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特許7459060高純度水和硫酸ニッケルを調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】高純度水和硫酸ニッケルを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 23/00 20060101AFI20240325BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20240325BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20240325BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20240325BHJP
   C01G 53/10 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C22B23/00 102
C22B3/26
C22B3/04
C22B3/44 101A
C01G53/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021511629
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 AU2019051044
(87)【国際公開番号】W WO2020061639
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】2018903643
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2019901760
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521079787
【氏名又は名称】アイジーオー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】カレル・ジョン・オステン
(72)【発明者】
【氏名】ロッサーノ・アントニオ・グラッシ
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥーロ・グティエレス・クラウスドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・コリン・ハリソン
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/073416(WO,A1)
【文献】特表2000-515585(JP,A)
【文献】特開昭53-110971(JP,A)
【文献】国際公開第2018/076993(WO,A1)
【文献】特開2017-226559(JP,A)
【文献】米国特許第05399322(US,A)
【文献】G. Baconら,Solvent extraction as an enabling technology in the nickel industry,the journal of the south african institute of mining and metallurgy,2022年11月,435-444
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 23/00
C22B 3/26
C22B 3/04
C22B 3/44
C01G 53/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルに富む有機相からNiSO.6HO結晶を回収する方法であって、
ニッケルに富む有機相を、前記有機相からニッケルを抽出させるHSO濃度及びNiSO.6HO結晶の析出を生じさせてニッケル希薄有機相を生成させるNi2+濃度の剥離水溶液に接触させることにより、NiSO .6H O結晶化が開始及び進行することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
更に、前記ニッケル希薄有機相から前記NiSO.6HO結晶を分離することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記剥離水溶液が、10~300g/LのHSO濃度を有する請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記ニッケルに富む有機相が、ニッケルと有機抽出溶媒との配位錯体を含み、前記有機抽出溶媒が、Hイオンの存在下で、前記ニッケルから解離する請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記有機抽出溶媒が、有機リン酸、キレートオキシム又はヒドロキシオキシム、カルボン酸、及び高分子量アミンからなる群から選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機抽出溶媒が、以下の構造:
【化1】
(式中、RとRは、分岐又は直鎖の非置換アルキル基であり、RとRは、合わせて5~13個の炭素原子からなる。)を有する分岐カルボン酸である請求項4から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、酸性の硫酸ニッケル含有水溶液を、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、前記水溶液から硫酸ニッケルを前記有機相中に選択的に抽出して、硫酸ニッケル希薄水性ラフィネート及び硫酸ニッケルに富む有機相を生成するニッケル溶媒抽出工程と、
前記ラフィネートと前記硫酸ニッケルに富む有機相とを分離することとを含み、
前記有機抽出溶媒が、1以上の分岐カルボン酸である請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、硫酸ニッケル及び1以上の金属不純物を含む水溶液を有機相に接触させることを含み、前記有機相が、1以上の分岐カルボン酸抽出溶媒を含み、水溶液から前記有機相中への硫酸ニッケルの抽出を選択的に促進し、硫酸ニッケルに富む有機相を生成するニッケル溶媒抽出工程を含む請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、
硫酸ニッケル含有水溶液を、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、前記ニッケルに富む有機相を生成することを含むニッケル溶媒抽出工程を含み、前記硫酸ニッケル含有水溶液が、コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートである浸出貴液(PLS)である請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、
ニッケル溶媒抽出の前に前記硫酸ニッケル含有水溶液のコバルト抽出を含み、前記コバルト抽出の工程が、ニッケルに対してコバルトを選択的に有機相中に抽出して、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームとコバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを生成する有機抽出溶媒を含む請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記硫酸ニッケル含有水溶液が、硫化ニッケル精鉱の低温加圧酸化に由来する浸出貴液である請求項7から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記硫化ニッケル精鉱が、10重量%超のニッケルを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
硫酸ニッケルを製造するための方法であって、
a)硫化ニッケル精鉱の供給源を準備する工程と、
b)工程(a)の前記硫化ニッケル精鉱をリパルプする工程と、
c)工程(b)で得られた硫化ニッケル精鉱を、10ミクロンのP80に微粉砕する工程と、
d)工程(c)で得られた硫化ニッケル精鉱を、低温加圧酸化(LTPOX)オートクレーブして浸出貴液(PLS)を得る工程であって、前記硫化ニッケル精鉱が、10%超のニッケルを含む工程と、
e)水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を使用して、工程(d)の前記PLSを中和する工程と、
f)工程(e)で得られたPLSを向流デカンテーションして、前記PLSのスラリーから固形物を分離する工程と、
g)水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を用いて、工程(f)で得られたPLSを中和する工程と、
i)工程(g)で得られたPLSからコバルトを抽出する工程であって、コバルト抽出が、ニッケルに対してコバルトを選択的に有機相中に抽出して、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームとコバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートとを生成する有機抽出溶媒を含む工程と、
j)工程(i)の前記コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートからニッケルを抽出する工程であって、ニッケル抽出が、前記コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、ニッケルに富む有機相を生成することを含む工程と、
k)工程(j)の前記ニッケルに富む有機相を直接結晶化する工程であって、前記直接結晶化が、前記ニッケルに富む有機相を、前記有機相からニッケルを抽出させるHSO濃度及びNiSO.6HO結晶の析出を生じさせてニッケル希薄有機相を生成させるNi2+濃度の剥離水溶液に接触させることにより、NiSO .6H O結晶化が開始及び進行する工程とを含み、
前記硫酸ニッケルが、21~24重量%のニッケルであり、硫酸ニッケル六水和物(NiSO.6HO)の形態であることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記NiSO.6HO結晶が、5ppm以下のFe及び/又は5ppm以下のMn及び/又は5ppm以下のCu及び/又は60ppm以下のCo及び/又は10ppm以下のZnを含む請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記剥離水溶液が、60g/L以上のNi2+濃度を有する請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度水和硫酸ニッケルを調製するための方法、及び前記方法によって製造された高純度水和硫酸ニッケルに関する。
【背景技術】
【0002】
高純度ニッケル塩、例えば、高純度酸性硫酸ニッケル溶液の形態及び/又は固体の高純度水和硫酸ニッケルの形態などの高純度ニッケル塩は、有価製品の製造に関する成分としてのニッケル金属の重要な供給源である。特に、硫酸ニッケルは、幅広い用途を有する重要な工業製品である。例えば、硫酸ニッケルの酸性水溶液は、電解採取される金属ニッケルの主要な前駆体であり、固体の硫酸ニッケル六水和物は、高度なリチウムイオン電池における使用のために重要なニッケル源である。
【0003】
これらの下流での用途は、高純度のニッケル塩を必要とする。したがって、ニッケル塩は、これらの用途における使用に求められる化学的及び/又は物理的仕様を満たすのに十分な純度である必要がある。例えば、特定の可溶性不純物の存在下で酸性硫酸ニッケル溶液から金属ニッケルを電解採取すると、過剰なエネルギー消費、物理的変形、及び許容できない化学的仕様に至る。重大な不純物としては、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、銅、コバルト、マンガン、及び亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0004】
ニッケル資源は、硫化鉱と酸化鉱(ラテライト又はラテライト鉱)の2つの主要なカテゴリに分けられる。特許文献1に記載されるように、硫化ニッケル鉱の従来の採取は、本質的に乾式製錬プロセスであり、採掘された鉱石を細かく粉砕し、硫化ニッケル鉱物を浮選により濃縮してニッケル精鉱を生成する。次に、精鉱を、製錬と還元によって更に処理し、銅、コバルト、及び鉄も含む中間体であるニッケル含有マットを生成する。しかし、製錬プロセスの欠点は、二酸化硫黄の生成であり、二酸化硫黄は、酸性プラントで処理して硫酸にする必要があるが、製錬所から廃棄するのが必ずしも容易ではない生成物である。ニッケルとコバルトの製錬スラグへの損失は重大であり、マグネシウムやヒ素などの精鉱中の微量元素の一部の処理に問題が生じることがある。
【0005】
中間体マットは、湿式製錬プロセスによる更なる精製を必要とする。しかし、酸化リーチング又は圧力リーチング、それに続く不純物除去及び水素還元又は電解採取などのこれらのプロセスは、硫酸副生成物及び他の廃棄物(例えば、硫酸アンモニウム)という同じ問題を抱えている。
【0006】
一部の用途では、精製された硫酸ニッケル溶液を、最終的な高純度生成物の回収のための供給溶液として直接使用することができる。典型的ではあるが限定的ではない例は、ニッケル電解採取回路の供給溶液(アドバンス電解質)である。他の用途では、固体の高純度ニッケル塩が好ましい供給原材料である。このような固体の高純度ニッケル塩の回収は、通常、エネルギーを大量に消費し、例えば、高温結晶化を伴う場合がある。或いは、周囲条件又は周囲条件に近い条件での蒸発結晶化による固体の高純度ニッケル塩の回収は、通常、長いプロセスであり好ましくない。
【0007】
硫酸ニッケルの酸性水溶液の主な商業的供給源は、非鉄金属(銅/ニッケル/コバルト)硫化物精鉱の加圧酸化、いわゆるPOXプロセス、又はニッケルラテライトの高温硫酸リーチング、いわゆるHPALプロセスから得られる。硫酸ニッケルを生成するために使用される湿式製錬工程は、ロースト/リーチ、大気圧及び高圧リーチング、ヒープリーチング、及びバイオ湿式製錬技術を含むが、これらに限定されない。硫酸ニッケルの酸性水溶液の他の可能な供給源は、非鉄金属の粗鉱及び精鉱のバクテリアルリーチングであり、攪拌タンクとヒープリーチング操作モードの両方を使用し、多くの銅電解採取操作の副生成物を伴う。
【0008】
これらのプロセスは、一般に、原料の他のさまざまな金属成分、特に鉄、マンガン、銅、コバルト、及び亜鉛が同時に溶解するという点で非選択的である。目標ニッケル濃度に対する不純物金属の相対濃度は、ニッケルの初期供給源と、可溶性硫酸ニッケルを含む浸出貴液の生成に関与する冶金学的方法の直接的な結果である。
【0009】
酸性硫酸ニッケル水溶液(浸出貴液)の供給源によらず、有害な可溶性不純物の除去は、限定するものではないが、溶媒抽出及び/又はイオン交換及び/又は沈殿の手順を用いる一連のバルク及び/又は選択工程によって達成される。このような不純な酸性水溶液から高純度ニッケル生成物を回収するための商業的又は技術的に可能な方法がないので、この一連の精製工程が必要である。
【0010】
典型的には、前記工程は、溶媒抽出及び/又はイオン交換及び/又はセメンテーション及び/又は選択的/非選択的沈殿などの1以上の方法の適用を含む。これらの濃縮/精製工程はいずれも、エネルギーを大量に消費する傾向があり、通常、1以上の化学試薬(消耗品)の使用を含む。
【0011】
不純物除去工程の実際の選択と順序は多くの要因に依存するが、特にニッケルと不純物成分の相対濃度に依存する。これらの工程は互いに補完的であり、試薬の種類と消費を最小限に抑えながら、プロセスの水収支に対処する必要がある。特に、非従来型の試薬の使用は避け、方法の条件により方法の試薬の劣化が制限される必要がある。
【0012】
精製された酸性硫酸ニッケル水溶液から硫酸ニッケル六水和物を結晶化及び/又は沈殿させるための様々な方法が提案されている。最も一般的な方法は、従来の熱及び真空技術による方法である。しかし、このような方法は、非常に大量のエネルギーを使用するプロセスであり、粒子サイズ分布、スケールの生成、過度の腐食などの多くの操作上及び保守上の問題点を抱えている。
【0013】
本発明者らの知識によれば、依然、商業的に適用されていない代替アプローチは、溶媒置換プロセスを含み、例えば、イソプロパノールを添加して硫酸ニッケルの溶解限度を下げ、硫酸ニッケル六水和物の結晶化を向上させるプロセスを含む。このアプローチの問題点は、系全体に外来試薬を使用する必要性とは別に、できるだけ多くのイソプロパノールを回収して再利用する必要があることである。これは、エネルギーを大量消費する蒸留工程を含む。
【0014】
本発明の目的は、硫酸ニッケルを硫酸ニッケル六水和物として回収するための従来法の1以上の欠点に対処することである。
【0015】
本明細書における先行技術への言及は、この先行技術が、任意の管轄において技術常識の一部を形成すること、又はこの先行技術が、当業者によって理解され、関連するとみなされ、及び/又は他の先行技術と組み合わされることが合理的に期待できることを、認める又は示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際公開第2007/039663号
【発明の概要】
【0017】
本発明は、硫酸ニッケル六水和物(NiSO.6HO)を回収する方法を提供することを目的とする。硫酸ニッケル六水和物は高純度である必要がある。「高純度」とは、硫酸ニッケル六水和物中のニッケル含量が少なくとも21%、好ましくは21~24%、最も好ましくは約22~23%であることを意味する。当業者によって理解されるように、このことは、硫酸ニッケル六水和物中に、22.0%、22.1%、22.2%、22.3%、22.4%、22.5%、22.6%、22.7%、22.8%、22.9%、及び23%のニッケル含量を含む。また、高純度/電池グレードの硫酸ニッケル六水和物は、微量金属元素レベルも非常に低いこと、例えば、350ppm以下のCo、10ppm以下のCu、25ppm以下のCa、15ppm以下のCr、15ppm以下のFe、35ppm以下のMg、15ppm以下のMn、15ppm以下のPb、及び15ppm以下のZnであることを意味する。好ましくは、高純度/電池グレードの硫酸ニッケル六水和物は、250ppm以下のCo、5ppm以下のCu、15ppm以下のCa、10ppm以下のCr、10ppm以下のFe、25ppm以下のMg、10ppm以下のMn、10ppm以下のPb、及び10ppm以下のZnを含む。
【0018】
高純度の硫酸ニッケル六水和物は、高度なリチウムイオン電池における使用のための重要なニッケル源である。したがって、本明細書では「電池グレード」の硫酸ニッケルとも呼ばれ、電池グレードの硫酸ニッケルは、高純度の硫酸ニッケル六水和物について前述したのと同一の硫酸ニッケル六水和物含量を有し、相互変換可能に使用される。
【0019】
本発明の第1の態様では、ニッケルに富む有機相からNiSO.6HO結晶を回収する方法が提供され、前記方法は、
ニッケルに富む有機相を、前記有機相からニッケルを抽出するのに十分なHSO濃度及びNiSO.6HO結晶を析出させてニッケル希薄有機相を生成するのに十分なNi2+濃度の剥離水溶液に接触させることを含む。
【0020】
当業者であれば、剥離溶液中のHSO及びNi2+の濃度が、方法が行われる具体的な条件(例えば、温度、圧力、他のイオンの存在)に応じて変化することを理解しよう。
【0021】
一実施形態では、剥離溶液は、60g/L以上のNi2+濃度を有する。より好ましくは、剥離溶液は、70g/L以上のNi2+濃度を有する。最も好ましくは、剥離溶液は、80g/L以上のNi2+濃度を有する。追加的に又は代替的に、剥離溶液は、最大100g/LのNi2+濃度を有する。
【0022】
実施形態では、剥離溶液は、300g/L以上、又は350g/L以上のHSO濃度を有する、又は剥離溶液は、約350から最大約450g/LのHSO濃度を有する。
【0023】
別の実施形態では、剥離溶液は、300g/L以下のHSO濃度を有する。好ましくは、剥離溶液は、10~300g/LのHSO濃度を有する。
【0024】
実施形態では、剥離溶液は、共にNiSO.6HOの溶解限度又はその近傍のSO 2-及びNi2+濃度を有する。溶解限度に近いとは、有機相から抽出されたニッケルの少なくとも90重量%が、NiSO.6HOとして析出させる濃度であることを意味する。好ましくは、有機相から抽出されたニッケルの95重量%が、NiSO.6HOとして析出する。より好ましくは、有機相から抽出されたニッケルの98重量%が、NiSO.6HOとして析出する。最も好ましくは、有機相から抽出されたニッケルの99重量%が、NiSO.6HOとして析出する。
【0025】
実施形態では、ニッケルに富む有機相は、水と非混和性である。
【0026】
実施形態では、前記方法は、更に、ニッケル希薄有機相からNiSO.6HO結晶を分離することを含む。
【0027】
実施形態では、ニッケルに富む有機相は、少なくとも、ニッケル(例えば、Ni2+の形態で)、有機抽出溶媒、及び有機希釈剤を含む。好ましくは、ニッケルに富む有機相は、ニッケルと有機抽出溶媒との配位錯体を含み、有機抽出溶媒は、十分な濃度のHイオン(HSOの解離に由来するものなど)の存在下で、ニッケルから解離する。より好ましくは、Hイオンは、NiSOとのイオン交換プロセスで提供される。
【0028】
前記実施形態のいくつかの形態では、有機抽出溶媒は、有機リン酸、キレートオキシム又はヒドロキシオキシム、カルボン酸、及び高分子量アミン(n-オクチルアニリン、トリオクチル/デシルアミン、トリ-オクチルアミン、トリ-イソ-オクチアミン、N-n-オクチルアニリン、及び2-エチルヘキシルアミノメチルピリジンなど)からなる群から選択される。
【0029】
前記実施形態のいくつかの形態では、有機抽出溶媒は、有機相の約10重量%から最大約25重量%である。好ましくは、有機抽出溶媒は、有機相の約12重量%以上である。より好ましくは、有機抽出溶媒は、有機相の約14重量%以上である。代替的に又は追加的に、有機抽出溶媒は、有機相の最大約22重量%である。より好ましくは、有機抽出溶媒は、有機相の最大約20重量%である。一例では、有機抽出溶媒は、有機相の約18重量%である。
【0030】
前記実施形態のいくつかの形態では、有機抽出溶媒は、1以上の分岐カルボン酸、例えば、7個の炭素原子から最大15個の炭素原子を有する分岐カルボン酸である。好ましくは、分岐カルボン酸は、8個以上の炭素原子を有する。最も好ましくは、分岐カルボン酸は、9個以上の炭素原子を有する。代替的に又は追加的に、分岐カルボン酸は、最大14個の炭素原子を有する。好ましくは、分岐カルボン酸は、最大13個の炭素原子を有する。より好ましくは、分岐カルボン酸は、最大12個の炭素原子を有する。最も好ましくは、分岐カルボン酸は、最大11個の炭素原子を有する。一形態では、分岐カルボン酸は、10個の炭素原子を有する。
【0031】
前記実施形態のいくつかの形態では、有機抽出溶媒は、分岐モノカルボン酸である。
【0032】
前記実施形態のいくつかの形態では、有機抽出溶媒は、以下の構造の分岐カルボン酸である。
【化1】
式中、RとRは、分岐又は直鎖の非置換アルキル基であり、RとRは、合わせて5~13個の炭素原子からなる。
【0033】
好ましくは、分岐カルボン酸は、ネオデカン酸である。ネオデカン酸は、一般的な構造式C1020を有するカルボン酸の混合物である。したがって、ネオデカン酸という用語は、2,2,3,5-テトラメチルヘキサン酸、2,4-ジメチル-2-イソプロピルペンタン酸、2,5-ジメチル-2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、及び/又は2,2-ジエチルヘキサン酸などの化合物を包含する。本発明の好ましい形態では、ネオデカン酸は、前記列挙したものからなる群から選択される1以上の化合物を含む。
【0034】
前記実施形態のいくつかの形態では、有機希釈剤は、水と非混和性である。
【0035】
前記実施形態のいくつかの形態では、有機希釈剤は、1以上のC10+アルカンである。好ましくは、有機希釈剤は、1以上のC11+アルカンである。最も好ましくは、有機希釈剤は、1以上のC12+アルカンである。
【0036】
前記実施形態のいくつかの形態では、有機希釈剤は、1以上のイソアルカン、1以上のシクロアルカン、及びそれらの混合物を含む。
【0037】
実施形態では、有機希釈剤は、1以上のイソアルカン、1以上のシクロアルカン、及びそれらの混合物を含む、からなる、又は本質的にからなる。一例では、有機希釈剤は、1以上のC10+イソアルカン及び/又は1以上のC10+シクロアルカンを含む、からなる、又は本質的にからなる。好ましい形態では、有機希釈剤は、1以上のC11+のイソアルカン及び/又は1以上のC11+シクロアルカンを含む、からなる、又は本質的にからなる。より好ましくは、有機希釈剤は、1以上のC12+イソアルカン及び/又は1以上のC12+シクロアルカンを含む、からなる、又は本質的にからなる。
【0038】
実施形態では、前記方法は、ニッケル溶媒抽出を含み、ニッケル溶媒抽出工程は、
酸性硫酸ニッケル含有水溶液を、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、前記水溶液から硫酸ニッケルを前記有機相中に選択的に抽出して、硫酸ニッケル希薄水性ラフィネート及びニッケルに富む有機相を生成することと、
前記ラフィネートと前記ニッケルに富む有機相を分離することとを含み、
前記有機抽出溶媒は、1以上の分岐カルボン酸である。
【0039】
別の実施形態では、前記方法は、ニッケル溶媒抽出を含み、前記ニッケル溶媒抽出は、
硫酸ニッケル及び1以上の金属不純物を含む水溶液を有機相に接触させることを含み、前記有機相が、1以上の分岐カルボン酸抽出溶媒を含み、水溶液から前記有機相中への硫酸ニッケルの抽出を選択的に促進し、前記ニッケルに富む有機相を生成する溶媒抽出工程を含む。
【0040】
別の実施形態では、前記方法は、ニッケル溶媒抽出を含み、ニッケル溶媒抽出工程は、
硫酸ニッケル含有水溶液を、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、ニッケルに富む有機相を生成することを含み、前記硫酸ニッケル含有水溶液が、浸出貴液(PLS)である。本発明のこの実施形態は、コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートであるPLSの文脈で記載される。
【0041】
前記実施形態のいくつか形態では、硫酸ニッケル含有溶液は、硫化ニッケル精鉱の高温加圧酸化(HTPOX)に由来する浸出貴液である。当業者によって理解されるように、この文脈における「高温」は、一般に、約200℃又はそれより高い温度である。
【0042】
以下に詳細に記載される前記実施形態の別の形態では、硫酸ニッケル含有溶液は、硫化ニッケル精鉱の低温加圧酸化(LTPOX)に由来する浸出貴液である。当業者によって理解されるように、この文脈における「低温」は、一般に、約100~約120℃又はそれ未満の温度である。
【0043】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつかの形態では、硫酸ニッケル含有溶液は、ニッケル溶媒抽出の前にコバルト抽出に付され、コバルト抽出工程は、ニッケルに対してコバルトを選択的に有機相中に抽出して、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームとコバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを生成する有機抽出溶媒を含む。好ましくは、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームの有機相が、コバルト希薄有機相に変換され、コバルト希薄有機相が、有機相又はその成分として再利用される。
【0044】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつかの形態では、硫酸ニッケル含有溶液は、ニッケル溶媒抽出の前に清澄化される。好ましくは、硫酸ニッケル含有溶液は、コバルト抽出工程に付される前に清澄化されている。
【0045】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつかの形態では、硫酸ニッケル含有溶液は、ニッケル溶媒抽出の前に二次中和工程に付されており、前記二次中和工程は、水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を使用して行われる。好ましくは、硫酸ニッケル含有溶液は、コバルト抽出工程に付される前に、二次中和工程に付されている。より好ましくは、硫酸ニッケル含有溶液は、清澄化される前に二次中和工程に付されている。
【0046】
前記実施形態及び別の実施形態の形態では、硫酸ニッケル含有溶液は、ニッケル溶媒抽出の前に向流デカンテーション工程に付されている。好ましくは、硫酸ニッケル含有溶液は、コバルト抽出工程に付される前に、向流デカンテーション工程に付されている。より好ましくは、硫酸ニッケル含有溶液は、清澄化される前に向流デカンテーション工程に付されている。更により好ましくは、硫酸ニッケル含有溶液は、二次中和工程に付される前に、向流デカンテーション工程に付されている。
【0047】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつかの形態では、硫酸ニッケル含有溶液は、ニッケル溶媒抽出の前に一次中和工程に付されており、一次中和は、水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を使用して行われる。好ましくは、硫酸ニッケル含有溶液は、コバルト抽出工程に付される前に、一次中和工程に付されている。より好ましくは、硫酸ニッケル含有溶液は、清澄化される前に一次中和工程に付されている。更により好ましくは、硫酸ニッケル含有溶液は、二次中和工程に付される前に、一次中和工程に付されている。更により好ましくは、硫酸ニッケル含有溶液は、向流デカンテーション工程に付される前に、一次中和工程に付されている。
【0048】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつか形態では、硫酸ニッケル含有溶液は、硫化ニッケル精鉱上での低温加圧酸化(LTPOX)オートクレーブ工程によって生成されるPLSである。
【0049】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつか形態では、LTPOXオートクレーブ工程は、酸素を使用して、硫化ニッケル精鉱の硫化ニッケルを硫酸ニッケルに酸化する。
【0050】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつか形態では、硫化ニッケル精鉱は、10%超のニッケルを含む。
【0051】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつか形態では、硫化ニッケル精鉱は、微粉砕工程に付されており、硫化ニッケル精鉱の粒子は、10ミクロンのP80に粉砕される。
【0052】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつか形態では、硫化ニッケル精鉱は、LTPOXオートクレーブ工程に付される前に、リパルプ工程に付されている。好ましくは、硫化ニッケル精鉱は、微粉砕工程に付される前に、リパルプ工程に付されている。
【0053】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつか形態では、ニッケルに富む有機相は、ニッケルが希薄な有機相に変換され、ニッケルが希薄な有機相は、有機相又はその成分として再利用される。
【0054】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつか形態では、水酸化アンモニウム、マグネシア、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基が、ニッケル溶媒抽出工程で使用され、好ましくは水酸化アンモニウムが使用される。
【0055】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつか形態では、ニッケル希薄有機相は、有機相又はその成分として再利用される。
【0056】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつか形態では、有機相は、有機希釈剤及び有機抽出溶媒を含む、からなるか、又は本質的にからなる。
【0057】
実施形態では、ニッケルに富む有機相は、5ppm以下のFe及び/又は5ppm以下のMn及び/又は5ppm以下のCu及び/又は60ppm以下のCo及び/又は10ppm以下のZnを含む。
【0058】
実施形態では、NiSO.6HO結晶は、5ppm以下のFe及び/又は5ppm以下のMn及び/又は5ppm以下のCu及び/又は60ppm以下のCo及び/又は10ppm以下のZnを含む。
【0059】
実施形態では、1以上の金属不純物は、Fe、Mn、Cu、Co、Zn、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0060】
実施形態では、ニッケル希薄有機相は、硫酸ニッケルを実質的に含まない。硫酸ニッケルを実質的に含まないは、10ppm未満であることを意味する。
【0061】
実施形態では、酸性硫酸ニッケル含有水溶液は、硫化ニッケル精鉱の高温加圧酸化に由来する浸出貴液である。
【0062】
実施形態では、酸性硫酸ニッケル含有水溶液は、硫化ニッケル精鉱の低温加圧酸化に由来する浸出貴液である。
【0063】
実施形態では、前記方法は、ある範囲の温度、例えば、約10℃~約50℃の温度に亘って行うことができる。好ましくは、前記方法は、約10℃~約40℃の温度で行うことができる。しかし、有利なことに、前記方法は、周囲温度で行うことができる。
【0064】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様の方法にしたがって製造されたNiSO.6HO結晶が提供される。
【0065】
また、1以上の不純物を含む酸性硫酸ニッケル水溶液から硫酸ニッケルを回収するための方法も本明細書に開示され、前記方法は、
酸性硫酸ニッケル含有水溶液を、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、前記水溶液から硫酸ニッケルを前記有機相中に選択的に抽出して、硫酸ニッケル希薄水性ラフィネート及び硫酸ニッケルに富む有機相を生成することと、
前記ラフィネートと前記硫酸ニッケルに富む有機相とを分離することとを含み、
前記有機抽出溶媒は、1以上の分岐カルボン酸である。
【0066】
更に、精製された硫酸ニッケルを製造するためのプロセスが本明細書に開示され、前記プロセスは、硫酸ニッケル及び1以上の金属不純物を含む水溶液を有機相に接触させることを含み、前記有機相が、1以上の分岐カルボン酸抽出溶媒を含み、水溶液から前記有機相中への硫酸ニッケルの抽出を選択的に促進し、硫酸ニッケルに富む有機相を生成する溶媒抽出工程を含む。
【0067】
本発明の第3の態様では、硫酸ニッケルを回収するための方法が提供され、前記方法は、硫化ニッケル精鉱上の低温加圧酸化(LTPOX)オートクレーブ工程を含み、前記硫化ニッケル精鉱は、10%超のニッケルを含む。
【0068】
本発明の本態様の一実施形態では、硫化ニッケル精鉱の粒子は、10ミクロンのP80に微粉砕される。
【0069】
別の実施形態では、LTPOXオートクレーブ工程は、酸素を使用して、硫化ニッケル精鉱の硫化ニッケルを硫酸ニッケルに酸化する。
【0070】
別の実施形態では、硫酸ニッケルを回収するための方法は、更に、水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を使用する一次中和工程を含む。好ましくは、前記方法は、水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を使用する二次中和工程を含む。
【0071】
更なる実施形態では、前記方法は、更に、向流デカンテーション工程、好ましくは二次中和工程を含む。二次中和工程のPLSは、後続の抽出工程で利用することができる。例えば、一実施形態では、ニッケルに対してコバルトを選択的に有機相中に抽出して、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームとコバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを生成する有機抽出溶媒を含むコバルト溶媒抽出が提供される。好ましくは、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームの有機相が、コバルト希薄有機相に変換され、コバルト希薄有機相が、有機相又はその成分として再利用される。
【0072】
別の実施形態では、二次中和工程のPLS生成物、又はコバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートのいずれかを、ニッケル溶媒抽出工程及び直接結晶化工程に付される。本発明のこの実施形態は、コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートである供給溶液の文脈で記載され、前記ニッケル溶媒抽出工程は、
前記コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、ニッケルに富む有機相を生成することを含み、
前記直接結晶化工程は、
前記ニッケルに富む有機相を、前記有機相からニッケルを抽出するのに十分なHSO濃度及びNiSO.6HO結晶を析出させてニッケル希薄有機相を生成するのに十分なNi2+濃度の剥離水溶液に接触させることを含む。
【0073】
別の実施形態では、前記方法は、更に、コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、前記水溶液から硫酸ニッケルを前記有機相中に選択的に抽出して、硫酸ニッケル希薄水性ラフィネート及び前記ニッケルに富む有機相を生成するニッケル溶媒抽出工程と、
前記ラフィネートと前記ニッケルに富む有機相を分離することとを含み、
前記有機抽出溶媒は、1以上の分岐カルボン酸である。
【0074】
別の実施形態では、前記方法は、更に、コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネート及び1以上の金属不純物を、有機相に接触させることを含み、前記有機相が、1以上の分岐カルボン酸抽出溶媒を含み、水溶液から前記有機相中への硫酸ニッケルの抽出を選択的に促進し、前記ニッケルに富む有機相を生成するニッケル溶媒抽出工程を含む。
【0075】
本発明の前記態様及び実施形態では、水酸化アンモニウム、マグネシア、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基が、ニッケル溶媒抽出工程で使用され、好ましくは水酸化アンモニウムが使用される。
【0076】
前記実施形態及び別の実施形態のいくつかの形態にでは、ニッケルに富む有機相が、ニッケルが希薄な有機相に変換され、ニッケルが希薄な有機相は、有機相又はその成分として再利用される。
【0077】
本発明の第4の態様では、硫酸ニッケルを製造するための方法が提供され、前記方法は、
a)硫化ニッケル精鉱の供給源を準備する工程と、
b)前記硫化ニッケル精鉱をリパルプする工程と、
c)工程(b)で得られた硫化ニッケル精鉱を、10ミクロンのP80に微粉砕する工程と、
d)工程(c)で得られた硫化ニッケル精鉱を、低温加圧酸化(LTPOX)オートクレーブして浸出貴液(PLS)を得る工程であって、前記硫化ニッケル精鉱が、10%超のニッケルを含む工程と、
e)水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を使用して、前記PLSを中和する工程と、
f)工程(e)で得られたPLSを向流デカンテーションして、前記PLSのスラリーから固形物を分離する工程と、
g)水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を用いて、工程(f)で得られたPLSを中和する工程と、
h)任意に、工程(g)で得られたPLSを清澄化する工程と、
i)前記PLSからコバルトを抽出する工程であって、コバルト抽出が、ニッケルに対してコバルトを選択的に有機相中に抽出して、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームとコバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートとを生成する有機抽出溶媒を含む工程と、
j)コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートからニッケルを抽出する工程であって、ニッケル抽出が、前記コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、ニッケルに富む有機相を生成することを含む工程と、
k)前記ニッケルに富む有機相を直接結晶化する工程であって、前記直接結晶化が、ニッケルに富む有機相を、前記有機相からニッケルを抽出するのに十分なHSO濃度及びNiSO.6HO結晶を析出させてニッケル希薄有機相を生成するのに十分なNi2+濃度の剥離水溶液に接触させる工程とを含み、
前記硫酸ニッケルは、21~24%のニッケルであり、硫酸ニッケル六水和物(NiSO.6HO)の形態である。
【0078】
本明細書中、以下及び実施例4に詳細に記載されるように、ニッケルを抽出するのに「十分」であるHSOの濃度は、ニッケル濃度と相対的である。通常、HSO剥離溶液は、10~450g/LのHSOを含み、好ましくは10~300g/L、最も好ましくは10~20g/Lを含み、及び80~100g/LのNi2+を含む。
【0079】
本発明の第3又は第4の態様の実施形態では、ニッケルに富む有機相は、5ppm以下のFe及び/又は5ppm以下のMn及び/又は5ppm以下のCu及び/又は60ppm以下のCo及び/又は10ppm以下のZnを含む。
【0080】
本発明の第5の態様では、硫酸ニッケル含有溶液を製造するための方法が提供され、前記方法は、
ニッケルに富む有機相を、前記有機相からニッケルを抽出してニッケル希薄有機相を生成するのに十分なHSO濃度の剥離水溶液に接触させることを含む。
【0081】
本発明の第1、第3、第4、又は第5の態様のいずれかのいくつかの形態では、硫酸アンモニウム副生成物が回収される。
【0082】
本発明の第6の態様では、本発明の第3、第4、又は第5の態様のいずれかの方法にしたがって製造された硫酸ニッケルが提供される。
【0083】
本発明の更なる態様及び前記段落に記載された態様の更なる実施形態が、一例として与えられる以下の記載から、及び添付図面を参照して明らかになろう。
【0084】
技術用語の定義及び意味
本明細書において、文脈上別の解釈が必要である場合を除き、「方法」及び「プロセス」という用語及びこれらの用語の変形は、本明細書では相互変換可能に使用され、いかなる場合でも、用語間の違いを表すためには使用されない。
【0085】
80は、スラリーの生成物サイズを粒子サイズで定義するものであり、前記粒子サイズにおいては、粒子の80質量%が、その粒子サイズよりも小さい。同様に、Pは、スラリーの生成物サイズを粒子サイズで定義するものであり、前記粒子サイズにおいては、粒子のx質量%が、その粒子サイズよりも小さい。
【0086】
PLSは、浸出貴液を意味する。清澄化されたPLSは、例えば向流デカンテーションによってスラリーの固形物が除去された浸出貴液を意味する。本明細書において、本発明の方法において、懸濁固形物の除去の下流にあるPLSに言及するとき、文脈上別の解釈が必要である場合を除き、PLSへの言及は、清澄化されたPLSと等価である。
【0087】
本明細書において、本発明の様々なストリーム及び相は、ニッケル及びコバルトに富む又はそれらが希薄であると称される。本発明のコバルト溶媒抽出工程及びニッケル溶媒抽出工程の下流で生成する又は下流に存在するストリーム及び相に言及するとき、ニッケル又はコバルトのいずれかに富むストリーム又は相への言及は、文脈上別の解釈が必要である場合を除き、その他の元素が希薄なストリーム又は相を意味すると解釈される。同様に、本発明のコバルト溶媒抽出工程及びニッケル溶媒抽出工程の下流で生成する又は下流に存在するストリーム及び相に言及するとき、ニッケル又はコバルトのいずれかが希薄なストリーム又は相への言及は、文脈上別の解釈が必要である場合を除き、その他の元素に富むストリーム又は相を意味すると解釈される。
【0088】
当業者によって理解されるように、本発明の文脈における濃縮及び「富む」は、ニッケル又はコバルトの相対濃度が、先行する工程に付される前よりも高いことを意味する。例えば、PLS原料は、コバルトとニッケルの両方を含む。PLS原料にコバルト抽出プロセスを適用することにより、コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートと、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒とが生成される。ラフィネート及び抽出溶媒中のニッケル及びコバルトの相対濃度は、それぞれ、PLS原料に対して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、及び少なくとも90%上昇する。同様に、ニッケルに富む有機相は、それが由来する原料/出発材料よりもニッケルの相対量が高く、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%上昇する。
【0089】
逆に、「希薄」とは、ニッケル又はコバルトが、枯渇していることを意味すると理解される。好ましくは、ニッケル又はコバルトの少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、及び少なくとも99%を除去して希薄相を得る。希薄相は、好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満のニッケル又はコバルトを含む。
【0090】
硫化ニッケル精鉱及びニッケル/コバルト硫化物精鉱という用語は、文脈上別の解釈が必要とされない限り、本明細書では相互変換可能に使用される。
【0091】
本明細書中、以下及び実施例4に詳細に記載されるように、ニッケルを抽出するのに「十分」であるHSOの濃度は、ニッケル濃度それ自体と相対的である。通常、HSO剥離溶液は、10~450g/LのHSOを含み、最も好ましくは10~300g/L含む。また、析出させるのに十分なNi2+濃度は、80~100g/Lである。
【0092】
本明細書において、文脈上別の解釈が必要とされる場合を除き、「含む(comprise)」という用語、及び「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「含まれる(comprised)」などの用語の変形は、他の添加剤、成分、整数、又は工程を排除することを意図しない。含んでいる(comprising)は、文脈上別の解釈が必要とされる場合を除き、含んでいる(including)と相互変換可能に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るニッケル回収法を用いた本発明の高温加圧酸化(HTPOX)プロセスの実施形態を示すプロセスフロー図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る約40Lの充填されたVersatic Acid 10抽出溶媒から回収されたNiSO.6HOの1.7kgのサンプルの一部を示す写真である。
図3図3は、硫酸ニッケル含有溶液を製造するための本発明の低温加圧酸化(LTPOX)プロセスの実施形態を示すプロセスフロー図である。
図4図4は、図3の低圧酸化プロセスを示し、本発明の一実施形態に係るニッケル回収法が組み込まれているプロセスフロー図である。
図5図5は、ニッケル産業における他の方法と比較して、金属を溶液中に浸出させるための温度と圧力が遥かに低いオートクレーブ技術を示す。
図6図6は、最適な抽出pHを決定するためのバルクコバルトラフィネートに対するニッケルpH抽出プロファイルサイター(sighter)試験におけるpHに対する、ニッケルと選択された共抽出金属:Co、Ca、Mg、及びCuとの平衡抽出率のプロットを示す。試験は、pH範囲(5.0、5.5、6.0、6.5、及び7.0)に亘って、1:1の一定の接触水:有機物(A:O)で温度(50℃)にて行った。
図7a図7は、175g/tのTETA(トリエチレンテトラミン)と175g/tのSS(亜硫酸ナトリウム)を用い、粉砕サンプルと未粉砕サンプルに対して、ニッケル精鉱の品質を比較する。ペントランド鉱から磁硫鉄鉱を遊離させると、磁硫鉄鉱の除去が改善した。図7aは、粉砕サンプルと未粉砕サンプルのS:Ni比を比較する。
図7b図7は、175g/tのTETA(トリエチレンテトラミン)と175g/tのSS(亜硫酸ナトリウム)を用い、粉砕サンプルと未粉砕サンプルに対して、ニッケル精鉱の品質を比較する。ペントランド鉱から磁硫鉄鉱を遊離させると、磁硫鉄鉱の除去が改善した。図7bは、粉砕サンプルと未粉砕サンプルのEh(酸化/還元電位)を比較する。TETAとSSによる磁硫鉄鉱表面の活性化は、Eh変化によって維持される。
図8a図8aは、異なるP80値のサンプルのLTPOX工程での硫化物酸化の反応速度を比較する。試験は、105℃、1,000kPa O OPにて、1g/LのCl又は5g/LのClで行った。P80値が10ミクロン未満のサンプルは、P80値が18ミクロンのサンプルよりも大幅に速く酸化された。
図8b図8bは、異なるP80値のサンプルのLTPOX工程でのニッケル抽出率を比較する。試験は、105℃、1,000kPa O OPにて、1g/LのCl又は5g/LのClで行った。P80値が10ミクロン未満のサンプルに由来するニッケルは、P80値が18ミクロンのサンプルに由来するニッケルよりも大幅に速く抽出された。
図9図9は、方法の異なるスラリーの累積硫黄元素(Cum S Recovery(%))と浮遊時間(Cum Float Time(min))との関係を示す。これらの異なるスラリーは、異なる浮選試薬を使用して調製した。MIBCは、メチルイソブチルカルビノールを意味し、W24は、Huntsmanより提供されるW24 Frotherを意味し、Dowfroth 250aは、Dow Chemicalより提供されるDowfroth 250 A Flotation Frotherを意味する。
【0094】
有用性
電気自動車及びエネルギー保存システムの販売数増大に伴い、リチウムイオン電池の需要の高まりと共に、高品質の電池原料の需要も非常に高まっている。硫酸ニッケルは、特定の電気自動車の電池カソード、特にニッケル-コバルト-マンガン(NCM)及びニッケル-コバルト-アルミニウム(NCA)カソードの化学的性質を使用する電池技術にとって非常に重要である。NCM及びNCA技術は、それらのエネルギー密度が高く、電気自動車用途においては走行距離を延ばすことになることから、ますます一般的になってきている。これらの電池タイプの両方において、カソード内のニッケルの比率が上昇している傾向もある。
【0095】
通常、硫酸ニッケルは、複数の複雑な冶金学的方法に付された中間体又は精製ニッケル生成物から製造される。これらの更なる方法により、LMEニッケル金属価格よりも割増で硫酸ニッケルが取引されている。割増量は、主に、市場の需要と供給、品質と出所によって決まる。
【0096】
本発明の方法は、最初に中間体又は精製ニッケル生成物を製造するという要件なしに、硫化ニッケル精鉱から直接、硫酸ニッケルの製造を最適化する。硫酸ニッケルは、六水和物(NiSO.6HO)の形態であり、前記のように高純度である。この高純度硫酸ニッケル六水和物は、本明細書では「電池グレード」の硫酸ニッケルとも呼ばれる。
【0097】
更に、本発明の方法は、本方法の排出量、電力消費量、及び廃棄物生成量が著しく低いため、硫酸ニッケルの従来の製造方法と比較して、より環境的に持続可能である。更に、本発明の硫酸ニッケル回収方法は、本発明の方法が著しく速いので、周囲条件又は周囲条件に近い条件で行われる従来の蒸発結晶化法よりも有利である。
【0098】
本発明の方法及びプロセスはまた、硫黄元素副生成物、並びにコバルト及び銅を含有する混合硫化物沈殿副生成物などの他の販売可能な副生成物をもたらす。
【0099】
実施形態の詳細な説明
本発明の方法は、硫酸ニッケルの商業的統合生産のためにニッケル産業における使用のためのいくつかの技術(新たな技術及び公知技術の両方)を、初めて組み合わせる。本発明の方法は、以下のように、4つの連続する工程に簡略化することができる。
・段階1 リーチング:酸素注入を使用して、硫化物精鉱を部分的に酸化して、可溶性金属硫酸塩種(ニッケル、コバルト、銅、鉄など)、硫酸、及び硫黄にする。
・段階2 一次及び二次中和:遊離酸、鉄、及びその他の金属を除去して、後続の溶媒抽出に必要な供給溶液を得るための2段階中和法。
・段階3 コバルト及び銅の溶媒抽出及び沈殿:コバルト、銅、亜鉛、マンガン、及びマグネシウムを溶液から除去する。次いで、コバルト、銅、及び亜鉛を、得られた有機溶液から硫酸で除去し、混合硫化物沈殿(MSP)として回収する。
・段階4 ニッケル溶媒の抽出と結晶化:ニッケル溶媒抽出回路の溶液から更なる不純物を除去した後、新たな直接結晶化法の工程で結晶化する。
【0100】
本発明の一態様では、ニッケル溶媒抽出及び結晶化法(段階4)が存在する。この方法は、以下の例示的実施形態に記載されるように、ニッケル/コバルト硫化物精鉱からコバルト及びニッケルを回収するための全体的な方法に、そのまま組み込むことができる。
【0101】
図1は、高温加圧酸化(HTPOX)技術及び適切な分離及び精製工程を使用してニッケル/コバルト硫化物精鉱を処理するためのプロセス100のプロセスフロー図であり、本発明の実施形態に係るニッケル回収方法が組み込まれている。図示されるプロセスは、コンセントレータ101に保存され得るニッケル/コバルト硫化物精鉱を生成するための初期粉砕及び浮選技術を含む。精鉱は、加圧酸化プロセス104への供給原料としてそのまま使用する、又は保存することができる。いずれの場合も、供給原料のパルプ密度は、リパルプ102によって調整することができる。
【0102】
供給原料が調製されると、プロセス100は、ニッケル/コバルト硫化物精鉱を高温加圧酸化104に付してから、酸化ニッケル/コバルト硫化物精鉱を向流デカンテーションプロセス108で処理して、ニッケル及びコバルト浸出貴液及び尾鉱のアンダーフローを得る。
【0103】
加圧酸化104の後で、向流デカンテーションプロセス108の前に、ニッケル/コバルト硫化物精鉱を熱酸硬化(HAC)回路106で処理して、尾鉱処理中又は保存プロセス中に鉄を放出する可能性のある塩基性硫酸鉄(BFS)を消化することができる。
【0104】
尾鉱は、廃棄前に中和110及び増粘112に付され、プロセス水114は、加圧酸化104で再利用するために増粘中に回収される。次いで、ニッケル及びコバルト浸出貴液は、中和プロセス116及び石膏処理118に付される。石膏処理118から得たろ過ケーキ120は、向流デカンテーションプロセス108からの尾鉱と混合され、同じ中和110及び増粘112プロセスに付される。次いで、浸出貴液を清澄化122に付す。清澄化された液は、濾過124と、これに続くコバルト除去のための溶媒抽出プロセス126に付される前に、保存123される場合もある。コバルト抽出プロセスからの生成物は、Coに富みNiが希薄な抽出溶媒ストリームとCoが希薄でNiに富むラフィネートである。Coに富みNiが希薄な抽出溶媒ストリームは、沈殿128及び増粘/濾過130に付され、コバルトをコバルト生成物131として回収する。Coが希薄でNiに富むラフィネート133は、本発明のニッケル回収/結晶化法に付され、高純度硫酸ニッケルストリームを回収し、後にこれを処理して高純度固体硫酸ニッケル六水和物を得ることができる。
【0105】
より詳細には、実施例3に示されるように、Coが希薄でNiに富むラフィネート133は、Fe、Mn、Cu、Co、及びZnなどの多くの不純物を含む。本発明者らは、このストリーム133を溶媒抽出プロセス132に付して、硫酸ニッケル含有ストリームからニッケルを選択的に抽出し、実質的に全ての不純物を含むNi希薄ラフィネートと、実質的に不純物を含まないNiに富む抽出溶媒ストリームを得ることができることを見出した。この溶媒抽出プロセス132は、有機酸抽出溶媒を含む有機相を利用する。この例示的実施形態では、有機相は、Escaid110(C12+イソ-及びシクロアルカンの混合物を含むパラフィン希釈剤)などの好適な希釈剤に溶解した抽出溶媒としてのVersatic Acid 10(ネオデカン酸)を含む。Versatic Acid 10は、Hイオンを放出するイオン交換プロセスを通して、水溶液から金属を抽出するカチオン交換抽出溶媒である。このHイオンは、酸を使用して金属を有機相から剥離する剥離工程中にVersatic Acid10に戻される。有利なことに、この溶媒抽出プロセスは、外来試薬の使用を伴わない。しかし、当業者であれば、他の抽出溶媒及び/又は希釈剤が適用可能であり得ることを理解しよう。好適な抽出溶媒としては、有機リン酸、キレートオキシム(又はヒドロキシオキシム)、カルボン酸、及び高分子量アミン(HMWA)が挙げられる。使用される希釈剤は、特定の抽出工程用に選択した抽出剤と一致する。
【0106】
次いで、硫酸ニッケル六水和物を、結晶化プロセス134で回収することができる。硫酸ニッケル六水和物140の結晶化は、充填された有機相を硫酸剥離溶液136で剥離することによって達成される。充填されたVersatic Acid 10有機相からニッケルを剥離するために使用される硫酸の濃度は特に重要ではないが、実施例4に示すように、ニッケル濃度それ自体に相対的である。使用する硫酸の濃度は、剥離反応を右側に進め(例えば、本件ではNiSO.6HOの形成)且つプロセス条件(例えば、動作温度)での硫酸ニッケル六水和物140の溶解度積値を超え、剥離工程中に維持されることを確実にするのに十分に高い必要がある。典型的には、硫酸剥離溶液136は、300~450g/LのHSOを含む。しかし、別の実施形態では、硫酸剥離溶液は、10~300g/LのHSOを含む。好ましい形態では、プロセスは、剥離溶液138(硫酸が枯渇している)を再循環させることを含むが、抽出プロセス132に由来する新鮮なニッケル充填有機相の添加により、硫酸ニッケル六水和物140の溶液飽和レベルを超えるのを確実にする存在量である、高Ni2+濃度、典型的には、80~100g/LのNi2+を含む。表10に示すように、充填されたVersatic Acid 10相の導入されたニッケル含量の99%超を、1段階で剥離することができる。ニッケル分は、硫酸の添加により溶媒抽出ミキサーユニットの底部でより高密度の固相として剥離され、そこから重力/遠心分離及び必要に応じて洗浄技術によって回収することができる。固体の硫酸ニッケル六水和物140生成物を除去したら、ニッケルを本質的に含まない水相及び有機相を従来の手段によって分離する。有機相は、溶媒抽出プロセス132に再循環され、水流は、全体的なプロセス水収支の一部として上流プロセスに戻される。剥離溶液中の硫酸の量は、有機抽出溶媒相中のニッケルのニッケル濃度に依存する。
【0107】
最終産物である硫酸ニッケル六水和物140の目標純度が達成されることを確実にするために、充填したVersatic Acid 10相を、抽出及びスクラビング後に最終洗浄段階に付すことができる。この希釈剤洗浄段階は、金属のキャリーオーバーを最小限に抑え、抽出溶媒の劣化を最小限に抑える。「目標純度」とは、硫酸ニッケル六水和物が高純度/電池グレードであり、硫酸ニッケル六水和物中に、少なくとも21%、好ましくは21~24%、最も好ましくは約22~23%のニッケルを有することを意味する。当業者によって理解されるように、これは、硫酸ニッケル六水和物中、22.0%、22.1%、22.2%、22.3%、22.4%、22.5%、22.6%、22.7%、22.8%、22.9%、及び23%のニッケル含量を含む。また、高純度/電池グレードの硫酸ニッケル六水和物は、微量金属元素レベルも非常に低いこと、例えば、350ppm以下のCo、10ppm以下のCu、25ppm以下のCa、15ppm以下のCr、15ppm以下のFe、35ppm以下のMg、15ppm以下のMn、15ppm以下のPb、及び15ppm以下のZnであることを意味する。好ましくは、高純度/電池グレードの硫酸ニッケル六水和物は、250ppm以下のCo、5ppm以下のCu、15ppm以下のCa、10ppm以下のCr、10ppm以下のFe、25ppm以下のMg、10ppm以下のMn、10ppm以下のPb、及び10ppm以下のZnを含む。
【0108】
溶媒抽出プロセス132及び結晶化プロセス134におけるニッケルの充填及び剥離は、周囲温度又はそれより僅かに高い温度で行うことができる。例として、温度は、周囲温度から最大50℃であることができる。しかし、通常、熱エネルギーの入力は必要とされない。
【0109】
本発明のニッケル溶媒抽出及び結晶化方法は、超高純度(特殊化学)製品を製造するための技術の最初の開発及び実施であると信じられている。発明者の知る限りでは、精製及び結晶化(金属回収)工程を1つの操作にすることは、ニッケル産業は言うまでもなく、金属産業で行われていない。
【0110】
本発明者らはまた、低コストでの高純度の硫酸ニッケル生成物の生成と、既存の方法の1以上の欠点の克服とを目的とする統合された方法で、高純度の硫酸ニッケル結晶を調製することを可能にする方法を開発した。重要なことに、本発明の方法は、いずれもニッケル-コバルトに富むラテライト鉱石を処理するように設計された加圧酸浸出(PAL)及び高圧酸浸出(HPAL)といった「鉱石全体」の先行技術の方法と著しく異なる。具体的な違いとしては、以下が挙げられる。
・硫化ニッケル精鉱は、通常、8~10%のニッケルと40%の鉄を含む。このような硫化ニッケル精鉱を直接ローストし、これを電池グレードの材料に直接精製することは、技術的に実行可能と考えられていない。その理由は、浸出するであろう鉄残留物と共にニッケルの損失が生じるからである。対照的に、本発明の方法は、低品位の「鉱石全体」のラテライト原料ではなく、高品位の硫化ニッケル精鉱(ニッケル10%超)を処理するように設計されている。本発明の方法は、好ましくは、18%~20%のニッケルを含む高品位の硫化ニッケル精鉱を処理するように設計されている。
・オートクレーブで使用される著しく低い温度と圧力は、PAL及びHPAL法で使用される温度と圧力よりもリスク及び資本集約度が低い(更なる説明は、図5及び以下の記載を参照されたい)。
・オートクレーブ浸出回路は、酸素を使用して硫化鉱物を酸化し、これにより、金属を選択的に溶液中に浸出させることができる。対照的に、PAL及びHPAL法の硫酸は、ラテライト鉱石原料中に存在する多くの他の脈石を溶解する。
【0111】
硫化ニッケル精鉱から出発して電池グレードの硫化ニッケルにするためのより実行可能な選択肢は、バイオリーチング又は加圧浸出のいずれかによって精鉱を直接浸出させて、混合水酸化物沈殿(MHP)又は混合硫化物沈殿(MSP)を生成し、これを更に精製することである。硫化物精鉱の加圧浸出は、フォートサスカチュワンのSherritによって、カナダのマニトバ州リン湖のニッケル精鉱を処理するために1953年から使用され、1976年に閉鎖された。
【0112】
図1は、加圧酸化法の一部としての本発明のニッケル回収の態様の一実施形態を示す。しかし、本発明の実施形態の適用は、記載される原料又は分離及び精製工程の組合せに限定されない。
【0113】
図1の工程102~124を変更することにより、本発明者らは代替実施形態(プロセス300-図3)を開発した。この代替実施形態も、高品質で濃縮された硫酸ニッケル含有溶液を生成し、硫酸ニッケル含有溶液は、本発明の結晶化工程に付すことができる。再度述べるが、本発明の結晶化工程は、中間体の生成を必要としない。
【0114】
したがって、本発明の一態様では、硫酸ニッケルを回収するための方法が提供され、前記方法は、
硫化ニッケル精鉱の低温加圧酸化(LTPOX)オートクレーブ工程を含み、前記硫化ニッケル精鉱は10%超のニッケルを含む。
【0115】
以下、この方法を更に説明する。
1.選鉱(302)
硫化ニッケル精鉱を生成するための採掘された硫化ニッケル鉱石の浮選;好ましくは、精鉱は、10%超のニッケル含量を有し、好ましくは12%超のニッケル含量、より好ましくは15%超のニッケル含量を有する。追加の浮選法工程は、ニッケルのグレードと硫化鉄の部分除去を改善する。これにより、方法の装置のサイズを小さくする(体積スループットを下げる)ことを可能にし、延いては、必要なニッケルユニットスループットを達成しつつ、より小規模で低資本コストの精錬施設を可能にする(以下を参照)。
【0116】
2.リパルプ(304)
粉砕された硫化ニッケル精鉱をプロセス水でリパルプして、好ましくは10~20パーセントの固形分の重量パーセントを有するスラリーを得る。
【0117】
3.リグラインド及びスラリー保存(306)
硫化ニッケル精鉱の粒子を10ミクロンのP80に微粉砕することは、低温加圧酸化に有利な工程である(実施例5を参照)。微粉砕により、硫化物酸化の反応速度とニッケル抽出速度を向上し、LTPOX工程における時間とエネルギー消費が低減される。
【0118】
4.LTPOX(308)
3で得たスラリーの低温加圧酸化(LTPOX)により、浸出貴液(PLS)が得られる。中程度の温度(約150℃~170℃)又は高温(通常200℃超)のPOX(HTPOX)オートクレーブ工程(図1に示す代替実施形態で利用)とは異なり、LTPOXは、実施例6に示すように、より低い遊離硫酸濃度(>10g/l硫酸)でのオートクレーブからの取り出しを可能にし、塩基の消費量が少なくなり、試薬のコストが抑えられる。石灰石又は石灰を使用する場合、尾鉱内の石膏の堆積が少ないという利点もある。好ましい塩基はアンモニア(水酸化アンモニウム)であり、ニッケル原料と共に導入されるカルシウム以外に回路にカルシウムが添加されないので、固体の尾鉱が更に少なくなる。LTPOXオートクレーブ工程は、100~120℃の温度で行われ、オートクレーブに酸素を入れて、約800~1200kPa、好ましくは約1000kPaの酸素過圧を達成する。精鉱のオートクレーブ内での滞留時間は、3時間未満である。
【0119】
以前は、LTPOXは低品位のニッケル精鉱の処理のみに使用されていた。本発明者らの知る限りでは、それは、高品位硫化ニッケル精鉱から高品位硫酸ニッケル生成物を製造するための方法に適合されていない。高品位硫化ニッケル精鉱は、10%超のニッケル、好ましくは12%超のニッケル、更により好ましくは15%のニッケルを含むことが当業者によって理解される。
【0120】
図5に示すように、このオートクレーブ技術は、ニッケル産業の他の方法と比較して、金属を溶液中に浸出させるための温度と圧力が遥かに低い。本発明の方法は、図中「IGO」に示されている。温度と圧力が低いにもかかわらず、図中の他の2つの方法は、特許請求された方法に匹敵しない。Corefco法では、異なる出発物質(MSP-混合硫化物沈殿)とプロセスタイプ(アンモニア性POX浸出)を使用する。Kwinana法はニッケルマットから出発し、アンモニア性POX浸出にも依存する。硫酸ニッケル含有溶液を製造するための本明細書に記載の本発明の方法の文脈におけるLTPOXの利用は、ユニークであると考えられている。
【0121】
この点で、LTPOXを含む本発明の方法の開発は、熱酸硬化(HAC)の必要性を排除し、その結果、ニッケル回収がより良好となり、廃棄物の発生量が少なくなるという利点があることにも留意されたい。HAC回路の機能は、尾鉱の中和又は鉄を溶液中に放出する尾鉱保存施設(TSF)で分解する可能性があるオートクレーブ内に形成されたBFSを消化することである。HAC回路は、オートクレーブ取り出し物中の遊離酸を消費する。これは、LTPOXでは必要ではない。その理由は、BFSが、使用条件で熱力学的に優勢又は安定した鉄の形態ではなく、遊離酸レベルが著しく低いので、形成された固形物が解離する可能性が低いからである。
【0122】
5.PN(310)
一次中和(PN)-硫化物の酸化から生成された遊離酸、並びに鉄及びアルミニウムなどの可溶性不純物は、実施例7に示すように、PLSから中和され、pH3及び90℃で水酸化物として沈殿する。pHは、限定するものではないが、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、水酸化アンモニウム、水酸化物ナトリウムなどの中和剤を一定量添加することによって上昇させることができる。
【0123】
HACの必要性を排除することにより、PN工程を、向流デカンテーション(CCD)工程の前に行うことができる。これは、ニッケル損失のリスクを最小限に抑えるので有利である。
【0124】
6.CCD(312)
PLSのスラリーを増粘し、固液分離を向流デカンテーション(CCD)法で行い、清澄化したPLSが送り出される。
【0125】
7.硫黄浮選(314~320)
PLSのスラリーに由来する増粘化された固形物と、固形廃棄物を石灰でpH>8に中和した後に廃棄物保管施設に堆積する残存固形物の浮選により、販売可能な硫黄元素副生成物を任意に回収することができる。硫黄元素の回収は、実施例8に記載する。
【0126】
8.SN(322)及びPLSの清澄、保管、ろ過(324、326、328)
二次中和(SN)-この任意ではあるが好ましい工程は、工程5で詳細に記載した中和剤と同じ可能な中和剤を使用して、pH4及び70℃で浸出貴液(PLS)から残存不純物を除去するために用いられる。この更なる中和工程は、以下の溶媒抽出工程にとって許容可能な原料(工程328に由来する生成物である)を達成し、PLSからごく少量の固形物を沈殿及び研磨させることによって、ニッケル及びコバルトの損失を回避することである。
【0127】
既に述べたように、硫化ニッケル精鉱の加圧酸化に由来するPLSは、先行技術の方法に対して著しい改善をもたらす。LTPOX法は、低排出量、低消費電力、低廃棄物生成量、高効率、及び最初に中間生成物又は精製ニッケル生成物を製造する必要がないという点で、HTPOX法よりも有利である。
【0128】
例えば、LTPOXは、精鉱中の硫化物種の部分酸化法であり、硫黄の一部を酸化して、より少ない酸化硫黄元素種を生成する。これは、精鉱中の全ての硫化物が硫酸塩種に酸化されるHTPOX法で行われることとは異なる。金属生成物に関連しない全ての硫酸塩は、塩基(石灰、石灰石、及び/又は他の水酸化物)を消費し、これらの材料はプロセス廃棄物となり、尾鉱に送られ、廃棄物保管施設に堆積される。LTPOXは、浮選によって硫化物の一部を硫黄元素(販売可能な副生成物)に変換するので、更なる生成物を生成するだけでなく、尾鉱量及び方法に必要な試薬量を大幅に低減する。
【0129】
HTPOXはまた、より多くの塩基を消費し、余分な固体の尾鉱を生成する高い硫酸(遊離酸)濃度をもたらす。LTPOXの酸レベルが(HTPOXと比較して)低いことはまた、可溶化される脈石材料の低減を確実にし、高グレードの精鉱の使用と相俟って、硫酸ニッケル製造について過去に検討された従来の技術水準の方法と比較して、処理及び保管の尾鉱が遥かに減少することを意味する。
【0130】
乾式製錬のロースト工程を排除することにより、温室効果ガス排出量を著しく削減する。電気自動車又は太陽光発電からのエネルギー保存などの再生可能な、即ち「グリーン」エネルギー技術で最終的に使用されることになる、これらの方法から得られる生成物により、温室効果ガス排出量がより少なくなる利点が得られる。
【0131】
更なる方法工程
この新たな方法に続き、清澄化されたPLSを以下に付す(図1及び図4を参照)。
9.CoSX(430、432、434)
コバルト溶媒抽出(CoSX)-Co、Cu、Zn、Mn、及びMgは、実施例9に示すように、VivaSol 2046などの有機希釈剤中のCyanex272などの有機ホスフィン酸を使用するCoSX回路において、清澄化PLSから除去される。水酸化アンモニウム又はマグネシア又は水酸化ナトリウムを使用して、金属が水から有機相中に抽出されるときに、金属によって置換されたHイオンを中和することができる。任意に、コバルト及び銅を含有する混合硫化物沈殿副生成物を、CoSX回路から回収することができる。
【0132】
10.NiSX(132)
ニッケル溶媒抽出(NiSX)-清澄化されたPLS中のNi及び少量の残留不純物、例えば、Co、Na、Ca、及びMgが、Versatic 10有機相を用いてNiSXで除去される。再度、水酸化アンモニウム又はマグネシア又は水酸化ナトリウムを中和塩基として使用することができる。水酸化アンモニウムがpH調整のための塩基として使用される場合、本発明の方法は、硫酸アンモニウム結晶化回路を含む。
【0133】
11.NI DXTL(134)
直接結晶化(DXTL)-ニッケル回収/結晶化工程は、ニッケルに富む有機相からNiSO.6HO結晶を回収する本発明の新たな方法として前記した通りである。本発明の新たな回収/結晶化工程は、図4の硫酸ニッケル含有溶液を製造するための新たな方法の文脈で示される。
【0134】
詳述したように、充填されたニッケルは、硫酸ニッケル溶液を含む酸性硫酸ニッケル剥離水溶液中に剥離されると金属硫酸塩六水和物が直ちに結晶化するパラメータとして溶解度を使用して剥離される。一実施形態では、剥離溶液は、300g/L超の硫酸を含む。しかし、好ましい実施形態では、剥離溶液は、10~300g/Lの硫酸を含む。有機物は、NiSX工程での更なるニッケル抽出のために任意に回収することができる。
【0135】
次いで、硫酸ニッケル結晶は、洗浄、遠心分離、及び乾燥された後、顧客によるリチウムイオン電池前駆体材料調製物への商業上の販売のためにパッケージングされる。
【0136】
硫酸ニッケル含有溶液を製造するための本発明の方法の利点は、中間体生成物が製造されないことである。ラテライト又は従来技術の硫化物鉱石法から出発する場合、中間体生成物の沈殿工程が、混合水酸化物及び混合硫化物沈殿を生成し、これらは更なる精製工程を経る必要がある。これらの更なる精製工程が、既に述べた廃棄物、効率、及びニッケル回収の問題という欠点に至る。硫化鉱石から出発する方法でも、製錬法がマットを生成し、これは、存在する鉄を除去するための大規模な追加処理と精製を必要とする。
【0137】
PN、SN、CoSX、及びNiSXの好ましい塩基は、水酸化アンモニウムである。水酸化アンモニウムを使用すると、貴重な硫酸アンモニウム副生成物が回路から結晶化される。この副生成物は肥料市場で有用であり、本発明の硫化ニッケル精鉱法のユニークな副生成物である。これは、中間沈殿工程を有することなく硫酸ニッケルを生成する他の統合された硫化ニッケル法は、この副生成物を生成しないことを意味する。
【0138】
本発明の硫酸ニッケル含有溶液を製造するための方法はまた、以下の表1のように、高品位のコバルト及び銅を含む混合硫化物沈殿共生成物を生成する。
表1:混合Cu/Co硫化物沈殿(MSP)生成物
【表1】
【0139】
これは、硫化ニッケル精鉱から方法に入る残留銅及びコバルトの値からその価値を回収する。前記表にまとめた混合Cu/Co硫化物MSP生成物を生成するために使用される原料の銅及びコバルトの値を、表5に示す。この方法にコバルト/銅生成物を生成する工程を含めることは、ユニークである。
【0140】
本発明の方法の更なる利点は、実施例10に記載されるように、高ヒ素含有ニッケル精鉱(最大5000ppmのAs)を電池グレードの硫酸ニッケル生成物に加工する能力と、有価残留物渣ストリームからニッケル及びコバルトを抽出した後の有価のPGMの価値の定量的回収能力である。本発明の方法は、100ppm超のヒ素、好ましくは1000ppm超のヒ素を含むニッケル精鉱を、電池グレードの硫酸ニッケル生成物に加工するために使用することができる。
【0141】
本発明の方法はまた、不純物を低減するのに有用である。
・カルシウムは、NiSX工程で還元及び除去される。
・銅は、CoSX工程で除去され、混合硫化物沈殿工程で沈殿する。
・鉄は、オートクレーブ及び中和工程(PN及びSN)で酸化物として沈殿する。次いで、大部分の鉄は、CCD回路で固液分離した後、尾鉱に送られる。一部の鉄は、SN後、研磨ろ過に付される。
【実施例
【0142】
以下の実施例は、ニッケル溶媒抽出及び結晶化工程、即ち本発明のニッケル回収工程の結果を示す。特段の断りがない限り、元素レベルは、ICP-OESで測定した。
【0143】
実施例1-コバルトが希薄なニッケル原料溶液を使用した抽出溶媒としてのバーサチック酸(Versatic Acid)
表2は、コバルトが希薄なニッケル原料溶液を使用して充填した15%v/vのEscaid 110中の新鮮及び循環されたVersatic Acid 10の組成(ppm)を示す(注:最大25%v/vでベンチスケール試験も成功している)。不純物レベルに非常に小さな差があるものの、結果は、全体的なニッケル充填容量が大きくは影響されていないことを示す。
表2:新鮮及び再利用された充填有機相の組成
【表2】
【0144】
更なる一連の試験を行って、ニッケルが充填されたVersatic Acid 10を濃硫酸で剥離することが、多くの再利用段階の後、Versatic Acid 10抽出溶媒の劣化をもたらさないことを確認した。表3は、15%v/vのEscaid 110中のVersatic Acid 10相を430g/LのHSOに1週間接触させる前及び接触させた後のニッケル充填容量を示す。
表3:充填されたVersatic Acid 10の組成
【表3】
【0145】
表2のデータは、Versatic Acid 10試薬の充填容量が、過剰量の硫酸による長時間の処理によって影響を受けなかったことを示す。
【0146】
実施例2-硫酸ニッケル六水和物の結晶化
ニッケル溶媒抽出と硫酸ニッケル六水和物の結晶化の各段階を複数回繰り返して、図2に示すバルクサンプルを生成した。図2は、Ni DXTLアプローチを使用した、約40Lの充填されたVersatic Acid 10抽出溶媒から回収されたNiSO.6HOの1.7kgのサンプルの一部を示す。
【0147】
図2に示すバルクサンプルに由来する複数のグラブサンプルの平均化学組成を分析し、結果を表4にまとめた。
表4:結晶化硫酸ニッケル六水和物生成物の組成
【表4】
【0148】
表4にその組成が示されている生成物は、表5にその組成が示されている原料(Nova Concentrate)から得た。
表5:表4の結晶化生成物を生成するために使用される原料の組成
【表5】
【0149】
実施例3-Coが希薄でNiに富むラフィネートからのニッケルの選択的抽出
表6は、最適な抽出pHを決定するために、コバルトが希薄でニッケルに富むバルクラフィネートに対してニッケルpH抽出プロファイルサイター試験を行った結果を示す。試験は、pH範囲(5.0、5.5、6.0、6.5、及び7.0)に亘って、1:1の一定の接触水:有機物(A:O)で温度(50℃)にて行った。
【0150】
表6の結果は、平衡pH7.0でA:O比1:1の単一バッチ接触で達成された最大の達成可能ニッケル抽出が、94%であったことを示した。Co、Ca、Mg、及びCuの金属抽出は、それぞれ81.1%、7.58%、1.4%、及び80.8%であった。
【0151】
ニッケルと選択された共抽出金属:Co、Ca、Mg、及びCuとの平衡抽出率のpHに対するプロットを、図6に示す。
表6:50℃、A:O 1:1でpHを変化させたニッケル抽出等温線サイター試験の結果
【表6】
【0152】
表7は、コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートに対して、水:有機物(A:O)の様々な接触比を使用した温度50℃でのニッケル抽出等温線サイター試験の結果を示す。これまでの結果に基づき、7.0の平衡pHを目標に試験を行った。
表7:50℃、目標pH7で、A:Oを変化させたニッケル抽出等温線サイター試験の結果
【表7】
【0153】
表8は、コバルトが希薄でニッケルに富むバルクラフィネートに対するバルクニッケル抽出の結果を示す。表7に示すサイターの結果に基づき、7.0の平衡pHを目標とする1:1の接触A:O比を採用した。ニッケルバルク抽出の合計3バッチを、コバルトが希薄でニッケルに富むバルクラフィネートで行い、剥離結晶化試験用の原料のための最大充填有機物を生成した。一貫したニッケル抽出結果が、3バッチで得られた。具体的には、85.8%(バッチ1)~88.4%(バッチ2)の範囲であり、コバルトの共抽出は3つのバッチ全てで高く、60.7%(バッチ1)~79.7%(バッチ3)の範囲であった。しかし、主要な不純物(Ca、Mg、及びNa)の共抽出は、Ca、Mg、及びNaで、それぞれ<8%、<2%、及び<0.1%と比較的低かった。
【0154】
コバルトラフィネート(Ni SX水性原料)で報告されたその他の微量不純物(Cu、Fe、及びZn)は、微量レベル(いずれも<1ppm)であった。
表8:ニッケル抽出-バルク試験結果
【表8】
【0155】
表9は、ニッケルに富む有機相を原料有機物として使用し、10g/Lのニッケル溶液をスクラブ水性原料として使用したニッケルスクラブサイター試験の結果を示す。行ったスクラブ試験は、pH調整剤として50g/Lの硫酸溶液を使用して、スクラブ目標pH範囲(6.0、6.50、及び7.0)に亘って、1:1のA:O比で行った。
【0156】
スクラブ試験の結果は、6.50のスクラブ平衡pHでの単一バッチ接触で、75%超のCo、89%Mg、及び34%のCaが、充填された有機物からスクラブされることを示した。スクラブ溶液を含む希薄ニッケル由来のニッケルは、除去された金属及び種の代替として、6.50のスクラブ平衡pHで充填された有機物(~4.8%Ni)に充填されることも示され、これは、電池グレードの硫酸ニッケルを製造する方法に重要な精製工程である。
表9:ニッケルスクラビング試験の結果
【表9】
【0157】
表10は、各段階でニッケルに富む有機相(Versatic Acid 10から構成される)から剥離される各金属の量を示す。表10を生成するために使用した条件を表11に示す。充填されたVersatic Acid 10相に導入されたニッケル含量の99%超を、1段階で剥離することができる。
表10-剥離有機溶液アッセイ
【表10】
表11-表10の生成に使用される条件
【表11】
【0158】
実施例4-ニッケル剥離及び結晶化
ニッケルに富む有機相(洗浄及びスクラブされていない)を、結晶化ユニットにて剥離及び結晶化に付し、温度40℃で硫酸ニッケル結晶を生成した。充填した有機物(3L)の各バッチを、1:1の剥離水:有機物(A:O)比にて、480g/Lの硫酸で剥離した。各回の剥離の成功後、剥離された有機物を結晶化装置から取り出し、充填された有機物の別のバッチを結晶化装置に添加した。これを、12回を超える接触で繰り返し、濃縮して、剥離水溶液が硫酸ニッケル結晶を生成するようにした。試験結果を表12aにまとめる。
【0159】
遊離酸濃度はニッケル濃度それ自体に依存する。硫酸ニッケル結晶は、7回目のサイクル(7回目の接触)後に結晶化し始めた。剥離水生成物中のニッケルの濃度は、7回目の接触後、それ程大きく変化しなくなり始めた。12回目の接触後、硫酸ニッケル結晶を真空ろ過で回収し、ARグレードのアセトンで洗浄し、40℃で乾燥して、解析に付した。結晶解析の結果を表4に示す。
表12a:ニッケル剥離及び結晶化試験の結果
【表12a】
【0160】
ニッケルに富む有機相はまた、10g/Lの目標遊離酸濃度で、結晶化ユニット内にて剥離及び結晶化に付し、硫酸ニッケル結晶を生成した。条件の概要を表12bに示す。結果の概要を表12cに示す。
表12b:ニッケル剥離-直接結晶化(DXTL)条件
【表12b】
表12c:表12bに概要が示されている条件を使用した直接ニッケル剥離及び結晶化試験の結果
【表12c】
【0161】
実施例5-高品位精鉱を達成するための微粉砕
硫化ニッケル精鉱を10ミクロンのP80に微粉砕することは、低温加圧酸化に有利な工程である。微粉砕により、硫化物酸化の反応速度とニッケル抽出速度が向上し、LTPOX工程における時間とエネルギー消費が削減される。
【0162】
図7は、スラリーの固形分が38ミクロンのP80に粉砕された硫化ニッケル精鉱と、未粉砕サンプルから得られた結果の品質を比較する。175g/tのTETA(トリエチレンテトラミン)と175g/tのSS(亜硫酸ナトリウム)を、いずれの場合でも用いた。ペントランド鉱から磁硫鉄鉱を遊離させると、磁硫鉄鉱の除去が改善した。図7aは、粉砕サンプルと未粉砕サンプルのS:Ni比を比較する。図7bは、粉砕サンプルと未粉砕サンプルのEh(酸化/還元電位)を比較する。TETAとSSによる磁硫鉄鉱表面の活性化は、Eh変化によって維持される。
【0163】
図8aは、異なるP80値のサンプルのLTPOX工程での硫化物酸化の反応速度を比較する。試験は、105℃、1,000kPa O OPにて、1g/LのCl又は5g/LのClで行った。P80値が10ミクロン未満のサンプルは、P80値が18ミクロンのサンプルよりも大幅に速く酸化された。
【0164】
図8bは、異なるP80値のサンプルのLTPOX工程でのニッケル抽出率を比較する。試験は、105℃、1,000kPa O OPにて、1g/LのCl又は5g/LのClで行った。P80値が10ミクロン未満のサンプルに由来するニッケルは、P80値が18ミクロンのサンプルに由来するニッケルよりも大幅に速く抽出された。
表13に、図8及び図8bに示されている主要な結果をまとめる。
【表13】
【0165】
実施例6-LTPOXとHTPOXとの比較
表14(HTPOX)及び表15(LTPOX)にまとめられているように、リグラインド後の硫化ニッケル精鉱のスラリーのHTPOXとLTPOXの両方に適した条件を、評価及び比較した。
【0166】
HTPOX-高い浸出回収率が210℃で示された。48μmのP80に粉砕して原料固形物を調製し、1g/LのClを含む溶液で20%(w/w)に希釈した。得られたPLSは、62g/Lの遊離酸、16g/Lの鉄(主にFe(III)として)、36.4g/Lのニッケル、1.08g/Lのコバルト、0.8g/Lのアルミニウムを含有した。
【0167】
LTPOX試験は、97%のニッケルと97%のコバルトと70%の銅の抽出が達成できたことを示した。部分酸化法では、最大26%のS(硫黄元素)を含む残留物が生成された。PLSは、5.5g/Lの遊離酸、0.9g/Lの鉄(0.3g/LのFe(II))、32.9g/Lのニッケル、0.98g/Lのコバルト、及び0.14g/Lのアルミニウムを含有し、これは、選択性が遥かに低いPOX浸出と比較すると、本方法の大きな利点である。
【0168】
210~225℃でのニッケル精鉱のPOX浸出は、実行可能で標準的なプロセスルートと考えることができた。その理由は、全ての原料硫化物が完全に硫酸塩に酸化されるからである。しかし、必要な高圧の酸素、圧力容器の定格、及び塩基性硫酸第二鉄を生成する可能性を考慮する必要がある。更に、PLSの下流処理では、LTPOX及び大気浸出処理から得られるPLSと比較して、酸中和及び鉄除去用に著しく多くの石灰石を必要とする。LTPOXを使用する場合には、試薬のコストが削減される。
表14-比較HTPOX試験のまとめ
【表14】
表15-比較LTPOX試験のまとめ
【表15】
【0169】
実施例7-一次中和
表16は、pHが時間(分単位のt)とともに変化するにつれて、一次中和後の試験PLSの組成を示す。硫化物の酸化によって生成した遊離酸並びに鉄及びアルミニウムなどの可溶性不純物は中和され、約pH3で水酸化物として沈殿する。
表16-様々なpH及び時間での一次中和
【表16】
【0170】
実施例8:硫黄元素副生成物の回収
図9は、方法のPLSの異なるスラリーの累積硫黄元素(累積S回収率(%))と浮遊時間(累積浮遊時間(min))との関係を示す。これらの異なるスラリーは、異なる浮選試薬を使用して調製した。MIBCは、メチルイソブチルカルビノールを意味し、W24は、Huntsmanより提供されるW24 Frotherを意味し、Dowfroth 250aは、Dow Chemicalより提供されるDowfroth 250 A Flotation Frotherを意味する。
【0171】
原料に9%のSが含まれる20tphでは、浮選原料の総硫黄元素は、14,191tpaであった。硫黄元素の最大60%を回収して、この硫黄が尾鉱に移動するのを最小限に抑えることができると予想される。
【0172】
実施例9:コバルト溶媒抽出
表17は、CoSX回路における、清澄化されたPLSからの金属の抽出率を示す。コバルトバルク抽出は、10%v/vのCyanex 272(5%v/vのTBP)を使用して、3:1の接触A:O比にて5.70の平衡pHで行った。2段階に亘って、水相から99%超の金属抽出(Co、Al、Cu、及びMn)が達成された。ニッケルの共抽出は比較的低かった(<0.6%)。平衡pH5.50にて、1:1のスクラブA:O比での充填有機物のスクラビングは、94%超のNi、76%Mg、及び32.%のCaの、充填有機物からのスクラブを達成した。
表17-CoSX回路の清澄化PLSからの金属の抽出率
【表17】
【0173】
実施例10:高ヒ素精鉱からの電池グレードニッケル生成物の生成
この方法は、高ヒ素含量のニッケル精鉱(最大5000ppmのAs)を電池グレードの硫酸ニッケル生成物まで処理することができる。
【0174】
表18は、ヒ素を多く含む代替精鉱の組成を示す。表19は、表18の高ヒ素精鉱から生成された生成物の結晶組成を示す。より高いヒ素原料は、生成物中の高いヒ素レベルをもたらさなかった。
【0175】
本発明の方法は、代替精鉱原料を使用することによる生成物品質への系の有害又は有益な影響がないので、堅牢であり、各種精鉱に適用可能である。
表18-高ヒ素含量の代替ニッケル精鉱組成
【表18】
表19-表18の高ヒ素精鉱から生成された結晶の組成
【表19】
【0176】
本明細書に開示及び定義された本発明は、記載又は図面により言及された又は明らかな2つ以上の個々の特徴の代替の組合せの全てに及ぶことが理解されよう。これらの異なる組合せはいずれも、本発明の様々な代替態様を構成する。
【0177】
発明のステートメント
ステートメント1.ニッケルに富む有機相からNiSO.6HO結晶を回収する方法であって、
ニッケルに富む有機相を、前記有機相からニッケルを抽出するのに十分なHSO濃度及びNiSO.6HO結晶を析出させてニッケル希薄有機相を生成するのに十分なNi2+濃度の剥離水溶液に接触させることを含む方法。
ステートメント2.更に、前記ニッケル希薄有機相から前記NiSO.6HO結晶を分離することを含むステートメント1に記載の方法。
ステートメント3.前記剥離溶液が、10~300g/LのHSO濃度を有するステートメント1から2のいずれかに記載の方法。
ステートメント4.前記ニッケルに富む有機相が、ニッケルと有機抽出溶媒との配位錯体を含み、前記有機抽出溶媒が、十分な濃度のHイオンの存在下で、前記ニッケルから解離するステートメント1から3のいずれかに記載の方法。
ステートメント5.前記Hイオンが、NiSOとのイオン交換プロセスで提供されるステートメント4に記載の方法。
ステートメント6.前記有機抽出溶媒が、有機リン酸、キレートオキシム又はヒドロキシオキシム、カルボン酸、及び高分子量アミンからなる群から選択されるステートメント4から5のいずれかに記載の方法。
ステートメント7.前記有機抽出溶媒が、前記有機相の約10重量%から最大約25重量%であるステートメント3から6のいずれかに記載の方法。
ステートメント8.前記有機抽出溶媒が、以下の構造:
【化2】
(式中、RとRは、分岐又は直鎖の非置換アルキル基であり、RとRは、合わせて5~13個の炭素原子からなる。)を有する分岐カルボン酸であるステートメント4から7のいずれかに記載の方法。
ステートメント9.前記分岐カルボン酸が、ネオデカン酸であるステートメント8に記載の方法。
ステートメント10.前記有機相が、有機希釈剤を含み、前記有機希釈剤が、1以上のC10+アルカンであるステートメント1から9のいずれかに記載の方法。
ステートメント11.前記有機希釈剤が、1以上のイソアルカン、1以上のシクロアルカン、及びそれらの混合物を含むステートメント10に記載の方法。
ステートメント12.前記方法が、酸性硫酸ニッケル含有水溶液を、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、前記水溶液から硫酸ニッケルを前記有機相中に選択的に抽出して、硫酸ニッケル希薄水性ラフィネート及び硫酸ニッケルに富む有機相を生成することと、
前記ラフィネートと前記硫酸ニッケルに富む有機相とを分離することとを含み、
前記有機抽出溶媒が、1以上の分岐カルボン酸であるステートメント1から11のいずれかに記載の方法。
ステートメント13.前記方法が、硫酸ニッケル及び1以上の金属不純物を含む水溶液を有機相に接触させることを含み、前記有機相が、1以上の分岐カルボン酸抽出溶媒を含み、水溶液から前記有機相中への硫酸ニッケルの抽出を選択的に促進し、硫酸ニッケルに富む有機相を生成する溶媒抽出工程を含むステートメント1から11のいずれかに記載の方法。
ステートメント14.前記硫酸ニッケル含有溶液が、硫化ニッケル精鉱の高温加圧酸化に由来する浸出貴液であるステートメント12から13のいずれかに記載の方法。
ステートメント15.前記硫酸ニッケル含有溶液が、硫化ニッケル精鉱の低温加圧酸化に由来する浸出貴液であるステートメント12から13のいずれかに記載の方法。
ステートメント16.前記ニッケル希薄有機相が、前記有機相又はその成分として再利用されるステートメント12から14のいずれかに記載の方法。
ステートメント17.前記ニッケルに富む有機相が、5ppm以下のFe及び/又は5ppm以下のMn及び/又は5ppm以下のCu及び/又は60ppm以下のCo及び/又は10ppm以下のZnを含むステートメント1から16のいずれかに記載の方法。
ステートメント18.前記NiSO.6HO結晶が、5ppm以下のFe及び/又は5ppm以下のMn及び/又は5ppm以下のCu及び/又は60ppm以下のCo及び/又は10ppm以下のZnを含むステートメント1から17のいずれかに記載の方法。
ステートメント19.前記1以上の金属不純物が、Fe、Mn、Cu、Co、Zn、及びそれらの組合せからなる群から選択されるステートメント1から18のいずれかに記載の方法。
ステートメント20.前記剥離溶液が、60g/L以上のNi2+濃度を有するステートメント1から19のいずれかに記載の方法。
ステートメント21.ステートメント1から20のいずれかに記載の方法にしたがって製造されたNiSO.6HO結晶。
ステートメント22.硫酸ニッケルを回収するための方法であって、
硫化ニッケル精鉱の低温加圧酸化(LTPOX)オートクレーブ工程を含み、前記硫化ニッケル精鉱が、10%超のニッケルを含む方法。
ステートメント23.前記硫化ニッケル精鉱が、10ミクロンのP80に微粉砕されるステートメント22に記載の方法。
ステートメント24.前記LTPOXオートクレーブ工程が、酸素を用いて前記硫化ニッケル精鉱の硫化ニッケルを前記硫酸ニッケルに酸化するステートメント22から23のいずれかに記載の方法。
ステートメント25.水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を使用する一次中和工程を更に含むステートメント22から24のいずれかに記載の方法。
ステートメント26.向流デカンテーション工程を更に含むステートメント25に記載の方法。
ステートメント27.水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を使用する二次中和工程を更に含むステートメント26に記載の方法。
ステートメント28.ニッケルに対してコバルトを選択的に有機相中に抽出して、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームとコバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを生成する有機抽出溶媒を含むコバルト溶媒抽出工程を更に含むステートメント27に記載の方法。
ステートメント29.コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームの有機相が、コバルト希薄有機相に変換され、前記コバルト希薄有機相が、前記有機相又はその成分として再利用されるステートメント28に記載の方法。
ステートメント30.ニッケル溶媒抽出工程及び直接結晶化工程を更に含み、前記ニッケル溶媒抽出工程が、
前記コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、ニッケルに富む有機相を生成することを含み、
前記直接結晶化工程が、
前記ニッケルに富む有機相を、前記有機相からニッケルを抽出するのに十分なHSO濃度及びNiSO.6HO結晶を析出させてニッケル希薄有機相を生成するのに十分なNi2+濃度の剥離水溶液に接触させることを含むステートメント28から29のいずれかに記載の方法。
ステートメント31.前記コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、前記水溶液から硫酸ニッケルを前記有機相中に選択的に抽出して、硫酸ニッケル希薄水性ラフィネート及び前記ニッケルに富む有機相を生成するニッケル溶媒抽出工程と、
前記ラフィネートと前記ニッケルに富む有機相を分離することとを更に含み、
前記有機抽出溶媒が、1以上の分岐カルボン酸であるステートメント28から29のいずれかに記載の方法。
ステートメント32.コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネート及び1以上の金属不純物を有機相に接触させることを含み、前記有機相が、1以上の分岐カルボン酸抽出溶媒を含み、水溶液から前記有機相中への硫酸ニッケルの抽出を選択的に促進し、ニッケルに富む有機相を生成するニッケル溶媒抽出工程を更に含むステートメント28から29のいずれかに記載の方法。
ステートメント33.水酸化アンモニウム、マグネシア、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基が、前記ニッケル溶媒抽出工程に使用されるステートメント31から33のいずれかに記載の方法。
ステートメント34.前記ニッケルに富む有機相が、ニッケル希薄有機相に変換され、前記ニッケル希薄有機相が、前記有機相又はその成分として再利用されるステートメント31から33のいずれかに記載の方法。
ステートメント35.硫酸アンモニウム副生成物が回収されるステートメント25から34のいずれかに記載の方法。
ステートメント36.硫酸ニッケルを製造するための方法であって、
a)硫化ニッケル精鉱の供給源を準備する工程と、
b)工程a)の前記硫化ニッケル精鉱をリパルプする工程と、
c)工程(b)で得られた硫化ニッケル精鉱を、10ミクロンのP80に微粉砕する工程と、
d)工程(c)で得られた硫化ニッケル精鉱を、低温加圧酸化(LTPOX)オートクレーブして浸出貴液(PLS)を得る工程であって、前記硫化ニッケル精鉱が、10%超のニッケルを含む工程と、
e)水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を使用して、工程(d)の前記PLSを中和する工程と、
f)工程(e)で得られたPLSを向流デカンテーションして、前記PLSのスラリーから固形物を分離する工程と、
g)水酸化アンモニウム、石灰石、石灰、カルクリート、マグネシア、マグネサイト、及び水酸化ナトリウムを含む群から選択される1以上の塩基を用いて、工程(f)で得られたPLSを中和する工程と、
h)任意に、工程(g)で得られたPLSを清澄化する工程と、
i)工程(g)又は工程(h)の前記PLSからコバルトを抽出する工程であって、コバルト抽出が、ニッケルに対してコバルトを選択的に有機相中に抽出して、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームとコバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートとを生成する有機抽出溶媒を含む工程と、
j)工程(i)の前記コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートからニッケルを抽出する工程であって、ニッケル抽出が、前記コバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、ニッケルに富む有機相を生成することを含む工程と、
k)工程(j)の前記ニッケルに富む有機相を直接結晶化する工程であって、前記直接結晶化が、前記ニッケルに富む有機相を、前記有機相からニッケルを抽出するのに十分なHSO濃度及びNiSO.6HO結晶を析出させてニッケル希薄有機相を生成するのに十分なNi2+濃度の剥離水溶液に接触させる工程とを含み、
前記硫酸ニッケルが、21~24%のニッケルであり、硫酸ニッケル六水和物(NiSO.6HO)の形態である方法。
ステートメント37.前記ニッケルに富む有機相が、5ppm以下のFe及び/又は5ppm以下のMn及び/又は5ppm以下のCu及び/又は60ppm以下のCo及び/又は10ppm以下のZnを含むステートメント30から36のいずれかに記載の方法。
ステートメント38.ステートメント22から37のいずれかに記載の方法にしたがって製造された硫酸ニッケル。
ステートメント39.前記方法が、
酸性硫酸ニッケル含有水溶液を、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、前記水溶液から硫酸ニッケルを前記有機相中に選択的に抽出して、硫酸ニッケル希薄水性ラフィネート及びニッケルに富む有機相を生成することと、
前記ラフィネートと前記ニッケルに富む有機相を分離することとを含み、
前記有機抽出溶媒は、1以上の分岐カルボン酸であるステートメント1から6のいずれかに記載の方法。
ステートメント40.前記方法が、
硫酸ニッケル及び1以上の金属不純物を含む水溶液を有機相に接触させることを含み、前記有機相が、1以上の分岐カルボン酸抽出溶媒を含み、水溶液から前記有機相中への硫酸ニッケルの抽出を選択的に促進し、前記硫酸ニッケルに富む有機相を生成する溶媒抽出工程を含むステートメント1から6のいずれかに記載の方法。
ステートメント41.前記方法が、
硫酸ニッケル含有水溶液を、有機抽出溶媒を含む有機相に接触させて、前記ニッケルに富む有機相を生成することを含むニッケル溶媒抽出工程を含み、前記硫酸ニッケル含有水溶液が、コバルトが希薄でニッケルに豊むラフィネートである浸出貴液(PLS)であるステートメント1から6のいずれかに記載の方法。
ステートメント42.前記方法が、
ニッケル溶媒抽出の前に前記硫酸ニッケル含有溶液のコバルト抽出を含み、前記コバルト抽出工程が、ニッケルに対してコバルトを選択的に有機相中に抽出して、コバルトに富むニッケル希薄抽出溶媒ストリームとコバルトが希薄でニッケルに富むラフィネートを生成する有機抽出溶媒を含むステートメント39から41のいずれかに記載の方法。
ステートメント43.前記硫酸ニッケル含有溶液が、硫化ニッケル精鉱の低温加圧酸化に由来する浸出貴液であるステートメント39から42のいずれかに記載の方法。
ステートメント44.前記硫化ニッケル精鉱が、10%超のニッケルを含むステートメント43に記載の方法。
ステートメント45.前記NiSO.6HO結晶が、5ppm以下のFe及び/又は5ppm以下のMn及び/又は5ppm以下のCu及び/又は60ppm以下のCo及び/又は10ppm以下のZnを含むステートメント36及び39から44のいずれかに記載の方法。
ステートメント46.前記剥離溶液が、60g/L以上のNi2+濃度を有するステートメント36及び39から45のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9