収容したケース20内には、充填物5が充填されている。充填物5は、基板2、基板2に実装された電子部品4及びリード線10を固定するとともに、ケース20内への水、塩分又はガス等の異物の侵入を防ぐ部材である。充填物5は、例えば、合成樹脂である。より好ましくは、充填物5は、柔軟性及び対薬品性を有するエポキシやポリウレタン等の合成樹脂である。
【0031】
(電子モジュール1の製造方法)
次に、実施の形態に係る電子モジュール1の製造方法を説明する。
【0032】
(1)電子部品4が実装され、かつリード線10が取り付けられた基板2を準備する。ここで、基板2には、図1で示したように左右の両端に切欠き3が設けられている。リード線10の端部11は、基板2の前後方向における切欠き3の延長線上に、取り付けられている。リード線10のうち端部11に連なる部分は、基板2を平面視したときに切欠き3と重なる位置に配置されている。すなわち、リード線10のうち端部11に連なる部分は、基板2を平面視したときに基板2と重なっていない。
【0033】
(2)空のケース20に、充填物5の一部を入れる。ここで入れる充填物5は、次の工程において挿入される基板2を一時的に保持するために使用される。充填物5の充填量の目安として、ケース20の第4リブ32を目盛りとして用いてもよい。たとえば、開口29が上に向くように配置したケース20に充填物5を入れる場合、第4リブ32の開口29側の端部の位置まで、充填物5を入れる。このように第4リブ32を、充填物5を入れるときの目盛りとすることで、他に目盛りを設けたり、予め充填量を量ったりする必要がなく、所望の充填量を容易に充填することができる。
【0034】
(3)電子部品4が実装され、かつリード線10が取り付けられた基板2を、充填物5の一部が入れられたケース20内に挿入する。ケース20内には、予め少量の充填物5が入れられているため、その充填物5の摩擦力によって基板2がケース20内でぐらつきにくい。ケース20の側壁23の内面には、第2リブ26が突出しており、基板2がケース20内に挿入されるときには、基板2の左右の端面は、第2リブ26の先端に案内される。基板2のケース20内への挿入が進められると、基板2の後部の実装面は、ケース20内における第3リブ28の表面に接し、第3リブ28によって上下方向に位置決めされる。また、基板2の後部の先端は、第4リブ32に接し、第4リブ32によって前後方向に位置決めされる。基板2は、リード線10が開口29から外へ出るようにして、ケース20内に収容される。ケース20の底22に設けられた第1リブ25の上に、基板2の非実装面が載置される。
【0035】
(4)ケース20内に基板2及びリード線10の第1部分12が収容された状態において、開口29から基板2内に液状の充填物5を充填する。ケース20の底22の内面には、第1リブ25が設けられていることにより、基板2と底22との間には隙間30がある。液状の充填物5は、この隙間30にも充填されるため、基板2の非実装面にも充填物5を行き渡らせることができる。例えば、第1リブ25が設けられていない場合には、固い基板2とケース20の底22とが面で接することになるので、基板2と底22との間には充填物5が入り込みにくいが、本実施の形態ではそのような不具合がない。また、本実施の形態では、後壁24の内面に、開口29側に向かって突出する第4リブ32が設けられている。このため、第4リブ32の表面に基板2の後端が接触するようにして基板2がケース20に収容されると、基板2の後端面と後壁24の内面との間には、隙間が形成される。この隙間にも充填物5が充填されるため、基板2及びこれに取り付けられたリード線10が充填物5によってより強固に保持される。
【0036】
また、左右方向において2本のリード線10の間に、基板2の突出部2aが位置している。このため、ケース20内に充填物5を充填する際に充填物5が流動するが、この流動する充填物5によるリード線10の左右への過度な揺れを抑制できる。すなわち、充填物5の流動によってリード線10に力が加わっても、2つの切欠き3の間にある突出部2aがリード線10の移動を妨げるので、リード線10が所望の位置に保持される。
【0037】
なお、第1リブ25と第2リブ26のいずれか又は両方の開口29側の端部の位置を、ケース20の充填物5の充填量を示す目盛りとして使用してもよい。すなわち、充填物5の充填量に応じて、第1リブ25と第2リブ26のいずれか又は両方の開口29側の端部の位置を定めてもよい。このようにすることで、別の目盛り等の構成を設けなくても、ケース20への充填物5の充填量を統一することができる。
【0038】
(5)ケース20内に充填された液状の充填物5に対し、硬化処理を施す。硬化処理は、充填物5の材料に応じた処理が採用される。たとえば、充填物5が熱硬化性の樹脂である場合には、充填物5が所定の温度で所定の時間加熱される。
【0039】
上記の工程(1)~(5)が実施されることで、電子モジュール1が製造される。
【0040】
以上のように、本実施の形態の電子モジュール1は、電子部品4が実装された基板2の一部に切欠き3が設けられている。基板2にはリード線10の端部11が取り付けられており、リード線10のうち端部11に連なる部分は、ケース20内に収容されている。このケース20内に収容されているリード線10の第1部分12の一部は、切欠き3と重なる位置に配置されている。すなわち、リード線10の第1部分12の一部は、平面視において基板2と重なっていない。このため、リード線10の第1部分12の一部の周囲には空間があり、基板2には接していない。したがって、ケース20に充填剤が充填された状態において、第1部分12の周囲は充填剤に覆われ、第1部分12がより強固に保持される。また、基板2の一部を切り欠いて基板2の体積を減らすことで、ケース20内に充填する充填物5の量を増やすことができる。充填量を増やすことで、充填物5によるケース20内の封止性能が高まり、水、塩分又はガス等の異物の侵入をより強固に抑制することができる。また、基板2の一部を切欠いて、リード線10の第1部分12を長くすることにより、リード線10と充填物5との接触面積及び奥行き方向の接触距離を大きくできる。そのため、リード線10に力が加わり、開口29付近でリード線10と充填物5が剥がれて、隙間ができたとしても、基板2付近まで隙間ができることがなく、異物の侵入をより強固に抑制することができる。
【0041】
また、本実施の形態のケース20の底22の内面には、開口29側から後壁24側に向かって延びる第1リブ25が設けられている。このため、第1リブ25の上に基板2が載置されると、基板2と底22との間に隙間30が形成される。この隙間30に充填物5が充填されることで、基板2の非実装面が充填物5で覆われ、基板2への水、塩分、ガス等の異物の接触をより抑制することができる。
【0042】
また、本実施の形態のケース20の側壁23の内面には、開口29側から後壁24側に向かって延びる第2リブ26が設けられている。第2リブ26の開口29側の位置を、充填剤の充填量を示す目盛りとして使用することができ、適量の充填が容易になる。
【0043】
本実施の形態で説明した電子モジュール1は、火災感知器と火災受信機との間を伝送線で接続してこの伝送線を介して火災信号を含む伝送信号を送受信する火災監視システムに適用されうる。より具体的には、電子モジュール1は、火災受信機からみて最遠端に接続されて伝送線における断線を監視する終端器として利用されうる。この場合、電子モジュール1は、電子部品4として、電送線に電気的に接続されたコンデンサを含み、このコンデンサによって伝送線に電圧が保持されているか否かが検出される。終端器としての電子モジュール1は、例えば、火災感知器の筐体内に収容される。本実施の形態の電子モジュール1は、凸部傾斜面212、傾斜面213及び凹部31を備えることによってケース20が小型化されているので、火災感知器の限られた筐体スペースに組み込みやすい。また、凸部傾斜面212及び傾斜面213を設けることでケース20の後部の先端が先細り形状になっているので、電子モジュール1の収容先のスペースにケース20の後部の先端を差し込みやすい。また、基板2に切欠き3が設けられていて、リード線10の第1部分12の全周が充填物5によって覆われており、リード線10が充填物5によってより強固に保持されている。このため、電子モジュール1を火災感知器の限られたスペースに組み込む際に、リード線10の第2部分13が曲げられても、充填物5とリード線10との間には隙間ができにくく、当該隙間からの異物の侵入が抑制される。
【0044】
なお、ケース20の内側には、ケース20内に収容された基板2が開口29から外へ出るのを規制するための突起を設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 電子モジュール、2 基板、2a 突出部、3 切欠き、4 電子部品、5 充填物、10 リード線、11 端部、12 第1部分、13 第2部分、14 被覆、20 ケース、21 上壁、22 底、23 側壁、24 後壁、25 第1リブ、26 第2リブ、27 角、28 第3リブ、29 開口、30 隙間、31 凹部、32 第4リブ、211 凸部、212 凸部傾斜面、213 傾斜面、251 傾斜部、261 傾斜部。
図1
図2
図3
図4