(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】親和性成熟CD22特異的モノクローナル抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240325BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20240325BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240325BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240325BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240325BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240325BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240325BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240325BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240325BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240325BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240325BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240325BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240325BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240325BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240325BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20240325BHJP
C07K 14/21 20060101ALN20240325BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20240325BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240325BHJP
【FI】
C12N15/13
A61K31/365
A61K35/17
A61K35/74 G
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K19/00
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
G01N33/53 N
G01N33/531 A
C07K14/21
C07K14/725
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021500651
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 US2019041401
(87)【国際公開番号】W WO2020014482
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-18
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【氏名又は名称原語表記】The United States of America,as represented by the Secretary,Department of Health and Human Services
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ディミトロフ, ディミター エス.
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, ジョンユー
(72)【発明者】
【氏名】ラマクリシュナ, スネハ
(72)【発明者】
【氏名】フライ, テリー ジェイ.
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0362472(US,A1)
【文献】XIAO et al.,mAbs,2009年,Vol. 1, No. 3,p.297-303,DOI: 10.4161/mabs.1.3.8113
【文献】HO et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences,2006年,Vol. 103, No. 25,p.9637-9642,DOI: 10.1073/pnas.0603653103
【文献】BIBERACHER et al.,Haematologica,2012年,Vol. 97, No. 5,p.771-779,DOI: 10.3324/haematol.2011.049155
【文献】KAWA et al.,mAbs,2011年,Vol. 3, No. 5,p.479-486,DOI: 10.4161/mabs.3.5.17228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変(VH)ドメインおよび軽鎖可変(VL)ドメインを含む、CD22に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片のCD22に対する結合親和性が、50pM未満であり、
前記VHドメインが、配列番号4の
相補性決定領域(CDR)1、CDR2およびCDR3配列を含み、
前記VLドメインが、配列番号5の
CDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、
前記VHドメインのアミノ酸配列が、配列番号4と少なくとも90%同一であり、
前記VLドメインのアミノ酸配列が、配列番号5と少なくとも90%同一である、
モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記CDR配列が、IMGT、Kabat、ParatomeまたはChothia番号付けスキームを使用して決定される、請求項1に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片。
【請求項3】
前記VHドメインCDR1、CDR2およびCDR3配列が、それぞれ配列番号4の残基26~35、53~61および100~113を含み、前記VLドメインCDR1、CDR2およびCDR3配列が、それぞれ配列番号5の残基27~32、50~52および89~97を含む、請求項1または請求項2に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記VHドメインのアミノ酸配列が、配列番号4を含み、
前記VLドメインのアミノ酸配列が、配列番号5を含む、
請求項1
から3までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片。
【請求項5】
Fab断片、Fab’断片、F(ab)’
2断片、単鎖可変断片(scFv)またはジスルフィド安定化可変断片(dsFv)である、請求項1から
4までのいずれか一項に記載の抗原結合性断片。
【請求項6】
IgGである、請求項1から
4までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
完全ヒト抗体または抗原結合性断片である、請求項1から
6までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片。
【請求項8】
キメラまたは合成抗体または抗原結合性断片である、請求項1から
6までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片。
【請求項9】
請求項1から
8までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片を含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項10】
ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激シグナル伝達部分、シグナル伝達ドメイン、またはこれらの任意の組合せをさらに含む、請求項
9に記載のCAR。
【請求項11】
請求項
9または請求項
10のいずれか一項に記載のCARを発現する単離された細胞。
【請求項12】
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である、請求項1
1に記載の単離された細胞。
【請求項13】
請求項1から
8までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片とエフェクター分子とを含む、免疫コンジュゲート。
【請求項14】
前記エフェクター分子が、毒素である、請求項1
3に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項15】
前記毒素が、Pseudomonas外毒素またはそのバリアントである、請求項1
4に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項16】
前記エフェクター分子が、検出可能な標識である、請求項1
3に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項17】
前記検出可能な標識が、フルオロフォア、酵素または放射性同位元素を含む、請求項1
6に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項18】
請求項1から
8までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片とコンジュゲートした薬物を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)。
【請求項19】
前記薬物が、小分子である、請求項1
8に記載のADC。
【請求項20】
前記薬物が、抗微小管剤、抗有糸分裂剤および/または細胞傷害性薬剤である、請求項1
8または請求項1
9に記載のADC。
【請求項21】
請求項1から
8までのいずれかに記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片および少なくとも1つの追加のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を含む多重特異性抗体。
【請求項22】
二重特異性抗体である、請求項2
1に記載の多重特異性抗体。
【請求項23】
三重特異性抗体である、請求項2
1に記載の多重特異性抗体。
【請求項24】
前記少なくとも1つの追加のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、T細胞受容体またはナチュラルキラー(NK)細胞活性化受容体の成分に特異的に結合する、請求項2
1から2
3までのいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項25】
請求項1から
8までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片とコンジュゲートしたナノ粒子を含む、抗体-ナノ粒子コンジュゲート。
【請求項26】
前記ナノ粒子が、ポリマーナノ粒子、ナノスフェア、ナノカプセル、リポソーム、デンドリマー、ポリマーミセル、またはニオソームを含む、請求項2
5に記載の抗体-ナノ粒子コンジュゲート。
【請求項27】
前記ナノ粒子が、細胞傷害性薬剤を含む、請求項2
5または請求項2
6に記載の抗体-ナノ粒子コンジュゲート。
【請求項28】
請求項1から
8までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片と異種タンパク質またはペプチドとを含む融合タンパク質。
【請求項29】
前記異種タンパク質が、Fcタンパク質である、請求項2
8に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
薬学的に許容される担体および請求項1から
8までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片、請求項
9もしくは請求項
10に記載のCAR、請求項1
1もしくは請求項1
2に記載の単離された細胞、請求項1
3から1
7までのいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート、請求項1
8から
20までのいずれか一項に記載のADC、請求項2
1から2
4までのいずれか一項に記載の多重特異性抗体、請求項2
5から2
7までのいずれか一項に記載の抗体-ナノ粒子コンジュゲート、または請求項2
8もしくは請求項2
9に記載の融合タンパク質を含む組成物。
【請求項31】
請求項1から
8までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片、請求項
9もしくは請求項
10に記載のCAR、請求項1
3から1
7までのいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート、請求項2
1から2
4までのいずれか一項に記載の多重特異性抗体、または請求項2
8もしくは請求項2
9に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項32】
プロモーターに作動可能に連結した、請求項3
1に記載の核酸分子。
【請求項33】
請求項3
1または請求項3
2に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項34】
試料におけるCD22の発現を検出する方法であって、
前記試料を請求項1から
8までのいずれかに記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片と接触させるステップと、
前記抗体の前記試料への結合を検出し、それにより、前記試料におけるCD22の発現を検出するステップと
を含む方法。
【請求項35】
前記モノクローナル抗体または抗原結合性断片が、直接標識されている、請求項3
4に記載の方法。
【請求項36】
前記モノクローナル抗体または抗原結合性断片を第2の抗体と接触させるステップと、
前記第2の抗体の前記モノクローナル抗体または抗原結合性断片への結合を検出し、それにより、前記試料におけるCD22の発現を検出するステップと
をさらに含む、請求項3
4に記載の方法。
【請求項37】
対象におけるCD22陽性がんを処置するための、請求項1から
8までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片、請求項
9もしくは請求項
10に記載のCAR、請求項1
1もしくは請求項1
2に記載の単離された細胞、請求項1
3から1
7までのいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート、請求項1
8から
20までのいずれか一項に記載のADC、請求項2
1から2
4までのいずれか一項に記載の多重特異性抗体、請求項2
5から2
7までのいずれか一項に記載の抗体-ナノ粒子コンジュゲート、または請求項2
8もしくは請求項2
9に記載の融合タンパク質を含む組成物、あるいは請求項
30に記載の組成物。
【請求項38】
前記CD22陽性がんが、B細胞悪性腫瘍である、請求項3
7に記載の組成物。
【請求項39】
前記B細胞悪性腫瘍が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病またはB細胞性前リンパ球性白血病である、請求項3
8に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物が、前記対象にブリオスタチン1と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項3
7から3
9までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
ブリオスタチン1が、前記組成物を投与する前またはそれと同時に投与されることを特徴とする、請求項
40に記載の組成物。
【請求項42】
請求項1から
8までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片、請求項
9もしくは請求項
10に記載のCAR、請求項1
1もしくは請求項1
2に記載の単離された細胞、請求項1
3から1
7までのいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート、請求項1
8から
20までのいずれか一項に記載のADC、請求項2
1から2
4までのいずれか一項に記載の多重特異性抗体、請求項2
5から2
7までのいずれか一項に記載の抗体-ナノ粒子コンジュゲート、請求項2
8もしくは請求項2
9に記載の融合タンパク質、または請求項
30に記載の組成物と、
CD22発現を上方調節する薬剤
と
を含むキット。
【請求項43】
抗がん剤をさらに含む、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
CD22発現を上方調節する前記薬剤が、ブリオスタチン1を含む、またはそれからなる、請求項4
2または請求項43に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年7月12日出願の米国仮出願第62/697,185号の利益を主張するものである。
【0002】
分野
本開示は、CD22に特異的なモノクローナル抗体の親和性成熟およびがん治療のためなどのその使用に関する。
【0003】
政府支援の承認
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)から付与されたプロジェクト番号ZIA BC 010701の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景
リスクに関して適合させた、多剤化学療法レジメンを用いて処置された小児B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)の全生存率は5年時点で85%を超えるが、その一方で再発した患者には良好な治療選択肢がない(Pui et al., J Clin Oncol. 2015; 33 (27): 2938-2948;Smith et al., Cancer. 2014; 120 (16): 2497-2506)。CD19を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、高いパーセンテージの患者で寛解を誘導することができ、一部の患者に対しては潜在的に治癒的なものである(Davila et al., Sci Transl Med. 2014; 6 (224): 224ra25;Maude et al., N Engl J Med. 2014; 371 (16): 1507-1517;Lee et al., Lancet. 2015; 385 (9967): 517-528)。しかし、より長期の追跡データから、寛解を得た患者の一部では、その後、不十分なCAR持続性か、または標的とされるCD19エピトープの消失で再発が生じることが示されている(Lee et al., Lancet. 2015; 385 (9967): 517-528;Grupp et al., N Engl J Med. 2013; 368 (16): 1509-1518;Maude et al., Blood. 2015; 125 (26): 4017-4023;Gardner et al., Blood. 2016; 127 (20): 2406-2410)。代替的な、臨床的に確認されたALL抗原である(Yilmaz et al., Ther Adv Hematol. 2015; 6 (5): 253-261)CD22を標的とするCARを用いた処置(Haso et al., Blood. 2013; 121 (7): 1165-1174)により、CD19 CAR抵抗性ALLが再発している患者における活性を含めた生物活性がある用量で70%の寛解誘導率がもたらされた(Fry et al., Nat Med. 2018; 24 (1): 20-28)。CD19 CARTと同様に、CD22 CART後に寛解を得た患者のかなりの割合に、不十分なCAR持続性、またはより頻繁には標的抗原発現の変更に起因して再発が生じる。抗原発現の完全な消失が認められるCD19 CARTまたはブリナツモマブによる処置後の再発とは対照的に、CD22 CART後の再発は、白血病の細胞表面上のCD22の減弱で生じる可能性がより高い(Fry et al., Nat Med. 2018; 24 (1): 20-28)。
CARの活性化に必要な抗原発現の閾値が前臨床モデルで同定されている(Walker et al., Mol Ther. 2017; 25 (9): 2189-2201;Chmielewski et al., Gene Ther. 2011; 18 (1): 62-72;Yoshida et al., Clin Transl Immunology. 2016; 5 (12): e116;Watanabe et al., J Immunol. 2015; 194 (3): 911-920)。標的抗原部位密度が低い場合には、共刺激分子での増強またはCAR T細胞親和性結合の変更にもかかわらず、CAR T細胞の機能性は低く、IFN-γまたはIL-2などのサイトカインの産生が少ない(Chmielewski et al., Gene Ther. 2011; 18 (1): 62-72)。この活性化に関する閾値は、T細胞受容体(TCR)による活性化に必要なものと比較して高い。しかし、この部位密度の制限から派生する機能的影響は十分には探究されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Pui et al., J Clin Oncol. 2015; 33 (27): 2938-2948
【文献】Smith et al., Cancer. 2014; 120 (16): 2497-2506
【文献】Davila et al., Sci Transl Med. 2014; 6 (224): 224ra25
【文献】Maude et al., N Engl J Med. 2014; 371 (16): 1507-1517
【文献】Lee et al., Lancet. 2015; 385 (9967): 517-528
【文献】Grupp et al., N Engl J Med. 2013; 368 (16): 1509-1518
【文献】Maude et al., Blood. 2015; 125 (26): 4017-4023
【文献】Gardner et al., Blood. 2016; 127 (20): 2406-2410
【文献】Yilmaz et al., Ther Adv Hematol. 2015; 6 (5): 253-261
【文献】Haso et al., Blood. 2013; 121 (7): 1165-1174
【文献】Fry et al., Nat Med. 2018; 24 (1): 20-28
【文献】Walker et al., Mol Ther. 2017; 25 (9): 2189-2201
【文献】Chmielewski et al., Gene Ther. 2011; 18 (1): 62-72
【文献】Yoshida et al., Clin Transl Immunology. 2016; 5 (12): e116
【文献】Watanabe et al., J Immunol. 2015; 194 (3): 911-920
【文献】Chmielewski et al., Gene Ther. 2011; 18 (1): 62-72
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
親和性成熟させた、B細胞抗原CD22に特異的なモノクローナル抗体の開発が記載されている。m971-L7と称される親和性成熟抗体は、親抗体m971と比較して有意に改善されたCD22結合親和性を有する(約2nMから50pM未満まで)。
【0007】
CD22に結合する、例えば特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、モノクローナル抗体または抗原結合性断片は、m971-L7のVHドメインおよびVLドメイン相補性決定領域(CDR)配列を含む。開示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を含むコンジュゲートも本明細書で提供される。一部の例では、本明細書に開示されるモノクローナル抗体または抗原結合性断片を含むキメラ抗原受容体(CAR)、免疫コンジュゲート、多重特異性抗体、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、抗体-ナノ粒子コンジュゲートおよび融合タンパク質が提供される。CD22特異的モノクローナル抗体または抗原結合性断片および薬学的に許容される担体を含む組成物も本開示で提供される。
【0008】
本明細書に開示されるCD22特異的モノクローナル抗体、CAR、免疫コンジュゲート、多重特異性抗体および融合タンパク質をコードする核酸分子およびベクターも本明細書で提供される。
【0009】
開示される抗体および抗原結合性断片を使用して試料におけるCD22の発現を検出する方法がさらに提供される。
【0010】
本明細書に開示されるCD22特異的モノクローナル抗体、抗原結合性断片、CAR、CARを発現する単離された細胞、免疫コンジュゲート、ADC、多重特異性抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、融合タンパク質または組成物を対象に投与することにより、対象におけるB細胞悪性腫瘍を処置する方法も提供される。そのような方法は、CD22発現を上方調節する薬剤(ブリオスタチン1など)の投与をさらに含み得る。
【0011】
対象から得た試料を開示されるCD22特異的モノクローナル抗体またはその断片と接触させることにより、対象がB細胞悪性腫瘍を有すると診断する、または対象におけるB細胞悪性腫瘍の診断を確実にする方法がさらに提供される。
【0012】
(1)本明細書に開示されるCD22特異的モノクローナル抗体、抗原結合性断片、CAR、CARを発現する単離された細胞、免疫コンジュゲート、ADC、多重特異性抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、融合タンパク質または組成物、(2)CD22発現を上方調節する薬剤(ブリオスタチン1など)、および(3)必要に応じて抗がん剤を含むキットも提供される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
重鎖可変(VH)ドメインおよび軽鎖可変(VL)ドメインを含む、CD22に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、
前記VHドメインが、配列番号4の相補性決定領域(CDR)配列を含み、
前記VLドメインが、配列番号5のCDR配列を含む、
モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
(項目2)
前記CDR配列が、IMGT、Kabat、ParatomeまたはChothia番号付けスキームを使用して決定される、項目1に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片。
(項目3)
前記VHドメインが、配列番号4の残基26~35、53~61および100~113を含み、
前記VLドメインが、配列番号5の残基27~32、50~52および89~97を含む、
項目1または項目2に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片。
(項目4)
前記VHドメインのアミノ酸配列が、配列番号4と少なくとも90%同一であるおよび配列番号4のCDR配列を含み、
前記VLドメインのアミノ酸配列が、配列番号5と少なくとも90%同一であるおよび配列番号5のCDR配列を含む、
項目1から3までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片。
(項目5)
前記VHドメインのアミノ酸配列が、配列番号4を含み、
前記VLドメインのアミノ酸配列が、配列番号5を含む、
項目1から4までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片。
(項目6)
Fab断片、Fab’断片、F(ab)’
2
断片、単鎖可変断片(scFv)またはジスルフィド安定化可変断片(dsFv)である、項目1から5までのいずれか一項に記載の抗原結合性断片。
(項目7)
IgGである、項目1から5までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
(項目8)
完全ヒト抗体または抗原結合性断片である、項目1から7までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片。
(項目9)
キメラまたは合成抗体または抗原結合性断片である、項目1から7までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片。
(項目10)
項目1から9までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片を含むキメラ抗原受容体(CAR)。
(項目11)
ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激シグナル伝達部分、シグナル伝達ドメイン、またはこれらの任意の組合せをさらに含む、項目10に記載のCAR。
(項目12)
項目10または項目11のいずれか一項に記載のCARを発現する単離された細胞。
(項目13)
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である、項目12に記載の単離された細胞。
(項目14)
項目1から9までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片とエフェクター分子とを含む、免疫コンジュゲート。
(項目15)
前記エフェクター分子が、毒素である、項目14に記載の免疫コンジュゲート。
(項目16)
前記毒素が、Pseudomonas外毒素またはそのバリアントである、項目15に記載の免疫コンジュゲート。
(項目17)
前記エフェクター分子が、検出可能な標識である、項目14に記載の免疫コンジュゲート。
(項目18)
前記検出可能な標識が、フルオロフォア、酵素または放射性同位元素を含む、項目17に記載の免疫コンジュゲート。
(項目19)
項目1から9までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片とコンジュゲートした薬物を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)。
(項目20)
前記薬物が、小分子である、項目19に記載のADC。
(項目21)
前記薬物が、抗微小管剤、抗有糸分裂剤および/または細胞傷害性薬剤である、項目19または項目20に記載のADC。
(項目22)
項目1から9までのいずれかに記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片および少なくとも1つの追加のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を含む多重特異性抗体。
(項目23)
二重特異性抗体である、項目22に記載の多重特異性抗体。
(項目24)
三重特異性抗体である、項目22に記載の多重特異性抗体。
(項目25)
前記少なくとも1つの追加のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、T細胞受容体またはナチュラルキラー(NK)細胞活性化受容体の成分に特異的に結合する、項目22から24までのいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
(項目26)
項目1から9までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片とコンジュゲートしたナノ粒子を含む、抗体-ナノ粒子コンジュゲート。
(項目27)
前記ナノ粒子が、ポリマーナノ粒子、ナノスフェア、ナノカプセル、リポソーム、デンドリマー、ポリマーミセル、またはニオソームを含む、項目26に記載の抗体-ナノ粒子コンジュゲート。
(項目28)
前記ナノ粒子が、細胞傷害性薬剤を含む、項目26または項目27に記載の抗体-ナノ粒子コンジュゲート。
(項目29)
項目1から9までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片と異種タンパク質またはペプチドとを含む融合タンパク質。
(項目30)
前記異種タンパク質が、Fcタンパク質である、項目29に記載の融合タンパク質。
(項目31)
薬学的に許容される担体および項目1から9までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片、項目10もしくは項目11に記載のCAR、項目12もしくは項目13に記載の単離された細胞、項目14から18までのいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート、項目19から21までのいずれか一項に記載のADC、項目22から25までのいずれか一項に記載の多重特異性抗体、項目26から28までのいずれか一項に記載の抗体-ナノ粒子コンジュゲート、または項目29もしくは項目30に記載の融合タンパク質を含む組成物。
(項目32)
項目1から9までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片、項目10もしくは項目11に記載のCAR、項目14から18までのいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート、項目22から25までのいずれか一項に記載の多重特異性抗体、または項目29もしくは項目30に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
(項目33)
プロモーターに作動可能に連結した、項目32に記載の核酸分子。
(項目34)
項目32または項目33に記載の核酸分子を含むベクター。
(項目35)
試料におけるCD22の発現を検出する方法であって、
前記試料を項目1から9までのいずれかに記載のモノクローナル抗体または抗原結合性断片と接触させるステップと、
前記抗体の前記試料への結合を検出し、それにより、前記試料におけるCD22の発現を検出するステップと
を含む方法。
(項目36)
前記モノクローナル抗体または抗原結合性断片が、直接標識されている、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記モノクローナル抗体または抗原結合性断片を第2の抗体と接触させるステップと、
前記第2の抗体の前記モノクローナル抗体または抗原結合性断片への結合を検出し、それにより、前記試料におけるCD22の発現を検出するステップと
をさらに含む、項目35に記載の方法。
(項目38)
対象におけるCD22陽性がんを処置する方法であって、前記対象に項目1から9までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片、項目10もしくは項目11に記載のCAR、項目12もしくは項目13に記載の単離された細胞、項目14から18までのいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート、項目19から21までのいずれか一項に記載のADC、項目22から25までのいずれか一項に記載の多重特異性抗体、項目26から28までのいずれか一項に記載の抗体-ナノ粒子コンジュゲート、項目29もしくは項目30に記載の融合タンパク質、または項目31に記載の組成物の治療有効量を投与するステップを含み、それにより、前記CD22陽性がんを処置する、方法。
(項目39)
前記CD22陽性がんが、B細胞悪性腫瘍である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記B細胞悪性腫瘍が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病またはB細胞性前リンパ球性白血病である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記対象にブリオスタチン1の治療有効量を投与するステップをさらに含む、項目38から40までのいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
ブリオスタチン1を、前記モノクローナル抗体、抗原結合性断片、CAR、単離された細胞、免疫コンジュゲート、ADC、多重特異性抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、融合タンパク質または組成物を投与する前またはそれと同時に投与する、項目41に記載の方法。
(項目43)
項目1から9までのいずれか一項に記載のモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片、項目10もしくは項目11に記載のCAR、項目12もしくは項目13に記載の単離された細胞、項目14から18までのいずれか一項に記載の免疫コンジュゲート、項目19から21までのいずれか一項に記載のADC、項目22から25までのいずれか一項に記載の多重特異性抗体、項目26から28までのいずれか一項に記載の抗体-ナノ粒子コンジュゲート、項目29もしくは項目30に記載の融合タンパク質、または項目31に記載の組成物と、
CD22発現を上方調節する薬剤と、
必要に応じて抗がん剤と
を含むキット。
(項目44)
CD22発現を上方調節する前記薬剤が、ブリオスタチン1を含む、またはそれからなる、項目43に記載のキット。
【0013】
本発明の前述のおよび他の目的、特色、および利点は、添付図を参照して進める以下の詳細な説明からより明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1A~1F:(
図1A)前駆B細胞ALL患者由来の臨床試料を、CD19およびCD22発現についてQuantibrite-PEビーズ評価を使用して評価した。試料を得た後、CD19 CARTまたはCD22 CARTのいずれかで処理した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1B)CD22 CARTを用いて処置した患者由来の試料を、CD22部位密度についてQuantibrite分析を使用して評価し、CD22 CAR発現についてフローサイトメトリーによって評価した。(
図1C)患者のCAR T細胞を、様々な部位密度の細胞株と18時間にわたって共インキュベートした。上清を、様々な希釈度でIL-2、IFN-γおよびグランザイムBについてマルチプレックスELISAアッセイを使用して評価した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1D)様々な量のCD22を発現するNalm6 ALL腫瘍細胞(1×10
5個)をCD22 CART患者試料由来のCD22 CAR T細胞1×10
5個と18時間にわたって共培養した。上清を、Meso Scale Multiplex炎症促進性サイトカインパネルを使用して評価した。(
図1E)CD22
negとCD22
loおよびNalm6白血病細胞担持マウスを異なるCART用量で比較したカプラン・マイヤー曲線。(
図1F)間隔をおいた時点でマウスから末梢血を採取し、CAR増加についてフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計的有意性を算出した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021)。
【
図1B】
図1A~1F:(
図1A)前駆B細胞ALL患者由来の臨床試料を、CD19およびCD22発現についてQuantibrite-PEビーズ評価を使用して評価した。試料を得た後、CD19 CARTまたはCD22 CARTのいずれかで処理した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1B)CD22 CARTを用いて処置した患者由来の試料を、CD22部位密度についてQuantibrite分析を使用して評価し、CD22 CAR発現についてフローサイトメトリーによって評価した。(
図1C)患者のCAR T細胞を、様々な部位密度の細胞株と18時間にわたって共インキュベートした。上清を、様々な希釈度でIL-2、IFN-γおよびグランザイムBについてマルチプレックスELISAアッセイを使用して評価した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1D)様々な量のCD22を発現するNalm6 ALL腫瘍細胞(1×10
5個)をCD22 CART患者試料由来のCD22 CAR T細胞1×10
5個と18時間にわたって共培養した。上清を、Meso Scale Multiplex炎症促進性サイトカインパネルを使用して評価した。(
図1E)CD22
negとCD22
loおよびNalm6白血病細胞担持マウスを異なるCART用量で比較したカプラン・マイヤー曲線。(
図1F)間隔をおいた時点でマウスから末梢血を採取し、CAR増加についてフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計的有意性を算出した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021)。
【
図1C】
図1A~1F:(
図1A)前駆B細胞ALL患者由来の臨床試料を、CD19およびCD22発現についてQuantibrite-PEビーズ評価を使用して評価した。試料を得た後、CD19 CARTまたはCD22 CARTのいずれかで処理した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1B)CD22 CARTを用いて処置した患者由来の試料を、CD22部位密度についてQuantibrite分析を使用して評価し、CD22 CAR発現についてフローサイトメトリーによって評価した。(
図1C)患者のCAR T細胞を、様々な部位密度の細胞株と18時間にわたって共インキュベートした。上清を、様々な希釈度でIL-2、IFN-γおよびグランザイムBについてマルチプレックスELISAアッセイを使用して評価した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1D)様々な量のCD22を発現するNalm6 ALL腫瘍細胞(1×10
5個)をCD22 CART患者試料由来のCD22 CAR T細胞1×10
5個と18時間にわたって共培養した。上清を、Meso Scale Multiplex炎症促進性サイトカインパネルを使用して評価した。(
図1E)CD22
negとCD22
loおよびNalm6白血病細胞担持マウスを異なるCART用量で比較したカプラン・マイヤー曲線。(
図1F)間隔をおいた時点でマウスから末梢血を採取し、CAR増加についてフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計的有意性を算出した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021)。
【
図1D】
図1A~1F:(
図1A)前駆B細胞ALL患者由来の臨床試料を、CD19およびCD22発現についてQuantibrite-PEビーズ評価を使用して評価した。試料を得た後、CD19 CARTまたはCD22 CARTのいずれかで処理した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1B)CD22 CARTを用いて処置した患者由来の試料を、CD22部位密度についてQuantibrite分析を使用して評価し、CD22 CAR発現についてフローサイトメトリーによって評価した。(
図1C)患者のCAR T細胞を、様々な部位密度の細胞株と18時間にわたって共インキュベートした。上清を、様々な希釈度でIL-2、IFN-γおよびグランザイムBについてマルチプレックスELISAアッセイを使用して評価した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1D)様々な量のCD22を発現するNalm6 ALL腫瘍細胞(1×10
5個)をCD22 CART患者試料由来のCD22 CAR T細胞1×10
5個と18時間にわたって共培養した。上清を、Meso Scale Multiplex炎症促進性サイトカインパネルを使用して評価した。(
図1E)CD22
negとCD22
loおよびNalm6白血病細胞担持マウスを異なるCART用量で比較したカプラン・マイヤー曲線。(
図1F)間隔をおいた時点でマウスから末梢血を採取し、CAR増加についてフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計的有意性を算出した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021)。
【
図1E】
図1A~1F:(
図1A)前駆B細胞ALL患者由来の臨床試料を、CD19およびCD22発現についてQuantibrite-PEビーズ評価を使用して評価した。試料を得た後、CD19 CARTまたはCD22 CARTのいずれかで処理した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1B)CD22 CARTを用いて処置した患者由来の試料を、CD22部位密度についてQuantibrite分析を使用して評価し、CD22 CAR発現についてフローサイトメトリーによって評価した。(
図1C)患者のCAR T細胞を、様々な部位密度の細胞株と18時間にわたって共インキュベートした。上清を、様々な希釈度でIL-2、IFN-γおよびグランザイムBについてマルチプレックスELISAアッセイを使用して評価した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1D)様々な量のCD22を発現するNalm6 ALL腫瘍細胞(1×10
5個)をCD22 CART患者試料由来のCD22 CAR T細胞1×10
5個と18時間にわたって共培養した。上清を、Meso Scale Multiplex炎症促進性サイトカインパネルを使用して評価した。(
図1E)CD22
negとCD22
loおよびNalm6白血病細胞担持マウスを異なるCART用量で比較したカプラン・マイヤー曲線。(
図1F)間隔をおいた時点でマウスから末梢血を採取し、CAR増加についてフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計的有意性を算出した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021)。
【
図1F】
図1A~1F:(
図1A)前駆B細胞ALL患者由来の臨床試料を、CD19およびCD22発現についてQuantibrite-PEビーズ評価を使用して評価した。試料を得た後、CD19 CARTまたはCD22 CARTのいずれかで処理した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1B)CD22 CARTを用いて処置した患者由来の試料を、CD22部位密度についてQuantibrite分析を使用して評価し、CD22 CAR発現についてフローサイトメトリーによって評価した。(
図1C)患者のCAR T細胞を、様々な部位密度の細胞株と18時間にわたって共インキュベートした。上清を、様々な希釈度でIL-2、IFN-γおよびグランザイムBについてマルチプレックスELISAアッセイを使用して評価した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した。(
図1D)様々な量のCD22を発現するNalm6 ALL腫瘍細胞(1×10
5個)をCD22 CART患者試料由来のCD22 CAR T細胞1×10
5個と18時間にわたって共培養した。上清を、Meso Scale Multiplex炎症促進性サイトカインパネルを使用して評価した。(
図1E)CD22
negとCD22
loおよびNalm6白血病細胞担持マウスを異なるCART用量で比較したカプラン・マイヤー曲線。(
図1F)間隔をおいた時点でマウスから末梢血を採取し、CAR増加についてフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計的有意性を算出した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021)。
【0015】
【
図2A-B】
図2A~2G:(
図2A)偽またはCD22 CAR T細胞を、CD22neg、CD22loまたはNalm6細胞のいずれかとエフェクター対標的比1:1で共インキュベートした。Incucyte分析を使用してGFP陽性細胞の消失によって細胞死をモニタリングした。(
図2B)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22neg、CD22lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、CD22 CAR T細胞5×10
6個を注射した。マウスに対して、ルシフェリン-DをIP注射した後、IVIS技術を使用してイメージングを行った。(
図2C~2E)腫瘍注射の16日後(
図2C、2D、左側のパネル、および2E)または30日後(
図2D、右側のパネル)にCD22 CARで処置したCD22loまたはNalm6 NSGマウスから細胞を抽出した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。(
図2E)部位密度細胞株を、CD22 CARTと24時間にわたって共インキュベートし、PD1発現に関してフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。MFI=平均蛍光強度。(
図2F)CD22 CARをCD22
loまたはNalm6白血病細胞と8日間にわたってin vitroで共培養し、細胞をフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。
図2Gは、CRISPRにより編集されたNalm6細胞株について、CD22部位密度をフローサイトメトリーおよびQuantibrite分析を使用して評価したことについて示すグラフである。
【
図2C】
図2A~2G:(
図2A)偽またはCD22 CAR T細胞を、CD22neg、CD22loまたはNalm6細胞のいずれかとエフェクター対標的比1:1で共インキュベートした。Incucyte分析を使用してGFP陽性細胞の消失によって細胞死をモニタリングした。(
図2B)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22neg、CD22lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、CD22 CAR T細胞5×10
6個を注射した。マウスに対して、ルシフェリン-DをIP注射した後、IVIS技術を使用してイメージングを行った。(
図2C~2E)腫瘍注射の16日後(
図2C、2D、左側のパネル、および2E)または30日後(
図2D、右側のパネル)にCD22 CARで処置したCD22loまたはNalm6 NSGマウスから細胞を抽出した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。(
図2E)部位密度細胞株を、CD22 CARTと24時間にわたって共インキュベートし、PD1発現に関してフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。MFI=平均蛍光強度。(
図2F)CD22 CARをCD22
loまたはNalm6白血病細胞と8日間にわたってin vitroで共培養し、細胞をフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。
図2Gは、CRISPRにより編集されたNalm6細胞株について、CD22部位密度をフローサイトメトリーおよびQuantibrite分析を使用して評価したことについて示すグラフである。
【
図2D】
図2A~2G:(
図2A)偽またはCD22 CAR T細胞を、CD22neg、CD22loまたはNalm6細胞のいずれかとエフェクター対標的比1:1で共インキュベートした。Incucyte分析を使用してGFP陽性細胞の消失によって細胞死をモニタリングした。(
図2B)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22neg、CD22lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、CD22 CAR T細胞5×10
6個を注射した。マウスに対して、ルシフェリン-DをIP注射した後、IVIS技術を使用してイメージングを行った。(
図2C~2E)腫瘍注射の16日後(
図2C、2D、左側のパネル、および2E)または30日後(
図2D、右側のパネル)にCD22 CARで処置したCD22loまたはNalm6 NSGマウスから細胞を抽出した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。(
図2E)部位密度細胞株を、CD22 CARTと24時間にわたって共インキュベートし、PD1発現に関してフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。MFI=平均蛍光強度。(
図2F)CD22 CARをCD22
loまたはNalm6白血病細胞と8日間にわたってin vitroで共培養し、細胞をフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。
図2Gは、CRISPRにより編集されたNalm6細胞株について、CD22部位密度をフローサイトメトリーおよびQuantibrite分析を使用して評価したことについて示すグラフである。
【
図2E】
図2A~2G:(
図2A)偽またはCD22 CAR T細胞を、CD22neg、CD22loまたはNalm6細胞のいずれかとエフェクター対標的比1:1で共インキュベートした。Incucyte分析を使用してGFP陽性細胞の消失によって細胞死をモニタリングした。(
図2B)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22neg、CD22lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、CD22 CAR T細胞5×10
6個を注射した。マウスに対して、ルシフェリン-DをIP注射した後、IVIS技術を使用してイメージングを行った。(
図2C~2E)腫瘍注射の16日後(
図2C、2D、左側のパネル、および2E)または30日後(
図2D、右側のパネル)にCD22 CARで処置したCD22loまたはNalm6 NSGマウスから細胞を抽出した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。(
図2E)部位密度細胞株を、CD22 CARTと24時間にわたって共インキュベートし、PD1発現に関してフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。MFI=平均蛍光強度。(
図2F)CD22 CARをCD22
loまたはNalm6白血病細胞と8日間にわたってin vitroで共培養し、細胞をフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。
図2Gは、CRISPRにより編集されたNalm6細胞株について、CD22部位密度をフローサイトメトリーおよびQuantibrite分析を使用して評価したことについて示すグラフである。
【
図2F】
図2A~2G:(
図2A)偽またはCD22 CAR T細胞を、CD22neg、CD22loまたはNalm6細胞のいずれかとエフェクター対標的比1:1で共インキュベートした。Incucyte分析を使用してGFP陽性細胞の消失によって細胞死をモニタリングした。(
図2B)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22neg、CD22lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、CD22 CAR T細胞5×10
6個を注射した。マウスに対して、ルシフェリン-DをIP注射した後、IVIS技術を使用してイメージングを行った。(
図2C~2E)腫瘍注射の16日後(
図2C、2D、左側のパネル、および2E)または30日後(
図2D、右側のパネル)にCD22 CARで処置したCD22loまたはNalm6 NSGマウスから細胞を抽出した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。(
図2E)部位密度細胞株を、CD22 CARTと24時間にわたって共インキュベートし、PD1発現に関してフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。MFI=平均蛍光強度。(
図2F)CD22 CARをCD22
loまたはNalm6白血病細胞と8日間にわたってin vitroで共培養し、細胞をフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。
図2Gは、CRISPRにより編集されたNalm6細胞株について、CD22部位密度をフローサイトメトリーおよびQuantibrite分析を使用して評価したことについて示すグラフである。
【
図2G】
図2A~2G:(
図2A)偽またはCD22 CAR T細胞を、CD22neg、CD22loまたはNalm6細胞のいずれかとエフェクター対標的比1:1で共インキュベートした。Incucyte分析を使用してGFP陽性細胞の消失によって細胞死をモニタリングした。(
図2B)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22neg、CD22lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、CD22 CAR T細胞5×10
6個を注射した。マウスに対して、ルシフェリン-DをIP注射した後、IVIS技術を使用してイメージングを行った。(
図2C~2E)腫瘍注射の16日後(
図2C、2D、左側のパネル、および2E)または30日後(
図2D、右側のパネル)にCD22 CARで処置したCD22loまたはNalm6 NSGマウスから細胞を抽出した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。(
図2E)部位密度細胞株を、CD22 CARTと24時間にわたって共インキュベートし、PD1発現に関してフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。MFI=平均蛍光強度。(
図2F)CD22 CARをCD22
loまたはNalm6白血病細胞と8日間にわたってin vitroで共培養し、細胞をフローサイトメトリーを使用して評価し、Fortessa flow機で分析した。
図2Gは、CRISPRにより編集されたNalm6細胞株について、CD22部位密度をフローサイトメトリーおよびQuantibrite分析を使用して評価したことについて示すグラフである。
【0016】
【
図3A】
図3A~3D:(
図3A)4種の細胞株(Nalm6、Kopn8、PfiefferおよびToldeo)を1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、ブリオスタチン1曝露の1日後にフローサイトメトリーを使用して分析した。標準化されたQuantibrite-PEビーズを使用して部位密度を分析した。(
図3B)細胞株を1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、洗浄し、ブリオスタチン1曝露の1日後および7日後にフローサイトメトリーを使用して分析した。倍率変化を部位密度に基づいて算出した:(ブリオスタチン1細胞株-DMSO細胞株)/DMSO細胞株。
図3Cは、0日目にNSGマウスにGPF陽性Nalm6白血病細胞1×10
6個を注射し、3日目にブリオスタチン1を0.8μg/kgで投与したことについて示すグラフである。ブリオスタチン1注射の7日後および12日後にマウスを屠殺し、CD22をフローサイトメトリーによって評価した。(
図3D)CD22-低 再発PDX細胞株を1nmol/Lのブリオスタチン1と共に24時間にわたってin vitroで培養し、CD22発現についてCD22抗体を使用して測定した。
【
図3B-C】
図3A~3D:(
図3A)4種の細胞株(Nalm6、Kopn8、PfiefferおよびToldeo)を1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、ブリオスタチン1曝露の1日後にフローサイトメトリーを使用して分析した。標準化されたQuantibrite-PEビーズを使用して部位密度を分析した。(
図3B)細胞株を1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、洗浄し、ブリオスタチン1曝露の1日後および7日後にフローサイトメトリーを使用して分析した。倍率変化を部位密度に基づいて算出した:(ブリオスタチン1細胞株-DMSO細胞株)/DMSO細胞株。
図3Cは、0日目にNSGマウスにGPF陽性Nalm6白血病細胞1×10
6個を注射し、3日目にブリオスタチン1を0.8μg/kgで投与したことについて示すグラフである。ブリオスタチン1注射の7日後および12日後にマウスを屠殺し、CD22をフローサイトメトリーによって評価した。(
図3D)CD22-低 再発PDX細胞株を1nmol/Lのブリオスタチン1と共に24時間にわたってin vitroで培養し、CD22発現についてCD22抗体を使用して測定した。
【
図3D】
図3A~3D:(
図3A)4種の細胞株(Nalm6、Kopn8、PfiefferおよびToldeo)を1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、ブリオスタチン1曝露の1日後にフローサイトメトリーを使用して分析した。標準化されたQuantibrite-PEビーズを使用して部位密度を分析した。(
図3B)細胞株を1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、洗浄し、ブリオスタチン1曝露の1日後および7日後にフローサイトメトリーを使用して分析した。倍率変化を部位密度に基づいて算出した:(ブリオスタチン1細胞株-DMSO細胞株)/DMSO細胞株。
図3Cは、0日目にNSGマウスにGPF陽性Nalm6白血病細胞1×10
6個を注射し、3日目にブリオスタチン1を0.8μg/kgで投与したことについて示すグラフである。ブリオスタチン1注射の7日後および12日後にマウスを屠殺し、CD22をフローサイトメトリーによって評価した。(
図3D)CD22-低 再発PDX細胞株を1nmol/Lのブリオスタチン1と共に24時間にわたってin vitroで培養し、CD22発現についてCD22抗体を使用して測定した。
【0017】
【
図4A-B】
図4A~4E:(
図4A~4B)KOPN8またはSEM細胞株をブリオスタチン1に16時間、24時間、48時間、または72時間にわたって曝露させた。細胞からRNAを抽出し、RNAseqを使用して解析した。(
図4C~4E)細胞株を、1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、次いで、標的腫瘍細胞1×10
5個をCD22 CAR、1×10
5個と16時間にわたって共培養した。細胞培養上清からIL-2(
図4C)、IFN-γ(
図4D)、およびグランザイムB(
図4E)をELISAによって測定した。対応のないt検定を使用して統計的有意性を算出した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021、
*p<0.0332)。
【
図4C-D】
図4A~4E:(
図4A~4B)KOPN8またはSEM細胞株をブリオスタチン1に16時間、24時間、48時間、または72時間にわたって曝露させた。細胞からRNAを抽出し、RNAseqを使用して解析した。(
図4C~4E)細胞株を、1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、次いで、標的腫瘍細胞1×10
5個をCD22 CAR、1×10
5個と16時間にわたって共培養した。細胞培養上清からIL-2(
図4C)、IFN-γ(
図4D)、およびグランザイムB(
図4E)をELISAによって測定した。対応のないt検定を使用して統計的有意性を算出した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021、
*p<0.0332)。
【
図4E】
図4A~4E:(
図4A~4B)KOPN8またはSEM細胞株をブリオスタチン1に16時間、24時間、48時間、または72時間にわたって曝露させた。細胞からRNAを抽出し、RNAseqを使用して解析した。(
図4C~4E)細胞株を、1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、次いで、標的腫瘍細胞1×10
5個をCD22 CAR、1×10
5個と16時間にわたって共培養した。細胞培養上清からIL-2(
図4C)、IFN-γ(
図4D)、およびグランザイムB(
図4E)をELISAによって測定した。対応のないt検定を使用して統計的有意性を算出した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021、
*p<0.0332)。
【0018】
【
図5A】
図5A~5D:(
図5A~5B)CD22 CART細胞を1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、洗浄し、次いで、標的腫瘍細胞1×10
5個をCD22 CAR、1×10
5個と18時間にわたって共培養した。細胞培養上清からIFN-γ(
図5A)およびグランザイムB(
図5B)をELISAによって測定した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021、
*p<0.0332)。(
図5C)偽またはCD22 CAR T細胞をCD22
neg、CD22
loまたはNalm6細胞のいずれかとエフェクター対標的比1:1で共インキュベートした。Incucyte分析を使用してGFP陽性細胞の消失によって細胞死をモニタリングした。(
図5D)NSGマウスに、0日目にNalm6を注射し、3日目にCD22 CART細胞を注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1を0.8μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。IVIS技術およびルシフェリン-DのIP注射を使用して白血病の増悪をモニタリングした。
【
図5B】
図5A~5D:(
図5A~5B)CD22 CART細胞を1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、洗浄し、次いで、標的腫瘍細胞1×10
5個をCD22 CAR、1×10
5個と18時間にわたって共培養した。細胞培養上清からIFN-γ(
図5A)およびグランザイムB(
図5B)をELISAによって測定した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021、
*p<0.0332)。(
図5C)偽またはCD22 CAR T細胞をCD22
neg、CD22
loまたはNalm6細胞のいずれかとエフェクター対標的比1:1で共インキュベートした。Incucyte分析を使用してGFP陽性細胞の消失によって細胞死をモニタリングした。(
図5D)NSGマウスに、0日目にNalm6を注射し、3日目にCD22 CART細胞を注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1を0.8μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。IVIS技術およびルシフェリン-DのIP注射を使用して白血病の増悪をモニタリングした。
【
図5C】
図5A~5D:(
図5A~5B)CD22 CART細胞を1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、洗浄し、次いで、標的腫瘍細胞1×10
5個をCD22 CAR、1×10
5個と18時間にわたって共培養した。細胞培養上清からIFN-γ(
図5A)およびグランザイムB(
図5B)をELISAによって測定した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021、
*p<0.0332)。(
図5C)偽またはCD22 CAR T細胞をCD22
neg、CD22
loまたはNalm6細胞のいずれかとエフェクター対標的比1:1で共インキュベートした。Incucyte分析を使用してGFP陽性細胞の消失によって細胞死をモニタリングした。(
図5D)NSGマウスに、0日目にNalm6を注射し、3日目にCD22 CART細胞を注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1を0.8μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。IVIS技術およびルシフェリン-DのIP注射を使用して白血病の増悪をモニタリングした。
【
図5D】
図5A~5D:(
図5A~5B)CD22 CART細胞を1ng/mlのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、洗浄し、次いで、標的腫瘍細胞1×10
5個をCD22 CAR、1×10
5個と18時間にわたって共培養した。細胞培養上清からIFN-γ(
図5A)およびグランザイムB(
図5B)をELISAによって測定した。対応のないt検定を使用して統計解析を実施した(
****p<0.0001、
***p<0.0002、
**p<0.0021、
*p<0.0332)。(
図5C)偽またはCD22 CAR T細胞をCD22
neg、CD22
loまたはNalm6細胞のいずれかとエフェクター対標的比1:1で共インキュベートした。Incucyte分析を使用してGFP陽性細胞の消失によって細胞死をモニタリングした。(
図5D)NSGマウスに、0日目にNalm6を注射し、3日目にCD22 CART細胞を注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1を0.8μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。IVIS技術およびルシフェリン-DのIP注射を使用して白血病の増悪をモニタリングした。
【0019】
【
図6A】
図6A~6D:CAR注入前のブリオスタチン1による処理により、T細胞疲弊を伴わずにT細胞表現型が変更され、CAR注入後では、in vivoにおける寛解の耐久性が改善される。(
図6A)Nalm6細胞を1nmol/Lのブリオスタチン1に24時間にわたって曝露させ、次いで、0日目にマウスに注射した。3日目にCD22 CAR T細胞を投与し、10日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332)。(
図6B)NSGマウスに、0日目にNalm6を注射し、3日目にCD22 CARTを注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1のいずれかを40μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。腫瘍注射の30日後にマウスを屠殺した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。(
図6C)NSGマウスに、0日目にGPF陽性Nalm6またはSEM腫瘍細胞1×10
6個を注射した。3日目に、処置として偽またはCD22 CARのいずれかを3×10
6個(Nalm6)または2×10
6個(SEM)注射した。マウスに、40μg/kgのブリオスタチン1またはDMSOを毎週、2週間にわたって与えた。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。(
図6D)NSGマウスに、0日目にGPF陽性PDX腫瘍細胞1×10
6個を注射した。42日目に、処置として偽またはCD22 CARを3×10
6個注射した。マウスに、40μg/kgのブリオスタチン1またはDMSOを45日目から開始して毎週、2週間にわたって与えた。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。
【
図6B】
図6A~6D:CAR注入前のブリオスタチン1による処理により、T細胞疲弊を伴わずにT細胞表現型が変更され、CAR注入後では、in vivoにおける寛解の耐久性が改善される。(
図6A)Nalm6細胞を1nmol/Lのブリオスタチン1に24時間にわたって曝露させ、次いで、0日目にマウスに注射した。3日目にCD22 CAR T細胞を投与し、10日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332)。(
図6B)NSGマウスに、0日目にNalm6を注射し、3日目にCD22 CARTを注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1のいずれかを40μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。腫瘍注射の30日後にマウスを屠殺した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。(
図6C)NSGマウスに、0日目にGPF陽性Nalm6またはSEM腫瘍細胞1×10
6個を注射した。3日目に、処置として偽またはCD22 CARのいずれかを3×10
6個(Nalm6)または2×10
6個(SEM)注射した。マウスに、40μg/kgのブリオスタチン1またはDMSOを毎週、2週間にわたって与えた。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。(
図6D)NSGマウスに、0日目にGPF陽性PDX腫瘍細胞1×10
6個を注射した。42日目に、処置として偽またはCD22 CARを3×10
6個注射した。マウスに、40μg/kgのブリオスタチン1またはDMSOを45日目から開始して毎週、2週間にわたって与えた。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。
【
図6C-D】
図6A~6D:CAR注入前のブリオスタチン1による処理により、T細胞疲弊を伴わずにT細胞表現型が変更され、CAR注入後では、in vivoにおける寛解の耐久性が改善される。(
図6A)Nalm6細胞を1nmol/Lのブリオスタチン1に24時間にわたって曝露させ、次いで、0日目にマウスに注射した。3日目にCD22 CAR T細胞を投与し、10日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332)。(
図6B)NSGマウスに、0日目にNalm6を注射し、3日目にCD22 CARTを注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1のいずれかを40μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。腫瘍注射の30日後にマウスを屠殺した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。(
図6C)NSGマウスに、0日目にGPF陽性Nalm6またはSEM腫瘍細胞1×10
6個を注射した。3日目に、処置として偽またはCD22 CARのいずれかを3×10
6個(Nalm6)または2×10
6個(SEM)注射した。マウスに、40μg/kgのブリオスタチン1またはDMSOを毎週、2週間にわたって与えた。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。(
図6D)NSGマウスに、0日目にGPF陽性PDX腫瘍細胞1×10
6個を注射した。42日目に、処置として偽またはCD22 CARを3×10
6個注射した。マウスに、40μg/kgのブリオスタチン1またはDMSOを45日目から開始して毎週、2週間にわたって与えた。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。
【0020】
【
図7A】
図7A~7B:(
図7A)部位密度細胞株(Nalm6、CD22
neg、CD22
loおよびCD22
hi)をCD22 CART細胞と共インキュベートした。ELISAを使用して培養上清中のIL-2を測定した。(
図7B)CD22 CAR T細胞療法前およびCD22 CAR T細胞療法後の患者試料をCD22発現についてQuantibrite-PEビーズ評価を使用して評価した。ウィルコクソン検定を使用して統計解析を実施した。
【
図7B】
図7A~7B:(
図7A)部位密度細胞株(Nalm6、CD22
neg、CD22
loおよびCD22
hi)をCD22 CART細胞と共インキュベートした。ELISAを使用して培養上清中のIL-2を測定した。(
図7B)CD22 CAR T細胞療法前およびCD22 CAR T細胞療法後の患者試料をCD22発現についてQuantibrite-PEビーズ評価を使用して評価した。ウィルコクソン検定を使用して統計解析を実施した。
【0021】
【
図8】
図8:腫瘍細胞(1×10
5個)をCD22 CART患者試料由来のCD22 CAR T細胞1×10
5個と18時間にわたって共培養した。上清をMeso Scale Multiplex炎症促進性サイトカインパネルによって評価した。
【0022】
【
図9A】
図9A~9F:(
図9A~9B)合計1×10
5個の腫瘍細胞を1×10
5個の偽、CD22、またはCD22
V1 CARと共培養し、細胞培養上清からIFNγおよびIL2サイトカインについてELISAによって評価したか(対応のあるt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332);
図9A)、またはIncuCyte ZOOMを使用してアネキシンV染色を経時的に評価した(
図9B)。これらのデータは、2つの別々の実験を表し、2つの異なるエフェクター対標的比にわたって一貫していた。(
図9C)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22
neg、CD22
lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、処置としてCD22またはCD22
V1 CAR、5×10
6個を注射した。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。発光定量化(luminescence quantification)が右側に示されている。これらのデータは、2つの別々の実験を表す。(
図9D)CD22またはCD22
V1 CARTを腫瘍細胞と共インキュベートした。1日目および8日目に、CARを回収し、フローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332)。(
図9E~9F)マウスに、0日目にCD22
loまたはNalm6白血病細胞を注射し、3日目に合計5×10
6個のCD22 CART細胞を投与し、16日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
****、P<0.0001;
*、P<0.0332)。
【
図9B】
図9A~9F:(
図9A~9B)合計1×10
5個の腫瘍細胞を1×10
5個の偽、CD22、またはCD22
V1 CARと共培養し、細胞培養上清からIFNγおよびIL2サイトカインについてELISAによって評価したか(対応のあるt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332);
図9A)、またはIncuCyte ZOOMを使用してアネキシンV染色を経時的に評価した(
図9B)。これらのデータは、2つの別々の実験を表し、2つの異なるエフェクター対標的比にわたって一貫していた。(
図9C)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22
neg、CD22
lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、処置としてCD22またはCD22
V1 CAR、5×10
6個を注射した。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。発光定量化(luminescence quantification)が右側に示されている。これらのデータは、2つの別々の実験を表す。(
図9D)CD22またはCD22
V1 CARTを腫瘍細胞と共インキュベートした。1日目および8日目に、CARを回収し、フローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332)。(
図9E~9F)マウスに、0日目にCD22
loまたはNalm6白血病細胞を注射し、3日目に合計5×10
6個のCD22 CART細胞を投与し、16日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
****、P<0.0001;
*、P<0.0332)。
【
図9C】
図9A~9F:(
図9A~9B)合計1×10
5個の腫瘍細胞を1×10
5個の偽、CD22、またはCD22
V1 CARと共培養し、細胞培養上清からIFNγおよびIL2サイトカインについてELISAによって評価したか(対応のあるt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332);
図9A)、またはIncuCyte ZOOMを使用してアネキシンV染色を経時的に評価した(
図9B)。これらのデータは、2つの別々の実験を表し、2つの異なるエフェクター対標的比にわたって一貫していた。(
図9C)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22
neg、CD22
lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、処置としてCD22またはCD22
V1 CAR、5×10
6個を注射した。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。発光定量化(luminescence quantification)が右側に示されている。これらのデータは、2つの別々の実験を表す。(
図9D)CD22またはCD22
V1 CARTを腫瘍細胞と共インキュベートした。1日目および8日目に、CARを回収し、フローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332)。(
図9E~9F)マウスに、0日目にCD22
loまたはNalm6白血病細胞を注射し、3日目に合計5×10
6個のCD22 CART細胞を投与し、16日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
****、P<0.0001;
*、P<0.0332)。
【
図9D-E】
図9A~9F:(
図9A~9B)合計1×10
5個の腫瘍細胞を1×10
5個の偽、CD22、またはCD22
V1 CARと共培養し、細胞培養上清からIFNγおよびIL2サイトカインについてELISAによって評価したか(対応のあるt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332);
図9A)、またはIncuCyte ZOOMを使用してアネキシンV染色を経時的に評価した(
図9B)。これらのデータは、2つの別々の実験を表し、2つの異なるエフェクター対標的比にわたって一貫していた。(
図9C)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22
neg、CD22
lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、処置としてCD22またはCD22
V1 CAR、5×10
6個を注射した。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。発光定量化(luminescence quantification)が右側に示されている。これらのデータは、2つの別々の実験を表す。(
図9D)CD22またはCD22
V1 CARTを腫瘍細胞と共インキュベートした。1日目および8日目に、CARを回収し、フローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332)。(
図9E~9F)マウスに、0日目にCD22
loまたはNalm6白血病細胞を注射し、3日目に合計5×10
6個のCD22 CART細胞を投与し、16日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
****、P<0.0001;
*、P<0.0332)。
【
図9F】
図9A~9F:(
図9A~9B)合計1×10
5個の腫瘍細胞を1×10
5個の偽、CD22、またはCD22
V1 CARと共培養し、細胞培養上清からIFNγおよびIL2サイトカインについてELISAによって評価したか(対応のあるt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332);
図9A)、またはIncuCyte ZOOMを使用してアネキシンV染色を経時的に評価した(
図9B)。これらのデータは、2つの別々の実験を表し、2つの異なるエフェクター対標的比にわたって一貫していた。(
図9C)NSGマウスに、0日目にGPF陽性CD22
neg、CD22
lo、またはNalm6腫瘍細胞1×10
6個を注射し、3日目に、処置としてCD22またはCD22
V1 CAR、5×10
6個を注射した。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-Dの腹腔内注射を使用してイメージングを行った。発光定量化(luminescence quantification)が右側に示されている。これらのデータは、2つの別々の実験を表す。(
図9D)CD22またはCD22
V1 CARTを腫瘍細胞と共インキュベートした。1日目および8日目に、CARを回収し、フローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
*、P<0.0332)。(
図9E~9F)マウスに、0日目にCD22
loまたはNalm6白血病細胞を注射し、3日目に合計5×10
6個のCD22 CART細胞を投与し、16日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
****、P<0.0001;
*、P<0.0332)。
【0023】
【
図10A】
図10A~10E:(
図10A)3種の細胞株(Toldeo、Kopn8およびNalm6)を様々な濃度のブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートした。24時間目に、細胞をウエスタンブロットによるプロテインキナーゼC(PKC)-βIIアイソフォーム分析のために収集した。(
図10B)KOPN8またはSEM細胞株をブリオスタチン1に16時間、24時間、48時間または72時間にわたって曝露させた。細胞からRNAを抽出し、RNAseqを使用して解析した。(
図10C)CD22の免疫蛍光染色を透過処理によって行い、その後、CD22の染色を行ったことについて示す図である。(
図10D)4種の細胞株を、エンザスタウリン(10μM)、スタウロスポリン(100μM)、またはブリオスタチン1(1nM)の種々の組合せと24時間にわたって共インキュベートした。フローサイトメトリーを使用してCD22発現を評価した。MFI倍率変化=CD22 MFI
ブリオスタチン1/CD22 MFI
DMSO。(
図10E)細胞株を、1nMのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、CD22-PE抗体を使用してCD22発現を測定した。MFI倍率変化=CD22 MFI
ブリオスタチン1/CD22 MFI
DMSO。
【
図10B】
図10A~10E:(
図10A)3種の細胞株(Toldeo、Kopn8およびNalm6)を様々な濃度のブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートした。24時間目に、細胞をウエスタンブロットによるプロテインキナーゼC(PKC)-βIIアイソフォーム分析のために収集した。(
図10B)KOPN8またはSEM細胞株をブリオスタチン1に16時間、24時間、48時間または72時間にわたって曝露させた。細胞からRNAを抽出し、RNAseqを使用して解析した。(
図10C)CD22の免疫蛍光染色を透過処理によって行い、その後、CD22の染色を行ったことについて示す図である。(
図10D)4種の細胞株を、エンザスタウリン(10μM)、スタウロスポリン(100μM)、またはブリオスタチン1(1nM)の種々の組合せと24時間にわたって共インキュベートした。フローサイトメトリーを使用してCD22発現を評価した。MFI倍率変化=CD22 MFI
ブリオスタチン1/CD22 MFI
DMSO。(
図10E)細胞株を、1nMのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、CD22-PE抗体を使用してCD22発現を測定した。MFI倍率変化=CD22 MFI
ブリオスタチン1/CD22 MFI
DMSO。
【
図10C】
図10A~10E:(
図10A)3種の細胞株(Toldeo、Kopn8およびNalm6)を様々な濃度のブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートした。24時間目に、細胞をウエスタンブロットによるプロテインキナーゼC(PKC)-βIIアイソフォーム分析のために収集した。(
図10B)KOPN8またはSEM細胞株をブリオスタチン1に16時間、24時間、48時間または72時間にわたって曝露させた。細胞からRNAを抽出し、RNAseqを使用して解析した。(
図10C)CD22の免疫蛍光染色を透過処理によって行い、その後、CD22の染色を行ったことについて示す図である。(
図10D)4種の細胞株を、エンザスタウリン(10μM)、スタウロスポリン(100μM)、またはブリオスタチン1(1nM)の種々の組合せと24時間にわたって共インキュベートした。フローサイトメトリーを使用してCD22発現を評価した。MFI倍率変化=CD22 MFI
ブリオスタチン1/CD22 MFI
DMSO。(
図10E)細胞株を、1nMのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、CD22-PE抗体を使用してCD22発現を測定した。MFI倍率変化=CD22 MFI
ブリオスタチン1/CD22 MFI
DMSO。
【
図10D】
図10A~10E:(
図10A)3種の細胞株(Toldeo、Kopn8およびNalm6)を様々な濃度のブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートした。24時間目に、細胞をウエスタンブロットによるプロテインキナーゼC(PKC)-βIIアイソフォーム分析のために収集した。(
図10B)KOPN8またはSEM細胞株をブリオスタチン1に16時間、24時間、48時間または72時間にわたって曝露させた。細胞からRNAを抽出し、RNAseqを使用して解析した。(
図10C)CD22の免疫蛍光染色を透過処理によって行い、その後、CD22の染色を行ったことについて示す図である。(
図10D)4種の細胞株を、エンザスタウリン(10μM)、スタウロスポリン(100μM)、またはブリオスタチン1(1nM)の種々の組合せと24時間にわたって共インキュベートした。フローサイトメトリーを使用してCD22発現を評価した。MFI倍率変化=CD22 MFI
ブリオスタチン1/CD22 MFI
DMSO。(
図10E)細胞株を、1nMのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、CD22-PE抗体を使用してCD22発現を測定した。MFI倍率変化=CD22 MFI
ブリオスタチン1/CD22 MFI
DMSO。
【
図10E】
図10A~10E:(
図10A)3種の細胞株(Toldeo、Kopn8およびNalm6)を様々な濃度のブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートした。24時間目に、細胞をウエスタンブロットによるプロテインキナーゼC(PKC)-βIIアイソフォーム分析のために収集した。(
図10B)KOPN8またはSEM細胞株をブリオスタチン1に16時間、24時間、48時間または72時間にわたって曝露させた。細胞からRNAを抽出し、RNAseqを使用して解析した。(
図10C)CD22の免疫蛍光染色を透過処理によって行い、その後、CD22の染色を行ったことについて示す図である。(
図10D)4種の細胞株を、エンザスタウリン(10μM)、スタウロスポリン(100μM)、またはブリオスタチン1(1nM)の種々の組合せと24時間にわたって共インキュベートした。フローサイトメトリーを使用してCD22発現を評価した。MFI倍率変化=CD22 MFI
ブリオスタチン1/CD22 MFI
DMSO。(
図10E)細胞株を、1nMのブリオスタチン1と24時間にわたって共インキュベートし、CD22-PE抗体を使用してCD22発現を測定した。MFI倍率変化=CD22 MFI
ブリオスタチン1/CD22 MFI
DMSO。
【0024】
【
図11】
図11:CD22
loまたは親Nalm6細胞株を1ng/mlのブリオスタチン1に24時間にわたって曝露させた。フローサイトメトリーを使用してCD22発現を評価した。
【0025】
【
図12】
図12:抗CD22 m971 scFvと親和性成熟バリアントm971-L7 scFvのアミノ酸配列アラインメント。
【0026】
【
図13A】
図13A~13F:(
図13A)BIAcore解析を使用して、種々のscFvの会合および解離曲線を評価した。注:算出された解離速度定数kd(1.1×10
-6 1/s)は本発明で使用したBIAcore X-100によって測定することができるkd(1.0×10
-5 1/s)よりも低い。したがって、BIAcoreによって測定された成熟バリアントL7(KD<1.0×10
-5/5.6×10
5=1.8×10
-11M=18pM)の親和性は、元のscFv m971の親和性(KD=3.1nM)の1000倍を超える。親和性の改善はまた、親和性成熟プロセスの間に使用される選別条件によっても支持される。(
図13B)CD22
V1またはCD22 CARTをCD22
negまたはCD22
lo白血病細胞と共培養し、24時間目にPD1発現についてFortessa flow機でのフローサイトメトリーによって評価した。(
図13C~13F)マウスに、0日目にCD22
loまたはNalm6白血病細胞を注射し、3日目にCD22 CAR T細胞5×10
6個を投与し、16日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
**p<0.0021)。
【
図13B-C】
図13A~13F:(
図13A)BIAcore解析を使用して、種々のscFvの会合および解離曲線を評価した。注:算出された解離速度定数kd(1.1×10
-6 1/s)は本発明で使用したBIAcore X-100によって測定することができるkd(1.0×10
-5 1/s)よりも低い。したがって、BIAcoreによって測定された成熟バリアントL7(KD<1.0×10
-5/5.6×10
5=1.8×10
-11M=18pM)の親和性は、元のscFv m971の親和性(KD=3.1nM)の1000倍を超える。親和性の改善はまた、親和性成熟プロセスの間に使用される選別条件によっても支持される。(
図13B)CD22
V1またはCD22 CARTをCD22
negまたはCD22
lo白血病細胞と共培養し、24時間目にPD1発現についてFortessa flow機でのフローサイトメトリーによって評価した。(
図13C~13F)マウスに、0日目にCD22
loまたはNalm6白血病細胞を注射し、3日目にCD22 CAR T細胞5×10
6個を投与し、16日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
**p<0.0021)。
【
図13D】
図13A~13F:(
図13A)BIAcore解析を使用して、種々のscFvの会合および解離曲線を評価した。注:算出された解離速度定数kd(1.1×10
-6 1/s)は本発明で使用したBIAcore X-100によって測定することができるkd(1.0×10
-5 1/s)よりも低い。したがって、BIAcoreによって測定された成熟バリアントL7(KD<1.0×10
-5/5.6×10
5=1.8×10
-11M=18pM)の親和性は、元のscFv m971の親和性(KD=3.1nM)の1000倍を超える。親和性の改善はまた、親和性成熟プロセスの間に使用される選別条件によっても支持される。(
図13B)CD22
V1またはCD22 CARTをCD22
negまたはCD22
lo白血病細胞と共培養し、24時間目にPD1発現についてFortessa flow機でのフローサイトメトリーによって評価した。(
図13C~13F)マウスに、0日目にCD22
loまたはNalm6白血病細胞を注射し、3日目にCD22 CAR T細胞5×10
6個を投与し、16日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
**p<0.0021)。
【
図13E-F】
図13A~13F:(
図13A)BIAcore解析を使用して、種々のscFvの会合および解離曲線を評価した。注:算出された解離速度定数kd(1.1×10
-6 1/s)は本発明で使用したBIAcore X-100によって測定することができるkd(1.0×10
-5 1/s)よりも低い。したがって、BIAcoreによって測定された成熟バリアントL7(KD<1.0×10
-5/5.6×10
5=1.8×10
-11M=18pM)の親和性は、元のscFv m971の親和性(KD=3.1nM)の1000倍を超える。親和性の改善はまた、親和性成熟プロセスの間に使用される選別条件によっても支持される。(
図13B)CD22
V1またはCD22 CARTをCD22
negまたはCD22
lo白血病細胞と共培養し、24時間目にPD1発現についてFortessa flow機でのフローサイトメトリーによって評価した。(
図13C~13F)マウスに、0日目にCD22
loまたはNalm6白血病細胞を注射し、3日目にCD22 CAR T細胞5×10
6個を投与し、16日目にマウスを屠殺した。骨髄細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa flow機で分析した。対応のないt検定を使用して統計値を算出した(
**p<0.0021)。
【0027】
【
図14A-B】
図14A~14C:(
図14A)SEM細胞を1nMのブリオスタチン1に24時間にわたって曝露させ、洗浄した。CD19 CARTをSEMと16時間にわたって共インキュベートし、グランザイムBについてのELISAを実施した。(
図14B)NSGマウスに、0日目にSEMを注射し、3日目にCD19 CARTを注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1のいずれかを40μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-DのIP注射を使用してイメージングを行った。(
図14C)NSGマウスに、0日目にNalm6を注射し、3日目にCD22 CARTを注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1のいずれかを40μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。腫瘍注射の30日後にマウスを屠殺した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa Flow機で分析した。
【
図14C】
図14A~14C:(
図14A)SEM細胞を1nMのブリオスタチン1に24時間にわたって曝露させ、洗浄した。CD19 CARTをSEMと16時間にわたって共インキュベートし、グランザイムBについてのELISAを実施した。(
図14B)NSGマウスに、0日目にSEMを注射し、3日目にCD19 CARTを注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1のいずれかを40μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-DのIP注射を使用してイメージングを行った。(
図14C)NSGマウスに、0日目にNalm6を注射し、3日目にCD22 CARTを注射し、次いで、DMSO対照またはブリオスタチン1のいずれかを40μg/kgで毎週、2週間にわたって与えた。腫瘍注射の30日後にマウスを屠殺した。細胞をフローサイトメトリーのために染色し、Fortessa Flow機で分析した。
【0028】
【
図15】
図15A~15C:(
図15A~B)NSGマウスに、0日目にGPF陽性Nalm6またはSEM腫瘍細胞1×10
6個を注射した。3日目に、処置として3×10
6個(
図15A)または2×10
6個(
図15B)の偽またはCD22 CARのいずれかを注射した。マウスに、40μg/kgのブリオスタチン1またはDMSOを毎週、2週間にわたって与えた。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-DのIP注射を使用してイメージングを行った。発光定量化が示されている。(
図15C)NSGマウスに、0日目にGPF陽性PDX腫瘍細胞1×10
6個を注射した。42日目に、処置として偽またはCD22 CAR、3×10
6個を注射した。マウスに40μg/kgのブリオスタチン1またはDMSOを45日目から開始して毎週、2週間にわたって与えた。マウスに対してIVIS技術およびルシフェリン-DのIP注射を使用してイメージングを行った。発光定量化が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
配列表
添付の配列表に列挙されている核酸およびアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822において定義されている通り、ヌクレオチド塩基については標準の文字略語、およびアミノ酸については3文字コードを使用して示されている。各核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、示されている鎖への言及のいずれにも相補鎖が含まれると理解されたい。配列表は、2019年6月23日に作成された9.74KBのASCIIテキストファイルとして提出され、参照により本明細書に組み込まれる。添付の配列表において:
【0030】
配列番号1は、m971 VHドメインのアミノ酸配列である。
【0031】
配列番号2は、m971 VLドメインのアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号3は、m971 scFvのアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号4は、m971-L7 VHドメインのアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号5は、m971-L7 VLドメインのアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号6は、m971-L7 scFvのアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号7~10は、オリゴヌクレオチドプライマーである。
【0037】
詳細な説明
I.略語
ADC 抗体薬物コンジュゲート
ALL 急性リンパ芽球性白血病
CAR キメラ抗原受容体
CART キメラ抗原受容体T細胞
CDR 相補性決定領域
CLL 慢性リンパ性白血病
CRISPR クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート
DLBCL びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
DMSO ジメチルスルホキシド
ECD 細胞外ドメイン
ELISA 酵素結合免疫吸着アッセイ
GFP 緑色蛍光タンパク質
GSEA 遺伝子セット富化解析
HCL 有毛細胞白血病
IFN インターフェロン
IL インターロイキン
IP 腹腔内
IVIS インビボイメージングシステム
MALT 粘膜関連リンパ組織
NHL 非ホジキンリンパ腫
PE Pseudomonas外毒素またはフィコエリトリン
PKC プロテインキナーゼC
scFv 単鎖可変断片
TCR T細胞受容体
VH 重鎖可変
VL 軽鎖可変
【0038】
II.用語
特に断りのない限り、技術用語は、従来の使用に従って使用される。分子生物学における一般用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, published by Oxford University Press, 1994 (ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al. (eds.) , The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (ed.) , Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)において見ることができる。
本開示の種々の実施形態の精査を容易にするために、以下の特定の用語に関する説明が提示される:
【0039】
4-1BB:T細胞受容体(TCR)により活性化されたリンパ球によって、およびナチュラルキラー細胞を含めた他の細胞によって発現される共刺激分子。4-1BBのライゲーションにより、シグナル伝達カスケードが誘導され、その結果、サイトカイン産生、抗アポトーシス分子の発現および免疫応答の増強がもたらされる。
【0040】
投与:対象に治療剤(例えば、抗体)などの薬剤を任意の効果的な経路によって供給するまたは与えること。例示的な投与経路としては、これだけに限定されないが、注射または注入(例えば、皮下、腫瘍内、筋肉内、皮内、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、線状体内、頭蓋内および脊髄内など)、経口、腺管内、舌下、直腸、経皮的、鼻腔内、膣および吸入経路が挙げられる。
【0041】
抗体:CD22などの抗原のエピトープを認識し、それに結合する(例えば、特異的に認識し、特異的に結合する)少なくとも1つの可変領域を含むポリペプチドリガンド。哺乳動物免疫グロブリン分子は、重(H)鎖と軽(L)鎖で構成され、そのそれぞれが、それぞれ重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域と称される可変領域を有する。まとめて、VH領域およびVL領域は、抗体によって認識される抗原への結合に関与する。哺乳動物免疫グロブリンには主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ)が5つ存在し、それにより抗体分子の機能的活性が決定される:IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgE。哺乳動物では見いだされない抗体のアイソタイプとして、IgX、IgY、IgWおよびIgNARが挙げられる。IgYは、鳥類およびは虫類によって産生される主要な抗体であり、哺乳動物IgGおよびIgEに対していくつかの機能的類似性を有する。IgWおよびIgNAR抗体は軟骨魚類によって産生され、一方、IgX抗体は両生類において見いだされる。
【0042】
抗体可変領域は、「フレームワーク」領域および「相補性決定領域」または「CDR」として公知の超可変領域を含有する。CDRは、抗原のエピトープへの結合に主に関与する。抗体のフレームワーク領域は、CDRを3次元空間に配置し整列させる機能を果たす。所与のCDRのアミノ酸配列の境界は、Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991;「Kabat」番号付けスキーム)、Chothiaら(Chothia and Lesk, J Mol Biol 196: 901-917, 1987;Chothia et al., Nature 342: 877, 1989;およびAl-Lazikani et al., (JMB 273,927-948, 1997を参照されたい;「Chothia」番号付けスキーム)、Kunikら(Kunik et al., PLoS Comput Biol 8: e1002388, 2012;およびKunik et al., Nucleic Acids Res 40 (Web Server issue): W521-524, 2012を参照されたい;「Paratome CDR」)ならびにImMunoGeneTics(IMGT)データベース(Lefranc, Nucleic Acids Res 29: 207-9, 2001を参照されたい;「IMGT」番号付けスキーム)によって記載されているものを含めたいくつかの周知の番号付けスキームのいずれかを使用して容易に決定することができる。Kabat、ParatomeおよびIMGTデータベースはオンラインで維持されている。
【0043】
「単一ドメイン抗体」とは、追加の抗体ドメインの非存在下で抗原または抗原のエピトープに特異的に結合することができる単一ドメイン(可変ドメイン)を有する抗体を指す。単一ドメイン抗体としては、例えば、VHドメイン抗体、VNAR抗体、ラクダVHH抗体、およびVLドメイン抗体が挙げられる。VNAR抗体は、コモリザメ、オオセ科のサメ、ツノザメ科のサメおよびイヌザメなどの軟骨魚類によって産生される。ラクダVHH抗体は、軽鎖を天然に欠く重鎖抗体を産生するラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、およびグアナコを含めたいくつかの種によって産生される。
【0044】
「モノクローナル抗体」は、リンパ球の単一クローンによって、または単一抗体のコード配列がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法によって作製される。モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0045】
「キメラ抗体」は、ヒトなどの1つの種に由来するフレームワーク残基と別の種に由来するCDR(一般に抗原結合性を付与する)とを有する。
【0046】
「ヒト化」抗体は、ヒトフレームワーク領域と非ヒト(例えば、マウス、ウサギ、ラット、サメまたは合成)免疫グロブリン由来の1つまたは複数のCDRとを含む免疫グロブリンである。CDRを供給する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と称され、フレームワークを供給するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と称される。一実施形態では、ヒト化免疫グロブリンの全てのCDRがドナー免疫グロブリン由来のものである。定常領域は存在する必要はないが、存在する場合には、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち、少なくとも約85~90%、例えば、約95%またはそれよりも大きく同一でなければならない。したがって、ヒト化免疫グロブリンのおそらくCDR以外の全ての部分が、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。ヒト化抗体は、CDRを供給するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化または他のモノクローナル抗体は、抗原結合または他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を及ぼさない追加の保存的アミノ酸置換を有し得る。
【0047】
B細胞悪性腫瘍:本明細書で使用される場合、「B細胞悪性腫瘍」は、任意の型のB細胞の白血病またはリンパ腫を含む。B細胞悪性腫瘍としては、これだけに限定されないが、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、脾臓辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、有毛細胞白血病(HCL)、慢性リンパ性白血病(CLL)およびB細胞性前リンパ球性白血病が挙げられる。
【0048】
結合親和性:抗原に対する抗体の親和性。一実施形態では、親和性は、Frankel et al., Mol. Immunol., 16: 101-106, 1979によって記載されているスキャッチャード法の改変版によって算出される。別の実施形態では、結合親和性は、抗原/抗体解離速度によって測定される。別の実施形態では、高結合親和性は、競合ラジオイムノアッセイによって測定される。別の実施形態では、結合親和性は、ELISAによって測定される。別の実施形態では、抗体親和性は、フローサイトメトリーによって測定される。抗原(CD22など)に「特異的に結合する」抗体は、抗原に高い親和性で結合し、他の無関係の抗原には有意に結合しない抗体である。
【0049】
ブリオスタチン1:海洋生物Bugula neritinaから単離された抗がん大環状ラクトン。ブリオスタチン1は、プロテインキナーゼC(PKC)に結合し、それを阻害し、その結果、腫瘍細胞の増殖の阻害、腫瘍細胞分化の促進および腫瘍細胞アポトーシスの誘導がもたらされる。ブリオスタチン1を用いた処置により、CD22の細胞表面発現が増加し、CD22-免疫毒素の毒性が増強される(例えば、Biberacher et al., Haematologica 97 (5): 771-779, 2012を参照されたい)。例示的な構造を以下に示す
【化1】
【0050】
CD22:免疫グロブリンスーパーファミリーに属する系列制限されたB細胞抗原。CD22は、B細胞リンパ腫および白血病の60~70%で発現される。CD22は、B細胞発生の初期には細胞表面上に存在せず、幹細胞上にも存在しない。本明細書で使用される場合、「CD22」は、CD22ポリペプチドまたはそのバリアントもしくは断片を指す。ヒトCD22の配列は公的に入手可能である(例えば、Torres et al., J. Immunol. 149 (8): 2641-2649, 1992;およびWilson et al., J. Exp. Med. 173 (1): 137-146, 1991を参照されたい)。「CD22」という用語は、sCD22と称される可溶性の形態のCD22も含む。
【0051】
化学療法剤:異常な細胞成長によって特徴付けられる疾患の処置に関して治療的有用性がある任意の化学薬剤。そのような疾患としては、腫瘍、新生物、およびがん、ならびに乾癬などの過形成性成長によって特徴付けられる疾患が挙げられる。一実施形態では、化学療法剤は、放射性化合物である。一実施形態では、化学療法剤は、モノクローナル抗体などの生物学的製剤である。当業者は、有用な化学療法剤を容易に同定することができる(例えば、Slapak and Kufe, Principles of Cancer Therapy, Chapter 86 in Harrison's Principles of Internal Medicine, 14th edition;Perry et al., Chemotherapy, Ch. 17 in Abeloff, Clinical Oncology 2nd ed., (C) 2000 Churchill Livingstone, Inc;Baltzer, L., Berkery, R. (eds.): Oncology Pocket Guide to Chemotherapy, 2nd ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1995;Fischer, D.S., Knobf, M.F., Durivage, H.J. (eds): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1993を参照されたい)。併用化学療法とは、がんを処置するために2種以上の薬剤を投与することである。1つの例は、使用するCAR T細胞を、ブリオスタチン1などの、CD22発現を増加させる薬剤などの放射性または化学化合物と組み合わせて投与することである。
【0052】
キメラ抗原受容体(CAR):抗原結合性部分(例えば、単一ドメイン抗体またはscFv)と、T細胞受容体由来のシグナル伝達ドメインなどのシグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)とを含むキメラ分子。一般には、CARは、抗原結合部分、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインで構成される。細胞内ドメインは、一般には、CD3ζまたはFcεRIγなどの免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有するシグナル伝達鎖を含む。一部の例では、エンドドメインは、CD28、4-1BB(CD137)、ICOS、OX40(CD134)、CD27および/またはDAP10などの少なくとも1つの追加の共刺激ドメインの細胞内部分をさらに含む。
【0053】
慢性リンパ性白血病(CLL)は、リンパ球増多症、リンパ節腫脹、および臓器肥大によって特徴付けられるリンパ球増殖性障害である。CLLは、末梢血が関与するリンパ腫である。
【0054】
相補性決定領域(CDR):抗体の結合親和性および特異性を規定する超可変アミノ酸配列の領域。哺乳動物免疫グロブリンの軽鎖および重鎖はそれぞれが3つのCDRを有し、それぞれL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3およびH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と称される。
【0055】
保存的バリアント:「保存的」アミノ酸置換は、抗体などのタンパク質のCD22に対する親和性に実質的に影響を及ぼさないまたはそれを低下させない置換である。一例として、CD22に特異的に結合するモノクローナル抗体は、最大で約1カ所、最大で約2カ所、最大で約5カ所、および最大で約10カ所、または最大で約15カ所の保存的置換を含み得、CD22ポリペプチドに特異的に結合することができる。「保存的バリアント」という用語は、バリアントが活性を保持するという条件で、非置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することも含む。非保存的置換は、タンパク質の活性が低下する置換である。
【0056】
機能的に類似したアミノ酸を提示する保存的アミノ酸置換表が当業者には周知である。以下の6つの群は、互いに保存的置換とみなされるアミノ酸の例である:
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0057】
本明細書の一部の実施形態では、配列番号4、配列番号5、または配列番号6と比べて10カ所以下、9カ所以下、8カ所以下、7カ所以下、6カ所以下、5カ所以下、4カ所以下、3カ所以下、2カ所以下または1カ所以下のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列が提供される。一部の実施形態では、置換は抗体のフレームワーク領域内にのみ存在する。
【0058】
細胞傷害性薬剤:細胞を死滅させる任意の薬物または化合物。
【0059】
細胞傷害性:生物体の残りの細胞とは対照的に標的になることが意図された細胞に対する分子の毒性。
【0060】
縮重バリアント:遺伝暗号の結果として縮重した配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。20種の天然アミノ酸が存在し、その大部分が1つよりも多くのコドンによって指定される。したがって、ポリペプチドのアミノ酸配列が変化しない限りは、全ての縮重ヌクレオチド配列が包含される。
【0061】
エピトープ:抗原性決定因子。抗原性である、すなわち、特定の免疫応答を引き出す特定の化学基またはペプチド配列が分子上に存在する。抗体は、ポリペプチド上の特定の抗原エピトープに特異的に結合する。
【0062】
フレームワーク領域:CDR間に介在するアミノ酸配列。フレームワーク領域は、軽鎖可変および重鎖可変フレームワーク領域を含む。フレームワーク領域は、CDRを抗原結合のために適当な位置方向に保持する機能を果たす。
【0063】
融合タンパク質:2つの異なる(異種)タンパク質の少なくとも一部分を含むタンパク質。
【0064】
有毛細胞白血病(HCL)は、小型Bリンパ球の悪性障害であり、これらの細胞内に細胞質突起が存在することから名付けられた。HCLを有する対象は、一般に、汎血球減少、脾腫および骨髄線維症を示す。末梢血は、通常は少数の有毛細胞を含有する。有毛細胞は、脾臓の赤脾髄で増殖し、したがって、脾腫が一般的である。
【0065】
免疫応答:B細胞、T細胞、または単球などの免疫系の細胞の刺激に対する応答。一実施形態では、応答は、特定の抗原に対して特異的なものである(「抗原特異的応答」)。一実施形態では、免疫応答はCD4+応答またはCD8+応答などのT細胞応答である。別の実施形態では、応答はB細胞応答であり、特異的抗体の産生がもたらされる。
【0066】
単離された:その成分が天然に存在する環境中(例えば、細胞など)の他の生物学的成分、すなわち、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質ならびに細胞小器官から実質的に分離または精製された、核酸、タンパク質(抗体を含む)または細胞小器官などの「単離された」生物学的成分。「単離された」核酸およびタンパク質は、標準の精製方法によって精製された核酸およびタンパク質を含む。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質ならびに化学的に合成された核酸も包含する。
【0067】
標識:抗体またはタンパク質などの別の分子の検出を容易にするためにその分子に直接または間接的にコンジュゲートした検出可能な化合物または組成物。標識の非限定的な具体例として、蛍光タグ、酵素結合(enzymatic linkage)、および放射性同位元素が挙げられる。一例では、「標識された抗体」は、抗体に別の分子が組み入れられていることを指す。例えば、標識は、放射標識されたアミノ酸の組み入れ、または、マークされたアビジン(例えば、光学的方法または比色定量法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含有するストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチドへの結合などの、検出可能なマーカーである。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する種々の方法が当技術分野で公知であり、それらを使用することができる。ポリペプチドに対する標識の例としては、これだけに限定されないが、以下が挙げられる:放射性同位元素または放射性ヌクレオチド(例えば、35S、11C、13N、15O、18F、19F、99mTc、131I、3H、14C、15N、90Y、99Tc、111Inおよび125Iなど)、蛍光標識(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、Cy5、Cy3、ランタニドリン光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合性部位、金属結合性ドメイン、エピトープタグ)、またはガドリニウムキレートなどの磁気剤。一部の実施形態では、潜在的な立体障害を低減するために、標識を種々の長さのスペーサーアームによって結合させる。
【0068】
リンカー:一部の場合では、リンカーは、可変重鎖と可変軽鎖を間接的に結合させる働きをする、抗体結合性断片(例えば、Fv断片)内のペプチドである。scFvのVHドメインとVLドメインをつなぐためのリンカーの1つの例は、(GGGS)4(配列番号6の残基125~139)である。「リンカー」は、抗体などの標的化部分と細胞毒または検出可能な標識などのエフェクター分子を連結する働きをするペプチドも指し得る。「コンジュゲートすること」、「つなぐこと」、「結合すること」または「連結すること」という用語は、2つのポリペプチドを1つの連続したポリペプチド分子にすること、または放射性核種もしくは他の分子をscFvなどのポリペプチドに共有結合により付着させることを指す。特定の文脈では、この用語は、抗体部分などのリガンドとエフェクター分子をつなぐことへの言及を包含する。連結は、化学的手段によるものであっても組換え手段によるものであってもよい。「化学的手段」は、抗体部分とエフェクター分子の、2つの分子間に共有結合が形成されて、1つの分子が形成される反応を指す。
【0069】
哺乳動物:この用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物のどちらも包含する。同様に、「対象」という用語は、ヒトおよび動物対象のどちらも包含する。
【0070】
新形成、悪性腫瘍、がんまたは腫瘍:新生物は、過剰な細胞分裂に起因する組織または細胞の異常な成長である。新生物の成長により、腫瘍が生じ得る。個体における腫瘍の量は、腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる「腫瘍負荷」である。転移しない腫瘍は「良性」と称される。周囲の組織に浸潤し、かつ/または転移し得る腫瘍は「悪性」と称される。
【0071】
非ホジキンリンパ腫(NHL):主にBリンパ球から生じるがんの不均一な群を指す。NHLの亜型は、一般には、それらの攻撃性、または組織学的グレードに基づいて3つの別個のカテゴリーに群分けされる。これらのカテゴリーは、無痛性(低悪性度)、アグレッシブ(中悪性度)および高度アグレッシブ(高悪性度)である。NHLとしては、これだけに限定されないが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、MALTリンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫およびバーキットリンパ腫が挙げられる。
【0072】
作動可能に連結した:第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的に関連して位置している場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列に作動可能に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、そのプロモーターはコード配列に作動可能に連結している。一般に、作動可能に連結したDNA配列は連続しており、また、2つのタンパク質コード領域をつなぐために必要であれば、同じ読み枠内にある。
【0073】
医薬剤:対象または細胞に適当に投与された場合に所望の治療効果または予防効果を誘導することができる化学化合物または組成物。
【0074】
薬学的に許容される担体:有用な薬学的に許容される担体は、従来のものである。Remington's Pharmaceutical Sciences, by E.W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition, 1975には、CD22抗体またはその断片を含むものなどの本明細書に開示される組成物の医薬送達に適した組成物および製剤が記載されている。
【0075】
一般に、担体の性質は、使用される特定の投与形式に依存する。例えば、非経口用製剤は、通常、例えば、水、生理的食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的にかつ生理的に許容される流体をビヒクルとして含む注射液を含む。固形組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態)に関しては、従来の無毒性の固形担体、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、微量の無毒性の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含有し得る。
【0076】
疾患を防止する、処置するまたは好転させること:疾患を「防止すること」とは、疾患の完全な発症を阻害することを指す。「処置すること」は、疾患または病態が発症し始めた後にその徴候または症状を好転させる、例えば、腫瘍負荷を低減するまたは転移の数もしくはサイズを減少させる治療介入を指す。「好転させること」は、がんなどの疾患の徴候または症状の数または重症度の低減を指す。
【0077】
精製された:精製されたという用語は、絶対的な純度を必要とするものではなく、相対語として意図されている。したがって、例えば、精製されたペプチド調製物は、ペプチドまたはタンパク質が、細胞内のその天然の環境中のペプチドまたはタンパク質よりも多く富化されているものである。一実施形態では、調製物は、タンパク質またはペプチドが調製物の総ペプチドまたはタンパク質含有量の少なくとも50%を占めるように、精製されている。実質的な精製とは、他のタンパク質または細胞成分からの精製を意味する。実質的に精製されたタンパク質(例えば、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片)は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または98%純粋である。したがって、1つの非限定的な具体例では、実質的に精製されたタンパク質は、90%が他のタンパク質や細胞成分を含まない。
【0078】
組換え:組換え核酸は、天然に存在しない配列を有する、または2つのそうでなければ分離されていた配列のセグメントの人工的な組合せによって作出された配列を有するものである。この人工的な組合せは、多くの場合、化学合成によって、または核酸の単離されたセグメントを例えば遺伝子工学技法によって人工的に操作することによって実現される。
【0079】
試料(または生体試料):対象から得た、ゲノムDNA、RNA(mRNAを含む)、タンパク質、またはこれらの組合せを含有する生物検体。例としては、これだけに限定されないが、末梢血、組織、細胞、尿、唾液、組織生検材料、穿刺吸引材料、摘出検体、および剖検材料が挙げられる。一例では、試料は、腫瘍組織生検材料などの腫瘍生検材料を含む。
【0080】
配列同一性:アミノ酸配列間または核酸配列間の類似性は、別段配列同一性と称される配列間の類似性に関して表される。配列同一性は、パーセンテージ同一性(または類似性もしくは相同性)に関して測定される頻度が高い。パーセンテージが高いほど、2つの配列の類似性が高い。ポリペプチドまたは核酸分子のホモログまたはバリアントは、標準の方法を使用してアラインメントした場合に、比較的高い程度の配列同一性を有する。
【0081】
比較のために配列をアラインメントする方法は当技術分野で周知である。種々のプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2: 482, 1981;Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443, 1970;Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85: 2444, 1988;Higgins and Sharp, Gene 73: 237, 1988;Higgins and Sharp, CABIOS 5: 151, 1989;Corpet et al., Nucleic Acids Research 16: 10881, 1988;およびPearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85: 2444, 1988に記載されている。Altschul et al., Nature Genet. 6: 119, 1994には、配列アラインメント方法および相同性算出の詳細な考察が示されている。
【0082】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215: 403, 1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと関連して使用するために、National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、MD)を含めたいくつかの供給源から、およびインターネット上で入手可能である。このプログラムを使用した配列同一性の決定の仕方に関する説明は、インターネット上のNCBIウェブサイトで入手可能である。
【0083】
CD22ポリペプチドに特異的に結合する抗体のVLまたはVHのホモログおよびバリアントは、一般には、NCBI Blast 2.0、ギャップ付きblastpをデフォルトパラメーターに設定して使用し、抗体のアミノ酸配列との全長アラインメントにわたって計数して、少なくとも約75%、例えば、少なくとも約80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有することによって特徴付けられる。約30アミノ酸を超えるアミノ酸配列の比較に関しては、Blast 2配列関数にデフォルトのBLOSUM62行列をデフォルトパラメーター(ギャップ存在コスト11、および1残基当たりのギャップコスト1)に設定して使用する。短いペプチド(約30アミノ酸よりも短い)をアラインメントする場合には、Blast 2配列関数を使用し、PAM30行列をデフォルトパラメーター(ギャップ開始ペナルティ9、伸長ギャップペナルティ1)に設定して使用してアラインメントを実施すべきである。参照配列に対してさらに大きな類似性を有するタンパク質をこの方法によって評価すると、同一性のパーセンテージの上昇、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性が示される。配列全体未満を配列同一性について比較した場合、ホモログおよびバリアントは、一般には、10~20アミノ酸の短いウィンドウにわたって少なくとも80%の配列同一性を有し、参照配列に対するそれらの類似性に応じて少なくとも85%または少なくとも90%または95%の配列同一性を有し得る。そのような短いウィンドウにわたって配列同一性を決定するための方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトで入手可能である。これらの配列同一性の範囲は単に手引きとして提示され、提示される範囲外の非常に重要なホモログが得られ得ることが完全に可能であることが当業者には理解されよう。
【0084】
可溶性CD22(sCD22):ヒトB細胞悪性腫瘍を含めたB細胞の表面上に存在する135kDaのリン酸糖タンパク質接着分子であるCD22の膜に結合していない形態。可溶性CD22は、膜に接続していないCD22タンパク質の任意の部分であり得、通常は短縮形態のCD22である。例えば、sCD22は、約100kDaであり得るが、約90kDa以下もしくは約90kDa以上、約80kDa以下もしくは約80kDa以上、約70kDa以下もしくは約70kDa以上、約60kDa以下もしくは約60kDa以上、約50kDa以下もしくは約50kDa以上、約40kDa以下もしくは約40kDa以上、または約30kDa以下もしくは約30kDa以上、あるいはそれよりも小さい可能性がある。CD22の膜貫通ドメインを決定するために標準のソフトウェアが利用可能である。
【0085】
対象:ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含めたヒトおよび動物対象のどちらも含むカテゴリーである、生きている多細胞脊椎動物生物体。一例では、開示されている方法を用いた処置を受ける対象は、B細胞悪性腫瘍を有する。
【0086】
合成:実験室で人工的手段によって作製すること。例えば、合成核酸またはタンパク質(例えば、抗体)を実験室で化学的に合成することができる。
【0087】
治療有効量:処置を受ける対象において所望の効果を実現するために十分な特定の物質の分量。例えば、これは、B細胞悪性腫瘍の増悪を阻害するまたは抑制するために必要な量であり得る。一実施形態では、治療有効量は、腫瘍を排除する、そのサイズを縮小する、またはその転移を防止するために必要な量である。対象に投与する場合、一般に、所望のin vitro効果が実現されることが示されている標的組織濃度(例えば、腫瘍中濃度)が実現される投与量を使用する。
【0088】
ベクター:宿主細胞に導入されると、それにより、形質転換された宿主細胞を生じさせる核酸分子。ベクターは、複製起点などの、それが宿主細胞において複製することを可能にする核酸配列を含み得る。ベクターは、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子および他の遺伝子エレメントも含み得る。
【0089】
III.いくつかの実施形態の概要
B細胞抗原CD22に対して高い親和性を有する親和性成熟させたヒトモノクローナル抗体(m971-L7)が本明細書に開示される。m971-L7のCD22に対する結合親和性は50pM未満であり、これは、親抗体m971のCD22に対する結合親和性(約2nM)と比べて有意に改善されたものである。m971-L7 VHドメイン、VLドメイン、およびscFvのアミノ酸配列を下に提示する。CDR領域(IMGTによって決定される)を下線で示し、CDR1、CDR2およびCDR3の残基を各配列の下に示す。太字の残基は、親抗体m971と比べたアミノ酸置換を示す。scFv配列では、VHドメインとVLドメインの間のリンカー領域をイタリック体の残基によって示す。IMGTによるCDR領域を下に示すが、当業者は、Kabat、ParatomeまたはChothia番号付けスキームなどの代替番号付けスキームを使用してCDR境界を容易に決定することができる。
【0090】
m971-L7 VHドメイン(配列番号4)
【化2】
CDR1=残基26~35;CDR2=残基53~61;およびCDR3=残基100~113
【0091】
m971-L7 VLドメイン(配列番号5)
【化3】
CDR1=残基27~32;CDR2=残基50~52;およびCDR3=残基89~97
【0092】
m971-L7 scFv(配列番号6)
【化4】
HCDR1=残基26~35;HCDR2=残基53~61;HCDR3=残基100~113;リンカー=残基125~139;LCDR1=残基166~171;LCDR2=残基189~191;およびLCDR3=残基228~236
【0093】
細胞表面CD22または可溶性CD22などのCD22に結合する(例えば、特異的に結合する)モノクローナル抗体または抗原結合性断片が本明細書で提供される。一部の実施形態では、CD22に結合するモノクローナル抗体または抗原結合性断片は、抗体m971-L7由来のCDR配列を少なくとも1つ含む。一部の実施形態では、CDR配列は、IMGT、Kabat、ParatomeまたはChothia番号付けスキームを使用して決定される。
【0094】
一部の実施形態では、CD22特異的モノクローナル抗体または抗原結合性断片は、VHドメインおよびVLドメインを含み、抗体のVHドメインは、配列番号4のCDR配列のうちの1つ、2つもしくは3つ全てを含み、かつ/または、抗体のVLドメインは、配列番号5のCDR配列のうちの1つ、2つもしくは3つ全てを含む。一部の例では、VHドメインは、配列番号4の残基26~35、53~61および100~113を含み、かつ/または、VLドメインは、配列番号5の残基27~32、50~52および89~97を含む。
【0095】
特定の例では、VHドメインのアミノ酸配列は、配列番号4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であり(同時に配列番号4の特定のCDR配列を保持する)、VLドメインのアミノ酸配列は、配列番号5と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である(同時に配列番号5の特定のCDR配列を保持する)。非限定的な具体例では、VHドメインのアミノ酸配列は配列番号4を含み、VLドメインのアミノ酸配列は配列番号5を含む。
【0096】
VHドメインおよびVLドメインの両方を含むCD22特異的抗原結合性断片は、例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、単鎖可変断片(scFv)またはジスルフィド安定化可変断片(dsFv)であってよい。一部の実施形態では、抗原結合性断片は、scFvである。一部の例では、scFvのアミノ酸配列は、配列番号6と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である。
【0097】
CD22特異的モノクローナル抗体は、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEなどの任意のアイソタイプのものであってよい。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、IgGである。
【0098】
一部の実施形態では、モノクローナル抗体または抗原結合性断片は、完全ヒト抗体または抗原結合性断片である。一部の実施形態では、モノクローナル抗体または抗原結合性断片は、キメラまたは合成抗体または抗原結合性断片である。
【0099】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体または抗原結合性断片を含むキメラ抗原受容体(CAR)も本明細書で提供される。一部の実施形態では、CARは、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激シグナル伝達部分、シグナル伝達ドメイン、またはこれらの任意の組合せをさらに含む。一部の例では、ヒンジ領域はCD8ヒンジ領域を含み、膜貫通ドメインはCD8膜貫通ドメインを含み、共刺激シグナル伝達部分は4-1BBシグナル伝達部分を含み、かつ/または、シグナル伝達ドメインはCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。CD22特異的CARを発現する細胞がさらに提供される。一部の例では、細胞はCTLである。CARおよびCARを発現するT細胞に関してはセクションIVにさらに記載する。
【0100】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体または抗原結合性断片およびエフェクター分子を含む免疫コンジュゲートも本明細書で提供される。一部の実施形態では、エフェクター分子は、これだけに限定されないが、Pseudomonas外毒素またはそのバリアントなどの毒素である。他の実施形態では、エフェクター分子は、これだけに限定されないが、フルオロフォア、酵素または放射性同位元素などの検出可能な標識である。免疫コンジュゲートに関してはセクションVにさらに記載する。
【0101】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体または抗原結合性断片とコンジュゲートした薬物を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)が本明細書でさらに提供される。一部の実施形態では、薬物は、小分子、例えば、抗微小管剤、抗有糸分裂剤および/または細胞傷害性薬剤である。一例では、薬物は、ブリオスタチン1である。ADCに関してはセクションVIにさらに記載する。
【0102】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体または抗原結合性断片および少なくとも1つの追加のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を含む多重特異性抗体も本明細書で提供される。一部の実施形態では、多重特異性抗体は二重特異性抗体である。他の実施形態では、多重特異性抗体は三重特異性抗体である。一部の実施形態では、少なくとも1つの追加のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、T細胞受容体またはナチュラルキラー(NK)細胞活性化受容体の成分に特異的に結合する。多重特異性抗体に関してはセクションVIIにさらに記載する。
【0103】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体または抗原結合性断片とコンジュゲートしたナノ粒子を含む抗体-ナノ粒子コンジュゲートが本明細書でさらに提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、ポリマーナノ粒子、ナノスフェア、ナノカプセル、リポソーム、デンドリマー、ポリマーミセル、またはニオソームを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、細胞傷害性薬剤を含む。抗体-ナノ粒子コンジュゲート に関してはセクションVIIIにさらに記載する。
【0104】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体または抗原結合性断片および異種タンパク質またはペプチドを含む融合タンパク質も本明細書で提供される。一部の実施形態では、異種タンパク質は、Fcタンパク質である。一部の例では、Fcタンパク質は、マウスFcまたはヒトFcタンパク質である。一部の実施形態では、異種ペプチドは、ヒトに対して内在性ではない(例えば、異種ペプチドは、ペプチドネオエピトープである)。一部の実施形態では、異種ペプチドは、約8~約20アミノ酸の長さである。特定の例では、異種ペプチドは、約14アミノ酸の長さである。
【0105】
薬学的に許容される担体および本明細書に開示されるモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片、CAR、単離された細胞、免疫コンジュゲート、ADC、多重特異性抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、または融合タンパク質を含む組成物がさらに本開示で提供される。
【0106】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体または抗原結合性断片をコードする核酸分子も提供される。本明細書に開示されるCAR、免疫コンジュゲート、多重特異性抗体、または融合タンパク質をコードする核酸分子がさらに提供される。一部の実施形態では、核酸分子は、プロモーターに作動可能に連結している。核酸分子を含むベクターが本明細書でさらに提供される。
【0107】
対象におけるB細胞悪性腫瘍を処置する方法も本明細書で提供される。一部の実施形態では、方法は、対象に、本明細書に開示されるモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片を投与するステップ、または本明細書に開示されるモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片を含むCAR(またはCARを発現するT細胞)、免疫コンジュゲート、ADC、多重特異性抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、融合タンパク質、もしくは組成物を投与するステップを含む。一部の例では、B細胞悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病またはB細胞性前リンパ球性白血病である。一部の実施形態では、方法は、CD22モノクローナル抗体またはそのコンジュゲートの効果を増強する薬剤などの第2の治療剤をさらに投与するステップをさらに含む。一部の例では、第2の治療剤は、ブリオスタチン1を含む。一部の例では、ブリオスタチン1を、モノクローナル抗体、抗原結合性断片、CAR、単離された細胞、免疫コンジュゲート、ADC、多重特異性抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、融合タンパク質または組成物を投与する前またはそれと同時に投与する。具体例では、対象におけるB細胞悪性腫瘍を処置する方法は、対象に、本明細書に開示されるCAR T細胞およびブリオスタチン1を投与するステップを含む。
【0108】
試料におけるCD22の発現を検出する方法がさらに提供される。一部の実施形態では、方法は、試料を本明細書に開示されるモノクローナル抗体または抗原結合性断片と接触させるステップと、抗体の試料への結合を検出するステップとを含む。一部の例では、モノクローナル抗体または抗原結合性断片を直接標識する。他の例では、方法は、モノクローナル抗体または抗原結合性断片を第2の抗体と接触させるステップと、第2の抗体のモノクローナル抗体または抗原結合性断片への結合を検出するステップとをさらに含む。一部の例では、試料を、B細胞悪性腫瘍を有する疑いがある対象から得る。一部の例では、試料は、血液試料である。
【0109】
対象がB細胞悪性腫瘍を有すると診断する方法も提供される。一部の実施形態では、方法は、対象由来の試料を本明細書に開示されるCD22特異的モノクローナル抗体または抗原結合性断片と接触させるステップと、抗体の試料への結合を検出するステップとを含む。抗体の試料への結合が抗体の対照試料への結合と比較して増加することにより、対象がB細胞悪性腫瘍を有すると同定される。一部の例では、試料は血液試料である。
【0110】
対象におけるB細胞悪性腫瘍の診断を確実にする方法がさらに提供される。一部の実施形態では、方法は、B細胞悪性腫瘍の診断を受けた対象由来の試料を本明細書に開示されるCD22特異的モノクローナル抗体または抗原結合性断片と接触させるステップと、抗体の試料への結合を検出するステップとを含む。抗体の試料への結合が抗体の対照試料への結合と比較して増加することにより、対象におけるB細胞悪性腫瘍の診断を確実にする。一部の例では、試料は血液試料である。一部の例では、B細胞悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病またはB細胞性前リンパ球性白血病である。
【0111】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体もしくは抗原結合性断片、CAR、単離された細胞、免疫コンジュゲート、ADC、多重特異性抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、融合タンパク質、または組成物、およびCD22発現を上方調節する薬剤を含むキットがさらに提供される。一部の例では、キットは、抗がん剤をさらに含む。一部の例では、CD22発現を上方調節する薬剤は、ブリオスタチン1を含む、またはそれからなる。
【0112】
IV.キメラ抗原受容体(CAR)
開示されるCD22モノクローナル抗体を使用して、CAR(キメラT細胞受容体、人工T細胞受容体またはキメラ免疫受容体としても公知)を作製することができ、かつ/または、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を、CARを発現するように操作することができる。一般に、CARは、結合性部分、細胞外ヒンジおよびスペーサーエレメント、膜貫通領域ならびにシグナル伝達機能を果たすエンドドメインを含む(Cartellieri et al., J Biomed Biotechnol 2010: 956304, 2010)。多くの場合、結合性部分は、scFvなどのモノクローナル抗体の抗原結合性断片であるか、または単一ドメイン抗体である。CARを生成するために、いくつかの異なるエンドドメインが使用されてきた。例えば、エンドドメインは、CD3ζまたはFcεRIγなどのITAMを有するシグナル伝達鎖からなり得る。一部の例では、エンドドメインは、CD28および/またはCD137などの少なくとも1つの追加の共刺激ドメインの細胞内部分をさらに含む。
【0113】
CARを発現するCTLを使用して、腫瘍細胞などの特定の細胞型を標的とすることができる。したがって、腫瘍抗原特異的モノクローナル抗体を使用して、抗原特異的抗体の抗原結合性断片を含有するCARを発現するCTLを操作し、それにより、操作されたCTLを、腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞(例えば、CD22を発現する腫瘍細胞など)にターゲティングすることができる。操作されたT細胞は、いくつかの型のがんに対する養子療法のために以前に使用されている(例えば、Park et al., Mol Ther 15 (4): 825-833, 2007を参照されたい)。CARを発現するCTLはHLAに制限されず、したがって、標的抗原を発現する腫瘍を有する任意の患者に対して使用することができるので、CARを発現するT細胞を使用することは標準のCTLに基づく免疫療法よりも普遍的である。
【0114】
したがって、CD22抗体または抗原結合性断片を含むCARを発現するT細胞を使用して、CD22を発現する腫瘍を直接標的とすることができる。一部の実施形態では、CARは二重特異性CARである。
【0115】
V.免疫コンジュゲート
開示されるCD22モノクローナル抗体を治療剤またはエフェクター分子とコンジュゲートすることができる。免疫コンジュゲートとしては、これだけに限定されないが、治療剤と抗体が共有結合により連結した分子が挙げられる。治療剤は、特定の標的分子または標的分子を有する細胞を対象とする特定の生物活性を有する薬剤である。治療剤は、例えばビンブラスチン、ダウノマイシンなどの種々の薬物、ネイティブなまたは改変されたPseudomonas外毒素またはジフテリア毒素などの細胞毒、薬理学的組成物を含有する封入剤(例えば、リポソーム)、125I、32P、14C、3Hおよび35Sなどの放射性剤ならびに他の標識、標的部分ならびにリガンドを含み得ることが当業者には理解されよう。
【0116】
特定の治療剤の選択は、特定の標的分子または細胞、および所望の生物学的効果に依存する。したがって、例えば、治療剤は、特定の標的細胞(例えば、腫瘍細胞など)の死をもたらすために使用される細胞毒であり得る。逆に、非致死的な生物学的応答を引き起こすことが望まれる場合には、治療剤を非致死的な薬理学的薬剤または非致死的な薬理学的薬剤を含有するリポソームとコンジュゲートすることができる。
【0117】
当業者に公知の任意の数の手段を使用してエフェクター分子を目的の抗体と連結することができる。共有結合による付着手段および非共有結合による付着手段のどちらも使用することができる。エフェクター分子を抗体に結合させるための手順は、エフェクターの化学構造に応じて変動する。ポリペプチドは、一般には、エフェクター分子の結合をもたらすための抗体の適切な官能基との反応に利用可能な種々の官能基、例えば、カルボン酸(COOH)基、遊離アミン(-NH2)基またはスルフヒドリル(-SH)基などを含有する。あるいは、抗体を誘導体化して、追加の反応性官能基を露出または結合させる。誘導体化は、いくつかの公知のリンカー分子のいずれかの結合を伴い得る。リンカーは、抗体とエフェクター分子をつなぐために使用される任意の分子であってよい。リンカーは、抗体およびエフェクター分子の両方と共有結合を形成することができるものである。適切なリンカーは当業者には周知であり、それらとして、これだけに限定されないが、直鎖もしくは分枝鎖炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、またはペプチドリンカーが挙げられる。抗体およびエフェクター分子がポリペプチドである場合、リンカーを構成物であるアミノ酸とそれらの側基を通じて(例えば、システインとジスルフィド連結を通じて)または末端アミノ酸のアルファ炭素アミノ基およびカルボキシル基を通じてつなぐことができる。
【0118】
一部の状況では、免疫コンジュゲートがその標的部位に到達したら、エフェクター分子が抗体から遊離することが望ましい。したがって、これらの状況では、免疫コンジュゲートは、標的部位の付近で切断可能な連結を含む。抗体からエフェクター分子を放出するためのリンカーの切断は、免疫コンジュゲートが標的細胞の内側もしくは標的部位の付近のいずれかで受ける酵素活性または条件によって促進され得る。
【0119】
種々の放射線診断用化合物、放射線療法用化合物、標識(例えば、酵素または蛍光分子)、薬物、毒素、および他の薬剤を抗体に結合させるための報告されている多数の方法を考慮して、当業者は、所与の薬剤を抗体または他のポリペプチドに結合させるための適切な方法を決定することができる。
【0120】
抗体または抗体断片を誘導体化するかまたは別の分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)と連結することができる。一般に、抗体またはその一部を、誘導体化または標識付けにより標的抗原への結合が不利な影響を受けないように誘導体化する。例えば、抗体を、別の抗体(例えば、二重特異性抗体またはダイアボディ(diabody))、検出剤、医薬剤、および/または、抗体もしくは抗体部分と別の分子(例えば、ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグ)の会合を媒介することができるタンパク質もしくはペプチドなどの1つまたは複数の他の分子実体と機能的に連結することができる(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性の会合または別のやり方によって)。
【0121】
誘導体化された抗体の1つの型は、2つまたはそれよりも多くの抗体(同じ型のもの、または例えば二重特異性抗体を作り出すために異なる型のもの)を架橋結合することによって作製される。適切な架橋剤は、適当なスペーサー(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)によって隔てられた2つの別個に反応する基を有するヘテロ二官能性であるもの、またはホモ二官能性であるもの(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)を含む。そのようなリンカーは、市販されている。
【0122】
抗体を検出可能なマーカー、例えば、ELISA、分光測定、フローサイトメトリー、顕微鏡法または画像診断技法(例えば、コンピュータ断層撮影法(CT)、コンピュータ体軸断層撮影法(CAT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、核磁気共鳴画像法(NMRI)、磁気共鳴断層撮影法(MTR)、超音波、光ファイバー検査、および腹腔鏡下検査)によって検出することができる検出可能なマーカーとコンジュゲートすることができる。検出可能なマーカーの非限定的な具体例として、フルオロフォア、化学発光剤、酵素結合、放射性同位元素および重金属または化合物(例えば、MRIによって検出するための超常磁性酸化鉄ナノ結晶)が挙げられる。例えば、有用な検出可能なマーカーとしては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリン、ランタニドリン光体などを含めた蛍光化合物が挙げられる。ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)および黄色蛍光タンパク質(YFP)などの生物発光マーカーも有用である。抗体または抗原結合性断片を、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどの、検出に有用な酵素とコンジュゲートすることもできる。抗体または抗原結合性断片を検出可能な酵素とコンジュゲートした場合、見分けることができる反応生成物をその酵素が生成するために使用する、追加の試薬を添加することによって検出することができる。例えば、薬剤として西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加により、視覚的に検出可能な着色された反応生成物がもたらされる。抗体または抗原結合性断片をビオチンとコンジュゲートし、アビジンまたはストレプトアビジン結合の間接的測定によって検出することもできる。アビジン自体を酵素または蛍光標識とコンジュゲートすることができることに留意するべきである。
【0123】
抗体をガドリニウムなどの磁気剤で標識することができる。抗体をランタニド(例えば、ユウロピウムおよびジスプロシウム)、およびマンガンで標識することもできる。超常磁性酸化鉄などの常磁性粒子も標識として有用である。抗体を二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合性部位、金属結合性ドメイン、エピトープタグ)で標識することもできる。一部の実施形態では、潜在的な立体障害を低減するために、標識を種々の長さのスペーサーアームによって結合させる。
【0124】
抗体を放射標識されたアミノ酸で標識することもできる。放射標識は、診断目的および治療目的のどちらにも使用することができる。例えば、放射標識を使用して、標的抗原の発現をX線、発光スペクトル、または他の診断技法によって検出することができる。ポリペプチドに対する標識の例としては、これだけに限定されないが、以下の放射性同位元素または放射性ヌクレオチドが挙げられる:3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I。
【0125】
抗体をポリエチレングリコール(PEG)、メチル基もしくはエチル基、または炭水化物基などの化学基で誘導体化することもできる。これらの基は、血清中半減期を増加させるため、または組織結合を増加させるためなど、抗体の生物学的特徴を改善するために有用であり得る。
【0126】
毒素をモノクローナル抗体と共に使用して、免疫毒素を生じさせることができる。例示的な毒素としては、リシン、アブリン、ジフテリア毒素およびそのサブユニット、ならびにボツリヌス毒素A~Fが挙げられる。これらの毒素は商業的な供給源(例えば、Sigma Chemical Company、St.Louis、MO)から容易に入手可能である。意図されている毒素としては、本明細書に記載の毒素のバリアントも挙げられる(例えば、米国特許第5,079,163号および同第4,689,401号を参照されたい)。一実施形態では、毒素は、Pseudomonas外毒素(PE)(米国特許第5,602,095号)である。本明細書で使用される場合、「Pseudomonas外毒素」は、全長のネイティブな(天然に存在する)PEまたは改変されたPEを指す。そのような改変としては、これだけに限定されないが、ドメインIaの排除、ドメインIb、IIおよびIII内の種々のアミノ酸欠失、単一のアミノ酸置換ならびにカルボキシル末端への1つまたは複数の配列の付加を挙げることができる(例えば、Siegall et al., J. Biol. Chem. 264: 14256-14261, 1989を参照されたい)。
【0127】
モノクローナル抗体と共に使用されるPEは、ネイティブな配列、ネイティブな配列の細胞傷害性断片、ならびにネイティブなPEの保存的に改変されたバリアントおよびその細胞傷害性断片を含み得る。PEの細胞傷害性断片は、標的細胞においてその後のタンパク質分解または他のプロセシングを伴ってまたは伴わずに細胞傷害性であるものを含む。PEの細胞傷害性断片としては、PE40、PE38、およびPE35が挙げられる。PEおよびそのバリアントの追加の説明に関しては、例えば、米国特許第4,892,827号;同第5,512,658号;同第5,602,095号;同第5,608,039号;同第5,821,238号;および同第5,854,044号;米国特許出願公開第2015/0099707号;PCT公開第WO99/51643号および同第WO2014/052064号;Pai et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 3358-3362, 1991;Kondo et al., J. Biol. Chem. 263: 9470-9475, 1988;Pastan et al., Biochim. Biophys. Acta 1333: C1-C6, 1997を参照されたい。
【0128】
プロテアーゼ抵抗性PEバリアントおよび免疫原性が低下したPEバリアント、例えば、これだけに限定されないが、PE-LR、PE-6X、PE-8X、PE-LR/6XおよびPE-LR/8Xも本明細書において意図されている(例えば、参照により本明細書に組み込まれるWeldon et al., Blood 113 (16): 3792-3800, 2009;Onda et al., Proc Natl Acad Sci USA 105 (32): 11311-11316, 2008;ならびにPCT公開第WO2007/016150号、同第WO2009/032954号および同第WO2011/032022号を参照されたい)。
【0129】
一部の例では、PEは、PE-LRなどの、リソソーム分解に対して抵抗性のバリアントである(Weldon et al., Blood 113 (16): 3792-3800, 2009;PCT公開第WO2009/032954号)。他の例では、PEは、PE-LR/6Xと称されるバリアントである(PCT公開第WO2011/032022号)。他の例では、PEバリアントは、免疫原性が低下したPEである。さらに他の例では、PEは、PE-LR/8Mと称されるバリアントである(PCT公開第WO2011/032022号)。
【0130】
PEの改変は、PEの細胞傷害性断片(例えば、PE38、PE-LRおよびPE-LR/8M)を含めた、以前に記載されたバリアントのいずれに行うこともできる。改変されたPEは、PEの1つもしくは複数のT細胞エピトープおよび/もしくはB細胞エピトープ内の1つもしくは複数のアミノ酸残基に対するものなどの任意の置換(複数可)、または1つもしくは複数のT細胞および/もしくはB細胞エピトープの欠失を含み得る(例えば、米国特許出願公開第2015/0099707号を参照されたい)。
【0131】
意図されるPEの形態は、PEの脱免疫された形態、例えば、ドメインIIが欠失したバージョン(例えば、PE24)も含む。PEの脱免疫された形態は、例えば、PCT公開第WO2005/052006号、同第WO2007/016150号、同第WO2007/014743号、同第WO2007/031741号、同第WO2009/32954号、同第WO2011/32022号、同第WO2012/154530号、および同第WO2012/170617号に記載されている。
【0132】
腫瘍抗原を表面に発現する細胞に任意の数の異なる診断用または治療用化合物を標的とするために抗体を使用することもできる。したがって、細胞表面抗原を発現する細胞に直接送達される薬物に抗体を直接またはリンカーを介して結合させることができる。これは、治療目的、診断目的または研究目的で行うことができる。治療剤としては、核酸、タンパク質、ペプチド、アミノ酸もしくは誘導体、糖タンパク質、放射性同位元素、脂質、炭水化物、または組換えウイルスなどの化合物が挙げられる。核酸治療用および診断用部分としては、アンチセンス核酸、単鎖または二重鎖DNAとの共有結合による架橋結合のための誘導体化されたオリゴヌクレオチド、および三重鎖形成性オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0133】
あるいは、抗体と連結する分子は、循環系への直接曝露から遮蔽されることが好ましい薬物、核酸(例えば、アンチセンス核酸)、または別の治療用部分などの治療用組成物を含有するナノ粒子、リポソームまたはミセルなどの封入系であってよい。抗体に付着させるリポソームを調製する手段は当業者には周知である(例えば、米国特許第4,957,735号;Connor et al., Pharm. Ther. 28: 341-365, 1985を参照されたい)。
【0134】
抗体を検出可能な標識と共有結合または非共有結合により連結することもできる。そのような使用に適した検出可能な標識としては、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段または化学的手段によって検出可能な任意の組成物が挙げられる。有用な標識としては、磁気ビーズ、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAに一般に使用されるその他の酵素)、およびコロイド金または色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどの比色標識が挙げられる。
【0135】
そのような標識を検出する手段は当業者には周知である。したがって、例えば、放射標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出することができ、蛍光マーカーは、放出された照明を検出するための光検出器を使用して検出することができる。酵素標識は、一般には、酵素に基質を供給し、酵素の基質に対する作用によって生成される反応生成物を検出することによって検出され、比色標識は、着色された標識を単に可視化することによって検出される。
【0136】
VI.抗体-薬物コンジュゲート(ADC)
ADCは、抗原特異的、例えば腫瘍抗原特異的抗体(またはその抗原結合性断片)と、薬物、一般には抗微小管剤または架橋剤などの細胞傷害性薬剤とで構成される化合物である。ADCはがん細胞などの特定の細胞型を特異的に標的とすることができるので、薬物は、標準の化学療法に使用される薬剤よりもはるかに強力になり得る。ADCで現在使用されている最も一般的な細胞傷害性薬物のIC50は従来の化学療法剤よりも100~1000倍強力である。一般的な細胞傷害性薬物としては、メイタンシノイドおよびアウリスタチン(例えば、アウリスタチンEおよびアウリスタチンF)などの抗微小管剤が挙げられる。ADCに使用するための他の細胞毒としては、ピロロベンゾジアゼピン(PDB)が挙げられ、これは、DNAの副溝に共有結合により結合して、鎖間架橋結合を形成する。多くの場合、ADCの抗体と薬物の比は1:2~1:4である(Bander, Clinical Advances in Hematology & Oncology 10 (8; suppl 10): 3-7, 2012)。
【0137】
抗体と薬物は、切断可能なリンカーまたは切断不可能なリンカーによって連結することができる。しかし、一部の例では、重大なオフターゲット毒性が生じる可能性がある細胞傷害性薬物の全身放出を防止するために、循環中で安定なリンカーを有することが望ましい。切断不可能なリンカーにより、ADCが標的細胞に内部移行する前に細胞傷害性薬剤が放出されることが防止される。リソソームに入ったら、リソソームプロテアーゼにより抗体が消化され、その結果、細胞傷害性薬剤が放出される(Bander, Clinical Advances in Hematology & Oncology 10 (8; suppl 10): 3-7, 2012)。
【0138】
薬物とモノクローナル抗体の部位特異的かつ安定なコンジュゲーションのための1つの方法は、グリカン操作によるものである。モノクローナル抗体は、各重鎖のCH2ドメイン内のAsn297残基に保存されたN結合オリゴ糖鎖を1つ有する(Qasba et al., Biotechnol Prog 24: 520-526, 2008)。変異体β1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素(Y289L-Gal-T1;米国特許出願公開第2007/0258986号および同第2006/0084162号、参照により本明細書に組み込まれる)を使用し、2-ケト-ガラクトースを抗体重鎖上の遊離のGlcNAc残基に転移させて、コンジュゲーションのための化学的ハンドルをもたらす。
【0139】
モノクローナル抗体に結合させるオリゴ糖鎖は、末端ガラクトース残基に基づいて3つの群に分類することができる-完全ガラクトシル化(2つのガラクトース残基;IgG-G2)、1つのガラクトース残基(IgG-G1)または完全脱ガラクトシル化(IgG-G0)。モノクローナル抗体をβ1,4-ガラクトシダーゼで処理することにより、抗体がIgG-G0グリコフォームに変換される。変異体β1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素は、2-ケト-ガラクトースまたは2-アジド-ガラクトースをそれらのそれぞれのUDP誘導体からIgG-G1およびIgG-G0グリコフォーム上のGlcNAc残基に転移させることができる。転移された糖の化学的ハンドルにより、種々の分子をモノクローナル抗体とグリカン残基を介してコンジュゲートすることが可能になる(Qasba et al., Biotechnol Prog 24: 520-526, 2008)。
【0140】
一部の実施形態では、ADCは、CD22陽性腫瘍を特異的に標的とするために、薬物とコンジュゲートした本明細書に開示されるCD22特異的抗体で構成される。一部の実施形態では、薬物は小分子である。一部の例では、薬物は、架橋剤、抗微小管剤および/もしくは抗有糸分裂剤、または腫瘍細胞の殺滅を媒介するために適した任意の細胞傷害性薬剤である。例示的な細胞傷害性薬剤としては、これだけに限定されないが、PDB、アウリスタチン、メイタンシノイド、ドラスタチン、カリケアマイシン、ネモルビシンおよびその誘導体、PNU-159682、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、タキサン、トリコテセン、CC1065、カンプトテシン、エリナフィド、コンブレタスタチン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ-ベンゾジアゼピン二量体、ピューロマイシン、ツブリシン、ヘミアステリン、スプライセオスタチン、またはプラジエノライド、ならびに細胞傷害活性を有するこれらの立体異性体、アイソスター、類似体、および誘導体が挙げられる。
【0141】
一部の実施形態では、ADCは、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)を含む。天然物であるアントラマイシン(a PBD)は1965年に最初に報告された(Leimgruber et al., J Am Chem Soc, 87: 5793-5795, 1965;Leimgruber et al., J Am Chem Soc, 87: 5791-5793, 1965)。それ以来、天然に存在する類似体および合成類似体の両方のPBDがいくつか報告されている(Gerratana, Med Res Rev 32 (2): 254-293, 2012;ならびに米国特許第6,884,799号;同第7,049,311号;同第7,067,511号;同第7,265,105号;同第7,511,032号;同第7,528,126号;および同第7,557,099号)。一例として、PDB二量体は、特定のDNA配列を認識し、それに結合し、また、細胞傷害性薬剤として有用であることが示されている。PBD二量体が抗体とコンジュゲートされており、得られたADCは抗がん特性を有することが示されている(例えば、US2010/0203007を参照されたい)。PBD二量体上の例示的な連結部位としては、PBD単位間のつなぎ鎖である5員ピロロ環、およびN10-C11イミン基が挙げられる(WO2009/016516;US2009/304710;US2010/047257;US2009/036431;US2011/0256157;およびWO2011/130598を参照されたい)。
【0142】
一部の実施形態では、ADCは、1つまたは複数のメイタンシノイド分子とコンジュゲートした抗体を含む。メイタンシノイドは、メイタンシンの誘導体であり、チューブリン重合を阻害することによって作用する有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは、東アフリカの低木であるMaytenus serrataから最初に単離された(米国特許第3,896,111号)。その後、ある特定の微生物もメイタンシノールおよびC-3メイタンシノールエステルなどのメイタンシノイドを産生することが発見された(米国特許第4,151,042号)。合成メイタンシノイドは、例えば、米国特許第4,137,230号;同第4,248,870号;同第4,256,746号;同第4,260,608号;同第4,265,814号;同第4,294,757号;同第4,307,016号;同第4,308,268号;同第4,308,269号;同第4,309,428号;同第4,313,946号;同第4,315,929号;同第4,317,821号;同第4,322,348号;同第4,331,598号;同第4,361,650号;同第4,364,866号;同第4,424,219号;同第4,450,254号;同第4,362,663号;および同第4,371,533号において開示されている。
【0143】
一部の実施形態では、ADCは、ドラスタチンもしくはアウリスタチン、またはこれらの類似体もしくは誘導体とコンジュゲートした抗体を含む(米国特許第5,635,483号;同第5,780,588号;同第5,767,237号;および同第6,124,431号を参照されたい)。アウリスタチンは、海洋軟体動物化合物であるドラスタチン-10の誘導体である。ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管ダイナミクス、GTP加水分解、ならびに核および細胞分裂に干渉し(Woyke et al., Antimicrob Agents and Chemother 45 (12): 3580-3584, 2001)、抗がん活性(米国特許第5,663,149号)および抗真菌活性を有する(Pettit et al., Antimicrob Agents Chemother 42: 2961-2965, 1998)ことが示されている。例示的なドラスタチンおよびアウリスタチンとしては、これだけに限定されないが、ドラスタチン10、アウリスタチンE、アウリスタチンF、アウリスタチンEB(AEB)、アウリスタチンEFP(AEFP)、MMAD(モノメチルアウリスタチンDまたはモノメチルドラスタチン10)、MMAF(モノメチルアウリスタチンFまたはN-メチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-フェニルアラニン)、MMAE(モノメチルアウリスタチンEまたはN-メチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-ノルエフェドリン)、5-ベンゾイル吉草酸-AEエステル(AEVB)、および他のアウリスタチンが挙げられる(例えば、米国公開第2013/0129753号を参照されたい)。
【0144】
一部の実施形態では、ADCは、1つまたは複数のカリケアマイシン分子とコンジュゲートした抗体を含む。抗生物質のカリケアマイシンファミリーおよびその類似体は、ピコモル濃度以下の濃度で二本鎖DNA切断を生じさせることができる(Hinman et al., Cancer Res 53: 3336-3342, 1993;Lode et al., Cancer Res 58: 2925-2928, 1998)。カリケアマイシン薬物部分を用いてADCを調製するための典型的な方法は、米国特許第5,712,374号;同第5,714,586号;同第5,739,116号;および同第5,767,285号に記載されている。
【0145】
一部の実施形態では、ADCは、アントラサイクリンを含む。アントラサイクリンは、細胞傷害活性を示す抗生物質化合物である。アントラサイクリンは、薬物分子を細胞のDNAにインターカレーションし、それにより、DNA依存性核酸合成を阻害すること;細胞の巨大分子と反応して細胞損傷を引き起こすフリーラジカルの生成を誘導すること;および/または薬物分子と細胞膜の相互作用を含めたいくつかの異なる機序によって細胞を死滅させるように作動し得ると考えられている。非限定的な例示的なアントラサイクリンとしては、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ネモルビシン、バルルビシンおよびミトキサントロン、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。例えば、PNU-159682は、ネモルビシンの強力な代謝産物(または誘導体)である(Quintieri et al., Clin Cancer Res 11 (4): 1608-1617, 2005)。ネモルビシンは、ドキソルビシンのアミノ配糖体に2-メトキシモルホリノ基を有するドキソルビシンの半合成類似体である(Grandi et al., Cancer Treat Rev 17: 133, 1990;Ripamonti et al., Br J Cancer 65: 703-707, 1992)。
【0146】
一部の実施形態では、ADCは、リンカーをさらに含み得る。一部の例では、リンカーは、1つまたは複数の薬物部分を抗体と連結して、ADCを形成するために使用することができる二官能性または多官能性部分である。一部の実施形態では、ADCは、薬物におよび抗体に共有結合により付着させるための反応性官能性を有するリンカーを使用して調製される。例えば、抗体のシステインチオールをリンカーまたは薬物-リンカー中間体の反応性官能基と結合させて、ADCを作製することができる。
【0147】
一部の例では、リンカーは、抗体に存在する遊離のシステインと反応して、共有結合を形成することができる官能性を有する。そのような反応性官能性を有する例示的なリンカーとしては、マレイミド、ハロアセトアミド、α-ハロアセチル、活性化エステル、例えばスクシンイミドエステル、4-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、無水物、酸塩化物、スルホニルクロリド、イソシアネート、およびイソチオシアネートが挙げられる。
【0148】
一部の例では、リンカーは、抗体に存在する求電子基と反応することができる官能性を有する。そのような求電子基の例としては、これだけに限定されないが、アルデヒド基およびケトンカルボニル基が挙げられる。一部の場合では、リンカーの反応性官能性のヘテロ原子は、抗体の求電子基と反応し、抗体単位と共有結合を形成することができる。非限定的な例としては、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレートおよびアリールヒドラジドが挙げられる。
【0149】
一部の例では、リンカーは、薬物の放出を容易にする切断可能なリンカーである。切断可能なリンカーの例としては、酸に不安定なリンカー(例えば、ヒドラゾンを含む)、プロテアーゼ感受性リンカー(例えば、ペプチダーゼ感受性)、感光性リンカー、およびジスルフィド含有リンカーが挙げられる(Chari et al., Cancer Res 52: 127-131, 1992;米国特許第5,208,020号)。
【0150】
VII.多重特異性抗体
多重特異性抗体は、2つまたはそれよりも多くの異なるモノクローナル抗体の抗原結合性断片で構成される組換えタンパク質である。例えば、二重特異性抗体は、2つの異なるモノクローナル抗体の抗原結合性断片で構成される。したがって、二重特異性抗体は2つの異なる抗原に結合し、三重特異性抗体は3つの異なる抗原に結合する。多重特異性抗体は、例えば、CTL(例えば、CD3などのCTL受容体成分など)またはエフェクターナチュラルキラー(NK)細胞と、少なくとも1つの腫瘍抗原の両方を同時に標的とすることによるがん免疫療法に使用することができる。本明細書に開示される抗原特異的モノクローナル抗体を使用して、抗原(例えば、CD22)とCTLの両方を標的とする、または抗原とNK細胞の両方を標的とする多重特異性(例えば、二重特異性または三重特異性)抗体を生成し、それにより、腫瘍抗原を発現するがんを処置する手段をもたらすことができる。
【0151】
二重特異性T細胞誘導(BiTE)は、二重特異性モノクローナル抗体の一種であり、特定の抗原を標的とする第1の単鎖可変断片(scFv)と、T細胞に結合する、例えばT細胞上のCD3に結合する第2のscFvとの融合物である。本明細書の一部の実施形態では、BiTEの結合性部分の一方(例えば、scFv分子の一方)はCD22に特異的である。
【0152】
二重特異性キラー細胞誘導(BiKE)は、二重特異性モノクローナル抗体の一種であり、特定の抗原を標的とする第1のscFvと、CD16などのNK細胞活性化受容体に結合する第2のscFvとの融合物である。本明細書の一部の実施形態では、BiKEの結合性部分の一方(例えば、scFv分子の一方)はCD22に特異的である。
【0153】
CD22特異的モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を含む多重特異性、例えば三重特異性または二重特異性モノクローナル抗体が本明細書で提供される。一部の実施形態では、多重特異性モノクローナル抗体は、CD3などのT細胞受容体の成分に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片をさらに含む。他の実施形態では、多重特異性モノクローナル抗体は、CD16、Ly49、またはCD94などのNK細胞活性化受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片をさらに含む。さらに他の実施形態では、多重特異性モノクローナル抗体は、腫瘍抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片をさらに含む。一部の例では、抗原結合性断片はscFvである。多重特異性抗体をコードする単離された核酸分子およびベクター、ならびに核酸分子またはベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0154】
VIII.抗体-ナノ粒子コンジュゲート
腫瘍細胞の表面上に発現されたCD22への抗体の結合を介して細胞傷害性薬剤または他の抗がん剤を腫瘍細胞に直接送達するために、開示されるCD22特異的モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を種々の異なる型のナノ粒子とコンジュゲートすることができる。
【0155】
ナノ粒子の使用により、オフターゲットの副作用が低減し、また、薬物の生物学的利用能を改善し、治療効果を実現するために必要な薬物の用量を減少させることもできる。ナノ粒子製剤を、ナノ粒子内に保持させるかまたは封入する薬物に適するように調整することができる。例えば、疎水性分子をナノ粒子のコア内部に組み入れることができ、一方、親水性薬物をポリマーまたは脂質殻に保護された水性コア内に保持させることができる。ナノ粒子の例としては、これだけに限定されないが、ナノスフェア、ナノカプセル、リポソーム、デンドリマー、ポリマーミセル、ニオソーム、およびポリマーナノ粒子が挙げられる(Fay and Scott, Immunotherapy 3 (3): 381-394, 2011)。
【0156】
リポソームは、現在、薬物送達のために使用されるナノ粒子の最も一般的な型の1つである。リポソームとコンジュゲートした抗体は、多くの場合、「免疫リポソーム」と称される。免疫リポソームのリポソーム成分は、一般には、1つまたは複数の同心性リン脂質二重層の脂質小胞である。一部の場合では、リン脂質は、疎水性薬物と親水性薬物の両方の封入が可能になるように、親水性頭部基と2つの疎水性鎖とで構成される。従来のリポソームは網内系(RES)のマクロファージによって急速に循環から除去される。長く循環するリポソームを生成するために、リポソームの組成、サイズおよび電荷をモジュレートすることができる。リポソームの表面を例えば糖脂質またはシアル酸を用いて修飾することもできる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含めることにより、循環半減期が有意に増加する。薬物送達剤として使用するためのリポソームは、免疫リポソームの調製を含め、当技術分野において記載されている(例えば、Paszko and Senge, Curr Med Chem 19 (31) 5239-5277, 2012;Immordino et al., Int J Nanomedicine 1 (3): 297-315, 2006;米国特許出願公開第2011/0268655号;同第2010/00329981号を参照されたい)。
【0157】
ニオソームは、リポソームと同様の構造を有する非イオン界面活性物質に基づく小胞である。ニオソームの膜は、ポリグリセリル-アルキルエーテルまたはN-パルミトイルグルコサミンなどの非イオン界面活性物質のみで構成される。ニオソームは、小さな単層粒子から大きな多重膜粒子までにわたる。これらのナノ粒子は、単分散であり、水溶性であり、化学的に安定であり、毒性が低く、生分解性かつ非免疫原性であり、また、封入された薬物の生物学的利用能を増加させるものである。
【0158】
デンドリマーは、様々な分枝ポリマー複合体を含む。これらのナノ粒子は、水溶性であり、生体適合性であり、また、ヒトへの使用のために十分に非免疫原性である。一般に、デンドリマーは、開始剤コアであって、そのコアにグラフトさせた選択されたポリマー層に囲まれた開始剤コアからなり、分枝高分子複合体を形成している。デンドリマーは、一般には、ポリ(アミドアミン)またはポリ(L-リシン)などのポリマーを使用して作製される。デンドリマーは、DNA、RNA、バイオイメージング造影剤および化学療法剤の送達を含めた、種々の治療への適用および診断への適用に使用されている。
【0159】
ポリマーミセルは、水性環境に露出している親水性ポリマー鎖のコロナで囲まれた疎水性コア中に集合した両親媒性共重合体(親水性単量体単位と疎水性単量体単位の両方からなる)の凝集体で構成される。多くの場合、ポリマーミセルを調製するために使用されるポリマーは、粒子コアを形成するPEG、ポリ(ビニルピロリドン)および疎水性ポリ(L-ラクチド)またはポリ(L-リシン)の親水性ブロックで構成されるヘテロ二官能性共重合体である。ポリマーミセルは、溶解性が乏しい薬物を運搬するために使用することができる。これらのナノ粒子は、ドキソルビシンおよびカンプトテシンを含めたいくつかの抗がん薬を封入するために使用されている。DNA分子またはRNA分子を運搬するためのカチオン性ミセルも開発されている。
【0160】
ポリマーナノ粒子は、ナノスフェアおよびナノカプセルのどちらも含む。ナノスフェアは、ポリマーの固体マトリックスからなり、一方、ナノカプセルは、水性コアを含有する。選択される製剤は、一般には、運搬/封入される治療剤の溶解性に依存し、水溶性が乏しい薬物はナノスフェアにより容易に封入されるが、DNAおよびタンパク質などの水溶性かつ不安定な薬物はナノカプセルにより容易に封入される。これらのナノ粒子を作製するために使用されるポリマーとしては、例えば、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(エステル)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、およびポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)が挙げられる。
【0161】
当技術分野で公知の標準の方法に従って抗体を適切なナノ粒子とコンジュゲートすることができる。例えば、コンジュゲーションは、共有結合性または非共有結合性であり得る。ナノ粒子がリポソームである一部の実施形態では、抗体を、立体的に安定化された長い循環リポソームにPEG鎖を介して結合させる。抗体または抗体断片とリポソームのカップリングはまた、例えばチオールとマレイミド基の反応によるチオエステル結合を伴い得る。架橋剤を使用して、抗体をナノ粒子に結合させるためのスルフヒドリル基を作り出すことができる(Paszko and Senge, Curr Med Chem 19 (31) 5239-5277, 2012)。
【0162】
IX.組成物および使用方法
CD22に結合する(例えば、特異的に結合する)開示される抗体の1つまたは複数を担体中に含む組成物が提供される。CAR(およびCARを含むTリンパ球)、ADC、多重特異性(例えば、二重特異性または三重特異性)抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、免疫リポソームおよび免疫コンジュゲートを含む組成物も提供される。組成物を対象への投与のために単位剤形に調製することができる。投与の量およびタイミングについては、所望の転帰が得られるように、処置を行う臨床医の裁量にある。抗体、CAR、ADC、CARを発現するTリンパ球、多重特異性抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、免疫リポソームまたは免疫コンジュゲートを全身または局所投与用に製剤化することができる。一例では、抗体を静脈内投与などの非経口投与用に製剤化する。
【0163】
投与用の組成物は、抗体、抗原結合性断片、ADC、CAR、CARを発現するTリンパ球、多重特異性(例えば、二重特異性または三重特異性)抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、免疫リポソームおよび/または免疫コンジュゲートの、水性担体などの薬学的に許容される担体中溶液を含み得る。種々の水性担体、例えば、緩衝食塩水などを使用することができる。これらの溶液は滅菌されており、一般に、望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技法によって滅菌することができる。組成物は、必要に応じて、生理的条件に近づけるために、例えば、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの薬学的に許容される補助物質を含有し得る。これらの製剤中の抗体の濃度は広範に変動し得、選択される特定の投与形式および対象の必要性に応じて、主に液量、粘度、体重などに基づいて選択される。
【0164】
静脈内投与用の典型的な医薬組成物は、1日当たり1対象当たり約0.1~10mgの抗体(またはADC、CAR、多重特異性抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、もしくは免疫コンジュゲート)を含む。特に、薬剤を循環またはリンパ系ではなく隔離された部位、例えば、体腔中または器官の内腔中に投与する場合には、1日当たり1対象当たり0.1mgから約100mgまでの投与量を使用することができる。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は当業者には分かるまたは明らかであり、また、Remington's Pharmaceutical Science, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA (1995)などの刊行物においてより詳細に記載されている。
【0165】
抗体(または他の治療用分子)は、凍結乾燥形態で提供され、投与前に滅菌水で再水分補給する場合もあるが、既知濃度の滅菌溶液でも提供される。次いで、抗体溶液を、0.9%塩化ナトリウム、USPを含有する注入バッグに添加し、一部の場合では、体重1kg当たり0.5mgから15mgまでの投与量で投与する。抗体薬物の投与に関して豊富な経験が当技術分野において利用可能であり、米国では1997年にRITUXAN(商標)が承認されてから販売されている。抗体、ADC、CAR、CARを発現するTリンパ球、多重特異性(例えば、二重特異性または三重特異性)抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、免疫リポソームおよび/または免疫コンジュゲートを静脈内プッシュまたはボーラスではなく緩徐な注入によって投与することができる。一例では、高負荷用量を投与し、その後、維持用量をより低いレベルで投与する。例えば、最初の負荷用量4mg/kgをおよそ90分にわたって注入し、その後、前の用量の忍容性が良好であれば、維持用量2mg/kgの30分間にわたる注入を毎週、4~8週間行う。
【0166】
制御放出非経口用製剤を埋め込み物、油性注射、または粒子系として作製することができる。タンパク質送達系に関する広範な概要に関しては、Banga, A.J., Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing, and Delivery Systems, Technomic Publishing Company, Inc., Lancaster, PA (1995)を参照されたい。粒子系としては、例えば、マイクロスフェア、微小粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、およびナノ粒子が挙げられる。マイクロカプセルは、細胞毒または薬物などの治療用タンパク質を中心コアとして含有する。マイクロスフェア中で、治療薬は粒子全体を通して分散する。約1μmよりも小さな粒子、マイクロスフェア、およびマイクロカプセルが、一般に、それぞれナノ粒子、ナノスフェア、およびナノカプセルと称される。毛細血管の直径はおよそ5μmであり、したがって、静脈内にはナノ粒子のみが投与される。微小粒子は、一般には直径およそ100μmであり、皮下または筋肉内に投与される。例えば、Kreuter, J., Colloidal Drug Delivery Systems, J. Kreuter, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, NY, pp. 219-342 (1994);およびTice & Tabibi, Treatise on Controlled Drug Delivery, A. Kydonieus, ed., Marcel Dekker, Inc. New York, NY, pp. 315-339, (1992)を参照されたい。
【0167】
本明細書に開示される抗体に基づく組成物のイオン制御放出のためにポリマーを使用することができる。制御薬物送達に使用するための種々の分解性および非分解性ポリマーマトリックスが当技術分野で公知である(Langer, Accounts Chem. Res. 26: 537-542, 1993)。例えば、ブロック共重合体であるポロクサマー(polaxamer)407は、低温では粘性でさらにまた可動性の液体として存在するが、体温では半固体ゲルを形成する。これは、組換えインターロイキン-2およびウレアーゼの製剤化および持続送達のために有効なビヒクルであることが示されている(Johnston et al., Pharm. Res. 9: 425-434, 1992;およびPec et al., J. Parent. Sci. Tech. 44 (2): 58-65, 1990)。あるいは、タンパク質の制御放出のためのマイクロキャリアとしてヒドロキシアパタイトが使用されてきた(Ijntema et al., Int. J. Pharm.112: 215-224, 1994)。さらに別の態様では、脂質でカプセル化した薬物の制御放出ならびに薬物ターゲティングのためにリポソームを使用する(Betageri et al., Liposome Drug Delivery Systems, Technomic Publishing Co., Inc., Lancaster, PA (1993))。治療用タンパク質の制御送達のための多数の追加の系が公知である(米国特許第5,055,303号;同第5,188,837号;同第4,235,871号;同第4,501,728号;同第4,837,028号;同第4,957,735号;同第5,019,369号;同第5,055,303号;同第5,514,670号;同第5,413,797号;同第5,268,164号;同第5,004,697号;同第4,902,505号;同第5,506,206号;同第5,271,961号;同第5,254,342号および同第5,534,496号を参照されたい)。
【0168】
A.治療方法
本明細書に開示される抗体および組成物を、腫瘍細胞の成長を遅くするもしくは阻害するため、または腫瘍細胞の転移を阻害するために投与することができる。これらの適用では、がん細胞の成長、複製もしくは転移を阻害するため、および/またはがんの徴候もしくは症状を阻害するために十分な量の治療有効量の組成物を対象に投与する。
【0169】
対象に、本明細書に開示されるCD22特異的抗体、免疫コンジュゲート、CAR(例えば、CARを発現するCTL)、ADC、多重特異性(例えば、二重特異性または三重特異性)抗体、抗体-ナノ粒子コンジュゲート、免疫リポソームまたは組成物の治療有効量を投与することにより、対象におけるB細胞悪性腫瘍を処置する方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、ALL、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、MALTリンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病またはB細胞性前リンパ球性白血病である。
【0170】
本明細書に開示されるCD22特異的抗体または組成物の治療有効量は、疾患の重症度、疾患の型、および患者の健康の全般的な状態に依存する。抗体に基づく組成物の治療有効量は、症状(複数可)の自覚的な軽減または臨床医もしくは他の資格を有する観察者によって認められる客観的に同定可能な改善のいずれかがもたらされる量である。
【0171】
本明細書に開示される抗体、抗体コンジュゲートおよび組成物の投与に他の抗がん剤または治療的処置の投与も伴ってもよい。一部の実施形態では、CD22特異的抗体、抗体コンジュゲートまたは組成物を、放射線治療、化学療法、ADC、免疫毒素、CARを発現するT細胞、または免疫チェックポイント標的化療法、例えば、抗細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)抗体、抗OX40抗体、抗グルココルチコイド誘導性 TNF受容体関連(GITR)抗体、抗誘導性共刺激物質(ICOS)抗体、抗リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)抗体、抗T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM3)抗体、抗CD276(B7-H3)抗体、もしくはインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤と組み合わせて投与する。
【0172】
任意の適切な抗がん剤を本明細書に開示される抗体、組成物およびコンジュゲートと組み合わせて投与することができる。例示的な抗がん剤としては、これだけに限定されないが、化学療法剤、例えば、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬、挿入抗生物質、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生存剤(anti-survival agent)、生物学的反応修飾物質、抗ホルモン薬(例えば、抗アンドロゲン薬)および抗血管新生剤が挙げられる。他の抗がん処置としては、放射線療法およびがん細胞を特異的に標的とする他の抗体が挙げられる。
【0173】
アルキル化剤の非限定的な例としては、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタードまたはクロラムブシル)、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、またはダカルバジン)が挙げられる。
【0174】
代謝拮抗薬の非限定的な例としては、葉酸類似体(例えば、メトトレキサート)、ピリミジン類似体(例えば、5-FUまたはシタラビン)、およびメルカプトプリンまたはチオグアニンなどのプリン類似体が挙げられる。
【0175】
天然物の非限定的な例としては、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビンデシン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドまたはテニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、またはマイトマイシンC)、および酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)が挙げられる。
【0176】
種々の薬剤の非限定的な例としては、白金配位錯体(例えば、シスプラチンとしても公知のシス-ジアミン-ジクロロ白金II)、置換尿素(例えば、ヒドロキシウレア)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、および副腎皮質抑制薬(例えば、ミトタンおよびアミノグルテチミド)が挙げられる。
【0177】
ホルモンおよびアンタゴニストの非限定的な例としては、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、および酢酸メゲストロール(magestrol))、エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン)、およびアンドロゲン(例えば、テストステロン(testerone)プロピオン酸エステルおよびフルオキシメステロン)が挙げられる。開示されるCD22抗体(またはその抗原結合性断片)と組み合わせて使用することができる例示的な化学療法薬としては、アドリアマイシン、アルケラン、Ara-C、BiCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン、シスプラチン、シトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-FU、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、タキソール(またはドセタキセルなどの他のタキサン)、ベルバン、ビンクリスチン、VP-16が挙げられる一方で、いくつかのより新しい薬物として、ゲムシタビン(Gemzar)、ハーセプチン、イリノテカン(Camptosar、CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサンSTI-571、タキソテール、トポテカン(Hycamtin)、Xeloda(カペシタビン)、Zevelinおよびカルシトリオールが挙げられる。
【0178】
使用することができる免疫調節薬の非限定的な例としては、AS-101(Wyeth-Ayerst Labs.)、ブロピリミン(Upjohn)、ガンマインターフェロン(Genentech)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;Genetics Institute)、IL-2(CetusまたはHoffman-LaRoche)、ヒト免疫グロブリン(Cutter Biological)、IMREG(New Orleans、La.のImregより)、SK&F 106528、およびTNF(腫瘍壊死因子;Genentech)が挙げられる。
【0179】
一部の実施形態では、対象に、CD22の発現を増加させる薬剤を投与する。薬剤は、本明細書に開示される抗体または抗体コンジュゲートを投与する前に、またはそれと同時に投与することができる。特定の例では、CD22の発現を上方調節する薬剤はブリオスタチン1である。
【0180】
いくつかの型のがんに対する別の一般的な処置は、外科的処置、例えば、がんまたはその一部の外科的切除である。処置の別の例は、放射線治療、例えば、外科的切除前に腫瘍の根絶またはその縮小を補助するために放射性材料またはエネルギー(例えば、外部照射治療)を腫瘍部位に投与することである。
【0181】
B.診断および検出のための方法
CD22タンパク質をin vitroまたはin vivoで検出するための方法が本明細書で提供される。一部の場合では、生体試料におけるCD22発現を検出する。試料は、これだけに限定されないが、血液試料、生検材料由来組織、剖検材料および病理検体を含めた任意の試料であってよい。生体試料は、組織の切片、例えば、組織学的目的で取得した凍結切片も含む。生体試料は、血液、血清、血漿、喀痰、脊髄液または尿などの体液をさらに含む。生体試料は、一般には、ヒトまたは非ヒト霊長類などの哺乳動物から得られる。
【0182】
試料におけるCD22の発現を検出する方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、方法は、試料を本明細書に開示されるCD22特異的モノクローナル抗体または抗原結合性断片と接触させるステップと、抗体の試料への結合を検出するステップとを含む。一部の例では、試料は、血液、細胞または組織試料である。
【0183】
対象由来の試料を本明細書に開示されるCD22特異的モノクローナル抗体と接触させ、抗体の試料への結合を検出することにより、対象がB細胞悪性腫瘍を有するかどうかを決定する方法も本明細書で提供される。抗体の試料への結合が抗体の対照試料への結合と比較して増加することにより、対象がB細胞悪性腫瘍を有すると同定される。
【0184】
別の実施形態では、B細胞悪性腫瘍の診断を受けた対象由来の試料を本明細書に開示されるCD22特異的モノクローナル抗体と接触させ、抗体の試料への結合を検出することにより、対象におけるB細胞悪性腫瘍の診断を確実にする方法が提供される。抗体の試料への結合が抗体の対照試料への結合と比較して増加することにより、対象におけるB細胞悪性腫瘍の診断が確認される。
【0185】
開示されている方法の一部の例では、モノクローナル抗体を直接標識する。他の例では、方法は、モノクローナル抗体に特異的に結合する第2の抗体を試料と接触させるステップと、第2の抗体の結合を検出するステップとをさらに含む。第2の抗体の試料への結合が第2の抗体の対照試料への結合と比較して増加することにより、試料におけるCD22の発現が検出される。当業者には周知の通り、第2の抗体は、第1の抗体の特定の種およびクラスに特異的に結合することができるものが選択される。例えば、第1の抗体がヒトIgGである場合には、二次抗体は抗ヒト-IgGであり得る。抗体に結合することができる他の分子としては、限定することなく、プロテインAおよびプロテインGが挙げられ、これらはどちらも市販されている。
【0186】
抗体または二次抗体に対する適切な標識としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、磁気剤および放射性材料が挙げられる。適切な酵素の非限定的な例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。適切な補欠分子族複合体の非限定的な例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる。適切な蛍光材料の非限定的な例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられる。非限定的な例示的な発光材料はルミノールである。非限定的な例示的な磁気剤はガドリニウムである。非限定的な例示的な放射性標識としては、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。
【0187】
代替の実施形態では、生体試料におけるCD22タンパク質を、検出可能な物質で標識されたCD22タンパク質標準物質およびCD22に特異的に結合する標識されていない抗体を利用した競合イムノアッセイによってアッセイすることができる。このアッセイでは、生体試料、標識されたCD22タンパク質標準物質およびCD22に特異的に結合する抗体を組み合わせ、標識されていない抗体が結合した標識されたCD22タンパク質標準物質の量を決定する。生体試料におけるCD22の量は、CD22に特異的に結合する抗体が結合した標識されたCD22タンパク質標準物質の量に反比例する。
【0188】
本明細書に開示されるイムノアッセイおよび方法を、いくつかの目的のために使用することができる。一実施形態では、CD22に特異的に結合する抗体を使用して、細胞培養下の細胞におけるCD22の産生を検出することができる。別の実施形態では、抗体を使用して、組織試料、または血液試料もしくは血清試料などの生体試料におけるCD22の量を検出することができる。一部の例では、CD22は、細胞表面CD22である。他の例では、CD22は、可溶性である(例えば、細胞培養上清中または血液試料もしくは血清試料などの体液試料中)。
【0189】
一実施形態では、血液試料または組織試料などの生体試料におけるCD22を検出するためのキットが提供される。ポリペプチドを検出するためのキットは、一般には、本明細書に開示されるCD22抗体などの、CD22に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む。さらなる実施形態では、抗体は標識されている(例えば、蛍光標識、放射性標識、または酵素標識で)。
【0190】
一実施形態では、キットは、CD22に結合する抗体を使用する手段を開示する説明用材料を含む。説明用材料は、電子形式で書かれたもの(例えば、コンピューターディスケットまたはコンパクトディスク)であってもよく、視覚的なもの(例えば、ビデオファイル)であってもよい。キットは、キットが設計される特定の適用を容易にするために追加の成分も含み得る。したがって、例えば、キットは、標識を検出する手段(例えば、酵素標識に対する酵素基質、蛍光標識を検出するためのフィルターセット、二次抗体などの適当な二次標識など)をさらに含有し得る。キットは、特定の方法を実施するために常套的に使用されるバッファおよび他の試薬をさらに含み得る。そのようなキットおよび適当な内容物は当業者には周知である。
【0191】
一実施形態では、診断用キットは、イムノアッセイを含む。イムノアッセイの詳細は使用される特定のフォーマットに伴って変動し得るが、生体試料におけるCD22を検出する方法は、一般に、生体試料を、免疫学的に反応性の条件下でCD22と特異的に反応する抗体と接触させるステップを含む。抗体を免疫学的に反応性の条件下で特異的に結合させて、免疫複合体を形成させ、免疫複合体(結合した抗体)の存在を直接または間接的に検出する。
【0192】
本明細書に開示される抗体は、これだけに限定されないが、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降アッセイまたは免疫組織化学的アッセイなどのイムノアッセイに利用することもできる。抗体を蛍光活性化細胞選別(FACS)に使用することもできる。FACSでは、細胞を分離または選別するために、他の精巧な検出レベルの中でも、複数のカラーチャネル、小角および鈍角光散乱検出チャネル、ならびにインピーダンスチャネルを使用する(米国特許第5,061,620号を参照されたい)。
【0193】
以下の実施例は、ある特定の特色および/または実施形態を例示するために提示される。これらの実施例は、本開示を記載されている特定の特色または実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0194】
(実施例1)
材料および方法
本実施例では、実施例2に記載の試験に使用した材料および実験手順を記載する。
【0195】
臨床試験および患者データ
NCIにおけるCD19 CART(NCT02028455)またはCD22 CART(NCT02315612)試験への登録のためにスクリーニングされた患者について、以前に記載されたフローサイトメトリー方法(Jasper et al., Cytometry B Clin Cytom 80 (2): 83-90, 2011)を使用して測定された白血病芽球の表面のCD19抗原およびCD22抗原両方の部位密度を評価した。CD22 CAR試験で処置された患者に関しては登録の時点および再発時にCD22についての段階的な評価も行った。さらに、CD22 CART試験患者4名について経時的にCAR T細胞増加をフローサイトメトリーによって評価した。
【0196】
マウス、細胞株、患者由来異種移植片、および健康なドナーリンパ球
使用したB-ALL細胞株には、Dr. Crystal Mackall、Pediatric Oncology Branch、NCI、NIH、Bethesda、MDから入手したGFPルシフェラーゼ形質導入Nalm6、ならびにDr. Sarah Tasian、Children’s Hospital of Philadelphia、Philadelphia、PAから入手したGFPルシフェラーゼ形質導入SEMおよびGFPルシフェラーゼ形質導入Kopn8が含まれた。CD22neg、CD22lo、およびCD22hiを含めた、予め生成したNalm6-GFP+細胞株のCRISPRバリアントを使用した(Fry et al., Nat Med. 2018; 24 (1): 20-28)。使用したDLBCL細胞株には、ATCCから入手したPfeifferおよびToledoが含まれた。全ての細胞株をMycoplasmaについてLuminescence Mycoplasma Test(Cambrex MycoAlert)によって常套的に試験した。実験は全て細胞株を解凍してから2週間以内に行った。白血病細胞株およびリンパ腫細胞株を、10%熱失活FBS、100U/mLのペニシリン、100U/mLのストレプトマイシン、2mmol/LのL-グルタミン、および10mmol/LのHEPESを補充したRPMI培地中で培養した。ヒト健康ドナー末梢血単核細胞をNIHのDepartment of Transfusion Medicineから治験審査委員会により承認されたプロトコールの下で得、10%FBS中で凍結させ、後で使用するために液体窒素中で保管した。患者由来異種移植片(PDX)をCD22 CART後にCD22-低 白血病が再発した患者から開発した。患者ALL細胞1×106~10×106個をNSGマウス(NOD scidガンマ、NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ;Jackson ImmunoResearch Laboratories)に静脈内注射することによってPDX細胞株を創製した。第2の継代後、細胞株にレンチ-GFP-Lucウイルスを形質導入し、GFPルシフェラーゼを発現する白血病細胞を選別した。
【0197】
部位密度モデルの生成
以前に記載されている通り、CD22を除去するためにCRISPR/Cas9編集によって部位密度モデル細胞株を開発した。具体的には、ガイドRNAをGeCKOヒトsgRNAライブラリーから設計し、次いで、LentiCRISPR v2プラスミド(Addgene Plasmid 52961)にクローニングした。これらのガイドRNAをStbl3細菌中に導入してそれを形質転換した。プラスミドをLentiX HEK293T細胞(Clontech、Mountain View、CA、USA)にパッケージングプラスミドRRE、pMD-G、およびREVと共トランスフェクトした。2日後に、CRISPR上清を回収し、0.45μmの低タンパク質結合膜(Millipore、Billerica、Massachusetts、USA)を通して濾過した。上清をLenti-Xコンセントレーター(Clontech、Mountain View、CA、USA)を使用して濃縮し、PBS中に再懸濁させ、すぐに使用したかまたは-80℃で保管した。細胞表現型をフローサイトメトリーによって評価し、その後、表現型が変更された細胞の選別および単一細胞クローニングを行った。単一細胞クローンを配列決定して、遺伝子型の変更をPlatinum PCR Supermix High Fidelity Kit(Invitrogen)によって確認した(hCD19F Seq:5’TCTCCCTCTCCTGGGTG3’(配列番号7)、hCD19R Seq:5’CTCTCCCTCCCAGATCTCAG3’(配列番号8)、hCD22F Seq:5’AGGAGGGAAGGGGTACTG3’(配列番号9)、およびhCD22R Seq:5’AGCCAACGTTTTGGATCTTCAG3’(配列番号10))。cDNAヒトCD22プラスミドの完全な配列(Origene)を種々の濃度でCD22陰性細胞株に再形質導入して、種々のCD22部位密度を有する細胞株を得た。細胞株に単一細胞クローニングを行い、得られた細胞株には、CD22陰性(CD22neg)細胞株、CD22-低 部位密度(CD22lo)細胞株、およびCD22-高 部位密度(CD22hi)細胞株が含まれた。QuantiBRITE Beads(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)を使用して、CRISPR/Cas9により改変された細胞株の部位密度を確認した。
【0198】
m971の親和性成熟
CD22特異的モノクローナル抗体m971(WO2009/124109、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の親和性を増加させるために、エラープローンPCRを使用してscFv遺伝子配列にランダム点変異を生じさせることにより、酵母ディスプレイm971変異体scFvライブラリーを作り出した。電気穿孔後、得られた変異体ライブラリーをSDCAA培地中、終夜30℃で16時間、次いで、SGCAA培地に変えて30℃でさらに16時間、成長させた。ライブラリーの規模を縮小するため、およびCD22-Fcに結合することができる変異体の集団を増加させるために、CD22-Fcを捕捉用抗原として用いたMACS(免疫磁気カラム、Miltenyi Biotec)によって変異体ライブラリーを選別した。次いで、最も強力な結合体を抗c-Myc-Alexa 488およびCD22-Fc/抗Hu-Fc PEコンジュゲートを用いてプールを二重染色し、c-Myc発現シグナルに対する抗原結合シグナルが最も高い結合体についてゲーティングすることによって選別した。次いで、このプロセスを、酵母でディスプレイされるm971変異体が予測親和性に達するまでさらに2サイクル繰り返した。このプロセスの結果、m971のEC50(CD22-Fcの酵母ディスプレイscFvへの50%結合に対する有効濃度)は0.5μg/mlであったのが、親和性成熟させた変異体プールの親和性は<0.01μg/mlまで増加した。親和性成熟させたプールから単一のクローンを選択し、DNA配列決定および一連の結合アッセイによってさらに特徴付けた。親クローンおよび親和性成熟させた単一のクローン(m971-L7を含む)の結合親和性をBiacoreによって測定した。
【0199】
m971 scFvおよび親和性成熟させたクローンm971-L7のアミノ酸配列
親和性成熟させたクローンm971-L7をさらなる分析のために選択した。m971-L7 scFvの配列決定により、親m971 scFvと比較してアミノ酸の変化が7カ所同定された(
図12を参照されたい)。親m971およびバリアントm971-L7のアミノ酸配列を下に提示する。CDR配列に下線が引かれており、m971-L7配列内の太字の残基はm971と比べたアミノ酸置換を示す。
【0200】
m971 VHドメイン(配列番号1)
【化5】
HCDR1=残基26~35;HCDR2=残基53~61;およびHCDR3=残基100~113
【0201】
m971 VLドメイン(配列番号2)
【化6】
CDR1=残基27~32;CDR2=残基50~52;およびCDR3=残基89~97
【0202】
m971 scFv(配列番号3)
【化7】
HCDR1=残基26~35;HCDR2=残基53~61;HCDR3=残基100~113;リンカー=残基125~139;LCDR1=残基166~171;LCDR2=残基189~191;およびLCDR3=残基228~236。
【0203】
m971-L7 VHドメイン(配列番号4)
【化8】
CDR1=残基26~35;CDR2=残基53~61;およびCDR3=残基100~113
【0204】
m971-L7 VLドメイン(配列番号5)
【化9】
CDR1=残基27~32;CDR2=残基50~52;およびCDR3=残基89~97
【0205】
m971-L7 scFv(配列番号6)
【化10】
HCDR1=残基26~35;HCDR2=残基53~61;HCDR3=残基100~113;リンカー=残基125~139;LCDR1=残基166~171;LCDR2=残基189~191;およびLCDR3=残基228~236。
【0206】
表面プラズモン共鳴を用いたCD22 scFvの親和性の測定
m971 scFvおよびそのバリアントのCD22細胞外ドメイン(ECD)に対する親和性をBIAcore X100機器(GE Healthcare)で測定した。精製したCD22 ECD-Fc融合タンパク質を10mMの酢酸緩衝液、pH5.0中に希釈し、アミンカップリングキットを使用してCM5バイオセンサーチップに1400RUで固定化した。ランニング緩衝液はHBS-EP(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%の界面活性物質P20)であった。ランニング緩衝液中に希釈したscFvを0.32nM、1.6nM、8nM、40nMおよび200nMの濃度で細胞中を流れるようにした。10分間の解離後、10mMの酢酸、pH4.0、0.5MのNaClを用いてチップを再生した。データを1:1結合モデルに当てはめ、BIAevaluationソフトウェアを用いて解離速度定数を推定した。
【0207】
ウエスタンブロット
細胞をRIPA緩衝液で溶解させ、98℃で5分間加熱することによって白血病細胞タンパク質抽出物を調製した。タンパク質をSDS-PAGEゲル上で分離し、ニトロセルロースメンブレンに転写した。メンブレンを、抗体PKC-βIIおよびGAPDH(Abcam)を用いて4℃で終夜免疫ブロットした。次いで、ブロットを適当な西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートした二次抗体と一緒に室温で1時間インキュベートし、ChemiDoc(商標)XRS+System(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を使用して可視化した。
【0208】
免疫蛍光染色
μ-ディッシュ35mm、高ガラスボトムディッシュ(Ibidi Inc、Madison、WI)をポリ-D-リシンで2時間にわたってコーティングし、次いで、1nMのブリオスタチン1またはDMSO対照を用いて24時間にわたって前処理した白血病細胞を5×105個播種した。播種のおよそ12時間後に、細胞を4%パラホルムアルデヒド中に固定し、次いで、0.2%Triton X-100界面活性剤を用いて透過処理した。細胞をCD22-AF488抗体(BioLegend)を用いて1時間にわたって免疫染色し、次いで、DAPIを用いて15分間にわたって染色した。次いで、細胞を63×plan-apochromat(N.A.1.4)油浸対物レンズ、および微分干渉(DIC)イメージング用のT-PMTを備えたZeiss LSM880共焦点顕微鏡を使用してイメージングした。
【0209】
ヒトCD22 CAR T細胞の生成
CD22-CARをコードするレンチウイルスベクターを、293T細胞への一過性トランスフェクションによって作製した。Lipofectamine 3000(Life Technologies)を使用し、293T細胞をパッキングおよびエンベロープベクターをコードするプラスミド(pMDLg/pRRE、pMD.2G、pRSV-Rev、p3000)、ならびにCD22-CARをコードするプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、48時間後および72時間後にトランスフェクトされた細胞からウイルス上清を回収し、3000RPMで10分間にわたって高速回転させて細胞片を除去し、-80℃で凍結させた。次いで、ヒトT細胞を1×106個/mLで解凍し、40IU/mLのIL-2および細胞1個当たり3:1の比のCD3/CD28マイクロビーズ(Life Technologies)を含むAIM-V培地中で48時間にわたって活性化させた。次いで、T細胞を10mLのレンチウイルス上清、5mLのAIM-V、100IUのIL-2、および10μg/mLの硫酸プロタミン中に2×106個/mLで再懸濁させ、その後、6ウェルプレート中、32℃、2000gで2時間にわたって高速回転させた。次いで、プレートを37℃で終夜インキュベートし、プロセスを2日目に繰り返した。第2の終夜インキュベーション後、CD3/CD28マイクロビーズを除去し、T細胞を、100IU/mLのIL-2を含むAIM-V中に0.3×106個/mLで再懸濁させ、さらに48~72時間培養した後、実験に使用した。生成後、T細胞(CARおよび偽の両方)を、5%熱失活FBS、100U/mLのペニシリン、100U/mLのストレプトマイシン、2mMのL-グルタミン、10mMのHEPES、および100IU/mLのIL-2を補充したAIM-V培地中で培養した。
【0210】
Nalm6異種移植片およびPDX in vivo試験
CD22-CARの機能性および抗白血病有効性を6~10週齢のNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウス(Jackson Laboratoryおよび社内飼育)を用いたNalm6異種移植片またはPDXモデルにおいてin vivoで評価した。0日目に、マウスにGFP+ルシフェラーゼ+腫瘍細胞(Nalm6、またはNalm6 CRISPRバリアント、またはPDX)1×106個を静脈内に受けさせた。3日目に、マウスにCD22-CAR形質導入T細胞または偽形質導入T細胞を、示されている分量で静脈内に受けさせた。白血病負荷をモニタリングするために、ルシフェリン-Dをマウスに腹腔内注射し、インビボイメージングシステム(IVIS)技術(Caliper Life Sciences)を使用してイメージングした。Living Image Version 4.1 Software(Caliper Life Science)を使用してマウスについての生物発光シグナルフラックス(発光)を測定した。
【0211】
ブリオスタチン1による処置
全てのin vitro実験および腫瘍/CAR前処理について、静脈内注射前にブリオスタチン1を1ng/mLの濃度で細胞に投与した。対照処置細胞にはジメチルスルホキシド(DMSO)ビヒクル対照を等体積で投与した。共培養または静脈内注射の前に、ブリオスタチン1で処置した細胞およびDMSOで処置した細胞を滅菌PBSで3回洗浄した。全てのin vivo実験について、ブリオスタチン1をPBS中に希釈し、40μg/kg(1μg/マウス25g)の用量で腹腔内注射によって投与した。対照処置群に関しては、等体積のDMSOをPBS中に希釈し、同じ様式で投与した。
【0212】
RNA配列決定およびデータ解析
16のRNA-seq試料をプールし、Illumina TruSeq Poly A RNA Kit v3を使用し、ペアエンド配列決定を用いたNextSeq高出力実行1回で配列決定した。全ての試料が3000万を超えるパスフィルターリードを有し、95%より多い塩基がQ30以上のベースコール品質であった。試料のリードをアダプターおよび低品質塩基に関してTrimmomaticソフトウェアを使用してトリミングした後、STARを使用して参照ゲノムヒト-hg19およびアノテートされた転写物によりアラインメントした。Picardソフトウェアを使用してマッピング品質統計値を算出し、Picard’s MarkDuplicateユーティリティーを使用し、マッピングされたリード内の独特の断片に関してライブラリーの複雑さを測定した。倍率変化および示差的に発現された遺伝子データを生成するため、ならびにデータ可視化のためにPartek Flowインフォマティクスパイプラインを使用した。示差的に発現された遺伝子の遺伝子セット富化解析(GSEA)を以前に記載されている通り、標準のパラメーターを使用して実施した。
【0213】
フローサイトメトリー
細胞表面CARおよびタンパク質発現のFACS分析をLSR II Fortessaフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して実施した。CD22-CARを、22-Fc(R&D Systems)と一緒にインキュベートし、その後、ヒトIgG特異的PE-F(ab)2(Thermo Fisher Scientific)と一緒にインキュベートすることによって検出した。細胞表面タンパク質を検出するために以下のヒトモノクローナル抗体を使用した:CD22-APC、CD22-PE、CD19-Pacific Blue、CD45-PerCP/Cy5.5、CD3-APC/Cy7、PD1-PE/Cy7、LAG3-APC、TIM3-Pacific Blue、CD8-APC、CD8-PE/Cy7、CD45RA-APC、CD45RO-PE/Cy7、CCR7-Pacific Blue、CD4-Pacific Blue、CD69-APC(全てBioLegendより)。QuantiBrite-PEビーズ(BD Biosciences)を使用し、以前に記載された方法(Jasper et al., Cytometry B Clin Cytom 80 (2): 83-90, 2011)を使用してCD22部位密度を決定した。eFluor 506固定可能な生存率色素(Thermo Fisher Scientific)を使用して死細胞を同定した。GFPを発現する白血病細胞をFITCチャネルによって同定した。
【0214】
in vitroサイトカインおよび白血病クリアランスアッセイ
サイトカイン産生アッセイのために、CARまたは偽T細胞を洗浄してIL-2を除去し、RPMI培地中に再懸濁させた。次いで、エフェクター細胞1×105個を腫瘍細胞とエフェクター対標的比1:1で、96ウェルプレート中のRPMI中で共培養し、37℃で20時間インキュベートした。プレートを1200RPMで6分間にわたって高速回転させて細胞をペレットにし、培養上清中のサイトカイン濃度を、IL-2 ELISA(R&D systems)、IFNγ ELISA(R&D systems)、またはグランザイムB ELISA(Thermo Fisher Scientific)キットを使用し、製造者の指示に従って測定した。白血病クリアランスアッセイのために、CARまたは偽T細胞1×105個を腫瘍細胞とエフェクター対標的比1:1で、96ウェルプレート中のRPMI中で共培養した。共培養の開始後、プレートをIncuCyte ZOOM中でインキュベートし、緑色オブジェクトコンフルエンス(green object confluence)(GFP陽性白血病コンフルエンスを示す)を最大40時間にわたって3~6時間毎にイメージングした。
【0215】
統計解析
ELISAの結果の有意性を、スチューデントの対応のないt検定を使用して算出した。骨髄、脾臓、および末梢血におけるCARタンパク質発現変化の有意性を、別段の指定のない限りマン・ホイットニー検定を使用して算出した。
【0216】
(実施例2)
親和性成熟抗CD22モノクローナル抗体
本実施例では、CAR機能性に対する抗原部位密度の影響、および、慢性リンパ性白血病(CLL)においてCD22発現を上方調節することが以前示された治療剤を使用して部位密度を増加させることによってCAR T細胞の有効性を増強する潜在性の評価を記載する(Viola Biberacher et al., Haematologica. 2012; 97 (5): 771-779)。抗原を低密度で発現する白血病に応答したCAR T細胞活性の低下の同定に加えて、本明細書に開示されるデータから、抗原部位密度が低い白血病へのin vivoでの曝露後にCAR T細胞の持続性の短縮およびCAR T細胞表現型の差異も実証される。海洋のコケムシBugula neritinaから最初に単離された天然物であるブリオスタチン1(George et al., J Am Chem Soc. 1982; 104 (24): 6846-6848)により、前駆B細胞ALLおよびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)におけるCD22発現が増加し、抗白血病CAR T細胞応答、メモリー形成、および応答の耐久性が改善される。これは、標的抗原のモジュレーションによってCART療法の有効性を増強するための臨床的に実行可能であり、関連する手法を提供する最初の報告である。
【0217】
前駆B細胞ALLにおけるCD22部位密度の低下はCD22指向性CAR T細胞機能性に影響を及ぼす
CD19およびCD22 CART試験からの患者試料の評価により、原発性ヒト前駆B細胞ALLにおけるベースラインCD22部位密度がCD19部位密度よりも統計学的に低いことが示された(3079対10450分子/細胞、
図1A)。さらに、CD22 CART後に再発する患者では、CD22部位密度がベースラインと比較して有意に低下した(
図7A)。さらに、最初のCD22部位密度はCD22 CART増加の変化とも相関した。部位密度が低い一部の患者では、CAR増加が低減し、その後の白血病を取り除く能力が限定された(
図1C)。CD22部位密度がCAR機能に直接影響を及ぼすかどうかを決定するために、実施例1に記載の通りCRISPR/Cas9遺伝子編集を使用し、様々な量のCD22を発現するNalm6 ALL細胞株を生成した(CD22陰性(CD22
neg)、CD22-低(CD22
lo)およびCD22-高(CD22
hi))(
図7A)(Fry et al., Nat Med. 2018; 24 (1): 20-28)。健康なドナー由来CD22 CAR T細胞によるIFN-γおよびIL-2産生は、発現するCD22抗原部位密度が低いNalm6に応答して徐々に減少した(
図1D)。さらに、in vitroにおいてグランザイムB産生によって評価される細胞傷害性も、CD22部位密度が低いALLへの曝露で低減した(
図1D)。最後に、CAR T細胞機能性におけるドナー変動性を説明するために、CD22 CART試験に登録された患者17名由来のCD22 CAR T細胞を評価し、様々な部位密度を発現する標的細胞に応答したIL-2産生の同様の漸次的移行が観察された(
図1E)。部位密度が低下する細胞株に応答してCD22 CAR T細胞による種々の他のT細胞活性化サイトカイン産生が低減するという一貫した傾向があった(
図8)。
【0218】
部位密度は、in vivoにおけるCD22 CAR T有効性、持続性、およびメモリー表現型に影響を及ぼす
部位密度はin vitroにおけるALLのCAR T細胞媒介性枯渇には影響を及ぼさないが(
図2A)、CD22 CARは、in vivoにおいてCD22
lo ALLを取り除くことができない(
図2B)。さらに、CD22
lo ALLの根絶はCD22 CARTの用量の増加によってレスキューされなかった(
図1E)。CD22 CARTのCD22
lo ALLを取り除く能力の減退は、CARTの初期の増加が不十分であることに関連付けられ(
図1F)、これは、CD22 CARTで処置した患者における観察と一致した(
図1B)。CAR T細胞の存在下でのCD22
lo ALLの増悪の遅延に基づいて、部位密度がCAR T細胞の持続性および/または表現型に影響を及ぼす可能性があることが仮定された。実際に、CAR注射後16日目に、CD22
lo白血病担持マウスの骨髄中のCD22 CAR細胞は、親Nalm6担持マウスと比較して有意に減少した(
図2C、p<0.0001)。
【0219】
次に、最初の増加の間のCARTの活性化に対する部位密度の影響を評価した。CARTにおけるPD1発現は、CD22
lo ALLとin vitroで24時間共培養した後、親Nalm6と比較して30%低減した(
図2E)。8日間のin vitro共培養後、CD22
loに曝露したCARは、ナイーブな細胞(CCR7
+およびCD45RA
+)のパーセンテージがNalm6に曝露したCARと比較して高かった(
図2F)。16日目にPD1発現には差異はなかったが、30日目までに、Nalm6担持群ではCD22
lo白血病群と比較してPD1発現が増加する傾向があった(
図2D)。さらに、CARのCD22
lo白血病細胞への曝露により、Nalm6への曝露と比較して、セントラルメモリー細胞およびエフェクターメモリー細胞が少ない傾向がもたらされた(
図2E)。このin vitroデータとin vivoデータの組合せにより、低抗原密度の存在下では、CARTがメモリー表現型に切り替わることができず、それにより、in vivoにおける応答の耐久性の低減がもたらされる可能性があることが示される。
【0220】
CAR親和性の増加により低部位密度白血病に対するCAR感受性は改善されなかった
CD22 CARの構築に使用されるCD22特異的scFv(m971)は、結合親和性が比較的低い(Haso et al., Blood. 2013; 121 (7): 1165-1174;Xiao et al., MAbs 1: 297-303, 2009)。したがって、抗CD22 scFv(m971-L7)を改変して、低抗原密度での結合が改善された一方で同じ41BB共刺激ドメインを維持する、より親和性が高いCD22 CAR(CD22
V1 CAR;
図13A)を生成した。しかし、このscFv改変では、in vitroにおけるサイトカイン産生または細胞傷害性は増強されなかった(
図9A~9B)。さらに、CD22
V1 CARにより異種移植片におけるCD22
lo白血病細胞のクリアランスは改善されなかった(
図9C)。このin vitroにおける活性の増強の欠如の原因を評価するために、CD22
V1 CARを発現するT細胞を持続性、活性化、疲弊、およびメモリー表現型についてin vitroおよびin vivoの両方で評価した。CD22
lo白血病と共培養した1日後に、CD22
V1 CARは、元のCARと同様のPD1発現を有した(
図13B)。しかし、in vitroにおける共培養の1日目および8日目の両方で、元のCD22 CARと比較して高いパーセンテージのCD22
V1 CARTがナイーブのままであった(
図9D)。CD22
V1 CARTはin vivoにおいてCD22
lo白血病の存在下で16日目に持続し(
図9E)、PD1、TIM3、およびLAG3の発現は元のCARと比較して同様であった(
図13C)。in vitroでの所見と同様に、CD22
loおよび親Nalm6白血病のどちらに応答した場合でも、元のCD22 CARと比較して高いパーセンテージのCD22
V1 CARTがナイーブのままであった(
図9F;
図13E)。最後に、最終分化と一致して、EMRA CART(CCR7
-、CD45RA
+)の集団がCD22
V1 CARにおいて現れ、これは、元のCD22 CARには存在せず、また、CD22
lo白血病を標的とした場合により顕著であった(
図9F;
図13F)。
【0221】
ブリオスタチン1により、ALLおよびDLBCL細胞株におけるCD22抗原発現が増加する
次に、抗原発現における薬物媒介性増加によりCAR活性が改善されるかどうかを評価した。ブリオスタチン1は、慢性リンパ性白血病(CLL)におけるCD22発現を増加させることが示されている(Viola Biberacher et al., Haematologica. 2012; 97 (5): 771-779)。したがって、ブリオスタチン1のCD22発現に対する影響を2種の前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株および2種のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株において試験した。4種全ての細胞株でブリオスタチン1に曝露した際のCD22発現の有意な増加が実証された(
図3A)。ブリオスタチン1によりALLにおけるCD19発現は変更されなかったが、DLBCLでは若干の増加が認められた(
図3A)。CD22発現の増加はブリオスタチン1の除去後1週間持続した(
図3B)。さらに、腹腔内に(I.P.)投与した単回用量のブリオスタチン1により、1週間の時点でNalm6におけるCD22 MFIが増加し、その後、薬物投与の12日後にベースライン発現に戻った(
図3C)。最後に、ブリオスタチン1によりCD22-低 再発患者由来ALL異種移植片においてCD22が上方調節されることが確認された(
図3D)。
【0222】
ブリオスタチン1媒介性CD22上方調節は、PKC阻害によって媒介されるCD22遺伝子発現の増加以外の機序によって起こる可能性がある
ブリオスタチン1に関して、CD22上方調節の状況におけるCLLに対して影響を及ぼすことが以前に記載されている通り(Viola Biberacher et al., Haematologica. 2012; 97 (5): 771-779)、ブリオスタチン1に曝露するとALLにおけるPKCβIIタンパク質レベルが低下し(
図10)、これにより、同様のPKC駆動機序が示される。しかし、PKCβII阻害剤であるエンザスタウリンによっても広範なPKC阻害剤であるスタウロスポリンによってもCD22を上方調節することができなかった(
図10D)。CD22上方調節の潜在的な機序をさらに調査するために、ブリオスタチン1で処理した、および処理していないALL細胞株KOPN8(MLL-MLLT1融合がん遺伝子)およびSEM(MLL-AFF1融合がん遺伝子)に対してRNA-配列解析(RNAseq)を行い、どちらもブリオスタチン1曝露でCD22の頑強な上方調節を示した(
図10E)。2つの細胞株の間でブリオスタチン1に対する転写応答の大きさに顕著な差異があった(
図4A)。KOPN8では、24時間の時点で2倍を超える変化を有する遺伝子が1524種実証された。SEMではブリオスタチン1への曝露で2倍の変化が実証された遺伝子は1種だけであったが、CD82、FLT1、FGFR1、およびTLR10などのいくつかの細胞表面タンパク質を含めた共通の遺伝子セットが両方の細胞株において上方調節された。いずれの細胞株もブリオスタチン1による処理の経過にわたってCD22 mRNAには変化を示さなかった(
図4B)。KOPN8およびGSEAにおいて対照に対して発現が2倍になった756種の遺伝子を使用し、原形質膜の内因性成分として公知の遺伝子の有意な富化が見いだされた。この観察およびCD22 RNA発現が変更されなかったことに基づいて、ブリオスタチン1は、膜結合タンパク質の輸送を変更することによってCD22を増加させる可能性があることが仮定された。これと一致して、ブリオスタチン1で処理した細胞では、曝露の24時間後にDMSO対照と比較してCD22の空腔化が少ないことが実証された(
図10C)。
【0223】
in vitroにおけるCD22 CARTの機能性は白血病細胞のブリオスタチン1によるプライミング後に増強されるが、CD19 CARTの機能性は増強されない
追加の試験により、白血病におけるCD22部位密度のブリオスタチン1媒介性増加によりCD22 CAR T細胞の機能性を増強することができるかどうかを決定しようとした。B-ALLおよびDLBCLのどちらにおいても、ブリオスタチン1による前処理により、CD22 CARによるIL-2、IFN-γ、およびグランザイムBの産生が有意に増強された(
図4C~4D)。さらに、グランザイムBによって測定されるin vitro細胞傷害性が増強された(
図4E)。逆に、CD19 CARは、白血病をブリオスタチン1に曝露させてもグランザイムB産生の改善が示されなかった(
図14A)。しかし、CD19 CARのin vivoにおける有効性はブリオスタチン1により低下しなかった(
図14B)。
【0224】
CARTのブリオスタチン1への曝露により、サイトカイン産生が減弱するが、in vitro細胞傷害性は影響を受けない
ブリオスタチン1は、T細胞受容体シグナル伝達経路において重要な役割を果たすPKCアイソフォームのモジュレーターとして特徴付けられている(Tuttle et al., J Surg Res. 1992; 52 (6): 543-548;Drexler et al., Blood. 1989; 74 (5): 1747-1757)。ブリオスタチン1をCAR療法と併せて利用することを臨床的な目標として、ブリオスタチン1による処理が、白血病部位密度に対するその効果とは独立してCD22 CAR機能性に直接影響を及ぼすかどうかを評価した。ブリオスタチン1で前処理したCD22 CARは、ALLまたはDLBCL細胞株と共培養した場合のIFN-γの産生レベルがDMSO対照で前処理したCD22 CARと比較して減弱したが、グランザイムBの産生レベルは有意に上昇した(
図5A~5B)。CD22 CARによるサイトカインおよびグランザイムB産生に対するブリオスタチン1の影響を決定するために、ブリオスタチン1に曝露したCAR T細胞の細胞傷害性を評価し、in vitroにおける白血病クリアランスのカイネティクスに変化は見いだされなかった(
図5C)。in vivoにおけるCAR活性に対するブリオスタチン1の影響を、CD22
lo白血病細胞を使用して標的抗原モジュレーションの非存在下で評価し、それにより、ブリオスタチン1曝露後のCD22発現の増加は実証されなかった(
図11)。
図5Dに示されている通り、ブリオスタチン1は、in vivoにおいてCD22
lo白血病の増悪を減弱させるCD22-CARの能力に影響を及ぼさなかった。まとめると、これらの所見から、CD22 CARをブリオスタチン1に曝露することにより、サイトカインおよびグランザイムB分泌が変化するが、全体的なCAR機能性は負の影響を受けないことが示される。
【0225】
ブリオスタチン1は、CAR T細胞の持続性、メモリー表現型に影響を及ぼし、白血病応答の耐久性を改善する
CD22部位密度のブリオスタチン1媒介性増加のin vivoにおけるCAR持続性および機能性に対する影響を、サイトカイン応答を最大にするために十分なCD22を発現せず(
図2G)、ブリオスタチン1に応答してCD22発現をモジュレートしない(
図3)親Nalm6を使用して評価した。CART注入前の「プライミング療法」としてのブリオスタチン1の投与を試験した。マウスに、ブリオスタチン1で前処理した腫瘍細胞を注射し、その後、CARTを注射した。CD22 CAR注射の7日後に、T細胞表現型を評価した。ブリオスタチン1で前処理したNalm6を受けたマウスの脾臓では、CD8
+CART集団内でセントラルメモリー(CCR7
+、CD45RA
-)細胞およびエフェクターメモリー(CCR7
-、CD45RA
-)細胞の有意な累積的富化が見いだされ、また、ナイーブな細胞がより少なかった(
図6A)。ブリオスタチン1に曝露すると、CARTは、TIM3またはLAG3の増加を伴わない安定なPD1発現によって証明される通り、疲弊のエビデンスを伴わずに同様の活性化を示した(
図14C)。30日の時点で、CART注射後にブリオスタチン1で処置したマウスでは、骨髄においてCD22 CARTがわずかに増加した(
図6B)。次いで、治癒下の用量のCD22 CART注入後2週間にわたるブリオスタチン1投与をNalm6(
図6C;
図15A)およびSEM(
図6C;
図15B)において試験し、これにより、ブリオスタチン1により、寛解の耐久性が改善され、ブリオスタチン1の停止を超えて延長されることが実証された。最後に、CD22 CART注入後のブリオスタチン1投与の影響をCD22-低 再発PDXモデルにおいて試験し、これにより、白血病を取り除く能力が改善されることが実証された(
図6D;
図15C)。集合的に、これらの結果から、ブリオスタチン1が、CAR T細胞注入前に抗原発現を増加させるためのプライミング療法として、およびCD22 CAR抵抗性白血病の出現後のレスキューとしてのどちらでも有効であることが実証される。
【0226】
治療への適用
再発したまたは難治性前駆B細胞ALL患者は、CAR T細胞療法に関して潜在的に治癒的な治療選択肢を有するが、これらの患者の一部は、標的抗原のモジュレーションにより再発した。さらに、最近の試験により、低抗原部位密度の状況でのCAR活性の限定が同定されている(Walker et al., Mol Ther. 2017; 25 (9): 2189-2201;Chmielewski et al., Gene Ther. 2011; 18 (1): 62-72;Yoshida et al., Clin Transl Immunology. 2016; 5 (12): e116;Watanabe et al., J Immunol. 2015; 194 (3): 911-920;Weijtens et al., Gene Ther. 2000; 7 (1): 35-42;Turatti et al., J Immunother. 2007; 30 (7): 684-693;James et al., J Immunol. 2008; 180 (10): 7028-7038;Anurathapan et al., Mol Ther. 2014; 22 (3): 623-633;Caruso et al., Cancer Res. 2015; 75 (17): 3505-3518;Hombach et al., Mol Ther. 2016; 24 (8): 1423-1434;Hegde et al., J Clin Invest. 2016; 126 (8): 3036-3052)。臨床経験から、CAR標的化療法からのエスケープ、ならびに潜在的にCAR-T細胞の増加および機能性の低減の機序として低抗原密度が支持される(Fry et al., Nat Med. 2018; 24 (1): 20-28)。本明細書に開示される試験では、特にCARの機能および持続性に対する低部位密度の影響に焦点を当て、低部位密度の状況におけるCARの不首尾の特徴を評価する。さらに、本開示は、そのような限定を克服するための治療的抗原モジュレーションの使用を支持する最初の前臨床的エビデンスを提供する。データから2つの重要な所見が確立された:(A)腫瘍細胞における低部位密度により、CAR T細胞の持続性および表現型に有意な変化がもたらされ、(B)部位密度の増加によりCAR T細胞機能性が改善される。
【0227】
前駆B細胞ALLの患者をCD22 CARTを使用して処置することには、多くの場合、CD22 CART細胞に応答する患者の高い割合で低CD22を発現する白血病の進行または再発が伴うことが以前に実証されている。さらに、免疫療法圧力に曝露する前であっても前駆B細胞ALLのベースラインCD22発現はCD19発現よりも有意に低い。本開示によりサイトカイン産生および細胞傷害性に対する部位密度の特異的影響が実証され、これは以前の試験と一致する(Walker et al., Mol Ther. 2017; 25 (9): 2189-2201;Watanabe et al., J Immunol. 2015; 194 (3): 911-920;Hombach et al., Mol Ther. 2016; 24 (8): 1423-1434;Hegde et al., J Clin Invest. 2016; 126 (8): 3036-3052)。この部位密度と関連したCAR T細胞効力の分析はin vivo系に拡張され、それにより、増悪は遅延するが、抗原を低部位密度で発現する白血病を取り除くことはできないことが実証される。CAR T細胞の持続性および表現型に対する低部位密度の影響も定義される。活性化マーカーに有意な変更はなかったが、部位密度がより高い白血病では、持続しているCAR T細胞の数の増加ならびにより高い割合のセントラルおよびエフェクターメモリーCD8+CAR T細胞がもたらされた。これは、部位密度がCAR T細胞の短期活性に影響を及ぼすだけでなく、より長期間の持続性およびメモリー発生にも影響を及ぼし、CAR Tにより誘導される寛解の耐久性に対して密接な関係を有するという最初の明白なエビデンスである。
【0228】
抗原の低部位密度によって課される細胞療法の限定を克服するための戦略を、CD22 CARの親和性を増強して低部位密度に対するCARの感受性を改善することによるものを含め、評価した。結合親和性は抗体に基づく治療薬(therapeutics)にとって重要であるが、CD22 CARの親和性の増強では低部位密度白血病に対する応答、またはそのクリアランスが増強されなかった。しかし、他のCAR構築物および対応する標的とされる抗原については当てはまらない場合がある(Turatti et al., J Immunother. 2007; 30 (7): 684-693;Lynn et al., Leukemia. 2016; 30 (6): 1355-1364)。第2に、ALLおよびDLBCL細胞株におけるCD22発現を上方調節し、それにより、CARTによるサイトカイン産生およびメモリー表現型を改善する薬物としてブリオスタチン1が同定された。ブリオスタチン1は、PKCのモジュレーターとして、曝露パラメーターに基づいてPKCレベルに多様な影響を有する(Isakov et al., J Immunol. 1993; 150 (4): 1195-1204;Lee et al., Am J Physiol. 1996; 271 (1 Pt 1): C304-311;Grant, Front Biosci. 1997; 2: d242-252;Grant et al., Cancer Res. 1992; 52 (22): 6270-6278;Jarvis et al., Biochem Pharmacol. 1994; 47 (5): 839-852)。CLLでは、CD22のブリオスタチン1媒介性上方調節はPKCの低減と相関した(Viola Biberacher et al., Haematologica. 2012; 97 (5): 771-779)。ブリオスタチン1の作用機序に関する最初の評価により、PKC-βIIレベルの低下が観察されたが、PKCモジュレーションがCD22調節の唯一の原因ではない可能性があることが見いだされた。具体的には、ブリオスタチン1で処理したALL細胞株においてCD22 mRNAレベルに有意な変更は認められないこと、および多数の細胞表面分子が上方調節されることが見いだされた。
【0229】
CAR機能性はブリオスタチン1によって媒介されるCD22発現の増加によって有意に改善されること、およびブリオスタチン1がT細胞機能への影響に以前に関係付けられていることから(Tuttle et al., J Surg Res. 1992; 52 (6): 543-548;Drexler et al., Blood. 1989; 74 (5): 1747-1757)、標的抗原モジュレーションとは独立した、T細胞機能に対するブリオスタチン1の直接の影響を分析した。ブリオスタチン1によりIFN-γ産生は減弱しなかったが、グランザイムB産生も増加し、in vitroでもin vivoでも細胞傷害性に対する負の影響はなかった。したがって、CARTおよび白血病に対するブリオスタチン1の正味の影響により、サイトカイン産生および細胞傷害性の全体的な強化、ならびに応答の耐久性の改善がもたらされた。これらの所見は、ブリオスタチン1をCART療法と組み合わせることに関する確証をもたらすものである。CART療法の前に腫瘍をプライムするため、またはCART後に抗原発現の低減に起因して再発した患者をレスキューするために、ブリオスタチン1を使用することができる。
【0230】
(実施例3)
対象におけるB細胞悪性腫瘍を検出するため、または対象におけるB細胞悪性腫瘍の診断を確実にするためのCD22特異的モノクローナル抗体
本実施例では、対象におけるB細胞悪性腫瘍を検出するための、CD22特異的ヒトモノクローナル抗体の例示的な使用を記載する。本実施例では、対象におけるB細胞悪性腫瘍の診断を確実にするための、これらの抗体の使用をさらに記載する。
【0231】
B細胞悪性腫瘍を有する対象では、健康な対象と比べて可溶性CD22のレベルが上昇する。したがって、対象におけるB細胞悪性腫瘍を検出するまたはB細胞悪性腫瘍の診断を確実にするために、B細胞悪性腫瘍の診断を受けたまたはそれを有する疑いがある患者におけるsCD22の検出および定量を使用することができる。B細胞悪性腫瘍の診断を受けたまたはそれを有する疑いがある患者から血液試料を得る。B細胞悪性腫瘍を有さない患者から取得した血液試料を対照として使用することができる。
【0232】
本実施例では、サンドイッチELISAを実施して、血液試料中のsCD22を検出する。ヒトモノクローナル抗CD22抗体(例えば、m971-L7)をマルチウェル平底プレート(例えば、96ウェルプレートまたは364ウェルプレート)の表面に、そのプレートに抗体をコーティングし、室温で2時間インキュベートすることによって固定化する。プレートを0.02%Tween PBS(T-PBS)で2回洗浄した後、プレートを1%ウシ血清アルブミン(BSA)-PBSでブロッキングして、非特異的結合を排除し、次いで、T-PBSで2回洗浄する。患者試料および対照試料をウェルに添加し、およそ15~20時間インキュベートする。T-PBSで3回洗浄した後、標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP))で直接標識された二次抗CD22抗体をプレートに添加する。T-PBSでさらに3回洗浄した後、10,000倍希釈したAvidine-HRP溶液(Biosource)100μlを添加し、室温で1時間インキュベートする。T-PBSでさらに3回洗浄した後、TMB溶液(Pierce)100μlおよびH2O2 100μlを添加し(例えば、HRPが標識の場合)、5分間インキュベートし、その後、2NのH2SO4 100μlを添加して発色を停止させる(例えば、HRPが標識の場合)。450nm(または使用する標識に応じて他の波長)における光学濃度(OD)値を測定することによってsCD22のレベルを決定する。
【0233】
患者試料におけるsCD22のレベルが対照試料と比べて上昇していることにより、その対象がB細胞悪性腫瘍を有することが示される。したがって、対象におけるB細胞悪性腫瘍を検出するため、または対象におけるB細胞悪性腫瘍の診断を確実にするために、sCD22の検出を使用することができる。
【0234】
本開示の原理を適用することができる多くの可能性のある実施形態を考慮して、例示されている実施形態は単に本発明の例であり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことが理解されるべきであ。そうではなく、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、これらの特許請求の範囲の範囲および主旨に入る全てが本発明者らの発明であるものと主張する。
【配列表】