(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】描画システム
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2020158775
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】早川 直人
(72)【発明者】
【氏名】原 望
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-213852(JP,A)
【文献】特開2009-223262(JP,A)
【文献】特開2004-006527(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0242285(US,A1)
【文献】特開2005-195877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24
G03F 9/00-9/02
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対する描画を行う描画システムであって、
下方にて水平移動する基板の上側の主面に対して光を照射してパターンを描画するパターン描画部と、
第1基板保持部、および、前記パターン描画部の下方にて前記第1基板保持部を水平移動する第1移動機構を備える第1搬送機構と、
前記第1基板保持部に保持された基板の下側の主面に対して光を照射して、前記第1搬送機構に関連付けられた第1アライメントマークを描画する第1マーク描画部と、
第2基板保持部、および、前記パターン描画部の下方にて前記第2基板保持部を水平移動する第2移動機構を備える第2搬送機構と、
前記第2基板保持部に保持された基板の下側の主面に対して光を照射して、前記第1アライメントマークとは外観が異なる前記第2搬送機構に関連付けられた第2アライメントマークを描画する第2マーク描画部と、
を備えることを特徴とする描画システム。
【請求項2】
請求項1に記載の描画システムであって、
前記第1搬送機構により搬送される基板に対して前記パターン描画部により上側の主面に描画されるパターンと前記第1マーク描画部により下側の主面に描画される前記第1アライメントマークとの相対的な位置関係を示す第1位置関係情報、および、前記第2搬送機構により搬送される基板に対して前記パターン描画部により上側の主面に描画されるパターンと前記第2マーク描画部により下側の主面に描画される前記第2アライメントマークとの相対的な位置関係を示す第2位置関係情報を予め記憶する記憶部と、
前記パターン描画部を制御する描画制御部と、
をさらに備え、
前記描画制御部は、前記第1アライメントマークが描画された主面に前記パターン描画部によるパターンの描画が行われる際に、前記第1位置関係情報に基づいて描画位置を調節し、前記第2アライメントマークが描画された主面に前記パターン描画部によるパターンの描画が行われる際に、前記第2位置関係情報に基づいて描画位置を調節することを特徴とする描画システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の描画システムであって、
前記第1マーク描画部は、光源からの光の一部を通過させる第1マスク部を備え、
前記第2マーク描画部は、前記第1マスク部とは異なる開口を有し、光源からの光の一部を通過させる第2マスク部を備えることを特徴とする描画システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の描画システムであって、
前記第1アライメントマークおよび前記第2アライメントマークは非相似形であることを特徴とする描画システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の描画システムであって、
前記第1アライメントマークは、前記第1搬送機構に関する情報を表示するバーコードであり、
前記第2アライメントマークは、前記第2搬送機構に関する情報を表示するバーコードであることを特徴とする描画システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の描画システムであって、
前記パターン描画部は、
下方に向けて光を照射する描画ヘッドと、
前記描画ヘッドを、前記第1搬送機構の上方の第1描画位置と前記第2搬送機構の上方の第2描画位置との間で移動する描画ヘッド移動機構と、
を備えることを特徴とする描画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対する描画を行う描画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板、プリント基板、または、有機EL表示装置もしくは液晶表示装置用のガラス基板等(以下、「基板」という。)に形成された感光材料に光を照射することにより、パターンの描画が行われている。また、基板の両面に対してパターンの描画が行われる場合もある。この場合、基板の両面のパターン描画位置を合わせるために、基板表面へのパターンの描画時に、基板裏面にアライメントマークを形成することが行われている。
【0003】
特許文献1の描画装置では、基板が載置される描画テーブルにアライメントマーク形成光源が内蔵され、描画テーブル上面に設けられた貫通孔を介して、アライメントマーク形成光源から基板裏面に光を照射してアライメントマークが形成される。そして、基板が反転されて基板裏面にパターンが描画される際には、当該アライメントマークを用いてアライメント処理が行われることにより、基板の両面におけるパターン描画位置の位置合わせが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、描画装置のスループットを向上するために、1台の描画装置内に2つのステージを設け、一方のステージ上の基板に対する描画中に、他方のステージ上の基板にアライメント処理等を行うことが提案されている。このようなツインステージタイプの描画装置において基板の両面に対するパターン描画が行われる場合、基板表面へのパターン描画と基板裏面へのパターン描画とは、同じステージ上で行われることもあれば、異なるステージ上で行われることもある。
【0006】
一方、基板裏面に形成されるアライメントマークの位置と、基板表面に描画されるパターンの位置との関係は、ステージ(およびステージ移動機構)毎に異なる。したがって、基板表面および基板裏面へのパターン描画が異なるステージ上で行われる場合、基板表面および基板裏面へのパターン描画が同じステージ上で行われる場合と同様のアライメント処理が行われると、基板表面に描画されたパターンと基板裏面に描画されたパターンとの相対位置にずれが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板の両側の主面に描画されたパターンの相対的な位置精度を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板に対する描画を行う描画システムであって、下方にて水平移動する基板の上側の主面に対して光を照射してパターンを描画するパターン描画部と、第1基板保持部、および、前記パターン描画部の下方にて前記第1基板保持部を水平移動する第1移動機構を備える第1搬送機構と、前記第1基板保持部に保持された基板の下側の主面に対して光を照射して、前記第1搬送機構に関連付けられた第1アライメントマークを描画する第1マーク描画部と、第2基板保持部、および、前記パターン描画部の下方にて前記第2基板保持部を水平移動する第2移動機構を備える第2搬送機構と、前記第2基板保持部に保持された基板の下側の主面に対して光を照射して、前記第1アライメントマークとは外観が異なる前記第2搬送機構に関連付けられた第2アライメントマークを描画する第2マーク描画部とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の描画システムであって、前記第1搬送機構により搬送される基板に対して前記パターン描画部により上側の主面に描画されるパターンと前記第1マーク描画部により下側の主面に描画される前記第1アライメントマークとの相対的な位置関係を示す第1位置関係情報、および、前記第2搬送機構により搬送される基板に対して前記パターン描画部により上側の主面に描画されるパターンと前記第2マーク描画部により下側の主面に描画される前記第2アライメントマークとの相対的な位置関係を示す第2位置関係情報を予め記憶する記憶部と、前記パターン描画部を制御する描画制御部とをさらに備え、前記描画制御部は、前記第1アライメントマークが描画された主面に前記パターン描画部によるパターンの描画が行われる際に、前記第1位置関係情報に基づいて描画位置を調節し、前記第2アライメントマークが描画された主面に前記パターン描画部によるパターンの描画が行われる際に、前記第2位置関係情報に基づいて描画位置を調節する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の描画システムであって、前記第1マーク描画部は、光源からの光の一部を通過させる第1マスク部を備え、前記第2マーク描画部は、前記第1マスク部とは異なる開口を有し、光源からの光の一部を通過させる第2マスク部を備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の描画システムであって、前記第1アライメントマークおよび前記第2アライメントマークは非相似形である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の描画システムであって、前記第1アライメントマークは、前記第1搬送機構に関する情報を表示するバーコードであり、前記第2アライメントマークは、前記第2搬送機構に関する情報を表示するバーコードである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の描画システムであって、前記パターン描画部は、下方に向けて光を照射する描画ヘッドと、前記描画ヘッドを、前記第1搬送機構の上方の第1描画位置と前記第2搬送機構の上方の第2描画位置との間で移動する描画ヘッド移動機構とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、基板の両側の主面に描画されたパターンの相対的な位置精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一の実施の形態に係る描画装置を示す斜視図である。
【
図2】第1ステージおよび第2ステージの一部を示す平面図である。
【
図5】第1アライメントマークを示す底面図である。
【
図6】第2アライメントマークを示す底面図である。
【
図10】第1ステージおよび第2ステージの位置を示す図である。
【
図11】第1ステージおよび第2ステージの位置を示す図である。
【
図12】第1ステージおよび第2ステージの位置を示す図である。
【
図13】第1ステージおよび第2ステージの位置を示す図である。
【
図14】第1ステージおよび第2ステージの位置を示す図である。
【
図15】第1ステージおよび第2ステージの位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る描画装置1を示す斜視図である。描画装置1は、空間変調された略ビーム状の光を基板9上の感光材料に照射し、当該光の照射領域を基板9上にて走査することによりパターンの描画を行うツインステージタイプの直接描画システムである。
図1では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示している。
図1に示す例では、X方向およびY方向は互いに垂直な水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。他の図においても同様である。なお、Z方向は、重力方向と一致していてもよく、一致していなくてもよい。
【0017】
基板9は、例えば、平面視において略矩形状の板状部材である。基板9は、例えば、プリント基板である。基板9の(+Z)側および(-Z)側の主面では、感光材料により形成されたレジスト膜が銅層上に設けられる。描画装置1では、基板9の当該レジスト膜に回路パターンが描画(すなわち、形成)される。以下の説明では、基板9の一方の主面を「第1主面91」とも呼び、基板9の他方の主面を「第2主面92」とも呼ぶ。なお、基板9の種類および形状等は様々に変更されてよい。
【0018】
描画装置1は、第1搬送機構2aと、第2搬送機構2bと、撮像部3と、パターン描画部4と、フレーム7と、制御部10とを備える。制御部10は、第1搬送機構2a、第2搬送機構2b、撮像部3およびパターン描画部4を制御する。
【0019】
フレーム7は、描画装置1の各構成が取り付けられる本体ベース部である。フレーム7は、略直方体状の基台71と、基台71を跨ぐ門形の第1ガントリー部72および第2ガントリー部73と、を備える。第2ガントリー部73は、第1ガントリー部72の(+Y)側に近接して配置される。以下の説明では、第1ガントリー部72および第2ガントリー部73をまとめて「ガントリー部74」とも呼ぶ。基台71上には第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bが取り付けられる。第1ガントリー部72は撮像部3を支持する。第2ガントリー部73はパターン描画部4を支持する。フレーム7は、図示省略の台座上に載置される。
【0020】
第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bはそれぞれ、撮像部3およびパターン描画部4の下方(すなわち、(-Z)側)にて基板9を保持および移動する機構である。第2搬送機構2bは、第1搬送機構2aの(+X)側に隣接して配置される。第1搬送機構2aと第2搬送機構2bとは略同様の構造を有する。
図1に示す例では、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bにより、第1主面91を上側(すなわち、(+Z)側)に向けた状態で基板9が保持される。
【0021】
第1搬送機構2aは、第1ステージ21aと、第1移動機構22aとを備える。第1ステージ21aは、略水平状態の基板9を下側から保持する略平板状の第1基板保持部である。第1ステージ21aは、例えば、基板9の下面を吸着して保持するバキュームチャックである。第1ステージ21aは、バキュームチャック以外の構造を有していてもよい。第1ステージ21a上に載置された基板9の上側の主面(すなわち、第1主面91)は、Z方向(すなわち、上下方向)に対して略垂直であり、X方向およびY方向に略平行である。
【0022】
第1移動機構22aは、第1ステージ21aを撮像部3およびパターン描画部4に対して略水平方向(すなわち、基板9の上側の主面に略平行な方向)に相対的に移動する第1ステージ移動機構である。第1移動機構22aは、撮像部3およびパターン描画部4の下方にて、ガイドレール221a上に支持された第1ステージ21aをガイドレール221aに沿ってY方向に直線移動する。これにより、第1ステージ21aに保持された基板9がY方向に移動する。以下の説明では、Y方向を「基板移動方向」とも呼ぶ。第1移動機構22aの駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。第1移動機構22aの構造は、様々に変更されてよい。
【0023】
第2搬送機構2bは、第2ステージ21bと、第2移動機構22bとを備える。第2ステージ21bは、略水平状態の基板9を下側から保持する略平板状の第2基板保持部である。第2ステージ21bは、第1ステージ21aの側方(すなわち、(+X)側)に隣接して配置される。第2ステージ21bの上面は、第1ステージ21aの上面と上下方向(すなわち、Z方向)において同じ高さに位置する。第2ステージ21bは、例えば、基板9の下面を吸着して保持するバキュームチャックである。第2ステージ21bは、バキュームチャック以外の構造を有していてもよい。第2ステージ21b上に載置された基板9の上側の主面(すなわち、第1主面91)は、Z方向に対して略垂直であり、X方向およびY方向に略平行である。第2ステージ21bに保持された基板9の上側の主面は、第1ステージ21aに保持された基板9の上側の主面と上下方向の略同じ高さ(すなわち、Z方向の略同じ位置)に位置する。
【0024】
第2移動機構22bは、第2ステージ21bを撮像部3およびパターン描画部4に対して略水平方向(すなわち、基板9の上側の主面に略平行な方向)に相対的に移動する第2ステージ移動機構である。第2移動機構22bは、撮像部3およびパターン描画部4の下方にて、ガイドレール221b上に支持された第2ステージ21bをガイドレール221bに沿ってY方向(すなわち、基板移動方向)に直線移動する。これにより、第2ステージ21bに保持された基板9がY方向に移動する。第2移動機構22bによる第2ステージ21bの移動方向は、第1移動機構22aによる第1ステージ21aの移動方向と略平行である。第2移動機構22bの駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。第2移動機構22bの構造は、様々に変更されてよい。
【0025】
第1移動機構22aと第2移動機構22bとは、基板移動方向(すなわち、Y方向)と交差する方向に並んで配置される。
図1に示す例では、第1移動機構22aと第2移動機構22bとはX方向に並んで配置され、第2移動機構22bは、第1移動機構22aの(+X)側の側方に隣接する。第1移動機構22aと第2移動機構22bとは、上下方向の略同じ高さに位置する。
【0026】
第1移動機構22aおよび第2移動機構22bは、フレーム7の基台71により下方から支持される。第1移動機構22aおよび第2移動機構22bは、第2ガントリー部73よりも(+Y)側から(-Y)方向へと延び、第2ガントリー部73に支持されたパターン描画部4の下方、および、第1ガントリー部72に支持された撮像部3の下方を通過して、第1ガントリー部72から(-Y)側に突出する。第1ガントリー部72は、第1移動機構22aおよび第2移動機構22bのY方向における中央部と、Y方向において略同じ位置に位置する。換言すれば、ガントリー部74は、第1移動機構22aおよび第2移動機構22bのY方向における中央部の上方から、(+Y)方向へと延びる。
【0027】
描画装置1では、第1ステージ21aが第1ガントリー部72よりも(-Y)側に位置している状態で、第1ステージ21aに対する基板9の搬出入が行われる。また、第2ステージ21bが第1ガントリー部72よりも(-Y)側に位置している状態で、第2ステージ21bに対する基板9の搬出入が行われる。
【0028】
上述のように、第1ガントリー部72および第2ガントリー部73は、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bを跨いで設けられる。第1ガントリー部72は、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bのX方向の両側にてZ方向に延びる2本の支柱部と、2本の支柱部の上端部を接続する梁部とを備える。当該梁部は、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bの上方にてX方向に延びる。第1ガントリー部72の2本の支柱部は、(-Z)側の端部において基台71と接続される。第2ガントリー部73は、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bのX方向の両側にてZ方向に延びる2本の支柱部と、2本の支柱部の上端部を接続する梁部とを備える。当該梁部は、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bの上方にてX方向に延びる。第2ガントリー部73の2本の支柱部は、(-Z)側の端部において基台71と接続される。
【0029】
撮像部3は、複数(
図1に示す例では、2つ)の撮像ヘッド31と、撮像ヘッド移動機構32とを備える。複数の撮像ヘッド31は、X方向に配列されて、第1ガントリー部72の梁部に移動可能に取り付けられる。撮像ヘッド移動機構32は、梁部に取り付けられ、複数の撮像ヘッド31を梁部に沿ってX方向に移動する。撮像ヘッド移動機構32の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。
図1に示す例では、2つの撮像ヘッド31のX方向における間隔は変更可能である。なお、撮像部3では、撮像ヘッド31の数は、1であってもよく、3以上であってもよい。
【0030】
各撮像ヘッド31は、図示省略の撮像センサおよび光学系を備えるカメラである。各撮像ヘッド31は、例えば、2次元の画像を取得するエリアカメラである。撮像センサは、例えば、マトリクス状に配列された複数のCCD(Charge Coupled Device)等の素子を備える。各撮像ヘッド31では、図示省略の光源から基板9の上側の主面へと導かれた照明光の反射光が、光学系を介して撮像センサへと導かれる。撮像センサは、基板9の上側の主面からの反射光を受光し、略矩形状の撮像領域の画像を取得する。上記光源としては、LED(Light Emitting Diode)等の様々な光源が利用可能である。なお、各撮像ヘッド31は、ラインカメラ等、他の種類のカメラであってもよい。
【0031】
描画装置1では、撮像ヘッド移動機構32により、複数の撮像ヘッド31が第1搬送機構2aの上方の第1撮像位置と、第2搬送機構2bの上方の第2撮像位置との間で移動される。
図1では、複数の撮像ヘッド31は、第1撮像位置に位置している。複数の撮像ヘッド31は、第1撮像位置において第1ステージ21a上の基板9の上側の主面を撮像する。また、複数の撮像ヘッド31は、第2撮像位置において第2ステージ21b上の基板9の上側の主面を撮像する。
【0032】
パターン描画部4は、複数(
図1に示す例では、6つ)の描画ヘッド41と、描画ヘッド移動機構42とを備える。複数の描画ヘッド41は、X方向に配列されて、第2ガントリー部73の梁部に移動可能に取り付けられる。描画ヘッド移動機構42は、梁部に取り付けられ、複数の描画ヘッド41を梁部に沿ってX方向に一体的に移動する。描画ヘッド移動機構42の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。なお、パターン描画部4では、描画ヘッド41の数は、1であってもよく、複数であってもよい。
【0033】
各描画ヘッド41は、図示省略の光源、光学系および空間光変調素子を備える。空間光変調素子としては、DMD(Digital Micro Mirror Device)やGLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サニーベール、カリフォルニア)の登録商標)等の様々な素子が利用可能である。光源としては、LD(Laser Diode)等の様々な光源が利用可能である。複数の描画ヘッド41は、略同じ構造を有する。
【0034】
描画装置1では、描画ヘッド移動機構42により、複数の描画ヘッド41が第1搬送機構2aの上方の第1描画位置と、第2搬送機構2bの上方の第2描画位置との間で移動される。
図1では、複数の描画ヘッド41は、第2描画位置に位置している。複数の描画ヘッド41は、第1描画位置において第1ステージ21a上の基板9の上側の主面にパターンを描画する。また、複数の描画ヘッド41は、第2描画位置において第2ステージ21b上の基板9の上側の主面にパターンを描画する。
【0035】
第1描画位置および第2描画位置は、第1移動機構22aおよび第2移動機構22bのY方向における中央部と、Y方向において略同じ位置に位置する。また、上述の第1撮像位置および第2撮像位置も、第1移動機構22aおよび第2移動機構22bのY方向における中央部と、Y方向において略同じ位置に位置する。換言すれば、パターン描画部4の複数の描画ヘッド41、および、撮像部3の複数の撮像ヘッド31は、第1移動機構22aおよび第2移動機構22bのY方向における中央部と、Y方向において略同じ位置に位置する。
【0036】
第1描画位置においてパターンが描画される際には、パターン描画部4の複数の描画ヘッド41から、下方の第1ステージ21a上の基板9に向けて、変調(すなわち、空間変調)された光が照射される。そして、当該光の照射と並行して、基板9が第1移動機構22aによりY方向(すなわち、基板移動方向)に水平移動される。これにより、複数の描画ヘッド41からの光の照射領域が基板9上にてY方向に走査され、基板9に対するパターン(例えば、回路パターン)の描画が行われる。第1移動機構22aは、各描画ヘッド41からの光の照射領域を基板9上にてY方向に移動する走査機構である。
【0037】
図1に示す例では、基板9に対する描画は、いわゆるシングルパス(ワンパス)方式で行われる。具体的には、第1移動機構22aにより、第1ステージ21aが複数の描画ヘッド41に対してY方向に相対移動され、複数の描画ヘッド41からの光の照射領域が、基板9の上側の主面上にてY方向に1回のみ走査される。これにより、基板9に対する描画が完了する。なお、描画装置1では、第1ステージ21aのY方向への移動とX方向へのステップ移動とが繰り返されるマルチパス方式により、基板9に対する描画が行われてもよい。第2描画位置におけるパターンの描画は、第1ステージ21aおよび第1移動機構22aが第2ステージ21bおよび第2移動機構22bに変更される点を除き、上述の第1描画位置におけるパターンの描画と同様である。
【0038】
図2は、第1ステージ21aおよび第2ステージ21bの(-Y)側の端部を拡大して示す平面図である。
図2では、第1ステージ21aおよび第2ステージ21b上の基板9を二点鎖線にて描く。
図2に示すように、描画装置1は、第1マーク描画部51と、第2マーク描画部52とをさらに備える。第1マーク描画部51は、第1ステージ21aの内部(すなわち、第1ステージ21aの上面と下面との間)に配置される。第1マーク描画部51は、第1マーク描画部51の上方を覆うように第1ステージ21aに保持された基板9の下側の主面に対して光を照射して、第1搬送機構2aに関連付けられた第1アライメントマークを描画する。
【0039】
第1マーク描画部51は、複数の第1マーカ511を備える。複数の第1マーカ511は、第1ステージ21aの(-Y)側の端縁近傍においてX方向に配列される。
図2に示す例では、複数の第1マーカ511のうち最も(-X)側の第1マーカ511、および、最も(+X)側の第1マーカ511により、基板9の下側の主面において、(-X)側かつ(-Y)側の角部、および、(+X)側かつ(-Y)側の角部に第1アライメントマークが描画される。なお、
図2に示す例よりもX方向の大きさが小さい基板9に対しては、最も(-X)側の第1マーカ511と、当該基板9の(+X)側かつ(-Y)側の角部の下方に位置する第1マーカ511とにより、基板9の下側の主面に2つの第1アライメントマークが描画される。
【0040】
図3は、1つの第1マーカ511、および、その近傍を示す縦断面図である。上述の複数の第1マーカ511は、略同じ構造を有する。第1マーカ511は、第1ステージ21aの上面に設けられた略円柱状の凹部211aに収容される。凹部211aの上端開口は、透光性を有する略平板状のカバー部材により閉塞されてもよい。
【0041】
図3に示すように、第1マーカ511は、第1光源512と、第1光学系513と、第1アパーチャ514とを備える。第1光源512は、凹部211aの底部に配置され、(+Z)方向へと光を出射する。第1光源512としては、例えば、紫外光を出射するLED等が用いられる。第1光学系513は、第1光源512の(+Z)側に配置され、第1光源512からの光を基板9の下側の主面へと導く。第1光学系513は、Z方向に配列された複数のレンズ(図示省略)を備える。第1アパーチャ514は、第1光学系513の複数のレンズの間に配置され、第1光源512からの光の一部のみを通過させる第1マスク部である。第1アパーチャ514は、上述の第1アライメントマークに対応する開口が設けられた略平板状の部材である。第1アパーチャ514は、例えば、ステンレス鋼等の金属により形成される。
【0042】
図2に示す第2マーク描画部52は、第2ステージ21bの内部(すなわち、第2ステージ21bの上面と下面との間)に配置される。第2マーク描画部52は、第2マーク描画部52の上方を覆うように第2ステージ21bに保持された基板9の下側の主面に対して光を照射して、第2搬送機構2bに関連付けられた第2アライメントマークを描画する。第2アライメントマークは、後述するように、第1アライメントマークと外観が異なる。
【0043】
第2マーク描画部52は、第1マーク描画部51と同様に、複数の第2マーカ521を備える。複数の第2マーカ521は、第2ステージ21bの(-Y)側の端縁近傍においてX方向に配列される。
図2に示す例では、複数の第2マーカ521のうち最も(-X)側の第2マーカ521、および、最も(+X)側の第2マーカ521により、基板9の下側の主面において、(-X)側かつ(-Y)側の角部、および、(+X)側かつ(-Y)側の角部に第2アライメントマークが描画される。なお、
図2に示す例よりもX方向の大きさが小さい基板9に対しては、最も(-X)側の第2マーカ521と、当該基板9の(+X)側かつ(-Y)側の角部の下方に位置する第2マーカ521とにより、基板9の下側の主面に2つの第2アライメントマークが描画される。
【0044】
図4は、1つの第2マーカ521、および、その近傍を示す縦断面図である。上述の複数の第2マーカ521は、略同じ構造を有する。第2マーカ521は、第2ステージ21bの上面に設けられた略円柱状の凹部211bに収容される。凹部211bの上端開口は、透光性を有する略平板状のカバー部材により閉塞されてもよい。
【0045】
図4に示すように、第2マーカ521は、第1マーカ511と略同様の構造を有する。第2マーカ521は、第2光源522と、第2光学系523と、第2アパーチャ524とを備える。第2光源522は、凹部211bの底部に配置され、(+Z)方向へと光を出射する。第2光源522としては、例えば、紫外光を出射するLED等が用いられる。第2光学系523は、第2光源522の(+Z)側に配置され、第2光源522からの光を基板9の下側の主面へと導く。第2光学系523は、Z方向に配列された複数のレンズ(図示省略)を備える。第2アパーチャ524は、第2光学系523の複数のレンズの間に配置され、第2光源522からの光の一部のみを通過させる第2マスク部である。第2アパーチャ524は、上述の第2アライメントマークに対応する開口が設けられた略平板状の部材である。第2アパーチャ524は、例えば、ステンレス鋼等の金属により形成される。上述のように、第2アライメントマークは第1アライメントマークとは外観が異なる。したがって、第2アパーチャ524は、第1アパーチャ514とは異なる開口を有する。換言すれば、第2アパーチャ524と第1アパーチャ514とは、開口の数、形状、大きさ、配置および向きのうち、少なくとも1つ以上が異なる。
【0046】
図5は、第1マーカ511により基板9の下側の主面に描画された第1アライメントマーク93を示す底面図である。
図6は、第2マーカ521により基板9の下側の主面に描画された第2アライメントマーク94を示す底面図である。上述のように、第1アライメントマーク93の外観と、第2アライメントマーク94の外観とは異なる。
【0047】
図5に示す例では、第1アライメントマーク93は、同じ大きさの円形である4つの第1マーク要素931を備える。4つの第1マーク要素931は、仮想的な正方形の4つの頂点に位置する。換言すれば、4つの第1マーク要素931は、X方向およびY方向に格子状に配置される。さらに換言すれば、第1アライメントマーク93では、X方向に並ぶ2つの第1マーク要素931の(+Y)側に、当該2つの第1マーク要素931とX方向の略同じ位置に位置する他の2つの第1マーク要素931が配置される。X方向に隣接する各2つの第1マーク要素931間の距離と、Y方向に隣接する各2つの第1マーク要素931間の距離とは、略同じである。
【0048】
図6に示す例では、第2アライメントマーク94は、同じ大きさの円形である4つの第2マーク要素941を備える。各第2マーク要素941の形状および大きさは、上述の第1マーク要素931と同じである。第2アライメントマーク94は、Z方向を向く回転軸を中心として第1アライメントマーク93を約45°回転させた外観を有する。具体的には、第2アライメントマーク94では、最も(-X)側に1つの第2マーク要素941が配置され、最も(+X)側に他の1つの第2マーク要素941が配置される。当該2つの第2マーク要素941は、Y方向の略同じ位置に配置される。また、当該2つの第2マーク要素941のX方向の間には、他の2つの第2マーク要素941がY方向に並んで配置される。当該他の2つの第2マーク要素941はそれぞれ、最も(+X)側および最も(-X)側の2つの第2マーク要素941よりも(+Y)側および(-Y)側に配置される。
【0049】
上述のように、第1アライメントマーク93と第2アライメントマーク94とは、基板9上における向きが異なるだけで、形状および大きさは同じである。したがって、第2マーカ521の第2アパーチャ524(
図4参照)として、第1マーカ511の第1アパーチャ514(
図3参照)と同形状の部材(すなわち、開口の数、形状、大きさおよび配置が同じ部材)を、取り付けの向きを変更するのみで利用することができる。したがって、描画装置1の製造を簡素化することができ、描画装置1の製造コストを低減することができる。
【0050】
なお、第1マーク要素931の形状は円形には限定されず、三角形、矩形、五角形以上の多角形、楕円または十字形等、様々に変更されてよい。第1マーク要素931の配置は格子状には限定されず、様々に変更されてよい。第1マーク要素931の数は、様々に変更可能であり、1であってもよく、2以上であってもよい。第2マーク要素941についても、第1マーク要素931と同様である。
【0051】
また、第1マーク要素931の形状、配置および数は、第2マーク要素941の形状、配置および数とそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、第1アライメントマーク93は上述の4つの第1マーク要素931を備え、第2アライメントマーク94は、上述の4つの第2マーク要素941のうち1つの第2マーク要素941が省略された3つの第2マーク要素941を備えていてもよい。この場合、第1アライメントマーク93と第2アライメントマーク94とは非相似形である。
【0052】
図7は、制御部10が備えるコンピュータ100の構成を示す図である。コンピュータ100は、プロセッサ101と、メモリ102と、入出力部103と、バス104とを備える通常のコンピュータである。バス104は、プロセッサ101、メモリ102および入出力部103を接続する信号回路である。メモリ102は、プログラムおよび各種情報を記憶する。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されるプログラム等に従って、メモリ102等を利用しつつ様々な処理(例えば、数値計算や画像処理)を実行する。入出力部103は、操作者からの入力を受け付けるキーボード105およびマウス106、並びに、プロセッサ101からの出力等を表示するディスプレイ107を備える。なお、制御部10は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)や回路基板等であってもよく、これらと1つ以上のコンピュータとの組み合わせであってもよい。
【0053】
図8は、コンピュータ100により実現される制御部10の機能を示すブロック図である。
図8では、制御部10以外の構成も併せて示す。制御部10は、記憶部111と、撮像制御部112と、検出部113と、描画制御部114とを備える。記憶部111は、主にメモリ102により実現され、基板9に描画される予定のパターンのデータ(すなわち、描画用データ)、並びに、以下に説明する第1位置関係情報および第2位置関係情報等の各種情報を予め記憶する。
【0054】
第1位置関係情報は、
図1に示す第1搬送機構2a(すなわち、第1ステージ21aおよび第1移動機構22a)により搬送される基板9に対して、パターン描画部4により上側の主面に描画されるパターンと、第1マーク描画部51(
図2参照)により下側の主面に描画される第1アライメントマーク93(
図5参照)との平面視における相対的な位置関係を示す情報である。第2位置関係情報は、第2搬送機構2b(すなわち、第2ステージ21bおよび第2移動機構22b)により搬送される基板9に対して、パターン描画部4により上側の主面に描画されるパターンと、第2マーク描画部52(
図2参照)により下側の主面に描画される第2アライメントマーク94(
図6参照)との平面視における相対的な位置関係を示す情報である。
【0055】
第1位置関係情報は、描画装置1の第1搬送機構2aにおいて、試験基板の上側の主面に対するパターンの描画、および、下側の主面に対する第1アライメントマーク93の描画を行い、当該パターンと第1アライメントマーク93との相対位置を測定することにより予め取得される。第2位置関係情報は、描画装置1の第2搬送機構2bに置いて、試験基板の上側の主面に対するパターンの描画、および、下側の主面に対する第2アライメントマーク94の描画を行い、当該パターンと第2アライメントマーク94との相対位置を測定することにより予め取得される。
【0056】
図8に示す撮像制御部112、検出部113および描画制御部114は、主にプロセッサ101(
図7参照)により実現される。撮像制御部112は、撮像部3、第1移動機構22aおよび第2移動機構22bを制御することにより、第1ステージ21aおよび第2ステージ21b上の基板9の上側の主面を撮像部3に撮像させて画像を取得させる。当該画像は、記憶部111へと送られて格納される。検出部113は、当該画像を用いて基板9の位置を検出する。また、検出部113は、当該画像中のアライメントマークの種類を判別する。具体的には、当該アライメントマークが、第1アライメントマーク93、第2アライメントマーク94および他のアライメントマークのいずれであるかを判別する。
【0057】
描画制御部114は、検出部113により検出された基板9の位置、アライメントマークの種類、および、記憶部111に予め記憶されている描画用データ等に基づいて、パターン描画部4および第1移動機構22aおよび第2移動機構22bを制御することにより、第1ステージ21aおよび第2ステージ21b上の基板9に対する描画をパターン描画部4に行わせる。
【0058】
次に、
図1に示す描画装置1による基板9へのパターンの描画の流れについて説明する。描画装置1では、大まかには、第1ステージ21aおよび第2ステージ21bのうち一方のステージ上に保持された基板9に対して描画が行われている間に、他方のステージ上に基板9が搬入されてアライメント処理等が行われる。そして、上記一方のステージ上に保持された基板9に対する描画が終了すると、上記他方のステージ上に保持された基板9に対する描画が開始される。また、当該他方のステージ上の基板9に対して描画が行われている間に、一方のステージ上から描画済みの基板9が搬出され、新たな基板9が当該一方のステージ上に搬入されてアライメント処理等が行われる。以下の説明では、基板9の第1主面91に対してパターン描画部4によるパターンの描画が行われるものとして説明する。
【0059】
図9Aおよび
図9Bは、描画装置1における描画処理の流れの一例を示す図である。
図9Aおよび
図9B中の左側のステップS11~S19は、第1ステージ21a上における基板9への描画処理の流れを示し、
図9Aおよび
図9B中の右側のステップS21~S29は、第2ステージ21b上における基板9への描画処理の流れを示す。また、
図9Aおよび
図9B中の上下方向の同じ位置に位置するステップは、およそ並行して行われる。具体的には、ステップS11とステップS21~S26とは、およそ並行して行われる。また、ステップS28とステップS13~S18とは、およそ並行して行われる。
【0060】
図9Aおよび
図9Bでは、第1搬送機構2aの第1ステージ21a上の基板9に対するパターンの描画が行われる状態から説明を開始する。また、
図10~
図15は、描画処理中の描画装置1における第1ステージ21aおよび第2ステージ21bのY方向における概略的な位置を示す概念図である。
図10~
図15では、第1ステージ21a、第1移動機構22a、第2ステージ21bおよび第2移動機構22bを実線にて描き、撮像ヘッド31および描画ヘッド41を破線にて描く。
【0061】
以下の説明では、Y方向における第1ステージ21aの位置について、撮像ヘッド31および/または描画ヘッド41と上下方向に重なる位置を「処理位置」と呼び、第1移動機構22aの(-Y)側の端部と上下方向に重なる位置を「搬出入位置」と呼び、第1移動機構22aの(+Y)側の端部と上下方向に重なる位置を「待機位置」と呼ぶ。また、Y方向における第2ステージ21bの位置について、撮像ヘッド31および/または描画ヘッド41と上下方向に重なる位置を「処理位置」と呼び、第2移動機構22bの(-Y)側の端部と上下方向に重なる位置を「搬出入位置」と呼び、第2移動機構22bの(+Y)側の端部と上下方向に重なる位置を「待機位置」と呼ぶ。なお、上述の処理位置は、Y方向における1点を指す概念ではなく、撮像部3による基板9の撮像、および、パターン描画部4によるパターンの描画が行われるY方向の所定の範囲(すなわち、処理領域)を指す。
【0062】
描画装置1では、
図10に示すように、第1ステージ21aが処理位置に位置し、描画ヘッド41が第1描画位置に位置する状態で、第1ステージ21a上の基板9の上側の主面(すなわち、第1主面91)に対して、パターン描画部4によるパターンの描画が行われる。また、第1ステージ21a上の基板9の下側の主面(すなわち、第2主面92)に対して、第1マーク描画部51(
図2参照)による第1アライメントマーク93の描画が行われる(ステップS11)。ステップS11では、描画制御部114(
図8参照)によりパターン描画部4および第1移動機構22aが制御されることにより、処理位置において(-Y)方向へと移動する基板9の上側の主面に対してパターンの描画が行われる。基板9の下側の主面に対する第1アライメントマーク93の描画は、基板9の上側の主面に対するパターンの描画と並行して行われてもよく、当該パターンの描画の直前または直後に行われてもよい。
【0063】
描画装置1では、ステップS11と並行して、搬出入位置に位置する第2ステージ21bから描画済みの基板9が搬出され、新たな基板9が第2ステージ21b上に搬入されて保持される(ステップS21,S22)。続いて、第2移動機構22bにより第2ステージ21bが(+Y)方向へと移動され、
図11に示すように処理位置に位置する(ステップS23)。
図11に示す状態では、第1ステージ21aは処理位置に位置したままであり、第1ステージ21a上の基板9に対するパターンの描画が行われている。また、撮像ヘッド31は第2撮像位置に位置する。
【0064】
第2ステージ21bが処理位置に位置すると、撮像制御部112(
図8参照)により撮像部3および第2移動機構22bが制御されることにより、第2ステージ21b上の基板9の上側の主面(すなわち、第1主面91)に設けられたアライメントマーク(図示省略)の撮像が行われ、取得された画像が検出部113(
図8参照)へと送られる。当該アライメントマークは、ステップS22にて第2ステージ21b上に搬入された基板9に予め設けられているものであり、例えば、第1アライメントマーク93および第2アライメントマーク94とは異なる外観を有する。
【0065】
検出部113では、当該画像に対して基準画像を用いたパターンマッチングが行われる。当該パターンマッチングは、例えば、公知のパターンマッチング法(例えば、幾何学形状パターンマッチングや正規化相関サーチ等)により行われる。これにより、当該画像中におけるアライメントマークの位置が求められ、第2ステージ21b上における基板9の位置が検出される(ステップS24)。
【0066】
検出部113により検出される基板9の位置とは、第2ステージ21b上における基板9のX方向およびY方向における座標、基板9の向き、並びに、基板9の歪み等による変形を示す情報を含む。また、基板9の変形を示す情報とは、変形している基板9の形状、および、当該基板9上における描画領域の位置等の情報である。検出部113では、検出された基板9の位置に基づいて、第2ステージ21b上の基板9用の描画データの調節(すなわち、アライメント処理)が行われる。
【0067】
第2ステージ21b上の基板9の撮像が終了すると、第2移動機構22bにより第2ステージ21bが(+Y)方向へと移動され、
図12に示すように待機位置に位置する(ステップS25)。
図12に示す状態では、第1ステージ21aは処理位置に位置したままであり、第1ステージ21a上の基板9に対するパターンの描画が行われている。第2ステージ21bは、第1ステージ21a上の基板9に対するパターンの描画が終了するまで、待機位置にて待機する(ステップS26)。
【0068】
第1ステージ21a上の基板9に対するパターンおよび第1アライメントマーク93の描画(ステップS11)が終了すると、第1移動機構22aにより第1ステージ21aが(-Y)方向へと移動され、
図13に示すように搬出入位置に位置する(ステップS12)。また、ステップS12と並行して、第2移動機構22bにより第2ステージ21bが(-Y)方向へと移動され、処理位置に位置する(ステップS27)。また、撮像ヘッド31は、第2撮像位置から第1撮像位置へと移動される。描画ヘッド41は、第1描画位置から第2描画位置へと移動される。
【0069】
そして、上述のアライメント処理済みの描画データ等に基づいて、描画制御部114によりパターン描画部4および第2移動機構22bが制御されることにより、処理位置において(-Y)方向へと移動する第2ステージ21b上の基板9の上側の主面(すなわち、第1主面91)に対してパターンの描画が行われる。また、第2ステージ21b上の基板9の下側の主面(すなわち、第2主面92)に対して、第2マーク描画部52(
図2参照)による第2アライメントマーク94の描画が行われる(ステップS28)。基板9の下側の主面に対する第2アライメントマーク94の描画は、基板9の上側の主面に対するパターンの描画と並行して行われてもよく、当該パターンの描画の直前または直後に行われてもよい。
【0070】
描画装置1では、第2ステージ21b上の基板9へのパターン描画と並行して、搬出入位置に位置する第1ステージ21aから、描画済みの基板9が搬出され、新たな基板9が第1ステージ21a上に搬入されて保持される(ステップS13,S14)。続いて、第1移動機構22aにより第1ステージ21aが(+Y)方向へと移動され、
図14に示すように処理位置に位置する(ステップS15)。
図14に示す状態では、第2ステージ21bは処理位置に位置したままであり、第2ステージ21b上の基板9に対するパターンの描画が行われている。
【0071】
第1ステージ21aが処理位置に位置すると、撮像制御部112により撮像部3および第1移動機構22aが制御されることにより、第1ステージ21a上の基板9の上側の主面(すなわち、第1主面91)に設けられたアライメントマーク(図示省略)が撮像ヘッド31により撮像され、取得された画像が検出部113へと送られる。当該アライメントマークは、ステップS14にて第1ステージ21a上に搬入された基板9に予め設けられているものであり、例えば、第1アライメントマーク93および第2アライメントマーク94とは異なる外観を有する。
【0072】
検出部113では、ステップS24と略同様に、当該画像に対してパターンマッチングが行われ、第1ステージ21a上における基板9の位置が検出される(ステップS16)。検出部113では、検出された基板9の位置に基づいて、第1ステージ21a上の基板9に描画される予定のパターンデータの調節(すなわち、アライメント処理)が行われる。
【0073】
第1ステージ21a上の基板9の撮像が終了すると、第1移動機構22aにより第1ステージ21aが(+Y)方向へと移動され、
図15に示すように待機位置に位置する(ステップS17)。
図15に示す状態では、第2ステージ21bは処理位置に位置したままであり、第2ステージ21b上の基板9に対するパターンの描画が行われている。第1ステージ21aは、第2ステージ21b上の基板9に対するパターンの描画が終了するまで、待機位置にて待機する(ステップS18)。
【0074】
第2ステージ21b上の基板9に対するパターンおよび第2アライメントマーク94の描画(ステップS28)が終了すると、第2移動機構22bにより第2ステージ21bが(-Y)方向へと移動され、上述の
図10に示すように搬出入位置に位置する(ステップS29)。また、ステップS29と並行して、第1移動機構22aにより第1ステージ21aが(-Y)方向へと移動され、処理位置に位置する(ステップS19)。また、撮像ヘッド31は、第1撮像位置から第2撮像位置へと移動される。描画ヘッド41は、第2描画位置から第1描画位置へと移動される。
【0075】
そしてステップS19からステップS11に戻り、上述のアライメント処理済みの描画データ等に基づいて、描画制御部114によりパターン描画部4および第1移動機構22aが制御されることにより、処理位置において(-Y)方向へと移動する第1ステージ21a上の基板9の上側の主面(すなわち、第1主面91)に対してパターンの描画が行われる。また、第1ステージ21a上の基板9の下側の主面(すなわち、第2主面92)に対して、第1マーク描画部51による第1アライメントマーク93の描画が行われる(ステップS11)。さらに、ステップS29からステップS21に戻り、搬出入位置に位置する第2ステージ21bから描画済みの基板9が搬出され、新たな基板9が第2ステージ21b上に搬入されて保持される(ステップS21,S22)。描画装置1では、ステップS11~S19およびステップS21~S29が繰り返され、複数の基板9に対して順次描画が行われる。
【0076】
次に、上述のパターンが第1主面91に描画済みの基板9に対して、パターン描画部4により第2主面92にパターンの描画が行われる際の描画装置1の動作について説明する。以下では、第2ステージ21bに保持された基板9の第2主面92にパターンが描画される場合について、
図9Aおよび
図9Bを参照しつつ説明する。なお、通常、第2ステージ21b上の基板9へのパターン描画と並行して、第1ステージ21a上の基板9へのパターン描画が上記と略同様に行われるが、説明の簡素化のため、第1ステージ21a上の基板9に対する処理については説明を省略する。
【0077】
描画装置1では、まず、第2主面92を上側に向けた基板9が、ステップS22と略同様に、第2ステージ21b上に搬入されて保持される(ステップS22)。当該基板9の第1主面91(すなわち、下側の主面)には、上述のパターンが描画装置1において予め描画されている。第1主面91に対する当該パターンの描画が第1搬送機構2aにおいて行われた場合、基板9の第2主面92には第1アライメントマーク93(
図5参照)が描画されている。また、第1主面91に対する当該パターンの描画が第2搬送機構2bにおいて行われた場合、基板9の第2主面92には第2アライメントマーク94(
図6参照)が描画されている。
【0078】
続いて、第2移動機構22bにより第2ステージ21bが搬出入位置から(+Y)方向へと移動され、処理位置に位置する(ステップS23)。そして、撮像制御部112(
図8参照)により撮像部3および第2移動機構22bが制御されることにより、第2ステージ21b上の基板9の上側の主面(すなわち、第2主面92)に設けられたアライメントマーク(すなわち、第1アライメントマーク93または第2アライメントマーク94)の撮像が行われ、取得された画像が検出部113(
図8参照)へと送られる。
【0079】
検出部113では、当該画像に対して上記と略同様のパターンマッチングが行われ、当該画像中のアライメントマークの種類が判別される。具体的には、当該アライメントマークが、第1アライメントマーク93および第2アライメントマーク94のいずれであるかが判別される。また、検出部113では、上記パターンマッチングにより、当該画像中におけるアライメントマークの位置が求められ、第2ステージ21b上における基板9の位置が検出される(ステップS24)。検出部113では、検出された基板9の位置に基づいて、第2ステージ21b上の基板9用の描画データの調節(すなわち、アライメント処理)が行われる。
【0080】
ステップS24のパターンマッチングでは、第2ステージ21b上における基板9の傾き(すなわち、所定の向きからのずれ)や基板9の拡縮等に対応するために、第1アライメントマーク93および第2アライメントマーク94のテンプレートの回転や拡縮が許容される。ただし、基板9の上記傾きや拡縮は僅かなものであるため、テンプレートに許容される回転や拡縮も僅かである。例えば、許容回転角度は10°以下であり、許容拡縮割合は30%以下である。
【0081】
したがって、
図5および
図6に例示するように、第2アライメントマーク94が第1アライメントマーク93を比較的大きい角度(例えば、45°)回転させた外観を有する場合、上記パターンマッチングにおいて、第1アライメントマーク93と第2アライメントマーク94とを誤認することはない。当該誤認を防止するという観点からは、第1アライメントマーク93と第2アライメントマーク94とが相似形である場合、第2アライメントマーク94は、少なくとも、第1アライメントマーク93を10°よりも大きく回転させるか、30%よりも大きく拡縮した外観を有することが好ましい。なお、当該誤認を防止するという観点からは、上述のように、第1アライメントマーク93と第2アライメントマーク94とが非相似形であることも好ましい。
【0082】
第2ステージ21b上の基板9の撮像が終了すると、第2ステージ21bは、第2移動機構22bにより処理位置から待機位置へと移動され、待機位置にて待機する(ステップS25,S26)。第2ステージ21bの待機が終了すると、第2ステージ21bは、第2移動機構22bにより待機位置から処理位置へと移動される(ステップS27)。
【0083】
そして、上述のアライメント処理済みの描画データ、および、検出部113により検出されたアライメントマークの種類等に基づいて、描画制御部114(
図8参照)によりパターン描画部4および第2移動機構22bが制御されることにより、処理位置において(-Y)方向へと移動する第2ステージ21b上の基板9の第2主面92(すなわち、第1アライメントマーク93または第2アライメントマーク94が描画されている主面)に対してパターンの描画が行われる(ステップS28)。なお、第2主面92へのパターン描画の際には、第1主面91(すなわち、下側の主面)に対するアライメントマークの描画は行われなくてよい。
【0084】
ステップS28では、基板9の第2主面92に第1アライメントマーク93が描画されている場合、描画制御部114は、基板9の第1主面91に対するパターンの描画が第1搬送機構2a上にて行われたと判断し、記憶部111から第1位置関係情報を読み出す。第1位置関係情報は、上述のように、第1搬送機構2a上にて基板9の第1主面91に描画されたパターンと第2主面92に描画された第1アライメントマーク93との相対的な位置関係を示す情報である。描画装置1では、第1位置関係情報および上述のアライメント処理済みの描画データ等に基づいて、描画制御部114によりパターン描画部4および第2移動機構22bが制御されることにより、第2ステージ21b上の基板9の第2主面92に対するパターンの描画位置が調節され、第2主面92に当該パターンが描画される。これにより、基板9の第1主面91に既に描画されているパターンと、第2主面92に描画されるパターンとの相対位置を、所望の相対位置と略同じとすることができる。
【0085】
一方、基板9の第2主面92に第2アライメントマーク94が描画されている場合、描画制御部114は、基板9の第1主面91に対するパターンの描画が第2搬送機構2b上にて行われたと判断し、記憶部111から第2位置関係情報を読み出す。第2位置関係情報は、上述のように、第2搬送機構2b上にて基板9の第1主面91に描画されたパターンと第2主面92に描画された第2アライメントマーク94との相対的な位置関係を示す情報である。描画装置1では、第2位置関係情報および上述のアライメント処理済みの描画データ等に基づいて、描画制御部114によりパターン描画部4および第2移動機構22bが制御されることにより、第2ステージ21b上の基板9の第2主面92に対するパターンの描画位置が調節され、第2主面92に当該パターンが描画される。これにより、基板9の第1主面91に既に描画されているパターンと、第2主面92に描画されるパターンとの相対位置を、所望の相対位置と略同じとすることができる。
【0086】
以上に説明したように、基板9に対する描画を行う描画システム(上記例では、描画装置1)は、パターン描画部4と、第1搬送機構2aと、第1マーク描画部51と、第2搬送機構2bと、第2マーク描画部52とを備える。パターン描画部4は、下方にて水平移動する基板9の上側の主面に対して光を照射してパターンを描画する。第1搬送機構2aは、第1基板保持部(すなわち、第1ステージ21a)、および、パターン描画部4の下方にて第1ステージ21aを水平移動する第1移動機構22aを備える。第1マーク描画部51は、第1ステージ21aに保持された基板9の下側の主面に対して光を照射して、第1搬送機構2aに関連付けられた第1アライメントマーク93を描画する。第2搬送機構2bは、第2基板保持部(すなわち、第2ステージ21b)、および、パターン描画部4の下方にて第2ステージ21bを水平移動する第2移動機構22bを備える。第2マーク描画部52は、第2ステージ21bに保持された基板9の下側の主面に対して光を照射して、第2搬送機構2bに関連付けられた第2アライメントマーク94を描画する。第2アライメントマーク94は、第1アライメントマーク93とは外観が異なる。
【0087】
したがって、パターン描画部4による基板9の一方の主面へのパターン描画時に第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bのいずれが利用されたのかを、基板9の他方の主面に描画されたアライメントマークを観察することにより、当該パターン描画よりも後工程において容易に判別することができる。これにより、当該一方の主面のパターン描画時に利用された搬送機構に特有の表裏位置関係(すなわち、上面のパターンと下面のアライメントマークとの相対的な位置関係)を考慮して描画位置の調節を行った上で、基板9の上記他方の主面にパターンを描画することができる。その結果、基板9の両側の主面に描画されたパターンの相対的な位置精度を向上することができる。
【0088】
上述のように、描画装置1は、第1位置関係情報および第2位置関係情報を予め記憶する記憶部111と、パターン描画部4を制御する撮像制御部112と、をさらに備えることが好ましい。第1位置関係情報は、第1搬送機構2aにより搬送される基板9に対してパターン描画部4により上側の主面に描画されるパターンと、第1マーク描画部51により下側の主面に描画される第1アライメントマーク93との相対的な位置関係を示す。第2位置関係情報は、第2搬送機構2bにより搬送される基板9に対してパターン描画部4により上側の主面に描画されるパターンと第2マーク描画部52により下側の主面に描画される第2アライメントマーク94との相対的な位置関係を示す。撮像制御部112は、好ましくは、第1アライメントマーク93が描画された主面にパターン描画部4によるパターンの描画が行われる際に、第1位置関係情報に基づいて描画位置を調節し、第2アライメントマーク94が描画された主面にパターン描画部4によるパターンの描画が行われる際に、第2位置関係情報に基づいて描画位置を調節する。これにより、両側の主面に描画されたパターンの相対的な位置精度が高い基板9を提供することができる。
【0089】
上述のように、第1マーク描画部51は、光源512からの光の一部を通過させる第1マスク部(上記例では、第1アパーチャ514)を備え、第2マーク描画部52は、第1マスク部とは異なる開口を有し、光源522からの光の一部を通過させる第2マスク部(上記例では、第2アパーチャ524)を備えることが好ましい。これにより、第1マーク描画部51と第2マーク描画部52とで構造を大きく変更することなく(すなわち、第1マスク部と第2マスク部とを変更するのみで)、第1アライメントマーク93の外観と第2アライメントマーク94の外観とを異ならせることができる。したがって、描画装置1の構造が複雑化することを抑制しつつ、基板9の両側の主面に描画されたパターンの相対的な位置精度を向上することができる。
【0090】
上述のように、第1アライメントマーク93および第2アライメントマーク94は非相似形であることも好ましい。これにより、上述のパターンマッチングの際に、テンプレートの回転や拡縮が行われる場合であっても、第1アライメントマーク93と第2アライメントマーク94との誤認を抑制し、アライメントマークの種類を精度良く判別することができる。
【0091】
上述のように、パターン描画部4は、下方に向けて光を照射する描画ヘッド41と、描画ヘッド41を第1搬送機構2aの上方の第1描画位置と第2搬送機構2bの上方の第2描画位置との間で移動する描画ヘッド移動機構42と、を備えることが好ましい。このように、第1ステージ21a上の基板9に対する描画、および、第2ステージ21b上の基板9に対する描画を、共通の描画ヘッド41によって行うことにより、描画装置1の構造を簡素化し、描画装置1を小型化することができる。また、描画装置1では、上述のように、パターン描画部4による基板9の一方の主面へのパターン描画時に第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bのいずれが利用されたのかを、当該パターン描画よりも後工程において容易に判別することができる。したがって、描画装置1の構造は、基板9の両側の主面へのパターン描画がそれぞれ、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bのどちらの搬送機構にても行われ得る描画装置1に特に適している。
【0092】
図5および
図6に示す例では、第1アライメントマーク93および第2アライメントマーク94はそれぞれ、円形のマーク要素が配列された単なる図形であるが、これには限定されない。例えば、第1アライメントマーク93は、第1搬送機構2aに関する情報を表示するバーコードであり、第2アライメントマーク94は、第2搬送機構2bに関する情報を表示するバーコードであってもよい。この場合、撮像部3によって第1アライメントマーク93を撮像することにより、基板9のパターン描画に利用された搬送機構の種類(すなわち、第1搬送機構2aまたは第2搬送機構2b)の判別と並行して、当該搬送機構に関する情報取得も行うことができる。
【0093】
第1アライメントマーク93がバーコードである場合、当該バーコードが示す情報には、例えば、第1搬送機構2aを示す識別番号や第1位置関係情報が含まれる。第2アライメントマーク94がバーコードである場合、当該バーコードが示す情報には、例えば、第2搬送機構2bを示す識別番号や第2位置関係情報が含まれる。第1アライメントマーク93および第2アライメントマーク94としては、1次元バーコードが利用されてもよく、2次元バーコードが利用されてもよい。
【0094】
なお、第1アライメントマーク93および第2アライメントマーク94は、上述の情報を含むバーコード以外のマークであってもよい。例えば、第1アライメントマーク93は、第1搬送機構2aを示す記号であり、第2アライメントマーク94は、第2搬送機構2bを示す記号であってもよい。
【0095】
上述の描画装置1では、様々な変更が可能である。
【0096】
上記例では、第1マーク描画部51により、基板9の下側の主面に2つの同じ第1アライメントマーク93が描画され、第2マーク描画部52により、基板9の下側の主面に2つの同じ第2アライメントマーク94が描画されるが、これには限定されない。例えば、2つの第1アライメントマーク93は、形状、大きさまたは向き等が互いに異なっていてもよい。2つの第2アライメントマーク94も同様に、形状、大きさまたは向き等が互いに異なっていてもよい。また、2つの第1アライメントマーク93のうち一方の第1アライメントマーク93の外観と、2つの第2アライメントマーク94のうち一方の第2アライメントマーク94の外観とが異なる場合、他方の第1アライメントマーク93と他方の第2アライメントマーク94とは同じ外観を有していてもよい。
【0097】
第1マーク描画部51により基板9の下側の主面に描画された2つの第1アライメントマーク93と、第2マーク描画部52により基板9の下側の主面に描画された2つの第2アライメントマーク94とは、基板9上における配置(すなわち、2つのアライメントマークの相対位置)が異なっていてもよい。例えば、2つの第1アライメントマーク93は、基板9の下側の主面の(-Y)側の端部にてX方向に並び、2つの第2アライメントマーク94は、基板9の下側の主面の(-Y)側の端部と、(+Y)側の端部とに配置されてもよい。この場合であっても、2つの第1アライメントマーク93をまとめて観察した場合の外観と、2つの第2アライメントマーク94をまとめて観察した場合の外観とは互いに異なるため、上記と同様に、基板9の上側の主面へのパターン描画が第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bのいずれを利用して行われたかを容易に判別することができる。なお、上述のように配置が異なる場合、各第1アライメントマーク93と各第2アライメントマーク94とは同じ形状であってもよい。
【0098】
描画装置1では、第1マーク描画部51により基板9の下側の主面に描画される第1アライメントマーク93の数は、3以上であってもよい。また、第2マーク描画部52により基板9の下側の主面に描画される第2アライメントマーク94の数は、3以上であってもよい。
【0099】
第1マーカ511では、例えば、第1アパーチャ514に代えて、第1アライメントマーク93に対応するパターンが描画されたガラスマスクが、第1マスク部として光源512および光学系513の(+Z)側に配置されてもよい。第2マーカ521でも同様に、第2アパーチャ524に代えて、第2アライメントマーク94に対応するパターンが描画されたガラスマスクが、第2マスク部として光源522および光学系523の(+Z)側に配置されてもよい。
【0100】
第1マーク描画部51の第1マーカ511は、必ずしも第1ステージ21aの内部に配置される必要はない。例えば、第1マーカ511は、上述の処理位置において第1ステージ21aの移動経路の鉛直下方に配置され、第1ステージ21aが第1マーカ511の上方に位置する状態で、第1ステージ21aに設けられた貫通孔を介して基板9の下側の主面に光を照射して第1アライメントマーク93を描画してもよい。第2マーク描画部52の第2マーカ521についても同様である。
【0101】
第1マーク描画部51では、複数の第1マーカ511の光源が共通とされてもよい。例えば、共通光源からの光が複数の光ファイバを介して複数の第1マーカ511の光学系513へとそれぞれ導かれてもよい。第2マーク描画部52においても同様である。
【0102】
描画装置1では、第1位置関係情報等の第1搬送機構2aに関連付けられる情報を含むマーク(例えば、バーコードや数字)等が、第1アライメントマーク93とは別に、第1マーク描画部51により基板9の下側の主面に描画されてもよい。また、第2位置関係情報等の第2搬送機構2bに関連付けられる情報を含むマーク(例えば、バーコードや数字)が、第2アライメントマーク94とは別に、第2マーク描画部52により基板9の下側の主面に描画されてもよい。
【0103】
描画装置1では、第1搬送機構2aは、第1ステージ21aをX方向に移動する移動機構、Z方向に延びる回転軸を中心として第1ステージ21aを回転する回転機構、および、第1ステージ21aをZ方向に移動する昇降機構のうち、1つ以上をさらに備えていてもよい。当該移動機構および昇降機構として、例えば、リニアサーボモータが利用可能である。また、当該回転機構として、例えば、サーボモータが利用可能である。当該移動機構、回転機構および昇降機構の構造は、様々に変更されてよい。第2搬送機構2bについても第1搬送機構2aと同様である。
【0104】
パターン描画部4では、第1描画位置において第1ステージ21a上の基板9に光を照射する描画ヘッド41と、第2描画位置において第2ステージ21b上の基板9に光を照射する描画ヘッド41とが別々に設けられてもよい。この場合、描画ヘッド移動機構42は省略されてよい。さらに、撮像部3では、第1撮像位置において第1ステージ21a上の基板9を撮像する描画ヘッド31と、第2撮像位置において第2ステージ21b上の基板9を撮像する撮像ヘッド31とが別々に設けられてもよい。この場合、撮像ヘッド移動機構32は省略されてよい。また、描画装置1では、第1搬送機構2a、第1マーク描画部51、第1撮像位置において第1ステージ21a上の基板9を撮像する描画ヘッド31、および、第1ステージ21a上の基板9に光を照射する描画ヘッド41を備える第1のユニットと、第2搬送機構2b、第2マーク描画部52、第2撮像位置において第2ステージ21b上の基板9を撮像する撮像ヘッド31、および、第2ステージ21b上の基板9に光を照射する描画ヘッド41を備える第2ユニットとが分離して設けられていてもよい。
【0105】
描画装置1では、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bに加えて、第3ステージと、第3ステージをY方向に移動する第3移動機構が設けられ、第1ステージ21a、第2ステージ21bおよび第3ステージ上の基板9に対して、様々な処理(アライメント処理、描画処理および基板9の搬出入)が並行して行われてもよい。
【0106】
図16は、本発明に係る他の好ましい描画装置1aを(-Y)側から見た側面図である。
図16では、撮像ヘッド31および第1ガントリー部72等の図示を省略している。描画装置1aでは、第1ステージ21aと第2ステージ21bとが上下方向に隣接して配置される。
図16に示す例では、第2ステージ21bは第1ステージ21aの下側に離間して配置される。第1移動機構22aは、第1ステージ21aを側方(すなわち、(-X)側)から支持する。第2移動機構22bは、第2ステージ21bを側方(すなわち、(+X)側)から支持する。
【0107】
第1搬送機構2aは、第1ステージ21aを上下方向に移動する図示省略の第1昇降機構を備える。第2搬送機構2bは、第2ステージ21bを上下方向に移動する図示省略の第2昇降機構を備える。第2ガントリー部73により支持される複数の描画ヘッド41により、第1ステージ21a上の基板9の上側の主面にパターンの描画が行われた後、第2ステージ21b上の基板9の上側の主面にパターンの描画が行われる際には、
図16に示す状態から第1ステージ21aが図中の第2ステージ21bの位置まで下降し、第2ステージ21bが図中の第1ステージ21aの位置まで上昇する。描画装置1aのその他の構成は、描画装置1の対応する構成と略同様である。
【0108】
第1移動機構22aと第2移動機構22bとは、上述の描画装置1と略同様に、基板移動方向(すなわち、Y方向)に交差する方向に並んで配置される。
図16に示す例では、第1移動機構22aと第2移動機構22bとはX方向に並んで配置され、第2移動機構22bは、第1移動機構22aの(+X)側の側方に隣接する。第1移動機構22aと第2移動機構22bとは、上下方向の略同じ高さに位置する。
【0109】
描画装置1aにおいても、描画装置1と同様に、第1ステージ21aに保持された基板9の下側の主面に第1アライメントマーク93が描画され、第2ステージ21bに保持された基板9の下側の主面に、第1アライメントマーク93とは外観が異なる第2アライメントマーク94が描画される。これにより、パターン描画部4による基板9の一方の主面へのパターン描画時に第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bのいずれが利用されたのかを、基板9の他方の主面に描画されたアライメントマークの種類を観察することにより、当該パターン描画よりも後工程において容易に判別することができる。
【0110】
上記例では、描画システムは、1台のツインステージタイプの描画装置1として説明したが、これには限定されない。例えば、描画システムは、シングルステージタイプの2台の描画装置を備えていてもよい。この場合、一方の描画装置は、上述の第1搬送機構2aおよび第1マーク描画部51と、第1ステージ21a上の基板9の上側の主面にパターンを描画する第1のパターン描画部と、を備える。また、他方の描画装置は、上述の第2搬送機構2bおよび第2マーク描画部52と、第2ステージ21b上の基板9の上側の主面にパターンを描画する第2のパターン描画部と、を備える。第1のパターン描画部は、1つまたは2つ以上の上記描画ヘッド41を備える。第2のパターン描画部も同様に、1つまたは2つ以上の上記描画ヘッド41を備える。当該描画システムでは、第1のパターン描画部と第2のパターン描画部とを合わせて、下方にて水平移動する基板9の上側の主面に対して光を照射してパターンを描画するパターン描画部4となる。
【0111】
当該描画システムにおいても、上述の描画装置1と同様に、第1ステージ21aに保持された基板9の下側の主面に第1アライメントマーク93が描画され、第2ステージ21bに保持された基板9の下側の主面に、第1アライメントマーク93とは外観が異なる第2アライメントマーク94が描画される。これにより、パターン描画部4による基板9の一方の主面へのパターン描画時に第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bのいずれが利用されたのかを、基板9の他方の主面に描画されたアライメントマークの種類を観察することにより、当該パターン描画よりも後工程において容易に判別することができる。
【0112】
上述の基板9は、必ずしもプリント基板には限定されない。描画装置1,1aでは、例えば、半導体基板、液晶表示装置や有機EL表示装置等のフラットパネル表示装置用のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板、太陽電池パネル用の基板等の位置検出が行われてもよい。
【0113】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0114】
1,1a 描画装置
2a 第1搬送機構
2b 第2搬送機構
4 パターン描画部
9 基板
21a 第1ステージ
21b 第2ステージ
22a 第1移動機構
22b 第2移動機構
51 第1マーク描画部
52 第2マーク描画部
91 第1主面
92 第2主面
93 第1アライメントマーク
94 第2アライメントマーク
111 記憶部
114 描画制御部
514 第1アパーチャ
524 第2アパーチャ
S11~S19,S21~S29 ステップ