(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】釣り用リールの駆動ギア
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20240325BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A01K89/01 E
F16H1/16 Z
(21)【出願番号】P 2020072237
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】池袋 哲史
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-259713(JP,A)
【文献】特開2017-061982(JP,A)
【文献】特開2012-087905(JP,A)
【文献】特許第6202796(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り用リールに用いられる駆動ギアであって、
回転軸心を有する円板部と、
前記円板部における外周側の側面から前記回転軸心が延びる方向に各別に突出する複数のギア歯と、
を備え、
前記ギア歯は、本体部と、前記本体部から径方向内側に延出する延出部とを、有し、
前記本体部の軸方向外側面を通過する前記回転軸心まわりの円筒面と前記延出部の径方向内側面とがなす第1角度は、噛み合い圧力角より大き
く、
前記ギア歯の1対の歯面は、前記本体部及び前記延出部において周方向に互いに間隔を隔てて形成され、
前記歯面は、前記ギア歯の基端側において歯筋方向に延びる第1端辺、を有し、
前記第1端辺は、前記本体部及び前記延出部によって形成される、
釣り用リールの駆動ギア。
【請求項2】
前記第1角度は、前記円筒面と前記本体部の軸方向外側面とがなす第2角度より、大きい、
請求項1に記載の釣り用リールの駆動ギア。
【請求項3】
前記歯面は、前記ギア歯の先端側において歯筋方向に延びる第2端辺
をさらに有し、
前記第1端辺は、前記第2端辺より長い、
請求項1又は2に記載の釣り用リールの駆動ギア。
【請求項4】
前記第2端辺に対する前記第1端辺の比は、1.28以上である、
請求項3に記載の釣り用リールの駆動ギア。
【請求項5】
前記歯面は、前記ギア歯の径方向内側において前記第1端辺及び前記第2端辺を接続する第3端辺と、前記ギア歯の径方向外側で前記第1端辺及び前記第2端辺を接続する第4端辺とを、さらに有し、
前記第3端辺は、前記第4端辺より長い、
請求項3又は4に記載の釣り用リールの駆動ギア。
【請求項6】
前記第4端辺に対する前記第3端辺の比は、1.10以上である、
請求項5に記載の釣り用リールの駆動ギア。
【請求項7】
前記本体部の前記歯面及び前記延出部の前記歯面は、面一に形成される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の釣り用リールの駆動ギア。
【請求項8】
リール本体と、
前記リール本体に回転可能に支持されるハンドルと、
前記ハンドルの回転によって回転する請求項1から
7のいずれか1項に記載の駆動ギアと、
を備える釣り用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用リールの駆動ギアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動ギアは、複数のギア歯を有している。従来の各ギア歯は、1対の歯面を有している。各歯面は、ピニオンギアに噛み合う。各歯面には、噛み合い進行方向線L1と、噛み合い進行方向線L1と交差する複数の噛み合い同時接触線L2とが、定義されている(本願明細書の
図9を参照)。
【0003】
ここで、噛み合い進行方向線L1は、複数の噛み合い同時接触線L2それぞれにおいて歯面が最も高くなる位置を結ぶことによって形成される線である。複数の噛み合い同時接触線L2それぞれは、ピニオンギアが駆動ギアの歯面と接触する線である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の駆動ギアでは、噛み合い進行方向線L1が、ギア歯における外周側の基端から、ギア歯における内周側の歯先に向けて、延びている。
【0006】
この状態において、ピニオンギアがギア歯の内周側の歯先に噛み合った場合、すなわち、噛み合い同時接触線L2が短い歯面の内周側の隅角部QRにピニオンギアが噛み合った場合、駆動ギアのギア歯の内周側の歯先(
図9の隅角部QR)には、応力集中が生じる。
【0007】
この場合、ギア歯の基端部に作用する曲げモーメントが大きくなり、ギア歯が変形するおそれがある。これにより、駆動ギアをスムーズに回転できなくなるおそれがある。また、駆動ギアがスムーズに回転できなくなった場合、駆動ギアがピニオンギアと噛み合いながら回転する際に、異音が発生するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、回転フィーリングを向上可能な釣り用リールの駆動ギアを、提供することにある。また、本発明の目的は、回転時に生じる異音の発生を抑制可能な釣り用リールの駆動ギアを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る釣り用リールの駆動ギアは、釣り用リールに用いられる駆動ギアである。釣り用リールの駆動ギアは、円板部と、複数のギア歯とを、備える。円板部は、回転軸心を有する。複数のギア歯は、円板部における外周側の側面から回転軸心が延びる方向に各別に突出する。
【0010】
ギア歯は、本体部と、本体部から径方向内側に延出する延出部とを、有する。本体部の軸方向外側面と延出部の径方向内側面とがなす第1角度は、噛み合い圧力角より大きい。
【0011】
本駆動ギアでは、ギア歯において、延出部が本体部から径方向内側に延出する。ここで、第1角度が噛み合い圧力角より大きい。このように、ギア歯に延出部を設け、第1角度を噛み合い圧力角より大きくすることによって、ギア歯の歯先における内周側の隅角部に生じる応力を、従来技術より小さくすることができる。これにより、駆動ギアの回転フィーリングを向上することができる。また、駆動ギアの回転フィーリングを向上することによって、駆動ギアの回転時に生じる異音の発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の他の側面に係る釣り用リールの駆動ギアでは、第1角度が、本体部の軸方向外側面と本体部の径方向外側面とがなす第2角度より、大きい。
【0013】
この場合、第1角度が第2角度より大きいので、駆動ギアの回転フィーリングを好適に向上することができる。また、駆動ギアの回転時に生じる異音の発生を好適に抑制することができる。
【0014】
本発明の他の側面に係る釣り用リールの駆動ギアでは、1対の歯面が、本体部及び延出部において周方向に互いに間隔を隔てて形成される。歯面は、ギア歯の基端側において歯筋方向に延びる第1端辺と、ギア歯の先端側において歯筋方向に延びる第2端辺とを、有する。第1端辺は第2端辺より長い。
【0015】
この場合、第1端辺が第2端辺より長いので、ギア歯の変形を抑制することができる。これにより、駆動ギアの回転フィーリングを好適に向上することができる。また、駆動ギアの回転時に生じる異音の発生を好適に抑制することができる。
【0016】
本発明の他の側面に係る釣り用リールの駆動ギアでは、第2端辺に対する第1端辺の比が、1.28以上である。これにより、駆動ギアの回転フィーリングをより好適に向上することができる。また、駆動ギアの回転時に生じる異音の発生をより好適に抑制することができる。
【0017】
本発明の他の側面に係る釣り用リールの駆動ギアでは、歯面が、ギア歯の径方向内側において第1端辺及び第2端辺を接続する第3端辺と、ギア歯の径方向外側で第1端辺及び第2端辺を接続する第4端辺とを、さらに有する。第3端辺は第4端辺より長い。
【0018】
この場合、第3端辺は第4端辺より長くすることによって、ギア歯の歯先における内周側の隅角部における噛み合い同時接触線を、従来技術より長くすることができる。これにより、駆動ギアの回転フィーリングを好適に向上することができる。また、駆動ギアの回転時に生じる異音の発生を好適に抑制することができる。
【0019】
本発明の他の側面に係る釣り用リールの駆動ギアでは、第4端辺に対する第3端辺の比が、1.10以上である。これにより、駆動ギアの回転フィーリングをより好適に向上することができる。また、駆動ギアの回転時に生じる異音の発生をより好適に抑制することができる。
【0020】
本発明の他の側面に係る釣り用リールは、リール本体と、リール本体に回転可能に支持されるハンドルと、ハンドルの回転によって回転する上述した駆動ギアとを、備える。本釣り用リールでは、上述した駆動ギアと同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、釣り用リールの駆動ギアの回転フィーリングを向上することができる。また、釣り用リールの駆動ギアの回転時に生じる異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るスピニングリールの断面図。
【
図7】
図6Aの噛み合い終端点Pを通過する平面Cにおける断面図。
【
図8A】駆動ギアのギア歯において噛み合いに使用しない領域を示す側面図。
【
図8B】他の実施形態の駆動ギアのギア歯において噛み合いに使用しない領域を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を採用したスピニングリール100(釣り用リールの一例)は、
図1に示すように、ハンドル1と、ハンドル1を回転可能に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備える。ロータ3は、リール本体2の前部に回転可能に支持される。
【0024】
ハンドル1は、ハンドル軸1aと、ハンドルアーム1bと、ハンドル把手1cと、を有している。ハンドル軸1aには、駆動軸10が一体回転可能に連結される。ハンドルアーム1bは、ハンドル軸1aに設けられる。ハンドル把手1cは、ハンドルアーム1bに設けられる。なお、ハンドル1はリール本体2の左右いずれにも装着可能である。
【0025】
スプール4には、釣り糸が外周面に巻き取られる。スプール4は、ロータ3の前部に前後移動自在に配置される。スプール4は、スプール軸15の先端に装着される。スプール軸15は、スプール軸心X1を有する。ロータ3は、ピニオンギア12と一体回転可能に連結される。ロータ3は、リール本体2に対して回転可能に支持される。
【0026】
<リール本体の構成>
図1に示すように、リール本体2は、側部が開口する収納空間を内部に有するリールボディ2aと、リールボディ2aの収納空間を塞ぐためにリールボディ2aに着脱自在に装着される蓋部材2b(
図2)と、を有する。また、リール本体2は、リールボディ2a及び蓋部材2bの後部を覆う本体ガード26とを、有する。
【0027】
リールボディ2aには、竿取付脚2cが一体に形成されている。リールボディ2aの内部には、ロータ駆動機構5と、オシレーティング機構6とが設けられている。オシレーティング機構6は、スプール軸15を前後方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6が作動することによって、スプール4が前後方向に移動する。オシレーティング機構6の構成は、従来技術と実質的に同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0028】
<ロータ駆動機構の構成>
ロータ駆動機構5は、ハンドル1の回転をロータ3に伝達する。
図2及び
図3に示すように、ロータ駆動機構5は、駆動ギア11と、ピニオンギア12とを、有する。駆動ギア11は、駆動軸10とともに一体的に回転する。ピニオンギア12は、駆動ギア11に噛み合う。
【0029】
図3に示すように、ピニオンギア12は、筒状のギア本体12aと、ギア部12bと、を有する。ギア本体12aは、ハンドル軸1aと食い違うように、リールボディ2aに配置される。詳細には、ギア本体12aは、駆動ギア11の回転軸心Xと食い違うように、リールボディ2aに配置される。
【0030】
ギア本体12aは、リールボディ2aに回転可能に支持される。例えば、ギア本体12aは、軸受14a及び軸受14bによって、リールボディ2aに回転可能に支持される。ギア本体12aには、スプール軸15を挿通可能な貫通孔12dが、形成される。
【0031】
ギア本体12aには、雄ネジ部12e及び回り止め平面12fが、形成される。雄ネジ部12e及び回り止め平面12fをロータ3に係合することによって、ギア本体12aは、ロータ3と一体回転可能に連結される。ギア部12bは、ギア本体12aに形成される。
【0032】
図2に示すように、駆動ギア11は、駆動軸10と一体に形成される。駆動ギア11は、駆動軸10と別体で形成されてもよい。駆動軸10は、ネジ結合により、ハンドル軸1aと一体的に回転する。駆動軸10は、非円形係合により、ハンドル軸1aと一体的に回転させてもよい。駆動軸10は、蓋部材2bに装着された軸受27a及びリールボディ2aに装着された軸受27bを介して、リールボディ2aに回転可能に装着される。
【0033】
本実施形態では、
図2、
図3、及び
図4に示すように、駆動ギア11は、フェースギアである。駆動ギア11は、円板部30と、複数のギア歯31とを、備える。円板部30は、回転軸心Xを有する。円板部30は、円形板状に形成される。円板部30は、駆動軸10と一体に形成される。円板部30は、駆動軸10と別体で形成されてもよい。
【0034】
図2及び
図3に示すように、複数のギア歯31は、円板部30における外周側の側面から回転軸心Xが延びる方向に各別に突出する。例えば、複数のギア歯31は、円板部30における外周側の側面に一体に形成される。複数のギア歯31は、円板部30の一側面の外周側において、周方向に所定の間隔を隔てて形成される。周方向は、回転軸心Xを基準として、回転軸心Xまわりの方向である。
【0035】
図5に示すように、各ギア歯31は、本体部32と、延出部33とを、有する。本体部32は、ギア歯31における径方向外側の部分を、形成する。詳細には、本体部32は、径方向中央部及び径方向外側の部分を、形成する。本体部32は、歯先面31c(軸方向外側面の一例)と、径方向外側面31eとを、有する。本体部32は、第1側面31aの一部と、第2側面31bの一部とを、形成する。
【0036】
図5に示すように、延出部33は、本体部32から径方向内側に延出する部分である。延出部33は、ギア歯31における径方向内側の部分を、形成する。延出部33は、径方向内側面31dを有する。延出部33は、第1側面31aの一部と、第2側面31bの一部とを、形成する。第1側面31a及び第2側面31bは、本体部32の1対の側面及び延出部33の1対の側面を、形成する。
【0037】
なお、
図5では、延出部33及び本体部32の境界が破線で示されている。破線が示す平面は、円板部30に対して垂直である。この平面は、歯先面31c及び径方向内側面31dの隅角部を通過する。後述する
図6B及び
図6Cにおいても、破線は同様の意味を有する。
【0038】
各ギア歯31は、第1側面31aと、第2側面31bと、歯先面31cと、径方向内側面31dと、径方向外側面31eとを、有する。第1側面31a及び第2側面31bは、1対の歯面の一例である。
【0039】
第1側面31aは、ハンドル1が糸巻取方向に回転する時にピニオンギア12に噛み合う歯面である。第2側面31bは、糸繰り出し方向に回転した時にピニオンギア12に噛み合う歯面である。
【0040】
第1側面31a及び第2側面31bは、ギア歯31の1対の側面を形成する。例えば、第1側面31a及び第2側面31bは、本体部32及び延出部33の1対の側面を形成する。第1側面31a及び第2側面31bは、本体部32及び延出部33において周方向に互いに間隔を隔てて形成される。第1側面31a及び第2側面31bそれぞれは、第1端辺B1と、第2端辺B2とを、有する。
【0041】
第1側面31aの第1端辺B1は、ギア歯31の基端側において歯筋方向に延びる。第1側面31aの第1端辺B1は、第1側面31aと円板部30の側面との隅角部によって形成される。
【0042】
第1側面31aの第2端辺B2は、ギア歯31の先端側において歯筋方向に延びる。第1側面31aの第2端辺B2は、第1側面31aと歯先面31cとの隅角部によって形成される。
【0043】
第2側面31bの第1端辺B1は、ギア歯31の基端側において歯筋方向に延びる。第2側面31bの第1端辺B1は、第2側面31bと円板部30の側面との隅角部によって形成される。第2側面31bの第1端辺B1は、周方向において、第1側面31aの第1端辺B1と間隔を隔てて配置される。
【0044】
第2側面31bの第2端辺B2は、ギア歯31の先端側において歯筋方向に延びる。第2側面31bの第2端辺B2は、第2側面31bと歯先面31cとの隅角部によって形成される。第2側面31bの第2端辺B2は、周方向において、第1側面31aの第2端辺B2と間隔を隔てて配置される。第1側面31aの第2端辺B2及び第2側面31bの第2端辺B2は、歯先面31cにも含まれると解釈してもよい。
【0045】
第1側面31a及び第2側面31bは、第3端辺B3と、第4端辺B4とを、さらに有する。第1側面31aの第3端辺B3は、ギア歯31の径方向内側において、第1側面31aの第1端辺B1及び第1側面31aの第2端辺B2に接続される。第1側面31aの第3端辺B3は、第1側面31aと径方向内側面31dとの隅角部によって形成される。
【0046】
第1側面31aの第4端辺B4は、ギア歯31の径方向外側において、第1側面31aの第1端辺B1及び第1側面31aの第2端辺B2に接続される。第1側面31aの第4端辺B4は、第1側面31aと径方向外側面31eとの隅角部によって形成される。
【0047】
第2側面31bの第3端辺B3は、ギア歯31の径方向内側において、第2側面31bの第1端辺B1及び第2側面31bの第2端辺B2に接続される。第2側面31bの第3端辺B3は、第2側面31bと径方向内側面31dとの隅角部によって形成される。
【0048】
第2側面31bの第3端辺B3は、周方向において、第1側面31aの第3端辺B3と間隔を隔てて配置される。第1側面31aの第3端辺B3及び第2側面31bの第3端辺B3は、径方向内側面31dにも含まれると解釈してもよい。
【0049】
第2側面31bの第4端辺B4は、ギア歯31の径方向外側において、第2側面31bの第1端辺B1の及び第2側面31bの第2端辺B2に接続される。第2側面31bの第4端辺B4は、第2側面31bと径方向外側面31eとの隅角部によって形成される。
【0050】
第2側面31bの第4端辺B4は、周方向において、第1側面31aの第4端辺B4と間隔を隔てて配置される。第1側面31aの第4端辺B4及び第2側面31bの第4端辺B4は、径方向外側面31eにも含まれると解釈してもよい。
【0051】
歯先面31cは、ギア歯31の先端面を形成する。例えば、歯先面31cは、本体部32の先端面を形成する。歯先面31cは、径方向内側面31d及び径方向外側面31eに接続される。歯先面31cは、第1側面31a及び第2側面31bに接続される。詳細には、歯先面31cは、第1側面31aの第2端辺B2及び第2側面31bの第2端辺B2の間において、ギア歯31(本体部32)の外面を形成する。
【0052】
径方向内側面31dは、ギア歯31において回転軸心Xに近い側の外面を、形成する。例えば、径方向内側面31dは、延出部33における径方向内側の外面を、形成する。径方向内側面31dは、歯先面31c及び円板部30の側面に接続される。径方向内側面31dは、第1側面31a及び第2側面31bに接続される。詳細には、径方向内側面31dは、第1側面31aの第3端辺B3及び第2側面31bの第3端辺B3の間において、ギア歯31(延出部33)の外面を形成する。
【0053】
径方向外側面31eは、ギア歯31において回転軸心Xから離れた側の外面を、形成する。例えば、径方向外側面31eは、本体部32における径方向外側の外面を、形成する。径方向外側面31eは、歯先面31c及び円板部30に接続される。径方向外側面31eは、第1側面31a及び第2側面31bに接続される。詳細には、径方向外側面31eは、第1側面31aの第4端辺B4及び第2側面31bの第4端辺B4の間において、ギア歯31(本体部32)の外面を形成する。
【0054】
上記の構成を有する各ギア歯31は、以下のように構成される。
図6A及び
図6Bは、周方向R1(
図5を参照)において各ギア歯31を外側から見た場合の図である。
【0055】
図6Aの破線矢印で示すように、噛み合い圧力角bは、径方向外側から径方向内側に向けて徐々に小さくなる。例えば、噛み合い圧力角bは、第1端辺B1に沿って径方向外側から径方向内側、第1端辺B1から第2端辺B2、及び第2端辺B2に沿って径方向内側に向けて、徐々に小さくなる。
【0056】
図6Aでは、噛み合い終端点が符号Pで示されている。ここでは、第2端辺B2及び第3端辺B3の交点が、噛み合い終端点Pとなっている。噛み合い終端点Pは、噛み合い圧力角bが最も小さくなる点である。
図6Aでは、噛み合い終端点Pを通過する平面Cが、定義される。平面Cは、噛み合い終端点Pを通過し、円板部30の側面に垂直であり、周方向R1に延びる。
【0057】
ここで、
図7に示すように、ギア歯31を平面C(
図6Aを参照)によって切断した断面において、噛み合い圧力角bは、噛み合い終端点Pを通過し円板部30に平行な面P1と、噛み合い終端点Pにおいて第1側面31aに垂直な面P2(
図7において第1側面31aを示す線に垂直な法線)とがなす角度である。
【0058】
図6Bに示すように、第1角度a11は、噛み合い圧力角b(
図7を参照)より大きい。第1角度a11は、周方向R1(
図5を参照)において各ギア歯31を外側から見た場合において、回転軸心X2まわりの円筒面CP1及び第3端辺B3がなす角度である。また、第1角度a11は、第2角度a21より大きい。第2角度a21は、回転軸心X2まわりの円筒面CP2及び第4端辺B4がなす角度である。円筒面CP1,CP2は、第2端辺B2(本体部32の歯先面31c)を通過する。
【0059】
図6Cは、歯先面31cにおいて第1側面31a側の第2端辺B2を含み軸方向に延びる面(
図5の切断線VICを参照)によって各ギア歯31を切断した断面である。この面(
図5の切断線VICを参照)は、歯先面31cの第2端辺B2を含み円板部30に垂直な面と解釈してもよい。なお、第2端辺B2が直線である場合、この面(
図5の切断線VICを参照)は平面である。第2端辺B2が曲線である場合、この面(
図5の切断線VICを参照)は曲面である。
【0060】
図6Cの断面においても、第1角度a12は、噛み合い圧力角b(
図7を参照)より大きい。第1角度a12は、回転軸心X2まわりの円筒面CP1及び延出部33の径方向内側面31dがなす角度である。また、第1角度a12は、第2角度a22より、大きい。第2角度a22は、回転軸心X2まわりの円筒面CP2及び本体部32の径方向外側面31eがなす角度である。円筒面CP1,CP2は、本体部32の歯先面31c(第2端辺B2)を通過する。
【0061】
また、
図6A及び
図6Bに示すように、第1側面31aの第1端辺B1は、第1側面31aの第2端辺B2より長い。例えば、第1側面31aの第2端辺B2に対する第1側面31aの第1端辺B1の比は、1.28以上である。具体的には、第1側面31aの第2端辺B2に対する第1側面31aの第1端辺B1の比は、1.28以上且つ「1.50以下」であることが好ましい。
【0062】
同様に、第2側面31bの第1端辺B1は、第2側面31bの第2端辺B2より長い。例えば、第2側面31bの第2端辺B2に対する第2側面31bの第1端辺B1の比は、1.28以上である。具体的には、第2側面31bの第2端辺B2に対する第2側面31bの第1端辺B1の比は、1.28以上且つ「1.50以下」であることが好ましい。
【0063】
また、
図6A及び
図6Bに示すように、第1側面31aの第3端辺B3は、第1側面31aの第4端辺B4より長い。例えば、第1側面31aの第4端辺B4に対する第1側面31aの第3端辺B3の比は、1.10以上である。具体的には、第1側面31aの第4端辺B4に対する第1側面31aの第3端辺B3の比は、1.10以上且つ「1.50以下」であることが好ましい。
【0064】
同様に、第2側面31bの第3端辺B3は、第2側面31bの第4端辺B4より長い。例えば、第2側面31bの第4端辺B4に対する第2側面31bの第3端辺B3の比は、1.10以上である。具体的には、第2側面31bの第4端辺B4に対する第2側面31bの第3端辺B3の比は、1.10以上且つ「1.50以下」であることが好ましい。
【0065】
上述したスピニングリール100の駆動ギア11では、各ギア歯31において、延出部33が本体部32から径方向内側に延出する。ここで、第1角度a11,a12が噛み合い圧力角bより大きい。なお、従来技術では、各ギア歯31には、延出部33が形成されず、本体部32だけが形成されている。
【0066】
このように、各ギア歯31に延出部33を設け、第1角度a11,a12を噛み合い圧力角bより大きくすることによって、各ギア歯31の歯先における内周側の隅角部に生じる応力、例えば第1角度a11,a12を有する隅角部に生じる応力を、従来技術より小さくすることができる。
【0067】
これにより、駆動ギア11の回転フィーリングを向上することができる。また、駆動ギア11の回転フィーリングを向上することによって、駆動ギア11の回転時に生じる異音の発生を抑制することができる。
【0068】
また、駆動ギア11では、第1角度a11,a12が第2角度a21,a22より大きい。これにより、駆動ギア11の回転フィーリングを好適に向上することができる。また、駆動ギア11の回転時に生じる異音の発生を好適に抑制することができる。
【0069】
また、駆動ギア11では、第1端辺B1は第2端辺B2より長い。詳細には、駆動ギア11では、第2端辺B2に対する第1端辺B1の比が、1.28以上である。これにより、各ギア歯31の変形を抑制することができる。これにより、駆動ギア11の回転フィーリングをより好適に向上することができる。また、駆動ギア11の回転時に生じる異音の発生をより好適に抑制することができる。
【0070】
さらに、駆動ギア11では、第3端辺B3は第4端辺B4より長い。詳細には、駆動ギア11では、第4端辺B4に対する第3端辺B3の比が、1.10以上である。これにより、駆動ギア11の回転フィーリングをより好適に向上することができる。また、駆動ギア11の回転時に生じる異音の発生をより好適に抑制することができる。
【0071】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0072】
(a)前記実施形態の駆動ギア11は、型成形によって形成しても、機械加工によって形成しても、プレス加工によって形成してもよい。
【0073】
(b)前記実施形態では、釣り用リールとしてスピニングリール100を用いて説明が行われたが、本発明はその他の釣り用リールにも適用できる。
【0074】
(c)前記実施形態では、噛み合い終端点Pが第2端辺B2及び第3端辺B3の交点である場合の例が、示された。この場合、例えば、
図8Aに示すように、噛み合いに使用されない領域NR1(破線領域)は、第2端辺B2及び第3端辺B3の交点を除いた第1側面31aに、形成される。
【0075】
これに対して、
図8Bに示すように、噛み合いに使用されない領域NR2(破線領域)は、第2端辺B2及び第3端辺B3の交点を含む第1側面31aに、形成されてもよい。この場合、噛み合い終端点Pは、第2端辺B2及び第3端辺B3の交点を除いて、第2端辺B2上に形成される。
【0076】
このように、噛み合い終端点Pは、噛み合いに使用されない領域NR1,NR2(破線領域)から離れた位置において、第2端辺B2上に設けられる。このように構成したとしても、第1角度a11,a12、第2角度a21,a22、及び噛み合い圧力角bの関係が前記実施形態と同様になるように、ギア歯31は形成される。
【符号の説明】
【0077】
11 駆動ギア
30 円板部
31 ギア歯
31a 第1側面
31b 第2側面
31c 歯先面
31d 径方向内側面
31e 径方向外側面
32 本体部
33 延出部
B1 第1端辺
B2 第2端辺
B3 第3端辺
B4 第4端辺
a11,a12 第1角度
a21,a22 第2角度
b 噛み合い圧力角