(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】上皮細胞がんを治療する医薬組成物を調製するための小胞子霊芝の免疫調節タンパク質及びキーホールリンペットヘモシアニン及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240325BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240325BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240325BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A61K39/00 K
A61K39/00 H
A61K38/16
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021084337
(22)【出願日】2021-05-19
【審査請求日】2021-11-10
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521216212
【氏名又は名称】マルチプル フォーチュン ホールディング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MULTIPLE FORTUNE HOLDING LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】フェング-チョウ リー
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0080048(US,A1)
【文献】米国特許第09937226(US,B2)
【文献】Process Biochemistry, 2010, Vol.45, pp.1537-1542
【文献】The Journal of Urology, 1995, Vol.153, pp.926-928
【文献】J. Cancer Res. Clin. Oncol., 2001, Vol.127, Suppl. 2, pp.R20-R26
【文献】Leuk. Lymphoma, 2003, Vol.44, No.10, pp.1785-1791
【文献】J Immunol, 2018, Vol.200, No.1 Supplement, 178.32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/
A61P 35/
A61P 37/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小胞子霊芝の免疫調節タンパク質(GMI,ganoderma microsporum immunomodulatory protein)と、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH,Keyhole limpet hemocyanin)と、フィトヘマグルチニン(PHA,phytohemagglutinin)を含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む前記小胞子霊芝の免疫調節タンパク質は20μgから200μgであり、前記キーホールリンペットヘモシアニンは100μgから200μgであり、及び前記フィトヘマグルチニンは10μgから20μgであることを特徴とする上皮細胞がんを治療する
ための医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む前記小胞子霊芝の免疫調整タンパク質は200μgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む前記キーホールリンペットヘモシアニンは200μgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記小胞子霊芝の免疫調節タンパク質と前記キーホールリンペットヘモシアニンとの重量比は2:1から1:10の範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む前記フィトヘマグルチニンは20μgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記小胞子霊芝の免疫調節タンパク質と前記フィトヘマグルチニンとの重量比は20:1から1:1の間であり、前記キーホールリンペットヘモシアニンと前記フィトヘマグルチニンとの重量比は20:1から5:1の範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は、錠剤、カプセル、乳剤、分散剤、懸濁液、溶液、シロップ、顆粒、経皮パッチ、ゲル、粉末、クリーム、ペースト、坐剤又はエアゾールの形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
上皮細胞がんを治療するための医薬組成物の調製における小胞子霊芝の免疫調節タンパク質(GMI)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びフィトヘマグルチニンの使用であって、
前記医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む前記小胞子霊芝の免疫調節タンパク質は20μgから200μgであり、前記キーホールリンペットヘモシアニンは100μgから200μgであり、及び前記フィトヘマグルチニンは10μgから20μgであることを特徴とする使用。
【請求項9】
前記医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む前記小胞子霊芝の免疫調整タンパク質は200μgである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む前記キーホールリンペットヘモシアニンは200μgである、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記小胞子霊芝の免疫調節タンパク質と前記キーホールリンペットヘモシアニンとの重量比は2:1から1:10の範囲である、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む前記フィトヘマグルチニンは20μgである、請求項8に記載の使用。
【請求項13】
前記小胞子霊芝の免疫調節タンパク質と前記フィトヘマグルチニンとの重量比は20:1から1:1の間であり、前記キーホールリンペットヘモシアニンと前記フィトヘマグルチニンとの重量比は20:1から5:1の範囲である、請求項8に記載の使用。
【請求項14】
前記上皮細胞がんは、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝がん、子宮頸がん、膀胱がん、すい臓がん又は皮膚がんである、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上皮細胞がんを治療する医薬組成物を調製するための小胞子霊芝の免疫調節タンパク質、キーホールリンペットヘモシアニン及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは人類の健康にとって大きな脅威であり、台湾衛生署が発表した資料によれば、がんは台湾で36年連続して死亡原因の第1位となっている。このことから分かるように、がんは人体の健康に及ぼす脅威は無視できないほどに大きい。全てのがんの種類において、約80%以上が上皮細胞がんであり、過剰な細胞分裂により上皮組織に異常な腫瘍ができるのが特徴である。がん細胞は正常な細胞の成長の限界を持たず、その他の細胞にまで異常に侵入する。基本的には、上皮組織を持つ体内のあらゆる器官は上皮細胞がんが発生する可能性があり、 一般的なものとしては、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、子宮頸がん、膀胱がん、すい臓がん、皮膚がんなどがある。
【0003】
従来のがん治療の種類には、化学療法、外科手術、放射線療法、ホルモン療法、生物学的療法、標的療法、これらを組み合わせた治療法などが含まれる。しかし、多くの腫瘍は従来の方法に抵抗を有する。近年ではすでにがん治療のための免疫療法の研究が行われているが、この方法では、腫瘍から離れた部位にワクチン化合物を投与して、患者の全身性の腫瘍に特異能動免疫反応を起こさせている。現在、孤立した腫瘍関連抗原を含むいくつかのタイプのワクチンがすでに提案されている。
【0004】
現在では多くの腫瘍関連抗原が同定され、それらの多くはがんの治療や予防のためのタンパク質ベース又はDNAベースのワクチンとして研究されているものの、ほとんどはまだ臨床試験段階であって、治療製品は作られていない。また、がんワクチン開発の課題の一つとして、がん抗原は通常自己由来のものであることから、免疫系が変異した自分の細胞タンパク質を区別できないため、免疫原性が劣ることが挙げられる。そのため、がんワクチンの免疫原性や治療効果を高める方法の開発が急務となっている。
【0005】
そこで、免疫細胞が腫瘍細胞に対して特異能動免疫反応を生じさせ、且つ医薬組成物の免疫原性や治療効果を高めることができる医薬組成物及びその調製への用途を提供することが重要な課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、免疫細胞が腫瘍細胞に対して特異能動免疫反応を起こさせることができ、免疫原性及び治療効果を高めることができる医薬組成物及びその調製への用途を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の医薬組成物は、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質(GMI,ganoderma microsporum immunomodulatory protein)と、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH,Keyhole limpet hemocyanin)と、フィトヘマグルチニン(PHA,phytohemagglutinin)を含み、医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む小胞子霊芝の免疫調節タンパク質は20μgから200μgであり、キーホールリンペットヘモシアニンは100μgから200μgであり、及びフィトヘマグルチニンは10μgから20μgであることを特徴とする上皮細胞がんを治療するためのものである。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明ではまた、上皮細胞がんを治療するための医薬組成物の調製における小胞子霊芝の免疫調節タンパク質(GMI)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びフィトヘマグルチニンの使用であって、医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む小胞子霊芝の免疫調節タンパク質は20μgから200μgであり、キーホールリンペットヘモシアニンは100μgから200μgであり、フィトヘマグルチニンは10μgから20μgである。
【0009】
一つの実施例において、医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含む小胞子霊芝の免疫調整タンパク質は200μgである。
【0010】
一つの実施例において、医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含むキーホールリンペットヘモシアニンは200μgである。
【0011】
一つの実施例において、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質とキーホールリンペットヘモシアニンとの重量比は2:1から1:10の範囲である。
【0012】
一つの実施例において、医薬組成物の単位体積(mL)あたりに含むフィトヘマグルチニンは20μgである。
【0013】
一つの実施例において、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質とフィトヘマグルチニンとの重量比は20:1から1:1の範囲である。
【0014】
一つの実施例において、キーホールリンペットヘモシアニンとフィトヘマグルチニンとの重量比は20:1から5:1の範囲である。
【0016】
一つの実施例において、医薬組成物は、錠剤、カプセル、乳剤、分散剤、懸濁剤、溶液、シロップ、顆粒、経皮パッチ、ゲル、粉末、クリーム、ペースト、坐剤又はエアゾールの形態である。
【0017】
一つの実施例において、上皮細胞がんは、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝がん、子宮頸がん、膀胱がん、すい臓がん又は皮膚がんである。
【0018】
一つの実施例において、上皮細胞がんは、肺がん、乳がん、すい臓がん又は膀胱がんである。
【発明の効果】
【0019】
上記によれば、本発明の医薬組成物及びその調製の用途にて、その医薬組成物は小胞子霊芝の免疫調節タンパク質(GMI)とキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とを含むことから、免疫細胞が腫瘍細胞に対して特異能動免疫反応を生じさせ、且つ医薬組成物の免疫原性や治療効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト末梢血単核細胞(PBMC)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
【
図1B】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト末梢血単核細胞(PBMC)のフローサイトメーター分析の結果を示している。フローサイトメーターで分析した7-AAD、CFSEの蛍光強度の細胞分布を示す図であり、この分布図から各グループの細胞毒殺率を算出することができる。
【
図1C】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト末梢血単核細胞(PBMC)のフローサイトメーター分析の結果を示している。
図1Bに基づいてフローサイトメーターによる繰り返し3回の実験から得られた細胞毒殺率を示している。
【
図2A】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト肺がん細胞(A549細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
【
図2B】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト肺がん細胞(A549細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
【
図2C】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置した肺がん細胞株(A549細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。フローサイトメーターで分析した7-AAD、CFSEの蛍光強度の細胞分布を示す図であり、この分布図から各グループの細胞毒殺率を算出することができる。
【
図2D】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置した肺がん細胞株(A549細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。フローサイトメーターで分析した7-AAD、CFSEの蛍光強度の細胞分布を示す図であり、この分布図から各グループの細胞毒殺率を算出することができる。
【
図2E】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置した肺がん細胞株(A549細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。
図2Cに基づいてフローサイトメーターによる繰り返し3回の実験から得られた細胞毒殺率を示している。
【
図2F】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置した肺がん細胞株(A549細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。
図2Dに基づいてフローサイトメーターによる繰り返し3回の実験から得られた細胞毒殺率を示している。
【
図3A】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト乳腺がん細胞株(MDA-MB-231細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
【
図3B】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト乳腺がん細胞株(MDA-MB-231細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
【
図3C】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト乳腺がん細胞株(MDA-MB-231細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。フローサイトメーターで分析した7-AAD、CFSEの蛍光強度の細胞分布図を示しており、この分布図から各グループの細胞毒殺率を算出することができる。
【
図3D】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト乳腺がん細胞株(MDA-MB-231細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。フローサイトメーターで分析した7-AAD、CFSEの蛍光強度の細胞分布図を示しており、この分布図から各グループの細胞毒殺率を算出することができる。
【
図3E】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト乳腺がん細胞株(MDA-MB-231細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。
図3Cに基づいてフローサイトメーターによる繰り返し3回の実験から得られた細胞毒殺率を示している。
【
図3F】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト乳腺がん細胞株(MDA-MB-231細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。
図3Dに基づいてフローサイトメーターによる繰り返し3回の実験から得られた細胞毒殺率を示している。
【
図4A】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト膀胱がん細胞株(T24細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
【
図4B】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト膀胱がん細胞株(T24細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
【
図4C】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト膀胱がん細胞株(T24細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。フローサイトメーターで分析した7-AAD、CFSEの蛍光強度の細胞分布図を示しており、この分布図から各グループの細胞毒殺率を算出することができる。
【
図4D】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト膀胱がん細胞株(T24細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。フローサイトメーターで分析した7-AAD、CFSEの蛍光強度の細胞分布図を示しており、この分布図から各グループの細胞毒殺率を算出することができる。
【
図4E】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト膀胱がん細胞株(T24細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。
図4Cに基づいてフローサイトメーターによる繰り返し3回の実験から得られた細胞毒殺率を示している。
【
図4F】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト膀胱がん細胞株(T24細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。
図4Dに基づいてフローサイトメーターによる繰り返し3回の実験から得られた細胞毒殺率を示している。
【
図5A】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒトすい臓がん細胞株(BxPC-3細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
【
図5B】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒトすい臓がん細胞株(BxPC-3細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
【
図5C】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒトすい臓がん細胞株(BxPC-3細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。フローサイトメーターで分析した7-AAD、CFSEの蛍光強度の細胞分布図を示しており、この分布図から各グループの細胞毒殺率を算出することができる。
【
図5D】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒトすい臓がん細胞株(BxPC-3細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。フローサイトメーターで分析した7-AAD、CFSEの蛍光強度の細胞分布図を示しており、この分布図から各グループの細胞毒殺率を算出することができる。
【
図5E】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒトすい臓がん細胞株(BxPC-3細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。
図5Cに基づいてフローサイトメーターによる繰り返し3回の実験から得られた細胞毒殺率を示している。
【
図5F】本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒトすい臓がん細胞株(BxPC-3細胞)のフローサイトメーター分析の結果である。
図5Dに基づいてフローサイトメーターによる繰り返し3回の実験から得られた細胞毒殺率を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下にて関連する図面を参照して、本発明が提供する各種の実施例を説明する。このうち同じ構成要素は同じ参考記号で説明する。
【0022】
まず、本発明の複数の実施例を以下にて提供しているものの、各々の実施例はいずれも可能な状況で本発明で開示する構成要素の一種の組合せを表すものであるが、本発明ではその開示する構成要素の全ての可能な組合せを含むべきである。したがって、もし一つの実施例が構成要素A、B及びCを含み、そして第2の実施例がB及びDを含むとして、明確に開示されていなくても、本発明はA、B、C及び/又はDのその他種類の任意の組合せを含むものであると理解されるべきである。
【0023】
下記のいくつかの実施例において、成分の量、特性(例えば濃度、反応条件など)を示すための数値を記述してあるが、これはいくつかの状況において「約」用語を用いて修正されていると理解されるべきである。よって、いくつかの実施例において、本明細書及び別紙の実用新案登録請求の範囲に記載する数値パラメータは、特定の実施例で試みられる所望の特性に応じて変化する近似値である。いくつかの実施例において、記載される有効桁数の数字及び一般的な数値簡素化技術の適用に基づいて、数値パラメータは解釈すべきである。しかしながら、いくつかの実施例において、その数値範囲及び数値パラメータは近似値であるが、具体的な実験例にて提示された数値は可能な限り正確に記載してある。本明細書中に記載してある数値は、個々の数値を統計的に測定して生じた標準偏差による一部の誤差が含まれる可能性がある。
【0024】
本明細書に別途規定しない限り、本明細書で提示する全ての数値範囲はこれらの端点を含むものと解釈すべきであり、開放式の範囲は商業的に実施可能な数値を含むものと解釈すべきである。同様に、本明細書に別途規定がない限り、全ての数値リストはその中間の数値を含むと認識されるべきである。つまり、本明細書で言及する数値範囲は、該範囲内に収まる各々の単独数値を一つずつ指すものとしての簡易な記載方法を意図するものに過ぎない。別途説明がある場合を除き、範囲内における各々の単独数値のいずれもが本明細書に開示する一部に組み込まれるものであり、同じく本明細書中で一つずつ指している。
【0025】
本明細書で開示する代替要素又は実施例のグループは本発明での限定と解釈すべきではない。各々のグループの構成要素は単独で提案及び保護を求めることができるか、又は、このグループのその他構成要素又は本明細書中におけるその他要素との任意の組合せの方式で提案及び保護を求めることができる。利便性及び/又は排他性の理由から、グループの一つ又は複数の構成要素をグループに組み込んだり、グループから削除することができる。このような組み込み又は削除が発生した場合、明細書には補正後のグループが含まれているとみなされ、それにより、添付されている特許請求の範囲内で使用されるすべてのマーカッシュタイプのグループの記述要件が満たされることになる。また、明細書に記載されている用語は、たとえ特許請求の範囲に見られないものであっても、発明を実施するために必要な要素として解釈されるべきではない。
【0026】
本明細書で使用される、「小胞子霊芝の免疫調節タンパク質」、「GMI(ganoderma microsporum immunomodulatory protein)」という用語は、例えば台湾特許TW I414307明細書中に開示されている小胞子霊芝の免疫調節タンパク質のことを意味しており、これは小胞子霊芝から選ばれた免疫調整作用のあるタンパク質又はその組換えタンパク質であって、このタンパク質は免疫調整剤としての機能を備えている。
【0027】
本明細書で使用される、「キーホールリンペットヘモシアニン」、「KLH(Keyhole limpet hemocyanin)」という用語はジャイアントキーホールリンペット(Megathura crenulata)のヘモリンパ中に見られる大型で複数のユニットの酸素運搬性金属タンパク質である。KLHは、分子量約400kDa(例:KLHモノマー)~約8000kDa(例:KLH二十量体)の縮合体にて分子量約350,000~約390,000のサブユニットからなる不均一なグリコシル化タンパク質である。KLHサブユニットの各領域には、1つの酸素分子と共に結合している2つの銅原子を含む。ヘモシアニンに酸素が結合すると、分子は独特の透明感のある乳白青色となる。KLHは強い免疫原性を持っているが、ヒトには有害な免疫反応を起こさない。KLHは、一連の工程によりジャイアントキーホールリンペットのヘモリンパ中から純化され、前記工程は硫酸アンモニウム沈殿や透析を含み、さらに最高純度を得るためにクロマトグラフィーを含む。いくつかの実施例では、KLHの純化にはエンドトキシンの除去も含まれるが、エンドトキシンは抗体を作るために注射される際にアジュバントとして作用することがあるため、このステップは必須ではない。いくつかの実施例では、KLHモノマーユニットが凝集して、約4,000kDa~8,000kDaの総分子量を持つ巨大な多量体(十量体又は二十量体)になる。いくつかの実施例では、高次KLH多量体は、約800万から1000万の分子量を有し、約92から107Sの沈降係数を有する。
【0028】
本明細書で使用される、「フィトヘマグルチニン」、「PHA(phytohemagglutinin)」という用語は、細胞を凝集させ、単糖又は多糖の複合体を沈殿させる植物由来の非免疫原性の非酵素性タンパク質である。単糖又は多糖の複合体に特異的に結合する能力を持つことから、例えばメッセージ伝達、免疫反応、植物防御など多くのメッセージ伝達プロセスにおいて重要な役割を果たしている。また、フィトアグルチニンは、細胞凝集、抗ウイルス、抗真菌、アポトーシスやオートファジーの誘導など様々な能力を持っている。
【0029】
本明細書で使用される、「医薬組成物」という用語は、本発明の小胞子霊芝の免疫調節タンパク質(GMI)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及び/又は他の化学成分(例えば、薬学的に許容される担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤及び/又は賦形剤)との混合物を意味する。該医薬組成物は、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質、キーホールリンペットヘモシアニンを生体に投与するのに役立つ。
【0030】
本発明の方法で使用される医薬組成物は、以下の投与経路に適している可能性がある:鼻腔、吸入、経口、直腸、膣、胸膜、腹膜、非消化管、局所、経皮、肺、鼻内、口腔、眼、硬膜外、髄腔内、静脈内、その他の投与経路。本発明の方法にて有用な組成物は、哺乳類に直接投与することができる。本発明のその他薬剤には、投影型ナノ粒子(projected nanoparticles)、ミクロスフェア(microspheres)、リボソーム製剤(liposomal preparations)、被覆粒子(coated particles)、ポリマー複合体(polymer conjugates)及び免疫学に基づく製剤が含まれる。
【0031】
投与経路は当業者にとっては明らかであり、しかも、治療する疾病のタイプや重症度、治療する家畜又はヒトの患者のタイプ及び年齢などの数多くの要因に依存する。
【0032】
本明細書に記載されている医薬組成物の製剤は、薬理学及び薬学の分野で知られている方法、又は今後開発される何らかの方法によって調製することができる。一般的に、このような製剤方法は、活性成分を担体、又は1種類或いは多種類の他の補助成分と組み合わせた後、必要に応じて、又は実行可能な場合には、製品を目的の単回投与又は複数回投与のユニットに形成又は包装するという工程を含む。
【0033】
本明細書で使用される、「単位用量」とは、あらかじめ定量された活性成分を含む医薬組成物の離散的な量(discrete amount)を意味する。活性成分の用量は通常、個体に投与される活性成分の用量に等しいか、又は該用量の便宜的な分数(convenient fraction)、例えば用量の半分又は1/3である。単位用量の剤形は、1日1回の投与に用いられる剤形であるか、又は1日複数回(例えば、1日あたり約1~4回、又はそれ以上)のうちの一回の投与に用いられる剤形にすることができる。1日に複数回投与する場合、単位用量の剤形は各投与量で同じでも異なっていてもよい。
【0034】
本明細書で使用される、「薬学的に許容される」という用語は、本発明の医薬組成物に使用することができ、且つ該医薬組成物がその生物学的活性又は特性を保持することができ、かつ比較的非毒性である担体又は希釈剤などの材料を意味する。すなわち該材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、また、医薬組成物に含まれる成分と有害な方法で相互作用することなく、個人に投与することができる。
【0035】
本明細書中で使用される「薬学的に許容される担体」は塩類、材料、組成物又は担体を含み、例えば、充填剤、希釈剤、賦形剤又はカプセル化材料など、本発明の医薬組成物が意図された機能を果たすように、個々の身体に運ばれ、又は輸送されることができる。典型的には、該医薬組成物は、ある器官や体の一部から別の器官や体の別の部分に運ばれる。各塩類や担体は、配合物の他の成分(本発明で使用可能な医薬組成物を含む)と互換性があり、且つ治験者に無害でなければならない。担体として使用可能な材料の例としては、以下のものが含まれる:糖類(ラクトース、グルコース及びショ糖)、デンプン(コーンスターチ及びポテトスターチ)、セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース)、粉末トラガカントゴム、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤(ココアバター及び坐薬ワックス)、油類(ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油など)、ジオール類(プロピレングリコール)、ポリオール類(グリセロール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール)、エステル類(オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル)、寒天、緩衝剤(水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなど)、界面活性剤、アルギン酸、パイロジェンフリー水(pyrogen-free water)、等張塩水、リンゲル液(Ringer’s solution)、エタノール、リン酸緩衝液、及び医薬調合物に使用されるその他の無毒性の互換性物質。
【0036】
いくつかの実施例では、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤又は担体を使用して、本発明の医薬組成物を調合することができる。いくつかの実施例では、本発明の医薬組成物は、治療上有効な用量のGMI、KLH、及び/又はPHA、及び/又は薬学的に許容される担体を含む。医薬的に許容される担体は有用であり、グリセリン、水、塩水、エタノール、組換えヒトアルブミン(例:RECOMBUMIN(登録商標))、溶解ゼラチン(例:GELOFUSINE(登録商標))、リン酸塩や有機酸塩などの薬学的に許容される塩類溶液などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
製剤は、従来の賦形剤(すなわち、当技術分野で知られている経口、非消化管、経鼻、吸入、静脈内、皮下、経腸管(transdermal enteral)又は他の適切な投与様式に適したもの)の医薬的に許容される有機又は無機の担体物質と混合してもよい。医薬製剤は滅菌処理するとともに、必要であれば、例えば潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧緩衝液に影響を与える塩類、着色剤、調味料、及び/又は香りを付与する物質などの補助剤と混合することができる。また、必要であれば、その他の活性剤(他の鎮痛剤、抗不安剤又は睡眠剤)と併用することもできる。本明細書で使用される「追加成分」には、医薬用担体として使用できる1種類又は多種類の成分が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明の医薬組成物は、組成物の総重量に対して約0.005%~2.0%の防腐剤を含んでいてもよく、防腐剤は、環境汚染物質にさらされた場合の腐敗を防ぐために使用される。本発明によれば、有用な防腐剤の例としては、ベンジルアルコール、ソルビン酸、パラベン、イミダゾリジニル尿素(imidurea)及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル、乳剤、分散液、懸濁液、溶液、シロップ、顆粒、経皮パッチ、ゲル、粉末、クリーム、ペースト、坐剤又はエアゾールの形態であるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明の医薬製剤の粉末及び顆粒は、公知の方法で調製することができる。この製剤は、例えば、錠剤やカプセルにしたり、水性又は油性の担体を加えて水性又は油性の懸濁液や溶液にしたりして、個体に直接適用することができる。これらの製剤の全ては、さらに1種類又は多種類の分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、イオン性及び非イオン性の界面活性剤、及び防腐剤を含むことができる。また、これらの製剤は、充填剤や甘味料、調味料又は着色剤などの追加の賦形剤を含んでいてもよい。
【0041】
懸濁剤は、通常の方法で調製でき、活性成分を水性又は油性の担体に懸濁させる。水性担体としては、例えば、水や等張食塩水などが含まれる。油性担体としては、例えば、アーモンド油、油性エステル、エタノール、植物油(ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、ヤシ油)、分留した植物油、鉱物油(流動パラフィン)などが含まれる。液体懸濁液は、1種類又は多種類の追加成分を含んでもよく、懸濁剤、分散剤又は湿潤剤、乳化剤、調整剤、防腐剤、緩衝剤、塩類、調味料、着色剤及び甘味料などが含まれるが、これらに限定されるものではない。油性懸濁液は、さらに増粘剤を含むことができる。既知の懸濁剤としては、ソルビトールシロップ、食用油脂の水素添加、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アラビアゴム、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が含まれるが、これらに限定されるものではない。既知の分散剤又は湿潤剤としては、レシチンなどの天然由来のリン脂質の縮合物、アルキレンオキシド、脂肪酸、長鎖脂肪アルコール、脂肪酸とヘキシトールから誘導される部分エステル、又は脂肪酸とヘキシトール無水物(hexitol anhydride)から誘導される部分エステル(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ヘプタデカエチレンオキシセタノール(heptadecaethyleneoxycetanol)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が含まれるが、これらに限定されるものではない。既知の乳化剤としては、レシチン、アラビアゴム、イオン性又は非イオン性の界面活性剤などが含まれるが、これらに限定されるものではない。既知の防腐剤としては、メチル、エチル、又はn-プロピル4-ヒドロキシ安息香酸、アスコルビン酸、ソルビン酸などが含まれるが、これらに限定されるものではない。既知の甘味料としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ショ糖、サッカリンなどが含まれる。
【0042】
水性又は油性溶媒中の活性成分の液体溶液は、液体懸濁液と基本的に同じ方法で調製できるが、主な違いは、活性成分が溶媒中に懸濁するのではなく溶解することである。本明細書にて使用する、「油性」の液体とは、炭素を含む液体分子を含み、しかも水よりも極性の低い液体のことである。本発明の医薬組成物の液剤は、液剤の懸濁液の説明に関連する各成分を含んでいてもよい。懸濁剤は、必ずしも活性成分の溶媒への溶解に寄与するものではないことを理解すべきである。水性担体としては、例えば、水や等張食塩水などが含まれる。油性溶剤としては、例えば、アーモンド油、油性エステル、エタノール、植物油(ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、ヤシ油)、分留した植物油、鉱物油(流動パラフィン)などが含まれる。
【0043】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルション又は油中水型エマルションとして調製、包装又は販売することができる。油相は、植物油(オリーブ油、ピーナッツ油)、鉱物油(流動パラフィン)、又はそれらの組み合わせである。組成物は、天然由来のゴム(アラビアゴムやトラガカントゴム)、天然由来のリン脂質(大豆やレシチン)、脂肪酸とヘキシトール無水物を組み合わせて得られるエステル又は部分エステル(ソルビタンモノオレエートなど)、及びそのような部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)などの1種類又は1種類以上の乳化剤をさらに含んでいてもよい。これらのエマルションは、例えば甘味料や調味料の追加成分を含んでいてもよい。
【0044】
化学化合物を材料に含浸又はコーティングする方法は本技術分野で知られており、しかも化学化合物沈殿させ、又は表面に結合させる方法、合成時に化学化合物を材料構造に組み込む方法(例えば、生理学的に分解可能な材料を使用する方法)、水性又は油性の溶液又は懸濁液を吸収材に吸収させる方法、その後の乾燥の有無)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。成分を混合する方法としては、物理的な粉砕、固体及び懸濁液製剤での顆粒の使用、経皮吸収パッチでの混合などが当業者には知られている。
【0045】
本明細書で用いられる、「治療/処置」、「治療」 及び「治療法」という用語は、薬物又は医薬組成物を個体に投与することにより、個体が経験する疾患又は状態の症状の頻度又は重症度を減少させることを意味する。
【0046】
本説明書で用いられる、「個体」、「被験個体」、「被験者」、及び「患者」という用語は、ヒト又はヒト以外の哺乳類のことである。ヒト以外の哺乳類としては、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯類の哺乳類などの家畜やペットなどが含まれる。好ましくは、個体はヒトである
【0047】
本明細書にて使用する、「がん」という用語には、全ての悪性腫瘍を含み、がん腫(carcinoma)、肉腫(sarcoma)が含まれるが、これらに限定されるものではない。がんは、細胞が制御不能又は異常に分裂し、周囲の組織に侵入して破壊することに起因する。本明細書にて使用する、「増生」及び「増殖」は、有糸分裂を行う細胞を指す。本明細書にて使用する、「転移」とは、悪性腫瘍が発生部位から離れていることを指す。がん細胞は、血流、リンパ系、体腔内、又はそれらの組み合わせによって転移する。
【0048】
「がん」という用語とは、細胞が悪性化し、周囲の組織の上皮細胞に浸潤し、転移を起こすことを指す。
【0049】
「がんワクチン」という用語とは、免疫系を刺激してがんと対抗したり、又はがんの発生を助ける媒介物質と対抗させるワクチンのことである。がんワクチンには大きく分けて2種類があり、健康な被験者ががんになるのを防ぐための「予防型がんワクチン」と、がんに対する体の防御力を高めて既存のがんを治療するための「治療型がんワクチン」がある(Lollini et al, Nature Reviews Cancer, 2006; 6(3):204~216)。本明細書にて使用する、「がんワクチン」という用語は、予防的ながんワクチンと治療的ながんワクチンの両方を含むと解釈されるべきである。
【0050】
範囲:本発明の全文において、各々の実施例は範囲の形式で表すことができる。理解すべきは、範囲形式の記述は単に利便性と簡素化のために過ぎず、本発明の範囲に対する制限として解釈されるべきではない、ということである。よって、範囲の記述は、全ての可能なサブ範囲及びこの範囲内の単一の数値を具体的に開示しているものであると見なされるべきである。例えば、1から5までの範囲の記述は特定に開示するサブ範囲、例えば1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から5まで、3から5まで、そしてこの範囲内の単一及び一部数字、例えば1、2、2.5、3、4及び5を有するものと見なされるべきである。どのような大きさの範囲であっても適用される。
【0051】
本実施例で使用する小胞子霊芝の免疫調節タンパク質(GMI)(台湾特許TW I414307明細書中に開示されている小胞子霊芝の免疫調節タンパク質)は、腫瘍細胞の増殖を抑制する効果を有する。主に上皮細胞成長因子受容体(EGFR)信号伝達経路を介して、上皮細胞成長因子受容体によって誘発される腫瘍細胞の増殖を阻止し、がんの転移(metastasis)や浸潤(infiltration)を阻止することができる。
【0052】
本発明に係る医薬組成物は、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質(GMI)と、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とを含む。
【0053】
本実施例において、小胞子霊芝の免疫調整タンパク質の用量は、5μg/mLから200μg/mLの範囲である。好ましくは、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質の用量は、5μg/mL、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、50μg/mL、55μg/mL、60μg/mL、65μg/mL、70μg/mL、75μg/mL、80μg/mL、85μg/mL、90μg/mL、95μg/mL、100μg/mL、105μg/mL、110μg/mL、115μg/mL、120μg/mL、125μg/mL、130μg/mL、135μg/mL、140μg/mL、145μg/mL、150μg/mL、155μg/mL、160μg/mL、165μg/mL、170μg/mL、175μg/mL、180μg/mL、185μg/mL、190μg/mL、195μg/mL、200μg/mL又は前記いずれか2つの値の間に含まれる任意の値及び範囲とすることができる。もちろん、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質の用量は、組み合わされる処置における担体、投与経路又は必要としている個体及びその生理的状態によって変わる可能性がある。
【0054】
本実施例において、キーホールリンペットヘモシアニンの用量は10μg/mLから200μg/mLの範囲である。好ましくは、キーホールリンペットヘモシアニンの用量は、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、50μg/mL、55μg/mL、60μg/mL、65μg/mL、70μg/mL、75μg/mL、80μg/mL、85μg/mL、90μg/mL、95μg/mL、100μg/mL、105μg/mL、110μg/mL、115μg/mL、120μg/mL、125μg/mL、130μg/mL、135μg/mL、140μg/mL、145μg/mL、150μg/mL、155μg/mL、160μg/mL、165μg/mL、170μg/mL、175μg/mL、180μg/mL、185μg/mL、190μg/mL、195μg/mL、200μg/mL又は前記いずれか2つの値の間に含まれる任意の値及び範囲とすることができる。もちろん、キーホールリンペットヘモシアニンの用量は、組み合わされる処置における小胞子霊芝の免疫調節タンパク質、担体、投与経路又は必要としている個体及びその生理的状態によって変わる可能性がある。
【0055】
本実施例において、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質とキーホールリンペットヘモシアニンとの重量比は20:1から1:40の範囲である。好ましくは、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質とキーホールリンペットヘモシアニンとの重量比は、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、1:28、1:29、1:30、1:31、1:32、1:33、1:34、1:35、1:36、1:37、1:38、1:39、1:40又は前記いずれか2つの値の間に含まれる任意の値及び範囲とすることができる。もちろん、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質とキーホールリンペットヘモシアニンとの重量比は、組み合わされる処置における担体、投与経路又は必要としている個体及びその生理的状態によって変わる可能性がある。
【0056】
本実施例において、医薬組成物は、フィトヘマグルチニン(PHA,phytohemagglutinin)を更に含むことができる。
【0057】
本実施例において、フィトヘマグルチニンの用量は1μg/mLから20μg/mLの範囲である。好ましくは、フィトヘマグルチニンの用量可以是1μg/mL、2μg/mL、3μg/mL、4μg/mL、5μg/mL、6μg/mL、7μg/mL、8μg/mL、9μg/mL、10μg/mL、11μg/mL、12μg/mL、13μg/mL、14μg/mL、15μg/mL、16μg/mL、17μg/mL、18μg/mL、19μg/mL、20μg/mL又は前記いずれか2つの値の間に含まれる任意の値及び範囲とすることができる。もちろん、フィトヘマグルチニンの用量は、組み合わされる処置における小胞子霊芝の免疫調節タンパク質、担体、投与経路又は必要としている個体及びその生理的状態によって変わる可能性がある。
【0058】
本実施例において、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質とフィトヘマグルチニンとの重量比は200:1から1:4の範囲である。好ましくは、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質とフィトヘマグルチニンとの重量比は、200:1、195:1、190:1、185:1、180:1、175:1、170:1、165:1、160:1、155:1、150:1、145:1、140:1、135:1、130:1、125:1、120:1、115:1、110:1、105:1、100:1、95:1、90:1、85:1、80:1、75:1、70:1、65:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4又は前記いずれか2つの値の間に含まれる任意の値及び範囲とすることができる。もちろん、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質とフィトヘマグルチニンとの重量比は、組み合わされる処置における担体、投与経路又は必要としている個体及びその生理的状態によって変わる可能性がある。
【0059】
本実施例において、キーホールリンペットヘモシアニンとフィトヘマグルチニンとの重量比は200:1から1:2の範囲である。好ましくは、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質とフィトヘマグルチニンとの重量比は、200:1、195:1、190:1、185:1、180:1、175:1、170:1、165:1、160:1、155:1、150:1、145:1、140:1、135:1、130:1、125:1、120:1、115:1、110:1、105:1、100:1、95:1、90:1、85:1、80:1、75:1、70:1、65:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2又は前記いずれか2つの値の間に含まれる任意の値及び範囲とすることができる。もちろん、キーホールリンペットヘモシアニンとフィトヘマグルチニンとの重量比は、組み合わされる処置における担体、投与経路又は必要としている個体及びその生理的状態によって変わる可能性がある。
【0060】
本実施例において、医薬組成物は、錠剤、カプセル、乳剤、分散剤、懸濁剤、溶液、シロップ、顆粒、経皮パッチ、ゲル、粉末、クリーム、ペースト、坐剤又はエアゾールの形態であるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、医薬組成物は、分散剤、懸濁剤又は溶液であってもよい。
【0061】
本発明ではまた、上皮細胞がんの治療のための医薬組成物の調製及び用途のための小胞子霊芝の免疫調節タンパク質(GMI)及びキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を提供するものであり、このうち医薬組成物は小胞子霊芝の免疫調節タンパク質とキーホールリンペットヘモシアニンとを含む。また、本発明では更に、小胞子霊芝の免疫調節タンパク質と、キーホールリンペットヘモシアニンとを含む医薬組成物を提供することを含む、上皮細胞がんを罹患した患者を治療するのに用いられる方法を提供する。医薬組成物の用量、担体の種類、形態、その他の特性は、上述した医薬組成物と実質的に同じであり、上記を参考できることから、ここでは別途説明しない。
【0062】
本実施例において、上皮細胞がんは、例えば肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝がん、子宮頸がん、膀胱がん、すい臓がん又は皮膚がんであるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、上皮細胞がんは、肺がん、乳がん、すい臓がん又は膀胱がんとすることができる。
【0063】
以上のことから、本発明による医薬組成物及びその製剤の用途は、上皮性細胞がんの治療に有効性を発揮することができる。
【0064】
以下の実験例は、上皮性細胞がんの治療効果に対して、顕著な効果を提供する、本発明の用途及び医薬組成物を説明するのに用いられる。
【0065】
材料及び方法
【0066】
細胞株:肺がん細胞株A549(ATCCより購入)、Cooper JR.らの、PLoS One. 2016 Oct 28;11(10):e0164438中に記載する培養方法を参考として、37℃/5% CO2インキュベータ中にて、細胞培地(10% FBSが添加されているRPMI-1640培地)で培養を行う。ヒト乳腺がん細胞株MDA-MB-231(生物資源保存及び研究センター,BCRCより購入)、Kim SW.らの、Int J Oncol. 2015 May;46(5):2067-75中に記載する培養方法を参考として、37℃/5% CO2インキュベータ中にて、細胞培地(10% FBSが添加されているRPMI-1640培地)で培養を行う。膀胱がん細胞株T24(BCRCから購入)、Zhao ZF.らの、Med Sci Monit. 2017 Mar 6;23:1156-1164中に記載する培養方法を参考として、37℃/5% CO2インキュベータ中にて、細胞培地(10% FBSが添加されているRPMI-1640培地)で培養を行う。すい臓がん細胞株BxPC-3(BCRCから購入)、Chen RY.らの、World J Gastroenterol. 2014 Oct 28; 20(40):14895-14903中に記載する培養方法を参考として、37℃/5% CO2インキュベータ中にて、細胞培地(10% FBSが添加されているRPMI-1640培地)で培養を行う。このうち、FBS(牛胎児血清)はBiological Industries社から購入した。
【0067】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC):ドナーから全血試料を採取し、Ficollで遠心分離してPBMC細胞を分離した後、凍結保存用の培地に加えて凍結保存しており、その後の実験時には解凍して使用する。FicollによるPBMCの分離と凍結保存の方法は、この分野の一般的な知識であり、既知の実験方法に従って行うことができるため、ここでは別途説明しない。このうち、FicollはGE Healthcare社から購入した。
【0068】
フローサイトメーター試薬の構成:7-AAD/CFSE Cell-Mediated Cytotoxicity Assay Kit(ImmunoChemistry Technologies LLC.,Cat:#969から購入)を使用して、まず10X Assay Bufferを1X Assay Bufferに希釈して(4mLの10X Assay Bufferを36mLの滅菌水中に加える)準備しておく。続いて、CFSE(原管)を200μlのDMSOで逆溶解した後、1X Assay Bufferで1:125で希釈することで、20×CFSE染色剤(8μL CFSE + 992μL 1X Assay Buffer)を調製する。7-AAD(原管)を260μlのDMSOで逆溶解した後、1X Assay Bufferで1:10で希釈することで21X 7-AAD染色剤(40μL 7-AAD + 360μL 1X Assay Buffer)を調製する。
【0069】
処置群の構成:(1)1mL細胞培地(対照群)、(2)1mL細胞培地には10μg又は20μgのPHAが混合されることで、PHA濃度が10μg/mL(低用量PHA群)又は20μg/mLである群(高用量PHA群)を調製する、(3)1mL細胞培地には100μg又は200μgのKLHが混合されることで、KLH濃度が100μg/mL(低用量KLH群)又は200μg/mLである群(高用量KLH群)を調製する、(4)1mL細胞培地には20μg又は200μのGMIが混合されることで、GMI濃度が20μg/mL(低用量GMI群)又は200μg/mLである群(高用量GMI群)を調製する、(5)1mL細胞培地には10μg又は20μgのPHA、100μg又は200μgのKLH及び20μg又は200μgのGMIが混合されることで、PHA濃度が10μg/mL、KLH濃度が100μg/mLであり、且つGMI濃度が20μg/mLである群(低用量医薬組成物群)又はPHA濃度が20μg/mL、KLH濃度が200μg/mLであり且つGMI濃度が200μg/mLである群(高用量医薬組成物群)を調製する。これらのうち、PHAはSIGMA-ALDRICH, Cat:L8902から、KLH (Immucothel(登録商標))はBiosynから購入した。
【0070】
実験例1:PBMC細胞に対するGMI、KLH、PHA及び医薬組成物の影響
【0071】
PBMCを1X 10
6個細胞/ウェルの濃度でそれぞれ以下の条件に懸濁させ、(1)1mL細胞培地(対照群)(2)1mL細胞培地には10μg/mL、20μg/mLのPHA(それぞれPHA群-1、PHA群-2)が混合されており、(3)1mL細胞培地には100μg/mL、200μg/mLのKLH(それぞれKLH群-1、KLH群-2)が混合されており、(4)1mL細胞培地には20μg/mL、200μg/mLのGMI(それぞれGMI群-1、GMI群-2)、(5)1mL細胞培地には10μg/mLのPHA、100μg/mLのKLH及び20μg/mLのGMI(医薬組成物群-1)又は20μg/mLのPHA、200μg/mLのKLH及び200μg/mLのGMI(医薬組成物群-2)が混合されるとともに、24ウェルプレート中に接種し、37℃/5% CO
2インキュベータ中で24時間培養した後、顕微鏡で観察するとともに撮影したところ、結果は
図1Aに示すように、高用量又は低用量のGMI群、PHA群及び医薬組成物群のいずれに関わらず、対照群と比べても、PBMCの凝集反応を引き起こしており、GMI、PHA及び医薬組成物の処置ではPBMCの免疫反応が増加することを意味している。
【0072】
撮影後、細胞をマイクロチューブに回収して、4
oCにて10分間7-AAD染色を行った後、フローサイトメーターで分析を行って(BD Accuri C6)、細胞内にCFSEの蛍光の存在を検出するために、FL-1 channel(緑色蛍光)を設定した。細胞内に7-AADの蛍光の存在を検出するためにFL-3 channel(赤色蛍光)を設定した。フローサイトメーター分析の結果は
図1Bに示すように、横軸はCFSEの蛍光強度、縱軸は7-AADの蛍光強度であり、PBMC細胞は7-AAD染色のみであることから、CFSE蛍光は検出されなかった。AAD
-象限で表す細胞は生きている細胞であり、AAD
+象限で表す細胞は死滅した細胞であることから、よって、細胞毒殺率の計算方式は(AAD
+) / (AAD
- + AAD
+)X100%となる。
図1Bの分析結果を、上記の細胞毒殺率の計算式に従って細胞毒殺率に変換し、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果を
図1Cに示す。
【0073】
図1Cを参照すると、対照群と比較したところ、低用量及び高用量PHA群(図中、PHA群-1、PHA群-2と表記)、低用量GMI群(図中、GMI群-1と表記)及び低用量医薬組成物群(図中、医薬組成物群-1と表記)にて、一部のPBMCを毒殺するのみで、その他のグループはPBMCに対しての毒殺はほとんど影響なかった。
図1A~
図1Cの結果から分かるように、PHA、KLH、GMI、医薬組成物の処置は、PBMCの生存率にはほとんど影響がなく、しかもPBMCの免疫反応を高めることができた。
【0074】
実験例2:A549細胞(肺がん細胞)に対するPHA、KLH、GMI及び医薬組成物の影響
【0075】
A549細胞を1X107個細胞/mLの濃度で19 mLの1X Assay Buffer中に懸濁させて、20X CFSE 1mLを加えて37℃で15分間培養した後、細胞培地20mLを加えることで、CFSEの結合反応を終了させて、次に1200rpmで5分間遠心分離した後、上清液を除去した。4mLの細胞培地で細胞を再懸濁させた後、0.2mLを24ウェルプレート中に接種した。
【0076】
次に、そのA549細胞を2つの処置群に分け、1つ目はA549細胞処置群(PBMCと共培養しない)であり、2つ目はA549+PBMC処置群(A549をPBMCと共培養し、生体内の腫瘍の環境をシミュレートする)である。
【0077】
A549細胞処置群に関して:
【0078】
(1)細胞培地(対照群)0.3mL、(2)PHAが混合されている細胞培地(PHA群)0.3mL、(3)KLHが混合されている細胞培地(KLH群)0.3mL、(4)GMIが混合されている細胞培地(GMI群)0.3mL、(5)PHA、KLH及びGMIが混合されている細胞培地(医薬組成物群)0.3mL、異なった群を順に加えて、37℃/5% CO
2インキュベータ中で24時間培養した後、上清液をマイクロチューブに収集して、各ウェル中にDPBS 0.4 mLを加えて細胞を洗浄した後、洗浄後の上清液をマイクロチューブに回収して、DPBS 0.3mLを再び加えて、顕微鏡で観察するとともに撮影した。
図2A及び
図2Bを参照されたい。
図2A及び
図2Bは、本発明の医薬組成物、PHA、KLH、GMIで処置したヒト肺がん細胞株(A549細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
図2Aは低用量処置の群、
図2Bは高用量処置の群を示す。
図2Aでは、PHA群は10μg/mLのPHA、KLH群は100μg/mLのKLH、GMI群は20μg/mLのGMI、そして医薬組成物群は10μg/mLのPHA+100μg/mLのKLH+20μg/mLのGMIである。
図2Bでは、PHA群は20μg/mLのPHA、KLH群は200μg/mLのKLH、GMI群は200μg/mLのGMI、そして医薬組成物群は20μg/mLのPHA+200μg/mLのKLH+200μg/mLのGMIである。顕微鏡で観察した結果は、PHA群とKLH群とでは、高用量でも低用量でも、対照群に比べて付着細胞数はあまり変化しておらず、つまりこの2つの処置はA549細胞に対する毒殺効果は大きくないことを示している。一方では、対照群に比べてGMI群と医薬組成物群では、付着細胞数は明らかに減少していることから、この2つの処置はA549細胞に対して毒殺効果を持つことが示されたことになる。
【0079】
撮影後、DPBS 0.3mLをマイクロチューブに回収し、各ウェルにAccutase
TM細胞分離液200μLを細胞が隠れるように加え 、37℃で2分間処置して24ウェルプレートから細胞を剥離させ、前に回収した上清液で洗浄し、細胞をマイクロチューブに収集し、最後に7-AADを4℃で10分間染色した。その後、フローサイトメーターで分析を行って(BD Accuri C6)、細胞内にCFSEの蛍光の存在を検出するために、FL-1 channel(緑色蛍光)を設定した。細胞内に7-AADの蛍光の存在を検出するためにFL-3 channel(赤色蛍光)を設定した。フローサイトメーター分析の結果は
図2C、
図2Dに示すように、横軸はCFSEの蛍光強度、縱軸は7-AADの蛍光強度であり、CFSE
+AAD
-象限で示す細胞は生きている細胞であり、CFSE
+AAD
+象限で示す細胞は死滅した細胞であることから、よって、細胞毒殺率の計算方式は(CFSE
+AAD
+) / (CFSE
+AAD
- + CFSE
+AAD
+)×100%となる。
図2C及び
図2Dの分析結果を、上記の細胞毒殺率の計算式に従って細胞毒殺率を算出した後、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果を
図2E及び
図2Fに示す。
【0080】
図2Cから
図2Fを参照されたい。
図2C及び
図2Eでは、PHA群は10μg/mLのPHA、KLH群は100μg/mLのKLH、GMI群は20μg/mLのGMI、医薬組成物群は、10μg/mLのPHA+100μg/mLのKLH+20μg/mLのGMIである。
図2D及び
図2Fでは、PHA群は20μg/mLのPHA、KLH群は200μg/mLのKLH、GMI群は200μg/mLのGMI、医薬組成物群は20μg/mLのPHA+200μg/mLのKLH+200μg/mLのGMIとなっている。
図2Cでは、対照群、PHA群、KLH群、GMI群、医薬組成物群のフローサイトメーターによる1回実験で得られた細胞毒殺率は、それぞれ0.9%、4.6%、1.0%、8.1%、17.4%であった。
図2Eに示すように、低用量の処置でのフローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は肺がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は肺がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は肺がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は肺がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもA549細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、肺がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、肺がんの治療においてより効果的であったことを示している。また、
図2Dの高用量群において、フローサイトメーターによる1回実験で得られた対照群、PHA群、KLH群、GMI群、医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ0.9%、13.8%、1.4%、29.3%、39.5%であった。
図2Fの結果が示すように、高用量の処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は肺がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は肺がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は肺がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は肺がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもA549細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、肺がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、肺がんの治療においてより効果的であったことを示している。
図2Eの低用量群処置の結果と比較して、
図2Fの高用量群の結果では、医薬組成物群の用量を増やした時、肺がん細胞が死滅する現象はより顕著になったことを示している。
図2E及び
図2Fにおいて、*は2群間の比較、P<0.05、**は2群間の比較、P<0.01、***は2群間の比較、P<0.001を示し、各実験では3回の独立した実験が行われ、エラーバーは平均の標準誤差(standard error of the mean,SEM)を示す。
【0081】
A549+PBMC処置群に関して:
【0082】
PBMCを1X 10
7個の細胞で1mLの細胞培地に懸濁させて、0.1mLを24ウェルプレートに加える。また、異なる群毎にそれぞれ(1)PHAが混合されている細胞培地(PHA群)0.2mL、(2)KLHが混合されている細胞培地(KLH群)0.2mL、(3)GMIが混合されている細胞培地(GMI群)0.2mL、(4)PHA、KLH及びGMIが混合されている細胞培地(医薬組成物群)0.2mLを24ウェルプレート中に加える(ウェル内には5x10
5個のA549細胞が注入済みである)。ここでは、ヒトの末梢血細胞と腫瘍細胞の比率を2:1にすることで、ヒトの体内での腫瘍の状態を再現している。24ウェルプレートを37℃/5% CO
2インキュベータ中で24時間培養した後、上清液をマイクロチューブ中に収集し、各ウェル中にDPBS 0.4 mLを加えて細胞を洗浄した後、洗浄後の上清液をマイクロチューブに回収して、DPBS 0.3 mLを再び加えて、顕微鏡で観察するとともに撮影した。
図2A及び
図2BのPBMCが加えられている群(図中はPBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示す)を再度参照されたい。顕微鏡で観察した結果は、PBMC+PHA群及びPBMC+KLH群では、高用量でも低用量でも、対照群に比べて付着細胞数はあまり変化しておらず、つまりこの2つの処置はA549細胞に対する毒殺効果は大きくないことを示している。一方では、対照群に比べてPBMC+GMI群及びPBMC+医薬組成物群では、付着細胞数は明らかに減少していることから、この2つの処置はA549細胞に対して毒殺効果を持つことが示されたことになる。
【0083】
撮影後、DPBS 0.3mLをマイクロチューブに収集し、各ウェルにAccutaseTM細胞分離液200μLを細胞が隠れるように加え 、37℃で2分間処置して24ウェルプレートから細胞を剥離させ、前に回収した上清液で洗浄し、細胞をマイクロチューブに収集し、最後に7-AADを4℃で10分間染色した。その後、フローサイトメーターで分析を行うが、フローサイトメーターの設定方式、分析方法、細胞毒殺率の計算方式についてはすでに詳細に説明しているので、ここでは別途説明しない。
【0084】
図2Cから
図2Fを再度参照されたい。
図2C中(図中は、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示している)では、PBMCがある処置状況にて、同時に低用量で投与する処置を行うことで、フローサイトメーターで1回実験で得られた対照群、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ0.9%、4.7%、2.7%、18.6%、22.5%であった。
図2Eに示すように、PBMCがある処置状況で、同時に低用量で投与する処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は肺がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は肺がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は肺がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は肺がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、PBMCがある状況で、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもA549細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、肺がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、肺がんの治療により効果的であったことを示している。また、
図2D中(図中、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示している)では、PBMCがある処置状況にて、同時に高用量の処置を行うことで、フローサイトメーターで1回実験で得られた対照群、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群及びPBMC+医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ0.9%、13.9%、4.7%、48.6%及び55%であった。
図2Fの結果が示すように、PBMCがある処置状況で、同時に高用量で投与する処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は肺がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は肺がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は肺がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は肺がん細胞にもたらす毒殺現象はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもA549細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、肺がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、肺がんの治療においてより効果的であったことを示している。PBMCがある状況では、
図2Eの低用量群処置の結果と比較して、
図2Fの高用量群の結果では、医薬組成物群の用量を増やした時、肺がん細胞が死滅する現象はより顕著になったことを示している。
【0085】
本発明の医薬組成物は、A549細胞を毒殺することに共働作用を有する:
【0086】
2種類以上の薬剤が生物活性に対する作用は、(1)共働作用(synergism)、(2)相加作用(additive effect)、(3)拮抗作用(antagonism)の3種類がある。Chou TCらの、Quantitative analysis of dose-effect relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors, Adv Enzyme Regul, Vol. 22, 1984, pp.27~55の文献及びLiang Zhaoらの、AuEvaluation of Combination Chemotherapy: Integration of Nonlinear Regression, Curve Shift, Isobologram, and Combination Index Analysis, Clinical Cancer Research, Vol. 10, 2004, pp.7994~8004の文献で提案されている薬物併用効果指数(combination index,CI)は、2つの薬剤の相互作用を分析・評価するために用いることができ、その評価の計算公式は以下の通りである:CI=CA,x / ICx,A + CB,x / ICx,B、式中CA,x及びCB,xは2つの薬剤A、Bを併用してx%の効果が得られた時の個別の薬剤濃度であり、ICx,A及びICx,Bは1つの薬物を単独で使用してx%の効果が得られた時の薬剤濃度である。計算結果によると、2つの薬剤の組み合わせは、CI値が<1の場合は共働作用、CI値=1の場合は相加作用、CI値が>1の場合は拮抗作用があった。
【0087】
本実験例では、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果は
図2E及び
図2Fに示すように、対照群A549の細胞毒殺率は0.97%であるが、もし10μg/mLのPHA、100μg/mLのKLH又は20μg/mLのGMIのみを単独で使用した場合、A549細胞に対する毒殺率はそれぞれ5.23%、2.3%及び9.23%であった。医薬組成物群(10μg/mLのPHA+100μg/mLのKLH+20μg/mLのGMI)の一部では、A549細胞に対する毒殺率は17.28%であった。また、20μg/mLのPHA、200μg/mLのKLH或は200μg/mLのGMIのみを単独で使用した場合、A549細胞に対する毒殺率はそれぞれ11.83%、1.7%及び23.83%であった。医薬組成物群(20μg/mLのPHA+200μg/mLのKLH+200μg/mLのGMI)の一部分では、A549細胞に対する毒殺率は40.53%であった。これら数値を用いて、PHA、KLH及びGMIの細胞毒殺をそれぞれ算出する一次方程式を用いて、低用量医薬組成物群(10μg/mLのPHA+100μg/mLのKLH+20μg/mLのGMI)でのA549細胞に対する毒殺率が17.28%であることを例として、17.28%をそれぞれPHA、KLH及びGMIの一次方程式のy値中に代入すると、それぞれICx,PHA=27.62、ICx,KLH=1557.42及びICx,GMI=117.05が得られて、更に3つの薬物併用効果指数(CI)を計算すると、CI=(10/27.62)+(100/1557.42)+(20/117.05)=0.6で、結果は<1となることから、低用量時には、医薬組成物群はA549細胞を毒殺することに共働作用を有するということを示している。同様の方式で高用量を算出した時、CI値=0.88で、結果は<1となり、高用量の医薬組成物群はA549細胞を毒殺することにも同様に共働作用を有するということを示している。一方、PBMCがある状況で、低用量医薬組成物群CI値=0.41、高用量医薬組成物群CI値=0.96、結果はいずれも<1となり、PBMCがある状況で、PHA、KLH又はGMIを単独で使用するものと比べて、低用量又は高用量の医薬組成物群に関わらず、共働作用を有する。
【0088】
実験例3:MDA-MB-231細胞(ヒト乳腺がん細胞)に対するPHA、KLH、GMI及び医薬組成物の影響
【0089】
本実験例のMDA-MB-231細胞の実験方法は実験例2と同じであって、相違点がA549細胞の代わりにMDA-MB-231細胞に変えたのみで、同じ実験を行ったことから、実験の詳細な手順はここでは別途説明しない。
【0090】
MDA-MB-231細胞処置群の実験結果に関して:
【0091】
図3A及び
図3Bを参照されたい。
図3A及び
図3Bは、本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト乳腺がん細胞(MDA-MB-231細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
図3Aは低用量処置の群、
図3Bは高用量処置の群を示す。
図3Aでは、PHA群は10μg/mLのPHA、KLH群は100μg/mLのKLH、GMI群は20μg/mLのGMI、そして医薬組成物群は10μg/mLのPHA+100μg/mLのKLH+20μg/mLのGMIである。
図3Bでは、PHA群は20μg/mLのPHA、KLH群は200μg/mLのKLH、GMI群は200μg/mLのGMI、そして医薬組成物群は20μg/mLのPHA+200μg/mLのKLH+200μg/mLのGMIである。顕微鏡で観察した結果は、PHA群とKLH群とでは、高用量でも低用量でも、対照群に比べて付着細胞数はあまり変化しておらず、つまりこの2つの処置はMDA-MB-231細胞に対する毒殺効果は大きくないことを示している。一方では、対照群に比べてGMI群と医薬組成物群では、付着細胞数は明らかに減少していることから、この2つの処置はMDA-MB-231細胞に対して毒殺効果を持つことが示されたことになる。
【0092】
図3Cから
図3Fを参照されたい。
図3C及び
図3Eでは、PHA群は10μg/mLのPHA、KLH群は100μg/mLのKLH、GMI群は20μg/mLのGMI、医薬組成物群は10μg/mLのPHA+100μg/mLのKLH+20μg/mLのGMIである。
図3D及び
図3Fでは、PHA群は20μg/mLのPHA、KLH群は200μg/mLのKLH、GMI群は200μg/mLのGMI、医薬組成物群は20μg/mLのPHA+200μg/mLのKLH+200μg/mLのGMIとなっている。
図3Cに示すように、対照群、PHA群、KLH群、GMI群、医薬組成物群のフローサイトメーターによる1回の反復実験で得られた細胞毒殺率は、それぞれ1.8%、5.4%、2.8%、44.7%及び54.5%であった。
図3Eに示すように、低用量の処置でのフローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群及びKLH群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもMDA-MB-231細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、乳腺がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、乳腺がんの治療においてより効果的であったことを示している。また、
図3Dの高用量群において、フローサイトメーターによる1回実験で得られた対照群、PHA群、KLH群、GMI群、医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ1.8%、14.7%、3.0%、40.8%及び55.7%であった。
図3Fの結果が示すように、高用量の処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は乳腺がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬化合物群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもMDA-MB-231細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、乳腺がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、乳腺がんの治療においてより効果的であったことを示している。
図3Eの低用量群処置の結果と比較して、
図3Fの高用量群の結果では、医薬組成物群の用量を増やした時、乳腺がん細胞が死滅する現象はより顕著になったことを示している。
図3E及び
図3Fにおいて、*は2群間の比較、P<0.05、***は2群間の比較、P<0.001を示し、各実験では3回の独立した実験が行われ、エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0093】
MDA-MB-231+PBMC処置群の実験結果に関して:
【0094】
図3A及び
図3BのPBMCが加えられている群(PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示す)を再度参照されたい。顕微鏡で観察した結果は、PBMC+PHA群及びPBMC+KLH群では、高用量でも低用量でも、対照群に比べて付着細胞数はあまり変化しておらず、つまりこの2つの処置はMDA-MB-231細胞に対する毒殺効果は大きくないことを示している。一方では、対照群に比べてPBMC+GMI群及びPBMC+医薬組成物群では、付着細胞数は明らかに減少していることから、この2つの処置はMDA-MB-231細胞に対して毒殺効果を持つことが示されたことになる。
【0095】
図3Cから
図3Fを再度参照されたい。
図3C中(図中、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示している)では、PBMCがある処置状況にて、同時に低用量で投与する処置を行うことで、フローサイトメーターで1回実験で得られた対照群、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群及びPBMC+医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ1.8%、32.4%、4.4%、64.4%及び73.0%であった。
図3Eに示すように、PBMCがある処置状況で、同時に低用量で投与する処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は乳腺がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、PBMCがある状況で、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもMDA-MB-231細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、乳腺がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、乳腺がんの治療においてより効果的であったことを示している。また、
図3D中(図中、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示している)では、PBMCがある処置状況にて、同時に高用量の処置を行うことで、フローサイトメーターによる1回実験で得られた対照群、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群及びPBMC+医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ1.8%、48.5%、4.3%、59.0%及び64.7%であった。
図3Fの結果が示すように、PBMCがある処置状況で、同時に高用量で投与する処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は乳腺がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は乳腺がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は乳腺がん細胞にもたらす毒殺現象はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもMDA-MB-231細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、乳腺がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、乳腺がんの治療においてより効果的であったことを示している。
【0096】
本発明の医薬組成物は、MDA-MB-231細胞を毒殺することに共働作用を有する:
【0097】
本実験例にて、PBMCがない状況では、低用量医薬組成物群CI値=0.21であって、PBMCがある状況では、低用量医薬組成物群CI値=0.45であって、結果はいずれも<1となり、PBMCがある又はない状況に関わらず、PHA、KLH又はGMIを単独で使用するものと比べて、低用量の医薬組成物群はMDA-MB-231細胞を毒殺することに共働作用を有する。
【0098】
実験例4:T24細胞(ヒト膀胱がん細胞)に対するPHA、KLH、GMI及び医薬組成物の影響
【0099】
本実験例のT24細胞の実験方法は実験例2と同じであって、相違点がA549細胞の代わりにT24細胞に変えたのみで、同じ実験を行ったことから、実験の詳細な手順はここでは別途説明しない。
【0100】
T24細胞処置群の実験結果に関して:
【0101】
図4A及び
図4Bを参照されたい。
図4A及び
図4Bは、本発明の医薬組成物、PHA、KLH及びGMIで処置したヒト膀胱がん細胞(T24細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
図4Aは低用量処置の群、
図4Bは高用量処置の群を示す。
図4Aでは、PHA群は10μg/mLのPHA、KLH群は100μg/mLのKLH、GMI群は20μg/mLのGMI、そして医薬組成物群は10μg/mLのPHA+100μg/mLのKLH+20μg/mLのGMIである。
図4Bでは、PHA群は20μg/mLのPHA、KLH群は200μg/mLのKLH、GMI群は200μg/mLのGMI、そして医薬組成物群は20μg/mLのPHA+200μg/mLのKLH+200μg/mLのGMIである。顕微鏡で観察した結果は、PHA群とKLH群とでは、高用量でも低用量でも、対照群に比べて付着細胞数はあまり変化しておらず、つまりこの2つの処置はT24細胞に対する毒殺効果は大きくないことを示している。一方では、対照群に比べてGMI群と医薬組成物群では、付着細胞数は明らかに減少していることから、この2つの処置はT24細胞に対して毒殺効果を持つことが示されたことになる。
【0102】
図4Cから
図4Fを参照されたい。
図4C及び
図4Eでは、PHA群は10μg/mLのPHA、KLH群は100μg/mLのKLH、GMI群は20μg/mLのGMI、医薬組成物群は10μg/mLのPHA+100μg/mLのKLH+20μg/mLのGMIである。
図4D及び
図4Fでは、PHA群は20μg/mLのPHA、KLH群は200μg/mLのKLH、GMI群は200μg/mLのGMI、医薬組成物群は20μg/mLのPHA+200μg/mLのKLH+200μg/mLのGMIとなっている。
図4Cに示すように、対照群、PHA群、KLH群、GMI群、医薬組成物群のフローサイトメーターによる1回実験で得られた細胞毒殺率は、それぞれ3.1%、22.1%、2.8%、50.2%及び66.9%であった。
図4Eに示すように、低用量の処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は膀胱がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもT24細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、膀胱がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、膀胱がんの治療においてより効果的であったことを示している。また、
図4Dの高用量群において、フローサイトメーターによる1回実験で得られた対照群、PHA群、KLH群、GMI群及び医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ3.1%、39.4%、5.9%、61.9%及び75.5%であった。
図4Fの結果が示すように、高用量の処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は膀胱がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもT24細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、膀胱がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、膀胱がんの治療においてより効果的であったことを示している。
図4Eの低用量群処置の結果と比較して、
図4Fの高用量群の結果では、医薬組成物群の用量を増やした時、膀胱がん細胞が死滅する現象はより顕著になったことを示している。
図4E及び
図4Fにおいて、*は2群間の比較、P<0.05、**は2群間の比較、P<0.01、***は2群間の比較、P<0.001を示し、各実験では3回の独立した実験が行われ、エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0103】
T24+PBMC処置群の実験結果に関して:
【0104】
図4A及び
図4BのPBMCが加えられている群(PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示す)を再度参照されたい。顕微鏡で観察した結果は、PBMC+PHA群及びPBMC+KLH群では、高用量でも低用量でも、対照群に比べて付着細胞数はあまり変化しておらず、つまりこの2つの処置はT24細胞に対する毒殺効果は大きくないことを示している。一方では、対照群に比べてPBMC+GMI群及びPBMC+医薬組成物群では、付着細胞数は明らかに減少していることから、この2つの処置はT24細胞に対して毒殺効果を持つことが示されたことになる。
【0105】
図4Cから
図4Fを再度参照されたい。
図4C中(図中、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示している)では、PBMCがある処置状況にて、同時に低用量で投与する処置を行うことで、フローサイトメーターによる1回実験で得られた対照群、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ3.1%、28%、5.0%、62.3%及び68.5%であった。
図4Eに示すように、PBMCがある処置状況で、同時に低用量で投与する処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は膀胱がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、PBMCがある状況で、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもT24細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、膀胱がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、膀胱がんの治療においてより効果的であったことを示している。また、
図4D中(図中、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示している)では、PBMCがある処置状況にて、同時に高用量の処置を行うことで、フローサイトメーターによる1回実験で得られた対照群、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群及びPBMC+医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ3.1%、40.9%、6.9%、80.8%及び84.0%であった。
図4Fの結果が示すように、PBMCがある処置状況で、同時に高用量で投与する処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群は膀胱がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群は膀胱がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群は膀胱がん細胞にもたらす毒殺現象はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもT24細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、膀胱がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、膀胱がんの治療においてより効果的であったことを示している。PBMCがある状況では、
図4Eの低用量群処置の結果と比較して、
図4Fの高用量群の結果では、医薬組成物群の用量を増やした時、膀胱がん細胞が死滅する現象はより顕著になったことを示している。
【0106】
本発明の医薬組成物は、T24細胞を毒殺することに共働作用を有する:
【0107】
本実験例にて、PBMCがない状況では、低用量医薬組成物群CI値=0.53であって、PBMCがある状況では、低用量医薬組成物群CI値=0.56であって、結果はいずれも<1となり、PBMCがある又はない状況に関わらず、PHA、KLH又はGMIを単独で使用するものと比べて、低用量の医薬組成物群はT24細胞を毒殺することに共働作用を有する。
【0108】
実験例5:BxPC-3細胞(ヒトすい臓がん細胞)に対するPHA、KLH、GMI及び医薬組成物の影響
【0109】
本実験例のBxPC-3細胞の実験方法は実験例2と同じであって、相違点がA549細胞の代わりにBxPC-3細胞に変えたのみで、同じ実験を行ったことから、実験の詳細な手順はここでは別途説明しない。
【0110】
BxPC-3細胞処置群の実験結果に関して:
【0111】
図5A及び
図5Bを参照されたい。
図5A及び
図5Bは、本発明の医薬組成物、PHA、KLH、GMIで処置したヒトすい臓がん細胞(BxPC-3細胞)を光学顕微鏡で観察した研究結果を示す写真である。
図5Aは低用量処置の群、
図5Bは高用量処置の群を示す。
図5Aでは、PHA群は10μg/mLのPHA、KLH群は100μg/mLのKLH、GMI群は20μg/mLのGMI、そして医薬組成物群は10μg/mLのPHA+100μg/mLのKLH+20μg/mLのGMIである。
図5Bでは、PHA群は20μg/mLのPHA、KLH群は200μg/mLのKLH、GMI群は200μg/mLのGMI、そして医薬組成物群は20μg/mLのPHA+200μg/mLのKLH+200μg/mLのGMIである。顕微鏡で観察した結果は、PHA群とKLH群とでは、高用量でも低用量でも、対照群に比べて付着細胞数はあまり変化しておらず、つまりこの2つの処置はBxPC-3細胞に対する毒殺効果は大きくないことを示している。一方では、対照群に比べてGMI群と医薬組成物群では、付着細胞数は明らかに減少していることから、この2つの処置はBxPC-3細胞に対して毒殺効果を持つことが示されたことになる。
【0112】
図5Cから
図5Fを参照されたい。
図5C及び
図5Eでは、PHA群は10μg/mLのPHA、KLH群は100μg/mLのKLH、GMI群は20μg/mLのGMI、医薬組成物群は、10μg/mLのPHA+100μg/mLのKLH+20μg/mLのGMIである。
図5D及び
図5Fでは、PHA群は20μg/mLのPHA、KLH群は200μg/mLのKLH、GMI群は200μg/mLのGMI、医薬組成物群は20μg/mLのPHA+200μg/mLのKLH+200μg/mLのGMIとなっている。
図5Cに示すように、対照群、PHA群、KLH群、GMI群、医薬組成物群のフローサイトメーターによる1回実験で得られた細胞毒殺率は、それぞれ7.0%、7.9%、5.2%、14.3%及び25%であった。
図5Eに示すように、低用量の処置でのフローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群及びKLH群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもBxPC-3細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、すい臓がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、すい臓がんの治療においてより効果的であったことを示している。また、
図5Dの高用量群において、フローサイトメーターによる1回実験で得られた対照群、PHA群、KLH群、GMI群及び医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ7.0%、12.5%、6.3%、47.2%及び60.9%であった。
図5Fの結果が示すように、高用量の処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群はすい臓がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもBxPC-3細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、すい臓がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、すい臓がんの治療により効果的であったことを示している。
図5Eの低用量群処置の結果と比較して、
図5Fの高用量群の結果では、医薬組成物群の用量を増やした時、すい臓がん細胞が死滅する現象はより顕著になったことを示している。
図5E及び
図5Fにおいて、*は2群間の比較、P<0.05、**は2群間の比較、P<0.01、***は2群間の比較、P<0.001を示し、各実験では3回の独立した実験が行われ、エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0113】
BxPC-3+PBMC処置群の実験結果に関して:
【0114】
図5A及び
図5BのPBMCが加えられている群(PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示す)を再度参照されたい。顕微鏡で観察した結果は、PBMC+PHA群及びPBMC+KLH群では、高用量でも低用量でも、対照群に比べて付着細胞数はあまり変化しておらず、つまりこの2つの処置はBxPC-3細胞に対する毒殺効果は大きくないことを示している。一方では、対照群に比べてPBMC+GMI群及びPBMC+医薬組成物群では、付着細胞数は明らかに減少していることから、この2つの処置はBxPC-3細胞に対して毒殺効果を持つことが示されたことになる。
【0115】
図5Cから
図5Fを再度参照されたい。
図5C中(図中、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示している)では、PBMCがある処置状況にて、同時に低用量で投与する処置を行うことで、フローサイトメーターによる1回実験で得られた対照群、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ7.0%、29.4%、7.5%、50.4%及び56.7%であった。
図5Eに示すように、PBMCがある処置状況で、同時に低用量で投与する処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群はすい臓がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果はGMI群よりも顕著であることから、PBMCがある状況で、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもBxPC-3細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、すい臓がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、すい臓がんの治療により効果的であったことを示している。また、
図5D中(図中、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群、PBMC+医薬組成物群を示している)では、PBMCがある処置状況にて、同時に高用量の処置を行うことで、フローサイトメーターによる1回実験で得られた対照群、PBMC+PHA群、PBMC+KLH群、PBMC+GMI群及びPBMC+医薬組成物群の細胞毒殺率はそれぞれ7.0%、50%、19.5%、51.4%及び59.5%であった。
図5Fの結果が示すように、PBMCがある処置状況で、同時に高用量で投与する処置にて、フローサイトメーターを用いて3回実験を繰り返して行い統計して得られた細胞毒殺率の結果では、PHA群はすい臓がん細胞に対して部分的に毒殺作用を示し、KLH群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果は大きくなかった。GMI群はすい臓がん細胞に対する毒殺効果が優れており、そして医薬組成物群はすい臓がん細胞にもたらす毒殺現象はGMI群よりも顕著であることから、医薬組成物群(PHA+KLH+GMI)はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりもBxPC-3細胞に対する毒殺現象はより顕著で且つ明らかに異なっており、すい臓がんの細胞を死滅させる現象がより顕著となり、すい臓がんの治療においてより効果的であったことを示している。PBMCがある状況では、
図5Eの低用量群処置の結果と比較して、
図5Fの高用量群の結果では、医薬組成物群の用量を増やした時、すい臓がん細胞が死滅する現象はより顕著になったことを示している。
【0116】
本発明の医薬組成物は、BxPC-3細胞を毒殺することに共働作用を有する:
【0117】
本実験例にて、PBMCがない状況では、低用量医薬組成物群CI値=0.45であり、高用量医薬組成物群CI値=0.9であって、PBMCがある状況では、低用量医薬組成物群CI値=0.52であって、結果はいずれも<1となり、PBMCがない状況では、PHA、KLH又はGMIを単独で使用するものと比べて、低用量及び高容量の医薬組成物群はBxPC-3細胞を毒殺することに共働作用を有しており、そしてPBMCがある状況では、PHA、KLH又はGMIを単独で使用するものと比べて、低用量の医薬組成物群はBxPC-3細胞を毒殺することに共働作用を有する。
【0118】
実験例1の結果によれば、本発明の医薬組成物中のGMIとPHAは、免疫細胞(PBMC)の細胞生存率に影響を与えることなく、免疫反応を高めることができることを示している。実験例2の結果によれば、本発明の実施例の医薬組成物は、ヒト肺がん細胞(A549)において顕著な細胞死滅をもたらしており、細胞が死滅する現象はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりも顕著であって、しかも共働作用があったことを示している。また、医薬組成物の濃度が高くなるにつれて、肺がん細胞死滅をもたらす現象はより顕著になった。さらに、医薬組成物は、免疫細胞の免疫反応を増進して、腫瘍細胞への毒殺効果を高めることができる。実験例3の結果によれば、本発明の実施例の医薬組成物は、乳腺がん細胞(MDA-MB-231)において顕著な細胞死滅をもたらしており、細胞が死滅する現象はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりも顕著であって、しかも共働作用があったことを示している。また、医薬組成物の濃度が高くなるにつれて、乳腺がん細胞死滅をもたらす現象はより顕著になった。さらに、医薬組成物は、免疫細胞の免疫反応を増進して、腫瘍細胞への毒殺効果を高めることができる。実験例4の結果によれば、本発明の実施例の医薬組成物は、膀胱がん細胞(T24)において顕著な細胞死滅をもたらしており、細胞が死滅する現象はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりも顕著であって、しかも共働作用があったことを示している。また、医薬組成物の濃度が高くなるにつれて、膀胱がん細胞死滅をもたらす現象はより顕著になった。さらに、医薬組成物は、免疫細胞の免疫反応を増進して、腫瘍細胞への毒殺効果を高めることができる。実験例5の結果によれば、本発明の実施例の医薬組成物は、すい臓がん細胞(BxPC-3)において顕著な細胞死滅をもたらしており、細胞が死滅する現象はPHA、KLH、GMIを単独で投与した群よりも顕著であって、しかも共働作用があったことを示している。また、医薬組成物の濃度が高くなるにつれて、すい臓がん細胞死滅をもたらす現象はより顕著になった。さらに、医薬組成物は、免疫細胞の免疫反応を増進して、腫瘍細胞への毒殺効果を高めることができる。特に、上記の実験例は説明のためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0119】
上記の細胞培養試験からのデータは、ヒトが使用するための用量の範囲として調合でき、好ましくは、ED50を含み且つ毒性が極めて低いか、又は無毒性で医薬組成物の循環濃度の範囲で処方するために使用することができ、その範囲内では、ヒトに対する治療有効量は、使用する剤形及び使用する投薬経路に応じて変化することができる。本発明の方法で使用される医薬組成物の場合、治療有効量は、細胞培養試験から推定することができる。
【0120】
以上のことから、本発明の医薬組成物及びその製剤の用途は、腫瘍細胞に対して免疫細胞の特異能動免疫反応を効果的に促進でき、ひいては、腫瘍細胞に対する医薬組成物の毒殺率が高まり、腫瘍細胞の生存率を低下させて、腫瘍の治療効果を得ることができる。
【0121】
上記は単に例示に過ぎず、限定するものではない。本発明の技術思想及び範囲を超えることなく、これに対して行う等価の修正又は変更のいずれも、別紙の特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の医薬組成物及びその製剤の用途は、腫瘍細胞に対して免疫細胞の特異能動免疫反応を効果的に促進でき、ひいては、腫瘍細胞に対する医薬組成物の毒殺率が高まり、腫瘍細胞の生存率を低下させて、腫瘍の治療効果を得ることができる。そのため、腫瘍の治療には重要かつ実質的な利用性を備える。