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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】水中航走体用の整流フィンの固定機構
(51)【国際特許分類】
   B63B 39/06 20060101AFI20240325BHJP
   B63C 11/00 20060101ALI20240325BHJP
   B63G 8/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
B63B39/06 A
B63C11/00 B
B63G8/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020063358
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160524
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 潤
(72)【発明者】
【氏名】矢部 仁識
(72)【発明者】
【氏名】白岩 侑士
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101508334(CN,A)
【文献】実開昭59-027988(JP,U)
【文献】実開昭59-104892(JP,U)
【文献】特開2016-190591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 3/13 - 3/14
B63B 32/60 - 32/66
B63B 39/06
B63C 11/00
B63C 11/48 - 11/50
B63G 8/00 - 8/42
B63H 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舵と推進装置との間に配置される水中航走体用の整流フィンの固定機構であって、
前記水中航走体の金属製の外板よりも外方へ突出して配置される、繊維強化プラスチック製の前記整流フィンと、
前記外板に溶接により固定される金属製の受台と、
前記整流フィンの内部から前記外板の内方へ突出し、前記整流フィンの内部に位置する部分が前記整流フィンと一体的に成型される金属製の棒状体とを備え、
最も外方にある前記受台の最外部は、前記外板の内面に当接して配置され、又は前記外板と面一であるように配置され、
前記棒状体が前記受台にボルト又は溶接により固定されることで、前記整流フィンが前記棒状体及び前記受台を介して前記外板に固定される、
水中航走体用の整流フィンの固定機構。
【請求項2】
前記棒状体は、前記受台に前記ボルトにより固定される、
請求項1に記載の水中航走体用の整流フィンの固定機構。
【請求項3】
舵と推進装置との間に配置される水中航走体用の整流フィンの固定機構であって、
前記水中航走体の金属製の外板よりも外方へ突出して配置される、繊維強化プラスチック製の前記整流フィンと、
前記外板に溶接により固定される金属製の受台と、
前記整流フィンの内部から前記外板の内方へ突出し、前記整流フィンの内部に位置する部分が前記整流フィンと一体的に成型される金属製の棒状体とを備え、
最も外方にある前記受台の最外部は、前記外板よりも内方に配置され、又は前記外板と面一であるように配置され、
前記棒状体が前記受台にボルト又は溶接により固定されることで、前記整流フィンが前記棒状体及び前記受台を介して前記外板に固定され、
前記棒状体は、前記受台に前記ボルトにより固定され、
前記棒状体は、板状であり、
前記受台は、前記棒状体の厚さ方向において前記棒状体の側方に位置しており、
前記棒状体には、前記ボルトが挿通される第1貫通穴が前記棒状体を厚さ方向に貫通するように設けられる、
中航走体用の整流フィンの固定機構。
【請求項4】
前記ボルトに螺合されるナットをさらに備え、
前記受台には、前記ボルトが挿通される第2貫通穴が設けられる、
請求項3に記載の水中航走体用の整流フィンの固定機構。
【請求項5】
舵と推進装置との間に配置される水中航走体用の整流フィンの固定機構であって、
前記水中航走体の金属製の外板よりも外方へ突出して配置される、繊維強化プラスチック製の前記整流フィンと、
前記外板に溶接により固定される金属製の受台と、
前記整流フィンの内部から前記外板の内方へ突出し、前記整流フィンの内部に位置する部分が前記整流フィンと一体的に成型される金属製の棒状体とを備え、
最も外方にある前記受台の最外部は、前記外板よりも内方に配置され、又は前記外板と面一であるように配置され、
前記棒状体が前記受台にボルト又は溶接により固定されることで、前記整流フィンが前記棒状体及び前記受台を介して前記外板に固定され、
前記棒状体は、前記受台に前記ボルトにより固定され、
最も内方にある前記受台の最内部と、最も内方にある前記棒状体の端面と、に内方側から当接する底板をさらに備え、
前記底板には、前記受台の最内部に当接する部分に第3貫通穴が設けられ、前記棒状体の端面に当接する部分に第4貫通穴が設けられ、
前記受台の最内部には、前記第3貫通穴に連通する第1ネジ穴が設けられ、
前記棒状体の端面には、前記第4貫通穴に連通する第2ネジ穴が設けられ、
前記ボルトは、第1ボルト及び第2ボルトを含み、
前記棒状体は、前記第1ボルトが前記第3貫通穴を貫通して前記第1ネジ穴に螺合され、前記第2ボルトが前記第4貫通穴を貫通して前記第2ネジ穴に螺合されることにより、前記底板を介して前記受台に固定される、
中航走体用の整流フィンの固定機構。
【請求項6】
前記棒状体は、円柱状であり、
前記受台は、前記棒状体と嵌合する筒状であり、
前記第3貫通穴及び前記第1ネジ穴の少なくとも一方は、前記棒状体の中心軸を中心とする同一円周上に複数配列される、
請求項5に記載の水中航走体用の整流フィンの固定機構。
【請求項7】
舵と推進装置との間に配置される水中航走体用の整流フィンの固定機構であって、
前記水中航走体の金属製の外板よりも外方へ突出して配置される、繊維強化プラスチック製の前記整流フィンと、
前記整流フィンの基端に設けられる凹部に嵌合した状態で前記整流フィンと一体的に成型される突出部と、前記突出部を中心として前記整流フィンの周囲に張り出すように広が
る板部とを有する金属製の受台とを備え、
最も外方にある前記板部の最外部は、前記外板よりも内方に配置され、又は前記外板と面一であるように配置され、
前記板部の周縁が前記外板に溶接により固定されることで、前記整流フィンが前記受台を介して前記外板に固定される、
水中航走体用の整流フィンの固定機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中航走体用の整流フィンの固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有人又は無人の水中航走体には、その外側に装着された水中ひれを備えるものがある。例えば、特許文献1は、水中航走体上に立設される垂直安定ひれを開示する。垂直安定ひれは、ガラス繊維強化プラスチックにより成形され且つ内部が外水と連通する外皮層を備える。垂直安定ひれは金属製の支持骨を介して水中航走体に取り付けられる。支持骨は、外皮層の内側に配置され、支持骨を挟持する外皮層にボルトナットにより固定される。支持骨の下端に設けられたフランジが水中航走体のフレーム構造に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-251788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような垂直安定ひれは、ガラス繊維強化プラスチックなどの複合材を用いることにより、厚みを薄くことができ鋼製と比較して軽量化を図ることができる。しかし、ひれと船体外板とは材料が異なり異種材同士の接合となるため容易ではない。特に、ひれを船体外板に対して平滑になるように取り付けられなければ、ひれのよる整流効果を十分に得られない場合がある。
【0005】
本開示は、異種材の整流フィンを水中航走体に対して平滑に取り付けて流体性能を向上させるための水中航走体用の整流フィンの固定機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一つの側面からの水中航走体用の整流フィンの固定機構は、舵と推進装置との間に配置される水中航走体用の整流フィンの固定機構であって、前記水中航走体の金属製の外板よりも外方へ突出して配置される、繊維強化プラスチック製の前記整流フィンと、前記外板に溶接により固定される金属製の受台と、前記整流フィンの内部から前記外板の内方へ突出し、前記整流フィンの内部に位置する部分が前記整流フィンと一体的に成型される金属製の棒状体とを備え、最も外方にある前記受台の最外部は、前記外板よりも内方に配置され、又は前記外板と面一であるように配置され、前記棒状体が前記受台にボルト又は溶接により固定されることで、前記整流フィンが前記棒状体及び前記受台を介して前記外板に固定される。
【0007】
また、本開示の別の側面からの水中航走体用の整流フィンの固定機構は、舵と推進装置との間に配置される水中航走体用の整流フィンの固定機構であって、前記水中航走体の金属製の外板よりも外方へ突出して配置される、繊維強化プラスチック製の前記整流フィンと、前記整流フィンの基端に設けられる凹部に嵌合した状態で前記整流フィンと一体的に成型される突出部と、前記突出部を中心として前記整流フィンの周囲に張り出すように広がる板部とを有する金属製の受台とを備え、最も外方にある前記板部の最外部は、前記外板よりも内方に配置され、又は前記外板と面一であるように配置され、前記板部の周縁が前記外板に溶接により固定されることで、前記整流フィンが前記受台を介して前記外板に固定される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、異種材の整流フィンを水中航走体に対して平滑に取り付けて流体性能を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る整流フィンの固定機構によって水中航走体に固定された整流フィン及びその周辺部分を示す概略図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る整流フィンの固定機構及びその周辺部分を整流フィンの厚さ方向に直交する平面に沿って切断したときの断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る整流フィンの固定機構の図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る整流フィンの固定機構の図2のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】本発明の第1実施形態の変形例に係る整流フィンの固定機構の図4に対応する断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る整流フィンの固定機構及びその周辺部分を整流フィンの厚さ方向に直交する平面に沿って切断したときの断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る整流フィンの固定機構が備える底板の斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る整流フィンの固定機構の図6のVIII-VIII線に沿った断面図であり、(A)が整流フィンの迎角を変更しないときの断面図、(B)が整流フィンの迎角を変更したときの断面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る整流フィンの固定機構及びその周辺部分を整流フィンの厚さ方向に直交する平面に沿って切断したときの断面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る整流フィンの固定機構及びその周辺部分の図9のX-X線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図1~4に基づき、本発明の第1実施形態に係る水中航走体用の整流フィンの固定機構10Aについて説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0011】
図1に、本発明の第1実施形態に係る水中航走体用の整流フィンの固定機構10A(以下、単に「固定機構10A」と称する場合がある)によって水中航走体100に固定された整流フィン110及びその周辺部分を示す。図1に示すように、水中航走体100は、船体102と、船体102の船尾近傍に設けられる複数の舵106と、船体102の船尾に設けられるプロペラ108(推進装置)と、を備える。複数の舵106は、船長方向において互いに同じ位置に設けられる。なお、プロペラ108は、例えば、スクリュープロペラ及びその回転駆動装置を含んでもよい。また、プロペラ108に代えてウォータージェット推進装置などの他の推進装置が設けられてもよい。
【0012】
水中航走体100は、舵106とプロペラ108との間に配置される整流フィン110をさらに備える。整流フィン110は、複数の舵106と同数だけ設けられる。複数の整流フィン110は、船長方向において互いに同じ位置に設けられる。そして、複数の整流フィン110それぞれを船体102に固定するために、本実施形態に係る固定機構10Aが用いられる。
【0013】
ここで、図1では、舵106、整流フィン110及び固定機構10Aが、それぞれ、二つずつ示されている。しかし、例えば、舵106、整流フィン110及び固定機構10Aは、それぞれ、四つずつ設けられてもよい。
【0014】
なお、水中航走体100の構造は、船長方向に延びる中心軸線(図示せず)に沿った鉛直面に対して面対称である。したがって、以下では、特に必要な場合を除き、水中航走体100の左舷側及びこの左舷側で用いられる固定機構10Aについてのみ説明し、右舷側についての同様となる説明は省略する。
【0015】
図2に、固定機構10A及びその周辺部分を整流フィン110の厚さ方向に直交する平面に沿って切断したときの断面図を示す。図2に示すように、整流フィン110は、船体102の外装を構成する金属製の外板103よりも船体102の外方(以下、単に「外方」と称する場合がある)へ突出して配置される。
【0016】
整流フィン110は、繊維強化プラスチック製であり、複合材料で大凡形成されており、本実施の形態では、一体成形により一体化されている。複合材料は、繊維及び樹脂の複合材料である繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)である。
【0017】
繊維強化プラスチックの例は、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP;Glass Fiber Reinforced Plastics)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP;Carbon Fiber Reinforced Plastics)、ボロン繊維強化プラスチック(BFRP;Boron Fiber Reinforced Plastics)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP;Aramid Fiber Reinforced Plastics)、ケプラ繊維強化プラスチック(KFRP;Kevlar Fiber Reinforced Plastics)、ダイニーマ繊維強化プラスチック(DFRP;Dyneema Fiber Reinforced Plastics)及びザイロン繊維強化プラスチック(ZFRP;Zylon Fiber Reinforced Plastics)等である。
【0018】
外板103には、後述する棒状体50を差し込むための差し込み穴104が設けられる。この差し込み穴104は、外板103の厚さ方向から見たとき、棒状体50に対応した大きさ及び形状である。
【0019】
図3に、固定機構10Aの図2のIII-III線に沿った断面図を示す。図2、3に示すように、固定機構10Aは、外板103に溶接により固定される金属製の受台20と、整流フィン110の内部から船体102の内方へ突出し、整流フィン110の内部に位置する部分が整流フィン110と一体的に成型される金属製の棒状体50とを備える。
【0020】
棒状体50は、整流フィン110と平行な板状である。棒状体50は、受台20に三つのボルト92により固定される。棒状体50には、三つのボルト92それぞれが挿通される第1貫通穴54がこの棒状体50を厚さ方向に貫通するように設けられる。三つの第1貫通穴54は、それぞれ、棒状体50のうちの整流フィン110の基端から突出した部分に、棒状体50の軸方向に沿って等間隔に配列される。なお、第1貫通穴54の直径は、それぞれ、ボルト92の軸部の直径に等しい。
【0021】
受台20は、整流フィン110及び棒状体50と平行な板状である。なお、本実施形態では、図2に示すように、受台20の幅が整流フィン110の幅よりも僅かに大きい。しかし、この場合に限定されず、受台20の幅は、整流フィン110の幅と同じであってもよいし、整流フィン110の幅より小さくてもよい。
【0022】
図2に示すように、最も外方にある受台20の最外部46は、外板103の内面に当接して配置される。換言すれば、本実施形態では、最外部46は、外板103よりも船体102の内方に配置される。受台20は、棒状体50の厚さ方向においてこの棒状体50の側方に位置している。なお、本実施形態では、最外部46が外板103の内面に溶接により固定されることで、受台20が外板103に固定される。
【0023】
受台20には、棒状体50が固定される主面から突出するように二つの補強材48が設けられる。二つの補強材48は、それぞれ、板状であり、各々の主面が棒状体50を介して互いに平行に対向する。
【0024】
最も外方にある二つの補強材48の端面は、それぞれ、受台20の最外部46と面一であり、外板103の内面に当接する。また、最も内方にある二つの補強材48の端面は、それぞれ、最も内方にある受台20の最内部47よりも僅かに外方に位置する。
【0025】
図4に、固定機構10Aの図2のIV-IV線に沿った断面図を示す。図4に示すように、受台20には、棒状体50の第1貫通穴54と連通し、ボルト92が挿通される第2貫通穴24が設けられる。第2貫通穴24の直径は、第1貫通穴54及びボルト92の軸部の直径に等しい。
【0026】
なお、受台20には、棒状体50の三つの第1貫通穴54に対応して三つの第2貫通穴24が設けられるが、図4では最も内方に設けられる第1貫通穴54、第2貫通穴24、及びそこに取り付けられるボルト92を図示してある。また、固定機構10Aは、三つのボルト92それぞれに螺合されるナット98をさらに備える。
【0027】
本実施形態では、上記のように、棒状体50が受台20にボルト92及びナット98により固定されることで、整流フィン110が棒状体50及び受台20を介して外板103に固定される。
【0028】
(第1実施形態による効果)
本実施形態に係る固定機構10Aでは、受台20の最外部46が外板103よりも突出しないように構成され得るため、整流フィン110の周辺、つまり整流フィン110の配置箇所における外板103の表面の平滑化が可能になる。その結果、異種材の整流フィン110を水中航走体100に対して平滑に取り付けて流体性能を向上させることが可能となる。
【0029】
さらに、本実施形態では、棒状体50が受台20にボルト92により固定されるので、例えば、棒状体50が溶接により受台20に固定される場合に比べて棒状体50の受台20への固定を簡易にすることが可能となる。
【0030】
ここで、例えば、金属製の整流フィン自体を船体の外板に溶接する従来からある固定態様では、整流フィンが厚くなり、整流性能が悪化してしまう。また、前記従来からある固定態様では、整流フィンが重くなってしまう。
【0031】
一方、本実施形態では、整流フィン110が繊維強化プラスチック製であり、整流フィン110を薄くできるので、整流性能を向上させることが可能である。また、整流フィン110を軽量化することもできる。特に、本実施形態では、棒状体50が整流フィン110と平行な板状であるため、これらの作用効果を顕著にすることが可能である。
【0032】
さらに、例えば、前記従来からある固定態様では、外板に整流フィンを溶接により直接的に固定するので、整流フィンの固定作業に手間がかかり、また、整流フィンの大きさ及び形状が制限されてしまう場合があった。
【0033】
一方、本実施形態では、差し込み穴104から外板103の内方へ棒状体50を差し込み、船体102の外部から整流フィン110を外板103に固定することができる。これにより、本実施形態では、整流フィン110の固定作業を容易に行うことができ、また、整流フィン110の大きさ及び形状が制限されない。
【0034】
(第1実施形態の変形例)
ここで、図5に基づき、上記した第1実施形態の変形例について説明する。図5に、この変形例に係る整流フィンの固定機構10A´の図4に対応する断面図を示す。なお、固定機構10A´は、整流フィン110の迎角を変更するための構造を除き、上記した固定機構10Aと同じ構造を備える。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は省略する。
【0035】
上記した固定機構10Aでは、第2貫通穴24の直径は、第1貫通穴54及びボルト92の軸部の直径に等しい場合について説明した。一方、固定機構10A´では、図5に示すように、第2貫通穴24の直径は、それぞれ、第1貫通穴54及びボルト92の軸部の直径よりも大きい。これにより、ボルト92は、それぞれ、軸部が第2貫通穴24の内部に位置した状態で、第2貫通穴24に対して角度を変更することが可能である。
【0036】
ここで、例えば、前記従来からある固定態様では、整流フィンの迎角を変更することができない。
【0037】
一方、固定機構10A´では、棒状体50に第1貫通穴54が設けられ、受台20に上記のような第2貫通穴24が設けられるので、整流フィン110を外板103に固定したあと、整流フィン110の迎角を変更することが可能である。
【0038】
具体的には、例えば、図5に示すように、断面三角形状のシム99を棒状体50と受台20との間、及びナット98と受台20との間に挟み込み、ボルト92の軸部の先端にナット98を螺合することで、整流フィン110の迎角を変更することができる。
【0039】
なお、このように整流フィン110の迎角を変更する場合には、外板103に設けられる差し込み穴104が、外板103の厚さ方向から見たとき、棒状体50よりも一回り大きく形成される。これにより、棒状体50は、差し込み穴104の周縁に妨げられずに、ボルト92と一体的に角度を変更することが可能となる。
【0040】
また、上記のようにシム99を用いて整流フィン110の迎角を変更する場合、第2貫通穴24は、図5に示すような形状に限定されない。例えば、第2貫通穴24は、図4に示すものよりも直径が大きく、図5に示すものよりも直径が小さい長穴状であってもよい。
【0041】
(第1実施形態の他の変形例)
上記した第1実施形態では、最外部46が、外板103よりも船体102の内方に配置される場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、最外部46が、外板103と面一であるように配置されてもよい。このような場合、例えば、最外部46の周縁が外板103に設けられる貫通穴(図示せず)の周縁に溶接により固定されることで、受台20が外板103に固定されてもよい。
【0042】
上記した第1実施形態では、棒状体50が、受台20にボルト92により固定される場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、棒状体50は、受台20に溶接により固定されてもよい。
【0043】
上記した第1実施形態では、棒状体50に設けられた第1貫通穴54、及び受台20に設けられた第2貫通穴24にボルト92の軸部が挿通され、このボルト92の軸部の先端にナット98が螺合される場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、受台20に第2貫通穴24の代わりにネジ穴を設け、このネジ穴にボルト92の軸部の先端が螺合されてもよい。
【0044】
(第2実施形態)
次に、図6~8に基づき、本発明の第2実施形態に係る水中航走体用の整流フィンの固定機構10Bについて説明する。なお、固定機構10Bは、水中航走体100の外板103に整流フィン110を固定するために用いられる点で、上記した固定機構10Aと同様である。以下では、上記した固定機構10Aと異なる構造について詳細に説明し、上記した固定機構10Aと同様の構造については適宜説明を省略する。
【0045】
図6に、本発明の第2実施形態に係る整流フィンの固定機構10B(以下、単に「固定機構10B」と称する場合がある)及びその周辺部分を整流フィン110の厚さ方向に直交する平面に沿って切断したときの断面図を示す。
【0046】
図6に示すように、固定機構10Bは、上記した固定機構10Aと同様に、外板103に溶接により固定される金属製の受台20と、整流フィン110の内部から船体102の内方へ突出し、整流フィン110の内部に位置する部分が整流フィン110と一体的に成型される金属製の棒状体50とを備える。本実施形態では、棒状体50が円柱状であり、受台20が棒状体50と嵌合する筒状である。すなわち、受台20の軸孔58に棒状体50が嵌合される。
【0047】
なお、本実施形態では、図6に示すように、受台20の直径が整流フィン110の幅よりも僅かに小さい。しかし、この場合に限定されず、受台20の直径は、整流フィン110の幅と同じであってもよいし、整流フィン110の幅より大きくてもよい。
【0048】
固定機構10Bは、最も内方にある受台20の最内部47と、最も内方にある棒状体50の端面52と、に内方側から当接する底板60をさらに備える。図7に、この底板60の斜視図を示す。図7に示すように、底板60は、円板状である。底板60には、最内部47に当接する部分に十二の第3貫通穴62a~62lが設けられ、棒状体50の端面52に当接する部分に一つの第4貫通穴64が設けられる。第3貫通穴62a~62lは、棒状体50の中心軸Lを中心C(図8参照)とする同一円周上に配列される。
【0049】
図8に、固定機構10Bの図6のVIII-VIII線に沿った断面図を示し、(A)が整流フィン110の迎角を変更しないときの断面図であり、(B)が整流フィン110の迎角を変更したときの断面図である。図8(A)に示すように、受台20の最内部47には、底板60の第3貫通穴62a~62lに連通する第1ネジ穴32a~32lが設けられる。第1ネジ穴32a~32lは、受台20の中心軸L(換言すれば、棒状体50の中心軸L)を中心Cとする同一円周上に配列される。また、棒状体50の端面52には、底板60の第4貫通穴64に連通する第2ネジ穴56が設けられる。
【0050】
そして、本実施形態では、ボルト93(第1ボルト)が第3貫通穴62hを貫通して第1ネジ穴32hに螺合され、ボルト94(同前)が第3貫通穴62bを貫通して第1ネジ穴32bに螺合され、ボルト95(第2ボルト)が第4貫通穴64を貫通して第2ネジ穴56に螺合されることにより、棒状体50が底板60を介して受台20に固定される。
【0051】
本実施形態では、上記のように、棒状体50が受台20に固定されることで、整流フィン110が棒状体50及び受台20を介して外板103に固定される。
【0052】
(第2実施形態による効果)
本実施形態に係る固定機構10Bは、上記した固定機構10Aと同様の効果を有する。また、固定機構10Bでは、図8(B)に示すように、ボルト93、94が挿通される第3貫通穴62a~62lの位置、及びボルト93、94が螺合される第1ネジ穴32a~32lの位置に対応して、整流フィン110の迎角を変更することが可能となる。具体的には、例えば、図8(B)に示すように、固定機構10Bでは、ボルト93が第3貫通穴62gに挿通されて第1ネジ穴32gに螺合され、ボルト94が第3貫通穴62aに挿通されて第1ネジ穴32aに螺合されることで、図8において破線で示すように整流フィン110の迎角を変更することが可能となる。
【0053】
(第2実施形態の変形例)
上記した第2実施形態では、棒状体50の中心軸Lを中心Cとする同一円周上に、十二の第1ネジ穴32a~32l、及び十二の第3貫通穴62a~62lが設けられる場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、第1ネジ穴及び第3貫通穴は、それぞれ、一つずつ設けられてもよいし、前記同一円周上に二以上十一以下、若しくは十三以上ずつ設けられてもよいし、又は互いに異なる数だけ設けられてもよい。なお、前記同一円周上に、第1ネジ穴及び第3貫通穴の少なくとも一方が複数配列されていれば、第1ボルトが挿通される第3貫通穴の位置、又は第1ボルトが螺合される第1ネジ穴の位置に対応して、整流フィン110の迎角を変更することが可能となる。
【0054】
(第3実施形態)
最後に、図9、10に基づき、本発明の第3実施形態に係る整流フィンの固定機構10Cについて説明する。なお、固定機構10Cは、水中航走体100の外板103に整流フィン110を固定するために用いられる点で、上記した固定機構10A、10Bと同様である。以下では、上記した固定機構10A、10Bと異なる構造について詳細に説明し、上記した固定機構10A、10Bと同様の構造については適宜説明を省略する。
【0055】
図9に、固定機構10C及びその周辺部分を整流フィンの厚さ方向に直交する平面に沿って切断したときの断面図である。また、固定機構10C及びその周辺部分の図9のX-X線に沿った断面図である。
【0056】
図9、10に示すように、固定機構10Cは、整流フィン110の基端に設けられる凹部112に嵌合した状態で整流フィン110と一体的に成型される突出部21と、突出部21を中心として整流フィン110の周囲に張り出すように広がる板部22とを有する金属製の受台20を備える。
【0057】
なお、本実施形態では、凹部112及び突出部21が、整流フィン110の厚さ方向から見て、台形状である。しかし、この場合に限定されず、凹部112及び突出部21は、整流フィン110の厚さ方向から見て、矩形状であってもよいし、三角形状であってもよいし、又はその他の形状であってもよい。
【0058】
そして、最も外方にある板部22の最外部46は、外板103と面一であるように配置され、板部22の周縁が外板103に溶接により固定される。これにより、整流フィン110が受台20を介して外板103に固定される。
【0059】
(第3実施形態による効果)
本実施形態に係る固定機構10Cは、整流フィン110の迎角を変更できない点を除き、上記した固定機構10A、10Bと同様の効果を有する。なお、整流フィン110の周囲に張り出すように広がる板部22の周縁が外板103に溶接により固定されるので、溶接による熱の影響が整流フィン110に及ぶことを防止できる。
【0060】
(第3実施形態の変形例)
上記した第3実施形態では、板部22の最外部46が、外板103と面一であるように配置される場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、板部22の最外部46は、外板103よりも船体102の内方に配置されてもよい。
【0061】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0062】
また、上記で用いた序数、数量等の数字は、全て本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0063】
(まとめ)
上記課題を解決するために、本開示の一つの側面からの水中航走体用の整流フィンの固定機構は、舵と推進装置との間に配置される水中航走体用の整流フィンの固定機構であって、前記水中航走体の金属製の外板よりも外方へ突出して配置される、繊維強化プラスチック製の前記整流フィンと、前記外板に溶接により固定される金属製の受台と、前記整流フィンの内部から前記外板の内方へ突出し、前記整流フィンの内部に位置する部分が前記整流フィンと一体的に成型される金属製の棒状体とを備え、最も外方にある前記受台の最外部は、前記外板よりも内方に配置され、又は前記外板と面一であるように配置され、前記棒状体が前記受台にボルト又は溶接により固定されることで、前記整流フィンが前記棒状体及び前記受台を介して前記外板に固定される。
【0064】
上記構成によれば、受台の最外部が外板よりも突出しないように構成され得るため、整流フィンの周辺、つまり整流フィンの配置箇所における外板の表面の平滑化が可能になる。その結果、異種材の整流フィンを水中航走体に対して平滑に取り付けて流体性能を向上させることが可能となる。
【0065】
前記棒状体は、前記受台に前記ボルトにより固定されてもよい。
【0066】
上記構成によれば、棒状体が溶接により受台に固定される場合に比べて棒状体の受台への固定を簡易にすることが可能となる。
【0067】
前記棒状体は、板状であり、前記受台は、前記棒状体の厚さ方向において前記棒状体の側方に位置しており、前記棒状体には、前記ボルトが挿通される第1貫通穴が前記棒状体を厚さ方向に貫通するように設けられてもよい。
【0068】
上記構成によれば、整流フィンを薄くできるので、整流性能を向上することが可能となる。
【0069】
前記ボルトに螺合されるナットをさらに備え、前記受台には、前記ボルトが挿通される第2貫通穴が設けられてもよい。
【0070】
上記構成によれば、例えば、断面三角形状のシムを棒状体と受台との間に挟むことにより、整流フィンの迎角を変更することが可能となる。
【0071】
例えば、最も内方にある前記受台の最内部と、最も内方にある前記棒状体の端面と、に内方側から当接する底板をさらに備え、前記底板には、前記受台の最内部に当接する部分に第3貫通穴が設けられ、前記棒状体の端面に当接する部分に第4貫通穴が設けられ、前記受台の最内部には、前記第3貫通穴に連通する第1ネジ穴が設けられ、前記棒状体の端面には、前記第4貫通穴に連通する第2ネジ穴が設けられ、前記ボルトは、第1ボルト及び第2ボルトを含み、前記棒状体は、前記第1ボルトが前記第3貫通穴を貫通して前記第1ネジ穴に螺合され、前記第2ボルトが前記第4貫通穴を貫通して前記第2ネジ穴に螺合されることにより、前記底板を介して前記受台に固定されてもよい。
【0072】
前記棒状体は、円柱状であり、前記受台は、前記棒状体と嵌合する筒状であり、前記第3貫通穴及び前記第1ネジ穴の少なくとも一方は、前記棒状体の中心軸を中心とする同一円周上に複数配列されてもよい。
【0073】
上記構成によれば、第1ボルトが挿通される第3貫通穴の位置、及び第1ボルトが螺合される前記第1ネジ穴の位置の少なくともいずれかに対応して、整流フィンの迎角を変更することが可能となる。
【0074】
また、本開示の別の側面からの水中航走体用の整流フィンの固定機構は、舵と推進装置との間に配置される水中航走体用の整流フィンの固定機構であって、前記水中航走体の金属製の外板よりも外方へ突出して配置される、繊維強化プラスチック製の前記整流フィンと、前記整流フィンの基端に設けられる凹部に嵌合した状態で前記整流フィンと一体的に成型される突出部と、前記突出部を中心として前記整流フィンの周囲に張り出すように広がる板部とを有する金属製の受台とを備え、最も外方にある前記板部の最外部は、前記外板よりも内方に配置され、又は前記外板と面一であるように配置され、前記板部の周縁が前記外板に溶接により固定されることで、前記整流フィンが前記受台を介して前記外板に固定される。
【0075】
上記構成によれば、受台の最外部が外板よりも突出しないように構成され得るため、整流フィンの周辺、つまり整流フィンの配置箇所における外板の表面の平滑化が可能になる。なお、整流フィンの周囲に張り出すように広がる板部の周縁が外板に溶接により固定されるので、溶接による熱の影響が整流フィンに及ぶことを防止できる。
【符号の説明】
【0076】
10A~10C 固定機構
20 受台
21 突出部
22 板部
24 第2貫通穴
32a~32l 第1ネジ穴
46 最外部
47 最内部
48 補強材
50 棒状体
52 端面
54 第1貫通穴
56 第2ネジ穴
58 軸孔
60 底板
62a~62l 第3貫通穴
64 第4貫通穴
92~95 ボルト
98 ナット
99 シム
100 水中航走体
102 船体
103 外板
104 差し込み穴
106 舵
108 プロペラ(推進装置)
110 整流フィン
112 凹部
C 中心
L 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10