(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】ドライアイを治療するための腺治療装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/00 20060101AFI20240325BHJP
A61N 5/06 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A61F9/00
A61N5/06 A
(21)【出願番号】P 2021568141
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 US2020032829
(87)【国際公開番号】W WO2020232217
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-01-06
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520497472
【氏名又は名称】トゥウェンティ トゥウェンティ セラピューティクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】アザー,ディミトリ
(72)【発明者】
【氏名】ストウ,ティモシー
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533074(JP,A)
【文献】特開昭63-247352(JP,A)
【文献】特開2000-139998(JP,A)
【文献】特表2016-522711(JP,A)
【文献】国際公開第2019/033415(WO,A1)
【文献】米国特許第04198714(US,A)
【文献】国際公開第2018/098419(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/330129(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/001108(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/00-9/08
A61N 5/06
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼瞼を光学的に加熱するための装置であって、
人の手で把持されるように構成されるハウジングと、
前記ハウジングに連結されて赤外光ビームを
ある期間で出射するように構成される少なくとも一つの投光器と、
前記少なくとも一つの投光器に連結されて前記赤外光ビームを前記眼瞼に向かって導くように構成される導波部材と、
前記ハウジングに連結されるように構成される強膜カバーと、を備え、
前記強膜カバーは、前記患者の目の一部に取り付けられ且つ前記目の強膜の少なくとも一部に接触するように構成される湾曲保護部を含み、
前記湾曲保護部は、外面と内面とを有し、
前記外面は、前記少なくとも一つの投光器から出射された赤外光を
前記眼瞼へ反射し且つ可視光を前記患者の角膜に向けて透過するように構成される誘電体コーティング層を含み、
前記内面は、前記目に面し、前記患者の前記角膜を圧力及び熱損傷から保護するように構成される
アーチ状エアギャップによって前記患者の前記角膜から物理的に離間した状態で、前記強膜の少なくとも一部に接触するように構成され、前記
アーチ状エアギャップの寸法及び形状は、
前記赤外光ビームが出射されている前記期間で少なくとも前記患者の前記角膜を赤外光ビームから熱的に隔離するように構成され、
前記アーチ状エアギャップは、前記強膜カバーの中心で300μm~500μmである、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記強膜カバーは、生体適合性アクリル材料と、前記生体適合性アクリル材料内に結合された二酸化チタン添加剤とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記強膜カバーの前記内面は、Hydra-PEG(登録商標)コーティング層を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記強膜カバーは、前記ハウジングの機械的連結特徴に係合するように構成される突片を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ハウジングに連結された撮像部をさらに含み、
前記強膜カバーは、さらに観察窓を含み、前記観察窓は、前記突片に連結された透明体を含み、前記透明体は、前記突片とは傾斜角をなす傾斜観察面を含み、かつ
前記撮像部は、前記観察窓によって前記患者の前記眼瞼の画像を取得するように配向される、ことを特徴とする請求項
4に記載の装置。
【請求項6】
前記導波部材は、低硬度の材料を含み、かつ前記投光器から出射された前記赤外光に対して少なくとも部分的に透明である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
アクチュエータをさらに含み、
前記アクチュエータは、前記導波部材に連結され、かつ、前記導波部材を縦振動させるように移動させるように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記強膜カバーは、温度センサ回路と装置識別回路とのうちの少なくとも一つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記温度センサ回路と前記装置識別回路とのうちの少なくとも一つは、前記強膜カバーの表面に設けられる無線周波数識別(RFID)回路を含み、
前記装置は、RFID送受信部をさらに含み、
前記RFID送受信部は、前記ハウジングに連結され、前記強膜カバーの前記RFID回路に電力を供給するとともに、前記強膜カバーの前記RFID回路から装置識別信号又は温度測定信号の少なくとも一方を受信するように構成される、ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的にドライアイを治療するための眼科装置及び関連する方法に関し、かつ具体的にはマイボーム腺を安全に加熱することによりドライアイを治療するための眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイ又はDEDは、世界中数百万人に影響を与える。いくつかの研究によれば、眼科医のオフィスで受診する三番目に最も一般的な原因は、ドライアイ症状である。最近では、80%と高くなるドライアイ症例は、さらにマイボーム腺機能障害又はMGDと呼ばれる成分を有することが示されている。一般的に、マイボーム腺により生成された脂質層は、角膜の上方の空気-涙液界面で薄い(厚さがナノを単位とする)保護膜に均一に広がる。人が瞬きをする度に、少量の脂質保護膜を広げることになる。しかしながら、該油層が涙液膜に均一に敷設されず、かつ、該プロセスが中断されたり、低減されたり、又は完全に停止されたりする可能性があるという様々な状況が存在する。これらの根本的な原因は、年齢の増加に伴って生成された油生成特性であるホルモン変化、まつ毛に生息する皮膚ダニ、長期感染(例えば除去困難な眼瞼炎)、一般的な炎症(眼瞼炎)、自己免疫病又はアレルギー反応、及び、最近のスクリーン時間が長すぎることによる瞬きの不十分(コンピュータ視覚症候群(CVS)と呼ばれる)を含むがそれらに限定されない。
【0003】
外部保護脂質層がなく目を覆う涙液膜の蒸発時間を減少させることによって、角膜上皮での乾燥斑の可能性をもたらす。これは、いわゆる涙液膜破壊時間尺度(TBUTまたはTFBUTと略記する)として定量的に測定される。
【0004】
従来では、軽度MGDは、熱塗布、眼瞼清潔化合物、及び眼瞼を軽くマッサージすることにより解決される。しかしながら、これらの方法は、臨床的に大部分の深刻なドライアイ症例に有効であることを示されていない。
【0005】
最近では、眼瞼内からマイボーム腺を加熱して閉塞の油を溶融または軟化させることを含む治療が用いられている。内部から眼瞼を加熱すると、熱はマイボーム腺に直接伝達される。いくつかの場合に、さらにエアバッグを用いてマイボーム腺をマッサージして、腺から軟化油閉塞物を押し出すことを助ける。しかしながら、このようなプロセスは、依然として高侵襲性かつ高価なプロセスになる可能性があるため、専門的な眼科医、麻酔及び毎年複数回の治療が要求される。他の既知の目の治療は、加熱パッドを用いて眼瞼の外側を加熱することを含む。このようなタイプのプロセスにおいて、眼科医は、依然として中程度の圧力を有するピンセットを使用して腺体を効果的に押圧しなければならない。このような治療も侵襲的なものであり、かつ患者に不快感を与える可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の各態様は、光に基づく腺治療装置を含み、それは、弾性体光導波路により電磁放射(例えば、赤外光)を腺体に導く。また、治療装置は、機械振動子アセンブリを含むことができ、それは、周期的に腺体の周囲の組織を圧縮してマッサージすることにより腺体から閉塞された油を除去する。一つの実施例において、腺治療装置は、赤外(IR)光素子を含み、それは、ハウジング内に位置しており、かつ遠端開口を介して光を出射するように構成される。弾性体導波路は、光素子に連結され又は光素子の前に位置し、かつ光が導波路の先端面を通過するように誘導又は案内するように構成されるようなサイズ、形状および構造にされる。導波路の先端面は、患者の眼瞼の曲率に適合するように、凹状であってもよい。装置は、マッサージアセンブリを含むことができ、それは、導波路及び光素子を縦方向軸線に沿って振動させるように構成される。強膜カバー又はアイシールドは、眼瞼の下方に位置し、かつ突片又はブラケットを含み、それは、ハウジングに機械的に連結され又は組み付けられることによって、マッサージアセンブリは、弾性体導波路をカバーに対して縦方向に移動させる。したがって、強膜カバーが角膜の上方に位置しかつハウジングに組み付けられる場合、マッサージアセンブリは、強膜カバーと弾性体導波路との間の眼瞼を圧縮する。これにより、マッサージアセンブリによって印加された力は、患者の眼球ではなく、眼瞼及びマイボーム腺に集中することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施例によれば、患者の眼瞼を光学的に加熱するための装置は、人の手で把持されるように構成されるハウジングと、ハウジングに連結されて赤外光ビームを出射するように構成される少なくとも一つの投光器と、少なくとも一つの投光器に連結されて赤外光ビームを眼瞼に向かって導くように構成される導波部材と、ハウジングに連結されるように構成される強膜カバーと、を備える。いくつかの実施例において、強膜カバーは、少なくとも一つの投光器から出射された赤外光を反射するように構成される湾曲保護部を含む。
【0008】
いくつかの実施例において、強膜カバーは、生体適合性アクリル材料と、生体適合性アクリル材料内に結合された二酸化チタン添加剤とを含む。いくつかの実施例において、強膜カバーの外面は、赤外波長よりも可視光波長のほうにおいて透過する誘電体コーティング層を含む。いくつかの実施例において、強膜カバーの内面は、Hydra-PEG(登録商標)コーティング層を含む。いくつかの実施例において、強膜カバーは、ハウジングの機械的連結特徴に係合するように構成される突片を含む。いくつかの実施例において、装置は、さらにハウジングに連結された撮像部を含む。いくつかの実施例において、強膜カバーは、さらに観察窓を含み、それは、突片に連結された透明体を含み、該透明体は、突片と傾斜角をなした傾斜観察面を含む。いくつかの実施例において、撮像部は、観察窓により患者の眼瞼の画像を取得するように配向される。
【0009】
いくつかの実施例において、導波部材は、低硬度の材料を含み、かつ投光器から出射された赤外光に対して少なくとも部分的に透明である。いくつかの実施例において、装置は、さらにアクチュエータを含み、それは、導波部材に連結され、かつ導波部材を縦振動させるように移動させるように構成される。いくつかの実施例において、強膜カバーは、温度センサ回路と装置識別回路とのうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施例において、温度センサ回路と装置識別回路とのうちの少なくとも一つは、強膜カバーの表面に設けられた無線周波数識別(RFID)回路を含む。いくつかの実施例において、装置は、さらにRFID送受信部を含み、それは、ハウジングに連結され、前記強膜カバーの前記RFID回路に電力を供給するとともに、前記強膜カバーの前記RFID回路から装置識別信号又は温度測定信号の少なくとも一方を受信するように構成される。
【0010】
本開示の別の実施例によれば、患者の眼瞼内の腺体を治療するための装置は、ハウジングと、光伝送アセンブリとを備え、光伝送アセンブリは、ハウジング内に位置する一つ又は複数の発光ダイオード(LED)であって、ハウジングの遠端開口を介して光を出射するように構成される一つ又は複数のLEDと、一つ又は複数のLEDの上方に位置し、かつハウジングの遠端開口内に位置する導波路と、一つ又は複数のLEDが導波路を介して光を出射しつつ、一つ又は複数のLED及び導波路を縦方向に振動させるように構成されるアクチュエータと、を含む。
【0011】
いくつかの実施例において、アクチュエータは、電動モータを含み、装置は、さらにカムを含み、カムは、ハウジングに連結されかつ光伝送アセンブリの表面に当接し、電動モータは、カムを回転させ、周期的に光伝送アセンブリをハウジングに対して遠端へ前進させかつ近端へ後退させるように構成される。いくつかの実施例において、一つ以上のLEDは、一つ又は複数の短波赤外(SWIR)LEDと、一つ又は複数の赤外LEDとのうちの少なくとも一つを含み、前記一つ又は複数の短波赤外LEDは、1050nm~1200nmのスペクトル範囲を有する光を出射するように設けられ、前記一つ又は複数の赤外LEDは、約980nmの中心波長と940~1000nmの間のスペクトル範囲を有する光を出射するように構成される。いくつかの実施例において、導波路は、エラストマー材料を含み、導波路は、前記導波路の内面が前記光の発散部分を内部反射しかつ前記導波路の先端面を通過するように前記反射光を導くように構成されるようなサイズ及び形状にされる。いくつかの実施例において、装置は、さらに撮像部を含み、それは、ハウジングに連結され、かつ治療プロシージャ期間に前記患者の眼瞼縁の画像を取得するように構成される。
【0012】
本開示の別の実施例によれば、保護強膜カバーは、患者の目に位置するようなサイズ及び形状にされる湾曲体であって、凹形状を有する内面及び凸形状を有する相対外面を含む湾曲体と、湾曲体の外面から外向きに突出しており、かつ少なくとも一つの機械的連結特徴を含む平坦突片と、を備え、湾曲体は、反射材料を含み、湾曲体と平坦突片は、一体的に形成され、かつポリマー材料を含む。
【0013】
いくつかの実施例において、保護強膜カバーは、さらに湾曲体内に集積されたRFID温度検知回路を含む。いくつかの実施例において、RFID温度検知回路は、記憶部を含み、その上に保護強膜カバーに関連する認可情報が記憶されている。いくつかの実施例において、反射材料は、ポリマー材料に結合される。いくつかの実施例において、反射材料は、湾曲体の外面に設けられた反射コーティング層を形成する。
【0014】
本開示のさらに他の態様、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
図面を参照して本開示の例示的な実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施例に係る腺治療装置の斜視図である。
【
図2A】本開示の実施例に係る腺治療装置の断面図である。
【
図2B】本開示の実施例に係る腺治療装置の断面図である。
【
図3】本開示の実施例に係る腺治療装置の部分透過図である。
【
図4】本開示の実施例に係る強膜カバーの斜視図である。
【
図5】本開示の実施例に係る腺治療装置のハウジングに取り付けられた強膜カバーの斜視図である。
【
図6】本開示の実施例に係る患者の目の上方に位置する強膜カバーの断面図である。
【
図7】本開示の実施例に係る傾斜観察窓を含む強膜カバーの斜視図である。
【
図8】本開示の実施例に係る
図7に示す強膜カバーの断面図である。
【
図9】本開示の他の実施例に係る傾斜観察窓を含む強膜カバーの断面図である。
【
図10】本開示の実施例に係る腺治療装置のハウジングに連結された集積温度感知回路を有する強膜カバーの部分透過斜視図である。
【
図11】本開示の実施例に係る腺治療装置と強膜カバーの回路との間の機械的及び電気的接続を確立するための連結特徴の斜視図である。
【
図12】本開示の実施例に係る腺治療装置の図解図である。
【
図13】本開示の態様に係る光の波長域における様々な肌色に対する皮膚反射率を示すグラフである。
【
図14】本開示の態様に係る光の波長域における人体皮膚の光透過深さを示す図である。
【
図15】本開示の態様に係る光の波長域における人眼の網膜の透過率および吸収率を示すグラフである。
【
図16】本開示の態様に係る光の波長域における人体皮膚の光透過深さを示すグラフである。
【
図17】本開示の態様に係る光の波長域における人体粘液組織の光透過深さを示すグラフである。
【
図18】本開示の実施例に係る眼鏡フレームに取り付けられるウェアラブルな腺治療装置の斜視図である。
【
図19】(A)は、本開示の実施例に係る眼鏡フレームに取り付けられるウェアラブルな腺治療装置の斜視図であり、(B)は、本開示の実施例に係る
図19の(A)に示すウェアラブルな腺治療装置のIR LED回路の斜視図である。
【
図20A】本開示の実施例に係る赤外(IR)発光ダイオード(LED)回路の斜視図である。
【
図20B】本開示の実施例に係る赤外(IR)発光ダイオード(LED)回路の斜視図である。
【
図21】本開示の実施例に係る人の眼瞼に照射するIR光素子およびバイオニックアクチュエータの模式図である。
【
図22】本開示の実施例に係る手持ち式腺治療装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の原理の理解を容易にするために、現在、図面に例示された実施例を参照し、かつ特定の言語を使用してこれらの実施例を説明する。しかしながら、本開示の範囲を限定する旨ではないと理解されるべきである。説明される装置、システム及び方法に対する任意の変更及び他の修正、並びに本開示の原理の任意の他の応用は、本開示に係る分野の当業者が一般的に想到できるように、完全に考慮されかつ本開示に含まれるとする。例えば、治療装置及びシステムは、眼瞼を加熱してMGDを治療することについて説明するが、このような応用に限定されるものではないと理解されるべきである。該装置及びシステムは患者の腺体を要求する任意の応用に非常に適する。特に、一実施例について説明される特徴、部材及び/又はステップは、本開示の他の実施例について説明される特徴、部材及び/又はステップと組み合わせることができることが十分に考えられる。なお、簡潔にするために、これらの組み合わせの複数回の繰り返しについては、個別に説明しない。
【0017】
図1を参照し、患者10の目15に近接して位置決めされた腺治療装置100が示されている。例示された実施例において、治療装置100は、患者の眼瞼内に位置するマイボーム腺を治療するために設けられる。しかしながら、本開示の実施例は、他のタイプの腺体、毛穴、組織又は他の器官を治療することに適することができる。治療装置100は、人の手で把持可能なサイズ、形状および構造にされるように構成されるハンドル105を含む。いくつかの態様において、ハンドル105は、患者10の手及び/又は医師の手によって把持されるように配置されてもよい。ハンドル105は、ハウジング又はエンクロージャを含み、それはハンドル105から横方向に延びる別のハウジング110に連結される。ハウジング110は、保護ハウジングであり、それは、以下にさらに説明する様々な電気部品及び機械部品を取り囲んで保護する。いくつかの実施例において、装置100は、ハウジング110を含むが、ハンドル105を含まない。いくつかの実施例において、ハウジング105が除去可能なもの又は取り外し可能なものであり、それによってハンドル105は、治療を実行する人の好みに基づいてハウジング110と連結したり分離したりすることができる。例えば、ハンドル105は、患者自身が治療を実行する時に取り付けることができ、又は医師が治療を行う場合に取り外すことが可能である。他の実施例において、ハンドル105は、ハウジング110に操作可能に組み付けられる。いくつかの実施例において、ハンドル105は、電子部品及び/又は機械部品、例えば電池、スピーカ、触覚フィードバックアクチュエータ、画像処理回路又は本明細書にさらに説明される任意の他の適切な電子部品を収容しまたは含む。
【0018】
ハウジング110の先端には、ホルダ、カバー、ストッパとも呼ばれるカップ状部材112が連結されている。例示された実施例において、カップ状部材112は、相対的に柔軟な適合性材料を含み、かつ目及び眼瞼を中心として患者の顔に当接するように配置された凹形を含む。いくつかの実施例において、カップ状部材112は、エラストマー材料を含み、例えばシリコーン又はゴムである。いくつかの実施例において、カップ状部材112は、生体適合性材料を含む。さらに、いくつかの実施例において、カップ状部材112は、装置100の衛生及び無菌特性を強化するように配置された膜又はコーティング層を含む。
【0019】
ざ瘡又はMGDと同様に、瞼脂油は、このように閉塞する可能性があるため、高粘度瞼脂油表面閉塞物を抽出するための機械的方法で新油の生成を放出しかつ流れを回復する必要がある。装置100は、光に基づく加熱素子を含み、それは、電磁エネルギービーム(例えば、IR光)を患者の皮膚に導くように構成される。患者の眼瞼に当接して配置する場合、装置100は、エネルギーを眼瞼内のマイボーム腺に導くことにより、腺体内のワックス油又は閉塞物を昇温させ、それによって閉塞物を押し出し、又は他の方式で除去するように構成されてもよい。最適な治療温度は、42℃であることが知られているが、皮膚末端付近の体温は、32℃まで低下する可能性がある。また、代替的な技術案において、マッサージアセンブリは、眼瞼組織に圧力を印加して、腺体から重油を押し出すことを助けることができる。
【0020】
図2A及び
図2Bは、
図1に示される装置100の先端部の異なる断面図である。
図2Aに示すように、カップ状部材112は、開口を有する円形体を含み、該開口は、患者の目の上方に位置するような大きさ及び形状を有する。装置100は、光素子120を含み、それは、複数の発光ダイオード(LED)を含み、これらの発光ダイオードは、カップ状部材112の開口を介して光を出射するように構成される。剛性連結部材124は、光素子120の先端面に連結されている。光導波路122は、連結部材124に組み付けられている。導波路122は、LEDから出射された光の波長に対して少なくとも部分的に透明でありかついくつかの実施例において極めて透明(例えば、>95%透過)である材料を含む。いくつかの実施例において、光導波路122は、交換可能な磁石を介して連結部材124又は光素子120に固定される。導波路122は、その先端面が少なくとも部分的に患者の目及び眼瞼の形状に合致するように凹形状に形成されている。以下にさらに説明するように、導波管122は、マッサージアセンブリに連結されてもよく、それにより振動圧力は、導波管122を介して患者の眼瞼に印加することができる。この点において、導波路122は、弾性体又は圧縮可能な材料を含むことができ、それは、眼の曲率に合致しかつ眼瞼への圧力印加をより均一に分布することができる。導波路122の材料の屈折率が周囲の空気の屈折率よりも顕著に大きいため、光がLEDから導波路122に出射されると、頂部及び側面は、内部で任意の発散光線を反射してスプリアス又は浪費のエネルギーを低減でき、これは、光ファイバケーブルがどのように内部全反射により作用を果たすかに類似するものである。
【0021】
光素子120は、熱を吸収して放熱するように構成されるヒートシンク126に連結されている。
図2A及び
図2Bを参照し、空気フィンを有するヒートシンク126は、ヒートマニホールドを含み、それは、光素子120の回路基板125に直接組み付けられ、それによってヒートシンクは、光素子120のLED及び/又は回路基板125により生成された熱量を空気と交換する。いくつかの実施例において、半田又は熱伝導接着剤を使用してヒートシンクを光素子120の回路基板125及び/又はLEDに組み付ける。また、ファン127は、ヒートシンク126に連結され、かつ加熱された空気がヒートシンクマニホールド126の通路を通過するようにガイドするとともに、光素子120により生成された熱を人の顔面に分散するように構成される。これによって、無駄な熱は、人の顔に快適な温和な暖気流を生成する。
【0022】
光素子120は、LEDアレイを含むことができ、それは、半田リフローを介して回路基板125、可撓性回路又は吸熱金属板に組み付けることができる。眼瞼を通過してマイボーム腺を照準しやすくするために、LEDアレイは、約900ナノメートルと1300ナノメートル(nm)との間のピーク波長出射範囲を用いることができる。なお、約2000nmの25nm以内の波長を含む任意の適切な波長を用いることができる。アレイは、任意の幾何学的形式、例えば一次元アレイ又は二次元アレイ又は他の配列を採用することができる。
【0023】
導波部材122の形状は、各個体に対してカスタマイズすることができ、かつ、シリコーン(例えば、Nusil MED-6020のような透明シリコーン)又は高透明の弾性熱可塑性ポリウレタン(TPU)(例えばEllastolan(登録商標))のような軟質透明材料で製造され、該材料は、内部反射で光を光素子120から眼瞼に向かって集めることができる。いくつかの実施例において、導波路122は、2つのセグメントを有し、一つは、透明なポリカーボネート(例えばLexan(登録商標))のような剛性部材でありながら、他の一つは、軟質弾性体部材である。導波路122は、拡散光を効果的に伝達することができる。
図2Bを参照し、モータ130及びカム132を含むマッサージアセンブリは、導波管122を光素子120、ヒートシンク126及びファン127とともに装置100の縦方向(すなわち、近端から遠端まで、かつ逆でも同様である)に沿って振動させるように構成される。この点において、モータ130は、カム132を回転させるように設けられ、ここでカム132は、カムフォロア134に当接する。モータ130は、ギア、ベルト、チェーン、または任意の適切な機械部品を用いて、カム132に機械的に連結することができる。例示された実施例において、カム132は、軸外に回転可能に取り付けられた円柱体を含む。他の実施例において、カム132は、非円筒形状、例えば楕円形状を含むことができる。カム132が回転する際に、カム132の突出した部分は、カムフォロア134を押圧し、これによってカムフォロア134、ファン127、ヒートシンク126、光素子120及び導波管122は、カップ状部材112の開口に向かって遠端に移動する。例示された実施例において、光素子120の回路基板125は、支柱136に摺動可能に連結され、該支柱は、ポスト又はロッドの周囲に位置するバネを含む。光素子120、導波路122、ヒートシンク126及びファン127がカムフォロア134に連結されるため、カム132がカムフォロア134を作動させるときに、回路基板125が支柱136に沿って遠端に摺動することに伴い、回路基板は、支柱のバネを圧縮する。カム132が回転し続けることに伴い、カム132の突出しない部分は、カムフォロア134に当接し、かつ支柱136のバネは、伸びることにより、回路基板125、光素子120及び導波路122をそれらの初期位置に戻すことができる。このように複数回の回転を繰り返し、それにより患者の目に対する導波路122の振動運動を生成する。以下にさらに説明するように、いくつかの実施例において、マッサージアセンブリは、強膜レンズ形状のアイカバーと協働するか又は作用して、角膜を保護して振動力を眼瞼に導き、かつ、眼球に印加された振動力の量を低減させ又は除去することができる。いくつかの実施例において、モータ130、カム132及びカムフォロア134を含むマッサージアセンブリは、導波管122を0.1Hz~約100Hzの間の周波数で振動させるように構成される。例示的な実施例において、マッサージアセンブリは、導波管122を0.5Hz~2Hzの間の周波数で振動させるように構成される。
【0024】
いくつかの実施例において、カムフォロア134は、傾斜面を含むことにより、付加的な揺動又は傾斜運動を縦方向振動運動に導入する。この点において、カム132の突出部分が傾斜面に衝突するときに、振動傾斜運動を導入し、導波路122の先端面は、該振動傾斜運動により、導波路122が遠端に突出することに伴って上向きに押圧し、次に導波路122が近端に引っ込むことに伴って下向きに傾斜する。他の実施例において、揺動運動は、導波路122が遠端に突出する時に導波路122を下向きに押圧することができる。
【0025】
本開示の範囲から逸脱することなく、
図2A及び
図2Bの実施例に対して様々な追加、置換又は他の修正を行うことができることは、理解されるべきである。例えば、いくつかの実施例において、カム132は、モータ130の軸の周囲に直接組み付けられ又は位置される。いくつかの実施例において、回転モータの代わりに、サーボシステムを用いてマッサージアセンブリを作動させる。いくつかの実施例において、カム132は、ファン127、ヒートシンク126又は光素子120に直接当接する。いくつかの実施例において、マッサージアセンブリは、導波路122のみを発振させるか、又は導波路122及び光素子120のみを発振させるように構成される。いくつかの実施例において、ヒートシンク126及び/又はファン127を使用しない。いくつかの実施例において、LED以外の光源を用いて光を発射し、例えば、レーザ、白熱電球又は任意の他の適切な光源である。いくつかの実施例において、支柱136は、バネを含まない。いくつかの実施例において、支柱136は、バネに代わって圧縮可能な部材を含む。いくつかの実施例において、バネは、導波路122及び光素子120が遠端に移動する時に伸びるように構成される。いくつかの実施例において、カップ状部材112は、ハウジングと一体的に形成され、かつ、ハウジングを形成する材料と同じ材料を含む。いくつかの実施例において、カップ状部材112は、接着剤、締り嵌めによりハウジング110に組み付けられ、又はハウジング110に被覆成形される。いくつかの実施例において、導波路122の先端面は、湾曲せず、平面又は平坦である。
【0026】
図3は、本開示の他の実施例に係るマイボーム腺治療装置100の先端部分の部分断面図である。この点において、装置100は、さらにハウジング110の対応面144a、144bから上向きに突出したポスト142a、142bを含む。以下にさらに説明するように、ポスト142a、144bは、導波路122が振動すると同時に、装置100のハウジング110が強膜カバーに対して静止を保持するように、強膜カバーの対応する凹部又は孔に接合されて連結されるように構成される。換言すれば、例示された実施例において、導波路122はハウジングに対して移動するように構成されるため、導波路122も強膜カバーに対して振動するように構成される。したがって、導波路122は、眼瞼または導波路と強膜カバーとの間の他の組織を圧縮することができる。
【0027】
図3には、さらに導波路122の近端に位置する光素子120のLED129が示されている。LED129は、導波路122の先端面121から光を出射するように設けられている。先端面121は、少なくとも一方向に凹の曲率を有していてもよい。例示された実施例において、先端面121は、二つの方向(ポスト142a、142bの間の横方向及び高さ方向(即ち、上向き及び下向き))に沿って湾曲する。この曲率は、球体や球状体、その他の湾曲した三次元形状に合わせた形状として記述することができる。導波管122の曲率は、関心のある特定の治療に用いることができる。マイボーム腺治療の場合、導波路122の先端面121の曲率は、患者の目及び眼瞼の形状に合致するように構成される。
【0028】
装置100は、さらに治療中に組織の画像を取得する撮像部160を備える。撮像部160は、例えば、CCDなどのデジタルカメラセンサを含むことができる。例示された実施例において、撮像部160は、下向きに傾斜しており、かつマイボーム腺の画像を取得することを目的とする。このカメラは、例えば、OmniVision OVM 6211であってもよい。このようなカメラは、4mm2未満の低コスト、大量生産及び/又は小さい形状因子のオンチップグレースケールカメラシステムにおいて実現することができる。いくつかの実施例において、撮像部160は、赤外LEDで目の写真を撮影することにより、強膜カバー150の有無を検証するように設けられてもよい。このようなカメラは、広視野及び10mm~25mmの焦点距離範囲を有する眼追跡応用のために、眼の接写写真に特別に設計されてもよい。
【0029】
他の実施例において、撮像部は、傾斜し、角度をなし、焦点を合わせるものとすることができ、かつ他の方式で関心のある組織又は腺体の画像を取得するように構成される。いくつかの実施例において、装置100は、さらに画像処理回路を含み、それにより撮像部160により取得された画像データに基づいて画像を生成する。撮像部160および/または画像処理回路は、スクリーンまたはディスプレイと通信して画像を出力することができる。いくつかの実施例において、ディスプレイは、装置100自体に連結される。例えば、
図1に示すように、画像は、ハウジング110の背面180におけるスクリーンに出力することができる。いくつかの実施例において、装置100は、有線又は無線接続により画像を単独のディスプレイに出力するように構成される。例えば、工業標準バス又は無線プロトコルを使用して画像を出力することができ、例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi、超広帯域(UWB)又は任意の他の適切な通信標準である。
【0030】
図4は、腺治療装置100に結合して用いられる強膜レンズ形状のカバーまたはアイシールド150の斜視図である。アイカバー150は、保護カバー部152と、装置100の対応する連結特徴(例えば、ポスト142a、142b)に連結されるように構成された連結特徴又は突片154を含む。ブラケットとも称される突片154は、装置100のポスト142a、142bに係合するように構成された切欠き156a、156bを含む。突片154は、対応する表面144a、144bに設けられている。強膜カバー150のカバー部152は、湾曲体を含み、それは、目又は目の周囲に取り付けられて目の強膜部分と接触するように設けられ、以下に
図6に関してさらに説明するように、
図6は、強膜レンズを示す。強膜レンズとアクリルアイシールドの両者は、一般的に形状が非常に類似するが、その透明度が異なる。描画された強膜レンズカバー150のカップ形状は、標準強膜レンズ及びアクリルアイシールドに類似し、それは、角膜の上方にアーチ状に形成されて角膜を保護する。強膜レンズは、透明でありかつ視力を矯正することを許可し、アイシールドは、一般的に不透明であり、かつ入射された放射を反射する。形状が類似するが、強膜レンズは、一般的に16~18mmの小さい直径を有し、アクリルアイシールドは、側方向運動を低減させるためにわずかに大きくなり、かつその直径は、約20mm~25mmであってもよい。角膜及び目をLED光の損傷から保護するために、白色TiO
2顔料をアクリル成形のアイシールドの添加剤として含むことができる。いくつかの態様において、添加剤は、入射光の全部又は一部を反射することを可能にする。しかしながら、いくつかの実施例において、該装置に用いられるアイシールド150は、一般的に放射治療に用いられるアイシールドよりも小さくなってもよい。例えば、いくつかの実施例において、強膜アイシールド又はアイカバー150の直径は、約18mmであってもよい。メカニカルホールとポストとが係合し、マッサージ光導波路122及びLED光素子に対するシールド150の相対位置が移動しないように保持される。これにより、シールド150は、目の表面に横方向に移動する空間を有しても、LED光は、依然としてシールドによって反射することができる。
【0031】
蓋部152は、患者の目に対向して設けられる内面151と、目に背向する外面153とを有する。強膜カバーは、生体適合性ポリマーを含むことができ、それは、光素子120から出射された放射線から目を保護することができる。例えば、いくつかの実施例において、強膜カバー150は、剛性気体ポリマー(RGP)を含む。RGP材料は、典型的に、1.41~1.49の間の屈折率を有することができる。このようなポリマーは、比較的剛性であるため、一般的に100℃よりも高く、かつより一般的に150℃よりも高い軟化点を有し、いくつかのシステムにおいて、室温又は室温に近い温度で誘電体コーティング層を堆積することにより、コーティング過程中の任意の熱膨張係数の不整合を最小化することができる。
【0032】
いくつかの実施例において、強膜カバー150は、生体適合性アクリル酸又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)で製造され、該材料は、アイシールド又はダミー眼球に対して広く用いられて受け入れられており、かつさらに外面153及び/又は内面151上の生体適合性平滑コーティング層を含むことができる。例えば、外面153上のコーティング層は、光素子120から出射された波長に対して高い反射係数を有する反射コーティング層であってもよい。いくつかの実施例において、PMMAは、二酸化チタン添加剤がドープされた製剤を含むことができ、二酸化チタン添加剤は、シールドに白色を与え、赤外LED光を非常に効果的に反射し、目の光への過度な露出が回避される。
【0033】
いくつかの場合、例えば家庭治療装置に対して、使用者は、保護強膜カバーを介して観察することを望む可能性がある。追加の誘電体コーティング層が存在してもよい。いくつかの実施例において、コーティング層は、少なくとも一部の約400~700nmの範囲内の可視光を透過することを可能にし、これで使用者が治療中にマイボーム腺を加熱する赤外光を反射しながら観察することを可能にする。これにより、該コーティング層は、透明材料が強膜カバーに用いられることを可能にし、それにより可視光がそれを通過して、人が治療期間にTVを見たり、それらのスマートフォンを使用したり読んだりすることができる。このようなコーティング層は、「ホットミラー」コーティング層と呼ばれることがあり、かつ、一般的に光素子において赤外放射を遮断するが可視光の透過を許可するために用いられる。また、誘電体コーティング層は、例えば+/-45度の入射衝突角範囲内で約900~1300nmの間のSWIR範囲内の光を反射しながら、依然として可視光の透過を許可することができる。900~1300nmのみの目標反射範囲に対して、入射角(AOI)及び残留透過率に対する顕著な改善を実現することができる。各コーティング層は、適切な波長仕様及び要件に基づいて最適化することができる。
【0034】
なお、強膜カバー150は、さらに外部保護コーティング層を有してもよく、該コーティング層は、目に平滑な保護を提供するために、誘電体反射層に設けられ、及び/又は強膜カバー150の内面151に直接的に設けられる。一般的に、誘電体コーティング層は、高屈折率及び低屈折率の酸化物材料の交互層で構成され、これらの酸化物材料は、親水性を持つものではなく、かつ目の内部で滑らかと感じるものでもない。これにより、保護コーティング層を含むことができ、例えば、Hydra-peg(登録商標)と呼ばれるコーティング層が例挙されており、該コーティング層は、親水性コーティング層(90%を超える水で構成される)であり、コンタクトレンズの快適性を顕著に向上させることが示されている。
【0035】
したがって、強膜カバー150は、患者に様々なタイプの保護を提供する。光学的安全性の観点から見ると、900~1400nmの間の波長は、安全であると考えられるが、「ホットミラー」誘電体コーティング層又は二酸化チタン(TiO2)が強膜カバー150を形成する材料に結合されるため、強膜カバー又はレンズ150は、角膜経路により追加の保護を提供することができる。また、強膜カバー150は、眼マイボーム腺を圧迫する機械的な背圧と、眼球上での圧力遮断を提供する。さらに、強膜カバー150は、角膜と装置で加熱された組織とを隔離することによって、熱伝導安全性を提供する。さらに、マイボーム腺油を押し出すときに、強膜カバー150は、これらの油が角膜に塗布されたり、涙液充填物に混合されたりすることなど、不快感を引き起こす可能性があることを防止することもできる。これらの油は、治療後に強膜カバーを洗い流す時に除去することができる。強膜カバー洗浄溶液は、単独の消耗品として販売することができ、それは、適切な添加剤を有して、マイボーム腺油を溶解してレンズを洗浄させる。他の実施例において、強膜カバー150は、単回使用を目的とする使い捨て消耗品を含む。また、標準保存溶液は、強膜カバー150が挿入される期間に単独の消耗品として使用することができ、それは、角膜上皮成長を修復する涙液膜製剤、例えばヒアルロン酸ナトリウム添加剤水溶液も有する。
【0036】
いくつかの実施例において、凹部156a、156bに代わって又は凹部156a、156bに加えて、強膜カバー150は、さらに他の連結特徴又は組み付け特徴を含む。例えば、いくつかの実施例において、連結特徴は、突片154における一つ又は複数の孔を含む。他の実施例において、カバー150には、装置100に連結されたハウジング110の対応するラッチ特徴に接続するために、例えば、傾斜した突起などのラッチ特徴を含むことができる。他の実施例において、磁石、溝、スロット及び/又は任意の他の適切な連結特徴が用いられる。いくつかの実施例において、突片154自体の形状は、連結特徴である。例えば、いくつかの実施例において、突片154は、ハウジング110の対応する凹部内に装着されるように成形することができる。他の実施例において、締り嵌めが用いられる。他の実施例において、強膜カバー150は、連結特徴を含まない。いくつかの実施例において、強膜カバー150は、カバー部152のみを含む。
【0037】
図5は、本開示の実施例に係る腺治療装置100に連結される強膜カバー150の斜視図である。強膜カバー150は、機器100のハウジング110に連結されている。一般的に
図4及び
図5を参照すると、強膜カバー150の突片154における切欠き156a、156bは、ハウジングの表面から突出した対応するポスト142a、142bに接合される。いくつかの実施例において、切欠き156及び/又はポスト142は、強膜カバー150が装置100に対して所定の向きで連結されるように、互いに異なる形状とされる。いくつかの実施例において、強膜カバー150は、対称的であり、カバー150を任意の向きで取り付けることができる。
【0038】
図5の実施例において、ハウジング110は、さらに治具114を含み、それは、ヒンジ機構により開閉して、強膜カバー150の突片154に挟まれるように構成される。いくつかの実施例において、治具114は、使用者によりロック特徴116を使用して開くことができる。いくつかの実施例において、治具114は、双安定状態治具を含む。この点において、強膜カバー150は、単回使用部品又は使い捨て部品を含むことができ、それは、患者のために用いられた後に捨てることができる。新たな強膜カバー150は、下記のように装置100に連結することができる。すなわち、治具114を開き、突片154をハウジング110の表面に配置してポスト142a、142bを接合し、治具114を突片154に閉じ、ロック特徴116をロック位置に押し込んで治具114が不用意に開くことを防止する。他のロック特徴、例えば、ラッチ接続、磁気接続又は任意の他の適切なロック特徴も考えられる。
【0039】
図6は、患者の目20の上方に位置する強膜カバー150の断面図である。例示された実施例において、強膜カバー151は、さらにカバー150の内面に連結された液体リザーバ158を含む。液体リザーバは、カバー150の内面が患者の角膜に直接接触することを好適に防止することができる。これは、患者の快適さを改善し、角膜表面への摩耗又は損傷を低減させ、かつ目20の組織に伝達された熱量をさらに低減させることができる。いくつかの実施例において、液体リザーバ158に代わって、異なる材料又は部材を用いる。例えば、いくつかの実施例において、強膜カバー150の内面にゲル層を位置決めすることができる。他の実施例において、液体リザーバ又は間隔素子が用いられない。逆に、カバーは、カバーが目20に位置する場合に、カバー150の内面と目20の角膜との間にエアギャップが存在するような大きさ及び形状とされる。一般的には、該ギャップは、コンタクトレンズの中心で500ミクロンまで大きくされてもよく、又はより一般的には300μmである。他のアーチ状ギャップは、追加の断熱を提供することもできる。有限要素解析(FEA)に基づいて、これらの熱ギャップは、角膜が39℃よりも低い温度を安全に保持しつつ、所定の期間、一般的には2~5分間内にマイボーム腺を加熱することを可能にする。波長LEDを適宜選択することにより、IR LED光が腺体内で直接透過して吸収されるため、マイボーム腺の42℃の所望の温度に到達するまでの加熱時間を30秒と短くすることができる。強膜シールドが提供する熱障害は、熱伝達の遅延に重要であり、角膜で約39℃よりも高くなると患者が熱痛を注意し始める可能性があるからである。
【0040】
図7は、本開示の他の実施例に係る強膜カバー150の斜視図である。
図8は、
図7に示されたカバー150の断面図でありながら、患者は、治療プロシージャ期間にカバー150を装着する。
図7に示される強膜カバー150は、
図4に示される実施例と同じ部品を多く含み、カバー部152、突片154及び外面を含む。また、
図7に示される強膜カバー150は、突片154及びカバー部152に組み付けられた傾斜窓を含む。傾斜窓は、光学的に透明又は部分的に透明な材料を含み、突片154に向かって傾斜する。傾斜窓159は、使用者及び/又は撮像部160にマイボーム腺のビューを提供するために、少なくとも一つの角度付きの平坦な表面又は実質的に平坦な表面を含む。
図8に示されるように、撮像部160は、
図3に示される装置100の部品であってもよく、治療中にマイボーム腺30の画像を取得するように構成される。これにより、IR光及びマッサージ圧力が導波路122により眼瞼25に印加される場合、撮像部160は、治療を監視して、腺体30から閉塞物を除去し又は押し出すか否か、及び閉塞物がどの程度除去され又は押し出されるかを特定するために用いることができる。これにより、いくつかの態様において、窓159は、画像における歪みを低減又は除去するために、平坦な観察面を含むことが好ましい。なお、他の実施例において、窓159の一つ又は複数の表面は、曲面である。例えば、いくつかの実施例において、窓159の表面の曲率は、腺体30の画像をある程度拡大させることができる。
【0041】
図9は、本開示の他の実施例に係る強膜カバーの断面図である。
図9に示される強膜カバー150は、
図7および
図8に関して前述したものと同様の構成を備える。
図9の実施例において、窓159は、双方向窓であり、突片154の上下にいずれも傾斜面が存在する。このようにして、装置をカバー150から取り外して180度回転させた後、再度カバー150と連結させて、残りの上眼瞼または下眼瞼の腺体に対して治療処理を行いながら、カバー150を同じ向きに残しておくことができる。
【0042】
いくつかの態様において、強膜カバー150は、一つ又は複数の電子部品を含むことが望ましく、例えば、センサ、RFID識別チップ又は他の回路である。例えば、強膜カバー150に結合された温度センサを用いて目の表面又は眼瞼の温度を監視することは、有益である。代替的又は追加的に、識別タグ又はチップを含むことは有益であり、これらのタグ又はチップは、(1)強膜カバー150が治療開始前に装置に連結されること、(2)強膜カバーが正規又は他の方式で使用認可すること、及び/又は(3)任意のセンサの読み取り値に対して正確なセンサ較正を適用することを確保するために用いられる。この点において、
図10は、強膜カバーに連結されて強膜カバーと通信する治療装置を例示したものであり、該強膜カバーは、上眼瞼及び下眼瞼用の集積温度センサASIC回路チップ155a及び155bと、関連する受信アンテナコイル157a及び157bとを備える。一つの実施例において、回路は、無線周波数(RF)回路を含み、それは、カバー150内の集積受信アンテナ157a、157bにより無線給電することができ、ここで、アンテナは、ハンドヘルド装置内の読み取り回路から電力を受信する。読み取り回路は、その自身のループアンテナ161を含むことができ、該ループアンテナは、装置の鼻部に位置して受信アンテナ157a及び157bと非常に近接するワイヤから製造される。いくつかの実施例において、アンテナ161は、ハウジング110内に埋め込まれ、装置100の遠端又は鼻部に近接する。いくつかの実施例において、アンテナ161は、金属ストリップ又はリングを含むことができ、それは、ハウジング110に形成された溝内に位置する。いくつかの実施例において、アンテナ161は、ハウジング110に堆積された導電トレースを含むことができる。NFC又はUHFに基づくパッシブRFIDを使用することができるが、一つの実施例において、150内部にUHF RFIDタグが用いられ、これは、近距離UHFがID及び温度の十分な無線通信に用いられるシングルコイルアンテナ157a又は157bに関するためである。サイズが2×2平方ミリメートル未満のシールドに含まれるUHF RFIDチップの一例は、EMマイクロ電子ASICチップEM 4325である。各回路は、ループアンテナを含み、それは、装置100のハウジング110に連結又は収容された無線通信モジュールから供給されてハウジング鼻部内のループアンテナ161を介して伝送された無線電力を利用するように構成される。一つの実施例において、RFID温度検知回路が用いられ、ここで、カバー150内の回路から返信された信号は、識別情報及び温度情報を含む。例えば、RFID温度検知回路から返信された信号は、一連のビットを含むことができ、ここで、信号中の第1ビット又は最後のビットは、温度を示す。したがって、いくつかの実施例において、単一のアンテナ及び/又は回路は、センサへの直接電気的接触又は電池電源を必要とせず、装置識別及び温度検知の両方に用いることができる。これにより、より薄型のアイカバー150を提供することができる。
【0043】
なお、直接有線技術は、強膜カバー150の任意の電子デバイスとの間で給電及び通信を行うために用いられてもよい。例えば、
図11には、治療装置100の遠端部分が例示され、それは、磁気組み付け特徴148と、接合ポスト142の近傍に位置する電気接触子146とを含む。磁気特徴148は、治具114(
図5)を閉位置に固定するために用いられ、及び/又は強膜カバー150の突片154をハウジング110に固定するために用いられる。別の態様では、磁気特徴は、強膜カバー150内の電子部品の電気的接地として用いることができる。この点において、いくつかの実施例において、強膜カバー150は、電気接触子146に接触するように構成される対応するパッド又は他の電気接触子を有する。したがって、有線インターフェースを用いて強膜カバー150の電子デバイスに電力を供給することができる。いくつかの実施例において、電気接触子146は、ポゴピンを含む。
【0044】
例示された実施例において、ASIC回路155a、155b及び/又は受信アンテナ157a、157bは、カバー150の内面151に取り付けられる。なお、一つ又は複数の電子部品は、外面及び/又は突片154を含むカバー150の任意の部分に連結されたり、取り付けられたり、集積されたりしてもよい。また、いくつかの実施例において、複数の電気接触子は、装置100に結合される。例えば、2つ、3つ、4つ、6つ、8つ又はより多くの電気接触子を用いることができる。接触子は、ハウジング110の任意の適切な表面又は部分に結合することができ、特に強膜カバー150の突片154がハウジング110に接触する箇所、又は装置の任意の他の部分である。いくつかの実施例において、接触子は、電気ソケット内に形成され、該電気ソケットは、強膜カバー150の電子デバイスと装置100との間に機械的及び電気的連通を提供する。例えば、カバー150の突片154は、電気プラグ又はジャック(例えば、USB型プラグ)として形成することができ、それは、装置100の対応するソケットに連結される。
【0045】
図12は、本開示の実施例に係る腺治療装置100の図解図である。装置100は、ハウジング110に対して連結または収容された導波路122と、光素子120と、カバーインターフェース190と、コントローラ191と、マッサージアセンブリ192と、画像処理回路194と、バッテリ196と、通信インターフェース198とを備える。カップ状部材又はホルダ112は、ハウジング110の遠端に連結される。導波路122は、光素子が導波路122を介して光(例えば、IR光)を患者の眼瞼に伝送するように、上述したように、光素子120に連結されてもよい。導波路122は、透明または部分的に透明な材料を含んでもよい。導波路122の材料は、眼瞼上の快適さ及び力分布を増加させるために、柔軟で、適合性及び/又は可撓性であってもよい。光素子120は、複数のLEDや、回路基板に連結された他の送信器を含んでもよい。例示的な実施例において、送信器は、導波路122を通過する広い光束を提供するために、横方向軸線に沿って整列される。なお、他の配置、例えば、複数列の送信器、環状に配置された送信器又は任意の他の適切なパターン又は配置などは、考えられる。
【0046】
カバーインターフェース190は、強膜カバー150のいずれかの電子部品と通信する回路を含む。一つの実施例において、カバーインターフェース190は、無線送受信部又はアンテナを含み、それは、カバー150の対応する無線回路に無線で給電し、それと通信するように構成される。他の実施例において、カバーインターフェース190は、有線接続を含み、該有線接続は、一つ又は複数の電気接触子、コンセント、ソケット又は任意の他の適切な形式の有線通信回路を含む。いくつかの実施例において、カバーインターフェース190は、カバー電子デバイスから受信した信号をコントローラ191に導くように設けられてもよい。コントローラ191は、装置100の部品と通信するマイクロコントローラ又はプロセッサを含み、これらの部品は、光素子120と、カバーインターフェース190と、マッサージアセンブリ192と、画像処理回路194と、通信インターフェース198とを含む。いくつかの実施例において、コントローラ191は、電池196から操作電圧を受信する。いくつかの実施例において、コントローラ191は、電力を電池198から装置100の他の部品、例えば、光素子120、マッサージアセンブリ192及び/又はカバーインターフェース190などの各部に分配するように構成される。いくつかの実施例において、電力を分配するために、個別の電源が設けられる。いくつかの実施例において、電池196は、1~10ワットの範囲内の電力を供給するように構成される。いくつかの実施例において、他の電池は、治療期間に追加の電力を供給するように、通信インターフェースを介して装置100に連結するように構成される。
【0047】
コントローラ191は、ユーザ入力と通信することができ、ユーザ入力は、例えば、ボタン、静電容量式タッチセンサ、スイッチ、ダイヤル又は任意の他の適切なユーザ入力装置である。コントローラ191は、装置100の部品を操作するための実行可能なコマンドやソフトウェアを含む記憶装置と通信可能である。例えば、入力装置から入力を受信することに応答して、コントローラ191は、光素子120及び/又はマッサージアセンブリ192を制御して治療計画を起動することができる。該計画は、コマンドを含むことができ、これらのコマンドは、所定の強度及び/又は所定の周波数で所定量の時間内に光素子120からの光及び/又はマッサージアセンブリ192からのマッサージ圧力を印加するためのものである。いくつかの実施例において、コントローラ191は、入力装置からの入力に基づいて、計画の操作パラメータ、例えば、光の強度又はマッサージ圧力の速度を調整するように構成される。いくつかの実施例において、コントローラ191は、強膜カバー150のセンサ又は他の回路からのフィードバックを受信して治療計画を制御するように構成される。例えば、コントローラ191は、カバーインターフェース190を介してカバー150の温度センサから温度データを受信するように設けられてもよい。受信された温度が所定の閾値を超えると、コントローラ191は、光素子120にその出力を減少させ、又は発光を停止させることができる。いくつかの実施例において、コントローラは、治療解決手段を実行する前提として、強膜カバーの存在及び/又は真贋を検証するように構成される。例えば、コントローラ191は、強膜カバーの電子デバイスからの識別コードを識別コードデータベースと照合して、強膜カバー150が本物であること、使用が許可されたこと、及び/又は前に使用されていたか否かを特定するように設けられてもよい。
【0048】
コントローラ191は、一つ又は複数の電子駆動電流マルチチャネルASICコントローラを含むことができ、それは、制御オプションで素子120の各送信器を駆動して、デューティ比又はチャネルの開閉を介して熱負荷を低減する。コントローラは、装置ハウジング内に位置し、又は必要に応じて係留コントローラに埋め込まれるように、十分に小さくされてもよい。このようなマルチチャネルLED駆動チップの例は、NXP半導体社のPCA9956Bであり、それは、24個までの単独チャネルを駆動することができるI2Cバスを有する。
【0049】
マッサージアセンブリ192は、患者の関連組織に振動するマッサージ圧力を提供するために、様々な電気及び機械部品を含むことができる。例えば、マッサージアセンブリ192は、振動方式で導波管122を移動させて患者の眼瞼をマッサージするために、電動モータ、ソレノイド、カム、カムフォロア及び/又は任意の他の適切な部材を含むことができる。マッサージアセンブリ192は、コントローラ191によって所定の計画に基づいて制御することができる。例えば、いくつかの実施例において、計画は、コマンドを含み、これらのコマンドは、マッサージアセンブリ192を起動する前に光素子120に一定の時間給電して、マイボーム腺中の組織及び材料が圧力を印加する前に昇温及び軟化することを可能にする。他の実施例において、マッサージアセンブリ192と光素子120は、同時に起動する。
【0050】
画像処理回路194は、撮像部160から受信した信号に基づいて画像又は画像データを生成するために、処理部を含むことができる。いくつかの実施例において、画像処理回路194は、コントローラ191の一部である。他の実施例において、画像処理回路194は、単独の電子部品を含む。画像処理回路194は、画像又は画像データを通信インターフェース198に出力することができる。通信インターフェースは、演算装置との有線及び/又は無線通信を提供することができ、演算装置は、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、デスクトップコンピュータ又は任意の他の適切な演算装置である。いくつかの実施例において、通信インターフェース198は、コンピュータモニタ又はテレビのようなディスプレイとの通信を提供するように構成される。通信インターフェース198は、工業標準バス又は無線プロトコルを含むことができ、例えば、USB、HDMI、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi、UWB、近距離無線通信(NFC)又は一つ又は複数の専用通信プロトコルである。電池196は、二次電池、例えば、リチウムイオン電池を含むことができる。いくつかの実施例において、電池196は、使い捨ての充電不可能な電池を含み、例えば、一つ又は複数のAA又はAAA電池である。
【0051】
光素子120は、関連する組織(例えば、眼瞼及びマイボーム腺)を照射して組織を昇温させるために用いられる。本開示の態様によれば、複数の利点を有する波長で動作するように設けられた光素子が提供される。例示的な実施例において、光素子120は、約950nmと約1050nmとの間の中心波長を有する光を提供するように構成される。一実施例において、光素子120は、980nm程度(例えば、+/-5nm)の中心波長を有する光を出射するように構成される。この点において、
図13~
図18は、様々な波長の光の異なる組織及び材料に関する光学特性(例えば、反射率、吸収率、透過率)並びに様々な波長の光と異なる組織及び材料との相互作用を例示するグラフである。例えば、
図13は、異なる波長の光の三種類の異なる肌色に対する反射率を示すグラフ210である。この点において、異なる肌色と類似して相互作用する波長の光で皮膚を照射することは、有益である。線212、214及び216に示されるように、約950nm~約1000nmの範囲内の光は、三種類の肌色の全てに対して相対的に低い反射率を示し、かつ、線212と214との間の範囲内の肌色の間の反射率の差は、950未満の波長に対する反射率の差ほど顕著ではない。さらに、約1150nm(線216で例示される)よりも大きい光も、低反射率及び低変化を示す。
【0052】
別の態様では、異なるピーク波長を有する投光器の光分布効率は、変化することができる。例えば、同じ駆動電力に対して、ピーク波長が1000nm付近にあるLEDからの光強度は、改善された相対光強度を示す。AlGaAsに基づくLEDとInPに基づくLEDの両方に対して、この波長範囲は、非常にエネルギーが有効である。また、一般的に高い波長に対して製造されたInP LEDに比べて、AlGaAs 980nm LEDの製造コストは、より低い。
【0053】
図14~
図17は、それぞれ異なる波長の吸収率及び透過深さをまとめて示している。例えば、
図14は、約950nmと約1300nmとの間の波長が4mm又はより深い皮膚において深い吸収を示すグラフ220を示す。
図15は、異なる波長の光の網膜への透過率と、異なる波長の光に対する網膜の吸収率とを示すグラフ230である。この点において、波長が約970nm(線232)と約1030nm(線234)との間の光は、網膜への透過率の低下、及び網膜での直接吸収率の低下の両方がある。さらに、1170nm(線236)より大きい波長も相対的に低い(例えば、15%以下である)透過率及び吸収率を示す。
図16及び
図17は、それぞれ様々な波長の光のヒト皮膚内及びヒト粘液又は間質組織の下での光透過深さを例示するグラフ240、250である。マイボーム腺は約2.0mm又はより深い深さに位置することができ、かつ大部分の眼瞼の総厚さは3.5mm~4.5mmの範囲内にあるため、発射光は、皮膚及び粘液組織における透過深さが約2mmよりも大きい波長を含むことが好ましい。
図240、250の両者に示されるように、約750nm~約1250nmの間に跨る範囲242及び252における波長は、2mmよりも大きい光透過深さを有し、かつ皮膚深さに対して3.5mmに達し、粘液組織深さに対して6.5mmに達する。
【0054】
上記グラフは、中心周波数が約950nm~約1000nmのIR光源を用いた利点を示している。例示的な実施例において、約980nmの中心周波数を有するIR LEDは、皮膚における相対的に低い反射率、異なる肌色の低い変化、低網膜吸収率及びより深い透過深さの利点を組み合わせて、眼への潜在的な損傷を低減又は解消するための組織の加温に対する光源の有効性を最適化し、低コスト化を図ることができる。
【0055】
安全の観点から、皮膚の表皮層は、敏感な熱神経受容体を有し、約43摂氏度(℃)よりも高い程度まで加熱すると、熱神経受容体は、痛みを引き起こすことになり、眼瞼は、皮膚の特に敏感な領域である。しかしながら、MGDの多くの場合に、マイボーム腺脂油を除去してマイボーム腺脂油の新たな流動を引き起こすことに必要な温度は、約42℃に上昇する。これにより、効果が高く痛みのない狭い治療窓が存在する。また、眼内の角膜及び水晶体は、温度にも非常に敏感であり、かつ、約39°Cよりも低くなるように保持すべきであり、角膜は約40°Cより高い時に痛みを感じ始める可能性があるためである。この範囲を超えるような長期間の温度は、角膜及び水晶体が動作する長期間の赤外加熱によるガラス工白内障と呼ばれる状況に関連する。本明細書に開示された実施例は、これらの安全性を考慮したものであり、特に、保護強膜カバーを用いた家庭用治療に好適である。
【0056】
本開示は、上記以外の腺治療装置に用いられる代替又は追加的な構成、形状因子および特徴を考慮したものである。例えば、
図18は、患者10の斜視図であり、ここでウェアラブルな腺治療装置300は、眼鏡フレームの形状因子で患者の眼に位置する。治療装置300は、眼鏡フレーム310に連結され又は取り付けられることにより、治療装置300は、治療プロシージャを実行すると同時に患者10に装着することができる。
図19の(A)は、
図18に示す装置300の正面図であり、ここで装置300は、眼鏡フレーム310の頂部に取り付けられる。
図19の(B)は、
図19の(A)に示される装置300の光素子320を示す。光素子320は、複数のLED電球又は素子を含み、それが湾曲又は集束配置を呈することにより、各素子の出射軸線が交差する。実施例において、各LEDは、互いに対向して設けられることにより、それらのそれぞれの出射軸線は、治療部位(例えば、眼瞼)で交差する。異なる角度で同じスポットを指向する異なるLED素子を用いることにより、LEDアレイ素子は、眼瞼の所定の領域に集束するように設けることができ、それにより光束がマイボーム腺又は特定のマイボーム腺に集中又は集束する。線形LEDアレイは、各マイボーム腺アレイを同時に照準することができるが、単一のマイボーム腺を照準するために、異なる角度で配列された複数のLED行を有する。
【0057】
図20Aおよび
図20Bは、本開示の実施例に係る光素子320の異なる斜視図である。光素子320は、複数の独立した送信器329を含み、例えばLEDであり、それは、2列に設けられて回路基板325に取り付けられる。回路基板325は、腺治療装置(例えば、100、300)のコントローラ及び/又は電源に接続されるように構成される。各送信器は、角度分散または角度分布360内で光を出射するように構成される。各送信器は、光の伝播を特定の角度範囲に集束するために、レンズ又は他の光学部品を含むことができる。
【0058】
図21は、本開示の実施例に係るウェアラブルな腺治療装置の一部を示す図である。装置300は、
図19の(B)に示される実施例と類似するように、湾曲パターンで設けられた複数のLEDを有する光素子320を備える。導波路322は、光素子322に連結され、光素子320からの光を眼瞼に導くように構成される。前記のように、導波路322は、エラストマー材料を含むことが好ましい。例えば、いくつかの実施例において、導波路322は、シリコーン又は弾性ポリウレタン材料を含む。装置300は、上記と類似して説明したように、さらに発振又は振動運動を引き起こすように設けられたアクチュエータ330を含む。いくつかの実施例において、アクチュエータ330は、バイオニックアクチュエータを含む。いくつかの実施例において、アクチュエータ330には、圧電部品、微小電気機械部品、ソレノイド、モータ又は任意の他の適切なタイプのアクチュエータ330を含む。また、導波管322は、眼瞼に接する出口点でかつ眼瞼縁近傍のマイボーム腺組織の出口点に近い眼瞼の間の領域の上方に、圧迫特徴または結節特徴323を有する。アクチュエータ330は、導波路を介してマイボーム腺に機械的エネルギーを伝達することができる。
【0059】
図22は、腺治療装置400の他の実施例を例示している。例示された実施例において、装置400は、ハンドル410と、ハンドル410の遠端に連結されたヘッド部420とを含む。ヘッド部420は、集束導波路422を介して光を出射する投光器429が円形状に配列されている。導波路422は、円錐形状を有し、送信器からの光を小領域または点に導くように構成される。いくつかの実施例において、装置400は、さらにマッサージアセンブリを含み、それは、腺体に光を印加する時に導波路を発振させ又は振動させるように構成される。いくつかの実施例において、装置400は、医師又は臨床医師によって使用されることではなく、患者によって使用されるように設けられてもよい。いくつかの実施例において、装置400は、臨床医師によって操作されるように構成される。装置400は、ボタン440でそれを制御して治療を行うことができる。このような形状因子は、瞼脂油ではなく皮脂油で目詰まりした毛穴を有するざ瘡又は炎症ニキビを治療することに用いることができる。
【0060】
一つの実施例において、これらの圧電素子は、既知の低コストの可撓性バイモルフアクチュエータバンドで構成され、かつ幾何学的形状に基づく数百Hzから数千Hzまでの周波数励起範囲を有することができる。代替的に、例えば、Noliacにより提供されたそれらの圧電アクチュエータなど、圧電に基づく振動リング曲げ装置を用いることができる。強膜カバー150の大きな表面積に比べて導波路の該圧迫領域の表面積が大幅に小さくなるため、強膜カバー150から眼球までの圧力は、正常な眼球摩擦と無関係でかつ正常な眼球摩擦のオーダーと同じ圧力までほぼ減少し、範囲は、0.1~2psiである。
【0061】
本開示は、その他の形状因子も考慮したものである。本開示に係る装置ハウジングの形態は、軽量かつ使用者にとって快適なものであってもよい。一つの実施例において、ハウジングは、使用者の頭部に縛られたゴーグルの形態を採用することができる。また、ハウジング部品は、頭部又は耳に固定されたA/R又はV/R保護面、アイシールド又はマスクの形態を採用することができる。装置は、眼科オフィスにおいて訓練された技術者が眼鏡を着用することと同様に着用することができる。また、装置ハウジングは、加熱ロッドの形態を採用することができ、該加熱ロッドは、加熱ヘッド付きの拡散点を有し、該加熱ヘッドは、小さい有効面積を有し、面積は一般的に、数平方ミリメートルである。これは、任意の所定の時間に光を一つ又は二つのマイボーム腺に集束することができる。このような形態のハウジングでは、使用者がそれを眼瞼にゆっくりと往復移動させて各マイボーム腺を個別に照準することができ、一旦十分な局所的な熱を与えるのに十分な時間が経過すると、移動できることをブザーで使用者に通知することができる。これは、使用者にアピールする低コストのハウジング開口形状因子であってもよいが、彼らにとって別途の作業を行ってマイボーム腺全体を走査することが要求される。
【0062】
いくつかの実施例において、装置に冗長な自動安全メカニズムを結合することにより、治療期間に使用者が保護強膜カバーを装着することが確保される。保護強膜カバーが目に位置することを検証するためのメカニズムは、RFIDチップへの登録により、完成することができる。
【0063】
IR加熱LEDを保持したPCBにも赤色LEDまたは他の可視光を搭載することは、目に対して安全であるが好ましくない電力を有する可能性があり、保護シールドが目に位置していない指示として用いることもできる。
【0064】
保護強膜カバーの有無を検証するための別のメカニズムは、低コストの検査カメラを用いることである。例えば、押し出された眼瞼脂を観察するためのものと同じカメラ(例えばOmniVision OVM6211)によって、強膜カバーの有無を検証することができる。
【0065】
このようなカメラシステムをハンドヘルド装置に埋め込むことは、過去にどの単一のマイボーム腺を対象とし、どの眼瞼を対象としたのかを記録するためには非常に望ましく、全ての腺が同等の治療量を受けるように、最後にどの位置を治療したかを把握するためにも望ましい。このカメラは、アプリケーションと共にどの眼瞼位置が最後に治療されるかを追跡することができる。
【0066】
当業者であれば、様々な方式で上記装置、システム及び方法を修正することが可能であると理解されるべきである。したがって、本開示に含まれる実施例は、上記特定の例示的な実施例に限定されないことは、当業者によって理解され得る。この点において、例示的な実施例を示して説明してきたが、前述の開示では、広範囲の修正、変更及び置換が想定される。本開示の範囲から逸脱することなく、前述の内容に対してこのような変更を行うことができると理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示と一致するように広く解釈されるべきである。