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特許7459008光散乱インク組成物、これを用いて製造された画素、前記画素を含むカラーフィルタおよび前記カラーフィルタを備える画像表示装置
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  • 特許-光散乱インク組成物、これを用いて製造された画素、前記画素を含むカラーフィルタおよび前記カラーフィルタを備える画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】光散乱インク組成物、これを用いて製造された画素、前記画素を含むカラーフィルタおよび前記カラーフィルタを備える画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/32 20140101AFI20240325BHJP
【FI】
C09D11/32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021019961
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2021127458
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0017720
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 在 庸
(72)【発明者】
【氏名】李 知 煥
(72)【発明者】
【氏名】李 憲 熙
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/093140(WO,A1)
【文献】特開2019-085537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱粒子、硬化性モノマー、および分散剤を含むインク組成物であって、
前記硬化性モノマーは、下記化学式1および化学式2で表される化合物からなる群より選択される2種以上を含むものであり、
前記分散剤は、酸価10~90mgKOH/gおよびアミン価10~90mgKOH/gである、白色インク組成物。
【化1】

(前記化学式1において、R は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
【化2】

(前記化学式2において、R は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
【請求項2】
前記分散剤は、インク組成物総100重量%に対して、0.01~5重量%含まれるものである、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記硬化性モノマーは、インク組成物総100重量%に対して、40~98重量%含まれるものである、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記散乱粒子は、インク組成物総100重量%に対して、1~20重量%含まれる、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記インク組成物は、光重合開始剤および添加剤から選択される1種以上をさらに含むものである、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記散乱粒子は、Al、SiO、ZnO、ZrO、BaTiO、TiO、Ta、Ti、ITO、IZO、ATO、ZnO-Al、Nb、SnO、およびMgOからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記インク組成物は、無溶剤形態である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のインク組成物の硬化物を用いて製造された光散乱画素。
【請求項9】
請求項に記載の光散乱画素を含むカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項に記載のカラーフィルタを含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、これを用いて製造された画素、前記画素を含むカラーフィルタおよび前記カラーフィルタを備える画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明および色のある表面(colored surface)上に印刷される場合、優れた可視性(visibility)を提供するために白色インクが使用される。このような白色インクを塗布するのに好まれる手段はインクジェット印刷である。インクジェット印刷は、ノズルを基材に接触させず、インク液滴が微細なノズルを通して基材上に噴射される非衝撃式印刷技術で工程の単純化および優れた経済的効果を有する。
【0003】
しかし、インクジェット印刷において白色インクを用いることに関しては、白色インクの主な原料になる散乱粒子による問題が発生する。具体的には、散乱粒子の中でも、二酸化チタンは通常の白色インク顔料で、他のカラーのインクのための顔料より一般的に3倍~4倍重い。したがって、二酸化チタンのような顔料はよく沈殿および凝集され、インクジェットシステムのノズルを詰まらせる問題を発生させる。
【0004】
そこで、大韓民国公開公報第10-2017-0084107号のような従来技術は、インク組成物を2液型で製造し、使用前に混合して使用する方法を考案した。しかし、このような2液型で製造する場合、工程が複雑になり、使用直前に混合して使用しなければならないため、混合後の再使用が不可能で経済性に劣り、インクジェット工程において散乱粒子のかたまり現象が発生し、インクジェット方式での使用時に密着力に劣る問題が発生した。
【0005】
したがって、本発明は、上記の問題を解決するためになされた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開公報第10-2017-0084107号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を改善するためのものであって、インクジェット工程においてピクセル表面に散乱粒子のかたまり現象が著しく改善され、密着力に優れたインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、散乱粒子、硬化性モノマー、および分散剤を含むインク組成物であって、前記分散剤は、酸価10~90mgKOH/gおよびアミン価10~90mgKOH/gである、インク組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、上述したインク組成物の硬化物を用いて製造された光散乱画素を提供する。
【0010】
また、本発明は、上述した光散乱画素を含むカラーフィルタを提供する。
また、本発明は、上述したカラーフィルタを含む画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインク組成物は、特定範囲の酸価およびアミン価を満たす分散剤を含むことにより、散乱粒子を含む白色インク(white ink)が優れた広視野角を満たす効果を提供可能である。
【0012】
また、本発明のインク組成物は、インクジェット工程の進行に際して、ピクセル内の表面における散乱粒子のかたまりおよび偏りなどにおいて分散性に優れた効果を有し、これによって、密着性に著しく優れた効果を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ピクセル表面にかたまり現象が発生しない実施例1~5のインク組成物で製造された塗膜に関する図である。
図2】ピクセル表面にかたまり現象が発生した比較例1~5のインク組成物で製造された塗膜に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、分散性に優れたインク組成物に関し、本発明のインク組成物をインクジェット工程に導入した時、密着力が著しく改善された効果を達成可能である。
【0015】
具体的には、本発明は、散乱粒子、硬化性モノマー、および分散剤を含むインク組成物であって、前記分散剤は、酸価10~90mgKOH/gおよびアミン価10~90mgKOH/gである、インク組成物に関する。
【0016】
散乱粒子
本発明において、散乱粒子は、青色光源から放出された光の経路を増加させて全体的な光効率を高める役割を果たす。
【0017】
前記散乱粒子は、通常の無機材料を使用することができ、好ましくは、平均粒径が50~1000nmの金属酸化物を含むことができる。前記金属酸化物は、Ti、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Mo、Cs、Ba、La、Hf、W、Tl、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Sb、Sn、Zr、Nb、Ce、Ta、In、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1種の金属を含む酸化物であってもよい。Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Mo、Cs、Ba、La、Hf、W、Tl、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Sb、Sn、Zr、Nb、Ce、Ta、In、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1種の金属を含む酸化物を含むことがより好ましい。
【0018】
具体的には、Al、SiO、ZnO、ZrO、BaTiO、TiO、Ta、Ti、ITO、IZO、ATO、ZnO-Al、Nb、SnO、およびMgOからなる群より選択された1種以上を含むことができ、TiOを含むことが最も好ましい。必要な場合、アクリレートなどの不飽和結合を有する化合物で表面処理された材質も使用可能である。
【0019】
前記散乱粒子は、30~1000nmの平均粒径を有することができ、好ましくは100~500nm、さらに好ましくは150~300nmの粒径を有するのが良い。散乱粒子が前記範囲を満たすと、十分な散乱効果を提供可能で、組成物内に沈んだりしないで均一な品質の光散乱層の表面を提供可能なため、前記範囲内での使用がより好ましい。
【0020】
前記散乱粒子は、インク組成物全100重量%に対して、1~20重量%の量で含まれる。前記散乱粒子の含有量が前記範囲を満たす場合、適切な散乱効果の提供が可能であり、光散乱層の透過率低下の問題が発生しないという点で好ましい。
【0021】
分散剤
本発明において、分散剤は、酸価10~90mgKOH/gおよびアミン価10~90mgKOH/gを満たす分散剤を含む。本発明の分散剤は、酸価とアミン価を同時に満たすことにより、効果的に散乱粒子とモノマーを同時に分散剤に付着してインク組成物に優れた分散性を与える役割を果たす。
【0022】
より具体的には、本願発明において含まれる分散剤は、酸価10~90mgKOH/gおよびアミン価10~90mgKOH/gの範囲であってもよいし、酸価10~60mgKOH/gおよびアミン価10~60mgKOH/gの範囲がより好ましい。分散剤が上述した範囲の酸価およびアミン価を同時に満たす場合、インクジェット装置を用いてピクセルにインクを噴射した時、ピクセル内でインクの散乱粒子が優れた分散性を有するため、バックライトに対してランバーシアン(lambertian)配光分布を提供するという点で好ましい。
【0023】
本発明は、上述した範囲の酸価およびアミン価を満たす分散剤であれば、種類に制限なく含むことができる。しかし、硬化性モノマーと相溶性に優れるという面から、PolyamineまたはAcryl系の分散剤を含むことがより好ましい。
【0024】
前記分散剤は、前記インク組成物の総重量%に対して、0.01~5重量%、好ましくは0.03~3重量%含まれてもよいし、上述した範囲に含まれる場合、散乱粒子の分散効果が効率的であるという点で好ましい。
【0025】
硬化性モノマー
本発明において、硬化性モノマーは、インクジェット工程において密着力を与える効果を提供する。
【0026】
本発明において、前記硬化性モノマーは、その種類に制限なく使用可能であるが、化学式1および化学式2で表される化合物のうちの1種以上を含むことが、インクジェット工程の後、インク組成物のブリトル(brittle)な特性から下部基材と剥離が起こりやすい現象が著しく改善され、密着力を向上させることができるという点でより好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
(前記化学式1において、Rは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
【0029】
【化2】
【0030】
(前記化学式2において、Rは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
本発明において、硬化性モノマーは、本発明が目的とする分散性に影響がない程度で一般的に含まれる硬化性モノマーをさらに含んでもよい。
【0031】
本発明において、硬化性モノマーは、2個の官能基を有する化学式1および化学式2で表される化合物のうちの1種以上を含むことにより、低い粘度でノズル詰まりなくインクジェット工程が可能であり、ジェッティングされたインク組成物と基材との優れた密着力効果を有することができる。
【0032】
【化1】
【0033】
(前記化学式1において、Rは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
【0034】
【化2】
【0035】
(前記化学式2において、Rは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、mは、1~15の整数である。)
前記化学式1で表される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート(polyethylene glycol 200 diacrylate)、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート(polyethylene glycol 400 diacrylate)、ポリエチレングリコール600ジ(メタ)アクリレート(polyethylene glycol 600 diacrylate)などが挙げられる。
【0036】
前記化学式2で表される化合物の具体例としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(Dipropylene glycol diacrylate)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(Tripropylene glycol diacrylate)、ポリプロピレングリコール100ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール700ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0037】
前記硬化性モノマーが前記のように含まれる場合、インクジェットプリンティング工程においてノズル詰まりなく連続したジェッティングや画素部の密着性の面から好ましいという利点がある。前記硬化性モノマーが前記範囲未満に含まれる場合、画素部の密着性がやや低下して、インクジェット工程の後に塗膜のクラックや剥離が起こることがある。また、前記硬化性モノマーが前記範囲を超えて含まれる場合、散乱粒子の含有量が減少して、塗膜の光特性や透過率がやや低下することがある。
【0038】
本発明において、硬化性モノマーは、下記化学式3で表される化合物をさらに含んでもよい。下記化学式3で表される単官能モノマーをさらに含むことにより、インクジェット工程の後、インク組成物と基材との密着性をさらにより向上させる効果が奏され得るという点で好ましい。
【0039】
【化3】
【0040】
(前記化学式3において、Rは、水素またはメチル基であり、Aは、-CH-CH-O-(エチレンオキシド)または-CH-CH(CH)-O-(プロピレンオキシド)である。)
前記化学式3で表される化合物の例としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルスクシネートなどが挙げられる。
【0041】
前記化学式3の単官能モノマーがさらに含まれる場合、硬化性モノマーを総100重量%を基準とした時、0.5~30重量%含まれる。
【0042】
本発明において、硬化性モノマーは、粘度基材との密着性の特性をさらに改善できるという点から、水酸基含有(メタ)アクリレートをさらに含んでもよい。前記水酸基含有(メタ)アクリレートは、水酸基が200~300mgKOH/gであり、粘度が50cP未満の場合により好ましい。
【0043】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、グリセロール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートがさらに含まれる場合、硬化性モノマーを総100重量%を基準とした時、0.5~30重量%含まれる。
【0045】
前記硬化性モノマーは、前記インク組成物全100重量%に対して、40~98重量%含まれてもよいし、より好ましくは50~90重量%含まれる。硬化性モノマーが上述した範囲内に含まれる場合、インクジェットプリンティング工程でコーティングされる画素は、基材との剥離やクラックなく密着性に優れた特性を示し得るという点で好ましい。
【0046】
光重合開始剤
本発明の一実施形態に係るインク組成物は、光重合開始剤を追加的に含んでもよい。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記光重合開始剤は、前記硬化性モノマーを重合させることができるものであれば、その種類を特に制限なく使用可能である。特に、前記光重合開始剤は、重合特性、開始効率、吸収波長、入手性、価格などの観点から、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシム系化合物、およびチオキサントン系化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用することが好ましい。
【0048】
前記アセトフェノン系化合物の具体例としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0049】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどがある。
【0050】
前記トリアジン系化合物の具体例としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0051】
前記ビイミダゾール系化合物の具体例としては、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、または4,4’,5,5’位のフェニル基がカルボアルコキシ基によって置換されているビイミダゾール化合物などが挙げられる。これらのうち、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールが好ましく使用される。
【0052】
前記オキシム系化合物の具体例としては、o-エトキシカルボニル-α-オキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられ、市販品としてバスフ社のIrgacure OXE01、OXE02が代表的である。
【0053】
前記チオキサントン系化合物としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどがある。
【0054】
前記光重合開始剤は、インク組成物全100重量%に対して、0.3~20重量%の量で含まれる。前記光重合開始剤の含有量が前記範囲を満たすと、塗膜に黄変を防止できるという点で好ましい。
【0055】
添加剤
本発明は、ジェッティング性に影響がない程度で通常の添加剤をさらに含んでもよい。具体的には、上記の成分のほか、塗膜の平坦性または密着性を増進させるために、界面活性剤、密着促進剤のような添加剤を追加的に含んでもよい。
【0056】
本発明に係るインク組成物が界面活性剤を含む場合、塗膜の平坦性が向上できるという利点がある。例えば、前記界面活性剤は、BM-1000、BM-1100(BM Chemie社)、フロラードFC-135/FC-170C/FC-430(住友スリーエム(株))、SH-28PA/-190/-8400/SZ-6032(東レシリコーン(株))などのフッ素系界面活性剤を使用することができるが、これに限定されない。
【0057】
前記密着促進剤は、基板との密着性を高めるために添加できるものであって、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される反応性置換基を有するシランカップリング剤を含むことができるが、これに限定されるものではない。例えば、前記シランカップリング剤は、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらは、単独または2種以上組み合わせて使用可能である。
【0058】
この他にも、本発明に係るインク組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤のような添加剤をさらに含んでもよいし、前記添加剤は同じく、本発明の効果を損なわない範囲で当業者が適宜追加して使用可能である。
【0059】
前記添加剤は、前記インク組成物全100重量%に対して、0.05~10重量%、具体的には0.1~10重量%、さらに具体的には0.1~5重量%使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0060】
本発明のインク組成物は、組成物に溶剤を含まない無溶剤形態であることが最も好ましい。すなわち、本発明において、無溶剤形態とは、組成物の形成において溶剤を含まないことが最も好ましいが、本発明が目的とするインクジェッティング性および密着力に影響がない程度で一般的に含まれる溶剤を含むことができることを意味する。より好ましくは、インク組成物全100重量%に対して、溶剤を5重量%以下で含むことを意味することができる。
【0061】
本発明のインク組成物は、好ましくは、白色インク用であってもよいし、RGBを示したり、これに影響を与える着色剤であるRGB関連の着色剤を含まないことがより好ましい。
【0062】
本発明のインク組成物は、好ましくは、インクジェット工程に使用されるもので、インクジェット工程用のものであってもよい。
【0063】
また、本発明の一実施形態に係るインク組成物は、樹脂成分を実質的に含まず、含むとしてもインク組成物全100重量%に対して0.5重量%以内で含む。本発明の一実施形態に係るインク組成物は、樹脂成分を含まないことにより低い粘度を実現可能で、インクのノズルジェッティング特性に優れる。
【0064】
本発明はまた、上述したインク組成物の硬化物を用いて製造された光散乱画素を提供する。
【0065】
本発明はさらに、上述した光散乱画素を含むカラーフィルタおよび前記カラーフィルタを含む画像表示装置を提供する。
【実施例
【0066】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。しかし、下記の実施例は本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されない。
【0067】
本発明に係るインク組成物のパターン形成方法は、上述したインク組成物をインクジェット方式で所定領域に塗布するステップと、前記塗布されたインク組成物を硬化させるステップとを含んでなる。
【0068】
まず、本発明のインク組成物をインクジェット噴射機に注入して基板の所定領域にプリンティングする。
【0069】
前記基板は限定はなく、一例として、ガラス基板、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、芳香族ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板、Al基板、GaAs基板などの、表面が平坦な基板が挙げられる。これらの基板は、シランカップリング剤などの薬品による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング処理、スパッタリング処理、気相反応処理、真空蒸着処理などの前処理を施すことができる。基板としてシリコン基板などを用いる場合、シリコン基板などの表面には電荷結合素子(CCD)、薄膜トランジスタ(TFT)などが形成できる。また、隔壁マトリックスが形成されていてもよい。
【0070】
インクジェット噴射機の一例であるピエゾインクジェットヘッドから噴射されて基板上に適切な相(phase)を形成するために、粘度、流動性、散乱粒子などの特性がインクジェットヘッドとバランスをとらなければならない。本発明で用いられたピエゾインクジェットヘッドは限定されないが、約10~100pL、好ましくは約20~40pLの液滴サイズを有するインクを噴射する。
【0071】
本発明のインク組成物の粘度は、約3~30cPが適当であり、より好ましくは7~20cPの範囲で調節される。
【0072】
本発明の一実施形態に係るカラーフィルタは、前記パターン形成方法により形成される透明パターン層、すなわち透明画素層を含む。すなわち、カラーフィルタは、基板上に上述したインク組成物を所定のパターンに塗布した後、硬化させて形成される透明画素層を含むことを特徴とする。カラーフィルタの構成および製造方法は、当該技術分野でよく知られているので、詳しい説明を省略する。
【0073】
本発明の一実施形態は、上述したカラーフィルタが備えられた画像表示装置に関する。
本発明のカラーフィルタは、通常の液晶表示装置(LCD)だけでなく、電界発光表示装置(EL)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出表示装置(FED)、有機発光素子(OLED)などの各種画像表示装置に適用可能である。
【0074】
本発明の画像表示装置は、上述したカラーフィルタを備えたことを除けば、当該技術分野で知られた構成を含む。
【0075】
以下、実施例、比較例および実験例により本発明をより具体的に説明しようとする。これらの実施例、比較例および実験例は単に本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらに限らないことは当業者にとって自明である。
【0076】
製造例1:散乱粒子分散液(A1)の製造
散乱粒子として粒径210nmのTiO(石原社のCR-63)65.0重量部、分散剤3.9重量部、および1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(モノマー)31.1重量部をビーズミルによって12時間混合および分散して、散乱粒子分散液を製造した。
【0077】
実施例1~5および比較例1~7:インク組成物の製造
下記表1に記載の構成および含有量でインク組成物を製造した。
【0078】
【表1】
【0079】
A1:散乱粒子分散液中のTiO(石原社のCR-63)
B1:EFKA-4009(酸価10~17mgKOH/g、アミン価10~15mgKOH/g)(EFKA社)
B2:EFKA-5071(酸価80~90mgKOH/g、アミン価85~90mgKOH/g)(EFKA社)
B3:EFKA-5054(酸価50~56mgKOH/g、アミン価48~54mgKOH/g)(EFKA社)
B4:DISPERBYK-140(酸価70~75mgKOH/g、アミン価75~80mgKOH/g)(BYK社)
B5:DISPERBYK-101(酸価30mgKOH/g、アミン価10~15mgKOH/g)(BYK社)
B6:EFKA-5070(酸価45~65mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)(EFKA社)
B7:EFKA-4330(酸価0mgKOH/g、アミン価26~30mgKOH/g)(EFKA社)
B8:EFKA-4010(酸価10~15mgKOH/g、アミン価4~8mgKOH/g)(EFKA社)
B9:DISPERBYK-106(酸価130~135mgKOH/g、アミン価70~75mgKOH/g)(BYK社)
B10:DISPERBYK-130(酸価1~3mgKOH/g、アミン価190mgKOH/g)(BYK社)
C1:Polypropylene glycol 100 diacrylate(APG-100)(新中村化学社)
C2:Polypropylene glycol 400 diacrylate(APG-400)(新中村化学社)
C3:1,6-Hexanediol diacrylate(シグマアルドリッチ社)
D1:Irgacure OXE-01(バスフ社)
E1:SH8400(ダウコーニング東レシリコーン社)
<光散乱コーティング層の製造>
実施例および比較例で製造されたそれぞれのインク組成物をインクジェット方式で5cm×5cmのガラス基板上に塗布した後、紫外線光源としてg、h、i線をすべて含む1kWの高圧水銀灯を用いて1000mJ/cmで照射後、180℃の加熱オーブンで30分間加熱して光散乱コーティング層を製造した。
【0080】
(1)TiO表面のかたまり
塗膜の表面特性は、熱工程(180℃/30分)の後、10.00μmの厚さのピクセル表面を光学顕微鏡で観察して、下記の評価基準で評価した。
【0081】
<評価基準>
O:ピクセル表面にTiOのかたまりが発生しない(図1参照)
X:ピクセル表面にTiOのかたまりが発生した(図2参照)
(2)密着性
前記インク組成物で製造されたコーティング層で国際標準(ASTM D3359)によるクロスカット試験(Cross-Cut Adhesion Test)を進行させた。
【0082】
ナイフ(Knife)によって、製造されたコーティング層に均一に力を与えながら格子状に切り込みを入れた後、切り込み面にテープを貼って完全に付着するまで擦り、30秒後にテープの端を取って180度の角度に近く引っ張ってテープを除去して、下記表2の基準のような測定方式でコーティング層の密着性を評価し、表3にその結果を記載した。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
本願発明の分散液の条件および本願発明の構成をすべて含む実施例1~5の場合、表面TiOのかたまり現象なく均一な塗膜を形成可能であった。これに対し、分散液は、本願発明が目的とする酸価またはアミン価のいずれか1つでも満たしていない比較例1~7の場合、TiOのかたまり現象によって適用インクジェッティング工程で製造される塗膜の実用性が著しく低下し、ピクセル内で後面の青色光が適切に散乱せずに滲み現象を見せた。また、特定化学構造の硬化性モノマーを含まない比較例6および7の場合、密着性も効果が低下することを確認することができた。
図1
図2