(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】嫌気性バイオガスプラント及び消化方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20240325BHJP
C02F 3/28 20230101ALI20240325BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
C02F3/28 A
(21)【出願番号】P 2021573262
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2020057359
(87)【国際公開番号】W WO2020249275
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-11-17
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516042103
【氏名又は名称】ヒタチ ゾウセン イノバ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】レーネ ライスナー
(72)【発明者】
【氏名】アードリアン シャッツ
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-504052(JP,A)
【文献】特開平06-319526(JP,A)
【文献】特開2017-074586(JP,A)
【文献】特開2001-314840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0260433(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
C02F3/28-3/34
C12M1/00-3/10
C09B3/00-3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新しい有機の消化作用基質(40)を消化作用するためのダイジェスター(30)を含む嫌気性バイオガスプラントであって、
前記ダイジェスター(30)は、
第1の端部に主要な入口(31)を有する入口部(32)と、
第2の反対側の端部にある後部(36)と、
入口部(32)と後部(36)との間に配置された中間部(34)と、
前記第1の端部から前記第2の反対側の端部までの方向に延在するシャフトを有し、前記ダイジェスター(30)内で消化作用基質(44)を混合するための少なくとも1つの撹拌アームを有する、撹拌ユニットと、を備え、
前記ダイジェスター(30)の中間部(34)は、短縮された保持時間tの後に消化作用基質の大部分(45)を取り除くための主出口(33)を有し、
前記後部(36)は、植菌保持時間T後に消化作用基質の少量部分(41)を取り除くための追加の出口(35)を有し、
前記ダイジェスター(30)は、追加の出口(35)から前記ダイジェスター(30)の入口部(32)に戻る別個の戻りライン(37)を有し、前記後部(36)から取り除かれた消化作用基質の少量部分(41)を前記ダイジェスター(30)の入口部(32)に直接戻す、嫌気性バイオガスプラント。
【請求項2】
前記ダイジェスター(30)は、
細長い水平方向のタンクである、請求項1に記載の嫌気性バイオガスプラント。
【請求項3】
前記撹拌ユニットは、前記入口部(32)から前記中間部(34)を通って前記ダイジェスター(30)の前記後部(36)内に延在する、請求項1又は2に記載の嫌気性バイオガスプラント。
【請求項4】
攪拌ユニットの前記シャフトは、自由端にブレードを備える多数の攪拌アームを有する、請求項1~3の何れか一項に記載の嫌気性バイオガスプラント。
【請求項5】
前記ダイジェスター(30)は、プラグフローモードで運転される、請求項1~4の何れか一項に記載の嫌気性バイオガスプラント。
【請求項6】
前記別個の戻りライン(37)は、専ら前記後部(36)を前記入口部(32)に接続する、請求項1~5の何れか一項に記載の嫌気性バイオガスプラント。
【請求項7】
2つ以上のダイジェスター(30)を有し、該2つ以上のダイジェスター(30)の全ては前記ダイジェスターと同じ型式のものである、請求項1~6の何れか一項に記載の嫌気性バイオガスプラント。
【請求項8】
少なくとも1つのダイジェスター(30)を有する嫌気性バイオガスプラントで使用するための消化方法であって、
前記ダイジェスター(30)は、
第1の端部にある主要な入口(31)を有する入口部(32)と、
第2の反対側の端部にある後部(36)と、
前記入口部(32)と前記後部(36)との間に配置された中間部(34)と
前記中間部(34)からの主出口(33)と、
前記後部(36)から追加の出口(35)と、
前記追加の出口(35)から前記ダイジェスター(30)の入口部(32)に直接戻る別個の戻りライン(37)と、
前記ダイジェスター(30)内で消化作用基質(44)を混合するための少なくとも1つの撹拌アームを有する撹拌ユニットと、を備え、
前記
消化方法は、以下のステップ、すなわち、
a)新しい消化作用基質(40)を前記入口(31)を通して前記ダイジェスター(30)に供給するステップと、
b)植菌保持時間T後に、前記ダイジェスター(30)の前記後部(36)から前記追加の出口(35)を介して消化作用基質の少量部分(41)を取り除くステップと、
c)前記戻りライン(37)を介して、植菌基質(42)として作用させるために消化作用基質の少量部分(41)を直接的にダイジェスター(30)の入口部(32)に戻すステップと、
d)前記植菌基質(42)を新しい消化作用基質(40)と混合して、結合し消化作用基質(44)を提供するステップと、
e)短縮された保持時間tの後に、前記主出口(33)を介して前記ダイジェスター(30)の中間部(34)から結合された消化作用基質(44)のより大部分(45)を取り除くステップと、を含み、
結合した消化作用基質(44)の大部分(45)は、植菌基質(42)として戻される結合した消化作用基質(44)の少量部分(41)よりも大きく、短縮された保持時間tは植菌保持時間Tよりも短い、消化方法。
【請求項9】
前記後部(36)から取り除かれた消化作用基質の少量部分(41)は、さらに処理されることなく、前記ダイジェスター(30)の入口部(32)に直接戻される、請求項8に記載の消化方法。
【請求項10】
前記後部(36)から取り除かれる消化作用基質の少量部分(41)は、前記ダイジェスターに供給される新しい消化作用基質(40)の量の50%未満
である、請求項8又は9に記載の消化方法。
【請求項11】
前記短縮された保持時間tは、前記植菌保持時間Tの50%未満
である、請求項
8~10の何れか一項に記載の消化方法。
【請求項12】
前記短縮された保持時間tは、少なくとも2日
である、請求項
8~
10の何れか一項に記載の消化方法。
【請求項13】
前記植菌保持時間Tは、少なくとも7日間
である、請求項
8~
10の何れか一項に記載の消化方法。
【請求項14】
消化作用基質(44)の少量部分(41)の前記ダイジェスター(30)からの取り出し、及びダイジェスター(30)への戻しは、連続的な様式で、又は一定の時間隔で行われる、請求項10~13の何れか一項に記載の消化方法。
【請求項15】
消化作用基質(44)の少量部分(41)の前記ダイジェスター(30)からの取り出し、及びダイジェスター(30)への戻しは、前記ダイジェスター(30)内で測定された少なくとも1つの条件パラメータに依存して起こり、該少なくとも1つの条件パラメータは、pH、基質の体積、温度、揮発性脂肪酸の含有量、遊離アンモニア濃度及びガス分圧からなる群から選択される、請求項10~13の何れか一項に記載の消化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の嫌気性バイオガスプラント及び請求項8の特徴を有する消化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、本発明の技術分野は、嫌気性バイオガスプラントにおける、バイオマス、すなわち様々な種類の廃棄物(汚泥、農産廃棄物、エネルギー作物)中に存在する有機物の嫌気性消化作用(「発酵」とも呼ばれることもある)である。嫌気性消化作用の技術は、嫌気性条件下で有機物質を主にメタン及び二酸化炭素(バイオガス)からなる気体混合物に代謝する、いくつかのタイプの微生物の群の組み合わせ作用によって達成される生化学的プロセスである。
【0003】
嫌気性消化作用は、一般に、加水分解、酸生成、アセト生成、及びメタン生成の4つのステップからなる。高分子量基質は、最初に、発酵性細菌によって、グルコース、脂肪酸及びアミノ酸のような低分子量及び水溶性の有機中間生成物に加水分解される。酸性化の間に、揮発性脂肪酸(VFA)が誘導され、NH3、CO2及びH2Sを含む副生物が生成され、次いで、VFAは酢酸生成を介して酢酸塩、CO2、H2などに変換される。メタン生成微生物が作用して最終メタン生成プロセス中にバイオメタンを生成するのは酢酸塩である。4つのステップの中で、加水分解が最も遅く、したがって律速ステップである。
【0004】
バイオガスは、一般に、アップグレードされ、次いで、天然ガスネットワークに送られるか、又は電気、熱及び/又は輸送燃料の製造のために直接使用されるかのいずれかである。消化作用プロセス後に残った最終消化作用物は、土壌コンディショナー及び肥料として使用される。
【0005】
必要な嫌気性条件を提供するために、垂直又は水平のダイジェスターが一般に使用される。プラグフローモードで操作され、生体廃棄物の嫌気性消化作用に適した水平方向のダイジェスターの一例は、特許文献1に記載されている。ダイジェスターは一端に入口を有し、反対端に出口を有する細長い水平方向のタンクである。細断された生体廃棄物は、入口を通して供給され、消化作用後の後処理からの消化作用物質及びプレス水の手段によって吹き込まれる。これにより、消化される基質は、メタノバクテリアで富化される。ダイジェスターにおいて、生体廃棄物は、バイオガスを形成する制御された混合下で分解され、続いて、出口を通って出た後、脱水すること、及び好気性腐敗することを含む後処理に供給される。
【0006】
大容量の嫌気性バイオガスプラントに対する世界的な需要は、ますます大型のダイジェスターの建設を招いている。今日では、全長50メートル、直径10メートルを超える水平方向のダイジェスターが実現されている。このサイズの増大は、ダイジェスターを通る消化作用基質の輸送、ならびに消化作用プロセスの制御に関連する技術的困難を生じている。具体的な問題は、消化作用基質の一定の均質性の提供、及びダイジェスターの底部での、特に砂及び石のような重い固体の沈降の防止に関する。沈降防止は、消化作用された基質の連続的な排出を確実にする。プラグフローモードでダイジェスターを作動させても、流速が低いため、より重い物は沈む傾向があり、したがって排出できない。その結果、ダイジェスターのサイズの増大は、消化作用の質の低下及びより長い保持時間、又は入口から出口へのダイジェスターを通る生体廃棄物の通過時間を犠牲にすることが多かった。
【0007】
効率的な消化作用のために、加水分解細菌、酸生成細菌、アセト細菌及びメタン細菌のバランスのとれた微生物混合体が、この系において必要とされる。ダイジェスターに導入された新しい消化作用基質の量へのいくらかの消化作用基質の添加は全体的な保持時間(すなわち、消化作用基質の滞留時間)の減少をもたらすことが見出された。それによれば、特許文献2は、ダイジェスターに導入された新しいバイオマスの植菌(「自己植菌」)のための、ダイジェスター自体からのいくつかの消化作用基質の使用を開示している。したがって、全保持時間後に回収された消化作用バイオマスの一部は、ダイジェスターの入口領域に戻される。複数の発酵槽を互いに並列に操作することによって、バイオガスプラントの全体的なバイオマス処理量を増加させることができる。特許文献2の方法の主な目的は、消化作用の間に生成される収集可能なバイオガスの量を最大にし、全ての細菌が効率的に消滅されることを確実にすることである。
【0008】
例えば、特許文献3に記載されているような他の方法は、古典的な自己植菌に依存していない。特許文献3はバイオマスのための嫌気性消化方法を開示し、ここで、いくつかの発酵槽チャンバーが使用され、それを通して消化作用基質が所定の順序で供給される。発酵槽チャンバー中での消化作用の間に形成された消化作用液は、細菌が植菌発酵槽中で再使用されて植菌基質を作り出すように、収集され、そして別個の植菌発酵槽に供給される。
【0009】
特許文献2及び3の両方は、消化作用プロセスを改善する方法を提示しているが、それらは特に、バイオガスプラントによるバイオマスの全体的な処理量を増加させることに焦点を当てていない。これは、本出願の出願人が所有する特許文献4に開示されているバイオガスプラント及び変換方法を主な目的とするものである。特許文献4の手法は、プラグフローモードで操作される植菌発酵槽チャンバーから、戻り経路の手段によって植菌発酵槽チャンバーに戻る、いくらかの基質の戻りを含む。さらに、残りの、戻されていない基質は少なくとも1つのさらなる高速発酵槽チャンバー(これもまた、プラグフローモードで操作される)に、高速植菌経路の手段によって供給され、そしてそこで、さらなる新しい発酵基質と混合される。この手段、少なくとも1つの高速発酵槽チャンバーは自己植菌を必要とせず、これは、高速発酵槽チャンバーにおける有意に短い滞留時間を達成することを可能にし、その結果、並行して操作される同じ数/容量の発酵槽チャンバーを有するバイオガスプラントと比較して、バイオガスプラントの原料加工発酵基質の総処理量を増加させる。
【0010】
特許文献4に記載されているバイオガスプラント及び変換方法によってもたらされる利点を無視することなく、バイオガス生産を最大限にし、バイオガスプラントの建設及び維持コストを低減することに関して、依然として改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許第0621336号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1930404号明細書
【文献】英国特許第720018号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2948537号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明によって解決される課題は、消化作用基質の総処理量を最大にするだけでなく、構築及び維持コストの低減を可能にする嫌気性バイオガスプラント及び消化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1に記載の嫌気性バイオガスプラントプラント及び請求項8に記載の消化方法によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
【0014】
本発明に従って、新しい有機消化作用基質の消化作用のためのダイジェスターを含む嫌気性バイオガスプラントが提供される。言うまでもなく、ダイジェスターは、有機材料の消化作用を可能にする環境を提供する。概して、ダイジェスターが消化作用基質を消化作用することができる微生物を含有するという手段である。
【0015】
本発明によれば、ダイジェスターは第1の端部に主入口を有し、第2の反対側の端部に後部を有し、入口部と後部との間に中間部が配置された入口部を有する。ダイジェスターは、第1の先端部から第2の先端部への方向に延在するシャフトを含み、ダイジェスター内で消化作用基質を混合するための少なくとも1つの撹拌アームを有する撹拌ユニットをさらに含む。
【0016】
本発明の重要な態様は、短縮された保持時間tの後に消化作用基質の大部分がダイジェスターから取り除かれることである。前記短縮された保持時間tは、最大のバイオガス生成に焦点を当てて設定される。この目的のために、ダイジェスターの中間部は短縮された保持時間tの後に、消化作用基質の大部分を取り除くための主出口を含む。用語「保持時間」は、典型的には時間又は日数で表され、最大バイオガス製造又は植菌基質の製造のいずれかを考慮して、消化作用基質の分解度を達成するために必要な時間をいう。
【0017】
一方、短縮された保持時間tよりも長い植菌保持時間Tの間、消化作用基質のごくわずかな小片のみがダイジェスター内に保持される。前記植菌保持時間Tは、消化作用基質に植菌能力を与えるように設定される。このように、本発明に従い、消化作用基質の僅かな小片は植菌保持時間Tの後にダイジェスターから取り除かれ、ダイジェスターに直接再導入され、そこで、それは新しい消化作用基質と混合され、植菌基質として作用する。この目的のために、ダイジェスターの後部は、追加の出口及び別個の戻りラインを含む。追加の出口側は植菌保持時間Tの後に消化作用基質の少量部分を取り除くのに役立ち、別個の戻りラインは追加の出口側からダイジェスターの入口部に戻り、後部から取り除かれた少量部分を直接ダイジェスターの入口部に戻すために設けられる。それにより、「分離」という用語は、戻りラインが消化作用基質の少量部分の戻りのためだけに意図されており、他の目的に役立たないことを示す。
【0018】
嫌気性消化作用プロセスにおける微生物混合体は共生的又は拮抗的に増殖し、環境変化に対する異なる応答をもたらすいくつかの異なる微生物群からなる。したがって、微生物群のうちの1つの活性が抑制されると、他の微生物群の増殖が影響を受け、微生物集団が変化し、処理効率が低下するか、又は処理不全を引き起こすことさえある。植菌基質の添加のおかげで、バランスのとれた微生物個体群の迅速な開始が達成され、その結果、ダイジェスター内の消化作用基質の消化作用が促進され、これは、植菌基質を使用しないダイジェスターと比較して、一定量のバイオガスを生成するために必要とされる保持時間(又は「滞留時間」又は「消化作用時間」)がより短くなることを意味する。結果として、本発明の嫌気性バイオガスプラントは、新しい消化作用基質の全体的なスループットを増加させ、したがってダイジェスター内で生成されるバイオガスの量を最大にすることを可能にする。
【0019】
また、追加の出口及び別個の戻りラインを有する本発明のダイジェスターのこの特定の設計により、本発明の嫌気性バイオガスプラントは新しい消化作用基質の植菌、ならびに1つの同じダイジェスター内での植菌基質の調製を可能にし、それにもかかわらず、嫌気性消化作用の絶え間ない動作を確実にする。したがって、追加の植菌ダイジェスターは必要とされない。したがって、本発明の嫌気性バイオガスプラントの主な利点は、保持時間が短縮されること、及びバイオガスプラントの構築及び動作が単純であることにある。
【0020】
本出願全体を通して、「別個の戻りライン」という用語は長期の植菌保持時間の後に、ダイジェスターの入口部に基質を戻すために専ら設けられるパイプを指し、「長期の保持時間」という用語は、中間部の追加の出口を通して取り除かれる基質の「短縮された保持時間t」と比較して、より長い「植菌保持時間T」を指す。これにより、後部から取り除かれた基質の消化作用度は、消化作用プロセスを促進する植菌基質として用いることができる程度である。植菌基質として使用されるダイジェスターの後部から取り除かれる消化作用基質の品質又は適合性のための1つの重要なプロセス指標は消化作用基質中の揮発性脂肪酸(VFA)の濃度であり、これは、そのpH値に直接影響を及ぼす。植菌基質の一般的な限界は例えば、500mg/lの酢酸、250mg/lのプロピオン酸及び100mg/lのブタン酸である。
【0021】
新しい消化作用基質への植菌基質の添加は、ダイジェスターに入る前、又は入る時に行うことができる。より具体的には、植菌基質が主入口を介して、又は追加の別個の入口を介して、入口部に再導入することができる。例えば、新しい消化作用基質をダイジェスターに送達するために、送達パイプが提供され得る。前記送達パイプは植菌基質がダイジェスターに導入される前に新しい消化作用基質に添加されるように、戻りラインを送達パイプに接続するTピースを含んでもよい。
【0022】
温度は、種々の酵素及び関連する補酵素の活性、汚泥品質、加水分解速度、及びその後のバイオガス生成に直接影響を及ぼすので、温度が嫌気性消化作用における最も重要な操作パラメータの1つであることが知られている。嫌気性消化作用微生物は典型的には3つの異なる温度範囲、すなわち、好冷性(最適には20℃未満)、中温性(最適には35~40℃)、及び好熱性(最適には50~65℃)で機能することができる。生化学的反応の観点から、温度が限界内で上昇すると、より高い嫌気性消化作用性能を達成することができる。ダイジェスター温度が低すぎると、酵素の最適な触媒効率が妨げられる可能性があり、一方、ダイジェスター温度が高すぎると、感受性酵素が変性し、その後、プロセスの失敗につながる可能性がある。一般に、高温条件と比較して、好熱性操作はエネルギー吸収性の代謝反応を促進し、バイオガス製造を促進し、アンモニア蓄積を軽減することにおいて、より良好な性能を示すことが見出された。一方、好熱性嫌気性消化作用操作はエネルギー放出性の代謝反応にとって好ましくなく、環境条件の変化に対してより脆弱であり、特別な基質には適用できないかもしれないことが示されている。本発明のバイオガスプラントについて、中温嫌気性消化作用は好ましくは動物のルーメン及び産業及び農業活性からのバイオ廃棄物供給原料を消化作用するために適用され、一方、好熱嫌気性消化作用は好ましくは病原体を有する消化作用基質の衛生のために適用される。
【0023】
好ましい実施形態において、ダイジェスターは、好ましくは本質的に一定の直径を有する細長い水平方向のタンクである。これは、ダイジェスターの建造ならびにそれを通る消化作用材料の輸送を容易にする。
【0024】
好ましい実施形態では、撹拌ユニットのシャフトが入口部から中間部を通ってダイジェスターの後部に延びる。概して、ダイジェスターの部分は例えば、隔壁の手段によって、互いに物理的に分離されていない。従って、撹拌ユニットの構成及びダイジェスターの構成も容易になる。
【0025】
ある均一性を達成するために消化作用基質を混合することとは別に、撹拌ユニットは一般に、ダイジェスターの底部での重い固体の沈降を防止するのにも役立つ。好ましくは、撹拌ユニットのシャフトが自由端、すなわちシャフトから離れた端部に適切なブレードが設けられた多数の撹拌アームを有する。ブレードは重い物品を底部から頂部に向けて再び移動させることを意図しており、その結果、その後の沈降中に、重い物をダイジェスターの出口側に向かう方向に移動させることができる。
【0026】
ダイジェスターを通る消化作用基質の連続輸送を容易にするために、ダイジェスターは、好ましくはプラグフローモードで運転される。特に、水平方向のダイジェスターを使用する場合、プラグフロー運転モードの使用は高いバイオガス生成を達成するためにダイジェスター中の新しい消化作用基質の必要な保持時間を減少させるのに役立ち、従って嫌気性バイオガスプラントの処理量を増加させる(プラグフローモードで運転されない同一のダイジェスターと比較して)。さらに、プラグフロー運転モードの使用により、入口部、中間部、及び後部に異なるプロセス条件を存在させることができる。この多段構成は、最小の臭気レベル、より良好な脱水特性、及び病原体中の低い含量を有する消化作用基質を生成するように設計される。
【0027】
特に、本質的に液体の材料、すなわち、いわゆる「低固形分供給原料」(例えば、二次廃水処理、食品産業からの廃水、水圧フラッシュ糞尿システム)の消化作用のために、プラグフローモードは、一般に適用され得ない。従って、消化作用チャンバーがプラグフローモードで運転される場合、消化作用材料は好ましくは液体及び固体材料の混合物であり、特に、少なくとも10%の固形分を有する。この場合、混合ユニットは好ましくは消化作用基質混合物の水平移動を助けることができ、より重い粒子の混合、脱気、及び懸濁にも役立つゆっくりと回転するインペラを備える。
【0028】
好ましくは、別個の戻りラインが専ら、後部をダイジェスターの入口部に接続する。この手段は嫌気性バイオガスプラントの他の機能ユニットが存在せず、特に、戻りラインに接続された追加のダイジェスターが存在しないことである。このようにして、取り除かれた消化作用物質の少量部分は、直接ダイジェスターに戻す、すなわち再循環させることができる。
【0029】
本発明の嫌気性バイオガスプラントは、消化作用した基質(短縮された保持時間tの後)及び植菌基質(植菌保持時間Tの後、T>t)の両方を生成するダイジェスターを含むので、別個の植菌ダイジェスターは必要とされない。したがって、本発明の嫌気性バイオガスプラントは、好ましくはそれらの構造及び機能に関して同一である1つ又は複数のダイジェスターのみを含む。この手段は、好ましくはダイジェスターが全て、主出口を有する少なくとも中間部と、追加の出口を有する後方部分と、上述のような別個の戻りラインとを含む。
【0030】
本発明はまた、本明細書に記載される嫌気性バイオガスプラントにおいて使用するための消化方法に関する。したがって、本発明の消化方法は、上述のタイプの少なくとも1つのダイジェスター、すなわち、第1の端部にある主入口を有する入口部と、第2の反対側の端部にある後部と、入口部に配置された中間部と、中間部からの主出口と、後部からの追加の出口と、追加の出口から直接ダイジェスターの入口部に戻る別個の戻りラインと、第1の端部から第2の端部までの方向に延在し、ダイジェスター内で消化作用基質を混合するための少なくとも1つの撹拌アームを有するシャフトを有する撹拌ユニットと、を有するダイジェスターを備える嫌気性バイオガスプラントで使用するためのものである。方法は、以下のステップを含む。すなわち、
a)新しい消化作用基質を主流入口からダイジェスターに供給するステップ、
b)植菌保持時間Tの後に、ダイジェスターの後部から追加の出口を介して消化作用基質の少量部分を取り除くステップ、
c)戻りラインを介して消化作用基質の少量部分を直接ダイジェスターの入口部に戻し、植菌基質として作用させるステップ、
d)植菌基質を新しい消化作用基質と混合して、結合した消化作用基質を提供するステップ、及び
e)短縮された保持時間tの後に、主出口を介してダイジェスターの中間部から結合された消化作用基質の大部分を取り除くステップ。
【0031】
本発明の方法によれば、結合した消化作用基質の大部分は、消化作用基質(植菌基質として作用する)の小部分よりも大きく、短縮された保持時間tは植菌保持時間Tよりも短い。
【0032】
好ましい実施形態では、後部から取り除かれた少量の消化作用基質がさらに処理することなく、直接ダイジェスターの入口部に戻される。この手段は、ダイジェスターから回収された同じ物質もダイジェスターに再導入されることである。これは例えば、英国特許第720018号明細書に記載されている方法とは対照的である。この方法では消化作用した液を消化作用した基質から分離し、植菌ダイジェスター内で植菌として使用する。
【0033】
好ましくは、ステップd)で取り除かれる消化作用基質の少量部分はダイジェスターに供給される新しい消化作用基質の量の50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは約30%以下である。ダイジェスターへの新しい消化作用基質の全投入量に対する植菌基質の20%~30%の量が、植菌目的、すなわち消化作用プロセスを推進するのに十分であることが見出された。
【0034】
一定量のバイオガスを生成するために必要とされる保持時間は、植菌基質の添加によって、標準保持時間の3分の1以下に短縮され得ることが見出された。保持時間が短ければ短いほど、嫌気性バイオガスプラントの全体的な処理量は多くなる。それにもかかわらず、保持時間を低く設定しすぎると、脂肪酸の蓄積をもたらし、これは細菌の阻害及びプロセスの失敗さえも引き起こし得る。従って、短縮された保持時間tは、好ましくは消化作用基質の消化作用から得られる(理論的である)最大バイオガス出力の80~95%が達成される時間に設定される。最大バイオガス出力、すなわち、所与の温度下で所与の期間内に消化作用基質の単位質量当たりに生成することができるバイオガス又はメタンの量は、当技術分野で公知の方法によって計算することができる。1つの良い評価方法は、例えば、Institute of Chemical Technology(ICT)(Straka et al.2003)出身のDohanyos教授とZabranska博士によって開発された。
【0035】
より具体的には、短縮された保持時間tは、少なくとも2日、より好ましくは少なくとも4日及び10日、最も好ましくは5日と8日との間であることが好ましい。
【0036】
一方、植菌基質の製造には、より多くの時間が必要である。本発明のバイオガスプラントにとって、消化作用基質の少量部分の植菌保持時間Tは、好ましくは少なくとも10日間、より好ましくは少なくとも14日間、最も好ましくは約21日間である。約21日の植菌保持時間は、植菌基質として特に効率的にする消化作用の程度を有する基質をもたらすことが示されている。
【0037】
結合された消化作用基質の短縮された保持時間tに関して、短縮された保持時間tは植菌保持時間Tの50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは約3分の1であることが好ましく、すなわち、その後、消化作用基質の少量部分が植菌基質として使用されるために、後部の出口を通して取り除かれる。
【0038】
好ましい実施形態において、ダイジェスターからの、及びダイジェスターへの消化作用基質の少量部分の除去及び戻りを意味する、再循環は、連続様式で、又は規則的な時間隔で生じ得る。従って、ダイジェスターは、連続又はバッチ運転モードで運転することができる。この手段は、それが連続様式で操作され得るか、又はバッチで運転され得、そしてある程度まで(少量部分を除いて)の廃棄物分解処理の完了時に空にされ得る。
【0039】
代替的に、ダイジェスターからの消化作用基質の少量部分の除去及びダイジェスターへの戻りはダイジェスター内で測定される少なくとも1つの条件パラメータに依存して起こり、少なくとも1つの条件パラメータはpH、基質の体積、温度、揮発性脂肪酸の含有量、遊離アンモニア濃度及びガス分圧からなる群から選択されることが好ましい。
【0040】
新しい消化作用基質が高い固形分を有する場合、それは、好ましくは例えば粉砕によって機械的に前処理されて、粒子サイズの減少を達成し、それによって、表面積を増加させ、したがって微生物に対する基質の利用可能性を増加させる。
【0041】
pHは酸生成細菌及びメタン生成細菌の動作安定性及び活性がpHの変化によって有意に影響されるという事実のために、嫌気性消化作用プロセスの動的検出及び調節において重要なパラメータであることが見出された。最適な動作のために、ダイジェスター内のpHは、好ましくは監視され、6~8の範囲内に保たれる。場合により、酸性(例えば、塩酸)又は塩基性(例えば、NaHCO3)溶液をダイジェスターに導入することができる。
【0042】
本発明を、純粋に概略的に示す添付の図面に関連してさらに説明する:
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、別個の植菌ダイジェスターを有さないが、基質が供給される単一のダイジェスターのみを有する、従来技術によるバイオガスプラントの模式図を示す。
【
図2】
図2は、互いに連結されて基質を供給する、別個の植菌ダイジェスター及び高速ダイジェスターを有する、従来技術による他のバイオガスプラントの模式図を示す。
【
図3】
図3は、本発明による植菌ダイジェスター及び高速ダイジェスターの両方の機能を実行する単一のダイジェスターを有する嫌気性バイオガスプラントの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、従来技術による嫌気性バイオガスプラントにおける消化作用プロセスの模式図を示す。前記バイオガスプラントは、一端に入口11、反対端に出口12、及び出口12を入口11に接続する戻り経路13を有する単一のダイジェスター10を含む。新しい消化作用する基質14は(本質的に完全に)消化作用された基質15として取り除かれる前に、ダイジェスター10に導入され、そこで合計で基準の保持時間Tにわたって消化される。それによって、用語(本質的に完全に)消化作用された基質は4つの主要な消化作用段階、すなわち、加水分解、酸生成、アセト生成、及びメタン生成を経過した基質を指す。したがって、pH、メタン収率、及び消化作用基質中の揮発性脂肪酸(VFA)の濃度は、消化作用がどれだけ進行したかの指標である。ダイジェスター10から取り除かれた消化済の基質15の小部分16は、戻り経路13を通ってダイジェスター10に戻され、消化作用プロセスを促進する「自己植菌基質」として作用する。
【0045】
図2に示されるバイオガスプラントは、欧州特許出願公開第2948537号明細書に記載される方法に従って操作される。このバイオガスプラントでは、植菌ダイジェスター20が少なくとも1つのさらなる高速ダイジェスター21と連結される。新しい消化作用する基質22は植菌ダイジェスター20に導入され、植菌ダイジェスター20を離れる前に、植菌基質23としてT時間消化される。植菌ダイジェスター20からの植菌基質23の少量部分24は、自己植菌として作用するために戻り経路26の手段によって植菌ダイジェスター20に戻され、植菌基質23のより多い部分25は高速植菌経路27の手段によって高速ダイジェスター21に供給される。植菌基質23の主要な部分25は、追加の新しい植菌基質22と高速ダイジェスター21中で混合される。植菌ダイジェスター20は、両方の植菌ダイジェスター20、21に必要な植菌基質23を生成するので、高速植菌ダイジェスター21における保持時間を短縮することができる。これは、バイオガスプラントを通過する消化作用基質の全体的な処理量を増加させることを可能にする。
【0046】
図3に示す嫌気性バイオガスプラントは、本発明に従って運転され、一端の入口部32に入口31を有するダイジェスター30と、中間部34の主出口33と、反対側の端部の後部36にある追加の出口35と、自己植菌基質として植菌基質の一部をダイジェスター30に戻すために追加の出口35を入口31に接続する戻りライン37と、を含む。入口部32の入口31を介して、ダイジェスター30には新しい消化作用基質40が供給され、これはプラグフローモードで中間部34を通ってダイジェスター30の後部36に向かって輸送される。消化作用基質の少量部分41は植菌保持時間Tの間、ダイジェスター30中で消化作用され、次いで、消化作用基質の少量部分41は追加の出口35を介して取り除かれ、ダイジェスター30に戻されて、植菌基質42として作用する。植菌基質42は、新しい消化作用基質40と混合されて、結合された消化作用基質44を得る。結合された消化作用基質44は、続いて、プラグフローモードでダイジェスター30を通過する際に消化される。結合された消化作用基質44の大部分45はダイジェスター30の後部36に輸送されないが、短縮された保持時間tの後、主出口33を介してダイジェスター30の中間部34から取り除かれる。結合された消化作用基質44の少量部分41のみが、追加の出口35を介してダイジェスター30の後部36を通過し、そこから回収され、再び、上述のように、ダイジェスター30に戻され、植菌基質42として作用する。
【0047】
図1に示されるような単一のダイジェスターを有する公知の嫌気性バイオガスプラントと比較して、本発明による嫌気性バイオガスプラントは、ダイジェスター中の組み合わされた消化作用基質の平均保持時間(すなわち、滞留時間)の有意な減少を可能にし、したがって、新しい消化作用基質の全体の処理量を増加させる。これは、以下の表1に示されるようなプロセスパラメータを用いて、特定の例を用いてさらに説明される。
【表1】
【0048】
図1に示す従来技術によるバイオガスプラントにおいて、総投入量130×10
3(kg/日)の結合された消化作用基質17をダイジェスター10に供給し、保持時間T=21日間で消化作用すると仮定する。全投入量の17は、100%の新しい消化作用する基質14及び30%の植菌基質16からなる。保持時間T=21日後、消化済の基質15の100%=100×10
3(kg/日)の主要部分18を嫌気性バイオガスプラントから回収することができ、30%=30×10
3(kg/日)の小部分16を消化作用チャンバーに戻して植菌基質として作用させる。これは、2,730×10
3(kg)のダイジェスター容量をもたらす。再循環された植菌基質含む結合した消化作用する基質については、これは27日の平均保持時間をもたらす。
【0049】
図2に示す従来技術のバイオガスプラントでは、30×10
3(kg/日)の新しい消化作用する基質22及び9×10
3(kg/日)の自己植菌基質を植菌ダイジェスター20に供給し、そこで21日間で消化される。植菌ダイジェスター20から回収された39×10
3(kg/日)の消化済の基質23を2つの部分に分け、9×10
3(kg/日)の少量部分24を植菌ダイジェスター20に戻し、30×10
3(kg/日)のより多い部分25を高速ダイジェスター21に導入し、そこで後者を100×10
3(kg/日)の新しい消化作用する基質22と混合する。したがって、
図2の高速ダイジェスター21には130×10
3(kg/日)の総投入量が供給され、投入量は7日間の短縮された保持時間で消化される。両方のダイジェスター中の全ての消化作用する基質について、これは、13日の平均保持時間を生じる。
【0050】
図3に示すように、本発明によれば、嫌気性バイオガスプラントのダイジェスター30には、新しい消化作用する基質40を100×10
3(kg/日)、植菌基質42を30×10
3(kg/日)を含む、総投入量130×10
3(kg/日)の結合した消化作用する基質44が供給される。混合された消化作用する基質44の100%の大部分45=100×10
3(kg/日)は、7日の短縮された保持時間tの間に消化され、その後、主出口33を通って取り除かれる。合わせた消化作用する基質44の30%=30×10
3(kg/日)の少量部分41をさらに14日間、すなわち21日間の合計で長い保持時間Tで消化された後、追加の出口35を介して取り出し、植菌基質42としてダイジェスター30に再循環させる。全ての消化作用する基質、すなわち、新しい消化作用する基質40及び植菌基質42を合わせると、平均保持時間は13日となる。
【0051】
27日の平均保持時間を必要とする
図1に示される嫌気性バイオガスプラントと比較して、本発明のバイオガスプラントは、(同じ量の投入材料について)13日の平均保持時間しか有さない。
図2及び
図3に示すバイオガスプラントは、同じ平均保持時間を有する。
【0052】
したがって、すべてのダイジェスターが同じダイジェスター容量/サイズを有すると仮定すると、
図2及び3に示される嫌気性バイオガスプラントの全体の処理量は、
図1に示されるものと比較して実質的に増加する。
【0053】
図2に示すバイオガスプラント及び
図3に示す本発明のバイオガスプラントは同じ平均保持時間を有するが、本発明のバイオガスプラントは1つのダイジェスターのみを必要とし、建築及び維持費を削減するという利点を有する。
なお、本発明の態様(構成)として以下に示すものがある。
[態様1]
新しい有機の消化作用基質(40)を消化作用するためのダイジェスター(30)を含む嫌気性バイオガスプラントであって、
前記ダイジェスター(30)は、
第1の端部に主要な入口(31)を有する入口部(32)と、
第2の反対側の端部にある後部(36)と、
入口部(32)と後部(36)との間に配置された中間部(34)と、
前記第1の端部から前記第2の反対側の端部までの方向に延在するシャフトを有し、前記ダイジェスター(30)内で消化作用基質(44)を混合するための少なくとも1つの撹拌アームを有する、撹拌ユニットと、を備え、
前記ダイジェスター(30)の中間部(34)は、短縮された保持時間tの後に消化作用基質の大部分(45)を取り除くための主出口(33)を有し、
前記後部(36)は、植菌保持時間T後に消化作用基質の少量部分(41)を取り除くための追加の出口(35)を有し、
前記ダイジェスター(30)は、追加の出口(35)から前記ダイジェスター(30)の入口部(32)に戻る別個の戻りライン(37)を有し、前記後部(36)から取り除かれた消化作用基質の少量部分(41)を前記ダイジェスター(30)の入口部(32)に直接戻す、嫌気性バイオガスプラント。
[態様2]
前記ダイジェスター(30)は、好ましくは本質的に一定の直径を有する、細長い水平方向のタンクである、態様1に記載の嫌気性バイオガスプラント。
[態様3]
前記撹拌ユニットは、前記入口部(32)から前記中間部(34)を通って前記ダイジェスター(30)の前記後部(36)内に延在する、態様1又は2に記載の嫌気性バイオガスプラント。
[態様4]
攪拌ユニットの前記シャフトは、自由端にブレードを備える多数の攪拌アームを有する、態様1~3の何れか一項に記載の嫌気性バイオガスプラント。
[態様5]
前記ダイジェスター(30)は、プラグフローモードで運転される、態様1~4の何れか一項に記載の嫌気性バイオガスプラント。
[態様6]
前記別個の戻りライン(37)は、専ら前記後部(36)を前記入口部(32)に接続する、態様1~5の何れか一項に記載の嫌気性バイオガスプラント。
[態様7]
2つ以上のダイジェスター(30)を有し、該2つ以上のダイジェスター(30)の全ては前記ダイジェスターと同じ型式のものである、態様1~6の何れか一項に記載の嫌気性バイオガスプラント。
[態様8]
少なくとも1つのダイジェスター(30)を有する嫌気性バイオガスプラントで使用するための消化方法であって、
前記ダイジェスター(30)は、
第1の端部にある主要な入口(31)を有する入口部(32)と、
第2の反対側の端部にある後部(36)と、
前記入口部(32)と前記後部(36)との間に配置された中間部(34)と
前記中間部(34)からの主出口(33)と、
前記後部(36)から追加の出口(35)と、
前記追加の出口(35)から前記ダイジェスター(30)の入口部(32)に直接戻る別個の戻りライン(37)と、
前記ダイジェスター(30)内で消化作用基質(44)を混合するための少なくとも1つの撹拌アームを有する撹拌ユニットと、を備え、
前記方法は、以下のステップ、すなわち、
a)新しい消化作用基質(40)を前記入口(31)を通して前記ダイジェスター(30)に供給するステップと、
b)植菌保持時間T後に、前記ダイジェスター(30)の前記後部(36)から前記追加の出口(35)を介して消化作用基質の少量部分(41)を取り除くステップと、
c)前記戻りライン(37)を介して、植菌基質(42)として作用させるために消化作用基質の少量部分(41)を直接的にダイジェスター(30)の入口部(32)に戻すステップと、
d)前記植菌基質(42)を新しい消化作用基質(40)と混合して、結合し消化作用基質(44)を提供するステップと、
e)短縮された保持時間tの後に、前記主出口(33)を介して前記ダイジェスター(30)の中間部(34)から結合された消化作用基質(44)のより大部分(45)を取り除くステップと、を含み、
結合した消化作用基質(44)の大部分(45)は、植菌基質(42)として戻される結合した消化作用基質(44)の少量部分(41)よりも大きく、短縮された保持時間tは植菌保持時間Tよりも短い、消化方法。
[態様9]
前記後部(36)から取り除かれた消化作用基質の少量部分(41)は、さらに処理されることなく、前記ダイジェスター(30)の入口部(32)に直接戻される、態様8に記載の消化方法。
[態様10]
前記後部(36)から取り除かれる消化作用基質の少量部分(41)は、前記ダイジェスターに供給される新しい消化作用基質(40)の量の50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは約30%以下である、態様8又は9に記載の消化方法。
[態様11]
前記短縮された保持時間tは、前記植菌保持時間Tの50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは約3分の1である、態様1~10の何れか一項に記載の消化方法。
[態様12]
前記短縮された保持時間tは、少なくとも2日、より好ましくは少なくとも4日及び10日未満、最も好ましくは5~8日未満である、態様1~11の何れか一項に記載の消化方法。
[態様13]
前記植菌保持時間Tは、少なくとも7日間、より好ましくは少なくとも14日間、最も好ましくは約21日間である、態様1~12の何れか一項に記載の消化方法。
[態様14]
消化作用基質(44)の少量部分(41)の前記ダイジェスター(30)からの取り出し、及びダイジェスター(30)への戻しは、連続的な様式で、又は一定の時間隔で行われる、態様10~13の何れか一項に記載の消化方法。
[態様15]
消化作用基質(44)の少量部分(41)の前記ダイジェスター(30)からの取り出し、及びダイジェスター(30)への戻しは、前記ダイジェスター(30)内で測定された少なくとも1つの条件パラメータに依存して起こり、該少なくとも1つの条件パラメータは、pH、基質の体積、温度、揮発性脂肪酸の含有量、遊離アンモニア濃度及びガス分圧からなる群から選択される、態様10~13の何れか一項に記載の消化方法。