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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】半導体光増幅器集積レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/026 20060101AFI20240325BHJP
   H01S 5/50 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
H01S5/026 610
H01S5/50 610
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020080669
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021118345
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2020011661
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
(72)【発明者】
【氏名】岡本 薫
(72)【発明者】
【氏名】荒沢 正敏
(72)【発明者】
【氏名】西田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 康
(72)【発明者】
【氏名】浜田 重剛
(72)【発明者】
【氏名】中島 良介
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-154203(JP,A)
【文献】特開2005-276904(JP,A)
【文献】特開2008-294124(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108649426(CN,A)
【文献】国際公開第2020/140286(WO,A1)
【文献】特開平04-221872(JP,A)
【文献】特開2013-160873(JP,A)
【文献】特開2004-186336(JP,A)
【文献】特開2000-286502(JP,A)
【文献】特開2004-006698(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0357791(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101222121(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利得帯域に含まれる波長のレーザ光を発振させる半導体レーザ発振器部と、該半導体レーザ発振器部から出力されるレーザ光を増幅させる半導体光増幅器部、を備える半導体光増幅器集積レーザであって、
前記半導体レーザ発振器部と前記半導体光増幅器部は、一の共通のp-i-n構造を有し、
前記一の共通のp-i-n構造は、活性層、前記活性層から離間して設けられるクラッド層、及び前記クラッド層中に形成された一の共通の機能層を有し、
前記一の共通の機能層は、前記半導体レーザ発振器部内において、前記利得帯域内の波長を有する光を反射させる第1部分を有し、前記半導体光増幅器部内において、前記利得帯域内の波長を有する光を透過させる第2部分を有し、
前記第1部分は、前記利得帯域内の波長を有する光を反射させる第1回折格子構造を有し、
前記第2部分は、前記利得帯域内の波長を有する光を透過させる第2回折格子構造を有し、
前記第2回折格子構造は、非周期的である、
ことを特徴とする半導体光増幅器集積レーザ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体光増幅器集積レーザであって、
前記一の共通の機能層は、層が形成される領域と、層が形成されない領域を含み、
前記一の共通の機能層の平面視において、前記第1部分における層が形成される領域の面積と層が形成されない領域の面積との割合と、前記第2部分における層が形成される領域の面積と層が形成されない領域の面積との割合との差は10%以内である、
ことを特徴とする半導体光増幅器集積レーザ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体光増幅器集積レーザであって、
前記一の共通のp-i-n構造はメサ構造で形成し、
前記メサ構造の両側を埋め込む埋め込み半導体層をさらに備える、
ことを特徴とする半導体光増幅器集積レーザ。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体光増幅器集積レーザであって、
前記クラッド層は、前記機能層とは異なる組成を有する、
ことを特徴とする半導体光増幅器集積レーザ。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体光増幅器集積レーザであって、
前記半導体レーザ発振器部と前記半導体光増幅器部に電流を注入するための一の電極をさらに有する、
ことを特徴とする半導体光増幅器集積レーザ。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体光増幅器集積レーザであって、
前記半導体光増幅器部は、前記半導体レーザ発振器部と接する近端と、前記半導体レーザ発振器部から最も離れた縁端を有し、
当該半導体光増幅器集積レーザの平面視において、前記縁端の幅は、前記近端の幅の1.2倍以上又は0.8倍以下である、
ことを特徴とする半導体光増幅器集積レーザ。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体光増幅器集積レーザであって、
前記半導体レーザ発振器部によって発振される前記レーザ光を変調させる変調器部をさらに備える、
ことを特徴とする半導体光増幅器集積レーザ。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体光増幅器集積レーザであって、
前記クラッド層はp型である、
ことを特徴とする半導体光増幅器集積レーザ。
【請求項9】
第1導電型を有する基板と、
前記基板の第1面上に形成された活性層と、
前記活性層上に形成された第2導電型のクラッド層と、
前記クラッド層内に形成されて前記活性層から離間する一の共通の機能層と、
前記基板の第1面とは反対の第2面上に設けられた第1導電型の電極と、前記クラッド層上に設けられた第2導電型の電極と、を備える半導体光増幅器集積レーザであって、
当該半導体光増幅器集積レーザは、半導体レーザ発振器部と、該半導体レーザ発振器部と光学的に接続する半導体光増幅器部を有し、
前記機能層は、前記半導体レーザ発振器部内において、前記活性層の利得帯域内の特定の波長を有する光を反射させる第1回折格子構造を有する第1部分と、前記半導体光増幅器部内において、前記活性層の利得帯域内の特定の波長を有する光を透過させる第2回折格子構造を有する第2部分を有
前記第2回折格子構造は、非周期的である、
ことを特徴とする半導体光増幅器集積レーザ。
【請求項10】
請求項に記載の半導体光増幅器集積レーザであって、
前記一の共通の機能層は、層が形成される領域と、層が形成されない領域を含み、
前記一の共通の機能層の平面視において、前記第1部分における層が形成される領域の面積と層が形成されない領域の面積との割合と、前記第2部分における層が形成される領域の面積と層が形成されない領域の面積との割合との差は10%以内である、
ことを特徴とする半導体光増幅器集積レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光増幅器集積レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体光増幅器集積レーザは、半導体レーザと半導体光増幅器が一体形成された半導体デバイスである。半導体光増幅器集積レーザは、小型、低電力、1.3μmと1.55μm波長帯のいずれでも動作可能で、波長変換等の非線形動作が可能であることから近年注目されている。
【0003】
特許文献1は、ノイズをより低減した光送信モジュールとして、第1電極が設けられた第1半導体層と、前記第1半導体層の上に、ストライプ状に形成された活性層と、前記活性層の上にストライプ状に形成され、第2電極が設けられ、前記活性層の延伸方向に沿って設けられた回折格子を含む第2半導体層と、を有し、前記活性層は、一方の端面から第1のストライプ幅で延伸する第1部分と、前記一方の端面の反対側から前記第1のストライプ幅よりも小さい第2のストライプ幅で延伸する第2部分と、ストライプ幅が変化して前記第1部分と前記第2部分を接続する接続部分と、を含み、前記回折格子は、平面視において、前記第1部分と重畳し、前記第2部分と重畳しない光送信モジュールを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-157583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体レーザ又は変調器集積半導体レーザに集積する半導体光増幅器が注目されるにつれて、半導体光増幅器の特性改善が求められてきている。具体的には半導体光増幅器のへの注入電流に対する光出力増加量(光増幅器の入出力差)をより大きくすることが求められている。
【0006】
半導体レーザのレーザ光を効率よく増幅するためには、半導体光増幅器の利得帯域(利得スペクトルの波長範囲)と半導体レーザの利得帯域は近しいほうが好ましい。またウェハプロセスの簡便性、ウェハプロセスコストを考慮すると、半導体光増幅器と半導体レーザは、同一の活性層を有することが望ましい
【0007】
単一波長出力が得ることができる分布帰還型レーザーダイオード(DFB-LD:Distributed Feed-Back Laser Diode)に半導体光増幅器を集積する場合には、DFB-LD部のみに回折格子が作成され、半導体光増幅器部には回折格子は作成されない。半導体光増幅器部に回折格子が形成されることで、半導体光増幅器部からのDFB-LD部への戻り光が発生し、DFB-LDの発振を不安定にしてしまうからである。
【0008】
作製上の構造制御性の良い回折格子構造として、フローティング型構造が知られている。フローティング型回折格子構造は、例えばp型のクラッド層中にクラッド層とは異なる材料で回折格子が形成されたものである。回折格子を構成する層は多層成長中での膜厚制御が可能であるため、回折格子層の厚さの制御性が高く、DFB-LD部の回折格子構造に広く適用されている。
【0009】
例えばDFB-LD部と半導体光増幅器部の活性層部分を共通とするために、一回の多層成長で同時に作成する方法がある。この時、多層成長された半導体層の信頼性の観点から、一度の多層成長でのちに回折格子を形成する回折格子層までを成長するほうが好ましい。回折格子層はDFB-LB部のみに所望の発振波長に対応する周期となるようエッチングされ、回折格子構造が形成される。一方、半導体光増幅器部では回折格子層はすべてエッチングにより除去されるなどされる。
【0010】
しかしながら、上記フローティング型回折格子を持つDFB-LD部に半導体光増幅器を集積する構造では、以下の問題がある。
【0011】
まず第1の問題としては、回折格子層の有無が、ドーピングプロファイルを異ならせてしまうことである。上側クラッド層内のフローティング型回折格子層は一般的にドーパントの拡散を抑制するため、ドーパントの拡散プロファイルはフローティング型回折格子層の有無の影響を受けることになる。ドーピングプロファイルはレーザ特性、利得特性(たとえば光出力強度、閾値電流など)に対して最も重要なパラメータの一つであり、ドーピングプロファイルが異なることは、DFB-LD部と半導体光増幅器部の両方に対して同時にドーピングプロファイルを最適化することが不可能であることを意味する。これは上側クラッド層がp型の場合により顕著な問題となる。
【0012】
第2の問題としては、回折格子層の有無が、同一電圧に対する活性層の電流密度を異ならせてしまうことである。半導体光増幅器集積レーザでは、DFB-LD部と半導体光増幅器部への電流注入は、単一の電極を介して行われる場合がある。単一電極でDFB-LD部と半導体光増幅器部を駆動する場合、フローティング型回折格子層は電流注入障壁となるため、回折格子層の有無により同一電圧に対して活性層の電流密度が異なってしまう。電流密度は半導体光増幅器集積レーザ信頼性を決める非常に重要なパラメータであり、電流密度の不均一は信頼性に対して悪影響がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本願の第1態様による半導体光増幅器集積レーザは、利得帯域に含まれる波長のレーザ光を発振させる半導体レーザ発振器部と、該半導体レーザ発振器部から出力されるレーザ光を増幅させる半導体光増幅器部、を備える。当該半導体光増幅器集積レーザでは、前記半導体レーザ発振器部と前記半導体光増幅器部は、一の共通のp-i-n構造を有し、前記一の共通のp-i-n構造は、活性層、前記活性層から離間して設けられるクラッド層、及び前記クラッド層中に形成された一の共通の機能層を有し、前記一の共通の機能層は、前記半導体レーザ発振器部内において、前記利得帯域内の波長を有する光を反射させる第1部分を有し、前記半導体光増幅器部内において、前記利得帯域内の波長を有する光を透過させる第2部分を有する、ことを特徴とする。
【0014】
(2) (1)に記載の半導体光増幅器集積レーザにおいて、前記一の共通の機能層は、層が形成される領域と、層が形成されない領域を含み、前記一の共通の機能層の平面視において、前記第1部分における層が形成される領域の面積と層が形成されない領域の面積との割合と、前記第2部分における層が形成される領域の面積と層が形成されない領域の面積との割合との差は10%以内である、ことを特徴とする。
【0015】
(3) (1)又は(2)に記載の半導体光増幅器集積レーザにおいて、前記第1部分は、前記利得帯域内の波長を有する光を反射させる第1回折格子構造を有し、前記第2部分は、前記利得帯域内の波長を有する光を透過させる第2回折格子構造を有する、ことを特徴とする。
【0016】
(4) (3)に記載の半導体光増幅器集積レーザにおいて、前記第2回折格子構造の周期は、前記第1回折格子構造の周期の1.1倍以上又は0.9倍以下である、ことを特徴とする。
【0017】
(5) (1)乃至(4)のいずれか一に記載の半導体光増幅器集積レーザにおいて、前記一の共通のp-i-n構造はメサ構造で形成し、前記メサ構造の両側を埋め込む埋め込み半導体層をさらに備える、ことを特徴とする。
【0018】
(6) (1)乃至(5)のいずれか一に記載の半導体光増幅器集積レーザにおいて、前記クラッド層は、前記機能層とは異なる組成を有する、ことを特徴とする。
【0019】
(7) (1)乃至(6)のいずれか一に記載の半導体光増幅器集積レーザにおいて、前記半導体レーザ発振器部と前記半導体光増幅器部に電流を注入するための一の電極をさらに有する、ことを特徴とする。
【0020】
(8) (1)乃至(7)のいずれか一に記載の半導体光増幅器集積レーザにおいて、前記半導体光増幅器部は、前記半導体レーザ発振器部と接する近端と、前記半導体レーザ発振器部から最も離れた遠端を有し、当該半導体光増幅器集積レーザの平面視において、前記遠端の幅は、前記近端の幅の1.2倍以上又は0.8倍以下である、ことを特徴とする。
【0021】
(9) (1)乃至(8)のいずれか一に記載の半導体光増幅器集積レーザにおいて、前記半導体レーザ発振器部によって発振される前記レーザ光を変調させる変調器部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0022】
(10) (1)乃至(9)のいずれか一に記載の半導体光増幅器集積レーザであって、前記クラッド層はp型である、ことを特徴とする。
【0023】
(11) 本願の第2態様による半導体光増幅器集積レーザは、第1導電型を有する基板と、前記基板の第1面上に形成された活性層と、前記活性層上に形成された第2導電型のクラッド層と、前記クラッド層内に形成されて前記活性層から離間する一の共通の機能層と、前記基板の第1面とは反対の第2面上に設けられた第1導電型の電極と、前記クラッド層上に設けられた第2導電型の電極と、を備える。当該半導体光増幅器集積レーザは、第1領域と、該第1領域と光学的に接続する第2領域を有し、前記機能層は、前記第1領域内において、前記活性層の利得帯域内の特定の波長を有する光を反射させる第1部分と、前記第2領域内において、前記活性層の利得帯域内の特定の波長を有する光を透過させる第2部分を有する、ことを特徴とする。
【0024】
(12) (11)に記載の半導体光増幅器集積レーザにおいて、前記一の共通の機能層は、層が形成される領域と、層が形成されない領域を含み、前記一の共通の機能層の平面視において、前記第1部分における層が形成される領域の面積と層が形成されない領域の面積との割合と、前記第2部分における層が形成される領域の面積と層が形成されない領域の面積との割合との差は10%以内である、ことを特徴とする。
【0025】
(13) (11)又は(12)に記載の半導体光増幅器集積レーザにおいて、前記第1部分は、前記活性層の利得帯域内の特定の波長を有する光を反射させる第1回折格子構造を有し、前記第2部分は、前記活性層の利得帯域内の特定の波長を有する光を透過させる第2回折格子構造を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、半導体光増幅器と半導体レーザを集積した半導体光増幅器集積レーザにおいて、光学特性と信頼性に優れた素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態による半導体光増幅器集積レーザの平面図の例である。
図2図1の半導体光増幅器集積レーザのA-A’線に沿う概略断面図である。
図3図1の半導体光増幅器集積レーザのB-B’線に沿う概略断面図である。
図4図1の半導体光増幅器集積レーザのC-C’線に沿う概略断面図である。
図5】変形例による半導体光増幅器集積レーザの平面図の例である。
図6】第2実施形態による半導体光増幅器集積レーザの平面図の例である。
図7図6の半導体光増幅器集積レーザの半導体光増幅器部の拡大平面図である。
図8】変調器を集積した半導体光増幅器集積レーザの平面図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、半導体光増幅器集積レーザの平面図を表す。図2図1のA-A’線に沿う概略断面図を表す。図3図1のB-B’線に沿う概略断面図を表し、図4図1のC-C’線に沿う概略断面図を表す。
【0029】
図1を参照すると、半導体光増幅器集積レーザ100は、所定の波長の光をレーザ発振させる半導体レーザ発振器部20と、前記のレーザ発振した光を増幅させる半導体光増幅器部10とからなる。本実施形態では、半導体レーザ発振器部20はDFBレーザ(DFB-LD)である。
【0030】
半導体レーザ発振器部20と半導体光増幅器部10は一の共通のp-i-n構造を有する。「一の共通のp-i-n構造」とは、本願においては、同一材料で構成され、かつ、同一プロセスで形成されたp-i-n構造を意味する。半導体レーザ発振器部20と半導体光増幅器部10は一の共通の構造を有するため、半導体レーザ発振器部20の利得帯域と半導体光増幅器部10の利得帯域は略同一である。ここで利得帯域とは、利得スペクトルの波長範囲を示す。半導体光増幅器集積レーザ100はまた、レーザ出射面に設けられる低反射端面コーティング膜11と、前記レーザ出射面とは反対側の面に高反射端面コーティング膜12を有する。本実施形態では、半導体レーザ発振器部20の発振波長は1.3μm帯だが、1.55μm帯であってもよい。
【0031】
図3,4に示されているように、半導体光増幅器集積レーザ100は、メサ部1と該メサ部1を両側から埋め込む埋め込み層27を有する。半導体光増幅器集積レーザ100は、埋め込み層27の一部を覆う絶縁膜26と、メサ部1と絶縁膜26の一部を覆う電極13をさらに有する。メサ部1を画定する実線はメサ部1の輪郭を表す。
【0032】
図2を参照すると、半導体光増幅器集積レーザ100は、第1導電型の基板21と、該第1導電型基板21上に設けられるp-i-n構造を有する。本実施形態では、p-i-n構造は、第1導電型のSCH層22、活性層23、第2導電型のSCH層24、及び第2導電型のクラッド層25を有するが、これに限定されない。本実施形態では、第1導電型はn型で、第2導電型はp型で、第1導電型の基板21はn-InPである。また第1導電型のSCH層22はn-InGaAsPで、活性層23はInGaAsP又はInGaAlAsで構成された多重量子井戸で、第2導電型のSCH層24はp-InGaAsPで、第2導電型のクラッド層25はp-InPである。また本実施形態では、第2導電型ドーパントはZnである。また本実施形態では、活性層23内のInGaAsP又はInGaAlAsの組成は、1.3μmで発光するように調整されるが、他の波長で発光させる場合には、その波長で発光するように調整される。
【0033】
半導体光増幅器集積レーザ100はさらに、第1導電型の基板21の下面に設けられる第1導電型の電極14と、p-i-n構造上に設けられる第2導電型の電極13を有する。電極13,14は、外部電源(不図示)からの電流を半導体光増幅器集積レーザ100(半導体レーザ発振器部20と半導体光増幅器部10)へ注入するのに用いられる。電極13,14はそれぞれ、一の部材で構成される。つまり、半導体光増幅器部10と半導体レーザ発振器部20とは共通の電極により通電がなされる。本実施形態では、基板21とSCH層22がn型でSCH層24とクラッド層25がp型だが、p型とn型は反対であってもよい。
【0034】
半導体光増幅器集積レーザ100はさらに、p-i-n構造のp型クラッド層25内に一の共通の機能層2を含む。機能層2は、p-i-n構造の活性層23から離間する。機能層2は第1部分4と第2部分3で構成される。機能層2はp型クラッド層25とは異なる組成で構成される。ここでは機能層2はInGaAsPで構成される。なお、後述するように機能層2は成膜領域と非成膜領域で構成され、成膜領域がInGaAsPであり、非成膜領域はp型クラッド層25と同一のp-InPである。
【0035】
図1,2に示されているように、第1部分4と第2部分3は開口を有する。換言すると、第1部分4と第2部分3は、平面視において、層が成膜された領域(以降、「成膜領域」と記載する。)と層が成膜されていない領域(以降、「非成膜領域」と記載する。)を含む。第1部分4では、p-i-n構造の利得帯域内の特定の波長の光を反射するように周期的に成膜領域と非成膜領域が設けられる(第1回折格子構造)。本回折格子構造を有することで半導体レーザ発振器部20は単一の発振波長(DFB波長)のレーザ光を発振する。なお一般的には、利得帯域のピーク付近の波長で発振するような回折格子構造が設けられる。本実施形態では、第1部分4は、フローティング型回折格子で、1.3μmで発振するように200nmの回折格子周期を有し、デューティ比は50%である。すなわち第1部分4の平面視において、成膜領域の面積と非成膜領域の面積比は1:1である。
【0036】
他方第2部分3には、p-i-n構造の利得帯域内の波長の光を反射しない(利得帯域の光を透過する)ように開口が設けられる。つまり第2部分3では、p-i-n構造の利得帯域内の波長の光を反射しない(透過する)ように成膜領域と非成膜領域が設けられる(第2回折格子構造)。第1部分4と第2部分3では、成膜領域の面積と非成膜領域の面積との比(開口比)は略同一であることが好ましい。すなわち機能層2の平面視において、第1部分4の成膜領域の合計面積と非成膜領域との合計面積の割合と、第2部分3の成膜領域の合計面積と非成膜領域の合計面積との割合は略同一であることが好ましい。本実施形態では、機能層2の平面視において、前記第1部分4における成膜領域の合計面積と非成膜領域の合計面積との割合と、前記第2部分3における成膜領域の合計面積と非成膜領域の合計面積との割合との差は10%以内である。なお、ここでは便宜上第2部分3の構造を回折格子と呼称するが、上述したように利得帯域内の波長の光は反射しない。
【0037】
本実施形態では、第2部分3にも周期的に成膜領域と非成膜領域が設けられるが、半導体光増幅器集積レーザ100のp-i-n構造の利得帯域内の波長の光を反射しないように構成される。また本実施形態では、第2部分3は成膜領域と非成膜領域が同一の周期で交互に配置される構造(回折格子構造)を有するが、第2部分3の成膜領域と非成膜領域は周期的に設けられなくてもよい(図5参照)。第2部分3が成膜領域と非成膜領域が同一の周期で交互に配置される構造を有する場合では、活性層23を構成するInGaAsP又はInGaAlAs等の利得スペクトルの波長範囲を考慮して、第1部分4のデューティ比は、第2部分3のデューティ比の1.1倍以上又は0.9倍以下であってよい。
【0038】
回折格子として機能する第1部分4を備える半導体レーザ発振器部20内はたとえば、DFB-LD全体にわたって同一周期の回折格子を形成する均一回折格子型DFB-LD、回折格子の途中に回折格子位相πの位相シフトを導入したλ/4シフトDFB-LD、回折格子周期をわずかに変えることでλ/4と等価となる位相シフトを実現したCPM(Corrugation Pitch Modulated)-DFB-LD,λ/4シフトを複数の位相シフトで実現したマルチ位相シフトDFB-LD等であってよい。
【0039】
また第2部分3は、周期性を有する場合には、DFB波長の光を反射しない周期である必要がある。それに加えて第2部分3は、意図しない波長でDFBモード発振を抑制するためには活性層23が利得を持つ波長帯全体にわたって反射のないような周期、回折構造であることが望ましい。
【0040】
図3を参照すると、メサ部1は、第1導電型の基板21と、該第1導電型の基板21上に設けられるp-i-n構造を有する。本実施形態では、p-i-n構造は、第1導電型のSCH層22、活性層23、第2導電型のSCH層24、及び第2導電型のクラッド層25を有するが、これに限定されない。メサ部1は、p-i-n構造の第2導電型の半導体層内に形成される第1部分4をさらに含む。第1部分4は、活性層23の発振波長の光を反射する回折格子として機能する。
【0041】
図4を参照すると、メサ部1は、第1導電型の基板21と、該第1導電型の基板21上に設けられるp-i-n構造を有する。本実施形態では、p-i-n構造は、第1導電型のSCH層22、活性層23、第2導電型のSCH層24、及び第2導電型のクラッド層25を有するが、これに限定されない。メサ部1は、p-i-n構造のp型半導体層内に形成される第2部分3をさらに含む。第2部分3は、活性層23の利得帯域内の波長の光を反射しない(透過させる)。
【0042】
図5は、変形例による半導体光増幅器集積レーザの平面図の例を表す。図5に示された変形例は、第2部分3を除いて図1乃至4に示された実施形態と同一である。より詳細には、図5では、第2部分3は成膜領域と非成膜領域が交互に同一の周期で配置される構造を構成していない。すなわち第2部分3内の成膜領域と非成膜領域は周期的に設けられていない。また本変形例では、成膜領域と非成膜領域の各々の面積は不均一であってよい。しかし第2部分3の開口比と第1部分4の開口比との差は、平面視において10%以内である。
【0043】
前述したように、半導体光増幅器部10と半導体レーザ発振器部20は、機能層2を除き一の共通する構造を有する。そのため半導体光増幅器部10と半導体レーザ発振器部20では、利得帯域が略同一となる。また電極13,14はそれぞれ一の部材で構成されているため、半導体光増幅器部10と半導体レーザ発振器部20には同一の電圧が印加される。半導体光増幅器部10と半導体レーザ発振器部20に電圧が印加されることで、半導体光増幅器部10と半導体レーザ発振器部20にはキャリアが注入される。キャリア注入後、半導体光増幅器部10と半導体レーザ発振器部20は、発光再結合を生じさせる。
【0044】
本願の半導体光増幅器集積レーザは、半導体レーザ発振器部20内に回折格子層として機能する第1部分4を備え、半導体光増幅器部10内に第2部分3を備える。第1部分4は利得帯域内の特定の波長に対して高い反射率を有するため、半導体レーザ発振器部20は単一波長の光をレーザ発振させる。他方第2部分3は、利得帯域内の波長の光を反射させない(ブラッグ反射を起こさない)ため、前記DFB光を含む利得帯域内の波長の光を帰還させない。そのため半導体光増幅器部10は半導体レーザ発振器部20から出力されるレーザ光(DFB光)を増幅させる。
【0045】
第1部分4と第2部分3の開口比が略同一であることで、前記半導体レーザ発振器部と前記半導体光増幅器部とで第2導電型のドーパントの拡散プロファイルは製造ばらつきの範囲内で実質的に同一となる。そのため、半導体レーザ発振器部20と半導体光増幅器部10の両方に対して同時に第2導電型のドーパントの拡散プロファイルを最適化することが可能となる。その結果本願の半導体光増幅器集積レーザの特性の向上が実現される。
【0046】
また第1部分4と第2部分3の開口比が略同一であることで、半導体レーザ発振器部20と半導体光増幅器部10の各々の活性層23へ注入される電流の密度が製造ばらつきの範囲内で実質的に同一になる。そのため、半導体光増幅器部10が第2部分を備えない半導体光増幅器集積レーザと比較して、半導体レーザ発振器部20と半導体光増幅器部10の電流密度の差を小さくすることができる。その結果、本願の半導体光増幅器集積レーザの動作信頼性は、半導体光増幅器部10が第2部分を備えない従来の半導体光増幅器集積レーザよりも向上する。
【0047】
図6は、第2実施形態による半導体光増幅器集積レーザの平面図を表している。図7は、図6の半導体光増幅器集積レーザの半導体光増幅器部の拡大平面図を表している。図6に示された半導体光増幅器集積レーザは、メサ部1’の幅が変化する点以外は図1の半導体光増幅器集積レーザと同一である。図1乃至図5に示された実施形態と同様に、メサ部1’を画定する実線はメサ部1’の輪郭を表し、メサ部1’の下には一の共通のp-i-n構造が形成されている。
【0048】
メサ部1’は、領域10内では、領域20と接する近端と、低反射端面コーティング膜11と接する遠端を有する。図7に示されているように、遠端のメサストライプ幅W1は近端のメサストライプ幅W2よりも狭い。図示されているように、メサ部1’のメサストライプ幅は、領域10内では、近端から遠端に向かって、徐々に細くなっている。そのためメサ部1’は、スポットサイズ変換器(Spot Size Converter:SSC)としての機能を有する。
【0049】
メサ部1’の遠端の幅を近端の幅よりも狭くすることで、活性層を中心として分布している光子分布が相対的に広がり、FFP(Far Field Pattern)を狭窄化することができる。本実施形態では、当該半導体光増幅器集積レーザの平面視において、遠端の幅は、近端の幅の0.8倍以下である。逆に、近端の幅より遠端の幅を広くしても構わない。例えば、半導体光増幅器集積レーザの平面視において、遠端の幅は近端の幅の1.2倍以上である。
【0050】
図8は、変調器を集積した半導体光増幅器集積レーザの例の平面図を表している。図8に示された半導体光増幅器集積レーザは、半導体変調器部30を備える点以外は図1の半導体光増幅器集積レーザと同一である。当該半導体光増幅器集積レーザは、所定の波長の光をレーザ発振させる半導体レーザ発振器部20と、前記のレーザ発振した光を増幅させる半導体光増幅器部10と、増幅したレーザ光を変調させる半導体変調器部30からなる。半導体変調器部30は電極40を備える。半導体変調器部30は、電極40に電圧(変調信号)を印加することで、半導体光増幅器部10から出力される光を変調し、低反射端面コーティング膜11が形成された出射面より変調光を出力する。半導体変調器部30は、電界吸収型変調器であっても、MZ型変調器であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,1’ メサ部、2 機能層、11 低反射端面コーティング膜、12 高反射端面コーティング膜、13 第2導電型の電極、14 第1導電型の電極、20 半導体レーザ発振器部、21 第1導電型の基板、22 第1導電型のSCH層、23 活性層、24 第2導電型のSCH層、25 第2導電型のクラッド層、26 絶縁膜、27 埋め込み層、30 半導体変調器部、40 電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8