IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローリー株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】自動取引システム及び自動取引方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/26 20190101AFI20240325BHJP
   G06Q 20/08 20120101ALI20240325BHJP
   G07D 11/00 20190101ALI20240325BHJP
   G07D 11/60 20190101ALI20240325BHJP
【FI】
G07D11/26
G06Q20/08 300
G07D11/00
G07D11/60
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020190978
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080037
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小尾 友行
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-289249(JP,A)
【文献】特開2009-110306(JP,A)
【文献】特開2020-046820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/26
G06Q 20/08
G07D 11/00
G07D 11/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに通信可能に接続された複数の自動取引装置を有する自動取引システムであって、
前記自動取引装置は、電子マネーの記録媒体から、当該記録媒体の識別情報を読み取る読取部を有し、
前記自動取引装置は、電子マネーの取引に関してエラーが発生した場合、自装置とは異なる他の前記自動取引装置に対し、前記読取部で読み取った前記識別情報とエラーに関する情報とを送付する、
自動取引システム。
【請求項2】
複数の前記自動取引装置は、記憶部をそれぞれ有し、
前記識別情報と前記エラーに関する情報とを受信した他の前記自動取引装置は、前記記憶部に当該識別情報と当該エラーに関する情報とを紐付けて記憶し、
他の前記自動取引装置は、前記読取部で読み取られた前記識別情報が、前記記憶部に記憶されている当該識別情報と一致する場合、前回の取引の未完了を通知する、
請求項1に記載の自動取引システム。
【請求項3】
複数の前記自動取引装置は、記憶部と表示部をそれぞれ有し、
前記識別情報と前記エラーに関する情報とを受信した他の前記自動取引装置は、前記記憶部に当該識別情報と当該エラーに関する情報とを紐付けて記憶し、
他の前記自動取引装置は、前記読取部で読み取られた前記識別情報が前記記憶部に記憶されている当該識別情報と一致する場合、前記表示部に前回の取引の未完了を示す情報を表示する、
請求項1に記載の自動取引システム。
【請求項4】
前記エラーに関する情報には、エラーが発生した取引を特定する情報が含まれており、
他の前記自動取引装置は、前記読取部で読み取られた前記識別情報が、前記記憶部に記憶されている当該識別情報と一致する場合、前記取引を特定する情報に含まれている取引の自装置における実行を可能な状態に制御する
請求項2又は3に記載の自動取引システム。
【請求項5】
前記読取部は、取引を特定する情報を前記記録媒体に書き込み可能な読書部であり、
前記エラーは、前記読書部による書き込み処理の未完了である、
請求項1~4のうちいずれか1項に記載の自動取引システム。
【請求項6】
前記自動取引装置には、貨幣の出金機構が設けられており、
前記エラーに関する情報は、前記出金機構からユーザに返却された貨幣の取り忘れを含む、
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の自動取引システム。
【請求項7】
前記自動取引装置には、取り忘れられている返却貨幣を回収する回収機構が設けられ、
取り忘れられている返却貨幣を前記回収機構が回収した場合、該当する前記自動取引装置は、前記エラーに関する情報として、回収された返却貨幣に関する情報を、前記読取部で読み取られた前記識別情報と共に、自装置とは異なる他の前記自動取引装置に送付する
請求項6に記載の自動取引システム。
【請求項8】
複数の前記自動取引装置のいずれかにおいて、前記エラーに関する情報の原因が解消された場合、当該自動取引装置は、それぞれに記憶されている前記識別情報と当該エラーに関する情報を消去する、
請求項2~7のうちいずれか1項に記載の自動取引システム。
【請求項9】
電子マネーの記録媒体から、当該記録媒体の識別情報を読み取る読取部と、第1の記憶部とをそれぞれ有する複数の自動取引装置と、複数の当該自動取引装置のそれぞれと通信可能に接続されたサーバーとを有する自動取引システムであって、
前記サーバーは、第2の記憶部を有し、
前記自動取引装置は、電子マネーの取引に関してエラーが発生した場合、前記サーバーに対し、前記読取部で読み取った前記識別情報とエラーに関する情報とを送付し、
前記サーバーは、複数の前記自動取引装置のうちの1台から前記識別情報と前記エラーに関する情報を受信した場合、前記第2の記憶部に当該識別情報と当該エラーに関する情報を紐付けて記憶すると共に、当該識別情報と当該エラーに関する情報の送信元とは異なる他の前記自動取引装置に対し、受信した当該識別情報を送信する、
自動取引システム。
【請求項10】
前記サーバーから前記識別情報を受信した他の前記自動取引装置は、前記第1の記憶部に当該識別情報を記憶し、
前記サーバーから前記識別情報を受信した他の前記自動取引装置は、前記読取部で読み取られた前記識別情報が前記第1の記憶部に記憶されている当該識別情報と一致する場合、当該識別情報に紐付けられている前記エラーに関する情報を前記サーバーから取得する、
請求項9に記載の自動取引システム。
【請求項11】
互いに通信可能に接続された複数の自動取引装置を有する自動取引システムにおいて実行される自動取引方法であって、
複数の前記自動取引装置のうちの1台が、
電子マネーの記録媒体から、当該記録媒体の識別情報を読み取る第1のステップと、
前記記録媒体に電子マネーの取引を実行する第2のステップと、
前記第2のステップの実行中にエラーが発生した場合、自装置とは異なる他の前記自動取引装置に対し、前記記録媒体から読み取った前記識別情報とエラーに関する情報とを送付する第3のステップと
を実行する自動取引方法。
【請求項12】
電子マネーの記録媒体から、当該記録媒体の識別情報を読み取る読取部をそれぞれ有する複数の自動取引装置と、複数の当該自動取引装置のそれぞれと通信可能に接続されたサーバーとを有する自動取引システムにおいて実行される自動取引方法であって、
複数の前記自動取引装置のうちの1台が、
電子マネーの記録媒体から、当該記録媒体を識別するための識別情報を読み取る第1のステップと、
前記記録媒体に電子マネーの取引を実行する第2のステップと、
前記第2のステップの実行中にエラーが発生した場合、前記サーバーに対し、前記記録媒体から読み取った前記識別情報とエラーに関する情報とを送付する第3のステップと、
前記サーバーが、
複数の前記自動取引装置のうちの1台から前記識別情報と前記エラーに関する情報を受信した場合、当該識別情報と当該エラーに関する情報の送信元とは異なる他の前記自動取引装置に対し、受信した当該識別情報を送信する第4のステップと
を実行する自動取引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動取引システム及び自動取引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、様々な決済において、非接触型のICカードやスマートフォン等(以下「ICカード等」という)に予め入金(以下「チャージ」という)された電子マネーが使用されている。電子マネーのチャージには、チャージ機が使用される。ユーザがチャージ機に貨幣を入金すると、入金された貨幣の金額分の電子マネーがICカード等に書き込まれる。
ところが、ICカード等に対する電子マネーの書き込みが失敗することがある。書き込みの失敗は、例えばICカード等に対する電子マネーの書き込みが終わらないうちに、ユーザがICカード等を所定の位置から取り外すことで生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4930328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行システムの場合、電子マネーの書き込みに失敗しても、ユーザが失敗に気づく機会が少ない。例えば前回の取引で未済取引が発生したチャージ機で同じユーザが新たに電子マネーをチャージする場合や電子マネーの使用時に想定よりも残高が少ない場合にようやく気づくことができる。
【0005】
本発明は、前回とは異なる自動取引装置を用いて電子マネーの取引が行われる場合にも、未済取引の存在をユーザに通知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、互いに通信可能に接続された複数の自動取引装置を有する自動取引システムであって、前記自動取引装置は、電子マネーの記録媒体から、当該記録媒体の識別情報を読み取る読取部を有し、前記自動取引装置は、電子マネーの取引に関してエラーが発生した場合、自装置とは異なる他の前記自動取引装置に対し、前記読取部で読み取った前記識別情報とエラーに関する情報とを送付する、自動取引システムである。
請求項2に記載の発明は、複数の前記自動取引装置は、記憶部をそれぞれ有し、前記識別情報と前記エラーに関する情報とを受信した他の前記自動取引装置は、前記記憶部に当該識別情報と当該エラーに関する情報とを紐付けて記憶し、他の前記自動取引装置は、前記読取部で読み取られた前記識別情報が、前記記憶部に記憶されている当該識別情報と一致する場合、前回の取引の未完了を通知する、請求項1に記載の自動取引システムである。
請求項3に記載の発明は、複数の前記自動取引装置は、記憶部と表示部をそれぞれ有し、前記識別情報と前記エラーに関する情報とを受信した他の前記自動取引装置は、前記記憶部に当該識別情報と当該エラーに関する情報とを紐付けて記憶し、他の前記自動取引装置は、前記読取部で読み取られた前記識別情報が前記記憶部に記憶されている当該識別情報と一致する場合、前記表示部に前回の取引の未完了を示す情報を表示する、請求項1に記載の自動取引システムである。
請求項4に記載の発明は、前記エラーに関する情報には、エラーが発生した取引を特定する情報が含まれており、他の前記自動取引装置は、前記読取部で読み取られた前記識別情報が、前記記憶部に記憶されている当該識別情報と一致する場合、前記取引を特定する情報に含まれている取引の自装置における実行を可能な状態に制御する請求項2又は3に記載の自動取引システムである。
請求項5に記載の発明は、前記読取部は、取引を特定する情報を前記記録媒体に書き込み可能な読書部であり、前記エラーは、前記読書部による書き込み処理の未完了である、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の自動取引システムである。
請求項6に記載の発明は、前記自動取引装置には、貨幣の出金機構が設けられており、前記エラーに関する情報は、前記出金機構からユーザに返却された貨幣の取り忘れを含む、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の自動取引システムである。
請求項7に記載の発明は、前記自動取引装置には、取り忘れられている返却貨幣を回収する回収機構が設けられ、取り忘れられている返却貨幣を前記回収機構が回収した場合、該当する前記自動取引装置は、前記エラーに関する情報として、回収された返却貨幣に関する情報を、前記読取部で読み取られた前記識別情報と共に、自装置とは異なる他の前記自動取引装置に送付する請求項6に記載の自動取引システムである。
請求項8に記載の発明は、複数の前記自動取引装置のいずれかにおいて、前記エラーに関する情報の原因が解消された場合、当該自動取引装置は、それぞれに記憶されている前記識別情報と当該エラーに関する情報を消去する、請求項2~7のうちいずれか1項に記載の自動取引システムである。
請求項9に記載の発明は、電子マネーの記録媒体から、当該記録媒体の識別情報を読み取る読取部と、第1の記憶部とをそれぞれ有する複数の自動取引装置と、複数の当該自動取引装置のそれぞれと通信可能に接続されたサーバーとを有する自動取引システムであって、前記サーバーは、第2の記憶部を有し、前記自動取引装置は、電子マネーの取引に関してエラーが発生した場合、前記サーバーに対し、前記読取部で読み取った前記識別情報とエラーに関する情報とを送付し、前記サーバーは、複数の前記自動取引装置のうちの1台から前記識別情報と前記エラーに関する情報を受信した場合、前記第2の記憶部に当該識別情報と当該エラーに関する情報を紐付けて記憶すると共に、当該識別情報と当該エラーに関する情報の送信元とは異なる他の前記自動取引装置に対し、受信した当該識別情報を送信する、自動取引システムである。
請求項10に記載の発明は、前記サーバーから前記識別情報を受信した他の前記自動取引装置は、前記第1の記憶部に当該識別情報を記憶し、前記サーバーから前記識別情報を受信した他の前記自動取引装置は、前記読取部で読み取られた前記識別情報が前記第1の記憶部に記憶されている当該識別情報と一致する場合、当該識別情報に紐付けられている前記エラーに関する情報を前記サーバーから取得する、請求項9に記載の自動取引システムである。
請求項11に記載の発明は、互いに通信可能に接続された複数の自動取引装置を有する自動取引システムにおいて実行される自動取引方法であって、複数の前記自動取引装置のうちの1台が、電子マネーの記録媒体から、当該記録媒体の識別情報を読み取る第1のステップと、前記記録媒体に電子マネーの取引を実行する第2のステップと、前記第2のステップの実行中にエラーが発生した場合、自装置とは異なる他の前記自動取引装置に対し、前記記録媒体から読み取った前記識別情報とエラーに関する情報とを送付する第3のステップとを実行する自動取引方法である。
請求項12に記載の発明は、電子マネーの記録媒体から、当該記録媒体の識別情報を読み取る読取部をそれぞれ有する複数の自動取引装置と、複数の当該自動取引装置のそれぞれと通信可能に接続されたサーバーとを有する自動取引システムにおいて実行される自動取引方法であって、複数の前記自動取引装置のうちの1台が、電子マネーの記録媒体から、当該記録媒体を識別するための識別情報を読み取る第1のステップと、前記記録媒体に電子マネーの取引を実行する第2のステップと、前記第2のステップの実行中にエラーが発生した場合、前記サーバーに対し、前記記録媒体から読み取った前記識別情報とエラーに関する情報とを送付する第3のステップと、前記サーバーが、複数の前記自動取引装置のうちの1台から前記識別情報と前記エラーに関する情報を受信した場合、当該識別情報と当該エラーに関する情報の送信元とは異なる他の前記自動取引装置に対し、受信した当該識別情報を送信する第4のステップとを実行する自動取引方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前回とは異なる自動取引装置を用いて電子マネーの取引が行われる場合にも、未済取引の存在をユーザに通知できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1で使用する電子マネー管理システムの一例を説明する図である。
図2】チャージ機の外観構成の一例を説明する図である。
図3】実施の形態1で使用するチャージ機の内部構成の一例を説明する図である。
図4】実施の形態1におけるチャージ履歴データのデータ例を示す図である。
図5】実施の形態1における未済情報データのデータ例を示す図である。
図6】チャージ処理部で実行されるサブ機能を説明する図である。
図7】電子マネー管理サーバーの内部構成の一例を説明する図である。
図8】実施の形態1における未済取引に関する処理動作の一例を説明する図である。
図9】未済取引の存在の通知に用いる連絡画面の一例を説明する図である。
図10】運用リカバーの実行時に表示される画面の一例を説明する図である。
図11】未済の解消に伴うチャージ履歴データの更新例を説明する図である。(A)は再書き込みによる未済の解消前のデータ例を示し、(B)は再書き込みによる未済の解消後のデータ例を示す。
図12】未済の解消に伴うチャージ履歴データの他の更新例を説明する図である。(A)は返金による未済の解消前のデータ例を示し、(B)は返金による未済の解消後のデータ例を示す。
図13】実施の形態2で使用する電子マネー管理システムの一例を説明する図である。
図14】実施の形態2における未済取引に関する処理動作の一例を説明する図である。
図15】未済取引の発生機とは異なるチャージ機に表示される画面の一例を説明する図である。(A)は未済取引の存在の通知に用いる連絡画面の一例を示し、(B)は未済取引の発生機とは異なるチャージ機で未済取引に係るチャージを完了させる場合に表示される画面の一例を示す。
図16】発生機とは異なるチャージ機で未済取引が解消された場合におけるチャージ履歴データの更新例を説明する図である。(A)は再書き込みによる未済の解消前のデータ例を示し、(B)は再書き込みによる未済の解消後のデータ例を示す。
図17】発生機とは異なるチャージ機で未済が解消された場合におけるチャージ履歴データの他の更新例を説明する図である。(A)は返金による未済の解消前のデータ例を示し、(B)は返金による未済の解消後のデータ例を示す。
図18】実施の形態3で使用する電子マネー管理システムの一例を説明する図である。
図19】実施の形態3における未済取引に関する処理動作の一例を説明する図である。
図20】実施の形態4で使用する電子マネー管理システムの一例を説明する図である。
図21】実施の形態4で使用するチャージ機の内部構成の一例を説明する図である。
図22】実施の形態4におけるチャージ履歴データのデータ例を示す図である。
図23】実施の形態4における未済情報データのデータ例を示す図である。
図24】未済取引の発生機とは異なる他のチャージ機に表示される画面の例を説明する図である。(A)は未済取引の存在の通知に用いる連絡画面の一例を示し、(B)は他のチャージ機でおつりの返却等を完了させる場合に表示される画面の一例を示す。
図25】発生機とは異なるチャージ機で未済取引が解消された場合におけるチャージ履歴データの更新例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
<実施の形態1>
<システムの構成>
図1は、実施の形態1で使用する電子マネー管理システム1の一例を説明する図である。
電子マネー管理システム1は、チャージ機10と、ネットワーク20と、電子マネー管理サーバー30とで構成される。
本実施の形態における電子マネー管理システム1は、自動取引システムの一例である。
【0010】
本実施の形態は、プリペイド方式の電子マネーを想定し、チャージされた電子マネーはICカード等に記録される。ICカード等は、電子マネーを記録する記録媒体の一例である。
ICカード等には、ICカード等の識別に使用するIDが付与されている。電子マネーは、このIDに紐づけて管理される。本実施の形態では、電子マネーが記録される媒体を区別せず、電子マネーが紐付けられるIDをカードIDという。カードIDは、電子マネーを記録する記録媒体のユーザを識別するための識別情報の一例である。本実施の形態では、カードIDが同じ場合、ユーザも同じであると推定する。
【0011】
本実施の形態におけるチャージ機10は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗に設置されるチャージ専用の装置である。もっとも、チャージ機10は、現金自動預け払い機やレジ端末でもよい。
本実施の形態の場合、複数台のチャージ機10がネットワーク20に接続されている。複数台のチャージ機10は、同じ店舗内に設置されていてもよいし、異なる店舗内に設置されていてもよい。本実施の形態の場合、チャージ機10を設置する事業者は同じでも異なってもよい。
【0012】
図1には、ネットワーク20に接続されている複数台のチャージ機10のうちの4台が描かれている。図1では、これらを「チャージ機A」、「チャージ機B」、「チャージ機C」、「チャージ機D」と表記する。
チャージ機10は、紙幣の投入を受け付け、ユーザが指定する金額分の電子マネーのチャージを実行する。本実施の形態におけるチャージ機10は、紙幣による電子マネーのチャージを想定するが、硬貨によるチャージが可能でもよい。以下では、紙幣と硬貨を総称する場合、「貨幣」という。
【0013】
チャージ機10は、貨幣以外の有価価値による電子マネーのチャージが可能でもよい。有価価値には、例えばプリペイドカード、電子的なポイントがある。電子的なポイントには、例えばクレジットカードの利用実績により付与されたポイント、QRコード(登録商標)を用いる決済の利用実績により付与されたポイント、電子マネーの利用実績により付与されたポイント、航空機等の利用実績により付与されたマイル・ポイントがある。
本実施の形態におけるチャージ機10は、自動取引装置の一例である。
【0014】
ネットワーク20には、例えばインターネットや専用線を使用する。
電子マネー管理サーバー30は、電子マネーのチャージが完了していない取引(以下「未済取引」という)の発生を確認したチャージ機10(以下「発生機」ともいう)から受信すると、発生機を除く他のチャージ機10に配信する機能を提供する。未済取引は、電子マネーのチャージに関するエラーの一例である。
【0015】
未済取引は、例えばICカード等に対する情報の書き込みが完了する前にユーザがICカード等を持ち去った場合、チャージ機10に障害や故障が起こった場合、チャージに関連する通信や通信相手側に障害や故障等が起こった場合に発生する。
未済取引が発生した場合、チャージ額として指定された金額分の紙幣は、そのままチャージ機10内に保管される。
【0016】
この他、電子マネー管理サーバー30は、未済取引の発生機における未済状態の解消を、発生機を除く他のチャージ機10に送信する機能も提供する。未済状態は、例えば未済取引として記録されている電子マネーの情報が、ICカード等に書き込まれることで解消される。
本実施の形態における電子マネー管理サーバー30は、サーバーの一例である。
【0017】
<チャージ機の構成>
以下では、図2図6を使用して、チャージ機10の構成を説明する。
図2は、チャージ機10の外観構成の一例を説明する図である。図2に示すチャージ機10は、表示操作部11と、音声出力部12と、カードリーダライタ13と、レシートプリンタ14と、紙幣処理ユニット15とを有している。紙幣処理ユニット15は、紙幣受入部15Aと紙幣払出部15Bとを有している。
【0018】
表示操作部11と音声出力部12は、本体上面の奥側に設けられている斜面に配置されている。手前側か奥側かは、チャージ機10を操作するユーザの位置を基準に表現する。
表示操作部11は、例えばタッチパネルで構成される。タッチパネルには、操作に関する情報やボタン等が表示される。また、表示されているボタン等が操作された場合、タッチパネルは、操作の対象であるボタン等に対する操作を受け付ける。表示操作部11は、表示部の一例である。音声出力部12は、スピーカであり、音声によるガイダンスやメッセージ等を出力する。表示操作部11や音声出力部12は、出力部の一例でもある。
【0019】
カードリーダライタ13は、本体上面の手前側に設けられている。電子マネーのチャージには、例えばNFC(=Near Field Communication)が用いられる。ICカード等がカードリーダライタ13に置かれるか近づけられると、カードリーダライタ13は、ICカード等と通信可能になり、ICカード等との間で情報の書き込み又は読み出しを実行する。カードリーダライタ13は読取部の一例である。また、カードリーダライタ13は読書部の一例でもある。
レシートプリンタ14は、レシートに取引の内容を印字して出力する。取引の内容には、例えば取引の日時、カードID、チャージされた電子マネーの金額、電子マネーの残高がある。レシートプリンタ14には、例えばサーマルプリンタが用いられる。
【0020】
紙幣処理ユニット15は、投入された紙幣の受け付けと、おつりの返却とを実行する。おつりの返却は、投入された紙幣の金額が、ユーザの指定するチャージ額よりも多い場合に実行される。例えば5000円が投入された場合にチャージ額として3000円が指定されると、2000円がおつりとして排出される。紙幣受入部15Aは紙幣の投入に使用され、紙幣払出部15Bはおつり等の紙幣の払い出しに使用される。
紙幣処理ユニット15には、投入された紙幣の金種、真偽、正損、新旧等を識別する識別部が設けられている。識別部により識別された紙幣は、選別部にて更に選別される。正常ではないと識別された紙幣は、紙幣払出部15Bから排出される。紙幣払出部15Bは出金機構の一例である。
【0021】
図3は、実施の形態1で使用するチャージ機10の内部構成の一例を説明する図である。図3に示すチャージ機10は、表示操作部11と、音声出力部12と、カードリーダライタ13と、レシートプリンタ14と、紙幣処理ユニット15と、通信部16と、記憶部17と、制御部18と、を有している。
通信部16は、ネットワーク20経由で電子マネー管理サーバー30と通信するためのインターフェースである。
【0022】
記憶部17は、不揮発性メモリやハードディスク装置等の補助記憶装置である。本実施の形態における記憶部17には、チャージ履歴データ17A、未済情報データ17B、未済解消情報データ17Cが記憶される。記憶部17は、第1の記憶部の一例である。
チャージ履歴データ17Aには、各チャージ機10で実行されたチャージの履歴がカードIDに紐づけて記憶されている。
【0023】
未済情報データ17Bは、未済取引の内容を表す情報であり、未済取引の発生を確認したチャージ機10(すなわち発生機)が生成して、電子マネー管理サーバー30に通知する。未済情報データ17Bは、未済取引の発生機とは異なるチャージ機10の記憶部17に記憶される。
【0024】
未済解消情報データ17Cは、未済取引の解消を表す情報であり、未済取引の発生機が生成して、電子マネー管理サーバー30に通知する。未済解消情報データ17Cは、未済情報データ17Bの消去に用いられる。未済解消情報データ17Cは、取消対象である未済情報データ17Bの特定に必要な情報である。未済解消情報データ17Cは、例えば未済情報データ17Bと同じ、発生日時、発生場所、金額、カードIDを含めてもよい。
【0025】
図4は、実施の形態1におけるチャージ履歴データ17Aのデータ例を示す図である。チャージ履歴データ17Aは、例えばカードIDとチャージ履歴で構成される。図4の場合、チャージ履歴は、電子マネーをチャージする取引を受け付けた日時、ユーザが指定したチャージの金額、取引のステータスで構成される。取引のステータスには、チャージが完了したことを示す「済」と、チャージが完了していないことを示す「未済」がある。
図4の場合、カードIDが「C0001」であるICカード等に対する「2020/09/11 11:45」に受け付けた3000円のチャージが「未済」である。
なお、チャージ履歴データ17Aには、カードIDに紐付けられているユーザを識別する情報(例えばユーザID)が含まれてもよい。ユーザを識別する情報は、例えばICカード等から読み出す場合、電子マネー管理サーバー30(図1参照)から取得する場合がある。
【0026】
図5は、実施の形態1における未済情報データ17Bのデータ例を示す図である。未済情報データ17Bは、例えば未済取引の発生日時と、発生場所と、金額と、カードIDで構成される。図5の場合、発生日時は「2020/09/11 11:45」である。また、発生場所は「ABC ○○店 1F通路 1番チャージ機」である。
図5の例では、ユーザに提示される前提で発生場所を表現しているが、未済情報データ17Bにおける発生場所は、チャージ機10が設置されている場所に対して割り振られている管理上の記号や番号でもよい。図5の場合も、カードIDは「C0001」であり、未済取引の金額は3000円である。
ここでの発生日時と発生場所と金額は、エラーに関する情報の一例である。また、これらの情報のそれぞれは、エラーが発生した取引を特定する情報の一例でもある。
なお、未済情報データ17Bにも、カードIDに紐付けられているユーザを識別する情報が含まれていてもよい。
【0027】
制御部18は、CPU(=Central Processing Unit)と、BIOS(=Basic Input Output System)等が記憶されたROM(=Read Only Memory)と、ワークエリアとして用いられるRAM(=Random Access Memory)等を有している。
制御部18は、いわゆるコンピュータであり、プログラムの実行を通じて各種の機能を実現する。本実施の形態の場合、制御部18は、プログラムの実行を通じ、表示制御部18A、カードデータ処理部18B、チャージ金額特定部18C、チャージ処理部18Dとして機能する。
【0028】
表示制御部18Aは、表示操作部11の表示を制御する。例えば表示制御部18Aは、待機画面上に取引の内容を選択するためのボタンを表示操作部11に表示する。取引の内容には、例えば電子マネーのチャージと残高の確認がある。
電子マネーのチャージが選択された場合、表示制御部18Aは、チャージに使用する有価価値の種類を指定する画面、チャージ額を指定する画面等も表示操作部11に表示する。また、表示制御部18Aは、チャージの結果も表示操作部11に表示する。
【0029】
なお、ICカード等から読み取られたカードICに未済取引の履歴がある場合、表示制御部18Aは、表示操作部11に未済取引の存在をユーザに通知する画面を表示させる。換言すると、表示制御部18Aは、前回の取引の未完了をユーザに通知する画面を表示操作部11に表示する。本実施の形態の場合、未済取引の存在は、ユーザによるチャージや確認の操作を受け付ける前に表示される。
【0030】
カードデータ処理部18Bは、ICカード等に記録されているデータを処理する。例えばカードデータ処理部18Bは、電子マネーに対応したICカード等のカードID、電子マネーの残高等を取得し、電子マネーのチャージや残高の確認に備える。
チャージ金額特定部18Cは、表示操作部11に表示されたボタンに対するユーザの操作を通じ、チャージ額の指定を受け付ける。
チャージ処理部18Dは、ICカード等に電子マネーをチャージする処理を実行する。具体的には、ICカード等に対するチャージ額の情報が書き込まれる。
【0031】
図6は、チャージ処理部18Dで実行されるサブ機能を説明する図である。チャージ処理部18Dは、サブ機能として、チャージ実行部18D1、未済情報送信部18D2と、未済情報登録部18D3と、未済取引ユーザ通知部18D4と、未済解消処理部18D5と、未済解消情報送信部18D6と、未済情報消去部18D7とを有している。
【0032】
チャージ実行部18D1は、待機画面で電子マネーのチャージの操作を受け付けた場合に動作するサブ機能である。チャージ実行部18D1は、取引の対象であるカードID、ICカード等に記録されている電子マネーの残高をカードデータ処理部18B(図3参照)から取得する。また、チャージ実行部18D1は、チャージ額が特定されると、ユーザによる入金を待ち受ける。入金が完了すると、紙幣処理ユニット15は、入金された紙幣を計数する。入金額がチャージ額と同じ場合、チャージ実行部18D1は、取引の対象であるICカード等に記録されている残高の情報を、チャージ額を加算した金額に書き換える。
【0033】
入金された金額がチャージ額を超過していた場合、チャージ実行部18D1は、紙幣処理ユニット15におつりの紙幣を払い出した上で、取引の対象であるICカード等に記録されている残高の情報を、チャージ額を加算した金額に書き換える。入金した金額がチャージ額に満たない場合、チャージ実行部18D1は、チャージを開始しない。もっとも、入金した金額がチャージ額に満たない状態でも、ユーザが所定の操作を行った場合には、入金された金額分のチャージを実行可能としてもよい。ここでいう所定の操作とは、例えば表示操作部11に表示された「入金額をチャージする」等のボタンを操作することを示す。また、チャージ実行部18D1は、チャージ処理が完了した場合、チャージの結果を印字したレシートの発行を、レシートプリンタ14に指示する。
【0034】
この他、チャージ実行部18D1は、チャージ履歴データ17Aを記憶部17(図3参照)に記録する。チャージ実行部18D1は、チャージ処理が完了した場合、対応する取引のステータスに「済」を記録し、未済取引が発生した場合、対応する取引のステータスに「未済」を記録する。
本実施の形態におけるチャージ実行部18D1は、未済取引が発生したために本体内に保管している金額分も含む紙幣の全額が回収されないように、少なくとも未済取引のチャージ額は機内に残す処理も実行する。
【0035】
未済情報送信部18D2は、未済取引の発生が確認された場合に実行されるサブ機能である。未済情報送信部18D2は、チャージ履歴データ17A(図4参照)に基づいて未済情報データ17Bを生成し、電子マネー管理サーバー30に送信する。
未済情報登録部18D3は、電子マネー管理サーバー30から未済情報データ17Bが受信された場合、記憶部17(図3参照)に受信した未済情報データ17Bを登録するサブ機能である。
【0036】
未済取引ユーザ通知部18D4は、ICカード等から読み取ったカードIDが未済情報データ17BのカードIDと一致する場合に、未済取引の存在をユーザに通知するサブ機能である。本実施の形態における未済取引ユーザ通知部18D4は、例えば表示操作部11に未済取引の存在を表示する。もっとも、ユーザに対する未済取引の存在の通知には、アラーム音、ガイダンス音声、警告ランプ等の点灯や点滅を用いてもよい。未済取引ユーザ通知部18D4は、未済取引が発生した発生機と発生機から通知を受けた他のチャージ機10の両方で実行される。
【0037】
未済解消処理部18D5は、未済取引の解消に関する処理を実行するサブ機能である。未済解消処理部18D5は、未済取引の発生機において実行される。未済取引を解消する処理には、例えば完了していないチャージ処理の再実行、保管されている紙幣の返却、係員の呼び出しがある。いずれを実行するかは、ユーザによる指定が可能である。チャージ処理の再実行では、ICカード等に対するチャージ額の書き込みが再開される。未済解消処理部18D5は、チャージ処理が完了した場合、チャージ履歴データ17A(図4参照)のステータスを「未済」から「済」に書き換える。
【0038】
未済解消情報送信部18D6は、未済取引が解消された場合に実行されるサブ機能である。未済解消情報送信部18D6は、未済取引が解消されたチャージ機10(すなわち発生機)で実行される。未済解消情報送信部18D6は、チャージ履歴データ17Aに基づいて未済解消情報データ17Cを生成し、電子マネー管理サーバー30に送信する。
未済情報消去部18D7は、電子マネー管理サーバー30から未済解消情報データ17Cが受信された場合、記憶部17(図3参照)に登録されている未済情報データ17Bを消去するサブ機能である。なお、未済情報データ17Bの消去は、データの物理的な消去でもよいし、未済情報データ17Bに対する無効フラグの記録でもよい。
本実施の形態の場合、未済取引のチャージ額を機内に残しているが、他の紙幣同様、回収してもよい。その場合、回収された未済分のチャージ金額と未済発生日時と、カードID等に関する情報、ならびに当該紙幣を回収している旨の情報を関連付けて記憶部17に保存してもよい。
【0039】
<電子マネー管理サーバーの構成>
図7は、電子マネー管理サーバー30の内部構成の一例を説明する図である。図7に示す電子マネー管理サーバー30は、表示部31と、操作部32と、通信部33と、記憶部34と、制御部35と、を有している。
表示部31は、液晶ディスプレイや有機EL(=Electro Luminescence)ディスプレイ等からなる表示デバイスである。
【0040】
操作部32は、マウスやキーボード等からなる入力デバイスである。
通信部33は、ネットワーク20経由でチャージ機10と通信するためのインターフェースである。
記憶部34は、不揮発性メモリやハードディスク装置等の補助記憶装置である。本実施の形態の場合、未済情報データ17B(図3参照)や未済解消情報データ17C(図3参照)を配信するための配信先データ34Aが記憶されている。配信先データ34Aは、例えばチャージ機10のIPアドレスの一覧である。記憶部34は、第2の記憶部の一例である。
【0041】
制御部35は、CPUと、BIOS等が記憶されたROMと、ワークエリアとして用いられるRAM等を有している。
制御部35は、いわゆるコンピュータであり、プログラムの実行を通じて各種の機能を実現する。本実施の形態の場合、制御部35は、プログラムの実行を通じ、未済情報配信部35A、未済解消情報配信部35Bとして機能する。
【0042】
未済情報配信部35Aは、未済情報データ17Bが未済取引の発生機から受信された場合に、発生機を除くチャージ機10を宛先として、受信した未済情報データ17Bを配信するサブ機能である。この配信により、ネットワーク20に接続されている全てのチャージ機10において、未済取引の内容と取引の対象であるカードIDの情報が共有される。
未済解消情報配信部35Bは、未済取引が解消されたチャージ機10から未済解消情報データ17Cが受信された場合に、送信元を除くチャージ機10を宛先として、受信した未済解消情報データ17Cを配信するサブ機能である。この配信により、ネットワーク20に接続されている全てのチャージ機10において、解消された未済取引の内容と取引の対象であるカードIDの情報が共有される。
【0043】
<処理動作>
以下では、図8図12を使用して実施の形態1で使用する電子マネー管理システム1(図1参照)における処理動作を説明する。
図8は、実施の形態1における未済取引に関する処理動作の一例を説明する図である。図8に示す処理動作は、未済取引が発生するチャージ機10(チャージ機A)と、他のチャージ機10(チャージ機B、C、D…)との連携により実現される。なお、図8では、未済取引の対象ユーザをユーザAとする。なお、図中に示す記号のSはステップを表している。
【0044】
図8では、「チャージ機A」で未済取引が発生する(ステップ1)。未済取引は、チャージの完了を通知する画面が表示される前に、ユーザAがICカード等をカードリーダライタ13(図3参照)から取り外して立ち去った場合等に発生する。多くの場合、ユーザAは、チャージの失敗には気づいていない。
未済取引が発生したチャージ機10(すなわちチャージ機A)は、電子マネー管理サーバー30に対し、未済情報データ17B(図3参照)を送信する(ステップ2)。
【0045】
未済情報データ17Bを受信した電子マネー管理サーバー30は、受信した未済情報データ17Bを他のチャージ機10(すなわちチャージ機B、C、D…)に配信する(ステップ3)。一方、配信先である他のチャージ機10は、受信した未済情報データ17Bを記憶部17(図3参照)に登録する(ステップ4)。ステップ1からステップ4までの処理は、ほぼリアルタイムで実行される。ステップ4の登録により、全てのチャージ機10の間で未済取引の情報の共有が実現される。
【0046】
他のチャージ機10(すなわちチャージ機B、C、D…)は、新規取引のたび、取引に用いるICカード等のカードICを取得する(ステップ11)。
次に、他のチャージ機10は、取得したカードIDと未済情報データ17BのカードIDとを照合する(ステップ12)。この照合は、未済情報データ17Bが登録されている場合に限り実行される。未済情報データ17Bが登録されていない場合、又は、取得したカードIDが未済情報データ17BのカードIDと一致しない場合、他のチャージ機10は、ユーザの指定する取引を実行する。
【0047】
これに対し、取得したカードIDが未済情報データ17BのカードIDと一致した場合、他のチャージ機10(すなわちチャージ機B、C、D…)は、未済取引の存在をユーザに通知する(ステップ13)。
ユーザへの通知には、連絡画面、アラーム音、ガイダンス音声、警告ランプ等が用いられる。
図9は、未済取引の存在の通知に用いる連絡画面40の一例を説明する図である。連絡画面40には、未済取引の存在を通知する文41と、未済取引が発生したチャージ機10の場所を示す情報42と、画面を閉じるためのボタン43と、係員の呼び出す場合に操作されるボタン44とが配置されている。
【0048】
図9の場合、「前回のチャージが正しく行えていません。下記のチャージ機で処理を完了させてください。」との文面に続いて、未済取引が発生したチャージ機10を特定する情報として「ABC ○○店 1F通路」の「1番」のチャージ機が示されている。
なお、図9に示す連絡画面40には記載していないが、該当するチャージ機10の場所を説明する地図や現在地から該当するチャージ機10までの道順、未済取引が発生した日時のいずれか又は全部が含まれてもよい。
【0049】
未済取引が発生したチャージ機10の場所を文字で表示するだけでは、未済取引が発生したチャージ機10の場所をユーザが理解できない可能性もあるためである。例えば未済取引が馴染みのない外出先であった場合には、文字の情報だけでは該当するチャージ機10の場所が分からない可能性がある。また、未済取引が発生したチャージ機10が大きな駅や商業施設に設置されている場合や同じ場所に複数台のチャージ機10が並んで設置されている場合、どのチャージ機10か分からない可能性がある。
【0050】
なお、連絡画面40の全部又は一部、地図や道順がレシートに印字されて出力されるようにしてもよい。レシートへの印字は、連絡画面40に表示した印刷ボタンが操作された場合に実行されてもよいし、ユーザの操作とは関係なく、連絡画面40が表示される場合には必ず実行されてもよい。
なお、ユーザがボタン43を操作すると、チャージ等を受け付ける画面に戻る。未済取引の解消をチャージの実行条件とするのでは、ユーザの利便性が損なわれるためである。例えば発生機の場所が現在地から離れており、すぐには移動できない可能性もある。
【0051】
本実施の形態の場合、ICカード等から取得したカードIDが未済情報データ17BのカードIDと一致する場合に連絡画面40が表示されているが、カードIDに紐付けられているユーザを識別する情報(以下「ユーザID」という)を通じてユーザの同一性が確認された場合には、連絡画面40が表示されるようにしてもよい。
この場合、他のチャージ機10で使用されるICカード等と未済取引が発生したICカード等とが異なっても、ユーザに対して、未済取引の存在を通知することができる。
この機能は、例えば複数枚のICカードをユーザが使い分ける場合や電子マネー対応のスマートフォン等とICカードをユーザが使用する場合に便利である。
【0052】
図8の説明に戻る。
ユーザが未済取引の発生したチャージ機10に戻った場合、ユーザは、カードIDを読み取らせることで表示される画面に基づいて、未済取引を解消する操作を開始する。具体的には、チャージ機10は、取得したカードIDがチャージ履歴データ17Aのステータスが「未済」である取引のカードIDと一致する場合、運用リカバリーを実行する(ステップ21)。
【0053】
図10は、運用リカバリーの実行時に表示される画面50の一例を説明する図である。画面50には、未済取引の存在の通知とユーザの選択を促す文51と、未完了であるチャージ額の再書き込みを受け付けるボタン52と、保管している紙幣の返金を受け付けるボタン53と、係員を呼び出す場合に操作されるボタン54とが配置されている。
【0054】
図10の場合、「前回のチャージが正しく行えていません。希望する処理を選択してください。」との文面が表示されている。
ボタン52が操作されると、再書き込みのためのガイダンスが表示され、ICカード等に対する電子マネーのチャージが再開される。本実施の形態における再チャージでは、未済取引で指定されたチャージ額のチャージが実行される。
【0055】
もっとも、チャージ機10に保管されている金額の範囲内でチャージ額を新たに指定できるようにしてもよい。未済取引の存在を通知した他のチャージ機10において追加のチャージを実行したユーザによっては、未済取引で指定されたチャージ額の全額のチャージを望まない場合も考えられるためである。その場合には、新たに指定されたチャージ額によるチャージの後に、保管されている紙幣の一部がおつりとして返金される。
なお、追加の紙幣の投入を条件として、未済取引のチャージ額の金額を超えるチャージ額の指定を可能としてもよい。
【0056】
また、ボタン53が操作されると、保管されている紙幣の全額が返金される。もっとも、ボタン53が操作された場合にも、チャージ機10内に保管されている金額の範囲で返金額を指定できるようにしてもよい。この場合、チャージ機10内に保管されている金額と返金額との差額が、ICカード等に自動的にチャージされるようにしてもよい。
ボタン54が操作された場合、係員が所有する端末等に対して呼び出しが通知される。呼び出された係員は、その場で客に操作方法等を説明したり、係員専用の操作コマンドにより、未済に関する詳細情報を閲覧可能となったり、再書込みや返金等の操作が可能となったりする。このようにボタン54が操作されると、係員の操作や係員のサポートにより、再書込みや返金が実行される。なお、例えばボタン54が操作されたことをきっかけとして、係員IDの入力を促す画面が表示され、入力された係員IDが電子マネー管理サーバー30等で認証されることにより、係員専用の操作コマンドによる操作が可能となる。
運用リカバリーが終了すると、チャージ機10(すなわちチャージ機A)は、チャージ履歴データ17Aのステータスを「済」に変更する(ステップ22)。
【0057】
図11は、未済の解消に伴うチャージ履歴データ17Aの更新例を説明する図である。(A)は再書き込みによる未済の解消前のデータ例を示し、(B)は再書き込みによる未済の解消後のデータ例を示す。
図11に示すチャージ履歴データ17Aは、図4を前提としている。ただし、図11に示すチャージ履歴データ17Aには、チャージ履歴に備考欄が追加されている。
図11の場合、未済取引が発生した「2020/09/11」の翌日である「2020/09/12」の「15:56」に再書込みにより未済が解消されたことが備考欄に記録されている。また、ステータスも「未済」から「済」に更新されている。
【0058】
図12は、未済の解消に伴うチャージ履歴データ17Aの他の更新例を説明する図である。(A)は返金による未済の解消前のデータ例を示し、(B)は返金による未済の解消後のデータ例を示す。
図12に示すチャージ履歴データ17Aも、図4を前提とする。図12に示すチャージ履歴データ17Aにも、図11と同じく、チャージ履歴に備考欄が追加されている。
図12の場合、未済取引が発生した「2020/09/11」の翌日である「2020/09/12」の「15:56」に返金により未済が解消されたことが備考欄に記載されている。また、ステータスも「未済」から「返金」に更新されている。
【0059】
図8の説明に戻る。
ステップ22が終了すると、チャージ機10(すなわちチャージ機A)は、未済解消情報データ17Cを電子マネー管理サーバー30に送信する(ステップ23)。
一方、電子マネー管理サーバー30は、受信した未済解消情報データ17Cを他のチャージ機10(すなわちチャージ機B、C、D…)に配信する(ステップ24)。
配信を受けた他のチャージ機10は、未済情報データ17B(図3参照)を消去する(ステップ25)。これにより、他のチャージ機10では、未済取引の存在を通知する連絡画面40(図9参照)は表示されなくなる。
なお、チャージ機10は、未済解消情報データ17Cを電子マネー管理サーバー30に送信するとしたが、これに限らず、未済解消情報データ17Cは、チャージ機10内の記憶部17だけに記憶し、他のチャージ機10でカードIDが読み取られた場合に、該当するカードIDに関連する未済情報がないか否かを、全てのチャージ機10に対して常に問い合わせてもよい。
【0060】
<実施の形態2>
<システムの構成>
図13は、実施の形態2で使用する電子マネー管理システム1Aの一例を説明する図である。図13には、図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
電子マネー管理システム1Aは、チャージ機10Aと、ネットワーク20と、電子マネー管理サーバー30とで構成される。
実施の形態1の場合、未済取引の解消は、未済取引の発生機で行う必要があった。しかし、本実施の形態の場合には、未済取引の発生を通知された他のチャージ機10Aでも、未済取引の解消を可能とする。
【0061】
本実施の形態では、未済取引の解消が可能な他のチャージ機10Aは、未済取引の発生機と同じ事業者が運用している場合を想定する。事業者が同じであれば、未済取引の解消が可能な他のチャージ機10Aと発生機とが異なる店舗に設置されていてもよい。勿論、未済取引の解消が可能な他のチャージ機10Aと発生機とが同じ店舗内に設置されていてもよい。
もっとも、本実施の形態における想定は一例にすぎず、未済取引の発生機の事業者と、未済取引の解消が可能な他のチャージ機10Aの事業者とが異なっていてもよい。
【0062】
本実施の形態で使用するチャージ機10Aのハードウェア構成は、実施の形態1と同じである。また、チャージ機10Aの機能構成も、基本的に実施の形態1と同じである。すなわち、本実施の形態におけるチャージ機10Aは、図6に示すサブ機能を有している。
ただし、本実施の形態におけるチャージ機10Aの場合、未済取引の発生機とは異なる他のチャージ機10Aによる未済取引の解消を許容するので、未済取引の存在を通知した後に実行される機能に変更がある。
また、チャージ履歴データ17A(図4参照)の更新だけは、未済取引の発生機で実行される。
【0063】
<処理動作>
以下では、図14図17を使用して実施の形態2で使用する電子マネー管理システム1A(図13参照)における処理動作を説明する。
図14は、実施の形態2における未済取引に関する処理動作の一例を説明する図である。図14には、図8との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0064】
図14の場合も、未済取引が発生するチャージ機10Aを「チャージ機A」とし、未済取引の発生を通知される他のチャージ機10Aを「チャージ機B、C、D…」とする。
なお、図14では、未済取引を解消する操作が行われる他のチャージ機10Aを、「チャージ機B」としている。
本実施の形態の場合も、未済取引の発生機から他のチャージ機10Aに未済取引の発生が通知されるまでの処理動作(すなわちステップ1~ステップ4)は図8と同じである。このため、図14では、ユーザAが「チャージ機B」を操作する場面以降の処理動作を描いている。
【0065】
「チャージ機B」は、新規取引のたび、取引に用いるICカード等のカードICを取得する(ステップ11)。
次に、「チャージ機B」は、取得したカードIDと未済情報データ17BのカードIDとを照合する(ステップ12)。この照合は、未済情報データ17Bが登録されている場合に限り実行される。未済情報データ17Bが登録されていない場合、又は、取得したカードIDが未済情報データ17BのカードIDと一致しない場合、「チャージ機B」は、ユーザの指定する取引を実行する。
【0066】
これに対し、取得したカードIDが未済情報データ17BのカードIDと一致した場合、「チャージ機B」は、未済取引の存在をユーザに通知する(ステップ13)。
ユーザへの通知には、連絡画面、アラーム音、ガイダンス音声、警告ランプ等が用いられる。
図15は、未済取引の発生機とは異なる「チャージ機B」に表示される画面の一例を説明する図である。(A)は未済取引の存在の通知に用いる連絡画面40Aの一例を示し、(B)は未済取引の発生機とは異なる「チャージ機B」で未済取引に係るチャージを完了させる場合に表示される画面50の一例を示す。図15には、図9及び図10との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0067】
図15(A)に示す連絡画面40Aには、未済取引の存在を通知する文41と、未済取引が発生したチャージ機10Aの場所を示す情報42と、本機で未済取引の完了が可能であることを示す文45と、画面を閉じるためのボタン43と、本機で処理を行うためのボタン46と、係員を呼び出す場合に操作されるボタン44とが配置されている。
図9に示す連絡画面40との違いは、文45とボタン46である。
【0068】
図15(A)の場合、文45として、「なお、本機で処理を完了させる場合には、「本機で処理」ボタンを押してください。」との文面が表示され、未済取引の発生機への移動が不要であることが示されている。
本実施の形態では、ユーザAがそのまま「チャージ機B」で未済取引を完了させる場合(すなわちボタン46を操作する場合)を想定する。もっとも、実施の形態1と同様、未済取引の発生機である「チャージ機A」に移動して未済取引を完了させることも可能である。
【0069】
ボタン46が操作されると、図15(B)に示す画面50が表示される。「チャージ機B」に表示される画面50も、未済取引の発生機である「チャージ機A」に表示される画面50と同じである。
図14の説明に戻る。
ユーザAがボタン46(図15参照)を操作すると、「チャージ機B」は、画面50(図15参照)に対する操作に従って、未済取引に関する再チャージ又は返金に関する処理を実行する(ステップ14)。
【0070】
未済取引に関する再チャージ又は返金が終了すると、「チャージ機B」は、電子マネー管理サーバー30に、未済解消情報データ17Cを送信する(ステップ15)。また、チャージ機Bは、自機に記録されている未済情報データ17Bを消去する(ステップ16)。
「チャージ機B」から未済解消情報データ17Cを受信した電子マネー管理サーバー30は、受信した未済解消情報データ17Cを他のチャージ機10(すなわちチャージ機A、C、D…)に配信する(ステップ24)。図14の場合、未済取引は「チャージ機B」で解消されるので、未済取引の発生機である「チャージ機A」と、他の「チャージ機C、D…」が配信先となる。
【0071】
未済解消情報データ17Cを受信した「チャージ機A」は、チャージ履歴データ17Aのステータスを「済」に変更する(ステップ22)。
また、未済解消情報データ17Cを受信した「チャージ機C、D…」は、未済情報データ17B(図3参照)を消去する(ステップ25)。
【0072】
図16は、発生機とは異なる「チャージ機B」で未済取引が解消された場合におけるチャージ履歴データ17Aの更新例を説明する図である。(A)は再書き込みによる未済の解消前のデータ例を示し、(B)は再書き込みによる未済の解消後のデータ例を示す。図16には、図11との対応部分に対応する符号を付して示している。
図16の場合、発生機とは異なる「チャージ機B」で実行されているので、チャージ履歴データ17Aの備考欄には、実行場所を示す情報が含まれている。具体的には、備考欄に「2020/09/12 15:56にチャージ機Bで再書込み」が記録され、ステータスも「未済」から「済」に更新される。
【0073】
図17は、発生機とは異なる「チャージ機B」で未済が解消された場合におけるチャージ履歴データ17Aの他の更新例を説明する図である。(A)は返金による未済の解消前のデータ例を示し、(B)は返金による未済の解消後のデータ例を示す。図17には、図12との対応部分に対応する符号を付して示している。
図17の場合も、図16同様、チャージ履歴データ17Aの備考欄には、実行場所を示す情報が含まれている。具体的には、備考欄に「2020/09/12 15:56にチャージ機Bで全額返金」が記録され、ステータスも「未済」から「返金」に更新される。
【0074】
<実施の形態3>
<システムの構成>
図18は、実施の形態3で使用する電子マネー管理システム1Bの一例を説明する図である。図18には、図13との対応部分に対応する符号を付して示している。
電子マネー管理システム1Bは、ネットワーク20を介して相互に接続された複数のチャージ機10Aで構成される。すなわち、電子マネー管理システム1Bは、電子マネー管理サーバー30を設けず、各チャージ機10Aが直接通信する。なお、本実施の形態では、実施の形態2で説明したチャージ機10Aを前提とするが、実施の形態1で説明したチャージ機10(図1参照)を使用してもよい。
【0075】
<処理動作>
図19は、実施の形態3における未済取引に関する処理動作の一例を説明する図である。図19には、図8図14との対応部分に対応する符号を付して示している。
図19の場合も、未済取引の発生機を「チャージ機A」とし、「チャージ機B、C、D…」が発生機から未済情報データ17Bの通知を受けるものとする。また、未済取引が発生したユーザAは、「チャージ機B」を操作して未済取引を解消するものとする。
【0076】
この場合も、「チャージ機A」で未済取引が発生する(ステップ1)。ただし、本実施の形態のおける「チャージ機A」は、前述した実施の形態とは異なり、他の「チャージ機B、C、D…」に対し、未済情報データ17Bを送信する(ステップ2)。なお、本実施の形態における各チャージ機10Aには、配信先データ34A(図7参照)が記録されている。各チャージ機10Aは、自機以外のチャージ機10Aを宛先に指定して未済情報データ17Bを送信する。
【0077】
一方、未済情報データ17Bの通知を受けた「チャージ機B、C、D…」は、受信した未済情報データ17Bを記憶部17(図3参照)に登録する(ステップ4)。
なお、図19の場合、未済取引の該当者であるユーザAが未済取引後に最初に操作するチャージ機10Aが「チャージ機B」である。このため、図19では、「チャージ機B」と、「チャージ機C、D…」とを区別して表している。
【0078】
「チャージ機B」は、新規取引のたび、取引に用いるICカード等のカードICを取得する(ステップ11)。
次に、「チャージ機B」は、取得したカードIDと未済情報データ17BのカードIDとを照合する(ステップ12)。この照合は、未済情報データ17Bが登録されている場合に限り実行される。未済情報データ17Bが登録されていない場合、又は、取得したカードIDが未済情報データ17BのカードIDと一致しない場合、「チャージ機B」は、ユーザの指定する取引を実行する。
【0079】
これに対し、取得したカードIDが未済情報データ17BのカードIDと一致した場合、「チャージ機B」は、未済取引の存在をユーザに通知する(ステップ13)。
ユーザへの通知には、連絡画面、アラーム音、ガイダンス音声、警告ランプ等が用いられる。
「チャージ機B」での未済取引の解消をユーザAが選択した場合、「チャージ機B」は、画面50(図15参照)に対する操作に従って、未済取引に関する再チャージ又は返金に関する処理を実行する(ステップ14)。
【0080】
未済取引に関する再チャージ又は返金が終了すると、「チャージ機B」は、自機を除く「チャージ機A、C、D…」を宛先として、未済解消情報データ17Cを送信する(ステップ15)。また、「チャージ機B」は、自機に記録されている未済情報データ17Bを消去する(ステップ16)。
チャージ機Bから未済解消情報データ17Cを受信した「チャージ機A」は、チャージ履歴データ17Aのステータスを「済」に変更する(ステップ22)。また、「チャージ機B」から未済解消情報データ17Cを受信した「チャージ機C、D…」は、未済情報データ17B(図3参照)を消去する(ステップ25)。
【0081】
<実施の形態4>
<システムの構成>
本実施の形態では、ユーザが取り忘れたおつりを、未済取引の一形態としてみなす場合について説明する。
図20は、実施の形態4で使用する電子マネー管理システム1Cの一例を説明する図である。図20には、図13との対応部分に対応する符号を付して示している。
電子マネー管理システム1Cは、チャージ機10Bと、ネットワーク20と、電子マネー管理サーバー30とで構成される。
なお、実施の形態3と同様、電子マネー管理サーバー30を用いない構成も可能である。
【0082】
本実施の形態で使用するチャージ機10Bには、ユーザが取り忘れたおつりが機内に回収された場合に、未済取引とみなして他のチャージ機10Bと情報を共有する機能を追加する点で、実施の形態2で用いたチャージ機10A(図13参照)と異なっている。
図21は、実施の形態4で使用するチャージ機10Bの内部構成の一例を説明する図である。図21には、図3との対応部分に対応する符号を付して示している。
図21に示すチャージ機10Bは、紙幣処理ユニット15に取り忘れ紙幣(すなわち返却紙幣)を回収する回収機構15Cが設けられる点と、制御部18に取り忘れ処理部18Eが設けられる点とで、前述したチャージ機10Aと異なっている。
【0083】
本実施の形態における回収機構15Cは、紙幣払出部15Bから排出された紙幣が排出口から引き出されない状態が予め定めた時間(例えば10秒)経過した場合、紙幣を自動的に機内に回収する。具体的には、回収機構15Cは、紙幣の排出時とは逆方向にローラーを回転して、紙幣を機内に回収する。回収された金額分の紙幣は、機内に保管される。なお、回収額に相当する紙幣は、紙幣の回収時にも機内に残される。この場合、機内に保管された紙幣の金額と日時、カードID等を関連付けて記憶部17に記憶させてもよい。
【0084】
本実施の形態では、紙幣の取り忘れを前提とするが、硬貨によるチャージが可能なチャージ機10Bにおいては、取り忘れた硬貨を払い出し口の底部に設けたシャッターを開いて機内に回収してもよい。
また、取り忘れたおつりの機内への回収は、回収機構15Cが実行する場合に限らず、おつりの取り忘れに気づいた係員が行ってもよい。例えば係員が管理者モードを起動し、取り忘れられている紙幣を機内に収容してもよい。
もっとも、回収機構15Cを設けて自動的に取り忘れたおつりを機内に回収することで、係員の移動の手間を軽減できる。また、係員が駆けつけるまでの間に第三者に取り去られるリスクも軽減できる。
【0085】
取り忘れ処理部18Eは、おつりの取り忘れを検知するサブ機能と、おつりの取り忘れをエラー音でユーザや係員に報知するサブ機能と、紙幣処理ユニット15に紙幣の回収を指示するサブ機能と、チャージ履歴データ17Aにおつりの取り忘れを記録するサブ機能と、取り忘れたおつりの返却等による未済取引の解消をチャージ履歴データ17Aに記録するサブ機能とを有している。
【0086】
図22は、実施の形態4におけるチャージ履歴データ17Aのデータ例を示す図である。図22には、図4との対応部分に対応する符号を付して示している。
図22に示すチャージ履歴データ17Aには、備考欄が設けられている。
図22の例では、「2020/09/11 11:45」に実行された3000円のチャージでおつりの取り忘れが発生している。このため、図22に示すチャージ履歴データ17Aでは、同じ時刻に7000円の「未済」が記録されている。また、対応する備考欄には「取り忘れ」が記録され、チャージの未完了と区別されている。
【0087】
図23は、実施の形態4における未済情報データ17Bのデータ例を示す図である。図23には、図5との対応部分に対応する符号を付して示している。
図23に示す未済情報データ17Bの場合、未済取引の発生日時は「2020/09/11 11:45」である。また、発生場所は「ABC ○○店 1F通路 1番チャージ機」である。なお、備考欄には、未済取引の原因として「おつりの取り忘れ」が記録されている。ここでの未済情報データ17Bは、回収された返却貨幣に関する情報の一例である。
【0088】
<処理動作>
以下では、図24及び図25を使用して実施の形態4で使用する電子マネー管理システム1C(図20参照)における処理動作を説明する。
なお、本実施の形態における処理動作は、おつりの取り忘れを未済取引に含める点を除いて、前述した実施の形態と同様である。すなわち、実施の形態1のように、おつりの取り忘れの存在を、未済取引の発生機とは異なるチャージ機10Bの操作時に通知してもよいし、実施の形態2のように、未済取引の発生機とは異なるチャージ機10Bで取り忘れたおつりの返却を可能としてもよい。
【0089】
図24は、未済取引の発生機とは異なる他のチャージ機に表示される画面の例を説明する図である。(A)は未済取引の存在の通知に用いる連絡画面40Bの一例を示し、(B)は他のチャージ機でおつりの返却等を完了させる場合に表示される画面50Aの一例を示す。図24には、図15との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0090】
図24(A)に示す連絡画面40Bには、未済取引の存在を通知する文41Aと、未済取引が発生したチャージ機10Aの場所を示す情報42と、本機で未済取引の完了が可能であることを示す文45と、画面を閉じるためのボタン43と、本機で処理を行うためのボタン46と、係員を呼び出す場合に操作されるボタン44とが配置されている。
図15に示す連絡画面40Aとの違いは、文41Aの文面である。図24(A)の場合、文41Aには「おつりの取り忘れがありました。下記のチャージ機で処理を完了させてください。」との文面が記載されている。
【0091】
前述した実施の形態と同じく、ユーザは、未済取引の発生機で処理を完了させることも可能であるし、連絡画面40Bを表示したチャージ機10B(図21参照)によっても処理を完了させることができる。
図24(B)では、ボタン46が操作される画面50Aが表示される。画面50Aは、未済取引の存在の通知とユーザの選択を促す文51Aの内容が、図15に示す画面50と異なっている。本実施の形態では、未済取引がおつりの取り忘れなので「おつりの取り忘れがありました。希望する処理を選択してください。」に変更されている。
【0092】
図25は、発生機とは異なるチャージ機10Bで未済取引が解消された場合におけるチャージ履歴データ17Aの更新例を説明する図である。図25には、図17との対応部分に対応する符号を付して示している。
図25の場合、未済取引として記録されている「2020/09/11 11:45」の7000円の取り忘れについて、「2020/09/12 15:56にチャージ機Bで返金」されたことが記録され、ステータスが「未済」から「済」に更新される。
【0093】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0094】
前述の実施の形態では、チャージ履歴データ17Aをチャージ機内で個別に管理しているが、各チャージ機で実行された電子マネーのチャージの履歴をサーバーで一括管理してもよい。なお、サーバーは、前述した電子マネー管理サーバー30に限らない。この場合、チャージの履歴を管理するサーバーは、例えば未済情報データ17Bを受信するとステータスを「未済」と記録し、未済解消情報データ17Cを受信するとステータスを「済」に書き換える。
【0095】
前述の実施の形態では、ICカード等のユーザを識別するための識別情報として、カードIDやユーザIDを使用する場合について説明したが顔画像、虹彩、声紋、指紋、静脈パターン等の生体情報を使用してもよい。
前述の実施の形態の場合には、未済情報データ17B(図5参照)に含まれる情報のうちカードIDを除く情報が連絡画面40(図9参照)に表示されているが、連絡画面40には、未済情報データ17B(図5参照)に含まれる情報が全て表示されてもよい。
前述の実施の形態では、ICカード等に電子マネーの情報が記録される場合を想定しているが、ネットワーク20(図1参照)上のサーバーに電子マネーの情報が記録されてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1、1A、1B、1C…電子マネー管理システム、10、10A、10B…チャージ機、11…表示操作部、12…音声出力部、13…カードリーダライタ、14…レシートプリンタ、15…紙幣処理ユニット、15A…紙幣受入部、15B…紙幣払出部、15C…回収機構、16、33…通信部、17、34…記憶部、17A…チャージ履歴データ、17B…未済情報データ、17C…未済解消情報データ、18、35…制御部、18A…表示制御部、18B…カードデータ処理部、18C…チャージ金額特定部、18D…チャージ処理部、18E…取り忘れ処理部、20…ネットワーク、30…電子マネー管理サーバー、31…表示部、32…操作部、34A…配信先データ、35A…未済情報配信部、35B…未済解消情報配信部、18D1…チャージ実行部、18D2…未済情報送信部、18D3…未済情報登録部、18D4…未済取引ユーザ通知部、18D4…未済取引ユーザ通知部、18D5…未済解消処理部、18D6…未済解消情報送信部、18D7…未済情報消去部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25