(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】フィルタ体、フィルタエレメント、フィルタアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240325BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240325BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20240325BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240325BHJP
A61L 2/02 20060101ALN20240325BHJP
【FI】
B01D53/04 110
A61L9/01 B
A61L9/014
H01M8/04 N
A61L2/02 100
(21)【出願番号】P 2021526671
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019077591
(87)【国際公開番号】W WO2020104106
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】102018128963.4
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505229863
【氏名又は名称】マン ウント フンメル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デエッシュ ステファン
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-200402(JP,A)
【文献】特開平04-200719(JP,A)
【文献】特表2015-505731(JP,A)
【文献】特開平11-156132(JP,A)
【文献】特開2015-181775(JP,A)
【文献】特開2011-072962(JP,A)
【文献】特開平11-076432(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013008389(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0016525(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0165827(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/04、53/14
A61L 9/01
A61L 9/014
H01M 8/04
A61L 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ体(6)であって、
前記フィルタ体(6)は、重ねて配置された複数のフィルタ層(9~13)を含む濾材(8)を備え、
前記フィルタ層(9~13)は、それぞれ少なくとも1つの活物質を含み、
前記少なくとも1つの活物質は、全てのフィルタ層(9~13)で同じであり、
前記フィルタ層(9~13)は、
精製対象の流体(L)が連続的に通流可能であり、
前記フィルタ体(6)は、複数のセンサ装置(15~18)を備え、少なくとも2つの隣接するフィルタ層(9~13)の間に、それぞれセンサ装置(15~18)が配置されており
、前記フィルタ体(6)
における前記流体(L)の通流方向(DR)において、前記センサ装置(15~18)が相次いで配置され
、
前記フィルタ体(6)は、前記フィルタ体(6)に取り付けられるとともに前記センサ装置(15~18)と動作可能に接続された接続エレメント(19)をさらに備えているフィルタ体。
【請求項2】
前記濾材(8)は、互いに積層された複数の個別のフィルタ層(9~13)に分割されている、または、前記濾材(8)は、コイル状である請求項1に記載のフィルタ体。
【請求項3】
前記フィルタ層(9~13)の活物質は、活性炭
、触媒活性炭、含浸活性炭、イオン交換体、吸着剤
、過マンガン酸カリウム、化学収着剤、乾燥剤、および/または酸化剤を含む請求項1または2に記載のフィルタ体。
【請求項4】
前記センサ装置(15~18)は、光電子センサ、電気化学センサ、および/またはガスセンサを含む請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルタ体。
【請求項5】
各センサ装置(15~18)は、それぞれのセンサ装置(15~18)に関連付けられた前記フィルタ層(9~13)が
前記流体(L)から除去すべき物質を除去したか、または該物質が前記フィルタ層(9~13)を突破したかどうか
の情報を発するように構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルタ体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のフィルタ体(6)を備えるフィルタエレメント(2
)。
【請求項7】
フィルタ容器(3)と、前記フィルタ容器(3)に収容された請求項
6に記載のフィルタエレメント(2)と、を備えるフィルタアセンブリ(1)。
【請求項8】
フィルタ容器(3)と、
前記フィルタ容器(3)に収容されたフィルタエレメント(2)と
を備えるフィルタアセンブリ(1)であって、
前記フィルタエレメント(2)はフィルタ体(6)を備え、
前記フィルタ体(6)は、重ねて配置された複数のフィルタ層(9~13)を含む濾材(8)を備え、
前記フィルタ層(9~13)は、それぞれ少なくとも1つの活物質を含み、
前記少なくとも1つの活物質は、全てのフィルタ層(9~13)で同じであり、
前記フィルタ層(9~13)は、精製対象の流体(L)が連続的に通流可能であり、
前記フィルタ体(6)は、複数のセンサ装置(15~18)を備え、少なくとも2つの隣接するフィルタ層(9~13)の間に、それぞれセンサ装置(15~18)が配置されており、前記フィルタ体(6)における前記流体(L)の通流方向(DR)において、前記センサ装置(15~18)が相次いで配置されており、
前記センサ装置(15~18)は、前記フィルタエレメント(2)の前記フィルタ容器(3)への導入時に前記センサ装置(15~18)が前記フィルタ体(6)内に入り、前記フィルタエレメント(2)の前記フィルタ容器(3)からの取り外し時に前記フィルタ体(6)から抜かれるように、前記フィルタ容器(3)に取り付けられているフィルタアセンブリ。
【請求項9】
前記フィルタ容器(3)は、前記センサ装置(15~18)のセンサ信号を読み出すことができるインターフェース(5)を備える請求項
7または8に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項10】
前記センサ装置(15~18)は、前記フィルタエレメント(2)の前記フィルタ容器(3)への導入時に前記センサ装置(15~18)が前記フィルタ体(6)内に入り、前記フィルタエレメント(2)の前記フィルタ容器(3)からの取り外し時に前記フィルタ体(6)から抜かれるように、前記フィルタ容器(3)に取り付けられている請求項
7または9に記載のフィルタアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタエレメント用のフィルタ体、このようなフィルタ体を備えたフィルタエレメント、およびこのようなフィルタエレメントを備えたフィルタアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用フィルタや農薬用フィルタは、その耐用年数を正確に予測することがしばしば求められる。しかしながら、環境条件はユーザーごとに大きく異なるため、ほとんどの用途では安全マージンでしか示すことができない。しかし、燃料電池用フィルタや農薬用フィルタは高価であることが多いため、できるだけ長い使用期間を実現することが望まれている。
【0003】
韓国公開特許第2012 0016525号公報は、空気清浄機のフィルタ構成に関する。この空気清浄機は、活性炭フィルタ、臭気フィルタ、粒子フィルタ、抗菌フィルタ、HEPAの各フィルタステージを備えている。臭気フィルタと抗菌フィルタには、それぞれのフィルタ層の交換を知らせるセンサが設置されている。
【0004】
フィルタ層に関連付けられたセンサは、通流方向に前後に配置されるが、それぞれのフィルタステージはタイプが異なるため、収着容量の段階的な「消費」を決定することはできず、代わりに、それぞれのフィルタステージのブレークスルーのバイナリ値のみが決定される。
【発明の概要】
【0005】
このような背景に基づき、本発明は、フィルタエレメントのための改良されたフィルタ体を提供することを目的とする。
【0006】
そこで、フィルタエレメント用のフィルタ体を提案する。フィルタ体は、重ねて配置された複数のフィルタ層を含む濾材と、複数のセンサ装置とを備え、隣り合う2つのフィルタ層の間にそれぞれセンサ装置が設けられており、フィルタ体の耐用年数にわたって個々のフィルタ層の活物質の収着容量を決定するために、センサ装置がフィルタ体の通流方向に相次いで配置されるようになっている。フィルタ層は、それぞれ少なくとも1つの活物質を含み、少なくとも1つの活物質は全てのフィルタ層で同じである。センサ装置が設けられたフィルタ層は、連続的に通流可能である。好ましくは、活物質は、全てのフィルタ層で同じである少なくとも1つの収着剤または収着材を含む。
【0007】
本発明の意味において、「隣接する」とは、互いに直接的に隣接するフィルタ層だけでなく、間接的に隣接するフィルタ層、すなわち、1つまたは複数の追加の、特にセンサのないフィルタ層が間に配置されている場合も示唆する。本発明の要旨は、フィルタ層の収着容量の消費量を、フィルタ体全体に対して「二値的」に決定するだけでなく、複数のフィルタ層にセンサ装置を配置することによって所定の数の中間値で決定できることにある。
【0008】
可能な限り良好な測定精度を得るために、隣り合う各フィルタ層の間にセンサ装置を設けることが好ましい。
【0009】
フィルタエレメントは、好ましくは、エアフィルタエレメントである。特に、フィルタエレメントは、燃料電池用フィルタまたは農薬用フィルタである。好ましくは、フィルタエレメントは、自動車、トラック、建設車両、水上車両、鉄道車両、農業機械もしくは農業車両、または航空機に使用される。また、フィルタエレメントは、例えば、建築技術などの固定用途にも使用できる。
【0010】
濾材は、特に、濾紙、濾布、敷設された濾過材、またはフィルタ不織布である。特に、濾材は、スパンボンディング法またはメルトブロー法によって製造することができ、あるいは、不織布またはセルロース支持体上に塗布された繊維層から構成することができる。また、濾材は、フェルト化またはニードル化することができる。濾材は、セルロースや綿などの天然繊維や、ポリエステル、ポリビニルスルフィド、ポリテトラフルオロエチレンなどの合成繊維で構成することができる。濾材は、好ましくは折り畳まれておらず、フラットである。
【0011】
濾材または個々のフィルタ層は、好ましくは1つまたは複数の異なる収着剤を含む。ここで、「収着」とは、相内または2つの相の間の境界面に物質が蓄積されるプロセスと理解されるべきである。相内での蓄積は、より正確には吸収と呼ばれ、境界面での蓄積は、吸着と呼ばれる。収着剤は、ソーベントまたは収着媒とも呼ばれる。収着剤を用いて吸着または吸収された、すなわち収着された物質の系は、収着質と呼ばれる。
【0012】
フィルタ層の数とセンサ装置の数はそれぞれ任意である。例えば、第1のフィルタ層、第2のフィルタ層、第3のフィルタ層、第4のフィルタ層、および第5のフィルタ層が設けられる。この場合、第1フィルタ層と第2フィルタ層の間に、第2フィルタ層と第3フィルタ層の間に、第3フィルタ層と第4フィルタ層の間、第4フィルタ層と第5フィルタ層の間にセンサ装置がそれぞれ配置される。「通流方向」とは、フィルタ体を流れる流体、特に空気の流れ方向と定義される。通流方向は、フィルタ体の未処理側から清浄側に向いている。
【0013】
濾過または精製される流体は、好ましくは空気である。濾過される流体は、流体から除去すべき物質を含んでいる。これらの物質は、例えば、ガスおよび/または臭気物質である。これらの物質の例としては、n-ブタン、揮発性有機物質(VOC)、窒素酸化物(NOx)、二酸化硫黄(SO2)、硫化水素(H2S)、アンモニア(NH3)および/またはホルムアルデヒド(CH2O)が挙げられる。異なるフィルタ層に含まれる収着剤または収着剤類は、濾過対象の流体から除去すべきこれらの物質を除去するのに適している。
【0014】
通流方向から見ると、フィルタ層は互いに重なって配置される。センサ装置は、通流方向から見て、特に直列または一列に配置される。特に、センサ装置は、関連付けられたフィルタ層に直接配置することもできる。ここで、それぞれのフィルタ層の「収着容量」とは、流体に含まれ、そこから除去すべき物質を流体から収着させて除去するための、それぞれのフィルタ層の適合性として理解されるべきである。センサ装置によって、それぞれのフィルタ層が流体から除去すべき物質をまだ除去できるか、あるいは、除去すべき物質がそれぞれのフィルタ層を突破したかどうかを検出することができる。このように、センサ装置によって、各フィルタ層が流体から除去すべき物質をまだ除去しているかどうかを判断することができる。特に、フィルタ層は、フィルタ体の動作前には100%の収着容量を有している。除去すべき物質がそれぞれのフィルタ層を突破した時点で、フィルタ層の収着容量は0%になる。
【0015】
複数のセンサ装置が設けられ、フィルタ層の間に配置されているため、フィルタ体の残存寿命を高い精度で示すことができる。フィルタ体の清浄側に最も近いセンサ装置が、それに関連付けられたフィルタ層が流体から除去すべき物質を吸収または収着できないという信号を発した時にのみ、フィルタ体の交換が必要となる。
【0016】
幾つかの実施形態では、濾材は互いに積層された複数の個別のフィルタ層に分割されている、または、濾材はコイル状である。第1のケースでは、フィルタ体は積層体である。第2のケースでは、フィルタ体はコイル体である。濾材が複数の個別のフィルタ層に分割されている場合、濾材は複数部品構成である。個々のフィルタ層は互いに積層されている。濾材がコイル状である場合、例えば、濾材は支持管や中心管に螺旋状に巻き付けられている。
【0017】
幾つかの実施形態では、フィルタ層の活物質は、活性炭、特に未処理の活性炭、触媒活性炭、含浸活性炭、イオン交換体、吸着剤、特に過マンガン酸カリウム、化学収着剤、乾燥剤、および/または酸化剤を含む。個々のフィルタ層は、前述の物質の少なくとも1つが全て同一に設けられているか、または個々のフィルタ層は異なる物質が設けられている。物質は、例えば、濾材に接着することができる。
【0018】
幾つかの実施形態では、センサ装置は、光電子センサ、電気化学センサ、および/またはガスセンサを含む。光電子センサ、例えば、フォトダイオードやフォトセルでは、フィルタ層の色の変化を検出することができる。色の変化は、除去すべき物質がそれぞれのフィルタ層を突破した際に起こる。色の変化を生じさせるために、着色剤を用いてもよい。電気化学センサやガスセンサでは、流体から除去すべき物質がそれぞれのフィルタ層を突破した際に、これらの物質を直接検出することができる。これらのセンサ装置は、フィルタ体のセンサユニットを形成している。
【0019】
幾つかの実施形態では、各センサ装置は、それぞれのセンサ装置に関連付けられたフィルタ層が精製対象の流体から除去すべき物質を除去したか、または該物質がフィルタ層を突破したかどうかのバイナリ情報を発するように構成されている。バイナリ情報は、それぞれのフィルタ層が流体から除去すべき物質をまだ除去しているか、もはや除去していないかの証拠を提供する。
【0020】
幾つかの実施形態では、フィルタ体は、フィルタ体に取り付けられ、センサ装置と動作可能に接続された接続エレメントをさらに備える。接続エレメントは、例えば、プラグまたはブッシングである。接続エレメントは、例えば、電気管によってセンサ装置と動作可能に接続することができる。しかしながら、動作可能な接続は、センサ装置と接続エレメントとの間の無線接続であってもよい。接続エレメントは、特に、フィルタエレメントのフィルタ容器の対応するインターフェースに係合するのに適している。インターフェースも、例えば、プラグまたはブッシングであり得る。
【0021】
さらに、このようなフィルタ体を備えたフィルタエレメント、特に燃料電池用フィルタや農薬用フィルタが提案される。フィルタエレメントは、フィルタ体に加えて、例えば、フィルタ体がその間に配置される2つの端部ディスクを備えることができる。また、フィルタエレメントは、フィルタ体を形成するために、濾材が巻かれた中心管または支持管を含むことができる。フィルタエレメントが積層型フィルタである場合、フィルタエレメントは、板状のフィルタ体に加えて、フィルタ体をフレームのように取り囲むヘッドバンドや側方バンドを含むことができる。
【0022】
さらに、フィルタ容器と、フィルタ容器に収容されたこのようなフィルタエレメントとを備えるフィルタアセンブリが提案される。フィルタ容器は、好ましくは、複数部品構成であり、フィルタエレメントを交換できるように、少なくとも1つの取り外し可能なカバーを備える。フィルタ容器は、例えば、ハウジングまたはフィルタハウジングとも呼ばれる。
【0023】
幾つかの実施形態では、フィルタ容器は、センサ装置のセンサ信号を読み出すことができるインターフェースを備える。インターフェースは、上述したように、フィルタ体の接続エレメントが挿入可能なプラグまたはブッシングであり得る。しかしながら、インターフェースは、センサ装置と直接動作可能に接続することもできる。例えば、インターフェースは、ケーブルでセンサ装置に接続される。また、センサ信号を読み出すため、インターフェースとセンサ装置との間に無線接続を設けることもできる。
【0024】
幾つかの実施形態では、センサ装置は、フィルタ容器への導入時にセンサ装置がフィルタ体内に入り、フィルタエレメントのフィルタ容器からの取り外し時にフィルタ体から抜かれるように、フィルタ容器に取り付けられる。この場合、センサ装置は、フィルタ体ではなく、フィルタ容器に関連付けられる。センサ装置は、フィルタエレメントのフィルタ容器への挿入時にフィルタ体に挿入される棒状または槍状の要素に取り付けることができる。あるいは、センサ装置は、上述したように、フィルタ体に関連付けることもでき、例えば、接着することもできる。この場合、センサ装置は、フィルタ容器に固定的に接続されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】フィルタアセンブリの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】
図1の断面線II-IIによるフィルタアセンブリのさらなる概略断面図である。
【
図3】
図1のフィルタアセンブリのためのフィルタエレメントの一実施形態を示す概略的な透視部分断面図である。
【
図4】
図3のフィルタエレメントの更なる概略的な透視部分断面図である。
【
図5】フィルタアセンブリのさらなる実施形態を示す概略断面図である。
【
図6】
図5の断面線VI-VIによるフィルタアセンブリのさらなる概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面において、他に示唆されない限り、同一の要素または同一の機能を有する要素には同じ参照番号が付される。
【0027】
図1は、フィルタアセンブリ1の一実施形態を示す概略断面図である。
図2は、
図1の断面線II-IIによるフィルタアセンブリ1のさらなる断面図である。
図3は、
図1のフィルタアセンブリ1のためのフィルタエレメント2の一実施形態を示す概略的な透視部分断面図を示す。
図4は、フィルタエレメント2の更なる概略的な透視部分断面図である。以下では、
図1から
図4を同時に参照する。
【0028】
フィルタアセンブリ1は、フィルタシステムとも称される。フィルタアセンブリ1は、フィルタ容器3と、フィルタ容器3内に配置されるフィルタエレメント2とを備える。フィルタ容器3は、ハウジングまたはフィルタハウジングとも呼ばれる。フィルタ容器3は、好ましくは、複数部品構成であり、フィルタエレメント2を交換できるように、少なくとも1つの取り外し可能なカバーを備える。
【0029】
フィルタアセンブリ1は、好ましくは、燃料電池フィルタアセンブリとして、または、農薬フィルタアセンブリとして使用することができる。例えば、フィルタアセンブリ1は、自動車、トラック、建設車両、水上車両、鉄道車両、農業機械もしくは農業車両、または航空機に使用することができる。また、フィルタアセンブリ1は、例えば、建築技術などの固定された用途にも使用できる。フィルタエレメント2は、特に、空気を濾過するのに適している。特に、フィルタエレメント2は、燃料電池用フィルタまたは農薬用フィルタとすることができる。
【0030】
フィルタ容器3内、すなわち、フィルタ容器3の内部4には、フィルタエレメント2が配置されている。また、内部4には、以下でその機能を説明するインターフェース5が設けられている。フィルタエレメント2は、フィルタ体6を備えている。フィルタ体6は、円柱状、特に正円柱状であり、中心軸または対称軸7に対して回転対称に構成することができる。
【0031】
フィルタエレメント2は、フィルタ体6に加えて、
図1~
図4には図示されないが、フィルタ体6の端面に配置された2つの端部ディスクを含むことができる。端部ディスクは、好ましくは、樹脂材料から製造される。例えば、端部ディスクは、安価な射出成形樹脂部品として具現化することができる。また、端部ディスクは、特に鋳造型で鋳造された、好ましくは発泡ポリウレタン材料で製造することができる。端部ディスクは、フィルタ体6に接続することができる。フィルタ体6は、端部ディスクの間に配置され、これらに融着、接着または溶接することができる。フィルタ体6の内部には、支持管または中央管を設けることができる。フィルタ体6は、この支持管または中央管に巻き付けることができる。
【0032】
フィルタ体6は、濾材8を備える。濾材8は、上記の中心管にコイル状に巻かれており、これにより、複数のフィルタ層9~13が互いに重ねて形成されている。濾材8は、例えば、濾紙、濾布、敷設された濾過材、またはフィルタ不織布である。特に、濾材8は、スパンボンディング法またはメルトブロー法によって製造することができ、あるいは、不織布またはセルロース支持体上に塗布された繊維層から構成することができる。また、濾材8は、フェルト化またはニードル化することができる。濾材8は、セルロースや綿などの天然繊維や、ポリエステル、ポリビニルスルフィド、ポリテトラフルオロエチレンなどの合成繊維で構成することができる。濾材8の繊維は、加工時に、加工方向に対して、斜めに、および/または横方向に、あるいはランダムに配向させることができる。
【0033】
それぞれのフィルタ層9~13は、活物質、特に収着材を含んでいる。ここで、「収着」とは、相内または2つの相の間の境界面に物質が蓄積されるプロセスの総称として理解される。相内での蓄積は、より正確には吸収と呼ばれ、境界面での蓄積は、吸着と呼ばれる。特に、フィルタ層9~13はそれぞれ、活性炭、特に未処理の活性炭、触媒活性炭、含浸活性炭、イオン交換体、乾燥剤、吸着剤、特に過マンガン酸カリウム、化学収着剤、および/または酸化剤を含む。
【0034】
特に、フィルタ層9~13は、それぞれフィルタ層9~13の収着容量が尽きた時に色の変化を生じさせるのに適した着色剤を含むこともできる。ここで、「収着容量」とは、精製する流体L、特に空気から、除去すべき物質、例えば、ガスおよび/または臭気物質、特にn-ブタン、揮発性有機物質(VOC)、窒素酸化物(NOx)、二酸化硫黄(SO2)、硫化水素(H2S)、アンモニア(NH3)および/またはホルムアルデヒド(CH2O)を濾過するための、それぞれのフィルタ層9~13の特性として理解されるべきである。それぞれのフィルタ層9~13は、使用前には100%の収着容量を有している。流体Lから除去すべき物質がそれぞれのフィルタ層9~13を突破すると、フィルタ層は0%の収着容量を有することになる。
【0035】
フィルタアセンブリ1の動作において、精製する流体Lは、フィルタエレメント2の未処理側ROからコイル状の濾材8を通ってフィルタエレメント2の清浄側RLに流れる。この場合、フィルタ体6は、未処理側ROから清浄側RLに通流方向DRを有する。通流方向DRにおいて、フィルタ層9~13は、互いに重なって配置される。
【0036】
フィルタ体6は、フィルタ層9~13の収着容量を決定するのに適したセンサユニット14をさらに備える。センサユニット14は、隣り合う2つのフィルタ層9~13の間にそれぞれ配置される複数のセンサ装置15~18からなる。第1のセンサ装置15は、フィルタ層9、10の間に配置され、第2のセンサ装置16は、フィルタ層10、11の間に配置され、第3のセンサ装置17は、フィルタ層11、12の間に配置され、第4のセンサ装置18は、フィルタ層12、13の間に配置される。センサ装置15~18は、フィルタ体6に固定的に接続することができる。例えば、センサ装置15~18は、フィルタ体6に接着されている。また、例えば、センサ装置15~18は、濾材8を巻き付ける時にフィルタ層9~13の間に導入することができる。
【0037】
これに代わって、センサユニット14は、センサ装置15~18がフィルタ容器3に取り付けられるように、フィルタ容器3に関連付けることもできる。この場合、センサ装置15~18は、フィルタエレメント2がフィルタ容器3に導入される時に、フィルタ体6内に挿入される。従って、センサ装置15~18は、フィルタエレメント2がフィルタ容器3から取り外される時に、再びフィルタ体6から抜かれる。このように、フィルタエレメント2の交換時に、センサユニット14を何度でも再利用することができる。センサ装置15~18は、例えば、光電子センサ、電気化学センサ、および/または、ガスセンサを含む。例えば、光電子センサであるフォトセルは、それぞれのフィルタ層9~13の色の変化を検出することができる。
【0038】
通流方向DRから見て、センサ装置15~18は、前後または直列に配置されている。これにより、フィルタ体6の耐用年数にわたって、フィルタ層9~13の収着容量を段階的に決定することができる。フィルタアセンブリ1の動作において、精製する流体Lは、フィルタ体6を通流方向DRに流れる。したがって、まず、最外側のフィルタ層13がその収着容量を失う。そのため、流体Lから除去すべき物質がフィルタ層13を突破し、センサ装置18は対応する信号を発することになる。しかしながら、フィルタエレメント2は、清浄側RLに最も近いセンサ装置15が対応する信号を発するまでは使用することができる。センサ装置15が、フィルタ層10がもはや十分な収着容量を有していないという信号を発すると、フィルタエレメント2を交換しなければならない。特に、各センサ装置15~18は、それぞれのセンサ装置15~18に関連付けられたフィルタ層9~13が、濾過される流体Lから除去すべき物質を除去したか、あるいは、これらの物質がそれぞれのフィルタ層9~13を突破したかどうかのバイナリ情報を提供するのに適している。
【0039】
センサ装置15~18は、
図1に示されるように、対称軸7に沿って見た際に、互いにずらして配置することができる。これに代わって、通流方向DRから見て、センサ装置15~18をすぐ前後に配置することもできる。
【0040】
図4に示されるように、フィルタ体6は、センサ装置15~18と動作可能に接続された接続エレメント19をさらに備えることができる。接続エレメント19は、例えば、フィルタ層9~13の間に配置されたケーブルまたは導電路によって、センサ装置15~18に接続することができる。これに代わって、センサ装置15~18から接続エレメント19への信号伝送を無線で実現することもできる。接続エレメント19は、フィルタ容器3のインターフェース5と相互作用するのに適している。例えば、接続エレメント19は、カウンタープラグまたはブッシングとして具現化されたインターフェース5に係合するのに適したプラグである。
【0041】
図5は、フィルタエレメント2のさらなる実施形態の概略断面図である。
図6は、
図5の断面線VI-VIによるフィルタエレメント2のさらなる概略断面図である。
図5および
図6のフィルタエレメント2は、濾材8がコイル状ではなく、互いに独立した複数のフィルタ層9~13に分割され、それらが互いに積層されている点で、
図1~
図4によるフィルタエレメント2と実質的に異なる。
【0042】
図5および
図6のフィルタエレメント2の機能は、
図1~4のフィルタエレメント2の機能に対応する。
図5および
図6に示されるように、フィルタエレメント2は、フィルタ体6に加えて、フィルタ体6をフレームのように取り囲む側方バンド20、21やヘッドバンド22、23を含む。外側に配置されたフィルタ層9、13上に、それぞれ最終層24、25を配置することもできる。最終層24、25は、例えば、不織布のフィルタ層とすることができる。
【0043】
特に、燃料電池用フィルタや農薬用フィルタでは、耐用年数に関する正確な予測が必要である。しかしながら、ユーザーごとに環境条件が大きく異なるため、ほとんどの用途では安全マージンでしか示すことができない。このような燃料電池用フィルタや農薬用フィルタは高価なものが多いため、できるだけ長い使用期間を実現することが望まれている。フィルタ体6に設けられたセンサ装置15~18により、フィルタエレメント2の寿命を正確に予測することができる。フィルタエレメント2の交換は、フィルタ体6の収着容量がほぼ消費された時にのみ必要となる。
【符号の説明】
【0044】
1 フィルタアセンブリ
2 フィルタエレメント
3 フィルタ容器
4 内部
5 インターフェース
6 フィルタ体
7 対称軸
8 濾材
9 フィルタ層
10 フィルタ層
11 フィルタ層
12 フィルタ層
13 フィルタ層
14 センサユニット
15 センサ装置
16 センサ装置
17 センサ装置
18 センサ装置
19 接続エレメント
20 側方バンド
21 側方バンド
22 ヘッドバンド
23 ヘッドバンド
24 層
25 層
DR 通流方向
L 流体
RL 清浄側
RO 未処理側