(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】インク組成物、これを用いて製造された画素、前記画素を含むカラーフィルタおよび前記カラーフィルタを備える画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20240325BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20240325BHJP
C09C 1/36 20060101ALI20240325BHJP
C09C 3/04 20060101ALI20240325BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240325BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240325BHJP
B41M 5/00 20060101ALN20240325BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/38
C09C1/36
C09C3/04
G02B5/20
G02B5/20 101
B41J2/01 501
B41M5/00 120
(21)【出願番号】P 2021004881
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0006216
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0001658
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 知 煥
(72)【発明者】
【氏名】金 胄 皓
(72)【発明者】
【氏名】金 亨 柱
(72)【発明者】
【氏名】申 奎 ▲チュル▼
(72)【発明者】
【氏名】王 賢 正
(72)【発明者】
【氏名】李 在 庸
(72)【発明者】
【氏名】李 憲 熙
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085537(JP,A)
【文献】特開2019-112516(JP,A)
【文献】特開2019-086743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-54
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱粒子
、硬化性モノマー
および量子ドットを含むインク組成物であって、
前記インク組成物全100重量%に対して、前記散乱粒子を0.5~20重量%、および前記硬化性モノマーを40~98重量%含み、
前記散乱粒子がTiO
2
であり、
前記TiO
2
は、Al、Si、Zr、Zn、および有機物から選択される1種以上の成分で表面処理したものであり、
前記硬化性モノマーは、2個の官能基を有する化学式1および化学式2で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含むものであ
り、
前記量子ドットは、ポリエチレングリコール系リガンド層を含むものであり、
前記ポリエチレングリコール系リガンド層は、化学式4a~4cおよび化学式5aで表される化合物の中から選択される1種以上を含むものである、インク組成物。
【化1】
(前記化学式1において、R
1は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
【化2】
(前記化学式2において、R
2は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
【化4a】
【化4b】
【化4c】
(前記化学式4a~4cにおいて、
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、カルボキシル基、フェニル基、またはチオール基で置換されているか置換されていないC1-C20のアルキル基であり、前記R’とR’’は、同時に、水素原子、フェニル基、または置換されていないC1-C20のアルキル基ではなく、
R
a
は、置換もしくは非置換のC1-C22のアルキル基、または置換もしくは非置換のC4-C22のアルケニル基であり、
nは、1~20の整数であり、
p、qは、それぞれ独立して、1~100の整数であり、
rは、1~10の整数である。)
【化5a】
(前記化学式5aにおいて、
R
c
は、置換もしくは非置換のC1-C22のアルキル基、または置換もしくは非置換のC4-C22のアルケニル基であり、
R
d
は、置換もしくは非置換のC1-C22のアルキレン基、置換もしくは非置換のC3-C8のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換のC6-C14のアリーレン基であり、
AおよびBは、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換のC1-C22のアルキレン基、-O-、-NR
e
-、または-S-であり、
Xは、カルボキシル基、リン酸基、チオール基、アミン基、テトラゾール基、イミダゾール基、ピリジン基、またはリポアミド基であり、
R
e
は、置換もしくは非置換のC1-C22のアルキル基、または置換もしくは非置換のC4-C22のアルケニル基であり、
uは、1~100の整数である。)
【請求項2】
前記TiO
2と前記表面処理成分の重量比が92:8~99:1である、請求項
1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記インク組成物は
、分散剤、光重合開始剤、および添加剤からなる群より選択される1種以上をさらに含むものである、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記量子ドットは、非カドミウム系量子ドットである、請求項
1に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記硬化性モノマーは、下記化学式3で表される化合物をさらに含むものである、請求項1に記載のインク組成物。
【化3】
(前記化学式3において、R
3は、水素またはメチル基であり、Aは、-CH
2-CH
2-O-または-CH
2-CH(CH
3)-O-である。)
【請求項6】
前記硬化性モノマーは、水酸基含有(メタ)アクリレートをさらに含むものである、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートは、水酸基価が200~300mgKOH/gであり、粘度が50cP未満である、請求項
6に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記硬化性モノマーの固形分を基準として、前記化学式1および化学式2で表される化合物の含有量が5重量%~40重量%である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記インク組成物は、無溶剤型である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のインク組成物の硬化物を用いて製造された光散乱画素。
【請求項11】
請求項
10に記載の光散乱画素を含むカラーフィルタ。
【請求項12】
請求項
11に記載のカラーフィルタを含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、これを用いて製造された画素、前記画素を含むカラーフィルタおよび前記カラーフィルタを備える画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、工程の効率性および経済性を考慮して好まれる手段はインクジェット印刷である。インクジェット印刷は、ノズルを基材に接触させずにインク液滴が微細なノズルを通して基材上に噴射される非衝撃式印刷技術で、工程の単純化および優れた経済的効果を有する。
【0003】
しかし、インクジェット印刷において散乱粒子または量子ドットを含む場合、散乱粒子および/または量子ドットの凝集現象による問題が発生する。具体的には、散乱粒子および/または量子ドットの場合、顔料または染料として用いられる着色剤より沈殿および凝集現象が発生しやすい。したがって、散乱粒子および/または量子ドットはよく沈殿および凝集され、インクジェットシステムのノズルを詰まらせる問題を発生させる。
【0004】
そこで、大韓民国公開公報第10-2017-0084107号のような従来技術は、インク組成物を2液型で製造し、使用前に混合して使用する方法を考案した。しかし、このような2液型で製造する場合、工程が複雑になり、使用直前に混合して使用しなければならないため、混合後の再使用が不可能で経済性が低下する問題が発生した。また、アクリレート樹脂を用いる従来技術の組成物では、粘度が高くてノズル詰まりが発生し、安定した吐出のために粘度が低いアルキルアクリレートモノマーのみを用いると、密着力が著しく低下する問題が発生した。
【0005】
したがって、本発明は、上記の問題を解決するためになされた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開公報第10-2017-0084107号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を改善するためのものであって、インクジェット工程の後、インク組成物のブリトル(brittle)な特性から下部基材と剥離が起こりやすい現象が著しく改善されて密着力に優れ、製造された塗膜の浮き上がりやクラックが発生せず、粘度が低くてインクジェッティング工程で頻繁に発生するノズル詰まり現象なく連続してジェッティング可能なインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、散乱粒子および硬化性モノマーを含むインク組成物であって、前記硬化性モノマーは、2個の官能基を有する化学式1および化学式2で表される化合物のうちの1種以上を含むものである、インク組成物を提供する。
【0009】
【0010】
(前記化学式1において、R1は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
【0011】
【0012】
(前記化学式2において、R2は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
また、本発明は、上述したインク組成物の硬化物を用いて製造された光散乱画素を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、上述した光散乱画素を含むカラーフィルタを提供する。
尚、本発明は、上述したカラーフィルタを含む画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、特定の構造を有する硬化性モノマーを含むことにより、インクジェット工程の後、インク組成物のブリトル(brittle)な特性から下部基材と剥離が起こりやすい現象が著しく改善されて密着力に優れ、製造された塗膜の浮き上がりやクラックが発生せず、粘度が低くてインクジェッティング工程で頻繁に発生するノズル詰まり現象なく連続してジェッティング可能なインク組成物を提供する効果を有する。
【0015】
さらに、長期保管時にも粘度の変化がほとんどなくて粘度安定性に優れ、インクジェット設備への適用時、指定された位置に正確にインクを吐出可能でインクジェッティング誤着弾を最小化できるインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、散乱粒子および/または量子ドットを含むインク組成物であって、インクジェット工程への導入時、密着力が著しく改善された効果を達成可能であり、特に、表面が改質された散乱粒子を用いることにより、長期保管時にも粘度安定性を確保することができ、インクジェッティング誤着弾を最小化する効果を極大化することができる。
【0017】
具体的には、本発明は、散乱粒子および硬化性モノマーを含むインク組成物であって、前記硬化性モノマーは、化学式1および化学式2で表される化合物からなる群より選択される1種以上を含むものである、インク組成物に関する。
【0018】
【0019】
(前記化学式1において、R1は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
【0020】
【0021】
(前記化学式2において、R2は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
散乱粒子
本発明において、散乱粒子は、インク組成物の光特性を向上させる役割を果たすものであって、通常の無機材料を用いることができ、好ましくは、平均粒径が50~1000nmの金属酸化物を含むことができる。前記散乱粒子は、分散液の形態で組成物に含まれる。
【0022】
前記金属酸化物は、Ti、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Mo、Cs、Ba、La、Hf、W、Tl、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Sb、Sn、Zr、Nb、Ce、Ta、In、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1種の金属を含む酸化物であってもよいが、これに限定されない。具体的には、前記散乱粒子としては、TiO2、Al2O3、SiO2、ZnO、ZrO2、BaTiO3、Ta2O5、Ti3O5、ITO、IZO、ATO、ZnO-Al、Nb2O3、SnO、MgO、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上の金属酸化物を含むことができ、TiO2を含むことが最も好ましい。
【0023】
一実施形態において、散乱粒子として表面処理されたTiO2を使用することができ、前記TiO2は、Al、Si、Zr、Zn、および有機物から選択される1種以上の成分で表面処理したものが好ましく、この時、前記表面処理成分のうちAlは必須成分として含まれることがさらに好ましい。必要な場合、アクリレートなどの不飽和結合を有する化合物で表面処理された材質も使用可能である。インク組成物に散乱粒子が含まれる場合、連続ジェッティング性やジェッティング誤着弾特性の低下を引き起こすことがあるが、表面改質された散乱粒子を用いる場合、優れた光特性効果を得ながらも連続ジェッティング性およびジェッティング誤着弾特性を改善することができる。
【0024】
また、表面処理されたTiO2において、TiO2と表面処理成分の含有量比率は、重量比で90:10~99:1であってもよく、92:8~99:1であることが最も好ましい。前記重量比を満たす場合、長期保管時にも粘度安定性に優れ、インクジェッティング時における誤着弾を最小化できる効果が得られる。
【0025】
前記散乱粒子は、50~1000nmの平均粒径を有することができ、好ましくは100~500nmの範囲のものを用いる。さらに好ましくは150~300nmの範囲であるのが良い。散乱粒子の大きさが上述した範囲を満たす場合、量子ドットやバックライト(BLU)から放出された光の十分な散乱効果を提供可能であり、インク組成物中に沈む問題が生じることなく均一な塗膜の表面が得られるという点で好ましい。
【0026】
本発明において、平均粒径とは、数平均粒径であってもよいし、例えば、電界放出走査電子顕微鏡(FE-SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)によって観察した像から求められる。具体的には、FE-SEMまたはTEMの観察画像からいくつかのサンプルを抽出し、これらサンプルの直径を測定して算術平均した値として得ることができる。
【0027】
前記散乱粒子は、前記インク組成物の総重量に対して0.5~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは1~10重量%含まれる。
【0028】
前記散乱粒子が上述した範囲内に含まれる場合には、発光強度増加効果が極大化され、散乱効果が十分で発光強度の確保が可能であり、散乱特性がしきい範囲を超えて発光された光を遮断することにより、発光強度低下の問題を防止できるという点で好ましい。
【0029】
硬化性モノマー
本発明のインク組成物は、硬化性モノマーとして、化学式1および化学式2で表される化合物のうちの1種以上を含むことを特徴とし、必要に応じて、化学式1および/または2で表される化合物のほか、他の硬化性モノマーをさらに含んでもよい。インク組成物に本発明に係る硬化性モノマーを用いることにより基材との密着性が向上し、散乱粒子によって低下しうる連続ジェッティング性およびジェッティング誤着弾特性も改善することができる。
【0030】
本発明において、硬化性モノマーは、2個の官能基を有する化学式1および化学式2で表される化合物のうちの1種以上を含むことにより、低い粘度でノズル詰まりなくインクジェット工程が可能であり、ジェッティングされたインク組成物と基材との優れた密着力効果を有することができる。
【0031】
従来のアルキルアクリレートモノマーを用いると、塗膜自体がブリトル(brittle)で壊れやすくてよく割れ、下部基材との密着力が著しく低下する問題が発生し、窮極的に、画素または画像表面装置において下部基材とのインク層間の浮き上がりやクラックが発生して量子ドットの光特性や透過率の低下をもたらす。そこで、本発明は、化学式1および化学式2で表される化合物のうちの1種以上を含むことにより、低い粘度でノズル詰まりなくインクジェット工程が可能な効果を有することができる。
【0032】
【0033】
前記化学式1において、R1は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。
【0034】
【0035】
前記化学式2において、R2は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。
【0036】
前記化学式1で表される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート(polyethylene glycol 200 diacrylate)、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート(polyethylene glycol 400 diacrylate)、ポリエチレングリコール600ジ(メタ)アクリレート(polyethylene glycol 600 diacrylate)などが挙げられる。
【0037】
前記化学式2で表される化合物の具体例としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(Dipropylene glycol diacrylate)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(Tripropylene glycol diacrylate)、ポリプロピレングリコール100ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール700ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0038】
また、硬化性モノマーとして、化学式1および/または2で表される化合物のほか、他の硬化性モノマーをさらに含む場合、全体硬化性モノマーの固形分を基準として、前記化学式1および/または2で表される化合物は5~40重量%含まれてもよく、好ましくは5~25重量%含まれることが好ましい。前記含有量範囲に含まれる場合、長期保管時に粘度安定性が向上可能であり、インクジェッティング時における誤着弾を低減することができる。
【0039】
本発明において、硬化性モノマーは、下記化学式3で表される化合物をさらに含むことができる。下記化学式3で表される単官能モノマーを含むことにより、インクジェット工程の後、インク組成物と基材との密着性をより一層向上させることができ、量子ドットが含まれたインク組成物の場合、光特性を向上させる効果が現れる。
【0040】
【0041】
前記化学式3において、R3は、水素またはメチル基であり、Aは、-CH2-CH2-O-(エチレンオキシド)または-CH2-CH(CH3)-O-(プロピレンオキシド)である。
【0042】
前記化学式3で表される化合物の2-(メタ)アクリロイルオキシエチルスクシネート、モノ(2-アクリロイルエチル)スクシネート(Mono(2-acryloyloxyethyl)Succinate)などが挙げられる。
【0043】
前記化学式3の単官能モノマーがさらに含まれる場合、硬化性モノマーを、総100重量%を基準とした時、0.5~30重量%含まれる。
【0044】
本発明において、硬化性モノマーは、基材との密着性特性をさらに改善できるという点から、水酸基含有(メタ)アクリレートをさらに含むことができる。
【0045】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートは、水酸基価が200~300mgKOH/gであり、粘度が50cP未満の場合により好ましい。前記水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、グリセロール(メタ)アクリレート(例えば、Glycerol diacrylate)などが挙げられる。
【0046】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートがさらに含まれる場合、硬化性モノマーを、総100重量%を基準とした時、0.5~30重量%含まれる。
【0047】
前記化学式3のモノマーおよび/または水酸基含有(メタ)アクリレートがさらに含まれる場合、インクジェットプリンティング工程でコーティングされる画素は、基材との剥離やクラックなく密着性に優れた特性を改善させることができる。化学式3のモノマーおよび/または水酸基含有(メタ)アクリレートが過度に含まれる場合、硬化がまともに行われなかったり、むしろ密着力がやや低下することがあり、含有量の増加による粘度の増加でジェッティング性が減少しうるため、含まれる場合、上述した範囲内に含まれることが好ましい。
【0048】
前記硬化性モノマーは、前記インク組成物全100重量%に対して40~98%含まれ、より具体的には、量子ドットを含むインク組成物の場合、40~70重量%、好ましくは50~60重量%含まれ、量子ドットを含まずに散乱粒子のみを含むインク組成物の場合、80~95重量%含まれる。
【0049】
前記硬化性モノマーが前記範囲内に含まれる場合、インクジェットプリンティング工程でノズル詰まりなく連続したジェッティングや画素部の密着性の面で好ましいという利点がある。また、上述した範囲に含まれる場合、画素部の密着性がやや低下して、インクジェット工程の後に塗膜のクラックや剥離が起こる問題を防止可能であり、量子ドットおよび/または散乱粒子の含有量が減少して塗膜の光特性や透過率がやや低下しうる問題も改善可能なので、好ましい。
【0050】
量子ドット
前記量子ドットは、光による刺激で発光できるものであれば特に限定しないが、非カドミウム系であることが好ましく、II-VI族半導体化合物、III-V族半導体化合物、IV-VI族半導体化合物、およびIV族元素、またはこれを含む化合物から選択される1種以上を使用することができる。前記II-VI族半導体化合物は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;並びにCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択される1種以上であってもよく、前記III-V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、およびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、およびこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;並びにGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、およびこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0051】
前記IV-VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;並びにSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0052】
前記IV族元素またはこれを含む化合物は、Si、Ge、およびこれらの混合物からなる群より選択される元素化合物;並びにSiC、SiGe、およびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これに限定されない。
【0053】
前記量子ドットは、均質な(homogeneous)単一構造;コア-シェル(core-shell)構造、グラジエント(gradient)構造などのような二重構造;またはこれらの混合構造であってもよい。例えば、前記コア-シェル(core-shell)の二重構造において、それぞれのコア(core)とシェル(shell)をなす物質は、前記言及された互いに異なる半導体化合物からなってもよい。より具体的には、前記コアは、lnP、ZnS、ZnSe、PbSe、AgInZnS、およびZnOから選択される1種以上の物質を含むことができるが、これに限定されるものではない。前記シェルは、ZnSe、ZnS、ZnTe、PbS、TiO、SrSe、およびHgSeから選択される1種以上の物質を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0054】
例えば、コア-シェル構造の量子ドットは、InP/ZnS、InP/GaP/ZnS、InP/GaP/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、InP/ZnSeTe/ZnS、およびInP/MnSe/ZnSなどが挙げられる。
【0055】
前記量子ドットは、湿式化学工程(wet chemical process)、有機金属化学蒸着工程(MOCVD、metal organic chemical vapor deposition)、または分子線エピタキシ工程(MBE、molecular beam epitaxy)によって合成できるが、これに限定されるものではない。
【0056】
好ましくは、コア-シェル構造の量子ドットは、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/GaP/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、InP/ZnSeTe/ZnS、およびInP/MnSe/ZnSなどが挙げられる。
【0057】
前記量子ドットは、湿式化学工程(wet chemical process)、有機金属化学蒸着工程(MOCVD、metal organic chemical vapor deposition)、または分子線エピタキシ工程(MBE、molecular beam epitaxy)によって合成できるが、これに限定されるものではない。好ましくは、湿式化学工程(wet chemical process)によって合成する方が、より光特性に優れた量子ドットを得ることができる。
【0058】
前記湿式化学工程とは、有機溶剤に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法である。結晶が成長する時、有機溶剤が自然に量子ドット結晶の表面に配位されて分散剤の役割を果たして結晶の成長を調節するため、有機金属化学蒸着工程や分子線エピタキシのような気相蒸着法よりも容易かつ割安な工程によりナノ粒子の成長を制御できるため、前記湿式化学工程を用いて前記量子ドットを製造することが好ましい。
【0059】
湿式化学工程により量子ドットを製造する場合、量子ドットの凝集を防止し、量子ドットの粒子サイズをナノ水準に制御するために有機リガンドが使用される。このような有機リガンドとしては、一般的にオレイン酸が使用できる。
【0060】
本発明の一実施形態において、量子ドットは、ポリエチレングリコール系化合物を含むリガンド層を有するものであってもよい。前記ポリエチレングリコール系化合物は、より具体的には、下記化学式4a~4cおよび5aの構造で表されてもよい。
【0061】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットは、表面上に下記化学式4a~4cおよび化学式5aで表される化合物のうちの1つ以上を含むリガンド層を有するものである。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
前記化学式4a~4cにおいて、
R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシル基;フェニル基;またはチオール基で置換されているか置換されていないC1-C20のアルキル基であり、
R’とR’’は、同時に、水素原子;フェニル基;または置換されていないC1-C20のアルキル基ではなく、
Raは、置換もしくは非置換のC1-C22のアルキル基、または置換もしくは非置換のC4-C22のアルケニル基であり、
nは、1~20の整数であり、
p、qは、それぞれ独立して、1~100の整数であり、
rは、1~10の整数である。
【0066】
また、本発明の量子ドットは、一実施形態において、下記化学式5aの構造を含むリガンド層を含むものであってもよい。
【0067】
【0068】
前記化学式5aにおいて、Rcは、置換もしくは非置換のC1-C22のアルキル基、または置換もしくは非置換のC4-C22のアルケニル基であり、
Rdは、置換もしくは非置換のC1-C22のアルキレン基、置換もしくは非置換のC3-C8のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換のC6-C14のアリーレン基であり、
AおよびBは、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換のC1-C22のアルキレン基、-O-、-NRe-、または-S-であり、
Xは、カルボキシル基、リン酸基、チオール基、アミン基、テトラゾール基、イミダゾール基、ピリジン基、またはリポアミド基であり、
Reは、置換もしくは非置換のC1-C22のアルキル基、または置換もしくは非置換のC4-C22のアルケニル基であり、
uは、1~100の整数である。
【0069】
本明細書で使用されるC1-C20のアルキル基は、炭素数1~20個からなる直鎖状または分枝状の1価の炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、n-デシル、n-ウンデシルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本明細書で使用されるC1-C22のアルキル基は、炭素数1~22個からなる直鎖状または分枝状の1価の炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドコサニルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
本明細書で使用されるC4-C22のアルケニル基は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭素数4~22個からなる直鎖状または分枝状の1価の不飽和炭化水素を意味し、例えば、ブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン、ヘプテニレン、オクテニレン、ノネニレン、デセニレン、ウンデセニレン、ドデセニレン、トリデセニレン、テトラデセニレン、ペンタデセニレン、ヘキサデセニレン、ヘプタデセニレン、オクタデセニレンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
前記C1-C20のアルキル基、C1-C22のアルキル基、およびC4-C22のアルケニル基は、1つまたはそれ以上の水素がC1-C6のアルキル基、C2-C6のアルケニル基、C2-C6のアルキニル基、C3-C10のシクロアルキル基、C3-C10のヘテロシクロアルキル基、C3-C10のヘテロシクロアルキルオキシ基、C1-C6のハロアルキル基、C1-C6のアルコキシ基、C1-C6のチオアルコキシ基、アリール基、アシル基、ヒドロキシ、チオ(thio)、ハロゲン、アミノ、アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルバモイル、シアノ、ニトロなどで置換されていてもよい。
【0073】
本発明の前記化学式4aで表される化合物は、量子ドットの光特性および分散性と、低粘度実現の面から、R’がチオール基で置換されているか置換されていないC1-C20のアルキル基であり、R’’がカルボキシル基である化合物であってもよい。
【0074】
本発明の一実施形態において、前記化学式4aで表される化合物の具体例としては、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(WAKO社)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(WAKO社)、{2-[2-(カルボキシメトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸(WAKO社)、2-[2-(ベンジルオキシ)エトキシ]酢酸、(2-(カルボキシメトキシ)エトキシ)酢酸(WAKO社)、(2-ブトキシエトキシ)酢酸(WAKO社)、カルボキシ-EG6-ウンデカンチオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本発明の前記化学式4bで表される化合物は、量子ドットの光特性および分散性と、低粘度実現の面から、Raは、C1-C22のアルキル基、またはC4-C20のアルケニル基であり、pは、1~50の整数である化合物であってもよい。特に、前記化学式4bにおいて、pが前記範囲を超える場合、光変換インク組成物の粘度に影響を及ぼすことがある。
【0076】
前記化学式4bで表される化合物は、チオール(thiol)基を有し、チオール基が量子ドットの表面に結合することができる。チオール基の場合、カルボン酸など通常の量子ドットが持つリガンド層化合物対比の、量子ドットの表面との結合力に優れ、量子ドットのダングリングボンド(dangling bond)のような表面欠点による消光および表面酸化による消光を抑制して、光特性(発光特性)と信頼性を向上させるという利点がある。
【0077】
本発明の一実施形態において、前記化学式4bで表される化合物は、量子ドットの光特性および分散性と、低粘度実現の面から、下記化学式4-1~4-6で表される化合物から選択される1つ以上の化合物であってもよい。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
本発明の前記化学式4cで表される化合物は、量子ドットの光特性および分散性と、低粘度実現の面から、qは、1~50の整数であり、rは、1~8の整数である化合物であってもよい。特に、前記化学式4cにおいて、qおよびrが前記範囲を超える場合、光変換インク組成物の粘度に影響を及ぼすことがある。
【0085】
前記化学式4cで表される化合物は、チオール(thiol)基を有し、チオール基が量子ドットの表面に結合することができる。チオール基の場合、カルボン酸など通常の量子ドットが持つリガンド層化合物対比の、量子ドットの表面との結合力に優れ、量子ドットのダングリングボンド(dangling bond)のような表面欠点による消光および表面酸化による消光を抑制して、光特性(発光特性)と信頼性を向上させるという利点がある。
【0086】
本発明の一実施形態において、前記化学式4cで表される化合物は、量子ドットの光特性および分散性と、低粘度実現の面から、下記化学式4-7~4-12で表される化合物から選択される1つ以上の化合物であってもよい。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
本発明の前記化学式4a~4cで表される化合物は有機リガンドであって、量子ドットの表面に配位結合されて量子ドットを安定化させる役割を果たすことができる。
【0094】
通常、製造された量子ドットは、表面上にリガンド層を有することが一般的であり、製造直後のリガンド層は、オレイン酸(oleic acid)、ラウリン酸(lauric acid)などからなってもよい。この場合、本発明に係る量子ドットが前記化学式4a~4cで表される化合物をリガンド層として含む場合対比の、量子ドットとのより弱い結合力によって、量子ドットの表面の非結合欠陥による理由から、表面保護効果が低下することがある。また、オレイン酸の場合、高揮発性化合物(VOC;volatile organic compound)であるn-ヘキサンのような脂肪族炭化水素系溶剤、ベンゼンのような芳香族炭化水素系溶剤によく分散するが、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)のような溶剤に分散性が不良である。本発明に係る量子ドットは、前記化学式4a~4cで表される化合物をリガンド層として含み、PGMEAのような溶剤に分散性が非常に優れ、光特性を向上させる効果が現れる。
【0095】
また、前記量子ドットは、前記化学式4a~4cで表される化合物のうちの1つ以上のポリエチレングリコール系リガンドを含むことにより、溶剤なしに、下記に記述する硬化性モノマーだけでも良好な分散特性を示すことができる。
【0096】
前記化学式4a~4cで表される化合物は、量子ドットの総表面積に対して5%以上の表面を覆っていてもよい。
【0097】
この時、前記化学式4a~4cで表される化合物の含有量は、量子ドット1モルに対して0.1~10モルであってもよい。
【0098】
前記化学式4a~4cで表される化合物を含むリガンド層は、0.1nm~2nmの厚さ、例えば、0.5nm~1.5nmの厚さを有することができる。
【0099】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットは、ナノサイズの半導体物質を称することができる。原子が分子をなし、分子はクラスターという小さい分子の集合体を構成してナノ粒子をなすが、このようなナノ粒子が半導体特性を呈している時、量子ドットという。前記量子ドットは、外部からエネルギーを受けて励起状態に至ると、前記量子ドットの自ら該当するエネルギーバンドギャップによるエネルギーを放出する。例えば、本発明の光変換インク組成物はこのような量子ドットを含むことにより、入射した青色光を、緑色光および赤色光に光変換可能である。
【0100】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットの製造過程で使用されたオレイン酸は、リガンド交換方法により、前記化学式4a~化学式4cのリガンドに代替される。
【0101】
前記リガンド交換は、元々の有機リガンド、すなわちオレイン酸を有する量子ドットを含む分散液に、交換しようとする有機リガンド、すなわち化学式4a~化学式4cの化合物を添加し、これを常温~200℃で30分~3時間撹拌して、化学式4a~化学式4cの化合物が結合した量子ドットを得ることにより行われる。必要に応じて、前記化学式4a~化学式4cの化合物が結合した量子ドットを分離し精製する過程を追加的に行ってもよい。
【0102】
前記量子ドットが追加的に含まれる場合、インク組成物全100重量%に対して1~60重量%、好ましくは5~50重量%含まれる。前記量子ドットが前記範囲内に含まれる場合、発光効率に優れ、コーティング層の信頼性に優れるという利点がある。前記量子ドットが上述した範囲に含まれる場合、緑色光および赤色光の光変換効率に優れ、インク組成物の粘度が高くなってジェッティング性が低下する問題を防止できるという点で好ましい。
【0103】
分散剤
本発明において、分散剤は、酸価10~90mgKOH/gおよびアミン価10~90mgKOH/gを満たす分散剤を意味する。本発明の分散剤は、酸価とアミン価を同時に満たすことにより、効果的に散乱粒子とモノマーを同時に分散剤に付着してインク組成物に優れた分散性を与える役割を果たす。
【0104】
より具体的には、本願発明において含まれる分散剤は、酸価10~90mgKOH/gおよびアミン価10~90mgKOH/gの範囲であってもよいし、酸価10~60mgKOH/gおよびアミン価10~60mgKOH/gの範囲がより好ましい。分散剤が上述した範囲の酸価およびアミン価を同時に満たす場合、インクジェット工程においてピクセル表面に散乱粒子のかたまり現象が著しく改善される効果を有し得るという点で好ましい。
【0105】
本発明は、上述した範囲の酸価およびアミン価を満たす分散剤であれば、種類に制限なく含むことができる。しかし、分散液の保管安定性の面から、Polyethylene(PE)またはPolyimine(PI)系の分散剤を含む方がより好ましい。
【0106】
前記分散剤は、前記インク組成物の総重量%に対して0.01~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは0.5~10重量%含まれる。
【0107】
光重合開始剤
本発明において、光重合開始剤は、インク組成物のラジカル反応を開始させて、硬化を起こし感度を向上させる役割を果たす。開始剤は、自発光組成物に一般的に使用される光重合開始剤であって、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、チオキサントン系、オキシム系、ベンゾイン系、ビイミダゾール系化合物などを使用することができる。
【0108】
さらに、本発明では、光重合開始補助剤を使用することができる。光重合開始補助剤は、光開始剤と組み合わせて使用される場合があり、光開始剤によって重合が開始された光重合性化合物の重合を促進させるために使用される化合物である。光重合開始補助剤としては、アミン系化合物、アルコキシアントラセン系化合物、チオキサントン系化合物、カルボン酸系化合物、およびスルホン酸系化合物などが挙げられる。
【0109】
アミン系化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称、ミヒラーズケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられ、なかでも、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0110】
アルコキシアントラセン系化合物としては、例えば、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセンなどが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0111】
前記カルボン酸化合物の具体例としては、フェニルチオ酢酸、メチルフェニルチオ酢酸、エチルフェニルチオ酢酸、メチルエチルフェニルチオ酢酸、ジメチルフェニルチオ酢酸、メトキシフェニルチオ酢酸、ジメトキシフェニルチオ酢酸、クロロフェニルチオ酢酸、ジクロロフェニルチオ酢酸、N-フェニルグリシン、フェノキシ酢酸、ナフチルチオ酢酸、N-ナフチルグリシン、ナフトキシ酢酸などの芳香族ヘテロ酢酸類が挙げられる。
【0112】
本発明において、光重合開始剤は、単独でまたは複数を組み合わせて使用しても支障がない。また、光重合開始補助剤として市販のものを使用することができ、市販の光重合開始補助剤としては、例えば、商品名「EAB-F」[製造元:保土谷化学工業株式会社]などが挙げられる。
【0113】
これらの光重合開始補助剤を使用する場合、その使用量は、光開始剤1モルあたり、通常10モル以下、好ましくは0.01~5モルが好ましい。前記範囲にあれば、自発光組成物の感度がより高くなり、この組成物を用いて形成される光変換積層基材の生産性が向上する傾向があるので、好ましい。
【0114】
前記光重合開始剤は、インク組成物の総重量に対して0.1~3.0重量%、好ましくは0.5~2.0重量%含まれる。前記範囲内に光重合開始剤が含まれる場合、パターン形成が良好になり、自発光組成物が高感度化され、この組成物を用いて形成した画素部の強度や、この画素部の表面における平滑性が良好になる傾向があるので、好ましい。
【0115】
添加剤
本発明の一実施形態に係るインク組成物は、上記の成分のほか、塗膜の平坦性または密着性を増進させるために、界面活性剤、シランカップリング剤、密着促進剤のような添加剤を追加的に含んでもよい。
【0116】
本発明に係るインク組成物が前記界面活性剤を含む場合、塗膜の平坦性が向上できるという利点がある。例えば、前記界面活性剤は、F-554、BM-1000、BM-1100(BM Chemie社)、フロラードFC-135/FC-170C/FC-430(住友スリーエム(株))、SH-28PA/-190/-8400/SZ-6032(東レシリコーン(株))などのフッ素系界面活性剤を使用することができるが、これに限定されない。
【0117】
前記密着促進剤は、基板との密着性を高めるために添加できるものであって、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される反応性置換基を有するシランカップリング剤を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0118】
この他にも、本発明に係るインク組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤のような添加剤をさらに含んでもよいし、前記添加剤は同じく、本発明の効果を損なわない範囲で当業者が適宜追加して使用可能である。
【0119】
前記添加剤がさらに含まれる場合、前記インク組成物全100重量%に対して0.05~10重量%、具体的には0.1~10重量%、さらに具体的には0.1~5重量%使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0120】
本発明のインク組成物は、連続工程性の面から、無溶剤型の場合に最も好ましい。本明細書における無溶剤型は、インク組成物溶剤を全組成物100重量%に対して5重量%以下の量で含むことができることを意味する。より具体的には、本発明のインク組成物は、溶剤を含まない方がより好ましい。具体的には、本発明の一実施形態に係るインク組成物は無溶剤型で、溶剤の含有量が5重量%以下の量で低くても量子ドットの光特性および分散性に優れ、低粘度の実現が可能である。また、本発明の一実施形態に係るインク組成物は、溶剤の含有量が5重量%以下の量で低くて、ノズルの入口における溶剤の蒸発によるノズル詰まりが発生せず、連続工程に有利である。
【0121】
また、本発明の一実施形態に係るインク組成物は、樹脂成分を実質的に含まず、含むとしてもインク組成物全100重量%に対して0.5重量%以内で含む。本発明の一実施形態に係るインク組成物は、樹脂成分を含まないことにより低い粘度を実現可能で、インクのノズルジェッティング特性に優れる。
【0122】
本発明の一実施形態は、上述したインク組成物の硬化物を含む画素に関する。
また、本発明の一実施形態は、上述した画素を含むカラーフィルタに関する。
【0123】
本発明に係るインク組成物のパターン形成方法は、上述したインク組成物をインクジェット方式で所定領域に塗布するステップと、前記塗布されたインク組成物を硬化させるステップとを含んでなる。
【0124】
まず、本発明のインク組成物をインクジェット噴射機に注入して基板の所定領域にプリンティングする。
【0125】
前記基板は限定はなく、一例として、ガラス基板、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、芳香族ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板、Al基板、GaAs基板などの、表面が平坦な基板が挙げられる。これらの基板は、シランカップリング剤などの薬品による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング処理、スパッタリング処理、気相反応処理、真空蒸着処理などの前処理を施すことができる。基板としてシリコン基板などを用いる場合、シリコン基板などの表面には電荷結合素子(CCD)、薄膜トランジスタ(TFT)などが形成できる。また、隔壁マトリックスが形成されていてもよい。
【0126】
インクジェット噴射機の一例であるピエゾインクジェットヘッドから噴射されて基板上に適切な相(phase)を形成するために、粘度、流動性、量子ドット粒子などの特性がインクジェットヘッドとバランスをとらなければならない。本発明で用いられたピエゾインクジェットヘッドは限定されないが、約10~100pL、好ましくは約20~40pLの液滴サイズを有するインクを噴射する。
【0127】
本発明のインク組成物の粘度は、約3~30cPが適当であり、より好ましくは7~20cPの範囲で形成される方が、ジェッティング性の向上の面で最も好ましい。
【0128】
本発明の一実施形態に係るカラーフィルタは、前記パターン形成方法により形成される着色パターン層を含む。すなわち、カラーフィルタは、基板上に上述したインク組成物を所定のパターンに塗布した後、硬化させて形成される着色パターン層を含むことを特徴とする。カラーフィルタの構成および製造方法は、通常の方法で形成可能である。
【0129】
本発明の一実施形態は、上述したカラーフィルタが備えられた画像表示装置に関する。
本発明のカラーフィルタは、通常の液晶表示装置(LCD)だけでなく、電界発光表示装置(EL)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出表示装置(FED)、有機発光素子(OLED)などの各種画像表示装置に適用可能である。
【0130】
本発明の画像表示装置は、上述したカラーフィルタを備えたことを除けば、当該技術分野で知られた構成を含む。
【実施例】
【0131】
以下、製造例、実施例、比較例および実験例により本発明をより具体的に説明しようとする。これらの実施例、比較例および実験例は単に本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲はこれらに制限されない。
【0132】
製造例1:リガンド置換量子ドット(A-1)の合成
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)、および1-オクタデセン(1-octadecene)20mLを反応器に入れて、真空下、120℃に加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に切り替えた。280℃に加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)およびトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を迅速に注入して1分間反応させた。
【0133】
亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、およびトリオクチルアミン20mLを反応器に入れて、真空下、120℃に加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に切り替え、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mLを入れて、次いで、トリオクチルホスフィン中のセレン(Se/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温で迅速に冷やした反応溶液にエタノールを入れて遠心分離して得た沈殿を減圧濾過後、減圧乾燥して、InP/ZnSeコア-シェルを形成させた。
【0134】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、およびトリオクチルアミン20mLを反応器に入れて、真空下、120℃に加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に切り替え、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInP/ZnSeコア-シェル溶液2mLを入れて、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温で迅速に冷やした反応溶液にエタノールを入れて遠心分離して得た沈殿を減圧濾過後、減圧乾燥して、InP/ZnSe/ZnSコア-シェル構造の量子ドットをクロロホルムに分散させた。
【0135】
得られたナノ量子ドットの光発光スペクトルの最大発光ピークは535nmであり、量子ドット溶液5mLを遠心分離チューブに入れて、エタノール20mLを入れて沈殿させた。遠心分離により上層液は捨てて、沈殿物に2mLのクロロホルムを入れて量子ドットを分散させた後、0.50gの(2-ブトキシエトキシ)酢酸を入れて、窒素雰囲気下、60℃に加熱しながら1時間反応させた。
【0136】
次いで、反応物に25mLのn-ヘキサンを入れて量子ドットを沈殿させた後、遠心分離を実施して沈殿物を得た。
【0137】
製造例2:リガンド置換量子ドット(A-2)の合成
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)、および1-オクタデセン(1-octadecene)20mLを反応器に入れて、真空下、120℃に加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に切り替えた。280℃に加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)、およびトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を迅速に注入し、5分間反応後、反応溶液を常温で迅速に冷やした。吸収最大波長560~590nmを示した。
【0138】
亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、およびトリオクチルアミン20mLを反応器に入れて、真空下、120℃に加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に切り替え、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mLを入れて、次いで、トリオクチルホスフィン中のセレン(Se/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応後、常温に下げて、InP/ZnSeコア-シェルを形成させた。
【0139】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、およびトリオクチルアミン20mLを反応器に入れて、真空下、120℃に加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に切り替え、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInP/ZnSeコア-シェル溶液2mLを入れて、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温で迅速に冷やした反応溶液にエタノールを入れて遠心分離して得た沈殿を減圧濾過後、減圧乾燥して、InP/ZnSe/ZnSコア-シェル構造の量子ドットを得た後、クロロホルムに分散させた。
【0140】
得られたナノ量子ドットの光発光スペクトルの最大発光ピークは635nmであり、合成された量子ドット溶液5mLを遠心分離チューブに入れて、エタノール20mLを入れて沈殿させた。遠心分離により上層液は捨てて、沈殿物に2mLのクロロホルムを入れて量子ドットを分散させた後、0.65gのカルボキシ-EG6-ウンデカンチオールを入れて、窒素雰囲気下、60℃に加熱しながら1時間反応させた。
【0141】
次いで、反応物に25mLのn-ヘキサンを入れて量子ドットを沈殿させた後、遠心分離を実施して上層液は捨てて沈殿物を得た。
【0142】
製造例3:リガンド置換量子ドット(A-3)の合成
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)、および1-オクタデセン(octadecene)20mLを反応器に入れて、真空下、120℃に加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に切り替えた。
【0143】
280℃に加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)およびトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を迅速に注入して0.5分間反応させた。
【0144】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmoL(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、およびトリオクチルアミン20mLを反応器に入れて、真空下、120℃に加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に切り替え、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mLを入れて、次いで、トリオクチルホスフィン中のセレン(Se/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温で迅速に冷やした反応溶液にエタノールを入れて遠心分離して得た沈殿を減圧濾過後、減圧乾燥して、InP/ZnSeコア-シェルを形成させた。
【0145】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmoL(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、およびトリオクチルアミン20mLを反応器に入れて、真空下、120℃に加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に切り替え、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInP/ZnSeコア-シェル溶液2mLを入れて、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温で迅速に冷やした反応溶液にエタノールを入れて遠心分離して得た沈殿を減圧濾過後、減圧乾燥して、InP/ZnSe/ZnSコア-シェル構造の量子ドットを得た後、クロロホルムに分散させた。固形分は10%に調整した。最大発光波長は520nmであった。
【0146】
合成された量子ドット溶液5mLを遠心分離チューブに入れて、エタノール20mLを入れて沈殿させた。遠心分離により上層液は捨てて、沈殿物に3mLのクロロホルムを入れて量子ドットを分散させた後、1.00gの下記化学式4-1で表されるmPEG5-SH(フューチャーケム社)を入れて、窒素雰囲気下、60℃に加熱しながら1時間反応させた。
【0147】
【0148】
次いで、反応物に25mLのn-ヘキサンを入れて量子ドットを沈殿させた後、遠心分離を実施して上層液は捨てて沈殿物を得た。
【0149】
製造例4:リガンド置換量子ドット(A-4)の合成
製造例3で使用した1.00gのリガンドの代わりに、3.00gの下記化学式4-7で表される化合物を用いたことを除き、製造例3と同様に行った。
【0150】
【0151】
製造例5:散乱粒子分散液(C-1)の製造
散乱粒子としてTiO2と表面処理成分(Al、Si、およびOrganic)を97:3の重量比で表面処理したTiO2(石原社のCR-63、210nm)70.0重量部、分散剤としてDISPERBYK-2001(BYK社製)4.0重量部、およびモノマーtおして1,6-ヘキサンジオールジアクリレート26重量部をビーズミルによって12時間混合および分散して、散乱粒子分散液(C-1)を製造した。
【0152】
製造例6:散乱粒子分散液(C-2)の製造
製造例5で使用した散乱粒子の代わりに、TiO2と表面処理成分(Al)を95:5の重量比で表面処理したTiO2(石原社のCR-60、210nm)を用いたことを除けば、前記製造例5と同様に散乱粒子分散液(C-2)を製造した。
【0153】
製造例7:散乱粒子分散液(C-3)の製造
製造例5で使用した散乱粒子の代わりに、TiO2と表面処理成分(Al、Zr、およびOrganic)を93:7の重量比で表面処理したTiO2(石原社のUT771、250nm)を用いたことを除けば、前記製造例5と同様に散乱粒子分散液(C-3)を製造した。
【0154】
製造例8:散乱粒子分散液(C-4)の製造
製造例5で使用した散乱粒子の代わりに、TiO2と表面処理成分(Al、Si、Zn、およびOrganic)を92:8の重量比で表面処理したTiO2(石原社のPF-742、250nm)を用いたことを除けば、前記製造例5と同様に散乱粒子分散液(C-4)を製造した。
【0155】
製造例9:散乱粒子分散液(C-5)の製造
製造例5で使用した散乱粒子の代わりに、TiO2と表面処理成分(AlおよびSi)を88:12の重量比で表面処理したTiO2(石原社のS-305、250nm)を用いたことを除けば、前記製造例5と同様に散乱粒子分散液(C-5)を製造した。
【0156】
製造例10:散乱粒子分散液(C-6)の製造
製造例5で使用した散乱粒子の代わりに、表面処理しない純粋なTiO2(石原社のPT-301、270nm)を用いたことを除けば、前記製造例5と同様に散乱粒子分散液(C-6)を製造した。
【0157】
実施例1~90および比較例1~8:インク組成物の製造
下記表1~表8の組成でそれぞれの成分を混合して、インク組成物を製造した(重量%)。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
*前記表1~8中、「(B)含有量比率」は、硬化性モノマー(B)の固形分を基準として、化学式1および2で表される化合物の含有量(重量%)を意味する。
【0167】
量子ドットA-1~A-4:それぞれ、製造例1~4で製造された量子ドット
B-1:polyethylene glycol 200 diacrylate(新中村化学社、A-200)
B-2:polyethylene glycol 400 diacrylate(新中村化学社、A-400)
B-3:polyethylene glycol 600 diacrylate(新中村化学社、A-600)
B-4:Polypropylene glycol 100 diacrylate(新中村化学社、APG-100)
B-5:Polypropylene glycol 200 diacrylate(新中村化学社、APG-200)
B-6:Polypropylene glycol 400 diacrylate(新中村化学社、APG-400)
B-7:Polypropylene glycol 700 diacrylate(新中村化学社、APG-700)
B-8:Mono(2-acryloyloxyethyl)Succinate(TCI社)-化学式3
B-9:Glycerol diacrylate(東亜合成社、MT-3560)
B-10:1,6-Haxanediol diacrylate(新中村化学社)
B-11:1,10-Decanediol diacrylate(新中村化学社)
B-12:Propoxylated trimethylolpropane triacrylate(新中村化学社)
C-1:製造例5で製造された散乱粒子分散液-TiO2(石原社、CR-63;粒径210nm;Al、Si、Organic表面処理3%)
C-2:製造例6で製造された散乱粒子分散液-TiO2(石原社、CR-60;粒径210nm;Al表面処理5%)
C-3:製造例7で製造された散乱粒子分散液-TiO2(石原社、UT771;粒径250nm;Al、Zr、Organic表面処理7%)
C-4:製造例8で製造された散乱粒子分散液-TiO2(石原社、PF-742;粒径250nm;Al、Si、Zn、Organic表面処理8%)
C-5:製造例9で製造された散乱粒子分散液-TiO2(石原社、S-305;粒径250nm;Al、Si表面処理12%)
C-6:製造例10で製造された散乱粒子分散液-TiO2(石原社、PT-301;粒径270nm;表面処理0%)
光重合開始剤(E):Irgacure OXE-01(バスフ社)
F-1:フッ素系界面活性剤(F-554、DIC社)
F-2:シランカップリング剤(NSC-02、NIC社)
<実験例>
上記の実施例および比較例で製造されたインク組成物を用いて粘度および連続ジェッティング回数を測定し、10μmの厚さのコーティング層を製造して、光変換効率およびコーティング層の密着性を測定して、その結果は下記表10~13に示した。
【0168】
(1)コーティング層の製造および光変換効率の測定
実施例および比較例で製造されたそれぞれのインク組成物をインクジェット方式で5cm×5cmのガラス基板上に塗布した後、紫外線光源としてg、h、i線をすべて含む1kWの高圧水銀灯を用いて1000mJ/cm2で照射後、180℃の加熱オーブンで30分間加熱してコーティング層を製造した。
【0169】
製造されたコーティング層のうち量子ドットが含まれたコーティング層を青色(blue)光源(XLamp XR-E LED、Royal blue 450、Cree社)の上部に位置させた後、輝度測定器(CAS140CT Spectrometer、Instrument systems社)を用いて光変換効率を下記の数式1を用いて測定し、その結果を下記表10~13に示した。
【0170】
光変換効率(%)が高いほど、優れた輝度を得ることができる。
【0171】
【0172】
(2)粘度
前記インク組成物の粘度は、R型粘度計(VISCOMETER MODEL RE120L SYSTEM、東機産業株式会社製品)を用いて回転数20rpm、温度25℃の条件で測定し、その結果を下記表10~13に示した。
【0173】
(3)連続ジェッティング回数
前記インク組成物をユニジェット社のインクジェットプリンティング設備に充填後、ジェッティングヘッドの温度を40℃に固定した後、1分間インクを吐出後、30分間放置をジェッティングヘッド部のノズル詰まりで吐出されなくなるまで繰り返し行って連続ジェッティング回数を評価し、その結果を下記表10~13に示した。
【0174】
連続ジェッティング回数が増加するほど、連続工程に優れた特性を得ることができる。
(4)コーティング層の密着性の測定
前記インク組成物で製造されたコーティング層で国際標準(ASTM D3359)によるクロスカット試験(Cross-Cut Adhesion Test)を進行させた。
【0175】
ナイフ(Knife)によって、製造されたコーティング層に均一に力を与えながら格子状に切り込みを入れた後、切り込み面にテープを貼って完全に付着するまで擦り、30秒後にテープの端を取って180度の角度に近く引っ張ってテープを除去して、下記表9のような基準によりコーティング層の密着性を評価し、その結果を下記表10~13に示した。
【0176】
【0177】
(5)粘度安定性評価
上記の実施例および比較例のインク組成物をR型粘度計(VISCOMETER MODEL RE120L SYSTEM、東機産業株式会社製品)を用いて、回転数20rpm、温度30℃の条件下、初期粘度および常温で1ヶ月保管、40℃で2週間後に粘度を測定した。これにより計算された粘度変化率から、以下の評価基準により粘度安定性を評価し、その結果を下記表10~13に示した。
【0178】
<粘度安定性評価基準>
◎:粘度変化率103%以下
○:粘度変化率103%超過105%以下
△:粘度変化率105%超過110%以下
×:粘度変化率110%超過
(6)ジェッティング誤着弾評価
上記の実施例1~70および比較例1~25のインク組成物をユニジェット社のインクジェットプリンティング設備に充填後、ジェッティングヘッドの温度を40℃に固定した後、基板上に1列に30dropletのインクを吐出して、吐出が指定された位置に行われないdropletを確認して、以下の評価基準によりジェッティング誤着弾を評価して、その結果を表10~13に示した。
【0179】
<ジェッティング誤着弾評価基準>
◎:誤着弾なし
○:誤着弾1droplet超過3droplet以下
△:誤着弾3droplet超過5droplet以下
×:誤着弾5droplet超過
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
上記の実験結果から確認できるように、特定の化学構造式を有する硬化性モノマーを含む実施例1~90の場合、ジェッティング性、密着性能、粘度安定性およびジェッティング誤着弾特性に優れていることを確認することができた。
【0185】
具体的には、散乱粒子としてTiO2と表面処理成分を92:8~99:1の重量比範囲で表面処理したTiO2を用いた実施例1~70の場合、粘度安定性および/またはジェッティング誤着弾特性がさらに向上することを確認することができ、さらに、硬化性モノマーの固形分を基準として、本発明の化学式1および/または2の硬化性モノマーの含有量が5~40%の含有量比率を満たす実施例57~70の場合、より優れた粘度安定性およびジェッティング誤着弾特性を確保することができた。
【0186】
また、実施例31~33および35~38の場合、化学式3または水酸化基を含む(メタ)アクリレートをさらに含むことによって、より優れた密着力を確保可能であることを確認した。
【0187】
一方、比較例1~8の場合、溶剤を含まずにモノマーのみを含むことでジェッティング効果および低い粘度を有することができたが、本発明の化学式1および/または化学式2の硬化性モノマーを含まないことにより密着力が著しく低下することを確認することができた。
【0188】
また、前記表10~13の実験結果により表面処理された散乱粒子を用いるか、本発明に係る硬化性モノマーを用いる場合、ジェッティング誤着弾特性が改善されることを確認した。