(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】不純物処理方法及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04701 20160101AFI20240325BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240325BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240325BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20240325BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240325BHJP
【FI】
H01M8/04701
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/043
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2020059710
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宅和 雄也
(72)【発明者】
【氏名】白木 壮哉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】南 和徹
(72)【発明者】
【氏名】中尾 孝之
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-287482(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029860(WO,A1)
【文献】特開2010-40426(JP,A)
【文献】特開2005-93185(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147662(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0235728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び酸化剤ガスを用いて発電を行う燃料電池セルと、前記燃料電池セルの運転を制御する運転制御部とを備える燃料電池システムにおける不純物処理方法であって、
前記運転制御部は、通常の運転温度で前記燃料電池セルを運転するように制御する第1運転モードと、前記通常の運転温度よりも高温で前記燃料電池セルを運転するように制御する第2運転モードとを実行可能であり、所定のタイミングで前記第2運転モードを実行
し、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて前記燃料電池セルの温度を徐々に上昇させ、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて前記燃料電池セルの温度を徐々に上昇させる場合、前記燃料電池セルの温度を上昇させて運転した後、前記通常の運転温度に戻し、前記燃料電池セルの発電性能が改善したか否かを判定し、前記判定において発電性能が改善していない場合は前記燃料電池セルの温度を先に上昇させた温度よりもさらに上昇させて運転し、前記判定において発電性能が改善している場合は前記燃料電池セルの温度の更なる上昇を停止する、不純物処理方法。
【請求項2】
前記燃料電池システムは、
前記燃料電池セルによる発電電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記運転制御部は、前記電圧検出部が検出した発電電圧が開始用電圧閾値よりも小さくなると前記第2運転モードを実行する、請求項1に記載の不純物処理方法。
【請求項3】
前記燃料電池システムは、
前記燃料電池セルによる発電電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて、前記電圧検出部が検出した発電電圧が停止用電圧閾値以上になると前記第2運転モードの実行を停止する、請求項1又は2に記載の不純物処理方法。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて、前記燃料ガスの供給量を前記第1運転モードよりも増加させることで前記燃料電池セルの温度を上昇させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の不純物処理方法。
【請求項5】
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて、前記酸化剤ガスの供給量を前記第1運転モードよりも減少させることで前記燃料電池セルの温度を上昇させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の不純物処理方法。
【請求項6】
前記燃料電池システムは、
前記燃料電池セルによる発電電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて前記燃料電池セルの温度を徐々に上昇させている場合に、前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて、前記電圧検出部が検出した発電電圧が停止用電圧閾値以上になると前記第2運転モードの実行を停止し、前記電圧検出部が検出した発電電圧が開始用電圧閾値よりも小さい場合は前記燃料電池セルの温度をさらに上昇させるか又は維持する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の不純物処理方法。
【請求項7】
燃料ガス及び酸化剤ガスを用いて発電を行う燃料電池セルと、
前記燃料電池セルの運転を制御する運転制御部とを備え、
前記運転制御部は、通常の運転温度で前記燃料電池セルを運転するように制御する第1運転モードと、前記通常の運転温度よりも高温で前記燃料電池セルを運転するように制御する不純物処理用の第2運転モードとを実行可能であり、所定のタイミングで前記第2運転モードを実行
し、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて前記燃料電池セルの温度を徐々に上昇させ、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて前記燃料電池セルの温度を徐々に上昇させる場合、前記燃料電池セルの温度を上昇させて運転した後、前記通常の運転温度に戻し、前記燃料電池セルの発電性能が改善したか否かを判定し、前記判定において発電性能が改善していない場合は前記燃料電池セルの温度を先に上昇させた温度よりもさらに上昇させて運転し、前記判定において発電性能が改善している場合は前記燃料電池セルの温度の更なる上昇を停止する、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物処理方法及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、燃料電池部のカソードに対して空気等の酸化剤ガスを供給するとともに、アノードに対して水素を主成分とする燃料ガスを供給し、水素と酸素との化学反応によって発電を行うものである。
【0003】
この種の燃料電池システムでは、種々の要因によって燃料電池セルの発電性能が低下することが知られている。燃料電池システムにおいて発電性能が低下する理由として、例えば、固体酸化物形燃料電池セルの空気極層にSr等のアルカリ土類金属が存在する場合、空気中に含まれる硫黄が空気極層中のアルカリ土類金属に付着して空気極層が被毒し、空気極層の反応抵抗が増大して、燃料電池セルとしての発電性能が低下することが知られている。
【0004】
そこで、特許文献1では、通常運転から電力を発生しない待機運転に切り替える際に、液体燃料と空気の供給を停止し、待機運転の開始と同時に燃料電池セル内の硫黄等の不純物を除去するために所定量の空気を空気循環流路に供給するようにしている。また、その他の方法としては、不純物等を除去するために燃料電池セルへの空気の供給口にエアフィルタを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、不純物等を除去するタイミングが、液体燃料と空気の供給を停止する待機運転の時に限られている。また、空気の供給口にエアフィルタを設ける場合には、燃料電池が設置されている環境に応じてエアフィルタを選択する必要がある。そこで、燃料電池システムにおいて、不純物を処理するための新たな方法が望まれている。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、不純物処理方法及び燃料電池システムを新たに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料電池システムにおける不純物処理方法は、
燃料ガス及び酸化剤ガスを用いて発電を行う燃料電池セルと、前記燃料電池セルの運転を制御する運転制御部とを備える燃料電池システムにおける不純物処理方法であって、その特徴構成は、
前記運転制御部は、通常の運転温度で前記燃料電池セルを運転するように制御する第1運転モードと、前記通常の運転温度よりも高温で前記燃料電池セルを運転するように制御する第2運転モードとを実行可能であり、所定のタイミングで前記第2運転モードを実行し、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて前記燃料電池セルの温度を徐々に上昇させ、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて前記燃料電池セルの温度を徐々に上昇させる場合、前記燃料電池セルの温度を上昇させて運転した後、前記通常の運転温度に戻し、前記燃料電池セルの発電性能が改善したか否かを判定し、前記判定において発電性能が改善していない場合は前記燃料電池セルの温度を先に上昇させた温度よりもさらに上昇させて運転し、前記判定において発電性能が改善している場合は前記燃料電池セルの温度の更なる上昇を停止する点にある。
【0009】
空気中に含まれる硫黄等の不純物が酸化剤ガスに含まれると、燃料電池セルの発電性能が低下する。上記特徴構成では、運転制御部は、所定のタイミングで第2運転モードを実行し、通常の運転温度よりも高温で燃料電池セルを運転するように制御する。硫黄等の不純物を含む酸化剤ガスが燃料電池セルに供給され、通常の運転温度よりも高温で燃料電池セルが運転されると、硫黄等の不純物は高温に晒される。これにより、硫黄等の不純物の影響を抑制し、燃料電池セルの発電性能の低下を抑制できる。
また、前述のような第2運転モードは、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を停止することなく実行可能である。よって、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を停止する待機運転等の限られた場合ではなく、硫黄等の不純物を処理するための運転を適宜実行できる。言い換えれば、第2運転モードは、燃料ガス及び酸化剤ガスの燃料電池セルへの供給を第1運転モードから継続的に行ったまま実行できるため、運転状態の大きな変更を伴わず容易に実行可能である。また、フィルタ等の別途の部材を取り付ける必要もなく、コスト上昇を抑制できる。
また、運転制御部は、第2運転モードの高温に制御するまでに、通常の運転温度から徐々に燃料電池セルの温度を上昇させる。これにより、運転制御部は、燃料電池セルの状態を見ながら徐々に温度を上昇させることができる。また、急激に温度を上昇させた場合よりも急激な熱応力の発生等による燃料電池セルの変形及び割れ等を抑制できる。
また更に、運転制御部は、燃料電池セルの温度を上昇させて運転させた後、一旦、通常の運転温度に戻し、燃料電池セルの発電性能の改善を判定する。通常の運転温度に戻すことで、燃料電池セルの発電性能の改善をより確認し易い。
【0010】
本発明に係る不純物処理方法の更なる特徴構成は、
前記燃料電池システムは、
前記燃料電池セルによる発電電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記運転制御部は、前記電圧検出部が検出した発電電圧が開始用電圧閾値よりも小さくなると前記第2運転モードを実行する点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、電圧検出部が検出した発電電圧が開始用電圧閾値よりも小さくなった場合には、運転制御部は、硫黄等の不純物により発電性能の低下が生じているとして、硫黄等の不純物を処理するための第2運転モードを実行する。
【0012】
本発明に係る不純物処理方法の更なる特徴構成は、
前記燃料電池システムは、
前記燃料電池セルによる発電電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて、前記電圧検出部が検出した発電電圧が停止用電圧閾値以上になると前記第2運転モードの実行を停止する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、電圧検出部が検出した燃料電池セルの発電電圧が停止用電圧閾値以上になった場合、運転制御部は、硫黄等の不純物による発電性能の低下が抑制されたとして、第2運転モードの実行を停止する。
【0014】
本発明に係る不純物処理方法の更なる特徴構成は、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて、前記燃料ガスの供給量を前記第1運転モードよりも増加させることで前記燃料電池セルの温度を上昇させる点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、運転制御部が第2運転モードにおいて燃料ガスの供給量を第2運転モードよりも増加させると、燃料ガスの増加分に応じて燃焼量が増加する。これにより、燃料電池セルの温度を上昇させることができ、硫黄等の不純物を処理できる。
【0016】
本発明に係る不純物処理方法の更なる特徴構成は、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて、前記酸化剤ガスの供給量を前記第1運転モードよりも減少させることで前記燃料電池セルの温度を上昇させる点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、運転制御部が第2運転モードにおいて酸化剤ガスの供給量を第2運転モードよりも減少させると、燃料電池セルの冷却が抑制される。これにより、燃料電池セルの温度を上昇させることができ、硫黄等の不純物を処理し、硫黄等の不純物の影響を抑制できる。
【0020】
本発明に係る不純物処理方法の更なる特徴構成は、
前記燃料電池システムは、
前記燃料電池セルによる発電電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて前記燃料電池セルの温度を徐々に上昇させている場合に、前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて、前記電圧検出部が検出した発電電圧が停止用電圧閾値以上になると前記第2運転モードの実行を停止し、前記電圧検出部が検出した発電電圧が開始用電圧閾値よりも小さい場合は前記燃料電池セルの温度をさらに上昇させるか又は維持する点にある。
【0021】
上記特徴構成により、第2運転モードにおいて燃料電池セルの温度を徐々に上昇させている場合に、電圧検出部が検出した燃料電池セルの発電電圧が停止用電圧閾値以上になった場合、運転制御部は、硫黄等の不純物による発電性能の低下が抑制されたとして、第2運転モードの実行を停止する。一方、前記電圧検出部が検出した発電電圧が開始用電圧閾値よりも小さい場合は硫黄等の不純物による発電性能の低下が継続しており、運転制御部は温度の上昇を継続するか維持する。このように、運転制御部は、燃料電池セルの状態を見ながら徐々に温度を上昇させることができる。
【0024】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、
燃料ガス及び酸化剤ガスを用いて発電を行う燃料電池セルと、
前記燃料電池セルの運転を制御する運転制御部とを備え、
前記運転制御部は、通常の運転温度で前記燃料電池セルを運転するように制御する第1運転モードと、前記通常の運転温度よりも高温で前記燃料電池セルを運転するように制御する不純物処理用の第2運転モードとを実行可能であり、所定のタイミングで前記第2運転モードを実行し、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて前記燃料電池セルの温度を徐々に上昇させ、
前記運転制御部は、前記第2運転モードにおいて前記燃料電池セルの温度を徐々に上昇させる場合、前記燃料電池セルの温度を上昇させて運転した後、前記通常の運転温度に戻し、前記燃料電池セルの発電性能が改善したか否かを判定し、前記判定において発電性能が改善していない場合は前記燃料電池セルの温度を先に上昇させた温度よりもさらに上昇させて運転し、前記判定において発電性能が改善している場合は前記燃料電池セルの温度の更なる上昇を停止する点にある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態〕
以下に、本発明の実施形態に係る燃料電池システムにおける不純物処理方法について、
図1を用いて説明する。
【0027】
(1)燃料電池システムの構成
燃料電池システム100は、
図1に示すように、燃料電池発電装置1を備えている。また、燃料電池システム100は、燃料電池発電装置1に燃料ガス、改質水及び酸化剤ガスを供給するために、燃料ガス供給用の燃料ガス用ポンプ2と、昇圧ポンプ5と、脱硫器3と、改質水供給用の改質水タンク9と、酸化剤ガス供給用の空気ブロア15とを備えている。また、燃料電池システム100は、燃料電池発電装置1から排出される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器17と、熱交換器17との間で循環させる水等の熱媒を収容する貯湯タンク19とを備えている。また、燃料電池システム100は、燃料電池システム100の運転を制御する運転制御部71備えている。
【0028】
本実施形態の運転制御部71は、所定のタイミングで通常の運転温度よりも高温で後述の燃料電池セルAを運転するように制御する第2運転モードを実行する。これにより不純物を処理する。この点については後述する。
【0029】
都市ガス(例えば、都市ガス13A)等の炭化水素系の原燃料は、燃料ガス用ポンプ2により所定流量の出力が制御されて昇圧ポンプ5に供給される。さらに、原燃料は、昇圧ポンプ5の作動により原燃料供給路41を通して脱硫器3に供給される。
【0030】
脱硫器3は、原燃料に含まれる硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料中に硫黄化合物が含有される場合、脱硫器3を備えることにより、硫黄化合物による改質器28あるいは燃料電池発電装置1に対する影響を抑制することができる。
【0031】
改質水タンク9からは、改質水ポンプ7の作動により改質水供給路43を通して燃料電池発電装置1に改質水が供給される。
【0032】
改質水タンク9は、後述の触媒燃焼排ガスから凝縮水を回収する。また、改質水タンク9に供給される凝縮水を水精製器(図示せず)により精製するようになっている。具体的には、熱交換器17の出口から排出路51を介して排出される後述の触媒燃焼排ガスから、凝縮水回収路45を介して凝縮水を水精製器(図示せず)に回収する。そして、水精製器(図示せず)により精製された凝縮水が改質水タンク9に回収される。
【0033】
また、改質水タンク9には、凝縮水とは独立に、水供給部13から水を供給可能になっている。
【0034】
燃料電池発電装置1は、収納容器40内に収納されており、燃料電池モジュール23、気化器27、改質器28及び燃焼部29を備えている。
【0035】
気化器27には、改質水供給路43を介して改質水タンク9から改質水が供給され、原燃料供給路41を介して脱硫された原燃料が供給される。原燃料供給路41は脱硫器3よりも下流側の部位で、改質水供給路43に合流されており、収納容器40外にて合流された改質水と原燃料とが気化器27に供給される。改質水及び原燃料が供給された気化器27は、改質水から水蒸気を生成する。気化器27にて生成された水蒸気を含む原燃料は、水蒸気含有原燃料供給路31を通して改質器28に供給される。
【0036】
改質器28は、気化器27にて生成された水蒸気を用いて、脱硫器3において脱硫された原燃料を水蒸気改質して、水素ガスを主成分とする燃料ガス(還元性成分を有するガス)を生成する。このとき、改質器28は、後述の燃焼部29での燃料成分ガスを含む未燃ガスの燃焼により発生する燃焼熱を用いて原燃料の水蒸気改質を行う。
【0037】
改質器28にて生成された燃料ガスは、燃料ガス供給路33を通して燃料電池モジュール23のガスマニホールド25に供給される。
【0038】
ガスマニホールド25に供給された燃料ガスは、燃料電池モジュール23を構成する複数の燃料電池セルAに対して分配され、燃料電池セルAとガスマニホールド25との接続部である下端から燃料電池セルAに供給される。
【0039】
燃料電池モジュール23は、改質器28から供給された燃料ガスと、空気ブロア15から供給された酸化剤ガスとを用いて発電する。より具体的には、燃料電池モジュール23は、複数の燃料電池セルAとガスマニホールド25とを有する。複数の燃料電池セルAは互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、各燃料電池セルAの一方の端部(下端部)がガスマニホールド25に固定されている。各燃料電池セルAは、ガスマニホールド25を通じて燃料ガスが供給されるアノードと、空気ブロア15を通じて酸化剤ガスが供給されるカソードと、アノードとカソードとの間の電解質とを有しており、燃料ガス及び酸化剤ガスを反応させて発電する。
【0040】
インバータ39は、燃料電池モジュール23において発電された出力電圧を調整し、商用系統(図示せず)から受電する電力と同じ電圧及び同じ周波数にする。
【0041】
燃焼部29には、燃料電池モジュール23における発電反応に用いられずに排出される燃料成分ガスを含む未燃ガスが供給される。燃焼部29は、供給された未燃ガスを燃焼する。燃焼部29からは、未燃ガスの燃焼により生じたセル燃焼排ガス(燃焼排ガスの一例)が排出される。
【0042】
セル燃焼排ガスは改質器28に供給されるとともに、燃焼触媒部35を介してガス出口37から収納容器40の外部に排出される。改質器28は、前述の通り、セル燃焼排ガスの熱、つまり燃料成分ガスの燃焼により生じた燃焼熱を用いて水蒸気改質を行う。
【0043】
ガス出口37には、燃焼触媒部35が配置され、セル燃焼排ガスに含有される一酸化炭素や水素等の還元性成分である未燃ガスを燃焼除去する。燃焼触媒部35は、例えば、白金系触媒等から構成されている。
【0044】
ガス出口37からは、燃焼触媒部35での未燃ガスの燃焼により生じた触媒燃焼排ガス(燃焼排ガスの一例)が排出される。触媒燃焼排ガスは、排出路52を介して熱交換器17に送られる。
【0045】
燃料電池発電装置1の各部には温度及び電圧を検出するための各種検出部が設けられてる。本実施形態では、燃料電池セルAにおける温度を検出するためのセル温度検出部T1と、燃焼部29におけるセル燃焼排ガスの温度を検出するための燃焼部温度検出部T2と、燃焼触媒部35における触媒燃焼排ガスの温度を検出するための触媒温度検出部T3と、燃料電池セルAにおける発電電圧を検出するための電圧検出部Vとを備えている。これらの検出部の検出結果は、運転制御部71に送信される。
【0046】
熱交換器17では、ガス出口37から排出される触媒燃焼排ガスと、貯湯タンク19から排出される熱媒との間で熱交換が行われる。例えば、熱媒が水である場合、触媒燃焼排ガスと水との間で熱交換が行われ温水が生成され、貯湯タンク19に収容される。触媒燃焼排ガスは、水との熱交換により温度が低下した状態で排出路51に排出される。熱交換器17を出た熱媒は、熱媒循環路61に排出され貯湯タンク19に導入される。さらに、貯湯タンク19を出た熱媒循環路61を通流して再び熱交換器17に導入される。よって、熱媒循環路61によって、熱交換器17と貯湯タンク19との間で熱媒が循環する。
【0047】
なお、貯湯タンク19には、貯湯タンク19中の湯水を出湯するための出湯路19a、及び、湯水の出湯に応じて貯湯タンク19に給水するための給水路19bが設けられている。貯湯タンク19に収容された温水は、お風呂及び洗面等への供給に用いることが可能であり、燃料電池発電装置1からの触媒燃焼排ガスの排熱を再利用することができる。
【0048】
また、熱媒循環路61には、循環ポンプ63と、ラジエータ65とが備えられている。循環ポンプ63は、回転数を制御し、所望の回転数で貯湯タンク19からの熱媒を熱交換器17に供給する。ラジエータ65は、熱媒循環路61を通流する熱媒の熱を放熱させるための放熱ファン65aと、図示しない温度センサとを有する。
【0049】
(2)運転制御部が実行する不純物処理方法
上記の燃料電池システム100の運転制御部71は、硫黄等の不純物を処理するための不純物処理方法を実行する。不純物処理方法について以下に説明する。
(2-1)不純物処理方法の全体の流れ
まず、不純物処理方法の全体の流れについて説明する。運転制御部71は、通常の運転温度で燃料電池セルAを運転するように制御する第1運転モードと、通常の運転温度よりも高温で燃料電池セルAを運転するように制御する第2運転モードとを実行可能であり、所定のタイミングで第2運転モードを実行する。
【0050】
第1運転モードは、例えば、燃料電池システム100で発電された発電電力を負荷等に供給している通常運転を意味する。第1運転モードにおける通常の運転温度とは、通常運転の場合の燃料電池セルAの温度である。通常の運転温度は、これに限定されないが、例えば700~750℃である。
【0051】
そして、運転制御部71は、燃料ガス用ポンプ2を制御することによる燃料ガス供給量の制御、空気ブロア15を制御することによる酸化剤ガス供給量の制御等によって燃料電池セルAの温度を制御する。なお、運転制御部71は、セル温度検出部T1、燃焼部温度検出部T2、触媒温度検出部T3及び電圧検出部V等が検出した各種温度及び電圧等を参照し、燃料電池セルAの温度を制御する。
【0052】
一方、第2運転モードは、第1運転モードとは異なり、硫黄等の不純物を処理する際の運転を意味する。第2運転モードにおける燃料電池セルAの温度は、第1運転モードにおける通常の運転温度よりも高く、硫黄等の不純物を処理可能な温度である。第2運転モードの運転温度は、これに限定されないが、例えば750~950℃である。第2運転モードにおける運転温度の制御方法については後述する。
【0053】
なお、硫黄等の不純物を処理するとは、発電性能の影響を抑制できるように硫黄等の不純物を処理することを言う。硫黄等の不純物の処理は、これに限定されないが、例えば、硫黄等の不純物を高温により除去すること、高温の雰囲気に曝すことで硫黄等の不純物を発電性能の影響が出ない領域に移動させること、高温の雰囲気に曝すことで硫黄等の不純物を発電性能の影響が出ない状態に変化させること(例えば、燃料電池セルAの電極上において不純物を別の形態に変化させる)等を含む。
【0054】
運転制御部71は、第2運転モードを所定のタイミングで実行する。所定のタイミングとは、任意のタイミングであってもよいし、定期的なタイミングであってもよい。その他、運転制御部71は、後述の通り燃料電池システム100の状態に基づいて第2運転モードを実行してもよい。
また、運転制御部71は、第2運転モードを開始した後、任意のタイミングで第2運転モードを終了してもよいし、第2運転モードを所定期間実行した後に終了してもよい。その他、後述の通り燃料電池システム100の状態に基づいて第2運転モードを終了してもよい。
【0055】
空気中に含まれる硫黄等の不純物が酸化剤ガスに含まれると、燃料電池セルAの発電性能が低下する。本実施形態では、上記の通り、運転制御部71は、所定のタイミングで第2運転モードを実行し、通常の運転温度よりも高温で燃料電池セルAを運転するように制御する。硫黄等の不純物を含む酸化剤ガスが燃料電池セルAに供給され、通常の運転温度よりも高温で燃料電池セルAが運転されると、硫黄等の不純物は高温に晒される。これにより硫黄等の不純物の影響を抑制し、燃料電池セルAの発電性能の低下を抑制できる。
【0056】
また、前述のような第2運転モードは、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を停止することなく実行可能である。よって、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を停止する待機運転等の限られた場合ではなく、硫黄等の不純物を処理するための運転を適宜実行できる。言い換えれば、第2運転モードは、燃料ガス及び酸化剤ガスの燃料電池セルAへの供給を第1運転モードから継続的に行ったまま実行できるため、運転状態の大きな変更を伴わず容易に実行可能である。また、フィルタ等の別途の部材を取り付ける必要もなく、コスト上昇を抑制できる。
【0057】
(2-2)第2運転モードにおける温度制御の例
第2運転モードでは、運転制御部71は、第1運転モードでの通常の運転温度よりも高温で燃料電池セルAの運転を制御する。以下では、第2運転モードにおける燃料電池セルAを高温での運転に制御する方法の一例について説明する。
【0058】
運転制御部71は、第2運転モードにおいて、燃料ガス用ポンプ2を制御して燃料ガスの供給量を第1運転モードよりも増加させ、燃料電池セルAの温度を上昇させる。燃料ガスの供給量の増加分に応じて燃焼量が増加する。これにより、燃料電池セルAの温度を上昇させて高温で運転させることができる。
【0059】
運転制御部71は、第2運転モードにおいて、空気ブロア15を制御して酸化剤ガスの供給量を第1運転モードよりも減少させ、燃料電池セルAの温度を上昇させる。酸化剤ガスの供給量を減少させると、燃料電池セルAの冷却が抑制される。これにより、燃料電池セルAの温度を上昇させて高温で運転させることができる。
【0060】
なお、運転制御部71は、前述のように温度を上昇させるように制御した場合、セル温度検出部T1が検出する燃料電池セルAの温度を監視しておき、所定の高温(例えば750~950℃)まで温度を上昇させる制御を行う。そして、所定の高温まで燃料電池セルAの温度が上昇すると、運転制御部71は温度をさらに上昇させる制御を停止させることができる。
【0061】
また、運転制御部71は、前述のように高温に制御する場合に、当該高温まで徐々に温度を上げるように制御することができる。これにより、急激な温度上昇による急激な熱応力の発生等による燃料電池セルAの変形及び割れ等を抑制できる。
【0062】
また、運転制御部71は、燃料電池セルAの発電性能が回復したか否かを見ながら徐々に温度を上昇させることができる。例えば、運転制御部71は、温度を所定の温度だけ上昇させたにも関わらず燃料電池セルAの発電性能が低下したままで回復していない場合は、硫黄等の不純物が処理されていないとして、さらに温度を上昇させるように制御する。この場合であっても、所定の高温(例えば950℃)までで温度の上昇を停止させるのが、燃料電池セルAの変形及び割れ等を防ぐ観点から好ましい。なお、運転制御部71は、電圧検出部Vで検出される発電電圧が通常運転での発電電圧よりも低い場合等には、硫黄等の不純物が処理されておらず発電性能が回復していないと判断する。
【0063】
一方、運転制御部71は、温度を所定の温度だけ上昇させたことで燃料電池セルAの発電性能が回復した場合は、さらなる温度の上昇を停止させるか、通常運転の温度に戻すように制御する。なお、運転制御部71は、電圧検出部Vで検出される発電電圧が通常運転での発電電圧と同程度かそれ以上の場合等には、硫黄等の不純物が処理されて発電性能が回復していると判断する。
【0064】
徐々に温度を上昇させて燃料電池セルAの発電性能の回復を判定する制御としては、具体的には、次のように制御することもできる。例えば、まず、運転制御部71は、通常の運転温度である例えば700~750℃から、燃料電池セルAの運温度を所定の温度だけ上昇させて900℃とする。その後、運転制御部71は、一旦、通常の運転温度である例えば700~750℃に戻し、燃料電池セルAの発電性能の回復を判定する。ここで、燃料電池セルAの発電性能が回復していない場合は、運転制御部71は、燃料電池セルAの運温度を前述の900℃よりも上昇させて例えば925℃とする。逆に、燃料電池セルAの発電性能が回復している場合は、運転制御部71は、燃料電池セルAの運温度のさらなる上昇を停止する。そして、燃料電池セルAの発電性能が回復しておらず燃料電池セルAの温度を925℃と上昇させた場合は、その後、一旦、通常の運転温度である例えば700~750℃に戻し、燃料電池セルAの発電性能の回復を判定する。ここで、燃料電池セルAの発電性能が回復していない場合は、運転制御部71は、燃料電池セルAの運温度を前述の925℃よりも上昇させて例えば950℃とする。逆に、燃料電池セルAの発電性能が回復している場合は、運転制御部71は、燃料電池セルAの温度のさらなる上昇を停止する。このように燃料電池セルAを高温で運転した後、通常の運転温度に戻して燃料電池セルAの発電性能の改善を判定することで、高温において発電性能を判定するよりも、改善したか否かをより確認し易い。
【0065】
(2-3)第2運転モードの開始条件の例
運転制御部71は、任意のタイミング、定期的なタイミング、燃料電池システム100の状態に基づいたタイミング等の所定のタイミングで第2運転モードを実行する。ここでは、燃料電池システム100の状態に基づいたタイミングでの第2運転モードの開始について説明する。
【0066】
運転制御部71は、電圧検出部Vが検出した発電電圧が開始用電圧閾値よりも小さくなると、第2運転モードを実行する。電圧検出部Vが検出した燃料電池セルAの発電電圧が開始用電圧閾値よりも小さくなった場合とは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いた燃料電池セルAでの発電性能が低下した場合である。この場合、硫黄等の不純物により発電性能の低下が生じているとして、運転制御部71は硫黄等の不純物を処理するための第2運転モードを実行する。なお、開始用電圧閾値は、例えば、通常運転での燃料電池セルAにおける発電電圧より低い電圧に設定されている。
【0067】
(2-4)第2運転モードの終了条件の例
運転制御部71は、第2運転モードを開始した後、任意のタイミング、第2運転モードを所定期間実行した後のタイミング、燃料電池システム100の状態に基づいたタイミング等の所定のタイミングで第2運転モードを終了する。ここでは、燃料電池システム100の状態に基づいたタイミングでの第2運転モードの終了について説明する。
【0068】
電圧検出部Vが検出した燃料電池セルAの発電電圧が停止用電圧閾値以上になった場合、運転制御部71は第2運転モードの実行を停止する。なお、電圧検出部Vが検出した発電電圧が停止用電圧閾値以上になった場合とは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いた燃料電池セルでの発電性能が向上して発電電圧が上昇した場合である。この場合、運転制御部71は、硫黄等の不純物による発電性能の低下が抑制されたとして、第2運転モードの実行を停止する。
なお、停止用電圧閾値は、例えば、通常運転での燃料電池セルAの発電電圧に設定されている。
【0069】
〔他の実施形態〕
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0070】
上記実施形態では、不純物として主に硫黄を挙げているが、その他、燃料電池セルAを高温に制御することで処理可能な化合物も本実施形態の不純物に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
21 :燃料電池セル
29 :燃焼部
35 :燃焼触媒部
71 :運転制御部
100 :燃料電池システム
T1 :セル温度検出部
T2 :燃焼部温度検出部
T3 :触媒温度検出部
V :電圧検出部