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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】導電性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 167/00 20060101AFI20240325BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240325BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C09J167/00
C09J9/02
C09J11/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021503413
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048767
(87)【国際公開番号】W WO2020179179
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2019038664
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 章郎
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特許第6329314(JP,B1)
【文献】特開2008-147113(JP,A)
【文献】特開2017-117627(JP,A)
【文献】特開2007-242397(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204218(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/195400(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/151188(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が90℃以上140℃以下の結晶性熱可塑性樹脂(A)と、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)、及びウレタン変性ポリエステル樹脂(C)とを少なくとも含有する樹脂成分100質量部に対して、デンドライト形状の導電性フィラーを50~300質量部含有し、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が結晶性ポリエステルである、導電性接着剤組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)のガラス転移点が10~30℃である、請求項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項3】
前記ウレタン変性ポリエステル樹脂(C)のガラス転移点が80~120℃である、請求項1又は2に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項4】
樹脂成分100質量部中、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の含有量が50~70質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項5】
樹脂成分100質量部中、前記カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)の含有量が15~35質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項6】
樹脂成分100質量部中、前記ウレタン変性ポリエステル樹脂(C)の含有量が15~35質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品と基板とを電気的に接続する手段として、導電性フィラーが分散した導電性接着剤組成物の使用が挙げられる。このような導電性接着剤組成物としては、例えば特許文献1には、機械的強度、耐熱性に優れ、かつ、導電性や帯電防止性などの電気的性質にも優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的として、非晶性熱可塑性樹脂(成分A)、結晶性熱可塑性樹脂(成分B)、導電性カーボンブラック(成分C)、及び成分Cの導電性カーボンブラックよりも比表面積の大きい導電性カーボンブラック又は中空炭素フィブリルからなる熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
【0003】
しかし、用途によっては等方性の導電が得られる導電性接着剤組成物が求められているところ、特許文献1に記載の熱可塑性樹脂組成物の導電は異方性であり、等方性にするために導電性フィラーを高配合すると、接着性が損なわれるおそれがあった。
【0004】
また、近年、電子部品などの熱に弱い部材の接続、例えば圧電フィルムの電極などに用いられる導電性接着剤組成物は、低温、特に、120℃以下の温度での加工が可能なものが要求されている。このような課題に対して、特許文献2には、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とを異方性導電接続させる異方性導電フィルムであって、膜形成樹脂と、硬化性樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを含有し、上記膜形成樹脂が、結晶性樹脂と、非晶性樹脂とを含有する異方性導電フィルムが開示されている。また、特許文献3には、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とを異方性導電接続させる異方性導電フィルムであって、結晶性樹脂と、非晶性樹脂と、導電性粒子とを含有し、上記結晶性樹脂が、上記非晶性樹脂が有する樹脂を特徴づける結合と同じ、樹脂を特徴づける結合を有する結晶性樹脂を含有することを特徴とする異方性導電フィルムが開示されている。しかしながら、いずれも異方性の導電性フィルムである。
【0005】
また、特許文献4には、(a)融点が40℃~80℃である結晶性ポリエステル樹脂と、(b)ラジカル重合性化合物と、(c)ラジカル重合開始剤と、を含む接着剤組成物が開示され、導電性又は異方導電性を付与するために、(f)導電性粒子を更に含むことができる旨開示されている。
【0006】
しかしながら、上述の通り、等方性の導電を得るためには、導電性フィラーを高配合する必要があり、接着性と等方性の導電との両立についてさらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-96317号公報
【文献】特開2014-102943号公報
【文献】特開2014-60025号公報
【文献】国際公開第2009/038190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、120℃以下の低温での加工が可能であり、等方性の導電と優れた接着性を兼ね備えた導電性接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の導電性接着剤組成物は、上記課題を解決するために、融点が90℃以上の結晶性熱可塑性樹脂(A)、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)、及びウレタン変性ポリエステル樹脂(C)を少なくとも含有する樹脂成分100質量部に対して、デンドライト形状の導電性フィラーを50~300質量部含有するものとする。
【0010】
上記結晶性熱可塑性樹脂(A)は結晶性ポリエステル樹脂であるものとすることができる。
【0011】
上記カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)のガラス転移点は10~30℃であるものとすることができる。
【0012】
上記ウレタン変性ポリエステル樹脂(C)のガラス転移点は80~120℃であるものとすることができる。
【0013】
樹脂成分100質量部中、上記結晶性熱可塑性樹脂(A)の含有量は50~70質量部であるものとすることができる。
【0014】
樹脂成分100質量部中、上記カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)の含有量は15~35質量部であるものとすることができる。
【0015】
樹脂成分100質量部中、上記ウレタン変性ポリエステル樹脂(C)の含有量は15~35質量部であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る導電性接着剤組成物によれば、120℃以下の低温での加工が可能であり、等方性の導電と優れた接着性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】85℃クリープ強度および引張りせん断接着強度の測定に用いたサンプルを示す模式断面図である。
図2】90°ピール強度の測定に用いたサンプルを示す模式断面図である。
図3】表面抵抗率Rを測定する方法を説明するための模式断面図である。
図4】接続抵抗率Rを測定する方法を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、より具体的に説明する。
【0019】
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、融点が90℃以上の結晶性熱可塑性樹脂(A)、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)、及びウレタン変性ポリエステル樹脂(C)を少なくとも含有する樹脂成分100質量部に対して、デンドライト形状の導電性フィラーを50~300質量部含有するものとする。ここで、結晶性樹脂とは、固化したときに結晶部分を有する高分子物質であり、そのような結晶性樹脂は、通常、示差走査熱量測定(以下、「DSC」ともいう。)の昇温過程において得られる示差走査熱量測定曲線が、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを示す。結晶性樹脂の融点(Tm)とは、上記吸熱ピークにおける、ピークトップの温度をいうものとする。なお、本明細書において、示差走査熱量測定は、示差走査熱量計(例えば、セイコー電子工業株式会社製、商品名「DSC220型」)を用いて測定するものとし、その測定条件は、空気を流量10mL/minで流入し、25℃に保持した後、10℃/minで200℃まで昇温させるものとする。また、本明細書において、結晶性熱可塑性樹脂(A)には、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)とウレタン変性ポリエステル樹脂(C)は含まれないものとする。
【0020】
結晶性熱可塑性樹脂(A)としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル(PEs)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等の樹脂が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いてもよい。これらの中でも、120℃以下の低温での加工性の観点から、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0021】
結晶性熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量は、特に限定されないが、8000~30000であることが好ましく、10000~25000であることがより好ましい。数平均分子量が上記範囲内である場合、適度な粘度となり、圧電フィルムの電極などの被膜を形成し易い。本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(例えば、測定装置:ウォーターズコーポレーション(株)製「lliance HPLCシステム」、カラム:shodex製「KF-806L」)を用い、溶媒はテトラヒドロフランを用い、標準ポリスチレン換算により測定を行った値とする。
【0022】
結晶性熱可塑性樹脂(A)の融点は、90℃以上であれば特に限定されないが、90~140℃であることが好ましく、90~130℃であることがより好ましい。本実施形態に係る導電性接着剤組成物を用いて接続された電子部品と基板の使用状況から85℃以下において接着性が維持されることが望ましく、結晶性熱可塑性樹脂(A)の融点が90℃以上である場合、85℃でのクリープ変形が生じにくく優れた接着性が得られ易い。また、結晶性熱可塑性樹脂(A)の融点が140℃以下である場合、室温下において有機溶媒に溶解してもゲル化しにくく、優れた加工性が得られ易い。
【0023】
カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)は、結晶性であっても、非晶性であってもよいが、非晶性であることが好ましい。非晶性樹脂とは、固化したときに結晶部分を有さない高分子物質であり、そのような非晶性樹脂は、DSCの昇温過程において得られる示差走査熱量測定曲線が、通常、明確な吸熱ピークを示さない。
【0024】
カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)のガラス転移点は、特に限定されないが、10~30℃であることが好ましく、14~30℃であることがより好ましい。ここで、本明細書中において、ガラス転移点とは、示差走査熱量測定により得られた示差走査熱量測定曲線の変曲点の温度を意味する。ガラス転移点が上記範囲内である場合、優れた低温加工性及び柔軟性が得られやすく、接着性を評価する85℃クリープ強度試験及び90°ピール強度試験のいずれにおいても優れた結果が得られやすい。
【0025】
カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量は、特に限定されないが、10000~30000であることが好ましく、14000~20000であることがより好ましい。数平均分子量が上記範囲内である場合、優れた柔軟性が得られやすく、接着性を評価する90°ピール強度試験においても優れた結果が得られやすい。
【0026】
カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)の酸価は、特に限定されないが、10~25mgKOH/gであることが好ましく、15~20mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が上記範囲内である場合、優れた柔軟性が得られやすく、接着性を評価する90°ピール強度試験においても優れた結果が得られやすい。
【0027】
ウレタン変性ポリエステル樹脂(C)は、結晶性であっても、非晶性であってもよいが、非晶性であることが好ましい。
【0028】
ウレタン変性ポリエステル樹脂(C)のガラス転移点は、特に限定されないが、70~120℃であることが好ましく、75~110℃であることがより好ましく、80~110℃であることがさらに好ましい。ガラス転移点が上記範囲内である場合、優れた低温加工性及び柔軟性が得られやすく、接着性を評価する85℃クリープ強度試験及び90°ピール強度試験のいずれにおいても優れた結果が得られやすい。
【0029】
ウレタン変性ポリエステル樹脂(C)の数平均分子量は、特に限定されないが、10000~50000であることが好ましく、20000~45000であることがより好ましい。数平均分子量が上記範囲内である場合、優れた柔軟性が得られやすく、接着性を評価する90°ピール強度試験においても優れた結果が得られやすい。
【0030】
本実施形態の導電性接着剤組成物の樹脂成分には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記の結晶性熱可塑性樹脂(A)やカルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)、ウレタン変性ポリエステル樹脂(C)以外の樹脂が含まれていてもよい。
【0031】
樹脂成分100質量部中の結晶性熱可塑性樹脂(A)の含有割合は、特に限定されないが、50~70質量部であることが好ましく、50~60質量部であることがより好ましい。含有割合が、上記範囲内である場合、接着性を評価する85℃クリープ強度試験において優れた結果が得られ易い。
【0032】
樹脂成分100質量部中のカルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)の含有割合は、特に限定されないが、15~35質量部であることが好ましく、20~30質量部であることがより好ましい。含有割合が、上記範囲内である場合、接着性を評価する90°ピール試験において優れた結果が得られ易い。
【0033】
樹脂成分100質量部中のウレタン変性ポリエステル樹脂(C)の含有割合は、特に限定されないが、15~35質量部であることが好ましく、20~30質量部であることがより好ましい。含有割合が、上記範囲内である場合、接着性を評価する85℃クリープ強度試験において優れた結果が得られ易い。
【0034】
導電性フィラーの含有量は、樹脂成分100質量部に対して、50~300質量部であり、50~280質量部であることが好ましく、50~250質量部であることがより好ましい。含有量が50質量部以上である場合、等方性の導電が得られ易く、300質量部以下である場合、導電性と接着性とを両立し易い。
【0035】
導電性フィラーは、デンドライト形状であれば特に限定されないが、例えば、銅粒子、銀粒子、金粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子、銀被覆ニッケル粒子が挙げられ、コスト削減と導電性の観点からは、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子、銀被覆ニッケル粒子であることが好ましい。ここで、デンドライト形状とは、粒子表面から突出する1以上の樹枝状突起を有する形状をいい、樹枝状突起は分岐なしの主枝のみであってもよく、主枝から枝部分が分岐して平面状或いは三次元的に成長してなる形状であってもよい。
【0036】
銀被覆銅粒子は、銅粒子とこの銅粒子を被覆する銀含有層とを有していてもよく、銀被覆銅合金粒子は、銅合金粒子とこの銅合金粒子を被覆する銀含有層とを有していてもよく、銀被覆ニッケル粒子は、ニッケル粒子とこのニッケル粒子を被覆する銀含有層とを有していてもよい。また、銅合金粒子は、ニッケルの含有量が0.5~20質量%であり、かつ亜鉛の含有量が1~20質量%であってもよい。ニッケルと亜鉛とを上記した範囲内で含み、残部が銅からなり、残部の銅は不可避不純物を含んでいてもよい。
【0037】
銀被覆量は、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子、又は銀被覆ニッケル粒子中の割合で1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。銀被覆量が1質量%以上であると、優れた導電性が得られやすく、銀被覆層が30質量%以下であると、優れた導電性を維持しつつ、銀粒子と比較してコストを削減することができる。
【0038】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、1~20μmであることが好ましく、3~15μmであることがより好ましい。平均粒子径が1μm以上である場合、優れた分散性が得られ易く、20μm以下である場合、優れた導電性が得られ易い。ここで、本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折散乱法により得られた粒度分布における積算値50%での粒径(一次粒子径)を意味する。
【0039】
本実施形態の導電性接着剤組成物には、求められる物性に応じて、シリカやウレタンビーズなどを適宜配合し、組成物の硬度を調整することができる。シリカを配合することで、導電性接着剤組成物を硬くすることができ、ウレタンビーズを配合することで、導電性接着剤組成物を柔らかくすることができる。
【0040】
本実施形態の導電性接着剤組成物には、上記成分の他にも、本発明の目的を損なわない範囲において、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等を配合することができる。
【0041】
本実施形態の導電性接着剤組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練して製造することができる。
【0042】
一実施形態の導電性接着剤組成物は、圧電フィルム(ピエゾフィルム)の電極として、または熱に弱い電子部品の接着剤として好適に用いることができる。
【0043】
本実施形態の導電性接着剤組成物は、離型処理されたポリエチレンテレフタレートなどからなるフィルムに所望の膜厚でコーティングすることによりフィルム状に成形し、導電性接着フィルムとしてもよい。なお、導電性接着フィルムを保護する目的で、その片面又は両面に、離型フィルムを設けても良い。
【実施例
【0044】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下において配合割合等は、特にことわらない限り質量基準とする。
【0045】
下記表1に示す配合に従い、各成分を混合し、導電性接着剤組成物を調製した。これを離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(離型フィルム18)にコーティングし、膜厚60μmの導電性接着フィルムを作製した。表中に記載の化合物の詳細は次の通りであり、Tmは融点、Tgはガラス転移点、Mnは数平均分子量をそれぞれ表す。
【0046】
・結晶性熱可塑性樹脂1:結晶性ポリエステル、Tm=120℃、Mn=22000
・結晶性熱可塑性樹脂2:結晶性ポリエステル、Tm=92℃、Mn=36000
・結晶性熱可塑性樹脂3:結晶性ポリエステル、Tm=85℃、Mn=19000
・非晶性熱可塑性樹脂1:非晶性ポリエステル、Tg=65℃、Mn=16000
・カルボキシル基変性ポリエステル樹脂:Tg=15℃、Mn=16000、酸価=18mgKOH/g
・ウレタン変性ポリエステル樹脂1:Tg=84℃、Mn=40000
・ウレタン変性ポリエステル樹脂2:Tg=106℃、Mn=25000
・導電性フィラー1:デンドライト形状の銀被覆銅粒子、平均粒子径5μm、銀被覆量10質量%
・導電性フィラー2:球状、銀被覆銅粒子、平均粒子径5μm
・ウレタンビーズ:大日精化工業(株)製「ダイナミックビーズ UCN-5050クリヤー」
【0047】
得られた導電性接着剤組成物の接着性(85℃クリープ強度、90°ピール強度、及び引張りせん断接着強度)、表面抵抗率、及び接続抵抗率を測定し、結果を表1に示した。測定方法は以下に示す通りである。
【0048】
・85℃クリープ強度:PETフィルム10上に両面テープ11を介して銅箔12を積層したサンプル1と、PETフィルム10上に両面テープ11を介してアルミ蒸着フィルム13のアルミ蒸着面が表面となるように積層したサンプル2とを用意し、それぞれのサンプルサイズを50mm×20mmとなるように切断した。そして、上記で得られた導電性接着剤組成物からなる膜厚60μmの導電性接着フィルム14をサイズが20mm×5mmとなるように切断して、サンプル1の銅箔12上に積層し、温度100℃、圧力0.5MPaで30秒間プレス圧着した後、離型フィルム18を剥離した。そして、図1に示すようにサンプル2のアルミ蒸着フィルム13のアルミ蒸着面と導電性接着フィルム14とを接着させ、温度100℃、圧力0.5MPaで30秒間プレス圧着して接続した。サンプル1の接着していない側の端部を把持してエアオーブン中に吊るし、サンプル2の接着していない側の端部に500±2gの重りを付けた後、85℃で加熱し、サンプル1とサンプル2とが接着箇所で分離するまでの時間を計測した。分離するまでの時間が500時間以上であるものは、接着性に優れるものとした。
【0049】
・90°ピール強度(N/5mm):ガラスエポキシ基板15の上に、両面テープ11を介して銅箔12を積層したサンプル3と、アルミ蒸着フィルム13とを用意し、それぞれのサイズを5mm×70mmとなるように切断した。そして、図2に示すように、上記で得られた導電性接着フィルム14をサイズが5mm×50mmとなるように切断して、サンプル3の銅箔12上に積層し、温度100℃、圧力0.5MPaで30秒間プレス圧着した後、離型フィルム18を剥離した。そして、アルミ蒸着フィルム13のアルミ蒸着面と導電性接着フィルム14とを接着させ、温度100℃、圧力0.5MPaで30秒間プレス圧着して接続した。サンプル3に接続したアルミ蒸着フィルム13を引張試験機(ミネベア株式会社製 PT-200N)で、引張速度120mm/min、剥離方向90度(図2の矢印方向)にて剥離し、破断するまでの荷重の平均値を測定値とした。90°ピール強度が、3.5N/5mm以上であるものは、接着性に優れるものとした。
【0050】
・引張りせん断接着強度(N/20mm):85℃クリープ強度と同様にサンプル1とサンプル2を導電性接着フィルム14で接着して接続し、JIS K6850に準拠し、(株)島津製作所製の引張り試験「AGS-X50S」を用いて、引張速度200mm/minで引張り試験を行い、破断時の最大値荷重を測定した。60N/20mm以上であるものは、接着性に優れるものとした。
【0051】
・表面抵抗率(Ω/□):図3に示すように、上記で作製した導電性接着フィルム14上に、立方体形状の電極A,B(電極面積:1cm(各辺=1cm)、電極表面:金メッキ処理)を載置した。この際の電極A,Bの間隔は10mmとした。各電極に鉛直方向に4.9Nの荷重を加え、2端子法でA-B電極間の抵抗値を測定し、測定開始から1分後の値をもって表面抵抗率Rとした。
【0052】
・接続抵抗率:アルミ蒸着面との接続抵抗率、及び銅箔面との接続抵抗率を測定した。具体的には、図4に示すように、PETフィルム10にアルミ蒸着層16を形成したアルミ蒸着フィルム17を用意し、上記で得られた導電性接着剤組成物からなる膜厚60μmの導電性接着フィルム14をアルミ蒸着フィルム17に、温度100℃、圧力0.5MPaで30秒間プレスして転写させ、離型フィルム18を剥離した。そして、立方体形状の電極C,D(電極面積:1cm(各辺=1cm)、電極表面:金メッキ処理)のうち電極Cを導電性接着フィルム14上に載置し、電極Dをアルミ蒸着フィルム17上に載置した。それ以外は、表面抵抗率と同様にして、C-D電極間の接続抵抗値Rを測定した。また、銅箔面との接続抵抗率の測定は、アルミ蒸着フィルム17の代わりに銅箔を使用し、電極Dを銅箔上に載置した以外は上記と同様に測定した。
【0053】
いずれも、測定雰囲気温度は室温(18~28℃)とし、試験数をn=5とした平均値を表1に示す。抵抗値が、10Ω/□以下であるものは、導電性に優れると判断できる。この際、電気的な接続が、異方性か、等方性かについても評価し、異方性であるものは表面抵抗率Rの評価をブランク(-)とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、実施例1~7は、接着性(85℃クリープ強度、90°ピール強度、及び引張りせん断接着強度)、表面抵抗率、及び接続抵抗率がいずれも優れていた。
【0056】
比較例1は、結晶性熱可塑性樹脂(A)の代わりに、融点が85℃である結晶性熱可塑性樹脂を用いた例であり、85℃クリープ強度が劣っていた。
【0057】
比較例2は、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂(B)の代わりに、非晶性熱可塑性樹脂を用いた例であり、90°ピール強度が劣っていた。
【0058】
比較例3は、ウレタン変性ポリエステル樹脂(C)を含有しない例であり、85℃クリープ強度が劣っていた。
【0059】
比較例4は、導電性フィラーの含有量が下限値未満の例であり、表面抵抗率、及びアルミ蒸着面との接続抵抗率が劣っていた。
【0060】
比較例5は、導電性フィラーの含有量が上限値を超える例であり、85℃クリープ強度及び90°ピール強度が劣っていた。
【0061】
比較例6は、導電性フィラーの形状が球状である例であり、電気的な接続が異方性であり、アルミ蒸着面との接続抵抗率、及び銅箔面との接続抵抗率が劣っていた。
【符号の説明】
【0062】
1・・・・サンプル
2・・・・サンプル
3・・・・サンプル
10・・・PETフィルム
11・・・両面テープ
12・・・銅箔
13・・・アルミ蒸着フィルム
14・・・導電性接着フィルム
15・・・ガラスエポキシ基板
16・・・アルミ蒸着層
17・・・アルミ蒸着フィルム
18・・・離型フィルム
A,B,C,D・・・電極
図1
図2
図3
図4