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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】吹出しボックス
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20240325BHJP
   F16L 59/22 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
F24F13/02 D
F24F13/02 H
F16L59/22
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020127767
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024918
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上運天 昭司
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-251126(JP,A)
【文献】特許第5701594(JP,B2)
【文献】特許第6167780(JP,B2)
【文献】特開2020-143798(JP,A)
【文献】特開2019-100636(JP,A)
【文献】特開平9-318118(JP,A)
【文献】特開昭62-237232(JP,A)
【文献】実開平7-35944(JP,U)
【文献】特開2020-85392(JP,A)
【文献】特開2018-179393(JP,A)
【文献】特開平8-5140(JP,A)
【文献】特開2009-198014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
F16L 59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に設けられた流入口、及び、当該一面に隣接する他の一面に設けられた吹出し口を有する箱状の筐体と、
一面が前記筐体における他の一面の内壁に対向し、前記吹出し口に対向する部分に当該吹出し口に連通する第1の開口部を有する第1の断熱材と、
一面が前記第1の断熱材における他面に対向し、前記第1の開口部を覆う第1の整流メッシュと、
前記第1の断熱材と前記筐体との間に配置され、前記第1の開口部を覆う第2の整流メッシュと、
前記第1の整流メッシュにおける他面に対向し、前記第1の開口部のうちの前記流入口から遠い側を遮蔽する遮蔽板と
を備えた吹出しボックス。
【請求項2】
前記第1の断熱材は、グラスウール又はロックウールである
ことを特徴とする請求項1記載の吹出しボックス。
【請求項3】
前記第1の開口部の内周面に取付けられ、前記第1の断熱材を構成する繊維の飛散を防止する第1の飛散防止材を備えた
ことを特徴とする請求項2記載の吹出しボックス。
【請求項4】
前記第2の整流メッシュと前記筐体との間に配置され、前記吹出し口に対向する部分に当該吹出し口と同径である第2の開口部を有する第2の断熱材を備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの何れか1項記載の吹出しボックス。
【請求項5】
前記第2の断熱材は、グラスウール又はロックウールである
ことを特徴とする請求項4記載の吹出しボックス。
【請求項6】
前記第2の開口部の内周面に取付けられ、前記第2の断熱材を構成する繊維の飛散を防止する第2の飛散防止材を備えた
ことを特徴とする請求項5記載の吹出しボックス。
【請求項7】
前記第1の整流メッシュと前記遮蔽板との間に配置され、前記吹出し口に対向する部分に前記第1の開口部と同径である第3の開口部を有し、前記第1の断熱材より薄い第3の断熱材を備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの何れか1項記載の吹出しボックス。
【請求項8】
前記第3の断熱材は、グラスウール又はロックウールである
ことを特徴とする請求項7記載の吹出しボックス。
【請求項9】
前記第3の開口部の内周面に取付けられ、前記第3の断熱材を構成する繊維の飛散を防止する第3の飛散防止材を備えた
ことを特徴とする請求項8記載の吹出しボックス。
【請求項10】
前記遮蔽板は、前記第1の開口部のうち、当該第1の開口部の直径又は流路開口幅の1/5~1/3に相当する部分を遮蔽する
ことを特徴とする請求項1から請求項9のうちの何れか1項記載の吹出しボックス。
【請求項11】
前記遮蔽板のうち、前記第1の開口部を遮蔽する部分における端部の中央は、凸状又は凹状に構成された
ことを特徴とする請求項1から請求項10のうちの何れか1項記載の吹出しボックス。
【請求項12】
前記遮蔽板のうち、前記第1の開口部を遮蔽する部分における端部は、前記流入口の方向から見て左右非対称に構成された
ことを特徴とする請求項1から請求項11のうちの何れか1項記載の吹出しボックス。
【請求項13】
前記遮蔽板は、前記第1の断熱材の全面を覆う板であり、前記第1の開口部に対向する部分に、当該第1の開口部における遮蔽領域以外の形状と同一の形状である第4の開口部を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項12のうちの何れか1項記載の吹出しボックス。
【請求項14】
前記第1の整流メッシュ及び前記第2の整流メッシュは、金網又は樹脂網から成る
ことを特徴とする請求項1から請求項13のうちの何れか1項記載の吹出しボックス。
【請求項15】
前記第1の整流メッシュ及び前記第2の整流メッシュは、開口率が40%~60%である
ことを特徴とする請求項1から請求項14のうちの何れか1項記載の吹出しボックス。
【請求項16】
前記第2の整流メッシュは、前記第1の整流メッシュよりも網目が細かい
ことを特徴とする請求項1から請求項15のうちの何れか1項記載の吹出しボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調機と繋がるダクトが接続される吹出しボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建物に対し、ダクト式空気調和システムが設けられる場合がある。ダクト式空気調和システムでは、空調機と繋がるダクトが、天井裏に分散して設置された吹出しボックス(チャンバー)の流入口に接続されている。また、吹出しボックスの吹出し口が、天井に設置されたディフューザ又はアネモ等に接続されている。そして、ダクト式空気調和システムは、空調された空気を室内空間へ供給する。
【0003】
例えば特許文献1に開示された構成では、2枚の整流板が設けられたエルボ型接続ダクトが、チャンバーの吹出し口に対向する位置(上面側)に接続されている。この構成では、エルボ型接続ダクトが空気の流れを水平方向から垂直方向に矯正し、2枚の整流板が真上からのほぼ垂直な流れの風速分布を均一化し、チャンバーの上面中央から空気を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-198014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、部品の入手及び現場での設置等の事情を鑑みれば、エルボ型接続ダクトのような特殊な形状のものではなく、平板又は円筒部材を多用して製造された簡易な形状のダクト及び吹出しボックスが使用されるのが一般的である。また、吹出しボックスが設置される天井裏は、高さ方向の余裕が少ないことが多い。そのため、吹出しボックスとして、一側面に流入口が設けられ、底面に吹出し口が設けられた構成のものが使用されるのが一般的である。
しかしながら、このような一般的な筐体形状のダクト及び吹出しボックスが使用される場合でも、空調される室内空間における温度ムラの解消及び隣接設置された吹出しボックスの吹出し口から吹出される空気の干渉を避けることが要求されることが多い。そのため、一般的な筐体形状のダクト及び吹出しボックスが使用される場合でも、吹出し口における整流特性(偏りのない均一な気流特性)が重要視されることが多く、改善が求められている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、一般的な筐体形状であっても、整流特性を向上可能な吹出しボックスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る吹出しボックスは、一面に設けられた流入口、及び、当該一面に隣接する他の一面に設けられた吹出し口を有する箱状の筐体と、一面が筐体における他の一面の内壁に対向し、吹出し口に対向する部分に当該吹出し口に連通する第1の開口部を有する第1の断熱材と、一面が第1の断熱材における他面に対向し、第1の開口部を覆う第1の整流メッシュと、第1の断熱材と筐体との間に配置され、第1の開口部を覆う第2の整流メッシュと、第1の整流メッシュにおける他面に対向し、第1の開口部のうちの流入口から遠い側を遮蔽する遮蔽板とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記のように構成したので、一般的な筐体形状であっても、整流特性を向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A図1Cは、実施の形態1に係る吹出しボックスの構成例を示す図であり、図1Aは側面図であり、図1B図1Aに示すA-A線断面図であり、図1Cは底面図である。
図2】実施の形態1に係る吹出しボックスの別の構成例を示す断面図である。
図3】実施の形態1における遮蔽板の構成例を示す図である。
図4図4A図4Bは、実施の形態1に係る吹出しボックスの効果を説明する図であり、図4Aは筐体に整流構造が無い場合での空気の流れを示す断面図であり、図4Bは筐体に整流構造が有る場合での空気の流れを示す断面図である。
図5図5A図5Bは、実施の形態1における遮蔽板の別の構成例を示す図である。
図6図6A図6Bは、実施の形態1における遮蔽板の別の構成例を示す図である。
図7】実施の形態2に係る吹出しボックスの構成例を示す断面図である。
図8】実施の形態3に係る吹出しボックスの構成例を示す断面図である。
図9】実施の形態4に係る吹出しボックスの構成例を示す断面図である。
図10】実施の形態5における遮蔽板の構成例を示す図である。
図11図11A図11Bは、実施の形態5に係る吹出しボックスの構成例を示す断面図であり、図11Aは内壁面を示す図であり、図11B図11Aに示すA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る吹出しボックスの構成例を示す図である。図1Bにおける矢印は空気の流れを示している。
吹出しボックスは、6面から成る箱状の筐体1を有する。筐体1には、一側面(一面)に、流入口101が形成されている。流入口101には、カラー2が取付けられている。カラー2は、板金等により製作された筒状の部材である。カラー2には、空調機(不図示)と繋がるダクト(不図示)が接続され、当該ダクトから流入口101を介して筐体1内に空気が流入される。また、筐体1には、底面(上記一面に隣接する他の一面)に、吹出し口102が形成されている。吹出し口102には、カラー3が取付けられている。カラー3は、板金等により製作された筒状の部材である。カラー3にはディフューザ(不図示)又はアネモ(不図示)等が接続され、筐体1内の空気が吹出し口102を介して吹出される。
【0011】
また、筐体1には、各面の内壁に、断熱材4における前面(一面)が対向配置されている。ここで、断熱材4のうち、筐体1における底面に対向する断熱材4b(第1の断熱材)を除く断熱材4については、筐体1における各面の内壁に直接取付けられている。断熱材4として、断熱機能に加え、吸音機能を有する断熱材が用いられていてもよい。
【0012】
断熱材4のうち、筐体1における一側面に対向する断熱材4aについては、流入口101に対向する部分に開口部401aが形成されている。開口部401aは、流入口101と同径(略同径の意味を含む)である。
また、断熱材4のうち、筐体1における底面に対向する断熱材4bについては、吹出し口102に対向する部分に開口部(第1の開口部)401bが形成されている。開口部401bは、吹出し口102と同径(略同径の意味を含む)であることが好ましいが、径又は形状が異なっていてもよく、極端な例としては円形ではなく正方形等の形状でも構成可能である。
【0013】
断熱材4としては、例えばグラスウール又はロックウールが用いられる。グラスウール及びロックウールは、不燃性であり、吸音性(消音性)も高い。また、グラスウール及びロックウールは、後述する整流メッシュ(第1の整流メッシュ)5と整流メッシュ(第2の整流メッシュ)6との間のスペーサとして適度な硬さを持つ。断熱材4としては、40K(40kg/m)程度以上の密度のものが好ましい。
【0014】
また、断熱材4bにおける背面(他面)には、整流メッシュ5における前面(一面)が対向配置されている。実施の形態1では、整流メッシュ5は断熱材4bに直接取付けられている。整流メッシュ5は、断熱材4bが有する開口部401bを覆う。
また、断熱材4bと筐体1との間には、整流メッシュ6が配置されている。整流メッシュ6は、断熱材4bが有する開口部401bを覆う。
【0015】
なお、整流メッシュ5及び整流メッシュ6は、例えば、金網又は樹脂網から構成される。また、整流メッシュ5及び整流メッシュ6は、ワイヤー断面が円形で平織りであることが好ましい。吹出しボックスは、上記ワイヤー断面が円形であることで、比較的低圧損で高い整流効果が得られる。
【0016】
また、整流メッシュ5及び整流メッシュ6は、開口率が40%~60%であることが好ましい。これにより、吹出しボックスは、比較的低圧損で高い整流効果が得られる。
【0017】
なお、吹出し口102における面内の平均風速が3m/s程度を上限として使用される一般的な吹出し口102において、整流メッシュ5と整流メッシュ6を構成する金網のサイズは12メッシュ~14メッシュ程度で、ワイヤー線径はφ0.55mm~φ0.7mm程度が好ましい。このようなサイズの金網の厚さは1.3mm程度である。
また、実施の形態1に係る吹出しボックスが使用されるような条件においては、整流メッシュ5と整流メッシュ6の離間距離(つまり、スペーサとなる断熱材4bの厚さ)は、整流メッシュ5と整流メッシュ6の整流効果を十分に、且つ、効率的に引き出すために、網目の開口寸法の13~20倍程度が好ましい。例えば、整流メッシュ5と整流メッシュ6として12メッシュでワイヤー線径がφ0.6mmの金網を用いた場合、網目の開口寸法が1.52mmであるため、好ましい離間距離(つまり、好ましい断熱材4bの厚さ)は20mm~30mmになる。
【0018】
また、整流メッシュ6は、整流メッシュ5よりも網目が細かいことが好ましい。これにより、吹出しボックスは、比較的低圧損で効率のよい整流効果が得られる。更に、吹出しボックスは、対向する整流メッシュ5と整流メッシュ6の目の向き(ワイヤーの向き)が45°ずれて設置されてもよく、これにより整流効果が向上する。
【0019】
なお、断熱材4bと整流メッシュ5及び整流メッシュ6との位置関係は、図1に示す位置関係に限らず、例えば図2に示すような位置関係であってもよい。
【0020】
また、整流メッシュ5における背面(他面)には、遮蔽板7における前面(一面)が対向配置されている。図3に示すように、実施の形態1における遮蔽板7は、板状部材であり、整流メッシュ5における流入口101から遠い側に直接取付けられている。遮蔽板7は、開口部401bのうち、流入口101から遠い側を覆う。なお、遮蔽板7は、例えば、筐体1を形成している厚さ0.5mm又は0.6mm程度の板金と同じ材料で構成すればよい。
【0021】
なお、遮蔽板7は、開口部401bのうち、開口部401bの直径又は流路開口幅の1/5~1/3(略1/5~略1/3の意味を含む)に相当する部分を遮蔽することが好ましい。これにより、吹出しボックスは、流速分布の均一性が良好となる。
【0022】
次に、図1,2に示す実施の形態1に係る吹出しボックスによる効果について説明する。
ここで、管(配管又はダクト等)内の空気の流れを整流する整流構造としては、複数枚の金網、多孔板が間隔を置いて配置された部材又はハニカム板(整流格子)等が、管の長手方向(流れ方向)と略直交する方向を向いて流路内に配置された構造が一般的である。この場合、空気は管の長手方向に沿って整流構造に流入するため、整流構造は問題なく整流を行うことができる。
一方、空気が一側面の流入口101から流入して底面の吹出し口102から吹出される吹出しボックスに対し、吹出し口102付近に上記整流構造を設置する場合を考える。この場合、空気は整流構造の上面に対して45度程度から平行(水平)に近い角度で流入し、特に吹出し口102における流入口101から遠い側に集中して流入する。よって、吹出しボックスに上記整流構造を適用すると、整流効果が不十分となり、特に偏流を矯正する効果の効率が悪くなる。
【0023】
また、金網、多孔板及びハニカム板について、それぞれの整流性能の特徴を以下に示す。
金網は、基本的に3つの効果を有している。
第1の効果は、空気が網目を通過することで発生する流体抵抗として、空気の乱れ又は変動をダンピングしつつ、上流側の面近傍の流速分布を均一化するように作用する効果である。上記流体抵抗の大きさは流速の2乗に比例して大きくなるため、上流側の面の流速の速い部分の圧力がより高くなり、その部分の流速の遅い部分(圧力の低い部分)に流れ込み、流速分布を均一にする方向に働く。
第2の効果は、各網目から下流側へ吹出される噴流の混合拡散作用により流速分布を均一化するように作用する効果である。
第3の効果は、空気の流れの中の大きな渦を網目で分断して細かい渦にすることで、空気の乱れ又は変動をダンピングするように作用する効果である。
【0024】
多孔板は、基本的には金網と同様の効果を有するが、一般的に、金網より流体抵抗が高く、上記第1の効果の割合が大きくなる。すなわち、多孔板は、金網に対して製造上の理由により開口率が小さくなり、また、網目の断面が滑らかな曲線となる金網に対してエッジの立った矩形断面となるため、各網目から下流側へ吹出される噴流の最大流速又は乱れが強くなる等により流体抵抗が高くなる。なお、多孔板は、上記第2の効果に関しては、一般的に、金網に対して製造上の理由により隣接する開口間の距離が大きくなるため、噴流の混合拡散作用は弱くなり、混合拡散に必要な下流側の助走距離も金網より長く、より大きなスペースが下流側に必要になる。
【0025】
ハニカム板は、製造上の理由により、一般的に、金網及び多孔板に対して各開口のサイズを小さくすることが難しく、開口を仕切っている板厚も薄いため、発生する空気の乱れは少なく、流体抵抗も小さいため、上記第1~第3の効果は小さい。よって、ハニカム板では、流路断面内で偏りのある流れ(偏流)を矯正して均一化する効果は小さい。なお、ハニカム板は、開口部の流れ方向の流路が長いため、その流路方向に流れの向きを揃える効果が特に大きい。そのため、ハニカム板は、斜め方向から角度を持って入ってくる流れ、又は、旋回流等の整流には効果が大きい。しかしながら、ハニカム板では、流入した偏流については、ほぼそのままの流路分布(偏流)状態で流出されることになる。
【0026】
そこで、図1,2に示す実施の形態1に係る吹出しボックスでは、金網に代表される整流メッシュの欠点を補い且つ利点を効率よく利用する構成を実現化した。
すなわち、実施の形態1に係る吹出しボックスは、断熱材4bの背面に整流メッシュ5が配置され、整流メッシュ5の背面に、開口部401bのうちの流入口101から遠い側を遮蔽する遮蔽板7が配置されている。これにより、この吹出しボックスは、整流構造に対して水平寄りの角度から斜めに且つ流入口101から遠い側(奥)に向かって入ってくる空気を、垂直寄りの角度且つ整流構造の中央寄りに効率よく矯正可能となる。
また、この吹出しボックスは、断熱材4bの前面に整流メッシュ6が配置されている。これにより、この吹出しボックスは、垂直寄りの角度から整流メッシュ6に入ってくる空気を、整流メッシュ本来の整流能力を発揮して面方向(水平方向)に均一化できる。
よって、この吹出しボックスは、効率よく十分な整流効果(偏流矯正効果)が得られる。
【0027】
図4に、筐体1に整流構造が無い場合(図4A)と、図1,2に示すように筐体1に整流構造が有る場合(図4B)での空気の概略の流れを示す。図4では、流線を大まかに上側の流れと下側の流れの2つに分けて示している。
図4Aに示すように、筐体1に整流構造が無い場合、下側の流れはダイレクトに吹出し口102の奥に斜めに流入するが、上側の流れは、筐体1における背面に衝突して、紙面に垂直な方向の奥側と手前側の2つ方向に分かれ、それぞれ、紙面に垂直な方向の奥側と手前側の筐体1の側面を回り込んで吹出し口102の中央部付近に流入する。よって、吹出し口102の奥で流速が速く、手前(流入口101)側程流速が遅くなり、ほとんど流れの無い部分も生じる。また、上側の流れは、筐体1内を回転しながら吹出し口102から流出するために流れが不安定であり、吹出し口102の面内では複雑な風速分布となる。
これに対し、図4Bに示すように、筐体1に整流構造が有る場合、遮蔽板7及び整流メッシュ5の働きにより、遮蔽板7の上方に圧力の高い部分が生じ、上側及び下側の流れは、それぞれ流入口101側に進路が矯正されて整流メッシュ5に流入する。そして、整流メッシュ5を通過した空気は、上述した3つの効果により流速分布が均一化されるとともに垂直寄りの流れに矯正されて整流メッシュ6に流入する。そして、整流メッシュ6を通過した空気は、更に流速分布が均一化されるとともに垂直寄りの流れに矯正されて吹出し口102から流出する。
【0028】
また、筐体1の内壁に吸音も兼ねた断熱材4が取付けられる場合、一般的に25mm程度以上の厚めの断熱材4が使用される。そのため、この吹出しボックスに対して内部に何らかの整流構造を適用しようとした場合、筐体1における底面に取付けられた断熱材4の上に整流構造を設置することとなり、吹出しボックスの高さが断熱材4の厚さだけ高くなってしまう。
これに対し、実施の形態1に係る吹出しボックスでは、断熱材4bを、整流メッシュ5及び整流メッシュ6間のスペーサとしても利用している。これにより、この吹出しボックスでは、筐体1における高さ方向のサイズアップを抑制可能となり、筐体1における高さを低くすることができる。また、この吹出しボックスでは、断熱材4bを整流構造の構成要素の一つ(スペーサ)としても利用することで、部品点数を削減可能となる。
【0029】
なお図5に示すように、遮蔽板7のうち、開口部401bを遮蔽する部分における端部の中央は、凸状(図5Aにおいて符号701で示す形状)又は凹状(図5Bにおいて符号702で示す形状)に構成されていてもよい。ここで、流入口101の流路(カラー2)内に風量を調整する可変風量ダンパー装置等が設置された場合、通常よりも吹出し口102における偏流が大きくなる。一方、図5に示すように遮蔽板7における端部の中央を凸状又は凹状とすることで、風速分布の均一性を更に改善できる。
【0030】
また図6に示すように、遮蔽板7のうち、開口部401bを遮蔽する部分における端部は、流入口101の方向から見て左右非対称に構成されていてもよい。ここで、流入口101の流路(カラー2)内に風量を調整する可変風量ダンパー装置等が設置された場合又は筐体1の内部が流入口101方向から見て左右非対称になっている場合、筐体1内の空気の流れが左右非対称となる。一方、図6に示すように遮蔽板7における端部を流入口101方向から見て左右非対称とすることで、風速分布の均一性を更に改善できる。
【0031】
以上のように、この実施の形態1によれば、吹出しボックスは、一面に設けられた流入口101、及び、当該一面に隣接する他の一面に設けられた吹出し口102を有する箱状の筐体1と、一面が筐体1における他の一面の内壁に対向し、吹出し口102に対向する部分に当該吹出し口102に連通する開口部401bを有する断熱材4bと、一面が断熱材4bにおける他面に対向し、開口部401bを覆う整流メッシュ5と、断熱材4bと筐体1との間に配置され、開口部401bを覆う整流メッシュ6と、整流メッシュ5における他面に対向し、開口部401bのうちの流入口101から遠い側を遮蔽する遮蔽板7とを備えた。これにより、実施の形態1に係る吹出しボックスは、一般的な筐体形状であっても、整流特性を向上可能となる。
【0032】
実施の形態2.
図7は実施の形態2に係る吹出しボックスの構成例を示す図である。図7に示す実施の形態2に係る吹出しボックスは、図1に示す実施の形態1に係る吹出しボックスに対し、断熱材(第2の断熱材)8が追加されている。その他の構成は図1に示す実施の形態1に係る吹出しボックスと同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。
【0033】
断熱材8は、整流メッシュ6と筐体1との間に配置されている。断熱材8は、吹出し口102に対向する部分に開口部(第2の開口部)801が形成されている。開口部801は、吹出し口102と同径(略同径の意味を含む)である。
【0034】
断熱材8としては、例えばグラスウール又はロックウールが用いられる。断熱材8としては、40K(40kg/m)程度以上の密度のものが好ましい。
【0035】
図7に示す実施の形態2に係る吹出しボックスでは、整流メッシュ6と筐体1との間の接触面は少ないため、断熱材4が無くてもよいが、より高い断熱性(保温性)が求められる場合に断熱材8が有効である。
【0036】
なお図7では、図1に示す吹出しボックスに対して断熱材8を追加した場合を示した。しかしながら、これに限らず、図2に示す吹出しボックスに対して断熱材8を追加してもよい。
【0037】
実施の形態3.
図8は実施の形態3に係る吹出しボックスの構成例を示す図である。図8に示す実施の形態3に係る吹出しボックスは、図7に示す実施の形態2に係る吹出しボックスに対し、飛散防止材(第1,2の飛散防止材)9,10が追加されている。その他の構成は図7に示す実施の形態2に係る吹出しボックスと同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。なお、断熱材4b,8はグラスウール又はロックウールであるとする。
【0038】
飛散防止材9は、断熱材4bが有する開口部401bの内周面に取付けられている。飛散防止材9は、グラスウール又はロックウールである断熱材4bを構成する繊維の飛散を防止する。飛散防止材9としては、例えば、板金等により製作された筒状の部品(カラー)、ガラスクロス又は不織布が挙げられる。
飛散防止材10は、断熱材8が有する開口部801の内周面に取付けられている。飛散防止材10は、グラスウール又はロックウールである断熱材8を構成する繊維の飛散を防止する。飛散防止材10としては、例えば、板金等により製作された筒状の部品(カラー)、ガラスクロス又は不織布が挙げられる。なお図8では、飛散防止材10はカラー3の一部としてカラー3と一体に構成されている。
【0039】
一般的に、グラスウール又はロックウールである断熱材の露出面に対しては、断熱材を構成する繊維の飛散防止のための処理が必要である。そこで、実施の形態3に係る吹出しボックスのように、断熱材4b及び断熱材8の露出面がガラスクロス又は不織布で覆われる、又は、当該断熱材4b及び当該断熱材8の内周面に対してカラーが設置されることが好ましい。
【0040】
なお、図8に示すように、内断熱(内張り断熱)構造の吹出しボックスでは、カラー2及びカラー3については、一般的に内断熱とはせずに外断熱(外張り断熱)とされる。そのため、筐体1の外壁とカラー2及びカラー3との間には断熱のための隙間が設けられ、L字金具11等により4箇所程度接続される。また、上記隙間に対しては、熱伝導率の低いシール材12等により気密処理が施される。
【0041】
また図8では、図7に示す吹出しボックスに対し、グラスウール又はロックウールである断熱材4bを構成する繊維の飛散を防止するための飛散防止材9及び断熱材8を構成する繊維の飛散を防止するための飛散防止材10を追加した場合を示した。しかしながら、これに限らず、図1,2に示す吹出しボックスに対し、グラスウール又はロックウールである断熱材4bを構成する繊維の飛散を防止するための飛散防止材9を追加してもよい。
【0042】
実施の形態4.
図9は実施の形態4に係る吹出しボックスの構成例を示す図である。図9に示す実施の形態4に係る吹出しボックスは、図1に示す実施の形態1に係る吹出しボックスに対し、断熱材(第3の断熱材)13が追加されている。その他の構成は図1に示す実施の形態1に係る吹出しボックスと同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。
【0043】
断熱材13は、整流メッシュ5と遮蔽板7との間に配置されている。断熱材13は、吹出し口102に対向する部分に開口部(第3の開口部)1301が形成されている。開口部1301は、開口部401bと同径(略同径の意味を含む)である。また、断熱材13は、厚みが、断熱材4bの厚みより薄い。
【0044】
断熱材13としては、例えばグラスウール又はロックウールが用いられる。断熱材13としては、40K(40kg/m)程度以上の密度のものが好ましい。
【0045】
ここで、遮蔽板7と整流メッシュ5との間に少し(数mm~10mm程度)の隙間が設けられていた方がより効率のよい整流効果(偏流矯正効果)が得られる。そこで、実施の形態4に係る吹出しボックスでは、整流メッシュ5と遮蔽板7との間に、断熱材13が設けられている。
【0046】
なお、整流メッシュ5と整流メッシュ6との間の距離は、遮蔽板7と整流メッシュ5との間の距離よりも大きくする。また、断熱材4b及び断熱材13の合計厚さは、断熱に必要な厚さを満たしていればよく、その合計厚さが断熱材13を用いない場合での断熱材4bの厚み以上であればよい。
【0047】
なお図9では、図1に示す吹出しボックスに対して断熱材13を追加した場合を示した。しかしながら、これに限らず、図2,7,8に示す吹出しボックスに対して断熱材13を追加してもよい。また。上述した実施の形態と同様に、断熱材13が有する開口部1301の内周面には、グラスウール又はロックウールである断熱材13を構成する繊維の飛散を防止する飛散防止材9と同様な飛散防止材(第3の飛散防止材)を設けることが好ましい。
【0048】
実施の形態5.
図10は実施の形態5における遮蔽板7の構成例を示す図である。実施の形態5に係る吹出しボックスにおける遮蔽板7以外の構成は図1に示す実施の形態1に係る吹出しボックスと同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。
【0049】
実施の形態5における遮蔽板7は、図10に示すように、断熱材4bの全面(略全面の意味を含む)を覆う板である。また、この遮蔽板7は、開口部(第4の開口部)703を有する。開口部703は、開口部401bに対向する部分に設けられ、開口部401bにおける遮蔽領域以外の形状と同一(略同一の意味を含む)の形状に構成されている。ここで、一般的に、グラスウール又はロックウールである断熱材の露出面は、断熱材を構成する繊維の飛沫防止のための処理が必要である。よって、整流メッシュ5のみで断熱材4bを構成する繊維の飛沫防止の機能が不十分な場合には、別途、断熱材4bの露出面をガラスクロス又は不織布で覆う必要がある。そこで、遮蔽板7を上記構造とすることで、当該遮蔽板7に断熱材4bを構成する繊維の飛散防止機能を持たせることができる。
【0050】
更に、図11に示すように、吹出しボックスは、固定部材14により、遮蔽板7、整流メッシュ5、断熱材4b及び整流メッシュ6が固定されていてもよい。図11に示す固定部材14は、コの字型に構成されている。この固定部材14は、リベット又はネジ等の締結部材15により締結される。また図11では飛散防止材9が設けられた場合を示している。
【0051】
なお図5では、図1に示す吹出しボックスにおける遮蔽板7の構造を変更した場合を示した。しかしながら、これに限らず、図2,7~9に示す吹出しボックスにおける遮蔽板7の構造を上記のように変更してもよい。
【0052】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組合わせ、或いは各実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 筐体
2 カラー
3 カラー
4 断熱材
4a 断熱材
4b 断熱材(第1の断熱材)
5 整流メッシュ(第1の整流メッシュ)
6 整流メッシュ(第2の整流メッシュ)
7 遮蔽板
8 断熱材(第2の断熱材)
9 飛散防止材(第1の飛散防止材)
10 飛散防止材(第2の飛散防止材)
11 L字金具
12 シール材
13 断熱材(第3の断熱材)
14 固定部材
15 締結部材
101 流入口
102 吹出し口
401a 開口部
401b 開口部(第1の開口部)
703 開口部(第4の開口部)
801 開口部(第2の開口部)
1301 開口部(第3の開口部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11