(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】設計方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240325BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20240325BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20240325BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240325BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
G06F30/10 100
G06Q50/08
E04B1/00 ESW
(21)【出願番号】P 2020086862
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-03-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月28日 鉄構技術(株式会社鋼構造出版発行)第32巻、通巻379号の58~59頁にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 悠磨
(72)【発明者】
【氏名】和多田 遼
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 隆
(72)【発明者】
【氏名】木下 拓也
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-153210(JP,A)
【文献】特開2016-206832(JP,A)
【文献】特開2007-199868(JP,A)
【文献】特開2017-111826(JP,A)
【文献】特開2014-149818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
G06Q 50/04
G06Q 50/08
E04B 1/00 - 1/99
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度法に基づいたトポロジー最適化により設計対象の構造物の部材の配置を決定するための設計方法であって、
設計対象の構造物の設計情報に基づいて、前記構造物の応力解析を実行し、
前記応力解析の結果に応じて、前記設計情報の各部材の仕様を表すパラメータを変更し、
前記構造物を表す設計情報の各部材の存在に対するペナルティであって、かつユーザの意図に応じて前記構造物の各箇所に対して予め設定されたペナルティに基づいて、大きい前記ペナルティが付与された箇所の前記部材ほど前記部材が存在しなくなるように、前記設計情報の各部材の前記パラメータを変更し、
予め設定された繰り返し条件を満たすまで、前記応力解析の実行及び前記パラメータの変更を繰り返すことにより各部材のトポロジー最適化を行い、前記設計対象の構造物の設計情報を生成する、
処理をコンピュータが実行する設計方法。
【請求項2】
前記部材の仕様を表すパラメータは、前記部材の断面である、
請求項1に記載の設計方法。
【請求項3】
前記構造物の各箇所に付与されるペナルティは、前記設計対象の構造物の施工性に応じてユーザにより予め設定されるペナルティである、
請求項1又は請求項2に記載の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体トラスの部材の配置を最適化する技術が知られている。例えば、立体トラスの部材の断面積が0となって不要とみなすことができる部材を除去して、立体トラスの最適なトポロジーを得る技術が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
また、典型的な部材の配置の組合せによりトラスのトポロジーを最適化する技術が知られている(例えば、非特許文献2を参照)。非特許文献2の技術では、トラスの部材配置のパターンを限定し、典型的なパターンの混合形式として部材を配置する。
【0004】
また、建物の部材を配置する際に、耐震壁を平面および高さ方向に適切に配置して、建設コストに関する壁量を最小化する問題を設定することが知られている(例えば、非特許文献3を参照)。
【0005】
また、骨組構造を最適化する技術が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許5263470号公報
【文献】特開2001-134628号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】大崎 純、加藤 直樹、「立体トラスの部材配置最適化」、日本オペレーションズ・リサーチ学会、2001年7月号、343~348頁
【文献】和多田 遼、大崎 純、「典型的部材配置の組合せによるトラスのトポロジー最適化」、日本建築学会構造系論文集、2009年5月、841~847頁
【文献】高田 豊文、小浜 芳朗、「離散的最適化手法を適用した耐震壁の配置計画」、日本オペレーションズ・リサーチ学会、2001年7月号、349~354頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記非特許文献1~3及び上記特許文献1、2に開示されているように、従来のトポロジー最適化では、力学的条件に基づき最適な部材の配置を求める。
【0009】
一方、実際の設計においては、設計者は力学的条件に加えて生産性及びデザイン等、力学的条件とは異なる観点についても考慮することが一般的である。しかし、上記非特許文献1~3及び上記特許文献1、2に開示されている技術では、設計者であるユーザの観点を考慮したトポロジー最適化はなされていない。このため、従来技術は、設計者であるユーザの意図を考慮して構造物の各部材の配置を決定することができない、という課題がある。
【0010】
本発明は上記事実に鑑みて、設計者であるユーザの意図に応じて、構造物の各部材の配置を自動的に決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る設計方法は、密度法に基づいたトポロジー最適化により設計対象の構造物の部材の配置を決定するための設計方法であって、設計対象の構造物の設計情報に基づいて、前記構造物の応力解析を実行し、前記応力解析の結果に応じて、前記設計情報の各部材の仕様を表すパラメータを変更し、前記構造物を表す設計情報の各部材の存在に対するペナルティであって、かつユーザの意図に応じて前記構造物の各箇所に対して予め設定されたペナルティに基づいて、大きい前記ペナルティが付与された箇所の前記部材ほど前記部材が存在しなくなるように、前記設計情報の各部材の前記パラメータを変更し、予め設定された繰り返し条件を満たすまで、前記応力解析の実行及び前記パラメータの変更を繰り返すことにより各部材のトポロジー最適化を行い、前記設計対象の構造物の設計情報を生成する、処理をコンピュータが実行する設計方法である。本発明に係る設計方法によれば、設計者であるユーザの意図に応じて構造物の各部材の配置を自動的に決定することができる。
【0012】
本発明の前記部材の仕様を表すパラメータは、前記部材の断面であるようにすることができる。これにより、構造物の部材の断面を自動的に決定することができる。また、部材断面がある一定以下となった場合に部材を削除することで構造力学上必要性の小さい部材を取り除き、部材配置を決定することができる。
【0013】
また、本発明の前記構造物の各箇所に付与されるペナルティは、前記設計対象の構造物の施工性に応じてユーザにより予め設定されるペナルティであるようにすることができる。これにより、構造物の施工性に応じて部材の配置を決定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設計者であるユーザの意図に応じて、構造物の各部材の配置を自動的に決定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る設計装置を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の概要を説明するための図である。
【
図3】本実施形態のペナルティを説明するための図である。
【
図4】構造物の隅部に配置されるブレースの一例を示す図である。
【
図5】応力解析結果に応じたブレースの板厚の変更を説明するための図である。
【
図6】ペナルティに応じたブレースの板厚の変更を説明するための図である。
【
図7】本実施形態に係る設計装置の設計処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
<本実施形態の設計装置の構成>
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る設計装置100の構成の一例を示すブロック図である。設計装置100は、機能的には、
図1に示されるように、操作部10と、コンピュータ20と、表示部30とを含んだ構成で表すことができる。
【0019】
本実施形態の設計装置100は、密度法に基づいたトポロジー最適化により、設計対象の構造物の部材の配置を決定する。なお、密度法とはトポロジー最適化手法の一例であり、既知の手法である。また、本実施形態のトポロジー最適化の手法は、既知の設計手法である全応力設計に基づいている。なお、本実施形態では、部材がブレースである場合を例に説明する。また、本実施形態では、部材の仕様を表すパラメータがブレースの断面を表す板厚である場合を例に説明する。
【0020】
図2に、本実施形態の概要を説明するための図を示す。本実施形態の設計装置100は、
図2(A)に示されるように、構造物を表す設計情報Mに対して、仮想的な部材の一例であるブレースBを配置する。
図2(A)の例では、構造物の設計情報Mのうち、ブレースが配置可能な全ての箇所に仮想的なブレースBが配置される。
【0021】
そして、本実施形態の設計装置100は、構造物を表す設計情報Mに対して既知の応力解析を行い、その応力解析結果に応じてブレースBの板厚を更新する。さらに、本実施形態の設計装置100は、構造物の各箇所に対して予め付与されたペナルティに応じてブレースBの板厚を更新する。このペナルティは、例えば設計者であるユーザによって予め設定される。
【0022】
例えば、施工性の観点からブレースの配置を極力無くしたいといった箇所が構造物には存在する。または、例えば、デザインの観点からブレースの配置を極力無くしたいといった箇所も構造物には存在する。構造物のうちのこのような箇所には、ユーザによって高いペナルティが予め付与される。
【0023】
本実施形態の設計装置100は、大きいペナルティが付与された箇所ほど、そのブレースが存在しなくなるように各ブレースの板厚を変更する。そして、設計装置100は、応力解析結果に応じたブレースの板厚の変更とペナルティに応じたブレースの板厚の変更とを繰り返す。このようにしてブレースの板厚が変更されることにより、構造力学上必要性の低いブレースは存在しなくなるが、その過程においてペナルティの高く設定されたブレースは低く設定されたブレースよりも存在しにくい特徴を持つ。その結果、例えば、
図2(B)に示されるように、ブレースが配置されることが好ましくない箇所にはブレースは存在しなくなり、ブレースB’のみが設計情報Mに残る。これにより、ユーザの意図が反映された設計情報Mが自動的に生成される。
【0024】
以下、具体的に説明する。
【0025】
操作部10は、設計者であるユーザから入力された構造物を表す設計情報(以下、単に「設計情報」と称する。)を受け付ける。また、操作部10は、設計情報の各部材の存在に対する、ペナルティの情報を受け付ける。このペナルティの情報は、ユーザの意図に応じて各部材に対して予め設定される情報である。ペナルティの詳細については後述する。操作部10は、例えばキーボードやマウス等である。
【0026】
コンピュータ20は、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、ネットワークインタフェース等を含んで構成されている。コンピュータ20は、機能的には、
図1に示すように、設計情報記憶部21と、ペナルティ付与部22と、応力解析部23と、設計情報生成部24と、判定部25とを備えている。
【0027】
設計情報記憶部21には、操作部10により受け付けられた設計情報が格納される。
【0028】
ペナルティ付与部22は、操作部10により受け付けられたペナルティの情報を取得する。そして、ペナルティ付与部22は、設計情報記憶部21に格納された設計情報の所定の箇所にペナルティを付与する。
【0029】
図3に、ペナルティの付与を説明するための図を示す。
図3に示されるように、ペナルティ付与部22は、設計情報Mの各箇所にペナルティP1、P2、P3を付与する。
図3のペナルティは、設計対象の構造物の施工性に応じてユーザにより予め設定されるペナルティの一例である。
【0030】
図4に示されるように、上記
図3の構造物では、隅部の縦材Vの軸は45°回転して配置される。このため、
図4に示されるように、その箇所に設置されるブレースBは納まりが複雑になる。そのため、設計者であるユーザの意図は、ブレースの配置計画にあたってはなるべく構造物の隅部への配置を避けたいというものであったとする。この場合、設計者であるユーザは、上記
図3に示されるように、構造物の隅部に対して大きいペナルティP1、P2、P3を付与する。これにより、ペナルティP1、P2、P3が付与された箇所のブレースはトポロジー最適化の過程で消えやすくなる。
【0031】
そして、ペナルティ付与部22は、ペナルティが付与された設計情報を設計情報記憶部21に格納する。設計情報記憶部21にペナルティが付与された設計情報が格納されると、後述する応力解析部23及び設計情報生成部24によってトポロジー最適化が実行される。
【0032】
応力解析部23は、設計情報記憶部21に格納された設計情報に基づいて、構造物の応力解析を実行する。なお、本実施形態では、既知の応力解析手法を用いる。
【0033】
設計情報生成部24は、応力解析部23による応力解析の結果に応じて、設計情報の各ブレースの板厚を変更する。
【0034】
図5に、ブレースの板厚の変更を説明するための図を示す。
図5に示されるように、応力解析部23による応力解析が実行されたときの板厚がt
[k]であったとする。この場合、ブレースにかかる応力に応じて板厚が変更される。具体的には、応力度が大きいブレースは板厚が大きくなるように変更される。また、応力度が小さいブレースは板厚が小さくなるように変更される。このように応力解析結果に応じて変更されたブレースの板厚をt’
[k]とする。
【0035】
次に、設計情報生成部24は、設計情報の各箇所に付与されたペナルティに基づいて、大きいペナルティが付与された箇所のブレースほどブレースが存在しなくなるように、設計情報の各ブレースの板厚を変更する。ここで、ブレースが存在しなくなるようにとは、ブレースの板厚を小さくすることに対応する。なお、設計情報生成部24は、ブレースの板厚が予め設定された閾値以下となった場合に、ブレースは存在しないものとして処理する。
【0036】
図6に、ペナルティによるブレースの板厚の変更を説明するための図を示す。設計情報生成部24は、
図6に示されるようなグラフの関係を用いてブレースの板厚を変更する。
図6に示されるグラフの横軸は、応力解析結果に応じて更新されたブレースの板厚t’
[k]であり、縦軸は次ステップの板厚t
[k+1]である。このため、ペナルティに応じた板厚の更新によって、ブレースの板厚t’
[k]が板厚t
[k+1]へ変更される。
【0037】
図6のグラフG1に示されるように、ペナルティに応じた1回目の板厚の更新を表す第1ステップでは、予め設定された上限板厚を超えたブレースの板厚を上限値に変更する補正がなされる(
図6では「Cut off」と表記)。
【0038】
図6のグラフG2,G3に示されるように、ペナルティに応じた2回目の板厚の更新を表す第2ステップ以降では、板厚の小さいブレースほど更に板厚が小さくなるように板厚の変更がなされる。
【0039】
具体的には、小さいペナルティ(
図6では「Small penalty」と表記)が付与された箇所のブレースの板厚は、グラフG2に示されるような関係により板厚の変更がなされる。なお、繰り返しステップが進むごとに矢印X1のようにグラフG2が変化する。具体的には、板厚が小さいブレースの板厚ほど板厚がより小さくなるようにグラフG2が更新される。
【0040】
一方、大きいペナルティ(
図6では「Large penalty」と表記)が付与された箇所のブレースの板厚は、グラフG3に示されるような関係により板厚の変更がなされる。板厚が小さいブレースの板厚ほど板厚がより小さくなるようにグラフG3が更新される点は、グラフG2と同様である。しかし、大きいペナルティに対応するグラフG3は、小さいペナルティに対応するグラフG2に比べ板厚がより小さく変更されるように、繰り返しステップが進むごとに矢印X2のようにグラフG3が変化する。
【0041】
このため、大きいペナルティが付与された箇所のブレースの板厚は、小さいペナルティが付与された箇所のブレースの板厚に比べ、より小さくなるように更新される。この結果、例えば、大きいペナルティが付与された箇所のブレースは存在しなくなり、ユーザが望むブレースの配置が自動的に実現される。
【0042】
判定部25は、予め設定された繰り返し条件が満たされたか否かを判定する。そして、判定部25は、繰り返し条件が満たされた場合に設計情報を出力する。繰り返し条件としては、例えば、予め設定した繰り返し回数に達したかといった条件が設定される。または、ペナルティが付与された箇所の特定のブレースの板厚が所定の閾値以下であるかといった条件が設定される。
【0043】
繰り返し条件が満たされるまで、応力解析部23による応力解析の実行及び設計情報生成部24によるパラメータの変更が繰り返される。繰り返し条件が満たされた場合には、応力解析部23による応力解析の実行及び設計情報生成部24によるパラメータの変更は終了する。これにより、構造物の各部材のトポロジー最適化がなされ、結果としてユーザの意図が反映されたブレースの配置が実現される。
【0044】
表示部30は、判定部25により出力された設計情報を表示する。表示部30は、例えば、ディスプレイ等によって実現される。ユーザである設計者は、表示部30に表示された設計情報を確認する。そして、設計情報にユーザの意図が反映されているか否かを確認する。設計情報にユーザの意図が反映されていない場合には、設計情報にペナルティを付与し直すなどして、再度、ブレースのトポロジー最適化処理を実行する。
【0045】
<設計装置の作用>
【0046】
次に、
図7を参照して、設計装置100の作用を説明する。設計装置100のコンピュータ20は、操作部10により設計情報を受け付けると、設計情報記憶部21に格納する。また、設計装置100のコンピュータ20のペナルティ付与部22は、操作部10によりペナルティの情報を受け付けると、設計情報記憶部21に格納された設計情報の各箇所にペナルティを付与する。
【0047】
そして、設計装置100のコンピュータ20は、設計処理開始の指示信号を受け付けると、
図7に示す設計処理ルーチンを実行する。
【0048】
<設計処理ルーチン>
【0049】
ステップS100において、応力解析部23は、ペナルティが付与された設計情報を設計情報記憶部21から読み出す。
【0050】
ステップS102において、応力解析部23は、上記ステップS100で読み出された設計情報に対して既知の応力解析を実行する。
【0051】
ステップS104において、設計情報生成部24は、上記ステップS102で得られた応力解析の結果に応じて、設計情報の各ブレースの板厚を変更する。具体的には、設計情報生成部24は、応力度が大きいブレースは板厚が大きくなるように変更する。また、設計情報生成部24は、応力度が小さいブレースは板厚が小さくなるように変更する。
【0052】
ステップS105において、設計情報生成部24は、上記ステップS100で読み出された設計情報の各箇所に付与されたペナルティと本処理の繰り返し回数とに応じて、ブレースの板厚の更新に用いるグラフ(例えば、
図6に示されるようなグラフG2,G3)を更新する。大きいペナルティが付与された箇所のブレースの板厚は、小さいペナルティが付与された箇所のブレースの板厚に比べより小さく更新されるように、グラフが更新される。
【0053】
ステップS106において、設計情報生成部24は、上記ステップS100で読み出された設計情報の各箇所に付与されたペナルティと上記ステップS105で更新されたグラフとに基づいて、大きいペナルティが付与された箇所のブレースほどブレースが存在しなくなるように、設計情報の各ブレースの板厚を変更する。
【0054】
ステップS108において、判定部25は、繰り返し条件が満たされたか否かを判定する。繰り返し条件が満たされた場合には、ステップS110へ進む。一方、繰り返し条件が満たされていない場合には、ステップS102へ進む。
【0055】
ステップS110において、判定部25は、上記ステップS106によりブレースの板厚が更新された設計情報を結果として出力する。
【0056】
表示部30は、判定部25により出力された設計情報を表示する。ユーザである設計者は、表示部30に表示された設計情報を確認する。そして、設計情報にユーザの意図が反映されているか否かを確認する。設計情報にユーザの意図が反映されていない場合には、設計情報にペナルティを付与し直すなどして、再度、上記の設計処理を実行する。
【0057】
以上詳細に説明したように、本実施形態の設計装置は、設計対象の構造物の設計情報に基づいて構造物の応力解析を実行し、応力解析の結果に応じて設計情報の各部材の仕様を表すパラメータの一例である、ブレースの板厚を変更する。そして、設計装置は、構造物を表す設計情報の各ブレースの存在に対するペナルティであって、かつユーザの意図に応じて構造物の各箇所に対して予め設定されたペナルティに基づいて、大きいペナルティが付与された箇所のブレースほど当該ブレースが存在しなくなるように、設計情報の各ブレースの板厚を変更する。そして、設計装置は、予め設定された繰り返し条件を満たすまで、応力解析の実行及びパラメータの更新を繰り返すことにより各ブレースのトポロジー最適化を行い、設計対象の構造物の設計情報を生成する。これにより、設計者であるユーザの意図に応じて構造物の各部材の配置を自動的に決定することができる。
【0058】
また、本実施形態では構造物の設計情報に対して範囲分けが行われ、それぞれの範囲にブレースを「どの程度配置したくないか」に関するユーザの意図が反映される。ユーザの意図はペナルティとして構造物の設計情報に付与され、ユーザが望む設計情報が自動的に生成される。なお、本実施形態では、基本的には構造物の隅部へのブレースの配置を避けつつも、力学的条件により隅部へのブレースが必要な場合には、隅部であってもブレースが配置される。
【0059】
従来技術では、トポロジー最適化によって構造物の設計情報を最適化する際には、ユーザである設計者の考え(例えば、生産性及びデザイン等に関する観点からの考え)を反映することができない。このため、従来技術を用いた場合には、トポロジー最適化の結果をそのまま最終の設計結果として利用することができず、トポロジー最適化の結果を設計者が補正したりする必要があった。
【0060】
これに対し、本実施形態ではトポロジー最適化に際して設計者の考えを設計情報に対して予め反映することできるため、トポロジー最適化の結果をそのまま設計結果として利用することができる。また、仮に設計変更があったとしても、ペナルティを付与し直した後に、再度トポロジー最適化を実施することにより、設計者の考えが反映された設計情報を得ることができる。これにより、設計工数の削減及び合理的な計画によるコスト低減が期待される。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、構造物の部材がブレースである場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。構造物の部材は、どのようなものであってもよい。また、同様に、本実施形態では、部材の仕様を表すパラメータがブレースの板厚である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。部材の仕様を表すパラメータは、どのようなものであってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、構造物の各箇所に付与されるペナルティは、設計対象の構造物の施工性に応じてユーザにより設定されるペナルティである場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、デザイン性に応じてユーザにより設定されたペナルティであってもよい。例えば、鉄骨製作が難しくなる急角度でのブレースの配置、配筋が難しくなる角度の部材の配置、及びデザインに影響のある建物開口部への柱部材の配置等が必要な構造物の各箇所にペナルティが付与されてもよい。
【0064】
また、上記では本発明に係るプログラムが記憶部(図示省略)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 操作部
20 コンピュータ
21 設計情報記憶部
22 ペナルティ付与部
23 応力解析部
24 設計情報生成部
25 判定部
30 表示部
100 設計装置