(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】ヒドロキシカルボン酸のポリオールベースのエステル、特にポリグリセロールエステルの製造方法。
(51)【国際特許分類】
C07C 67/08 20060101AFI20240325BHJP
C07C 69/675 20060101ALI20240325BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240325BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/675
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021573408
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2019065271
(87)【国際公開番号】W WO2020249196
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】323005511
【氏名又は名称】ケトリピックス セラポーティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】ロッホマン、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ライアー、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーア、ミヒャエル
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-519180(JP,A)
【文献】特表2022-518711(JP,A)
【文献】特表2022-536900(JP,A)
【文献】特表2022-536686(JP,A)
【文献】特表2020-504134(JP,A)
【文献】国際公開第2004/108740(WO,A1)
【文献】国際公開第95/009144(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/
C07C 69/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセロールエステルがC
5-C
34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造する方法であって、
・変数pが1~4の整数を表し;
・それぞれお互いに独立した、同一または異なるラジカルR
4
が、水素、一般式(I’)CH
3
-C(O)-CH
2
-C(O)-の3-オキソ酪酸ラジカルまたはラジカルR
2
を表し、前記ラジカルR
2
が、タイプ線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和(C
4
-C
33
-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すこと、ただし、少なくとも1つのラジカルR
1
が水素を表さないことを条件とし、且つ、少なくとも1つのラジカルR
1
が、一般式(I’)CH
3
-C(O)-CH
2
-C(O)-の3-オキソ酪酸ラジカルを表すことを条件とする一般式(Ib)
R
1
O-CH
2
-CH(OR
1
)-CH
2
-[O-CH
2
-CH(OR
1
)-CH
2
]
p
-OR
1
(Ib)
のC
5
-C
34
-脂肪酸官能化3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステル(I)が、
水素、水素化物およびアルコールならびにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの還元剤によって、
アセチル官能基CH
3
-C(O)-のケト基-C(O)-にラジカルR
1
として位置する前記一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルの選択的還元が実行され、
その結果、一般式(II’)
CH
3
-CH(OH)-CH
2
-C(O)O- (II’)
の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルを生じさせること、
前記還元は、一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH
3
-C(O)-のすべてのケト基-C(O)-の一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルへの完全な還元として、または、一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH
3
-C(O)-のすべてではないケト基-C(O)-が、一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルに変換される不完全な還元として、のいずれかで実行されること、
前記還元は、自己触媒的にまたは触媒の存在下で実行されること;
これによって、反応生成物として、一般式(IIb)
R
5O-CH
2-CH(OR
5)-CH
2-[O-CH
2-CH(OR
5)-CH
2]
p-OR
5 (IIb)
のC
5-C
34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステル(II)が得られること、
一般式(IIb)において、
・ 変数pは、1~4の整数を表すものであること、
・ ラジカルR
5は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、ラジカルR
2を表すこと、ここでラジカルR
2が、タイプ線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和(C
4-C
33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すものであること、少なくとも1つのラジカルR
6が、水素または前記ラジカルR
2を表すこと、
ただし、少なくとも1つのラジカルR
5が水素を表さないことを条件とすること、および、少なくとも1つのラジカルR
5が、ラジカルCH
3-CH(OR
6)-CH
2-C(O)-を表すことを条件とすること;
ただし、還元によって得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数および位置に対応することを条件とするものであることを特徴とする方法。
【請求項2】
還元剤は、水素、無機水素化物およびC
1-C
4-アルコール並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
還元は、自己触媒的にまたは触媒の存在下において実行されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
還元は、触媒の存在下において実行されること;
特に、触媒の存在下で還元を実行する場合、触媒は還元が実行された後にリサイクルされること;および/または、
前記触媒が、酵素、金属または金属化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
還元剤は、一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH
3-C(O)-のケト基-C(O)-に基づいたモル量において、等モル量~200モル%過剰の範囲内において使用されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
還元は、反応生成物が、少なくとも1つのアセチル官能基CH
3-C(O)-を有するように実行されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、さらにステップ(i)および(ii)の少なくとも1つを具備すること:
(i) 還元が実行された後に反応生成物(II)に存在する
ヒドロキシル基が、エステル化を介して少なくとも部分的に官能化されること、
(ii) 還元が実行された後に反応生成物(II)に存在するエステル基が、部分的にエステル交換されること;
エステル化およびエステル交換が、遊離形態のまたはそのエステルもしくは無水物の形態のC
5-C
34-脂肪酸によって、実行されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケト体および関連する代謝ならびに関連する疾患の治療の分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造する方法並びにこのようにして得られた、またはこのようにして製造された反応生成物(すなわち、好ましくはエナンチオマー的に濃縮された形またはエナンチオマー的に純粋な形の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル)およびそれらの官能化された誘導体に関するものであり、同様に、特に医薬品や薬剤などの医薬組成物におけるそれらの使用、または、食品および/または食品生成物への使用、およびそれらのさらなる用途または使用に関するものである。
【0003】
さらに、本発明は、本発明の方法に従って得られたまたは製造された反応生成物(すなわち、好ましくはエナンチオマー的に濃縮された形またはエナンチオマー的に純粋な形の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル)を含む医薬組成物、特に医薬品または薬剤に関するものである。
【0004】
最後に、本発明は、本発明の方法によって取得されまたは製造される反応生成物(すなわち、好ましくはエナンチオマー的に濃縮された形またはエナンチオマー的に純粋な形の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル)を含む食品および/または食品生成物、特に食品サプリメント、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、ならびに強度および/または耐久性スポーツサプリメントならびにそれらの用途または使用に関する。
【背景技術】
【0005】
本発明に従って使用される、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸が官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸が官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルという用語は、特にヒドロキシル基が任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された化合物を意味する(すなわち、ポリオールのおよび/または3-ヒドロキシ酪酸のヒドロキシル基の水素原子が、アシル基によって、すなわち特にR=(C5-C34-アルキル)-C(O)-、好ましくはR=(C8-C34-アルキル)-C(O)-であるR=アシルの基-CH(OR)-によって、任意に置換される)。その結果、本発明による反応生成物(すなわち、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル)は、ポリオールおよび/または3-ヒドロキシ酪酸もしくは3-ヒドロキシ酪酸の遊離ヒドロキシル基に対して任意にアシル化を受けることができる(すなわち、当該エステルの3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの3位のアシル化)。
【0006】
人間のエネルギー代謝において、ブドウ糖は短期的に利用可能なエネルギー担体であり、水と二酸化炭素を放出することによってミトコンドリア内でエネルギーに代謝される。肝臓のグリコーゲン貯蔵は、夜の睡眠期間中にすでに空になる。しかしながら、特に人間の中枢神経系(CNS)と心臓は、永続的なエネルギー供給を必要とする。
【0007】
主に中枢神経系で利用できるブドウ糖の生理学的代替物は、いわゆるケト体(同義語でケトン体とも呼ばれる)である。
【0008】
ケト体という用語は、特に3つの化合物の総称であり、主に異化代謝状態(空腹、減量食、低炭水化物食など)で形成され、ケトーシスを生じるものである。ケト体という用語には、特に3つの化合物、アセトアセテート(同義語でアセタセテートまたは3-オキソ酪酸とも呼ばれる)およびアセトン並びに3-ヒドロキシ酪酸(以下、ベータ-ヒドロキシ酪酸またはBHBまたは3-BHBとも呼ばれる)またはその塩(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸塩またはベータヒドロ酪酸塩)を含むものであり、ここで、後者は前述の3つの化合物の中で最も重要なものである。3-ヒドロキシ酪酸またはその塩は、(R)構成されたエナンチオマー,すなわち(R)3-ヒドロキシ酪酸(3位にキラリティーの中心を強調するために,同義語的に(3R)-3-ヒドロキシ酪酸とも呼ばれる)またはその塩として生理的に存在する。
【0009】
これらのケト体はまた、断食時または飢餓の間に脂肪分解によって体内に蓄積された脂質から生理学的に大量に提供され、エネルギー源のグルコースとほぼ完全に置き換えられる。
【0010】
ケト体は、ベータ酸化に由来するアセチル補酵素A(=アセチル-CoA)から肝臓において形成される;それらは、人体においてアセチル補酵素Aの輸送可能な形を示している。しかし、ケト体を利用するためには、脳と筋肉は、ケト体をアセチル補酵素Aに戻すために要求される酵素を発現させることに最初に適応する必要がある。特に空腹時には、ケト体は、著しい量のエネルギー生産に貢献する。たとえば、しばらくすると、脳は1日のブドウ糖量の3分の1しか摂取できなくなる。
【0011】
生理学的に、ケト体は、脂肪酸分解の通常の中間生成物であるアセチル補酵素Aの形の活性化酢酸の2つの分子から合成され、前記中間生成物は、アセチル補酵素A単体と酵素HMG-CoAシンターゼを使用して、中間生成物3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA(HMG-CoA)に延出し、最後にHMG-CoA-リアーゼがアセト酢酸を切断する。これらの3つのステップは、肝臓のミトコンドリア(リネンサイクル)でのみ行われ、3-ヒドロキシ酪酸は最終的に酵素D-ベータ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼによってサイトゾルにおいて形成される。HMG-CoAは、アミノ酸ロイシンの分解の最終生成物でもあると同時に、アセトアセテートは、アミノ酸フェニルアラニンとチロシンの分解中に形成される。
【0012】
自発的な脱炭酸によりアセトンからアセトアセテートが生成され、糖尿病患者やダイエット中の人の呼気に含まれることがある。体内でそれ以上利用することはできない。しかし、ケト体に含まれるアセトンの割合は少ない。
【0013】
したがって、アセト酢酸は、生理学的条件下で、生理学的に適切な形態の3-ヒドロキシ酪酸または3-ヒドロキシ酪酸塩に還元的に変換されるが、炭酸ガスは、重度のケトーシスやケトアシドーシス(1型糖尿病患者でインスリンを投与していない場合など)、尿中、呼気中に検出され、嗅覚的にも感知可能である。3-ヒドロキシ酪酸自体は、現在、ウエイトトレーニング分野でナトリウム、マグネシウム、カルシウムの塩として使用、販売されている。
【0014】
しかし、植物は、3-ヒドロキシ酪酸を生成せず、動物生体内の3-ヒドロキシ酪酸はケトーシス状態の痩せた動物の死体にしか発生しないため、進化的にヒトには知られていないかごく少量しかないため、3-ヒドロキシ酪酸は経口投与すると吐き気を催す。また、遊離酸やその塩の形の3-ヒドロキシ酪酸は非常に苦い味がし、激しい嘔吐や吐き気を催すことがある。
【0015】
さらに、患者、特に新生児だけでなく、成人でさえも、これらの化合物が腎臓に損傷を与える可能性があるため、3-ドロキシ酪酸の大量の塩に恒久的に耐えることができない。
【0016】
さらに、3-ヒドロキシ酪酸とその塩の血漿半減期は、たとえ数グラムを摂取したとしても、ケトーシスが約3~4時間の間でしか持続しないため、非常に短いこと、つまり患者が、特に夜間において、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩による治療の恩恵を継続的に受けることができないものである。代謝性疾患の場合、これは生命を脅かす状況につながる可能性がある。
【0017】
したがって、そのような代謝性疾患の場合、いわゆる中鎖トリグリセリド、いわゆるMCTが、現在ケト原性療法について使用される。すなわちカプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸の(すなわち飽和線形C6-,C8-,C10-脂肪酸の)代謝変換が意図される。
【0018】
しかし、基本的には、製薬および臨床の観点から、3-ヒドロキシ酪酸は、より効果的な医薬品-薬理学的目標分子であり、先行技術によれば、原則として多数の疾患(例えば、エネルギー代謝の機能不全に関連する疾患、特にケト体代謝、または認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患、脂肪代謝性疾患など)の治療に使用できるが、生理的適合性がないため使用できない。
【0019】
以下の表は、純粋に例示的なものであり、決して限定的なものではありませんが、有効成分である3-ヒドロキシ酪酸の潜在的な治療法や可能な適応症を示している。
【0020】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、特に人体または動物体の生理学的代謝において、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩への直接的または間接的なアクセスを生理学的に可能にする効果的な前駆体または代謝物を見つけることができることが、製薬および臨床の観点から望ましい。
【0022】
その結果、従来技術は、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の生理学的に適切な前駆体または代謝産物を見つけるという試みを欠いてはいない。しかしながら、これまでのところ、従来技術において効率的な化合物は見出されていない。また、そのような化合物へのアクセスは、先行技術によれば可能ではなく、または容易に可能ではない。
【0023】
したがって、本発明の根底にある課題は、3-ヒドロキシ酪酸(すなわち、ベータ-ヒドロキシ酪酸またはBHBまたは3-BHB)またはそれらの塩の生理学的に適切なまたは生理学的に適合性のある前駆体および/または代謝産物を生成するための効率的な方法の提供である。
【0024】
そのような方法は、特に、効率的な方法でアクセス可能な、特に大量に、そして大量の有毒な副産物なしに、それぞれのBHB前駆体および/またはBHB代謝物を製造しなくてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
全く意外な方法で、本出願人は、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが、ケト体3-ヒドロキシ酪酸またはその塩のための効率的かつ生理学的に有効なまたは生理学的に適合した前駆体および/または代謝物を表し、これに関連して、これらの化合物を製造するための効率的な方法を発見または開発することができ、これにより、これらの化合物への直接的かつ効果的な、特に経済的ならびに工業的に実現可能なアクセスが可能になることを発見した。
【0026】
上述の問題を解決するために、本発明は、本発明の第1の態様によれば、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸が官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸が官能化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造するための請求項1による方法を提案する。さらに、本発明の方法の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0027】
さらに、本発明は、本発明の第2の態様によれば、それぞれの請求項(請求項56)に記載の本発明の方法によって取得可能な反応生成物、または、それぞれの請求項(請求項57~72)に記載の3-オキソ酪酸(ベータ-オキソ酪酸、3-オキソブタン酸)の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、または、それぞれの請求項(請求項73)によってこれに関連して取得可能な3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された少なくとも2つ、好ましくは3つの異なるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルからなる混合物に関するものであり;さらに、本発明のこの態様の特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0028】
同様に、本発明は、本発明の第3の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項74)による医薬組成物、特に医薬品または薬剤に関するものであり;さらに、本発明のこの態様の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0029】
さらに、本発明は、本発明の第4の態様によれば、3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の発明的な反応生成物または発明的なポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、または少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのポリオールエステルの発明的な混合物に関するものである。3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの本発明の混合物であって、それぞれの独立した請求項(請求項76)に記載されたヒト体または動物体の疾患の予防および/または治療的治療に使用するためのものである。
【0030】
さらに、本発明は、第5の態様によれば、予防的および/または治療的処置のための、または、関連した独立した請求項(請求項77)による人体または動物体の疾患の予防および/または治療的処置のために医薬品を製造するために、3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の本発明の反応生成物の使用、または、3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのポリオールエステルの本発明の混合物の使用に関する。
【0031】
さらに、本発明は、本発明の第6の態様によれば、関連する独立請求項(請求項78)に記載された、飢餓、ダイエット、低炭水化物栄養などの異化代謝状態の予防および/または治療のための、あるいはその応用のための医薬品を製造するための、本発明の反応生成物、または3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、または、3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの本発明の混合物の使用に関する。
【0032】
さらに、本発明は、本発明の第7の態様によれば、関連する独立請求項(請求項79)による食品および/または食品生成物に関するものであり;さらに、本発明による食品および/または食品生成物の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0033】
さらに、本発明は、本発明の第8の態様によれば、関連する独立請求項(請求項81)による食品および/または食品生成物中における、3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の本発明の反応生成物または本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの使用、または、3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の少なくとも2つ、または少なくとも3つのポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの本発明の混合物の使用に関する;さらに、本発明による食品および/または食品の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0034】
最後に、本発明は、本発明の第9の態様によれば、関連する独立請求項(請求項115)による食品および/または食品中の本発明の反応生成物または3-オキソ酪酸(ベータ-オキソ酪酸、3-オキソブタン酸)の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたはそれらの混合物の使用に関する;さらに、本発明による使用の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、使用に関する関連する従属請求項の主題である。
【0035】
言うまでもなく、以下の特徴、実施形態、利点などは、繰り返しを回避する目的で本発明の一態様に関してのみ以下にリストされるが、当然、別個の言及を必要とせずに、本発明の他の態様にも適用される。
【0036】
さらに、本発明の個々の態様および実施形態はまた、本発明の他の態様および実施形態との任意の組み合わせ、特に、すべての後方参照から生じるため、特徴および実施形態の任意の組み合わせで開示されると見なされ、特許請求の範囲は、結果として生じるすべての組み合わせの可能性に関しても広範囲に開示されていると見なされることは言うまでもない。
【0037】
以下に提供されるすべての相対的または百分率の重量ベースのデータ、特に相対的な量または重量データに関して、本発明の範囲内において、これらは、特に以下に定義するように、すべての成分または含有物を含めて、それぞれ合計が最大100%または100重量%となるように、常に当業者によって選択されるべきであることにさらに留意されたい;しかしながら、これは当業者にとって自明である。
【0038】
また、当業者は、本発明の範囲を離れることなく、必要に応じて、下記する範囲指定から逸脱することができる。
【0039】
さらに、以下に指定されるすべての値またはパラメータなどは、原則として、標準化または明示的に指定された測定方法、または当業者によく知られている決定または測定方法を使用して決定または識別できることが適用される。
【0040】
これを述べた上で、本発明を以下により詳細に説明する。
【0041】
したがって、本発明の主題は、本発明の第1の態様によれば、3-オキソ酪酸(ベータ-オキソ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造するための方法であって、ポリオールエステルが、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化されるものであり、
一般式(I’)
CH3-C(O)-CH2-C(O)O- (I’)
の少なくとも1つのオキソブチレートラジカル(3-オキソ酪酸ラジカル)を有する、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルが、少なくとも1つの還元剤を用いて、アセチル官能基CH3-C(O)-のケト基-C(O)-に位置する一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルの好ましくは選択的に還元にさらされ、一般式(II’)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)O- (II’)
の3-ヒドロキシ酪酸ラジカル(3-ヒドロキシ酪酸ラジカル)が結果として生じ、
これによって、反応生成物として、任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られるものである。
【0042】
3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の生理学的に適合した前駆体および/または代謝物で、生理学的に適合しているため、医薬品または臨床用途でより大量に使用することもできることから、このようにして製造された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが効率的であることを、驚くべきことに本出願人は、発見した。
【0043】
本発明による製造方法によって効率的に入手可能な、3-ヒドロキシ酪酸の上述の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の生理学的および薬理学的に適切な代替品となる。
【0044】
従来の有機合成法による3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの製造は、3-ヒドロキシ酪酸が重合したり、その他の望ましくない副反応(脱水、分解など)を起こす傾向が強くなるため、複雑でコストがかかる。本発明の範囲内で、3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを、望ましくない副反応なしに製造できる効率的な製造方法を提供することができた。
【0045】
本発明の方法により、生理学的に無害な成分または反応物(出発化合物)から、無毒性の任意に官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを提供することが可能となる。得られた任意に官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、生理的に、特に胃および/または腸で分解され、有効成分または活性成分としての目的分子「3-ヒドロキシ酪酸」またはその塩を放出または生成することができる。
【0046】
また、前述の任意に官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、より長期間にわたって大量に経口投与(例えば1日量50g以上の投与)されても、互換性を確保するために許容できる味を有している。
【0047】
同様に、本発明による製造方法は、毒性不純物を含まない任意に官能化された3-オキソ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを提供することを可能にする。
【0048】
さらに、この方法は、特にキラル触媒を用いて、エナンチオ選択的に実施することも可能である。例えば、本発明によれば、すなわち(R)構成されたエナンチオマーを濃縮したり、経口投与(すなわち腎臓経由での排泄)の際に患者の腎臓系に負担をかけないように単独で製造されるために、製造方法は生物学的に関連する形態を許容する。しかし、原理的には、(S)-エナンチオマーを濃縮したり、単独で製造することも可能であり、特定の条件の下では有用である。
【0049】
さらに、任意のさらなる処理または精製工程を含む本発明による製造方法は、経済的に操作することができ、また大規模に実施することもできる。
【0050】
特に、本発明の製造方法は、入手しやすい出発化合物を使用し、さらに大規模に実施する場合でも、比較的簡単なプロセス管理を可能にする。
【0051】
それにもかかわらず、本発明によれば優れた収率が得られ、副生成物の生成が最小限に抑えられる(有意な量の副生成物が発生しない)か、回避される。
【0052】
従来の先行技術の製造方法とは対照的に、本発明による製造方法では、複雑な出発材料を使用せず、単一のステップのみを使用する。
【0053】
従来の先行技術の製造方法とは対照的に、出発材料は生理学的に適合性があり、さらには薬学的にも有効である。つまり、未反応の出発材料が最終製品に残っている可能性があっても、精製工程が全くあるいはほとんど必要ないことを意味する望むならば、簡単に排除が可能であっても)。特に、本発明による方法は、通常、溶媒の非存在下で、および/または溶媒を使用せずに実行される(すなわち、質量での反応として、あるいは物質での反応として、あるいはいわゆるバルク反応として);その結果、得られた反応生成物は溶媒で汚染されず、方法や反応を行った後に溶媒を除去して廃棄したり、コストやエネルギーのかかる方法でリサイクルしたりする必要がなく、さらに有害な副産物も生成されない。
【0054】
また、本発明による製造方法では、市販されている無毒性で薬理学的に適合する還元剤を使用している。
【0055】
特定の実施形態によれば、本発明による製造方法は、典型的には、3-ヒドロキシ酪酸の異なる任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの混合物、すなわち、3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つ、特に少なくとも3つの異なる任意官能化ポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの混合物を結果として生じる。結果として得られる生の反応生成物または生の混合物は、既存の方法によって、特に残存する出発化合物および/または存在する副生成物を除去することによって精製され、さらに、必要に応じて、公知の方法によって、特に蒸留および/またはクロマトグラフィーによって、分離されるものである(例えば、3-ヒドロキシ酪酸の個々の任意に官能化されたポリオールエステル、すなわちモノ-、ジ-、トリ-などの任意に官能化されたポリオールエステルへの分画、または、個々の任意に官能化されたポリオールエステル等の濃縮および枯渇部分を有する画分への分画など)。
【0056】
しかし、必要に応じて、本発明による製造方法を用いて、3-ヒドロキシ酪酸の純粋なまたは個々の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを、純粋なまたは個々の物質として製造することも可能である(例えば、使用される反応物に応じて)。
【0057】
さらに、本発明による製造方法では、反応、特に還元剤の量を制御することにより、目的とする部分的な還元(加水分解)が可能である。言い換えれば、必要に応じて、3-オキソ酪酸ラジカルまたはそこに含まれるケト基-C(O)-のうち、ある特定の、特に定義された割合のみで、3-ヒドロキシ酪酸ラジカルまたは対応するヒドロキシル官能-CH(OH)-に変換することができる。これにより、より一層のリタード効果を発揮する反応生成物を提供することができる。混合物中に3-オキソ酪酸ラジカルと3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの両方が存在するため、活性成分である3-ヒドロキシ酪酸の利用率や放出率が異なるものである。
【0058】
本発明による製造方法では、アセチル官能CH-C(O)-のケト基-C(O)-のみが、ヒドロキシル基CH(OH)-に選択的に還元され、すなわち副反応、特に転位、開裂、付加などは起こらない。
【0059】
従来の先行技術の製造方法とは対照的に、本発明による製造方法では、例えば3-ヒドロキシ酪酸とポリオールエステルの直接反応で起こるような3-ヒドロキシ酪酸の二量化は起こらない。
【0060】
全体として、本発明による方法は、このように単純かつ経済的または経済的であるため、大規模に運用することも可能である。
【0061】
言い換えれば、本発明はこのように、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造する方法に関するものであり、
ここで、一般式(I’)
CH3-C(O)-CH2-C(O)O- (I’)
の少なくとも1つの3-オキソブチレートラジカル(3-オキソ酪酸ラジカル)を含む任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルが、
少なくとも1つの還元剤によって、一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH3-C(O)-のケト基-C(O)-の好ましくは選択的な還元に付され、ヒドロキシル官能基-CH(OH)-を生じさせるものであり、
これによって、反応生成物として、任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られるものである。
【0062】
本発明に関連して、選択的還元という用語は、特に、上記に定義された一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH3-C(O)-のケト基-C(O)-の、上記に定義した一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのヒドロキシル基-CH(OH)-への還元としてのみ理解されるべきである。特に、この選択的還元の間、副反応、特に転位、開裂、付加などは起こらない。さらに、他の官能基(すなわち、前述のケト基以外の官能基)が還元されることもない。
【0063】
また、以下に詳しく説明するように、キラル触媒反応の過程で、反応生成物をエナンチオマー的に濃縮された形で、あるいは、好ましくはエナンチオマー的に純粋な形(例えば、少なくとも95%、特に少なくとも99%のエナンチオマー純度)で得ることができる(例えば、以下に説明する一般式(II’)に従った(R)構成されたエナンチオマーとして)。
【0064】
本発明による方法で使用できる還元剤は、広い範囲で変化させることができる。本発明によれば、還元剤は、水素、水素化物、特に無機水素化物およびアルコール、特にC1-C4-アルコールならびにそれらの混合物の群から選択されること、好ましくは水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水素化ホウ素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化アルミニウム、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびこれらの混合物の群から選択されること、好ましくは水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水素化ホウ素およびイソプロパノールの群から選択されることが好ましい。
【0065】
本発明では、還元は自己触媒的に行われてもよいし、触媒の存在下で行われてもよい。
【0066】
特に、本発明による方法では、触媒の存在下で還元を行う場合、還元が行われた後に触媒がリサイクルされることが好ましい。
【0067】
先に述べたように、本発明の製造方法の特定の実施形態によれば、還元を自己触媒的に行うことができる。
【0068】
還元が自己触媒的に行われる場合、還元剤は特に、水素化物、好ましくは無機水素化物、好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化ホウ素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化物および/またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化アルミニウム、より好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化ホウ素であることが好ましい。
【0069】
本発明製造方法の還元を水素化物で行う場合、2℃~30℃の範囲内、特に3℃~25℃の範囲内、好ましくは3℃~20℃の範囲内、好ましくは3℃~15℃の範囲内、より好ましくは3℃~12℃の範囲内の温度で還元を行うことが好ましい。
【0070】
本発明の特定の実施形態によれば、還元を水素化物で実行する場合、印加される圧力範囲は広い範囲で変化することができる。特に、還元を水素化物で行う場合、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で還元を行うことができる。
【0071】
還元剤として水素化物を使用する場合、水素化物の使用量は広い範囲で変動する。特に、水素化物は、任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸が官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルの量を基準にして、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、より好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲内の量において使用される。しかし、個々のケースや特定の用途では、本発明の範囲を離れることなく、上記の量から逸脱することが必要な場合もある。
【0072】
本発明の別の実施形態によれば、還元は触媒の存在下で行われてもよい。
【0073】
前述のように、触媒を使用する場合は、還元後にリサイクルすることが好ましい。
【0074】
本発明の製造方法における還元が触媒の存在下で行われる場合、触媒が、酵素および/または金属もしくは金属化合物、特に貴金属および遷移金属化合物の群から選択されると好ましい。
【0075】
これに関して、触媒は、脱水素酵素、特にアルコール脱水素酵素ならびにパラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよびニッケルをベースとする金属および/または金属化合物の群から選択されることが、特に好ましい。
【0076】
脱水素酵素は、水素アニオン(=H-)を分解して基質を酸化する酵素である。したがって、脱水素酵素は、水を分離するデヒドラターゼと混同するべきではない。脱水素酵素は、EC分類の酵素群のグループI(酸化還元酵素)に属する。電子と分割された水素は、NAD+やFADなどの補酵素に移動する。例えば、アルコール分解の際に肝臓でエタノールをアセトアルデヒド(エタナール)に変換する酵素は、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.1)であり、基質によって異なるデヒドロゲナーゼを区別することができる。アルコール脱水素酵素(ADH)は、アルコールが対応するアルデヒドまたはケトンになる反応と、その逆の反応(アルデヒドまたはケトンがアルコールになる)の両方を触媒する酵素である。この反応は酸化還元反応である。
【0077】
金属および/または金属化合物をベースにした発明的に特に適した触媒は、ウィルキンソン触媒であり、これは実験式C54H45ClP3Rhの均一系触媒である。これはロジウム錯体であり、水素化、ヒドロホルミル化、ヒドロシリル化、異性化に使用される。本発明に特に適した別の触媒は、ニッケル/アルミニウム合金の微細な粒からなる固体触媒であるレーニーニッケルである。
【0078】
上記に述べたように、本発明の製造方法の特定の実施形態によれば、還元は、触媒としての酵素の存在下で行われてもよい。
【0079】
好ましくは、酵素は、デヒドロゲナーゼ、特にアルコールデヒドロゲナーゼであることが好ましい。
【0080】
一般的な触媒の使用に関して前述したように、酵素を触媒として使用する場合には、還元が行われた後に酵素をリサイクルすることが好ましい。
【0081】
本発明の製造方法の還元が、触媒としての酵素の存在下で行われる場合、5℃~80℃の範囲内、特に10℃~65℃の範囲内、好ましくは10℃~50℃の範囲内、好ましくは15℃~40℃の範囲内、より好ましくは15℃~30℃の範囲内の温度で実行されることが好ましい。
【0082】
触媒としての酵素の存在下で還元を行う本発明のこの特定の実施形態に関して、還元は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で、酵素の存在下で実行されることが好ましい。
【0083】
それにもかかわらず、本発明の範囲を離れることなく、個々のケースまたは特定の用途において、上述の温度および圧力の範囲から逸脱することが必要な場合がある。
【0084】
酵素を触媒として使用する場合、酵素の使用量は広い範囲で変化させることができる。特に、酵素は、出発化合物の総量を基準にして、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲内の量で使用することができる。それにもかかわらず、本発明の範囲を離れることなく、個々のケースまたは特定の用途において、上述の量から逸脱することが必要な場合がある。これに関して、出発化合物は、任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)および還元剤として理解される。
【0085】
本発明の方法の別の実施形態によれば、還元は、触媒としての金属および/または金属化合物の存在下で行われてもよい。
【0086】
これに関連して、金属および/または金属化合物が、貴金属および遷移金属化合物から選択されると好ましい。
【0087】
前述のように、一般的な触媒の使用に関連して述べたように、金属および/または金属化合物を触媒として使用する場合、還元が行われた後に金属および/または金属化合物をリサイクルすることが好ましい。
【0088】
この特定の実施形態によれば、触媒は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよびニッケルをベースとする金属および/または金属化合物の群から、好ましくは白金、パラジウム、ニッケルおよびロジウムをベースとする金属および/または金属化合物の群から選択されることができる。
【0089】
触媒としての金属の存在下で本発明方法の還元を行う場合、適用される温度範囲は広い範囲で変化してもよい。特に、触媒としての金属の存在下での還元は、10℃~140℃の範囲内、特に15℃~135℃の範囲内、好ましくは20℃~130℃の範囲内、好ましくは25℃~125℃の範囲内、より好ましくは35℃~120℃の範囲内、さらに好ましくは40℃~110℃の範囲の温度で実行されるものである。
【0090】
本発明のこの特定の実施形態によれば、触媒としての金属の存在下で還元が行われる場合、印加される圧力範囲も広い範囲で変化することができる。特に、触媒としての金属の存在下で還元を行う場合、還元は、2バール~80バールの範囲内、特に5バール~70バールの範囲内、好ましくは10バール~60バールの範囲内、より好ましくは15バール~55バールの範囲内、さらに好ましくは20バール~50バールの範囲内の圧力で実行されることが好ましい。
【0091】
触媒として金属を使用する場合、金属の使用量も広い範囲で変化させることができる。特に、金属は、出発化合物の総量を基準にして、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲内の量で使用することができる。
【0092】
それにもかかわらず、本発明の範囲を離れることなく、個々のケースまたは特定の用途において、上述の量から逸脱することが必要な場合がある。
【0093】
本発明の一実施形態によれば、任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特にポリグリセロールエステルの還元は、触媒としてパラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、ニッケルに基づく金属および/または金属化合物の存在下で、還元剤としての水素を用いて実行することができる。
【0094】
本発明の代替的な実施形態によれば、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特にポリグリセロールエステルの還元は、触媒として脱水素酵素、特にアルコール脱水素酵素の存在下で、還元剤としてのC1-C4-アルコール、特にイソプロパノールを使って実行されることが可能である。
【0095】
本発明の別の代替的な実施形態によれば、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特にポリグリセロールエステルの還元は、還元剤としてアルカリ又はアルカリ土類金属の水素化ホウ素の存在下に自己触媒的に実行されることが可能である。
【0096】
本発明に関して、上記に定義されるような一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルにおけるアセチル官能化CH3-C(O)-のケト基-C(O)-をヒドロキシル基に還元することは、キラル及び/またはエナンチオ選択的に反応制御する手段によって実行される。
【0097】
これに関連して、還元がキラルおよび/またはエナンチオ選択的な触媒の存在下で行われる場合に特に好ましい。エナンチオ選択性触媒またはキラル触媒は、例えば、先に挙げたウィルキンソン触媒またはデヒドロゲナーゼ、特にアルコールデヒドロゲナーゼ、例えば市販のキラリドン(登録商標)Rを挙げることができる。
【0098】
つまり、これに関して、還元は、特にエナンチオ選択的なものである。
【0099】
特に、本発明による方法において、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、還元によって生成され続いて記号「*」によって指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)O-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に基づく(R)構成されたエナンチオマーの形で、エナンチオマー的に濃縮され、特にエナンチオマー的に純粋に形成されている。
【0100】
これに関して、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの(R)構成されたエナンチオマーが、還元によって生成され続いて記号「*」によって指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)O-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に基づいて形成される場合が特に好ましい。
【0101】
立体化学において、キラリティーとは、対称面上の鏡映のような単純な対称操作では自己像が得られない、分子内の原子の空間配置を指す言葉である。キラリティー中心(同義語でステレオセンターとも呼ばれる)とは、鏡像配置と一致させることができないような空間配置の置換基を持つ分子内の点(特に原子)のことである。互いに鏡像である分子をエナンチオマーと呼び、それぞれの化合物をキラルと呼ぶ。本発明では、一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心は、ヒドロキシル基を置換基として持つ3位のC原子に位置している。
【0102】
本発明に関連して、「エナンチオマー的に濃縮された」とは、反応生成物中に少なくとも90%、特に少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、特により好ましくは少なくとも98%、さらに好ましくは少なくとも99%のエナンチオマーが存在することを意味する。さらに、本発明に関連して、エナンチオマー的に純粋とは、反応生成物中にエナンチオマーが本質的に100%存在することと理解されるべきである。
【0103】
しかしながら、本発明によれば、代替の実施形態または手順によれば、上記に定義される一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカル中のアセチル官能基CH3-C(O)-のケト基-C(O)-のヒドロキシル基への還元は、非キラルおよび/または非異性選択的反応制御によって実行されることが可能である。
【0104】
この場合、還元は、非キラルおよび/または非エナンチオ選択的な触媒の存在下で行われると有利である。このような触媒は、例えば、先に述べたラネーニッケルまたは水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)である。
【0105】
この代替実施形態によれば、特に、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルのラセミ体(ラセミ混合物)は、それぞれ還元によって生じる上記に定義される上記一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に基づいて形成される。
【0106】
この実施形態によれば、ラセミの任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、特に任意にC5-C34-脂肪酸官能化され、好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に(R)/(S)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、それぞれ還元によって生じる上記に定義される一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に基づいて形成される。
【0107】
本発明の特定の実施形態によれば、還元は、上記に定義される一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH3-C(O)-の全てのケト基-C(O)-の完全な還元として実行され、上記に定義される一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルにすることができる。したがって、この実施形態によれば、還元は、上記に定義される一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH3-C(O)-のすべてのケト基-C(O)-が、上記に定義される一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルに変換するように実行される。
【0108】
これに関連して、反応生成物として、得られる任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが、いかなるアセチル官能基CH3-C(O)-も含まないことが好ましい。
【0109】
この際、一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの還元されるべきケト基に基づいて、少なくとも化学量論量の還元剤が使用される場合が、本発明によれば好ましい。
【0110】
プロセスの経済性およびプロセスシーケンスの最適化を、特に副産物の最小化に関して考慮すると、還元剤が、一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH3-C(O)-のケト基-C(O)-に基づいた等モル量~200モル%過剰の範囲内、特に等モル量~150モル%過剰の範囲内、好ましくは等モル量~100モル%過剰の範囲内のモル量で使用される場合が、有利である。
【0111】
同様に、プロセス経済性およびプロセスシークエンスの最適化を、特に副産物の最小化に関して考慮すると、一方で還元剤、他方で官能されるべき任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)が、1:1~10:1の範囲内、特に2:1~8:1の範囲内、好ましくは3:1~6:1の範囲内の還元剤/上記に定義したような一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル基CH3-C(O)-のケト基-C(O)-のモル比において、使用される場合が、有利である。
【0112】
特に任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリエステル(I)の形の残留反応物が、得られる還元生成物に存在しないことから、このため純粋な反応物を得るためのコストおよびエネルギー集約型の精製が必要ないことを理由として、このような完全な還元は、特に有利である。
【0113】
本発明の代替的な実施形態によれば、還元は、上記に定義される一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH3-C(O)-のすべてのケト基-C(O)-の上記に定義される一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルへの不完全な還元として実行されることが好ましい。したがって、この実施形態によれば、還元は、上記に定義される一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH3-C(O)-のすべてのケト基-C(O)-が、上記に定義される一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルに転換しないように実行されることが好ましい。
【0114】
さらに、これに関連して、反応生成物が少なくとも1つのアセチル官能基CH3-C(O)-からなるように、および/または、反応生成物が上記に定義したような一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルからなるように還元が実行されることが好ましい。
【0115】
これに関連して、還元剤が、一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルのアセチル官能基CH3-C(O)-のケト基-C(O)-に対して、等モル量以下のモル量においておよび/または準化学量論的な量において使用される場合が、好ましい。
【0116】
言い換えれば、この代替的な実施形態によれば、還元は、上記に定義される少なくとも1つの還元剤によって、準化学量論的に実施される;この場合、準化学量論的にとは、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリギルセロールエステルが、還元剤のモル過剰で使用され、または、モル欠乏(すなわち、いわばモル不足)で使用されるので、上記に定義した一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの全てのケト基が、上記に定義した一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルに存在するようにヒドロキシル基へ変換されないようにすることを意味するものである。
【0117】
一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルと一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの両方が存在することは、すなわち種々のラジカルの異なる分解速度によって、反応生成物が遅延効果を示し、活性成分3-ヒドロキシ酪酸の入手または放出の異なる比率が存在することを意味するので、このような不完全な還元は特に有利となるものであり、これによって、3-ヒドロキシ酪酸による徐放性治療が可能になるものである。
【0118】
本発明による方法の別の特定の実施形態によれば、還元が行われた後に、得られた反応生成物を分画することができ、特に蒸留によって分画することができる。
【0119】
また、本発明に関連して、未反応の出発化合物が反応生成物から分離され、その後リサイクルされることが好ましい。これに関連して、出発化合物は、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステル、および本発明によって使用される任意の還元剤である。
【0120】
出発化合物として使用される任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルに関して、それが一般式(Ia)
(R1O)m-(X)-(OR1)n (Ia)
に対応することが特に好ましい。
ここで、一般式(Ia)において、
・ Xは、特に3~21個の炭素原子、好ましくは4~21個の炭素原子を有するとともに任意に1~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC3-C21-アルキルラジカル、好ましくはC4-C21-アルキルラジカルまたはC3-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC3-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される有機ラジカル、好ましくは飽和有機ラジカルを表すこと、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立しており、1~10の整数を表すものであること、
・ ラジカルR1は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、ラジカルCH3-C(O)-CH2-C(O)-、または、線形(直鎖)又は分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表わすラジカルR2を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR1、特に少なくとも2つのラジカルR1が水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR1、特に少なくとも2つのラジカルR1が、ラジカルCH3-C(O)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであり;
特に、基R1O-がラジカルXの任意の位置にあり、好ましくは少なくとも1つの基R1O-が末端であること。
【0121】
出発化合物として使用される任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルが、一般式(Ib)
R1O-CH2-CH(OR1)-CH2-[O-CH2-CH(OR1)-CH2]p-OR1 (Ib)
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(Ib)において、
・ 変数pが、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表すものであること、
・ラジカルR1が、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、CH3-C(O)-CH2-C(O)-、または、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表わすラジカルR2を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR1、特に少なくとも2つのラジカルR1が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR1、特に少なくとも2つのラジカルR1が、ラジカルCH3-C(O)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものである。
【0122】
出発化合物として使用される任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(Ic)
R1O-CH2-CH(OR1)-CH2-O-CH2-CH(OR1)-CH2-OR1 (Ic)
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(Ic)において、ラジカルR1は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、CH3-C(O)-CH2-C(O)-、または、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表わすラジカルR2を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR1、特に少なくとも2つのラジカルR2が水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR1、特に少なくとも2つのラジカルR1が、ラジカルCH3-C(O)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものである。
【0123】
出発化合物として使用される任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルが、一般式(Id)
R1O-CH2-CH(OR1)-CH2-OR1 (Id)
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(Id)において、ラジカルR1は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、CH3-C(O)-CH2-C(O)-、または、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表わすラジカルR2を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR1、特に少なくとも2つのラジカルR2が水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR1、特に少なくとも2つのラジカルR1が、ラジカルCH3-C(O)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものである。
【0124】
出発化合物として使用される任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルが、合成経路(A)によって取得可能であり、および/または、取得されることが好ましいものである。
ここで、合成経路(A)によれば、第1の方法段階において、
ラジカルR3が、C1-C4-アルキル、特にメチルまたはエチル、好ましくはエチルを表す一般式(III)
CH3-C(O)-CH2-C(O)OR3 (III)
の少なくとも1つの化合物が、少なくとも2つのヒドロキシル基(OH基)、特にポリグリセロールを有する少なくとも1つのポリオール(IV)と反応し、
任意に第2の方法段階がそれに続き、第2の方法段階において、特に3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルが官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化される場合において、第2の方法段階が、
(i) 少なくとも1つのカルボン酸および/またはそのエステルもしくは無水物によって、特に少なくとも1つの脂肪酸および/またはそのエステルもしくは無水物によって、好ましくは少なくとも1つのC5-C34-脂肪酸および/またはそのエステルもしくは無水物によって、特に少なくとも1つのC8-C34-脂肪酸および/またはそのエステルもしくは無水物によって、まだ存在するヒドロキシル基の少なくとも一部を官能化し、特に少なくとも一部をエステル化すること、および/または、
(ii) 少なくとも1つのカルボン酸および/またはそのエステルによって、特に少なくとも1つの脂肪酸および/またはそのエステルによって、好ましくは少なくとも1つのC5-C34-脂肪酸および/またはそのエステルによって、より好ましくは少なくとも1つのC8-C34-脂肪酸および/またはそのエステルによって、第1の方法段階で導入されたエステル基の部分的エステル交換、を有するものである。
【0125】
同様に、上記に定義されるように、出発化合物として使用される3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)が、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された形で存在する場合、出発化合物として用いられる、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)、特に3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルが、以下の2つの合成経路(A)および(B)の1つによって取得可能であり、及び/または、取得されることが好ましい。
(A) (第1の)合成経路(A)によれば、まず、第1の方法段階において、ラジカルR3が、C1-C4-アルキル、特にメチルまたはエチル、好ましくはエチルを表す一般式(III)
CH3-C(O)-CH2-C(O)OR3 (III)
の少なくとも1つの化合物が、
少なくとも2つのヒドロキシル基(OH基)、特にポリグリセロールを有する少なくとも1つのポリオール(IV)と反応され、
それに続く第2の方法段階において、前記第2の方法段階が、
(i) 少なくとも1つのカルボン酸および/またはそのエステルもしくは無水物によって、特に少なくとも1つの脂肪酸および/またはそのエステルもしくは無水物によって、好ましくは少なくとも1つのC5-C34-脂肪酸および/またはそのエステルもしくは無水物によって、特に少なくとも1つのC8-C34-脂肪酸および/またはそのエステルもしくは無水物によって、まだ存在するヒドロキシル基の少なくとも一部の官能化、特に少なくとも一部のエステル化、および/または、
(ii) 少なくとも1つのカルボン酸および/またはそのエステルによって、特に少なくとも1つの脂肪酸および/またはそのエステルによって、好ましくは少なくとも1つのC5-C34-脂肪酸および/またはそのエステルによって、特に少なくとも1つのC8-C34-脂肪酸および/またはそのエステルによって、第1の方法段階で導入されたエステル基の部分的エステル交換、を有するものであり、
または、
(B) (第2の、(A)に代わる)合成経路(B)によれば、まず第1の方法段階において、少なくとも2つのヒドロキシル基(OH基)を含む少なくとも1つのポリオール(IV)、特にポリグリセロールが、
少なくとも1つのカルボン酸および/またはそのエステルもしくは無水物と、特に少なくとも1つの脂肪酸および/またはそのエステルもしくは無水物と、好ましくは少なくとも1つのC5-C34-脂肪酸および/またはそのエステルもしくは無水物と、特に少なくとも1つのC8-C34-脂肪酸および/またはそのエステルもしくは無水物と反応されるものであり、
それに続く第2の方法段階において、第2の方法段階が、
(i) 上記に定義される一般式(III)の化合物によって、まだ存在するヒドロキシル基の少なくとも部分的なエステル化、および/または、
(ii) 上記に定義される一般式(III)の化合物によって、第1の方法段階で導入されたエステル基の部分的なエステル交換、を有すること。
【0126】
本発明による方法において使用されるポリオール(IV)に関して、ポリオール(IV)が一般式(IVa)
(HO)m-(X)-(OH)n (IVa)
に対応するものである。
ここで、一般式(IVa)において、
・ Xは、特に3~21個の炭素原子、好ましくは4~21個の炭素原子を有するともに任意に1~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC3-C21-アルキルラジカル、好ましくはC4-C21-アルキルラジカルまたはC3-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC3-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される有機ラジカル、好ましくは飽和有機ラジカルを表すものであること、
・ 変数mおよびnが、それぞれお互いに独立したものであり、整数1~10を表すものであること;
特にポリオール(IV)のヒドロキシル基は、ラジカルXの任意の位置にあり、好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル基が末端および/または一級ヒドロキシル基であること。
【0127】
さらに、ポリオール(IV)が、一般式(IVb)
HO-CH2-CH(OH)-CH2-[O-CH2-CH(OH)-CH2]p-OH (IVb)
のポリグリセロールである場合も好ましい。
ここで、一般式(IVb)において、変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1であること。
【0128】
本発明の方法によれば、ポリオール(IV)が、
一般式(IVc)
HO-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-OH (IVc)
のポリグリセロールであることが好ましい。
【0129】
さらに、本発明の方法によれば、ポリオール(IV)がプロパン-1,2,3-トリオール(グリセロール)でないことが提供されることが好ましい。
【0130】
あるいは、本発明の方法によれば、ポリオール(IV)がプロパン-1,2,3-トリオール(グリセロール)であることが提供されることが好ましい。
【0131】
さらに、本発明の方法によれば、ポリオール(IV)が、アルカンジオール、特にC3-C21-アルカンジオール、好ましくはC4-C21-アルカンジオールから選択され、より好ましくは線形または分枝状のアルカンジオール、特に線形または分枝状のC3-C21-アルカンジオール、好ましくはC4-C21-アルカンジオールから選択され、さらに線形のC3-C21-アルカンジオール、好ましくはC4-C21-アルカンジオール、さらに好ましくは少なくとも一つの末端および/または一級ヒドロキシル基を有する線形のC3-C21-アルカンジオール、特にC4-C21-アルカンジオールから選択され、さらに好ましくはペンタンジオール、特に1,2-ペンタンジオールから選択されることが提供されることが好ましい。
【0132】
本発明による方法において、カルボン酸および/またはそのエステル、好ましくは脂肪酸および/または脂肪酸エステルが、一般式(V)
R2-O-R4 (V)
のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルである場合が好ましい。
ここで、一般式(V)において、
・ラジカルR2は、線形(直鎖)又は分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すこと、
・ ラジカルR4は、水素またはC1-C4-アルキル、特に水素、メチルまたはエチル、より好ましくは水素を表すこと。
【0133】
さらに、本発明による方法では、カルボン酸無水物、好ましくは脂肪酸無水物が、一般式(VI)
R2-O-R2 (VI)
のカルボン酸無水物であることが好ましい。
ここで、一般式(VI)において、ラジカルR2は、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すこと。
【0134】
還元が行われた後、反応生成物(II)中にまだ存在するヒドロキシル基は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、官能化され、特にエステル化されるものである。
【0135】
本発明による製造方法の特定の実施形態によれば、還元に続いて、まだ存在するヒドロキシル基の部分的、特に完全な官能化、特にエステル化が実行されることができる。
【0136】
特に、還元が行われた後の反応生成物(II)中に存在するエステル基、特に本明細書で定義した一般式(II’)による3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの形で、部分的にエステル交換することが本発明に係る製造方法において提供され流ことが好ましい。
【0137】
本発明によれば、還元に続いて、本明細書で定義したように、特に一般式(II’)による3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの形で存在するエステル基を部分的にエステル交換することが、特に提供される。
【0138】
これに関連して、官能化および/またはエステル交換が、上記に定義されたような、特に遊離形態でまたはそのエステルもしくは無水物の形の脂肪酸、特にC5-C34-脂肪酸、好ましくはC8-C34-脂肪酸によって実行される場合が、特に好ましい。
【0139】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、特に遊離の形のまたはそのエステルもしくは無水物の形の脂肪酸、特にC5-C34-脂肪酸、好ましくはC8-C34-脂肪酸は、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸 ヘネイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリッサ酸、ラッシン酸、ゲッシン酸、ウンデシル酸、ミリストール酸、パルミトレイン酸、マルガローリ酸。ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ワクセン酸、ガドレイン酸、セトレイン酸、エルシン酸、ネルボン酸、リノール酸、リノレン酸、カレンデュラ酸、プニック酸、エレオステアリン酸。ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサジエノイン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサヘキサエン酸並びにこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0140】
本発明による方法の別の特定の実施形態によれば、特に遊離の形またはそのエステルもしくは無水物の形の脂肪酸、特にC5-C34-脂肪酸、好ましくはC8-C34-脂肪酸は、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミトレイン酸、セトレイン酸、オレイン酸、ガドレイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサジエノイン酸、ドコサテトラエン酸。ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサヘキサエン酸、およびそれらの混合物からなる群から、好ましくはエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸およびそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0141】
さらに、本発明による方法の特定の実施形態によれば、特に遊離の形のまたはそのエステルもしくは無水物の形の脂肪酸、特にC5-C34-脂肪酸、好ましくはC8-C34-脂肪酸は、魚油に基づくおよび/または魚油中に存在する脂肪酸、特にエイコサペンタエン酸、ドコサジエノ酸、ドコサテトラエン酸、ドコサヘキサエン酸およびテトラコサヘキサエン酸ならびにこれらの混合物からなる群、特にエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸ならびにこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0142】
特に、本発明による製造方法においては、還元の間、還元によって取得される上記に定義にされるような一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのヒドロキシル基-CH(OH)-の位置及び個数が、還元されるべき一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルのケト基-C(O)-と比較して変化しない。
【0143】
本発明による方法に関して、上記に定義したような一般式(I’)の少なくとも1つの3-オキソ酪酸ラジカルの還元が、上記に定義したような3-オキソ酪酸ラジカル(I’)のアセチル官能基CH3-C(O)-のケト基-C(O)- においてのみ選択的に実行される場合がより好ましく;特にさらなる反応が起きない場合が好ましい。これに関連して、還元中に、副反応、特に転位、開裂または付加が起きないことが好ましい。
【0144】
本発明による方法において、反応生成物として、1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸官能化、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された一般式(IIa)
(R5O)m-(X)-(OR5)n (IIa)
の3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが、得られることが好ましい。
ここで、一般式(IIa)において、
・ Xは、特に3~21個の炭素原子、好ましくは4~21個の炭素原子を有し、任意に1~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC3-C21-アルキルラジカル、好ましくはC4-C21-アルキルラジカル、または、C3-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC3-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される有機ラジカル、好ましくは飽和有機ラジカルを表すこと、
・ 変数m及びnは、それぞれお互いに独立したもので、1~10の整数を表すこと、
・ ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素またはラジカルR2を表し、ここでラジカルR2が、線形(直鎖)又は分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカル、または、ラジカルR6が水素または上記に定義するようなラジカルR2を表すラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであること、
ただし、還元によって得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数および位置に対応することを条件とするものであること。
【0145】
特に、基R5O-は、ラジカルXのどの位置にあってもよく、好ましくは少なくとも1つの基R5O-が末端であることが好ましい。
【0146】
したがって、「官能化された」または「任意に官能化された」という言葉は、ポリオール(IV)と同様に一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルに存在する遊離ヒドロキシル基(OH基)が、任意に官能化されることが好ましいことを意味する。
【0147】
本発明によれば、還元により形成された一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのヒドロキシル基(OH基)が、反応前の一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルにおけるアセチル基CH3-C(O)-のケト基-C(O)-と同じ3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における位置を有することが想起される。これに関して、還元により生じるヒドロキシル基の数は、還元されたケト基の数に相当する。
【0148】
特に、反応生成物として、1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された一般式(IIb)
R5O-CH2-CH(OR5)-CH2-[O-CH2-CH(OR5)-CH2]p-OR5 (IIb)
の3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られることが好ましい。
ここで、一般式(IIb)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表すものであること、
・ ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素またはラジカルR2を表し、ここでラジカルR2が、線形(直鎖)又は分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表し、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表し、ここでラジカルR6が、水素または上記に定義するようなラジカルR2を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであること、
ただし、還元によって得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数および位置に対応することを条件とするものであること。
【0149】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物として、1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された一般式(IIc)
R5O-CH2-CH(OR5)-CH2-O-CH2-CH(OR5)-CH2-OR5 (IIc)
の3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られることが好ましい。
ここで、一般式(IIc)において、ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、線形(直鎖)もしくは分枝状、飽和またはモノ-またはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すラジカルR2、または、ラジカルR6が、水素または上記に定義されるようなラジカルR2を表すラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであること、
ただし、還元によって得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数および位置に対応することを条件とするものであること。
【0150】
本発明による方法のさらなる特定の実施形態によれば、反応生成物として、1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された一般式(IId)
R5O-CH2-CH(OR5)-CH2-OR5 (IId)
の3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られることが好ましい。
ここで、一般式(IId)において、ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、線形(直鎖)もしくは分枝状、飽和またはモノ-またはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すラジカルR2、または、ラジカルR6が水素または上記に定義されるようなラジカルR2を表すラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであること、
ただし、還元によって得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数および位置に対応することを条件とするものであること。
【0151】
本発明による方法のさらなる実施形態によれば、反応生成物として、少なくとも2つの異なる任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された上記に定義されるような3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物が得られることが好ましいが、ただし、還元により得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数及び位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数及び位置に対応することを条件とするものである。
【0152】
本発明による方法の更なる特定の実施形態によれば、反応生成物として、上記に定義されるような、少なくとも3つの異なる任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物が得られることが好ましいが、ただし、還元により得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数及び位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数及び位置に対応することを条件とするものである。
【0153】
前述のように、本発明によれば、反応生成物において、上記に定義される一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルが、(R)構成されたエナンチオマーの形で存在することが提供されることが好ましい。
【0154】
これに関連して、キラリティー中心(非対称炭素原子)は、一般式(II’)の3-ヒドロキシブチレートラジカルの3位に位置する。
【0155】
さらに、反応生成物として、一般式(IIa”)
(R7O)m-(X)-(OR7)n (IIa”)
で示される1つまたは複数の3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを得ることが好ましい。
ここで、一般式(IIa”)において、
・ Xは、特に3~21個の炭素原子、好ましくは任意に4~21個の炭素原子を有すると共に任意に1~9個の酸素原子を含み、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールアルキルから選択され、より好ましくはC3-C21-アルキルラジカル、好ましくはC4-C21-アルキルラジカル、またはC3-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC3-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される有機ラジカル、飽和有機ラジカルを表すこと、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立したものであり、1~10の整数を表すこと、
・ ラジカルR7は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルCH3-CH(OH)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR7、特に少なくとも2つのラジカルR7が、水素を表さないことを条件とするものであること、
還元により得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II”)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I”)の3-オキソ酪酸ラジカルの数及び位置に対応することを条件とするものであること、
特に、基R7O-がラジカルXの任意の位置にあれば好ましく、好ましくは少なくとも1つの基R7O-が末端であるべきであること。
【0156】
さらに、本発明に係る製造方法においては、反応生成物として、一般式(IIb”)
R7O-CH2-CH(OR7)-CH2-[O-CH2-CH(OR7)-CH2]p-OR7 (IIb”)
で示される1つまたは複数の3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを得ることが好ましい。
ここで、一般式(IIb”)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表すこと、
・ ラジアルR7は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素またはCH3-CH(OH)-CH2-CO-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR7、特に少なくとも2つのラジカルR7が、水素を表さないことを条件とするものであること、
還元により得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数及び位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数及び位置に対応することを条件とするものであること。
【0157】
さらに、本発明による方法では、反応生成物として、一般式(IIc”)
R7O-CH2-CH(OR7)-CH2-O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR7 (IIc”)
の1つまたは複数の3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステル(II”)が得られることが好ましい。
ここで、一般式(IIc”)において、ラジカルR7は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはCH3-CH(OH)-CH2-CO-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR7、特に少なくとも2つのラジカルR7が、水素を表さないことを条件とするものであること、
還元により得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数及び位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数及び位置に対応することを条件とするものであること。
【0158】
さらに、本発明による方法では、反応生成物として、一般式(IId”)
R7O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR7 (IId”)
の1つまたは複数の3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られることが好ましい。
一般式(IId”)において、ラジカルR7は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはCH3-CH(OH)-CH2-CO-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR7、特に少なくとも2つのラジカルR7が、水素を表さないことを条件とするものであること、
還元により得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数及び位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数及び位置に対応することを条件とするものであること。
【0159】
本発明による製造方法の特定の実施形態によれば、反応生成物として、特に上記に定義したような少なくとも2つの異なる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物が得られることが好ましいが、ただし、還元により得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数及び位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数及び位置に対応することを条件とするものである。
【0160】
本発明による方法の更なる特定の実施形態によれば、反応生成物として、特に上記に定義されるような少なくとも3つの異なる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物が得られ流ことが好ましいが、ただし、還元により得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数及び位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数及び位置に対応することを条件とするものである。
【0161】
これに関連して、特に、反応生成物において、上記に定義される一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルが、(R)構成されたエナンチオマーの形で存在することが提供されることが好ましい。
【0162】
これに関連して、キラリティー中心(非対称炭素原子)は、一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの3位に位置する。
【0163】
本発明のさらなる実施形態によれば、反応生成物として、一般式(IIa”)
(R5O)m-(X)-(OR5)n (IIa”)
の1つまたは複数の官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得ることが好ましい。
ここで、一般式(IIa”)において、
・ Xは、3~21個の炭素原子、好ましくは4~21個の炭素原子を有するとともに、任意に1~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC3-C21-アルキルラジカル、好ましくはC4-C21-アルキルラジカル、または、C3-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC3-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される有機ラジカル、特に好ましくは飽和有機ラジカルを表すこと、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、1~10の整数を表すこと、
・ ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはポリ-またはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-を表すラジカルR2またはラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表し、ラジカルR6が、水素または上記に定義されるようなラジカルR2を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR5および/または1つのラジカルR6が、ラジカルR2を表すことを条件とするものであること、
還元により得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数及び位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数及び位置に対応することを条件とするものであること。
【0164】
特に、基R5O-は、ラジカルXのどの位置にあることが好ましく、特に少なくとも1つの基R5O-が末端である。
【0165】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(IIa”)において、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-に表すものであり、ここでラジカルR6が、上記に定義されるようなラジカルR2を表すものであり、またはラジカルR2が上記に定義されたものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件おするものであり、ラジカルR6が上記に定義されるラジカルR2を有することを条件とするものである。
【0166】
さらに、別の特定の実施形態によれば、一般式(IIa”)において、ラジカルR5およびR6は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0167】
特に、本発明による製造方法では、反応生成物として、一般式(IIb’’’)
R5O-CH2-CH(OR5)-CH2-[O-CH2-CH(OR5)-CH2]p-OR5 (IIb’’’)
の1つまたは複数の官能化され、特に脂肪酸官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られることが好ましい。
ここで、一般式(IIb’’’)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表すこと、
・ ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、線形(直鎖)又は分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-を表すラジカルR2、または、ラジカルR6が水素または上記に定義したようなラジカルR2を表すラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、少なくとも2つのラジカルR5が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR5、少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであること、および、少なくとも1つのラジカルR5および/または1つのラジカルR6が、ラジカルR2を表すことを条件とするものであること、
ただし、還元によって得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数および位置に対応することを条件とするものであること。
【0168】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(IIb”)において、ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであり、ここでラジカルR6が、上記に定義されるようなラジカルR2、または、上記に定義されるような別のラジカルR2を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に好ましくは2つのラジカルR5は、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであり、ここでラジカルR6が上記に定義されるようなラジカルR2を有することを条件とするものである。
【0169】
さらに、追加の特定の実施形態によれば、一般式(IIb”)において、R5およびR6は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0170】
さらに、本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物として、一般式(IIc’’’)
R5O-CH2-CH(OR5)-CH2-O-CH2-CH(OR5)-CH2-OR5 (IIc’’’)
の1つまたは複数の官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化される3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが、取得されることが好ましい。
ここで、一般式(IIc’’’)において、ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素、線形(直鎖)又は分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-を表すラジカルR2、または、ラジカルR6が水素または上記に定義したようなラジカルR2を表すラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR5および/または1つのラジカルR5は、ラジカルR2を表すことを条件とするものであること、
ただし、還元によって得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数および位置に対応することを条件とするものであること。
【0171】
特定の実施形態によれば、一般式(IIc”)において、ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、ラジカルR6が上記に定義されるようなラジカルR2を表すかまたは上記に定義されるようなラジカルR2であるラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであり、ここで、ラジカルR6は上記に定義されるようなラジカルR2を有することを条件とするものである。
【0172】
さらに、別の特定の実施形態によれば、一般式(IIc”)において、R5およびR6は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0173】
さらに、本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物として、一般式(IId’’’)
R5O-CH2-CH(OR5)-CH2-OR5 (IId’’’)
の1つまたは複数の官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化される3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが、取得されることが好ましい。
ここで、一般式(IId’’’)において、ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素、線形(直鎖)又は分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-を表すラジカルR2、または、ラジカルR6が水素または上記に定義したようなラジカルR2を表すラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR5および/または1つのラジカルR5は、ラジカルR2を表すことを条件とするものであること、
ただし、還元によって得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数および位置に対応することを条件とするものであること。
【0174】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(IId”)において、ラジカルR5は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、ラジカルR6が上記に定義されるようなラジカルR2を表すかまたは上記に定義されるようなラジカルR2であるラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR5、特に少なくとも2つのラジカルR5が、ラジカルCH3-CH(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであり、ここで、ラジカルR6は上記に定義されるようなラジカルR2を有することを条件とするものである。
【0175】
さらに別の特定の実施形態によれば、一般式(IId”)において、R5およびR6は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0176】
特に、本発明による方法の更なる特定の実施形態によれば、反応生成物として、上記に定義されたような少なくとも2つの異なる官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物が得られることが好ましいものであるが、ただし、還元によって得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数および位置に対応することを条件とするものである。
【0177】
特に、本発明による方法の更なる特定の実施形態によれば、反応生成物として、上記に定義されたような少なくとも3つの異なる官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物が得られることが好ましいものであるが、ただし、還元によって得られる3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)における一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの数および位置が、還元されるべき3-オキソ酪酸ポリオールエステル(I)における一般式(I’)の3-オキソ酪酸ラジカルの数および位置に対応することを条件とするものである。
【0178】
前述のように、本発明の方法によれば、反応生成物において、上記に定義されたような一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルが、(R)構成されたエナンチオマーの形であることが提供される。
【0179】
ここでいうキラリティー中心(非対称炭素原子)は、一般式(II’)の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの3位に位置する。
【0180】
上記で説明したように、本発明による方法は、通常、溶媒の非存在下および/または無溶媒で実行される(すなわち、質量における反応としてまたは物質における反応としてまたはいわゆるバルク反応として)。このため、得られた反応生成物が溶媒で汚染されることがなく、方法または反応を実施した後に、コストとエネルギーを要する方法で溶媒を除去して廃棄またはリサイクルする必要がないという利点がある。驚くべきことに、この方法または反応は、それにもかかわらず、高い変換率および生産性で、少なくとも本質的に有意な副生成物の生成なしに進められる。
【0181】
得られた反応生成物のその後の官能化を伴わない(本発明によって使用される反応物の可能な上流合成を含む)本発明による好ましい手順は、以下の反応または合成スキームによって示される(ここで、反応手順に応じて、個々のエステルまたはその2つ以上の混合物のいずれかを得ることができる)。
【0182】
【0183】
得られた反応生成物のその後の官能化を伴う(本発明に従って使用される出発物質の可能な上流合成を含む)本発明によるさらなる好ましい手順は、以下の反応または合成スキームによって示される(ここで、反応手順に応じて、個々のエステルまたはその2つ以上の混合物のいずれかが得られるものであり、以下の反応または合成スキームにおいて、ラジカルRは、水素または直鎖もしくは分岐状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプのC8-C34-脂肪酸ラジカル[=(C7-C33-アルキル)-C(O)ラジカル]を表すものであるが、ただし、分子あたりの少なくとも1つのラジカルRは、Hを示さないことを条件とするものである)。
【0184】
【0185】
得られた反応生成物((R)構成されたエナンチオマー)のキラル還元およびその後の官能化を伴う(本発明によって使用される出発物質の可能な上流合成を含む)本発明によるさらに好ましい手順は、以下の反応または合成スキームによって説明される(ここで、ラジカルRは、水素または線形もしくは分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和タイプのC8-C34-脂肪酸ラジカル[=(C7-C33-アルキル)-C(O)ラジカル]を表すものであるが、ただし、示された分子当たりの少なくとも1つのラジカルRがHを表さないことを条件とするものである)。
【0186】
【0187】
本発明の第2の態様によれば、さらなる本発明の目的は、本発明による方法によって得られる反応生成物または本発明による反応生成物である(すなわち、1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたはそれらの混合物である)。本発明による方法によって得られる反応生成物または本発明の反応生成物は、好ましくはエナンチオマー的に濃縮され、特にエナンチオマー的に純粋であり、それぞれが好ましくは還元によって生成され、それに続いて記号「*」で指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)を基準としてそれぞれ(R)構成されたエナンチオマーの形である。
【0188】
本発明のこの態様による本発明の目的は、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸官能化された一般式(VIIa)
(R8O)m-(X)-(OR8)n (VIIa)
の3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルである。
ここで、一般式(VIIa)において、
・ Xは、特に3~21個の炭素原子、好ましくは4~21個の炭素原子を有するとともに任意に1~9の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくC3-C21-アルキルラジカル、好ましくはC4-C21-アルキルラジカル、または、C3-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、または、特にC3-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される有機ラジカル、特に飽和有機ラジカルを表すこと、
・ 変数mおよびnは、それぞれがお互いに独立した1~10の整数を表すこと、
・ ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-を表すラジカルR2、または、ラジカルR6が水素または上記に定義したようなラジカルR2を表すラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであること、
任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮され、特にエナンチオマー的に純粋であり、好ましくは還元によって生成され、それに続いて記号「*」で指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に対してそれぞれ相対的に(R)構成されたエナンチオマーの形であることが好ましい。
【0189】
本発明に関連して、「エナンチオマー的に濃縮された」とは、反応生成物において、少なくとも90%、特に少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、特により好ましくは少なくとも98%、さらに好ましくは少なくとも99%のエナンチオマーが存在することを意味する。さらに、本発明に関連して、「エナンチオマー的に純粋」とは、反応生成物においてエナンチオマーが本質的に100%存在することと理解されるべきである。
【0190】
特に、基R8O-は、ラジカルXのどの位置にあってもよく、好ましくは少なくとも1つの基R8O-が末端であることが好ましい。
【0191】
本発明のさらなる目的はまた、任意に官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に上記に記載または定義されたようなポリオールエステルであり、
ここで、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(VIIb)
R8O-CH2-CH(OR8)-CH2-[O-CH2-CH(OR8)-CH2]p-OR8 (VIIb)
に対応するものであること。
ここで、一般式(VIIb)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表すこと、
・ ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-を表すラジカルR2、または、ラジカルR6が水素または上記に定義したようなラジカルR2を表すラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであること、、
任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮され、特にエナンチオマー的に純粋であり、好ましくは還元によって生成され、それに続いて記号「*」で指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に対してそれぞれ相対的に(R)構成されたエナンチオマーの形であることが好ましい。
【0192】
再び、本発明の別の目的はまた、任意に官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に上記に記載または定義されたようなポリオールエステルであり、
任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、特に任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(VIIc)
R8O-CH2-CH(OR8)-CH2-O-CH2-CH(OR8)-CH2-OR8 (VIIc)
に相当するものであること。
ここで、一般式(VIIc)において、ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-を表すラジカルR2、または、ラジカルR6が水素または上記に定義したようなラジカルR2を表すラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであること、
任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮され、特にエナンチオマー的に純粋であり、好ましくは還元によって生成され、それに続いて記号「*」で指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に対してそれぞれ相対的に(R)構成されたエナンチオマーの形であることが好ましい。
【0193】
同様に、本発明の目的は、任意に官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に上記に記載または定義されたようなポリオールエステルを提供することであり、
任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(VIId)
R8O-CH2-CH(OR8)-CH2-OR8 (VIId)
に相当するものであること、
ここで、一般式(VIId)において、ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-を表すラジカルR2、または、ラジカルR6が水素または上記に定義したようなラジカルR2を表すラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであること、
任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮され、特にエナンチオマー的に純粋であり、好ましくは還元によって生成され、それに続いて記号「*」で指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に対してそれぞれ相対的に(R)構成されたエナンチオマーの形であることが好ましい。
【0194】
特定の実施形態によれば、本発明の目的は、また、一般式(VIIa”)
(R9O)m-(X)-(OR9)n (VIIa”)
の3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステルz(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルであること、
ここで、一般式(VIIa”)において、
・ Xは、特に3~21個の炭素原子、好ましくは4~21個の炭素原子を有するとともに任意に1~9の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくC3-C21-アルキルラジカル、好ましくはC4-C21-アルキルラジカル、または、C3-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、または、特にC3-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される有機ラジカル、特に飽和有機ラジカルを表すこと、
・ 変数mおよびnは、それぞれがお互いに独立した1~10の整数を表すこと、
・ ラジカルR9は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルCH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-、ただし、少なくとも1つのラジカルR9、特に少なくとも2つのラジカルR9は、水素を表さないことを条件とするものであること、
3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮されており、特にエナンチオマー的に純粋であり、好ましくは還元によって生成され、続いて記号「*」で指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に対してそれぞれ相対的である(R)構成されたエナンチオマーの形であること;
特に、基R9O-は、ラジカルXのどの位置にあってもよく、好ましくは少なくとも1つの基R9O-が末端であることが好ましい。
【0195】
別の特定の実施形態によれば、本発明の対象は、3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に上記に記載または定義されたようなポリオールエステルでもあり、
ここで、3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(VIIb”)
R9O-CH2-CH(OR9)-CH2-[O-CH2-CH(OR9)-CH2]p-OR9 (VIIb”)
に対応するものであること、
ここで、一般式(VIIb”)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表すこと、
・ ラジカルR9は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルCH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのR9、特に少なくとも2つのR9が水素を表さないことを条件とするものであること、
3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮されており、特にエナンチオマー的に純粋であり、還元により生成され、それに続いて記号「*」で示される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に基いた(R)構成されたエナンチオマーの形であること。
【0196】
さらなる実施形態による本発明の別の目的は、3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に上記に記載または定義されているようなポリオールエステルでもあること、
ここで、3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(VIIc”)
R9O-CH2-CH(OR9)-CH2-[O-CH2-CH(OR9)-CH2]p-OR9 (VIIc”)
に対応するものであること、
ここで、一般式(VIIc”)において、ラジカルR9は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素またはラジカルCH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのR9、特に少なくとも2つのR9が水素を表さないことを条件とするものであること、
ここで、3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮されており、特にエナンチオマー的に純粋であり、還元により生成され、それに続いて記号「*」で示される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に基いた(R)構成されたエナンチオマーの形であること。
【0197】
本発明のこの特定の実施形態のさらなる目的は、また3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に上記に記載または定義されているようなポリオールエステルであること、
ここで、3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(VIId”)
R9O-CH2-CH(OR9)-CH2-OR9 (VIId”)
に対応するものであること、
ここで、一般式(VIId”)において、ラジカルR9は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素またはラジカルCH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのR9、特に少なくとも2つのR9が水素を表さないことを条件とするものであること、
ここで、3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮されており、特にエナンチオマー的に純粋であり、還元により生成され、それに続いて記号「*」で示される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ヒドロキシ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に基づいた(R)構成されたエナンチオマーの形であること。
【0198】
代替の実施形態によれば、また、本発明の目的は、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された一般式(VIIa’’’)
(R8O)m-(X)-(OR8)n (VIIa’’’)
の3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルであり、
一般式(VIIa’’’)において、
・ Xは、特に3~21個の炭素原子、好ましくは4~21個の炭素原子を有するとともに1~9個の酸素原子を含むものであり、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、より好ましくは(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC3-C21-アルキルラジカル、好ましくはC4-C21-アルキルラジカル、または、C3-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、または、特にC3-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC4-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される有機ラジカル、好ましくは飽和有機ラジカルを表すこと、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、1~10の整数を表すこと、
・ ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-を表すラジカルR2、または、ラジカルR6が水素または上記に定義したようなラジカルR2を表すラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すこと、および、少なくともそのラジカルR8および/またはラジカルR6がラジカルR2を表すことを条件とするものであること、
ここで、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮され、特にエナンチオマー的に純粋であり、好ましくは還元によって生成し、続いて記号「*」で指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ロキシブ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に対してそれぞれ相対する(R)構成されるエナンチオマーの形であること。
【0199】
特に、基R8O-は、ラジカルXのどの位置にあってもよく、好ましくは少なくとも1つの基R8O-が末端である。
【0200】
特に、特定の実施形態によれば、前記一般式(VIIa’’)において、味刈るR8は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、ラジカルCH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-を表し、ここで、ラジカルR6が、上記に定義されるようなラジカルR2、または、上記に定義されるような別のラジカルR2を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであり、ここで、ラジカルR6は、上記に定義されるようなラジカルR2を有することを条件とするものである。
【0201】
さらに、別の実施形態によれば、一般式(VIIa’’)において、R8およびR6は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0202】
本発明のこの特定の実施形態によるさらなる目的は、また官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に上記に記載または定義されているようなポリオールエステルであり、
ここで、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは一般式(VIIb’’)
R8O-CH2-CH(OR8)-CH2-[O-CH2-CH(OR8)-CH2]p-OR8 (VIIb’’’)
に対応するものであること、
ここで、一般式(VIIb’’’)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表すこと、
・ ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一又は異なるものであり、水素、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C21-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すラジカルR2、または、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであり、ここでラジカルR6が水素または上記に定義したようなラジカルR2を表わすものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、少なくとも2つのラジカルR8が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR8、少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すこと、および、少なくともそのラジカルR8および/またはラジカルR6が、ラジカルR2を表すことを条件とするものであること、
ここで、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮され、特にエナンチオマー的に純粋であり、好ましくは還元によって生成し、続いて記号「*」で指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ロキシブ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に対してそれぞれ相対する(R)構成されるエナンチオマーの形であること。
【0203】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(VIIb”)において、ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-、ここでラジカルR6が、上記に定義されるようなラジカルR2を表すものであるかまたは上記に定義されるようなラジカルR2を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであり、ここでラジカルR6が、上記に定義されるようなラジカルR2を有するものである。
【0204】
さらに好ましい実施形態によれば、一般式(VIIb”)において、R8およびR6は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことができる。
【0205】
再び、この特定の実施形態による本発明の別の目的はまた、上記に記載または定義されているような官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特にポリオールエステルであり、
ここで、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(VIIc’’’)
R8O-CH2-CH(OR8)-CH2-O-CH2-CH(OR8)-CH2-OR8 (VIIc’’’)
に対応するものであること、
ここで、一般式(VIIc’’’)において、ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、直鎖(直鎖)もしくは分枝状、飽和もしくはモノもしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すラジカルR2、または、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表し、ここでラジカルR6が。水素または上記に定義されるようなラジカルR2を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すこと、および、少なくともそのラジカルR8および/またはラジカルR6が、ラジカルR2を表すことを条件とするものであること、
ここで、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮され、特にエナンチオマー的に純粋であり、好ましくは還元によって生成し、続いて記号「*」で指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ロキシブ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に対してそれぞれ相対する(R)構成されるエナンチオマーの形であること。
【0206】
特定の実施形態によれば、一般式(VIIc’’’)において、ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すものであり、ここでラジカルR6は、上記に定義されるようなラジカルR2、または、上記に定義されるような別のラジカルR2を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであり、ここでラジカルR6が、上記に定義されるようなラジカルR2を有するものである。
【0207】
特に、別の特定の実施形態によれば、一般式(VII’’’)において、R8およびR6は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0208】
同様に、この特定の実施形態による本発明の目的は、上記に記載または定義されたような官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特にポリオールエステルを提供することでもあり、
ここで、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(VIId’’’)
R8O-CH2-CH(OR8)-CH2-OR8 (VIId’’’)
に対応するものであること、
ここで、一般式(VIId’’’)において、ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素、直鎖(直鎖)もしくは分枝、飽和もしくはモノもしくはポリ不飽和タイプの(C1-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C4-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C7-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すラジカルR2、または、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表し、ここでラジカルR6が。水素または上記に定義されるようなラジカルR2を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すこと、および、少なくともそのラジカルR8および/またはラジカルR6が、ラジカルR2を表すことを条件とするものであること、
ここで、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II’’’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、エナンチオマー的に濃縮され、特にエナンチオマー的に純粋であり、好ましくは還元によって生成し、続いて記号「*」で指摘される一般式(II’)CH3-C*H(OH)-CH2-C(O)-の3-ロキシブ酪酸ラジカルのキラリティー中心(非対称炭素原子)に対してそれぞれ相対する(R)構成されるエナンチオマーの形であること。
【0209】
特に、特定の実施形態によれば、前記一般式(VIId’’’)において、ラジカルR8は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表し、ここでラジカルR6が、上記に定義されるようなラジカルR2、または、上記に定義されるような別のラジカルR2を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR8、特に少なくとも2つのラジカルR8が、ラジカルCH3-C*H(OR6)-CH2-C(O)-を表すことを条件とするものであるが、ここで、ラジカルR6が上記に定義されるようなラジカルR2を有するものである。
【0210】
さらに、別の特定の実施形態によれば、一般式(VIId’’’)において、ラジカルR8およびR6は、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0211】
本発明のこの態様によった特定の実施形態による本発明のさらなる目的は、上記に定義されるように、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの異なる任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシブチル酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシブチル酸ポリグリセロールエステルからなる混合物である。
【0212】
それぞれ本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって取得可能な任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化される3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルまたは上記に定義されるような本発明の任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化される3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって取得可能な混合物、または、上記に定義するような本発明の混合物は、先行技術と比較して多くの利点及び特別な特徴を具備するものである。
【0213】
出願人が、驚くべきことに以下のことを見いだした。それぞれ上記に定義された本発明の方法または本発明の反応生成物、および/または、それぞれ任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオール(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステル、および/または、本発明の方法によって取得可能な混合物または上記に定義したような本発明の混合物は、一方では生理的に、特に消化管内で、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩に変換され、他方では同時に、特に非毒性および許容できる器官受容特性に関して、優れた生理適合性または許容性を具備するので、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の先駆体または代謝物として適切である。特に、消化管内で生理活性物質が徐放されることは、医療分野において有利であり、このようにして活性物質3-ヒドロキシ酪酸をより長期間にわたって利用できるようになり、徐放性ケト療法が可能になる。
【0214】
さらに、それぞれ本明細書で定義した本発明方法または本発明反応生成物に従って得られる反応生成物、および/または、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、それぞれ上記に定義したように、本発明の製造方法または本発明の混合物に従って得ることができ、合成ベースで、商業規模であっても、必要な医薬または薬学的品質で容易に入手可能であり、または大規模に入手可能である。
【0215】
さらに、本発明方法に従って得られる反応生成物、または、それぞれ上記に定義される本発明の反応生成物、および/または、上記に定義されるような任意に官能化され、好ましくは任意に脂肪酸で官能化され、特に任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステル、及び/又は、それぞれ本発明の製造方法で取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物は、必要に応じて、エナンチオマー的に純粋又はエナンチオマー的に凝縮された形で提供されることが好ましい。
【0216】
本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(II)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって取得される混合物または上記に定義される本発明の混合物は、このように、人体または動物体のケト体療法に関して効率的な薬理薬剤標的を表すものである。
【0217】
以下では、本発明の残りの態様をより詳細に説明する。
【0218】
本発明の第3の態様によれば、本発明のさらなる主題は、それぞれ本発明の製造方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、それぞれ1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシブチル酸ポリオールエステルを含む医薬組成物、特に薬剤または医薬品である。
【0219】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置に使用するための医薬組成物に関する。これは、特に、エネルギー代謝、特にケト体代謝の障害に関連する疾患、例えば、特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞などの心血管系疾患、再食症、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)などの脂質代謝性疾患など。VL-FAOD、ミトコンドリアチオラーゼ欠損などのミトコンドリア病、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、尿道炎などのリュウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用などを助長する疾患に関連する。
【0220】
また、本発明の第4の態様によれば、本発明のさらなる主題は、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞などの循環器系疾患、再食症、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコース輸送体欠損(GLUT1損)、VL-FAODなどの脂質代謝疾患、ミトコンドリアチオラーゼ欠損、ハンチントン病などのミトコンドリア病質。T細胞リンパ腫、星細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、関節リウマチ、尿道炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患(特に潰瘍性大腸炎、クローン病)などの消化器系疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用などを助長するヒトまたは動物の身体の疾患、特にエネルギー代謝、特にケト体代謝の障害に関連する疾患、例えば特に頭蓋大脳外傷の予防的および/または治療的処置に用いるためのそれぞれ本発明の製造方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、上記に定義されるような1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステルである。
【0221】
また、本発明の第5の態様によれば、本発明のさらなる主題は、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞などの循環器系疾患、再食症、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコース輸送体欠損(GLUT1損)、VL-FAODなどの脂質代謝疾患、ミトコンドリアチオラーゼ欠損、ハンチントン病などのミトコンドリア病質。T細胞リンパ腫、星細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、関節リウマチ、尿道炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患(特に潰瘍性大腸炎、クローン病)などの消化器系疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用などを助長するヒトまたは動物の身体の疾患、特にエネルギー代謝、特にケト体代謝の障害に関連する疾患、例えば特に頭蓋大脳外傷の予防的および/または治療的処置に用いるためのそれぞれ本発明の製造方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、上記に定義されるような1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステルの使用である。
【0222】
同様に、本発明の第6の態様によれば、本発明のさらなる主題は、空腹、ダイエットまたは低糖質栄養などの異化代謝状態に対する予防的および/または治療的治療のための、または、そのための医薬の製造に適用するための、上記に定義されるようなそれぞれ本発明の製造方法に従って得られる反応生成物または上記に定義される本発明の反応生成物、および/または、1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステルの使用である。
【0223】
同様に、本発明の第7の態様によれば、本発明のさらなる主題は、それぞれ本発明の製造方法によって製造される反応生成物または上記において定義されるような本発明の反応生成物、および/または、それぞれ上記に定義されるような1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシブチル酸ポリオールエステルを具備する食品および/または食品生成物の使用である。
【0224】
特定の実施形態によれば、食品及び/又は食品生成物は、本質的に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力及び/又は耐久スポーツサプリメントであることが好ましい。
【0225】
最後に、本発明の第8の態様によれば、本発明のさらに別の主題は、本発明の製造方法によって得ることができる上記に定義したような反応生成物、および/または、1つまたは複数の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシブチル酸ポリオールエステルを、食品および/または食品において使用することである。
【0226】
本発明のこの態様によれば、食品および/または食品生成物は、特に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力および/または耐久スポーツ補助食品であることが好ましい。
【0227】
本発明のさらなる実施形態、修正および変形は、本発明の範囲を離れることなく、本明細書を読んだ当業者によって容易に認識または実現可能なものである。
【発明を実施するための形態】
【0228】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、これらは本発明を何ら限定するものではなく、本発明の例示的かつ非限定的な実施および構成を説明するためのものである。
【実施例】
【0229】
使用した略語
BHB=3-ヒドロキシ酪酸ラジカルまたは3-ヒドロキシ酪酸ラジカル
3-BHB-FS=3-ヒドロキシ酪酸(すなわち遊離酸)
PG(2)=ジグリセロール:HO-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-OH
PG(3)=ポリグリセロール: HO-CH2-CH(OH)-CH2-[O-CH2-CH(OH)-CH2]2-OH
DCM=ジクロロメタン:CH2Cl2
Pd/C=活性炭上のパラジウム
ラネーニッケル=ニッケル/アルミニウム合金の微粒子
ウィルキンソン触媒=式Rh(PPh3)3Clで表される均一系触媒。
【0230】
製造事例
以下の実施例により、本発明の製造方法を説明する。関連する一般的な反応スキームを示し、一般的な明細書部分で説明する。
【実施例1】
【0231】
キラル還元による3-オキソ酪酸ジグリセリルエステル混合物からの3-ヒドロキシ酪酸ジグリセリルエステル混合物の製造
250mLのマルチネックフラスコに、イソプロパノール/水混合液(9:1)100mLと3-オキソ酪酸ジグリセロールエステル混合物(すなわち、ポリオールとしてジグリセロールを有する3-オキソ酪酸のモノ-、ジ-、トリ-およびテトラグリセリド)5g、キラシドン(登録商標)R(非対称合成用キラル触媒)1gを入れて混合したものが提供される。
【0232】
前記反応混合物が室温で8日間攪拌される。そのから、酵素が濾過され、反応生成物が乾燥される。対応する(R)-3-ヒドロキシ酪酸ジグリセロールエステル(すなわち、ジグリセロールを有する3-(R)-ヒドロキシ酪酸のモノ-、ジ-、トリ-およびテトラグリセリド)および少量の未反応3-オキソ酪酸ジグリセロールエステルの混合物が得られ、これらは標準法(クロマトグラフィーまたは蒸留)により分離される。特性評価は、GC、GPCおよびGC-MSによって行われる。
【0233】
得られた3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステル混合物の一部をクロマトグラフィーにより個々のジグリセロールエステル(すなわち、モノジグリセロールエステル、ジジグリセロールエステル、トリジグリセロールエステル等)に分離し、個々のジグリセロールエステルをそれぞれ純物質として取得する。
【実施例2】
【0234】
非キラル還元による3-オキソ酪酸ジグリセロールエステル混合物からの3-ヒドロキシ酪酸ジグリセロールエステル混合物の製造
300mL加圧オートクレーブにおいて、3-オキソ酪酸ジグリセロールエステル混合物50gを、100mLメタノールに溶解し、1~5重量%Pd/Cを加え、50~100℃の温度で、20~50バール水素圧で、8~24時間撹拌される。メタノールは濾過除去される。Pd/Cを濾過除去した後、メタノールを蒸留除去する。(S)/(R)-3-ヒドロキシ酪酸ジグリセロールエステルのラセミ混合物および少量の未反応3-オキソ酪酸ジグリセロールエステルが得られ、これらは標準法(クロマトグラフィーまたは蒸留)により分離される。特性評価は、GC、GPC、GC-MSで行われる。
【0235】
得られた3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステル混合物の一部をクロマグラフィーにより個々のジグリセロールエステル(すなわち、モノジグリセロールエステル、ジジグリセロールエステル、トリジグリセロールエステル等)に分離し、個々のジグリセロールエステルをそれぞれ純物質として取得する。
【実施例3】
【0236】
非キラル還元による3-オキソ酪酸ジグリセロールエステル混合物からの3-ヒドロキシ酪酸ジグリセロールエステル混合物の製造
100mLのマルチネックフラスコにおいて、3-オキソ酪酸-ジグリセロールエステル混合物15gを、50mLエタノール中に提供する。
【0237】
反応混合物を10℃に冷却し、1gの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を段階的に添加する。30分後、反応混合物を、希塩酸を加えることによって中和する。その後、溶媒を除去し、リン酸水素カリウム水溶液(K2HPO4)でラジカルを取り込み、イソプロパノールで抽出する。その後、溶媒は蒸留除去され、ラジカルがDCMに懸濁される。濾過後、もう一度溶媒を留去すると、微量の3-オキソ酪酸ジグリセロールモノエステルが残留した(S)/(R)-3-ヒドロキシ酪酸ジグリセロールエステルのラセミ混合物が得られる。未反応の3-オキソ酪酸ジグリセロールモノエステルは、真空下で蒸留除去される。反応生成物は、GC、GPCおよびGC-MSで特性評価される。
【0238】
得られた3-ヒドロキシ酪酸のジグリセリンエステル混合物の一部をクロマトグラフィーにより個々のジグリセロールエステル(すなわち、モノジグリセロールエステル、ジジグリセロールエステル、トリジグリセロールエステル等)に分離し、個々のジグリセロールエステルをそれぞれ純物質として取得する。
【0239】
3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル混合物のさらなる製造について
しかしながら、先の実験はそれぞれ他の3-オキソ酪酸ポリオールエステル(すなわちポリオール成分として、グリセロール,ポリグリセロールPG(3)および1,2ペンタンジオール)を用いて繰り返されたものである。同等の結果が得られる。精製や分画も同様に行われる。
【0240】
官能化実験
先の実験で得られたモノ-/ジ-/トリ-/テトラ-ジグリセロールエステル混合物およびそこからクロマトグラフィーで分離した純粋な形態の個々のジグリセロールエステルは、3-BHBラジカルおよび/またはポリオールラジカルの残りの(すなわちまだ遊離の)OH-基に、ドコサヘキサエン酸とのエステル化を実行するために、それぞれその後ドコサヘキサエン酸無水物と反応させて官能化される。このための一般的な反応スキームは、一般的な明細書の部分に示され、説明される。
【0241】
この実験は、ドコサヘキサエン酸無水物との反応による意図した官能化が、対応する分析によって確認されるように、所望の官能化(すなわち、脂肪酸官能化または脂肪酸エステル化)生成物(すなわち、3-BHBラジカルおよび/またはポリオールラジカルの遊離OH-基とドコサヘキサエン酸とのエステル化)に導くことを示している。
【0242】
一方ではエイコサペンタエン酸無水物で、他方ではドコサヘキサエン酸無水物/エイコサペンタエン酸無水物の混合物で同様の官能化実験を行い、対応する分析で確認されたように、類似の結果(すなわち、それぞれの場合で3-BHBラジカルおよび/またはポリオールラジカルの遊離OH-基のエステル化)が生じるものである。実験によれば、意図した官能化は、対応する分析によって確認されるように、エイコサペンタエン酸無水物との反応、ならびにドコサヘキサエン酸無水物/エイコサペンタエン酸無水物の混合物との反応によって、所望の官能化(すなわち、脂肪酸官能化または脂肪酸エステル化)生成物(すなわち、3-BHBラジカルおよび/またはポリオールラジカルの遊離OH基をエステル化)が生じるものである。
【0243】
さらなる官能基化実験
先の実験で得られたモノ-/ジ-/トリ-/テトラ-ジグリセロールエステル混合物およびそこからクロマトグラフィーで分離した純粋な形態の個々のジグリセロールエステルは、それぞれその後ドコサヘキサエン酸との反応により官能化され、3-BHBラジカルおよび/またはポリオールラジカルの遊離OH基でエステル化された脂肪酸官能化または脂肪酸エステル化生成物を得ることができる。
【0244】
この実験は、ドコサヘキサエン酸との反応による意図した官能基化が、対応する分析によって確認されるように、所望の生成物(すなわち、3-BHBラジカルおよび/またはポリオールラジカルの遊離OH基のエステル化)につながることを示している。
【0245】
比較可能な官能基化実験は、それぞれの場合においてエイコサペンタエン酸およびオレイン酸でも実行され、類似の結果(すなわち、3-BHBラジカルおよび/またはポリオールラジカルの遊離OH基のエステル化)を導き、対応する分析によって確認される。実験は、対応する分析によって確認されるように、意図された官能化はまた、エイコサペンタエン酸およびオレイン酸とそれぞれ反応させることによって所望の生成物(すなわち、遊離OH基のエステル化)を生じるものである。
【0246】
非官能基化および官能基化3-BHBポリオールエステル混合物のさらなる製造
a) しかし、先の実験はすべて、それぞれ異なる3-オキソ酪酸ポリオールエステル(すなわち、いずれの場合も3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルPG(3)および3-オキソ酪酸1,2-ペンタンジオールエステル)で繰り返されている。前述の3-オキソ酪酸ポリグリセロールエステルPG(3)および3-オキソ酪酸1,2-ペンタンジオールエステルは、触媒的に(キラルおよびノンキラル)および自己触媒的に、効率的に所望の生成物(すなわち、対応する3-オキシブチル酸ポリオールエステル)へ変換される。これまでの実験と同等の結果が得られる。精製・分離または分画・分析も同様に行われる。その後、先に述べた方法で官能基化を行い、対応する結果が生じる。
b) ポリオールとして1,2-ペンタンジオールまたはジグリセロールまたはポリグリセリンPG(3)を用いた3-オキソ酪酸ポリオールエステルについて、触媒としてラネーニッケル、還元剤として水素を用いて、75~110℃の範囲の温度で実験が繰り返された。その結果、同等の結果が得られた。精製、分離または分画、分析も同様に行う。その後、先に述べた方法で官能基化を行い、対応する結果が生じる。
c) ポリオールとして1,2-ペンタンジオール、ジグリセロール、ポリグリセロールPG(3)を用いた3-オキソ酪酸ポリオールエステルでの実験が、触媒としてウィルキンソン触媒(Rh(PPh3)3Cl)、還元剤として水素を用いて75~110℃の範囲の温度で繰り返し行われる。同等の結果が得られた。精製、分離または分画、分析も同様に行う。その後、先に述べた方法で官能基化を行い、対応する結果が得られる。
d) 特に3-BHBジグリセロールエステルはわずかに苦味を感じるだけなので、特にこれらのエステルは治療用途に有効な製品群であると言える。したがって、3-オキソ酪酸ジグリセロールエステル混合物の還元は、より大きなスケール(2~4kg)で実行される。
【0247】
まず、触媒としてチラリドン(登録商標)R、還元剤としてイソプロパノールを用い、前の実験の化学量論的反応条件を2kgスケールで適用する。室温で10日間攪拌した後、完全に還元された反応生成物(すなわち3-ヒドロキシ酪酸ジグリセロールエステル混合物)を得ることができる。この後、酵素を分離し、蒸留により精製する。
【0248】
この反応生成物の半分(約1kg)をドコサヘキサエン酸無水物で完全に官能化する(200モル%過剰)。分析により、官能基化された生成物には遊離のヒドロキシル基が残っていないことが確認された。過剰の脂肪酸無水物を蒸留除去した後、3-ヒドロキシ酪酸ジグリセロールエステルのそれぞれの完全官能化混合物が得られる。
【0249】
3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの完全官能化混合物は、わずかに苦味を有するだけで、有機的に受け入れられ、適合性がある。
【0250】
3-オキソ酪酸ジグリセロールエステル(=反応物)の製造
25gの3-オキソ酪酸エチルエステル(アセト酢酸エチルまたはアセト酢酸エステル)と6.5gのジグリセロールを、デフレグレーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた100mLのマルチネックフラスコに供給する。
【0251】
50℃で、0.35gの固定化酵素(カンジダアンタルクティカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ、例えば Novozym(登録商標)435)を添加する。酵素を濾過し、過剰の3-オキソ酪酸エチルエステルを真空下で蒸留除去する。
【0252】
得られた反応生成物は、3-オキソ酪酸ジグリセリンエステルであり、分析分析の結果、以下の組成からなることがわかった。3-オキソ酪酸モノジグリセリンエステル45%、3-オキソ酪酸ジグリセリンエステル48%、3-オキソ酪酸トリジグリセリンエステル7%である。特性評価は、GC、GPC、GC-MSで行う。
【0253】
精製時には、反応物や反応副生成物が除去され、純粋な混合物が得られる。この混合物の一部をクロマトグラフィーで分離し、各種のジグリセロールエステルが、それぞれ純粋な物質(すなわち、純粋な3-オキソ酪酸モノジグリセロールエステル、純粋な3-オキソ酪酸ジグリセロールエステル、純粋な3-オキソ酪酸トリジグリセロールエール)として取得される。この混合物の別の一部は、分別蒸留による分離に供される。
【0254】
3-オキソ酪酸ジグリセロールエステル(=反応物)のさらなる製造
106gの3-オキソ酪酸エチル(アセト酢酸エチルまたはアセト酢酸エステル)と29gのジグリセロールを、デフレグレーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた250mLのマルチネックフラスコに供給する。
【0255】
100℃の温度で、1.4gの30%メタノールNaOMe溶液が、攪拌しながら加えられる。反応中に生成したエタノールを連続的に蒸留除去する。反応時間5時間後、反応混合物を冷却し、NaCl溶液で洗浄する。粗エステル混合物が乾燥され、過剰のエチル3-オキソ酪酸エステルが真空下で蒸留除去される。
【0256】
反応生成物は、以下の組成の3-オキソ酪酸ジグリセロールエステルである:3-オキソ酪酸モノジグリセリンエステル26%、3-オキソ酪酸ジグリセリンエステル51%、3-オキソ酪酸トリジグリセリンエステル22%、3-オキソ酪酸テトラジグリセリンエステル1%。特性評価は、GC、GPC、GC-MSで行われる。
【0257】
精製時には、反応物や反応副生成物が除去され、純粋な混合物が得られる。この混合物の一部をクロマトグラフィーで分離し、各種のジグリセリンエステルが純物質として得られる(すなわち、純粋3-オキソ酪酸モノジグリセリンエステル、純粋3-オキソ酪酸ジグリセリンエステル、純粋3-オキソ酪酸トリジグリセリンエステルなど)。この混合物の別の一部は、分別蒸留による分離に供される。
【0258】
生理学的応用試験:体外消化試験
本発明の3-BHBジグリセロールエステル混合物の消化実験(分割または開裂実験)結果
切断実験により、本発明に従って製造された3-BHBジグリセロールエステルまたはそれらの混合物ならびにそれらの官能化誘導体/類似体は、ヒトの胃腸管で切断され得ることが示される。
【0259】
使用される出発混合物は、一方で、(R)構成された3-ヒドロキシ酪酸モノ-ジグリセロールエステル、3-ヒドロキシ酪酸ジ-ジグリセロールエステル、3-ヒドロキシ酪酸トリ-ジグリセロールエステルおよび3-ヒドロキシ酪酸テトラ-ジグリセロールエステルをそれぞれ有する本発明の方法によって得られる精製エナンチオマー純化混合物であり、他方で、本発明の方法によって得られる精製された(R)構成された3-ヒドロキシ酪酸モノ-ジグリセロールエステル、3-ヒドロキシ酪酸ジ-ジグリセロールエステル、3-ヒドロキシ酪酸トリ-ジグリセロールエステルおよび3-ヒドロキシ酪酸テトラ-ジグリセロールエステルの精製されたエナンチオマー的に純粋な脂肪酸官能化混合物である。
【0260】
ニアボディでの切断実験では、2種類の媒体を検討した。
-胃を模擬したFaSSGF
-腸管を模擬したFaSSIF
どちらの培地もイギリスのバイオレリバント(登録商標)社製である。また、一部の実験ではブタの膵臓(パンザイトラット(登録商標)40,000 Fa.アレルガン)が付加される。
【0261】
FaSSGFまたはFaSSIF培地において、パンザイトラット(登録商標)を添加した場合と添加しない場合(いずれも35℃、24時間)の切断実験の結果、パンザイトラット(登録商標)を添加した場合と添加しない場合のFaSSGF条件下において、試料は加水分解することがわかった;これは主に培地の低いpH値(pH=1.6)によるものである。FaSSIF条件下では、パンザイトラット(登録商標)を使用した場合より低い変換が実行される。
【0262】
どの実験でも、カスケード(テトラエステルがトリエステルになり、トリエステルがジエステルになるなど)は、目的の遊離酸3-ヒドロキシ酪酸(3-BHB-FS)が得られるまで続くことがわかる。
【0263】
本発明の3-BHBジグリセリルエステル混合物のさらなる消化実験(開裂実験)について
各(R)構成された3-ヒドロキシ酪酸モノジグリセロールエステル、3-ヒドロキシ酪酸ジジグリセロールエステル、3-ヒドロキシ酪酸トリジグリセロールエステルおよび3-ヒドロキシ酪酸テトラジグリセロールエステルに基づき上記に記載されたように製造されたエナンチオマー的に純粋な混合物2g、および対応する脂肪酸官能化混合物が、それぞれ50gの水に溶かし、0.5g(1重量%)のパンクレアチンが添加される。パンクレアチンは、アラガン社から市販されている「パンザイトラット(登録商標)40,000」の形で使用される。混合物全体が、50℃のホットプレート上で撹拌される;反応の経過は、酸価を経時的に連続して記録することによって測定され、モニターされる。いずれの場合も観察期間中に酸価が上昇する(脂肪酸官能基を有する3-ヒドロキシ酪酸-ジグリセリンエステル混合物を遊離酸に開裂する)。パンクレアチンによる本発明によるエステルの混合物の水性開裂の変換/時間経過は、時間経過に伴う酸価の上昇を含め、遊離体混合物の遊離酸への所望の分解を実証している。これは適切な分析によって確認されている。この実験により、本発明による出発混合物(遊離体混合物)は、対応するケト体療法のための3-ヒドロキシ酪酸の適切な生理学的前駆体であることが証明された。
【0264】
この試験は、純粋な状態の個々のエステルに基づき、繰り返し検証される。すなわち、3-ヒドロキシ酪酸モノ-ジグリセロールエステル、3-ヒドロキシ酪酸ジ-ジグリセロールエステル、3-ヒドロキシ酪酸トリ-ジグリセロールエステル、3-ヒドロキシ酪酸テトラ-ジグリセロールエステルおよびそれらの官能化誘導体は、いずれもパンクレアチンにより切断され、遊離3-ヒドロキシ酪酸(3-BHB-FS)となることが判明している。
【0265】
先に述べた開裂実験は、好ましくはエナンチオマー的に純粋で、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC5-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC8-C34-脂肪酸で官能化された3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが、特にその意図する効果に関して、生理学的に許容できるまたは生理学的適合形態で存在し、遊離3-ヒドロキシ酪酸もしくはその塩の有効な前駆体もしくは代謝物であるという証明になる。