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特許7459087基油または潤滑剤添加剤として使用するためのランダムコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】基油または潤滑剤添加剤として使用するためのランダムコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/04 20060101AFI20240325BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20240325BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20240325BHJP
   C08L 35/02 20060101ALI20240325BHJP
   C08L 47/00 20060101ALI20240325BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240325BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20240325BHJP
   C10M 145/14 20060101ALI20240325BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240325BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20240325BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240325BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20240325BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20240325BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240325BHJP
【FI】
C08F8/04
C08F220/12
C08F236/04
C08L35/02
C08L47/00
C08L91/00
C10M101/02
C10M145/14
C10N30:00 Z
C10N30:02
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:25
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021525848
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019078857
(87)【国際公開番号】W WO2020099078
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】18205895.8
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー プレッチュ
(72)【発明者】
【氏名】エミリー クレア シュヴァイシンガー
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ シュポール
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ライマン
(72)【発明者】
【氏名】ラルス ペーラ
(72)【発明者】
【氏名】マリウス ヴァイラント
(72)【発明者】
【氏名】ボリス アイゼンベアク
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー シャフヴォロストフ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-135289(JP,A)
【文献】特開平05-086114(JP,A)
【文献】特公昭48-022962(JP,B1)
【文献】特開2014-224246(JP,A)
【文献】特表2016-515658(JP,A)
【文献】国際公開第2017/189277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/04
C08F 220/12
C08F 236/04
C08L 35/02
C08L 47/00
C08L 91/00
C10M 101/02
C10M 145/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、
(a)1分子あたり6個以下の炭素原子を有する1種以上の共役ジエン5~55mol%;
(b)1種以上のC~Cアルキル(メタ)アクリレート10~45mol%;
(c)1種以上のC~C24アルキル(メタ)アクリレート10~70mol%;
(d)(メタ)アクリル酸と、ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの、1種以上のエステル0~10mol%;および
(e)炭素原子6~16個を有する1種以上の1-アルケン0~10mol%
を含むモノマー組成物を重合することによって得られる、ランダムコポリマーであって、
前記共役ジエンに由来するモノマー単位が水素化されており、かつ
前記コポリマーが、5000~20000g/molの質量平均分子量を有し、かつ
全ての成分(a)~(d)の和が、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、合計して少なくとも90mol%になる、前記コポリマー。
【請求項2】
前記モノマー組成物が、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、
(a)1分子あたり6個以下の炭素原子を有する1種以上の共役ジエン15~55mol%;
(b)1種以上のC~Cアルキル(メタ)アクリレート10~40mol%;
(c)1種以上のC~C24アルキル(メタ)アクリレート15~55mol%;
(d)(メタ)アクリル酸と、ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの、1種以上のエステル0~5mol%;および
(e)炭素原子6~16個を有する1種以上の1-アルケン0~5mol%
を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
7000~20000g/mol、好ましくは8000~20000g/molの質量平均分子量を有する、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
1.5~6、好ましくは2~4、およびより好ましくは2.2~3.2の多分散指数PDIを有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項5】
成分(a)がブタジエンまたはイソプレンを含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項6】
成分(b)が、メチル(メタ)アクリレートとn-ブチル(メタ)アクリレートとの混合物を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項7】
成分(c)が、1種以上のC10~C16アルキル(メタ)アクリレートを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項8】
全ての成分(a)~(d)の和が、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、合計して少なくとも95mol%、最も好ましくは100mol%になる、請求項1から7までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に定義されるランダムコポリマーを製造する方法であって、前記方法が、
(i)請求項1から8までのいずれか1項に記載のモノマー組成物を用意する工程;
(ii)前記モノマー組成物における溶液中のラジカル重合を開始させて、ランダムコポリマーを得る工程;および
(iii)前記ランダムコポリマーを水素化する工程
を含む、前記方法。
【請求項10】
炭素担持Pd触媒を用いて水素化を実施する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
20~120℃の温度および70×10 ~120×10 パスカルの圧力で水素化を実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(x)少なくとも1つの基油;および
(y)請求項1から8までのいずれか1項に記載の1種以上のコポリマー
を含む、組成物。
【請求項13】
前記基油が、ポリアルファオレフィン基油、飽和分が少なくとも90%であり、硫黄含有率が0.03%以下であり、かつ粘度指数が少なくとも120である鉱油であるAPIグループIII基油、ポリアルファオレフィン基油とAPIグループIII基油との混合物、またはAPIグループIII基油の混合物である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
潤滑剤組成物の全量を基準として、前記コポリマー0.05~50質量%、より好ましくは1~30質量%を含む、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
潤滑剤組成物の粘度指数を改善するための潤滑剤組成物用添加剤としての、請求項1から8までのいずれか1項に記載のコポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエンおよびアルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマーを含むランダムコポリマー、前記コポリマーを製造する方法、前記コポリマーを含む潤滑剤組成物、および潤滑剤組成物用の添加剤としての、または潤滑剤組成物用の基油としての前記コポリマーの使用に関する。前記コポリマーは、駆動システム潤滑油、作動油、エンジン油および工業用油配合物に有利に使用される。
【0002】
従来技術の説明
本発明は、潤滑の分野に関する。潤滑剤は、表面間の摩擦を低下させる組成物である。2表面間の運動の自由を可能にし、かつ前記表面の機械的摩耗を低下させることに加えて、潤滑剤は、前記表面の腐食を防止および/または熱または酸化による前記表面への損傷を防止することができる。潤滑剤組成物の例は、エンジン油、変速機油、ギヤー油、工業用潤滑油、グリースおよび金属加工油を含むが、しかしこれらに限定されない。
【0003】
典型的な潤滑剤組成物は、ベースフルード(基油とも呼ばれる)および任意に1種以上の添加剤を含む。従来のベースフルードは、天然に存在する炭化水素、例えば鉱油、または合成組成物、例えばポリアルファオレフィン、ポリアルキルメタクリレート、およびエチレン-プロピレンコポリマーである。
【0004】
前記潤滑剤の意図される使用に応じて、多種多様な添加剤を、前記ベースフルードと組み合わせることができる。潤滑剤添加剤の例は、酸化防止剤、腐食抑制剤、分散剤、極圧添加剤、泡消し剤および金属不活性化剤を含むが、しかしこれらに限定されない。粘度特性の改善には、粘度指数向上剤(VII)および増ちょう剤が使用されてよい。これらの粘度調整剤は、通常、ポリマータイプのものである。
【0005】
ポリマー添加剤を潤滑剤配合物に添加する欠点は、前記ポリマー添加剤がせん断応力を受け、かつ時が経つにつれて機械的に分解することである。より高分子量のポリマーは、より良好な増ちょう剤であるが、しかし、せん断応力をより受けやすく、ポリマー分解をまねく。ポリマーの前記分子量は減少することがあり、それによって、よりせん断安定なポリマーが得られる。これらのせん断安定な低分子量ポリマーは、もはやそれほど効果的な増ちょう剤ではなく、所望の粘度に達するために、前記潤滑剤中でより大きな濃度で使用しなければならない。
【0006】
典型的なポリマー添加剤は、アルキル(メタ)アクリレートのポリマーをベースとしている。例えば、欧州特許出願公開第0566048号明細書(EP 0 566 048 A1)および欧州特許出願公開第0471266号明細書(EP 0 471 266 A1)の特許出願明細書には、1000~100000g/molの質量平均分子量Mを有する、アルキル(メタ)アクリレートと1-アルケンとのランダムコポリマーおよび潤滑油組成物の成分としてのそれらの使用が開示されている。
【0007】
米国特許第6350723号明細書(US 6,350,723)には、C12~30アルキルメタクリレートを含むアルキルメタクリレートの少なくとも1つのブロックと、15000~5000000g/molの数平均分子量Mを有する重合された共役ジエンのブロックとを含むブロックコポリマーが開示されている。前記ジエンに由来するモノマーは、選択的に水素化される。前記ブロックコポリマーは、粘度指数向上剤として使用される。
【0008】
米国特許第4533482号明細書(US 4,533,482)には、100000~10000000g/molの質量平均分子量を有する、水素化ジオレフィンと、低級アルキル(メタ)アクリレートと、任意に高級アルキル(メタ)アクリレートとを含むランダムコポリマーおよび流動点降下剤および粘度指数向上剤としてのそれらの使用が開示されている。それらの高い質量平均分子量および幅広いPDIのために、これらのランダムコポリマーは、良好なせん断安定性を示さず、このことは、潤滑剤添加剤として使用される場合に欠点である。さらに、前記コポリマーは水素化後の大規模な後処理を必要とし、これは、工業的規模で実行可能ではない。
【0009】
英国特許第1112749号明細書(GB 1,112,749)には、粘度指数向上剤としての使用に適していると記載されたポリマーが開示されており、これらは、1種以上のジオレフィンと1種以上のアルキル(メタ)アクリレートとの乳化重合、続いてニッケル触媒の存在下での水素化により合成される。英国特許第1112749号明細書(GB1,112,749)において入手可能な例は、33000g/molまたは35000g/molの数平均分子量を有する、ブタジエンとラウリルメタクリレートとのコポリマーを示す。
【0010】
欧州特許出願公開第0471266号明細書(EP 0471266A1)には、合成基油またはその添加剤として使用するための、1-アルケンとC~C32アルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーが開示されている(請求項1参照)。好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、C~C20アルキル(メタ)アクリレート(第5頁第32頁)、より好ましくは10個を上回る炭素原子および高いイソ含有率を有するアルキル(メタ)アクリレート(第5頁第40行)である。せん断安定性試験は記載されていない。前記ポリマー/PAO配合物の熱酸化安定性のみが議論されている。
【0011】
米国特許第6350723号明細書(US 6,350,723)には、水素化された共役アルカジエンと、C12~C30アルキル(メタ)アクリレートとの高分子量ブロックコポリマー(請求項1)が開示されており、前記コポリマーは、アニオン重合、続いて担持パラジウム触媒での水素化工程により製造される(請求項14、表3)。
【0012】
本発明の目的
既存の添加剤、例えば上記の従来技術に記載されたものは、一部の用途に必要な性能レベルを有しておらず、かつそれらの高分子量のせいで、必要とされるせん断安定性が足りないか、または異なるタイプの基油への必要とされる溶解度が足りない。さらに、従来のポリアルキルメタクリレート(PAMA)添加剤は通常、所望の粘度特性を達成するには潤滑剤組成物に大量で添加される必要がある。
【0013】
したがって、本発明は、改善された粘度特性をより少ない量の添加剤で提供できる添加剤を提供することを目的としている。そのうえ、これらの添加剤は、高い粘度指数、フィルタラビリティおよび泡立ち低下を潤滑油組成物において提供するべきである。さらに、前記添加剤は、典型的なベースフルードに可溶であり、かつ高いせん断安定性を有するべきである。さらに、前記添加剤は、単純かつ安価な方法で製造でき、殊に商業的に入手可能な成分が使用されるべきである。これに関連して、それらは、工業的規模で、新しい設備または煩雑な構成の設備がこのために必要とされることなく、製造できるべきである。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明によるコポリマー
第1の態様において、本発明は、ランダムコポリマーに関し、次のものを含むモノマー組成物を重合することによって得ることができる:
(a)1分子あたり6個以下の炭素原子を有する1種以上の共役ジエン5~55mol%;
(b)1種以上のC~Cアルキル(メタ)アクリレート10~45mol%;
(c)1種以上のC~C24アルキル(メタ)アクリレート10~70mol%;
(d)(メタ)アクリル酸と、ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの、1種以上のエステル0~10mol%;および
(e)炭素原子6~16個を有する1種以上の1-アルケン0~10mol%、
ここで、前記共役ジエンに由来するモノマー単位は水素化され、かつ前記コポリマーは5000~20000g/molの質量平均分子量を有する。
【0015】
従来技術から公知のコポリマーとは異なり、本発明によるコポリマーは、相対的に低い質量平均分子量を有する。好ましくは、本発明によるコポリマーの質量平均分子量(M)は、7000~20000g/mol、より好ましくは8000~20000g/molの範囲内である。この質量平均分子量を有するポリマーは、特に高いせん断抵抗を有し、かつ前記コポリマーの少ない量で潤滑剤組成物の粘度特性の良好な改善を提供する。
【0016】
好ましくは、本発明のコポリマーは、極めて低い架橋度および狭い分子量分布を有し、さらにそれらのせん断抵抗に寄与する。前記の低い架橋度および狭い分子量は、前記コポリマーの多分散指数(PDI)に反映される。好ましくは、本発明によるコポリマーの多分散指数は、1.5~6.0、より好ましくは2.0~4.0、最も好ましくは2.2~3.2の範囲内である。2.2~3.2の範囲内の多分散指数は、前記コポリマーのせん断抵抗に関してたいていの工業的用途に最適であるとみなされる。前記多分散指数は、質量平均分子量の、数平均分子量に対する比(M/M)として定義される。
【0017】
前記質量平均および数平均分子量は、商業的に入手可能なポリブタジエン校正標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される。前記決定は、好ましくは、DIN 55672-1に従って、溶離液としてTHFを用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより実施される。
【0018】
好ましくは、全ての成分(a)~(c)の和は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、合計して少なくとも90mol%、より好ましくは少なくとも95mol%、最も好ましくは100mol%になる。
【0019】
共役ジエン(成分(a))
本発明のコポリマーは、成分(a)として1分子あたり6個以下の炭素原子を有する1種以上の共役ジエンに由来するモノマーを含む。
【0020】
特に適したジエンは、ブタジエン、cis-およびtrans-1-メチル-1,3-ブタジエン(ピペリレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンおよび2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)である。
【0021】
好ましい実施態様において、成分(a)はブタジエンまたはイソプレンを含む。ブタジエンが最も好ましい。
【0022】
本発明によれば、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、1分子あたり6個以下の炭素原子を有する1種以上の共役ジエン5~55mol%、好ましくは15~55mol%を含む。
【0023】
前記コポリマーにおいて、前記共役ジエンに由来するモノマー単位は水素化される。好ましくは、前記水素化は選択的であり、かつ前記(メタ)アクリル酸エステルおよび1-アルケンに由来するモノマー単位に影響を及ぼさない。
【0024】
前記水素化の選択率は、例えば、定量H核磁気共鳴(H NMR)分光法または赤外(IR)分光法により調べることができる。好ましくは、共役ジエンに由来する重合単位に対する水素化度は、95%を上回る。前記水素化度は、水素化されていない出発物質に対する、水素の付加による共役ジエンに由来する重合単位の炭素-炭素結合のモル飽和度として定義される。本発明によるランダムコポリマーの水素化度は、重水素化クロロホルム溶液中で標準としてジメチルテレフタレートを用いてH NMR分光法により測定される。化学シフトは、溶剤信号を用いて校正される。前記水素化度を決定するために、前記標準のそれぞれの信号積分は、それらのオレフィンプロトンの信号積分との関係に変換される。各試料について、0%の水素化度を定義するために、水素化されていない基準試料を用いる測定および決定を繰り返すことが必要である。
【0025】
アルキル(メタ)アクリレート(成分(b)および(c))
本発明のコポリマーは、成分(b)としてC~Cアルキル(メタ)アクリレートおよび成分(c)としてC~C24アルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマーの混合物を含む。
【0026】
用語“(メタ)アクリル酸”は、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリル酸とメタクリル酸との混合物をいい、その際にメタクリル酸が好ましい。用語“(メタ)アクリレート”は、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステルまたはアクリル酸およびメタクリル酸のエステルの混合物をいい、その際にメタクリル酸のエステルが好ましい。
【0027】
用語“Cアルキル(メタ)アクリレート”は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子1~6個を有する直鎖または分岐状のアルコールとのエステルをいう。前記用語は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に(メタ)アクリル酸エステルと異なる長さのアルコールとの混合物を包含する。同様に、用語“C7~24アルキル(メタ)アクリレート”は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子7~24個を有する直鎖または分岐状のアルコールとのエステルをいう。
【0028】
成分(b)に適したC1~6アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートおよびtert-ブチル(メタ)アクリレートを含む。特に好ましいC1~4アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレートおよびブチル(メタ)アクリレートである。
【0029】
好ましい実施態様において、成分(b)は、メチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートとの混合物を含む。より好ましくは、前記ブチル(メタ)アクリレートは、n-ブチル(メタ)アクリレートである。
【0030】
成分(c)に適したC7~24アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、2-ブチルオクチル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-ブチルデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5-メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-メチルドデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5-メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5-イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5-エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3-イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチル-エイコシル(メタ)アクリレート、ステアリル-エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、または2-デシル-テトラデシル(メタ)アクリレートを含む。
【0031】
最も好ましいC7~24アルキル(メタ)アクリレートは、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、n-エイコシル(メタ)アクリレート、n-ドコシル(メタ)アクリレートおよびn-テトラコシル(メタ)アクリレートである。
【0032】
特に好ましい実施態様において、成分(c)は、1種以上のC10~C16アルキル(メタ)アクリレートを含み、これは、(メタ)アクリル酸と、炭素原子10~15個を有する直鎖または分岐状のアルコールとのエステルをいう。好ましくは、成分(c)は、n-ドデシル(メタ)アクリレートを含む。
【0033】
本発明によれば、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、成分(b)として1種以上のC~Cアルキル(メタ)アクリレート10~45mol%、好ましくは10~40mol%を含む。好ましくは、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、成分(b)としてメチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートとの混合物10~40mol%を含む。
【0034】
本発明によれば、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、成分(c)として1種以上のC~C24アルキル(メタ)アクリレート10~70mol%、好ましくは15~55mol%を含み、その際に好ましくは、前記の1種以上のC~C24アルキル(メタ)アクリレートは、ラウリル(メタ)アクリレート(C12~C15アルキル(メタ)アクリレート)である。
【0035】
一実施態様において、前記モノマー組成物は、成分(b)の一部として、メチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートとの混合物10~40mol%および成分(c)の一部として、ラウリルメタクリレート15~55mol%を含む。
【0036】
好ましくは、全ての成分(a)~(c)の和は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、合計して少なくとも90mol%、より好ましくは少なくとも95mol%、最も好ましくは100mol%になる。
【0037】
(メタ)アクリル酸と、ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル(成分(d))
本発明のコポリマーは、任意に、成分(d)として、(メタ)アクリル酸と、1種以上のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステルに由来するモノマーを含んでいてよい。それらの高い分子量のために、前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、本発明に関連してマクロアルコールと呼ばれることもある。生じるエステルは、本発明に関連してマクロモノマーと呼ばれることもある。
【0038】
本発明によれば、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、成分(d)として1種以上のマクロモノマー0~10mol%、好ましくは0~5mol%、より好ましくは0.1~5mol%を含む。
【0039】
好ましくは、全ての成分(a)~(d)の和は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、合計して少なくとも90mol%、より好ましくは少なくとも95mol%、最も好ましくは100mol%になる。
【0040】
成分(d)は、単一のタイプのマクロモノマーを含んでいてよいか、または異なるマクロアルコールをベースとする異なるマクロモノマーの混合物を含んでいてよい。
【0041】
成分(d)のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは好ましくは、500g/mol~10000g/mol、好ましくは700~8000g/mol、最も好ましくは1000~5000g/molの数平均分子量Mを有する。
【0042】
好ましい実施態様において、成分(d)は、1500~3000g/mol、好ましくは1800~2100g/molの数平均分子量を有する1種のマクロアルコールを用いて製造される1種のマクロモノマーである。
【0043】
前記数平均分子量Mは、商業的に入手可能なポリブタジエン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される。前記決定は、DIN 55672-1に従って、溶離液としてTHFを用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより実施される。
【0044】
好ましくは、前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、少なくとも99%の水素化レベルを有し、これは、例えば、H NMR分光法により決定することができる。前記コポリマーの水素化レベルを決定する代替的な尺度は、ヨウ素価である。前記ヨウ素価は、ポリマー100gへ付加することができるヨウ素のグラム数をいう。好ましくは、前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、ポリマー100gあたりヨウ素5g以下のヨウ素価を有する。前記ヨウ素価は、ウイス法によりDIN 53241-1:1995-05に従って決定される。
【0045】
好ましいヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、英国特許出願公開第2270317号明細書(GB 2270317)に従って得ることができる。
【0046】
本明細書において用いられる場合には、用語“ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエン”は、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する水素化ポリブタジエンをいう。前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、さらに、付加的な構造単位、例えば、アルキレンオキシドのポリブタジエンへの付加に由来するポリエーテル基または無水マレイン酸のポリブタジエンへの付加に由来する無水マレイン酸基を含んでいてよい。これらの付加的な構造単位は、前記ポリブタジエンがヒドロキシル基で官能化される場合に、前記ポリブタジエン中へ導入されていてよい。
【0047】
好ましいのは、モノヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンである。より好ましくは、前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルを末端基とする水素化ポリブタジエンである。特に好ましいのは、ヒドロキシプロピルを末端基とするポリブタジエンである。
【0048】
これらのモノヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、最初にブタジエンモノマーをアニオン重合によりポリブタジエンに変換することにより製造することができる。続いて、前記ポリブタジエンモノマーと、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応により、ヒドロキシ官能化ポリブタジエンを製造することができる。前記ポリブタジエンは、1個を上回るアルキレンオキシド単位と反応されてもよく、その際に末端ヒドロキシル基を有するポリエーテル-ポリブタジエンブロックコポリマーが生じる。前記のヒドロキシル化されたポリブタジエンは、適した遷移金属触媒の存在下で水素化することができる。
【0049】
これらのモノヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、末端二重結合を有する(コ)ポリマーのヒドロホウ素化により得られる生成物(例えば、米国特許第4316973号明細書(US 4,316,973)に記載される);末端二重結合を有する(コ)ポリマーおよび無水マレイン酸とアミノアルコールとのエン反応により得られる無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物;および末端二重結合を有する(コ)ポリマーのヒドロホルミル化、続いて水素化により得られる生成物(例えば、特開昭63-175096号公報に記載される)から選択することもできる。
【0050】
本発明に従う使用のためのマクロモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートのエステル交換により製造することができる。前記アルキル(メタ)アクリレートと、前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの反応は、本発明のエステルを形成する。好ましいのは、メチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートを反応物として用いることである。
【0051】
このエステル交換は、広く公知である。例えば、このためには、不均一系触媒系、例えば水酸化リチウム/酸化カルシウム混合物(LiOH/CaO)、純水酸化リチウム(LiOH)、リチウムメトキシド(LiOMe)またはナトリウムメトキシド(NaOMe)または均一系触媒系、例えばイソプロピルチタネート(Ti(OiPr))またはジオクチルスズオキシド(Sn(OCt)O)を使用することが可能である。前記反応は、平衡反応である。したがって、放出される低分子量アルコールは、例えば蒸留により、典型的には除去される。
【0052】
そのうえ、前記マクロモノマーは、直接エステル化手順により、例えば、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸無水物から、好ましくはp-トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸による酸触媒作用下で、または遊離メタクリル酸から、DCC法(ジシクロヘキシルカルボジイミド)により、得ることができる。
【0053】
さらに、このヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、酸塩化物、例えば(メタ)アクリロイルクロリドとの反応により、エステルに変換することができる。
【0054】
好ましくは、本発明のエステルの上記で詳述した製造において、重合防止剤、例えば4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルラジカルおよび/またはヒドロキノンモノメチルエーテルが使用される。
【0055】
1-アルケン(成分(e))
本発明のコポリマーは、任意に、成分(e)として炭素原子6~16個を有する1-アルケンに由来するモノマーを含んでいてよい。前記1-アルケンは、分岐状または線状であってよく、かつ1個を上回る不飽和結合を含んでいてよい。1個を上回る不飽和結合を有する1-アルケンの場合に、これらの1-アルケンに由来するモノマー単位も、前記共役ジエンについて上記に記載されたように、好ましくは水素化される。
【0056】
適した1-アルケンは、例えば、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンおよび1-ドデセンである。好ましい実施態様において、成分(e)は1-デセンを含む。
【0057】
本発明によれば、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、成分(e)として炭素原子6~16個を有する1種以上の1-アルケン0~10mol%、好ましくは0~5mol%、より好ましくは0.1~5mol%を含む。
【0058】
好ましくは、全ての成分(a)~(e)の和は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、合計して少なくとも90mol%、より好ましくは少なくとも95mol%、最も好ましくは100mol%になる。
【0059】
付加的なモノマー(成分(f))
前記モノマー組成物は、上記に記載された成分(a)~(e)に加えて、さらにモノマー(f)を含んでいてもよい。
【0060】
本発明に従って使用することができる付加的なモノマーは、例えば、炭素原子8~17個を有するスチレンモノマー、アシル基中に炭素原子1~11個を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子1~10個を有するビニルエーテル、分散性の酸素および/または窒素で官能化されたモノマー、複素環状(メタ)アクリレート、複素環状ビニル化合物、共有結合したリン原子を有するモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよびハロゲンを有するモノマーからなる群から選択することができる。
【0061】
炭素原子8~17個を有する、適したスチレンモノマーは、スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα-メチルスチレンおよびα-エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエンおよびp-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレン、ニトロスチレンからなる群から選択され、その際にスチレンが好ましい。
【0062】
アシル基中に炭素原子1~11個を有する、適したビニルエステルは、ビニルホルメート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレートからなる群から選択され、好ましくはビニルエステルは、アシル基中に炭素原子2~9個、より好ましくは2~5個を含み、その際に前記アシル基は線状または分岐状であってよい。
【0063】
アルコール基中に炭素原子1~10個を有する、適したビニルエーテルは、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテルからなる群から選択され、好ましくはビニルエーテルは、アルコール基中に炭素原子1~8個、より好ましくは1~4個を含み、その際に前記アルコール基は線状または分岐状であってよい。
【0064】
分散性の酸素および/または窒素で官能化された、適したモノマーは、アミノアルキル(メタ)アクリレート、例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレート;アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオール(メタ)アクリレート、p-ヒドロキシスチレン、ビニルアルコール、アルケノール(炭素原子3~12個を有する(メチル)アリルアルコール、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、ソルビタン、トリグリセリド、糖類)エーテルまたはメタ(アクリレート);C1~8-アルキルオキシ-C2~4-アルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシ-ブチル(メタ)アクリレート、メトキシヘプチル(メタ)アクリレート、メトキシヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシペンチル(メタ)アクリレート、メトキシオクチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ-ブチル(メタ)アクリレート、エトキシヘプチル(メタ)アクリレート、エトキシヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシペンチル(メタ)アクリレート、エトキシオクチル(メタ)アクリレート、プロポキシメチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシヘプチル(メタ)アクリレート、プロポキシヘキシル(メタ)アクリレート、プロポキシペンチル(メタ)アクリレート、プロポキシオクチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシヘプチル(メタ)アクリレート、ブトキシヘキシル(メタ)アクリレート、ブトキシペンチル(メタ)アクリレートおよびブトキシオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選択され、その際にエトキシエチル(メタ)アクリレートおよびブトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0065】
適した複素環状(メタ)アクリレートは、2-(1-イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、1-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-ピロリドン、N-メタクリロイルモルホリン、N-メタクリロイル-2-ピロリジノン、N-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-ピロリジノン、N-(3-メタクリロイルオキシプロピル)-2-ピロリジノンからなる群から選択される。
【0066】
適した複素環状ビニル化合物は、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、3-エチル-4-ビニルピリジン、2,3-ジメチル-5-ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9-ビニルカルバゾール、3-ビニルカルバゾール、4-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリジン、3-ビニルピロリジン、N-ビニル-カプロラクタム、N-ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルオキサゾール類および水素化ビニルオキサゾール類からなる群から選択される。
【0067】
共有結合したリン原子を有するモノマーは、2-(ジメチルホスファト)プロピル(メタ)アクリレート、2-(エチレンホスフィト)プロピル(メタ)アクリレート、ジメチルホスフィノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルホスホノエチル(メタ)アクリレート、ジエチル(メタ)アクリロイルホスホネート、ジプロピル(メタ)アクリロイルホスフェート、2-(ジブチルホスホノ)エチル(メタ)アクリレート、ジエチルホスファトエチル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルホスファト)-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(エチレンホスフィト)-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルジエチルホスホネート、3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルジプロピルホスホネート、3-(ジメチルホスファト)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(エチレンホスフィト)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-ヒドロキシプロピルジエチルホスホネート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-ヒドロキシプロピルジプロピルホスホネートおよび2-(ジブチルホスホノ)-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0068】
エポキシ基を有する適したモノマーは、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アリルエーテル等である。
【0069】
ハロゲンを有するモノマーは、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アリルクロリドおよびハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等である。
【0070】
最も好ましい付加的なモノマー(f)は、炭素原子8~17個を有するスチレンモノマー、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートまたはその混合物から選択される。
【0071】
好ましくは、付加的なモノマー(f)の量は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、0~10mol%、より好ましくは0~8mol%、最も好ましくは0~6mol%に限定される。
【0072】
好ましくは、全ての成分(a)~(f)の和は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、合計して100mol%になる。
【0073】
好ましいモノマー組成物
好ましい実施態様において、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、
(a)1分子あたり6個以下の炭素原子を有する1種以上の共役ジエン15~55mol%;
(b)1種以上のC~Cアルキル(メタ)アクリレート10~40mol%;
(c)1種以上のC~C24アルキル(メタ)アクリレート15~55mol%;
(d)(メタ)アクリル酸と、ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの、1種以上のエステル0~5mol%;および
(e)炭素原子6~16個を有する1種以上の1-アルケン0~5mol%
を含む。
【0074】
さらに好ましい実施態様において、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、
(a)1分子あたり6個以下の炭素原子を有する1種以上の共役ジエン15~55mol%;
(b)1種以上のC~Cアルキル(メタ)アクリレート10~40mol%;
(c)1種以上のC~C24アルキル(メタ)アクリレート15~55mol%;
(d)(メタ)アクリル酸と、ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの、1種以上のエステル0.1~5mol%;および
(e)炭素原子6~16個を有する1種以上の1-アルケン0~5mol%
を含む。
【0075】
さらに好ましい別の実施態様において、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、
(a)1分子あたり6個以下の炭素原子を有する1種以上の共役ジエン15~55mol%;
(b)1種以上のC~Cアルキル(メタ)アクリレート10~40mol%;
(c)1種以上のC~C24アルキル(メタ)アクリレート15~55mol%;
(d)(メタ)アクリル酸と、ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの、1種以上のエステル0~5mol%;および
(e)炭素原子6~16個を有する1種以上の1-アルケン0.1~5mol%
を含む。
【0076】
好ましくは、全ての成分(a)~(e)の和は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、合計して少なくとも90mol%、より好ましくは少なくとも95mol%、最も好ましくは100mol%になる。
【0077】
よりいっそう好ましい実施態様において、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、
(a)1分子あたり6個以下の炭素原子を有する1種以上の共役ジエン15~55mol%;
(b)1種以上のC~Cアルキル(メタ)アクリレート10~40mol%;
(c)1種以上のC~C24アルキル(メタ)アクリレート15~55mol%;
(d)(メタ)アクリル酸と、ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの、1種以上のエステル0~5mol%;および
(e)炭素原子6~16個を有する1種以上の1-アルケン0~5mol%、
(f)上記に列挙されたような1種以上の付加的なモノマー(f)、好ましくは炭素原子8~17個を有するスチレンモノマー、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートまたはその混合物0~6mol%
を含む。
【0078】
最も好ましくは、全ての成分(a)~(f)の和は、前記モノマー組成物中のモノマーの全量を基準として、100mol%になる。
【0079】
ランダム構造
本発明のコポリマーは、ランダム構造のものである。本発明のコポリマーのランダム構造は、示差走査熱量測定法(DSC)を用いるガラス転移温度Tを測定することにより調べることができる。本発明によるランダムコポリマーは、ブロックコポリマーまたはグラジエントコポリマーとは異なり、典型的には、単一のガラス転移温度Tを有する。
【0080】
好ましくは、示差走査熱量測定法(DSC)により決定される前記コポリマーのガラス転移温度Tは、0℃~-100℃、より好ましくは-20℃~-80℃、最も好ましくは-50℃~-60℃の範囲内である。好ましくは、インジウムおよびシクロヘキサンが標準として使用される。
【0081】
製造方法
本発明は、上記のコポリマーを製造する方法にも関し、前記方法は、次の工程:
(i)上記に記載されたようなモノマー組成物を用意する工程;
(ii)前記モノマー組成物における溶液中のラジカル重合を開始させて、ランダムコポリマーを得る工程;および
(iii)前記ランダムコポリマーを水素化する工程
を含む。
【0082】
ラジカル重合(工程(i)および(ii))
標準のフリーラジカル重合は、とりわけ、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版に詳述されている。一般に、重合開始剤および任意に連鎖移動剤がこのために使用される。
【0083】
本発明のコポリマーは、ATRP法によって得ることができる。この反応様式は、例えば、J.-S. Wang, et al., J. Am. Chem. Soc, vol. 117, p. 5614-5615 (1995)、Matyjaszewski, Macromolecules, vol. 28, p. 7901-7910 (1995)に記載されている。そのうえ、国際公開第96/30421号(WO 96/30421)、国際公開第97/47661号(WO 97/47661)、国際公開第97/18247号(WO 97/18247)、国際公開第98/40415号(WO 98/40415)および国際公開第99/10387号(WO 99/10387)の特許出願明細書には、上記に説明されたATRPの変法が開示されている。
【0084】
さらに、本発明のコポリマーは、RAFT法によって得ることもできる。例えば、RAFT法は、国際公開第98/01478号(WO 98/01478)および国際公開第2004/083169号(WO 2004/083169)に詳細に記載されている。
【0085】
本発明によれば、前記コポリマーを製造するための重合は、溶液中のフリーラジカル重合により実施される。
【0086】
好ましい実施態様によれば、本発明のランダムコポリマーは、工程(ii)中の前記反応混合物が好ましくは、前記モノマー組成物(工程(i))、1種以上のラジカル開始剤、下記に記載されるような可溶化性キャリヤー媒体および任意に1種以上の連鎖移動剤を含む、フリーラジカル溶液重合により製造される。
【0087】
溶液重合は、本発明のプロセスを実施するための好ましい方法である。それというのも、多少の可溶化性キャリヤー媒体を添加することにより、前記反応混合物中の前記モノマー組成物の濃度を調節することが可能になるからである。前記反応混合物中の前記モノマー組成物の適切な濃度を選択することにより、生じるコポリマーの分子量および多分散指数を制御することができる。
【0088】
好ましくは、前記反応混合物中の前記モノマー組成物の全量は、前記反応混合物の全質量を基準として、5~95質量%、より好ましくは10~70質量%、よりいっそう好ましくは20~45質量%、最も好ましくは35~45質量%である。20%よりも高いモノマー濃度は、通常、工業的規模で好ましい。前記反応混合物の全質量を基準として、20~45質量%、好ましくは35~45質量%の範囲内の前記モノマー組成物の濃度が最適とみなされる。それというのも、8000~20000g/molの範囲内の低い質量平均分子量および2.2~3.2の範囲内の低い多分散指数を有するランダムコポリマーを生じるからである。
【0089】
前記重合は、好ましくは20℃~200℃、より好ましくは50℃~150℃の温度で実施され、その反応圧力は、好ましくは1bar~30bar、より好ましくは10bar~28barであり、かつ前記ラジカル重合の全反応時間は1~10時間である。
【0090】
好ましい実施態様において、重合は、90℃~130℃、好ましくは110~130℃の温度、12bar~25bar、好ましくは15bar~23barの圧力および2~9時間、好ましくは3~7時間の全反応時間で実施される。
【0091】
好ましくは、使用される可溶化性キャリヤー媒体は、鉱油、合成油、ケトン、エステル溶剤、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素および脂肪族炭化水素またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0092】
鉱油の例は、パラフィン系油、ナフテン系油、溶剤精製油、イソパラフィン含有高VI油および水素化分解高VI油である。合成油の例は、有機エステル、例えばジエステルおよびポリエステル、例えばカルボン酸エステルおよびホスフェートエステル;有機エーテル、例えばシリコーン油、ペルフルオロアルキルエーテルおよびポリアルキレングリコール;および合成炭化水素、殊にポリオレフィンおよびガス液化油(GTL)である。ケトンの例は、ブタノンおよびメチルエチルケトンである。エステル溶剤の例は、脂肪油、および合成エステル潤滑剤(例えば、ジ-C4~12アルキルC4~12ジカルボキシレート、例えばジオクチルセバケートおよびジオクチルアジペート、ポリオールポリ-C4~12アルカノエート、例えばペンタエリトリトールテトラ-カプロエート;およびトリ-C4~12ヒドロカルビルホスフェート、例えばトリ-2-エチルヘキシルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートおよびトリクレジルホスフェート)である。芳香族炭化水素の例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルトルエンおよびそれらの混合物である。脂環式炭化水素の例は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよび脂環式テルペンである。脂肪族炭化水素の例は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、1-デセンおよび脂肪族テルペンである。
【0093】
好ましい実施態様において、前記可溶化性キャリヤー媒体は、脂環式または脂肪族または芳香族炭化水素、好ましくはシクロヘキサン、1-デセンまたはトルエン、よりいっそう好ましくはシクロヘキサンまたはトルエンである。
【0094】
工程(ii)は、ラジカル開始剤の添加を含む。
【0095】
適したラジカル開始剤は、例えば、アゾ開始剤、例えばアゾビス-イソブチロニトリル(AIBN)、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)および1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ケトンペルオキシド、tert-ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシドおよびビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。
【0096】
好ましくは、前記ラジカル開始剤は、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエートおよびtert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエートからなる群から選択される。特に好ましい実施態様において、前記ラジカル開始剤は、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタンである。
【0097】
好ましくは、前記モノマー混合物の全質量に対するラジカル開始剤の全量は、0.01~5質量%、より好ましくは0.02~1質量%、最も好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0098】
ラジカル開始剤の全量が、単一工程において添加されてよく、または前記ラジカル開始剤が、前記重合反応の経過につれて幾つかの工程において添加されてもよい。好ましくは、前記ラジカル開始剤は、幾つかの工程において添加される。例えば、前記ラジカル開始剤の一部分が、ラジカル重合を開始させるために添加されてよく、かつ前記ラジカル開始剤の別の部分が、最初の配量0.5~3.5時間後に添加されてもよい。
【0099】
工程(ii)は任意に、連鎖移動剤の添加を含む。連鎖移動剤の例は、硫黄含有化合物、例えばチオール、例えばn-およびt-ドデカンチオール、2-メルカプトエタノール、およびメルカプトカルボン酸エステル、例えばメチル-3-メルカプトプロピオネートまたはより長鎖のアルケンである。好ましい連鎖移動剤は、炭素原子20個まで、殊に炭素原子15個まで、およびより好ましくは炭素原子12個までを有するアルケンである。特に好ましいのは、1-デセンの添加である。
【0100】
前記ラジカル重合の完了後に、この生成物を、好ましくはろ過して前記反応混合物中に存在するあらゆる不純物を除去し、続いてあらゆる揮発性溶剤を蒸発させる。
【0101】
水素化(工程(iii))
この本発明のための工業的規模で、二重結合が存在しない水素化されたコポリマーを有することが必要とされる。それというのも、このことが、化学酸化、架橋またはその他の望ましくない副反応に対する前記コポリマーの反応性を低下させるからである。したがって、工程(iii)において、本発明の発明者は、下記に記載されるようなジエン単位の選択的水素化を実施した。
【0102】
共役ジオレフィンに由来する1種以上の重合単位を含む、ランダムコポリマーまたはその他の(コ)ポリマーの選択的水素化は、典型的には、還元剤として水素ガスまたはその他の水素源を用いてバルクで、または少なくとも1種の可溶化性キャリヤー媒体の存在下で、不溶性の担持金属または金属錯体触媒を用いる不均一系方式または可溶性の有機金属触媒を用いる均一系方式のいずれかで実施される。均一系触媒を用いる水素化の詳細な説明は、例えば、米国特許第3541064号明細書(US 3,541,064)および英国特許第1030306号明細書(GB 1,030,306)に見出すことができる。これは経済的な利点を提供するので、触媒として不溶性の担持金属を用いる不均一系触媒作用は、工業的な選択的水素化プロセスに幅広く使用され、通常、その他のプロセスに比べて好ましい。本発明による選択的水素化プロセスは、好ましくは、触媒として不溶性の担持金属を用いる不均一系触媒作用プロセスである。
【0103】
高い反応性(すなわち、共役ジオレフィンに由来する重合単位の不飽和炭素-炭素結合の、飽和炭素-炭素結合への迅速な変換)および高い選択性(すなわち、共役ジオレフィンに由来する以外の重合単位の保存)は、共役ジオレフィンに由来する1個以上の重合単位を含む、ランダムコポリマーまたはその他の(コ)ポリマーの選択的水素化反応に典型的な要件である。また、前もって定義されたような高い水素化度が望ましい。これらの要件を満たすように、次のパラメーターが、典型的に調整されてよい:
不均一系触媒を用いる本発明による選択的水素化用の典型的な触媒活性な金属は、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、U、Cu、Nd、In、Sn、Zn、Ag、Crおよびこれらの金属のうち1種以上の合金を含むが、しかしこれらに限定されない。Pdを含有する触媒が特に好ましい。
【0104】
典型的な触媒担体は、酸化物(Al、TiO、SiOまたはその他のもの)、炭素、けいそう土またはその他のキャリヤーを含むが、しかしこれらに限定されない。
【0105】
本発明による選択的水素化プロセスは、好ましくは、不均一系炭素担持Pd触媒を用いて実施される。炭素担持Pd触媒の使用が好ましい。それというのも、高い選択性および反応性を有する共役ジエンに由来する二重結合の水素化を実施することが可能になるからである。炭素担持Pd触媒で水素化されたコポリマーが、米国特許第4533482号明細書(US 4,533,482)に記載されたプロセスにより製造されたコポリマーよりも、水素化後にあまり大規模な後処理を必要としないことも見出された。
【0106】
前記不均一系触媒は、例えば、ペレットまたは粉末の形で使用することができる。粉末が特に好ましい。
【0107】
前記担体上に添加される触媒活性な金属の量は好ましくは、前記担持触媒の全質量を基準として、0.1~10質量%、より好ましくは1~10質量%である。
【0108】
工程(ii)において得られるコポリマーは、好ましくは、可溶化性キャリヤー媒体をさらに含む組成物において提供されてよい。上記に記載されるような精製は、好ましくは、水素化工程(iii)の前に実施すると、水素化のレベルの低下をまねきうる、ラジカル重合工程(ii)中に製造された不純物が除去される。
【0109】
好ましくは、前記可溶化性キャリヤー媒体は、鉱油、合成油、ケトン、エステル溶剤、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素および脂肪族炭化水素またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0110】
鉱油の例は、パラフィン系油、ナフテン系油、溶剤精製油、イソパラフィンを含有する高VI油および水素化分解高VI油である。合成油の例は、有機エステル、例えばジエステルおよびポリエステル、例えばカルボン酸エステルおよびホスフェートエステル;有機エーテル、例えばシリコーン油、ペルフルオロアルキルエーテルおよびポリアルキレングリコール;および合成炭化水素、殊にポリオレフィンおよびガス液化油(GTL)である。ケトンの例は、ブタノンおよびメチルエチルケトンである。エステル溶剤の例は、脂肪油、および合成エステル潤滑剤(例えば、ジ-C4~12アルキルC4~12ジカルボキシレート、例えばジオクチルセバケートおよびジオクチルアジペート、ポリオールポリ-C4~12アルカノエート、例えばペンタエリトリトールテトラ-カプロエート;およびトリ-C4~12ヒドロカルビルホスフェート、例えばトリ-2-エチルヘキシルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートおよびトリクレジルホスフェート)である。芳香族炭化水素の例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルトルエンおよびそれらの混合物である。脂環式炭化水素の例は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよび脂環式テルペンである。脂肪族炭化水素の例は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、1-デセンおよび脂肪族テルペンである。
【0111】
好ましい実施態様において、水素化は、脂環式または脂肪族炭化水素、好ましくはシクロヘキサンの存在下で実施される。
【0112】
水素化工程(iii)における前記可溶化性キャリヤー媒体中の前記ランダムコポリマーの濃度は、典型的には5~95質量%の範囲であってよい。好ましくは、前記可溶化性キャリヤー媒体中の前記ランダムコポリマーの濃度は、コポリマーおよびキャリヤー媒体の全質量を基準として、ランダムコポリマー10~70質量%である。
【0113】
水素ガスが還元剤として使用される場合には、前記反応圧力は好ましくは、一定圧力または勾配圧力のいずれかとして、5~1500barである。より好ましくは、前記反応圧力は、5~500bar、よりいっそう好ましくは10~300bar、および最も好ましくは70~120barである。
【0114】
水素化工程(iii)における反応温度は好ましくは、0~200℃、より好ましくは20~150℃、よりいっそう好ましくは20~120℃である。
【0115】
特に好ましい実施態様において、水素化は、炭素担持Pd触媒の存在下で、20~120℃の温度および70~120barの圧力で実施される。より好ましくは、シクロヘキサンまたはトルエンが、これらの条件下で可溶化性キャリヤー媒体として使用される。これらの条件が、上記のコポリマーを製造するのに最適であることが見出された。それというのも、それらは、前記共役ジエンに由来する二重結合の選択的水素化において高い反応性および選択性をもたらすからである。さらに、これらの条件は、例えば米国特許第4533482号明細書(US 4,533,482)に開示された困難な後処理条件に比較して、前記水素化混合物から前記の水素化されたコポリマーを得るのに必要とされる後処理を最小限にするのに役立つ。
【0116】
組成物
本発明は、
(x)少なくとも1種の基油;および
(y)本発明の上記の水素化されたランダムコポリマーのうち1種以上
を含む組成物にも関する。
【0117】
本発明によるコポリマーの存在のために、前記組成物は、優れた粘度指数、フィルタラビリティおよび少ない泡形成を有する。
【0118】
前記組成物は、本発明によるコポリマーと、希釈剤としての基油とを含む添加剤組成物であってよい。前記添加剤組成物は、例えば、粘度指数向上剤として潤滑剤に添加されてもよい。典型的には、前記添加剤組成物は、相対的に高い量の本発明によるコポリマーを含む。
【0119】
前記組成物は、本発明によるコポリマー、基油および任意に、以下に議論されるようなさらなる添加剤を含む、潤滑剤組成物であってもよい。前記潤滑剤組成物は、例えば、エンジン油または変速機油として使用されてよい。典型的には、前記潤滑剤組成物は、上記の添加剤組成物に比べて、より少ない量の本発明によるコポリマーを含む。
【0120】
前記組成物が添加剤組成物として使用される場合には、(1種以上の)基油(成分x)の量は好ましくは、40~80質量%、より好ましくは50~70質量%であり、かつコポリマー(成分y)の量は好ましくは、20~60質量%、より好ましくは30~50質量%である。
【0121】
前記組成物が潤滑剤組成物として使用される場合には、(1種以上の)基油(成分x)の量は好ましくは、50~99質量%、より好ましくは70~97質量%であり、かつコポリマー(成分y)の量は好ましくは、1~50質量%、より好ましくは2~20質量%、最も好ましくは5~20質量%である。
【0122】
好ましくは、(x)および(y)の量は、前記潤滑剤組成物の全質量を基準として、合計して100質量%になる。
【0123】
前記組成物中で使用されうる基油は好ましくは、潤滑粘度の1種以上の油を含む。そのような油は、天然および合成油、水素化分解、水素化、および水素化仕上げに由来する油、未精製油、精製油、再生油またはそれらの混合物を含む。
【0124】
前記基油は、アメリカ石油協会(API)(“Appendix E-API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils”の2008年4月版、節1.3 副見出し1.3. “Base Stock Categories”参照)により特定されるように定義されることもできる。
【0125】
APIは現在、潤滑剤ベースストックの5つのグループを定義する(API 1509、Annex E - API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils、2011年9月)。グループI、IIおよびIllは、含まれる飽和分および硫黄の量および粘度指数により分類される鉱油であり、グループIVは、ポリアルファオレフィンであり、かつグループVは、その他全てであり、例えばエステル油を含む。以下の第1表は、これらのAPI分類を説明する。
【0126】
第1表:
【表1】
【0127】
本発明に従う潤滑剤組成物を製造するのに使用される適切な無極性基油の100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って、好ましくは1mm/s~10mm/sの範囲内、より好ましくは2mm/s~8mm/sの範囲内である。
【0128】
本発明に従って使用することができるさらなる基油は、グループII~IIIフィッシャー-トロプシュ由来基油である。
【0129】
フィッシャー-トロプシュ由来基油は、当該技術分野において公知である。用語“フィッシャー-トロプシュ由来”は、基油が、フィッシャー-トロプシュ法の合成生成物であるか、または前記合成生成物に由来することを意味する。フィッシャー-トロプシュ由来基油は、GTL(ガス液化)基油とも呼ばれうる。本発明の潤滑組成物における基油として好都合に使用することができる、適したフィッシャー-トロプシュ由来基油は、例えば、欧州特許出願公開第0776959号明細書(EP 0 776 959)、欧州特許出願公開第0668342号明細書(EP 0 668 342)、国際公開第97/21788号(WO 97/21788)、国際公開第00/15736号(WO 00/15736)、国際公開第00/14188号(WO 00/14188)、国際公開第00/14187号(WO 00/14187)、国際公開第00/14183号(WO 00/14183)、国際公開第00/14179号(WO 00/14179)、国際公開第00/08115号(WO 00/08115)、国際公開第99/41332号(WO 99/41332)、欧州特許出願公開第1029029号明細書(EP 1 029 029)、国際公開第01/18156号(WO 01/18156)、国際公開第01/57166号(WO 01/57166)および国際公開第2013/189951号(WO 2013/189951)に開示されたようなものである。
【0130】
殊に変速機油配合物には、APIグループIIIの基油および異なるグループIII油の混合物が使用される。好ましい実施態様において、前記基油は、ポリアルファオレフィン基油またはポリアルファオレフィン基油と、APIグループIII基油またはAPIグループIII基油の混合物との混合物であってもよい。
【0131】
特に好ましい実施態様において、前記基油は、APIグループIII基油またはポリアルファオレフィン基油である。
【0132】
本発明による潤滑剤組成物は、成分(z)として、分散剤、消泡剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、耐食添加剤、染料およびそれらの混合物からなる群から選択される、さらなる添加剤を含有していてもよい。
【0133】
適切な分散剤は、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えば、ホウ素化PIBSIsを含めた、ポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSIs);およびN/O官能性を有するエチレン-プロピレンオリゴマーを含む。
【0134】
分散剤(ホウ素化分散剤を含む)は、好ましくは、前記潤滑剤組成物の全量を基準として0~5質量%の量で使用される。
【0135】
適した消泡剤は、シリコーン油、フルオロシリコーン油、フルオロアルキルエーテル等である。
【0136】
前記泡消し剤は、好ましくは、前記潤滑剤組成物の全量を基準として0.005~0.1質量%の量で使用される。
【0137】
好ましい清浄剤は、金属含有化合物、例えばフェノキシド;サリチレート;チオホスホネート、殊にチオピロホスホネート、チオホスホネートおよびホスホネート;スルホネートおよびカーボネートを含む。金属として、これらの化合物は、殊にカルシウム、マグネシウムおよびバリウムを含有していてよい。これらの化合物は、好ましくは中性または過塩基性の形で使用されてよい。
【0138】
清浄剤は、好ましくは、前記潤滑剤組成物の全量を基準として0.2~1質量%の量で使用される。
【0139】
適した酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤を含む。
【0140】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;4,4′-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4′-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール);4,4′-ビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール);2,2′-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール);2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4′-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール);2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);2,2′-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール);2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール);2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-エチル-フェノール;2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール;2,6-ジ-t-アミル-p-クレゾール;2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N′-ジメチルアミノメチルフェノール);4,4′-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4′-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール);2,2′-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール);ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド;n-オクチル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート;n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート;2,2′-チオ[ジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を含む。これらのうち、殊に好ましいのは、ビスフェノール系酸化防止剤およびエステル基を有するフェノール系酸化防止剤である。
【0141】
前記アミン系酸化防止剤は、例えば、モノアルキルジフェニルアミン、例えばモノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン等;ジアルキルジフェニルアミン、例えば4,4′-ジブチルジフェニルアミン、4,4′-ジペンチルジフェニルアミン、4,4′-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4′-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4′-ジオクチルジフェニルアミン、4,4′-ジノニルジフェニルアミン等;ポリアルキルジフェニルアミン、例えばテトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン等;ナフチルアミン、具体的にはα-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミンおよびさらにアルキル置換フェニル-α-ナフチルアミン、例えばブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、ノニルフェニル-α-ナフチルアミン等を含む。これらのうち、ジフェニルアミンは、それらの抗酸化効果の見地から、ナフチルアミンよりも好ましい。
【0142】
適した酸化防止剤は、さらに、硫黄およびリンを含有する化合物、例えば金属ジチオホスフェート、例えば亜鉛ジチオホスフェート(ZnDTPs)、“OOSトリエステル”=オレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α-ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルからの活性化された二重結合を有するジチオリン酸の反応生成物(燃焼時に無灰);有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、変性チオール、チオフェン誘導体、キサントゲン酸塩、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸;複素環状硫黄/窒素化合物、殊にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール;亜鉛ビス(ジアルキルジチオカルバメート)およびメチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート);有機リン化合物、例えばトリアリールおよびトリアルキルホスフィット;有機銅化合物および過塩基性カルシウムおよびマグネシウムをベースとするフェノキシドおよびサリチレートからなる群から選択されてよい。
【0143】
酸化防止剤は、前記潤滑剤組成物の全量を基準として、0~15質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%の量で使用される。
【0144】
前記流動点降下剤は、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、塩素化パラフィン-ナフタレン縮合物、塩素化パラフィン-フェノール縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等を含む。好ましいのは、5000~200000g/molの質量平均分子量を有するポリメタクリレートである。
【0145】
前記流動点降下剤の量は、前記潤滑剤組成物の全量を基準として、好ましくは0.1~5質量%である。
【0146】
好ましい耐摩耗性および極圧添加剤は、硫黄含有化合物、例えば亜鉛ジチオホスフェート、亜鉛ジ-C3~12-アルキルジチオホスフェート(ZnDTPs)、亜鉛ホスフェート、亜鉛ジチオカルバメート、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油脂、硫化エステル、チオカーボネート、チオカルバメート、ポリスルフィド等;リン含有化合物、例えばホスフィット、ホスフェート、例えばトリアルキルホスフェート、トリアリールホスフェート、例えばトリクレジルホスフェート、アミン中和モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、エトキシル化モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、ホスホネート、ホスフィン、それらの化合物のアミン塩または金属塩等;硫黄およびリン含有耐摩耗剤、例えばチオホスフィット、チオホスフェート、チオホスホネート、それらの化合物のアミン塩または金属塩等を含む。
【0147】
前記耐摩耗剤は、前記潤滑剤組成物の全量を基準として、0~3質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.5~0.9質量%の量で存在していてよい。
【0148】
好ましい摩擦調整剤は、機械的に活性な化合物、例えば二硫化モリブデン、グラファイト(フッ化グラファイトを含む)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド;吸着層を形成する化合物、例えば長鎖カルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド;摩擦化学反応による層を形成する化合物、例えば飽和脂肪酸、リン酸およびチオリン酸エステル、キサントゲン酸塩、硫化脂肪酸;ポリマー様層を形成する化合物、例えばエトキシル化ジカルボン酸部分エステル、ジアルキルフタレート、メタクリレート、不飽和脂肪酸、硫化オレフィンおよび有機金属化合物、例えばモリブデン化合物(モリブデンジチオホスフェートおよびモリブデンジチオカルバメートMoDTC)およびそれらとZnDTPsとの組合せ、銅含有有機化合物を含んでいてよい。
【0149】
上記に列挙した化合物の一部は、複数の機能を満足しうる。例えば、ZnDTPは、主として耐摩耗性添加剤および極圧添加剤であるが、酸化防止剤および腐食抑制剤(ここでは:金属不動態化剤/不活性化剤)の特徴も有する。
【0150】
上記で詳述した添加剤は、とりわけ、T. Mang, W. Dresel (編):“Lubricants and Lubrication”、Wiley-VCH, Weinheim 2001;R. M. Mortier, S. T. Orszulik (編):“Chemistry and Technology of Lubricants”に詳細に記載されている。
【0151】
好ましくは、前記1種以上の添加剤(z)の全濃度は、前記潤滑剤組成物の全質量を基準として、20質量%まで、より好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~15質量%である。
【0152】
好ましくは、成分(x)、(y)および(z)の量は、合計して100質量%になる。
【0153】
本発明の潤滑剤組成物は好ましくは、140を上回る粘度指数を有する。前記粘度指数は、ASTM D2270に従って測定することができる。
【0154】
本発明による潤滑剤組成物がエンジン油として使用される場合には、好ましくは、前記潤滑剤組成物の全質量を基準として、本発明によるコポリマー0.05質量%~20質量%を含み、ASTM D445に従って3mm/s~10mm/sの範囲内である100℃での動粘度をもたらす。
【0155】
本発明の潤滑剤組成物が自動車用ギヤー油として使用される場合には、好ましくは、前記潤滑剤組成物の全質量を基準として、本発明によるコポリマー2質量%~35質量%を含み、ASTM D445に従って2mm/s~15mm/sの範囲内である100℃での動粘度をもたらす。
【0156】
本発明の潤滑剤組成物が自動変速機油として使用される場合には、好ましくは、前記潤滑剤組成物の全質量を基準として、前記基油中に本発明によるコポリマー1質量%~25質量%を含み、ASTM D445に従って2mm/s~9mm/sの範囲内である100℃での動粘度をもたらす。
【0157】
本発明の潤滑剤組成物が工業用ギヤー油として使用される場合には、好ましくは、前記潤滑剤組成物の全質量を基準として、本発明によるコポリマー15質量%~80質量%を含み、ASTM D445に従って10mm/s~130mm/sの範囲内である100℃での動粘度をもたらす。
【0158】
本発明の潤滑剤組成物が作動油として使用される場合には、好ましくは、前記潤滑剤組成物の全質量を基準として、本発明によるコポリマー1質量%~20質量%を含み、ASTM D445に従って3mm/s~20mm/sの範囲内である100℃での動粘度をもたらす。
【0159】
本発明によるコポリマーの用途
本発明は、潤滑剤組成物用の添加剤としての、前記潤滑剤組成物の粘度指数を改善するための、上記のコポリマーの使用にも関する。本発明のコポリマーは、それにより、高VIを前記潤滑油組成物に提供する一方で、前記潤滑油組成物に大いに可溶であり、かつ前記潤滑油組成物の優れた特性、例えば優れたせん断抵抗、フィルタラビリティおよび低い泡形成を維持することを可能にする、粘度指数向上剤として使用することができる。本発明の発明者は、驚くべきことに、本発明のポリマーが潤滑剤基油と低い処理率で混合される場合でも、それらが、技術水準の粘度指数向上剤に比べて高い増ちょう効率を示すことが見出された。
【0160】
本発明のコポリマーおよび本発明によるコポリマーを含む潤滑剤組成物は、有利に、駆動システム潤滑油(例えば手動変速機油、差動歯車油、自動変速機油およびベルト式無段変速機油、アクスルフルード配合物、デュアルクラッチ変速機油、およびハイブリッド専用変速機油)、作動油(例えば機械装置用の作動油、パワーステアリング油、緩衝器油)、エンジン油(ガソリンエンジン用およびディーゼルエンジン用)および工業用油配合物(例えば風力タービン)に使用される。
【0161】
前記コポリマーは、前記潤滑剤組成物の全量を基準として、好ましくは0.05~50質量%、より好ましくは1~30質量%の量で使用される。
【0162】
実験の部
本発明は、限定されない次の例により説明される。
【0163】
試験方法
本発明のランダムコポリマーの質量平均分子量Mおよび多分散指数PDIは、PSS SDV 5μmプレカラムおよび30cmのPSS SDV 5μm 線状S分離カラム、ならびにRI検出器を備えたTosoh EcoSEC GPCシステム“HLC-8320”を用いて、0.3mL/minの流量でT=40℃で溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)で、ポリブタジエン校正標準に対して、決定した。
【0164】
比較ポリアルキルメタクリレート(PAMA)試料の質量平均分子量を、ポリメチルメタクリレート校正標準および溶離液としてTHFを用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。
【0165】
本発明のランダムコポリマーの組成、水素化度および前記水素化プロセスの選択率を、重水素化クロロホルム中での1H-NMR分光法によって決定した。
【0166】
ガラス転移温度を、Mettler-Toledo DSC1での示差走査熱量測定法により測定した。Mettler Toledo STARe 10.00ソフトウェアを分析に使用した。標準として、インジウムおよびシクロヘキサンを使用した。2つの加熱/冷却サイクルにおいて、その試料8~10mgを、20K/minの冷却速度で-80℃に冷却した。10min後に、前記試料を、10K/minの加熱速度で200℃に加熱した。前記ガラス転移温度を、2回目の加熱サイクルから得た。
【0167】
動粘度を、ASTM D 445に従って測定した。
【0168】
前記粘度指数を、ASTM D 2270に従って決定した。
【0169】
8.0cStのKV100目標を有する配合物については、100℃での粘度損失を、100℃での新しい油の動粘度に対してCEC-L-45-A-99に従って円すいころ軸受試験(KRL)において、60℃で20h後に測定した。
【0170】
7.0cStのKV100目標を有する配合物については、100℃での粘度損失を、100℃での新しい油の動粘度に対してCEC-L-45-A-99に従って円すいころ軸受試験(KRL)において、80℃で40h後に測定した。
【0171】
前記潤滑油組成物の泡性能を、ASTM D-892に従って測定した。
【0172】
前記潤滑油組成物のフィルタラビリティは、5μmフィルターを用いて1barの圧力でISO 13357-2段階1に従って乾燥段階において測定した。
【0173】
ポリマーの合成
以下の第2表に示される前記モノマー組成物を用いるフリーラジカル溶液重合により、非架橋ランダムコポリマー1~5および7~9を製造した。前記モノマーを、20℃の温度および10barの圧力で5Lオートクレーブ中でトルエンと混合したので、前記混合物の全質量に対する前記モノマーの濃度は40質量%である。前記温度を、5.5℃/minの加熱速度で120℃に上昇させてから、開始剤である2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン(流動パラフィン中50質量%)を添加した。フリーラジカル共重合を、120℃の反応温度、20barの反応圧力および4hの反応時間で実施した。その排出物をろ過し、かつ揮発性溶剤を蒸発させた。ついで、得られたコポリマーを選択的に水素化した。非架橋ランダムコポリマー6を、同じ製造手順に従って製造したが、しかし前記溶剤は、トルエンの代わりにシクロヘキサンであった。
【0174】
【表2】
【0175】
第2表に示されるように、前記ラジカル重合中の高いレベルの制御は、水素化されていないランダムコポリマーの全てが3.3を下回るPDI値により反映される。本発明に記載されるような溶液重合の反応条件は、満足なPDI値、低いMwおよび良好な溶解度特性を有するランダムコポリマーの製造を可能にする。
【0176】
選択的水素化のためには、シクロヘキサン中のランダムな不飽和コポリマー40質量%溶液1.5Lを2Lオートクレーブ中に装入し、ポリマーあたりPd0.38質量%の5%Pd/Cシェル触媒粉末を導入した。水素化を、90℃の反応温度および90barのH反応圧力で撹拌しながら、95%以上の水素化度が達成されるまで実施した。その排出物をろ過し、かつ揮発性成分を蒸発させた。前記共役ジエン(ブタジエン)に由来するもの以外の全ての重合単位が、選択的水素化中に変換されなかった。
【0177】
【表3】
【0178】
前記水素化度を、水素化(NMR結果)に関する章において上記に記載されるように計算した。第3表に示されるように、得られた、本発明の水素化されたランダムコポリマーは全て、水素化の高いレベルを有する(前記ブタジエンの96%超が水素化される)。
【0179】
潤滑油組成物の評価
潤滑剤添加剤としての本発明によるコポリマーの使用を実証するために、異なる水素化されたコポリマーを有する幾つかの異なる組成物を使用した。
【0180】
潤滑油配合物-KV100=8.0cSt
APIグループIIIベースフルード(Nexbase 3043)および商業的に入手可能な添加剤パッケージおよびコポリマー1~3または7~8のいずれか1つまたはポリアルキルメタクリレート(PAMA)タイプの粘度添加剤を含む潤滑油組成物を製造した。そのうえ、別の配合物を、APIグループIVベースフルード(PAO4)および商業的に入手可能な添加剤パッケージおよびコポリマー1またはポリアルキルメタクリレート(PAMA)を用いて実施した。
【0181】
個々の潤滑油組成物を比較するために、各組成物の100℃での動粘度を、8.0cStに調整した(第4表参照)。組成物1~4および5および6を、それぞれ水素化されたランダムコポリマー10、11、12、16または17を用いて製造した。組成物7および8を、米国特許出願公開第2013/0229016号明細書(US 2013/0229016 A1)の例1に従って合成されたC12~15メタクリレートのコポリマーを用いて製造した。
【0182】
Nexbase 3043中の各組成物(組成物1~3および5~7)について、粘度特性、泡形成およびフィルタラビリティを決定した。PAO4中の各組成物(組成物4および8)について、粘度特性を決定した(以下の第4表参照)。
【0183】
比較コポリマー16および17が、前記基油に不溶性であることが見出され、このことは、本発明によるコポリマーが、前記基油とのより高い程度の相溶性を有することを示している。添加剤パッケージの添加は、溶解性の問題を解決するものではなく、かつ比較コポリマー16および17は、不溶性のままであった。
【0184】
さらに、良好な動粘度および良好な粘度指数を達成するのに必要とされる本発明のコポリマー10~12の量(処理率)が、比較PAMA添加剤についてよりも少ないことが見出された。したがって、本発明によるコポリマーは、大いに効率的な粘度指数向上剤である。さらに、本発明によるコポリマーは、20hのKLR後の100℃での低粘度損失により実証されるように、良好なせん断安定性を示した。
【0185】
最後に、本発明のコポリマーは、従来のPAMA添加剤に比較して泡形成およびフィルタラビリティに有利な影響を有する。
【0186】
以下の第4表の本発明の組成物4に示されるように、本発明によるコポリマー10は、良好な動粘度および良好な粘度指数を達成するのに必要とされるコポリマー10の量(処理率)が、双方とも基油PAO4、APIグループ4油を用いる配合物において試験される場合に、比較PAMA添加剤(組成物8)よりも少ないことを示す。
【0187】
【表4】
【0188】
第4表に示されるように、C~C鎖のメタクリレートの、C~C30のより長鎖のメタクリレート、例えばラウリルメタクリレートと一緒の存在は、前記ランダムブロックコポリマーの極性を変化させて、試験された潤滑油組成物への前記ポリマーの溶解を可能にするのに必要である。
【0189】
潤滑油配合物2(KV100=7.0cSt)
以下の第5表に示されるように、さらに潤滑剤添加剤としての本発明によるコポリマーの使用を比較するために、APIグループIIIベースフルード(Nexbase 3030)および商業的に入手可能な添加剤パッケージおよびコポリマー4、5または6のいずれか1つまたはポリアルキルメタクリレート(PAMA)を含む、別の潤滑油配合物を使用した。
【0190】
個々の潤滑油組成物を比較するために、各組成物の100℃での動粘度を7.0cStに調整した。組成物9~11を、それぞれ水素化されたランダムコポリマー13~15を用いて製造した。組成物12を、米国特許出願公開第2013/0229016号明細書(US 2013/0229016 A1)の例1に従って合成されたC12~15メタクリレートのコポリマーを用いて製造した。
【0191】
各組成物について、粘度特性を決定した(以下の第5表参照)。
【0192】
【表5】
【0193】
良好な動粘度および良好な粘度指数を達成するために必要とされる本発明のコポリマー13~15の量(処理率)が、比較PAMA添加剤についてよりも少ないことが見出された。したがって、本発明によるコポリマーは、大いに効率的な粘度指数向上剤である。
【0194】
本発明によるコポリマーは、従来のPAMA添加剤と比較した場合に、良好なせん断安定性を示す。
【0195】
結論として、前記例は、本発明の水素化されたランダムコポリマーが、より少ない処理率(高い増ちょう効率)、必要とされる酸化的安定性を有し、架橋せず、かつ油に溶解することにより、潤滑剤技術分野の要件を満足することを示す。