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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20240325BHJP
   E04C 2/38 20060101ALI20240325BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20240325BHJP
   E04B 2/72 20060101ALI20240325BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
E04B2/74 511L
E04C2/38 P
E04C2/30 Y
E04B2/72 F
E04B2/72 H
E04B2/56 632L
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021085709
(22)【出願日】2021-05-20
(65)【公開番号】P2022178719
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】523242745
【氏名又は名称】西尾レントオール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大倉 義憲
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-222935(JP,A)
【文献】実開昭64-31810(JP,U)
【文献】特表2009-522476(JP,A)
【文献】実開昭63-48832(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/72ー 2/74
E04B 2/56
E04C 2/30、 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接する一方材(41)と他方材(51または52)を連結する固定具であって、掛け片(11または12)と支点ピン(21)と係止ピン(38)とからなり、
前記掛け片(11または12)の一端側には、前記支点ピン(21)を差し込むための中心穴(17)を設けてあり、また該掛け片(11または12)の他端側には、前記係止ピン(38)が嵌まり込む接続部(18または19)を設けてあり、
前記掛け片(11または12)は、前記一方材(41)側の収容溝(46)と前記他方材(51または52)側の対向溝(56)とからなる内部空間に収容され、且つ該掛け片(11または12)は、その全体を該収容溝(46)に収容可能であり、
前記掛け片(11または12)を前記収容溝(46)に収容した状態において、前記一方材(41)の表面から前記中心穴(17)に向けて前記支点ピン(21)を差し込むことで、該掛け片(11または12)は、該支点ピン(21)を中心として回転可能になり、
前記係止ピン(38)は、前記対向溝(56)と交差するように差し込み、前記掛け片(11または12)の一部が該対向溝(56)に入り込み、且つ該係止ピン(38)が前記接続部(18または19)に嵌まり込むことで前記一方材(41)と前記他方材(51または52)が連結され、
前記支点ピン(21)は円断面であり、その側周面において前記中心穴(17)と接触する区間には、外側に突出する凸条(27)を形成してあり、該凸条(27)が該中心穴(17)の内周面に食い込むことで該支点ピン(21)と前記掛け片(11または12)が一体で回転することを特徴とする固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠組の内側にパネルを組み込む場合などに用いる固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模災害からの復興や、建築物の建て替えなど、様々な理由により、短期間だけの使用を前提とした仮設の建築物が必要になることがある。このような仮設の建築物は、費用に対する制約が多いほか、設置と撤去を素早く行う必要があり、軽量鉄骨を用いた「プレハブ」と呼ばれるものが広く普及している。ただし軽量鉄骨など、金属を多用した建築物は、断熱性や居住性などに劣る場合があり、近年は仮設の建築物についても、その骨格や面材に木材を多用することが検討されており、このような木材同士の連結については、施工時間の短縮などの観点から、従来のような釘類を多用する方法から脱却することが望ましい。
【0003】
釘類の代替の具体例については、二部材の接触面を跨ぐように棒状や板状の金具を埋め込み、個々の部材からこの金具に向けてピンやボルトなどを差し込む方法が挙げられる。そしてこのような金具を用い、矩形状の枠組の内側にパネルなどの面材を組み込む場合、一方の部材(枠組または面材)から金具が大きく突出しているならば、作業の進め方に大きな制約を受けることになる。そこで金具を可動式とした上、金具を一方の部材の中に完全に埋め込み可能な構造とすることで、枠組の内側に面材を配置した後、何らかの方法で金具を移動させ、枠組と面材との接触面を跨ぐように配置することで、作業の簡素化が実現する。なおこのような方法は、以前から様々な分野で使用されており、その具体例として後記の特許文献が挙げられる。
【0004】
特許文献1では、支柱への横材の取付構造が開示されており、支柱と横材のいずれも中空であり、横材の端部には、半円形の係合金具が埋め込まれており、この係合金具は、横材の両側面を貫くように差し込まれた結合軸を中心として回転可能な構造になっている。さらに係合金具の外縁において、直線となっている区間には、円周方向に削り込まれた鎌形係合部を形成してある。また支柱の側面には、所定の長さを有する長孔を連続的に形成してあり、係合金具を回転させ、その鎌形係合部が長孔同士の間に嵌まり込むことで、横材が支柱に取り付けられる。そして係合金具の外周付近には、操作棒部材を取り付けてあり、その一部は横材の外部に突出しており、この突出した部分を押し込むことで係合金具が回転し、横材を支柱に取り付けることができる。
【0005】
特許文献2では、回転係合式鈎体を用いた建築用パネルが開示されており、隣接する二枚のパネル本体を接合することができる。このパネル本体同士の接合端面には、接触面を挟んで対向するように連結部材取付用凹部を形成してあり、その一方には回転係合式鈎体を取り付けてあり、他方には鈎体係止杵を取り付けてある。また回転係合式鈎体は、一端側が膨れた円弧状であり、その膨れた部分に軸が差し込まれており、この軸を中心として回転係合式鈎体を回転させることで、その他端側が鈎体係止杵に接触し、パネル本体の接合端面が密着接合した状態を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-116025号公報
【文献】公開実用昭和64-31810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の両特許文献のように、二部材の接触面付近に回転可能な金具を埋め込み、この金具を介して二部材を連結する方法は広く知られている。この方法に関し、連結される部材が中空であれば、金具の埋め込みは比較的容易である。しかし部材が木材であれば、強度や加工方法などとの兼ね合いから、内部に大きな空洞を形成することは難しい。そのため特許文献1のように、「係合金具」と併せて「操作棒部材」も部材の内部に埋め込むことは難しく、「操作棒部材」のような部品を用いることのない単純な構造を導入すべきである。
【0008】
また特許文献2では、「回転係合式鈎体」を「軸」で回転させるため、構造が単純であり、パネル本体への埋め込みも容易だが、回転係合式鈎体と軸との接触面に緩みがあるならば、軸を介して回転係合式鈎体を回転させることができない。そこで双方の接触面には何らかの噛み合い形状を設けるべきだが、これによって軸をパネル本体に差し込む際、抵抗が大きくなり、作業性を悪化させる恐れがある。そこで、軸が差し込まれるパネル本体の穴を大径化することも考えられるが、その場合、軸の周囲に隙間ができるため、回転係合式鈎体に緩みが生じてしまい、パネル本体の接合にも緩みが生じるなど、新たな課題を引き起こすことになる。
【0009】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、枠組の内側にパネルを組み込む場合などに用い、構造が単純であるほか、施工時の作業性に優れており、また施工後の緩みも抑制可能な固定具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、互いに隣接する一方材と他方材を連結する固定具であって、掛け片と支点ピンと係止ピンとからなり、前記掛け片の一端側には、前記支点ピンを差し込むための中心穴を設けてあり、また該掛け片の他端側には、前記係止ピンが嵌まり込む接続部を設けてあり、前記掛け片は、前記一方材側の収容溝と前記他方材側の対向溝とからなる内部空間に収容され、且つ該掛け片は、その全体を該収容溝に収容可能であり、前記掛け片を前記収容溝に収容した状態において、前記一方材の表面から前記中心穴に向けて前記支点ピンを差し込むことで、該掛け片は、該支点ピンを中心として回転可能になり、前記係止ピンは、前記対向溝と交差するように差し込み、前記掛け片の一部が該対向溝に入り込み、且つ該係止ピンが前記接続部に嵌まり込むことで前記一方材と前記他方材が連結され、前記支点ピンは円断面であり、その側周面において前記中心穴と接触する区間には、外側に突出する凸条を形成してあり、該凸条が該中心穴の内周面に食い込むことで該支点ピンと前記掛け片が一体で回転することを特徴とする。
【0011】
本発明による固定具は、面接触する二部材を連結するために用い、掛け片と支点ピンと係止ピンの三要素を中心に構成され、これらの部品は、二部材の接触面付近に埋め込まれる。なおこの二部材は、主に木材を想定しているが、これに限定される訳ではなく、金属や合成樹脂などから自在に選択可能であり、さらにこの二部材を識別するため、その一方を一方材と称するほか、他方を他方材と称するものとする。また固定具を埋め込むため、一方材と他方材のいずれも、双方の接触面から奥方に伸びる溝を加工する必要があり、一方材側の溝は収容溝と称するほか、他方材側の溝は対向溝と称するものとする。そして一方材と他方材を本来の位置で面接触させた際、収容溝と対向溝は段差なく並び、一つの内部空間を形成することになる。そのほか一個の一方材について、通常、固定具は複数用いることになる。
【0012】
掛け片は、収容溝と対向溝で形成される内部空間に埋め込まれる金属板であり、これを一方材と他方材との接触面を跨ぐように配置する。さらに、一方材の表面から掛け片に向けて支点ピンを差し込むほか、他方材の表面から掛け片に向けて係止ピンを差し込むことで、掛け片を介して一方材と他方材が連結される。なお掛け片の一端側には、支点ピンを差し込むための中心穴を形成するほか、掛け片の他端側には、係止ピンを差し込むための接続部を形成する。接続部については、全周が閉じた穴状になる場合もあれば、掛け片の外周面から入り込む溝状になる場合もある。
【0013】
掛け片は、支点ピンを中心として回転可能な構成としてあり、支点ピンを中心として掛け片を回転させることで、掛け片の全体が収容溝に入り込むよう、各部の形状を調整するものとする。しかも掛け片を回転させることで、その一部(支点ピンから離れている側)が収容溝から突出し、対向溝に入り込む。そして掛け片の接続部に係止ピンが嵌まり込むことで、掛け片を介して一方材と他方材が連結される。なお支点ピンは、一方材の表面において、一方材と他方材との接触面からやや離れた位置に差し込まれ、途中で収容溝(掛け片)と交差し、その奥に到達するものとする。また係止ピンは、他方材の表面において、一方材と他方材との接触面からやや離れた位置に差し込まれ、途中で対向溝と交差し、その奥に到達するものとする。
【0014】
掛け片は、支点ピンと一体で回転できるものとする。そのため支点ピンの側周面において、掛け片の中心穴に入り込む区間には、外側に突出する凸条を形成し、これが中心穴の内周面に食い込むことで、支点ピンと掛け片が滑りを生じることなく一体化する。したがって支点ピンを回転させると、掛け片も一体で回転することになり、あらかじめ掛け片の全体を収容溝に収容しておき、一方材と他方材を本来の位置で面接触させた後、支点ピンを介して掛け片を回転させ、その接続部に係止ピンを嵌め込むことで、掛け片を介して一方材と他方材が連結される。なお支点ピンを差し込むために一方材に加工する穴は、掛け片の緩みを防ぐため、支点ピンとの隙間が生じない内径にする必要がある。そのほか支点ピンや係止ピンは、一方材や他方材に埋め込まれるため、その端面だけが外部に露出することになる。
【0015】
支点ピンの凸条は、支点ピンの両端を結ぶように形成するものではなく、支点ピンを一方材に差し込んだ後の状態において、掛け片の中心穴に入り込む区間に限定して形成するものとする。凸条の存在により、支点ピンを一方材に差し込む際の抵抗が増大することになるが、その範囲を限定することで、この抵抗を抑制できるほか、凸条による一方材の削り込みも抑制できる。しかも支点ピンの差し込み方向を基準として、掛け片の裏側には凸条が到達しないため、掛け片の裏側では、一方材と支点ピンが隙間なく面接触することになり、一方材と支点ピンとの緩みを防ぐことができる。
【0016】
施工時は、一方材の収容溝に掛け片を埋め込み、その中心穴を所定の位置に据え置き、その後、一方材の表面から中心穴に向けて支点ピンを差し込むと、支点ピンを介して掛け片を回転できるようになるが、この段階では、掛け片の全体を収容溝に埋め込んでおく。また他方材については、対向溝と交差するように係止ピンを差し込む。そして一方材と他方材を本来の位置で面接触させた後、支点ピンを回転させ、掛け片の一部を対向溝に到達させ、掛け片の接続部に係止ピンを嵌め込むことになる。なお支点ピンの端面には、角形状の凹部や凸部を形成しておくことで、支点ピンを一方材に完全に埋め込んだ後も、工具によって支点ピンを回転させることができる。そのほか接続部の構成によっては、掛け片を回転させた後、係止ピンを差し込むことになる。
【0017】
このように、固定具を掛け片と支点ピンと係止ピンなどで構成し、掛け片には、支点ピンを差し込むための中心穴と、係止ピンを嵌め込むための接続部を設け、支点ピンで掛け片を回転させ、掛け片の接続部に係止ピンが嵌まり込むことで、一方材と他方材を連結することができる。しかも支点ピンについては、掛け片と接触する区間に限って凸条を形成してあり、支点ピンと掛け片を緩みなく一体化できるほか、一方材との間で生じる抵抗が抑制され、差し込みを円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明のように、固定具を掛け片と支点ピンと係止ピンなどで構成し、掛け片には、支点ピンを差し込むための中心穴と、係止ピンを嵌め込むための接続部を設け、支点ピンで掛け片を回転させ、掛け片の接続部に係止ピンが嵌まり込むことで、一方材と他方材を連結することができる。したがって本発明では、掛け片を一方材から突出させない状態で一方材と他方材を面接触させ、その後に掛け片を回転させて一方材と他方材を連結することができ、一方材と他方材との構成に制約が少なくなる。このような一方材と他方材の具体例については、一方材がパネルなどの板材であり、他方材がこれを囲む枠組である場合が挙げられ、組み上がった他方材の内側に一方材を組み込むといった施工方法も無理なく実現可能である。
【0019】
掛け片を回転させる支点ピンについては、その差し込みを終えた状態において、掛け片と接触する区間に限って凸条を形成するものとする。そのため支点ピンと掛け片を緩みなく一体化できるほか、一方材との間で生じる抵抗が抑制され、差し込みを円滑に行うことができる。その結果、支点ピンを差し込むために一方材に加工する穴の内径については、支点ピンとの隙間を確保する必要がなく、一方材と支点ピンとの緩みを防ぐことができ、一方材と他方材も緩みなく密着することになる。また凸条によって支点ピンと掛け片を一体化することで、固定具の構造が極めて単純になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による固定具の形状例と使用例を示す斜視図であり、他方材などで構成される枠組の内側に一方材を組み込むことを想定している。なお図の下方には、一方材の左上周辺を拡大したものを示しており、ここでの一方材や他方材などは縦断面で描いてある。
図2図1の一方材と他方材を連結する過程を示す斜視図であり、ここでは一方材の左上周辺を拡大しており、一方材や他方材などは縦断面で描いてある。なお図の左下には、一方材の左上周辺の外形を描いてある。
図3図2の後、一方材と他方材との連結が完了した状態を示す斜視図であり、図の上方では、一方材や他方材などを縦断面で描いてあり、図の下方では、これらの外形を描いてある。
図4図1の他方材を水平方向に延長し、そこに複数の一方材を組み込んだ場合を示す斜視図である。そのほか図の右下には、支点ピンの凸条の詳細を描いてある。
図5】掛け片の形状例を示す斜視図であり、ここでは掛け片の接続部を丸穴としている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明による固定具の形状例と使用例を示しており、他方材51、52などで構成される枠組の内側に一方材41を組み込むことを想定している。ここでの一方材41は平面状のパネルであり、さらに一方材41の上面は、上枠である他方材51に面接触し、この接触面の左右二箇所に固定具を組み込み、一方材41と他方材51を連結する。また一方材41の下面は、下枠である他方材52に面接触し、この接触面の左右二箇所に固定具を組み込み、一方材41と他方材52を連結する。したがって一方材41は、上下の四箇所の固定具を介して他方材51、52と連結される。そのほか上下の他方材51、52は、縦枠53や中枠54で一体化してある。そのうち縦枠53は、他方材51、52の端面に接触しているが、中枠54については、上下の他方材51、52の間に挟み込まれている。なお他方材51、52と縦枠53と中枠54は、何らかの手段で強固に一体化してある。
【0022】
固定具は、掛け片11と支点ピン21と係止ピン38などで構成され、そのうち掛け片11は帯状の金属板であり、その一端側には、中心穴17とロック穴15を形成してあり、中心穴17には支点ピン21が差し込まれ、ロック穴15にはロックピン35が差し込まれる。また掛け片11の他端側には、渓谷状に切り込まれた接続部18を形成してあり、この中に係止ピン38が嵌め込まれる。そして一方材41には、掛け片11を埋め込むための収容溝46を加工してある。収容溝46は、固定具の配置に応じ、一方材41の四箇所に加工してあるが、そのうち左上周辺について、図の下方にその拡大断面を描いてある。
【0023】
図の下方のように、収容溝46は、一方材41の上面の中心線に沿って加工してあり、掛け片11の全体を埋め込み可能な大きさを確保してある。また支点ピン21を差し込むため、一方材41の両側面を貫く保持穴47を加工してあり、保持穴47は途中で収容溝46と交差しているほか、支点ピン21と保持穴47の長さは揃えてあり、差し込み後の支点ピン21は、一方材41の側面から突出することがない。そして、掛け片11と一体化した支点ピン21を回転させると、掛け片11の接続部18などが収容溝46から突出する。そのほか保持穴47に隣接する小穴45は、ロックピン35を差し込むためのものであり、掛け片11のロック穴15が小穴45と同心に揃った際、そこにロックピン35を差し込むと、掛け片11は回転不能になる。
【0024】
他方材51、52において、一方材41の収容溝46と対向する箇所には、対向溝56を加工する。収容溝46と対向溝56は段差なく並び、一つの内部空間を形成する。また対向溝56は、一方材41から突出した掛け片11を無理なく収容できる大きさを確保する。さらに、対向溝56と交差するように配置される係止ピン38を差し込むため、他方材51、52の両側面を貫くピン穴58を加工する。ピン穴58は、係止ピン38を緩みなく保持できる内径とする。そして掛け片11の一部が対向溝56に入り込み、やがて掛け片11が直立した際、その接続部18の奥に係止ピン38が緩みなく嵌まり込むよう、各部の形状を調整してある。このように掛け片11が直立することで、支点ピン21と係止ピン38は掛け片11で一体化された状態になり、一方材41と他方材51、52との連結が完了するが、追ってロックピン35を差し込むことで、この連結を解除できなくなる。
【0025】
支点ピン21について、その中央付近には複数の凸条27を形成してあるが、それ以外の区間は単純な円断面である。なお凸条27は、支点ピン21を保持穴47に差し込んだ後の状態において、掛け片11の中心穴17と接触する区間に限定して形成してある。また凸条27は、他の区間(凸条27が形成されていない円断面の区間)の側周面よりも外側に突出しており、これが中心穴17の内周面に接触することで、支点ピン21と掛け片11が一体化され、支点ピン21を回転させると、掛け片11も一体で回転することになる。
【0026】
個々の凸条27は、支点ピン21の軸線方向に沿って伸びている。そのため支点ピン21を保持穴47に差し込む際、凸条27によって保持穴47の内周面に形成される食い込み跡は、保持穴47の軸線方向に沿って伸びることになり、保持穴47の内周面の全域が凸条27で削り込まれることはない。したがって支点ピン21を差し込む際、保持穴47において凸条27が通過した区間についても、支点ピン21を緩みなく保持することができる。加えて、支点ピン21の差し込み方向を基準として、凸条27は掛け片11の裏側に到達することがない。その結果、保持穴47において、掛け片11よりも裏側の区間は、凸条27の影響を受けることなく、保持穴47と支点ピン21が密着し、支点ピン21の緩みを防ぐことができる。
【0027】
支点ピン21の端面には、正方形断面の角穴28を形成してある。これは支点ピン21を回転させる工具を嵌め込むためのもので、これを使用することで、支点ピン21を保持穴47に差し込んだ後も、掛け片11を自在に回転させることができる。そのほか施工時、一方材41を他方材51、52に組み込む直前には、図のように、全ての掛け片11を一方材41の内部に埋め込んでおく。これにより、他方材51、52などで囲まれた枠組の内側に無理なく一方材41を組み込むことができ、その後に全ての掛け片11を回転させることで、一方材41と他方材51、52との連結が完了する。
【0028】
図2は、図1の一方材41と他方材51を連結する過程を示しており、ここでは一方材41の左上周辺を拡大しており、一方材41や他方材51などは縦断面で描いてある。一方材41の収容溝46には、掛け片11の全体が収容されており、しかも掛け片11は、支点ピン21を中心として回転可能になっている。また他方材51については、係止ピン38が差し込まれており、その中間部が対向溝56と交差している。そして図の右下のように、一方材41と他方材51を面接触させると、収容溝46と対向溝56が段差なく並ぶ。この状態において、支点ピン21の端面の角穴28に棒レンチなどの工具を嵌め込むと、支点ピン21を介して掛け片11を回転させることができる。なお図の左下には、一方材41の左上周辺の外形を描いてある。このように掛け片11は、その全体が収容溝46に埋め込まれるほか、一方材41の側面には、保持穴47と小穴45が並んでいる。
【0029】
この図では、支点ピン21の差し込みを終えた状態において、掛け片11の側面に凸条27が露出している。しかし実際には、凸条27を形成する区間を限定してあり、このように明確に露出することはない。そのため支点ピン21を工具で回転させる際、凸条27と一方材41との間で大きな摩擦が生じることはなく、無理なく一方材41と他方材51との連結を完了することができる。
【0030】
図3は、図2の後、一方材41と他方材51との連結が完了した状態を示しており、図の上方では、一方材41や他方材51などを縦断面で描いてあり、図の下方では、これらの外形を描いてある。図2の後、支点ピン21を回転させて掛け片11を直立させると、その接続部18の奥に係止ピン38が嵌まり込み、支点ピン21と係止ピン38は掛け片11で一体化された状態になり、一方材41と他方材51との連結が完了する。さらにロックピン35を差し込むことで、掛け片11は回転不能になり、一方材41と他方材51との連結を解除できなくなる。
【0031】
支点ピン21と係止ピン38とロックピン35の全ての差し込みを終えると、これらの端面だけが外部に露出する。また掛け片11は、収容溝46と対向溝56が一体化した内部空間に収容され、外部からは全く視認できない。なお図では、一方材41の左上周辺だけを描いてあるが、残る三箇所についても、掛け片11などの配置が異なるものの、構成は全く同じである。
【0032】
このように本発明では、金属部品の露出を最小限に抑制できるため、一方材41や他方材51などに木材を使用した場合、その自然な雰囲気を損ねることがない。さらに施工時、掛け片11の埋め込みや係止ピン38の差し込みを事前に行うならば、現地では一方材41と他方材51を本来の位置で面接触させた後、支点ピン21を回転させるだけで一方材41と他方材51との連結が完了する。また施工後に解体する際は、ロックピン35を抜き取り、支点ピン21を回転させるだけで連結が解除され、作業を素早く進めることができる。
【0033】
図4は、図1の他方材51、52を水平方向に延長し、そこに複数の一方材41を組み込んだ場合を示している。ここでは上下の他方材51、52が水平方向に伸びており、その間を結ぶように複数の中枠54を配置してあり、他方材51、52や縦枠53や中枠54で区画される矩形状の空間に一方材41を組み込んでいる。本発明では、他方材51、52などで構成される枠組を構築した後、その内側にパネルのような一方材41を連結することができ、施工手順に制約が少ないほか、一方材41と他方材51、52との連結は、掛け片11を回転させるだけで完了することができる。そのため、各種の仮設の建築物に本発明を導入するならば、施工を素早く実施できるほか、その後の撤去についても、素早く実施することができる。
【0034】
この図の右下には、支点ピン21の凸条27の詳細を描いてある。凸条27は、支点ピン21の側周面の中央付近を局地的に刃具で押圧し、その隣接部を局地的に隆起させることで形成される。したがって凸条27の頂上付近は、凸条27を形成していない区間の側周面よりも外側に突出しており、これによって支点ピン21と掛け片11を一体化させることができる。なお図中の一点鎖線円は、凸条27を形成していない区間の側周面を示している。
【0035】
図5は、掛け片12の形状例を示しており、ここでは掛け片12の接続部19を丸穴としている。掛け片12の形状は自在であり、この図のような単純な帯状とすることも可能であり、さらに接続部19を丸穴とすることもできる。この場合、一方材41の収容溝46に埋め込まれた掛け片12を回転させ、その接続部19などを対向溝56の内部に到達させた後、他方材51のピン穴58と掛け片12の接続部19を同心に揃え、次にピン穴58に係止ピン38を差し込むと、支点ピン21と係止ピン38は掛け片12で一体化された状態になり、一方材41と他方材51との連結が完了する。なおこの構成では、係止ピン38の差し込みによって掛け片12が回転不能になり、図1のようなロックピン35は不要だが、係止ピン38をあらかじめ他方材51に差し込んでおくことはできない。
【符号の説明】
【0036】
11 掛け片(接続部が溝状のもの)
12 掛け片(接続部が丸穴状のもの)
15 ロック穴
17 中心穴
18 接続部(溝状のもの)
19 接続部(丸穴状のもの)
21 支点ピン
27 凸条
28 角穴
35 ロックピン
38 係止ピン
41 一方材(パネル)
45 小穴
46 収容溝
47 保持穴
51 他方材(上枠)
52 他方材(下枠)
53 縦枠
54 中枠
56 対向溝
58 ピン穴
図1
図2
図3
図4
図5