(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、アミン硬化剤およびイミダゾールをベースとするゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20240325BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240325BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240325BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240325BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20240325BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20240325BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08L63/00 A
C08K3/013
C08K3/011
C08G59/40
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2021515001
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 FR2019052117
(87)【国際公開番号】W WO2020058604
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-07
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ランドロー エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー エティエンヌ
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/002538(WO,A1)
【文献】特開平05-050558(JP,A)
【文献】特表2016-506430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08G 59/00- 59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
- ジエンエラストマー、
- 強化充填材、
-
硫黄及び少なくとも1種の加硫促進剤を含む架橋系、
- 100質量部のエラストマー当たり1~30質量部(phr)のエポキシ樹脂、
- 少なくとも1個の6員芳香族環に位置する少なくとも2個の第一級アミン官能基を含む、1~15phrの間のアミン硬化剤であり、前記少なくとも1個の6員芳香族環は、
・ 少なくとも1個の第一級アミン官能基、および
・ 直鎖状または分岐C1-C6アルキル基、ハロゲン、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミン、チオエーテル、ケトン、エステルおよびアミドからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基
を、前記少なくとも1個の6員芳香族環が前記第一級アミン官能基に対してオルト位に位置する水素原子を含まないように含む、アミン硬化剤、
- 一般式(A)のイミダゾール
【化1】
(式中、
・ R
aは、
少なくとも1個のヒドロキシル基により置換されていてもよい、11~13個の炭素原子を含むナフチルアルキル基であり、
・ R
bは
1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
・ R
cおよびR
dは、
水素原子、および1~12個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立に選択される)
に基づくゴム組成物。
【請求項2】
ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂の含有量が、10~25phrの間、好ましくは10~20phrの間である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
アミン硬化剤の含有量が、5~10phr、好ましくは2~8phrにわたる範囲内にある、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
一般式(A)のイミダゾールの含有量が、0.1~5phrにわたる範囲内である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
強化充填材の含有量が、20~200phr、好ましくは30~150phrにわたる範囲内である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のゴム組成物を含む最終または半最終ゴム物品。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のゴム組成物を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にタイヤのまたはタイヤの半最終製品の製造を意図されるゴム組成物に関する。本発明の対象はまた、本発明によるゴム組成物を含む最終または半最終ゴム物品、および本発明による少なくとも1種の組成物を含むタイヤである。
【背景技術】
【0002】
タイヤのいくつかの部品において、タイヤにわずかな歪みがかかっている間に高剛性を示すゴム組成物を使用することは、国際出願WO02/10269号で提示されているように公知の技術である。わずかな歪みに対する抵抗は、タイヤが、かけられた応力に対して応答するために示さなければならない性質の1つである。
この剛性化は、強化充填材の含有量を増大させることにより、またはタイヤの部品の構成成分のゴム組成物に或る種の強化樹脂を組み込むことにより達成することができる。
組成物の剛性を増大させるために従来使用された強化樹脂は、メチレン受容体/供与体系をベースとする強化樹脂である。用語「メチレン受容体」および「メチレン供与体」は当業者に周知であり、一緒に反応して、一方では強化充填材/エラストマーネットワークと、他方ではエラストマー/硫黄ネットワーク(架橋剤が硫黄であれば)と重なり合って相互貫入する3次元強化樹脂を、縮合により発生させることができる化合物を意味するとして広く使用されている。従来、メチレン受容体はフェノール樹脂である。フェノールノボラック樹脂は、特にタイヤまたはタイヤトレッドのために、接着または強化材として種々の用途のために意図されるゴム組成物においてすでに記載されている;例えば、欧州特許第0649446号が引用される。
上で記載されたメチレン受容体は、それを架橋または硬化させることができる、「メチレン供与体」としても知られている硬化剤と組み合わされる。次いで、ゴム基材の硬化中に、樹脂のフェノール環のオルトおよびパラ位の炭素とメチレン供与体の間でメチレン架橋を形成することにより樹脂の架橋が生じて、その結果3次元樹脂ネットワークを創出する。従来使用されるメチレン供与体は、ヘキサメチレンテトラミン(HMTと略称される)またはヘキサメトキシメチルメラミン(HMMMまたはH3Mと略称される)またはヘキサエトキシメチルメラミンである。
【0003】
しかしながら、フェノール樹脂、メチレン受容体とHMTまたはH3M、メチレン供与体の組み合わせは、ゴム組成物の架橋中にホルムアルデヒドを生成させる。現実には、長い目で見れば、これらの化合物の潜在的な環境の影響に基づいたゴム組成物からのホルムアルデヒドを減少させること、実際には排除することが望ましい。
この目的で、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メチレン受容体と、HMTまたはH3M硬化剤、メチレン供与体との対を含む従来の組成物に対する代替組成物が開発された。例として、国際出願WO2011/045342号は、エポキシ樹脂とアミン硬化剤との対を含む組成物を記載している。これらの組成物は、ホルムアルデヒドの形成がないという利点に加えて、架橋後に、許容される転がり抵抗を保持しながら、従来組成物よりも大きい剛性を示す。国際出願WO2018/002538号は、既知の組成物と比較して加工性(特にスコーチ時間)/剛性の折衷を改善することを目標とする、エポキシ樹脂およびアミン硬化剤を含む組成物を記載している。
しかしながら、タイヤの作業温度全般にわたってゴム組成物の剛性を調節できることが、依然として望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本出願人は思いがけず、研究検討中に、エポキシ樹脂、アミン硬化剤およびイミダゾールの組み合わせが、タイヤの種々の作業温度において、剛性特性を維持しながら、またはそれらを改善さえしながら、ホルムアルデヒドの形成をなくすことを可能にすることを発見した。
【0005】
定義
本発明の目的のために、「100質量部のエラストマー当たりの質量部」(またはphr)という表現は、エラストマーまたはゴムの100質量部当たりの質量部を意味すると理解されるべきである。
本文献では、明白に別途指示されない限り、示された全てのパーセンテージ(%)は質量パーセンテージ(%)である。
また、「a~bの間」という表現により表される値の任意の間隔は、aを超えてb未満にわたる値の範囲を表し(すなわち、境界値aおよびbは除外される)、それに対して「a~b」という表現により表される値の任意の間隔は、aからbまでにわたる値の範囲を意味する(すなわち、厳密な境界値aおよびbを含む)。
「をベースとする組成物」という表現は、使用される種々の構成要素のその場の反応の混合物および/または生成物、該組成物の製造の種々の段階中に少なくとも部分的に反応することができる、および/または互いに反応することが意図されるこれらの構成要素の一部を含む組成物を意味すると理解されるべきであり;したがって、組成物が、完全にまたは部分的に架橋した状態または架橋していない状態にあることは可能である。
【0006】
「主要量の」化合物に言及する場合、これは、本発明の目的のために、この化合物が組成物中の同じタイプの化合物のなかで主要量を占めるものであること、すなわち、それが同じタイプの化合物のなかで、質量により最大量を占めるものであることを意味すると理解される。したがって、例えば、主要量のエラストマーは、組成物中のエラストマーの合計質量に関して最大の質量を占めるエラストマーである。同様に、「主要量の」充填材は、組成物の充填材のなかで最大の質量を占める充填材である。例として、ただ1種のエラストマーを含む系において、今の述べたものが本発明の目的のために主要量を占めるものであり、2種のエラストマーを含む系では、主要量のエラストマーは、エラストマーの質量の半分を超えるものを表す。反対に、「少ない方の」化合物は、同じタイプの化合物のなかで最大の質量分率を占めない化合物である。好ましくは、用語「主要量の」は、50%を超えて、好ましくは、60%、70%、80%、90%を超えて存在することを意味すると理解され、より優先的には「主要量の」化合物は、100%を占める。
説明で言及した炭素を含む化合物は、化石起源であるかまたは生物を原料とするものであることができる。後者の場合に、それらは、部分的にまたは完全に、バイオマスから誘導されるかまたはバイオマスから誘導された再生可能な出発原料から得られることもある。ポリマー、可塑剤、充填材等には、特に関心が持たれる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ジエンエラストマー
本発明による組成物は、少なくとも1種のジエンエラストマーを含む。したがってこれは、1種のみのジエンエラストマーまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含有することもある。
「ジエン」エラストマー(または、区別せずに、ゴム)は、天然であっても合成であっても、知られているように、少なくとも部分的に(すなわち、ホモポリマーまたはコポリマー)、ジエンモノマー単位(2つの共役または非共役炭素炭素二重結合を有するモノマー)で構成されているエラストマーを意味すると理解されるべきである。
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、「本質的に不飽和」または「本質的に飽和した」に分類することができる。「本質的に不飽和」は、15%(モル%)を超えるジエン起源(共役ジエン)の単位の含有量を有する共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に生ずるジエンエラストマーを意味すると一般的に理解される;したがって、それは、ブチルゴム、EPDMタイプのジエンのおよびα-オレフィンのまたはコポリマーなどのジエンエラストマーは、先行する定義内に入らず、「本質的に飽和した」ジエンエラストマーと特に記載することができる(ジエン起源の単位の低いまたは非常に低い含有量、常に15%未満)ということである。本発明による組成物に含まれるジエンエラストマーは、優先的に本質的に不飽和である。
【0008】
「本発明による組成物で使用することができるジエンエラストマー」は、
(a)4~18個の炭素原子を有する共役または非共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー;
(b)4~18個の炭素原子を有する共役または非共役ジエンおよび少なくとも1種の他のモノマーの任意のコポリマー
を特に意味すると理解される。
他のモノマーは、エチレン、オレフィンまたは共役または非共役ジエンであってもよい。
共役ジエンとして適当なのは、4~12個の炭素原子を有する共役ジエン、特に1,3-ジエン、例えば、特に、1,3-ブタジエンおよびイソプレンなどである。
オレフィンとして適当なものは、8~20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物および3~12個の炭素原子を有する脂肪族α-モノオレフィンである。
ビニル芳香族化合物として適当なものは、例えば、スチレン、オルト-、メタ-もしくはパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」の市販の混合物またはパラ-(tert-ブチル)スチレンである。
脂肪族α-モノオレフィンとして適当なものは、特に3~18個の炭素原子を有する非環式脂肪族α-モノオレフィンである。
【0009】
優先的に、ジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。ブタジエンコポリマーは、特にブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)からなる群から選択される。
好ましくは、ジエンエラストマーはイソプレンエラストマーである。
「イソプレンエラストマー」は、知られているように、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、言い換えれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを意味すると理解される。イソプレンコポリマーのなかで、イソブテン/イソプレン(ブチルゴム-IIR)、イソプレン/スチレン(SIR)、イソプレン/ブタジエン(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマーが特に挙げられるであろう。このイソプレンエラストマーは、好ましくは天然ゴムまたは合成シス-1,4-ポリイソプレンおよびそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、これらの合成ポリイソプレンのなかで、90%を超える、さらにより優先的には98%を超えるシス-1,4-結合の含有量(モル%)を有するポリイソプレンが使用される。好ましくはおよび本発明の文書の取り決めの任意のものにより、ジエンエラストマーは天然ゴムである。
【0010】
優先的に、ジエンエラストマー、好ましくはイソプレンエラストマー、好ましくは天然ゴムの含有量は、50~100phr、より優先的に60~100phr、より優先的なように70~100phr、さらにより優先的に80~100phrおよび非常に優先的に90~100phrである。特に、ジエンエラストマー、好ましくはイソプレンエラストマーの、さらに好ましくは天然ゴムの含有量は、非常に優先的に100phrである。
本発明によるゴム組成物は、ただ1種のジエンエラストマーを含有してもまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含有していても、あまり多くはないケースであるが、ジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマー、実際のところエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマーさえ含有することもできる。好ましくは、本発明によるゴム組成物は、ジエンエラストマー以外の合成エラストマーまたはエラストマー以外のポリマーを含有しないかまたは10phr未満、好ましくは5phr未満含有する。
【0011】
エポキシ樹脂
本発明で使用され得るエポキシ樹脂は、全てポリエポキシド化合物を含む。それらは、例えば、芳香族エポキシ、脂環式エポキシおよび脂肪族エポキシ樹脂と関係することができる。例えば、芳香族エポキシ樹脂は、アミン-芳香族エポキシ樹脂であってもよい。エポキシ樹脂は、優先的にエポキシノボラック樹脂、すなわち塩基触媒作用により得られるレゾール樹脂と対照的に、酸触媒作用により得られるエポキシ樹脂である。
特に芳香族エポキシ樹脂のなかで、2,2-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン、ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-(ヒドロキシベンズアルデヒドグリシジルエーテル)]、アミン芳香族エポキシ樹脂およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂、ならびに好ましくはポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド、およびポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co(ヒドロキシベンズアルデヒドグリシジルエーテル)]からなる群から選択されるエポキシ樹脂が優先される。
より好ましくは、エポキシ樹脂は、ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、ポリ[(o-フェニルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、アミン芳香族エポキシ樹脂およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【0012】
本発明の関係で使用され得る市販のエポキシ樹脂の例として、例えば、Uniqemaからのエポキシ樹脂DEN439、Sigma-Aldrichからのエポキシ樹脂トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテルまたはHuntsmanからのエポキシクレゾールノボラック樹脂Araldite ECN 1299を挙げることができる。
本発明による組成物は、1~30phrの間のエポキシ樹脂を含む。本発明の関係で使用されるアミン硬化剤を考慮して、最少含有量未満の樹脂が指示されると、目標の技術的効果が不十分であるが、それに対して最大を超える樹脂が指示されると、剛性における過剰に大きい増大ならびにヒステリシスおよび材料の伸張性の性質に対する過剰の悪影響のリスクが生ずる。全てのこれらの理由で、エポキシ樹脂の含有量は、優先的に10~25phrの間である。さらに好ましくは、本発明による組成物におけるエポキシ樹脂の含有量は、10~20phrの間である。
【0013】
アミン硬化剤
本発明の組成物のエポキシ樹脂は、樹脂の架橋を可能にする特定のアミン硬化剤と組み合わされる。
本発明によれば、アミン硬化剤は、少なくとも1個(すなわち、1個または複数)の6員芳香族環に位置する少なくとも2個の第一級アミン官能基を含み、前記少なくとも1個の6員芳香族環は、
・ 少なくとも1個の第一級アミン官能基、および
・ 直鎖状または分岐C1-C6アルキル基、ハロゲン、ならびに直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミン、チオエーテル、ケトン、エステルおよびアミドからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基
を、少なくとも1個の6員芳香族環が第一級アミン官能基に対してオルト位に位置する水素原子を含まないように、含む。
言い換えれば、アミン硬化剤は、1個もしくは複数の6員芳香族環およびただ1個の6員芳香族環に位置するまたは数個のこれらの6員芳香族環にわたって分布する少なくとも2個の第一級アミン官能基を含む。
当業者に周知の様式で、第一級アミン官能基は、窒素原子が2個の水素原子と結合したアミン官能基を意味すると理解される。
好ましくは、アミン硬化剤は、1~3個、より好ましくは1または2個の6員芳香族環を含む。
好ましくは、アミン硬化剤は、アミン硬化剤の少なくとも1個の6員芳香族環に位置する2~4個、より好ましくは2個の第一級アミン官能基を含む。
Ri基を構成することができるハロゲンのなかで、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を挙げることができる。好ましくは、該ハロゲンは、塩素および臭素原子からなる群から選択され、より好ましくは、該ハロゲンは塩素原子である。
【0014】
本発明の第1の実施形態によれば、アミン硬化剤は、6員芳香族環を含むことができ、前記6員芳香族環は、
・ 少なくとも2個の第一級アミン官能基、および
・ 直鎖状または分岐C1-C6アルキル基、ハロゲン、ならびに直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミン、チオエーテル、ケトン、エステルおよびアミドからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基
を、前記環が第一級アミン官能基に対してオルト位に位置する水素原子を含まないように、含む。
本発明の第2の実施形態によれば、アミン硬化剤は、同一または異なる少なくとも2個の6員芳香族環を含むこともでき、前記環は各々、
・ 少なくとも1個の第一級アミン官能基、および
・ 直鎖状または分岐C1-C6アルキル基、ハロゲン、ならびに直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミン、チオエーテル、ケトン、エステルおよびアミドからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基
を、前記環が第一級アミン官能基に対してオルト位に位置する水素原子を含まないように、含む。
【0015】
別の実施形態によれば、アミン硬化剤は、数個の6員芳香族環およびただ1個の芳香族環だけに位置する少なくとも2個の第一級アミン官能基を含むこともできる。
アミン硬化剤が数個の(すなわち少なくとも2個の)6員芳香族環を含む場合、これらの環は、同一であっても異なっていてもよい。それらは、例えば、前記環を構成する原子の性質および/または前記環に位置する第一級アミン官能基の数および/または前記環に位置するRi基の性質および/もしくは数および/または前記環上の第一級アミン官能基およびRi基の位置が互いに異なっていてもよい。好ましくは、アミン硬化剤が数個の6員芳香族環を含む場合、これらの環は同一である。
上で示したように、アミン硬化剤は、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基、ハロゲン、ならびに直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミン、チオエーテル、ケトン、エステルおよびアミドからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基を含む。「直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミン、チオエーテル、ケトン、エステルおよびアミド」という表現で、当業者は、「直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換された」という用語が、エーテル、第三級アミン、チオエーテル、ケトン、エステルおよびアミドの各々に関係することを明確に理解する。
【0016】
本発明のどのような実施形態でも、アミン硬化剤は、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基、ハロゲン、ならびに直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミンおよびチオエーテルからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基を優先的に含む。より好ましくは、アミン硬化剤は、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基、ハロゲン、ならびに直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたチオエーテルからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基を含む。
【0017】
本発明のどのような実施形態でも、同一または異なるRi基は、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基からなる群から非常に優先的に選択される。言い換えれば、アミン硬化剤の全てのRi基は、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基、好ましくはメチル、エチルおよびプロピル基からなる群から選択される直鎖状または分岐C1-C6アルキル基であってもよい。
本発明のどのような実施形態でも、アミン硬化剤の少なくとも1個の6員芳香族環は、ハロゲン、ならびに直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミンおよびチオエーテルからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基と、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基からなる群から選択される少なくとも1個のRi基とを含むことができる。
【0018】
本発明のどのような実施形態でも、Ri基がまたはエーテル、第三級アミン、チオエーテル、ケトン、エステルもしくはアミドの基に関して、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチルおよびブチル基からなる群から選択されてもよい。好ましくは、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基は、メチル、エチルおよびプロピル基からなる群から選択される。より好ましくは、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基は、メチルおよびエチル基からなる群から選択される。
本発明のどのような実施形態でも、アミン硬化剤の芳香族環の原子は、炭素原子であってもよく、窒素原子を含んでもよい。好ましくは、アミン硬化剤の芳香族環の全ての原子は炭素原子である。言い換えれば、アミン硬化剤の6員芳香族環は、優先的に6個の炭素原子を含む芳香族環である。
【0019】
下で示す式(I)~(V)において、Ri基は、同一であることもまたは異なることもできることが記憶されるべきである。
本発明の一実施形態によれば、アミン硬化剤は式(I)に対応する。
【化1】
好ましくは、この実施形態によれば、アミン硬化剤は式(II)に対応する。
【化2】
本発明の別の実施形態によれば、アミン硬化剤は式(III)に対応する:
【化3】
(式中、
nは、0~4、好ましくは1~3の範囲の整数を表し、
同一または異なるR
1およびR
2は、水素原子およびメチル、エチル、イソブチルまたはベンジル基からなる群から選択され;好ましくは、R
1およびR
2は両方共水素原子を表す)。
【0020】
好ましくは、この実施形態によれば、アミン硬化剤は式(IV)に対応する:
【化4】
(式中;
nは1または2、好ましくは1を表し、
同一または異なるR
1およびR
2は、水素原子およびメチル、エチル、イソブチルまたはベンジル基からなる群から選択され;好ましくは、R
1およびR
2は、両方共水素原子を表す)。
【0021】
より好ましくは、この実施形態によれば、アミン硬化剤は、式(V)に対応する。
【化5】
非常に優先的に、本発明によれば、アミン硬化剤は、下記の化合物およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【化6】
【0022】
本発明の関係で使用することができる市販のアミン硬化剤の例として、例えば、AlbemarleからのEthacure 100もしくはEthacure 300またはLonzaからのLonzacure DETDA、Lonzacure MDEAもしくはLonzacure MCDEAを挙げることができる。
アミン硬化剤の量は、1~15phrの間である。指示される最少未満では、目標の技術的効果が不十分なことが証明されているが、それに対して、指示される最大を超えては、組成物の租状態における加工処理が不利であるというリスクが生ずる。優先的に、アミン硬化剤の含有量は、5~10phr、好ましくは2~8phrにわたる範囲内である。
【0023】
イミダゾール
本発明による組成物は、一般式(A)のイミダゾールを含む:
【化7】
(式中、
- R
aは、水素原子、または1個もしくは複数のヘテロ原子により割り込まれていても、かつ/または置換されていてもよい炭化水素基を表し、
- R
bは、炭化水素基を表し、
- R
cおよびR
dは、互いに独立に、水素原子、または1個もしくは複数のヘテロ原子により割り込まれていても、かつ/または置換されていてもよい炭化水素基を表すか、
- あるいは、R
cおよびR
dは、それらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、1個もしくは複数のヘテロ原子により割り込まれていても、かつ/または置換されていてもよい環を形成する)。
【0024】
「1個もしくは複数のヘテロ原子により割り込まれていても、かつ/または置換されていてもよい」という表現は、Ra、RcおよびRd基が、独立におよび炭化水素基を表す場合、窒素、酸素および硫黄から優先的に選択されるヘテロ原子により割り込まれていてもよく(すなわち、言い換えればヘテロ原子が炭化水素鎖に挿入されている)、かつ/または官能基により置換されていてもよいことを意味すると理解される。官能基は、ヘテロ原子を含み、アミノ、アルキルアミン、アルコキシルおよびヒドロキシル基から優先的に選択され、ヒドロキシルおよびアミノ基から優先的に選択される基を意味すると理解される。
アミノ基は、-NH2の式の基を意味すると理解される。ヒドロキシル基は、-OHの式の基を意味すると理解される。
【0025】
好ましくは、一般式(A)のイミダゾールは、
- Raが、水素原子、置換されていてもよい、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、5~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、7~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、
- Rbが、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、5~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基または7~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、
- RcおよびRdが、水素原子、置換されていてもよい、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、5~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基もしくは7~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から独立に選択されるか、あるいはRcおよびRdが、それらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、5~12個の炭素原子、好ましくは5または6個の炭素原子を含む芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族環から選択される環を形成する
ような基を有する。
【0026】
優先的に、Raは、置換されていてもよい、2~12個の炭素原子を有するアルキル基および7~13個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択される。より優先的に、Raは、置換されていてもよい7~13個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、Rbは、1~12個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される。さらにより優先的に、Raは、置換されていてもよい7~11個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、Rbは、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される。
好ましくは、RcおよびRdは、水素原子、および1~12個の炭素原子を有するアルキル基、5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~24個の炭素原子を有するアリール基、および7~13個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から独立に選択される。あるいはまた優先的に、RcおよびRdは、それらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と共に、フェニル、シクロヘキセン、またはシクロペンテン環を形成する。
【0027】
非常に好ましくは、R
cおよびR
dは、水素原子を表し、R
aおよびR
bは、上で記載されたように選択される。
好ましい取り合わせにおいて、R
aは、少なくとも1個のヒドロキシル基により置換されていてもよい、11~13個の炭素原子を含むナフチルアルキル基であり、R
bは、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
cおよびR
dは、水素原子、および1~12個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立に選択される。ナフチルアルキル基は、nが1~3の間の整数を表す一般式(A1)の基を意味すると理解される。
【化8】
【0028】
優先的に、R
aは、少なくとも1個のヒドロキシル基により置換された、11~13個の炭素原子を含むナフチルアルキル基であり、R
bは、1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
cおよびR
dは水素原子である。非常に好ましくは、R
aは、2-ナフトール-1-メチル基であり、R
bはメチル基であり、R
cおよびR
dは水素原子であり、その場合、化合物(A)は式(A2)に対応する。
【化9】
本発明によるゴム組成物は、0.1~5phr、優先的には0.1~3phr、非常に優先的には0.2~3phrの一般式(A)のイミダゾール、および非常に好ましくは0.2~2phrの一般式(A)のイミダゾールを優先的に含む。これらの含有量未満では、技術的効果が有意でないが、それに対して、これらの含有量を超えれば、一般式(A)のイミダゾールは、アミン硬化剤と競争することができて、架橋中に得られるネットワークを改変することができる。
【0029】
本発明の必要のために使用するイミダゾールは、市販のものであるか、または周知の技法、例えば、文献、日本特許公開2012-211122および日本特許公開2007-269658あるいはScience of Synthesis, 2002, 12, 325-528に記載されたものなどによって当業者により容易に調製されるかのいずれかである。
例えば、市販されており、本発明の必要のために使用されるイミダゾールとして、1,2-ジメチルイミダゾール、1-デシル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、またはHunstmanからAradur 3123の名称で市販されている1-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ナフタレン-2-オールを挙げることができる。
【0030】
強化充填材
本発明によるタイヤの組成物は、強化充填材を優先的には含む。
強化充填材は、タイヤの製造のために使用することができる、ゴム組成物を強化するその能力のために知られている任意のタイプの強化充填材、例えばカーボンブラックなどの有機充填材、シリカなどの強化無機充填材、またはカーボンブラックおよび強化無機充填材の混合物を含むことができる。より好ましくは、強化充填材は、主に、特に組成物が内層で使用される場合に、実際にはもっぱらカーボンブラックを含む。強化充填材は、特に組成物がトレッドで使用される場合にも、主に強化無機充填材を含むことができる。
そのような強化充填材は、典型的には、マイクロメートル未満、一般的に500nm未満、最もしばしば20~200nmの間、特におよびより優先的には20~150nmの間の(質量)平均サイズの粒子からなる。
全てのカーボンブラック、従来タイヤで使用されるとりわけHAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック(「タイヤ規格」のブラック)がカーボンブラックとして適当である。後者のなかで、より特に、100、200または300シリーズ(ASTM規格)の強化カーボンブラック、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347およびN375ブラックなど、またはその他、目標とされる用途に応じて、より高級なシリーズのブラック(例えばN660、N683またはN772)が挙げられるであろう。カーボンブラックは、例えば、イソプレンエラストマー中にマスターバッチの形態ですでに組み込まれていることもある(例えば、国際出願WO97/36724号およびWO99/16600号を参照されたい)。カーボンブラックのBET特異的表面積は、標準D6556-10[多点(最少で5点)方法-ガス;窒素、相対圧力P/P0の範囲;0.1~0.3]に従って測定される。
【0031】
「強化無機充填材」は、本特許出願において、定義により、任意の無機または鉱物充填材(その色およびその起源がどんなものでも、天然でも合成でも)を意味すると理解されるべきであり、カーボンブラックと対照的に、「白色充填材」、「透明充填材」または実際「非黒色充填材」としても知られており、中間カップリング剤以外の手段なしで、自体単独で強化することができて、言い換えれば、その強化役割において、従来のタイヤ規格のカーボンブラックを置き換えることができるタイヤの製造のためを意図されるゴム組成物であり;そのような充填材は、知られているように、その表面におけるヒドロキシル(-OH)基の存在により一般的に特徴づけられる。
石英質のタイプ、特にシリカ(SiO2)、またはミョウバンタイプ、特にアルミナ(Al2O3)の鉱物充填材は、特に強化無機充填材として適当である。使用されるシリカは、当業者に知られた任意の強化シリカ、BET表面積およびCTAB特異的表面積の両方で450m2/g未満、好ましくは30~400m2/gを示す特に任意の沈殿されたシリカまたはヒュームドシリカであってもよい。高度に分散性の沈殿シリカ(「HDS」)として、例えば、DegussaからのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ、RhodiaからのZeosil1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ、PPGからのHi-Sil EZ150Gシリカ、HuberからのZeopol 8715、8745および8755シリカまたは国際出願WO03/16837号などに記載された特異的高表面積を有するシリカが挙げられるであろう。
【0032】
シリカのBET特異的表面積は、知られているように、ガス吸着により、"The Journal of the American Chemical Society", Vol. 60, page 309, February 1938に記載されたBrunauer-Emmett-Tellerの方法を使用して、より特異的には1996年12月のFrench standard NF ISO 9277(多点(5点)の体積測定の方法に従って決定される-ガス;窒素、脱ガス;160℃、相対圧力p/p0の範囲;0.05~0.17で1時間)。シリカのCTAB特異的表面積は、1987年11月のFrench standard NF T45-007(方法B)に従って決定される。
ミョウバンタイプの鉱物充填材、特にアルミナ(Al2O3)または水酸化(酸化)アルミニウム、あるいは、例えば米国特許第6610261号および米国特許第6747087号に記載された強化酸化チタンも、強化無機充填材として適当である。
強化無機充填材が提供される物理的状態は、それが、粉体、微粒子、顆粒、ビーズの形態または任意の他の適当な密度を高められた形態であろうとなかろうと重要ではない。言うまでもなく、「強化無機充填材」はまた、異なる強化無機充填材の、特に高度に分散性の石英質のおよび/またはミョウバン充填材の混合物も意味すると理解される。
【0033】
当業者は、この節で記載された強化無機充填材と等価の充填材として、別の性質、特に有機の性質の強化充填材が使用され得ることを理解するであろう;ただし、この強化充填材が、シリカなどの無機層で覆われているか、あるいは、その表面に、被覆剤またはカップリング剤の存在下または非存在下で充填材とエラストマーとの間の結合を確立することを可能にする官能性部位、特にヒドロキシル部位を含むことが条件である。
強化無機充填材をジエンエラストマーとカップルさせるために、無機充填材(その粒子の表面)とジエンエラストマーとの間に、化学的および/または物理的性質の満足な接続を提供することが意図される少なくとも二官能性カップリング剤(または結合剤)を、周知の方法で使用することができる。特に、少なくとも二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサンが使用される。「二官能性」という用語は、無機充填材と相互作用することができる第1の官能基およびジエンエラストマーと相互作用することができる第2の官能基を有する化合物を意味すると理解される。例えば、そのような二官能性化合物は、ケイ素原子を含む第1の官能基を含むことができて、前記第1の官能基は、無機充填材のヒドロキシル基と相互作用することができ、第2の官能基は硫黄原子を含み、前記第2の官能基はジエンエラストマーと相互作用することができる。
【0034】
優先的に、オルガノシランは、オルガノシランポリスルフィド(対称的または非対称的)、例えば、Evonikにより「Si69」という名称で販売されているTESPTと略称されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドまたはEvonikにより「Si75」という名称で販売されているTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなど、ポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン、Momentiveにより「NXTシラン」という名称で販売されているS-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)オクタンチオエートなどの封鎖されたメルカプトシランからなる群から選択される。より優先的に、オルガノシランは、オルガノシランポリスルフィドである。
【0035】
カップリング剤の含有量は、優先的に12phr未満であり、可能な限り少量のそれを使用することが一般的に望ましいことは理解される。典型的には、強化無機充填材が存在する場合、カップリング剤の含有量は、無機充填材の量に対して0.5%~15質量%を表す。その含有量は、優先的に0.5~12phrにわたる範囲内、より優先的に4~8phrにわたる範囲内である。この含有量は、組成物中で使用される無機充填材の含有量に従って当業者により容易に調節される。
本発明によれば、強化充填材が存在する場合、強化充填材、主に、実際にはカーボンブラックだけを含む強化充填材の含有量は、20~200phr、好ましくは30~150phr、好ましくは40~100phr、好ましくは50~80phrにわたる範囲内であり得る。
【0036】
架橋系
架橋系は、タイヤのためのゴム組成物の分野における当業者に知られた任意のタイプの系であってもよい。その系は、特に硫黄、および/またはペルオキシドおよび/またはビスマレイミドをベースとすることができる。
優先的に、架橋系は硫黄をベースとし、その場合、それは加硫系と呼ばれる。硫黄は、任意の形態で、特に分子硫黄の形態で、または硫黄供与剤の形態で与えられ得る。少なくとも1種の加硫促進剤も優先的に存在し、任意にまた優先的に、種々の既知の加硫促進剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸などまたは等価の化合物、例えばステアリン酸塩、および遷移金属の塩、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)など、または公知の加硫遅延剤も使用され得る。
【0037】
硫黄は、0.5~12phrの間、特に1~10phrの間の優先的な含有量で使用される。加硫促進剤は、0.5~10phrの間、より優先的に0.5~8.0phrの間の優先的な含有量で使用される。
促進剤として、硫黄の存在下で、ジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用することができる任意の化合物、特にチアゾールタイプの促進剤、およびそれらの誘導体も、またはスルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、チオ尿素およびキサンテートタイプの促進剤も使用することができる。特に、そのような促進剤の例として、以下の化合物;2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(MBTSと略称される)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DCBS)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(TBSI)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)、亜鉛ジベンジルジチオカルバメート(ZBEC)およびこれらの化合物の混合物を挙げることができる。
【0038】
種々の添加剤
本発明によるゴム組成物は、当業者に知られていてタイヤのためのゴム組成物で慣習的に使用される通常の添加剤および加工処理剤の全てまたは一部、例えば、可塑剤(可塑油および/または可塑樹脂など)、顔料、保護剤、例えば、抗オゾンワックス、化学的抗オゾン化物質または抗酸化剤など、および抗疲労剤も含むことができる。
組成物は、租状態(架橋または加硫前)、または硬化された状態(架橋または加硫後)のいずれかであってもよい。
最終または半最終ゴム物品およびタイヤ
本発明の対象は、やはり本発明による組成物を含む最終または半最終ゴム物品である。
本発明による組成物を含むタイヤも本発明の対象である。
タイヤ内で、3タイプの領域を定義することが可能である;
・ 外層として知られる層を含む、周囲の空気と接触する外部のラジアル領域、これらの層は、タイヤのトレッドおよび外部のサイドウォールを本質的に含む。外部のサイドウォールは、クラウンからビードに伸びるカーカス強化材の領域を完全にまたは部分的に覆うように、クラウンとビードの間のタイヤの内部の空洞に対してカーカス強化材の外側に位置する弾性体の層である。
【0039】
・ 膨張ガスと接触するラジアル内部領域、この領域は、一般的に膨張ガスに対して気密な層で構成されており、時には、内部気密層または内部ライナーとして知られている。
・ タイヤの内部領域、すなわち外部と内部の間の領域。この領域は、本明細書ではタイヤの内層と称する層またはプライ(plies)を含む。これらは、例えば、カーカスプライ、トレッド下層、タイヤベルトプライまたは周囲の空気またはタイヤの膨張ガスと接触しない任意の他の層である。
本明細書の記載で定義された組成物は、タイヤの内層および外層に、特に外層については、トレッド組成物に特に好ましく適している。
本発明によれば、内層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビード-ワイヤ充填材、クラウンフィート、デカップリング層、エッジゴム、詰め物ゴム、トレッドの下層およびこれらの内層の組み合わせからなる群から選択することができる。好ましくは、内層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビード-ワイヤ充填材、クラウンフィート、デカップリング層およびこれらの内層の組み合わせからなる群から選択される。
【0040】
本発明は、原動機付車両のタイプ、SUV(「スポーツ用乗物」)、または2輪車(とりわけオートバイ)、または航空機、あるいはバン、重量車両、すなわち地下鉄車両、バス、道路輸送重車両(トラック、トラクター、トレーラー)もしくはオフロード車両、例えば、農業用重車両もしくは工事車両などから選択される産業用車両を装備することが意図されるタイヤに特に関する。
本発明は、租状態(すなわち硬化前)および硬化された状態(すなわち、架橋または加硫後)の両方における本発明によるゴム組成物を含む物品に関する。
【0041】
ゴム組成物の調製
本発明によるゴム組成物は、当業者に周知の2つの継続する調製段階を使用して、適当な混合機中で製造することができる;
- 第1段階の熱機械的作業または混練(「非生産的」段階)、それは、架橋系を除いて、全ての必要な構成要素、特に弾性体の基材、充填材および任意の他の種々の添加剤が、標準的内部混合機(例えば「バンベリー」タイプの)などの適当な混合機に導入される単一の熱機械的ステップで実施することができる。エラストマー中の充填材の取込みは、熱機械的混練による1回もしくは複数の作動で実施することができる。例えば、国際出願WO97/36724号およびWO99/16600号に記載されたように、充填材が、エラストマー中にマスターバッチの形態で、全てまたは一部がすでに組み込まれている場合には、直接混練されるものはマスターバッチであり、適当ならば、マスターバッチ形態でない組成物で存在する他のエラストマーまたは充填材、および架橋系以外の任意の他の種々の添加剤も、組み込まれる。
【0042】
非生産的段階は、高温、110℃~190℃の間、好ましくは130℃~180℃の間の最高温度で、一般的に2分~10分の間の時間実施される。
- 第2段階の機械的作業(「生産的」段階)、それは、第1の非生産的段階中に得られた混合物を、典型的には110℃未満、例えば40℃~100℃の間のより低い温度に冷却した後、開放型製粉機などの外部混合機で実施される。その時、架橋系が組み込まれて、組み合わされた混合物が、次に数分、例えば2分~15分の間混合される。
そのような組成物を調製する工程は、例えば、以下のステップを含む;
a)第1のステップ(「非生産的」ステップ)中に、強化充填材をジエンエラストマーに組み込み、110℃~190℃の間の最高温度に達するまで、全てのものを熱機械的に混錬する(例えば、1回もしくは複数の作業で);
b)組み合わされた混合物を100℃未満の温度に冷却する;
c)その後、第2のステップ(「生産的」ステップ)中に、架橋系を組み込む;
d)全てのものを110℃未満の最大温度まで混練する。
【0043】
1~30phrの間のエポキシ樹脂、1~15phrの間のアミン硬化剤および一般式(A)のイミダゾールを、非生産的段階(a)または生産的段階(c)のいずれかの間に、互いに独立に導入することができる。好ましくは、エポキシ樹脂が、非生産的段階(a)中に導入されて、その間にアミン硬化剤および一般式(A)のイミダゾールが生産的段階(c)中に導入される。
このようにして得られた最終の組成物を、次に、例えばシートまたはスラブの形態で特に実験室におけるキャラクタリゼーションのためにカレンダー処理するか、あるいはタイヤの製造のために使用されるゴム半最終製品の形態(または形を切り出された構成要素)に押し出すことができる。
組成物の架橋は、当業者に知られた様式で、例えば130℃~200℃の間の温度で、加圧下に実施することができる。
【0044】
上記の対象に加えて、本発明は、以下の特徴に記載された少なくとも1つの対象に関する;
1. 少なくとも、
- ジエンエラストマー、
- 強化充填材、
- 架橋系、
- 100質量部のエラストマー当たり1~30質量部(phr)のエポキシ樹脂、
- 少なくとも1個の6員芳香族環に位置する少なくとも2個の第一級アミン官能基を含む、1~15phrの間のアミン硬化剤であり、前記少なくとも1個の6員芳香族環は、
・ 少なくとも1個の第一級アミン官能基、および
・ 直鎖状または分岐C1-C6アルキル基、ハロゲン、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミン、チオエーテル、ケトン、エステルおよびアミドからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基
を、前記少なくとも1個の6員芳香族環が前記第一級アミン官能基に対してオルト位に位置する水素原子を含まないように含む、アミン硬化剤、
- 一般式(A)のイミダゾール
【化10】
(式中、
・ R
aは、水素原子、または1個もしくは複数のヘテロ原子により割り込まれていても、かつ/または置換されていてもよい炭化水素基を表し、
・ R
bは炭化水素基を表し、
・ R
cおよびR
dは、互いに独立に、水素原子、または1個もしくは複数のヘテロ原子により割り込まれていても、かつ/または置換されていてもよい炭化水素基を表すか、
・ あるいは、R
cおよびR
dは、それらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、1個もしくは複数のヘテロ原子により割り込まれていても、かつ/または置換されていてもよい環を形成する)
をベースとするゴム組成物。
【0045】
2. ジエンエラストマーがポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、先行する項目によるゴム組成物。
3. ジエンエラストマーがイソプレンエラストマーである、項目1によるゴム組成物。
4. エポキシ樹脂が、芳香族エポキシ、脂環式エポキシおよび脂肪族エポキシ樹脂から選択される、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
5. 芳香族エポキシ樹脂が、2,2-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン、ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-(ヒドロキシベンズアルデヒドグリシジルエーテル)]、芳香族アミンエポキシ樹脂およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される、先行する項目によるゴム組成物。
【0046】
6. エポキシ樹脂の含有量が、10~25phrの間、好ましくは10~20phrの間である、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
7. アミン硬化剤の少なくとも1個の6員芳香族環が、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基、ハロゲン、ならびに直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミンおよびチオエーテルからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基を含む、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
8. アミン硬化剤の少なくとも1個の6員芳香族環が、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基からなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基を含む、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
9. アミン硬化剤の少なくとも1個の6員芳香族環が、ハロゲン、ならびに直鎖状または分岐C1-C6アルキル基により置換されたエーテル、第三級アミンおよびチオエーテルからなる群から選択される同一または異なる少なくとも2個のRi基と、直鎖状または分岐C1-C6アルキル基からなる群から選択される少なくとも1個のRi基とを含む、項目1~7のいずれか1つによるゴム組成物。
【0047】
10. 直鎖状または分岐C1-C6アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチルおよびブチル基からなる群、好ましくは、メチル、エチルおよびプロピル基からなる群から選択される、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
11. 少なくとも1個の6員芳香族環が6個の炭素原子を含む芳香族環である、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
12. アミン硬化剤が式(I)に対応する、項目1~6のいずれか1つによるゴム組成物。
【化11】
13. アミン硬化剤が式(II)に対応する先行する項目による組成物。
【化12】
【0048】
14. アミン硬化剤が、式(III)に対応する項目1~11のいずれか1つによるゴム組成物:
【化13】
(式中、
nは、0~4、好ましくは1~3の範囲の整数を表し、
同一または異なるR
1およびR
2は、水素原子およびメチル、エチル、イソブチルまたはベンジル基からなる群から選択され;好ましくは、R
1およびR
2は、両方共水素原子を表す)。
【0049】
15. アミン硬化剤が式(IV)に対応する先行する項目によるゴム組成物:
【化14】
(式中、
nは、1または2、好ましくは1を表し、
同一または異なるR
1およびR
2は、水素原子およびメチル、エチル、イソブチルまたはベンジル基からなる群から選択され;好ましくは、R
1およびR
2は、両方共水素原子を表す)。
【0050】
16. アミン硬化剤が式(V)に対応する、項目14および15のいずれか1つによるゴム組成物。
【化15】
17. アミン硬化剤が、下記の化合物およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される、項目1~11のいずれか1つによるゴム組成物。
【化16】
18. アミン硬化剤の含有量が、5~10phr、好ましくは2~8phrにわたる範囲内にある、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
【0051】
19. 一般式(A)のイミダゾールにおいて、
- Raが、水素原子、置換されていてもよい、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、5~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、7~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、
- Rbが、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、5~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、または7~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、
- RcおよびRdが、水素原子、置換されていてもよい、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、5~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基または7~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から独立に選択されるか、あるいは、RcおよびRdが、それらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、5~12個の炭素原子、好ましくは5または6個の炭素原子を含む芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族環から選択される環を形成する
先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
【0052】
20. 一般式(A)のイミダゾールにおいて、Raは、置換されていてもよい2~12個の炭素原子を有するアルキル基および7~13個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択される、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
21. 一般式(A)のイミダゾールにおいて、Raは、置換されていてもよい7~13個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、Rbは1~12個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
【0053】
22. 一般式(A)のイミダゾールにおいて、Raは、置換されていてもよい7~11個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、Rbは、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
23. 一般式(A)のイミダゾールにおいて、RcおよびRdが、水素原子、および1~12個の炭素原子を有するアルキル基、5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~24個の炭素原子を有するアリール基、および7~13個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から独立に選択され、RcおよびRdは、非常に優先的に水素原子である、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
【0054】
24. 一般式(A)のイミダゾールにおいて、R
cおよびR
dが、それらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と共に、フェニル、シクロヘキセン、またはシクロペンテン環を形成する、項目1~22のいずれか1つによるゴム組成物。
25. 一般式(A)のイミダゾールにおいて、R
aは少なくとも1個のヒドロキシル基により置換されていてもよい、11~13個の炭素原子を含むナフチルアルキル基であり、R
bは1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
cおよびR
dは、水素原子、および1~12個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立に選択される、項目1~18のいずれか1つによるゴム組成物。
26. R
aは、11~13個の炭素原子を含み、少なくとも1個のヒドロキシル基により置換されたナフチルアルキル基であり、R
bは、1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
cおよびR
dは水素原子であり、ここで、優先的にR
aは2-ナフトールメチル基であり、R
bはメチル基であり、R
cおよびR
dは水素原子であり、そのとき、化合物(A)は式(A2)に対応する、先行する項目によるゴム組成物。
【化17】
27. 一般式(A)のイミダゾールの含有量が、0.1~5phrにわたる範囲内である、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
【0055】
28. 強化充填材が、カーボンブラック、強化無機充填材またはカーボンブラックと強化無機充填材の混合物を含み、好ましくは、強化充填材が主にカーボンブラックを含む、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
29. 強化充填材の含有量が、20~200phr、好ましくは30~150phrにわたる範囲内である、先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物。
30. 先行する項目のいずれか1つによるゴム組成物を含む最終または半最終ゴム物品。
31. 項目1~27のいずれか1つによるゴム組成物を含むタイヤ。
32. 項目1~27のいずれか1つによるゴム組成物が少なくとも1つの内層に存在する、項目29によるタイヤ。
33. 内層が、カーカスプライ、クラウンプライ、ビード-ワイヤ充填材、クラウンフィート、デカップリング層、エッジゴム、詰め物ゴム、トレッド下層およびこれらの内層の組み合わせからなる群から選択される、項目30によるタイヤ。
34. 項目1~27のいずれか1つによるゴム組成物が、少なくとも1つの外層中に存在する、項目29~31のいずれか1つによるタイヤ。
以下の例は本発明を例示するが、本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0056】
使用された測定
・引張り試験
試験は、1988年9月のFrench standard NF T46-002に従って実施した。全ての引張り測定は、温度(23±2℃)および湿度測定(50±5%相対湿度)の標準条件下で、およびFrench standard NF T40-101(1979年12月)に従い、同じ湿度測定条件下でより高い温度(100±2℃)でも実施した。23℃および100℃における測定が、タイヤの一般的な作業範囲を包含する範囲にわたる材料の剛性における変化を評価することを可能にする。
第2の伸長(すなわち調整措置(accommodation)後)で、試験検体の初期断面に対して計算された名目上のセカントモジュラス(または見かけの応力、MPaで)は、150℃で60分間硬化された試料について10%伸長で測定し、MA10と表示した。
結果は、100をベースにして表現され、値100が対照に割り当てられる。100を超える結果は、検討中の実施例の組成物がより大きい剛性を表すことを示す。
【0057】
・ 組成物の調製
下記の試験は以下のように実施する;加硫系を除いて、ジエンエラストマー、強化充填材、1~30phrの間のエポキシ樹脂、さらに種々の他の成分、アミン硬化剤およびイミダゾールを、次々と混合機内に導入し(最終の充填度;およそ70体積%)、その初期容器温度はおよそ60℃である。次に、熱機械的作業(非生産的段階)を1ステップで実施し、165℃の最大「降下」温度に達するまで、合計でおよそ3~4分かかる。
このようにして得られる混合物を回収して冷却し、次に、硫黄、スルフェンアミドタイプの促進剤、アミン硬化剤およびイミダゾールを、30℃の混合機(homofinisher)で組み込み、全てのものを適当な時間(例えば5分~12分の間)混合する(生産的段階)。
このようにして得られる組成物を、その後、それらの物理的もしくは機械的性質の測定のために、ゴムのスラブ(厚さ2~3mm)または薄いシートのいずれかの形態でカレンダー処理するか、または形を切り出された構成要素の形態で押し出す。
組成物の架橋は、加圧下に150℃の温度で60分間実施する。
【0058】
(実施例1)
3種のゴム組成物を上で示したようにして調製したが、2種は本発明によらず(C.1およびC.2)および1種が本発明によった(C.3)。それらの剤形化(phrで)およびそれらの性質を下の表1にまとめた。
組成物C.2およびC.3は、従来の対照組成物C.1に存在するフェノール-ホルムアルデヒド樹脂/HMT硬化剤(単数または複数)の対の置き換えとして、エポキシ樹脂およびポリアミン硬化剤を含有する。
【0059】
対照組成物C.1を例外として、表1に提示された組成物は、硬化中にホルムアルデヒドの形成を生じない。
【表1】
(1) 天然ゴム
(2) カーボンブラックN326(標準ASTM D-1765による名称)
(3) 酸化亜鉛(工業的等級 - Umicore)
(4) N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(FlexsysからのSantoflex6-PPD)
(5) Stearin(UniqemaからのPristerene4931)
(6) N-シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド(FlexsysからのSantocureCBS)
(7) フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂(PerstorpからのPeracit4536K)
(8) ヘキサメトキシメチルメラミン
(9) ヘキサメチレンテトラミン(Degussaから)
(10) エポキシクレゾールノボラック樹脂、ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、Sigma-Aldrichからのref.408042
(11) 芳香族ジアミン硬化剤、AlbemarleからのEthacure 100(CAS68479-98-1)
(12) イミダゾール、HuntsmanからのAradur 3123(CAS 185554-99-8)
本発明による組成物は、周囲温度で組成物C.1およびC.2と同様な剛性を有し、高温でイミダゾールを含まない組成物C.2より高い剛性を有し、組成物C.1と同様であるが、後者と比較して硬化中にホルムアルデヒドを形成しない利点を有することが注目される。
【0060】
(実施例2)
10種のゴム組成物を上で示したようにして調製した。それらの剤形化(phrで)および性質を下の表2にまとめた。
【表2】
(1) 天然ゴム
(2) カーボンブラックN347(標準ASTM D-1765による名称)
(3) 酸化亜鉛(工業的等級 - Umicore)
(4) N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(FlexsysからのSantoflex6-PPD)
(5) Stearin(UniqemaからのPristerene 4931)
(6) N-シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド(FlexsysからのSantocure CBS)
(7) エポキシクレゾールノボラック樹脂、ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、Sigma-Aldrichからのref.408042
(8) 芳香族ジアミン硬化剤、AlbemarleからのEthacure 100(CAS68479-98-1)
(9) 芳香族ジアミン硬化剤、AlbemarleからのEthacure 300(CAS 106264-79-3)
(10) イミダゾール、HuntsmanからのAradur 3123(CAS 185554-99-8)
【0061】
これらの試験は、イミダゾールの添加が、高温における剛性を改善することを可能にすることを例示する。試験C.5は、硬化剤の量を増大させることだけで低温における剛性を向上させることを可能にするが、高温における剛性は向上しないことを示す。試験C.13は、硬化剤なしで使用されたイミダゾールは、高温における剛性の改善を可能にしないことを示す。それ故、周囲温度および高い温度の両方における満足な剛性を得ることを可能にするのは、明らかに硬化剤とイミダゾールの組み合わせである。