(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240325BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/28 H
H02M3/155 W
(21)【出願番号】P 2020075364
(22)【出願日】2020-04-21
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594158150
【氏名又は名称】学校法人君が淵学園
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】図子 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】長井 純之
(72)【発明者】
【氏名】谷本 勉
(72)【発明者】
【氏名】冨田 要介
(72)【発明者】
【氏名】竹本 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】本部 惇史
(72)【発明者】
【氏名】早川 峰洋
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 仁浩
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/102458(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/018507(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0020702(US,A1)
【文献】特開2014-075878(JP,A)
【文献】特開2014-045073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源から入力された電力をそれぞれ変換する複数の第1コンバータと、
前記複数の第1コンバータの出力端子それぞれに接続される第1端子、及び負荷に接続される第2端子を有する第2コンバータと、
前記第1コンバータを制御するコントローラと、を備え、
前記複数の第1コンバータは、前記第1コンバータそれぞれの前記出力端子によって並列に接続されており、
前記第2コンバータは、前記第1端子と前記第2端子の間を絶縁し、前記第1端子の電圧と前記第2端子の電圧が所定の比率となるように動作
し、
前記電源は、太陽電池モジュールであり、
前記負荷は、バッテリである電力変換装置。
【請求項2】
前記第1コンバータは、前記第1コンバータの出力電力が最大となるように動作する回路である請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2コンバータは、前記第1端子に接続される1次側コイル及び前記第2端子に接続される2次側コイルで構成される絶縁トランスを含み、
前記所定の比率は、前記1次側コイルの巻数と前記2次側コイルの巻数との比率である請求項1又は2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1コンバータは、前記太陽電池モジュールからの入力電圧を昇圧又は降圧する昇降圧型コンバータである請求項1~3の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記所定の比率は、前記太陽電池モジュールが最大電力を出力する際の前記太陽電池モジュールの出力電圧と、電力貯蔵率が50%の際の前記バッテリの電圧との比率に設定される請求項1~4の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1コンバータは、第1スイッチング素子を有し、前記第1スイッチング素子のオン及びオフによって前記電源から入力される電力を変換し、
前記コントローラは、所定の外部信号と同期するように、前記第1スイッチング素子をスイッチングさせる請求項1~5の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1コンバータは、第1スイッチング素子を有し、前記第1スイッチング素子のオン及びオフによって前記電源から入力される電力を変換し、
前記コントローラは、複数の前記第1スイッチング素子間で位相が異なるように、前記複数の第1スイッチング素子をスイッチングさせる請求項1~5の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1コンバータは、第1スイッチング素子を有し、前記第1スイッチング素子のオン及びオフによって前記電源から入力される電力を変換し、
前記コントローラは、前記第1コンバータの出力電流が最大となるように、前記第1スイッチング素子を制御する請求項2~7の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第2コンバータを制御するコントローラを備え、
前記第2コンバータは、前記第1端子及び前記第2端子の間に設けられた絶縁トランスと、前記絶縁トランスに流れる電流を制御するための第2スイッチング素子とを有し、
前記コントローラは、前記第2スイッチング素子のオン時間と前記第2スイッチング素子のオフ時間を合わせつつ、前記第2スイッチング素子のオン及びオフを切り替えるタイミングを、前記絶縁トランスの共振周波数と同期をとるように、前記第2スイッチング素子を制御する請求項1~8の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第2コンバータを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記第1コンバータよりも早く前記第2コンバータを起動させ、前記第1コンバータよりも遅く前記第2コンバータを停止させ
る請求項1~8の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第1コンバータは、前記太陽電池モジュールから前記第1端子の方向にのみ電力を伝送させる請求項1~10の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記太陽電池モジュールは、直列に接続された複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セルそれぞれと並列に接続された複数のダイオードとを有する請求項1~11の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項13】
出力端子を有する第1コンバータのそれぞれの前記出力端子によって並列に接続され複数の第1コンバータと、
前記複数の第1コンバータの出力端子それぞれに接続される第1端子、及び負荷に接続される第2端子を有し、前記第1端子と前記第2端子の間を絶縁する第2コンバータと、
前記第1コンバー
タを制御するコントローラと、を備える電力変換装置の制御方法であって、
前記第2コンバータは、前記第1端子の電圧と前記第2端子の電圧が所定の比率となるように動作し、
前記負荷は、バッテリであり、
前記コントローラは、
太陽電池モジュールである複数の電源から電力をそれぞれ変換させるように、前記複数の第1コンバータを制御
する電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置及び電力変換装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の太陽電池モジュールの出力電力をそれぞれ変換する複数のDC-DCコンバータを備える電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1)。この電力変換装置では、各DC-DCコンバータの出力が直列に接続されており、電力変換装置は、出力電圧として、各DC-DCコンバータの出力電圧が合算された電圧を出力する。また、この電力変換装置では、各DC-DCコンバータは、太陽電池モジュールの出力電力が最大となるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-38190号公報
【文献】特開2016-197994号公報
【文献】特開2013-252046号公報
【文献】特開2013-198385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力変換装置では、例えば、複数のDC-DCコンバータのうち特定のDC-DCコンバータの出力電圧が変動すると、電力変換装置の出力電圧を維持するために、他のDC-DCコンバータの出力電圧を変動させる。すなわち、電力変換装置の出力電圧を維持するために、複数のコンバータ間で出力電圧を調整しなければならない、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、複数のコンバータ間で出力電圧を調整することなく、電力変換装置の出力電圧を維持することができる電力変換装置及び電力変換装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の電源から入力される電力を変換する複数の第1コンバータと、複数の第1コンバータの出力端子それぞれに接続される第1端子及び負荷に接続される第2端子を有する第2コンバータとを備える。そして、本発明では、複数の第1コンバータは、第1コンバータのそれぞれの出力端子によって並列に接続されており、第2コンバータは、第1端子と第2端子との間を絶縁し、第1端子の電圧と第2端子の電圧が所定の比率となるように動作することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1コンバータそれぞれの出力電圧は、複数の第1コンバータ間で共通の出力電圧になるとともに、第2コンバータの第1端子の電圧と等しくなる。第2コンバータの第2端子の電圧は、複数の第1コンバータ間で共通の出力電圧に対して所定の比率の電圧になるため、複数の第1コンバータ間で出力電圧を調整することなく、電力変換装置の出力電圧を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電力変換システムの概要を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1で示した第2コンバータの回路構成の一例である。
【
図4】
図4は、
図1で示した電力変換システムの回路構成の一例である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るMPPT制御を説明するための図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す回路構成における電力変換装置の動作を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第2コンバータが有する絶縁トランスの巻線比を設定する方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、山登り法によるMPPT制御の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1を用いて、本実施形態に係る電力変換システムの概要を説明する。
図1は、本実施形態に係る電力変換装置200を含む電力変換システム300のブロック図である。電力変換システム300は、複数の電源1~6、負荷7、及び電力変換装置200を備える。本実施形態では、6つの電源(電源1~6)の場合を例に挙げて説明するが、電力変換システム300における電源の数は複数であればよく、6つに限定されない。
【0011】
電力変換装置200は、複数の電源である電源1~6から入力される電力を変換し、変換された電力を負荷7に供給する。電力変換装置200は、例えば、車両に搭載される充電システムに用いられる。なお、以下の説明では、電源1~6を太陽電池モジュールとし、負荷7をバッテリ(二次電池)としたうえで、実施形態を説明する。電源1~6は太陽電池モジュールに限られず、他の電源であってもよい。負荷7はバッテリに限られず、エアコンなどの装置であってもよい。また、電力変換装置200は、必ずしも車両に搭載される必要はなく、車両以外の他の装置に搭載されていてもよい。
【0012】
電源1~6は、太陽電池モジュールである。太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルから構成されるモジュールである。太陽電池セルは、太陽光の光エネルギーを吸収し、太陽光の光エネルギーを電気に変えるエネルギー変換素子である。太陽電池モジュールとしては、例えば、ソーラーパネルが挙げられる。
【0013】
太陽電池モジュールは、直列に接続された複数の太陽電池セルと、太陽電池セルそれぞれに並列に接続された複数のダイオードとを有する。シリコン素子の太陽電池セルを用いた場合、一つの太陽電池セルの出力電圧は1V以下となる。太陽電池モジュール全体としての出力電圧を高くするために、太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルの直列接続で構成される。太陽電池モジュールは、各太陽電池セルの出力電圧を合算した電圧を出力する。
【0014】
太陽電池モジュールには、太陽電池セルにより発電される電圧が所定値よりも低い場合、太陽電池セルに流れる電流をバイパスするためのダイオードが設けられている。複数の太陽電池セルを直列接続することにより、太陽電池モジュールは、各太陽電池セルで共通の電流を出力する。例えば、太陽電池モジュールに部分的に影がかかり、一部の太陽電池セルに太陽光が照射されない場合(いわゆる部分影の場合)、太陽光が照射されていない太陽電池セルは、太陽光が照射されている太陽電池セルよりも、発電可能な電力が減少する。このため、太陽光が照射されていない太陽電池セルは、太陽光が照射されている太陽電池セルよりも、出力可能な電流が減少する。仮に、バイパス用のダイオードを設けない場合、太陽電池モジュールは、太陽光が照射されていない太陽電池セルが出力可能な電流しか出力できず、太陽電池モジュール全体としての出力電力は大幅に低減する。このような問題を解決するために、太陽電池モジュールには、太陽電池セルと並列に接続されたバイパス用のダイオードが設けられている。バイパス用のダイオードによって、太陽光が照射されている太陽電池セルを通り、太陽光が照射されていない太陽電池セルをバイパスした電流経路が生成される。これにより、部分影に対して太陽電池モジュール全体としての出力電力が低減するのを抑制している。
【0015】
負荷7は、バッテリ等の負荷である。負荷7には、電力変換装置200で生成された電圧が入力される。例えば、負荷7が車両に搭載されるバッテリの場合、バッテリの電圧は、240V~400Vの範囲で変動する。
【0016】
電力変換装置200は、最も発電できる動作点で動作できるように電源1~6のそれぞれを制御しつつ、電源1~6の出力電圧を負荷7の電圧まで昇圧させる昇圧機能を有するDC-DCコンバータである。また、電力変換装置200は、電源1~6と負荷7との間を絶縁する絶縁機能を有するDC-DCコンバータでもある。
【0017】
電力変換システム300が車両に搭載され、電源1~6が太陽電池モジュール、負荷7が車両に搭載されたバッテリの場合おいて、電力変換装置200に必要な機能について説明する。車両に搭載される太陽電池モジュールには、出力電圧に上限が設けられている。また、既述のとおり、太陽電池モジュールが発電可能な電力は日射量に応じて変動するため、太陽電池モジュールの出力電圧もまた日射量に応じて変動する。太陽電池モジュールの発電電力を効率よくバッテリに供給するためには、電力変換装置200には、太陽電池モジュールを最も発電できる動作点で動作させ、太陽電池モジュールから入力される電力を最大にさせる機能(MPPT機能)が必要とされる。また、バッテリが必要とする電力と太陽電池モジュール一つあたりの発電電力には大きな差があるため、電力変換装置200には、複数の太陽電池モジュールそれぞれの発電電力を電力変換する機能が必要とされる。また、バッテリの電圧と太陽電池モジュール一つあたりの出力電圧との間には大きな差がある。このため、電力変換装置200には、太陽電池モジュールの出力電圧をバッテリの電圧まで昇圧する機能(昇圧機能)と、バッテリから太陽電池モジュールへ電流が流れこまないように、太陽電池モジュールとバッテリとの間を絶縁する機能(絶縁機能)とが必要とされる。
【0018】
本発明に係る電力変換装置は、複数の電源それぞれに対応して設けられ、複数の電源それぞれの電力を変換する複数のDC-DCコンバータと、複数のDC-DCコンバータ及び負荷に接続される一つのDC-DCコンバータとで構成される。以降の説明では、便宜上、電源に接続されるDC-DCコンバータを第1コンバータと称し、第1コンバータ及び負荷に接続される一つのDC-DCコンバータを、第2コンバータと称して説明する。
図1のブロック図では、電力変換装置200は、第1コンバータ11~16と第2コンバータ17とで構成される。本実施形態では、複数の第1コンバータ11~16で、既述の電力変換装置200が必要とされる機能のうち、MPPT機能と複数の太陽電池モジュールそれぞれの発電電力を変換する機能とを実現する。また、第2コンバータ17で、既述の電力変換装置200が必要とされる機能のうち、昇圧機能と絶縁機能とを実現する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態では、電力変換装置200は、複数の第1コンバータ11~16と第2コンバータ17とを備える。各第1コンバータは、電源1~6に対応して設けられている。第1コンバータ11を例に挙げると、第1コンバータ11は電源1に対応して設けられ、第1コンバータ11の入力端子には電源1から電力が入力される。第1コンバータ12~16も、第1コンバータ11と同様の構成ため、第1コンバータ11での説明を援用する。なお、以降の説明では、「複数の第1コンバータ11~16それぞれ」は「各第1コンバータ」と読み替えてもよい。
【0020】
複数の第1コンバータ11~16のそれぞれは、対応する電源が最も発電できる動作点で動作できるように、電源から出力される電力を制御する機能(MPPT機能)を有している。第1コンバータ11を例に挙げると、第1コンバータ11は、MPPT機能により、電源1を最も発電できる動作点で動作させる。第1コンバータ12~16も、対応した電源を最も発電できる動作点で動作させる。第1コンバータ12~16が有するMPPT機能は、第1コンバータ11が有するMPPT機能と同様の機能のため、第1コンバータ11での説明を援用する。
【0021】
また複数の第1コンバータ11~16のそれぞれは、対応する電源から入力される電圧を昇圧又は降圧する機能(昇降圧機能)を有する昇降圧型のコンバータである。第1コンバータ11を例に挙げると、第1コンバータ11は、昇降圧機能により、電源1から入力される電圧を昇圧又は降圧する。第1コンバータ12~16も、対応する電源から入力される電圧を昇圧又は降圧する。第1コンバータ12~16が有する昇降圧機能は、第1コンバータ11が有する昇降圧機能と同様の機能のため、第1コンバータ11での説明を援用する。昇降圧機能の詳細については後述する。
【0022】
また複数の第1コンバータ11~16のそれぞれは、それぞれの出力が互いに接続されている。
図1に示すブロック図では、第1コンバータ11の出力端子、第1コンバータ12の出力端子、第1コンバータ13の出力端子、第1コンバータ14の出力端子、第1コンバータ15の出力端子、及び第1コンバータ16の出力端子は互いに接続されている。これにより、複数の第1コンバータ11~16の出力は並列に接続され、複数の第1コンバータ11~16は出力側で並列に接続される。詳細な接続関係、第1コンバータの回路構成及び機能については、後述する。
【0023】
第2コンバータ17は、複数の第1コンバータ11~16及び負荷7の間に設けられ、複数の第1コンバータ11~16及び負荷7に接続される。第2コンバータ17は、後述するコントローラ100によって、直流トランスとして機能する。第2コンバータ17は、入力電圧と出力電圧が所定の比率となるように動作する回路である。詳細な接続関係、第2コンバータの回路構成及び機能については、後述する。
【0024】
コントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16及び第2コンバータ17を制御する制御装置(制御回路ともいう)である。コントローラ100としては、例えば、複数の第1コンバータ11~16及び第2コンバータ17を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
図1に示すように、コントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16それぞれに対して制御信号を出力し、各第1コンバータを独立に制御する。またコントローラ100は、第2コンバータ17に対して制御信号を出力し、第2コンバータ17を制御する。コントローラ100による制御の詳細については、後述する。以上が、本実施形態に係る電力変換装置200の概要である。
【0025】
次に、
図2Aを用いて、複数の第1コンバータ11~16のうち第1コンバータ11を例に挙げて、
図1に示した第1コンバータの回路構成について説明する。
図2Aは、
図1で示した第1コンバータの回路構成の一例である。なお、本実施形態では、第1コンバータ12~16は、第1コンバータ11と同様の回路構成とし、第1コンバータ11での説明を援用する。
【0026】
図2Aに示すように、第1コンバータ11は、入力ポート21及び出力ポート31を備える。入力ポート21は、一対の入力端子21a及び入力端子21bで構成される。出力ポート31は、一対の出力端子31a及び出力端子31bで構成される。入力端子21aは、電源ライン41aにより電源1の正極側の端子に接続され、入力端子21bは、電源ライン41bにより電源1の負極側の端子に接続されている。また出力端子31aは出力ライン51aに接続され、出力端子31bは電源ライン41aにより入力端子21b及び電源1の負極側の端子に接続されている。
【0027】
図2Aに示すように、第1コンバータ11は、昇圧チョッパ回路及び降圧チョッパ回路で構成される。第1コンバータ11において、スイッチング素子S
1及びスイッチング素子S
2の直列回路とダイオードD
4及びスイッチング素子S
3の直列回路とは、コイルL
1を介して接続されている。スイッチング素子S
1には、スイッチング素子S
1の導通方向とダイオードの導通方向が互いに逆向きとなるように、ダイオードD
1が並列に接続されている。スイッチング素子S
2にも、スイッチング素子S
1とダイオードD
1との接続関係と同様の接続関係でダイオードD
2が並列に接続されている。スイッチング素子S
3にも、スイッチング素子S
1とダイオードD
1との接続関係と同様の接続関係でダイオードD
3が並列に接続されている。スイッチング素子S
1~S
3には、IGBT、MOSFET等が用いられる。ダイオードD
1~D
3は、整流素子又はMOSFETの寄生ダイオードである。スイッチング素子S
1とスイッチング素子S
2は、高電位側をスイッチング素子S
1、低電位側をスイッチング素子S
2にして、電源ライン41aと電源ライン41bとの間に直列に接続される。ダイオードD
4とスイッチング素子S
3は、高電位側をダイオードD
4、低電位側をスイッチング素子S
3にして、出力ライン51aと電源ライン41bとの間に直列に接続される。コイルL
1の一端は、スイッチング素子S
1とスイッチング素子S
2との接続点O
1と接続されている。コイルL
1の他端は、ダイオードD
4とスイッチング素子S
3の接続点O
2と接続されている。また、電源ライン41aと電源ライン41bとの間には、平滑コンデンサ61が接続されており、スイッチング素子S
1及びスイッチング素子S
2の直列回路と平滑コンデンサ61は、並列関係にある。
図2Aの例では、第1コンバータ11は、コイルL
1、スイッチング素子S
3、及びダイオードD
4により構成される昇圧チョッパ回路と、スイッチング素子S
1、ダイオードD
2、コイルL
1、及びダイオードD
4により構成される降圧チョッパ回路とを有している。
【0028】
第1コンバータ11の回路構成は、
図2Aに示すチョッパ昇圧回路及びチョッパ降圧回路に限られず、その他の回路構成であってもよい。
図2B~
図2Fは、
図1で示した第1コンバータの回路構成の他の例である。例えば、第1コンバータ11は、
図2Bに示すように、
図2Aに示す回路構成においてスイッチング素子S
2をダイオードに置き換えた構成であってもよい。また例えば、第1コンバータ11は、
図2Cに示すように、SEPIC(Single Ended Primary inductance Converter)で構成されてもよい。また例えば、第1コンバータは、
図2Dに示すように、
図2Cに示すSEPICと同じ原理で動作するものの、出力電圧の極性を反転させた回路で構成されてもよい。また例えば、第1コンバータ11は、
図2Eに示すように、昇降圧型のチョッパ回路であって、出力電圧の極性を反転させた回路で構成されてもよい。また例えば、第1コンバータ11は、
図2Fに示すように、ZETAコンバータで構成されてもよい。
【0029】
また、第1コンバータ11は、
図2A~
図2Fの回路構成のように、入力ポート21と出力ポート31とが導通している、いわゆる非絶縁型のコンバータに限られず、入力ポート21と出力ポート31との間に絶縁トランスが設けられた絶縁型のコンバータであってもよい。第1コンバータ11として絶縁型コンバータを用いた場合、入力ポート21と出力ポート31との間は、絶縁トランスによって絶縁される。第1コンバータ11に用いられる絶縁型コンバータとしては、例えば、フォワードコンバータ、フライバックコンバータ、フルブリッジコンバータ、タップインダクタコンバータが挙げられる。なお、本実施形態では、複数の第1コンバータ11~16はそれぞれ同じ回路として説明するが、複数の第1コンバータ11~16は複数種類の回路を含んでいてもよい。複数の第1コンバータ11~16は、各第1コンバータの出力電圧が同じ極性という条件のもと、上記に例として挙がった複数種類の回路のうち、少なくとも何れか一つの回路であればよい。
【0030】
次に、
図3を用いて、第2コンバータ17の回路構成について説明する。
図3は、
図1に示した第2コンバータ17の回路構成の一例である。
【0031】
図3に示すように、第2コンバータ17は、ポート27及びポート37を備える。ポート27は、一対の端子27a及び端子27bで構成される。ポート37は、一対の端子37a及び端子37bで構成される。端子27aはライン47aに接続され、端子27bはライン47bに接続される。また端子37aはライン47aに接続され、端子37bはライン47bに接続されている。後述するように、ライン47aとライン47bは複数の第1コンバータ11~16のそれぞれの出力ポート31~36に接続されるため、ライン47aとライン47bの極性は、第1コンバータの回路構成に応じた極性となる。
【0032】
図3に示すように、第2コンバータ17は、LC直列共振型のDual Active Bridgeで構成される。第2コンバータ17は、2つのコイル(L)と1つのコンデンサ(C)とから構成されるLLCコンバータである。第2コンバータ17は、1次側コイル57を含む1次側回路と、2次側コイル67を含む2次側回路とで構成されている。1次側回路と2次側回路の間は絶縁されている。
【0033】
1次側回路について説明する。
図3に示すように、ライン47aとライン47bとの間には、スイッチング素子S
5及びスイッチング素子S
6の直列回路と、スイッチング素子S
7及びスイッチング素子S
8の直列回路とが接続されている。スイッチング素子S
5を例に挙げると、スイッチング素子S
5には、スイッチング素子S
5の導通方向とダイオードの導通方向が互いに逆向きとなるように、ダイオードD
5が並列に接続されている。スイッチング素子S
6~S
8にも、スイッチング素子S
5とダイオードD
5との接続関係と同様の接続関係で、ダイオードD
6~D
8が並列に接続されている。スイッチング素子S
5~S
8には、IGBT、MOSFET等が用いられる。ダイオードD
5~D
8は、整流素子又はMOSFETの寄生ダイオードである。スイッチング素子S
5とスイッチング素子S
6は、高電位側をスイッチング素子S
5、低電位側をスイッチング素子S
6にして、ライン47aとライン47bとの間に直列に接続される。スイッチング素子S
7とスイッチング素子S
8は、高電位側をスイッチング素子S
7、低電位側をスイッチング素子S
8にして、ライン47aとライン47bとの間に直列に接続される。また、スイッチング素子S
5とスイッチング素子S
6との接続点O
3と、スイッチング素子S
7とスイッチング素子S
8との接続点O
4との間には、コイルC
2と1次側コイル57とが直列に接続されている。1次側コイル57の巻数は、n
1とする(単位:巻数)。
【0034】
2次側回路について説明する。
図3に示すように、ライン47aとライン47bとの間には、スイッチング素子S
9及びスイッチング素子S
10の直列回路と、スイッチング素子S
11及びスイッチング素子S
12の直列回路とが接続されている。スイッチング素子S
9を例に挙げると、スイッチング素子S
9には、スイッチング素子S
9の導通方向とダイオードの導通方向が互いに逆向きとなるように、ダイオードD
9が並列に接続されている。スイッチング素子S
10~S
12にも、スイッチング素子S
9とダイオードD
9との接続関係と同様の接続関係で、ダイオードD
10~D
12が並列に接続されている。スイッチング素子S
9~S
12には、IGBT、MOSFET等が用いられる。ダイオードD
9~D
12は、整流素子又はMOSFETの寄生ダイオードである。スイッチング素子S
9とスイッチング素子S
10は、高電位側をスイッチング素子S
9、低電位側をスイッチング素子S
10にして、ライン47aとライン47bとの間に直列に接続される。スイッチング素子S
11とスイッチング素子S
12は、高電位側をスイッチング素子S
11、低電位側をスイッチング素子S
12にして、ライン47aとライン47bとの間に直列に接続される。また、スイッチング素子S
9とスイッチング素子S
10との接続点O
5と、スイッチング素子S
11とスイッチング素子S
12との接続点O
6との間には、2次側コイル67が接続されている。2次巻き線76の巻数は、n
2(単位:巻数)とする。本実施形態では、1次側コイル57及び2次側コイル67は、絶縁トランスとして機能する。
【0035】
次に、
図4を用いて、
図1で示した電力変換システム300の回路構成について説明する。
図4は、
図1で示した電力変換システム300の回路構成の一例である。
図4では、複数の第1コンバータ11~16は、
図2Aに示す回路構成であり、第2コンバータ17は、
図3に示す回路構成である。なお、
図4では、コントローラ100を省略している。
【0036】
図4に示すように、各第1コンバータの入力ポート21~26は、対応する電源1~6に接続されている。
図4に示すように、第1コンバータ11は、入力ポート21によって電源1と接続されている。具体的には、第1コンバータ11の入力端子21aは電源1の正極側の端子に接続され、第1コンバータ11の入力端子21bは電源1の負極側の端子に接続されている。第1コンバータ12~16については、第1コンバータ11と電源1との接続関係と同様のため、第1コンバータ11と電源1との接続関係の説明を援用する。
【0037】
また、各第1コンバータの出力ポート31~36は並列に接続されている。具体的には、出力端子31a~36aは、配線81aによって接続されている。また、出力端子31b~36bは、配線81bによって接続されている。各出力端子の極性は同一である。
【0038】
また、各第1コンバータの出力ポート31~36は、第2コンバータ17のポート27と接続されている。具体的には、各出力端子31a~36aは、配線81によって端子27aと接続されている。また、各出力端子31b~36bは、配線81bによって端子27bと接続されている。配線81は、一対の配線81a及び配線81bで構成されており、複数の第1コンバータ11~16と第2コンバータ17を接続するための配線である。
【0039】
このような複数の第1コンバータ11~16の出力側の接続関係と、複数の第1コンバータ11~16と第2コンバータ17との接続関係によって、
図4に示す回路構成では、各第1コンバータの出力電圧は、第1コンバータ間で共通の電圧となるとともに、第2コンバータ17のポート27の電圧となる。また、各第1コンバータの出力電流I
out1~I
out6は合算され、合算された電流は、第2コンバータ17に入力される。複数の第1コンバータ11~16のそれぞれは、複数の電源1~電源6から第2コンバータ17のポート27の方向にのみ電力を伝送させる。
図4では、中間電圧V
midは、各第1コンバータ間で共通する出力電圧(第2コンバータ17のポート27の電圧)を示し、電流I
totalは、各第1コンバータの出力電流が合算された電流を示す。
【0040】
また、第2コンバータ17のポート37は負荷7に接続されている。
図4に示すように、端子37aは、配線84aによって負荷7の正極側の端子に接続され、端子37bは、配線84bによって負荷7の負極側の端子に接続される。配線84は、一対の配線84a及び配線84bで構成されており、第2コンバータ17と負荷7を接続するための配線である。
【0041】
また、複数の第1コンバータ11~16と第2コンバータ17の間には、平滑コンデンサ82が設けられている。
図4に示すように、平滑コンデンサ82は、複数の第1コンバータ11~16と第2コンバータ17との間に設けられ、配線81aと配線81bとの間に接続されている。また、第2コンバータ17と負荷7の間には、平滑コンデンサ83が設けられている。
図4に示すように、平滑コンデンサ83は、第2コンバータ17と負荷7との間に設けられ、配線84aと配線84bとの間に接続されている。
【0042】
次に、
図4に示す電力変換システム300の回路構成において、コントローラ100による制御と各回路の動作について説明する。
【0043】
コントローラ100による第1コンバータの制御と、第1コンバータの回路単体での動作について、再び
図2Aを用いて説明する。コントローラ100は、スイッチング素子S
1~S
3の制御端子に制御信号を出力し、スイッチング素子S
1~S
3のオン及びオフ(スイッチングともいう)を制御する。コントローラ100は、スイッチング素子S
1~S
3のそれぞれを独立に制御する。例えば、
図2Aに示すスイッチング素子S
1~S
3がMOSFETの場合、コントローラ100は、各スイッチング素子のゲート端子に対する電圧をそれぞれ制御することで、スイッチング素子S
1~S
3のそれぞれをスイッチングさせる。以降では、コントローラ100による第1コンバータ11の制御と、第1コンバータ11の動作を説明するが、コントローラ100による第1コンバータ12~16の制御と、第1コンバータ12~16の動作は、第1コンバータ11と同様のため、第1コンバータ11での説明を援用する。
【0044】
コントローラ100は、太陽電池モジュールである電源1を最も発電できる動作点で動作させ、電源1から入力される電力が最大となるように、第1コンバータ11を制御する。一般的なMPPT制御では、電源1から第1コンバータ11に入力される電流及び電圧を検知しながら、電源1が最も発電できる動作点を探索する。当該動作点が探索されると、探索された動作点で電源1を動作させ、所定の時点における電源1からの入力電力を最大にする。本実施形態では、コントローラ100は、第1コンバータ11の出力電力が最大化するように第1コンバータ11を制御する。これにより、電源1から第1コンバータに入力される電力を最大にすることができる。本実施形態に係るMPPT制御については後述する。
【0045】
また、コントローラ100は、第1コンバータ11が有するチョッパ昇圧回路及びチョッパ降圧回路を制御することで、第1コンバータ11の入力電圧を昇圧又は降圧させる。
図2Aに示すように、第1コンバータ11には、入力端子21a及び入力端子21bを介して、電源1から電流(入力電流I
in)及び電圧(入力電圧V
in)が入力される。第1コンバータ11は、昇圧チョッパ回路によって、入力電圧を昇圧させる。第1コンバータ11は、コントローラ100がスイッチング素子S
3をスイッチングさせることで、出力電圧V
outとして、入力電圧V
inを昇圧した電圧を出力する。第1コンバータ11の昇圧比は、スイッチング素子S
3のオン及びオフのデューティ比で制御される。スイッチング素子S
3のオン及びオフのデューティ比とは、スイッチング素子S
3のオン時間とスイッチング素子S
3のオフ時間との合算時間に対するスイッチング素子S
3のオン時間の割合を示す比である。また、第1コンバータ11は、降圧チョッパ回路によって、入力電圧を降圧させる。第1コンバータ11は、コントローラ100がスイッチング素子S
1をスイッチングさせることで、出力電圧V
outとして、入力電圧V
inを降圧した電圧を出力する。第1コンバータ11の降圧比は、スイッチング素子S
1のオン及びオフのデューティ比で制御される。スイッチング素子S
1のオン及びオフのデューティ比とは、スイッチング素子S
1のオン時間とスイッチング素子S
1のオフ時間との合算時間に対するオン時間の割合を示す比である。
【0046】
次に、コントローラ100による第2コンバータ17の制御と、第2コンバータ17単体での動作について、再び
図3を用いて説明する。コントローラ100は、スイッチング素子S
5~S
12の制御端子に制御信号を出力し、スイッチング素子S
5~S
12のオン及びオフを制御する。コントローラ100は、スイッチング素子S
5~S
12のそれぞれを独立に制御する。例えば、
図3に示すスイッチング素子S
5~S
12がMOSFETの場合、コントローラ100は、各スイッチング素子のゲート端子に対する電圧をそれぞれ制御することで、スイッチング素子S
5~S
12のそれぞれをスイッチングさせる。
【0047】
コントローラ100は、第2コンバータ17が直流トランスとして機能するように、第2コンバータ17を制御する。既述のとおり、第2コンバータ17は、1次側回路と2次側回路で構成され、その間が絶縁トランスによって絶縁されている。コントローラ100は、スイッチング素子S5~S12について、各スイッチング素子のオン時間とオフ時間を合わせつつ、各スイッチング素子がオン及びオフを切り替えるタイミングを、第2コンバータ17の絶縁トランスの共振周波数と同期をとるように、各スイッチング素子を制御する。別の言い方をすれば、コントローラ100は、第2コンバータ17のスイッチング素子S5~S12について、オン時間とオフ時間が略同一であり、かつ、スイッチング周波数が第2コンバータ17の絶縁トランスの共振周波数と略同一となるように、各スイッチング素子を制御する。
【0048】
第2コンバータ17は、共振型のコンバータである。コントローラ100からの制御信号が第2コンバータ17の各スイッチング素子に入力されると、第2コンバータ17の各スイッチング素子は、高電位側の端子(例えば、ドレイン端子)と低電位側の端子(例えば、ソース端子)との間の電圧(例えば、ドレイン-ソース電圧)がゼロ電圧の状態でオン又はオフする(ZVS:Zero Voltage Switching)。また第2コンバータ17の各スイッチング素子は、スイッチング素子に流れる電流がゼロ電流の状態でオン又はオフする(ZCS:Zero Current Switching)。このようなスイッチング素子の動作は、ソフトスイッチングと呼ばれ、スイッチングによる損失を大幅に低減できる。第2コンバータ17は、電圧V1から電圧V2への変換又は電圧V2から電圧V1への変換において、電力変換損失が少ないコンバータ、すなわち、高効率なコンバータとして動作する。これにより、第2コンバータ17は、ポート27とポート37との間に絶縁トランスを有し、ポート27の電圧とポート37の電圧との関係が所定の比率となるように動作する回路、すなわち、直流トランスとして動作することができる。所定の比率とは、1次側コイル57の巻線n1と2次側コイル67の巻線n2との比率(巻線比)である。なお、コントローラ100には、第2コンバータ17の各スイッチング素子をソフトスイッチングさせる方法として、本願出願時に知られた制御方法を適用することができる。
【0049】
例えば、2次側コイル67の巻線n2を1次側コイル57の巻線n1の8倍にした場合(n1:n2=1:8)、第2コンバータ17は、電圧V1から電圧V2への変換において、電圧V1の8倍の電圧を電圧V2として出力する昇圧回路として動作する。また、第2コンバータ17は、電圧V2から電圧V1への変換において、電圧V2の1/8倍の電圧を電圧V1として出力する降圧回路として動作する。
【0050】
第1コンバータ単体での動作及び第2コンバータ17単体での動作を踏まえたうえで、コントローラ100による複数の第1コンバータ11~16及び第2コンバータ17の制御と、電力変換装置200としての動作について、再び
図4を用いて説明する。
【0051】
複数の第1コンバータ11~16と第2コンバータ17の起動シーケンス及び停止シーケンスについて説明する。第2コンバータ17の絶縁トランスの巻線比は、上記の例(n1:n2=1:8)を用いる。
【0052】
図4に示す回路構成において、コントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16よりも早く第2コンバータ17を起動させる。電力変換装置200が停止した状態では、複数の第1コンバータ11~16を構成する各スイッチング素子及び第2コンバータ17のスイッチング素子S
5~S
12はオフしている。この状態から、コントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16を構成する各スイッチング素子をオフさせたまま、第2コンバータ17のスイッチング素子S
5~S
12をオン及びオフさせる。これにより、第2コンバータ17は、複数の第1コンバータ11~16よりも早く起動する。第2コンバータ17には、バッテリである負荷7の電圧V
batが入力され、第2コンバータ17は、負荷7の電圧V
batに対して所定の比率の電圧(例えば、電圧V
batの1/8の電圧)をポート27に出力する。第2コンバータ17のポート27に電圧がかかると、コントローラ100は、第2コンバータ17のスイッチング素子S
5~S
12に対する制御を維持して第2コンバータ17を直流トランスとして動作させたまま、複数の第1コンバータ11~16をオン及びオフさせる。複数の第1コンバータ11~16が起動し、各第1コンバータは対応する電源の電力を変換して第2コンバータ17に出力する。これにより、電力変換装置200は、複数の電源1~電源6の電力を変換し、変換した電力を負荷7に供給する。
【0053】
またコントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16よりも遅く第2コンバータ17を停止させる。電力変換装置200が複数の電源1~電源6から負荷7に電力を供給している状態では、複数の第1コンバータ11~16を構成する各スイッチング素子及び第2コンバータ17のスイッチング素子S5~S12はそれぞれオン及びオフしている。この状態から、コントローラ100は、第2コンバータ17のスイッチング素子S5~S12に対する制御を維持して第2コンバータ17を直流トランスとして動作させたまま、複数の第1コンバータ11~16を構成する各スイッチング素子をオフさせる。これにより、複数の第1コンバータ11~16は第2コンバータ17よりも早く停止する。複数の第1コンバータ11~16から第2コンバータ17に電力が出力されなくなると、コントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16を構成する各スイッチング素子をオフさせたまま、第2コンバータ17のスイッチング素子S5~S12をオフさせる。これにより、電力変換装置200は停止する。
【0054】
次に、複数の第1コンバータ11~16及び第2コンバータ17がともに起動している状態での複数の第1コンバータ11~16の制御について説明する。
図4に示す回路構成において、コントローラ100は、所定の外部信号と同期するように、複数の第1コンバータ11~16を構成する各スイッチング素子をスイッチングさせる。所定の外部信号とは、電力変換装置200とは無関係の外部信号であって、所定の周波数を有する外部信号である。これにより、複数の第1コンバータ11~16間で、各スイッチング素子がスイッチングするタイミングを同期させることができる。所定の周波数は、特に限定される周波数ではなく、第1コンバータ11~16の回路構成などに応じて実験的に求められた周波数が用いられる。
【0055】
次に、
図5を用いて、本実施形態に係るMPPT制御について説明する。
図5は、本実施形態に係るMPPT制御を説明するための図である。
図5は、横軸が電圧、縦軸が電流のグラフを示す。
図5において、C
1は、
図4に示す電源1の電圧-電流特性の一例を示し、C
2は、
図4に示す電源2の電圧-電流特性の一例を示す。本実施形態では、電源1~6は、太陽電池モジュールである。太陽電池モジュールは、既述のとおり、日射量に応じて発電電力が変動するため、電源1と電源2とでは異なる電圧―電流特性を示す。また、太陽電池モジュールに対する日射量が経時的に変化すると、
図5に示す電圧-電流特性C
1、C
2も日射量に応じた特性に変化する。動作点P
max1は、電源1の電圧―電流特性C
1において、電源1の発電電力が最大となる動作点を示す。動作点P
max2は、電源2の電圧―電流特性C
2において、電源2の発電電力が最大となる動作点を示す。
【0056】
また、
図5において、中間電圧V
midは
図4に示す中間電圧V
midに対応する。
図4に示す電力変換システム300において、コントローラ100が複数の第1コンバータ11~16よりも早く第2コンバータ17を起動させると、第2コンバータ17のポート27には、負荷7の電圧V
batに対して所定の比率の中間電圧V
midが発生する。所定の比率とは、第2コンバータ17の絶縁トランスの巻線比(n
1:n
2)である。
【0057】
ここで、負荷7の電圧について説明する。電荷の充放電によりバッテリの電圧が変化する速度は、日射量の変化により太陽電池モジュールの発電電力が変化する速度に比べて遅いため、複数の第1コンバータ11~16の制御において、バッテリは定電圧源とみなすことができる。中間電圧Vmidと負荷7の電圧とは、所定の比率の関係にあるため、中間電圧Vmidは定電圧とみなすことができる。
【0058】
本実施形態に係るコントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16それぞれに対して、出力電圧が中間電圧V
midとなるように、各電源から入力される電圧を昇圧又は降圧させる。
図5の例では、コントローラ100は、電源1から入力される電圧に対して昇圧又は降圧させて中間電圧V
midを出力するように第1コンバータ11を制御する。第1コンバータ11から中間電圧V
midが出力されると、コントローラ100は、第1コンバータ11の出力電流が最大となるように第1コンバータ11を制御する。言い換えると、コントローラ100は、第2コンバータ17により定まる中間電圧V
midを出力させる条件のもと、第1コンバータ11の出力電力が最大化するように第1コンバータ11を制御する。
【0059】
例えば、コントローラ100は、第1コンバータ11の出力ポート31に設けられた電流センサ及び電圧センサから、第1コンバータ11の出力電流I
out1及び出力電圧V
out1の情報を取得する。コントローラ100は、出力電圧V
out1を中間電圧V
midと一致させるように、第1コンバータ11の昇圧チョッパ回路又は降圧チョッパ回路を動作させる。そして、コントローラ100は、出力電流I
out1を検知ながら、出力電流I
out1が最大となるように、第1コンバータ11を構成する各スイッチング素子をスイッチングさせる。これにより、第1コンバータ11の出力電圧V
out1を中間電圧V
midと一致させた状態において、第1コンバータ11の出力電力を最大化することができる。第1コンバータ11の出力電力が最大化するため、電源1から第1コンバータ11へ入力される電力も最大化し、結果的に、電源1は電圧―電流特性C
1において動作点P
max1で動作する。
図5の例では、電源1の動作点P
max1に対応する電圧V
pmax1は中間電圧V
midよりも低いため、コントローラ100は、電源1から入力される電圧V
pmax1を昇圧させつつ、第1コンバータ11の出力電流I
out1を最大化させている。
【0060】
なお、第1コンバータ11に対する昇降圧制御と出力電流の最大化の制御は順序立てて行う必要はなく、例えば、コントローラ100は、昇圧又は降圧させながら出力電圧Vout1を中間電圧Vmiに一致させつつ、出力電流Iout1が最大化するように第1コンバータ11を制御してもよい。
【0061】
また
図5の例において、コントローラ100は、第1コンバータ11に対する制御と同じように、第1コンバータ12を制御する。具体的には、コントローラ100は、第1コンバータ12の昇圧チョッパ回路又は降圧チョッパ回路を動作させる。そして、コントローラ100は、出力電流I
out2を検知ながら、出力電流I
out2が最大となるように、第1コンバータ12を構成する各スイッチング素子をスイッチングさせる。第1コンバータ12の出力電力が最大化するため、電源2から第1コンバータ11へ入力される電力も最大化し、結果的に、電源2は電圧―電流特性C
2において動作点P
max2で動作する。
図5の例では、電源2の動作点P
max2に対応する電圧V
pmax2は中間電圧V
midよりも高いため、コントローラ100は、電源2から入力される電圧V
pmax2を降圧させつつ、第1コンバータ12の出力電流I
out2を最大化させている。
【0062】
図6は、
図4に示す回路構成における電力変換装置200の動作を説明するための図である。
図6において、C
1~C
6は、
図4に示す電源1~6の電圧-電流特性の一例を示す。なお、C
1とC
2は、
図5に示すC
1とC
2に対応する。また、動作点P
max1~P
max6は、電源1~電源6の電圧-電流特性C
1~C
6において、それぞれ、電源1~6の発電電力が最大となる動作点を示す。
【0063】
図6の例のように、電源1~6に対応する各第1コンバータは、コントローラ100により、中間電圧V
midを出力しつつ、その時の最大の出力電流を出力する。昇圧動作を例に挙げると、例えば、第1コンバータ11は、電源1の動作点P
max1に対応する電圧を昇圧させて中間電圧V
minを出力しつつ、その時の最大の出力電流I
out1を出力する。また、降圧動作を例に挙げると、第1コンバータ12は、電源2の動作点P
max2に対応する電圧を降圧させて中間電圧V
minを出力しつつ、その時の最大の出力電流I
out2を出力する。第1コンバータ13~16は、第1コンバータ11又は第1コンバータ12と同様に動作するため、各第1コンバータの動作及びその時の出力電流については、第1コンバータ11又は第1コンバータ12と同様のため、第1コンバータ11又は第1コンバータ12での動作の説明を援用する。
図6に示すように、複数の電源1~6がそれぞれ異なる電圧―電流特性を有していても、発電電力が最大となる動作点P
max1~P
max6で複数の電源1~6を動作させることができる。
【0064】
なお、
図6の例では、複数の第1コンバータ11~16それぞれで、昇圧動作と降圧動作の違いがあるだけでなく、昇圧比及び降圧比も異なっている。コントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16を構成する各スイッチング素子に対して、スイッチング素子のオン及びオフのデューティ比を変更することで、昇圧比又は降圧比を切り替えている。
【0065】
図4に示す回路構成では、複数の第1コンバータ11~16の出力が並列接続されているため、各第1コンバータの出力電流I
out1~I
out6は合算される。
図6の例では、電流I
totalは、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれが出力する出力電流I
out1~I
out6を合算した電流を示す。
図6の電流I
totalは、
図4に示す電流I
totalに対応する。
【0066】
第2コンバータ17に電流Itotalが入力されると、第2コンバータ17は、絶縁トランスの巻線比により定められる比率で中間電圧Vmidを負荷7の電圧Vbatまで昇圧しつつ、電流Ibatを負荷7に出力する。
【0067】
ここで、
図7を用いて、
図4に示す電力変換システム300において、第2コンバータ17の絶縁トランスの巻線比を設定する方法について説明する。
図7は、第2コンバータ17が有する絶縁トランスの巻線比を設定する方法を説明するための図である。
図7は、
図1に示す電力変換システム300のブロック図に対応している。なお、電力変換システム300には、
図4に示す回路構成が用いられているものとする。
【0068】
本実施形態では、第2コンバータ17の絶縁トランスの巻線比(n1:n2)は、太陽電池モジュールの公称最大出力動作電圧とバッテリである負荷7の電圧に応じて設定される。具体的に、絶縁トランスの巻線比は、太陽電池モジュールの公称最大出力動作電圧と電力貯蔵率が50%の際のバッテリの電圧との比率に設定される。太陽電池モジュールの公称最大出力動作電圧とは、太陽電池モジュールが最大電力を出力する際の太陽電池モジュールの出力電圧である。バッテリの電力貯蔵率は、バッテリの充電状態、バッテリの充電率ともいわれる(SOC:State Of Charge)
【0069】
図7の例では、太陽電池モジュールの公称最大出力動作電圧V
mppが45V、バッテリの電圧V
batが240V~400Vの範囲、SOCが50%の際のバッテリの電圧V
batが360Vとする。この場合、中間電圧V
midと太陽電池モジュールの公称最大出力動作電圧V
mppとを一致させるように、2次側コイル67の巻線n
2は1次側コイル57の巻線n
1の8倍に設定される。一般的に、昇降圧型のコンバータでは、昇降圧比が1に近いほど高効率に電力変換をすることができる。このため、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれは、対応する各電源から入力される電圧を昇圧又は降圧することなくそのままの電圧を出力することが、複数の第1コンバータ11~16での電力変換効率を高めることにつながる。
図7の例のように、第2コンバータ17の絶縁トランスの巻線比を設定することで、複数の第1コンバータ11~16において、入力電圧と出力電圧との差を小さくすることができ、昇降圧比を1に近づけることができる。これにより、複数の第1コンバータ11~16での電力変換効率を向上させることができる。また、第2コンバータ17は、スイッチング素子S
5~S
12のソフトスイッチングにより、直流トランスとして機能する。このため、第2コンバータ17での電力損失を減らし、高効率に複数の第1コンバータ11~16から入力される電力を負荷7に供給することができる。その結果、電力変換装置200全体での電力変換効率を高めることができ、負荷7に供給する電力量を増加させることができる。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る電力変換装置200は、複数の電源から入力された電力をそれぞれ変換する複数の第1コンバータ11~16と、第1コンバータの出力ポート31~36それぞれに接続されるポート27及び負荷7に接続されるポート37を有する第2コンバータ17とを備える。複数の第1コンバータ11~16は、出力ポート31~36によって並列に接続されている。第2コンバータ17は、ポート27とポート37との間を絶縁し、ポート27の電圧とポート37の電圧が所定の比率となるように動作する。これにより、複数の第1コンバータ11~16それぞれの出力電圧Vout1~Vout6は、複数の第1コンバータ11~16間で共通した中間電圧Vmidとなるため、複数の第1コンバータ11~16間で出力電圧の調整が不要となる。また、この中間電圧Vmidは、負荷7の電圧Vbatに対して所定の比率の電圧であるため、電力変換装置200の出力電圧を維持することができる。その結果、本実施形態に係る電力変換装置200によれば、複数の第1コンバータ11~16間で出力電圧を調整することなく、電力変換装置200の出力電圧を維持することができる。
【0071】
ここで、本実施形態に係る電力変換装置200とは異なり、複数のDC-DCコンバータの出力を直列に接続した比較例に係る電力変換装置と、当該比較例に係る電力変換装置でのMPPT制御を挙げて、本実施形態の電力変換装置200が奏する作用・効果について説明する。
【0072】
比較例に係る電力変換装置では、太陽電池モジュールのそれぞれにDC-DCコンバータを接続し、DC-DCコンバータの出力端子同士を接続することによって、複数のDC-DCコンバータの出力を直列に接続している。比較例に係る電力変換装置は、各DC-DCコンバータで太陽電池モジュールの電圧を負荷まで昇圧させつつ、発電電力が最大となる動作点で各太陽電池モジュールを動作させている。比較例に係る電力変換装置は、各DC-DCコンバータの出力電圧が合算された電圧を負荷に出力する。
【0073】
このような比較例に係る電力変換装置の構成では、定電圧源とみなせるバッテリのような負荷に電力変換装置が接続された場合、各DC-DCコンバータが分担する出力電圧の比率は、各DC-DCコンバータの出力電力の比率と比例関係になる。このため、比較例に係る電力変換装置では、複数のDC-DCコンバータのうち一のDC-DCコンバータの出力電圧は、その他のDC-DCコンバータの出力電力の影響を受けることになる。例えば、複数のDC-DCコンバータのうちその他のDC-DCコンバータの出力電力が変化した場合、すなわち、その他のDC-DCコンバータの動作点が変化した場合、複数のDC-DCのうち一のDC-DCコンバータの出力電圧は変化する。
【0074】
DC-DCコンバータは、その特性上、入力電圧と出力電圧との比率が変化すると、変化前後における動作が同じであっても、DC-DCコンバータが伝送する電力は変化する。また、電源が太陽電池モジュールの場合、DC-DCコンバータの伝送電力の変化は、太陽電池モジュールの動作点の変化を引き起こす。上記例のように、複数のDC-DCのうちその他のDC-DCコンバータの動作点の変化を受けて、一のDC-DCコンバータの伝送電力が変化したとする。伝送電力の変化前に、太陽電池モジュールが一のDC-DCコンバータによって発電電力が最大となる動作点で動作していても、当該太陽電池モジュールの動作点は、伝送電力の変化によって、発電電力が最大となる動作点から移動してしまう。つまり、複数のDC-DCコンバータのうちその他のDC-DCコンバータの動作点の変化により、特定の太陽電池モジュールが、発電電力が最大となる動作点で動作できないという問題がある。
【0075】
また、比較例に係る電力変換装置でのMPPT制御としては、太陽電池モジュールから出力される電流及び電圧、すなわち、DC-DCコンバータに入力される入力電流及び入力電圧をセンサで検知しながら、発電電力が最大となる動作点で太陽電池モジュールを動作させる制御が挙げられる。このようなMPPT制御としては、例えば、山登り法が挙げられる。
【0076】
図8は、山登り法によるMPPT制御の問題点を説明するための図である。
図8は、太陽電池モジュールに部分影が発生した場合の電圧―電流特性の一例である。
図8は、横軸が電圧、縦軸が電力のグラフを示す。例えば、太陽電池モジュールに部分影が発生すると、
図8に示すように、電力―電圧特性において、動作点P
1と動作点P
2という2つの極大点があらわれる場合がある。
図8に示す電力―電圧特性の例では、最大の発電電力となる動作点は動作点P
1である。例えば、所定時間前の電力―電圧特性では、最大の発電電力となる動作点が動作点P
2付近であった場合、山登り法によるMPPT制御では、動作点P
1を探索することなく、最大の発電電力となる動作点を動作点P
2と誤認識するおそれがある。このような山登り法での問題点に対して、例えば、従来例(特開2016-110524)では、太陽電池モジュールの電圧―電流特性について、電圧又は電流を掃引させることにより、複数の極大点がある電圧―電流特性であっても誤認識することなく最大の発電電力となる動作点を適切に探索している。このMPPT制御は、スキャン法とも呼ばれている。
【0077】
しかしながら、スキャン法では、最大の発電電力となる動作点を探索している間、太陽電池モジュールは当該動作点以外の動作点で動作してしまう。このため、スキャン法では、発電電力が最大となる動作点で太陽電池モジュールを動作させる機会を多く失う。一方、そのような機会の損失を減少させるために、動作点の探索の頻度を下げると、
図8を用いて説明したように、最大の発電電力と誤認識した動作点で動作する機会が増えてしまい、太陽電池モジュールの発電電力が減少する。つまり、スキャン法では、探索の頻度と発電電力とがトレードオフの関係にあるため、複雑な制御を要するという課題がある。
【0078】
これに対して、本実施形態では、電源1~6は太陽電池モジュールであり、複数の第1コンバータ11~16それぞれは、各第1コンバータの出力電力が最大となるように動作する回路である。複数の第1コンバータの出力が並列に接続されているため、複数の第1コンバータ間での出力電圧は共通する。このため、比較例に係る電力変換装置のように、複数の第1コンバータのうちその他の第1コンバータの動作点の変化を受けて、特定の第1コンバータの伝送電力が変化するのを防ぐことができる。その結果、各第1コンバータにより、複数の太陽電池のそれぞれを発電電力が最大となる動作点で動作させることができ、複数の太陽電池モジュールから入力される電力を増加させることができる。
【0079】
また、複数の第1コンバータ間での出力電圧が第2コンバータ17により定められるため、第1コンバータの出力電圧の制御を要せずに、容易に第1コンバータの出力電力の最大化を図ることができる。第1コンバータの出力電力を最大化させることで、
図4及び
図5を用いて説明したように、複数の電源1~6のそれぞれは、発電電力が最大となる動作点で動作することになる。山登り法での動作点の誤認識の問題を、スキャン法のような複雑な制御を要せずに解決することが可能となる。
【0080】
さらに、本実施形態では、第2コンバータ17は、ポート27に接続される1次側コイル57及びポート37に接続される2次側コイル67で構成される絶縁トランスを含む。第2コンバータ17の動作における所定の比率は、1次側コイル57の巻線n1と2次側コイルの巻線n2との比率である。これにより、複数の第1コンバータ11~16の回路構成を変更することなく、1次側コイル57の巻線n1と2次側コイルの巻線n2との巻線比を変更するだけで、負荷7の電圧範囲に合わせた電力変換装置200を容易に設計することができる。その結果、負荷7の電圧範囲にかかわらず、複数の第1コンバータ11~16間で出力電圧を調整することなく、出力電圧の維持が可能な電力変換装置200を提供することができる。
【0081】
加えて、本実施形態では、電源1~6は太陽電池モジュールであり、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれは、太陽電池モジュールからの入力電圧を昇圧又は降圧する昇降圧型のコンバータである。これにより、バッテリのように電圧が変動する負荷7によって、中間電圧Vmidが変動する場合であっても、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれの出力電圧を中間電圧Vmidに合わせることができる。負荷7の電圧が変動しても、MPPT制御を継続することができるため、負荷7の電圧の変動にかかわらず、複数の太陽電池モジュールから入力される電力を増加させることができる。
【0082】
また、本実施形態では、電源1~6は太陽電池モジュールであり、負荷7はバッテリである。第2コンバータ17の動作における所定の比率は、太陽電池モジュールの公称最大出力動作電圧と、電力貯蔵率SOCが50%の際のバッテリの電圧との比率に設定される。これにより、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれについて、入力電圧と出力電圧との差を小さくすることができ、昇降圧比を1に近づけることができる。その結果、電力損失の少ない昇降圧動作が可能となり、複数の第1コンバータ11~16での電力変換効率を向上させることができる。なお、電源1~6において、各太陽電池モジュールの公称最大出力動作電圧が異なる場合には、複数の第1コンバータ11~16の特性を、各第1コンバータに対応した太陽電池モジュールの特性に合わせて設定してもよい。例えば、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれの制御を、各第1コンバータに対応した太陽電池モジュールに合わせて制御してもよい。また、例えば、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれの回路構成を、各第1コンバータに対応した太陽電池モジュールの特性に合わせて変更させてもよい。また例えば、各第1コンバータの制御及び回路構成の変更の組み合わせにより、複数の第1コンバータ11~16の特性を、各第1コンバータに対応した太陽電池モジュールの特性に合わせて設定してもよい。
【0083】
さらに、本実施形態では、電力変換装置200は、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれを制御するコントローラ100を備える。また複数の第1コンバータ11~16のそれぞれは、スイッチング素子を有し、スイッチング素子のオン及びオフによって複数の電源1~6から入力される電力を変換する。コントローラ100は、所定の外部信号と同期するように、複数の第1コンバータ11~16を構成するスイッチング素子をスイッチングさせる。これにより、複数の第1コンバータ11~16間で、複数の第1コンバータ11~16を構成する各スイッチング素子が非同期にスイッチングする場合に比べて、MPPT制御への外乱の影響を低減させることができ、各第1コンバータの動作を安定させることができる。
【0084】
加えて、本実施形態では、コントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれの出力電流Iout1~Iout6が最大となるように、複数の第1コンバータ11~16を構成するスイッチング素子をスイッチングさせる。これにより、電源1~6から入力される電圧を検出する電圧センサと電源1~6から入力される電流を検出する電流センサを設けることなく、発電電力が最大となる動作点で電源1~6を動作させることができる。その結果、電力変換装置200に設けるセンサなどの部品点数を削減することができる。また、上述したように、スキャン法のように複雑な制御を要することなく、すなわち、簡易な方法によって発電電力が最大となる動作点で太陽電池モジュールを動作させることができる。部品点数を削減するだけでなく、複雑な制御を要しないため、第1コンバータの小型化を図ることができる。
【0085】
また、本実施形態では、コントローラ100は、第2コンバータ17を制御する。第2コンバータ17は、ポート27とポート37との間に設けられた絶縁トランスと、絶縁トランスに流れる電流を制御するためのスイッチング素子S5~S12を有する。コントローラ100は、スイッチング素子S5~S12のオン時間とオフ時間を合わせつつ、スイッチング素子S5~S12を切り替えるタイミングを、絶縁トランスの共振周波数と同期をとるように、スイッチング素子S5~S12を制御する。これにより、常にソフトスイッチングする共振コンバータとして第2コンバータ17を動作させることができるため、第2コンバータ17は電力損失の少ない動作が可能となり、第2コンバータ17での電力変換効率を向上させることができる。
【0086】
さらに、本実施形態では、コントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16よりも早く第2コンバータ17を起動させる。複数の第1コンバータ11~16が起動していない状態では、複数の第1コンバータ11~16から第2コンバータ17への電流経路は生成されない。第2コンバータ17を複数の第1コンバータ11~16よりも早く起動させるため、第2コンバータ17を起動させたタイミングで、瞬間的に複数の第1コンバータ11~16から第2コンバータ17を介して負荷7に電流が流れ込むのを抑制することができる。その結果、負荷7に供給される電力が脈動するのを抑制することができる。
【0087】
加えて、本実施形態では、コントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16よりも遅く第2コンバータ17を停止させる。電力変換装置200が負荷7に電力を供給している状態から、複数の第1コンバータ11~16が第2コンバータ17よりも早く停止するため、第2コンバータ17を停止させたタイミングで、瞬間的に複数の第1コンバータ11~16から第2コンバータ17を介して負荷7に電流が流れ込むのを抑制することができる。その結果、負荷7に供給される電力が脈動するのを抑制することができる。
【0088】
加えて、本実施形態では、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれは、太陽電池モジュールから第2コンバータ17のポート27の方向にのみ電力を伝送させる。これにより、複数の第1コンバータ11~16間で電力が循環されるのを抑制することができ、複数の第1コンバータ11~16のそれぞれでの電力変換効率を向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態では、複数の電源1~6のそれぞれは、太陽電池モジュールである。太陽電池モジュールは、直列に接続された複数の太陽電池セルと、太陽電池セルそれぞれと並列に接続された複数のダイオードとを有する。これにより、太陽電池モジュールに部分影が発生した場合であっても、発電電力の減少量を抑えられるため、複数の電源1~6から電力変換装置200に入力される電力が部分影によって大幅に低減するのを抑制することができる。
【0090】
さらに、本実施形態では、負荷7はバッテリである。これにより、電荷の充放電により負荷7の電圧が変動する場合であっても、電圧変動前後において、電力変換装置200からの出力電圧を維持しつつ、各時点で電源1~6から入力される最大の電力を高効率に負荷7に供給することができる。
【0091】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0092】
例えば、上述した実施形態では、コントローラ100による複数の第1コンバータの制御として、所定の外部信号と同期するように、複数の第1コンバータ11~16を構成する各スイッチング素子をスイッチングさせる制御を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、コントローラ100は、複数の第1コンバータ11~16間で位相が異なるように、複数の第1コンバータ11~16を構成する各スイッチング素子をスイッチングさせてもよい。第1コンバータ11~16の出力電流に含まれるリプルが、第1コンバータ11~16間で位相がずれるため、第2コンバータ17に入力される電流Itotalが脈動するのを抑制することができる。その結果、第2コンバータ17での電力変換効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0093】
1~6…電源
7…負荷
11~16…第1コンバータ
17…第2コンバータ
21~26…入力ポート
21a~26a、21b~26b…入力端子
27…ポート
27a、27b…端子
31~36…出力ポート
31a~36a、31b~31b…入力端子
37…ポート
37a、37b…端子
81a、81b…配線
82、83…平滑コンデンサ
100…コントローラ
200…電力変換装置