(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】計測装置、及び、計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/20 20060101AFI20240325BHJP
G01B 15/04 20060101ALI20240325BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20240325BHJP
G01B 17/02 20060101ALI20240325BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
G01B21/20 Z
G01B15/04 A
G01B11/06 G
G01B17/02 Z
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2020142878
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷崎 広幸
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/036512(WO,A1)
【文献】特開2007-285923(JP,A)
【文献】特開2001-201470(JP,A)
【文献】特開平11-183406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
15/00-15/08
17/00-17/08
21/00-21/32
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が載置されるステージと、
前記ステージにX線を照射するX線照射部と、
前記X線の照射により前記被検体から発せられる散乱X線を検出するX線検出部と、
前記散乱X線を光電変換して得られる回折像を解析して前記被検体における前記X線が照射される計測領域の表面輪郭形状を推定する解析部と、
を備える計測装置において、
前記被検体の前記計測領域には、第1の膜と、前記第1の膜と異なる材料で形成された第2の膜が積層されており、かつ、前記計測領域の一部に前記第2の膜を貫通する孔部が形成されており、
前記ステージは、前記被検体が載置される面に平行な軸に対し回動可能になされており、
前記解析部は、前記ステージを前記軸に対し回動角を変えながら取得した複数の前記回折像と、多波長光計測またはレーザー超音波計測の少なくともいずれか一方の計測手法を用いて前記被検体を計測して得られる計測データとに基づき、前記被検体の前記計測領域における、前記第1の膜と前記第2の膜との界面を含む前記表面輪郭形状を推定することを特徴とする、計測装置。
【請求項2】
前記計測データは、前記第2の膜の膜厚であることを特徴とする、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記計測データは、多波長光スペクトルであることを特徴とする、請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記計測データは、レーザー超音波計測波形であることを特徴とする、請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
前記多波長光スペクトルにおける最長波長が2μm以上であることを特徴とする、請求項3に記載の計測装置。
【請求項6】
被検体に対してX線を照射し、
前記X線の照射により前記被検体から発せられる散乱X線を検出し、
前記散乱X線を光電変換して得られる回折像を解析して前記被検体における前記X線が照射される計測領域の表面輪郭形状を推定する計測方法において、
前記被検体の前記計測領域には、第1の膜と、前記第1の膜と異なる材料で形成された第2の膜が順に積層されており、かつ、前記計測領域の一部に前記第2の膜を貫通する孔部が形成されており、
前記被検体に対する前記X線の照射角を変えながら取得した複数の前記回折像と、多波長光計測またはレーザー超音波計測の少なくともいずれか一方の計測手法を用いて前記被検体を計測して得られる計測データとに基づき、前記被検体の前記計測領域における、前記第1の膜と前記第2の膜との界面を含む前記表面輪郭形状を推定することを特徴とする、計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、計測装置、及び、計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上の成膜部位に形成された深孔・深溝の深さや側壁の3次元形状を計測する装置として、透過型小角X線散乱(Transmission Small Angle X-ray Scattering、以下、T-SAXSと示す)技術を用いた計測装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、エッチングマスクと加工対象膜との界面、及び、エッチングにより加工した孔の3次元形状を、非破壊で精度よく計測することができる、計測装置、及び、計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の計測装置は、被検体が載置されるステージと、前記ステージにX線を照射するX線照射部と、前記X線の照射により前記被検体から発せられる散乱X線を検出するX線検出部と、前記散乱X線を光電変換して得られる回折像を解析して前記被検体における前記X線が照射される計測領域の表面輪郭形状を推定する解析部とを備える。
【0006】
前記被検体の前記計測領域には、第1の膜と、前記第1の膜と異なる材料で形成された第2の膜が積層されており、かつ、前記計測領域の一部に前記第2の膜を貫通する孔部が形成されている。
【0007】
前記ステージは、前記被検体が載置される面に平行な軸に対し回動可能になされている。
【0008】
また、前記解析部は、前記ステージを前記軸に対し回動角を変えながら取得した複数の前記回折像と、多波長光計測またはレーザー超音波計測の少なくともいずれか一方の計測手法を用いて前記被検体を計測して得られる計測データとに基づき、前記被検体の前記計測領域における、前記第1の膜と前記第2の膜との界面を含む前記表面輪郭形状を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの構成例を示すブロック図。
【
図2】T-SAXS計測装置の構成の一例を説明する概略図。
【
図3】T-SAXS計測装置の構成の一例を説明する概略図。
【
図4】T-SAXS計測装置の構成の一例を説明する概略図。
【
図5】X線の入射角度と回折像との関係を説明する図。
【
図6】T-SAXS計測装置の構成の一例を説明するブロック図。
【
図7】多波長光計測装置の構成の一例を説明する概略図。
【
図8】多波長光計測装置の構成の一例を説明する概略図。
【
図9】多波長光測定装置の構成の一例を説明する概略ブロック図。
【
図10】多波長光測定装置の構成の別の一例を説明する概略ブロック図。
【
図11】3次元構造のNANDメモリのメモリセルアレイを有する半導体記憶装置の一部領域の断面図。
【
図12】メモリホールを形成する工程について説明する概略断面図。
【
図13】メモリホールの形成手順の一例を説明するフローチャート。
【
図14】第1実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャート。
【
図15】3次元構造のNANDメモリのメモリセルアレイを有する半導体記憶装置の一部領域の断面図。
【
図16】メモリセルアレイ下部に敷設する配線のパターンの一例を説明する概略平面図
【
図17】メモリセルアレイ下部に敷設する配線のパターンの一例を説明する概略平面図
【
図18】第2実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャート。
【
図19】第3実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャート。
【
図20】第4実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの構成例を示すブロック図。
【
図21】レーザー超音波計測装置の構成の一例を説明する概略図。
【
図22】第4実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャート。
【
図23】第5実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャート。
【
図24】第6実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの構成例を示すブロック図である。本実施形態の計測システム1は、T-SAXS計測装置2と、多波長光計測装置3と、ホストコンピュータ4と、データベース5とを備える。実施形態の計測システム1は、被検体の表面に形成された周期パターンの3次元形状を計測するために用いられる。より具体的には、実施形態の計測システム1は、被検体に形成された孔の深さや膜の厚さを含む、3次元形状プロファイルを計測するために用いられる。計測システム1は、T―SAXS計測装置2と多波長光計測装置3との間で被検体を搬送する搬送装置6を備えてもよい。また、計測システム1は、計測中に取得したデータ等を表示させる表示装置を更に備えてもよい。
【0011】
T-SAXS計測装置2は、被検体の表面に形成された周期パターンの3次元形状を、透過X線を用いて計測する装置である。被検体へのX線の入射角度を変えて取得した複数枚の回折像(SAXS像群)を用いて、スポットサイズ(例えば、50~1000μm角程度)内に形成された周期パターンの平均的な3次元形状を計測することができる。
【0012】
図2~
図4は、T-SAXS計測装置の構成の一例を説明する概略図である。
図2に示すように、T-SAXS計測装置2は、X線源211から出射されたX線を、X線収束機構213によりビームスポットを収束させ、計測ステージ22に保持された被検体(表面に孔や溝などの周期パターンが形成された半導体基板)7の表面に照射する。
【0013】
図3に示すように、被検体7に照射されたX線は、被検体7の表面に形成されたパターンよって散乱される。散乱されたX線は、検出器232において、被検体7の特性を示す信号(回折像)に変換される。
【0014】
図4に示すように、被検体7は、被検体7表面と平行な直行する2方向(x方向、y方向)のいずれか一方、または両方を回動軸として回動可能に設置されている。なお、被検体7表面とは、被検体7を構成する半導体基板の表面をいう。設定された回動軸を中心に、被検体7を回動させた状態でX線を照射することで、被検体7に対するX線の入射角θiを調整することができる。T-SAXS計測装置2は、入射角θiを少しずつ変化させながら複数の回折像(回折像群)を取得する。
図5は、X線の入射角度と回折像との関係を説明する図である。取得した回折像群を、様々な3次元形状パターンに対応するX線回折光の強度分布をシミュレーションにより算出した複数の回折像群と比較する。複数の回折像群の中から一致度の高い回折像群を抽出し、この回折像群に対応する3次元形状パターンを、被検体7の表面に形成されたパターンであると推定する。
【0015】
図6は、T-SAXS計測装置の構成の一例を説明する概略ブロック図である。T-SAXS計測装置2は、X線照射部21と、計測ステージ22と、X線検出部23と、解析部24とを備える。また、T-SAXS計測装置2は、搬送部25と、位置計測部26と、動作制御部27も備える。なお、
図6において、太線は、被検体7の搬送路を示している。また、点線は、照射光及び回折光の光路を示している。また、実線は、データや情報(電気信号)を伝達する信号伝達路を示している。
【0016】
X線照射部21は、X線源211と、シャッター212と、X線収束機構213とから主に構成される。X線源211は、所定の波長及びエネルギーを有するX線を生成する部位である。X線源211は、例えば、固体または液体ターゲットへの粒子照射によりX線を励起させるように構成された電子ビーム源として構成される。シャッター212は、計測ステージ22とX線源211との間に設置される。シャッター212は開閉動作が可能であり、動作制御部27によって制御される。シャッター212が開状態の場合、X線源211から出射されたX線が計測ステージ22に照射される。シャッター212が閉状態の場合、X線の光路が遮られるため、X線は計測ステージ22に照射されない。
【0017】
X線収束機構213は、第1スリット213aと、ミラー213bと、第2スリット213cとから主に構成される。X線収束機構213は、シャッター212と計測ステージ22との間に設置される。第1スリット213aは、出射X線の角度広がりを制限するために用いられる。ミラー213bは、出射X線を収束させ、ビームサイズを抑制する。第2スリット213cは、計測ステージ22に近接して配置され、出射X線のビームサイズを更に絞り込む。すなわち、X線収束機構213は、出射X線の散乱線が被検体に照射されるのを防止し、また、被検体7におけるX線の照射範囲を絞り込むために設けられている。X線収束機構213により絞り込まれたX線は、計測ステージ22に設置された被検体7の撮像領域に照射される。
【0018】
計測ステージ22は、被検体7を、x方向、及び/または、y方向を回動軸として回動可能に支持する部材である。計測ステージ22は、例えば、筒状または棒状部材で構成される支持軸と、中空のリング状部材であるチャックとから構成される。チャックは、支持軸の一端に回動可能に係合されている。
【0019】
また、計測ステージ22は、図示しないモータなどの駆動手段により、x方向、及び/または、y方向に移動すると共に、x方向及びy方向と直交する方向(z方向)に移動可能になされている。x方向、及び/または、y方向に計測ステージ22を移動させることで、被検体7のX線が照射される範囲である撮像領域7aを移動させることができる。また、z方向に計測ステージ22を移動させることで、X線検出部23により検出される被検体7の回折像のフォーカスを変更することができる。被検体7がチャックに保持された状態において、図示しないモータなどの駆動手段により、被検体7の回動中心と計測箇所のウエハ表面に垂直な軸とを一致させるように、支持軸及び計測ステージは動作可能に構成されている。
【0020】
X線検出部23は、真空管路231と、検出器232とから主に構成される。真空管路231は、内部が真空状態になされた柱状部材であり、計測ステージ22と検出器232との間に配置される。計測ステージ22に載置された被検体7から発生した回折X線は、真空管路231の一端面から真空管路231内に入射され、真空管路231内を通過して、真空管路231の他端面から検出器232に向けて出射される。真空管路231は、環境(空気攪乱など)による外乱により回折X線が影響を受け、回折像にノイズが重畳されることを防ぐために設けられる。
【0021】
検出器232は、被写体7から発生した回折X線を受光し、回折像を生成する。検出器232は、例えば、2次元のアレイ状に配置された複数個の半導体検出素子(固体撮像素子等)で構成される。半導体検出素子としては、例えば、CCD(電荷結合素子)や、CMOSイメージセンサが用いられる。被検体7の撮像領域において照射X線により生成された回折X線は、検出器232の投影領域に配置された半導体検出素子により光電変換され、撮像信号(回折像)として出力される。
【0022】
解析部24は、検出器232から出力された回折像群(被写体7の回動角を変えて取得した複数の回折像)と、予め様々な3次元形状パターンに対応するX線回折光の強度分布をシミュレーションにより算出した回折像群とを比較する。複数の回折像群の中から一致度の高い回折像群を抽出し、この回折像群に対応する3次元形状パターンを、被検体7の表面に形成されたパターンであると推定する。また、ホストコンピュータ4を介して多波長計測装置3で計測された計測データを取得し、該計測データも用いて3次元形状パターンを推定することも可能になされている。
【0023】
搬送部25は、ロードポート251と、搬送ユニット252と、プリアライナ253を備える。ロードポート251は、T-SAXS計測装置2内に被検体7を挿入するために設けられた入口部である。搬送ユニット252は、T-SAXS計測装置2内の各部位に被検体7を自動搬送する部位である。プリアライナ253は、被検体7を計測ステージ22に設置するにあたり、被検体7に設けられた基準位置(例えば、ノッチ、オリフラなど)を、所望の位置に合わせる。
【0024】
T-SAXS計測装置2の計測ステージ22に被検体7をセットする場合、搬送部25は以下のように動作する。ロードポート251に被検体7が収納された容器が設置されると、搬送ユニット252は、容器から被検体7をピックアップし、プリアライナ253へ移動させる。プリアライナ253において、被検体7のx方向及びy方向の位置合わせ、及び、xy平面内において被検体7中心を軸とする回転方向の位置合わせが行われた後、搬送ユニット252が再び被検体7をピックアップし、計測ステージ22に設置する。また、回折像群の取得が終了し、被検体7をT-SAXS計測装置2から取り出す際には、搬送ユニット252が計測ステージ22から被検体7をピックアップし、ロードポート251に設置された容器内に移動させる。上述した搬送部25の動作は、動作制御部27によって制御される。
【0025】
位置計測部26は、アライメントカメラ261と、被検体傾き計測部262とを有する。アライメントカメラ261は、X線照射部21から照射されるX線の計測ステージ22上における照射位置と、被検体7における計測対象位置とのずれ量(xy平面におけるずれ量)を検出する。検出したずれ量は、動作制御部27に出力される。被検体傾き計測部262は、計測ステージ22に設置された被検体7の計測位置における表面の角度を計測する。
【0026】
動作制御部27は、T-SAXS計測装置2の各部位の動作を制御する。動作制御部27は、例えば、X線照射部21やX線検出部23のパラメータを指示したり、計測ステージ22の回動角度や回動方向を指示したり、搬送部25の動作を指示したりする。
【0027】
多波長光計測装置3は、被検体の表面に形成された周期パターンの膜構造(膜厚)や3次元形状を計測する装置である。所定の波長帯域に含まれる多波長光を、被検体に対して所定の入射角で照射し、回折光の反射強度または異なる偏光条件間における位相差の分光特性を取得する。回折光の分光特性を用いて、照射光のスポットサイズ内に形成された周期パターンの膜構造(特に、最表面に形成された膜の膜厚)や、3次元形状を計測することができる。多波長光計測装置3は、T-SAXS計測装置2よりも波長が長い光を用いて計測を行っている。故に、3次元形状の計測精度はT-SAXS計測装置2より劣る反面、電子密度差が小さい複数の膜(例えば、シリコン基板とシリコン酸化膜や、アモルファスカーボン膜とシリコン酸化膜など)を個々に識別することができる。
【0028】
図7、及び、
図8は、多波長光計測装置の構成の一例を説明する概略図である。
図7は、多波長光計測装置3の一例として、OCD(Optical Critical Dimesion)手法を用いた計測装置を示している。OCD手法は、スキャトロメトリー(Scatterometry)とも呼ばれる。OCD手法を用いた多波長光計測装置は、例えば、スポットサイズ約40μm角の多波長光(波長190nm~2200nm程度)を用いて計測を行う。
【0029】
図7に示すように、多波長光計測装置3は、多波長光源311から出射された多波長光(例えば、白色光)を、ポラライザ(偏向子)312、コンペンセータ(補償子)313により偏向状態を調整し、被検体7の表面に照射する。
図8に示すように、被検体7に照射された多波長光は、被検体7の表面に形成されたパターンの膜構造によって、波長ごとに偏向状態や反射強度が変化される。被検体7から反射した多波長光は、アナライザ(検光子)332により偏向状態が調整された後、プリズム333によって波長分解される。波長分解された検出器334において、被検体7の特性を示す信号(回折光強度スペクトル)に変換される。
【0030】
なお、多波長光測定装置3は、
図8に示すように、多波長光を斜入射させて偏向状態の変化を測定する方法(Spectroscopic Elipsometry、分光エリプソメトリー)と、多波長光を垂直入射させて反射強度の変化を測定する方法(Spectroscopic Reflectometry、分光リフレクトメトリー)とに大別される。被検体7に形成された表面パターンに適した手法を用いることができる。
【0031】
RCWA(Rigorous Couple-Wave Analysis)法を用いたシミュレーションにより様々な3次元形状パターン及び膜構造に対応する回折光強度スペクトルを算出し、分光特性ライブラリを作成しておく。取得した回折光強度スペクトルを、この分光特性ライブラリと比較し、一致度の高いスペクトルを抽出する。抽出されたスペクトルに対応する3次元形状パターン及び膜構造を、被検体7の表面に形成されたパターン及び膜構造であると推定する。
【0032】
図9は、多波長光測定装置の構成の一例を説明する概略ブロック図である。多波長光測定装置3は、多波長光照射部31と、計測ステージ32と、多波長光検出部33と、解析部34とを備える。また、多波長光測定装置3は、搬送部35と、アライメントカメラ36と、動作制御部37も備える。なお、
図9において、太線は、被検体7の搬送路を示している。また、点線は、照射光及び回折光の光路を示している。また、実線は、データや情報(電気信号)を伝達する信号伝達路を示している。
【0033】
多波長光照射部31は、多波長光源311と、ポラライザ312と、コンペンセータ313とを備える。多波長光源311は、例えばキセノンランプやハロゲンランプなど、波長190nm~2200nm程度の波長帯域の光が照射可能な白色光源が用いられる。ポラライザ(偏向子)312は、照射光を直線偏向に変換する。コンペンセータ(補償子)313は、照射光の偏向状態を調整する。偏向状態が調整された照射光は、計測ステージ32に設置された被検体7の撮像領域に照射される。
【0034】
計測ステージ32は、図示しないモータなどの駆動手段により、計測ステージ32表面と平行な直行する2方向(x方向、y方向)に移動することができる。x方向、及び/または、y方向に計測ステージ32を移動させることで、任意の位置を計測することができる。また、計測ステージ32は、計測ステージ32表面と直交する方向(z方向)に移動することもできる。
【0035】
多波長光検出部33は、コンペンセータ331と、アナライザ332と、プリズム333と、検出器334とを備える。コンペンセータ(補償子)331は、計測ステージ32に載置された被検体7から発生した回折光の偏向状態を調整する。プリズム333は、透過する回折光を波長によって分光する。検出器334は、プリズム333により分光された回折光を受光し、光量に応じた信号を生成する。検出器334は、例えば、2次元のアレイ状に配置された複数個の半導体検出素子(固体撮像素子等)で構成される。半導体検出素子としては、例えば、CCD(電荷結合素子)や、CMOSイメージセンサが用いられる。被検体7の撮像領域において多波長光により生成された回折光は、検出器334の投影領域に配置された半導体検出素子により光電変換され、撮像信号(回折光強度スペクトル)として出力される。
【0036】
解析部34は、RCWA法を用いたシミュレーションにより様々な3次元形状パターン及び膜構造に対応する回折光強度スペクトルを算出した分光特性ライブラリと、検出器334から出力された回折光強度スペクトルとを比較する。分光特性ライブラリは、解析部34に設けられたデータ格納部341に予め格納される。分光特性ライブラリの中から一致度の高い回折光強度スペクトルを抽出し、この回折光強度スペクトルに対応する膜構造及び3次元形状パターンを、被検体7の表面に形成されたパターンであると推定する。
【0037】
搬送部35は、
図6に示すT-SAXS計測装置2の搬送部25と同様の構成である。また、アライメントカメラ36も、T-SAXS計測装置2のアライメントカメラ261と同様の構成である。動作制御部37は、多波長光計測装置3の各部位の動作を制御する。動作制御部37は、例えば、多波長光照射部31や多波長光検出部33のパラメータを指示したり、計測ステージ32や搬送部35の動作を指示したりする。
【0038】
なお、多波長光計測装置3は、上述したOCD(Optical Critical Dimesion)手法を用いた計測装置に限定されず、例えば、赤外の波長帯域の多波長光を照射光とするFT-IR(Fourier Transform InfraRed)手法を用いた計測装置を用いてもよい。
【0039】
図10は、多波長光測定装置の構成の別の一例を説明する概略ブロック図である。すなわち、FT-IR手法を用いた多波長光計測装置8の構成の一例を示す。多波長光計測装置8は、多波長光照射部81の構成と、多波長光検出部83の構成が、
図9に示す多波長光計測装置3と異なる。他の部位の構成は、多波長光計測装置3と同様である。
【0040】
多波長光照射部81は、多波長光源811と、ビームスプリッタ812と、2つのミラー813、814とを備えている。多波長光源811は、例えばSiC+ハロゲンランプや、窒化ケイ素グローバ光源など、スポットサイズが200nm×800nm程度で波長1μm~20μm程度の波長帯の光(赤外光)が照射可能な光源が用いられる。ビームスプリッタ812は、多波長光源811から出射された赤外光を、2方向に分離する。ビームスプリッタ812を構成する図示しない反射層に対して照射光が45度の角度で入射するように、ビームスプリッタ812は設置される。反射層によって照射光の一部の光束(第1の光束)が反射され、残りの光束(第2の光束)は反射層を透過する。
【0041】
ミラー813、814は、ビームスプリッタ812によって分離された2方向の光束が垂直に入射するように設置されている。また、ミラー814は、ビームスプリッタ812からの距離が可変になされている。反射層を透過した第2の光束はミラー813に入射され、反射層により反射された第1の光束はミラー814に入射する。ミラー813、814は、入射した光束を全反射する。ミラー813によって反射された第2の光束は、ビームスプリッタ812の反射層に45度の角度で入射し、反射層において反射される。ミラー814によって反射された第1の光束は、反射層を透過する。ミラー813によって反射され、反射層においてさらに反射された第2の光束と、ミラー814によって反射され反射層を透過した第1の光束とは、光軸が同一となり、互いに干渉して所定の波長の照射光に合成される。ここで、ミラー814とビームスプリッタ812との距離を変化させると、第2の光束の位相と第1の光束の位相の位相差が変化する。これにより、第1の光束と第2の光束が干渉して合成される光の波長を調整することができる。波長が調整された赤外光は、被検体7に入射される。
【0042】
多波長光検出部83は、
図9に示す多波長光計測装置3の多波長光検出部33に含まれる検出器334と同様の構成の検出器831のみで構成され、コンペンセータ331、アナライザ332、プリズム333は含まない。
【0043】
すなわち、
図9に示すOCD手法を用いた多波長光計測装置3は、被検体7から発生した所定の波長帯域の回折光をプリズム333で分光し、複数の波長の回折光強度スペクトルを同じタイミングで検出する。これに対し、
図10に示すFT-IR手法を用いた多波長光計測装置8は、ミラー814とビームスプリッタ812の距離を変えながら、被検体7に照射する照射光の波長を変化させ、異なる波長の回折光強度スペクトルを時分割測定する。
【0044】
なお、FT-IR手法を用いた多波長光計測装置8は、OCD手法を用いた多波長計測装置3に比べて照射光の波長が長いため、被検体7の表面パターンに起因する複雑な回折光が発生しない。従って、解析部84において、RCWA法よりも計算量の少ないEMA(Effective Medium Approximation)法を用いたシミュレーションにより算出した分光特性ライブラリを用いることができる。EMA法を用いたシミュレーションの場合、回折光強度スペクトルの計測と並行して外部の解析サーバ200において分光特性ライブラリの算出を行うことができる。故に、解析部84は、分光特性ライブラリを予め算出して格納しておくのではなく、解析サーバ200で算出した分光特性ライブラリを取得して、検出器831から出力された回折光強度スペクトルと比較することができる。
【0045】
また、FT-IR手法を用いた多波長光計測装置8は、OCD手法を用いた多波長計測装置3に比べて照射光の波長が長いため、アモルファスカーボンなど光を通しにくい材料の計測も可能である。従って、被検体7の表面パターンに光を通しにくい材料の膜が用いられている場合、FT-IR手法を用いた多波長光計測装置8を用いることが好ましい。
【0046】
ホストコンピュータ4は、中央演算処理装置(CPU)とメモリとを備えている。ホストコンピュータ4は、多波長光計測装置3から出力される計測データを、T-SAXS計測装置2へ入力する。また、T-SAXS計測装置2から出力される計測データと、多波長光計測装置3から出力される計測データとに基づき、被検体7の膜構造及び3次元形状パターンを推定することも可能である。3次元形状パターンを推定する動作は、例えば、予めプログラムとしてメモリに格納しておき、CPUにおいて実行することにより、ソフトウェア的に行われる。また、3次元形状パターンを生成する動作は、ハードウェアとして構成された1つ以上のプロセッサが行うようにしてもよい。例えば、電子回路として構成されたプロセッサであっても構わないし、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路で構成されたプロセッサであってもよい。
【0047】
データベース5は、コストコンピュータ4において生成された、被検体7の膜構造及び3次元形状パターンの推定に用いる各種パラメータやデータを格納したり、推定結果を格納したりする。
【0048】
以上に説明した実施形態の計測システム1は、例えば、3次元構造のメモリセルアレイを有する半導体記憶装置のメモリホールを形成するエッチング工程において用いられる。ここで、3次元構造のメモリセルアレイを有する半導体記憶装置について、
図11を用いて説明する。
【0049】
図11は、3次元構造のNANDメモリのメモリセルアレイを有する半導体記憶装置の一部領域の断面図である。例えば、半導体記憶装置が、被検体7として機能する。より具体的には、例えば、半導体記憶装置を製造するための半導体ウエハが、被検体7として機能する。
図11には、メモリセルアレイと周辺回路領域の一部領域を図示している。以下の説明では、半導体基板71表面と平行な平面にあって、ビット線BLの延伸する方向をx方向とする。また、半導体基板71表面と平行かつx方向と直交する方向をy方向とする。また、半導体基板71表面と直交する方向をz方向とする。本実施形態では、メモリ回路が形成されるメモリ領域600が半導体基板上に設けられており、メモリ領域600の周辺の半導体基板71上に、周辺回路が形成される周辺回路領域500が設けられている。すなわち、Z方向からみた場合に、メモリ領域600と周辺回路領域500とは、互いに重ならないように配置されている。
【0050】
図11に示すように、p型ウェル領域(P-well)上に複数のNANDストリングNSが形成されている。すなわち、p型ウェル領域上には、セレクトゲート線SGSとして機能する複数の配線層633、ワード線WLiとして機能する複数の配線層632、およびセレクトゲート線SGDとして機能する複数の配線層631が積層されている。なお、
図11においては、ワード線WLiとして機能する配線層632が8層積層された構造を示しているが、半導体記憶装置のメモリセルアレイにおいては、48層、64層、96層など更に多層の配線層632が積層されていてもよい。
【0051】
そして、これらの配線層633、632、631を貫通してp型ウェル領域に達するメモリホール634が形成されている。メモリホール634の側面には、ブロック絶縁膜635、電荷蓄積膜636、およびゲート絶縁膜637が順次形成され、更にメモリホール634内に導電体柱638が埋め込まれている。導電体柱638は、例えばポリシリコンからなり、NANDストリングNSに含まれるメモリセルトランジスタMT並びに選択トランジスタST1及びST2の動作時にチャネルが形成される領域として機能する。
【0052】
各NANDストリングNSにおいて、p型ウェル領域上に選択トランジスタST2、複数のメモリセルトランジスタMT、及び選択トランジスタST1が形成されている。導電体柱638よりも上側には、ビット線BLとして機能する配線層が形成される。導電体柱638の上端には、導電体柱638とビット線BLとを接続するコンタクトプラグ639が形成されている。
【0053】
さらに、p型ウェル領域の表面内には、n+型不純物拡散層およびp+型不純物拡散層が形成されている。n+型不純物拡散層上にはコンタクトプラグ640が形成され、コンタクトプラグ640上には、ソース線SLとして機能する配線層が形成される。
【0054】
以上の
図11に示した構成が、
図11の紙面の奥行き方向(y方向)に複数配列されており、奥行き方向に一列に並ぶ複数のNANDストリングの集合によって、1つのストリングユニットSUが形成される。
【0055】
一方、周辺回路領域500には、入出力回路など周辺回路に含まれる各回路が形成される。例えば、前述した入出力回路は、インバータなどの論理ゲートが多段に組み合せられた構成である。従って、周辺回路領域500には、論理ゲートを構成するMOSトランジスタが多数形成される。これらの多数のMOSトランジスタは、周辺回路領域500内の半導体基板71上に形成される。
図11には、これらのMOSトランジスタのうちの1つを示している。なお、
図11は不揮発性メモリの断面構造を模式的に示すものであり、
図11に示されるMOSトランジスタ100の大きさ、及び、MOSトランジスタ101を構成する要素間の比率は、実際の大きさや比率とは異なる。
【0056】
周辺回路を構成するMOSトランジスタ100は、半導体基板71上に、ゲート絶縁膜を介してゲート配線110が形成されている。ゲート配線110は、例えば、MOSトランジスタの動作に適した不純物が注入されたポリシリコン膜である。ゲート配線110のX方向右側と左側の半導体基板中には、ドレイン領域120とソース領域130とが形成されている。例えば、MOSトランジスタ100がn型のMOSトランジスタ(NMOSトランジスタ)である場合、ドレイン領域120とソース領域130には、例えば、ヒ素(As)やリン(P)などの不純物が半導体基板71中に注入され、所定の深さまで拡散されている。
【0057】
ゲート配線110より上層には、絶縁層を介してゲート配線110に電位を供給するための金属配線113が形成されている。ゲート配線110上には、コンタクト領域としてのゲート電極111が形成されている。ゲート電極111の上側には、金属配線113とゲート電極110とを電気的に接続するための、コンタクトプラグ112が形成されている。すなわち、金属配線113の電位が、コンタクトプラグ112介してゲート電極111からゲート配線110に供給される。
【0058】
ドレイン領域120より上層には、絶縁層を介してドレイン領域120に電位を供給するための金属配線123が形成されている。ドレイン領域120上には、コンタクト領域としてのドレイン電極121が形成されている。ドレイン電極121の上側には、金属配線123とドレイン電極121とを電気的に接続するためのコンタクトプラグ122が形成されている。すなわち、金属配線123の電位が、コンタクトプラグ122介してドレイン電極121からドレイン領域120に供給される。
【0059】
ソース領域130より上層には、絶縁層を介してソース領域130に電位を供給するための金属配線133が形成されている。ソース領域130上には、コンタクト領域としてのソース電極131が形成されている。ソース電極131の上側には、金属配線133とソース電極131とを電気的に接続するためのコンタクトプラグ132が形成されている。すなわち、金属配線133の電位が、コンタクトプラグ132介してソース電極131からソース領域130に供給される。
【0060】
ビット線BL、ソース線SL、金属配線131~133のように、金属材料で形成される配線層は、NANDストリングNSを形成後、これより上層に形成される。通常、金属材料で形成される配線層は、絶縁膜を挟んで複数層形成される。
図11の例では、ML1、ML2、ML3の3層の配線層が設けられている場合を示している。ビット線BL、ソース線SL、金属配線131~133は、これらの配線層のうちの1つ以上の層に形成される。例えば、
図11では、下から一層目の配線層ML1に金属配線131~133とソース線SLが形成されており、下から二層目の配線層ML2にビット線BLが形成されている場合を示している。なお、最上層の配線層ML3には、例えば、電源電圧を伝達する配線などが形成されている。
【0061】
次に、
図11に示すような構造を有する半導体記憶装置における、メモリホール634の形成方法について、
図12を用いて説明する。
図12は、メモリホールを形成する工程について説明する概略断面図である。メモリホール634は、例えば、複数の工程を経て形成される。
図12には、メモリホール634を形成するための複数の工程における断面図を、時間的な順序に従って、左から右に並べて示している。
【0062】
まず、最初の工程(工程1)において、半導体基板71上に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に堆積され、半導体基板71表面の全面にON積層膜72が形成される。
図12において、実線は、シリコン窒化膜に対応し、実線に隣接した空白がシリコン酸化膜に対応する。ON積層膜72におけるシリコン窒化膜は、後の工程で導電帯膜(例えば、タングステン膜)に置換され、配線層631、配線層632、及び、配線層633となる。ON積層膜72におけるシリコン酸化膜は、上述の配線層間の絶縁膜となる。
【0063】
続く工程(工程2)において、ON積層膜72の表面に、エッチングマスク膜73が堆積される。エッチングマスク膜73は、例えば、アモルファスカーボン膜などが用いられる。そして、次の工程(工程3)において、メモリホールを形成する領域に位置するエッチングマスク膜73が除去され、エッチングマスク膜73に開口部が形成される。
【0064】
続く工程(工程4~工程6)において、エッチングマスク膜73をマスクとして用いるドライエッチングにより、エッチングマスク膜73の開口部の下部に形成されたON積層膜72が除去される。メモリホール634は、例えば直径が100nm程度で深さが数μmと高アスペクト比の孔である。従って、メモリホール634を形成する過程において、最適なエッチング条件が変化し得る。そこで、メモリホール634を形成する過程において、複数段階でエッチング条件の変更が行われる。例えば、予め定められた各段階が終了した時点では、エッチングが一旦中断され、孔の加工状態(エッチングマスク膜73の残膜厚、ON積層膜72のエッチング深さ、及び、断面形状など)が計測される。そして、計測された加工状態に応じて、エッチング条件を調整して、次の段階のエッチングを行う。
図12においては、ある段階の終了時点における断面を工程4に示し、工程4より後の段階の終了時点における断面を工程5として示している。なお、メモリホール形成のためのエッチングにおいて加工状態の計測とエッチング条件の調整をするための「段階」がさらに多く定められていてもよい。各段階が終了する都度、加工状態の計測が行われ、次の段階のエッチング条件の調整にフィードバックされる。また、加工状態の計測結果によっては、次の段階のエッチング条件が変更されないこともあり得る。
【0065】
図12においては、工程5より後の段階の終了時点における断面を工程6として示している。工程6において、エッチングマスク膜73の開口部の下部に形成されたON積層膜72が全て除去され、メモリホールの形成が完了する。なお、
図12においては、エッチングマスク膜73の残膜厚をTm、ON積層膜72のエッチング深さをTh、エッチングマスク膜73表面から加工した孔の底部までの深さをTaと示している。すなわち、Tm+Th=Taの関係にある。
【0066】
実施形態の計測システムは、メモリホール634形成時における加工状態の計測に適用することができる。
図13、及び、
図14を用いて、実施形態の計測システムを加工状態の計測に適用した場合における、メモリホール634の形成手順を説明する。
図13は、メモリホールの形成手順の一例を説明するフローチャートである。
図14は、第1実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。
【0067】
まず、半導体基板71上に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを交互に堆積され、ON積層膜72が形成される(ステップS1)。続いて、ON積層膜72の表面に、ハードマスク材料としてのアモルファスカーボンが堆積され、エッチングマスク膜73が成膜される(ステップS2)。次に、メモリホールを形成する領域のエッチングマスク膜73が除去され、エッチングマスク膜73に開口部(メモリホールパターン)が形成される(ステップS3)。
【0068】
続いて、ON積層膜72のドライエッチング(異方性エッチング)が行われる(ステップS4)。上述のように、ON積層膜72は膜厚が厚く、かつ、メモリホールの径は小さいため、高アスペクト比の孔を形成しなければならない。従って、エッチングは複数の段階に分けて行われる。エッチング中は、エッチングの終了を判断するために、開口部の底部に半導体基板71が露出したか否かの検知(終点検知)が行われる(ステップS5)。半導体基板71が検知された場合(ステップS5、YES)、エッチングによって形成された孔が、ON積層膜72を貫通したとみなし、エッチングが停止されメモリホールの形成を終了する。
【0069】
一方、一段階目のエッチングが終了した時点で、終点検知において半導体基板71が検知されない場合(ステップS5、NO)、エッチングが一時停止され、孔の加工状態(エッチングマスク膜73の残膜厚、ON積層膜72のエッチング深さ、及び、断面形状など)が実施形態の計測システムによって計測される(ステップS6)。
【0070】
ステップS6の詳細な手順を、
図14のフローチャートを用いて説明する。なお、
図14において、長方形は手順を示しており、平行四辺形はデータを示している。長方形から平行四辺形へ向かう矢印は、該長方形の示す手順を実行した場合に、該平行四辺形の示すデータが生成(取得)されることを示している。また、平行四辺形から長方形へ向かう矢印は、該平行四辺形の示すデータが該長方形の示す手順で使用されることを示している。
【0071】
まず、メモリホールパターン形成途中の半導体ウエハを被検体7とし、多波長光計測装置3において、回折光強度スペクトル(多波長光スペクトル)を取得する(ステップS61)。次に、多波長光計測装置3の解析部34において、ステップS61で取得した回折光強度スペクトルを解析し、被検体7の表面に形成されたエッチングマスク膜73の残膜厚Tmを推定する(ステップS62)。
【0072】
続いて、被検体7をT-SAXS計測装置2に搬送し、T-SAXS計測装置2において、計測ステージ22の回動角度を変えながら計測し、複数の回折像(SAXS像群)を取得する(ステップS63)。T-SAXS計測装置2の解析部24において、ステップS63で取得したSAXS像群を解析し、計測時点において被検体7に形成されているメモリホール(孔)の3次元形状を推定する(ステップS64)。
【0073】
T-SAXS計測装置2は、被検体7表面の3次元形状を高精度で計測できる。その一方で、電子密度差が小さい材料で形成された2つの膜が積層されている場合、それぞれの膜を区別して解析することができないため、2つの膜の界面を検出することができない。従って、ステップS64において生成される3次元形状では、エッチングにより形成された孔の3次元形状は推定されるが、エッチングマスク膜73とON積層膜72の界面(、及び、ON積層膜72と半導体基板71の界面)は検出されない。すなわち、エッチングマスク膜73表面から加工した孔の底部までの深さTaは推定できるが、エッチングマスク膜73の残膜厚Tmや、ON積層膜72のエッチング深さThは推定できない。このように、ステップS64においては、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面が推定されていない加工孔の3次元形状(マスク界面なし形状プロファイル)が生成される。
【0074】
メモリホールのようにアスペクト比の大きな孔を形成する場合、長時間にわたりエッチング行われる。エッチング中においては、エッチング対象膜であるON積層膜72に比べてエッチングレートは小さいものの、エッチングマスク膜73も少しずつ削られる。エッチングマスク膜73が全て削られてしまうと、被検体7の上面にON積層膜72が露出する。被検体7の上面にON積層膜72が露出した状態でエッチングが継続されると、開口部底部だけでなく、ON積層膜72の表面もエッチングされてしまうため、後の工程で形成すべき配線層が形成できなくなり、不良品となる。
【0075】
このように、メモリホールのようなアスペクト比の大きな孔を形成する際には、加工した孔の3次元形状と共に、エッチングマスク膜73の残膜厚の管理が重要である。従って、ステップS6における加工形状の計測においては、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面位置が特定された3次元形状を計測する必要がある。従って、続くステップS65においては、ステップS64で生成されたマスク界面なし形状プロファイルと、ステップS62で取得したマスク残膜厚Tmとを用い、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面が推定された加工孔の3次元形状(マスク界面あり形状プロファイル)を生成する。なお、ステップS64は、T-SAXS計測装置2の解析部24において行ってもよいし、ホストコンピュータ4において実行することも可能である。
【0076】
ステップS65は、具体的には、以下のように実行される。すなわち、ステップS62で計測されたマスク残膜厚Tmを用い、ステップS64で生成されたマスク界面なし形状プロファイルにおいて、表面からマスク残膜厚Tmまでの領域をエッチングマスク膜73と推定し、表面から加工した孔の底部までの深さTaからマスク残膜厚Tmを減算して加工孔の深さThを算出する。そして、マスク界面なし形状プロファイルにおいて、表面からマスク残膜厚Tmの位置をマスク界面とする、マスク界面あり形状プロファイルを生成する。すなわち、マスク界面なし形状プロファイルは、マスク界面あり形状プロファイルと3次元形状は同一であるが、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面位置が特定されている点が異なっている。
【0077】
以上のステップS61からステップS65の手順を実行することにより、ステップS6における孔の加工状態(エッチングマスク膜73の残膜厚、ON積層膜72のエッチング深さ、及び、断面形状など)の計測が実行される。
【0078】
続くステップS7においては、ステップS6で計測してマスク界面あり形状プロファイルに基づき、次段階のエッチングのパラメータが必要に応じて調整される。そして、ステップS4に戻り、ON積層膜72の次段階のエッチングが行われる。ステップS4からステップS7の一連の手順は、ステップS5において終点が検出されるまで繰り返し実行される。
【0079】
マスク界面あり形状プロファイルを計測する場合、一般的には、断面SEM(Scanning Electron Microscopy)が用いられる。断面SEMは、表面の観察しかできないため、ステップS6における計測対象を、形状プロファイルを取得したい位置で切断して断面試料を作成する必要がある。このため、計測に加えて断面試料作成に時間を要するため、メモリホールの形成工程のプロセス開発が長期間化する原因の一因となっていた。これに対し、本実施形態の計測システムは、製品用の半導体基板をそのまま計測可能であり、計測用の試料を作成する必要がない。従って、計測に要する時間が短いため、メモリホール形成工程のプロセス開発期間の短期間化を図ることができる。
【0080】
また、断面SEMは破壊検査であるため、製品として加工する半導体基板とは別に計測用の半導体基板を用意して、製品と同じプロセスで加工をする必要がある。エッチングが複数段階に分割して行われる場合、各段階の終了時点で形状プロファイルの計測が行われる。すなわち、形状プロファイルの計測が複数回行われるため、計測の回数分だけ計測用の半導体基板を用意し加工する必要がある。これに対し、実施形態の計測システムは、非破壊で3次元形状プロファイルを計測可能であるため、計測後の半導体基板は継続して加工可能である。 また、断面SEMは切断面における2次元形状プロファイルの計測にとどまり、3次元形状プロファイルは計測できない。従って、切断方向によっては、例えば、孔の中心軸のずれが検出できない可能がある。これに対し、実施形態の計測システムは、3次元形状プロファイルが計測できるので、孔の加工形状が総合的に評価できる。従って、エッチング工程における加工不良の検出精度が向上する。さらに、加工不良が発生する可能性がある場合には、3次元形状プロファイルに基づき次段階のエッチング条件(パラメータ)を調整することができるので、加工不良を未然に防ぐことができる。
【0081】
このように、実施形態の計測装置によれば、エッチングマスクと加工対象膜との界面、及び、エッチングにより加工した孔の形状プロファイルを、非破壊で精度よく計測することができる。これにより、半導体記憶装置に孔を形成するエッチング工程のプロセス開発に要するTAT(Turn Around Time)を短縮することができる。また、加工途中の製品を用いて孔の形状プロファイルを計測することができるため、計測用の試料を別途作成する必要がないので、製造コストを低減することができる。さらに、マスク界面が特定された孔の3次元形状プロファイルを精度よく計測することができるので、加工不良の検出精度が向上し、また、加工不良を未然に防ぐことができる。
【0082】
なお、実施形態の計測装置は、上述のように半導体記憶装置の製造におけるエッチング工程(特に、メモリホールなどアスペクト比の大きい孔を形成するエッチング工程)の検査(加工形状の計測)に適用できるだけでなく、他の様々な場面に用いることができる。例えば、製品の製造に先立って、エッチング条件の最適化にも適用することができる。エッチングの各段階が終了した際に、実施形態の計測システムを用いてマスク界面が特定された形状プロファイルを計測することで、エッチングの各段階における最適なパラメータ(エッチング条件)を決定することができ、また、最適なマスク膜厚(加工対象材料の表面に堆積させるエッチングマスク材料の膜厚)を決定することができる。これにより、製品を製造する際最適なプロセス条件で加工を行うことができるので、加工精度が向上し、製品歩留まりの向上に寄与することができる。
【0083】
また、実施形態の計測装置は、
図11に示すような、周辺回路領域500とメモリ領域600とが半導体基板71上に並べて形成される構造の半導体記憶装置だけでなく、他の構造を有する半導体記憶装置の計測にも適用可能である。例えば、
図15に示すように、半導体基板71上に周辺回路領域500が形成され、周辺回路領域500の上層にメモリ領域600が形成される構造の半導体記憶装置におけるメモリホールなどの深孔加工の計測にも適用可能である。
【0084】
図15は、周辺回路領域と、その上層に形成された3次元構造のNANDメモリのメモリセルアレイとを有する半導体記憶装置の一部領域の断面図である。
図15は、CUA構造の半導体記憶装置について示している。
【0085】
図15に示すように、メモリ領域MRにおいて不揮発性メモリは、半導体基板71、導電体641から657、メモリホール634、並びにコンタクトプラグC0、C1、C2及びCPを含む。なお、以下で説明される図面では、半導体基板71の上面部分に形成されたp型又はn型のウェル領域と、各ウェル領域内に形成された不純物拡散領域と、ウェル領域間を絶縁する素子分離領域のそれぞれの図示は省略されている。
【0086】
メモリ領域MRにおいて、半導体基板71上には、例えば複数のコンタクトC0が設けられている。複数のコンタクトC0は、半導体基板71に設けられた不純物拡散領域(図
示せず)に接続されている。半導体基板71上には、配線層領域WRを介してNANDメモリのメモリセルアレイが配置されている。なお、配線層領域WRに、入出力回路などの周辺回路も形成される。
【0087】
各コンタクトC0上には、配線パターンを形成する導電体641が設けられている。導電体641の複数の配線パターンの一部は、上述したビット線BLの一部である。また、複数の配線パターンの他の一部は、各種トランジスタの一部の配線である。その場合、隣り合う導電体641間の領域付近には、ゲート電極GCが設けられ、この場合、隣り合う一方の導電体641は、トランジスタのドレインに接続され、他方の導電体31がトランジスタのソースに接続される。
【0088】
各導電体641上には、例えばコンタクトC1が設けられている。各コンタクトC1上には、例えば導電体642が設けられている。導電体642上には、例えばコンタクトC2が設けられている。コンタクトC2上には、例えば導電体643が設けられている。
【0089】
導電体641、642、643の各配線パターンは、図示しないセンスアンプ回路とメモリセルアレイの間の配線層領域WRに配設されている。以下、導電体641、642、643が設けられる配線層を、それぞれ配線層D0、D1、D2と呼ぶ。配線層D0、D1、D2は、不揮発性メモリ2の下層部分に設けられている。なお、ここでは、配線層領域WRには、3つの配線層が設けられているが、配線層領域WRには、2つ以下の配線層、あるいは4つ以上の配線層が設けられていてもよい。
【0090】
導電体643の上方には、例えば層間絶縁膜を介して導電体644が設けられている。導電体644は、例えば、xy平面に平行な板状に形成されたソース線SLである。導電体644の上方には、各ストリングユニットSUに対応して、例えば、導電体645~654が順に積層されている。これらの導電体のうちz方向に隣り合う導電体の間には、図示しない層間絶縁膜が設けられている。
【0091】
1つのストリングユニットSUに対応する構造体は、隣り合うスリットSHE間に設けられている。スリットSHEは、例えばy方向及びz方向に広がり、図示しない隣り合うストリングユニットSUに設けられた導電体645~654間を絶縁している。
【0092】
導電体645~654のそれぞれは、例えばxy平面に平行な板状に形成される。例えば、導電体645は、セレクトゲート線SGSに対応し、導電体646~653は、それぞれワード線WL0~WL7に対応し、導電体654は、セレクトゲート線SGDに対応している。
【0093】
各メモリホール634は、導電体645~654のそれぞれを貫通した柱状に設けられ、導電体644に接触している。メモリホール634は、例えばブロック絶縁膜635、電荷蓄積膜636、ゲート絶縁膜637が順次形成され、更にメモリホール634内に導電体柱638が埋め込まれている。
【0094】
例えば、メモリホール634と導電体645とが交差する部分は、選択トランジスタST2として機能する。メモリホール634と導電体645~654のそれぞれとが交差する部分は、メモリセルトランジスタ(メモリセル)MTとして機能する。メモリホール634と導電体654とが交差する部分は、選択トランジスタST1として機能する。
【0095】
メモリホール634の上面よりも上層には、層間絶縁膜を介して導電体655が設けられている。導電体655は、x方向に延伸したライン状に形成され、ビット線BLに対応している。複数の導電体655は、y方向において間隔をおいて配列している(図示せず)。導電体655は、ストリングユニットSU毎に対応する1つのメモリホール634内の導電体柱638と電気的に接続されている。
【0096】
具体的には、各ストリングユニットSUにおいて、例えば各メモリホール634内の導電体柱638上にコンタクトプラグCPが設けられ、コンタクトプラグCP上に1つの導電体645が設けられる。なお、このような構成に限定されず、メモリホール634内の導電体柱638及び導電体655間は、複数のコンタクトや配線などを介して接続されてもよい。
【0097】
導電体655が設けられた層よりも上層には、層間絶縁膜を介して導電体656が設けられている。導電体656が設けられた層よりも上層には、層間絶縁膜を介して導電体657が設けられている。
【0098】
導電体656及び657は、例えばメモリセルアレイに設けられた配線と、メモリセル
アレイ下に設けられた周辺回路とを接続するための配線に対応する。導電体656と65
7の間は、図示しない柱状のコンタクトで接続されてもよい。ここでは、導電体655が設けられた層のことを、配線層M0と称し、導電体656が設けられた層のことを、配線層M1と称し、導電体657が設けられた層のことを、配線層M2と称する。
【0099】
図15に示すように、メモリセルアレイより下層に周辺回路が配置される構造の半導体記憶装置について、実施形態の計測システム1を用いてメモリホールの加工工程(エッチング工程)における孔の加工形状を計測する場合、多波長光計測装置3を用いた計測において、メモリホールより下層の配線層D0~D2からの反射光が、加工孔からの反射光と干渉し、正確な計測結果が得られない可能性がある。そこで、配線層D0~D2からの反射光の影響を抑制するために、配線層D0~D2の配線パターンを、
図16及び、
図17に示すようなパターンとすることが望ましい。
【0100】
図16、
図17は、メモリセルアレイ下部に敷設する配線のパターンの一例を説明する概略平面図である。
図16は、配線層D0~D2の配線パターンの一例を示しており、
図17は、配線層D0~D2の配線パターンの別の一例を示している。
図16、
図17において、丸印はNANDストリングを構成するメモリホール634を示している。y方向に延伸するスリットSLTは、1つのブロックに含まれるストリングユニットSUを、他のブロックに含まれるストリングユニットSUと分離する絶縁層である。なお、ブロックとは、複数のストリングユニットSUから構成され、同一ブロックに含まれるストリングユニットSUのメモリセルMTに書き込まれたデータは、一括して消去される。スリットSLTは、z方向において、ソース線SLまで延設されている。
【0101】
y方向に延伸するスリットSHEは、1つのブロック内に含まれる複数のストリングユニットSUを相互に分離する絶縁層である。
図16、
図17は、1つのブロック内に4つのストリングユニットSUが形成された例を示している。すなわち、スリットSHEは、スリットSLTの間に3本設けられている。スリットSHEは、z方向において、選択ゲート線SGDを構成する配線層654まで延設されており、スリットSHEによって選択ゲート線SDGが隣り合うストリングユニットSUの間で分離される。
【0102】
図16に示すように、配線層D0、D2は、半導体基板71表面に平行な面内(xy平面内)において、スリットSLT、SHEが延伸する方向(y方向)に延伸する複数の第1配線L1と、スリットSLT、SHEが延伸する方向と直交する方向(x方向)に延伸する複数の第2配線L2とから構成される格子パターンで形成される。第1配線L1は、メモリホールのピッチの整数倍のピッチでパターン形成される。第2配線L2は、メモリホールの整数倍のピッチの周期パターンが、スリットSHEのピッチで繰り返すようにパターン形成される。このように、複数の第1配線L1と複数の第2配線L2とを格子パターンで形成することで、多波長計測装置3における計測において、配線層D2より下層への照射光の侵入を防ぐことができる。また、上述のピッチで各配線層D0~D2を構成する第1配線L1と第2配線L2とを配置することにより、T-SAXS計測装置2や多波長光計測装置3で用いられる周期境界を前提とする形状モデルのサイズを小さくするができ、シミュレーションの計算コストを抑制することができる。
【0103】
なお、
図17に示すように、配線層D0~D2は、上述のピッチで配置された複数の第1配線L1のみで構成してもよい。または、上述のピッチで配置された複数の第2配線L2のみで構成してもよい。ただし、配線層D0~D2のうち少なくとも1つの配線層は、
図16に示すような格子パターンで形成することが好ましい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態の計測装置は、T-SAXS計測装置2の解析部24における形状プロファイルの解析方法が、上述した第1実施形態と異なる。計測システム1の構成や、計測対象となる被検体7の構造については、上述した第1実施形態と同様であるので説明を省略し、以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0104】
図18は、第2実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。なお、図中に示す長方形、平行四辺形、矢印は、
図14と同義である。まず、メモリホールパターン形成途中の半導体ウエハを被検体7とし、多波長光計測装置3において、回折光強度スペクトル(多波長光スペクトル)を取得する(ステップS611)。次に、多波長光計測装置3の解析部34において、ステップS611で取得した回折光強度スペクトルを解析し、被検体7の表面に形成されたエッチングマスク膜73の残膜厚Tmを推定する(ステップS612)。続いて、被検体7をT-SAXS計測装置2に搬送し、T-SAXS計測装置2において、計測ステージ22の回動角度を変えながら計測し、複数の回折像(SAXS像群)を取得する(ステップS613)。これらのステップS611~S613は、
図14に示す第1実施形態の計測方法におけるステップS61~S63と同様である。
【0105】
続いて、T-SAXS計測装置2の解析部24において、ステップS613で取得したSAXS像群を解析し、計測時点において被検体7に形成されているメモリホール(孔)の3次元形状を推定する(ステップS614)。ステップS614におけるSAXS像群の解析において、解析部24は、解析パラメータとしてステップS612で生成されたエッチングマスク膜73の残膜厚Tmをセットし、3次元形状を解析する。これにより、ステップS614の結果として、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面が推定された加工孔の3次元形状(マスク界面あり形状プロファイル)が生成される。
【0106】
以上のように、本実施形態の計測装置によれば、T-SAXS計測装置2において、多波長光計測装置3で計測したエッチングマスク膜73の残膜厚Tmをパラメータにセットした状態でSAXS像群を解析することで、より精度の高い3次元形状プロファイルを生成することができる。また、第1実施形態においては、SAXS像群の解析結果として生成されたマスク界面なし形状プロファイルに対し、エッチングマスク膜73の残膜厚Tmをオフセット処理してマスク界面あり形状プロファイルを生成していたが、本実施形態によれば、SAXS像群の解析結果として、直接的にマスク界面あり形状プロファイルが得られる。従って、簡易な手順で精度よく被検体7表面の3次元形状プロファイルを計測することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態の計測システムは、形状プロファイルの解析方法が、上述した第1実施形態と異なる。計測システム1の構成や、計測対象となる被検体7の構造については、上述した第1実施形態と同様であるので説明を省略し、以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0107】
図19は、第3実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。なお、図中に示す長方形、平行四辺形、矢印は、
図14と同義である。まず、メモリホールパターン形成途中の半導体ウエハを被検体7とし、多波長光計測装置3において、回折光強度スペクトル(多波長光スペクトル)を取得する(ステップS621)。次に、被検体7をT-SAXS計測装置2に搬送し、T-SAXS計測装置2において、計測ステージ22の回動角度を変えながら計測し、複数の回折像(SAXS像群)を取得する(ステップS622)。
【0108】
続いて、ホストコンピュータ4は、ステップS621で取得した回折光強度スペクトルと、ステップS622で取得したSAXS像群とを、データベース5に格納されているライブラリと比較する。なお、本実施形態の計測システムは、計測に先立ち、外部のシミュレータ等において、様々な3次元形状パターン及び膜構造に対応する、X線回折光の強度分布及び回折光強度スペクトルのセットが算出され、ライブラリとしてデータベース5に格納されている。ホストコンピュータ4は、ライブラリの中から、最も一致度の高いSAXS像群及び回折光強度スペクトルのセットを抽出する。抽出されたセットに対応する3次元形状パターン及び膜構造を、被検体7の表面に形成されたパターン及び膜構造であると推定する(ステップS623)。これにより、ステップS632の結果として、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面が推定された加工孔の3次元形状(マスク界面あり形状プロファイル)が生成される。
【0109】
以上のように、本実施形態の計測システムによれば、様々な3次元形状パターン及び膜構造に対応するX線回折光の強度分布及び回折光強度スペクトルのセットをシミュレーションにより算出し、予めライブラリとして準備することにより、理想的な解析を行うことが可能となり、最も精度の高い3次元形状プロファイルを生成することができる。また、本実施形態では、T-SAXS計測装置2で取得されるSAXS像群と、多波長光計測装置3で取得される回折光強度スペクトルとを解析することにより、直接的にマスク界面あり形状プロファイルが得られるため、エッチングマスク膜73の残膜厚Tmを算出する手順が不要となる。従って、簡易な手順でより精度よく被検体7表面の3次元形状プロファイルを計測することができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態の計測システム1´は、
図20に示すように、多波長光計測装置3にかえてレーザー超音波計測装置9を用いる点が、上述した第1実施形態の計測システム1と異なる。
図20は、第4実施形態にかかる計測システムの構成例を示すブロック図である。計測システム1´の他の構成や、計測対象となる被検体7の構造については、上述した第1実施形態の計測システム1と同様であるので説明を省略し、以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0110】
レーザー超音波計測装置9は、被検体7の表面にレーザービームを照射し、被検体7の表面近傍を瞬間的に熱膨張させる。すると、熱膨張によって、被検体7の表面近傍に超音波が発生する。超音波は、被検体7内部に向かって伝搬され、膜の界面で反射する。反射した超音波が被検体7表面に到達すると、被検体7表面が振動する。この超音波の反射による被検体7表面の振動を検知することにより、被検体7に積層された膜の膜厚を計測することができる。
【0111】
図21は、レーザー超音波計測装置の構成の一例を説明する概略図である。レーザー超音波計測装置9は、レーザー照射部91と、計測ステージ92と、レーザー検出部としての検出器93と、解析部94とを備える。また、レーザー超音波計測装置9は、搬送部95と、位置計測部としてのアライメントカメラ96と、動作制御部97も備える。なお、
図21において、太線は、被検体7の搬送路を示している。また、点線は、レーザー光の光路を示している。また、実線は、データや情報(電気信号)を伝達する信号伝達路を示している。
【0112】
レーザー照射部91は、レーザー源911と、ビームスプリッタ912と、E.О.M(Electro Optic Module)913と、ディレイステージ914とから主に構成される。レーザー源911は、被検体7を熱膨張させるためのポンプレーザーと、被検体7表面の振動を検知するためのプローブレーザーとを兼ねる、パルス状のレーザーを生成し出射する。ビームスプリッタ912は、レーザー源911から出射されたレーザーを2方向に分離する。ビームスプリッタ912を構成する図示しない反射層に対してレーザーが45度の角度で入射するように、ビームスプリッタ912は設置される。反射層によってレーザーの一部の光束(第1の光束)が反射され、残りの光束(第2の光束)は反射層を透過する。
【0113】
E.О.M913とディレイステージ914は、ビームスプリッタ912によって分離された2方向の光束が垂直に入射するように設置されている。E.О.M913は、入射された第1の光束を変調させる。変調された第1の光束は、ポンプレーザーとして被検体7に入射される。ディレイステージ914は、入射された第2の光束を遅延させる。遅延された第2の光束は、プローブレーザーとして被検体7に入射される。
【0114】
検出器93は、被検体7に入射されたプローブレーザーの反射光を検出する。例えば、2次元のアレイ状に配置された複数個の半導体検出素子(固体撮像素子等)で構成される。半導体検出素子としては、例えば、CCD(電荷結合素子)や、CMOSイメージセンサが用いられる。被検体7の撮像領域におけるプローブレーザーの反射光は、検出器334の投影領域に配置された半導体検出素子により光電変換され、撮像信号(反射光強度)として出力される。
【0115】
解析部94は、検出器93から出力された反射光強度に基づき、例えば反射率の時間変化を解析し、被検体7に積層された膜の膜厚を算出する。
【0116】
搬送部95は、
図6に示すT-SAXS計測装置2の搬送部25と同様の構成である。また、アライメントカメラ96も、T-SAXS計測装置2のアライメントカメラ261と同様の構成である。動作制御部97は、レーザー超音波計測装置9の各部位の動作を制御する。動作制御部97は、例えば、レーザー源911や検出器93のパラメータを指示したり、計測ステージ92や搬送部95の動作を指示したりする。
【0117】
このように構成された計測システム1´を用いた計測方法について、
図22を用いて説明する。
図22は、第4実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。なお、図中に示す長方形、平行四辺形、矢印は、
図14と同義である。
【0118】
まず、レーザー超音波計測装置9において、レーザー反射光強度波形(レーザー超音波波形)を取得する(ステップS91)。次に、レーザー超音波計測装置9の解析部94において、ステップS91で取得したレーザー超音波波形を解析し、被検体7の表面に形成されたエッチングマスク膜73の残膜厚Tmを推定する(ステップS92)。
【0119】
続いて、被検体7をT-SAXS計測装置2に搬送し、T-SAXS計測装置2において、計測ステージ22の回動角度を変えながら計測し、複数の回折像(SAXS像群)を取得する(ステップS93)。T-SAXS計測装置2の解析部24において、ステップS93で取得したSAXS像群を解析し、計測時点において被検体7に形成されているメモリホール(孔)の3次元形状(マスク界面なし形状プロファイル)を推定する(ステップS94)。最後に、ステップS95において、ステップS94で生成されたマスク界面なし形状プロファイルと、ステップS92で取得したマスク残膜厚Tmとを用い、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面が推定された加工孔の3次元形状(マスク界面あり形状プロファイル)を生成する。
【0120】
以上のように、本実施形態の計測装置によれば、エッチングマスクと加工対象膜との界面、及び、エッチングにより加工した孔の形状プロファイルを、非破壊で精度よく計測することができる。また、レーザー超音波計測装置9は、被検体7内部に超音波を伝搬させることで膜厚を計測するため、光を非常に通しにくい材料で形成された膜(例えば、金属膜)の膜厚の計測も可能である。故に、本実施形態によれば、エッチングマスクの材料によらず、エッチングマスクと加工対象膜との界面、及び、エッチングにより加工した孔の形状プロファイルを、非破壊で精度よく計測することができる。
(第5実施形態)
次に、第5施形態について説明する。本実施形態の計測装置は、T-SAXS計測装置2の解析部24における形状プロファイルの解析方法が、上述した第4実施形態と異なる。計測システム1´の構成や、計測対象となる被検体7の構造については、上述した第4実施形態と同様であるので説明を省略し、以下、第4実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0121】
図23は、第5実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。なお、図中に示す長方形、平行四辺形、矢印は、
図14と同義である。まず、メモリホールパターン形成途中の半導体ウエハを被検体7とし、レーザー超音波計測装置9において、レーザー反射光強度波形(レーザー超音波波形)を取得する(ステップS911)。次に、レーザー超音波計測装置9の解析部94において、ステップS91で取得したレーザー超音波波形を解析し、被検体7の表面に形成されたエッチングマスク膜73の残膜厚Tmを推定する(ステップS912)。続いて、被検体7をT-SAXS計測装置2に搬送し、T-SAXS計測装置2において、計測ステージ22の回動角度を変えながら計測し、複数の回折像(SAXS像群)を取得する(ステップS913)。これらのステップS911~S913は、
図22に示す第4実施形態の計測方法におけるステップS91~S93と同様である。
【0122】
続いて、T-SAXS計測装置2の解析部24において、ステップS913で取得したSAXS像群を解析し、計測時点において被検体7に形成されているメモリホール(孔)の3次元形状を推定する(ステップS914)。ステップS914におけるSAXS像群の解析において、解析部24は、解析パラメータとしてステップS912で生成されたエッチングマスク膜73の残膜厚Tmをセットし、3次元形状を解析する。これにより、ステップS914の結果として、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面が推定された加工孔の3次元形状(マスク界面あり形状プロファイル)が生成される。
【0123】
以上のように、本実施形態の計測装置によれば、T-SAXS計測装置2において、レーザー超音波計測装置9で計測したエッチングマスク膜73の残膜厚Tmをパラメータにセットした状態でSAXS像群を解析することで、より精度の高い3次元形状プロファイルを生成することができる。また、第4実施形態においては、SAXS像群の解析結果として生成されたマスク界面なし形状プロファイルに対し、エッチングマスク膜73の残膜厚Tmをオフセット処理してマスク界面あり形状プロファイルを生成していたが、本実施形態によれば、SAXS像群の解析結果として、直接的にマスク界面あり形状プロファイルが得られる。従って、簡易な手順で精度よく被検体7表面の3次元形状プロファイルを計測することができる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態の計測システム1´は、形状プロファイルの解析方法が、上述した第4実施形態と異なる。計測システム1´の構成や、計測対象となる被検体7の構造については、上述した第4実施形態と同様であるので説明を省略し、以下、第4実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0124】
図24は、第6実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。なお、図中に示す長方形、平行四辺形、矢印は、
図14と同義である。まず、メモリホールパターン形成途中の半導体ウエハを被検体7とし、レーザー超音波計測装置9において、レーザー反射光強度波形(レーザー超音波波形)を取得する(ステップS921)。次に、被検体7をT-SAXS計測装置2に搬送し、T-SAXS計測装置2において、計測ステージ22の回動角度を変えながら計測し、複数の回折像(SAXS像群)を取得する(ステップS622)。
【0125】
続いて、ホストコンピュータ4は、ステップS921で取得したレーザー超音波波形と、ステップS922で取得したSAXS像群とを、データベース5に格納されているライブラリと比較する。なお、本実施形態の計測システムは、計測に先立ち、外部のシミュレータ等において、様々な3次元形状パターン及び膜構造に対応する、X線回折光の強度分布及びレーザー超音波波形のセットが算出され、ライブラリとしてデータベース5に格納されている。ホストコンピュータ4は、ライブラリの中から、最も一致度の高いSAXS像群及びレーザー超音波波形のセットを抽出する。抽出されたセットに対応する3次元形状パターン及び膜構造を、被検体7の表面に形成されたパターン及び膜構造であると推定する(ステップS923)。これにより、ステップS932の結果として、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面が推定された加工孔の3次元形状(マスク界面あり形状プロファイル)が生成される。
【0126】
以上のように、本実施形態の計測システムによれば、様々な3次元形状パターン及び膜構造に対応するX線回折光の強度分布及びレーザー超音波波形のセットをシミュレーションにより算出し、予めライブラリとして準備することにより、理想的な解析を行うことが可能となり、最も精度の高い3次元形状プロファイルを生成することができる。また、本実施形態では、T-SAXS計測装置2で取得されるSAXS像群と、レーザー超音波計測装置9で取得されるレーザー超音波波形とを解析することにより、直接的にマスク界面あり形状プロファイルが得られるため、エッチングマスク膜73の残膜厚Tmを算出する手順が不要となる。従って、簡易な手順でより精度よく被検体7表面の3次元形状プロファイルを計測することができる。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、一例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1、1´…計測システム、2…T-SAXS計測装置、3、8…多波長光計測装置、4…ホストコンピュータ4…データベース、6…搬送装置、7…被検体、9…レーザー超音波計測装置、21…X線照射部、22、32、82、92…計測ステージ、23…X線検出部、24、34、84、94…解析部、25、35、85、95…搬送部、26…位置計測部、27、37、87、97…動作制御部、31、81…多波長光照射部、33、83…多波長光検出部、71…半導体基板、72…ON積層膜、73…エッチングマスク膜、91…レーザー照射部、211…X線源、212…シャッター、213…X線収束機構、213a…第1スリット、213b、813、814…ミラー、213c…第2スリット、231…真空管路、93、232、334、831…検出器、251…ロードポート、252…搬送ユニット、253…プリアライナ、36、86、96、261…アライメントカメラ、262…被検体傾き計測部、311、811…多波長光源、312…ポラライザ、313、331…コンペンセータ、332…アナライザ、333…プリズム、812、912…ビームスプリッタ、911…レーザー源、913…E.O.M、914…ディレイステージ、