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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】洋上風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20240325BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240325BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20240325BHJP
   B63B 21/50 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
F03D13/25
B63B35/00 T
B63B35/44 K
B63B21/50 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021127249
(22)【出願日】2021-08-03
(65)【公開番号】P2023022394
(43)【公開日】2023-02-15
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】304020203
【氏名又は名称】田中 誠一
(73)【特許権者】
【識別番号】715003006
【氏名又は名称】田中 和雄
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠一
(72)【発明者】
【氏名】田中 和雄
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-004989(JP,A)
【文献】特開2004-036517(JP,A)
【文献】特表2011-519761(JP,A)
【文献】特開2014-218186(JP,A)
【文献】特開2002-188557(JP,A)
【文献】特開2012-045981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00-80/80
B65B 1/00-85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電機を搭載して洋上に浮く浮体と、浮き部および錘部を有していて海中に起立姿勢で浮く円筒部材からなる竪柱体と、上端が前記竪柱体に繋がれるとともに下端が海底に係留される係留索と、を備えて成り、
前記浮体に上下貫通孔が形成され、前記上下貫通孔に前記竪柱体が上下移動自在に挿通されており、
前記風力発電機は、柱部と、柱部の上端に支持されていて発電モータおよび増速器を内蔵したナセルと、ナセルの前面に配置されていて前記増速器の回転軸に取り付けられたハブと、前記ハブの外周部に取り付けられたプロペラから構成されており、
前記浮体は、その上端に設けられて竪柱体の自由端からなる上端を上下動可能に収容する架台部を有し、風力発電機の柱部が、前記架台部の上に立設されていることを特徴とする洋上風力発電装置。
【請求項2】
前記係留索が、前記竪柱体の下端部に繋がれる第1係留索と、前記竪柱体の上下途中位置
に繋がれる第2係留索と、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の洋上風
力発電装置。
【請求項3】
海底に錨止される錨体が前記係留索の下端に取り付けられていることを特徴とする請求項
1または請求項2に記載の洋上風力発電装置。
【請求項4】
前記竪柱体の上下寸法が、100m以上200m以下であることを特徴とする請求項1か
ら請求項3までのいずれか一項に記載の洋上風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上の風力により発電する風力発電装置に係り、特に陸地から遠く離れた洋上に配備される洋上風力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の風力発電装置としては、例えば下記の特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1記載の風力発電装置の概略構成を図7(a)に示す。図示の風力発電装置51aは海底設立型のものであり、海底Bに立設されたコンクリート基礎52上に架台53が架け渡され、架台53上に風力発電機2が設置されている。この風力発電機2は、架台53上に設置される基台部58およびこの基台部58上に立設された柱部7から成るタワー59と、タワー59の上端に支持されていて発電モータおよび増速器を内蔵したナセル10と、ナセル10の前面に配置されていて前記増速器の回転軸に取り付けられたハブ11と、ハブ11の外周に設けられた複数のプロペラ12と、から構成されている。このような風力発電装置51aは、コンクリート基礎52や架台53が届く水深10m程度までの浅瀬で、陸地から近い場所に設置されることが多い。
【0003】
一方で、例えば下記の特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献2記載の風力発電装置の概略構成を図7(b)に示す。図示の風力発電装置51bは台船設置型のものであり、図7(a)で示したと同じ構成の風力発電機2と、その発電機2を搭載して海面SLに浮く平面視方形状の台船54と、上端が台船54に繋がれるとともに下端が海底Bに係留される係留索55と、から構成されている。このような風力発電装置51bは、現実的に係留索55が届く水深50m程度までの海底Bに台船54が係留索55で係留されていて、発電能力は5MW程度である。
他方で、下部が係留索で海底に係留された縦長の棒状浮体を用い、海面から突出した棒状浮体の上面に風力発電機を固定して成る風力発電装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-36517号公報
【文献】国際公開WO2013/84546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで現在、漁業権などに絡む問題点が残っているために、海上風力発電の活用は皆無に等しい。また、海上風力発電は技術的開発が確立されていない。その一方で、国は2019年に洋上風力新法で「促進区域」を定めた改正港湾法を成立させている。これにより、陸地から遠く離れた洋上風力発電基地の建設を多く望めることになったが、具体的な実施計画は進んでいないのが実情である。
【0006】
そこで、上記した特許文献1に記載の風力発電装置51aに目を向けると、この風力発電装置51aは、浅瀬でなければ設置できないので設置場所が陸地から近いことになる。このように近い場所は良好な近海漁場であることが多いので、風力発電装置51aは近海漁業の邪魔をしたり、風力発電機2から発生した騒音が人や魚に悪影響を及ぼしたりするおそれがある。
また、特許文献2に記載の風力発電装置51bは、風力発電機2を安定に支持するために喫水線の平面積が比較的広い台船54を用いている。しかしながら、台船54は平面視方形状であるから、波の当りを受けやすく風によっても大きく揺れやすい。そのために、容量の大きな風力発電機2を配備できないのである。また、水深50m程度の場所も比較的良好な漁場であることから、前記と同様に漁業の邪魔や魚への悪影響を及ぼすことが考えられる。
そして、海面から突出した棒状浮体の上面に風力発電機を固定した風力発電装置では、棒状浮体が海底に係留されているので、風や波により棒状浮体が傾いてその上部が水没したり、大潮時などの際に棒状浮体の上部が海面下に沈んだりするおそれがあり、それらの場合は発電機の駆動を停止せざるを得ない。また、水深が150m~200mほどの洋上に配備しようとする場合は、係留索が長くなりすぎて強度および部品コストの点で実用的でなくなる。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、風、波、潮位などの影響によって発電機に運転支障を生じさせることがなく、漁業の邪魔や魚などへの悪影響を引き起こすこともない洋上風力発電装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る洋上風力発電機は、風力発電機を搭載して洋上に浮く浮体と、浮き部および錘部を有していて海中に起立姿勢で浮く円筒部材からなる竪柱体と、上端が前記竪柱体に繋がれるとともに下端が海底に係留される係留索と、を備えて成り、前記浮体に上下貫通孔が形成され、前記上下貫通孔に前記竪柱体が上下移動自在に挿通されており、前記風力発電機は、柱部と、柱部の上端に支持されていて発電モータおよび増速器を内蔵したナセルと、ナセルの前面に配置されていて前記増速器の回転軸に取り付けられたハブと、前記ハブの外周部に取り付けられたプロペラから構成されており、前記浮体は、その上端に設けられて竪柱体の自由端からなる上端を上下動可能に収容する架台部を有し、風力発電機の柱部が、前記架台部の上に立設されていることを特徴とすることを特徴とする構成にしてある。
【0009】
また、前記構成において、係留索が、竪柱体の下端部に繋がれる第1係留索と、竪柱体の上下途中位置に繋がれる第2係留索と、から構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
そして、前記した各構成において、海底に錨止される錨体が係留索の下端に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
更に、前記した各構成において、竪柱体の上下寸法が100m以上200m以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る洋上風力発電装置によれば、風力発電機を搭載して洋上に浮く浮体に上下貫通孔が形成され、海中に起立姿勢で浮く竪柱体が浮体の上下貫通孔に上下移動自在に挿通されているので、風、波、潮の流れなどにより竪柱体が傾いたとき、浮体は竪柱体の上端に向かって移動し海面に浮いた状態を保持されるから水没しない。そのうちに風や潮の流れが止まると、竪柱体が垂直姿勢に戻り、浮体は浮いたまま竪柱体の上部から下降して元の位置に戻る。潮の干満時にも、浮体は竪柱体に対し上下移動し常に発電可能な体勢で浮いている。従って、風、波、潮位などの影響があっても風力発電機に運転支障を生じさせることがなく、安定して風力発電を行なうことができる。また、漁業の邪魔や魚などへの悪影響を引き起こすこともない。この場合、竪柱体として上下寸法の長いものを採用すれば、設置場所が浅瀬に限定されることがなく、陸地から遠く離れた深い場所でも設置が可能である。
【0013】
また、係留索が、竪柱体の下端部に繋がれる第1係留索と、竪柱体の上下途中位置に繋がれる第2係留索とから構成されているものでは、第1係留索および第2係留索が竪柱体をその上下位置で係留するから、風、波、潮位などの力を受けたときも竪柱体の傾きを小さく抑えることができる。
【0014】
そして、海底に錨止される錨体が係留索の下端に取り付けられているものでは、水深が例えば100mといった深い場所であっても、投錨操作だけで係留索の下端を海底に固定して竪柱体を係留することができる。
【0015】
更に、竪柱体の上下寸法が100m以上200m以下であるものでは、水深が200m程度までとされる大陸棚に、本発明の洋上風力発電装置を配置することができる。この大陸棚は陸地からの距離が世界平均で約80kmあるとされるので、日本国の周りを囲む広大な大陸棚を利用して、自然エネルギーたる多大な風力を電力に有効活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る洋上風力発電装置を示す正面図である。
図2】前記洋上風力発電装置の浮体を構成する円筒体を示す斜視図である。
図3】前記洋上風力発電装置の浮体を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるA-A線矢視断面図である。
図4】前記洋上風力発電装置の浮体を示した図3(a)におけるB-B線矢視断面および竪柱体の上部の縦断面を示した図である。
図5】前記洋上風力発電装置における要部の動作を示す動作説明図である。
図6】前記洋上風力発電装置の動作を示した側面図である。
図7】本発明の背景となる従来の風力発電装置を示した図であって、(a)は従来装置の一例である側面図、(b)は従来装置の別例である側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。ここに、図1は本発明の一実施形態に係る洋上風力発電装置を示す正面図である。但し、各図において、図7に示した従来の風力発電装置51a,51bを構成する同一の構成要素には同一の符号を付すとともに、その詳細説明を省略することがある。
図1において、この実施形態に係る洋上風力発電装置1は、風力発電機2を搭載して洋上の海面SLに浮く浮体3と、海水SW中に起立姿勢で浮く竪柱体4と、上端が竪柱体4に繋がれるとともに下端が海底Bに係留される係留索5,5,・・・と、係留索5の下端に取り付けられた錨止用の錨体6,6,・・・と、から構成されている。
【0018】
前記した風力発電機2は、基台である架台部8およびこの架台部8に立設された柱部7から成る高さ90mほどのタワー9と、タワー9の上端に支持されていて発電モータおよび増速器(いずれも図示省略)を内蔵したナセル10と、ナセル10の前面に配置されていて前記増速器の回転軸に取り付けられたハブ11と、ハブ11の外周部に取り付けられたプロペラ12,12,12と、から構成されている。この風力発電機2の総重量は約850トンである。
【0019】
前記した浮体3では、図2図3および図4に示すように、例えば厚さ19mmの鋼板を円筒状に丸めて溶接付けにより形成された外側筒部16の内周面の周方向に離間した複数個所に、縦向きのH型鋼18,18,・・・が溶接付けされる。そして、外側筒部16の内径よりも小径で円筒状の補強用筒部17が前記のH型鋼18,18,・・・の内側面に溶接付けされる。これにより、剛性の高い外郭円筒体ができ上がる。続いて、前記鋼板を円筒状に丸めて溶接付けにより形成された内側筒部20の外周面の周方向に離間した複数個所に、縦向きのH型鋼21,・・・が溶接付けされる。そして、内側筒部20の外径よりも大径で円筒状の補強用筒部19が前記のH型鋼21,・・・の外側面に溶接付けされることにより、貫通孔用円筒体ができ上がる。この貫通孔用円筒体が前記の外郭円筒体内に同軸心で仮置きされることにより、円筒体13が構成される。
【0020】
そうして、円筒体13の上面開口にリング状上蓋14が蓋止されて密閉状に溶接付けされ、円筒体13の下面開口にリング状下蓋15が蓋止されて密閉状に溶接付けされる。これによって、平面中央部に上下貫通孔3Aを有する浮体3が完成する。この浮体3は直径が15m高さが10mの中空円筒体であり、上下貫通孔3Aの直径は6mである。すなわち、補強用筒部17、補強用筒部19、リング状上蓋14およびリング状下蓋15で密閉状に囲まれた空間が、風力発電機2を搭載した浮体3を海水SW中に浮かせ得る浮力を呈する浮き用空間22となる。この浮き用空間22の内容積は約1500立方米である。すなわち、浮体3は1500トンの物体を浮かせるだけの浮力を呈する。尚、浮体3の内側筒部20内である上下貫通孔3Aには、竪柱体4の上部が上下移動自在に挿通される。
【0021】
前記した竪柱体4は、溶接などで上下複数に連結された鋼管製の円筒ユニット4A,4A,4A,・・・と、最上位の円筒ユニット4Aの上面開口を溶接などで密閉する上端面部4Bと、最下位の円筒ユニット4Aの下面開口を溶接などで密閉する下端面部4Cと、最下位2つの円筒ユニット4A,4Aに内蔵されたコンクリートブロックや土砂などから成る錘部24と、から構成されている。錘部24よりも上方位置の円筒ユニット4A,4A,・・・内は、竪柱体4全体の浮力を得るとともに竪柱体4の上部を上向きに立てるための空間すなわち浮き部23となっている。また、上下に隣合う円筒ユニット4A,4A同士は、図1中で連結位置4D,4D,・・・として示すように、各円筒ユニット4Aの両端開口縁に設けられたフランジに対してパッキン装入およびボルト止めなどにより密封状に連結されている。そして、各円筒ユニット4Aの上下寸法は例えば25mであるから、竪柱体4全体の上下寸法Hは例えば150mとなる。錘部24の配置および重量と浮き部23の配置および容量は、竪柱体4を海水SW中に起立姿勢で浮かせ、且つ、竪柱体4の上部が海面SLから突出する構成となるようにそれぞれが設定されている。この竪柱体4は下端部4Cから上の約1/3の位置に重心が設定されている。
【0022】
前記した係留索5は、竪柱体4の下端面部4Cに繋がれる第1係留索5A,5A,5Aと、竪柱体4の上下略中央位置に繋がれる第2係留索5B,5Bと、から構成されている。これらの第1係留索5Aおよび第2係留索5Bは例えば錬鉄製鎖で構成されている。但し、錬鉄製鎖の替わりに、ワイヤーロープなどを用いても構わない。ホーサーロープを用いる場合は、エンジニアリングプラスチック製繊維を多く含んで耐久性が高いものを選定するとよい。尚、竪柱体4は起立して海水SW中に浮いている状態で係留索5A,5Bに係留されている。
そして、第1係留索5Aおよび第2係留索5Bの下端には、それぞれ海底Bに錨止される錨体6,6,・・・が取り付けられている。これらの錨体6,6,・・・により、水深が100m以上といった深い場所であっても、投錨という簡単な操作だけで係留索5A,5Bの下端を海底Bに固定して竪柱体4を係留することができる。このような簡単な操作でよいので、装置設置工事の手間と費用は特許文献1,2の従来技術と比べてかなり少なくて済む。因みに、水深が100m以上になると、海底Bへの係止用杭の杭打ち工事は現実的に難しくなる。
【0023】
続いて、上記のように構成された洋上風力発電装置1の作用を説明する。まず、図5に示すように、或る潮位のときの海水SW中に竪柱体4が起立状態で浮いており、竪柱体4の上端部4Bは海面SLから上に出ている。竪柱体4の上部は浮体3の上下貫通孔3Aに挿通されており、浮体3は竪柱体4に対し上下移動自由に海面SLに浮いている。そうして、日本国における干満による潮位の上下幅は6m~8mとされるが、潮位が高くなると、実線で示す海面SLが、例えば2点鎖線で示す海面SLuの位置まで上がる(矢印U1方向)。すると、浮体3も上下貫通孔3A内の竪柱体4に案内されながら、潮位の上昇に随伴して2点鎖線で示す浮体3の位置まで上昇するのである(矢印U2方向)。因みに、3番目の従来技術で示したような浮体3と竪柱体4とが一体構成になっているものであれば、海面がSLuの位置まで上昇したときに、浮体3および風力発電機2の架台部8が水没して風力発電機2の運転動作に支障を来たすことになる。しかしながら、本実施形態の洋上風力発電装置1はそのような不具合をもたらさない。その後、引き潮により海面がSLuから下がると、浮体3も海面に浮いたまま竪柱体4に案内されながら下がっていくのである。
【0024】
そして、この洋上風力発電装置1は、図6に示すように、風、波、潮の流れなどの力(矢印D方向)を受けて、竪柱体4が矢印Eのように押されて傾いたときも、浮体3は浮いたまま竪柱体4の上端部4Bに向かって移動し、海面SLに浮いた状態を保たれて水没しない。そのうちに風や潮の流れが止まると、竪柱体4が垂直姿勢(図6中の実線)に戻り、浮体3は浮いたまま竪柱体4の上部から下降して元の位置に戻るのである。
【0025】
上記したように、この実施形態の洋上風力発電装置1によれば、風、波、潮位などの影響があっても、浮体3の上下浮動により風力発電機2を水没させることことがなく、安定して風力発電を行なうことができる。この場合、竪柱体4は上下寸法Hが長いので、浅瀬のみならず陸地から遠く離れた深い場所にも設置可能である。すなわち、陸地から遠くはなれているので、漁業の邪魔や魚などへの悪影響を引き起こすこともない。また、この洋上風力発電装置1では、浮体3および竪柱体4がいずれも平面視円形状に形成されているので、風や潮の当りを滑らかに受け流して竪柱体4の傾きを小さくする。すなわち、特許文献2のような平面視方形状の台船を用いる場合と比べると極めて有利である。
【0026】
特に、この洋上風力発電装置1は、竪柱体4の上下寸法Hが150mであるので、水深が200mほどの大陸棚であっても洋上風力発電装置1を配置することができる。日本国の周囲には広大な大陸棚があるので、大陸棚に多数の洋上風力発電装置1を配備すれば、膨大で強い風力を電力として有効に活用することができる。一般に、陸地から離れるほど風力は大きくなる。その結果、この洋上風力発電装置1は、発電能力が4MW~12MWの風力発電機2を搭載し得る。また、竪柱体4の下端部4Cが第1係留索5Aに繋がれ、竪柱体4の上下途中位置が第2係留索5Bに繋がれているので、竪柱体4は起立して浮いた状態のままその高さ位置で係留されることとなり、風、波、潮位などの力を受けたときも竪柱体4の傾きは小さく抑えられる。
【0027】
尚、上記の実施形態では、風力発電機として、水平軸心回りに回転するプロペラで発電を行なう水平軸型風力発電機を用いた例を示したが、本発明はそれに限定されるものでない。その水平軸型風力発電機に替えて、例えば垂直軸心回りに回転するブレードで発電を行なう垂直軸型風力発電機を用いることも可能である。この垂直軸型風力発電機としては、揚力式風力発電機、抵抗式風力発電機、あるいは揚力式構造と抵抗式構造を併せ持つハイブリッド式風力発電機を用いることができる。
【0028】
そして、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 洋上風力発電装置
2 風力発電機
3 浮体
3A 上下貫通孔
4 竪柱体
4B 上端面部
4C 下端面部
5 係留索
5A 第1係留索
5B 第2係留索
6 錨体
22 浮き用空間
23 浮き部
24 錘部
B 海底
H 上下寸法
SL 海面
SW 海水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7