(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】熱交換デバイス、金型、反射ミラー、気液熱交換器、フィン付伝熱管、ノズル、及びタービン翼
(51)【国際特許分類】
F28D 15/04 20060101AFI20240325BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20240325BHJP
F01D 5/18 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
F28D15/04 E
F28D15/02 A
F28D15/02 102A
F28D15/02 102H
F01D5/18
(21)【出願番号】P 2020143273
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】工藤 秀行
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-056657(JP,U)
【文献】特開昭51-015847(JP,A)
【文献】特開2008-290448(JP,A)
【文献】実開昭56-121277(JP,U)
【文献】特開2006-300415(JP,A)
【文献】特公昭50-008821(JP,B1)
【文献】特開2004-028020(JP,A)
【文献】実開昭51-017610(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/04
F28D 15/02
F01D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化する作動媒体が封入されているとともに、内側に外部と熱交換可能な第一熱交換面及び第二熱交換面が形成されたデバイス本体と、
多孔質体から構成され、前記第一熱交換面の内側を覆うように配置された第一壁面ウィックと、
多孔質体から構成され、前記第二熱交換面の内側を覆うように配置された第二壁面ウィックと、
前記第一壁面ウィックと前記第二壁面ウィックとにわたって配置され、多孔質体から構成された複数の柱状部材が三次元格子状に配置されて形成された格子状ウィックと、
を備え
、
前記デバイス本体は、
冷却又は加熱する対象である対象物に対して近い位置に形成される第一外装部と、
前記第一外装部に比べて前記対象物に対して遠い位置に配置され、前記第一外装部に対して離れて対向するように配置される第二外装部と、を有し、
前記第一熱交換面は、前記第一外装部において、内側を向く内面であり、
前記第二熱交換面は、前記第二外装部において、内側を向く内面であり、
前記第一壁面ウィック、前記第二壁面ウィック、及び前記格子状ウィックは、三次元積層造形法により、同一の材料で形成される熱交換デバイス。
【請求項2】
前記格子状ウィックは、前記第一壁面ウィックと前記第二壁面ウィックとの間に画成された空間の全体を埋めるように配置されている請求項1に記載の熱交換デバイス。
【請求項3】
前記格子状ウィックは、前記デバイス本体内で前記第一壁面ウィックが配置されている第一領域と、前記デバイス本体内で前記第二壁面ウィックが配置されている第二領域とを結ぶように延びる第一格子状ウィックと、
前記第一壁面ウィック又は前記第二壁面ウィックと前記第一格子状ウィックとを接続し、前記第一格子状ウィックよりも断面積が小さい第二格子状ウィックと、
をさらに備える請求項1又は2に記載の熱交換デバイス。
【請求項4】
前記格子状ウィックは、前記第一領域又は前記第二領域で前記第二格子状ウィックに接続され、前記第二格子状ウィックよりも断面積が大きいバッファウィックをさらに備える請求項3に記載の熱交換デバイス。
【請求項5】
第一金型と、
前記第一金型との間に溶解された材料が充填される成形空間を形成する第二金型と、
前記第一金型及び前記第二金型の少なくとも一方に配置されて、前記第一熱交換面によって前記成形空間内の前記材料と熱交換可能とされた請求項1から4の何れか一項に記載の熱交換デバイスと、
を備える金型。
【請求項6】
レーザー光を反射可能な反射ミラーであって、
前記レーザー光が照射されるミラー部と、
前記ミラー部を支持する本体部と、
前記本体部の内部に配置され、前記第一熱交換面によって前記ミラー部と熱交換可能とされた請求項1から4の何れか一項に記載の熱交換デバイスと、
を備える反射ミラー。
【請求項7】
気体が流通する第一管と、
前記第一管から離れた位置に配置され、液体が流通する第二管と、
前記第一管と前記第二管との間に配置され、前記第一熱交換面によって前記第一管内の前記気体と熱交換可能とされ、前記第二熱交換面によって前記第二管内の前記液体と熱交換可能とされた請求項1から4の何れか一項に記載の熱交換デバイスと、
を備える気液熱交換器。
【請求項8】
内部に流体が流通する伝熱管本体と、
前記伝熱管本体の外周面から延びるフィンと、
前記フィンに配置され、前記第一熱交換面に対して前記第二熱交換面が前記伝熱管本体に近い位置に配置され、前記第二熱交換面によって前記伝熱管本体の内部の前記流体と熱交換可能とされた請求項1から4の何れか一項に記載の熱交換デバイスと、を備えるフィン付伝熱管。
【請求項9】
高温の流体が内部を流通するノズル部と、
前記ノズル部と接続されて冷却媒体が流通する冷却管が内部に配置されたノズル本体部と、
前記第一熱交換面によって前記ノズル部の内部を流通する流体と熱交換可能とされ、前記第二熱交換面によって前記冷却管の内部の前記冷却媒体と熱交換可能とされた請求項1から4の何れか一項に記載の熱交換デバイスと、
を備えるノズル。
【請求項10】
高温の流体に接触可能な翼面を有する翼体と、
前記翼体の内部に配置され、冷却媒体が流通する冷却管と、
前記翼体に配置され、前記第一熱交換面によって前記翼面に接触する前記流体と熱交換可能とされ、前記第二熱交換面によって前記冷却管内の冷却媒体と熱交換可能とされた請求項1から4の何れか一項に記載の熱交換デバイスと、
を備えるタービン翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換デバイス、金型、反射ミラー、気液熱交換器、フィン付伝熱管、ノズル、及びタービン翼に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱体を冷却するために、ヒートパイプのような熱交換デバイスが用いられる。ヒートパイプのような熱交換デバイスは、熱輸送効率が高く、動力が不要であることから、様々な分野で使用されている。例えば、特許文献1には、ガスタービンエンジンのファン出口ガイドベーンの内部にヒートパイプが適用された構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように熱交換デバイスは、様々な分野の装置に適用されることから、熱交換効率をより高くすることが求められている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、熱交換効率をさらに高めることが可能な熱交換デバイス、金型、反射ミラー、気液熱交換器、フィン付伝熱管、ノズル、及びタービン翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る熱交換デバイスは、相変化する作動媒体が封入されているとともに、内側に外部と熱交換可能な第一熱交換面及び第二熱交換面が形成されたデバイス本体と、多孔質体から構成され、前記第一熱交換面の内側を覆うように配置された第一壁面ウィックと、多孔質体から構成され、前記第二熱交換面の内側を覆うように配置された第二壁面ウィックと、前記第一壁面ウィックと前記第二壁面ウィックとにわたって配置され、多孔質体から構成された複数の柱状部材が三次元格子状に配置されて形成された格子状ウィックと、備え、前記デバイス本体は、冷却又は加熱する対象である対象物に対して近い位置に形成される第一外装部と、前記第一外装部に比べて前記対象物に対して遠い位置に配置され、前記第一外装部に対して離れて対向するように配置される第二外装部と、を有し、前記第一熱交換面は、前記第一外装部において、内側を向く内面であり、前記第二熱交換面は、前記第二外装部において、内側を向く内面であり、前記第一壁面ウィック、前記第二壁面ウィック、及び前記格子状ウィックは、三次元積層造形法により、同一の材料で形成される。
【0007】
本開示に係る金型は、第一金型と、前記第一金型との間に溶解された材料が充填される成形空間を形成する第二金型と、前記第一金型及び前記第二金型の少なくとも一方に配置されて、前記第一熱交換面によって前記成形空間内の前記材料と熱交換可能とされた上記したような熱交換デバイスと、を備える。
【0008】
本開示に係る反射ミラーは、レーザー光を反射可能な反射ミラーであって、前記レーザー光が照射されるミラー部と、前記ミラー部を支持する本体部と、前記本体部の内部に配置され、前記第一熱交換面によって前記ミラー部と熱交換可能とされた上記したような熱交換デバイスと、を備える。
【0009】
本開示に係る気液熱交換器は、気体が流通する第一管と、前記第一管から離れた位置に配置され、液体が流通する第二管と、前記第一管と前記第二管との間に配置され、前記第一熱交換面によって前記第一管内の前記気体と熱交換可能とされ、前記第二熱交換面によって前記第二管内の前記液体と熱交換可能とされた上記したような熱交換デバイスと、を備える。
【0010】
本開示に係るフィン付伝熱管は、内部に流体が流通する伝熱管本体と、前記伝熱管本体の外周面から延びるフィンと、前記フィンに配置され、前記第一熱交換面に対して前記第二熱交換面が前記伝熱管本体に近い位置に配置され、前記第二熱交換面によって前記伝熱管本体の内部の前記流体と熱交換可能とされた上記したような熱交換デバイスと、を備える。
【0011】
本開示に係るノズルは、高温の流体が内部を流通するノズル部と、前記ノズル部と接続されて冷却媒体が流通する冷却管が内部に配置されたノズル本体部と、前記第一熱交換面によって前記ノズル部の内部を流通する前記流体と熱交換可能とされ、前記第二熱交換面によって前記冷却管の内部の前記冷却媒体と熱交換可能とされた上記したような熱交換デバイスと、を備える。
【0012】
本開示に係るタービン翼は、高温の流体に接触可能な翼面を有する翼体と、前記翼体の内部に配置され、冷却媒体が流通する冷却管と、前記翼体に配置され、前記第一熱交換面が前記翼面に接触する前記流体と熱交換可能とされ、前記第二熱交換面によって前記冷却管内の冷却媒体と熱交換可能とされた上記したような熱交換デバイスと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示の熱交換デバイス、金型、反射ミラー、気液熱交換器、フィン付伝熱管、ノズル、及びタービン翼によれば、熱交換効率をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る熱交換デバイスの構成を示す断面図である。
【
図2】上記熱交換デバイスの格子状ウィックを示す拡大図である。
【
図3】本開示の第二実施形態に係る熱交換デバイスの構成を示す断面図である。
【
図4】本開示の第二実施形態の第一変形例に係る熱交換デバイスの構成を示す断面図である。
【
図5】本開示の第二実施形態の第二変形例に係る熱交換デバイスの構成を示す断面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る熱交換デバイスの第一適用例を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る熱交換デバイスの第二適用例を示す図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る熱交換デバイスの第三適用例を示す図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る熱交換デバイスの第三適用例の変形例を示す図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る熱交換デバイスの第四適用例を示す図である。
【
図11】本開示の実施形態に係る熱交換デバイスの第五適用例を示す図である。
【
図12】本開示の実施形態に係る熱交換デバイスの第六適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本開示による熱交換デバイス、及びそれを備えた金型、反射ミラー、気液熱交換器、フィン付伝熱管、ノズル、及びタービン翼を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
<第一実施形態>
(熱交換デバイスの構成)
図1に示すように、熱交換デバイス1Aは、デバイス本体10Aと、壁面ウィック20Aと、格子状ウィック30Aと、を主に備えている。熱交換デバイス1Aは、その外周面の少なくとも一部が対象物Pに面するように配置される。ここで、対象物Pは、熱交換デバイス1Aによる冷却又は加熱する対象である。対象物Pは、例えば、各種の気体や液体等の流体、後に適用例として例示する各種の機器や装置等を構成する部材である。熱交換デバイス1Aは、デバイス本体10Aの内部に封入された作動媒体4と対象物Pとの間で熱交換を行うことによって、対象物Pを冷却または加熱する。
【0017】
(デバイス本体の構成)
デバイス本体10Aは、その内部に水等の作動媒体4が封入された内部空間Sが画成された中空構造とされている。デバイス本体10Aは、例えば銅のような熱伝導率の高い金属製の材料で形成されている。本実施形態において、デバイス本体10Aは、例えば、対象物Pに対して近い位置に形成される第一外装部11と、対象物Pに対して遠い位置に配置される第二外装部12と、を有している。第一外装部11と第二外装部12とは互いに離れて対向するように配置されている。本実施形態では、第一外装部11と第二外装部12との間に、内部空間Sが形成されている。第一外装部11には、対象物Pに向かって突出する凸部11tが形成されている。第二外装部12には、対象物Pに向かって窪む凹部12sが形成されている。デバイス本体10Aにおける第二外装部12の外部には、冷却管15が配置されている。冷却管15は、往復噴流式で、デバイス本体10A内の作動媒体4や対象物Pよりも低温の水や油等の冷却媒体5を凹部12s内に噴出させている。冷却管15から噴出された冷却媒体5は、第二外装部12の外側を向く面に噴射されている。
【0018】
デバイス本体10Aは、その内側に第一熱交換面13A及び第二熱交換面14Aを有している。第一熱交換面13Aは、第一外装部11においてデバイス本体10Aの内側を向く内面である。第二熱交換面14Aは、第二外装部12においてデバイス本体10Aの内側の内側を向く内面である。第一熱交換面13Aは、外部の対象物Pと熱交換可能な平滑な面である。第二熱交換面14Aは、冷却媒体5と熱交換可能な平滑な面である。
【0019】
(壁面ウィックの構成)
壁面ウィック20Aは、デバイス本体10Aの内面全体を覆うように形成されている。壁面ウィック20Aは、第一壁面ウィック21Aと、第二壁面ウィック22Aと、を有する。第一壁面ウィック21Aは、第一熱交換面13Aの内側を覆うように配置されている。第一壁面ウィック21Aは、第一熱交換面13Aの形状に対応する形に形成され、第一熱交換面13Aを隙間なく覆っている。第二壁面ウィック22Aは、第二熱交換面14Aの内側を覆うように配置されている。第二壁面ウィック22Aは、第二熱交換面14Aの形状に対応する形に形成され、第二熱交換面14Aを隙間なく覆っている。第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aは、それぞれ金属製の多孔質体からなる。多孔質体とは、微細な空隙が複数形成された部材である。作動媒体4は、液体の状態である場合に、この空隙を利用して、毛細管現象によって多孔質体内を移動可能とされている。本実施形態の第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aは、三次元積層造形法により、同一の材料で形成されている。第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aは、三次元積層造形法によって形成する際、金属粉末を溶融凝固させる過程で、溶融粒子の配置を調整することによって、比較的容易に空隙の大きさが調整された多孔質化が可能となっている。
【0020】
(格子状ウィックの構成)
格子状ウィック30Aは、デバイス本体10A内で、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aとにわたって配置されている。格子状ウィック30Aは、デバイス本体10A内で、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aとの間に配置され、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aとを直接繋いでいる。格子状ウィック30Aは、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aとの間に画成されたデバイス本体10A内の内部空間Sの全体を埋めるように配置されている。
【0021】
図2に示すように、格子状ウィック30Aは、複数の柱状部材31が三次元格子状に配置されて形成されている。柱状部材31は、金属製の多孔質体からなる。各柱状部材31は、直線状に延びている。格子状ウィック30Aは、各柱状部材31の方向や長さが規定された規則的な三次元格子状であってもよいし、各柱状部材31の方向や長さが様々に異なる不規則な三次元格子状であってもよい。格子状ウィック30Aは、複数の柱状部材31同士が、その交差部分で互いに接合されている。その結果、複数の柱状部材31は、気体が流通可能な隙間32が間に形成された三次元格子状に配置された状態となる。このような格子状ウィック30Aは、例えば、3Dプリンター等を用いた三次元積層造型法によって形成されている。本実施形態の格子状ウィック30Aは、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aと同様の材料で形成されている。
【0022】
(熱交換デバイスによる作用)
図1に示すように、この熱交換デバイス1Aでは、例えば、デバイス本体10Aの第一熱交換面13Aが配置されている部分(第一外装部11)の外側に、作動媒体4よりも高温の対象物Pがある場合、第一熱交換面13Aで外部の対象物Pとの熱交換が行われる。つまり、第一熱交換面13A付近が蒸発部となる。第一熱交換面13Aでの熱交換により、対象物Pは冷却される。この熱交換によって、対象物Pから熱が伝導されて第一熱交換面13Aが加熱される。第一熱交換面13Aの温度上昇により、第一熱交換面13Aの内側を覆うように配置された第一壁面ウィック21A内の作動媒体4が液相から気相に相変化し、蒸気4Sが生成される。生成された蒸気4Sは、デバイス本体10A内の蒸気圧差によって、第一壁面ウィック21Aから第二壁面ウィック22Aに向かって流れていく。その際、蒸気4Sは、格子状ウィック30Aの格子間に形成された隙間32を通って、速やかに流れていく。
【0023】
第二熱交換面14Aが配置されている部分(第二外装部12)の外側には、作動媒体4よりも低温の冷却媒体5がある。つまり、第二熱交換面14A付近が凝縮部となる。そのため、蒸気4Sが第二壁面ウィック22Aの近傍に至ると、第二熱交換面14Aで外部の冷却媒体5との熱交換を行うことにより、作動媒体4(蒸気4S)が気相から液相に相変化する。液相に相変化した作動媒体4は、毛細管現象によって第二壁面ウィック22A及び第二壁面ウィック22A近傍の格子状ウィック30A内に伝わる(吸収される)。吸収された作動媒体4は、毛細管現象により、格子状ウィック30Aを伝い、第二壁面ウィック22Aから第一壁面ウィック21Aに向かって移動する。
【0024】
(作用効果)
上述の構成によれば、格子状ウィック30Aが、多孔質体から構成された複数の柱状部材31を三次元格子状に配置して形成されている。そのため、複数の柱状部材31同士の間(格子間)に、蒸気4Sが通過可能な隙間32(
図2参照)が形成される。このため、生成された蒸気4Sは、格子状ウィック30Aの格子間に形成された隙間32を通って、速やかに第二壁面ウィック22Aへと流れていく。これにより、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aとの間での蒸気4Sの移動量(流量)を確保することができる。また、多孔質体によって形成された格子状ウィック30Aによって、毛細管現象を利用して、第二壁面ウィック22Aと第一壁面ウィック21Aとの間での液相の作動媒体4の移動量(流量)を確保することができる。その結果、熱交換デバイス1Aにおける熱交換効率を高めることが可能となる。このようにして、第一熱交換面13A及び第二熱交換面14Aで熱交換がなされて相変化した作動媒体4が、格子状ウィック30Aを介して速やかに移動する。
【0025】
また、熱交換デバイス1Aでは、三次元積層造形法によって第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aを多孔質体で形成している。そのため、第一外装部11や第二外装部12の形に合わせて、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aを形成することが容易にできる。さらに、格子状ウィック30Aが三次元積層造形法によって多孔質体で三次元格子状に形成されていることで、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aの間の空間である内部空間Sの形に合わせて、格子状ウィック30Aを容易に作成することができる。そのため、デバイス本体10Aの形状に寄らず、デバイス本体10A内の内部空間Sを格子状ウィック30Aで容易に埋めることができる。一般的なヒートパイプでは、内部に配置されるウィックの形状に制限が出てしまうために、形成可能な形状に制限が出てしまう場合がある。しかしながら、三次元積層造形法によって多孔質体でウィックを形成した構造とすることで、複雑な形状を含む任意の形状で熱交換デバイス1Aを形成することができる。
【0026】
また、熱交換により相変化した作動媒体4は、格子状ウィック30Aを構成する複数の柱状部材31自体や複数の柱状部材31同士の間の隙間32を通して、様々な方向に分散して移動する。具体的には、熱交換デバイス1Aにおいて、高温箇所が発生すると、当該箇所での作動媒体4の蒸発量が増加する。例えば、第一熱交換面13Aが高温となると、第一熱交換面13A付近での作動媒体4の蒸発量が増加する。その結果、第一熱交換面13Aでの吸熱量が増加し、高温となっていた第一熱交換面13Aの冷却が促進される。第一熱交換面13Aの冷却が促進されることで、熱交換デバイス1A全体として、均温化がなされる。この際、熱交換による相変化によって、蒸気4Sとなった気相の作動媒体4は、高温箇所から隙間32を通って速やかに移動するので、高温箇所が効率良く均温化される。また、生成された蒸気4Sが移動しても、多孔質体である柱状部材31自体を通して、毛細管現象によって、液相の作動媒体4が順次供給される。高温箇所では、作動媒体4の蒸発量が増加することで、液相の作動媒体4が減少していく。しかしながら、柱状部材31を通して液相の作動媒体4を供給できるため、高温箇所における作動媒体4の保持量が過度に減少するのを抑えることができる。したがって、高温箇所で作動媒体4が枯渇することを抑えることができる。
【0027】
また、格子状ウィック30Aは、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aとの間に画成された内部空間Sの全体を埋めるように配置されている。これにより、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aとの間で、気相や液相となった作動媒体4が、より効率良く移動する。そのため、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aの任意の位置で低温また高温となった場合に、その位置に対して気相や液相の作動媒体4が速やかに行き渡って、熱交換が行われる。つまり、熱交換が速やかに行われ、デバイス本体10Aにおける低温また高温となった位置を速やかに加熱又は冷却することができる。これにより、熱交換デバイス1Aは均温化される。
【0028】
また、上記熱交換デバイス1Aでは、対象物Pを冷却するだけでなく、対象物Pを加熱することもできる。このような場合には、熱交換デバイス1Aは、デバイス本体10Aの第二熱交換面14Aが配置されている部分の外側に、冷却媒体5に代えて、対象物Pよりも高温の加熱媒体を噴射する。これにより、第二熱交換面14Aで外部との熱交換が行われ、作動媒体4が液相から気相に相変化する。気相に相変化した作動媒体4(蒸気4S)は、格子状ウィック30Aの隙間32を通して第二壁面ウィック22Aから第一壁面ウィック21Aに移動する。第一壁面ウィック21Aでは、第一熱交換面13Aにおける外部との熱交換により、作動媒体4が気相から液相に相変化する。この第一熱交換面13Aにおける熱交換により、外部の対象物Pが加熱される。このような場合も、格子状ウィック30Aにより、気相(蒸気4S)や液相の作動媒体4が、それぞれ効率良く移動する。その結果、熱交換デバイス1Aでは、均一かつ急速に加熱して均温化することができる。
【0029】
なお、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aを形成する多孔質体としては、例えば、金網、焼結金属等を採用することもできる。また、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aは、格子状ウィック30Aと同様に、三次元積層造形法により、複数の柱状部材31が三次元格子状に配置されて形成されてもよい。つまり、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aは、格子状ウィック30Aとは異なる形状を有する多孔質体であってもよく、同一の形状を有する多孔質体であってもよい。
【0030】
また、格子状ウィック30Aは、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aに直接接続される構造に限定されるものではない。格子状ウィック30Aは、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aの近傍まで延びていればよい。したがって、格子状ウィック30Aは、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aに対して、微小な隙間を開けた状態で形成されていてもよく、他のウィック等を介して間接的に接続されていてもよい。
【0031】
さらに、格子状ウィック30Aは、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aとの間の内部空間Sの全体を埋めるように配置されることに限定されるものではない。例えば、格子状ウィック30Aは、内部空間Sにおいて、架橋のように柱状をなして、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aと間隔を空けて繋ぐ構造とされていてもよい。
【0032】
また、上記第一実施形態では、熱交換デバイス1Aの第一熱交換面13Aを凸形状とし、第二熱交換面14Aを凹部12sによって形成する構成としたが、このような形状に限定されるものではない。第一熱交換面13Aや第二熱交換面14Aは、任意の形状に形成されていればよい。
【0033】
<第二実施形態>
次に、本開示に係る熱交換デバイスの第二実施形態について説明する。なお、以下に説明する第二実施形態においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0034】
(熱交換デバイスの構成)
図3に示すように、第二実施形態の熱交換デバイス1Bはヒートパイプを構成している。熱交換デバイス1Bは、デバイス本体10Bと、壁面ウィック20Bと、格子状ウィック30Bと、を主に備えている。
【0035】
(デバイス本体の構成)
デバイス本体10Bは、その内部に作動媒体4が封入された内部空間Sが画成された中空構造とされている。デバイス本体10Bは、第一端部1sと第二端部1tとを結ぶように延びている。デバイス本体10Bは、第一端部1sから第二端部1tまで延びる中空筒状に形成され、延伸方向の両端(第一端部1s、及び第二端部1t)が閉塞されている。デバイス本体10Bは、第一端部1sと第二端部1tとを直線的に結ぶように延びていてもよいし、第一端部1sと第二端部1tとの間で、適宜、湾曲、屈折等していてもよい。デバイス本体10Bの第一端部1sは、対象物Pに面するように配置されている。デバイス本体10Bの第二端部1tは、対象物Pに直接接触する位置から離れた位置に配置されている。したがって、デバイス本体10Bの第二端部1tは、例えば冷却媒体に面する位置に配置されていてもよい。デバイス本体10Bは、例えば銅のような熱伝導率の高い金属製の材料で形成されている。
【0036】
デバイス本体10Bは、その内側に第一熱交換面13B及び第二熱交換面14Bを有している。第一熱交換面13Bは、デバイス本体10Bの第一端部1sを含む領域においてデバイス本体10Bの内側を向く面である。第一熱交換面13Bは、対象物Pと熱交換可能とされている。第二熱交換面14Bは、デバイス本体10Bの第二端部1tを含む領域においてデバイス本体10Bの内側に形成されている。つまり、第二熱交換面14Bは、第一熱交換面13Bから離れた位置に配置されている。第二熱交換面14Bは、対象物Pから離れた位置で冷却媒体や大気と熱交換可能とされている。
【0037】
(壁面ウィックの構成)
壁面ウィック20Bは、デバイス本体10Bの内面全体を覆うように形成されている。壁面ウィック20Bは、第一壁面ウィック21Bと、第二壁面ウィック22Bと、第三壁面ウィック23と、を有している。第一壁面ウィック21Bは、第一熱交換面13Bを内側から覆うように配置されている。第二壁面ウィック22Bは、第二熱交換面14Bを内側から覆うように配置されている。第三壁面ウィック23は、第一熱交換面13Bと第二熱交換面14Bとの間で、デバイス本体10Bの内面を内側から覆うように配置されている。つまり、第三壁面ウィック23は、第一壁面ウィック21Bと第二壁面ウィック22Bとを繋ぐように配置されている。第一壁面ウィック21B、第二壁面ウィック22B、及び第三壁面ウィック23は、第一実施形態と同様に、金属製の多孔質体からなる。第一壁面ウィック21B、第二壁面ウィック22B、及び第三壁面ウィック23は、三次元積層造形法により、同一の材料で形成されている。
【0038】
(格子状ウィックの構成)
格子状ウィック30Bは、デバイス本体10B内で、第一壁面ウィック21Bと第二壁面ウィック22Bとの間に配置され、第一壁面ウィック21Bと第二壁面ウィック22Bとを繋いでいる。格子状ウィック30Bは、格子状ウィック30Bは、第三壁面ウィック23には繋がっていない。第二実施形態の格子状ウィック30Bは、第一格子状ウィック33と、第二格子状ウィック34と、を備えている。
【0039】
第一格子状ウィック33は、デバイス本体10B内で第一壁面ウィック21Bが配置されている第一領域A1と、デバイス本体10B内で第二壁面ウィック22Bが配置されている第二領域A2とを結ぶように延びている。本実施形態の第一格子状ウィック33は、デバイス本体10Bの中心部に配置されている。第一格子状ウィック33は、デバイス本体10Bの第一端部1sと第二端部1tとを結ぶ方向に、柱状に直線状をなして延びている。
【0040】
なお、第一格子状ウィック33は、第一壁面ウィック21Bや第二壁面ウィック22Bに直接接続された構造に限定されるものではない。第一格子状ウィック33は、第一領域A1から第二領域A2まで延びていれば、第一壁面ウィック21Bや第二壁面ウィック22Bに間接的に接続されただけの構造(第一壁面ウィック21Bや第二壁面ウィック22Bに接触していない構造)であってもよい。
【0041】
第二格子状ウィック34は、第一領域A1及び第二領域A2のそれぞれに独立して配置されている。第一領域A1に配置された蒸発側第二格子状ウィック341は、第一壁面ウィック21Bと第一格子状ウィック33とを接続している。第二領域A2に配置された凝縮側第二格子状ウィック342は、第二壁面ウィック22Bと第一格子状ウィック33とを接続している。蒸発側第二格子状ウィック341及び凝縮側第二格子状ウィック342は、それぞれ複数本が配置されている。蒸発側第二格子状ウィック341及び凝縮側第二格子状ウィック342の数は同じであってもよく、一方が多くてもよい。第二格子状ウィック34(蒸発側第二格子状ウィック341及び凝縮側第二格子状ウィック342)のそれぞれは、その延伸方向に直交する断面積が、第一格子状ウィック33の延伸方向に直交する断面積よりも小さい。つまり、各第二格子状ウィック34は、太い幹状の第一格子状ウィック33に対して細く小さい枝状に形成されている。
【0042】
格子状ウィック30Bを構成する第一格子状ウィック33及び第二格子状ウィック34は、それぞれ、
図2に示したように、複数の柱状部材31が三次元格子状に配置されて形成されている。柱状部材31は、三次元積層造型法によって形成された金属製の多孔質体からなる。なお、第一格子状ウィック33と第二格子状ウィック34とは、同じ条件で形成された多孔質体であってもよいし、別の条件で形成された多孔質体であってもよい。つまり、第一格子状ウィック33と第二格子状ウィック34とは、隙間32の大きさや量が互いに異なっていてもよい。さらに、第一格子状ウィック33と第二格子状ウィック34とは、例えば、多孔質体の空隙率が同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0043】
(熱交換デバイスによる作用)
この熱交換デバイス1Bでは、例えば、デバイス本体10Bの第一熱交換面13Bが配置されている部分(第一領域A1)の外側(第一端部1s周辺)に、作動媒体4よりも高温の対象物Pがある場合、第一熱交換面13Bで外部の対象物Pとの熱交換が行われる。つまり、第一領域A1が蒸発部となる。第一熱交換面13Bでの熱交換により、対象物Pは冷却される。熱交換によって、対象物Pから熱が伝導されて第一熱交換面13Bが加熱される。第一熱交換面13Bの温度上昇により、第一熱交換面13Bの内側を覆うように配置された第一壁面ウィック21B内の作動媒体4が液相から気相に相変化し、蒸気4Sが生成される。生成された蒸気4Sは、デバイス本体10B内の蒸気圧差によって、第一壁面ウィック21Bから第二壁面ウィック22Bに向かって流れていく。蒸気4Sは、蒸発側第二格子状ウィック341や第一格子状ウィック33の格子間に形成された隙間32を通って、デバイス本体10B内に出て、速やかに第二壁面ウィック22Bに向かって流れていく。
【0044】
第二壁面ウィック22Bが配置された部分(第二領域A2)に蒸気4Sが至ると、第二熱交換面14Bで外部との熱交換が行われる。つまり、第二領域A2が凝縮部となる。この熱交換により、第二領域A2で作動媒体4(蒸気4S)が気相から液相に相変化する。液相に相変化した作動媒体4は、毛細管現象によって第二壁面ウィック22B、第二壁面ウィック22B近傍の第一格子状ウィック33、及び凝縮側第二格子状ウィック342内に伝わる(吸収される)。吸収された作動媒体4は、毛細管現象により、第二壁面ウィック22Bから凝縮側第二格子状ウィック342を介して第一格子状ウィック33を送られ、第二壁面ウィック22Bから第一壁面ウィック21Bに向かって移動する。
【0045】
(作用効果)
上述の構成によれば、第一格子状ウィック33及び第二格子状ウィック34が、多孔質体から構成された複数の柱状部材31を三次元格子状に配置して形成されている。そのため、第一実施形態と同様に、第一壁面ウィック21Bと第二壁面ウィック22Bとの間で作動媒体4の移動量(流量)を確保することができる。その結果、熱交換デバイス1Bにおける熱交換効率を高めることが可能となる。
【0046】
また、格子状ウィック30Bは、第一領域A1と第二領域A2とを結ぶように延びる第一格子状ウィック33と、第一壁面ウィック21Bや第二壁面ウィック22Bと第一格子状ウィック33とを接続している。第一格子状ウィック33よりも断面積が小さい第二格子状ウィック34と、をさらに備えている。そして、第一格子状ウィック33の断面積が、第二格子状ウィック34よりも大きく形成されている。そのため、第一格子状ウィック33を通して第二壁面ウィック22Bから第一壁面ウィック21Bへと移動する液相の作動媒体4の量(流量)を増大させることができる。これにより、第一壁面ウィック21Bに供給する作動媒体4が枯渇することを抑えることができる。
【0047】
さらに、第一領域A1や第二領域A2は第一格子状ウィック33で埋められることなく、複数の第二格子状ウィック34が形成されている。そのため、第一領域A1や第二領域A2には、複数の第二格子状ウィック34の間に空間が形成される。この空間によって、蒸気4Sの流れを確保することができる。さらに、第一領域A1と第二領域A2との間の第三壁面ウィック23に面する領域には、第一格子状ウィック33以外が形成されておらず大きな空間が形成されている。これらにより、第一格子状ウィック33と第二壁面ウィック22Bとの間の気相の作動媒体4の速やかな流れを確保することができる。
【0048】
なお、上記熱交換デバイス1Bでも、第一実施形態と同様に、対象物Pを冷却するだけでなく、対象物Pを加熱することもできる。
【0049】
(第二実施形態の第一変形例)
なお、上記第二実施形態で示した格子状ウィック30Bの構成に加え、以下に示すようなバッファウィックをさらに備えていてもよい。
図4に示すように、熱交換デバイス1Cの格子状ウィック30Cは、デバイス本体10B内で、第一壁面ウィック21Bと第二壁面ウィック22Bとにわたって配置されている。格子状ウィック30Cは、第一格子状ウィック33と、第二格子状ウィック34と、バッファウィック35と、を備えている。
【0050】
バッファウィック35は、第一領域A1に配置されている。バッファウィック35は、第一領域A1で第一格子状ウィック33の端部に接続されている。バッファウィック35は、第一格子状ウィック33と第二格子状ウィック34とを接続している。本実施形態において、バッファウィック35は、例えば球状に形成されている。バッファウィック35は、第一格子状ウィック33の端部や第二格子状ウィック34の延伸方向に直交する断面積よりも、大きな断面積を有している。これにより、第一格子状ウィック33を通して第二壁面ウィック22Bから移動してきた液相の作動媒体4が、第一格子状ウィック33の端部に留まるよりも多量にバッファウィック35で保持される。したがって、バッファウィック35によって、第二格子状ウィック34を通して第一壁面ウィック21Bに供給される作動媒体4の量を増大させることができる。その結果、第一壁面ウィック21Bに供給する作動媒体4が枯渇することを、より有効に抑えることができる。
【0051】
なお、バッファウィック35は、第一領域A1のみに配置されていることに限定されるものではない。バッファウィック35は、第一領域A1及び第二領域A2の少なくとも一方に配置されていればよい。つまり、バッファウィック35は、第二領域A2のみに配置されてもよく、第一領域A1及び第二領域A2の両方に配置されていてもよい。
【0052】
(第二実施形態の第二変形例)
バッファウィックの形状は、一つの球状に限定されるものではない。
図5に示すように、第二変形例のバッファウィック36は、球状の第一バッファウィック361と、リング状の第二バッファウィック362と、を備えている。第一バッファウィック361及び第二バッファウィック362は、枝状の第二格子状ウィック34の中間部に配置されている。本変形例では、第一バッファウィック361には、第一格子状ウィック33に接続される複数本の第二格子状ウィック34が接続されている。また、第二バッファウィック362には、第一壁面ウィック21Aに接続される複数本の第二格子状ウィック34が接続されている。第一バッファウィック361及び第二バッファウィック362は、第二格子状ウィック34の延伸方向に直交する断面積よりも、大きな断面積を有している。第一バッファウィック361及び第二バッファウィック362は、全体として、第一格子状ウィック33の端部の断面積よりも、大きな断面積を有している。このような、バッファウィック36によっても、第一壁面ウィック21Bに供給される作動媒体4の量を増大させることができる。
【0053】
上記したような熱交換デバイス1A~1Dは、以下に示すような各種の用途に適用することができる。以下の各適用例では、上記第一実施形態で示した熱交換デバイス1Aを例に挙げて説明を行うが、熱交換デバイス1Aに代えて、上記熱交換デバイス1B~1Dを適用するようにしてもよい。
【0054】
[第一適用例]
図6に示すように、熱交換デバイス1Aは、ダイキャストや樹脂成型に使用される金型50に適用されている。金型50は、第一金型51と、第二金型52と、熱交換デバイス1Aと、を備えている。第二金型52は、第一金型51との間に溶解された材料200が充填される成形空間53を形成している。材料200としては、例えば、樹脂や金属が挙げられる。
【0055】
熱交換デバイス1Aは、第一金型51及び第二金型52の少なくとも一方に配置されている。本適用例では、熱交換デバイス1Aは、第二金型52の内部に配置されている。熱交換デバイス1Aのデバイス本体10Aは、第二金型52の型表面(成形空間53を形成する面)を形成している。第一熱交換面13Aは、第二金型52の型表面の裏側に配置されている。第一熱交換面13Aは、第二金型52において、成形空間53に充填された高温の材料200と間で熱交換可能とされている。また、第二金型52内には、冷却媒体5が供給される冷却管55が埋設されている。デバイス本体10Aは、冷却管55の外周面を覆っている。第二熱交換面14Aは、冷却管55内を流れる冷却媒体5との間で熱交換可能とされている。格子状ウィック30Aは、第一熱交換面13Aを覆うように配置された第一壁面ウィック21Aと、第二熱交換面14Aを覆うように配置された第二壁面ウィック22Aとにわたって配置されている。つまり、格子状ウィック30Aは、第二金型52の内部の空間を埋めるように配置されている。また、第一適用例では、第一壁面ウィック21Aと、第二壁面ウィック22Aと、格子状ウィック30Aとは、三次元積層造形法により、同一の材料で、複数の柱状部材31が三次元格子状に配置されることで形成されている。
【0056】
(作用効果)
上記構成の金型50では、熱交換デバイス1Aを使用することで、複雑な形状のヒートシンクのような機能を第二金型52の内部に持たせることができる。その結果、溶解された材料200を固化させる際に、第一熱交換面13Aで材料200(対象物P)と熱交換が行われる。この熱交換によって、材料200が均一かつ急速に冷却できる。
【0057】
具体的には、第一熱交換面13Aでの熱交換により、第一壁面ウィック21A内の作動媒体4は、液相から気相に相変化し、格子状ウィック30Aの隙間を通って、第二壁面ウィック22Aに向かって移動する。第二壁面ウィック22Aに移動した作動媒体4は、第二熱交換面14Aで冷却管55内の冷却媒体5と熱交換し、気相から液相に相変化する。相変化した作動媒体4は、格子状ウィック30Aを通して成形空間53側の第一壁面ウィック21Aへと戻っていく。さらに、金型50を、より高い熱交換効率で冷却することが可能となる。これにより、成形空間53内の材料200を、均一かつ急速に冷却することが可能となり、凝固した材料200の組織の安定化、焼き付き防止を図ることができる。また、材料200の冷却を効率良く行うことができるので、製品の生産効率を高めることができる。
【0058】
また、第二金型52の内部が中空とされずに、格子状ウィック30Aで埋められていることで、金型と必要な強度を確保することができる。
【0059】
[第二適用例]
図7に示すように、熱交換デバイス1Aは、反射ミラー60に適用されている。反射ミラー60は、例えば、レーザー加工機等、レーザー光300を用いる光学機器に備えられている。反射ミラー60は、レーザー光300を反射可能とされている。反射ミラー60は、ミラー部61と、本体部62と、熱交換デバイス1Aと、を備えている。ミラー部61は、レーザー光300が照射される。本体部62は、ミラー部61を支持している。本体部62は、ミラー部61の裏側に固定されている。
【0060】
熱交換デバイス1Aは、本体部62の内部に配置されている。熱交換デバイス1Aの第一熱交換面13Aは、ミラー部61の裏側に配置されている。第一熱交換面13Aは、ミラー部61との間で熱交換可能とされている。本体部62には、冷却媒体5が供給される冷却管65が埋設されている。第二熱交換面14Aは、冷却管65を覆うように配置されている。第二熱交換面14Aは、冷却管65内を流れる冷却媒体5との間で熱交換可能とされている。格子状ウィック30Aは、第一熱交換面13Aを覆うように配置された第一壁面ウィック21Aと、第二熱交換面14Aを覆うように配置された第二壁面ウィック22Aとにわたって配置されている。つまり、格子状ウィック30Aは、本体部62の内部の空間を埋めるように配置されている。また、第二適用例では、第一壁面ウィック21Aと、第二壁面ウィック22Aと、格子状ウィック30Aとは、三次元積層造形法により、同一の材料で、複数の柱状部材31が三次元格子状に配置されることで形成されている。
【0061】
(作用効果)
上記構成の反射ミラー60では、複雑な形状のヒートシンクのような機能を本体部62の内部に持たせることができる。その結果、レーザー光300が照射されることによって、加熱されたミラー部61(対象物P)と第一熱交換面13Aとで熱交換が行われる。これにより、ミラー部61を均一かつ急速に冷却できる。レーザー光300が照射されるミラー部61では、局所的な過熱により熱変形が生じるおそれがある。ミラー部61に熱変形が生じると、レーザー焦点がずれてしまい、レーザー光300を用いる光学機器としての精度が大きく劣化してしまう。ところが、熱交換デバイス1Aを使用することで、ミラー部61を、より高い熱交換効率で冷却することが可能となる。これにより、レーザー光300による入熱によって、ミラー部61の熱変形することを抑えることができる。
【0062】
また、反射ミラー60を冷却する構造として、本体部62の内部に冷却流路を形成してミラー部61の裏側に高圧の冷却水を噴射して冷却する構造が知られている。このような冷却水を使用する構造と比較した場合、熱交換デバイス1Aを使用した構造では、冷却水によるミラー部61の変形が生じない。そのため、反射ミラー60の寿命を向上させることができる。
【0063】
[第三適用例]
図8に示すように、熱交換デバイス1Aは、気液熱交換器70に適用されている。気液熱交換器70は、第一管71と、第二管72と、熱交換デバイス1Aと、を備えている。第一管71は、気体が流通する。第二管72は、第一管71から離れた位置に配置されている。第二管72は、液体が流通する。気液熱交換器70は、第一管71と第二管72との間で熱交換を行う。
【0064】
熱交換デバイス1Aは、第一管71と第二管72との間に配置されている。第一熱交換面13Aは、第一管71を覆っている。第二熱交換面14Aは、第二管72を覆っている。第一熱交換面13Aは、第一管71内の気体と熱交換可能とされている。第二熱交換面14Aは、第二管72内の液体と熱交換可能とされている。格子状ウィック30Aは、第一管71を覆うように配置された第一壁面ウィック21Aと、第二管72を覆うように配置された第二壁面ウィック22Aとにわたって配置されている。つまり、格子状ウィック30Aは、第一管71と第二管72との間の空間を埋めるように配置されている。また、第三適用例では、第一壁面ウィック21Aと、第二壁面ウィック22Aと、格子状ウィック30Aとは、三次元積層造形法により、同一の材料で、複数の柱状部材31が三次元格子状に配置されることで形成されている。
【0065】
(作用効果)
上記構成の気液熱交換器70では、熱交換デバイス1Aを使用することで、第一管71と第二管72との間に、複雑な形状のヒートシンクのような機能を持たせることができる。その結果、格子状ウィック30Aを介して、第一管71内の気体と第二管72内の液体との熱交換がなされる。したがって、気液熱交換器70でより高い熱交換効率で熱交換を行うことが可能となる。
【0066】
また、第一管71と第二管72との間が格子状ウィック30Aで埋められることで、第一管71や第二管72の強度を向上させることができる。一般的に、気体が流通する第一管71では、液体が流通する第二管72と比べて、熱伝達率が小さくなる傾向があり、第一管71を大きくして伝熱面積を確保する必要がある。ところが、気液熱交換器70で使用される気体は高圧な場合が多い。その結果、シェルアンドチューブ型の気液熱交換器とした場合には、第一管71の周りにフィンを形成して伝熱面積を確保しようとすると、圧力容器を用意する必要が出てきてしまう。また、プレートフィン型の気液熱交換器とした場合には、高圧に耐えうる構造とするために、機器サイズが大型化する可能性がある。しかしながら、格子状ウィック30Aによって、第一管71と第二管72との強度を向上させることで、第一管71及び第二管72の伝熱面積比を自由に変更しつつも、全体としてのサイズを抑えて、耐圧性を確保することができる。
【0067】
また、格子状ウィック30Aで第一管71及び第二管72が覆われていることで、第一管71や第二管72が破損しても、気体や流体が気液熱交換器70の外に漏洩してしまったり、互いに接触してしまったりすることを抑えることができる。
【0068】
なお、
図9に示すように、第一管71と第二管72とは、互いに平行に配置する構造であることに限られない。例えば、第一管71の周囲に、第一管71に対して螺旋状に巻き付くように第二管72を配置してもよい。この場合、格子状ウィック30Aは、第一管71及び第二管72の全体を覆うように配置されることで、第一管71と第二管72との間に配置される。
【0069】
[第四適用例]
図10に示すように、熱交換デバイス1Aは、フィン付伝熱管80に適用されている。フィン付伝熱管80は、伝熱管本体81と、フィン82と、熱交換デバイス1Aと、を備えている。伝熱管本体81は、内部に流体が流通する。フィン82は、伝熱管本体81の外周面から径方向外側に延びている。
【0070】
熱交換デバイス1Aは、フィン82に配置されている。フィン82は、中空構造とされている。フィン82の内部には熱交換デバイス1Aが配置されている。第一熱交換面13Aは、フィン82の外周端側に形成されている。第二熱交換面14Aは、フィン82において伝熱管本体81に近い位置に配置されている。第一熱交換面13Aは、フィン82の外部の流体と熱交換可能とされている。第二熱交換面14Aは、伝熱管本体81の内部の流体と熱交換可能とされている。格子状ウィック30Aは、第一熱交換面13Aを覆うように配置された第一壁面ウィック21Aと、第二熱交換面14Aを覆うように配置された第二壁面ウィック22Aとにわたって配置されている。つまり、格子状ウィック30Aは、中空構造のフィン82の内部を埋めるように配置されている。また、第四適用例では、第一壁面ウィック21Aと、第二壁面ウィック22Aと、格子状ウィック30Aとは、三次元積層造形法により、同一の材料で、複数の柱状部材31が三次元格子状に配置されることで形成されている。
【0071】
(作用効果)
上記構成のフィン付伝熱管80では、熱交換デバイス1Aを使用することで、複雑な形状のヒートシンクのような機能をフィン82の内部に持たせることができる。その結果、格子状ウィック30Aを介して、フィン82と伝熱管本体81との間で熱交換がなされる。したがって、フィン付伝熱管80でより高い熱交換効率で熱交換することが可能となる。
【0072】
また、フィン付伝熱管80では、伝熱管本体81から離れてフィン82の先端に近づくほど、伝熱管本体81の内部の流体との温度差が拡大し、フィン82による伝熱面積の増大効果が薄れてしまう。しかしながら、フィン82の内部に格子状ウィック30Aが配置されていることで、フィン82が全体として均温化される。その結果、フィン82の先端と基端との温度差が低減され、効率を向上させることができる。さらに、格子状ウィック30Aで埋まっていることで、フィン82の強度が向上する。その結果、フィン82の高さの増加が可能となり、伝熱面積を更に増加させることができる。
【0073】
[第五適用例]
図11に示すように、熱交換デバイス1Aは、ノズル90に適用されている。ノズル90は、例えば、ガソリン、ディーゼル油等の燃料や、バーナーガス等の高温の流体を噴射する。ノズル90は、ノズル部91と、ノズル本体部92と、熱交換デバイス1Aと、を備えている。ノズル部91は、高温の流体が内部を流通する。ノズル部91は、先端のノズルチップ93から、流体を噴出する。ノズル本体部92は、ノズル部91の基端部に接続されている。ノズル本体部92の内部には、冷却媒体5が流通する冷却管95が配置されている。
【0074】
熱交換デバイス1Aの第一熱交換面13Aは、ノズル部91の先端のノズルチップ93の内部に形成されている。第一熱交換面13Aは、ノズルチップ93から噴出される高温の流体と熱交換可能とされている。第二熱交換面14Aは、冷却管95を覆っている。第二熱交換面14Aは、冷却管95内の冷却媒体5と熱交換可能とされている。格子状ウィック30Aは、第一熱交換面13Aを覆うように配置された第一壁面ウィック21Aと、第二熱交換面14Aを覆うように配置された第二壁面ウィック22Aとにわたって配置されている。つまり、格子状ウィック30Aは、ノズル部91の内部の空間を埋めるように配置されている。また、第五適用例では、第一壁面ウィック21Aと、第二壁面ウィック22Aと、格子状ウィック30Aとは、三次元積層造形法により、同一の材料で、複数の柱状部材31が三次元格子状に配置されることで形成されている。
【0075】
(作用効果)
上記構成のノズル90では、複雑な形状のヒートシンクのような機能をノズル部91の内部に持たせることができる。その結果、格子状ウィック30Aを介して、ノズルチップ93と冷却管95内の冷却媒体5との熱交換がなされる。したがって、ノズル90を、より高い熱交換効率で冷却することが可能となる。
【0076】
一般的に、ノズル90では、噴射する流体の温度が高温であればあるほど、ノズルチップ93の熱変形による噴射性能の悪化を防ぐことが重要となる。しかしながら、第五適用例の構造では、格子状ウィック30Aによって、ノズル部91の内部に、複雑な冷却流路を形成することなく、ノズル90を、より高い熱交換効率で冷却することが可能となる。また、冷却管95内の冷却媒体5をノズル90で噴射する流体にすることで、ノズル90を冷却しながら、噴射させる流体を予熱することも可能となる。
【0077】
[第六適用例]
図12に示すように、熱交換デバイス1Aは、タービン翼100に適用されている。タービン翼100は、例えば、ガスタービンや蒸気タービンに配置されている。タービン翼100は、翼体101と、冷却管105と、熱交換デバイス1Aと、を備えている。翼体101は、燃焼ガスや蒸気等の高温の流体に接触する翼面102を有している。冷却管105は、翼体101の内部の基端部付近に配置されている。冷却管105は、冷却媒体5が流通する。
【0078】
熱交換デバイス1Aの第一熱交換面13Aは、翼面102と平行になるように翼体101の内部に形成されている。第一熱交換面13Aは、翼面102に接触する高温の流体と熱交換可能とされている。第二熱交換面14Aは、冷却管105を覆っている。第二熱交換面14Aは、冷却管105内の冷却媒体5と熱交換可能とされている。格子状ウィック30Aは、第一熱交換面13Aを覆うように配置された第一壁面ウィック21Aと、第二熱交換面14Aを覆うように配置された第二壁面ウィック22Aとにわたって配置されている。つまり、格子状ウィック30Aは、翼体101の内部を埋めるように配置されている。また、第六適用例では、第一壁面ウィック21Aと、第二壁面ウィック22Aと、格子状ウィック30Aとは、三次元積層造形法により、同一の材料で、複数の柱状部材31が三次元格子状に配置されることで形成されている。
【0079】
(作用効果)
上記構成のタービン翼100では、熱交換デバイス1Aを使用することで、翼体101の内部に、複雑な形状のヒートシンクのような機能を持たせることができる。その結果、格子状ウィック30Aを介して、翼面102と冷却管105内の冷却媒体5との熱交換がなされる。したがって、タービン翼100において、翼体101をより高い熱交換効率で冷却することが可能となる。
【0080】
また、タービン翼100自体も三次元積層造形法で形成することで、翼体101と、熱交換デバイス1Aとを同時に一体的に形成することができる。さらに、冷却管105は、翼体101の内部の基端部付近に配置されていることで、タービン翼100が動翼の場合には、遠心力によって、冷却管105付近で凝縮した作動媒体4が翼体101の先端に向かって送られる。その結果、格子状ウィック30A自体の熱輸送限界を超えて、多く液相の作動媒体4を翼体101の先端に送ることができる。これにより、翼体101をより一層高い熱交換効率で冷却することが可能となる。
【0081】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0082】
<付記>
各実施形態に記載の熱交換デバイス1A~1D、及びそれを備えた金型50、反射ミラー60、気液熱交換器70、フィン付伝熱管80、ノズル90、タービン翼100は、例えば以下のように把握される。
【0083】
(1)第1の態様に係る熱交換デバイス1A~1Dは、相変化する作動媒体4が封入されているとともに、内側に外部と熱交換可能な第一熱交換面13A、13B及び第二熱交換面14A、14Bが形成されたデバイス本体10Aと、多孔質体から構成され、前記第一熱交換面13A、13Bの内側を覆うように配置された第一壁面ウィック21A、21Bと、多孔質体から構成され、前記第二熱交換面14A、14Bの内側を覆うように配置された第二壁面ウィック22A、22Bと、前記第一壁面ウィック21A、21Bと前記第二壁面ウィック22A、22Bとにわたって配置され、多孔質体から構成された複数の柱状部材31が三次元格子状に配置されて形成された格子状ウィック30Aと、を備える。
【0084】
対象物Pの例としては、各種の気体、液体、あるいは各種の機器、装置等を構成する部材が挙げられる。
【0085】
この熱交換デバイス1A~1Dは、格子状ウィック30Aが、多孔質体から構成された複数の柱状部材31を三次元格子状に配置して形成されている。そのため、複数の柱状部材31同士の間(格子間)に、気相の作動媒体4が通過可能な隙間32(
図2参照)が形成される。このため、気相の作動媒体4は、格子状ウィック30Aの格子間に形成された隙間32を通って、速やかに第二壁面ウィック22Aへと流れていく。これにより、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aとの間での気相の作動媒体4の移動量(流量)を確保することができる。また、多孔質体によって形成された格子状ウィック30Aによって、毛細管現象を利用して、第二壁面ウィック22Aと第一壁面ウィック21Aとの間での液相の作動媒体4の移動量(流量)を確保することができる。その結果、熱交換デバイス1Aにおける熱交換効率を高めることが可能となる。
【0086】
(2)第2の態様に係る熱交換デバイス1Aは、(1)の熱交換デバイス1Aであって、前記格子状ウィック30Aは、前記第一壁面ウィック21Aと前記第二壁面ウィック22Aとの間に画成された空間の全体を埋めるように配置されている。
【0087】
これにより、第一壁面ウィック21Aと第二壁面ウィック22Aとの間で、気相や液相となった作動媒体4が、より効率良く移動する。そのため、第一壁面ウィック21A及び第二壁面ウィック22Aの任意の位置で低温また高温となった場合に、その位置に対して気相や液相の作動媒体4が速やかに行き渡って、熱交換が行われる。つまり、熱交換が速やかに行われ、デバイス本体10Aにおける低温また高温となった位置を速やかに加熱又は冷却することができる。
【0088】
(3)第3の態様に係る熱交換デバイス1B~1Dは、(1)又は(2)の熱交換デバイス1B~1Dであって、前記格子状ウィック30Bは、前記デバイス本体10B内で前記第一壁面ウィック21Bが配置されている第一領域A1と、前記デバイス本体10B内で前記第二壁面ウィック22Bが配置されている第二領域A2とを結ぶように延びる第一格子状ウィック33と、前記第一壁面ウィック21B又は前記第二壁面ウィック22Bと前記第一格子状ウィック33とを接続し、前記第一格子状ウィック33よりも断面積が小さい第二格子状ウィック34と、をさらに備える。
【0089】
これにより、第一格子状ウィック33を通して第二壁面ウィック22Bと第一壁面ウィック21Bとの間で移動する液相の作動媒体4の量(流量)を増大させることができる。これにより、第一壁面ウィック21B又は第二壁面ウィック22Bに供給する作動媒体4が枯渇することを抑えることができる。さらに、第一領域A1や第二領域A2は第一格子状ウィック33で埋められることなく、第二格子状ウィック34が形成されることとなる。そのため、第一領域A1や第二領域A2には、第二格子状ウィック34の周りに空間が形成される。この空間によって、蒸気4Sの流れを確保することができる。これにより、第一格子状ウィック33と第一壁面ウィック21Bや第二壁面ウィック22Bとの間の気相の作動媒体4の速やかな流れを確保することができる。
【0090】
(4)第4の態様に係る熱交換デバイス1C、1Dは、(3)の熱交換デバイス1C、1Dであって、前記格子状ウィック30C、30Dは、前記第一領域A1又は前記第二領域A2で前記第二格子状ウィック34に接続され、前記第二格子状ウィック34よりも断面積が大きいバッファウィック35、36をさらに備える。
【0091】
これにより、バッファウィック35によって、第二格子状ウィック34を通して第一壁面ウィック21Bや第二壁面ウィック22Bに供給される作動媒体4の量を増大させることができる。その結果、第一壁面ウィック21Bに供給する作動媒体4が枯渇することを、より有効に抑えることができる。
【0092】
(5)第5の態様に係る金型50は、第一金型51と、前記第一金型51との間に溶解された材料200が充填される成形空間53を形成する第二金型52と、前記第一金型51及び前記第二金型52の少なくとも一方に配置されて、前記第一熱交換面13A、13Bによって前記成形空間53内の前記材料200と熱交換可能とされた(1)から(4)の何れか一つの熱交換デバイス1A~1Dと、を備える。
【0093】
これにより、熱交換デバイス1A~1Dによって、溶解された材料200を固化させる際に、第一熱交換面13Aで材料200と熱交換が行われる。この熱交換によって、材料200が均一かつ急速に冷却できる。したがって、金型50を、より高い熱交換効率で冷却することが可能となる。
【0094】
(6)第6の態様に係る反射ミラー60は、レーザー光300を反射可能な反射ミラー60であって、前記レーザー光300が照射されるミラー部61と、前記ミラー部61を支持する本体部62と、前記本体部62の内部に配置され、前記第一熱交換面13A、13Bによって前記ミラー部61と熱交換可能とされた(1)から(4)の何れか一つの熱交換デバイス1A~1Dと、を備える。
【0095】
これにより、熱交換デバイス1A~1Dによって、ミラー部61を、より高い熱交換効率で冷却することが可能となる。これにより、レーザー光300による入熱によって、ミラー部61の熱変形することを抑えることができる。
【0096】
(7)第7の態様に係る気液熱交換器70は、気体が流通する第一管71と、前記第一管71から離れた位置に配置され、液体が流通する第二管72と、前記第一管71と前記第二管72との間に配置され、前記第一熱交換面13A、13Bによって前記第一管71内の前記気体と熱交換可能とされ、前記第二熱交換面14A、14Bによって前記第二管72内の前記液体と熱交換可能とされた(1)から(4)の何れか一つの熱交換デバイス1A~1Dと、を備える。
【0097】
これにより、格子状ウィック30Aを介して、第一管71内の気体と第二管72内の液体との熱交換がなされる。したがって、気液熱交換器70でより高い熱交換効率で熱交換を行うことが可能となる。
【0098】
(8)第8の態様に係るフィン付伝熱管80は、内部に流体が流通する伝熱管本体81と、前記伝熱管本体81の外周面から延びるフィン82と、前記フィン82に配置され、前記第一熱交換面13A、13Bに対して前記第二熱交換面14A、14Bが前記伝熱管本体81に近い位置に配置され、前記第二熱交換面14A、14Bによって前記伝熱管本体81の内部の前記流体と熱交換可能とされた(1)から(4)の何れか一つの熱交換デバイス1A~1Dと、を備える。
【0099】
これにより、格子状ウィック30Aを介して、フィン82と伝熱管本体81との間で熱交換がなされる。したがって、フィン付伝熱管80でより高い熱交換効率で熱交換することが可能となる。
【0100】
(9)第9の態様に係るノズル90は、高温の流体が内部を流通するノズル部91と、前記ノズル部91と接続されて冷却媒体5が流通する冷却管95が内部に配置されたノズル本体部92と、前記第一熱交換面13A、13Bによって前記ノズル部91の内部を流通する前記流体と熱交換可能とされ、前記第二熱交換面14A、14Bによって前記冷却管95の内部の前記冷却媒体5と熱交換可能とされた(1)から(4)の何れか一つの熱交換デバイス1A~1Dと、を備える。
【0101】
これにより、格子状ウィック30Aを介して、ノズルチップ93と冷却管95内の冷却媒体5との熱交換がなされる。したがって、ノズル90を、より高い熱交換効率で冷却することが可能となる。
【0102】
(10)第10の態様に係るタービン翼100は、高温の流体に接触可能な翼面102を有する翼体101と、前記翼体101の内部に配置され、冷却媒体5が流通する冷却管105と、前記翼体101に配置され、前記第一熱交換面13A、13Bによって前記翼面102に接触する流体と熱交換可能とされ、前記第二熱交換面14A、14Bによって前記冷却管105内の前記冷却媒体5と熱交換可能とされた(1)から(4)の何れか一つの熱交換デバイス1A~1Dと、を備える。
【0103】
これにより、格子状ウィック30Aを介して、翼面102と冷却管105内の冷却媒体5との熱交換がなされる。したがって、タービン翼100において、翼体101をより高い熱交換効率で冷却することが可能となる。
【符号の説明】
【0104】
1A~1D…熱交換デバイス
4…作動媒体
4S…蒸気
5…冷却媒体
10A、10B…デバイス本体
S…内部空間
1s…第一端部
1t…第二端部
11…第一外装部
11t…凸部
12…第二外装部
12s…凹部
13A、13B…第一熱交換面
14A、14B…第二熱交換面
15、15B…冷却管
20A、20B…壁面ウィック
21A、21B…第一壁面ウィック
22A、22B…第二壁面ウィック
23…第三壁面ウィック
30A~30D…格子状ウィック
31…柱状部材
32…隙間
33…第一格子状ウィック
34…第二格子状ウィック
341…蒸発側第二格子状ウィック
342…凝縮側第二格子状ウィック
35、36…バッファウィック
361…第一バッファウィック
362…第二バッファウィック
50…金型
51…第一金型
52…第二金型
53…成形空間
55…冷却管
60…反射ミラー
61…ミラー部
62…本体部
65…冷却管
70…気液熱交換器
71…第一管
72…第二管
80…フィン付伝熱管
81…伝熱管本体
82…フィン
90…ノズル
91…ノズル部
92…ノズル本体部
93…ノズルチップ
95…冷却管
100…タービン翼
101…翼体
102…翼面
105…冷却管
200…材料
300…レーザー光
A1…第一領域
A2…第二領域
P…対象物