(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】連続体ロボットの制御システム及びその作動方法、並びに、プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/005 20060101AFI20240325BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20240325BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A61B1/005 523
B25J13/00 Z
A61B1/00 553
(21)【出願番号】P 2020128130
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 秀和
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-122491(JP,A)
【文献】特許第6177488(JP,B2)
【文献】特開2010-104426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0332030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
B25J 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが駆動することによって湾曲する湾曲可能部と、前記ワイヤを駆動する駆動部と、を備える連続体ロボットの制御システムであって、
前記湾曲可能部のねじれ角度を取得するねじれ角度取得手段と、
前記ねじれ角度取得手段によって取得されたねじれ角度に基づいて、前記湾曲可能部における前記ワイヤの長さを演算する運動学演算手段と、
を有し、
前記運動学演算手段は、
前記湾曲可能部を長手方向に分割することによって得られる複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとに、当該微小区間の湾曲角度、旋回角度およびねじれ角度に基づいて、当該微小区間における前記ワイヤの長さを演算するワイヤ長演算手段と、
前記ワイヤ長演算手段で得られた前記複数の微小区間における前記ワイヤの長さを加算することによって、前記湾曲可能部における前記ワイヤの長さを算出する加算手段と、
を有することを特徴とする連続体ロボットの制御システム。
【請求項2】
前記湾曲可能部の湾曲角度および旋回角度、並びに、前記ねじれ角度取得手段によって取得されたねじれ角度に基づいて、前記複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとの湾曲角度、旋回角度およびねじれ角度を演算する角度演算手段を更に有し、
前記ワイヤ長演算手段は、前記角度演算手段で得られた、前記複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとの湾曲角度、旋回角度およびねじれ角度を用いて、当該微小区間における前記ワイヤの長さを演算することを特徴とする請求項1に記載の連続体ロボットの制御システム。
【請求項3】
前記角度演算手段は、前記湾曲可能部の湾曲角度および旋回角度、並びに、前記ねじれ角度取得手段によって取得されたねじれ角度に加えて、前記湾曲可能部の初期位置からの変位に基づいて、前記複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとの湾曲角度、旋回角度およびねじれ角度を演算することを特徴とする請求項2に記載の連続体ロボットの制御システム。
【請求項4】
前記運動学演算手段で得られた前記湾曲可能部における前記ワイヤの長さに基づいて、前記駆動部による前記ワイヤの駆動を制御する制御手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の連続体ロボットの制御システム。
【請求項5】
前記連続体ロボットは、互いに直列に設けられた複数の前記湾曲可能部であって、第1の湾曲可能部および前記第1の湾曲可能部よりも前記駆動部から遠い位置に設けられた第2の湾曲可能部を含む複数の湾曲可能部を備えて構成されており、
前記ねじれ角度取得手段は、前記第1の湾曲可能部の前記ねじれ角度および前記第2の湾曲可能部の前記ねじれ角度を取得し、
前記運動学演算手段は、前記ねじれ角度取得手段によって取得された前記第1の湾曲可能部のねじれ角度に基づいて、前記第1の湾曲可能部を湾曲させるための前記ワイヤである第1のワイヤの前記第1の湾曲可能部における長さを演算するとともに、前記第2の湾曲可能部を湾曲させるための前記ワイヤである第2のワイヤの前記第1の湾曲可能部における長さを演算し、且つ、前記ねじれ角度取得手段によって取得された前記第2の湾曲可能部のねじれ角度に基づいて、前記第2のワイヤの前記第2の湾曲可能部における長さを演算し、
前記加算手段とは異なる第2の加算手段であって、前記運動学演算手段で得られた前記第1の湾曲可能部における前記第2のワイヤの長さと前記第2の湾曲可能部における前記第2のワイヤの長さとを加算することによって、前記第1の湾曲可能部および前記第2の湾曲可能部における前記第2のワイヤの長さを算出する第2の加算手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の連続体ロボットの制御システム。
【請求項6】
ワイヤが駆動することによって湾曲する湾曲可能部と、前記ワイヤを駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御装置とを備える連続体ロボットの
作動方法であって、
前記制御装置は、
前記湾曲可能部のねじれ角度を取得するねじれ角度取得ステップと、
前記ねじれ角度取得ステップによって取得されたねじれ角度に基づいて、前記湾曲可能部における前記ワイヤの長さを演算する運動学演算ステップと、
を
実行し、
前記運動学演算ステップは、
前記湾曲可能部を長手方向に分割することによって得られる複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとに、当該微小区間の湾曲角度、旋回角度およびねじれ角度に基づいて、当該微小区間における前記ワイヤの長さを演算するワイヤ長演算ステップと、
前記ワイヤ長演算ステップで得られた前記複数の微小区間における前記ワイヤの長さを加算することによって、前記湾曲可能部における前記ワイヤの長さを算出する加算ステップと、
を有することを特徴とする連続体ロボットの
作動方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の連続体ロボットの制御システムにおける各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤが駆動することによって湾曲する湾曲可能部を備える連続体ロボットの制御システム及びその作動方法、並びに、当該制御システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、患者の負担を低減し治療・検査後のQOLを向上させるための低侵襲医療が注目を集めている。低侵襲医療の代表例として、内視鏡を用いた手術・検査が挙げられる。例えば、腹腔鏡手術は、従来の開腹手術と比べて手術創を小さくすることが可能となるため、術後に必要な入院期間を短縮できるだけでなく、美容上も優れているというメリットがある。
【0003】
低侵襲医療に用いられる内視鏡の一例として、軟性内視鏡が知られている。この軟性内視鏡は、挿入部が湾曲可能な部材で構成されている湾曲可能部として機能するため、食道や大腸、肺などの湾曲する器官であっても組織を圧迫することなく体内の深部に到達でき、患者の負担を低減することができる。さらに、例えば、アクチュエータ等の駆動部を用いて挿入部である湾曲可能部を駆動し、体内の経路に沿うように湾曲可能部の姿勢を自動的に制御すれば、患者の負担を更に低減することが期待される。そのため、軟性内視鏡として利用可能な連続体ロボットの機構と制御方法の研究開発が盛んに行われている。
【0004】
このような連続体ロボットでは、湾曲可能部を湾曲させるための駆動力伝達機構としてワイヤ等を用いることで、ワイヤ等を駆動するアクチュエータ等の駆動部を基台に設置し、湾曲可能部を細径化する方式がよく用いられる。これにより、体内の深部に到達することが可能となるが、連続体ロボットの湾曲可能部を細径化すると剛性が低下する。そのため、連続体ロボットの湾曲可能部が体腔などの内壁に当接すると、連続体ロボット(湾曲可能部)がその中心軸周りにねじれることが起こりうる。そして、このねじれの発生により、ワイヤの駆動量と連続体ロボット(湾曲可能部)の姿勢との対応関係が設計値からずれるため、連続体ロボット(湾曲可能部)の制御の精度が低下する恐れがある。この点に関して、例えば、特許文献1には、連続体ロボットの湾曲可能部がねじれた場合にも、ねじれ量に基づいてワイヤの駆動変位量を制御することで湾曲可能部の姿勢を目標姿勢に一致させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、湾曲可能部のねじれによる制御誤差を補償するために、当該湾曲可能部において基台側に最も近い位置(近位端)を通過するワイヤの位相角にねじれ量を踏まえた値を新たな位相角と仮定して、湾曲可能部を通過するワイヤの長さを演算する。この特許文献1に記載の技術では、ワイヤは、湾曲可能部の近位端から、当該湾曲可能部において基台側から最も遠い位置(遠位端)のワイヤガイドまで、直線状に進むと仮定している。しかしながら、実際の連続体ロボットでは、湾曲可能部にねじれが生じると、ワイヤは、連続体ロボット(湾曲可能部)の中心軸に沿って、らせん状に進む。したがって、特許文献1に記載の技術では、連続体ロボットの湾曲可能部のねじれに起因する当該湾曲可能部におけるワイヤの長さ(当該湾曲可能部を通過するワイヤの長さ)を精度良く算出することができず、その結果、連続体ロボットの制御性能を向上させることが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、連続体ロボットの湾曲可能部にねじれが生じた場合にも、連続体ロボットの制御性能の向上を実現できる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の連続体ロボットの制御システムは、ワイヤが駆動することによって湾曲する湾曲可能部と、前記ワイヤを駆動する駆動部と、を備える連続体ロボットの制御システムであって、前記湾曲可能部のねじれ角度を取得するねじれ角度取得手段と、前記ねじれ角度取得手段によって取得されたねじれ角度に基づいて、前記湾曲可能部における前記ワイヤの長さを演算する運動学演算手段と、を有し、前記運動学演算手段は、前記湾曲可能部を長手方向に分割することによって得られる複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとに、当該微小区間の湾曲角度、旋回角度およびねじれ角度に基づいて、当該微小区間における前記ワイヤの長さを演算するワイヤ長演算手段と、前記ワイヤ長演算手段で得られた前記複数の微小区間における前記ワイヤの長さを加算することによって、前記湾曲可能部における前記ワイヤの長さを算出する加算手段と、を有する。
また、本発明は、上述した連続体ロボットの作動方法、及び、上述した連続体ロボットの制御システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連続体ロボットの湾曲可能部にねじれが生じた場合にも、当該湾曲可能部におけるワイヤの長さを精度良く算出することができるため、連続体ロボットの制御性能の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態で用いる連続体ロボットの外観構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1に示す湾曲可能部を拡大した概略構成図である。
【
図3】
図1に示す湾曲可能部のモデルの一例を示す図である。
【
図4】
図3に示すj番目の微小区間のモデルの一例を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態を示し、
図5に示す運動学演算部の機能構成の一例を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システムを用いたシミュレーションの結果を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システムを用いたシミュレーションの結果を示す図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態で用いる連続体ロボットの外観構成の一例を示す図である。
【
図10】
図9に示す第1の湾曲可能部及び第2の湾曲可能部のモデルの一例を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る連続体ロボット制御システムの外観構成の一例を示す図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態を示し、
図5に示す運動学演算部の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態では、湾曲可能部を湾曲させるための駆動力伝達機構としてワイヤを用いた連続体ロボットを想定した例を説明し、当該連続体ロボットに対して本発明に係る制御システム及び制御方法を適用する。そして、以下に記載する本発明の実施形態では、ワイヤが連続体ロボット(湾曲可能部)の中心軸に沿ってらせん状に進むと仮定して湾曲可能部におけるワイヤの長さを算出することで、連続体ロボットの制御性能の向上を図る。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0013】
<1-1.モデリング>
図1は、本発明の第1の実施形態で用いる連続体ロボット100の外観構成の一例を示す図である。ここで、以下の説明では、この
図1に示す第1の実施形態で用いる連続体ロボット100を「連続体ロボット100-1」と記載する。この
図1に示す連続体ロボット100-1は、ワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cを含み構成される湾曲可能部110、長尺部120、アクチュエータ130-1a~130-1cを有して構成されている。
【0014】
湾曲可能部110は、ワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cのうちの少なくとも1つのワイヤが駆動することによって立体的に湾曲可能な構成部である。ここで、本実施形態においては、立体的に湾曲可能な湾曲可能部110を1つ備える連続体ロボット100-1を想定した形態となっている。湾曲可能部110の遠位端には、湾曲可能部110の中心軸周りのねじれ量を示すねじれ角度τ1を検出するための小型のセンサコイル1111が設けられている。
【0015】
長尺部120は、ワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cを内包し、例えば外力に対して受動的に湾曲する構成部である。ここで、
図1に示す例では、長尺部120の先端面1201を近位端とし、当該近位端からからセンサコイル1111が設けられている遠位端までが、湾曲可能部110であるものとする。
【0016】
アクチュエータ130-1a~130-1cは、ワイヤ1a~1cを駆動する駆動部である。具体的に、アクチュエータ130-1aはワイヤ1aを駆動し、アクチュエータ130-1bはワイヤ1bを駆動し、アクチュエータ130-1cはワイヤ1cを駆動する。
【0017】
図2は、
図1に示す湾曲可能部110を拡大した概略構成図である。この
図2において、
図1に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0018】
ワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cは、
図2に示す複数のワイヤガイド112と
図1に示す長尺部120に設けられた孔に案内される。そして、ワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cは、一端が
図2に示す湾曲可能部110の遠位端111(センサコイル1111が設けられているワイヤガイド)に接続され、他端が
図1に示す対応するアクチュエータ130-1a~130-1cに接続される。本実施形態では、アクチュエータ130-1a~130-1cを湾曲可能部110の中心軸方向に駆動すると、ワイヤ1a~1cがそれぞれ押し引きされ、湾曲可能部110が立体的に湾曲する。
【0019】
図3は、
図1に示す湾曲可能部110のモデルの一例を示す図である。具体的に、
図3は、ワイヤ1a~1cが、連続体ロボット100-1の湾曲可能部110の中心軸113に沿って、らせん状に進むモデルを導出するための図である。本実施形態では、この
図3に示すモデルを用いて、連続体ロボット100-1の湾曲可能部110におけるねじれを考慮し、湾曲可能部110の姿勢を目標姿勢と一致させる制御入力を与える連続体ロボット制御装置を設計する。
【0020】
以下に、本実施形態で用いる記号の定義を示す。
θ1:第1の湾曲可能部110の絶対湾曲角度
ζ1:第1の湾曲可能部110の絶対旋回角度
τ1:第1の湾曲可能部110の絶対ねじれ角度
l1a1:第1の湾曲可能部110におけるワイヤ1aの長さ
l1b1:第1の湾曲可能部110におけるワイヤ1bの長さ
l1c1:第1の湾曲可能部110におけるワイヤ1cの長さ
rg:湾曲可能部110の中心軸113から、ワイヤ1a,ワイヤ1b,ワイヤ1cまでの距離
l10:湾曲角度が0(deg)のときの第1の湾曲可能部110のワイヤの長さ
Δθ1,j:第1の湾曲可能部110におけるj番目の微小区間の湾曲角度
Δl1,j:第1の湾曲可能部110におけるj番目の微小区間の長さ
【0021】
図3では、太い実線で、湾曲可能部110におけるワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cを示し、一点鎖線で、湾曲可能部110の中心軸113を示している。また、
図3において、細い実線は、湾曲可能部110を長手方向における中心軸113の方向に、複数のm
1個の微小区間に仮想的に分割した断面を示している。
【0022】
図3に示す湾曲可能部110のモデルでは、
図1に示す湾曲可能部110の近位端に相当する長尺部120の先端面1201の中心を原点O
1としている。そして、
図3に示す湾曲可能部110のモデルでは、先端面1201における中心軸113の方向にZ
1軸をとり、原点O
1から先端面1201におけるワイヤ1aの位置に向かう方向にX
1軸をとり、X
1軸とZ
1軸に直交する方向にY
1軸をとっている。また、
図3に示す湾曲可能部110のモデルでは、湾曲可能部110の遠位端111における中心軸113の方向にZ
2軸をとり、Z
1軸とZ
2軸とのなす角度を湾曲可能部110の湾曲角度θ
1としている。さらに、
図3に示す湾曲可能部110のモデルでは、X
1Y
1平面内で原点O
1から遠位端111の中心に向かう方向にW
1軸をとり、X
1軸とW
1軸とのなす角度を湾曲可能部110の旋回角度ζ
1としている。
【0023】
連続体ロボット100-1の湾曲可能部110にねじれが生じていないとき、ワイヤ1は、W1Z1平面と平行な平面上を進むため、ワイヤ1を連続体のまま扱っても、ワイヤ1の長さを容易に演算することができる。
【0024】
一方、連続体ロボット100-1の湾曲可能部110にねじれが生じると、
図3に示すように、ワイヤ1a~1cは、湾曲可能部110の長手方向における中心軸113に沿ってらせん状に進む。そのため、ワイヤ1a~1cを連続体としたまま、当該ワイヤの長さを算出しようとすると複雑な演算が必要となり、連続体ロボット制御装置の計算負荷が増加してしまう。そこで、本実施形態では、
図3に示すように、湾曲可能部110を、長手方向(中心軸113の方向)に複数の微小区間に仮想的に分割して離散化し、分割によって得られた微小区間内では、ワイヤ1a~1cは直線状であると近似して当該ワイヤの長さを算出する。
図3には、先端面1201から数えて、j番目(j=1,2,…,m
1)の微小区間における座標系を示している。このj番目の微小区間における座標系は、先端面1201の側の中心O
1,jを原点として、遠位端111の方向にZ
1,j軸をとり、Z
1,j軸と直交し且つX
1軸と同一平面上にX
1,j軸をとり、X
1,j軸とZ
1,j軸との両軸と直交する方向にY
1,j軸をとっている。また、X
1,jY
1,j平面とW
1Z
1平面との交線上にW
1,j軸をとっている。
【0025】
図4は、
図3に示すj番目の微小区間のモデルの一例を示す図である。
図4では、W
1,j軸とW
1,j+1軸との交点を点T
1,jとしている。このとき、点O
1,jと点T
1,jとを結ぶベクトルと、点O
1,j+1と点T
1,jとを結ぶベクトルとのなす角度を、
図4に示すように微小区間の湾曲角度Δθ
1,jとする。また、
図4では、j番目の微小区間における先端面1201の側の面とワイヤ1aとの交点を点P
1a1,jとし、原点O
1,jと点P
1a1,jを結ぶベクトルとX
1,j軸とのなす角度をワイヤのねじれ角度(「ねじれ角度」と称してもよい)τ
1,jとしている。さらに、
図4では、j番目の微小区間における遠位端111の側の面とワイヤ1aとの交点を点P
1a1,j+1とし、点P
1a1,j+1におけるX
1,jY
1,j平面上への射影点を点P'
1a1,jとしている。この場合、原点O
1,jと点P'
1a1,jとを結ぶベクトルとX
1,j軸とのなす角度は、j+1番目の微小区間のねじれ角度τ
1,j+1となる。
【0026】
そして、本実施形態では、以下に記載の仮定をおき、連続体ロボット100-1の湾曲可能部110におけるモデルを導出する。
仮定1.微小区間内でワイヤは直線状となる。
仮定2.湾曲可能部110は、曲率一定に変形する。
仮定3.ワイヤガイドとワイヤとの間に働く摩擦力を考慮せず、ねじれ角度は、ワイヤガイドの影響を受けることなく一定の割合で連続的に変化する。
仮定4.ワイヤの伸縮を考慮しない。
【0027】
まず、湾曲可能部110のj番目の微小区間を通過するワイヤ1aの長さl
1a1,jを導出する。仮定1より、ワイヤ1aの長さl
1a1,jは、
図4に示す線分P
1a1,j‐P
1a1,j+1の長さとなる。そして、原点O
1,jから点P
1a1,jへのベクトルp
1a1,jは、以下の(1)式で表される。
【数1】
【0028】
また、原点O
1,jから点P'
1a1,jへのベクトルp'
1a1,jは、以下の(2)式で表される。
【数2】
【0029】
また、原点O
1,jから点T
1,jへのベクトルt
1,jは、以下の(3)式で表される。
【数3】
【0030】
また、湾曲可能部110を、各微小区間の長さが等しくなるように分割すると、j番目の微小区間の長さΔl
1,jは、以下の(4)式で表される。
【数4】
【0031】
このとき、仮定2と仮定3より、j番目の微小区間の湾曲角度Δθ
1,j、旋回角度ζ
1,j及びねじれ角度τ
1,jは、それぞれ、湾曲可能部110の湾曲角度θ
1、旋回角度ζ
1及びねじれ角度τ
1を用いて、以下の(5)式~(7)式で表される。
【数5】
【0032】
なお、点P
1a1,j+1は、点T
1,jを通りW
1,jZ
1,j平面と直交する軸を中心として、点P'
1a1,jを湾曲角度Δθ
1,jだけ回転させた点である。したがって、原点を中心として、Z
1,j軸周りに旋回角度ζ
1,jだけ回転させる回転行列をRz(ζ
1,j)とし、Y
1,j軸周りに湾曲角度Δθ
1,jだけ回転させる回転行列をRy(Δθ
1,j)とすると、原点O
1,jから点P
1a1,j+1へのベクトルp
1a1,j+1は、ベクトルp'
1a1,jとベクトルt
1,jを用いて、以下の(8)式で表される。
【数6】
【0033】
ただし、行列Rz(ζ
1,j)及び行列Ry(Δθ
1,j)は、それぞれ、以下の(9)式及び(10)式とする。
【数7】
【0034】
上述したように、j番目の微小区間を通過するワイヤ1aの長さl
1a1,jは、線分P
1a1,j‐P
1a1,j+1の長さとなるため、このワイヤ1aの長さl
1a1,jは、以下の(11)式で表される。
【数8】
【0035】
また、仮定4より、湾曲可能部110におけるワイヤ1aの長さ(湾曲可能部110を通過するワイヤ1aの全長)l
1a1は、湾曲可能部110の各微小区間におけるワイヤ1aの長さの和となるため、湾曲可能部110におけるワイヤ1aの長さl
1a1は、以下の(12)式で表される。
【数9】
【0036】
続いて、上述したワイヤ1aと同様に、ワイヤ1b及びワイヤ1cについても説明する。j番目の微小区間における先端面1201の側の面とワイヤ1b及びワイヤ1cとの交点を、それぞれ、点P
1b1,j及び点P
1c1,jとすると、原点O
1,jから点P
1b1,j及び点P
1c1,jへのベクトルp
1b1,j及びベクトルp
1c1,jは、それぞれ、以下の(13)式及び(14)式で表される。
【数10】
【0037】
また、原点O
1,jから射影点P'
1b1,j及び射影点P'
1c1,jへのベクトルp'
1b1,j及びベクトルp'
1c1,jは、それぞれ、以下の(15)式及び(16)式で表される。
【数11】
【0038】
そして、原点O
1,jから、j番目の微小区間における遠位端111の側の面とワイヤ1b及びワイヤ1cとの交点P
1b1,j+1及びP
1c1,j+1へのベクトルp
1b1,j+1及びベクトルp
1c1,j+1は、それぞれ、以下の(17)式及び(18)式で表される。
【数12】
【0039】
よって、湾曲可能部110におけるワイヤ1bの長さl
1b1及びワイヤ1cの長さl
1c1は、それぞれ、以下の(19)式及び(20)式で表される。
【数13】
【0040】
<1-2.制御系>
図5は、本発明の第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10の機能構成の一例を示す図である。ここで、以下の説明では、この
図5に示す第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10を「連続体ロボット制御システム10-1」と記載する。この
図5において、
図1及び
図3に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0041】
連続体ロボット制御システム10-1は、
図5に示すように、連続体ロボット100(より具体的には、
図1に示す連続体ロボット100-1)、連続体ロボット制御装置200、及び、入力装置310を有して構成されている。即ち、連続体ロボット制御システム10-1は、ワイヤ1a~1cが駆動することによって湾曲する湾曲可能部110と、ワイヤ1a~1cを駆動するアクチュエータ(駆動部)130-1a~130-1cを備える連続体ロボット100-1の制御システムである。
【0042】
入力装置310は、連続体ロボット制御装置200に対して情報を入力する装置であり、入力部311及び磁気センサ部312を有して構成されている。入力部311は、連続体ロボット制御装置200に対して、湾曲可能部110の湾曲角度(目標湾曲角度)θ1及び湾曲可能部110の旋回角度(目標旋回角度)ζ1を入力する構成部である。磁気センサ部312は、湾曲可能部110の遠位端111に設けられているセンサコイル1111で得られた磁界の強さ・向きに基づいて、湾曲可能部110の中心軸113周りのねじれ角度τ1を計測し、これを湾曲可能部110のねじれ角度τ1として連続体ロボット制御装置200に入力する構成部である。ここで、本実施形態においては、磁気センサ部312及びセンサコイル1111は、湾曲可能部110のねじれ角度τ1を取得する「ねじれ角度取得手段」を構成する。
【0043】
連続体ロボット制御装置200は、入力装置310から入力された情報に基づいて、連続体ロボット100(より具体的には、
図1に示す連続体ロボット100-1)を制御する装置であり、運動学演算部211及び位置制御部221を有して構成されている。運動学演算部211は、入力装置310から入力された情報である湾曲可能部110の湾曲角度θ
1、旋回角度ζ
1及びねじれ角度τ
1に基づいて、湾曲可能部110におけるワイヤ1a,1b及び1cの長さl
1a1,l
1b1及びl
1c1を演算する構成部である。位置制御部221は、湾曲可能部110におけるワイヤ1a,1b及び1cの長さが、それぞれ、長さl
1a1,l
1b1及びl
1c1となるように、連続体ロボット100-1のアクチュエータ130-1a,130-1b及び130-1cに対して駆動指令f
1a,f
1b及びf
1cを出力する構成部である。即ち、位置制御部221は、運動学演算部211で得られた湾曲可能部110におけるワイヤ1a~1cの長さl
1a1~l
1c1に基づいて、アクチュエータ130-1a~130-1cによるワイヤ1a~1cの駆動を制御する制御手段である。
【0044】
図6は、本発明の第1の実施形態を示し、
図5に示す運動学演算部211の機能構成の一例を示す図である。この
図6において、
図5に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。なお、
図6では、湾曲可能部110を湾曲させるためのワイヤ1a~1cのうち、ワイヤ1aのみを対象としてその長さl
1a1を算出する構成例のみを図示しているが、ワイヤ1b及び1cについても、ワイヤ1aの場合と同様の構成部を備えているものとする。
【0045】
運動学演算部211は、
図6に示すように、角度演算部610、ワイヤ長演算部620、及び、加算部630を有して構成されている。
【0046】
角度演算部610は、入力装置310から入力された情報である湾曲可能部110の湾曲角度θ
1、旋回角度ζ
1及びねじれ角度τ
1に基づいて、
図3を用いて説明した、湾曲可能部110を長手方向に分割することによって得られる複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとに、当該微小区間の湾曲角度Δθ、旋回角度ζ及びねじれ角度τを演算する角度演算手段である。具体的に、
図6では、角度演算部610によって算出された、j-1番目の微小区間、j番目の微小区間及びj+1番目の微小区間における湾曲角度Δθ、旋回角度ζ及びねじれ角度τ(当該微小区間の一端のねじれ角度及び他端のねじれ角度)を図示している。本実施形態においては、角度演算部610は、(5)式~(7)式を用いて、各微小区間の湾曲角度Δθ
1,j、旋回角度ζ
1,j及びねじれ角度τ
1,jを演算する。
【0047】
ワイヤ長演算部620は、湾曲可能部110を長手方向に分割することによって得られる複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとに、当該微小区間の湾曲角度Δθ、旋回角度ζ及びねじれ角度τに基づいて、当該微小区間におけるワイヤ1aの長さl
1a1,j-1、l
1a1,j、l
1a1,j+1、・・・を演算するワイヤ長演算手段である。具体的に、ワイヤ長演算部620は、角度演算部610で得られた、複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとの湾曲角度Δθ、旋回角度ζ及びねじれ角度τを用いて、当該微小区間におけるワイヤ1aの長さl
1a1,j-1、l
1a1,j、l
1a1,j+1、・・・を演算する。この際、
図6に示すワイヤ長演算部620では、複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間に対応して、複数のワイヤ長演算器621が構成されている。本実施形態においては、ワイヤ長演算部620は、(1)式~(4)式と、(8)式~(11)式を用いて、j番目の微小区間におけるワイヤ1aの長さl
1a1,jを演算する。
【0048】
加算部630は、ワイヤ長演算部620で得られた複数の微小区間におけるワイヤ1aの長さl1a1,j-1、l1a1,j、l1a1,j+1、・・・を加算することによって、湾曲可能部110におけるワイヤ1aの長さl1a1を算出する加算手段である。本実施形態においては、加算部630は、(12)式を用いて、湾曲可能部110におけるワイヤ1aの長さ(湾曲可能部110を通過するワイヤ1aの長さ)l1a1を算出する。
【0049】
<1-3.シミュレーション>
上記<1-1>で導出した連続体ロボット100-1のモデルと、上記<1-2>で提示した制御系を用いてシミュレーションを行う。本実施形態では、微小区間の数m1を20とし、湾曲可能部110の長さl10を0.03mとし、湾曲可能部110の中心軸113から、ワイヤ1a,ワイヤ1b,ワイヤ1cまでの距離rgを0.002mとする。
【0050】
まず、本実施形態の制御系(連続体ロボット制御システム10-1)を適用することで、連続体ロボット100-1の湾曲可能部110がねじれる場合においても、湾曲可能部110におけるワイヤの長さを精度良く算出可能なことを説明する。
【0051】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10を用いたシミュレーションの結果を示す図である。具体的に、
図7には、湾曲可能部110の湾曲角度θ
1を90(deg)とし、湾曲可能部110の旋回角度ζ
1を0(deg)とし、湾曲可能部110のねじれ角度τ
1を180(deg)とするときの湾曲可能部110のモデルが示されている。
【0052】
図7において、実線は、本発明の第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10のモデルを用いて導出したワイヤ710(以下、「本実施形態のワイヤ710」と記載する)の形状を表している。また、比較例として、破線は、特許文献1の演算方法を用いて導出したワイヤ720(以下、「特許文献1のワイヤ720」と記載する)の形状を表し、また、点線は、ねじれを考慮せずに導出したワイヤ730(以下、「ねじれ非考慮のワイヤ730」と記載する)の形状を表している。
【0053】
図7に示すように、湾曲可能部110の旋回角度ζ
1が0(deg)でねじれ角度τ
1が180(deg)のとき、湾曲可能部110の近位端に相当する先端面1201におけるワイヤ1aの位置である点P
1a1,0は、湾曲可能部110の内周に位置する。また、湾曲可能部110の遠位端111におけるワイヤ1aの位置である点P
1a1,mは、湾曲可能部110の外周上に位置する。
図7において実線で示すように、本実施形態のワイヤ710は、点P
1a1,0から点P
1a1,mまで、湾曲可能部110の中心軸113に沿ってらせん状に進むことがわかる。一方、特許文献1のワイヤ720では、湾曲可能部110の近位端に相当する先端面1201におけるワイヤ1aの位置は、点P
1a1,0をZ
1軸まわりにねじれ角度として180(deg)だけ回転させた点P''
1a1,0となる。そのため、
図7において破線で示すように、特許文献1のワイヤ720は、点P''
1a1,0から点P
1a1,mまで、湾曲可能部110の中心軸113に沿って湾曲可能部110の外周を進む。また、ねじれ非考慮のワイヤ730では、湾曲可能部110の遠位端111におけるワイヤ1aの位置は、点P
1a1,mをZ
1,m+1軸まわりに-180(deg)だけ回転させた点P''
1a1,mとなる。そのため、
図7において点線で示すように、ねじれ非考慮のワイヤ730は、点P
1a1,0から点P''
1a1,mまで、湾曲可能部110の中心軸113に沿って湾曲可能部110の内周を進む。
【0054】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10を用いたシミュレーションの結果を示す図である。具体的に、
図8には、湾曲可能部110の湾曲角度θ
1を90(deg)とし、湾曲可能部110の旋回角度ζ
1を0(deg)として、湾曲可能部110のねじれ角度τ
1を0(deg)から180(deg)まで変化させたときのワイヤ1aの長さを示している。
【0055】
図8において、実線は、
図7に示す本実施形態のワイヤ710の長さl
1a1を表し、破線は、
図7に示す特許文献1のワイヤ720の長さl
1a1_prを表し、点線は、
図7に示すねじれ非考慮のワイヤ730の長さl
1a1_woを表している。
図8において実線で示すように、本実施形態のワイヤ710は、ねじれ角度τ
1が増加すると、らせんのピッチが減少するため、そのワイヤの長さl
1a1が増加することがわかる。また、
図8において破線で示すように、ねじれ角度τ
1が0(deg)から180(deg)の間にあるとき、特許文献1のワイヤ720は、本実施形態のワイヤ710よりも湾曲可能部110の外周を進む。このため、特許文献1のワイヤ720の長さl
1a1_prは、本実施形態のワイヤ710の長さl
1a1と比べて大きくなることがわかる。さらに、
図8において点線で示すように、ねじれ非考慮のワイヤ730は、ねじれ角度τ
1によらずに湾曲可能部110の内周を進むため、そのワイヤの長さl
1a1_woは、本実施形態のワイヤ710の長さl
1a1と比べて小さくなることがわかる。
【0056】
第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10では、ワイヤ長演算部620において、湾曲可能部110を長手方向に分割することによって得られる複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとに、当該微小区間の湾曲角度Δθ、旋回角度ζ及びねじれ角度τに基づいて、当該微小区間におけるワイヤ1aの長さl1a1,j-1、l1a1,j、l1a1,j+1、・・・を演算するようにしている。そして、加算部630において、ワイヤ長演算部620で得られた複数の微小区間におけるワイヤ1aの長さl1a1,j-1、l1a1,j、l1a1,j+1、・・・を加算することによって、湾曲可能部110におけるワイヤ1aの長さl1a1を算出するようにしている。
かかる構成によれば、連続体ロボット100-1の湾曲可能部110にねじれが生じた場合にも、湾曲可能部110におけるワイヤ1aの長さを精度良く算出することができる。湾曲可能部110を湾曲させるための他のワイヤ1b及び1cについても、ワイヤ1aの場合と同様の処理を行うことにより、湾曲可能部110にねじれが生じた場合にも、湾曲可能部110におけるワイヤ1b及び1cの長さを精度良く算出することができる。これにより、連続体ロボット100-1の制御性能の向上を実現することができる。さらに、第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10における上述した構成によれば、湾曲可能部110にねじれが生じた場合にも、湾曲可能部110の目標姿勢と実際の姿勢との誤差を低減し、安全性や操作性を向上することが可能となる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下に記載する本発明の第2の実施形態における説明では、上述した第1の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0058】
<2-1.モデリング>
上述した第1の実施形態では、立体的に湾曲可能な湾曲可能部110を1つ備える連続体ロボット100-1を想定した形態であったが、第2の実施形態では、湾曲可能部110を複数(2つ)備える連続体ロボット100を想定した形態である。
【0059】
図9は、本発明の第2の実施形態で用いる連続体ロボット100の外観構成の一例を示す図である。ここで、以下の説明では、この
図9に示す第2の実施形態で用いる連続体ロボット100を「連続体ロボット100-2」と記載する。なお、
図9において、
図1及び
図2に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、また、
図9には、第2の実施形態で用いる連続体ロボット100-2のうち、2つの湾曲可能部110-1及び110-2の部分のみを図示しているものとする。即ち、第2の実施形態で用いる連続体ロボット100-2には、
図9に示す2つの湾曲可能部110-1及び110-2に加えて、
図1に示す長尺部120及びアクチュエータ130に相当する構成部も構成されているものとする。
【0060】
具体的に、
図9に示す連続体ロボット100-2は、互いに直列に設けられた複数の湾曲可能部として、第1の湾曲可能部110-1及び第2の湾曲可能部110-2を備えて構成されている。第1の湾曲可能部110-1は、
図1及び
図2に示す湾曲可能部110に対応する湾曲可能部である。第2の湾曲可能部110-2は、第1の湾曲可能部110-1よりも駆動部であるアクチュエータ130から遠い位置に設けられた湾曲可能部である。なお、本実施形態においては、複数の湾曲可能部として、第1の湾曲可能部110-1及び第2の湾曲可能部110-2の2つの湾曲部可能部を備える例を示しているが、3つ以上の湾曲部可能部を備える態様も適用可能である。
【0061】
第1の湾曲可能部110-1は、ワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cのうちの少なくとも1つのワイヤが駆動することによって立体的に湾曲可能な構成部である。第1の湾曲可能部110-1の遠位端111には、第1の湾曲可能部110-1の中心軸周りのねじれ量を示すねじれ角度τ
1を検出するための小型のセンサコイル1111が設けられている。
図9に示すワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cは、
図9に示す複数のワイヤガイド112と
図1に示す長尺部120に設けられた孔に案内される。ここで、本実施形態では、
図1に示す長尺部120の先端面1201を近位端とし、当該近位端からからセンサコイル1111が設けられている遠位端111までが、第1の湾曲可能部110-1であるものとする。そして、
図9に示すワイヤ1a、ワイヤ1b及びワイヤ1cは、一端が
図9に示す第1の湾曲可能部110-1の遠位端111(センサコイル1111が設けられているワイヤガイド)に接続され、他端が
図1に示す対応するアクチュエータ130-1a~130-1cに接続される。本実施形態では、アクチュエータ130-1a~130-1cを第1の湾曲可能部110-1の中心軸方向に駆動すると、ワイヤ1a~1cがそれぞれ押し引きされ、第1の湾曲可能部110-1が立体的に湾曲する。
【0062】
第2の湾曲可能部110-2は、ワイヤ2a、ワイヤ2b及びワイヤ2cのうちの少なくとも1つのワイヤが駆動することによって立体的に湾曲可能な構成部である。第2の湾曲可能部110-2の遠位端121には、第2の湾曲可能部110-1の中心軸周りのねじれ量を示すねじれ角度τ
2を検出するための小型のセンサコイル1211が設けられている。
図9に示すワイヤ2a、ワイヤ2b及びワイヤ2cは、
図9に示す複数のワイヤガイド122と、第1の湾曲可能部110-1の遠位端111及び複数のワイヤガイド112と、
図1に示す長尺部120に設けられた孔に案内される。即ち、本実施形態では、第1の湾曲可能部110-1の遠位端111及び複数のワイヤガイド112には、ワイヤ1a~1cの案内孔に加えて、ワイヤ2a~2cを案内するための孔が設けられている。ここで、本実施形態では、
図9に示す第1の湾曲可能部110-1の遠位端111を近位端とし、当該近位端からからセンサコイル1211が設けられている遠位端121までが、第2の湾曲可能部110-2であるものとする。そして、
図9に示すワイヤ2a、ワイヤ2b及びワイヤ2cは、一端が
図9に示す第2の湾曲可能部110-2の遠位端121(センサコイル1211が設けられているワイヤガイド)に接続され、他端が
図1に示すアクチュエータ130-1a~130-1cに対応する不図示のアクチュエータ130-2a~130-2cに接続される。本実施形態では、この不図示のアクチュエータ130-2a~130-2cを第2の湾曲可能部110-2の中心軸方向に駆動すると、ワイヤ2a~2cがそれぞれ押し引きされ、第2の湾曲可能部110-2が立体的に湾曲する。
【0063】
図10は、
図9に示す第1の湾曲可能部110-1及び第2の湾曲可能部110-2のモデルの一例を示す図である。この
図10において、
図3及び
図9に示す構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0064】
図10では、第1の湾曲可能部110-1の遠位端111を原点O
2とし、この遠位端111の法線方向にZ
2軸をとり、円周方向にX
2軸をとり、X
2軸とZ
2軸に直交するようにY
2軸をとる。そして、X
2Y
2平面内で原点O
2から第2の湾曲可能部110-2の遠位端121の中心点O
3に向かう方向にW
2軸をとり、X
2軸とW
2軸とのなす角度を第2湾曲可能部の旋回角度~ζ
2とする。ここで、第2湾曲可能部の旋回角度~ζ
2における符号「~」は、相対座標系であることを示している。また、以下の数式では、相対座標系であることを示す符号(~)を各要素の上に付しているが、本明細書に記載の文章中では、書式の関係から旋回角度「~ζ
2」等のように横にずらした記載としており、以降の説明では、これらは同じものを示しているものとする。
【0065】
図10では、第2の湾曲可能部110-2の遠位端121の中心点O
3を原点とし、この遠位端121の法線方向にZ
3軸をとる。そして、Z
2軸とZ
3軸とのなす角度を、第1の湾曲可能部110-1に対する第2の湾曲可能部110-2の相対湾曲角度~θ
2とする。
【0066】
本実施形態では、ワイヤ2aのうち、第1の湾曲可能部110-1を通過する部分の長さl2a1と第2の湾曲可能部110-2を通過する部分の長さl2a2を、第1の実施形態と同様の方法を用いて演算する。そして、本実施形態では、長さl2a1と長さl2a2を加算して、第1の湾曲可能部110-1及び第2の湾曲可能部110-2におけるワイヤ2aの全体の長さl2aを算出する。
【0067】
まず、第1の湾曲可能部110-1におけるワイヤ2aの長さ(第1の湾曲可能部110-1を通過するワイヤ2aの長さ)l
2a1を導出する。第1の湾曲可能部110-1のj番目の微小区間におけるワイヤ2aの長さl
2a1,jは、原点O
1,jから近位端である先端面1201へ向かうベクトルp
2a1,jと遠位端111へ向かうベクトルp
2a1,j+1との差となる。したがって、第1の実施形態の(11)式と同様に、l
2a1,jは、以下の(21)式で表される。
【数14】
【0068】
ワイヤ1aに対するワイヤ2aの位相をξ
2とすると、ベクトルp
2a1,jは、(1)式と同様に、以下の(22)式で表される。
【数15】
【0069】
また、ベクトルp
2a1,j+1は、原点O
1,jから、点P
2a1,j+1をX
1,jY
1,j平面へ射影した点P'
2a1,jへのベクトルp
2a1,jを用いて、(8)式と同様に、以下の(23)式で表される。
【数16】
【0070】
また、ベクトルp'
2a1,jは、(2)式と同様に、以下の(24)式で表される。
【数17】
【0071】
そして、長さl
2a1,jを、以下の(25)式を用いて全ての微小区間について加算することで、長さl
2a1を得る。
【数18】
【0072】
次に、第2の湾曲可能部110-2におけるワイヤ2aの長さ(第2の湾曲可能部110-2を通過するワイヤ2aの長さ)l
2a2を導出する。第2の湾曲可能部110-2のk番目(k=1,2,…,m
2)の微小区間におけるワイヤ2aの長さl
2a2,kは、微小区間の原点O
2,kから近位端111へ向かうベクトルp
2a2,kと遠位端121へ向かうベクトルp
2a2,k+1との差となるため、(11)式と同様に、以下の(26)式で表される。
【数19】
【0073】
ベクトルp
2a2,kは、(1)式と同様に、k番目の微小区間のねじれ角度τ
2,kを用いて、以下の(27)式で表される。
【数20】
【0074】
また、ベクトルp
2a2,k+1は、原点O
2,kから、点P
2a2,k+1をX
2,kY
2,k平面へ射影した点P'
2a2,kへのベクトルp
2a2,kと、湾曲角度~θ
2,kを用いて、(8)式と同様に、以下の(28)式で表される。
【数21】
【0075】
また、ベクトルp'
2a2,kは、(2)式と同様に、以下の(29)式で表される。
【数22】
【0076】
ただし、第1の実施形態の(3)式~(7)式と同様に、本実施形態では、t
2,k、Δl
2,k、Δ~θ
2,k、τ
2,kを、それぞれ、以下の(30)式~(34)式とする。
【数23】
【0077】
そして、長さl
2a2,kを、以下の(35)式を用いて全ての微小区間について加算することで、長さl
2a2を得る。
【数24】
【0078】
そして、以下の(36)式により、第1の湾曲可能部110-1及び第2の湾曲可能部110-2におけるワイヤ2aの全体の長さl
2aを算出する。
【数25】
【0079】
他のワイヤ2b及び2cについても、ワイヤ2aと同様に、第1の湾曲可能部110-1を通過する部分の長さと第2の湾曲可能部110-2を通過する部分の長さをそれぞれ演算し、それらを加算することで、第1の湾曲可能部110-1及び第2の湾曲可能部110-2におけるワイヤ2b及び2cの全体の長さl2b及びl2cを算出することができる。
【0080】
<2-2.制御系>
図11は、本発明の第2の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10の機能構成の一例を示す図である。ここで、以下の説明では、この
図11に示す第2の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10を「連続体ロボット制御システム10-2」と記載する。この
図11において、
図5及び
図10に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0081】
連続体ロボット制御システム10-2は、
図11に示すように、連続体ロボット100(より具体的には、
図9に示す連続体ロボット100-2)、連続体ロボット制御装置200、入力装置310、及び、入力装置320を有して構成されている。即ち、連続体ロボット制御システム10-2は、ワイヤ1a~1cが駆動することによって湾曲する第1の湾曲可能部110-1と、ワイヤ2a~2cが駆動することによって湾曲する第2の湾曲可能部110-2と、ワイヤ1a~1cを駆動するアクチュエータ(駆動部)130-1a~130-1cと、ワイヤ2a~2cを駆動するアクチュエータ(駆動部)130-2a~130-2cを備える連続体ロボット100-2の制御システムである。
【0082】
図11に示す連続体ロボット制御システム10-2では、
図5に示す連続体ロボット制御システム10-1に対して、まず、入力装置320が追加されて構成されている。
【0083】
入力装置310の入力部311は、連続体ロボット制御装置200に対して、第1の湾曲可能部110-1の湾曲角度(目標湾曲角度)θ1及び第1の湾曲可能部110-1の旋回角度(目標旋回角度)ζ1を入力する構成部である。入力装置310の磁気センサ部312は、第1の湾曲可能部110-1の遠位端111に設けられているセンサコイル1111で得られた磁界の強さ・向きに基づいて、第11の湾曲可能部110-1の中心軸113周りのねじれ角度τ1を計測し、これを第1の湾曲可能部110-1のねじれ角度τ1として連続体ロボット制御装置200に入力する構成部である。ここで、本実施形態においては、磁気センサ部312及びセンサコイル1111は、湾曲可能部110のねじれ角度τ1を取得する「ねじれ角度取得手段」を構成する。
【0084】
入力装置320は、連続体ロボット制御装置200に対して情報を入力する装置であり、入力部321及び磁気センサ部322を有して構成されている。入力部321は、連続体ロボット制御装置200に対して、第2の湾曲可能部110-2の湾曲角度(目標湾曲角度)θ2及び第2の湾曲可能部110-2の旋回角度(目標旋回角度)ζ2を入力する構成部である。磁気センサ部322は、第2の湾曲可能部110-2の遠位端121に設けられているセンサコイル1211で得られた磁界の強さ・向きに基づいて、第2の湾曲可能部110-2の中心軸113周りのねじれ角度τ2を計測し、これを第2の湾曲可能部110-2のねじれ角度τ2として連続体ロボット制御装置200に入力する構成部である。ここで、本実施形態においては、磁気センサ部322及びセンサコイル1211は、湾曲可能部110のねじれ角度τ2を取得する「ねじれ角度取得手段」を構成する。
【0085】
図11に示す連続体ロボット制御装置200は、入力装置310及び入力装置320から入力された情報に基づいて、連続体ロボット100(より具体的には、
図9に示す連続体ロボット100-2)を制御する装置である。この
図11に示す連続体ロボット制御装置200は、運動学演算部211~213、位置制御部221~222、及び、加算部231を有して構成されている。ここで、
図11に示す運動学演算部211及び位置制御部221は、それぞれ、
図5に示す運動学演算部211及び位置制御部221と同様の処理を行うものであるため、その説明は省略する。
【0086】
運動学演算部212は、入力装置310から入力された情報である第1の湾曲可能部110-1の湾曲角度θ1、旋回角度ζ1及びねじれ角度τ1に基づいて、(25)式を用いて、第1の湾曲可能部110-1におけるワイヤ2a,2b及び2cの長さl2a1,l2b1及びl2c1を演算する構成部である。また、運動学演算部213は、入力装置320から入力された情報である第2の湾曲可能部110-2の湾曲角度θ2、旋回角度ζ2及びねじれ角度τ2に基づいて、(35)式を用いて、第2の湾曲可能部110-2におけるワイヤ2a,2b及び2cの長さl2a2,l2b2及びl2c2を演算する構成部である。
【0087】
加算部231は、運動学演算部212で算出された第1の湾曲可能部110-1におけるワイヤ2a,2b及び2cの長さl2a1,l2b1及びl2c1と、運動学演算部213で算出された第2の湾曲可能部110-2におけるワイヤ2a,2b及び2cの長さl2a2,l2b2及びl2c2とを、各ワイヤごとに加算することによって、第1の湾曲可能部110-1及び第2の湾曲可能部110-2におけるワイヤ2a~2cの全体の長さl2a~l2cを算出する。
【0088】
位置制御部222は、第2の湾曲可能部110-2におけるワイヤ2a,2b及び2cの長さが、それぞれ、加算部231によって算出された長さl2a,l2b及びl2cとなるように、連続体ロボット100-2のアクチュエータ130-2a,130-2b及び130-2cに対して駆動指令f2a,f2b及びf2cを出力する構成部である。即ち、位置制御部222は、運動学演算部212及び運動学演算部213で得られた第1の湾曲可能部110-1及び第2の湾曲可能部110-2におけるワイヤ2a~2cの長さl2a1,l2b1,l2c1、及び、l2a2,l2b2,l2c2に基づいて、アクチュエータ130-2a~130-2cによるワイヤ2a~2cの駆動を制御する制御手段である。
【0089】
なお、本実施形態では、2つの湾曲可能部110-1~110-2を備える連続体ロボット100-2を想定した例を示したが、一般に、3以上のn個の湾曲可能部を備える連続体ロボットにおいても同様である。即ち、第i(i=1,2,…,n)の湾曲可能部のワイヤの全長は、第1の湾曲可能部から第iの湾曲可能部を通過するワイヤの長さをそれぞれ演算するi個の運動学演算部と、それらの出力を加算する加算部を用いて導出されることになる。
【0090】
以上説明した第2の実施形態によれば、連続体ロボット100-2の複数の湾曲可能部110にねじれが生じた場合にも、1つ及び複数の湾曲可能部110におけるワイヤの長さを精度良く算出することができる。これにより、連続体ロボット100-2の制御性能の向上を実現することができる。さらに、連続体ロボット100-2の複数の湾曲可能部110にねじれが生じた場合にも、1つ及び複数の湾曲可能部110の目標姿勢と実際の姿勢との誤差を低減し、安全性や操作性を向上することが可能となる。
【0091】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、以下に記載する本発明の第3の実施形態における説明では、上述した第1及び第2の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1及び第2の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0092】
第3の実施形態では、湾曲可能部110の湾曲角度θ、旋回角度ζ及びねじれ角度τの分布が一様とならない連続体ロボット100に対する制御システムを適用する。
【0093】
第1の実施形態と第2の実施形態では、(7)式と(34)式に示すように、湾曲可能部110のねじれ量であるねじれ角度τが一様に分布すると仮定して、各微小区間のねじれ角度τを導出している。同様に、第1の実施形態と第2の実施形態では、(5)式と(32)式に示すように、湾曲可能部110は、曲率が一定となるように湾曲すると仮定して、各微小区間の湾曲角度Δθを導出している。しかしながら、大腸や肺などの器官では、その経路が複雑に湾曲するため、これらの器官に侵入する湾曲可能部110では、上述の仮定が常に成立しているとは限らない。このような場合には、湾曲可能部110の侵入経路の形状と一致するように、各微小区間の湾曲角度θ、旋回角度ζ及びねじれ角度τを求め、これらに基づいて湾曲可能部110における各ワイヤの長さを演算することで、連続体ロボット100の制御性能を向上させることができる。そこで、本実施形態の制御系では、まず、連続体ロボット100の湾曲可能部110の遠位端が狭小空間上のある点を通過するときの湾曲角度θ、旋回角度ζ及びねじれ角度τを記憶する。そして、湾曲可能部110の微小区間がその点に到達すると、これらの角度を読み出して、湾曲可能部110における各ワイヤの長さを演算するために用いる。
【0094】
ここで、以下に記載する第3の実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0095】
図12は、本発明の第3の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10の外観構成の一例を示す図である。ここで、以下の説明では、この
図12に示す第3の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10を「連続体ロボット制御システム10-3」と記載する。また、この
図12において、
図1に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0096】
図12に示す連続体ロボット制御システム10-3は、湾曲可能部110、長尺部120、アクチュエータ・制御系内蔵ボックス1210、直動案内機構部1220、及び、位置センサ部1230を有して構成されている。
【0097】
アクチュエータ・制御系内蔵ボックス1210は、例えば、
図1に示すアクチュエータ130-1a~130-1cや、
図5に示す連続体ロボット制御装置200及び入力装置310等を内蔵する構成部である。
【0098】
直動案内機構部1220は、長尺部120及び湾曲可能部110が取り付けられたアクチュエータ・制御系内蔵ボックス1210を直動可能に案内する構成部である。具体的に、直動案内機構部1220は、湾曲可能部110の長手方向に前後進する。
【0099】
位置センサ部1230は、連続体ロボット100の湾曲可能部110における前後進方向の位置zbを検出する。より具体的に、位置センサ部1230は、湾曲可能部110の初期位置からの変位zbを検出する。
【0100】
第3の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10は、
図5に示す第1の実施形態に係る連続体ロボット制御システム10-1と同様である。
【0101】
図13は、本発明の第3の実施形態を示し、
図5に示す運動学演算部211の機能構成の一例を示す図である。この
図13において、
図6に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0102】
図13の第3の実施形態における運動学演算部211は、
図5の第1の実施形態における運動学演算部211に対して、
図12に示す位置センサ部1230で検出された湾曲可能部110の初期位置からの変位z
bが角度演算部610に更に入力される点が異なる。即ち、第3の実施形態では、角度演算部610は、入力装置310から入力された情報である湾曲可能部110の湾曲角度θ
1、旋回角度ζ
1及びねじれ角度τ
1に加えて、位置センサ部1230で検出された湾曲可能部110の初期位置からの変位z
bに基づいて、湾曲可能部110を長手方向に分割することによって得られる複数の微小区間におけるそれぞれの微小区間ごとに、当該微小区間の湾曲角度Δθ、旋回角度ζ及びねじれ角度τを演算する。
【0103】
長尺部120及び湾曲可能部110が取り付けられたアクチュエータ・制御系内蔵ボックス1210が直動案内機構部1220を前後進するとき、角度演算部610は、位置センサ部1230から湾曲可能部110の初期位置からの変位zbを取得して記憶するとともに、入力装置310から、変位zbに対応する湾曲可能部110の湾曲角度θ1、旋回角度ζ1及びねじれ角度τ1を取得して記憶する。
【0104】
アクチュエータ・制御系内蔵ボックス1210が直動案内機構部1220の初期位置から或る位置に移動して変位z
bになる場合に、湾曲可能部110のj番目の微小区間の近位端側の位置z
b1,jは、以下の(37)式で表される。
【数26】
【0105】
そこで、角度演算部610は、以下の(38)式~(40)式を用いて、湾曲可能部110のj番目の微小区間における湾曲角度Δθ
1,j、旋回角度ζ
1,j及びねじれ角度τ
1,jを演算する。
【数27】
【0106】
これにより、ワイヤ長演算部620は、湾曲可能部110が狭小空間に沿って位置zb1,jを通過するときの湾曲角度Δθ、旋回角度ζ及びねじれ角度τに基づいて、微小区間のワイヤの長さを演算することが可能となる。そのため、複雑に湾曲する狭小空間に湾曲可能部110が侵入するときにも連続体ロボット100の制御性能を向上させることができる。
【0107】
なお、本実施形態では、ねじれ角度τが非一様に分布する要因として狭小空間からの外力を考慮する例を示したが、外力以外の要因を考慮して、各ワイヤの長さを演算することも可能である。例えば、湾曲可能部110におけるねじれ剛性が非一様に分布する連続体ロボット100に対しては、j番目の微小区間のねじれ剛性に対応する係数α
1,jを用いて、以下の(41)式を用いて、ねじれ角度τ
1,jを演算すれば、剛性の分布を考慮してワイヤの長さを演算することが可能となる。
【数28】
【0108】
これは、湾曲角度θや旋回角度ζについても同様である。
【0109】
(その他の実施形態)
上述した第1~第3の実施形態では、入力装置に構成した入力部や磁気センサ部を用いて湾曲可能部110の湾曲角度や旋回角度、ねじれ角度を取得する制御系の例を示したが、本発明においてはこの形態に限定されるものではない。例えば、湾曲可能部110の変形量を計測する変位センサや、湾曲可能部110の形状を撮影した画像情報を用いてこれらの角度を取得する形態も、本発明に適用可能である。また、湾曲可能部110が侵入する狭小空間の形状から、湾曲可能部110の湾曲角度や旋回角度、ねじれ角度を演算して取得する形態も、本発明に適用可能である。
【0110】
また、上述した第1~第3の実施形態では、1つの湾曲可能部110を湾曲させるためのワイヤとして3本のワイヤの押し引きにより湾曲可能部110を湾曲させる例を示したが、本発明においてはこの形態に限定されるものではない。即ち、上述した第1~第3の実施形態では、1つの湾曲可能部110を立体駆動する連続体ロボット100の例を示したが、平面上で湾曲する連続体ロボットや、ワイヤの本数が異なる連続体ロボットに対しても、本発明を適用することが可能である。
【0111】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本発明に含まれる。
【0112】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0113】
1a~1c:ワイヤ、10:連続体ロボット制御システム、100:連続体ロボット、110:湾曲可能部、120:長尺部、130:アクチュエータ、200:連続体ロボット制御装置、211:運動学演算部、221:位置制御部、310:入力装置、311:入力部、312:磁気センサ部、610:角度演算部、620:ワイヤ長演算部、621:ワイヤ長演算器、630:加算部