(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】化学蒸着チャンバー物品
(51)【国際特許分類】
C23C 16/44 20060101AFI20240325BHJP
C04B 41/87 20060101ALI20240325BHJP
C04B 41/89 20060101ALI20240325BHJP
C04B 41/91 20060101ALI20240325BHJP
C23C 16/54 20060101ALI20240325BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C23C16/44 J
C04B41/87 M
C04B41/89 K
C04B41/91 B
C23C16/54
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2021571514
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 NL2019050304
(87)【国際公開番号】W WO2020242292
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521522331
【氏名又は名称】シュンク サイカーブ テクノロジー ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ミュンスター、マルクス ヘラルドゥス
(72)【発明者】
【氏名】ソング ガイミング
【審査官】富永 泰規
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-250785(JP,A)
【文献】特開2006-041358(JP,A)
【文献】特開昭62-293713(JP,A)
【文献】特開2012-060036(JP,A)
【文献】特開2007-189203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0215963(US,A1)
【文献】特表2007-511911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 - 16/56
C04B 41/87、41/89、41/91
H01L 21/203、21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部品の製造のための化学蒸着チャンバーの物品の処理方法であって、
本体と、炭化ケイ素または炭化タンタルを含む表面とを有し、非酸化表面を有する前記物品を用意するステップと、
前記チャンバー内での前記半導体部品の前記製造の間に寄生蒸着される前記表面の少なくとも一部に
、エッチング耐性のある酸化表面を含む保護層を
提供するステップと、
前記保護層を有する前記物品をエッチングするステップと、を含み、
前記保護層を
提供するステップは、
前記物品をハロゲン系エッチング剤、好ましくはCl
2
またはHClエッチング剤にさらすステップを含
み、
前記保護層を提供するステップは、前記物品を用意するステップの後に実施され、
前記物品をエッチングするステップは、前記保護層を提供するステップの後に実施される、半導体部品の製造のための化学蒸着チャンバーの物品の処理方法。
【請求項2】
前記保護層を提供するステップは、
前記物品を酸化環境にさらすステップと、
前記物品を所定の高い温度に加熱するステップと、をさらに含み、
前記物品を前記エッチング剤にさらすステップ中に前記物品の前記表面上に形成した炭素はCOまたはCO
2として酸化、除去され、それによって、前記チャンバーでの前記半導体部品の前記製造中に寄生蒸着された前記物品の前記表面の前記少なくとも一部を覆うSiO
2またはSiOまたはSiO
xC
y保護層を形成する請求項
1に記載の化学蒸着チャンバーの物品の処理方法。
【請求項3】
ウエハ担体、ウエハサセプタ、予熱リング、リフトピン、カバー部材、天井またはエピタキシャル化学蒸着成長チャンバーで使用される他の部品の群のうちいずれか1つを含む請求項1
または2に記載の化学蒸着チャンバーの物品の処理方法。
【請求項4】
前記保護層が二酸化ケイ素表面を含む請求項1~
3のいずれか1項に記載の化学蒸着チャンバーの物品の処理方法。
【請求項5】
前記保護層が一酸化ケイ素表面を含む請求項1~
3のいずれか1項に記載の化学蒸着チャンバーの物品の処理方法。
【請求項6】
前記保護層がオキシ炭化ケイ素表面を含む請求項1~
3のいずれか1項に記載の化学蒸着チャンバーの物品の処理方法。
【請求項7】
前記物品の前記本体が炭化ケイ素からなる請求項1~
6のいずれか1項に記載の化学蒸着チャンバーの物品の処理方法。
【請求項8】
前記物品の前記本体が、炭化ケイ素で被覆した表面を有するグラファイトコアからなる請求項1~
6のいずれか1項に記載の化学蒸着チャンバーの物品の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学蒸着チャンバー物品に関する。本発明は、半導体部品の製造のための化学蒸着チャンバーの物品の処理方法、並びにそのような方法によって得られた化学蒸着チャンバー物品にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路、発光ダイオード、LEDなどの半導体部品の製造のために、これらの半導体部品の製造プロセスの一部として、条件付けした環境下での半導体基板上での様々な材料層のホモおよびヘテロのエピタキシャル成長のために化学蒸着を採用することが長く行われている。これらの条件付けした環境下では、典型的には、ウエハまたは基材が担体上に設置され、基材表面上で反応および/または分解して望ましい蒸着を生じる1つ以上の揮発性の前駆体に曝される。
【0003】
CVDチャンバー内の物品は、技術的なセラミック、石英および被覆グラファイトなどの材料から作製される。グラファイトチャンバー物品は、典型的には炭化ケイ素、SiCの層で被覆され、そのようなSiCまたは他の技術的なセラミック物品が迅速な熱処理、拡散、焼き鈍し、またはエピタキシャル成長プロセスに使用され得、ウエハが室温から高い温度に1分未満のうちに加熱される。
【0004】
CVD装置の蒸着チャンバー内での蒸着中に、1つのまたは様々な材料がウエハまたは基材上で層において成長する。しかしながら、これらの材料の成長または蒸着は、成長のためにくぼみを付けたウエハまたは基板上のみならず、蒸着プロセスを行うチャンバー物品上にも同様に起きる。ウエハ上で起きないそのようなチャンバー内の蒸着は望ましくない。
【0005】
これらの材料のそのような望ましくないチャンバー物品上での成長または蒸着は、寄生蒸着として一般に知られている。寄生蒸着は、高品質の蒸着層を製造するのに必要な蒸着プロセス条件の安定性を妨げることから望ましくない。
【0006】
例えば、米国特許第8430960号明細書に開示されているように、内部表面とプロセスガスの少なくとも一部との間に緩衝ガスを流してガスバリア層を形成し、ガスバリア層が内部表面とプロセスガスの一部との間の接触を阻害することによって、基材上にフィルムを蒸着させる蒸着システムにて寄生蒸着物を制御できる。エピタキシャル蒸着プロセスに悪影響を及ぼすことから、プロセス下で基材(すなわちウエハ担体)を有さないか、またはプロセス下で基材を有するチャンバー表面の上流に位置していない内部チャンバー正面上の寄生蒸着を減らすのにそのような方法を採用できる。蒸着チャンバーの設計によって、寄生蒸着を減らす上記方法の利益を受けることができない表面上で、これによって、蒸着チャンバーの数回の使用後に起きるこれらの物品の早い寿命が生じる。代替として、または前述したのに追加して、いくつかの操作を行った後、物品は、化学または機械洗浄され得る。機械は、典型的には、マイクロの亀裂などの他の人工物を導入し得る。物品の表面をエッチング剤でエッチングすることによって化学洗浄を行い得る。物品のエッチング中に、寄生蒸着をエッチングするのみならず、物品自体の表面を傷付け得、最終的に物品の寿命を縮め得る。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上述した欠点の少なくともいくつかを減らす化学蒸着または他の蒸着チャンバー物品を提供することにある。
【0008】
本発明のさらなる目的は、物品の表面を傷付けずに多くの寄生蒸着を少なくとも除去するエッチング剤による化学洗浄のために配置されている改善した化学蒸着チャンバー物品を提供することにある。
【0009】
本発明の第1の態様では、半導体部品の製造のためのウエハ担体などの化学蒸着チャンバー物品が提供され、前記チャンバー物品は、本体と、金属炭化物からなる表面とを有し、前記表面には、前記チャンバー内での前記半導体部品の前記製造の間に寄生蒸着される前記表面の少なくとも一部に保護層が設けられており、前記保護層は酸化表面を含むことを特徴とする。
【0010】
示されるように、化学蒸着(CVD)反応チャンバーは、炭化ケイ素、SiC部品のエピタキシー成長に使用される。典型的には、反応チャンバーの高温壁タイプが使用される。SiC部品は、多くの場合、グラファイト製造され、SiCで被覆される。反応チャンバーは、基材担体またはウエハ担体などのいくつかのチャンバー物品を収納する。担体上に、基材、例えばSiC基材が設置され、エピタキシャルなSiC層がエピタキシープロセスの間に成長する。担体のようなこれらの金属炭化物物品自体は、典型的には、SiCで被覆したグラファイトから作製される。しかしながら、それらは、概して、固体のモノリシックのSiC、または炭化タンタル、TaCで被覆グラファイト、または金属炭化物からも形成される。
【0011】
SiCのエピタキシー成長の間、望ましいSiCエピタキシー層がウエハの基材上に形成される。しかしながら、望ましくないSiC層も、反応チャンバー内の他の位置に、例えば担体自体に、またはヒートリング、リフトピンなどの他の物品上に形成される。SiCを含む反応チャンバー内のそれぞれの物品は、寄生蒸着として周知のそのような望ましくないSiC成長の影響を受けやすいものであり得る。しかしながら、それは必ずしもエピタキシー層であるとは限らない可能性がある。多結晶SiCおよび非SiC材料の場合のCVD SiC被覆グラファイト上の蒸着は、同様に多結晶を成長させ得る。
【0012】
寄生蒸着を除去するために、金属炭化物物品は、エッチング剤が使用される化学洗浄処理され得る。両方とも金属炭化物(特にSiCまたはTaC)であり、望ましいエピタキシー蒸着と望ましくない寄生蒸着との間で材料の違いはないことから、化学洗浄は非常に困難である。エッチングにより、エピタキシーおよび寄生のSiCの両方が、より多くか、より少なくか、または同程度、エッチング剤の影響を受けやすい。
【0013】
エッチング金属炭化物を含む物品のハロゲンエッチング液でのエッチングが提案される。好ましくは使用されるハロゲンは塩素であり、好まれる金属炭化物はSiCおよびTaCである。高温SiCエピタキシープロセスにとっては後者が好まれる。
【0014】
エッチング抵抗性を増加させるために、炭化タンタル、TaCが適用され得る。しかしながら、TaCは非常に高価であり、TaCがエピタキシーSiCで被覆されることから、グラファイト基材からのコーティングの層間剥離およびTaCコーティングの放射率変化の影響を受けやすい。
【0015】
物品のエッチング耐性を増加させて、物品自体のSiC表面を傷付けずにSiCの寄生蒸着をエッチングするのに(攻撃的な)エッチング剤を使用するのが本発明者らの見識であった。
【0016】
本発明者らは、チャンバー内での半導体部品の前記製造の間に寄生蒸着される表面の少なくとも一部に、酸化表面を含む保護層を設けることで、SiCまたはTaC物品のエッチング速度を大きく抑制し得ることを見出した。
【0017】
保護酸化表面は、HCl、Cl2、NF3、ClF3などの(非常に侵攻性の)エッチング剤の使用を可能にし、エッチング抵抗性CVD SiC被覆物品自体のエッチングなしで、寄生のSiC蒸着または粒子を有効に除去する。そのような保護表面の使用によって、これらのSiC物品の寿命が延び、経済的に好都合である。
【0018】
好ましくは、(純粋な)Cl
2を使用して、寄生SiC蒸着または粒子を除去し得、Cl
2は、下記式にしたがって高い温度で反応し得る。
【化1】
【0019】
上記反応、またはSiCへの他の適用可能なエッチング剤の結果、SiCは炭素に転換される。その後、炭素は、十分または部分的に酸化によって除去され得る。したがって、担体表面上に蒸着した寄生SiC蒸着または粒子がエッチングされるのみならず、CVD SiCコーティングで被覆されるか、または固体または純粋なSiCから製造される担体表面も同様にエッチングされる。
【0020】
本発明によって、担体またはグラファイトの代替の基材の部品のCVD SiC被覆部分を含むCVD SiC被覆グラファイト物品または反応チャンバーの部品が示唆される。本発明に従うCVD SiC被覆部品は、Cl2エッチング剤、HClエッチング剤または他の典型的なエッチング剤に対する優れたエッチング耐性を有する。これは、Cl2が、SiCエピタキシープロセス中に生じた寄生蒸着SiC物質のみエッチングするが、エッチング抵抗性CVD SiC被覆物品自体をエッチングしないか、またはエッチングが非常に少ないことを意味する。
【0021】
説明を通して、SiC物品のいかなる言及も基材担体上のCVD SiCに限定する意図ではなく、バルク、自立型CVD-SiC物品、またはCVD SiC被覆SiC物品、またはエッチング抵抗性CVD SiCで被覆される他の材料でもあり得る。
【0022】
さらに別の代替として、SiC物品は、酸化物層または酸化表面または金属オキシ炭化物表面を含む、反応チャンバー金属炭化物被覆物品などのいずれの金属炭化物被覆チャンバー物品またはバルクケイ素材料でもあり得る。
【0023】
提案した反応チャンバー物品は、本体および炭化タンタル、TaCの被覆した表面も含み得る。TaCはより固有のエッチング耐性を有することから、TaCは、反応チャンバー部品用コーティング材料としてSiCを超える利点を有し得る。しかしながら、TaCは、不利益、例えばより高価であり、グラファイト基材から層間剥離しやすいという不利益も有する。
【0024】
一例では、保護層は、二酸化ケイ素表面を含む。
【0025】
一例では、保護層は、一酸化ケイ素表面を含む。
【0026】
一例では、保護層は、オキシ炭化ケイ素表面を含む。
【0027】
エッチング
剤のいくつかの種類は、SiC材料に使用し得、例えばSiCはHCl、Cl
2、ClF
3、NF
3などでエッチングできる。エッチングメカニズムには、異なる等式があり、異なる元素の形成があり、例えば下式の通りである。
【化2】
【0028】
上述したエッチングメカニズムのうち、Cl2が高温でより高いエッチング速度を有することからHClより好まれる。しかしながら、ClF3は、相対的により低い温度でエッチング速度が速い。
【0029】
一例では、加熱するSiCを特定の所定の高温(約1200℃など)に加熱することによって、SiC物品は熱エッチングされ得る。ClF3は、相対的により低い温度でエッチング速度が速く[3]、エッチングメカニズムは下記の通り示される。
【0030】
一例では、物品の本体は、炭化ケイ素からなる。
【0031】
本発明は、SiCコーティングを有する反応チャンバー物品に限定されない。固体またはモノリシックのSiCから形成されるチャンバー物品も、エッチング抵抗酸化表面を得るための同じ表面処理を受け得る。
【0032】
一例では、物品の本体は、炭化ケイ素で被覆した表面を有するグラファイトコアからなる。
【0033】
固体SiCの代替として、物品は、エッチング抵抗酸化表面を得るための同じ表面処理を受け得る、グラファイトコアおよびSiCコーティングを有し得る。代替として、グラファイトまたは他のコアまたは本体は、エッチング抵抗酸化表面を得る表面処理を受け得る炭化タンタルコーティングを有し得る。
【0034】
一例では、物品をハロゲン系エッチング剤、好ましくはCl2系、純粋なCl2、またはHClエッチング剤で処理することによって、保護層が得られる。
【0035】
一例では、SiO2またはSiOまたはSiOxCy保護層へのエッチングから得られた表面で炭素を転換する高温での酸化処理をエッチングした物品に行うことによって保護層が得られる。
【0036】
CVD-SiC被覆グラファイトウエハ担体を高温で酸化すると、表面の一部を覆う十分に濃いSiO2またはSiOまたはSiOxCy層が形成されるが、好ましくは、使用中に反応チャンバーの内側に面する物品の側面の表面全体、最も好ましくは物品の全表面外周を覆うように形成される。このSiO2またはSiOまたはSiOxCy層は、高温でCl2またはHClエッチングに対しCVD SiCを保護する。
【0037】
一例の酸化物層は、1つの酸化物相を有するか、または別の例では、1つのSiO2、SiO、およびSiOxCy相からなるか、または一例ではSiO2、SiOおよびSiOxCy相の1つの相を有するいくつかの相からなる。さらに別の例では、酸化物含有層は、SiO2、SiOおよびSiOxCy相のうち1つ以上の相を含む。
【0038】
本発明の第2の態様では、半導体部品の製造のための化学蒸着チャンバーの物品の処理方法が提案される。該方法は、
・本体と、炭化ケイ素を含む表面とを有する物品を提供するステップと、
・チャンバーでの半導体部品の製造中に寄生蒸着された表面の少なくとも一部に保護層を設けるステップと、を含み、保護層を設けるステップは、酸化表面を得るステップを含む。
【0039】
一例では、保護物品を提供するステップは、
・ハロゲン系エッチング剤、好ましくはCl2系、純粋なCl2、またはHClエッチング剤で物品を処理するステップを含む。
【0040】
一例では、保護物品を提供するステップは、
・物品を酸化環境に曝すステップと、
・前記物品を所定の高い温度に加熱するステップと、をさらに含み、前記エッチングステップ中に前記物品の前記表面上に形成した炭素はCOまたはCO2として酸化、除去され、それによって、前記チャンバーでの前記半導体部品の前記製造中に寄生蒸着された前記物品の前記表面の前記少なくとも一部を覆うSiO2またはSiOまたはSiOxCy保護層を形成する。
【0041】
本発明の第3の態様では、上述した方法に従って処理される化学蒸着チャンバー物品が提案される。該チャンバー物品は、エピタキシャル化学蒸着成長チャンバーに使用されるウエハ担体、ウエハサセプタ、予熱リング、またはリフトピンの群のうちのいずれか1つを含む。
【0042】
本開示の上述したおよび他の特徴および利点は、非限定的な実施例を示す添付図面を参照して以下の説明から最もよく理解されるものである。図面において、同じ参照番号は同一の部品、または同一もしくは同等な機能または操作を行う部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の一態様に従う方法のステップのフローチャートである。
【0044】
【
図2】
図2a~
図2cは、本発明の一態様に従って処理されたCVD SiC物品の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、化学蒸着チャンバー物品、例えばウエハ担体、ウエハサセプタ、予熱リング、リフトピン、またはいずれの他の炭化ケイ素、SiCまたは炭化タンタル、TaCチャンバー物品の処理のステップを示す。これらの物品は、固体SiCもしくはTaCを含み得るか、またはグラファイト基材またはそのような部品に使用される他の周知の基材上にSiCまたはTaCコーティングを有する。
【0046】
例えばウエハ基材上のエピタキシャル成長による半導体材料の製造のために1回以上CVDプロセスで実行した後に、物品上の寄生蒸着を除去するのにウエハ担体などの反応器物品のエッチングが好ましい。物品のエッチングによって、物品を再使用でき、物品の寿命が延びるように、SiCの寄生蒸着が除去される。
【0047】
これらの物品にとって典型的なエッチング剤はHClまたはCL2などのハロゲンである。SiCとHClまたはCl2との反応、SiO2とHClまたはCl2との反応、および関連した自由エネルギー変化が異なることから、SiC表面またはCVD SiCコーティング表面上のケイ素酸化物層またオキシ炭化ケイ素は、SiCコーティング材料のエッチングを顕著に減少させ得る。代替として、SiC材料を酸化ケイ素またはオキシ炭化物で保護する代わりに、部品をオキシ炭化ケイ素から製造できるか、またはオキシ炭化ケイ素で被覆でき、伝統的に利用されているCVD SiCを置き換える。したがって、CVD-SiC材料を酸化ケイ素またはオキシ炭化物で保護することによって、SiC-エピタキシーチャンバーの寄生蒸着の除去中のCVD-被覆グラファイト、または固体-CVD-SiC部品の劣化の課題が軽減される。ここで、グラファイト基材またはバルクSiC部分、またはSiC相含有部分上の上述のSiCコーティングは、酸化物層または酸化表面を少なくとも有するか、または最小で1つの酸化物層または酸化表面を有する。このまたはこれらの酸化物表面は、コリンガスまたはハロゲンガスまたはハロゲンガスを含むガスによるエッチングに対して、SiC被覆部品またはSiC含有部分または金属炭化物部分または金属炭化物被覆部分または純粋なSiC部分または金属炭化物部分を保護する。
【0048】
保護層が、半導体部品の製造のための化学蒸着チャンバーの物品の処理方法100によって得られる。該方法は、
・本体と、炭化ケイ素を含む表面とを有する物品を提供するステップ101と、
・物品をCl2系、純粋なCl2、またはHClエッチング剤に曝すステップ102と、を含む。チャンバーでの半導体部品の製造中に寄生蒸着される表面の少なくとも一部をエッチング剤に曝す。しかしながら、好ましくは、寄生蒸着が起きるプロセスガスに面するか、かつ/または接触する少なくともホール表面全体がエッチングされる。より好ましくは、物品全体、すなわち物品の表面のすべてがエッチングされる。
・エッチングされると、物品は酸化環境にさらされる103。
・最後のステップとして、物品は所定の高い温度に加熱され104、エッチングのステップの間に物品の表面に形成した炭素がCOまたはCO2として酸化され、除去され、チャンバーでの半導体部品の製造中に寄生蒸着される物品の表面の少なくとも一部を覆うSiO2またはSiOまたはSiOxCy保護層から除かれる。
【0049】
予め、ウエハ担体などの物品を機械で研磨して寄生蒸着を手動で除去する場合、チャンバー物品のCVD-SiC材料への影響を最小限またはなしで寄生蒸着を除去するように、チャンバー物品上のCVD-SiCコーティングを使用したエッチング剤の影響からを保護するのが望ましい。CVD SiC材料の表面を覆うのに十分に濃いSiO2またはSiOまたはSiOxCy層の導入によって、そのようなエッチング剤に対する保護がもたらされる。
【0050】
提案したSiC表面処理現在使用される表面処理を超えるいくつかの利点を有する。それらのうち、すべての寄生SiCの完全なエッチングの結果、再使用できる十分に洗浄した物品が得られることがある。CVD反応器チャンバーまたは分かれたエッチングチャンバーにおいて、チャンバー部品のすべてがCl2エッチングに対する抵抗性があるわけではないことから、Cl2による処理が必ずしも可能とは限らない。これは、純度のようなプロセス要件に準拠し、Cl2エッチングに耐えることが可能な材料にチャンバー部品を置き換えることによって、または分かれた処理チャンバー内の物品の処理を分けることによって、解決され得る。
【0051】
提案した方法によって、エッチングプロセスによって生じた粒子の形成を、エッチング時間、エッチング頻度および操作温度を調整することによって減らすことも可能である。
【0052】
提案した方法の別の利点は、酸化ステップによって、残存炭素層がCl2エッチング後に除去されるのみならず、表面上の保護酸化物層を修復するのに使用できることである。現在既知の洗浄方法も、寄生的に蒸着したSiC層が不均一な厚さ有することから、元のCVD-SiC材料をエッチングする。現在既知の洗浄方法は、元のSiCコーティングの修復ステップを含まない。したがって、そのような洗浄プロセスによって、現在使用されるエッチングステップそれぞれの間に担体が顕著に劣化する。提案した方法では、または提案した物品によって、この繰り返しの酸化ステップが、この保護SiO2またはSiOまたはSiOxCy層の再生の成功(チャンバー部品のCVD-SiC材料に存在する可能性があるマイクロの亀裂の修復の結果とも考えられる)によってこの保護層の厚さを確実に維持する。CVD SiCコーティングのマイクロの亀裂は、CVD炭化ケイ素の亀裂面に酸化ケイ素を形成することによって修復でき、すなわち亀裂は酸化ケイ素によって一緒に結合される。
【0053】
図2aにおいて、CVD SiCコーティングは、1200℃で約60分間Cl
2エッチング後に炭素層としてエッチングされた。酸化CVD SiCコーティングは、1200℃で約60分間Cl
2によるエッチング後にエッチング現象を示さないことが
図2bに示されている。
図2cにおいて、得られた十分に濃いSiO
2酸化物層がCVD SiC上を覆っていた。これは、高温でのCl
2エッチングに対してCVD SiCを十分に保護する。
【0054】
CVD SiC被覆グラファイト、および酸化CVD SiC被覆グラファイトでCl
2エッチングを実施する。図は、達成した厚さ約1.7μmのSiO
2層を有する酸化CVD SiCコーティングを達成したことを実証する。純粋なCl
2によって1200℃で60分エッチング後、CVD SiCコーティングは、炭素層としてエッチングされ、得られた酸化CVD SiCコーティングは、エッチング現象を示さなかった。
図2aに示すように、CVD SiCコーティングの厚さは147μmから98μmまで減り、該コーティング上の厚さ44μmの炭素層が除かれた。
【0055】
説明を通じて、チャンバー物品が、提案した方法の影響を受けやすいCVD反応チャンバーの部品を特定するのに使用される。チャンバー物品という表現は、広い意味で、反応チャンバー物品、反応チャンバーツール、反応チャンバー装置、反応チャンバー交換可能部品なども意味すると解されるべきである。当業者であれば、すべてのそのようなSiCおよび/またはTaC(被覆した)部品に、高いエッチング抵抗性を達成するために酸化表面を設け得ることを理解するものである。
【0056】
「含む(comprise)」、「含む(include」、「組み込む(incorporate)」、「含有する(contain)」、「である(is)」および「有する(have)」等の表現は、明細書およびそれに伴う請求項を解釈する際に、非排他的(non-exclusive)な意味で理解すべきであり、すなわち、明確に定義されていない他のものまたは部品も存在可能であると理解すべきである。単数形の参照は、複数形も参照しているものであり、逆も同様である。
【0057】
さらに、本発明は、複数のプロセスステップが記載されている本明細書に記載の実施態様で提供されるものよりも多くまたは少ないステップでの処理によっても実施し得る。
【0058】
当業者であれば、半導体OEM製造業者によって使用され得る酸化表面を有するCVD SiC物品を得るために、半導体製造プロセスと分けて方法ステップを典型的には実施し得ることを容易に理解するものである。しかしながら、(分離した)CVD反応チャンバーで先に実施され得、本発明に従うCVD SiC物品を製造する分離したエクスサイチュ「反応チャンバー物品酸化プロセス」を通じて、そのようなOEMによって非酸化CVD SiC物品でも方法ステップを実施し得る。その他にも、方法ステップは、例えばSiCエピ蒸着反応器で、実際の半導体製造プロセス中のCVD反応チャンバーで、インサイチュでも実施し得る。
【0059】
また、当業者であれば、これらのステップのいくつかを、並行して、連続して、または繰り返し実施することができ、物品のそれぞれが、1つ、複数、またはすべての方法ステップを数回受けることができることを容易に理解するものである。
【0060】
開示された実施態様の他のバリエーションを、図面、開示、および添付の特許請求の範囲から、特許請求の範囲に記載の発明を実施する当業者であれば理解でき、実行できる。特許請求の範囲において、「含む」は、他の要素またはステップを除くものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数形を除くものではない。ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという事実だけで、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。請求項におけるいずれの参照記号も、それらの範囲を限定するものではない。