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特許7459018バックグラウンドシグナルを補正するホモジニアスなイムノアッセイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】バックグラウンドシグナルを補正するホモジニアスなイムノアッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20240325BHJP
   G01N 33/535 20060101ALI20240325BHJP
   C12Q 1/32 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
G01N33/53 S
G01N33/535
C12Q1/32
【請求項の数】 47
(21)【出願番号】P 2021096446
(22)【出願日】2021-06-09
(62)【分割の表示】P 2017543909の分割
【原出願日】2016-02-19
(65)【公開番号】P2021156896
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】62/118,832
(32)【優先日】2015-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300004500
【氏名又は名称】アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IDEXX Laboratories, Inc.
【住所又は居所原語表記】One IDEXX Drive, Westbrook, Maine 04092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】イェラミッリ,マーシー,ヴイエスエヌ
(72)【発明者】
【氏名】シェ,ホンジー
(72)【発明者】
【氏名】パッチ,ダニエル,ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ファラス,ジョシ
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-532018(JP,A)
【文献】特表平08-510638(JP,A)
【文献】米国特許第04341866(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0280740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離の対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を含有する試料に関してアッセイを行うための試薬を含むキットであって、
(a)第1のアッセイを行うための第1の試薬セットであって、
i.遊離のSDMAに特異的な抗体と酵素に接触するとシグナルを産生する基質とを含む第1の試薬と、
ii.5~9原子のリンカーを介して該酵素にコンジュゲートされたSDMAを含むコンジュゲートを含む第2の試薬と
を含む、第1の試薬セットと、
(b)第2のアッセイを行うための第2の試薬セットであって、
i.該基質を含む第3の試薬
を含む、第2の試薬セットと
を含むキット。
【請求項2】
前記第2の試薬セットが、希釈液および緩衝剤の少なくとも1つを含む第4の試薬をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記第4の試薬が、前記コンジュゲートまたは前記酵素をさらに含む、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記試薬の少なくとも1つが、前記コンジュゲートの前記酵素以外の酵素の阻害剤を含む、請求項2に記載のキット。
【請求項5】
前記第1の試薬における前記コンジュゲートの濃度が、前記第4の試薬における前記コンジュゲートの濃度より5~150倍高い、請求項3に記載のキット。
【請求項6】
SDMAが除去された試料溶液で希釈された既知量のSDMAを含む標準物質をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
SDMAが除去された前記試料溶液が、除去血清、除去血漿、または前処理試料である、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記第1の試薬と前記第2の試薬の少なくとも1つが、電子伝達体と色素とをさらに含み、前記第3の試薬が、該電子伝達体と該色素とをさらに含み、該電子伝達体が、前記基質から電子を受け取って電子を該色素に移動させる、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
前記第1の試薬と前記第2の試薬の少なくとも1つが、電子伝達体と色素とを含み、前記第3の試薬の少なくとも1つと前記第4の試薬の1つが、電子伝達体と色素とを含み、該電子伝達体が、前記基質から電子を受け取って電子を該色素に移動させる、請求項2に記載のキット。
【請求項10】
前記抗体が、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)に対して、遊離のSDMAに対するその反応性の25%未満の反応性を有する、請求項1に記載のキット。
【請求項11】
前記抗体が、ADMA、L-アルギニン、およびN-メチルアルギニンに対して反応性を有さないかまたは実質的に有さない、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記酵素が、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)である、請求項1に記載のキット。
【請求項13】
前記基質がNADを含む、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記第2の試薬が、グルコース-6-リン酸(G6P)をさらに含む、請求項12に記載のキット。
【請求項15】
遊離の対称性ジメチルアルギニン(SDMA)のアッセイを行う方法であって、
(a)
i.試料を、遊離のSDMAに特異的な抗体と酵素に接触するとシグナルを産生する基質とを含む第1の試薬と、5~9原子のリンカーを介して該酵素にコンジュゲートされたSDMAを含むコンジュゲートを含む第2の試薬と接触させることによって、試料の第1の反応混合物を形成することと、
ii.該試料の第1の反応混合物からのシグナルを測定することと
を含む、試料の第1の反応シーケンスを行うことと、
(b)
i.該試料を該基質を含む第3の試薬と接触させることによって、試料の第2の反応混合物を形成することと、
ii.該試料の第2の反応混合物からのシグナルを測定することと
を含む、試料の第2の反応シーケンスを行うことと、
(c)ステップ(a)のシグナルの量からステップ(b)のシグナルの量を引いて、真のシグナルを提供することと、
(d)該真のシグナルを使用して該試料中の該SDMAの量を決定することと
を含む方法。
【請求項16】
前記試料の第2の反応混合物が、希釈液、緩衝剤、および前記遊離のSDMAに特異的な抗体の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(a)
i.既知量のSDMAを含む較正物質セットのそれぞれの較正物質を、前記遊離のSDMAに特異的な抗体、5~9原子のリンカーを介して酵素にコンジュゲートされたSDMAを含むコンジュゲート、および該酵素に接触するとシグナルを産生する基質と個々に接触させることによって、較正物質の第1の反応混合物を形成することと、
ii.該較正物質の第1の反応混合物のそれぞれからのシグナルを測定することと
を含む、較正物質の第1の反応シーケンスを行うことと、
(b)
i.該較正物質セットのそれぞれの較正物質を該基質と接触させることによって、較正物質の第2の反応混合物を形成することと、
ii.該較正物質の第2の反応混合物からのシグナルを測定することと
を含む、較正物質の第2の反応シーケンスを行うことと、
(c)ステップ(b)のシグナルの量からステップ(a)のシグナルの量を引いて、該較正物質のそれぞれに関して真のシグナルを提供することと、
(d)該較正物質の2つ以上からの該真のシグナルを使用して、標準曲線を作成することと、
(e)前記試料からの前記真のシグナルを該標準曲線と比較することによって、該試料中の前記SDMAの量を決定すること
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記較正物質の第2の反応混合物が、希釈液、緩衝剤、および前記遊離のSDMAに特異的な抗体の少なくとも1つを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
遊離の対称性ジメチルアルギニン(SDMA)のアッセイを行う方法であって、
(a)
i.試料を、遊離のSDMAに特異的な抗体と酵素に接触するとシグナルを産生する基質とを含む第1の試薬と、5~9原子のリンカーを介して該酵素にコンジュゲートされたSDMAを含むコンジュゲートを含む第2の試薬と接触させることによって、試料の第1の反応混合物を形成することと、
ii.該試料の第1の反応混合物からのシグナルを測定することと、
iii.該試料の第1の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することによって、該試料の第1の反応混合物の反応速度を標準化することと
を含む、試料の第1の反応シーケンスを行うことと、
(b)
i.該試料を該基質を含む第3の試薬と接触させることによって、試料の第2の反応混合物を形成することと、
ii.該試料の第2の反応混合物からのシグナルを測定することと、
iii.該試料の第2の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することによって、該試料の第2の反応混合物の反応速度を標準化することと
を含む、試料の第2の反応シーケンスを行うことと、
(c)ステップ(a)(iii)の標準化速度からステップ(b)(iii)の標準化速度を引いて、該SDMAを含有する該試料の最終標準化反応速度を提供することと、
(d)該最終反応速度を使用して、該試料中の該SDMAの量を決定することと
を含む、方法。
【請求項20】
前記較正物質の第2の反応混合物が、希釈液、緩衝剤、およびSDMAに特異的な抗体の少なくとも1つを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記試料の第1の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することが、該試料の第1の反応混合物の反応速度の決定に関連する複数のシグナル測定のそれぞれからバックグラウンドを引くことを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記試料の第2の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することが、該試料の第2の反応混合物の反応速度の決定に関連する複数のシグナル測定のそれぞれからバックグラウンドを引くことを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
(a)
i.既知量の前記SDMAを含む較正物質セットのそれぞれの較正物質を、遊離のSDMAに特異的な抗体、5~9原子のリンカーを介して酵素にコンジュゲートされたSDMAを含むコンジュゲート、および該酵素に接触するとシグナルを産生する基質と個々に接触させることによって、較正物質の第1の反応混合物を形成することと、
ii.該較正物質の第1の反応混合物のそれぞれからのシグナルを測定することと、
iii.該較正物質の第1の反応混合物のそれぞれに関連するバックグラウンドを考慮することによって、該較正物質の第1の反応混合物のそれぞれの反応速度を標準化することと
を含む、較正物質の第1の反応シーケンスを行うことと、
(b)
i.該較正物質セットのそれぞれの較正物質を該基質と接触させることによって、較正物質の第2の反応混合物を形成することと、
ii.該較正物質の第2の反応混合物からのシグナルを測定することと、
iii.該較正物質の第2の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することによって、該較正物質の第2の反応混合物におけるそれぞれの較正物質に関する反応速度を標準化することと
を含む、較正物質の第2の反応シーケンスを行うことと、
(c)ステップ(a)(iii)の標準化速度からステップ(b)(iii)の標準化速度を引いて、該較正物質のそれぞれの最終反応速度を提供することと、
(d)該較正物質のそれぞれの該最終反応速度に基づいて、標準化標準曲線を作成することと、
(e)前記試料の前記最終標準化反応速度を該標準化標準曲線と比較することによって、該試料中のSDMAの量を決定することと
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記較正物質の第2の反応混合物が、希釈液、緩衝剤、およびSDMAに特異的な抗体の少なくとも1つを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記較正物質の第1の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することが、それぞれの較正物質の第1の反応混合物の反応速度の決定に関連する複数のシグナル測定のそれぞれからバックグラウンドを引くことを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記較正物質の第2の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することが、それぞれの較正物質の第2の反応混合物の反応速度の決定に関連する複数のシグナル測定のそれぞれからバックグラウンドを引くことを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記試料が生物試料である、請求項15~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記試料が、血清、血漿、尿、または脳脊髄液である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記較正物質が、血清または血漿で希釈したSDMAを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記血清が除去血清または血漿である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記較正物質が前処理試料を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記試料の第2の反応混合物が、前記コンジュゲートをさらに含む、請求項17~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記試料の第1の反応混合物における前記コンジュゲートの濃度が、前記試料の第2の反応混合物における前記コンジュゲートの濃度より5~150倍高い、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記較正物質の第2の反応混合物が、前記コンジュゲートをさらに含む、請求項17、18、20、23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記較正物質の第1の反応混合物における前記コンジュゲートの濃度が、前記較正物質の第2の反応混合物における前記コンジュゲートの濃度より5~150倍高い、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記酵素がG6PDHである、請求項1~14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項37】
前記コンジュゲートが、
【化1】

からなる群より選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項38】
前記抗体が、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)に対して、遊離のSDMAに対するその反応性の25%未満の反応性を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項39】
前記抗体が、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)、L-アルギニン、およびN-メチルアルギニンからなる群より選択される1つまたは複数の化合物との交叉反応性を有さないかまたは実質的に有さない、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記酵素がG6PDHである、請求項15~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記コンジュゲートが、
【化2】

からなる群より選択される請求項15~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記遊離のSDMAに特異的な抗体が、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)に対して、遊離のSDMAに対するその反応性の25%未満の反応性を有する、請求項15~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記遊離のSDMAに特異的な抗体が、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)、L-アルギニン、およびN-メチルアルギニンからなる群より選択される1つまたは複数の化合物との交叉反応性を有さないかまたは実質的に有さない、請求項15~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記反応混合物のいずれかが、前記コンジュゲートの前記酵素以外の酵素に対する阻害剤を含む、請求項15~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記試料の第1の反応混合物および前記試料の第2の反応混合物が、電子伝達体と色素とをさらに含み、該電子伝達体が、前記基質から電子を受け取って電子を該色素に移動させる、請求項15~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記較正物質の第1の反応混合物および前記較正物質の第2の反応混合物が、電子伝達体と色素とをさらに含み、該電子伝達体が、前記基質から電子を受け取って電子を該色素に移動させる、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
請求項15~35、40~46のいずれか1項に記載の方法に従って動物の生物試料中のSDMAの存在または量を決定することと、該試料中のSDMAの存在または量に基づいて該動物における慢性腎疾患の診断を補助することとを含む、動物における慢性腎疾患の診断を補助する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれる2015年2月20日に出願された米国特許仮出願第62/118,832号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、全般的に、試料および試薬に固有のバックグラウンドシグナルの補正を可能にするホモジニアスなイムノアッセイに関する。特定の実施形態において、本開示は、生物試料中の対称性ジメチルアルギニン(SDMA)の存在または量を検出するためのホモジニアスなイムノアッセイの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ホモジニアスなイムノアッセイは、多様な分析物、特に乱用薬物に関する分析物を決定するための道具である。SDMAは、例えば腎機能、心血管機能、およびSLEを評価するためのマーカーとして生物試料において同定されている。SDMAは、典型的に生物試料中に、乱用薬物に関する分析物と比較して比較的低濃度で存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明者らは、特に生物試料中での濃度が低いSDMAなどの分析物に関するより正確で感度のよいホモジニアスなイムノアッセイが当技術分野において必要であることを確認している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様において、本開示は、対称性ジメチルアルギニン(SDMA)のコンジュゲート、例えばSDMAと酵素のコンジュゲートに関する。本開示の一例において、コンジュゲートは、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)にコンジュゲートされたSDMAである。様々な実施形態において、SDMAおよび酵素は、5~15原子のリンカーを介してコンジュゲートされる。同様に、SDMAは、約5~15オングストロームの長さを有するリンカーを介して酵素にコンジュゲートされ得る。本開示の例としてのコンジュゲートとしては、以下が挙げられる:
【0006】
【化1】
【0007】
もう一つの態様において、本開示は、本開示のコンジュゲートと、遊離のSDMAに特異的な抗体とを含む組成物に関する。様々な実施形態において、遊離のSDMAに特異的な抗体は、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)に対して、遊離のSDMAに関するその反応性の25%未満の反応性を有し得る。同様に、抗体は、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)、L-アルギニン、およびN-メチルアルギニンからなる群より選択される1つまたは複数の化合物との交叉反応を有してはならず、または実質的に有してはならない。
【0008】
さらなる態様において、本開示は、本開示のコンジュゲートとSDMAに特異的な抗体とを含むキットに関する。
【0009】
様々な態様において、本開示のキットは、分析物を含有する試料についてアッセイを行うための試薬を含む。キットは、以下の成分:
(a)第1のアッセイを行うための第1の試薬セットであって:
i.抗分析物抗体と酵素のシグナル産生基質とを含む第1の試薬と、
ii.分析物と酵素とのコンジュゲートを含む第2の試薬と
を含む、第1の試薬セットと、
(b)第2のアッセイを行うための第2の試薬セットであって:
i.基質を含む第3の試薬
を含む、第2の試薬セットと
を含み得る。
キットにおいて、第2の試薬セットは、希釈液および緩衝剤の少なくとも1つを含む第4の試薬をさらに含み得る。第4の試薬はまたさらに、コンジュゲートまたは酵素を含み得る。加えて、キットにおける試薬の少なくとも1つは、コンジュゲートの酵素以外の酵素の阻害剤を含む。1つの実施形態において、第1の試薬におけるコンジュゲートの濃度は、第4の試薬におけるコンジュゲートの濃度より約5~約150倍高い。キットはまた、分析物が除去された試料溶液で希釈された既知量の分析物を含む標準物質を含み得る。例えば、分析物が除去された試料溶液は、除去血清、除去血漿、または前処理試料であり得る。第1の試薬および/または第2の試薬はさらに、電子伝達体および色素を含んでもよく、第3の試薬および/または第4の試薬はさらに、伝達体と色素とを含んでもよく、伝達体は、基質から電子を受け取って電子を色素に移動させる。
【0010】
なおさらに、本開示は、本開示のキットの成分と、SDMAを含む疑いがある試料とを含む反応混合物に関する。
【0011】
なおもう1つの実施形態において、本開示は、試料中の遊離のSDMAの存在または量を決定する方法に関する。本方法は、試料を、遊離のSDMAに特異的な抗SDMA抗体、請求項1に記載のコンジュゲート、およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を含む基質と接触させること、NADのNADHへの変換を測定すること、ならびにNADのNADHへの変換に基づいて試料中のSDMAの存在または量を決定することを含む。
【0012】
本開示の方法の様々な実施形態において、NADのNADHへの変換を測定することは、NADのNADHへの変換速度を測定することを含み得る。例えば、NADのNADHへの変換に基づいて試料中のSDMAの存在または量を決定することは、NADのNADHへの変換速度を標準曲線と比較することを含んでもよく、またはNADのNADHへの変換を測定することは、NADのNADHへの変換量を測定することを含み得る。NADのNADHへの変換に基づく試料中のSDMAの存在または量の決定はまた、NADのNADHへの変換の量を標準曲線と比較することを含み得る。
【0013】
本開示の方法のもう1つの態様において、方法は以下のステップ:
(a)
i.試料を、抗分析物抗体、分析物と酵素とを含むコンジュゲート、および酵素に接触するとシグナルを産生する基質と接触させることによって、試料の第1の反応混合物を形成するステップと、
ii.試料の第1の反応混合物からのシグナルを測定するステップと
を含む、試料の第1の反応シーケンスを行うステップと、
(b)
i.試料を基質と接触させることによって、試料の第2の反応混合物を形成するステップと、
ii.試料の第2の反応混合物からのシグナルを測定するステップと
を含む、試料の第2の反応シーケンスを行うステップと、
(c)ステップ(a)のシグナルの量からステップ(b)のシグナルの量を引いて、真のシグナルを提供するステップと、
(d)試料中の分析物の量を決定するために真のシグナルを使用するステップと
を含む。
【0014】
本開示の方法はさらに、以下のステップ:
(a)
i.既知量の分析物を含む較正物質セットのそれぞれの較正物質を、抗分析物抗体、分析物と酵素とを含むコンジュゲート、および酵素に接触するとシグナルを産生する基質と個々に接触させることによって、較正物質の第1の反応混合物を形成するステップと、
ii.較正物質の第1の反応混合物のそれぞれからのシグナルを測定するステップと
を含む、較正物質の第1の反応シーケンスを行うステップと、
(b)
i.較正物質セットのそれぞれの較正物質を、基質と接触させることによって、較正物質の第2の反応混合物を形成するステップと、
ii.較正物質の第2の反応混合物からのシグナルを測定するステップと
を含む、較正物質の第2の反応シーケンスを行うステップと、
(c)ステップ(b)のシグナルの量からステップ(a)のシグナルの量を引いて、較正物質のそれぞれに関して真のシグナルを提供するステップと、
(d)較正物質の2つ以上からの真のシグナルを使用して、標準曲線を作成するステップと、
(e)試料からの真のシグナルを標準曲線と比較することによって、試料中の分析物の量を決定するステップと
を含み得る。
【0015】
本開示の方法の他の実施形態において、方法は以下のステップ:
(a)
i.試料を、抗分析物抗体、分析物と酵素とを含むコンジュゲート、および酵素に接触するとシグナルを産生する基質と接触させることによって、試料の第1の反応混合物を形成するステップと、
ii.試料の第1の反応混合物からのシグナルを測定するステップと、
iii.試料の第1の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することによって、試料の第1の反応混合物の反応速度を標準化するステップと
を含む、試料の第1の反応シーケンスを行うステップと、
(b)
i.試料を基質と接触させることによって、試料の第2の反応混合物を形成するステップと、
ii.試料の第2の反応混合物からのシグナルを測定するステップと、
iii.試料の第2の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することによって、試料の第2の反応混合物の反応速度を標準化するステップと
を含む、試料の第2の反応シーケンスを行うステップと、
(c)ステップ(a)(iii)の標準化速度からステップ(b)(iii)の標準化速度を引いて、分析物を含有する試料の最終反応速度を提供するステップと、
(d)試料中の分析物の量を決定するために最終反応速度を使用するステップと
を含み得る。
【0016】
本開示の方法はまた、以下のステップ:
(a)
i.既知量の分析物を含む較正物質セットのそれぞれの較正物質を、抗分析物抗体、分析物と酵素とを含むコンジュゲート、および酵素に接触するとシグナルを産生する基質と個々に接触させることによって、較正物質の第1の反応混合物を形成するステップと、
ii.較正物質の第1の反応混合物のそれぞれからのシグナルを測定するステップと、
iii.較正物質の第1の反応混合物のそれぞれに関連するバックグラウンドを考慮することによって、較正物質の第1の反応混合物のそれぞれの反応速度を標準化するステップと
を含む、較正物質の第1の反応シーケンスを行うステップと、
(b)
i.較正物質セットのそれぞれの較正物質を基質と接触させることによって、較正物質の第2の反応混合物を形成するステップと、
ii.較正物質の第2の反応混合物からのシグナルを測定するステップと、
iii.較正物質の第2の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することによって、較正物質の第2の反応混合物におけるそれぞれの較正物質の反応速度を標準化するステップと
を含む、較正物質の第2の反応シーケンスを行うステップと、
(c)ステップ(a)(iii)の標準化速度からステップ(b)(iii)の標準化速度を引いて、較正物質のそれぞれの最終反応速度を提供するステップと、
(d)較正物質のそれぞれの最終反応速度に基づいて、標準化標準曲線を作成するステップと、
(e)試料の標準化反応速度を標準化標準曲線と比較することによって、試料中の分析物の量を決定するステップと
を含み得る。
【0017】
本開示の方法の様々な態様において、試料および較正物質の第2の反応混合物は、希釈液、緩衝剤、および抗分析物抗体の任意の1つまたは複数を含み得る。同様に、試料の第1の反応混合物および/または較正物質の第1の反応混合物質に関連するバックグラウンドを考慮することは、それぞれの試料および/または較正物質の第1の反応混合物の反応速度の決定に関連する複数のシグナル測定のそれぞれからのバックグラウンドを引くことを含み得る。同様に、試料および/または較正物質の第2の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することは、試料の第2の反応混合物および/またはそれぞれの較正物質の第2の反応混合物の反応速度の決定に関連する複数のシグナル測定のそれぞれからのバックグラウンドを引くことを含み得る。
【0018】
本開示の方法において、試料は、血清、血漿、尿、または脳脊髄液などの生物試料であり得る。
【0019】
較正物質が、例えば除去血清または血漿を含む血漿または血清中で希釈された分析物を含む、請求項56に記載の方法。もう1つの実施形態において、較正物質は、前処理試料であり得る。
【0020】
本開示の方法のさらなる態様において、試料および/または較正物質の第2の反応混合物はさらに、コンジュゲートを含み得る。例えば、試料または較正物質の第1の反応混合物におけるコンジュゲートは、試料または較正物質の第2の反応混合物におけるコンジュゲートの濃度より約5~約150倍高い濃度で存在し得る。
【0021】
なおさらに、本開示の方法の他の態様において、反応混合物のいずれもコンジュゲートの酵素以外の酵素の阻害剤を含み得る。加えて、反応混合物のいずれも、電子伝達体および色素をさらに含んでもよく、伝達体は、基質から電子を受け取って電子を色素に転移させる。
【0022】
なおもう1つの態様において、本開示は、動物における慢性腎疾患を決定する方法に関する。方法は、本開示の方法に従う動物の生物試料中のSDMAの存在または量を決定すること、および試料中のSDMAの存在または量に基づいて動物における慢性腎疾患を決定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】正常集団および慢性腎疾患(CKD)を有する患者からのヒト血清試料に関する本開示のアッセイの結果を示す。
図2】G6PDHを活性化するためにSIAを使用してSDMAをG6PDHにコンジュゲートするための技法の概略図を示す。
図3】G6PDHを活性化するためにSBAPを使用してSDMAをG6PDHにコンジュゲートするための技法の概略図を示す。
図4】G6PDHを活性化するためにSMCCを使用してSDMAをG6PDHにコンジュゲートするための技法の概略図を示す。
図5】色素を還元させて色素の吸光度をシフトさせるために伝達体が色素に電子を渡す、伝達体-色素反応機構の概略図である。
図6】ヒト血清中に添加され、本開示の方法に従って分析されるSDMAの検量線を示す。
図7】ヒト血清中に添加され、本開示の固定計算法と速度計算法に従って分析したSDMAの検量線を示す。
図8】バックグラウンドシグナルを引くことなく、本開示に従って行われる公知の濃度のSDMAに関するアッセイの結果を示す。
図9】イヌ(図9)の除去血清較正物質を使用した本開示に従うSDMAアッセイの結果を示す。
図10】ネコ(図10)の除去血清較正物質を使用した本開示に従うSDMAアッセイの結果を示す。
図11】ウマ(図11)の除去血清較正物質を使用した本開示に従うSDMAアッセイの結果を示す。
図12】緩衝剤に基づく較正物質を使用した、本開示に従うSDMAアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を詳細に記述する前に、多数の用語を定義する。本明細書において使用される、単数形「1つの」、「1つの(an)」、および「その」は、本文が明らかにそれ以外であることを示している場合を除き、複数形を含む。
【0025】
SDMAは、対称性ジメチルアルギニンである。SDMAの構造は、
【0026】
【化2】

である。SDMAの1つまたは複数のアミノ酸残基はポリペプチドに存在し得るが、「遊離のSDMA」は、SDMAの塩を含む、ポリペプチド鎖の一部ではないSDMAを指す。
【0027】
本明細書において使用される用語「アナログ」は、一般的に、受容体に関して分析物と競合することができる分析物の改変型を指し、改変は、標識または固相支持体などのもう1つの部分に分析物を結合させる手段を提供する。分析物のアナログは、分析物と類似の方法で抗体に結合することができる。
【0028】
本明細書において使用される用語「抗体」は、一般的に、抗原に対する曝露に反応してBリンパ球によって産生され、その抗原に特異的に結合する糖タンパク質を指す。用語「抗体」は、その最も広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体(完全長のモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、およびそれらが所望の生物活性を示す限り、抗体断片をその範囲に含む。
【0029】
本明細書において使用される「抗SDMA抗体」、「抗SDMA抗体部分」、または「抗SDMA抗体断片」、および/または「抗SDMA抗体変種」などは、重鎖または軽鎖定常領域の1つの相補性決定領域(CDR)、フレームワーク領域、またはその任意の部分などの、しかしこれらに限定されない免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む分子を含有する任意のタンパク質またはペプチドを含む。
【0030】
本明細書において使用される用語「抗体断片」は、完全長の抗体、一般的に抗原結合またはその可変ドメインの一部を指す。具体的には、例えば抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、ダイアボディ、リニア抗体、一本鎖抗体分子、および抗体断片からの多重特異性抗体を含み得る。
【0031】
本明細書において使用される用語「抗原」は、適切な条件下で抗原に特異的な抗体と反応することができる物質を指す。
【0032】
本明細書において使用される用語「分析物」は、検出および/または測定される、試料中の物質または物質セットを指す。
【0033】
本明細書において使用される用語「生物試料」は、一般的に全血、血漿、血清、脳脊髄液などの脊髄液、リンパ液、腹腔液(腹水)、外部皮膚片、呼吸器、腸管、および泌尿器管、涙液、唾液、尿、血球、腫瘍、臓器、組織、およびin vitro細胞培養構成成分の試料が挙げられるがこれらに限定されない、ヒトまたは動物の組織または体液の試料を指す。
【0034】
本明細書において使用される用語「交叉反応性」は、一般的には、抗体の個々の抗原結合部位が1超の抗原性決定基と反応する能力、または抗体分子の集団が1超の抗原と反応する能力を指す。一般的に、交叉反応は、(i)交叉反応性の抗原が、免疫抗原と共通のエピトープを共有する、または(ii)免疫抗原上のエピトープと構造的に類似のエピトープを有する(多重特異性)ことにより生じる。
【0035】
本明細書において使用される用語「標識」は、分析物のアナログ、例えばSDMAアナログに直接または間接的に(例えば、共有結合または非共有結合手段を介して、単独または被包化されて)コンジュゲートすることができる検出可能な化合物または組成物を指す。例として、酵素標識は、検出可能である基質化合物または組成物の化学変化を触媒してもよい。本開示において使用される酵素は、アルカリホスファターゼ(AP);グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(「G6PDH」);β-ガラクトシダーゼ(BGAL);および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)であり得るが、これらに限定されない。本明細書における「G6PDH」または「グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ」などの酵素に関するいかなる引用も、酵素の変種、アイソフォーム、および変異体、例えば全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,455,288号に記述されるアミノ酸置換を有するG6PDHを含む。標識の利用は、電磁放射線の検出または直接可視化などの手段によって検出され得る、および任意選択で測定することができるシグナルを産生する。
【0036】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体集団から得られた抗体、すなわち、集団を含む個々の抗体が同一である抗体を指す。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、1つの抗原性部位を対象とする。典型的に異なるエピトープに対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の1つのエピトープを対象とする。修飾語「モノクローナル」は、単に、抗体の性質を指し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈すべきではない。具体的に、例えばモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ方法論によって作製してもよく、または組み換えDNA法によって作製してもよく、または公知の技術を使用してファージ抗体ライブラリから単離してもよい。
【0037】
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」は、一般的に、ペプチド結合によって連結したアミノ酸の配列を有する分子を指す。この用語は、タンパク質、融合タンパク質、オリゴペプチド、環状ペプチド、およびポリペプチド誘導体を含む。抗体および抗体誘導体は、上記の異なる章で考察されるが、抗体および抗体誘導体は、本開示の目的に関して、ポリペプチドおよびポリペプチド誘導体のサブクラスとして扱われる。
【0038】
「受容体」は、分子の特定の空間的および極性構築、例えばエピトープまたは決定部位を認識することができる任意の化合物または組成物を指す。例示的な受容体は、抗体、Fab断片などを含む。
【0039】
「結合特異性」または「特異的結合」は、第2の分子、例えばSDMAなどの分析物、および分析物に特異的なポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体、または抗体断片(例えば、Fv、一本鎖Fv、Fab’、またはF(ab’)2断片)に関する第1の分子の実質的な認識を指す。例えば、本明細書において使用される「特異性」は、一般的に、個々の抗体結合部位が唯一の抗原性決定基と反応する能力、または抗体分子の集団が唯一の抗原と反応する能力を指す。一般的に、分析物-抗体の反応には高度の特異性が存在する。抗体は、(i)分析物の一次構造、(ii)分析物の異性体構造、および(iii)応用可能である場合、分析物の二次および三次構造における差を区別することができる。高い特異性を示す抗体-分析物反応は、低い交叉反応性を示す。
【0040】
「実質的な結合」または「実質的に結合する」は、特定のアッセイ条件下でアッセイ混合物中の分子に特異的に結合するまたは分子を認識する量を指す。その最も広い態様において、実質的な結合は、第1の分子が第2の分子に結合できないまたは認識できないことと、第1の分子が第3の分子に結合できるまたは認識できることとの差に関連し、その差は、分子の相対的濃度ならびにインキュベーションの時間および温度を含む特定のアッセイ条件セットの下で、行われる意味のあるアッセイが特異的結合を区別するために十分である。もう1つの態様において、第1の分子が、第2の分子に対して、特定のアッセイ条件セットにおいて第3の分子に対して示す反応性の25%未満、例えば20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、または1%未満の反応性を示す場合、1つの分子は、交叉反応性という意味においてもう1つの分子に実質的に結合または認識することができない。特異的結合は、広く公知の多数の方法、例えば免疫組織化学アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウェスタンブロットアッセイを使用して試験することができる。
【0041】
本明細書において使用される用語「塩」は、化合物の酸および塩基官能基の間で形成される塩を意味する。例示的な塩には、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩(glucaronate)、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩が挙げられるがこれらに限定されない。用語「塩」はまた、カルボン酸官能基などの酸性官能基を有する化合物と、無機または有機塩基の間に形成される塩も指す。適した塩基には、アルカリ金属、例えばナトリウム、カリウム、およびリチウムなどの水酸化物;アルカリ土類金属、例えばカルシウムおよびマグネシウムなどの水酸化物;他の金属、例えばアルミニウムおよび亜鉛などの水酸化物;アンモニアおよび有機アミン、例えば非置換またはヒドロキシ置換モノ、ジ、またはトリアルキルアミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチル、N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ-、ビス-、またはトリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキルアミン)、例えばモノ-、ビス-、またはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、またはトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N,-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ低級アルキル)-アミン、例えばN,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン、またはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-メチル-D-グルカミン;およびアルギニン、リジンなどのアミノ酸等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0042】
次に、本開示に関して、一般的に、本開示は、試料および分析物以外の試薬成分に関連するバックグラウンドシグナルに対処する方法での試料中の分析物の免疫学的検出に関する。例として、分析物以外の試料成分は、互いにまたはアッセイのための試薬の成分と反応し得る。そのような反応は、検出方法の精度を妨害し得る。生物試料は、アッセイにおけるバックグラウンドノイズを生じ得る多くの成分を含むことで有名である。
【0043】
試料は、EMIT(登録商標)(酵素多重イムノアッセイ技術)ホモジニアスなイムノアッセイ系に基づく改変アッセイを使用して分析してもよい。従来のEMIT(登録商標)アッセイでは、分析物を含有する試料を、抗分析物抗体、分析物と酵素とのコンジュゲート、および酵素に接触させるとシグナルを産生する基質と接触させる。抗体がコンジュゲートに結合すると、酵素活性を阻害するかまたは低減させる。分析物が試料中に存在する場合、試料の分析物が抗体との結合に関してコンジュゲート分析物と競合して、それによって酵素/基質からより多くのシグナルが生成される。分析物が存在しない場合、抗体とコンジュゲートの間により多くの結合が起こって、シグナル生成を制限または妨害し得る。したがって、より多くの分析物が存在する場合には、より多くのシグナルが生成される。動力学アッセイは、試料中の分析物の存在または量の指標としてシグナル生成速度を使用することができる。
【0044】
本開示の1つの態様において、従来のEMIT(登録商標)アッセイフォーマットは、分析物と較正物質の両方に関して第1の反応シーケンスで行われる。便宜上、この第1の反応シーケンスは本明細書において「カラーアッセイ」として同定され得る。次に、本開示の改変アッセイにおいて、第2および個別のアッセイを、試料および較正物質に関する第2の反応シーケンスで行う。便宜上、第2の反応シーケンスは、本明細書において「ブランクアッセイ」として同定され得る。ブランクアッセイの試薬は、抗分析物抗体を含有せず、典型的にコンジュゲートを含有しない。したがって、ブランクアッセイは、試料依存的バックグラウンドシグナルを提供する。
【0045】
様々な態様において、本開示は、分析物の濃度を決定するための2つの例示的な方法でシグナルを使用することに関する。便宜上、例示的な方法を、本明細書において「速度」法と「固定」法と呼ぶ。いずれの方法も、カラーおよびブランクアッセイにおけるシグナルまたは複数のシグナルの量の差を使用する。1つの態様において、シグナルは、当技術分野で周知であるように、酵素/基質系に特異的な波長での吸光度として測定される。例として、G6PDH/NAD酵素/基質系に関する340nmでの吸光度の測定は、G6PDHの存在下でNADのNADHへの変換の相対量に関する値を提供するであろう。値を使用して、真のシグナル(固定法に関して)、または酵素による基質の変換を反映する反応速度(速度法に関して)を提供することができる。代替として、酵素基質反応を、基質と様々な電子受容体(例えば、色素)との間の電子移動を媒介する電子担体と共に使用することができ、これによって基質の波長とは異なる波長で反応速度を測定することができる。
【0046】
固定法において、真のシグナルを計算する。1つの実施形態において、真のシグナルは、全ての基質の消費による反応の完了であってもなくてもよい既定のエンドポイントでのカラーアッセイとブランクアッセイの間のシグナル(例えば、吸光度)の差に基づく。ブランクアッセイおよびカラーアッセイのエンドポイントで測定されるシグナルの差の量を使用して、真のシグナルを提供してもよい(例えば、真のシグナル=[カラーシグナルの量]-[ブランクシグナルの量])。あるいは、カラーアッセイおよびブランクアッセイの両方に関して決定することができる、既定の開始点T1(全ての試薬の混合の終了時またはその後のもう1つの既定の時間であってもよい)と既定のエンドポイント(T2)の間のシグナルの量の差を決定することができる。次に、これらの決定からのシグナルの量の差を使用して、真のシグナルを決定することができる(例えば、真のシグナル=([T2カラー]-[T1カラー])-([T2ブランク]-[T1ブランク]))。真のシグナルを検量線と比較して、試料中の分析物の量を決定することができる。
【0047】
カラーおよびブランクアッセイのそれぞれからの1回測定に基づいて真のシグナルを計算する場合、試薬が反応するために十分な時間の後に測定を行ってもよい。例えば、それぞれのアッセイにおける1回の測定は、試薬の全ての混合後約30秒から約10分で行ってもよい。より詳しくは、1回の測定は、試薬の全ての混合後、30、60、90、120、150、180、210、240、270、300、330、360、390、420、450、480、510、540、570、および600秒の1つで行ってもよい。ブランクおよびカラーアッセイのそれぞれにおいて2つのシグナルを測定する場合、初回測定(T1)を、アッセイの開始(試料と全ての試薬の混合)から約15秒~2分後に行う。この時間は、試薬の濃度および試料の予想される濃度に基づいて調節することができる。特に、T1は、全ての試薬の混合後15、30、45、60、75、90、105、または120秒であってもよい。第2の測定(T2)は、T1後15秒~数分で行うことができる。例えば、T2は、例えば初回測定(T1)後15秒、18秒、30秒、45秒、または1、2、3、4、もしくは5分であってもよい。
【0048】
速度法では、ブランクアッセイのシグナルを定義された間隔でカラーアッセイのシグナルから引いて反応速度を提供する。較正物質の反応速度を使用して検量線を提供し、これを使用して、試料に関するアッセイの反応速度の曲線を、検量線と比較することによって、試料中の分析物の量を決定することができる。
【0049】
速度法では、酵素媒介反応の際の複数の時点でシグナル(例えば、吸光度)を測定することによって、反応速度を決定することができる。シグナル測定の時間および間隔の決定は、アッセイの試薬濃度および温度を考慮に入れて、当業者の範囲内である。例として、速度は、室温で試料(または較正物質)と全ての試薬の混合後約2~10分を開始点として吸光度を測定し、さらに5~60秒毎に1~15分間測定することによって決定することができる。反応速度は、経時的な吸光度の変化として表記することができる。例えば、吸光度は、試料(または較正物質)と全ての試薬の混合後約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10分を開始点として測定することができる。吸光度は典型的に、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60秒の間隔で、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15分間測定される。これらの時間のそれぞれは、反応条件、分析物、および試薬に応じて延長または短縮することができる。
【0050】
固定法または速度法のいずれかにおいて、試料の第1の反応混合物のバックグラウンドを、真のシグナルまたは反応速度の計算において考慮して、標準化シグナルを提供することができる。1つの実施形態において、バックグラウンド吸光度は、試料の代わりに使用される較正物質マトリックスから測定される。較正物質マトリックスの吸光度は、試薬の全てをマトリックスと混合して最初に測定するか、またはその後限定される時間で測定される。較正物質マトリックスは、いかなる分析物も欠如する較正物質または対照混合物であってもよい。例えば、分析物を欠如する較正物質マトリックスは、透析によってまたは本明細書においてさらに記述されるもう1つの前処理プロセスによって分析物が除去されている試料であり得る。1つの実施形態において、除去されたまたは内因性の種特異的または非特異的血清、血漿、または他の生物学的液体を、較正物質マトリックスとして使用してもよい。本明細書においてさらに記述される他の実施形態において、較正物質マトリックスは、タンパク質および/または他の組成物を含有する水または希釈液(例えば、PBS中のBSA)であり得る。較正物質マトリックスは、カラーアッセイおよびブランクアッセイの両方において試料の代わりに使用され、両方のアッセイのバックグラウンドシグナルを提供する。
【0051】
バックグラウンドを決定した後、バックグラウンドを、固定法において真のシグナル(またはT1およびT2での測定)から引くか、または速度法において試料の反応速度を決定するために使用されるそれぞれの測定から引く。一例として、速度法において、較正物質マトリックス(試薬を含む)の吸光度を、試料の反応速度(すなわち、経時的な吸光度の変化)を決定するために使用されるそれぞれの吸光度測定から引く。もう1つの態様において、試料の反応速度と類似の方法でバックグラウンドの速度を決定する。次に、バックグラウンドの速度を試料の反応速度から引いて、試料の第1の反応混合物に関する標準化反応速度を提供する。
【0052】
したがって、本開示は、分析物のアッセイを行うための方法に関する。方法は、試料、抗分析物抗体、分析物と酵素とを含むコンジュゲート、および酵素に接触するとシグナルを産生する基質を含む試料の第1の反応混合物を形成することによって、試料に関してカラーアッセイを行うこと(試料の第1の反応シーケンス)を含む。典型的に、試料の第1の反応混合物は、試料を、抗体および基質と最初に接触させること、次に第2のステップにおいてコンジュゲートを添加することによって形成される。しかし、試料を最初に抗体およびコンジュゲートと混合して、第2のステップで基質を添加してもよい。1つの態様において、酵素およびコンジュゲートは、反応シーケンスを開始する準備ができるまでは離れた状態で維持される。本明細書において使用される「接触させる」は、その最も広い態様で使用され、本明細書においてそれ以外であると明記している場合を除き、任意の順序で試薬を混合することを指す。試料の第1の反応混合物が形成された後、本開示の固定または速度法において使用するために、シグナルの量を直ちに、またはその後1もしくは複数の既定の時間で混合物から測定してもよい。
【0053】
本開示の改変された固定および速度法において、個別のアッセイシーケンス(試料の第2の反応シーケンスまたは「ブランクアッセイ」)を、試料の第1の反応シーケンスと類似の方法で行う。しかし、試料の第2の反応シーケンスの試薬は、抗分析物抗体を含有しない。典型的に、ブランクアッセイの試薬は、コンジュゲートを含有しないが、本明細書において記述されるのは、少量のコンジュゲートまたは酵素が添加される実施形態である。特に、試料の第2の反応混合物は、試料を、基質と、いくつかの実施形態においてコンジュゲートと接触させることによって形成されるが、抗分析物抗体は含まない。試料の第2の反応混合物のシグナルを測定する。真のシグナルまたは反応速度を、較正物質マトリックスのバックグラウンドを使用して、試料の第1の反応シーケンスと同一に決定して、第2の反応シーケンスの標準化された真のシグナルまたは試料の標準化反応速度を提供する。
【0054】
速度法において、試料の最終反応速度を提供するために、試料の第2の反応シーケンスの標準化速度を、試料の第1の反応シーケンスの標準化反応速度から引く。最終反応速度を使用して、試料中の分析物の存在または量を決定することができる。典型的に、これは、試料の最終反応速度を、当技術分野で公知の方法に従って調製することができる標準曲線と比較することによって行われる。
【0055】
較正物質に関するカラーおよびブランクアッセイは、試料に関するカラーおよびブランクアッセイと類似の方法で行うことができる。したがって、較正物質の一連の第1の反応シーケンス(カラーアッセイ)は、既知量の分析物を含む較正物質セットのそれぞれの較正物質を、抗分析物抗体、分析物と酵素とを含むコンジュゲート、および酵素に接触するとシグナルを産生する基質と個々に接触させることによって、較正物質の第1の反応混合物を形成することによって行われる。較正物質の第1の反応混合物のそれぞれのシグナルを測定して、試料の第1の反応混合物に関して先に記述したように、較正物質の第1の反応混合物のそれぞれに関連するバックグラウンドを考慮することによって、較正物質の第1の反応混合物のそれぞれに関する標準化された真のシグナル(固定法)または標準化された反応速度(速度法)が生成される。較正物質の1つは、バックグラウンドを決定するために使用される較正物質マトリックス(分析物を含有しない)であってもよい。
【0056】
異なる反応シリーズ(ブランクアッセイ)において、較正物質の第2の反応シーケンスは、較正物質セットのそれぞれの較正物質を、抗分析物抗体の非存在下で基質、および典型的にコンジュゲートと接触させることによって、較正物質の第2の反応混合物を形成することによって行われる。いくつかの例において、コンジュゲートはまた、本明細書においてさらに記述するように通常少量で存在してもよい。較正物質の第2の反応混合物のそれぞれのシグナルを測定して、上記のように、較正物質の第2の反応混合物に関連するバックグラウンドを考慮することによって、それぞれの混合物に関する真のシグナルまたは反応速度を標準化する。
【0057】
したがって、固定法においてバックグラウンドシグナルを考慮するために、ブランクアッセイの標準化された真のシグナルを、カラーアッセイの標準化された真のシグナルから引く。速度法において、較正物質の第2の反応シーケンスにおける較正物質の標準化速度を、較正物質の第1の反応シーケンスにおける較正物質のそれぞれの標準化速度から引くことによって、較正物質のそれぞれの最終反応速度を決定する。較正物質のそれぞれの最終反応速度に基づいて標準化標準曲線を作成することができ、これを使用して、試料の標準化反応速度を標準化標準曲線と比較することによって、試料中の分析物の量を決定することができる。
【0058】
1つの実施形態において、カラーアッセイおよびブランクアッセイに関連する試薬を表1に示す。試薬は、適当な希釈液および/または緩衝剤中で混合される。表1に示すように、ブランクアッセイ試薬2(R2)は、コンジュゲートを含有しないが、これは、反応が適切な量の緩衝液を確実に有するように、本明細書においてさらに記述されるように存在してもよい。いくつかの態様において、ブランクアッセイR1は、ブランクアッセイR2を使用しない場合には、追加の容量を有してもよい。1つの実施形態において、カラーアッセイの試薬は、抗体およびコンジュゲートの存在または非存在を除き、ブランクアッセイの試薬と同一である。R2はブランクアッセイにおいていかなるコンジュゲートも含有しないが、これはなおも、カラーアッセイの希釈液、緩衝剤、およびR2の他の成分を含有する。
【0059】
【表1】
【0060】
いくつかの実施形態において、ブランクアッセイR1はまた、抗分析物抗体を含有してもよい。
【0061】
カラーアッセイにおける較正物質および試験試料は、一般的に反応混合物に添加される分析物-酵素コンジュゲートにより吸光度の増加を生じると予想することができる。コンジュゲートが存在しない場合であっても、内因性の基質またはR1の基質に反応性の内因性の酵素が吸光度の増加を生じることから、多くの試料が、ブランクアッセイにおいて試験した場合でも正の反応を生じる。しかし、しばしば試料および較正物質は、ブランクアッセイにおいて試験した場合に反応混合物が吸光度の変化をほとんどまたは全く生じないように、通常小さいバックグラウンドシグナルがさらに弱められる程度に希釈される。吸光度の変化は、検出器の感度の範囲より下に低下し得ることから、自動分析装置では検量線の作成不能が起こり得る。
【0062】
この問題を回避するために、生じる吸光度の正の変化が確実に小さくなるように(較正物質または試料の挙動によらず)、酵素または分析物-酵素コンジュゲートを、ブランクアッセイに添加することができる。したがって、表2は、本実施形態に存在する試薬を示す。
【0063】
【表2】
【0064】
R2における酵素またはコンジュゲートの濃度は、較正物質マトリックスのアッセイにおいて不要なノイズを防止するために典型的に低く維持される。例えば、酵素がG6PDHである場合、約1~15ng/mlの酵素(コンジュゲートまたは非コンジュゲート)をブランクアッセイに添加することができる。特に、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15ng/mlを添加してもよい。より大きい分析物は同じ量の酵素を提供するためにより多くの量のコンジュゲートを必要とすることから、R2におけるコンジュゲートの量は分析物のサイズに依存する。1つの実施形態において、カラーアッセイのR2における酵素(単独またはコンジュゲート)の濃度は、ブランクアッセイのR2における酵素の濃度より約10~約150倍高い。様々な実施形態において、カラーアッセイにおけるコンジュゲートの濃度は、ブランクアッセイの試薬における酵素濃度より10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、および150倍高い。コンジュゲートされると、酵素の活性は典型的に、非コンジュゲート酵素の活性より低い。例として、コンジュゲート酵素の活性は、非コンジュゲート酵素の活性とは大きく異なり、例えば、コンジュゲート酵素の活性は、非コンジュゲート酵素の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%である。したがって、非コンジュゲート酵素をブランクアッセイのR2において使用する場合、コンジュゲートであった場合より少量で使用することができ、それでもなおコンジュゲート酵素と同じ活性を提供することができる。
【0065】
基質または酵素が1超の基質を有する場合には複数の基質は、試薬中に過剰に存在してもよい。
【0066】
いくつかの態様において、アッセイ試薬は、アッセイ試薬の安定化剤を含み得る。例えば、シグナル産生酵素がグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)である場合、グルコース-6-リン酸(G6P)またはNADをコンジュゲート含有試薬に添加して酵素-分析物コンジュゲートを安定化させることができる。
【0067】
血清は、バックグラウンドに寄与し得るいくつかの酵素を含有する。したがって、特異的酵素阻害剤を試薬希釈液に添加すると、アッセイ精度をさらに改善することができる。阻害剤は、カラーおよびブランクアッセイにおいて干渉性のノイズの一部を消去するために役立つ。したがって、様々な態様において、反応成分は、内因性の試料酵素の阻害剤を含み得る。例えば、オキサミド酸ナトリウムは、NADおよび/またはNADPの酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の公知の阻害剤である。オキサミド酸ナトリウムは、試料中の、またはアッセイに関連する酵素-基質系(例えば、G6PDH/NAD)の一部であり得るNADをLDHが代謝回転するのを防止することによって、内因性の試料LDHに関連するバックグラウンドシグナルを防止する。30超の血清酵素および酵素阻害剤の組み合わせが公知であり、それらの多くの阻害剤が入手可能である。
【0068】
1つの態様において、較正物質は、試料の代わりに使用される較正マトリックスを提供するために、脱イオン水または食塩水中で既知量の分析物(または較正物質マトリックスの場合にはなし)を含む。他の態様において、除去血清が水または食塩水の代わりに使用される。透析される血清は、天然の種特異的血清もしくは血漿であるか、または例えば透析プロセスにおいて分析物が除去されている非特異的血清もしくは血漿である。分析物を除去または不活化するために、多数の他の試料前処理プロセスが公知である。これらの実施形態のそれぞれにおいて、試料中の分析物の予想濃度範囲に及ぶ一連の較正物質を提供するために、溶液に、既知量の分析物を添加する。なおもう1つの実施形態において、較正物質溶液は、PBS中の1~7%BSAなどのタンパク質ベースの溶液である。この実施形態において、除去して添加された血清較正物質に対してBSA較正物質を較正することが必要であり得る。
【0069】
典型的に、ブランクアッセイは、バックグラウンドシグナルに寄与する内因性のタンパク質、酵素、または他の大きい分子成分を補正するために企図されることから、水または食塩水は、非生物試料に関してより適しているが、多くの場合、生物試料に関して較正物質溶液として水または食塩水を使用しても十分な特異性が得られ得る。同様に、自動分析装置における較正物質マトリックスに水または食塩水緩衝液を使用することは、緩衝液の使用に関連する反応速度によって、血清と比較して反応速度の有意な増加が起こり得ることから、較正物質マトリックスに関してエラーメッセージを生じる傾向があり得る。この状況では、較正マトリックスの吸光度値を引くことによって、負の速度が得られる。これらの速度を血清ベースの較正物質マトリックスに対して標準化することができるが、自動分析装置は典型的に、この状況でエラーメッセージを生じる。
【0070】
本開示の1つの実施形態に従って、分析物はSDMAであり、酵素コンジュゲート系はG6PDH/NADである。この実施形態において、SDMAのアナログを、G6PDHにコンジュゲートして、ヒト、ネコおよびイヌなどの動物の血清または血漿試料中のSDMAの存在または量を決定するために、カラーおよびブランクアッセイにおいてコンジュゲートとして使用する。この実施形態の1つの態様において、較正物質は、較正物質マトリックス(除去血清または血漿)中で既知量のSDMAを混合することによって調製される。表3に記述されるように以下の試薬を例示的な量で使用して、カラーおよびブランクアッセイを上記のように行う。
【0071】
【表3】
【0072】
特に、抗SDMA抗体は、カラーアッセイのR1において約4~約10μg/mLの濃度、例えば約4、5、6、7、8、9、または10μg/mLを有し得る。カラーアッセイまたはブランクアッセイのR1において、G6PおよびNADは、約8~75mM、より詳しくは約10~65mM、または約20~55mM、より詳しくは約8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70mMの濃度を有し得る。カラーアッセイのR2において、SDMA-G6PDHコンジュゲートは、約0.25~0.75μg/mL、より詳しくは約0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.65、0.70、または0.75μg/mLの濃度を有し得る。ブランクアッセイのR2において、コンジュゲートの濃度は、約5~30ng/mLであってもよく、より詳しくは約5、10、15、20、25、または30ng/mLであってもよい。
【0073】
G6Pは、酵素を安定化するためにR2試薬に存在する。あるいは、NADを使用することができる。安定化基質は任意選択である。
【0074】
試薬は、カラーおよびブランクアッセイに関して以下の量で試料および較正物質と混合してもよいが、量は、異なる分析物および反応条件に適合するように調節してもよい。
試料:5~20μL
R1:20~60μL
R2:20~150μL
1つの特定の実施形態において、反応混合物は、試料10μL、R1 40μL、およびR2 125μLを含有する。
【0075】
カラーおよびブランクアッセイにおいて上記の試薬を使用して、検量線を作成して、血清または血漿試料中のSDMAの存在または量を決定することができる。図1は、BeckmanAU680(登録商標)臨床化学分析装置によって、正常および慢性腎疾患のヒト血漿試料中のSDMAを決定するために速度法を使用した結果を示す。結果は、基準となるLC-MS値と比較してSDMA濃度が正確に決定されたことを示す。ヒト血清(非除去)を較正物質マトリックスとして使用した。したがって、本開示は、ヒト、ならびに例えば家畜、農場、および動物園の動物を含む動物における慢性腎疾患を決定する方法に関する。本方法は、本開示の方法に従って動物対象の生物試料中のSDMA濃度を決定すること、ならびに健康な対象および慢性腎疾患に罹患している対象と同じ種の試料中のSDMAの量の標準曲線または他のモデルと濃度を比較することを含む。
【0076】
1つの実施形態において、本開示は、試料中の分析物の存在または量を決定するための試薬を含有するキットに関する。例えば、キットは、カラーアッセイを行うための第1の試薬セット、例えば抗分析物抗体と酵素のシグナル産生基質とを含む第1の試薬、および分析物と酵素とのコンジュゲートを含む第2の試薬を含み得る。キットはまた、基質を含有する第3の試薬を含む第2の試薬セットを含み得る。第2の試薬セットはまた、緩衝剤/希釈液を含有する第4の試薬と、任意選択でコンジュゲートを含み得る。緩衝剤/希釈液のみを含有する第4の試薬の目的は、第2の試薬セットに関連する反応が適切な容量で確実に行われるようにすることである。第2の試薬セットが、第4の試薬を含有しない場合、第3の試薬の容量をそれに従って調節すべきである。加えて、第3または第4の試薬のいずれかは抗分析物抗体を含有してもよい。
【0077】
それぞれの試薬における成分の濃度および量は、カラーおよびブランクアッセイのそれぞれにおいてR1およびR2に関して上記の通りであり得る。例として、第1の試薬中のコンジュゲートの濃度は、第4の試薬中のコンジュゲート濃度より約5~約150倍高い。1つの態様において、キットにおける試薬の少なくとも1つは、コンジュゲートの酵素以外の酵素の阻害剤を含む。キットはまた、水、食塩水、または除去もしくは処理された血清もしくは血漿(例えば、前処理試料)などの適切な希釈液で希釈された既知量の分析物を含む標準物質または標準物質セット(較正物質)を含み得る。
【0078】
分析物がSDMAである場合、例示的なキットは、第1の試薬において、抗SDMA抗体(ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体)、ならびにNADおよびG6Pなどの基質を含む。第2の試薬は、酵素の安定化剤としてSDMAアナログとG6PDHのコンジュゲートを含む。第3の試薬は、SDMA-G6PDHコンジュゲート、および任意選択で第4の試薬を含む。第4の試薬は、希釈液もしくは緩衝剤のみを含んでもよく、またはコンジュゲートを含んでもよい。
【0079】
キットに加えて、本開示は、キットの試薬およびSDMAを含む疑いがある試料の反応混合物に関する。例として、反応混合物は、試料または較正物質、抗SDMA抗体、SDMA-G6PDHコンジュゲート、NAD、およびG6Pを含み得る。
【0080】
キットのそれぞれにおいて、本開示の方法および反応混合物、多数の酵素/基質系を、G6PDH/NADの代わりに使用することができる。もう1つの例として、リンゴ酸デヒドロゲナーゼは、G6PDHと同様にNAD+のNADHへの還元を使用して、リンゴ酸のオキサロ酢酸への酸化を触媒する酵素である。加えて、酵素のシグナルまたは安定性を増強する多くの酵素変異体が公知である。例えば、米国特許第6,455,288号を参照されたい。
【0081】
分析物-酵素コンジュゲートは、多様な公知の方法によって調製することができる。使用される方法および試薬の選択により、分析物と酵素との間に様々な長さのリンカーを提供することができる。リンカーの長さは、酵素活性を抗体が阻害する能力、したがってアッセイの感度に抗体が影響を及ぼす能力に影響を及ぼし得る。典型的に、約5~15原子のリンカー、または2~20オングストロームのリンカーが使用され得る。酵素の分析物へのコンジュゲーションは、本開示に従って検出することができる多くの分析物に関して当業者の範囲内である。
【0082】
例として、図2は、式1(以下)のSDMAアナログのグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)へのコンジュゲーションを示す。G6PDHを、コンジュゲーション前にスクシンイミジルヨード酢酸(SIA)によって活性化する。SIAによる活性化によって、SDMAと酵素の間に5原子のリンカー(-C-C-S-C-C(O)-)が得られ、これはSDMAの誘導体化の際に酸素の窒素への交換に起因するSDMA上の非ネイティブ窒素を含まない。
【0083】
図3は、スクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)を使用する式1のSDMAアナログのG6PDHへのコンジュゲーションを示し、これによって9原子のリンカー(非ネイティブ窒素を計数しない)(-C-C-S-C-C(O)-C-N-C-C(O)-)が得られる。
【0084】
図4は、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)を使用する式1のSDMAアナログのG6PDHへのコンジュゲーションを示し、これによって12原子のリンカーが得られる。
【0085】
リンカーの長さは、他の試薬によって、またはコンジュゲーション反応において他のSDMAアナログを使用してG6PDHを改変することによって調節することができ、例えば約5~約15原子、特に約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15原子のリンカー長を提供することができる。したがって、本開示は、SDMAと酵素の間の最短経路の一部ではない、リンカー分子における側鎖、置換基、または環のいかなる原子も除外する最短経路を通してリンカーの鎖にそれらの原子を直接含む5~15原子のリンカーを介してのSDMAおよび酵素のコンジュゲートに関する。
【0086】
リンカー長は、約2オングストローム~約20オングストローム、特に約5~約15オングストローム、より特に約6~10オングストロームの範囲であり得る。
【0087】
1つの実施形態において、SDMAは、G6PDH基質グルコース-6-リン酸(G6P)および/またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の存在下でG6PDHにコンジュゲートされる。最適なコンジュゲート-酵素活性および抗体による活性の阻害は酵素、基質、およびSDMAの比率を調節することによって得ることができる。
【0088】
G6PDHとのコンジュゲーションにとって適切なSDMAのいくつかのアナログが、全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,481,690号に記述されている。SDMAとG6PDHの間のリンカーの所望の長さに応じて、以下のアナログの1つを使用することができる。
【0089】
【化3】

式中、xおよびyは、1~5の範囲の整数である。
【0090】
式A、B、およびCは、適当な「チオール反応性部位」、すなわちチオール基と反応する部位を含むコンジュゲーション標的と反応することができる利用可能なチオールを提供する。例えば、マレイミド、アルキルおよびアリールハロゲン化物、ならびにα-ハロアシルは、チオールと反応してチオールエーテルを形成することができる例示的なチオール反応性部位である。同様に、ピリジルジスルフィドは、チオールと反応して混合ジスルフィドを形成することができる。SIA、SBAP、またはSMCCによって活性化されたG6PDHは、適切なチオール反応性部位を提供する。X=1の場合、式AとSIA活性化G6PDHとのコンジュゲーションは、SDMAとG6PDHの間に5原子のリンカーを提供する。式A(X=1)とSMCCとのコンジュゲーションによって、12原子のリンカーが得られる。他のリンカー長は、Xを変化させることによって得ることができる。
【0091】
特定の実施形態において、X=1の場合、SDMAアナログは以下の式(式I)を有する:
【0092】
【化4】
【0093】
式1は、以下の例示的な合成スキーム(1)によってSDMA(EMD Chemicals Inc. of Gibbstown,NJから市販されている)から調製され得る。
【0094】
【化5】
【0095】
SDMAの一級および二級アミノ基は、SDMAをジ-tert-ブチルジカーボネート(Boc2O)と反応させることによって保護される。得られたtert-ブトキシカルボニル(BOC)保護SDMA((Boc3)-SDMA、1)を、次に樹脂に結合させる。例えば、(Boc3)-SDMA(1)に、ジメチルホルムアミド(DMF)中で、2-(1H-7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウラニウムヘキサフルオロホスフェートメタンアミニウム(methanamininium)(HATU)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下で樹脂を接触させることによって、(Boc3)-SDMA(1)を、システアミン-4-メトキシトリチル樹脂(EMD Chemicals Inc.Gibbstown,NJ)に連結させて、樹脂結合(Boc3)-SDMAシスタミド(cystamide)(2)を提供することができる。樹脂結合(Boc3)-SDMAシスタミド(2)上のBOC保護基を除去して、得られた樹脂結合SDMAシスタミドを、例えばジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸を使用して樹脂から切断して、SDMAシスタミド(3)を提供し、これを塩酸との反応によって塩酸塩(4)に変換した。
【0096】
従来のEMIT(登録商標)アッセイは、340nmでの吸光度をモニターすることによってNADH(またはNADPH)の蓄積を測定している。本開示のもう1つの実施形態において、色が変化する色素および電子伝達体を試薬に添加すると、吸光度を、340nm以外の吸光度で測定することができる。1つの特定の実施例において、色素は、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)であり、伝達体は、1-メトキシフェナジンメトスルフェート(PMS)である。図5に表すように、PMSは、NADPから電子を受け取って電子をMTTに移動させ、電子はMTTを還元しておよそ650nmでの吸光度を提供する。
【0097】
抗SDMA抗体は、米国特許第8,481,690号に記述されるようにポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生する方法は当業者の範囲内である。1つの実施形態において、抗体は、以下の構造を有するSDMA-KLHコンジュゲートに対するモノクローナル抗体である:
【0098】
【化6】
【0099】
様々な態様において、本開示の改変アッセイにおいて使用される抗SDMA抗体は、SDMAに対して高い親和性を有し得て、非対称性のジメチルアルギニン(ADMA)、L-アルギニン、およびN-メチルアルギニンからなる群より選択される1つまたは複数の化合物との交叉反応を示さないかまたは実質的に示さない。例えば、抗SDMA抗体は、ADMA、L-アルギニン、およびN-メチルアルギニンに対して、特定のアッセイ条件セットにおいてSDMAに対して示される反応性の25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、または1%未満である反応性を示す。
【0100】
上記の成分の全てを、試料中の遊離のSDMAの存在または量を決定する方法において使用してもよい。例えば、方法は、試料を、抗SDMA抗体、SDMAとG6PDHとを含むコンジュゲート、ならびにNADおよびG6Pを含む基質と接触させることを含む。本明細書において記述されるように、NADのNADHへの変換速度を測定して、標準曲線と比較して、試料中のSDMAの存在または量を決定する。SDMAは、本明細書において記述されるように5~15原子のリンカー(2~10オングストローム)によってG6PDHにコンジュゲートされる。抗SDMA抗体は、ADMA、L-アルギニン、およびN-メチルアルギニンとの反応性を有さないかまたは実質的に有さないモノクローナル抗体であってもよい。
【0101】
なおもう1つの実施形態において、本開示は、遊離のSDMAを誘導体化すること、および誘導体に対する抗体を使用することを含む試料中のSDMAを決定する方法に関する。例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第2004/0214252号は、SDMAのグアニジノ窒素の改変方法および改変SDMAに対する抗体について記述している。したがって、1つの実施形態において、試料中のSDMAは、本開示の方法に従う方法において決定される前に改変される。本実施形態において、抗SDMA抗体は、改変SDMAと、同様に改変され得るコンジュゲートのSDMAの両方に、適したアッセイを提供するために十分な親和性で結合すべきである。
【実施例1】
【0102】
除去血清の調製
【0103】
無処置の市販のイヌ血清(500mL)を2フィートのSNAKESKIN(商標)透析チューブ(3.5K MWCO、35 mm乾燥時内径)(Thermo Scientific)に充填して、炭素粉末20gを用いて、4℃で少なくとも6時間、PBS緩衝液(20L)に対して透析した。このプロセスを、緩衝液および炭素を交換することによって3回繰り返した。
【0104】
血清中のSDMA濃度を、透析の前後でLC/MSによって測定した。透析前の血清において、SDMAは9.89μg/dLであった。透析後、SDMAは0.02μg/dLであった。
【0105】
炭素除去イヌ血清を、使用するまで-80℃で保存した。
【実施例2】
【0106】
SDMA標準物質の調製:
【0107】
SDMA塩酸塩(ChemBio)を脱イオン水に溶解して、SDMAの最終濃度を1000μg/mlとした。SDMA水溶液200μlを、最終保存液が20μg/mLのSDMA濃度を有するように除去血清10mlに添加した。溶液を-80℃で保存した。SDMA保存液280μlを、除去血清10mlに移して56μg/dLの標準SDMAを調製した。他のSDMA標準物質は、除去血清中で保存溶液を連続希釈することによって調製し、28.0、14.0、7.0、および3.75μl/dLの溶液を提供した。標準物質をLC/MSによってバリデートしてもよい。
【実施例3】
【0108】
希釈液の調製
【0109】
希釈液処方R1およびR2は、表4に同定される成分を含有した。オキサミド酸ナトリウムは、本明細書において他所で記述されるように任意選択の成分である。
【0110】
【表4】
【0111】
希釈液の調製プロトコル
【0112】
R1希釈液(1L規模)。以下の成分を脱イオン水500mlに添加した:
BSA 10g
1M TRIS,pH8.0 50ml
EDTAナトリウム0.372g
Brij-35(30%)4ml
プロクリン150 4ml
PEG6000 0.96g
NaCl 17.6g
マウス血清10ml
オキサミド酸ナトリウム(任意選択)1.665g
【0113】
攪拌子を使用して溶液を低速で十分に混合した。粉末が完全に溶解した後、pHを必要に応じて10N NaOHまたは3N HClによって7.0に調節した。溶液を目盛り付きシリンダーに添加して、脱イオン水を使用して最終容量を1Lにした。十分に混合後、溶液を静かに十分攪拌して、0.2μmのセルロース窒化物フィルターユニットで濾過し、使用するまで4℃で保存した。
【0114】
R2希釈液(1L規模)。以下の成分を脱イオン水500mlに添加した:
BSA 10g
1M TRIS,pH8.0 100ml
0.5M EDTA(pH8.0)2ml
Brij-35(30%)4ml
プロクリン150 4ml
PEG6000 0.96g
NaCl 17.6g
マウス血清10ml
G6P 0.56g
オキサミド酸ナトリウム(任意選択)1.665g
【0115】
溶液を、攪拌子を使用して低速で十分に混合した。粉末が完全に溶解した後、pHを必要に応じて10N NaOHまたは3N HClによって8.0に調節した。溶液を目盛り付きシリンダーに添加して、脱イオン水を使用して最終容量1Lにした。十分に混合後、溶液を静かに十分攪拌して、0.2μmのセルロース窒化物フィルターユニットで濾過し、使用するまで4℃で保存した。
【実施例4】
【0116】
アッセイ試薬の調製
【0117】
R1試薬およびR1ブランクの調製
【0118】
R1試薬およびR1ブランクは、R1希釈液中にNAD(35mM)、G6P(56mM)を含有した。R1希釈液はまた、抗体(10.5μg/mL)も含んでいた。G6Pは、コンジュゲートの安定化剤であり、任意選択である。
【0119】
試薬を調製する前に、希釈液および他の材料を室温にした。NAD 4.644g、グルコース-6-リン酸ナトリウム(G6P)3.160gをR1希釈液に添加することによって、2×基質標準溶液(100ml)を調製した。静かに混合することによって粉末を完全に溶解した後、pHを必要に応じて10N NaOHまたは3N HClによって7.0に調節した。溶液を目盛り付きシリンダーに添加して、追加のR1希釈液を添加して最終容量100mLにした。溶液をローラー上で静かに回転させながら十分攪拌して、0.2μmのセルロース窒化物フィルターユニットで濾過した。
【0120】
抗体保存液(6.6mg/ml)をR1希釈液に1:10倍で予め希釈して660μg/mlの抗体溶液を得ることによって、4×抗体標準溶液(25ml)を調製した。予め希釈した抗体溶液(660μg/ml)1.59mlをR1希釈液23.41mlに添加して、濃度42μg/mlの抗体標準溶液(4×)を調製した。
【0121】
基質標準溶液(2×)40ml、抗体標準溶液(4×)20ml、およびR1希釈液20mlを混合することによって、R1試薬を調製した。溶液を静かに混合して、アルミニウムホイルで覆い、使用するまで4℃で保存した。
【0122】
基質標準溶液(2×)40mlおよびR1希釈液40mlを混合して、R1ブランクを調製した。溶液を静かに混合して、アルミニウムホイルで覆い、使用するまで4℃で保存した。
【0123】
R2試薬およびR2ブランクの調製
【0124】
R2試薬は、R2希釈液中にSDMA-G6PDHコンジュゲート(0.42μg/ml)を含有した。R2ブランクは、R2希釈液中にSDMA-G6PDHコンジュゲート(0.014μg/ml)を含有した。
【0125】
コンジュゲート保存液(ロット番号5616-80-2、770μg/ml)0.3mlをR2希釈液29.7mlに添加して、コンジュゲートを1:100倍に予め希釈して、最終濃度7.7μg/mlを得た。
【0126】
予め希釈したコンジュゲート溶液21.8mlをR2希釈液378.2mlに添加して、R2試薬を調製した。
【0127】
予め希釈したコンジュゲート溶液0.73mlをR2希釈液399.27mlに添加して、R2ブランクを調製した。
【0128】
溶液を十分に混合して、使用するまで4℃で保存した。
【実施例5】
【0129】
SDMAアナログN,N’-ジメチルアルギニンチオール(SDMA-SH)の調製
【0130】
材料:
- システアミン4-メトキシトリチル樹脂:ローディング0.7mmol/g樹脂および200~400メッシュのコポリマーマトリックス(Novabiochem)
- Fmoc-SDMA(Boc)2ONa:分子量624.7、純度≧95%(Novabiochem)
- HATU:分子量380.3(Novabiochem)
- N,N-ジイソプロピルエチルアミン:再蒸留によって精製、99.5%Sigmaより
- DMF(無水物):純度≧99.8%Sigmaより
- ピペリジン:無水DMF中で20%
【0131】
技法
【0132】
20mLバイアルにシステアミン4-メトキシトリチル樹脂(1.2g、0.46mmol)、Fmoc-SDMA(Boc)2ONa(0.9g、1.4mmol、3.0当量)、HATU(0.54g、1.4mmol、3.0当量)、ジイソプロピルエチルアミン(0.4mL、2.3mmol、5.0当量)、および無水DMF(18mL)を添加した。混合物にキャップをして室温で16時間反転させた。ガラスピペットを使用して、液体をバイアルから除去した。樹脂をDMF(18mL、4回)によって洗浄した後、メタノール(18mL、4回)によって洗浄した。樹脂をDMF中の20%ピペリジン中、室温で15分間(18mL、3回)反転させた。樹脂をDMF(18mL、4回)によって洗浄した後、メタノール(18mL、4回)によって洗浄して、凍結乾燥器の中で1時間乾燥させた。黄色/淡いピンク色の樹脂を4℃で保存するか、または切断してSDMA-SHを得ることができる。
【0133】
SDMA-SHを樹脂(50mg)から切断するために、トリフルオロ酢酸(3mL)中、室温で1時間反転させた。暗赤色のスラリーを濾過してアセトニトリル(1mL)ですすいで透明な黄色の溶液を得る。溶液を凍結乾燥してSDMA-SH(7mg)を濃い黄色の油として得る。チオールの酸化により、化合物は、直ちに使用するか、または-80℃で保存すべきである(-80℃での保存によって2ヶ月後の酸化は10%未満である)。SDMA-SH(式1)をLC/MSおよびNMRによって確認した。
【0134】
【化7】
【実施例6】
【0135】
SDMAおよびG6PDHのコンジュゲーション
【0136】
SDMAおよびG6PDHのコンジュゲートを、SDMAアナログSDMA-SHと、SIA、SBAP、またはSMCCのいずれかによって活性化したG6PDHとを、NADおよびG6Pの存在下でコンジュゲートすることによって調製した。SDMAとG6PDHの間のリンカーの長さは、図2、3、および4に示されるように活性化のために使用される試薬を選択することによって変化させることができた。
【0137】
SIAによる酵素の予備活性化:グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)(12mg)1バイアルをMES緩衝液(50mM、pH8.0)3mlに溶解して、1時間回転させて、酵素を完全に溶解させた。酵素溶液を必要となるまで氷中で維持した。追加のMES緩衝液(50mM、pH8.0)4.5mlを酵素溶液に添加して、ボルテックスミキサーにより十分に混合(5秒間)し、氷中で10分間維持した。G6P 100mgを脱イオン水1mlに溶解して氷中で10分間維持した。NADH 200mgを脱イオン水1mlに溶解して、氷中で10分間維持した。G6P溶液0.68mlおよびNADH溶液0.34mlを酵素溶液に添加して、ボルテックスミキサーにより十分に混合(5秒間)し、氷中で10分間維持した。SIA(50mg)1バイアルをDMSO(100mg/ml)0.5mlに溶解した。SIA溶液0.14mlを酵素溶液に添加して、ボルテックスミキサーにより十分に混合(5秒間)し、アルミニウムホイルで覆って、室温で2時間回転させた。溶液をG2 Slide-A-Lyzer透析カセットに移して、PBS緩衝液(4L)に対して4℃の暗所で5時間透析した。緩衝液を新しいPBS(4L)に交換して、溶液を4℃の暗所で終夜透析した。透析緩衝液をMES(4L、25mM、pH8.0)に変更して、溶液を4℃で3時間透析した。酵素溶液12.5mlを透析カセットから採取して、MES緩衝液(1M、pH8.0)0.32mlおよびEDTA(0.2M、pH8.0)0.32mlを添加して、溶液の最終濃度を50mM MESおよび5mM EDTAにした。必要であれば、酵素溶液が12.5ml未満である場合、MESおよびEDTAの量をそれに従って調節してもよい。溶液をアルゴンによって5分間脱気した。
【0138】
SBAPによる酵素の予備活性化:MES緩衝液(50mM、pH8.0)1ml中のG6PDH 2mgに、G6P 11.3mgおよびNADH 16.8mgを添加して、十分に混合して、氷中で10分間維持した。SBAP(50mg)をDMSO(100mg/ml)0.5mlに溶解した。SBAP 0.025mlを酵素溶液に添加して、ボルテックスミキサーにより十分に混合(5秒間)し、アルミニウムホイルで蓋をして、室温で2時間回転させた。溶液をG2 Slide-A-Lyzer透析カセットに移して、PBS緩衝液(2L)に対して4℃の暗所で5時間透析した。緩衝液を新しいPBS(2L)に交換して、溶液を4℃の暗所で終夜透析した。透析緩衝液をMES(2L、25mM、pH8.0)に交換して、溶液を4℃で3時間透析した。酵素溶液2.5mlを透析カセットから採取して、MES緩衝液(1M、pH8.0)0.060mlおよびEDTA(0.5M、pH8.0)0.025mlを添加して、溶液の最終濃度を50mM MESおよび5mM EDTAにした。
【0139】
SMCCによる酵素の予備活性化:MES緩衝液(50mM、pH8.0)1ml中のG6PDH 2mgにG6P 11.3mgおよびNADH 16.8mgを添加して、十分に混合し、氷中で10分間維持した。スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)50mgをDMSO(100mg/ml)0.5mlに溶解した。SMCC溶液0.035mlを酵素溶液に添加して、ボルテックスミキサーにより十分に混合(5秒間)し、アルミニウムホイルで蓋をして室温で2時間回転させた。溶液をG2 Slide-A-Lyzer透析カセットに移して、PBS緩衝液(2L)に対して4℃の暗所で5時間透析した。緩衝液を新しいPBS(2L)に交換して、溶液を4℃の暗所で終夜透析した。透析緩衝液をMES(2L、25mM、pH8.0)に4℃で3時間交換する。酵素溶液2.5mlを透析カセットから採取して、MES緩衝液(1M、pH8.0)0.060mlおよびEDTA(0.5M、pH8.0)0.025mlを添加して、溶液の最終濃度を50mM MESおよび5mM EDTAにした。
【0140】
SDMAと予備活性化したG6PDHのコンジュゲーション:新しく調製したSDMA-SH(処方1)を、予備活性化した酵素溶液に以下の量で添加した:SIA活性化G6PDHに関して0.35ml(100mg/ml)、およびSBAPまたはSMCC活性化G6PDHに関して0.065ml(100mg/ml)。溶液を十分に混合して、混合物を4℃で36時間回転させた。反応混合物をG2 Slide-A-Lyzer透析カセット(Thermo Scientific)を使用して、PBS緩衝液(2または4L)に対して4℃で透析(3または4サイクル)した。SDMA-酵素コンジュゲート溶液をTrisHCl緩衝液(25mM、pH8.0)に対して4℃で4時間透析することによって平衡にした。溶液を0.45μmの遠心フィルターを使用して濾過した(1500*gで10分間)。
【0141】
表5は、コンジュゲートのそれぞれのリンカーの長さおよび活性、ならびに抗体がコンジュゲートのG6PDHを阻害する能力を示す。リンカーの長さは、処方1のSDMA誘導体における非ネイティブ窒素を含まない。SIAの存在下でG6PDHの予備活性化によって、SBAPまたはSMCCによって調製したコンジュゲートより良好な酵素活性が得られた。
【0142】
【表5-1】
【実施例7】
【0143】
抗SDMAモノクローナル抗体の調製
【0144】
モノクローナル抗体を産生する方法は当業者の範囲内である。1つの実施形態において、抗体は、以下の構造を有するSDMA-KLHコンジュゲートに対するモノクローナル抗体である:
【0145】
【化8】
【0146】
抗SDMA抗体の精製は以下のように行った:
【0147】
材料
・ 抗SDMA 2×2L
・ 抗SDMA IgG精製専用の逆相(rPA)カラム(5ml)(GE Healthcare)
・ Pierce IgG精製緩衝液
・ IgG結合緩衝液
・ IgG低pH溶出緩衝液
・ 透析用PBS、pH7.4
・ 4℃で2×4L
【0148】
プロトコル
・ rPAカラム(5ml)を結合緩衝液中、3ml/分で平衡にした
1.フローをPD280nmでモニターした
・ 抗SDMA 1000mlをPierce IgG結合緩衝液の等量で希釈した
1.プロセスをさらに1000mlで繰り返した
・ 希釈した抗SDMAを6ml/分でrPAカラムに充填した
1.ODを280nmでモニターした
・ rPAカラムをPBS/IgG結合緩衝液の1:1によって3ml/分で
1.OD280nmがベースラインに達するまで
洗浄した
・ 抗SDMA IgGを、IgG低pH溶出緩衝液を3分/mlで使用して溶出した
1.ピークを手動で収集した
・ 抗SDMA IgGをPBS 4Lの2回交換に対して直ちに透析した
1.10k MWCOカセット30ml
2.容量をプールしてOD280nmを使用してIgG濃度を決定した
【0149】
抗体を、米国特許第8,481,690号に記述されるように、SDS Page、SEC、およびプレートベースのイムノアッセイによって分析した。
【実施例8】
【0150】
アッセイ技法
【0151】
本開示の改変アッセイを、イヌ、ネコ、およびヒト試料においてSDMAに関して行った。
【0152】
試薬の成分を表5―2に示す。
【0153】
【表5-2】
【0154】
上記のように調製した試薬のピペッティング容積は、カラーアッセイとブランクアッセイに関して同一であった。
【0155】
容積(μl)
試料または較正物質 10
R1 40
R2 125
【0156】
試料および較正物質のカラーおよびブランクアッセイ、ならびに関連する計算は、Beckman AU680(登録商標)自動分析装置で行った。較正物質マトリックス中に56.0、28.0、14.0、7.0、および3.75および0μg/dLのSDMAを含有する較正標準物質をネコおよびイヌの両方について使用した。分析装置は、以下のようにカラーおよびブランクアッセイを行うようにプログラムした:試料および較正物質を試薬R1に添加して、3~4分インキュベートした後にR2を添加した。R2の添加の約36秒後を開始点として340nmでODを測定した。吸光度を18秒毎にさらに18秒間のサイクル4回で測定した。較正物質マトリックス(0μg/dL SDMA)の吸光度を、カラーおよびブランクアッセイの反応速度(吸光度の変化/分)を計算するために使用した測定のそれぞれから引いて、標準化されたカラーおよびブランク反応速度を提供した。
【0157】
標準曲線の速度を決定するために、ブランクアッセイのそれぞれの較正物質の標準化速度を、カラーアッセイにおけるそれぞれの較正物質の標準化速度から引いた。ブランクアッセイにおける試料の標準化速度をカラーアッセイにおける試料の標準化速度から引いて最終の試料反応速度を提供し、これを最終の標準曲線と比較することによって、試料のSDMA濃度を決定した。
【0158】
表6は、カラーアッセイ単独(「引き算なし」)およびブランクアッセイをカラーアッセイの速度から引いた場合(「引き算あり」)を使用する、ネコおよびイヌ血清に関するSDMAアッセイの結果を示す。試料のバイアスは、LC/MS結果と上記の技法を使用した結果との差を反映する。
【0159】
【表6】
【0160】
表7は、イヌの除去血清における既知量のSDMAを使用して引き算ありおよび引き算なしで作成した検量線を示す。類似の曲線を他の種についても作成した。
【0161】
【表7】
【0162】
表8は、上記の速度アッセイ技法(すなわち、引き算ありのカラーおよびブランクアッセイ)を使用した、SDMAを添加した非除去ヒト血清を使用する図6に示す検量線の値を示す。
【0163】
【表8】
【0164】
曲線を使用して、図1に示すように正常および慢性腎疾患ヒト血清試料における濃度を決定した。
【実施例9】
【0165】
酵素阻害剤の使用
【0166】
乳酸デヒドロゲナーゼ阻害剤であるオキサミド酸ナトリウムを、実施例3において記述したブランク試薬希釈液および試薬に添加した。阻害剤の使用は、表9に示されるようにアッセイの精度を改善することができる。
【0167】
【表9】
【0168】
本実施例において、イヌ血清の標準曲線を、表10に示すようにオキサミド酸ナトリウムの存在下および非存在下で作成した。類似の曲線を他の種についても作成することができる。
【0169】
【表10】
【実施例10】
【0170】
除去および非除去ヒト血清較正物質によるヒト血清試料の試験
【0171】
較正物質マトリックスとして内因性および炭素除去ヒト血清を使用したヒト血清試料におけるSDMAの回収を決定した。本実験で収集したデータを使用して、速度および固定較正法によって検量線を作成することができる。
【0172】
アッセイ試薬は表11に示すように調製した。
【0173】
【表11】
【0174】
抗SDMA mAbは実施例7と同様に調製して、アッセイ濃度1.5μg/mLで使用した。
【0175】
SDMA-G6PDHは、実施例6と同様に調製して、アッセイ濃度0.3μg/mLで使用した。
【0176】
較正物質を、以下のSDMA濃度(μg/dL)で炭素除去ヒト血清によって調製した:LC/MSによって決定した0.0、4.7、15.0、29.0、59.0、および111.0。
【0177】
速度法は、実施例8に従って行った。
【0178】
固定法において、反応開始後1分から3分の間の340nmでの吸光度の変化を測定するように、Beckman機器を設定した。
【0179】
SDMA濃度を決定するための固定および速度計算法の結果を図7に示す。
【実施例11】
【0180】
緩衝剤較正物質による非除去ヒト較正物質の用量
【0181】
SDMAアッセイを、緩衝剤ベースの較正物質(1%BSAを含むPBS緩衝液中で0、6、11、24、46、および95μg/dL SDMA)を使用して較正し、これを使用して非除去ヒト血清標準物質を試験して回収を決定した。この実験は固定法を使用して、各サイクルが18秒(T1=216秒、T2=288秒)である機器のサイクル12および16で、340nmでの吸光度の変化を計算した。試薬ブランク(脱イオン水)の吸光度は、真の吸光度から引かなかった。
【0182】
アッセイは実施例9に示すように行った。結果を図8に示す。
【実施例12】
【0183】
手動および自動でのバックグラウンドの引き算の比較
【0184】
Beckman AU680(登録商標)分析装置に搭載された自動のバックグラウンド引き算法を試験して、搭載された解決策の有効性を決定した。SDMAアッセイを、搭載された指示どおりに行い、アッセイを個別に行い、結果を、対照としてオフライン法を使用して計算した。
【0185】
炭素除去イヌ血清較正物質を実施例1と同様に調製した。試薬成分を表12に示す。
【0186】
【表12】
【0187】
試薬の体積は以下の通りであった:
試料容積:17μL
試薬1容積:25μL
試薬2容積:125μL
【0188】
カラーおよびブランクアッセイは、分析装置に装置内で接続していない。データは、それぞれのアッセイに関して個別に生成され、機器から離れて処理された。較正物質および試料に関して、ブランクアッセイの反応ODをカラーアッセイの反応ODから引く。曲線を較正物質データにフィットさせて、最適線の式を使用して、引き算した反応ODから試料濃度を決定する。
【0189】
表13は、固定反応法における較正物質の吸光度の真の変化を示す。
【0190】
【表13】
【0191】
表14は、表13に示す較正物質から作成された標準曲線を使用する、試料中のSDMAの測定を示す。
【0192】
【表14】
【実施例13】
【0193】
異なる種からの較正物質マトリックスの分析
【0194】
多様な動物種のプールした血清から作製した較正物質セットを分析して、異なる種の血清と共に較正物質を使用した場合のSDMAアッセイのロバストネスを決定した。
【0195】
ヒトSDMAのアッセイを、実施例10と同様に固定法を使用して、イヌ、ネコ、およびウマの除去または内因性(非除去)血清について作成した較正物質について行った。アッセイの結果を図8、9、および10に示す。
【実施例14】
【0196】
緩衝剤に基づく較正
【0197】
表13の較正物質濃度に関して較正マトリックスとしてPBS中の1%BSAを使用して検量線を作成した。結果を図12に示す。
【実施例15】
【0198】
ブランク試薬にコンジュゲートを添加しないSDMAアッセイ
【0199】
SDMAアッセイを、コンジュゲートをR2に添加しなかったことを除き、表5-2の試薬濃度によって実施例8の速度技法を使用して行った。アッセイはBeckman分析装置で行った。結果を表15に示す。
【0200】
【表15】
【0201】
本開示の様々な特定の実施形態を本明細書において記述してきたが、本開示はそれらの正確な実施形態に限定されない、および当業者は、本開示の範囲および精神から逸脱することなく様々な変化または改変をその中に行うことができると理解すべきである。
【0202】
上記の実施例は単なる実例であり、本開示の全ての可能な実施形態、応用、または改変の網羅的な一覧を意味するものではない。このため、記述の方法および本開示のシステムの様々な改変および変更が、本開示の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本開示は特定の実施形態に関連して記述しているが、特許請求される本開示は、そのような特異的実施形態に不当に限定されてはならないと理解すべきである。実際に、本開示を行うための記載された様式の様々な改変が分子生物学、免疫学、化学、生化学、または関連する分野の当業者に明白であり、それらは添付の特許請求の範囲の範囲内であると意図される。
【0203】
本明細書において引用したいかなる数値も、任意のより低い値と任意のより高い値の間の少なくとも2つの単位が離れていることを条件として1つの単位の増加の下限から上限までの全ての値を含む。一例として、成分濃度、または例えばサイズ、角度、サイズ、圧、時間等などのプロセスの変数の値が、1~90、具体的には20~80、より具体的には30~70であると述べられている場合、15~85、22~68、43~51、30~32等などの値は、本明細書において明白に列挙されると意図される。1未満である値に関して、1単位は、適当であれば、0.0001、0.001、0.01、または0.1であると考えられる。これらは、具体的に意図される唯一の例であり、列挙された最低値と最高値の間の数値の全ての起こり得る組み合わせも、同様に本件において明白に述べられていると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12