(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】作業機械の周囲表示装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/94 20060101AFI20240325BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
B66C23/94 F
B66C13/00 D
(21)【出願番号】P 2020055367
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】松下 達也
(72)【発明者】
【氏名】本庄 浩平
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-183497(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158255(WO,A1)
【文献】特開2019-172409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0037586(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110300828(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00;23/88;23/94
E02F 9/00
H04N 7/18
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械周囲の俯瞰画像を表示する作業機械の周囲表示装置であって、
前記作業機械の旋回半径を有する周回線と前記周回線を囲うオフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率と異な
り、
前記オフセット周回線より外側の領域の表示倍率が、前記周回線と前記オフセット周回線との間の領域の表示倍率と異なる、
作業機械の周囲表示装置。
【請求項2】
前記周回線と前記オフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率よりも大きい、
請求項
1記載の作業機械の周囲表示装置。
【請求項3】
作業機械周囲の俯瞰画像を表示する作業機械の周囲表示装置であって、
前記作業機械の旋回半径を有する周回線と前記周回線を囲うオフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率と異なり、
前記周回線と前記オフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率よりも大きく、
さらに、前記周回線と前記オフセット周回線との間の表示倍率が、前記オフセット周回線より外側の領域の表示倍率よりも大きい、
作業機械の周囲表示装置。
【請求項4】
作業機械周囲の俯瞰画像を表示する作業機械の周囲表示装置であって、
前記作業機械の旋回半径を有する周回線と前記周回線を囲うオフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率と異なり、
前記俯瞰画像には、複数の領域の表示倍率の違いを表わす長さ情報が表示される、
作業機械の周囲表示装置。
【請求項5】
前記俯瞰画像の前記周回線の内側には、前記作業機械を示す絵図が表示され、
前記作業機械を示す絵図が、前記作業機械の作業状況に応じて変化する、
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の作業機械の周囲表示装置。
【請求項6】
作業機械周囲の俯瞰画像を表示する作業機械の周囲表示装置であって、
前記作業機械の旋回半径を有する周回線と前記周回線を囲うオフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率と異なり、
前記俯瞰画像の前記周回線の内側には、前記作業機械を示す絵図が表示され、
前記作業機械を示す絵図が、前記作業機械の作業状況に応じて変化し、
前記作業機械は作業現場で組立て又は分解される機械であり、
前記作業機械を示す絵図は、前記作業機械の組立状況に応じて変化する、
作業機械の周囲表示装置。
【請求項7】
作業機械周囲の俯瞰画像を表示する作業機械の周囲表示装置であって、
前記作業機械の旋回半径を有する周回線と前記周回線を囲うオフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率と異なり、
前記俯瞰画像の前記周回線の内側には、前記作業機械を示す絵図が表示され、
前記作業機械を示す絵図が、前記作業機械の作業状況に応じて変化し、
前記作業機械の組立状況に応じて、前記作業機械を示す絵図の外形が変化する、
作業機械の周囲表示装置。
【請求項8】
前記作業機械を示す絵図には、前記作業機械の前進又は後退の方向を表わす情報が含まれる、
請求項
5から請求項
7のいずれか一項に記載の作業機械の周囲表示装置。
【請求項9】
前記俯瞰画像には、前記周回線及び前記オフセット周回線の少なくとも一方が表示される、
請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の作業機械の周囲表示装置。
【請求項10】
前記周回線及び前記オフセット周回線の少なくとも一方を境に前記俯瞰画像の表示倍率が異なる、
請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載の作業機械の周囲表示装置。
【請求項11】
周囲を監視するための検知部を備え、
前記俯瞰画像には、前記検知部の非検知領域が表示される、
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の作業機械の周囲表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の周囲表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油圧ショベルの周囲監視装置として、周囲の画像から油圧ショベルを中央に配置した俯瞰画像を作成し、表示出力する装置が示されている。俯瞰画像には、油圧ショベルの旋回半径を基準とした2つの円が描画され、2つの円の間が注意ゾーンに設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大型の作業機械に対して上記従来のように周囲監視用の俯瞰画像を作成すると、画像全体に対して作業機械の旋回半径近傍の領域が占める面積の割合が小さくなる場合がある。この場合、旋回半径近傍の注意ゾーンの幅が俯瞰画像中において狭くなり、監視者(例えばオペレータ)にとって注意ゾーンの状態が分かりにくくなり、監視の効率が低下する。
【0005】
本発明は、効率的な周囲監視を行える作業機械の周囲表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明の一態様は、作業機械周囲の俯瞰画像を表示する作業機械の周囲表示装置であって、
前記作業機械の旋回半径を有する周回線と前記周回線を囲うオフセット周回線との間の前記俯瞰画像の表示倍率が、前記周回線の内側の領域における前記俯瞰画像の表示倍率と異なり、
前記オフセット周回線より外側の領域の表示倍率が、前記周回線と前記オフセット周回線との間の領域の表示倍率と異なる。
(2)
本発明のもう一つの態様は、作業機械周囲の俯瞰画像を表示する作業機械の周囲表示装置であって、
前記作業機械の旋回半径を有する周回線と前記周回線を囲うオフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率と異なり、
前記周回線と前記オフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率よりも大きく、
さらに、前記周回線と前記オフセット周回線との間の表示倍率が、前記オフセット周回線より外側の領域の表示倍率よりも大きい。
(3)
本発明のもう一つの態様は、作業機械周囲の俯瞰画像を表示する作業機械の周囲表示装置であって、
前記作業機械の旋回半径を有する周回線と前記周回線を囲うオフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率と異なり、
前記俯瞰画像には、複数の領域の表示倍率の違いを表わす長さ情報が表示される。
(4)
本発明のもう一つの態様は、作業機械周囲の俯瞰画像を表示する作業機械の周囲表示装置であって、
前記作業機械の旋回半径を有する周回線と前記周回線を囲うオフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率と異なり、
前記俯瞰画像の前記周回線の内側には、前記作業機械を示す絵図が表示され、
前記作業機械を示す絵図が、前記作業機械の作業状況に応じて変化し、
前記作業機械は作業現場で組立て又は分解される機械であり、
前記作業機械を示す絵図は、前記作業機械の組立状況に応じて変化する。
(5)
本発明のもう一つの態様は、作業機械周囲の俯瞰画像を表示する作業機械の周囲表示装置であって、
前記作業機械の旋回半径を有する周回線と前記周回線を囲うオフセット周回線との間の表示倍率が、前記周回線の内側の領域の表示倍率と異なり、
前記俯瞰画像の前記周回線の内側には、前記作業機械を示す絵図が表示され、
前記作業機械を示す絵図が、前記作業機械の作業状況に応じて変化し、
前記作業機械の組立状況に応じて、前記作業機械を示す絵図の外形が変化する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効率的な周囲監視を行うことのできる作業機械の周囲表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る作業機械を示す図である。
【
図2】作業機械及びその周囲の俯瞰画像を示す画像図である。
【
図3】実施形態1に係る俯瞰画像の表示例を示す画像図である。
【
図4】作業機械の旋回角度に応じた俯瞰画像の表示例(a)、(b)を示す画像図である。
【
図5】作業機械の組立状況に応じた俯瞰画像の表示例(a)、(b)を示す画像図である。
【
図6】実施形態2に係る俯瞰画像の表示例を示す画像図である。
【
図7】実施形態3に係る俯瞰画像の表示例を示す画像図である。
【
図8】実施形態4に係る俯瞰画像の表示例を示す画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る作業機械を示す図である。本発明の実施形態に係る作業機械1は、クローラクレーン等の移動式クレーンであり、並進移動する下部走行体3と、下部走行体3に対して旋回する上部旋回体2と、周囲監視用の検知部20と、検知部20の出力に基づいて周囲の監視画像を出力する周囲表示装置40とを備える。さらに、作業機械1は、上部旋回体2に設けられたキャブ8と、上部旋回体2に揺動可能に接続されたブーム4と、ブーム4の先端部から吊り下げられるフック7と、上部旋回体2の後部に搭載されるカウンターウエイト5等を備える。
【0011】
周囲表示装置40は、検知部20と作業機械1の制御部とから情報を受けるインタフェース43と、インタフェース43が受けた情報に基づいて作業機械1の周囲の俯瞰画像を作成する俯瞰画像作成部42と、作成された俯瞰画像を出力する液晶モニタなどの表示部41とを有する。表示部41は、キャブ8内に配置されたり、管理用の携帯端末に設けられたり、作業現場とは異なる管理センターに配置されてもよい。インタフェース43は、キャブ8内又は上部旋回体2上の制御機械室に配置されてもよい。俯瞰画像作成部42は、コンピュータのCPUが記憶装置内の制御プログラムを実行することで実現されるソフトウエアモジュールである。俯瞰画像作成部42を実現するコンピュータは、キャブ8内又は上部旋回体2上の制御機械室に配置されてもよいし、作業機械1とは分離された携帯端末であってもよいし、作業現場とは異なる管理センターに設けられてもよい。インタフェース43及び表示部41と、俯瞰画像作成部42とが、異なる配置となる場合には、これらの間を無線通信又は通信ネットワークを介して接続すればよい。検知部20は、1つの構成要素として周囲表示装置40に含まれていてもよい。
【0012】
作業機械1は、作業現場で組み立てられて使用され、作業が終了したら分解されて搬出される。作業現場で組み立てられる部品には、下部走行体3のクローラ部品(シュー又は駆動機構の一部)6、並びに、上部旋回体2に取り付けられるブーム4及びカウンターウエイト5が含まれる。
【0013】
検知部20は、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)などの走査型の測距機器又は撮影カメラなどであり、作業機械1の周囲画像(撮影画像又は距離画像等)を取得する。検知部20は、作業機械1の複数箇所に設けられていてもよい。検知部20は、少なくとも作業機械1の旋回半径の内側から外側にかけて作業機械1の後方及び左右の領域の周囲画像を生成するためのデータを取得する。作業機械1の旋回半径とは、上部旋回体2が旋回したときにブーム4を除いて旋回中心よりも最も遠くに位置する端部が描く軌跡の半径を意味し、
図1の例では、上部旋回体2の後端(カウンターウエイト5の後端)が描く軌跡の半径を意味する。
図1の例では、旋回半径は後端半径と呼ばれる。
【0014】
図2は、作業機械及びその周囲の俯瞰画像を示す画像図である。
【0015】
俯瞰画像作成部42は、検知部20から送られた周囲画像のデータの座標を、周囲画像の座標から作業機械1を上方から見たときの俯瞰画像の座標へ変換することで、作業機械1の周囲の俯瞰画像を作成する。
図2は、仮に各部の表示倍率が等倍になるように周囲画像を変換した俯瞰画像データを示している。
図2の俯瞰画像データにおいて、作業機械1、作業機械1の旋回半径を示す第1周回線C1、旋回半径から1m外側の第2周回線C2、旋回半径から2m外側の第3周回線C3とを、仮想線により示す。作業現場において、第1周回線C1と第2周回線C2との間が高位の注意を要する警戒領域、第2周回線C2と第3周回線C3との間が中位の注意を要する注意領域に相当する。俯瞰画像には、検知部20が検知した複数の物体H1~H4の表示が含まれる。検知部20が検知する物体には、作業員又は歩行者などの人、並びに、障害物などが含まれる。上記の第1周回線C1が、本発明に係る周回線の一例に相当する。上記の第2周回線C2及び第3周回線C3が、本発明に係るオフセット周回線の一例に相当する。
【0016】
図2のように、各部が等倍の俯瞰画像であると、作業機械1が大型になればなるほど、画像上の作業機械1が占める領域と比較して、第1周回線C1から第3周回線C3まで幅が狭くなる。
【0017】
図3は、実施形態1に係る俯瞰画像の表示例を示す画像図である。
【0018】
俯瞰画像作成部42は、
図3に示すように、第1周回線C1より内側の領域の表示倍率よりも、第1周回線C1より外側の領域の表示倍率を2倍にして、俯瞰画像E1を作成する。作成された俯瞰画像E1は表示部41から出力される。ここで、表示倍率とは、第1周回線C1の径方向における倍率を意味し、例えば、第1周回線C1の径方向に沿ってゲージを置いたときに、第1周回線C1内側のゲージ上の1mと、第1周回線C1の外側のゲージ上の1mとが、表示画像上において、1:2の長さ比率になっていることを意味する。
【0019】
俯瞰画像作成部42は、予め作業機械1を上方から見たときの絵
図Bを持っており、作業機械1の絵
図Bを俯瞰画像E1に付加される。作業機械1の絵
図Bは、上部旋回体2の旋回中心が第1周回線C1の中心と重なり、旋回半径を描く上部旋回体2の後端が第1周回線C1と重なるように、俯瞰画像E1に付加される。
【0020】
さらに、俯瞰画像作成部42は、第1周回線C1~第3周回線C3を示す表示と、各周回線C1~C3までの長さ情報f1~f3とを、俯瞰画像E1に含める。第1周回線C1~第3周回線C3の表示は同心円の表示である。長さ情報f1~f3は、第1周回線C1からの径方向距離を表わした文字表示である。長さ情報f1~f3は、作業機械1のサイズと比較することで、第1周回線C1の内側の領域に対する、警戒領域及び注意領域の表示倍率の違いを識別可能な情報にも相当する。長さ情報f1~f3は、各領域についての距離又は表示倍率が一対一対応で識別できれば、スケールバーを用いた表示など、どのような表示形態であってもよい。画面外に別途長さ情報f1~f3の表示に対応した距離を示すものがあってもよい。
【0021】
図3の俯瞰画像E1によれば、第1周回線C1の内側の領域に比べて、第1周回線C1から第3周回線C3の間の幅が倍増するので、警告領域及び注意領域に存在する物体H1、H2が大きく識別しやすく表示される。さらに、第3周回線C3の外側の領域に存在する物体H3、H4も大きく表示される。このような俯瞰画像E1により、警戒領域及び注意領域を効率的に監視することができる。
【0022】
さらに、俯瞰画像E1には、第1周回線C1~第3周回線C3の表示が含まれるので、監視員は、作業機械1が旋回する際に、注意すべき領域を認識しやすく、よって、効率的な周囲監視を実現できる。さらに、俯瞰画像E1に含まれる長さ情報f1~f3により、俯瞰画像E1を見た監視員は、画像内の表示倍率が一律でなくても、俯瞰画像E1上に表示される物体H1~H4が、作業機械1の旋回半径からどのくらいの距離にあるのか認識することができ、距離の混同が生じることを抑制できる。
【0023】
図4は、作業機械の旋回角度に応じた俯瞰画像の表示例(a)、(b)を示す画像図である。
【0024】
作業機械1の動作中、俯瞰画像作成部42は、上部旋回体2の旋回に合わせて、俯瞰画像E1中の作業機械1の絵
図Bを変化させる。具体的には、絵
図Bには、下部走行体3の絵図と上部旋回体2の絵図とが含まれ、俯瞰画像作成部42は、上部旋回体2の旋回に合わせて、上部旋回体2の絵図と、下部走行体3の絵図及び周囲画像とを相対的に回転させる。俯瞰画像作成部42は、作業機械1から上部旋回体2の旋回角度の情報を受けて、俯瞰画像E1上の絵
図Bの相対的な回転を実現してもよいし、作業機械1に取り付けられた1つ又は複数の測位装置から上部旋回体2と下部走行体3との相対的な旋回角度を示す測位情報を取得し、絵
図Bの相対的な回転を実現してもよい。
【0025】
なお、俯瞰画像作成部42は、上部旋回体2の旋回状況に応じて俯瞰画像E1の絵
図Bの相対角度を変化させるだけでなく、ブーム4の角度、下部走行体3の走行状況、フック7による荷の吊り上げ状況など、作業機械1の様々な作業状況に応じて、作業機械1の絵
図Bを変化させるようにしてもよい。
【0026】
作業機械1の絵
図Bが旋回状況又はその他の作業状況に応じて変化することで、運転者又は管理者は俯瞰画像E1を見ながら、作業機械1の作業状況を把握することができる。作業状況によって周囲監視上の注意点も変わる場合があるため、俯瞰画像E1から作業状況を把握できることで、効率的な周囲監視を行うことができる。
【0027】
さらに、俯瞰画像作成部42は、下部走行体3の前進方向を示す図柄J1を、俯瞰画像E1に含める。例えば、俯瞰画像作成部42は、図柄J1を作業機械1の絵
図Bに重ねて付加する。したがって、上部旋回体2が旋回して、俯瞰画像E1中の下部走行体3が旋回したときに、下部走行体3の前進方向が図柄J1により示される。これにより、運転者は、下部走行体3を走行させる際に、俯瞰画像E1を見て、混同なく走行方向を把握することができる。図柄J1は、前進方向を示すものでなく、後退方向を示すものであってもよい。
【0028】
図5は、作業機械の組立状況に応じた俯瞰画像の表示例(a)、(b)を示す画像図である。
【0029】
作業機械1の組立て又は分解の際、俯瞰画像作成部42は、作業機械1の組立状況に応じて絵
図Bを変化させる。例えば、
図5(a)に示すように、カウンターウエイト5が取り付けられていない状況では、俯瞰画像作成部42は、作業機械1の絵
図Bを、カウンターウエイト5が無い絵
図B1に変更する。また、
図5(b)に示すように、クローラ部品6が外されている状況では、俯瞰画像作成部42は、作業機械1の絵
図Bを、クローラが無い絵
図B2に変更する。俯瞰画像作成部42は、絵
図B、B1、B2等の組立部品が外れていることを示す絵図データを予め有しており、また、作業機械1の制御装置から作業機械1の組立状況を示す情報を受信する。俯瞰画像作成部42は、受信した組立状況を示す情報に基づき、作業機械1の絵図データを選択することで、組立状況に応じた絵
図B、B1、B2の変更を実現する。
【0030】
俯瞰画像E1中の絵
図B、B1、B2が組立状況に応じて変化することで、運転者又は管理者は俯瞰画像E1を見ながら作業機械1の組立状況を把握することができる。組立状況によっても周囲監視上の注意点が変わる場合があるため、俯瞰画像E1から組立状況を把握できることで、効率的な周囲監視を行うことができる。
【0031】
絵
図B、B1、B2は、作業機械1の組立状況に応じた外形を有する。例えば、作業機械1の旋回端(後端)位置が旋回中心に近づく組立状況の絵
図B1、すなわちカウンターウエイト5が無い絵
図B1においては、実際の作業機械1と同様に旋回端(後端)の位置が旋回中心に近づく。
【0032】
俯瞰画像作成部42は、作業機械1の旋回半径が異なる組立状況、例えば、カウンターウエイト5が外された組立状況のときには、作業機械1の絵
図Bを対応する絵
図B1に変更し、かつ、第1周回線C1~第3周回線C3の大きさを、小さな旋回半径に合わせて変更する。さらに、俯瞰画像作成部42は、俯瞰画像E1の表示倍率を変更する領域についても、変更された第1周回線C1の内側の領域と外側の領域とに変更する。
【0033】
このように、作業機械1のカウンターウエイト5の組立状況に応じて、絵
図B、B1の外形が変化し、第1周回線C1~第3周回線C3の位置が変化することで、組立状況に応じた実際の旋回半径が俯瞰画像E1に反映される。したがって、俯瞰画像E1により組立状況に即した効率的な周囲監視を行うことができる。
【0034】
以上のように、実施形態1の周囲表示装置40によれば、俯瞰画像作成部42により作成され、表示部41に表示された俯瞰画像E1により、効率的な周囲監視を行うことができる。
【0035】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る俯瞰画像の表示例を示す画像図である。実施形態2の作業機械1及び周囲表示装置40は、俯瞰画像作成部42が作成する俯瞰画像E2が異なる他は、実施形態1と同様である。実施形態1と異なる箇所について詳細に説明する。
【0036】
実施形態2の俯瞰画像作成部42は、実施形態1の俯瞰画像E1に加えて、検知部20の検知範囲から外れた非検知領域U1を他の領域と識別可能な表示態様(例えばグレーアウト)にした俯瞰画像E2を作成する。非検知領域U1の表示は、
図6に示すように第3周回線C3の内側のみに行ってもよいし、第3周回線C3の外側を含めて行ってもよい。
【0037】
非検知領域U1は、キャブ8から見える範囲に含まれ、運転者は、上部旋回体2を旋回させる際に、非検知領域U1以外を、俯瞰画像E2を頼りに周囲監視を行い、非検知領域U1においては目視により周囲監視を行う。したがって、非検知領域U1が示された俯瞰画像E1により、運転者は、目視により確認すべき箇所を認識でき、効率的な周囲監視を行うことができる。
【0038】
(実施形態3)
図7は、実施形態3に係る俯瞰画像の表示例を示す画像図である。実施形態3の作業機械1及び周囲表示装置40は、俯瞰画像作成部42が作成する俯瞰画像E3が異なる他は、実施形態1と同様である。実施形態1と異なる箇所について詳細に説明する。
【0039】
実施形態3の俯瞰画像作成部42は、第1周回線C1の内側の領域の表示倍率に対して、第3周回線C3と第1周回線C1との間の領域の表示倍率を2倍とし、第3周回線C3の外側の領域の表示倍率を1倍とした俯瞰画像E3を作成する。
【0040】
実施形態3の俯瞰画像E3によれば、警戒領域と注意領域の物体H1、H2は大きく識別しやすく表示される一方、注意領域よりも外側の物体H3、H4は大きく表示されない。したがって、注意すべき領域の物体H3、H4のみ識別しやすくなって、効率的な周囲監視を行うことができる。
【0041】
(実施形態4)
図8は、実施形態4に係る俯瞰画像の表示例を示す画像図である。実施形態4の作業機械1及び周囲表示装置40は、俯瞰画像作成部42が作成する俯瞰画像E4が異なる他は、実施形態1と同様である。実施形態1と異なる箇所について詳細に説明する。
【0042】
実施形態4の俯瞰画像作成部42は、第1周回線C1の内側の領域R1、第1周回線C1と第2周回線C2との間の警戒領域R2、第2周回線C2と第3周回線C3との間の注意領域R3、第3周回線C3の外側の領域R4の各領域の表示倍率を異ならせた俯瞰画像E4を作成する。例えば、俯瞰画像作成部42は、領域R1、R4を1倍としたとき、領域R2を2倍、領域R3を1.5倍とする。
【0043】
実施形態4の俯瞰画像E4によれば、注意領域R3の物体H2が識別しやすく表示され、警戒領域R2の物体H1がより識別しやすく表示される。したがって、検知された物体H1~H4が、注意を要する度合が高くになるにつれて大きく識別しやすく表示されるので、俯瞰画像E4により効率的な周囲監視を行うことができる。
【0044】
なお、実施形態3又は実施形態4の俯瞰画像E3、E4に実施形態2の非検知領域U1の表示を含めてもよい。
【0045】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、第1周回線C1の内側の領域の表示倍率を、第1周回線C1の外側の領域の表示倍率よりも小さい例を示したが、例えば、表示画面に対して作業機械が占める領域が小さいような場合には、第1周回線C1の内側の領域の表示倍率を大きくしても良く、このような俯瞰画像により旋回半径近傍の確認が容易になる。さらに、上記の実施形態では、オフセット周回線として、旋回半径と同心円である第2周回線C2及び第3周回線C3を示したが、オフセット周回線は、必ずしも旋回半径と同心円でなくてもよく、注意を要する度合が高い箇所の幅を大きくした形状など、様々な形状の周回線であってもよい。また、上記実施形態では、俯瞰画像中に第1周回線C1~第3周回線C3の表示を含めた例を示したが、いずれか又は全部の周回線の表示を行わずに、表示倍率を変更してもよい。また、俯瞰画像における表示倍率が異なる領域の境界が、必ずしも第1周回線C1~第3周回線C3と一致していなくてもよく、第1周回線C1~第3周回線C3と異なる境界線を境に表示倍率が異なっていてもよい。例えば、第1周回線C1より内側で表示倍率が異なってもよい。また、オフセット周回線は、1つであっても3つ以上あってもよいし、第1周回線C1(周回線)と第2周回線C2及び第3周回線C3(オフセット周回線)との間隔は、1m又は2mに限られず、適宜変更可能である。
【0046】
また、上記実施形態では、作業機械としてクローラクレーンを示したが、トラッククレーン、ホイールクレーン又はタワークレーンなどの各種クレーン、油圧ショベルなどのクレーン以外の作業機械など、本発明に係る作業機械は、旋回半径を有する作業機械であれば、どのような作業機械であってもよい。また、上記実施形態では、検知部として走査型の測距装置と撮影カメラとを一例として示したが、検知部は、周囲の物体を検知可能なデータを取得する構成であれば、どのような構成であってもよい。また、撮影カメラが撮影映像として俯瞰映像を取得する構成の場合、撮影映像に対して上記の各領域の表示倍率を変更する構成が採用されてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 作業機械
2 上部旋回体
3 下部走行体
4 ブーム
5 カウンターウエイト
6 クローラ部品
7 フック
8 キャブ
20 検知部
40 周囲表示装置
41 表示部
42 俯瞰画像作成部
43 インタフェース
B、B1、B2 絵図
C1 第1周回線(旋回半径を有する周回線)
C2 第2周回線(オフセット周回線)
C3 第3周回線(オフセット周回線)
E1~E4 俯瞰画像
f1~f3 長さ情報
J1 図柄
U1 非検知領域