IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケトリピックス セラポーティクス ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7459141アシルカップされたヒドロキシカルボン酸及びその塩とエステルを製造する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】アシルカップされたヒドロキシカルボン酸及びその塩とエステルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/62 20220101AFI20240325BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240325BHJP
   C07C 69/72 20060101ALN20240325BHJP
   C07C 67/03 20060101ALN20240325BHJP
【FI】
C12P7/62
C07B61/00 300
C07C69/72
C07C67/03
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021573409
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2019065275
(87)【国際公開番号】W WO2020249197
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】323005511
【氏名又は名称】ケトリピックス セラポーティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】ロッホマン、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ライアー、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーア、ミヒャエル
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-508054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0374490(US,A1)
【文献】特表2001-515510(JP,A)
【文献】特表2016-514725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/
C07C 67/
C07C 69/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシルキャップされた3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルを製造する方法であって、
ここで、ラジカルRが、水素またはC-C-アルキルを表す一般式(I)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (I)
の化合物の少なくとも1つを、
ラジカルRが、C-C-アルキルを表す一般式(II)
CH-C(O)-CH-C(O)OR (II)
の化合物と反応させること、
前記反応が、溶媒の非存在下で実行されること、および、
前記反応が、触媒としての酵素の存在下において実行されること、反応後触媒がリサイクルされること、
前記酵素は、リパーゼから選択されること、
前記酵素が、固定化形態において、使用されること;および/または、
酵素は、反応後にリサイクルされること、
前記反応は、触媒としての酵素の存在下で、10℃~80℃の範囲内の温度で実行されること;
これにより、反応生成物として、ラジカルRが上記に定義された意味を有すること、および、ラジカルRがラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表す一般式(III)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III)
で示される少なくとも1つのアシルキャップされた3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルが得られるようにすることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反応に続いて部分的または完全なエステル化またはエステル交換が実行されること、または、
-C30-脂肪アルコールから選択された少なくとも1つの脂肪アルコール(V)によって、そのラジカルRでの一般式(III)のエステル化またはエステル交換が実行されることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項3】
脂肪アルコール(V)は、一般式(V’)
-OH (V’)
に対応すること、
ここで、ラジカルRが、直鎖または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和脂肪族C-C30-アルキルラジカルを表すものであることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項4】
ラジカルRが、1-デカニルラジカル、1-ドデカニルラジカル(ラウリルラジカル)、1-テトラデカニルラジカル(ミリスチルラジカル)、1-ヘキサデカニルラジカル(セチルラジカル)、1-ヘプタデカニルラジカル(マルガリールラジカル)、1-オクタデカニルラジカル(ステアリルラジカル)、1-エイコサニルラジカル(アラキジルラジカル)、1-ドコサニルラジカル(ベヘニルラジカル)、1-テトラコサニルラジカル(リゴセリルラジカル)、1-ヘキサコサニルラジカル(セリルラジカル)、1-オクタコサニルラジカル(モンタニルラジカル)、1-トリコンタニルラジカル(メリシルラジカル)、シス-9-ヘキサデセン1-イルラジカル(パルミトレイルラジカル)、シス-9-オクタデセン1-イルラジカル(オレイルラジカル)、トランス-9-クタデセン-1-イルラジカル(エライジルラジカル)、シス-11-オクタデセン-1-イルラジカル、シス、シス-9,12-オクタデカジエン-1-イルラジカル(リノレイルラジカル)または6,9,12-オクタデカトリエン-1-イルラジカル(γ-リノレニルラジカル)を表すことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項5】
前記エステル化またはエステル交換は、溶媒の非存在下で実行されること;および
前記エステル化またはエステル交換は、酵素および金属含有酸性または塩基性触媒から選択される触媒の存在下で実行されることを特徴とする請求項3~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記触媒は、エステル化またはエステル交換が実行された後、リサイクルされることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項7】
前記エステル化またはエステル交換は、触媒としての酵素の存在下で実行されること;
前記酵素は、リパーゼから選択されること;
前記酵素は、特に担体上の固定化形態において使用されること;および
前記酵素は、前記エステル化またはエステル交換の後、リサイクルされることを特徴とする請求項2~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記エステル化またはエステル交換は、金属含有酸性または塩基性触媒の存在下で実行されること;
前記触媒は、(i)アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、および、アルカリまたはアルカリ土類アルコール塩、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、NaOMe、KOMeおよびNa(OBu tert.)から選択される塩基性触媒、(ii)鉱酸および有機酸、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびカルボン酸から選択される酸性触媒、(iii)チタン、錫、亜鉛およびアルミニウム化合物をベースとするルイス酸、チタンテトラブチレート、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム、アルミニウムトリイソプロピルから選択されるルイス酸、および(iv)鉱物ケイ酸塩、ゲルマン酸塩、炭酸塩およびアルミニウム酸化物、ゼオライト、モンモリロナイト、モルデナイト、ヒドロタルサイトおよびアルミナに基づく不均一系触媒;ならびにこれらの組み合わせから選択されること;および
前記触媒は、エステル化またはエステル交換の後にリサイクルされることを特徴とする請求項2~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
一般式(I)の化合物に基づいた一般式(II)の化合物は、等モル量~200モル%超過までの範囲内のモル量において使用されることを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
一般式(I)の少なくとも1つの化合物と一般式(II)の少なくとも1つの化合物との反応の間に、ラジカルRが、C-C-アルキルを表す一般式(IV)
-OH (IV)
による化合物が同時に形成されること、
特に、一般式(IV)による化合物が、反応から連続的に取り出されることを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケト体および関連する代謝ならびに関連する疾患の治療の分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、任意に官能化されアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸ならびにそれらの塩およびエステルの製造方法、ならびに、このようにして得られるまたはこのようにして調製される反応生成物(すなわち任意に官能化されアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸ならびにそれらの塩およびエステル)およびそれらの使用、特に薬剤または医薬などの医薬品組成物におけるまたは食品および/もしくは食品おける、それらのさらなる応用または使用に関するものである。
【0003】
さらに、本発明は、本発明方法に従って得られるまたは製造される反応生成物(すなわち、任意に官能化されたアシルキャップまたはアシルブロック化3ヒドロキシ酪酸ならびにそれらの塩およびエステル)を含む医薬品組成物、特に薬剤または医薬品、およびそれらの応用または使用に関する。
【0004】
最後に、本発明は、本発明の方法によって取得されまたは製造される反応生成物(すなわち、任意に官能化されアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸およびその塩およびエステル)を含む食品および/または食品生成物、特に食品サプリメント、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、ならびに強度および/または耐久性スポーツサプリメントならびにそれらの用途または使用に関する。
【背景技術】
【0005】
人間のエネルギー代謝において、ブドウ糖は短期的に利用可能なエネルギー担体であり、水と二酸化炭素を放出することによってミトコンドリア内でエネルギーに代謝される。肝臓のグリコーゲン貯蔵は、夜の睡眠期間中にすでに空になる。しかしながら、特に人間の中枢神経系(CNS)と心臓は、永続的なエネルギー供給を必要とする。
【0006】
主に中枢神経系で利用できるブドウ糖の生理学的代替物は、いわゆるケト体(同義語でケトン体とも呼ばれる)である。
【0007】
ケト体という用語は、特に3つの化合物の総称であり、主に異化代謝状態(空腹、減量食、低炭水化物食など)で形成され、ケトーシスを生じるものである。ケト体という用語には、特に3つの化合物、アセトアセテート(同義語でアセタセテートまたは3-オキソ酪酸とも呼ばれる)およびアセトン並びに3-ヒドロキシ酪酸(以下、ベータ-ヒドロキシ酪酸またはBHBまたは3-BHBとも呼ばれる)またはその塩(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸塩またはベータヒドロ酪酸塩)を含むものであり、ここで、後者は前述の3つの化合物の中で最も重要なものである。3-ヒドロキシ酪酸またはその塩は、(R)構成されたエナンチオマー、すなわち(R)3-ヒドロキシ酪酸(3位にキラリティーの中心を強調するために,同義語的に(3R)-3-ヒドロキシ酪酸とも呼ばれる)またはその塩として生理的に存在する。
【0008】
これらのケト体はまた、断食時または飢餓の間に脂肪分解によって体内に蓄積された脂質から生理学的に大量に提供され、エネルギー源のグルコースとほぼ完全に置き換えられる。
【0009】
ケト体は、ベータ酸化に由来するアセチル補酵素A(=アセチル-CoA)から肝臓において形成される;それらは、人体においてアセチル補酵素Aの輸送可能な形を示している。しかし、ケト体を利用するためには、脳と筋肉は、ケト体をアセチル補酵素Aに戻すために要求される酵素を発現させることに最初に適応する必要がある。特に空腹時には、ケト体は、著しい量のエネルギー生産に貢献する。たとえば、しばらくすると、脳は1日のブドウ糖量の3分の1しか摂取できなくなる。
【0010】
生理学的に、ケト体は、脂肪酸分解の通常の中間生成物であるアセチル補酵素Aの形の活性化酢酸の2つの分子から合成され、前記中間生成物は、アセチル補酵素A単体と酵素HMG-CoAシンターゼを使用して、中間生成物3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA(HMG-CoA)に延出し、最後にHMG-CoA-リアーゼがアセト酢酸を開裂する。これらの3つのステップは、肝臓のミトコンドリア(リネンサイクル)でのみ行われ、3-ヒドロキシ酪酸は最終的に酵素D-ベータ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼによってサイトゾルにおいて形成される。HMG-CoAは、アミノ酸ロイシンの分解の最終生成物でもあると同時に、アセトアセテートは、アミノ酸フェニルアラニンとチロシンの分解中に形成される。
【0011】
自然脱炭酸によりアセト酢酸はアセトンに変化し、糖尿病患者やダイエット中の人の呼気から感知されることがある。これは体内でそれ以上利用されることはない。しかし、ケト体に含まれるアセトンの割合は少ない。
【0012】
したがって、アセト酢酸は、生理学的条件下で、生理学的に適切な形態の3-ヒドロキシ酪酸または3-ヒドロキシ酪酸塩に還元的に変換されるが、炭酸ガスは、重度のケトーシスやケトアシドーシス(1型糖尿病患者でインスリンを投与していない場合など)、尿中、呼気中に検出され、嗅覚的にも感知可能である。
【0013】
3-ヒドロキシ酪酸は、現在、ウエイトトレーニング分野でナトリウム、マグネシウム、カルシウムの塩として使用され、販売されている。
【0014】
しかし、植物は、3-ヒドロキシ酪酸を生成せず、動物生体内の3-ヒドロキシ酪酸はケトーシス状態の痩せた動物の死体にしか発生しないため、進化的にヒトには知られていないかごく少量しかないため、3-ヒドロキシ酪酸は経口投与すると吐き気を催す。また、遊離酸やその塩の形の3-ヒドロキシ酪酸は非常に苦い味がし、激しい嘔吐や吐き気を催すことがある。
【0015】
さらに、これらの化合物が、腎臓に障害を与える可能性がことから、患者、特に新生児だけでなく成人も、3-ヒドロキシ酪酸の塩を大量に摂取することは永久に不可能である。
【0016】
さらに、3-ヒドロキシ酪酸とその塩の血漿半減期は、たとえ数グラムを摂取したとしても、ケトーシスが約3~4時間の間でしか持続しないため、非常に短いこと、つまり患者が、特に夜間において、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩による治療の恩恵を継続的に受けることができないものである。代謝性疾患の場合、これは生命を脅かす状況につながる可能性がある。
【0017】
したがって、そのような代謝性疾患の場合、いわゆる中鎖トリグリセリド、いわゆるMCTが、現在ケト原性療法について使用される。すなわちカプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸の(すなわち飽和線形C-,C-,C10-脂肪酸の)代謝変換が意図される。
【0018】
しかし、基本的には、薬学的・臨床的観点から、3-ヒドロキシ酪酸ならびに3-ヒドロキシ酪酸の生理的前駆体としてのアセト酢酸は、より有効な医薬・薬学的標的分子であり、従来技術によれば、原理的には多数の疾患の治療に使用可能だが、生理適合性の欠如により使用できない(例えば。エネルギー代謝、特にケト体代謝の機能不全に関連する疾患、または認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患、脂肪代謝性疾患など)。
【0019】
以下の表は、純粋に例示的なものであるが、決して限定するものではなく、活性成分である3-ヒドロキシ酪酸ならびにアセト酢酸(したがって、アセト酢酸の還元により生理的に得られる3-ヒドロキシ酪酸またはその塩)についての潜在的治療の選択肢または可能な適応症について示したものである。
【0020】
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、特に人体または動物体の生理的代謝において、生理的に3-ヒドロキシ酪酸またはその塩ならびにアセト酢酸(したがって生理的に3-ヒドロキシ酪酸およびその塩)に直接または間接的にアクセスできる有効な前駆体または代謝物を見つけることができることが医薬および臨床の観点から望まれる。
【0022】
その結果、従来技術は、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の生理学的に適切な前駆体または代謝産物を見つけるという試みを欠いてはいない。しかしながら、これまでのところ、従来技術において効率的な化合物は見出されていない。また、そのような化合物へのアクセスは、先行技術によれば可能ではなく、または容易に可能ではない。
【0023】
したがって、本発明の根底にある課題は、3-ヒドロキシ酪酸(すなわち、ベータ-ヒドロキシ酪酸またはBHBまたは3-BHB)またはそれらの塩の生理学的に適切なまたは生理学的に適合性のある前駆体および/または代謝産物を生成するための効率的な方法の提供である。
【0024】
そのような方法は、特に、効率的な方法でアクセス可能な、特に大量に、そして大量の有毒な副産物なしに、それぞれのBHB前駆体および/またはBHB代謝物を製造しなくてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
全く驚くべき方法で、本出願人は今、任意に官能化されアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸およびその塩とエステル、特に任意に官能化されアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸のエステルが、ケト体3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的かつ生理的に有効なまたは生理的に適合する前駆体および/または代謝物を表すことを発見し、これに関して、これらの化合物を、直接かつ効果的に、特に経済的に、また工業的に実現可能に入手することができるこれらの化合物の製造方法を発見しまたは開発することができるようにしたものである。
【0026】
したがって、上記の問題を解決するために、本発明は、本発明の第1の態様によれば請求項1に記載の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベ-タ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはその塩もしくはエステルを製造する方法を提案し、さらに、本発明による方法の特に特別および/または有利な実施形態が、関連する従属請求項の主題とされる。
【0027】
さらに、本発明の第2の態様によれば、本発明は、独立請求項(請求項23)による本発明方法によって得られる反応生成物、または、それぞれの請求項(請求項29~31)による任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはその塩もしくはエステル、または、それぞれの請求項(請求項32および33)によりこれに関して取得可能な少なくとも2つ、特に少なくとも3つの任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはその塩もしくはエステルの混合物に関するものであり;さらに、本発明のこの態様の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0028】
同様に、本発明は、本発明の第3の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項34)による医薬品組成物、特に薬剤または医薬品に関するものであり;さらに、本発明のこの態様の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0029】
さらに、本発明は、本発明の第4の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項36)による、予防的および/または治療的処置のための、または、人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置に用いるための、本発明の反応生成物または本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはその塩もしくはエステル、または、少なくとも2つ、特に少なくとも3つの任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはそれらの塩もしくはエステルの本発明の混合物に関するものである。
【0030】
さらに、本発明は、本発明の第4の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項37)による、予防的および/または治療的処置のための、または、人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置に用いるための、本発明の反応生成物または本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはその塩もしくはエステル、または、少なくとも2つ、特に少なくとも3つの任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはそれらの塩もしくはエステルの本発明の混合物の使用に関するものである。
【0031】
さらに、本発明は、本発明の第6の態様によれば、関連した独立請求項(請求項38)による、本発明の反応生成物または本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはその塩もしくはエステル、または、少なくとも2つ、特に少なくとも3つの任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはその塩もしくはエステルの本発明の混合物の使用に関する
【0032】
さらに、本発明は、本発明の第7の態様によれば、関連する独立請求項(請求項39)による食品および/または食品生成物に関する;さらに、本発明による食品および/または食品生成物の特に特別および/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0033】
最後に、本発明は、本発明の第8の態様によれば、本発明の反応生成物、または、本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはその塩もしくはエステル、または関連する独立請求項(請求項41)による食品および/または食品生成物中の少なくとも2つ、特に少なくとも3つの任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはその塩もしくはエステルの本発明の混合物の使用に関するものである;さらに、本発明による使用の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0034】
以下、繰り返しを避ける目的で本発明の一態様に関してのみ記載する以下の特徴、実施形態、利点等は、当然、本発明の他の態様にも適宜適用され、これには別途言及を要しないことは言うまでもない。
【0035】
さらに、本発明の個々の側面および実施形態は、本発明の他の側面および実施形態との任意の組み合わせにおいても開示されているとみなされ、特に、すべての特許請求の範囲の後方参照から生じる特徴および実施形態の任意の組み合わせも、結果として生じるすべての組み合わせ可能性に関して広範に開示されていると考えられることは言うまでもない。
【0036】
以下に提供される全ての相対的又は百分率の重量ベースのデータ、特に相対的な量又は重量データに関して、本発明の範囲内で、これらは、特に以下に定義するように、全ての成分又は成分を含む、それぞれ100重量%又は100重量%に常に加算するように当業者によって選択されるべきであることに更に留意すべきである;しかしながら、これは当業者にとって自明なことである。
【0037】
また、当業者は、必要に応じて、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の範囲の仕様を設定することができる。
【0038】
さらに、以下に規定するすべての値またはパラメータ等は、原則として、標準化されたまたは明示的に規定された決定方法、あるいは、当業者に周知の決定または測定方法により決定または特定できることが適用される。
【0039】
このように述べた上で、以下、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
本発明の主題は、本発明の第1の態様によれば、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)またはその塩もしくはエステルを製造する方法であり、
ラジカルRが、水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチルである一般式(I)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR- (I)
の少なくとも1つの化合物が、
ラジカルRが、C-C-アルキル、特にメチルまたはエチル、好ましくはエチルである一般式(II)
CH-C(O)-CH-C(O)OR (II)
の少なくとも1つの化合物と反応すること、
これによって、反応生成物として、ラジカルRが上記に定義される意味を有し、ラジカルRがラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表す一般式(III)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III)
の少なくとも1つのアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルが得られるものである。
【0041】
このようにして、本発明の方法は、3位(=水酸基の位置)がアシル基でキャップまたはブロックされた3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルが得られる。アシル基は、一般構造R-(C=O)-を有する有機化学における官能基であり、ラジカルRは有機ラジカル(アルキル基、アリール基、ヘテロ芳香族基など)または水素原子を表す。アシル基は、形式的にはカルボン酸、アルデヒド、カルボン酸クロライドから誘導され、それぞれOH基、水素原子または塩素がラジカルRで置換されたものである。アシル化とは、このようなアシル基を導入することをいう。
【0042】
(本発明の場合におけるように)アシル化がヒドロキシル基(OH基)(即ち3-ヒドロキシ酪酸の3位に位置するOH基)で行われる場合、全体として、一般構造R-(C=O)-O-を有するアシルオキシ基が形成される。
【0043】
本発明によれば、これによって、アシルキャップされた(=アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸は、3位におけるアシル化された酪酸または3位においてアシルオキシ化されたブタン酸である。
【0044】
上記のように、本出願人は、極めて驚くべきことに、このようにして製造されたアシルキャップされた(=アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステル(任意に、以下に詳述されるように官能化されてもよい)が、生理学的に適合するため、また医薬または臨床用途においてより大量に使用できる遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルの先駆体および/または代謝産物であることから、効率的であることを発見している。
【0045】
このように、本発明による製造方法によって初めて効率的にアクセス可能となる、上記の任意に官能化されアシルキャップされた(=アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルは、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルに代わる生理学的および薬学的に関連した代替物を示す。
【0046】
このような化合物を通常の有機合成で製造する場合、3-ヒドロキシ酪酸は重合する傾向が強く、その他の好ましくない副反応(脱水、分解など)を起こすため、複雑でコストがかかる。本発明の範囲内で、任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルを、望ましくない副反応なしに、特に単一工程で製造することができる、効率的に作用する製造方法を提供することが初めて可能になった。
【0047】
したがって、本発明の方法は、既知の、商業的に入手可能な、とりわけ生理学的に無害な成分または反応物(出発化合物)から、無毒な任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルを初めて提供できるようにしたものである。結果として得られた任意に官能化されたアシルカップされた3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルは、生理的に、特に胃および/または腸で分解され、有効成分または活性成分としての標的分子「3-ヒドロキシ酪酸」またはその塩(および、さらに生理的に3-ヒドロキシ酪酸に変換または還元されるアセト酢酸)を放出または生成することが可能である。
【0048】
さらに、前記任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルも、長期間にわたって大量に経口投与(例えば、1日量50g以上投与)しても適合性を確保する許容できる味を有するものである。
【0049】
さらに、本出願人による研究は、本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルが、それ自身が遊離ヒドロキシ酪酸またはその塩の有効な前駆体または代謝物であるだけでなく、遊離ヒドロキシ酪酸またはその塩(例えばグリセリド)のさらなる前駆体または代謝物の合成のための出発材料として使用できることを示すものである。
【0050】
同様に、本発明による製造方法によれば、有害な不純物を含まないアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルを提供することが可能である。
【0051】
胃および/または腸での生理的な開裂の際に、任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸は、ケト化合物の3-ヒドロキシ酪酸と3-オキソ酪酸(アセト酢酸またはアセト酢酸塩)に分解されるが、さらに体内で3-ヒドロキシ酪酸に還元されることができる。3-オキソ酪酸ラジカルと3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの両方または3-ヒドロキシ酪酸の存在により、有効成分3-ヒドロキシ酪酸の利用または放出の異なる割合が損山する。その結果、本発明の反応生成物はリタード効果を発揮する。したがって、全体として、本発明による任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸は、分解速度の異なる2つのケト体を示す。
【0052】
さらに、反応条件、特に反応物の量および/または比率の特異的な制御によって、ダブルキャッピング(すなわち、本発明によるケト化合物によって引き続いてキャップされる3-BHB二量体の形成)が達成されるものであり、これにより活性成分3-ヒドロキシ酪酸の長期利用を可能にするものである。
【0053】
また、出発材料を適切に選択することで、エナンチオ選択的に本方法を実施することも可能である。例えば、本発明によれば、製造方法が、生物学的に関連する形態、すなわち(R)-エナンチオマーを濃縮し、あるいは経口投与(すなわち腎臓を介しての排泄)した際に、患者の腎臓系に負担をかけないようにすることができる。しかし、原理的には、所定の条件下において有用であることが好ましく、(S)エナンチオマーを濃縮しまたは取得することも可能にするものである。
【0054】
さらに、本発明による製造方法は、任意のさらなる処理または精製工程を含めて、経済的に運用することができ、また大規模に実施することができる。
【0055】
特に、本発明の製造方法は、市販の出発化合物を使用し、さらに大規模に実施する場合でも、比較的簡単なプロセス管理が可能である。さらに、使用される出発化合物自体が生理学的に適合し、薬学的に活性であるため、まだ存在する反応物が反応生成物に残り、精製の方法段階は全くあるいはほとんど必要ない。しかしながら、原理的には、反応生成物から反応物を除去することが可能であり、特定の条件下、特に有機的な特性に関して都合が良いものである。
【0056】
従来の先行技術の製造方法とは対照的に、本発明による製造方法は、複雑な出発物質を使用せず、1つの工程のみを使用するものである。それにもかかわらず、本発明による優れた収率が達成され、そこでは副産物の形成が最小化されるかまたは回避される。
【0057】
また、本発明の方法は、簡便で経済的である。特に、本発明による方法は、通常、溶媒の非存在下および/または無溶媒で行われる(すなわち、質量での反応または物質での反応またはいわゆるバルク反応として行われる);その結果、得られた反応生成物は溶媒で汚染されておらず、方法または反応を実施した後に、コストとエネルギーを要する方法で、溶媒を除去して廃棄またはリサイクルする必要がない。さらに、有毒な副生成物も形成されない。
【0058】
本発明によるアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の製造方法は、以下の一般的な反応スキームに示される(ここで、RおよびRは上記に定義された意味を有し、「catalyst」は触媒を表す)。
【0059】
【化1】
【0060】
本発明の特定の実施形態によれば、一般式(I)の化合物は、ラセミ体または(R)エナンチオマーのいずれかの形態で使用することができる。(R)配置は、一般式(I)の化合物の3位にあるキラル炭素原子を指す。
【0061】
好ましい実施形態によれば、一般式(I)の化合物は、エステルであってもよい(すなわち、上記一般式(I)において、ラジカルRはC-C-アルキルを表すか、またはラジカルRは水素を表さない)。
【0062】
特に、本発明に係る製造方法においては、上記一般式(I)において、ラジカルRがエチルを表すことが好ましい。すなわち、一般式(I)の化合物として、式CH-CH(OH)-CH-C(O)OCの3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-ヒドロキシ酪酸エチル)を用いてもよい。
【0063】
さらに、本発明の製造方法によれば、一般式(II)において、ラジカルR2がエチルを表すことが好ましい。すなわち、本実施形態では、一般式(II)の化合物として、式CH-CH(OH)-CH-C(O)OCの3-オキソ酪酸エチルエステル(3-酪酸エチル)が使用される。
【0064】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明は、特に上記に定義されるように、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBおよび/または3-BHB)またはその塩もしくはエステルを製造する方法に関するものであり、
ここで、式(Ia)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OC (Ia)
の少なくとも1つの化合物が、
式(IIa)
CH-C(O)-CH-C(O)OC (IIa)
の少なくとも1つの化合物と反応させること、
これによって、反応生成物として、式(IIIa)
CH3-CH[O-C(O)-CH-CH]-CH-C(O)OC (IIIa)
の少なくとも1つのアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルが得られるものである。
【0065】
一般式(I)及び(II)の化合物がエチルエステルであることによる本発明による特に好ましい実施形態は、下記する反応スキームによって示される。
【0066】
【化2】
【0067】
一般式(I)及び(II)の化合物がエチルエステルであるこの特定の実施形態によれば、特に効率的な方法制御と、副生成物の形成を最小化または抑制した高収率を実現することができる。さらに、3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルおよび3-オキソ酪酸エチルエステルは、いずれも市販されている量が多く、経済的に効率よく変換することも可能である。特に、3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルは、遊離酸(すなわち3-ヒドロキシ酪酸)よりも経済的に有利である。さらに、出発化合物(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸エチルおよび3-オキソ酪酸エチル)は、例えば、酢酸エチルのクライゼン縮合によって大規模に得ることができる。
【0068】
特に、本発明の方法においては、反応は、溶媒の非存在下および/または無溶媒において実行される。これは、質量における反応、物質内の反応として、いわゆるバルク反応として実行される。これは、得られた反応生成物が、溶媒によって汚染されないこと、方法または反応が実行された後、コストおよびエネルギーを要する方法において、溶剤が、除去されるとともに、廃棄されまたはリサイクルされる必要がないことに利点を有する。驚くべきことに、この方法または反応は、それにもかかわらず、少なくとも本質的に重大な副生成物の形成なしに、高い転化率と収率で進行する。
【0069】
本発明の特定の実施形態によれば、反応は、触媒、特に酵素および/または金属含有触媒および/または金属系触媒、酸性触媒または塩基性触媒、好ましくは酵素の存在下で実行される。この特定の実施形態において、触媒は、反応後にリサイクルされることが好ましい。
【0070】
以上のように、本発明によれば、反応は、触媒としての酵素の存在において実行されることができる。
【0071】
これに関して、酵素は、特にシンテターゼ(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼおよびそれらの組み合わせから選択することができる。本発明によれば、シンテターゼ(同義語でリガーゼ)は、特にリガーゼのクラスの酵素であり、リガーゼは、共有結合によって2つ以上の分子を連結することを触媒する酵素である。本発明でいうカタラーゼとは、特に過酸化水素を酸素と水に変換する能力を有する酵素のことである。エステラーゼという用語は、特にエステルをアルコールと酸に加水分解(鹸化)する能力を持つ酵素を指し、したがってこれらは特にヒドロラーゼであり、脂肪分解エステラーゼはリパーゼとも呼ばれる。本発明の意味でのリパーゼは、特にグリセリドなどの脂質から遊離脂肪酸を分解する(脂肪分解)能力を有する酵素をいう。
【0072】
本発明の範囲内において、触媒として使用される酵素は、カンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)、サーモミセスラヌギノサス、カンジダルゴサ、アスペルギルスオリザエ、シュードモナスセパシア、シュードモナスフルオレセンス、リゾープスデレマおよびシュードモナス属細菌およびそれらの組み合わせ、好ましくはカンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)およびサーモミセスラヌギノサスに由来するものである。
【0073】
特定の実施形態によれば、前記酵素は、特に担体上の、好ましくはポリマー担体上の、より好ましくは疎水性を有するポリマー有機担体の固定化形態において、より好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂系担体に固定化されて使用されることができる。
【0074】
一般に触媒の使用に関して本明細書で説明したように、酵素を触媒として使用する場合、反応後に酵素をリサイクルすることが好ましい。
【0075】
反応が、本発明の製造方法の枠内における触媒としての酵素の存在下で実行される場合、反応は、10℃~80℃の範囲内、特に20℃~80℃の範囲内、好ましくは25℃~75℃の範囲内、より好ましくは45℃~75℃の範囲内、さらに好ましくは50℃~70℃の範囲内の温度で実行されることが好ましい。
【0076】
触媒として酵素を用いる場合、酵素の使用量は広い範囲で変化させることができる。特に、酵素は、出発化合物(I)及び(II)の総量を基準として、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲内の料で使用される。それにもかかわらず、個々の場合または特定の用途のために、本発明の範囲を離れることなく、上記の量から逸脱することが必要であり得る。
【0077】
本発明の特定の実施形態によれば、反応が触媒としての酵素の存在下で行われる場合、圧力範囲も広い範囲内で変動することができる。特に、反応が触媒としての酵素の存在下で実行される場合、反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で実行されることが可能である。
【0078】
本発明の代替的な実施形態によれば、反応は、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行されることができる。
【0079】
反応が金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行される本発明のこの代替実施形態によれば、触媒は、特に(i)塩基性触媒、特にアルカリまたはアルカリ土類水酸化物およびアルカリまたはアルカリ土類アルコール塩、例えばNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、NaOMe、KOMeおよびNa(OBu tert.)、(ii)酸性触媒、特に鉱酸、および有機酸、例えば硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびカルボン酸、(iii)ルイス酸、特にチタン、錫、亜鉛およびアルミニウム化合物をベースとするルイス酸、例えば、チタンテトラブチレート、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム、アルミニウムトリイソプロピル、および(iv)不均一系触媒、特に鉱物ケイ酸塩、ゲルマン酸塩、炭酸塩およびアルミニウム酸化物に基づく、ゼオライト、モンモリロナイト、モルデナイト、ヒドロタルサイトおよびアルミナ、ならびにこれらの組み合わせなどから選択されるものである。
【0080】
本実施形態によれば、特にアルカリまたはアルカリ土類アルコール酸塩を触媒として用いることができる。
【0081】
特に、本実施形態によれば、金属含有触媒および/または金属系触媒、酸性触媒又は塩基性触媒に基づく触媒が、反応後にリサイクルされる場合も好ましい。
【0082】
特に、本実施形態では、金属含有触媒及び/又は金属系酸性触媒又は塩基性触媒に基づく触媒が、反応後にリサイクルされることが好ましい。
【0083】
本発明のこの特定の実施形態によれば、反応が金属含有および/または金属ベース、酸性または塩基性触媒の存在下で実行される場合、温度は広い範囲内で変化させることができる。特に、反応は、20℃~150℃の範囲内、特に50℃~140℃の範囲内、好ましくは70℃~130℃の範囲内、より好ましくは80℃~125℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~120℃の範囲の温度で、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行されることが好ましい。
【0084】
さらに、この実施形態によれば、触媒(いわゆる金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒)は、広い量範囲内で変化されることが好ましい。例えば、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒に基づく触媒は、出発化合物(I)および(II)の合計量に基づいて、0.01~30重量%の範囲内、特に0.05~15重量%の範囲内、好ましくは0.1~15重量%の範囲内、好ましくは0.2~10重量%の範囲内の量で使用されることが好ましい。それにもかかわらず、本発明の範囲を離れることなく、特定の用途または個々の場合について、言及された量から逸脱することが可能である。
【0085】
本発明のこの特定の実施形態によれば、金属含有および/または金属ベース、酸性または塩基性触媒の存在下で反応を行う場合、圧力範囲は広い範囲内で同様に変化させることができる。特に、反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行されることが好ましい。
【0086】
出発物質または出発化合物の量に関しても、広い範囲で変化させることができる。
【0087】
特に副生成物の最小化に関して、プロセスの経済性および方法の経過の最適化を考慮すると、一般式(I)の化合物をベースとする一般式(II)の化合物が、等モル量~200モル%超過までの範囲内、特に等モル量~150モル%超過までの範囲内、好ましくは等モル量~100モル%超過までの範囲内のモル量において使用される場合に有利である。
【0088】
同様に、特に副産物の最小化に関して、プロセスの経済性と方法の経過の最適化を考慮すると、一般式(II)の化合物と一般式(I)の化合物は、1.1:1~10:1の範囲内、特に1.5:1~9:1の範囲内、好ましくは2:1~8:1の範囲内、より好ましくは3:1~6:1の範囲内の一般式(II)の化合物/一般式(I)の化合物のモル比において使用される場合が、有利である。このようにして、副生成物の形成、特に二量体の3-ヒドロキシ酪酸とそのアシルキャップされた誘導体の形成は、効率的に防止される。
【0089】
本発明の製造方法において、一般式(I)の少なくとも1つの化合物と一般式(II)の少なくとも1つの化合物との反応中に、
一般式(IV)
-OH (IV)
による化合物が、同時に形成される。
ここで、ラジカルRが、上記に定義される意味を有する。したがって、本発明によれば、一般式(IV)による化合物が、特に蒸留による連続的除去によって、反応から取り出されることが、特に提供されるものである。このようにして、反応平衡は、反応生成物(すなわち、一般式(III)のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステル)側に効率的にシフトされる。また、副産物の発生を最小限に抑えるあるいは防止することができる。
【0090】
反応後、得られた反応生成物は、さらに精製または検査の工程にかけることができる。
【0091】
これに関連して、一般式(I)の少なくとも1つの化合物と一般式(II)の少なくとも1つの化合物との反応に続いて、特に蒸留および/またはクロマトグラフィーによる精製、好ましくは蒸留による精製が実行されることが好ましい。
【0092】
また、まだ存在する未反応反応物または反応物、まだ存在する未反応反応副生物または反応副生物、特に一般式(IV)による化合物は、分離除去され、特に蒸留除去されることが可能である。
【0093】
特に、本発明に関連して、まだ存在する反応物、特に一般式(I)及び(II)の反応物は、それらの分離後にリサイクルされることができる。
【0094】
本発明の製造方法の特定の実施形態によれば、反応が行われた後、反応生成物(III)が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、そのラジカルRで、好ましくはエステル化によってまたはエステル交換によって、官能化されるように進めることが可能である。
【0095】
特に、本発明に関して、反応に続いて、反応生成物(III)のそのラジカルR1で、好ましくはエステル化またはトランスエステル化による部分的、特に完全な官能化が好ましい。
【0096】
本発明の文脈では、官能化は、特定の側鎖基または官能基の交換または導入として理解されることが好ましい。エステル化は、ラジカルRが水素を表す場合に実行され、これによって、反応生成物(III)はカルボン酸の形態において存在する。このカルボン酸は、エステル化の過程でアルコールと反応し、水を排除したエステルが生成される。ただし、反応生成物(III)中のラジカルRが、C-C-アルキルを表す場合は、エステル交換が実行される。エステル交換では、あるエステルが別のエステルに変換される。エステルのアルコールラジカル(すなわち、この場合はC-C-アルキルラジカルを含む)は、他のアルコールラジカルに置き換わる。
【0097】
これに関連して、反応生成物(III)が、好ましくはC-C30-脂肪アルコール、特にC10-C30-脂肪アルコール、好ましくはC10-C24-脂肪アルコールから選択される、少なくとも1つの脂肪アルコール(V)で官能化される場合が、特に好ましい。
【0098】
本発明の好ましい実施形態によれば、脂肪アルコール(V)は、一般式(V’)
-OH (V’)
に対応すること、
ここで、ラジカルR4は、直鎖状または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和脂肪族のC-C30-アルキルラジカル、特にC10-C30-アルキルラジカル、C10-C24-アルキルラジカルを表し、特にヒドロキシ官能基(OH基)が一級および/または末端であるものを表すものである。
【0099】
本発明方法のこの実施形態では、ラジカルRが、直鎖状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和脂肪族C10-C24-アルキルラジカルを表し、特にここで、ヒドロキシル官能基(OH官能基)が一級および/または末端である場合が、特に好ましい。
【0100】
特に、ラジカルRが、1-デカニルラジカル、1-ドデカニルラジカル(ラウリルラジカル)、1-テトラデカニルラジカル(ミリスチルラジカル)、1-ヘキサデカニルラジカル(セチルラジカル)、1-ヘプタデカニルラジカル(マルガリールラジカル)、1-オクタデカニルラジカル(ステアリルラジカル)、1-エイコサニルラジカル(アラキジルラジカル)、1-ドコサニルラジカル(ベヘニルラジカル)、1-テトラコサニルラジカル(リゴセリルラジカル)、1-ヘキサコサニルラジカル(セリルラジカル)、1-オクタコサニルラジカル(モンタニルラジカル)、1-トリコンタニルラジカル(メリシルラジカル)、シス-9-ヘキサデセン1-イルラジカル(パルミトレイルラジカル)、シス-9-オクタデセン1-イルラジカル(オレイルラジカル)、トランス-9-クタデセン-1-イルラジカル(エライジルラジカル)、シス-11-オクタデセン-1-イルラジカル、シス、シス-9,12-オクタデカジエン-1-イルラジカル(リノレイルラジカル)または6,9,12-オクタデカトリエン-1-イルラジカル(γ-リノレニルラジカル)、好ましくはシス-9-オクタデセン-1-イルラジカル(オレイルラジカル)を表す場合が、好ましい。
【0101】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、脂肪アルコール(V)が、好ましくは第一級および/または末端のヒドロキシル官能基(OH官能基)を有する直鎖状または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和脂肪族のC-C30-脂肪アルコール、特にC10-C30-脂肪アルコール、好ましくはC10-C24-脂肪アルコール、から選択されることが好ましい。
【0102】
特に、本発明方法で使用できる脂肪アルコール(V)は、直鎖状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和脂肪族の一水和物および好ましくは一級C-C30-脂肪アルコール、好ましくは直鎖状、飽和またはモノ-またはポリ不飽和脂肪族の一水和物、好ましくは一級C10-C30-脂肪アルコール、特に直鎖状、飽和またはモノ-またはポリ不飽和脂肪族の一水和物、好ましくは一級C10-C24-脂肪アルコールから選択されることができる。
【0103】
本発明方法の特定の実施形態によれば、脂肪アルコール(V)は、1-デカノール、1-ドデカノール(ラウリルアルコール)、1-テトラデカノール(ミリスチルアルコール)、1-ヘキサデカノール(セチルアルコール)、1-ヘプタデカノール(マーガリルアルコール)、1-1オクタデカノール(ステアリルアルコール)、1-エイコサノール(アラキジルアルコール)、1-ドコサノール(ベヘニルアルコール)、1-テトラコサノール(リゴセリルアルコール)、1-ヘキサコサノール(セリルアルコール)、1-オクタコサノール(モンタニルアルコール)、1-トリコンタノール(メリシルアルコール)、シス-9-ヘキサデセン-1-オール(パルミトレイルアルコール)、シス-9-オクタデセン-1-オール(オレイルアルコール)、トランス-9-オクタデセン-1-オール(エライジルアルコール)、シス-11-オクタデセン-1-オール、シス,シス-9,12-オクタデカジエン-1-オール(リノレイルアルコール)、6,9,12-オクタデカトリエン-1-オール(γ-リノレイルアルコール)およびこれらの混合物、好ましくはシス-9-オクタデセン-1-オール(オレイルアルコール)の群から選択されることが好ましい。
【0104】
上記脂肪アルコール(V)は、市販の化学製品または他の供給源から容易に入手できる。
【0105】
本発明の特別な実施形態によれば、反応に続いて、そのラジカルRでの反応生成物(III)の部分的、特に完全な官能化が行われることから、官能化が、溶媒の非存在下および/または溶媒なしで行われる場合が特に好ましい。これは、得られた反応生成物が溶媒で汚染されることがなく、方法または反応を実行された後に、コストとエネルギーを要する方法において溶媒が、除去され、廃棄されまたはリサイクルされる必要がないという利点がある。驚くべきことに、この方法または反応は、それにもかかわらず、少なくとも本質的に重大な副生成物の形成がなしに、高い転化率と収率で進行する。
【0106】
特に、この特定の実施形態によれば、触媒、特に酵素および/または金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で、好ましくは酵素の存在下で、官能化が実行されることが好ましい。この特定の実施形態によれば、触媒が官能化の後にリサイクルされる場合が好ましい。
【0107】
本発明の好ましい実施形態によれば、官能化は、触媒としての酵素の存在下で行われる。
【0108】
これに関連して、酵素は、シンテターゼ(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼおよびそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。
【0109】
本発明に関して、触媒として使用される酵素は、カンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)、サーモミセスラヌギノサス、カンジダルゴサ、アスペルギルスオリザエ、シュードモナスセパシア、シュードモナスフルオレセンス、リゾープスデレマおよびシュードモナス属細菌およびそれらの組み合わせ、好ましくはカンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)およびサーモミセスラヌギノサスに由来するものである。
【0110】
特定の実施形態によれば、酵素は、特に担体上の、好ましくはポリマー担体上の、より好ましくは疎水性を有するポリマー有機担体の固定化形態において、さらにより好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂系担体に固定化されて使用されることが好ましい。
【0111】
一般に触媒の使用に関連して先に述べたように、官能基化後の酵素をリサイクルすることが好ましい。
【0112】
本発明に関連して、官能化は、触媒としての酵素の存在下で、10℃~80℃の範囲内、特に20℃~80℃の範囲内、好ましくは25℃~75℃の範囲内、より好ましくは45℃~75℃の範囲内、さらに好ましくは50℃~70℃の範囲内の温度で実行される。
【0113】
本発明による製造方法における官能化が触媒としての酵素の存在下で行われる限り、酵素が、化合物(III)および(V)の総量を基準として、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、より好ましくは0.5重量%~15重量%の範囲内の量で使用されることが、好ましい。
【0114】
本発明の特定の実施形態によれば、官能化が触媒としての酵素の存在下で行われる場合、圧力範囲も広い範囲内で変動することができる。特に、官能化が触媒としての酵素の存在下で行われる場合、官能化は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で行われることが好ましい。
【0115】
本発明の代替的な実施形態によれば、官能化は、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行されることが好ましい。
【0116】
本発明のこの代替実施形態によれば、官能化に関する触媒は、(i)塩基性触媒、特にアルカリまたはアルカリ土類水酸化物およびアルカリまたはアルカリ土類アルコール酸塩、例えばNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)2、NaOMe、KOMeおよびNa(OBu-Tert.)、(ii)酸性触媒、特に鉱酸、および有機酸、例えば硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびカルボン酸、(iii)ルイス酸、特にチタン、錫、亜鉛およびアルミニウム化合物をベースとするルイス酸、例えば、チタンテトラ酪酸、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム、アルミニウムトリイソプロピル、および(iv)不均一系触媒、特に鉱物ケイ酸塩、ゲルマン酸塩、炭酸塩およびアルミニウム酸化物に基づく、ゼオライト、モンモリロナイト、モルデナイト、ヒドロタルサイトおよびアルミナ、ならびにこれらの組み合わせから選択されることが好ましい。
【0117】
特に、アルカリまたはアルカリ土類アルコール酸塩を触媒として使用することができる。
【0118】
これに関連して、触媒は、官能化後、リサイクルされることが特に好ましい。
【0119】
本発明に関して、官能化は、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で、20℃~150℃の範囲内、特に50℃~140℃の範囲内、好ましくは70℃~130℃の範囲内、より好ましくは80℃~125℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~120℃の範囲内の温度で実行される場合が好ましい。
【0120】
本発明による製造方法における官能化が、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で行われる限り、触媒は、化合物(III)および(V)の総量を基準として、0.01重量%~30重量%の範囲内、特に0.05重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、より好ましくは0.2重量%~10重量%の範囲内の量で使用されることが好ましい。
【0121】
本発明の特定の実施形態によれば、官能化が、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行される場合、圧力範囲も広い範囲内で変動することができる。特に、官能化は、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行される場合、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で実行されることが好ましい。
【0122】
本発明による好ましい実施形態では、反応につづいて、そのラジカルR1における反応生成物(III)の部分的に、特に完全な官能化によれば、官能化の間に、一般式(VI)
-OH (VI)
による化合物が、特に同時に形成されること、
ここで、一般式(VI)において、ラジカルRは、水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチルを表すものである。
【0123】
これに関連して、一般式(VI)による化合物が、官能化から回収され、特に蒸留による好ましくは連続的な除去手段によって、特に連続的に回収されることが特に好ましい。このようにして、反応平衡は、反応生成物(すなわち官能化生成物)の側に効率的にシフトされる。また、副生成物の形成もこの方法で最小化または防止される。
【0124】
本発明による特に好ましい手順は、反応に続いてそのラジカルRでの反応生成物(III)の官能化が提供されるものであり、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のエチルエステルとの以下の反応または合成スキームを例示している(ここで、ラジカルRは、上記に定義した意味を有している)。
【0125】
【化3】
【0126】
本発明の方法によれば、反応生成物として、一般式(III’)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III’)
の1つ以上の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩およびお/またはエステルが形成される。
ここで、一般式(III’)において、ラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表し、且つ、ラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRおよび/または上記に定義されるようなラジカルRを表すものである。
【0127】
本発明の特定の実施形態によれば、反応生成物として、一般式(III)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III)
の1つ以上のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルが形成される。
ここで、一般式(III)において、ラジカルRが、水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、好ましくはエチルを表し、且つ、ラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すものである。
【0128】
本発明の特定の実施形態によれば、反応生成物として、一般式(III”)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III”)
の1つ以上の官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルが形成される。
ここで、一般式(III”)において、ラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表し、且つ、ラジカルRが、直鎖状または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和脂肪族C-C30-アルキルラジカル、特にC10-C30-アルキルラジカル、好ましくはC10-C24-アルキルラジカルを表すものである。
【0129】
さらなる主題は、本発明の第2の態様によれば、本発明方法に従って得られる反応生成物(すなわち、(化学)生成物または生成混合物)である。
【0130】
特に、本発明の目的は、一般式(III’)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III’)
の1つ以上の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルからなる反応生成物(すなわち(化学)生成物または生成混合物)を提供することである。
ここで、一般式(III’)において、
・ ラジカルRは、CH-C(O)-CH-C(O)-を表すこと、および
・ ラジカルRは、ラジカルRを表すこと、ここで、ラジカルR1は、水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチル、またはラジカルRを表すこと、ここでラジカルRが、直鎖または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和脂肪族のC-C30-アルキルラジカル、特にC10-C30-アルキルラジカル、好ましくはC10-C24-アルキルラジカルを表すこと。
【0131】
本発明の特定の実施形態によれば、反応生成物は、一般式(III)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III)
の1以上のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(III)において、ラジカルR1は、水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチルを表すこと、および、ラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すこと。
【0132】
本発明の特定の実施形態によれば、反応生成物は、一般式(III”)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III”)
の1以上の官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(III”)において、ラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すこと、および、ラジカルRが、直鎖または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和脂肪族のC-C30-アルキルラジカル、特にC10-C30-アルキルラジカル、好ましくはC10-C24-アルキルラジカルを表すこと。
【0133】
別の特定の実施形態によれば、反応生成物は、特に上記に定義されるような少なくとも2つの異なる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の混合物を有することが好ましい。
【0134】
さらなる特定の実施形態によれば、反応生成物は、特に上記に定義されるような少なくとも3つの異なる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の混合物を有することが好ましい。
【0135】
また、本発明の目的は、一般式(III’)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III’)
の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルを提供することにある。
ここで、一般式(III’)において、
ラジカルRは、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すこと、および、
ラジカルRは、ラジカルRを表すこと、ここで、ラジカルRが、水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチル、またはラジカルRを表すこと、ここで、ラジカルRが、直鎖または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和脂肪族のC-C30-アルキルラジカル、特にC10-C30-アルキルラジカル、好ましくはC10-C24-アルキルラジカルを表すこと。
【0136】
本発明のさらなる目的はまた、特に上記に記載されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルである。
ここで、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルは、一般式(III)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III)
に対応すること。
ここで、一般式(III)において、ラジカルRは、水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチルを表すこと、および、ラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すこと。
【0137】
再び、本発明の別の目的は、特に上記に定義されるような官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸及び/又はその塩及び/又はエステルである。
ここで、官能基化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルは、一般式(III”)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (III”)
に対応するものである。
ここで、一般式(III”)において、ラジカルRは、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すこと、および、ラジカルRは、直鎖または分枝状、飽和またはモノ-もしくはポリ不飽和脂肪族のC-C30-アルキルラジカル、特にC10-C30-アルキルラジカル、好ましくはC10-C24-アルキルラジカルを表すこと。
【0138】
本発明のこの態様による本発明のさらなる目的は、上記に定義したような少なくとも2つの異なる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルからなる混合物である。
【0139】
特に、また、本発明のこの態様による本発明のさらなる目的は、上記に定義したような少なくとも3つの異なる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩および/またはエステルからなる混合物である。
【0140】
本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義される本発明の反応生成物のそれぞれ、および/または、本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義された任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義される本発明の混合物は、従来技術と比較して、多数の利点および特別な特徴を有するものである。
【0141】
出願人が驚くべきことを見いだしたように、本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義される本発明の反応生成物のそれぞれ、および/または、本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義された任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義される本発明の混合物は、一方で、生理的、特に消化管内において、ケト体3-ヒドロキシ酪酸と3-オキソ酪酸(=アセト酢酸またはアセト酢酸塩)に変換され、最終的に3-ヒドロキシ酪酸またはその塩に生理的に変換され還元されることから、他方で、同時に、良好な生理学的適合性または忍容性、特に非毒性および許容可能な有機食品特性を有していることから、3-ヒドロキシ酪酸およびその塩の前駆体または代謝物として好適である。
【0142】
したがって、本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義される本発明の反応生成物のそれぞれ、および/または、本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義された任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義される本発明の混合物は、特に人体または動物体の生理的代謝において、生理的に3-ヒドロキシ酪酸またはその塩およびアセト酢酸(このように生理的に順番に3-ヒドロキシ酪酸またはその塩)へ、直接的または間接的にアクセスする有効な前駆体または代謝物として好適である。
【0143】
したがって、胃および/または腸における生理的開裂の際に、本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義される本発明の反応生成物のそれぞれ、および/または、本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義された任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義される本発明の混合物は、ケト化合物の3-ヒドロキシ酪酸と3-オキソ酪酸(それぞれアセト酢酸とアセト酢酸塩)に開裂され、さらに体内で還元されて3-ヒドロキシ酪酸になる。
【0144】
3-オキソ酪酸ラジカルと3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの両方または3-ヒドロキシ酪酸の存在により、有効成分3-ヒドロキシ酪酸の利用率または放出率に違いがある。その結果、本発明の反応生成物は、本質的に、さらに差別化されたリタード効果を有する。全体として、本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルは、異なる分解速度を有する2つのケト体を示すからである。
【0145】
したがって、本発明の方法は、それ自体既知であり、市販されており、とりわけ生理学的に無害な成分または反応物(出発化合物)から、無毒で、任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸およびその塩とエステルを初めて製造することを可能にした。得られた任意に官能化されアシルカップされた3-ヒドロキシ酪酸およびその塩やエステルは、生理的に、特に胃および/または腸で開裂され、活性物質または活性成分として標的分子「3-ヒドロキシ酪酸」またはその塩(およびアセト酢酸、さらにこれは生理的に3-ヒドロキシ酪酸にさらに変換または還元できる)を放出または生成されることが好ましい。
【0146】
さらに、それぞれ本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義されるような本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義されるような本発明の混合物は、必要な医薬品または薬学的品質であっても、容易に入手可能であるかまたは合成スケールで入手可能である。
【0147】
さらに、それぞれ本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義されるような本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義されるような本発明の混合物は、エナンチオマー的に純粋な形態またはエナンチオマー的に濃縮された形態で提供されることが好ましい。
【0148】
それぞれ本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義されるような本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義されるような本発明の混合物は、したがって、人体や動物体のケト体治療に関して、効率的な薬理学的目標を表す。
【0149】
以下では、本発明の残りの態様をより詳細に説明する。
【0150】
本発明のさらなる主題は、本発明の第3の態様によれば、それぞれ本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義されるような本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義されるような本発明の混合物を有する医薬品組成物、特に医薬品及び薬剤である。
【0151】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置に用いるための医薬品組成物、またはそのための医薬品組成物に関する。これは、特にエネルギー代謝、特にケト体代謝の障害に関連する疾患、例えば、特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞などの循環器系疾患、再食症、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)などの脂質代謝性疾患など、VL-FAOD、ミトコンドリアチオラーゼ欠損などのミトコンドリア病、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、尿路性器炎などのリュウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用などに関するものである。
【0152】
再び、本発明のさらなる主題は、本発明の第4の態様によれば、特にエネルギー代謝、特にケト体代謝の障害に関連する疾患、例えば、特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞などの循環器系疾患、再食症、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)などの脂質代謝性疾患など、VL-FAOD、ミトコンドリアチオラーゼ欠損などのミトコンドリア病、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、尿路性器炎などのリュウマチ性疾患。慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用などの疾患の予防的および/または治療的処置または予防的および/または治療的処置における使用のための、それぞれ本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義されるような本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義されるような本発明の混合物である。
【0153】
再び、本発明のさらなる主題は、本発明の第5の態様によれば、特にエネルギー代謝、特にケト体代謝の障害に関連する疾患、例えば、特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞などの循環器系疾患、再食症、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)などの脂質代謝性疾患など、VL-FAOD、ミトコンドリアチオラーゼ欠損などのミトコンドリア病、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、尿路性器炎などのリュウマチ性疾患。慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用などの疾患の予防的および/または治療的処置または予防的および/または治療的処置における使用のための、それぞれ本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物の使用、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義されるような本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の使用、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0154】
同様に、本発明のさらなる主題は、第6の態様によれば、予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置のための医薬品を製造するための、空腹、ダイエットまたは低炭水化物栄養のような異化代謝状態への適用のための、それぞれ本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物の使用、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義されるような本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の使用、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0155】
同様に、本発明のさらなる主題は、第6の態様によれば、それぞれ本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義されるような本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義されるような本発明の混合物を有する食品および/または食品生成物である。
【0156】
特定の実施形態によれば、食品及び/又は食品生成物は、本質的に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力及び/又は耐久スポーツサプリメントであることが好ましい。
【0157】
最後に、本発明の別の主題は、本発明の第8の態様によれば、食品または食品生成物における、それぞれ本発明の方法によって得られる反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸または上記に定義されるような本発明の任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記に定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0158】
本発明のこの態様によれば、食品および/または食品生成物は、特に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力および/または耐久スポーツ補助食品であることが好ましい。
【0159】
本発明のさらなる実施形態、修正および変形は、本発明の範囲を離れることなく、本明細書を読んだ当業者によって容易に認識または実現可能なものである。
【発明を実施するための形態】
【0160】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、これらは本発明を何ら限定するものではなく、本発明の例示的かつ非限定的な実施および構成を説明するためのものである。
【実施例
【0161】
使用した略語
・ 3-BHB=3-ヒドロキシ酪酸または3-ヒドロキシ酪酸ラジカル(3-ヒドロキシ酪酸塩ラジカル)
・ 3-BHB-FS=3-ヒドロキシ酪酸(遊離酸)
・ 3-BHBダイマーエチルエステル=3-BHBエチルエステルの二量体
・ 3-アセチルアセト-BHB-FS=3-アセチルアセト酪酸(遊離酸)
・ 3-BHB-エチルエステル=アセト酢酸エチルでキャップされた3-BHB-エチルエステル2量体。
【0162】
製造例
以下の実施例により、本発明の製造方法を説明する。なお、関連する一般的な反応スキームは、一般的な説明部分に示され説明される。
【0163】
3-アセチルアセト-BHB-エチルエステルの製造と応用試験
52gの3-オキソ酪酸エチル(アセト酢酸エチルまたはアセト酢酸エステル)と26gの3-ヒドロキシ酪酸エチル(3-BHBエチル)を、デフレゲータ(部分凝縮器)と蒸留ブリッジの付いた100mLマルチネックフラスコに供給する。
【0164】
温度50℃、真空下で0.8gの固定化酵素(例えばNovozym(登録商標)435であるカンジダアンタルクチカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ)を添加する。反応混合物を攪拌下、6時間反応させる。反応中に生成したエタノールは連続的に蒸留される。その後、酵素を濾過し、過剰な3-オキソ酪酸エチルエステルおよび過剰な3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルを真空下で蒸留除去してリサイクルする。
【0165】
得られた反応生成物は、3-アセチルアセト酪酸エチルエステル(3-アセチルアセト-BHBエチルエステル)であり、分析分析によれば、以下の組成を有する:90%以上の3-アセチルアセト-BHBエチルエステル(反応副生成物:5%未満の3-BHBダイマーエチルエステルおよび5%未満のアセチルアセト-BHB-イマーエチルエステル)。
【0166】
特性評価は、ガスクロマトグラフィー(GC)およびGC-MS分析(質量分析カップリング付きガスクロマトグラフィー)により行う。
【0167】
3-アセチルアセト-BHBエチルエステルの味は、純粋な3-BHBエチルエステルや、純粋な3-ヒドロキシ酪酸に比べて、不快感や苦味が著しく少ない。
【0168】
胃または腸の培地(胃を模擬したFaSSGF培地または腸管を模擬したFaSSIF培地)中で3-アセチルアセト-BHBエチルエステルを用い、それぞれパンクレアチンの存在または不在下で、開裂実験(クリベッジ実験)を行うと、遊離形態での#-BHBへの開裂を実証することができる。これらの開裂実験は、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステル、ここでは特に3-アセチルアセト-BHBエチルエステルが、特にその意図する効果に関して、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩およびさらなるケト体(ここでは:アセト酢酸)の効率的な前駆体または代謝体であり、ここではこれらの化合物が生理学的に許容されるか生理学的適合性形態でも存在することを証明している。
【0169】
3-アセチルアセト-BHBエチルエステルのさらなる製造について
30gの3-オキソ酪酸エチル(アセト酢酸エチルまたはアセト酢酸エステル)と15.25gの3-ヒドロキシ酪酸エチル(3-BHBエステル)を、デフレグレーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた100mLマルチネックフラスコに供給する。
【0170】
温度50℃、真空下で0.46gの固定化酵素(例えばNovozym(登録商標)435であるカンジダアンタルクチカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ)を添加する。反応混合物は、攪拌下に6時間反応される。反応中に生成したエタノールは連続的に蒸留される。その後、酵素を濾過し、過剰の3-オキソ酪酸エチルおよび過剰の3-ヒドロキシ酪酸エチルを真空下で蒸留して除去しそれからリサイクルする。
【0171】
特性評価は、ガスクロマトグラフィー(GC)およびGC-MS分析(質量分析カップリング付きガスクロマトグラフィー)により行う。
【0172】
GCにより、転換率/時間曲線を求める。GCによって決定された量に基づいて、所望の生成物(ここでは3-アセチルアセト-BHBエチルエステル)への変換を検出することができる。また、反応時間の経過に伴い、得られた3-BHB二量体エチルエステルとアセト酢酸エチルのアセチルアセト-BHBエチルエステル(アシルキャップした3-BHB二量体エチルエステル)への変換が副産物として存在する(1%未満)。
【0173】
さらなる製造事例
酵素の代わりにメタノール酸ナトリウム(NaOMe)を触媒として用い、100~120℃の温度で実験を繰り返した。同等の結果が得られている。精製と分析も同じように行われる。
【0174】
再びさらなる製造例
さらに一連の実験では、副生成物の生成に関して出発化合物のモル比の影響を調査した(分析的には2つの副生成物「3-BHBダイマーエチルエステル」と「アセチルアセト-BHBエチルエステル」を用いて調査した)。
【0175】
3-オキソ酪酸エチルエステル(アセト酢酸エチルまたはアセト酢酸エステル)を他の反応物3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHBエチルエステル)に対してモルとすることで副生成物の生成を抑制できることが示された。
【0176】
第1の一連の調査では、1.5:1~9:1の範囲内のアセト酢酸エステル/3-BHBエチルエステルのモル比が、副産物形成に関して、特に効率的であり、プロセス経済的でもあることが示された。特に良好な結果は、2:1~8:1の範囲内のアセト酢酸エステル/3-BHBエチルエステルモル比について、第2の一連の調査において観察された。
【0177】
官能化
150gの3-アセチルアセト-BHB-エチルエステル、158gの1-デカノールおよび2.9gの固定化酵素(例えばシグマ-アルドリッヒ社製またはメルク社製のNovozym(登録商標)435またはストレムケミカル社製のLipozym(登録商標)435であるカンジダアンタルクチカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ)が提供される。
【0178】
反応混合物は、70℃、真空下(500ミリバール未満)で攪拌しながら7時間反応させる。反応中に生成したエタノールは、連続的に蒸留除去される。次に、酵素を濾過し、過剰の3-アセチルアセト-BHB-エチルエステルまたは過剰の1-デカノールは真空下で蒸留除去される。得られたラジカルは、高真空下で2~4時間蒸煮される(蒸気温度160℃)。純粋な3-アセチルアセト-BHB-デシルエステルが得られる。
【0179】
さらなる官能化
150gの3-アセチルアセト-BHB-エチルエステル、270gのオレイルアルコール(純度:85%)および4.0gの固定化酵素(例えばシグマ-アルドリッヒ社製またはメルク社製のNovozym(登録商標)435またはストレムケミカル社製のLipozym(登録商標)435であるカンジダアンタルクチカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ)が提供される。
【0180】
反応混合物は、70℃、真空下(500ミリバール未満)で攪拌しながら7時間反応さ、反応中に生成したエタノールは、連続的に蒸留除去される。その後、酵素を濾過し、生成物3-アセチルアセト-BHB-オレイルエステルが、多重蒸留により真空中で得られる。必要に応じて、得られた残渣は、高真空中で2~4時間蒸煮される(蒸気温度160℃)。純粋な3-アセチルアセト-BHB-オレイルエステルが得られる。
【0181】
再びさらなる官能化の例
上記の酵素触媒による官能化も、他の脂肪アルコール(即ち、それぞれセチルアルコール、マーガリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリチルアルコール、パルミトレイルアルコール及びリノレイルアルコール)により行われる。対応する3-アセチルアセト-BHB-脂肪アルコールエステルは、それぞれ純粋な物質として得られる。
【0182】
再びさらなる官能化の例
ただし、酵素の代わりにメタノール酸ナトリウム(NaOMe)を触媒として用い(1重量%)、100~120℃の温度で先の実験を繰り返した。同等の結果が得られた。精製と分離も同じ方法において実行される。
【0183】
生理学的応用試験:体外消化試験
本発明品の消化実験(分割または開裂実験)結果
3-アセチルアセト酪酸エステル(3-アセチルアセト酪酸のエチルエステルおよび脂肪アルコールエステルなど)。
開裂実験により、本発明に従って調製された3-アセチルアセト-BHB-エチルエステル、ならびに官能化誘導体(すなわち3-アセチルアセト-BHB-脂肪アルコールエステル)は、ダイマーなどの反応副生成物を含めてヒト消化管で開裂できることが示されている。
【0184】
いずれの場合も、被験物質として、本発明の方法によって得られた精製された3-アセチルアセト-BHB-エチルエステルおよび官能基化誘導体(すなわち、3-アセチルアセト-BHB-脂肪アルコールエステル)が使用される。
【0185】
テストされたエステル
・ 3-アセチルアセト-BHB-エチルエステル
・ 3-アセチルアセト-BHB-デシルエステル
・ 3-アセチルアセト-BHB-オレイルエステル
・ 3-アセチルアセト-BHB-セチルエステル
・ 3-アセチルアセト-BHB-マルガリルエステル
・ 3-アセチルアセト-BHB-ステアリルエステル
・ 3-アセチルアセト-BHB-ベヘニルエステル
・ 3-アセチルアセト-BHB-メリシルエステル
・ 3-アセチルアセト-BHB-パルミトイルエステル
・ 3-アセチルアセト-BHB-リノレイルエステル
【0186】
ニアボディでの開裂実験では、2種類の媒体が検討された。
・ 胃を模擬したFaSSGF
・ 腸管を模擬したFaSSIF
【0187】
いずれの培地も英国のバイオレリバント(登録商標)社製である。また,実験によってはブタの膵臓が追加される(Panzytrat(登録商標)40,000、アレルガン社製)。
【0188】
パンザイムを添加した場合と添加しない場合(いずれも35℃、24時間)のFaSSGFまたはFaSSIF培地における開裂実験の結果は、試料が、パンザイムを添加した場合と添加しない場合のFaSSGF条件下で加水分解することがわかった;これは主に培地の低いpH値(pH=1.6)によるものである。FaSSIF条件下では、Panzytrat(登録商標)を使用するより低い変換が実行される。
【0189】
この実験により、3-アセチルアセト-BHB-エチルエステルおよびその脂肪アルコール官能化誘導体は、それぞれケト体3-ヒドロキシ酪酸およびアセト酢酸(ひいては3-ヒドロキシ酪酸)の生理学的前駆体となり、ケト体療法に使用できることが証明された。
【0190】
本発明品のさらなる消化実験(開裂実験)について
3-アセチルアセト-BHB-エチルエステルおよびその官能基化誘導体
パンクレアチンを用いた開裂実験
上記のようにして調製した3-アセト酢酸-BHB-エチルエステルおよび上記のようにして調製した3-アセト酢酸-BHB-脂肪アルコールエステル各2gを、水50gに溶解し、パンクレアチン0.5g(1重量%)を添加する。パンクレアチンは、アラガン社から市販されている「Panzytrat(登録商標)40,000」の形で使用される。混合物全体は、50℃のホットプレート上で撹拌される。反応の経過は、酸価を経時的に連続的に記録することによって測定され、モニターされる。観察期間中に酸価は、上昇する(3-アセチルアセト-BHB-エステルが開裂して遊離3-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸になり、それぞれ3-BHBと3-ヒドロキシ酪酸に生理学的に還元される)。パンクレアチンによる本発明によるエステルの水性開裂の変換/時間経過は、経時的な酸価の増加を含め、反応物または反応物混合物の遊離酸への所望の分解を実証するものである。これは、対応する分析によって確認される。この実験は、本発明による3-アセチルアセト-BHB-エチルエステルおよび官能化誘導体(すなわち3-アセチルアセト-BHB脂肪アルコールエステル)の両方が、対応するケト体療法のための3-ヒドロキシ酪酸の適切な生理学的前駆体であることを証明する。実験はそれぞれのエステルを純粋な状態で使用し、繰り返し検証された。すなわち、3-アセチルアセト-BHB-エチルエステルも官能化された誘導体も、それぞれパンクレアチンによって開裂されることが確認された。
【0191】
先に述べた開裂実験は、3-アセチルアセト-BHB-エチルエステルならびに官能化誘導体(すなわち、3-アセチルアセト-BHB-脂肪アルコールエステル)が、特にその意図する効果に関して、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的前駆体または代謝物で、生理的に許容できるまたは生理的に適合する形態で存在していることも証明している。