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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】多孔質アルミニウム水和物
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/14 20220101AFI20240325BHJP
   C01F 7/34 20060101ALI20240325BHJP
   C01G 25/00 20060101ALI20240325BHJP
   C01F 17/34 20200101ALI20240325BHJP
【FI】
C01F7/14
C01F7/34
C01G25/00
C01F17/34
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020533720
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 FR2018053377
(87)【国際公開番号】W WO2019122692
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】1762940
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラーチャー, オリヴィエ
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502837(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00113796(EP,A1)
【文献】特開平10-310426(JP,A)
【文献】特表2014-534938(JP,A)
【文献】特開平02-074520(JP,A)
【文献】特開平10-231119(JP,A)
【文献】特開昭56-009218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00ー17/38
C01G 25/00-47/00
C01G 49/10-99/00
B01J 21/00-38/74
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランタン、プラセオジム、又は前記2つの元素の混合物によって形成される群から選択される少なくとも1つの追加の元素を任意選択的に含んでいてもよい、ベーマイトに基づく化合物であって、900℃の温度で2時間、空気中で焼成された後、
・VP20nm-Nが、
- 10%×VPT-N以上であり;
- 60%×VPT-N以下である;
ような20nm以下のサイズ(VP20nm-Nで表される)を有する細孔領域内の細孔容積;
・VP40-100nm-Nが20%×VPT-N以上であるような、40~100nmのサイズ(VP40-100nm-Nで表される)を有する細孔領域内の細孔容積;
を有することを特徴とし、
・VPT-Nは、900℃で2時間、空気中で焼成した後の化合物の総細孔容積を表し;
・細孔容積は窒素ポロシメトリー手法により決定される、
化合物。
【請求項2】
VPT-Nが、0.65~1.20ml/gであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ベーマイトと、X線回折では見えない相との混合物の形態であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
60%以下である結晶相のパーセンテージを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
ベーマイトが、最大6.0nmである結晶子の平均サイズを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
空気中で900℃で2時間焼成した後に、少なくとも130m/gのBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
最初に空気中で940℃で2時間焼成し、次いで空気中で1100℃で3時間焼成した後に、少なくとも80m/gのBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
ランタン、プラセオジム、又は前記2つの元素の混合物によって形成される群から選択される追加の元素を含み、最初に空気中で940℃で2時間焼成し、次いで空気中で1200℃で5時間焼成した後に、少なくとも45m/gのBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
残留硫酸塩を含む化合物であって、残留硫酸塩の含有量を0.50重量%以下又は0.20重量%以下とすることが可能な、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
残留ナトリウムを含む化合物であって、残留ナトリウムの含有量を0.15重量%以下又は0.10重量%以下とすることが可能な、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
追加の元素の割合又は追加の元素の合計割合が、0重量%~15重量%であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
(a)硝酸水溶液が入っている撹拌されている槽の中に、
・硫酸アルミニウムと硝酸とを含有する水溶液(A);
・アルミン酸ナトリウム水溶液(B);
を入れる工程であって、
工程(a)を通して水溶液(A)を連続的に導入し、反応混合物の平均pHが4.0~6.0の目標値に等しくなるように溶液(B)の導入流量を調整する工程;
(b)水溶液(A)全体を導入した時に、8.0~10.5の目標pHに達するまで水溶液(B)の導入を継続する工程;
(c)その後、反応混合物を濾過して回収した固体を水で洗浄する工程;
(d)その後、工程(c)から得られた固体を乾燥する工程;
を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物の調製方法。
【請求項13】
工程(d)の最後に得られる粉末が粉砕及び/又はふるい分けされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アルミナを調製するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物を空気中で焼成することからなる、アルミナの調製方法。
【請求項16】
アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、ランタン、及びセリウムとランタン以外の少なくとも1つの希土類金属(REM)に基づく混合酸化物の調製における、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物を含有する分散液と、元素Ce、Zr、La、及びREMの塩を含む水溶液とから得られる固体の析出物を空気中で焼成することからなる、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、ランタン、及びセリウムとランタン以外の少なくとも1つの希土類金属(REM)に基づく混合酸化物の調製方法。
【請求項18】
(i)請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物と、セリウムの塩、ジルコニウムの塩、ランタンの塩、及びセリウムとランタン以外の希土類金属の塩を含有する水溶液Sとから形成された分散液に塩基性水溶液を添加して、溶液Sの構成元素の塩を析出させる工程;
(ii)工程(i)の最後に得られた固体を洗浄する工程;
(iii)工程(i)又は(ii)の最後に得られた固体を、空気中で700℃~1200℃の温度で焼成する工程;
を含む、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、ランタン、及びセリウムとランタン以外の少なくとも1つの希土類金属(REM)に基づく混合酸化物の調製方法。
【請求項19】
(i)セリウムの塩、ジルコニウムの塩、ランタンの塩、及びセリウムとランタン以外の希土類金属の塩を含有する水溶液Sを、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物と、塩基性水溶液とから形成された分散液に添加して、溶液Sの元素の塩を析出させる工程;
(ii)工程(i)の最後に得られた固体を洗浄する工程;
(iii)工程(i)の最後に得られた固体を、空気中で700℃~1200℃の温度で焼成する工程;
を含む、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、ランタン、及びセリウムとランタン以外の少なくとも1つの希土類金属(REM)に基づく混合酸化物の調製方法。
【請求項20】
(i)請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物と、セリウムの塩、ジルコニウムの塩、ランタンの塩、及びセリウムとランタン以外の希土類金属の塩を含有する水溶液Sとから形成された分散液に塩基性水溶液を添加して、溶液Sの塩を析出させる工程;
(ii)工程(i)の最後に得られた固体を洗浄する工程;
(iii)工程(i)の最後に得られた固体を、空気中で700℃~1200℃の温度で焼成する工程;
を含む、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、ランタン、及びセリウムとランタン以外の少なくとも1つの希土類金属(REM)に基づく混合酸化物の調製方法。
【請求項21】
工程(ii)と(iii)との間に、固体を70℃~150℃の温度で加熱する工程を含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
混合酸化物がハフニウムを含む、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ハフニウムの割合が、混合酸化物の総重量に対する酸化物当量として表した場合に2.0%以下である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
セリウム、ジルコニウム、ランタン、及び任意選択的にセリウムとランタン以外の希土類金属の塩を含む、水溶液中に、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物を含有する、分散液。
【請求項25】
塩基性水溶液中に、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物を含有する、分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月22日に出願された仏国特許出願第1762940号の優先権を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。用語又は表現の明瞭さに影響を与えるような矛盾が本出願の文章と仏国特許出願の文章との間にある場合には、本出願のみを参照するものとする。
【0002】
本発明は、多孔質アルミニウム水和物、その調製方法、並びに、アルミナの調製における、又はアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、ランタン、及び任意選択的にセリウムとランタン以外の少なくとも1つの希土類金属(REM)に基づく混合酸化物の調製における中間体としてのその使用に関する。本発明は、アルミニウム水和物から得られるアルミナにも関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム水和物は、触媒又は触媒担体の調製に使用される。調製は、通常、アルミニウム水和物を成形し、次いでそれを焼成してアルミナに変換することからなる。アルミニウム水和物の特性は、得られるアルミナの特性に影響を与え、結果として触媒及び触媒担体の適用性に影響を与える。大きい比表面積のアルミナを調製する場合、アルミニウム水和物は一般的にはベーマイトである。
【0004】
アルミニウム、セリウム、及び/又はジルコニウムに基づく混合酸化物は、アルミニウムがアルミニウム水和物の形態で供給されるプロセスによって得ることができる。優れた特性、特に高い耐熱性を有する混合酸化物を得るためには、アルミニウム水和物がこれらのプロセスの反応混合物中に高度に分散可能であることが必要である。
【0005】
出願人は、この技術的課題を解決することを目的とした特定のアルミニウム水和物を開発した。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ランタン、プラセオジム、又は2つの元素の混合によって形成される群から選択される少なくとも1つの追加の元素を任意選択的に含んでいてもよい、ベーマイトに基づくアルミニウム水和物に関し、これは、900℃の温度で2時間、空気中で焼成された後、
・VP20nm-Nが、
- 10%×VPT-N以上、より具体的には15%×VPT-N以上、更には20%×VPT-N以上、更には30%×VPT-N以上であり;
- 60%×VPT-N以下である;
ような20nm以下のサイズ(VP20nm-Nで表される)を有する細孔領域内の細孔容積;
・VP40-100nm-Nが20%×VPT-N以上、より具体的には25%×VPT-N以上、更には30%×VPT-N以上であるような、40~100nmのサイズ(VP40-100nm-Nで表される)を有する細孔領域内の細孔容積;
を有することを特徴とし、
・VPT-Nは、900℃で2時間、空気中で焼成した後のアルミニウム水和物の総細孔容積を表し;
・細孔容積は、窒素ポロシメトリー手法により決定される。
【0007】
本発明は、
(a)硝酸水溶液が入っている撹拌されている槽の中に、
・硫酸アルミニウムと、任意選択的に硝酸塩形態の追加の元素と、硝酸とを含有する水溶液(A);
・アルミン酸ナトリウム水溶液(B);
を入れる工程であって、
工程(a)を通して水溶液(A)を連続的に導入し、反応混合物の平均pHが4.0~6.0、より具体的には4.5~5.5の目標値に等しくなるように溶液(B)の導入流量を調整する工程;
(b)水溶液(A)全体を導入した時に、8.0~10.5、好ましくは9.0~10.0の目標pHに達するまで水溶液(B)の導入を継続する工程;
(c)その後、反応混合物を濾過して回収した固体を水で洗浄する工程;
(d)その後、工程(c)から得られた固体を乾燥する工程;
を含む、このアルミニウム水和物を得るための方法にも関する。
【0008】
本発明は、アルミナ調製のための水和物の使用、並びにアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、ランタン、及び任意選択的にセリウムとランタン以外の少なくとも1つの希土類金属(REM)に基づく混合酸化物の調製におけるアルミニウム水和物の使用にも関する。
【0009】
背景技術
国際公開第2006/119549号パンフレット及び国際公開第2013007242号パンフレットには、アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムに基づく混合酸化物の調製方法が記載されており、これらの中のアルミニウム源は、固体のアルミニウムに基づく化合物である。
【0010】
欧州特許第1098848号明細書には別のべーマイトが記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1及び3のアルミニウム水和物について窒素ポロシメトリーにより得られた累積細孔容積を表す。
図2】実施例1及び3のアルミニウム水和物の窒素ポロシメトリーによる細孔分布を表す。この図のポログラムは、Dの関数としての微分(dV/dlogD)を表す(V:細孔容積;D:細孔サイズ)。
図3】実施例1及び参照(米国特許出願公開第2013/017947号明細書の実施例B1に対応する製品)のアルミニウム水和物のX線回折図を表す。ファイルJCPDS00-021-1307のベーマイトのピークも目安としてこの図に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、特定の空隙率(以下に記載)を有するベーマイトに基づくアルミニウム水和物に関する。「ベーマイト」という用語は、ヨーロッパの命名法では、そして知られているように、ガンマオキシ水酸化物(γ-AlOOH)を意味する。本出願において、「ベーマイト」という用語は、当業者に知られている特定の結晶形を有する様々なアルミニウム水和物を意味する。そのため、ベーマイトはX線回折によって特徴付けることができる。「ベーマイト」という用語は、特定の著者によれば、ベーマイトの1つの特定の種類に似ているに過ぎず、単にベーマイトの特徴的なピークが広がっている「偽ベーマイト」も包含する。
【0013】
ベーマイトは、その特徴的なピークを通してX線回折により同定される。これらは、ファイルJCPDS00-021-1307(JCPDS=粉末回折標準に関する合同委員会)に示されている。ピークの頂点(020)は、特に
- ベーマイトの結晶化度;
- ベーマイトの結晶子のサイズ;
に依存して13.0°~15.0°の場合があることに留意されたい。
【0014】
Journal of Colloidal and Interface Science 2002,253,308-314又はJ.Mater.Chem.,1999,9,549-553を参照することができ、これには、特定の数のベーマイトについて、ピークの位置が結晶中の層の数又は結晶子の大きさに依存して変動することが記載されている。この頂点は、より具体的には13.5°~14.5°、又は13.5°~14.485°の場合がある。
【0015】
アルミニウム水和物は、ランタン、プラセオジム、又はこれらの2つの元素の混合により形成される群から選択される少なくとも1つの追加の元素を任意選択的に含んでいてもよい。したがって、アルミニウム水和物は、La又はPr、或いはLa+Prを含み得る。この元素の割合又はこれらの元素の合計割合は、0重量%~15重量%、より具体的には0重量%~10重量%、更に具体的には0%~8%であってもよい。この割合は2%~8%であってもよい。この割合は、酸化物形態でも表される元素Al、La及び/又はPrの総重量に対する酸化物形態で表される元素の重量により与えられる。この割合の計算のためには、ランタン酸化物はLaの形態であり、プラセオジム酸化物はPr11の形態であり、アルミニウム酸化物はAlの形態であるとみなされる。そのため、ランタンを7%の割合で含むアルミニウム水和物は、それが7%に相当するLa及び93%に相当するAlを含むものである。アルミニウム水和物を空気中で焼成してそれをアルミナ及び追加の元素の酸化物へと変換し、次いで焼成して得られた生成物を例えば濃硝酸溶液を用いて攻撃することでその元素を溶液に溶解させる(これはその後例えばICPなどの当業者に公知の手法によって分析することができる)ことにより、追加の元素の割合を決定することが可能である。
【0016】
アルミニウム水和物に含まれるベーマイトは、最大6.0nm、更には最大4.0nm、また更には最大3.0nmの結晶子の平均サイズを有し得る。結晶子の平均サイズは、X線回折法によって決定され、線(020)の半値全幅から計算されるコヒーレントドメインのサイズに対応する。
【0017】
結晶子のサイズの計算には、粉末のX線回折で公知の方法で利用されており、回折ピークの半値全幅から結晶子のサイズを決定できるDebye-Scherrerモデルが利用される。詳細については、Appl.Cryst.,1978,11,102-113,”Scherrer after sixty years:A survey and some new results in the determination of crystallite size,J.I.Langford and A.J.C.Wilson”を参照することができる。使用される式は以下の通りである:
t:結晶子サイズ
k:0.9に等しい形状係数
λ(ラムダ):入射光線の波長(λ=1.5406オングストローム)
H:回折線の半値全幅
s:使用される装置及び2θ(シータ)角に依存する光学装置の欠陥による幅;
θ:ブラッグ角
【0018】
本発明のアルミニウム水和物は、X線回折手法によって上述したように識別可能なベーマイトと、X線回折では見えない相、特にはアモルファス相との混合物の形態であってもよい。
【0019】
アルミニウム水和物は、60%以下、より具体的には50%以下の結晶相(ベーマイト)のパーセンテージを有していてもよい。このパーセンテージは、40%~55%、又は45%~55%、又は45%~50%であってもよい。このパーセンテージは当業者に公知の方法で決定される。このパーセンテージを決定するために以下の式:結晶化度のパーセンテージ=ピーク強度(120)/基準のピーク強度(120)×100を使用することができ、ここでアルミニウム水和物のピークの強度(120)と基準のピーク強度(120)とが比較される。本出願において使用される基準は、米国特許出願公開第2013/017947号明細書の実施例B1に対応する製品である。測定される強度は、ベースラインより上のピーク(120)の表面積に対応する。これらの強度は、5.0°~90.0°の2θ角度範囲にわたってとられるベースラインに対して回折図上で決定される。ベースラインは回折図のデータを分析するためのソフトウェアを用いて自動的に決定される。
【0020】
アルミニウム水和物は特定の空隙率を有する。そのため、空気中900℃で2時間焼成した後、アルミニウム水和物は20nm以下のサイズの細孔の領域における細孔容積(VP20nm-Nと表わされる)を有し、その結果VP20nm-Nは、20%×VPT-N以上、より具体的には25%×VPT-N以上、更には30%×VPT-N以上である。更に、VP20nm-Nは60%×VPT-N以下である。
【0021】
更に、空気中900℃で2時間焼成した後、アルミニウム水和物は、40~100nmのサイズを有する細孔の領域における細孔容積(VP40-100nm-Nと表わされる)を有し、その結果VP40-100nm-Nは15%×VPT-N以上、より具体的には20%×VPT-N以上、更には25%×VPT-N以上、更には30%×VPT-N以上である。更に、VP40-100nm-Nは65%×VPT-N以下であってもよい。
【0022】
空気中900℃で2時間焼成した後、本発明のアルミニウム水和物は、0.65~1.20ml/g、より具体的には0.70~1.15ml/g、又は0.70~1.10mlの総細孔容積(VPT-N)を有し得る。このようにして測定される細孔容積は、直径が100nm以下である細孔によって主に発現することに留意されたい。
【0023】
アルミニウム水和物は、少なくとも200m/g、より具体的には少なくとも250m/gの比表面積を有し得る。この比表面積は、200~400m/gであってもよい。比表面積は、窒素吸着によって得られるBET比表面積を意味すると理解される。これは当業者が通常理解する通りの比表面積である。この表面積は、公知のBrunauer-Emmett-Teller法(BET法)による粉末への窒素吸着により決定される。この方法は、ASTM D3663-03(2015年再承認)に記載されている。この方法は、The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)にも記載されている。
【0024】
本出願において与えられる細孔容積は、窒素ポロシメトリー法によって決定される。空隙率又は比表面積の測定のためには、試料は、揮発性の表面種(例えばHOなど)を除去するために高温及び/又は真空下で前処理される。例えば、試料に対して200℃で2時間熱がかけられてもよい。
【0025】
更に、空気中900℃で2時間焼成した後、アルミニウム水和物は少なくとも130m/g、より具体的には少なくとも150m2/gの(BET)比表面積を有し得る。この比表面積は、130~220m/gであり得る。
【0026】
940℃で2時間空気中で焼成し、引き続き1100℃で3時間空気中で焼成した後、アルミニウム水和物は少なくとも80m/g、より具体的には少なくとも100m/gの(BET)比表面積を有し得る。この比表面積は、80~120m/gであり得る。
【0027】
アルミニウム水和物が上述したように少なくとも1つの追加の元素を含む場合、アルミニウム水和物は高い熱抵抗を有することができる。したがって、940℃で2時間空気中で焼成し、引き続き1200℃で5時間空気中で焼成した後、アルミニウム水和物は少なくとも45m/g、より具体的には約50m/gの(BET)比表面積を有し得る。この比表面積は、45~75m/gであり得る。
【0028】
本出願において「温度x℃でy時間空気中で焼成した後、アルミニウム水和物は…を有する」という表現は、測定された空隙率(比表面積又は細孔容積)がアルミニウム水和物の焼成により得られた生成物のものであったとしても、アルミニウム水和物を特徴付けるために使用される。
【0029】
アルミニウム水和物は、残留硫酸塩を含み得る。残留硫酸塩の含有量は、0.50重量%以下、又は0.20重量%以下であってもよい。硫酸塩含有量は、50ppm以上であってもよい。この含有量は、元素Alの酸化物と、任意選択的に追加の元素の酸化物の重量に対する硫酸塩の重量として表される。したがって、0.5%の残留硫酸塩の含有量は、酸化物(Al、Pr11、La)100g当たり0.5gのSOに相当する。この濃度範囲内の硫酸塩含有量を決定する方法は当業者に公知である。例えば、微量分析技術を使用することが可能である。したがって、Horiba EMIA 320-V2タイプの微量分析装置を使用することができる。
【0030】
アルミニウム水和物は残留ナトリウムを含み得る。残留ナトリウムの含有量は、0.15重量%以下、又は0.10重量%以下であってもよい。ナトリウム含有量は、50ppm以上であってもよい。この含有量は、元素Alの酸化物と、任意選択的に追加の元素の酸化物の重量に対するNaOの重量として表される。したがって、0.15%の残留ナトリウムの含有量は、酸化物(Al、Pr11、La)100g当たり0.15gのNaOに相当する。この濃度範囲内のナトリウム含有量を決定する方法は当業者に公知である。例えば、プラズマ発光分光法を使用することができる。
【0031】
本発明のアルミニウム水和物は、
(a)硝酸水溶液が入っている撹拌されている槽の中に、
・硫酸アルミニウムと、任意選択的に硝酸塩形態の追加の元素と、硝酸とを含有する水溶液(A);
・アルミン酸ナトリウム水溶液(B);
を入れる工程であって、
工程(a)を通して水溶液(A)を連続的に導入し、反応混合物の平均pHが4.0~6.0、より具体的には4.5~5.5の目標値に等しくなるように溶液(B)の導入流量を調整する工程;
(b)水溶液(A)全体を導入した時に、8.0~10.5、好ましくは9.0~10.0の目標pHに達するまで水溶液(B)の導入を継続する工程;
(c)その後、反応混合物を濾過して回収した固体を水で洗浄する工程;
(d)その後、工程(c)から得られた固体を乾燥して本発明の水和物を得る工程;
を含む方法により得られる。
【0032】
水溶液(A)は、硫酸アルミニウムと硝酸とから得られる。水溶液(A)は、硝酸塩形態の追加の元素も含んでいてもよい。水溶液(A)は、1重量%~5重量%のアルミナ当量の濃度を有し得る。
【0033】
水溶液(B)は、アルミン酸ナトリウムから得られる。これは、好ましくは、析出したアルミナを有さない。アルミン酸ナトリウムは、好ましくは、1.2以上、例えば1.20~1.40のNaO/Al比を有する。
【0034】
水溶液(A)は、撹拌されている槽の中に工程(a)全体を通して連続的に導入される。水溶液(A)の導入継続時間は、10分~2時間であってもよい。水溶液(B)は、反応混合物の平均pHが目標値に等しくなるように調節された流量で水溶液(A)と同時に導入される。目標値は4.0~6.0、より具体的には4.5~5.5である。「平均pH」は、工程(a)中に連続的に記録されたpH値の算術平均を意味すると理解される。水溶液(B)の流量が調整されるため、ある時点でゼロとすることができる。すなわち、撹拌されている槽に導入されているものは水溶液(A)のみとすることができる。
【0035】
工程(b)の間、工程(a)の終わりに水溶液(A)全体が反応器に導入された場合、水溶液(B)は、8.0~10.5、好ましくは9.0~10.0の目標pHに到達するまで導入が継続される。工程(b)の継続時間は可変であってもよい。この継続時間は5分~2時間であってもよい。
【0036】
槽の中に最初に存在する硝酸水溶液の温度は、50℃~80℃であってもよい。工程(a)の間の反応混合物の温度も50℃~80℃であってもよい。工程(b)の間の反応混合物の温度も50℃~80℃であってもよい。
【0037】
工程(c)の間、(スラリーの形態の)反応混合物は濾過される。フィルター上に回収された固体は水で洗浄されてもよい。少なくとも50℃の温度を有する温水が使用されてもよい。
【0038】
工程(d)の間、工程(c)から得られた固体は、当業者に公知の任意の乾燥技術を使用して乾燥される。噴霧乾燥を有効に利用することができる。アルミニウム水和物は乾燥粉末形態である。
【0039】
粉末は、固定された粒子サイズの粉末を得るために、任意選択的に粉砕及び/又はふるい分けされていてもよい。粉砕又は未粉砕アルミニウム水和物は、1.0~40.0μm、より具体的には3.0~30.0μmの平均直径d50(メジアン)を有する粉末の形態であってもよく、d50は、体積分布全体のレーザー回折によって決定される。
【0040】
本発明のアルミニウム水和物は、アルミナを調製するために使用することができる。アルミナは、アルミニウム水和物を空気中で焼成することにより得られる。本発明は、本発明のアルミニウム水和物の焼成によりアルミナを得る方法にも関する。焼成温度は少なくとも500℃である。これは500℃~1100℃であってもよい。焼成の持続時間は30分~10時間であってもよい。
【0041】
本発明のアルミナは、アルミニウム水和物と同じ多孔質特性を有する。空気中で1100℃で3時間焼成した後、アルミナは、少なくとも80m/g、より具体的には少なくとも100m/gの比表面積を有し得る。この比表面積は80~120m/gであってもよい。アルミナが上述したように少なくとも1つの追加の元素を含む場合、アルミナは高い耐熱性を有することができる。したがって、空気中で1200℃で5時間焼成した後、アルミナは、少なくとも45m/g、より具体的には少なくとも50m/gの比表面積を有し得る。この比表面積は45~75m/gであってもよい。
【0042】
本発明のアルミナは、触媒担体として有利に使用することができる。このアルミナは、特に、自動車の汚染制御触媒作用のための少なくとも1つの貴金属の担体として使用することができる。ガソリン車用のいわゆる「三元」触媒の場合、少なくとも1つの追加の元素を含むアルミナは、高い温度、典型的には1100℃を超える温度での熱安定性のため、有利に使用することができる。本発明により得られる多孔質アルミナは、高流量のガスが触媒を通過する条件下で有利に使用される。アルミナは、酸化条件下で作動するエンジン(ディーゼル又はガソリン)の汚染管理用途にも使用することができる。より低い熱的応力に通常さらされるディーゼル車の場合、追加の元素の有無にかかわらず、純粋なアルミナを使用することができる。
【0043】
本発明のアルミニウム水和物は、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、ランタン、及び任意選択的にセリウムとランタン以外の少なくとも1つの希土類金属(REM)に基づく混合酸化物の調製においても使用することができる。REMは、例えばイットリウム、ネオジム、又はプラセオジムから選択することができる。
【0044】
混合酸化物において、上述した元素Al、Ce、La、REM、及びZrは、通常酸化物の形態で存在する。したがって、混合酸化物は、酸化物の混合物として定義することができる。しかしながら、これらの元素が少なくとも部分的に水酸化物又はオキシ水酸化物の形態で存在できることを除外するものではない。これらの元素の割合は、実験室で慣用の分析技術、特にプラズマトーチ及び蛍光X線を使用して決定することができる。
【0045】
そのような混合酸化物の例は、例えば、酸化物の重量として表される以下の割合で上述した元素を含み得る:
・20%~60%のアルミニウム;
・15%~35%のセリウム;
・1%~10%のランタン;
・混合酸化物がセリウムとランタン以外の2種以上の希土類金属を含む条件では、0~10%の、セリウムとランタン以外の希土類金属(この割合はこれらの希土類金属のそれぞれに適用され、これらの希土類金属の割合の合計は15%未満にとどめられる)、
・15%~50%のジルコニウム。
【0046】
混合酸化物は、ハフニウムも含んでいてもよく、その割合は、混合酸化物の総重量に対する酸化物当量として表した場合に2.0%以下であってもよい。これらの割合は、混合酸化物の総重量に対する酸化物当量の重量で与えられる。別段の指示がない限り、これらは酸化物の重量で与えられる。これらの計算では、セリウム酸化物は酸化第二セリウムの形態であり、他の希土類金属の酸化物はREMの形態であるとみなされ、REMは希土類金属を示すが、プラセオジムは例外としてPr11の形態で表される。ジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物は、ZrO及びHfOの形態である。アルミニウムはAlの形態で存在する。
【0047】
混合酸化物を得るためのプロセスは、アルミニウム水和物の分散液と、元素Ce、Zr、La(適切な場合)、及びREM(適切な場合)の塩を含む溶液とから得られる固体の析出物を空気中で焼成することからなる。
【0048】
元素Al、Ce、Zr、La、及び任意選択的にREMの混合酸化物を調製するための1つの具体的な方法(P1)は、例えば、
(i)アルミニウム水和物と、セリウムの塩、ジルコニウムの塩、ランタンの塩(適切な場合)、及びセリウムとランタン以外の希土類金属の塩(適切な場合)を含有する水溶液Sとから形成された分散液に塩基性水溶液を添加して、溶液Sの構成元素の塩を析出させる工程;
(ii)任意選択的に、工程(i)の最後に得られた固体を洗浄する工程;
(iii)工程(i)又は(ii)の最後に得られた固体を、空気中で700℃~1200℃の温度で焼成する工程;
を含み得る。
【0049】
元素Al、Ce、Zr、La、及び任意選択的にREMの混合酸化物を調製するための1つの具体的な方法(P2)は、
(i)セリウムの塩、ジルコニウムの塩、ランタンの塩(適切な場合)、及びセリウムとランタン以外の希土類金属の塩(適切な場合)を含有する水溶液Sを、アルミニウム水和物と、塩基性水溶液とから形成された分散液に添加して、溶液Sの元素の塩を析出させる工程;
(ii)任意選択的に、工程(i)の最後に得られた固体を洗浄する工程;
(iii)工程(i)又は(ii)の最後に得られた固体を、空気中で700℃~1200℃の温度で焼成する工程;
を含み得る。
【0050】
元素Al、Ce、Zr、La、及び任意選択的にREMの混合酸化物を調製するための1つの具体的な方法(P3)は、
(i)アルミニウム水和物と、セリウムの塩、ジルコニウムの塩、ランタンの塩(適切な場合)、及びセリウムとランタン以外の希土類金属の塩(適切な場合)を含有する水溶液Sとから形成された分散液に塩基性水溶液を添加して、溶液Sの塩を析出させる工程;
(ii)任意選択的に、工程(i)の最後に得られた固体を洗浄する工程;
(iii)工程(i)又は(ii)の最後に得られた固体を、空気中で700℃~1200℃の温度で焼成する工程;
を含み得る。
【0051】
水溶液を分散液と接触させる工程(i)は、撹拌しながら行われる。更に、この工程では、用語「添加」は、より具体的には、水溶液又は分散液が、特には容器の底部で、それぞれ分散液又は水溶液の中に導入される操作を示し得る。
【0052】
工程(ii)と(iii)との間又は(iii)と(iv)との間に中間工程が設けられてもよく、その間に固体は70℃~150℃の温度で加熱される。この加熱は、好ましくは、水中に分散されている固体に対して行われる。
【0053】
元素Ce、Zr、La及びREMの塩は、硝酸塩、塩化物、及び酢酸塩から形成される群から選択することができる。ここで、REMがランタン及び/又はプラセオジムを表す場合、これらの元素は、全体又は一部がアルミニウム水和物によって供給され得ることに留意されたい。塩基性水溶液は、例えばアンモニア水溶液であってもよい。混合酸化物を調製するためのそのようなプロセスの例は、米国特許第9289751号明細書、並びに国際公開第13007272号パンフレット及び国際公開第14201094号パンフレットに示されている。
【0054】
アルミニウム水和物は、均一な分散液を得ることを可能にする。これは、特に耐熱性の優れた特性を有する混合酸化物を得ることを可能にする。したがって、混合酸化物は、1100℃で5時間空気中で焼成した後、30m/gを超えるBET比表面積を有し得る。
【0055】
本発明は、セリウム、ジルコニウム、ランタン、及び任意選択的にセリウムとランタン以外の希土類金属の塩を含む、水溶液、特には酸性水溶液中の、アルミニウム水和物の分散液にも関する。本発明は、塩基性水溶液、特にアンモニア水溶液中のアルミニウム水和物の分散液にも関する。
【実施例
【0056】
空隙率又は比表面積の測定では、揮発性の表面種(例えばHO等)を除去するために、サンプルを200℃で2時間前処理する。
【0057】
比表面積は、MicromeriticsのTristar II 3020装置を使用して、製造元の推奨する指示に従って自動的に決定する。
【0058】
細孔容積を推定する空隙率測定値は、MicromeriticsのTristar II 3020装置を使用して、自動化された方法で決定する。Harkins-Juraの法則を用いたBarrett,Joyner and Halenda(BJH)法を使用する。結果の分析は脱離曲線で行う。
【0059】
X線回折分析は、銅源(CuKα1、λ=1.5406オングストローム)を用いて得られる。銅源、スピナーサンプルホルダー、及び2.122°の角度幅を有するX’Celelerator 1D検出器を備えたPanalyticalのX’Pert Proゴニオメーターを使用した。装置は、前面のニッケルフィルターと、一辺が10mmの一定の正方形の表面積を照らすようにプログラム可能なスリットとを備えている。
【0060】
実施例1:6.2%のランタンを含む本発明によるアルミニウム水和物の調製(93.8%Al-6.2%La
撹拌されている槽の中に、34.7kgの脱イオン水と、8.31重量%の濃度のアルミナ(Al)を有する10.95kgの硫酸アルミニウム溶液と、26.9重量%の濃度のLaを有する1.43kgのランタン硝酸塩溶液と、68重量%の硝酸水溶液4.97kgとを入れることによって溶液(A)を調製する。溶液(B)は、24.9重量%の濃度のアルミナ(Al)を有するアルミン酸ナトリウム溶液である。
【0061】
71kgの脱イオン水を撹拌されている反応器の中に入れる(250rpm;45°に傾斜した4つのブレードを備えた撹拌機)。次いで反応器を65℃の温度に達するまで加熱する。反応を通してこの温度を維持する。pH3に達するまで撹拌されている反応器の中に69%硝酸溶液を入れる。
【0062】
工程(a)では、溶液(A)及び溶液(B)を、撹拌機近くの導入管を介して撹拌されている反応器の中に同時に入れる。溶液(A)は1.05kg/分の流量で入れる。溶液(B)は3分でpH5に到達させることが可能な流量で入れる。
【0063】
溶液(A)の流量は1.05kg/分で一定のままであり、溶液(B)の流量は46分間pHを5.1の値に維持するように調節される。
【0064】
工程(b)では、溶液(A)の導入を停止し、15分でpH10に達するまで溶液(B)を添加し続ける。
【0065】
工程(c)では、その後反応スラリーを真空フィルターの上に注ぎ入れる。濾過の終わりに、ケーキを60℃の脱イオン水で洗浄する。ケーキは、固形分11重量%の酸化物(Al-La)を有する。その後、ケーキを脱イオン水中に再分散させて、ほぼ8重量%の濃度の酸化物(Al-La)を有する懸濁液を得る。
【0066】
工程(d)では、懸濁液を噴霧して、乾燥したランタンドープアルミニウム水和物粉末を得る。粉末の強熱減量は、950℃で2時間の焼成後の重量の減少によって得られる。これは31.2重量%である。アルミニウム水和物粉末は、64.5重量%のAl及び4.2重量%のLaに相当する量を含む。この粉末は344m/gのBET表面積を有する。
【0067】
実施例2:93.8%Al-6.2%Laの組成のアルミナの調製
実施例1の粉末を空気中で940℃で2時間焼成することで、ランタンでドープされたアルミナ粉末を得る。温度は2.5℃/分の速度で増加させる。
【0068】
実施例3:6.2%のLaを含むアルミニウム水和物の調製(93.8%Al-6.2%La
撹拌されている槽の中に、34.7kgの脱イオン水と、8.31重量%の濃度のアルミナ(Al)を有する10.95kgの硫酸アルミニウム溶液と、26.9重量%の濃度Laを有する1.43kgのランタン硝酸塩溶液と、68%の硝酸水溶液4.96kgとを入れることによって溶液(A)を調製する。溶液(B)は、24.9重量%の濃度のアルミナを有するアルミン酸ナトリウム溶液である。
【0069】
71kgの脱イオン水を撹拌されている反応器の中に入れる(250rpm;45°に傾斜した4つのブレードを備えた撹拌機)。次いで反応器を65℃の温度に達するまで加熱する。反応を通してこの温度を維持する。pH3に達するまで撹拌されている反応器の中に69%硝酸溶液を入れる。
【0070】
工程(a)では、溶液(A)及び溶液(B)を、撹拌機近くの導入管を介して、撹拌されている反応器の中に同時に入れる。溶液(A)は1.05kg/分の流量で入れる。溶液(B)は3分でpH4.4に到達させることが可能な流量で入れる。溶液(A)の流量は1.05kg/分で一定のままであり、溶液(B)の流量は46分間pHを4.4の値に維持するように調節される。
【0071】
工程(b)では、溶液(A)の導入を停止し、15分でpH10に達するまで溶液(B)を添加し続ける。
【0072】
工程(c)では、その後反応スラリーを真空フィルターの上に注ぎ入れる。濾過の終わりに、ケーキを60℃の脱イオン水で洗浄する。ケーキは、固形分13重量%の酸化物(Al-La)を有する。その後、ケーキを脱イオン水中に再分散させて、ほぼ8重量%の濃度の酸化物(Al-La)を有する懸濁液を得る。
【0073】
工程(d)では、懸濁液を噴霧して、ランタンドープアルミニウム水和物粉末を得る。粉末の強熱減量は、950℃で2時間焼成後の重量の減少によって得られる。これは38.5重量%である。アルミニウム水和物粉末は、57.8重量%のAl及び3.8重量%のLaに相当する量を含む。この粉末は259m/gのBET表面積を有する。
【0074】
実施例4:93.8%Al-6.2%Laの組成のアルミナの調製
実施例3の粉末を空気中で940℃で2時間焼成することで、ランタンでドープされたアルミナ粉末を得る。温度は2.5℃/分の速度で増加させる。
【0075】
微粒化された粉末及び焼成された粉末の特性を表I及びIIに記録する。
【0076】
実施例5:Al(30%)-ZrO(35%)-CeO(27%)-La(4%)-Y(4%)(重量%)の組成の混合酸化物の調製における実施例1のアルミニウム水和物の使用
45°に傾斜した4枚のブレードを有する撹拌機を用いて撹拌されている槽の中に、357gの水、114gの硝酸ジルコニル溶液([ZrO]=260g/l;密度1.406)、56gのCeIII硝酸塩溶液([CeO]=496g/l;密度1.714)、4.4gのランタン硝酸塩溶液([La]=472g/l;密度1.711)、及び16gのイットリウム硝酸塩溶液([Y]=208.5g/l;密度1.392)を入れることによって、前駆体の硝酸塩を主体とする溶液を調製する。
【0077】
次に、得られた溶液に69重量%の硝酸2.3gを添加して、前駆体の溶液を得る。64.5重量%の当量のアルミナ(18gのAl)及び4.2重量%のLa(1.17g)を含む実施例1のアルミニウム水和物28gを、撹拌したままのこの溶液にスパチュラで添加する。均一な分散液の形態で前駆体混合物が得られるまで、混合物を撹拌したままにする。次に、9.8mol/lの過酸化水素水溶液5.3gを添加する。前駆体ミキサーを撹拌したままにする。
【0078】
500mlの2mol/lのアンモニア水溶液が入っている、45°に傾斜した4枚のブレードを有する撹拌機によって撹拌されている(575rpm)反応器に、前駆体混合物を周囲温度で60分で入れる。
【0079】
前駆体混合物の添加の終わりに、混合物を95℃の温度まで加熱し、この温度で30分間維持する。その後混合物を40℃未満の温度まで冷却する。この冷却されている混合物に、650rpmで撹拌しながら12gのラウリン酸を添加する。この撹拌を30分間維持する。
【0080】
混合物を真空下で濾過し、次いでケーキをpH=9のアンモニア水溶液890gで洗浄する。その後、得られたウェットケーキをマッフル炉に入れる。950℃に達するまで炉の温度を4℃/分の速度で上昇させ;次いでこの温度を4時間維持する。空気中でのこの焼成の終わりに混合酸化物が得られる。その後回収した混合酸化物を乳鉢を用いて粉砕する。
【0081】
空気中で4時間焼成した後の混合酸化物の比表面積:
950℃:82m/g
1000℃:68m/g
1100℃:40m/g
【0082】
実施例6:Al(30%)-ZrO(35%)-CeO(27%)-La(4%)-Y(4%)(重量%)の組成の混合酸化物の調製における実施例2のアルミニウム水和物の使用
45°に傾斜した4つのブレードを有する撹拌機で撹拌されている槽の中に、357gの水、114gの硝酸ジルコニル溶液([ZrO]=260g/l;密度1.406)、56gのCeIII硝酸塩溶液([CeO]=496g/l;密度1.714)、4.4gの硝酸ランタン溶液([La]=472g/l;密度1.711)、及び16gの硝酸イットリウム溶液([Y]=208.5g/l、密度1.392)を入れることにより、前駆体の硝酸塩に基づく溶液を調製する。
【0083】
次に、得られた溶液に69重量%の硝酸2.3gを添加して、前駆体の溶液を得る。57.8重量%の当量のアルミナ(18gのAl)及び3.8重量%のLa(1.18g)を含む実施例3のアルミニウム水和物31.1gを、撹拌したままのこの溶液にスパチュラで添加する。均一な分散液の形態で前駆体混合物が得られるまで、混合物を撹拌したままにする。次に、9.8mol/lの過酸化水素水溶液5.3gを添加する。前駆体ミキサーを撹拌したままにする。
【0084】
2mol/lのアンモニア水溶液500mlを、撹拌されている反応器(600rpm:45°に傾斜した4つのブレードを備えた撹拌機)の中に入れる。撹拌されている反応器の中に、60分で前駆体混合物を入れる。プロセスは周囲温度で行う。前駆体混合物の添加の終わりに、反応媒体を95℃の温度に加熱し、この温度で30分間維持する。その後、反応媒体を40℃未満の温度まで冷却する。500rpmで撹拌しながら、この冷却した混合物に12gのラウリン酸を添加する。この撹拌を30分間維持する。
【0085】
反応媒体を真空下で濾過し、次いでケーキをアンモニア水溶液(pH=9)1lで洗浄する。その後、得られたウェットケーキをマッフル炉に入れる。950℃まで炉の温度を4℃/分の速度で上昇させ;この温度を4時間維持する。空気中でのこの焼成の終わりに混合酸化物が得られる。その後回収した混合酸化物を乳鉢を用いて粉砕する。
【0086】
空気中で4時間焼成した後の混合酸化物の比表面積:
950℃:79m/g
1000℃:66m/g
1100℃:41m/g
【0087】
【0088】
図1
図2
図3