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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】スライドドア装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/12 20060101AFI20240325BHJP
   E05F 15/643 20150101ALI20240325BHJP
   E06B 9/02 20060101ALI20240325BHJP
   E06B 3/48 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
E05D15/12
E05F15/643
E06B9/02 E
E06B3/48
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020075828
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173006
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】592089755
【氏名又は名称】株式会社タカショー
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】高岡 伸夫
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0011312(US,A1)
【文献】実開昭62-166999(JP,U)
【文献】米国特許第05267597(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00-15/58
E06B 3/48
E06B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扉板が連結部で折り曲げ可能に連結形成されていて、建物の開口部を開閉するスライドドアと、
前記開口部の上縁に沿って設けられる開口部側ガイド部と、前記建物の側壁に沿って設けられる側壁側ガイド部と、前記開口部側ガイド部と前記側壁側ガイド部を連結する湾曲ガイド部を有し、前記スライドドアを吊り下げ状態でスライド自在に支持する上部ガイドレールと、
前記スライドドアを前記上部ガイドレールに沿ってスライドさせて、前記開口部を開閉するドア駆動手段を備え、
前記ドア駆動手段が、前記建物の側壁に沿って前後にスライド可能なスライド部と、
一端が、前記スライド部に支持され、他端が、前記スライドドアを前記開口部側ガイド部側に向かってスライドさせるとき、最後尾となる扉板の上端部に枢支され、前記スライド部のスライド方向の動きを前記最後尾となる扉板に伝達する伝達アームを有し、
前記最後尾となる扉板以外の扉板が、前記開口部側ガイド部までスライドし、各扉板の表面が前記開口部側ガイド部と平行になった状態で、前記伝達アームの進退によって、前記最後尾となる扉板が隣接する扉板との連結部を中心に回動して前記開口部周縁に設けられた戸当たり部に離接されるようになっていて、
前記最後尾となる扉板が、その下端部の前記戸当たり部に対面する位置に第1係合部を備え、
前記戸当たり部が、前記最後尾の扉板が、前記開口部を閉じる方向にスライドしながら前記戸当たり部側へ回動するに伴い、前記第1係合部に係合し、外部からの圧力による前記最後尾となる扉板の下端部の建物内側への撓みを抑止するとともに、前記スライドドアが前記開口部を開方向にスライドするに伴い、前記スライドドアの動きのみで前記第1係合部との係合が解除される第2係合部を備えているスライドドア装置であって、
前記第1係合部および第2係合部のうち、いずれか一方の係合部は、前記最後尾となる扉板または前記戸当たり部に立設された柱状部と、この柱状部に連設された柱状部より大形の係止頭部を備え、
他方の係合部は、前記係止頭部が入り込む空隙部と、この空隙部を形成するように前記空隙部の上方を覆った状態に設けられた係止壁部を有し、
この係止壁部に、前記係止頭部を前記空隙部内に挿入可能な切欠部と、
この切欠部を介して前記係止頭部が前記空隙部内に挿入された状態で、前記最後尾となる扉板が前記開口部を閉じる方向に移動するとき、前記柱状部の相対移動方向に、前記切欠部と連通し、前記係止頭部より狭く、前記柱状部が入り込み可能な係止溝が穿設されていることを特徴とするスライドドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、ガレージ等の建物の出入口となる開口部を開閉するスライドドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、建物としてのガレージの出入口となる開口部を開閉するドアとして、図23および図24に示すようなスライドドア装置(横引きシャッターとも称される)200が既に知られている(例えば、特許文献1)。
すなわち、このスライドドア装置200は、スライドドア300と、上部ドアガイド手段であるガイド溝400と、下部ドアガイド手段であるガイドレール500を備えている。
【0003】
スライドドア300は、複数の扉板310からなり、スライド方向に隣接する扉板310が、ヒンジ部320を介して折れ曲がり可能に連結されていて、各扉板310の上部に設けられたガイドローラ330がガイド溝400内にスライド自在に嵌まり込むとともに、各扉板310の下端に設けられた走行ローラ340がガイドレール500に走行自在に支持されている。
【0004】
また、ガイド溝400およびガイドレール500は、それぞれガレージ100の開口部110に沿う開口側ガイド部510と、ガレージ100の側壁120に沿う側壁側ガイド部520と、開口側ガイド部510と側壁側ガイド部520を滑らかに連結する湾曲ガイド部530を備えている。
そして、このスライドドア装置200は、スライドドア300がガイド溝400およびガイドレール500に沿って、図21に示すように、開口部110が閉鎖された位置と、図21に鎖線で示すように、ガレージ100の側壁120に沿った開口部110の全開位置とを選択できるようになっている。
【0005】
しかし、上記スライドドア装置200の場合、スライドドア300の全ての扉板310が上部ガイド溝400および下部ガイドレール500にガイドされながらスライドするため、湾曲ガイド部530に位置する扉板310と開口部110周縁壁との間に隙間が生じる。
したがって、開口部側ガイド部510までスライドした扉板310のみで開口部110を閉鎖しなければならないため、湾曲ガイド部530の部分がデッドスペースとなり、開口部110の幅を湾曲ガイド部530の部分の幅分だけ建物の幅より狭くしなければならない。
【0006】
そこで、本出願の出願人は、上記問題を解決するために、以下のようなスライドドア装置を既に上市している(非特許文献1参照)。
すなわち、このスライドドア装置は、スライドドアを、上部ガイドレールに吊下げ状態にして、上部ガイドレールの開口部側ガイド部、湾曲ガイド部、側壁側ガイド部間をスライド自在にし、開口部を閉じる方向にスライドドアをスライドさせたとき最後尾となる扉板(以下、「後扉板」と記す)以外の扉板が、開口部側ガイド部に平行になった状態で、後扉板以外の扉板の下端がそれぞれ位置規制溝にスライド嵌合して開口部側ガイド部とともに、開口部の前後方向への動きが上下で規制された状態になるとともに、後扉板が湾曲ガイド部に臨み、この部分で隣接する扉板に対し回動自在にされ、かつ、開口部側ガイド部と平行となった状態で、その周縁部が開口部の周縁に受けられるようになっている。
【0007】
また、このスライドドア装置は、ガレージの側壁に沿って、スライドドアを開口部の開閉方向にスライドさせるドア駆動装置を備えている。
そして、ドア駆動装置は、前記側壁に沿って水平に設けられたガイドレールと、モータ駆動によって、このガイドレールに沿って側壁の前後方向(開口部から離接する方向)にスライド自在なスライド部と、このスライド部と、前記後扉板との上端部とを連結し、スライド部の動きを後扉板に伝達する伝達アーム(プッシュアームともいう)を備え、スライド部が前方にスライドするに連れ、スライドドアが開口部を閉じる方向にスライドするとともに、後扉板以外の扉板が開口部側ガイド部までスライドした状態で、伝達アームの働きによって、後扉板が戸当たり部に受けられる状態まで回動して開口部を閉状態に保持できるようにしている。
【0008】
すなわち、このスライドドア装置は、湾曲ガイド部を臨む位置まで開口部を拡げることができ、デッドスペースをなくすことができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許4358971号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】http://proex.product.takasho.co.jp/shop/r/r260402/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記先に上市されたスライドドア装置は、後扉板が、その上端部を伝達アームによって押圧されて、周縁部が開口部周縁の対応する戸当たり部に当接状態に保持されているだけで、下端側にスライドドアが建物内側に向かう力を受ける規制手段が設けられていないため、たとえば、昨今頻発している巨大な台風による普通では予想もできないような風圧がかかる場合、後扉板の下端側がガレージの内側に撓む場合もある。
そして、その撓み量が復元限界を超えるような大きな撓みとなった場合、後扉板の下端が塑性変形した状態となり、開口部を閉じようとしても開口部の後扉板の下端側に常に隙間が生じた状態となるとともに、開口部を開放する方向にスライドドアをスライドさせようとしたとき、後扉板の下端が、ガレージの側壁に沿って設けられたガイド溝にうまく嵌まり込まず、開閉動作に支障が生じる恐れがある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みて、スライドドアの閉動作のみで、後扉板の下端に撓みによる塑性変形が生じにくい状態に保持できるとともに、スライドドアを開方向にスライドさせる動作だけで、容易に保持状態を解除することができるスライドドア装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のスライドドア装置は、複数の扉板が連結部で折り曲げ可能に連結形成されていて、建物の開口部を開閉するスライドドアと、前記開口部の上縁に沿って設けられる開口部側ガイド部と、前記建物の側壁に沿って設けられる側壁側ガイド部と、前記開口部側ガイド部と前記側壁側ガイド部を連結する湾曲ガイド部を有し、前記スライドドアを吊り下げ状態でスライド自在に支持する上部ガイドレールと、前記スライドドアを前記上部ガイドレールに沿ってスライドさせて、前記開口部を開閉するドア駆動手段を備え、前記ドア駆動手段が、前記建物の側壁に沿って前後にスライド可能なスライド部と、一端が、前記スライド部に支持され、他端が、前記スライドドアを前記開口部側ガイド部側に向かってスライドさせるとき、最後尾となる扉板の上端部に枢支され、前記スライド部のスライド方向の動きを前記最後尾となる扉板に伝達する伝達アームを有し、前記最後尾となる扉板以外の扉板が、前記開口部側ガイド部までスライドし、各扉板の表面が前記開口部側ガイド部と平行になった状態で、前記伝達アームの進退によって、前記最後尾となる扉板が隣接する扉板との連結部を中心に回動して前記開口部周縁に設けられた戸当たり部に離接されるようになっていて、前記最後尾となる扉板が、その下端部の前記戸当たり部に対面する位置に第1係合部を備え、前記戸当たり部が、前記最後尾の扉板が、前記開口部を閉じる方向にスライドしながら前記戸当たり部側へ回動するに伴い、前記第1係合部に係合し、外部からの圧力による前記最後尾となる扉板の下端部の建物内側への撓みを抑止するとともに、前記スライドドアが前記開口部を開方向にスライドするに伴い、前記スライドドアの動きのみで前記第1係合部との係合が解除される第2係合部を備えているスライドドア装置であって、前記第1係合部および第2係合部のうち、いずれか一方の係合部は、前記最後尾となる扉板または前記戸当たり部に立設された柱状部と、この柱状部に連設された柱状部より大形の係止頭部を備え、他方の係合部は、前記係止頭部が入り込む空隙部と、この空隙部を形成するように前記空隙部の上方を覆った状態に設けられた係止壁部を有し、この係止壁部に、前記係止頭部を前記空隙部内に挿入可能な切欠部と、この切欠部を介して前記係止頭部が前記空隙部内に挿入された状態で、前記最後尾となる扉板が前記開口部を閉じる方向に移動するとき、前記柱状部の相対移動方向に、前記切欠部と連通し、前記係止頭部より狭く、前記柱状部が入り込み可能な係止溝が穿設されていることを特徴としている。
【0015】
ドア駆動手段としては、特に限定されないが、前記建物の側壁に沿って設けられ、前記スライド部を走行自在に支持する走行レールと、前記スライド部を前記走行レールに沿って走行させるモータを備えている構成としてもよい。
本発明において、建物とは、特に限定されないが、たとえば、ガレージ、倉庫などが挙げられる。
開口部とは、特に限定されないが、建物の出入口、窓が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のスライドドア装置は、以上のように、複数の扉板が連結部で折り曲げ可能に連結形成されていて、建物の開口部を開閉するスライドドアと、前記開口部の上縁に沿って設けられる開口部側ガイド部と、前記建物の側壁に沿って設けられる側壁側ガイド部と、前記開口部側ガイド部と前記側壁側ガイド部を連結する湾曲ガイド部を有し、前記スライドドアを吊り下げ状態でスライド自在に支持する上部ガイドレールと、前記スライドドアを前記上部ガイドレールに沿ってスライドさせて、前記開口部を開閉するドア駆動手段を備え、前記ドア駆動手段が、前記建物の側壁に沿って前後にスライド可能なスライド部と、一端が、前記スライド部に支持され、他端が、前記スライドドアを前記開口部側ガイド部側に向かってスライドさせるとき、最後尾となる扉板の上端部に枢支され、前記スライド部のスライド方向の動きを前記最後尾となる扉板に伝達する伝達アームを有し、前記最後尾となる扉板以外の扉板が、前記開口部側ガイド部までスライドし、各扉板の表面が前記開口部側ガイド部と平行になった状態で、前記伝達アームの進退によって、前記最後尾となる扉板が隣接する扉板との連結部を中心に回動して前記開口部周縁に設けられた戸当たり部に離接されるようになっていて、前記最後尾となる扉板が、その下端部の前記戸当たり部に対面する位置に第1係合部を備え、前記戸当たり部が、前記最後尾の扉板が、前記開口部を閉じる方向にスライドしながら前記戸当たり部側へ回動するに伴い、前記第1係合部に係合し、外部からの圧力による前記最後尾となる扉板の下端部の建物内側への撓みを抑止するとともに、前記スライドドアが前記開口部を開方向にスライドするに伴い、前記スライドドアの動きのみで前記第1係合部との係合が解除される第2係合部を備えているスライドドア装置であって、前記第1係合部および第2係合部のうち、いずれか一方の係合部は、前記最後尾となる扉板または前記戸当たり部に立設された柱状部と、この柱状部に連設された柱状部より大形の係止頭部を備え、他方の係合部は、前記係止頭部が入り込む空隙部と、この空隙部を形成するように前記空隙部の上方を覆った状態に設けられた係止壁部を有し、この係止壁部に、前記係止頭部を前記空隙部内に挿入可能な切欠部と、この切欠部を介して前記係止頭部が前記空隙部内に挿入された状態で、前記最後尾となる扉板が前記開口部を閉じる方向に移動するとき、前記柱状部の相対移動方向に、前記切欠部と連通し、前記係止頭部より狭く、前記柱状部が入り込み可能な係止溝が穿設されている。
【0017】
したがって、最後尾となる扉板が戸当たり部に当たるまでスライドおよび回動をすることによって、第1係合部と第2係合部とが係合され、最後尾となる扉板が、ドア駆動手段によってその上端部が戸当たり部に抑えつけられるだけでなく、第1係合部と第2係合部の係合によって、その下端部が戸当たり部から離れる方向に動くことを抑止される。
したがって、スライドドアに大きな風圧などの外圧がかかっても後扉板の下端が建物の内側に向かって大きく撓んで塑性変形することを防止でき、塑性変形によって、スライドドアの開閉動作に支障がでることがなくなる。
また、最後尾となる扉板がドア駆動手段によって開口部開放方向に駆動させるだけで、係合が解除される。
【0018】
すなわち、係合後、別途、ロック手段によってロックするという手間が不要であるとともに、たとえば、ドア駆動手段をモータ駆動とした場合、建物外からのリモコン操作が容易となる。
また、スライドドアを開方向にスライドさせるだけで係合が解除されるので、別途ロック手段を設けた場合のように、スライドドアを開方向にスライドさせる際に予めロック手段を解除するという手間がいらない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のスライドドア装置の第1の実施の形態であって、このスライド装置が装着されたガレージのスライドドアによって開口部が閉じた状態の斜視図である。
図2図1のガレージのスライドドアによって開口部が開放された状態の斜視図である。
図3図1のガレージの開口部が閉じた状態をガレージの内側の斜視図である。
図4図1のガレージの開口部を閉じた状態のスライドドアの内面図である。
図5図4のX-X断面図である。
図6図4のY-Y断面図である。
図7図2のスライドドア下端と、側壁側扉ガイドの状態を説明する概略断面図である。
図8図1のスライドドアによって開口部が閉じた状態のときの、後扉板と、後扉板の3つの走行ローラの位置関係を説明する要部平面図である。
図9図1のガレージの開口部がスライドドアで閉じた状態のドア駆動手段をガレージ内側からみた側面図である。
図10図1のガレージの開口部がスライドドアで閉じた状態のドア駆動手段をガレージ内側からみた平面図である。
図11】後扉板が開口部を閉じる前の後扉板下端部と縦戸当たり部の部分をあらわすガレージ内側から見た要部斜視図である。
図12図11の状態を開口部側から見た要部斜視図である。
図13】第1係合部と第2係合部の係合動作を順に説明する図であって、同図(a)は切欠孔に係止頭部が入り込む状態を説明する横断面図、同図(b)は縦断面図である。
図14図13の状態から後扉板が戸当たり部側に近づいた状態を断面でみて説明する図であって、同図(a)は横断面図、同図(b)は縦断面図である。
図15】後扉板が開口部を閉じた状態を開口部側から見た要部斜視図である。
図16図15の第1係合部と、第2係合部の係合状態を説明する図であって、同図(a)は後扉板の後端方向から見た断面図、同図(b)は後扉板を開口部側から見た断面図である。
図17】本発明のスライドドア装置の第2の実施の形態であって、その後扉板が開口部を閉じる前の状態の第1係合部と第2係合部の状態を説明する切欠断面斜視図である。
図18図17の状態から後扉板がさらに開口部を閉じる方向に回動し、係止頭部が切欠に臨んだ状態を説明する図であって、同図(a)は横断面図、同図(b)は縦断面図である。
図19図18の状態から後扉板が戸当たり部側に近づいた状態を断面でみて説明する図であって、同図(a)は横断面図、同図(b)は縦断面図である。
図20図19の状態から後扉板が開口部を閉じた状態をガレージ内側から見た要部斜視図である。
図21図20の状態を開口部側から見た要部斜視図である。
図22図20の状態を後扉板の後端側から見た断面図である。
図23】公知のスライドドア装置が設けられたガレージの断面平面図である。
図24図23のスライドドア装置の要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を、その実施の形態を参照して詳しく説明する。
図1図16は、本発明のスライドドア装置の第1の実施の形態をあらわしている。
【0021】
図1あるいは図2に示すように、このスライドドア装置2aは、スライドドア3aを備え、スライドドア3aが、建物としてのガレージ1の出入口となる開口部11を、閉じた状態、あるいは、図2に示すように、完全に開放した状態とすることができる。
【0022】
すなわち、図3および図4に示すように、このスライドドア装置2aは、スライドドア3aと、ドア駆動手段4と、上部ガイドレール5と、戸当たり部となる開口部側下部戸当たりレール(以下、「第1戸当たりレール」と記す)13と、側壁側扉ガイド14、縦戸当たり部17と、図5に示すように、スライドドア前端戸当たり部材18を備えている。
【0023】
スライドドア3aは、図4および図5に示すように、スライドドア3aを、開口部11を閉じる方向に移動させたとき、先頭となる扉板(以下、「前扉板」と記す)31と、最後尾となる扉板(以下、「後扉板」と記す)32と、前扉板31と、後扉板32との間に配置される複数(この実施の形態では5枚)の中間扉板33からなり、図11に示すように連結部30で、相互に折り曲げ可能に連結されている。
また、各扉板31(32、33)は、図6に示すように、下端中央部に下方へ突出するガイド突条35を備えている。
【0024】
前扉板31と各中間扉板33は、図4および図6に示すように、各扉板31,33の前端部が上部に取り付けられた走行ローラ36を介して後で詳述する上部ガイドレール5に沿ってスライド自在に吊下げ状態になっている。
すなわち、走行ローラ36は、上部ガイドレール5内に走行自在に嵌まり込むローラ本体36aと、前扉板31と各中間扉板33の上端に固定され、ローラ本体36aを軸まわりに回転自在に支持する支持軸36bを備えている。
【0025】
一方、後扉板32は、図4に示すように、その前端が前扉板31と各中間扉板33と同様に、走行ローラ36を介して上部ガイドレール5に沿ってスライド自在に吊下げ状態になっているとともに、その後端が、図8に示すように、2つの走行ローラ36およびローラ支持プレート38を介して吊り下げ状態に支持されている。
ローラ支持プレート38は、長尺板状をしていて、その一端が後扉板32の上端に枢支され、その中間部および他端部に走行ローラ36が取り付けられている。
【0026】
そして、ローラ支持プレート38の中間部および他端部に取り付けられた走行ローラ36は、そのローラ本体36aが後扉板32の後方で上部ガイドレール5の側壁側ガイド部52内をスライドするように嵌まり込んでいる。
一方、後扉板32の前端を支持する走行ローラ36は、図8に示すように、スライドドア3aが開口部11を閉じた状態のとき、開口部側ガイド部51の湾曲ガイド部53との連結部近傍に入り込むようになっている。
【0027】
また、後扉板32は、図11図16に示すように、下端側の後述する縦戸当たり部17に対抗する面に第1係合部7aを備えている。
第1係合部7aは、後述する第2係合部8aの係止頭部82が挿入可能な奥行きの空隙部74を備えた係止壁73に、切欠部としての切欠孔71と、切欠孔71の後扉板後端側で切欠孔71に連通する略U字形をした係止溝72が穿設されている。
【0028】
上部ガイドレール5は、図6に示すように、C字の開口を下方に向けた断面略C字形をしていて、図3に示すように、開口部側ガイド部51と、側壁側ガイド部52と、この開口部側ガイド部51と側壁側ガイド部52を連結する湾曲ガイド部53を備えている。
開口部側ガイド部51は、開口部11の上縁に平行に設けられていて、スライドドア3aの全幅より、後扉板32の幅寸法分短い長さか、それより少し短い長さをしている。
【0029】
側壁側ガイド部52は、開口部側ガイド部51に対して直交した状態で、側壁16に沿って設けられていて、スライドドア3aの全幅と同じ長さ以上の長さをしている。
湾曲ガイド部53は、前扉板31および各中間扉板33の走行ローラ36を、側壁側ガイド部52から開口部側ガイド部51まで、あるいは、開口部側ガイド部51から側壁側ガイド部52までスムーズに移動できるように円弧状に湾曲している。
【0030】
第1戸当たりレール13は、スライドドア3aの全幅とほぼ同じ長さをしていて、開口部側ガイド部51の下方で、開口部側ガイド部51に平行に設けられるとともに、スライドドア3aが開口部11を閉じた状態で、各扉板31(32、33)のガイド突条35の開口部11側の面が受けられるようになっている。
また、第1戸当たりレール13よりガレージ1の内側には、図3に示すように、ガイド突条35の位置規制をするとともに、第1戸当たりレール13との間にガイド突条35がスライド可能な隙間を形成する6つの扉ガイド15が、前扉板31および中間扉板33の各中央部を臨む位置にそれぞれに設けられている。
【0031】
側壁側扉ガイド14は、図3に示すように、側壁側ガイド部52の下方で、側壁側ガイド部52に平行に間欠的に設けられ、スライドドア3aが側壁16に平行になった状態で、図7に示すように、各扉板31(32、33)のガイド突条35がスライド自在に入り込むガイド溝14aを備えている。
【0032】
縦戸当たり部17は、開口部11の後扉板32の後端に対面する位置に設けられていて、その下端の第1係合部7aに対応する位置に第2係合部8aを備えている。
第2係合部8aは、柱状部81と、係止頭部82を備えている。
【0033】
柱状部81は、係止溝72の幅とほぼ同じか少し小径の円柱状をしている。
係止頭部82は、係止溝72の幅より大きい直径をした丸ビスの頭部形状をしている。
【0034】
スライドドア前端戸当たり部材18は、図5に示すように、戸当たり部18aと止水材18bを備えている。
スライドドア前端戸当たり部材18は、戸当たり部18aが、図5に示すように、平面視略J字形をしていて、前扉板31の先端が当接しない状態では、図5に二点鎖線示すように、止水材18bが前扉板31の開口部11側の面に接触しない位置にばねによって付勢されている。
そして、スライドドア3aが開口部11を閉じるようにスライドし、前扉板31の先端が戸当たり部18aに当接し、さらにスライドすると、図5に実線で示すように、スライドドア前端戸当たり部材18が、ヒンジを中心に回動し、止水材18bが前扉板31の開口部11側壁面に弾性変形しながら圧接され、開口部11側からの雨風の侵入を防止できるようになっている。
【0035】
ドア駆動手段4は、図9および図10に示すように、走行レール41と、スライド部42と、伝達アーム43を備えている。
走行レール41は、側壁側ガイド部52より下方で、側壁側ガイド部52と平行となるようにガレージ1の側壁に沿って水平に設けられている。
【0036】
スライド部42は、走行レール41の前後方向にスライド自在に支持されているとともに、図示していないが、その内部にリモコン操作によって駆動するモータと、このモータによって回転駆動し、チェーン44に噛み合うスプロケットを備えていて、スプロケットがモータによって回転することによって、走行レール41に沿って前後動するようになっている。
伝達アーム43は、図10に示すように、一端がスライド部42に枢支され、他端が後扉板32に枢支されている。
【0037】
すなわち、ドア駆動手段4は、スライド部42が走行レール41に沿って開口部11方向にスライドすることによって、伝達アーム43が後扉板32を開口部方向に押すことによって、スライドドア3a全体を開口部11方向にスライドさせ、スライド部42が走行レール41に沿って開口部11から遠ざかる方向にスライドさせることによって、スライドドア3aを側壁16に沿うようにスライドさせるようになっている。
なお、図中、19、37は、雨水や風のガレージ内への入り込みを防止するエラストマー樹脂等の弾性材である。
【0038】
以下、このスライドドア装置2aのスライドドア3aの閉動作時の各部の動きを詳しく説明する。
【0039】
図2に示すスライドドア3aが開口部11を開放し、側壁16に沿った状態から、リモコンや壁付けのスイッチ等によりドア駆動手段4のモータを駆動させてスライド部42を開口部11方向にスライドさせて、伝達アーム43を介して後扉板32を開口部11方向に前進させる。
すなわち、これにより、スライドドア3aが、上部ガイドレール5に沿って開口部11を閉じる方向にスライドする。
【0040】
そして、前扉板31および各中間扉板33は、その走行ローラ36のローラ本体36aが側壁側ガイド部52、湾曲ガイド部53を通り、開口部側ガイド部51へ移動することに伴い、その表面が開口部側ガイド部51に平行となるとともに、下端から突設されたガイド突条35が第1戸当たりレール13に当接し、かつ、扉ガイド15との間に入り込む。
したがって、この状態で、前扉板31および各中間扉板33が、上下で位置規制されるとともに、連結された他の扉板33によって、側方も位置規制される。
【0041】
一方、後扉板32は、その前端側の走行ローラ36が、他の扉板31,33と同様に、開口部側ガイド部51に入り込むが、ローラ支持プレート38に取り付けられた走行ローラ36が後扉板32の後端より、後方に位置しているため、ローラ本体36aが開口部側ガイド部51に入り込むことがない。
そして、後扉板32に隣接する中間扉板33に取り付けられた走行ローラ36のローラ本体36aが開口部側ガイド部51に入るとともに、中間扉板33のガイド突条35の一部が第1戸当たりレール13と扉ガイド15との間に入り込んだ状態で、スライド部42がさらにスライドすると、後扉板32が、スライド部42の開口部11方向へのスライドに伴って、前扉板31および中間扉板33をさらに、開口部側ガイド部51に沿ってスライドさせながら、伝達アーム43の働きによって後扉板32の後端縁が縦戸当たり部17に向かうように、隣接する中間扉板33との連結部30を中心に回動する。
【0042】
また、この回動に伴い、図13に示すように、第2係合部8aの係止頭部82が、まず、第1係合部7aの切欠孔71に臨み、図14に示すように、係止頭部82が空隙部74内に入り込むとともに、柱状部81が係止溝72方向に相対移動する。
そして、図15および図16に示すように、柱状部81が係止溝72のU字の底にほぼ当接するまで移動した状態で、後扉板32のガイド突条35が第1戸当たりレール13に当接し、開口部11がスライドドア3aによって図1図3図4に示すように、完全に閉じられるとともに、第1係合部7aと第2係合部8aが係合された状態となる。
この状態で、後扉板32の上端部は、従来のものと同様に、伝達アーム43によって閉状態に保持され、後扉板32の下端部は、風圧等の外力がスライドドア3aに加わっても、係止頭部82が係止壁73に係止されるため、ほとんど撓むことがない。
【0043】
つぎに、スライドドア3aの開動作時の各部の動きを説明する。
図1図3図4に示すスライドドア3aが開口部11を完全に閉じた状態からモータを駆動させてスライド部42を開口部11から離れる方向にスライドさせると、後扉板32の後端が縦戸当たり部17から遠ざかるように回動しつつ、スライドドア3aが開口部11を開放する方向に引っ張られる。
そして、さらに、スライド部42がスライドすることによって、係止頭部82が切欠孔71を介して空隙部74外に露出し、係止が解除されるとともに、スライドドア3aが、図2に示すように、開口部11を全開状態にするまでスライドする。
【0044】
このスライドドア装置2aは、上記のように、後扉板32が開口部11を閉状態となる位置にきたとき、第1係合部7aと第2係合部8aとが係合するため、スライドドアに大きな風圧がかかったとしても、後扉板32の下端が弾性復元できないような度合いまで大きく撓むことを防止できる。
また、第1係合部7aと、第2係合部8aの係合および係合解除が、ドア駆動手段4によるスライドドア3aの後扉板32の動作のみによって行われ、別途ロック装置を設ける必要がない。
【0045】
しかも、第1係合部7aおよび第2係合部8aは、従来のスライドドア装置を少し改造するだけでよいので、部品点数がそれほど増加しないとともに、組み立て作業も複雑化せず、コストをあまりかける必要がない。
【0046】
なお、空隙部74内には、図16に2点鎖線で示すように、係止頭部82の後扉板32のスライド方向の動きを阻害しない程度の形状および大きさをした係止頭部ストッパ75を必要に応じて設けるようにしても構わない。
係止頭部ストッパ75は、空隙部74内に入り込んだとき、係止頭部82より柱状部81側の部分に一部が入り込むようになっている。
すなわち、かかる構成とすれば、すこし構造は複雑となるが、スライドドア3aに大きな風圧がかかって、後扉板32の下端部がガレージの内側に撓もうとしても、係止頭部82が係止頭部ストッパ75に受けられるので、後扉板32の下端部の撓みをより小さくすることができる。
【0047】
図17図22は、本発明のスライドドア装置の第2の実施の形態をあらわしている。
図17図22に示すように、このスライドドア装置2bは、スライドドア3bの後扉板32に設けられた第1係合部7bと、縦戸当たり部17に設けられた第2係合部8bが以下のようになっている以外は、上記第1の実施の形態と同様になっている。
【0048】
すなわち、第1係合部7bは、上記第1の実施の形態の第2係合部8aと同様に柱状部76と、係止頭部77を備えている。
一方、第2係合部8bは、空隙部86の上部を覆うように設けられた係止壁85に、切欠部としての切欠83と、係止溝84が設けられている。
【0049】
切欠83は、空隙部86内が後扉板32の後端面側から臨めるように縦戸当たり部17の後端で開口しているとともに、後扉板32の後端側に先端側に向かって上下方向から徐々に狭まるように形成されている。
係止溝84は、略U字形をしていて、その開口端が切欠83に連設されている。
【0050】
そして、このスライドドア装置2bは、上記スライドドア装置2aと同様にして後扉板32が、回動しながらその連結部をスライド方向に移動し、まず、図16に示すように、第2係合部8bの係止頭部77が切欠83の開口端から空隙部86内に臨み、図19に示
すように、柱状部76が係止溝84に導かれたのち、図20図22に示すように、柱状部76が係止溝84のU字の底にほぼ当接するまで係止溝84内に入り込み、第1係合部7bと第2係合部8bが係合状態となる。
【0051】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、スライド部がモータ駆動によってスライドするようになっていたが、滑車等を手動で操作してスライド部をスライドさせるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、チェーンにスプロケットを噛み合わせてモータの駆動力をスライド部に伝達するようにしていたが、ラックとピニオン、プーリーとプーリーベルトの組み合わせなど、駆動力伝達手段は適宜選択できる。
【0052】
上記の実施の形態では、スライドドアが7枚の扉板で形成されていたが、6枚以下でも8枚以上でも構わない。
上記の実施の形態では、第1戸当たりレールおよび第2戸当たりレールに対して扉ガイドが間欠的に設けられていたが、スライドドアの開閉を阻害しない連続する1本の長尺な扉ガイドを設けるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0053】
1 ガレージ(建物)
11 開口部
12 上部戸当たり部
13 第1戸当たりレール(開口部側下部戸当たり部)
14 側壁側扉ガイド
14a ガイド溝
15 扉ガイド
16 側壁
17 縦戸当たり部
18 スライドドア前端戸当たり部材
18a 戸当たり部
18b 止水材
19 止水材
2a,2b スライドドア装置
3a,3b スライドドア
31 前扉板(先頭となる扉板)
32 後扉板(最後尾となる扉板)
33 中間扉板
34 扉板本体
35 ガイド突条
36 走行ローラ
36a ローラ本体
36b 支持軸
37 止水材
38 ローラ支持プレート
4 ドア駆動手段
41 走行ガイドレール
42 スライド部
43 伝達アーム
5 上部ガイドレール
51 開口部側ガイド部
52 側壁側ガイド部
53 湾曲ガイド部
7a,7b 第1係合部
71 切欠孔
72 係止溝
73 係止壁
74 空隙部
75 係止頭部ストッパ
76 柱状係止部
77 係止頭部
8a,8b 第2係合部
81 柱状係止部
82 係止頭部
83 切欠
84 係止溝
85 係止壁
86 空隙部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24