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特許7459142アシルキャップされた3-ヒドロキシカルボン酸のポリオール系エステルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】アシルキャップされた3-ヒドロキシカルボン酸のポリオール系エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/62 20220101AFI20240325BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240325BHJP
   C07C 69/72 20060101ALN20240325BHJP
   C07C 67/08 20060101ALN20240325BHJP
   C07C 67/03 20060101ALN20240325BHJP
【FI】
C12P7/62
C07B61/00 300
C07C69/72
C07C67/08
C07C67/03
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021573412
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2019065278
(87)【国際公開番号】W WO2020249198
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】323005511
【氏名又は名称】ケトリピックス セラポーティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】ロッホマン、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ライアー、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーア、ミヒャエル
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-515510(JP,A)
【文献】特表2016-514725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/
C07C 67/
C07C 69/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカルRが、水素またはC-C-アルキルを表し、且つ、ラジカルRがラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表す一般式(I)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの化合物を、
変数pが1~4の整数である一般式(IIb)
HO-CH-CH(OH)-CH-[O-CH-CH(OH)-CH-OH (IIb)
の少なくとも1つのポリグリセロールと反応させること、
前記反応は、溶媒の非存在下において実行されること、および、
前記反応は、触媒としての酵素の存在下において実行されること、前記触媒は反応後にリサイクルされること、
前記酵素は、リパーゼから選択され、ポリマー担体上に固定化されること、
前記酵素が、固定化形態において、使用されること;および/または、
酵素は、反応後にリサイクルされること、
前記反応は、触媒としての酵素の存在下で、10℃~80℃の範囲内の温度で実行されること;
これによって、反応生成物として、
・変数pが、1~4の整数を表し、
・ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表すこと、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すこと、ただし、少なくとも1つのラジカルRが、水素を表さないことを条件とするものである一般式(IIIb)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIb)
のアセトアセチルキャップされた3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも1つのポリグリセロールエステルを得ること、
前記反応中に、一般式(VI)
-OH (VI)
による化合物が同時に形成されること、ここで、一般式(VI)において、ラジカルRが、水素またはC-C-アルキルを表すこと;一般式(VI)による化合物が、反応から連続的に取り出されることを特徴とするアセトアセチルキャップされる3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造する方法。
【請求項2】
一般式(I)の化合物およびポリグリセロール(IIb)は、1:1~10:1の範囲内の一般式(I)の化合物/ポリグリセロール(IIb)の化合物のモル比において使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリグリセロールは、一般式(IIc)
HO-CH-CH(OH)-CH-O-CH-CH(OH)-CH-OH (IIc)
のジグリセロールであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
反応が起こった後に反応生成物にまだ存在するヒドロキシル基は、少なくとも部分的に、エステル化を介して官能化されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
反応が起こった後に反応生成物にまだ存在するヒドロキシル基のエステル化を介した官能化は、
一般式(VII)
-O-R (VII)
の少なくとも1つのカルボン酸無水物で実行されること、
ここで、一般式(VII)において、ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すものであることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記反応が起こった後に反応生成物にまだ存在するヒドロキシル基のエステル化を介した官能化は、一般式(IX)
-O-R (IX)
の少なくとも1つのカルボン酸またはカルボン酸エステルとの反応によって実行されること、
ここで、一般式(IX)において、
・ ラジカルRは、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すこと、
・ラジカルRが、水素またはC-C-アルキルを表すことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項7】
一般式(IX)のカルボン酸またはカルボン酸エステルが、C-C34-脂肪酸またはC-C34-脂肪酸エステルを表すことを特徴とする請求項6記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケト体および関連する代謝ならびに関連する疾患の治療の分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、アシルキャップされた(=アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(同義語的に、「3-ヒドロキシ酪酸」、「ベータ-ヒドロキシ酪酸」、「3-ヒドロキシ酪酸」等)のポリオールエステル、特にアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸、ならびにこれによって得られるまたはこれおによって調製される反応生成物のポリグリセロールエステル(いわゆるアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル)ならびにそれらの官能化された(いわゆるエステル化された)誘導体または特に薬品または薬剤のような医療品化合物における、または、食品および/または食品生成物におけるそれらの使用、ならびにそれらのさらなる応用または使用に関するものである。
【0003】
さらに、本発明は、本発明の方法によって得られまたは製造される反応生成物(いわゆるアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル)またはそれらの官能化された(いわゆるエステル化された)誘導体を有する医薬品化合物、特に医薬品または薬剤、ならびにそれらの応用または使用に関する。
【0004】
最後に、本発明は、本発明の方法によって得られまたは製造される反応生成物(いわゆるアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にアシルキャップされたまたはアシルブロックされた3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル)またはそれらの官能化された(いわゆるエステル化された)誘導体を有するを含む食品および/または食品生成物、特に食品サプリメント、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、ならびに強度および/または耐久性スポーツサプリメントならびにそれらの用途または使用に関する。
【背景技術】
【0005】
人間のエネルギー代謝において、ブドウ糖は短期的に利用可能なエネルギー担体であり、水と二酸化炭素を放出することによってミトコンドリア内でエネルギーに代謝される。肝臓のグリコーゲン貯蔵は、夜の睡眠期間中にすでに空になる。しかしながら、特に人間の中枢神経系(CNS)と心臓は、永続的なエネルギー供給を必要とする。
【0006】
主に中枢神経系で利用できるブドウ糖の生理学的代替物は、いわゆるケト体(同義語でケトン体とも呼ばれる)である。
【0007】
ケト体という用語は、特に3つの化合物の総称であり、主に異化代謝状態(空腹、減量食、低炭水化物食など)で形成され、ケトーシスを生じるものである。ケト体という用語には、特に3つの化合物、アセトアセテート(同義語でアセタセテートまたは3-オキソ酪酸とも呼ばれる)およびアセトンならびに3-ヒドロキシ酪酸(以下、ベータ-ヒドロキシ酪酸またはBHBまたは3-BHBとも呼ばれる)またはその塩(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸塩またはベータヒドロ酪酸塩)を含むものであり、ここで、後者は前述の3つの化合物の中で最も重要なものである。3-ヒドロキシ酪酸またはその塩は、(R)構成されたエナンチオマー、すなわち(R)3-ヒドロキシ酪酸(3位にキラリティーの中心を強調するために,同義語的に(3R)-3-ヒドロキシ酪酸とも呼ばれる)またはその塩として生理的に存在する。
【0008】
これらのケト体はまた、断食時または飢餓の間に脂肪分解によって体内に蓄積された脂質から生理学的に大量に提供され、エネルギー源のグルコースとほぼ完全に置き換えられる。
【0009】
ケト体は、ベータ酸化に由来するアセチル補酵素A(=アセチル-CoA)から肝臓において形成される;それらは、人体においてアセチル補酵素Aの輸送可能な形を示している。しかし、ケト体を利用するためには、脳と筋肉は、ケト体をアセチル補酵素Aに戻すために要求される酵素を発現させることに最初に適応する必要がある。特に空腹時には、ケト体は、著しい量のエネルギー生産に貢献する。たとえば、しばらくすると、脳は1日のブドウ糖量の3分の1しか摂取できなくなる。
【0010】
生理学的に、ケト体は、脂肪酸分解の通常の中間生成物であるアセチル補酵素Aの形の活性化酢酸の2つの分子から合成され、前記中間生成物は、アセチル補酵素A単体と酵素HMG-CoAシンターゼを使用して、中間生成物3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA(HMG-CoA)に延出し、最後にHMG-CoA-リアーゼがアセト酢酸を開裂する。これらの3つのステップは、肝臓のミトコンドリア(リネンサイクル)でのみ行われ、3-ヒドロキシ酪酸は最終的に酵素D-ベータ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼによってサイトゾルにおいて形成される。HMG-CoAは、アミノ酸ロイシンの分解の最終生成物でもあると同時に、アセトアセテートは、アミノ酸フェニルアラニンとチロシンの分解中に形成される。
【0011】
自然脱炭酸によりアセト酢酸はアセトンに変化し、糖尿病患者やダイエット中の人の呼気から感知されることがある。これは体内でそれ以上利用されることはない。しかし、ケト体に含まれるアセトンの割合は少ない。
【0012】
したがって、アセト酢酸は、生理学的条件下で、生理学的に適切な形態の3-ヒドロキシ酪酸または3-ヒドロキシ酪酸塩に還元的に変換されるが、炭酸ガスは、重度のケトーシスやケトアシドーシス(1型糖尿病患者でインスリンを投与していない場合など)、尿中、呼気中に検出され、嗅覚的にも感知可能である。
【0013】
3-ヒドロキシ酪酸は、現在、ウエイトトレーニング分野でナトリウム、マグネシウム、カルシウムの塩として使用され、販売されている。
【0014】
しかし、植物は、3-ヒドロキシ酪酸を生成せず、動物生体内の3-ヒドロキシ酪酸はケトーシス状態の痩せた動物の死体にしか発生しないため、進化的にヒトには知られていないかごく少量しかないため、3-ヒドロキシ酪酸は経口投与すると吐き気を催す。また、遊離酸やその塩の形の3-ヒドロキシ酪酸は非常に苦い味がし、激しい嘔吐や吐き気を催すことがある。
【0015】
さらに、これらの化合物が、腎臓に障害を与える可能性がことから、患者、特に新生児だけでなく成人も、3-ヒドロキシ酪酸の塩を大量に摂取することは永久に不可能である。
【0016】
さらに、3-ヒドロキシ酪酸とその塩の血漿半減期は、たとえ数グラムを摂取したとしても、ケトーシスが約3~4時間の間でしか持続しないため、非常に短いこと、つまり患者が、特に夜間において、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩による治療の恩恵を継続的に受けることができないものである。代謝性疾患の場合、これは生命を脅かす状況につながる可能性がある。
【0017】
したがって、そのような代謝性疾患の場合、いわゆる中鎖トリグリセリド、いわゆるMCTが、現在ケト原性療法について使用される。すなわちカプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸の(すなわち飽和線形C-,C-,C10-脂肪酸の)代謝変換が意図される。
【0018】
しかし、基本的には、薬学的・臨床的観点から、3-ヒドロキシ酪酸ならびに3-ヒドロキシ酪酸の生理的前駆体としてのアセト酢酸は、より有効な医薬・薬学的標的分子であり、従来技術によれば、原理的には多数の疾患の治療に使用可能だが、生理適合性の欠如により使用できない(例えば。エネルギー代謝、特にケト体代謝の機能不全に関連する疾患、または認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患、脂肪代謝性疾患など)。
【0019】
以下の表は、純粋に例示的なものであるが、決して限定するものではなく、活性成分である3-ヒドロキシ酪酸ならびにアセト酢酸(したがって、アセト酢酸の還元により生理的に得られる3-ヒドロキシ酪酸またはその塩)についての潜在的治療の選択肢または可能な適応症について示したものである。
【0020】
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、特に人体または動物体の生理的代謝において、生理的に3-ヒドロキシ酪酸またはその塩ならびにアセト酢酸(したがって生理的に3-ヒドロキシ酪酸およびその塩)に直接または間接的にアクセスできる有効な前駆体または代謝物を見つけることができることが医薬および臨床の観点から望まれる。
【0022】
その結果、従来技術は、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の生理学的に適切な前駆体または代謝産物を見つけるという試みを欠いてはいない。しかしながら、これまでのところ、従来技術において効率的な化合物は見出されていない。また、そのような化合物へのアクセスは、先行技術によれば可能ではなく、または容易に可能ではない。
【0023】
したがって、本発明の根底にある課題は、3-ヒドロキシ酪酸またはそれらの塩の生理学的に適切なまたは生理学的に適合性のある前駆体および/または代謝産物を生成するための効率的な方法の提供である。
【0024】
そのような方法は、特に、効率的な方法でアクセス可能な、特に大量に、そして大量の有毒な副産物なしに、それぞれのBHB前駆体および/またはBHB代謝物を製造しなくてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
全く驚くべき方法で、本出願人は今、アシルキャップされた(=アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルならびにそれらの官能化誘導体が、ケト体3-ヒドロキシ酪酸およびアセト酢酸のための、または、生理学的条件下でそれらから還元的に生成される3-ヒドロキシ酪酸またはそれらの塩のための、効率的かつ生理的に有効なまたは生理的に適合する前駆体および/または代謝産物を表し、これに関連して、これらの化合物を効率的に製造するための方法を発見または開発し、これらの化合物を、直接かつ効果的に、特に経済的に、また工業的に実現可能な方法で入手することを可能にすることができることを発見した。
【0026】
したがって、上記の問題を解決するために、本発明は、本発明の第1の態様によれば、請求項1によるアシルキャップされた(=アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造する方法を提案する;さらに、本発明方法の特に特別なおよび/または有利な実施形態が関連する従属請求項の主題となる。
【0027】
さらに、本発明は、本発明の第2の態様によれば、請求項41によるアシルキャップされた(=アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)の官能化、特に脂肪酸で官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造する方法に関する;さらに、本発明の方法の特に特別なおよび/または有利な実施形態が、関連する従属請求項の主題となる。
【0028】
さらに、本発明は、本発明の第3の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項53,54,60,61,67,68,78,84および90)による本発明の方法によって得ることのできる反応生成物、または、独立請求項(請求項58.59.65.66.76.77.82.83.88.89.98および90)によるアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)ポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたはそれぞれの混合物に関する;さらに、本発明のこの態様の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0029】
同様に、本発明は、本発明の第4の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項100)による医薬品組成物、特に薬剤または医薬品に関する;さらに、本発明のこの態様の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題となる。
【0030】
さらに、本発明は、本発明の第5の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項102)による人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のためのまたはそれに用いるための、本発明の反応生成物、または、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたはそれぞれの混合物に関するものである。
【0031】
さらに、本発明は、本発明の第6の態様によれば、関連する独立請求項(請求項103)によって人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のために、または予防的および/または治療的処置のための医薬を製造するために、本発明の反応生成物または本発明のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、またはそのそれぞれの混合物を使用することに関する。
【0032】
さらに、本発明は、本発明の第7の態様によれば、本発明の反応生成物の使用、または、に関連する独立請求項(請求項104)によるアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたはそのそれぞれの混合物の使用に関するものである。
【0033】
さらに、本発明は、本発明の第8の態様によれば、関連する独立請求項(請求項105)による食品および/または食品生成物に関するものである;さらに、本発明による食品および/または食品生成物の特に特別および/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0034】
最後に、本発明は、本発明の第9の態様によれば、本発明反応生成物、または、関連する独立請求項(請求項107)による食品および/または食品生成物におけるアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたはそのそれぞれの混合物の使用に関するものである;さらに、本発明による使用の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する使用のための従属請求項の主題である。
【0035】
以下、繰り返しを避ける目的で、本発明の一態様に関してのみ記載する以下の特徴、実施形態、利点等は、当然、本発明の他の態様にも適宜適用され、これには別途言及を要しないことは言うまでもない。
【0036】
さらに、本発明の個々の側面および実施形態は、本発明の他の側面および実施形態との任意の組み合わせにおいても開示されているとみなされ、特に、すべての特許請求の範囲の後方参照から生じる特徴および実施形態の任意の組み合わせも、結果として生じるすべての組み合わせ可能性に関して広範に開示されていると考えられることは言うまでもない。
【0037】
以下に提供される全ての相対的または百分率の重量ベースのデータ、特に相対的な量または重量データに関して、本発明の範囲内で、これらは、特に以下に定義するように、全ての成分または成分を含む、それぞれ100%または100重量%に常に加算するように当業者によって選択されるべきであることに更に留意すべきである;しかしながら、これは当業者にとって自明なことである。
【0038】
また、当業者は、必要に応じて、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の範囲の仕様を設定することができる。
【0039】
さらに、以下に規定するすべての値またはパラメータ等は、原則として、標準化されたまたは明示的に規定された測定方法、あるいは、当業者に周知の決定または測定方法により決定または特定できることが適用される。
【0040】
このように述べた上で、以下、本発明をより詳細に説明する。
【0041】
したがって、本発明の目的は、本発明の第1の態様によれば、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造する方法を提供することである。
ここで、ラジカルRが、水素、または、C-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチルを表し、且つ、ラジカルRがCH-C(O)-CH-C(O)-を表す一般式(I)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの化合物が、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのヒドロキシル基(OH基)、特にポリグリセロールを有する少なくとも1つのポリオール(II)と反応し、
これによって、反応生成物として、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られる。
【0042】
このようにして、本発明の方法は、結果として、アシル基で3位(=水酸基位置)においてキャップされたまたはブロックされた3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを生じるものである。
【0043】
アシル基は、有機化学において、一般構造A-(C=O)-を有する官能基であり、ここで、ラジカルAは有機ラジカル(例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロ芳香族基など)または水素原子を表す。アシル基は、形式的にはカルボン酸、アルデヒドおよびカルボン酸クロリドから誘導され、そこでは、それぞれOH基または水素原子または塩素が、ラジカルAで置換されたものである。アシル化とは、このようなアシル基を導入することをいう。
【0044】
(本発明の場合のように)アシル化がヒドロキシル基(OH基)(即ち、3-ヒドロキシ酪酸の3位に位置するOH基)で行われる場合、全体として、一般構造A-(C=O)-O-(上記に定義されるような「A」)を有するアシルオキシ基が形成される。
【0045】
これによって、本発明によれば、アシルキャップされた(=アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸は、3位(すなわち、水酸基位置)においてアシル化された酪酸または3位でアシルオキシ化されたブタン酸である。
【0046】
上記のように、本出願人は、極めて驚くべきことに、このようにして製造されたアシルキャップされた(=アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル(任意に、以下に詳述するように官能化してもよい)は、生理学的に適合するため効率的に、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩若しくはエステルの前駆体および/または代謝物を、医薬または臨床応用に大量に使用できることも発見している。
【0047】
本発明による製造方法を通じて初めて効率的にアクセスできる、上述された任意に官能化されアシルキャップされた(=アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステル(およびさらなるケト体「アセト酢酸」にも)に代わる生理的および薬学的に関連する選択肢となるものである。
【0048】
従来の有機合成によるこのような化合物の製造は、3-ヒドロキシ酪酸が重合し、他の望ましくない副反応(例えば、脱水、分解など)を受ける傾向が増大するため、複雑でコストがかかる。本発明の範囲内で、任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが、望ましくない副反応なしに、特に単一工程で製造できる、効率的に働く製造方法を初めて提供することが可能となった。
【0049】
したがって、本発明の方法は、既知の、商業的に入手可能な、とりわけ生理学的に無害な成分またはエダクト(出発化合物)から、無毒に任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを初めて提供できるようにするものである。結果として得られた任意に官能化されアシルキャップされた3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、生理的に、特に胃および/または腸で分解され、有効成分または活性成分として標的分子「3-ヒドロキシ酪酸」またはその塩(およびさらに生理学的に変換または還元されて3-ヒドロキシ酪酸になるアシル化によるケト体アセト酢酸)を放出または生成するものである。
【0050】
さらに、前記任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、長期間にわたって大量に経口投与(例えば、一日量50g以上の投与)しても、適合性を確保するために許容できる味を有するものである。
【0051】
同様に、本発明による製造方法により、有害な不純物を含まないアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを提供することが可能である。
【0052】
胃および/または腸における生理的な開裂の際に、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、ケト化合物の3-ヒドロキシ酪酸と3-オキソ酪酸(アセト酢酸またはアセト酢酸塩)に分解されるが、これは体内でさらに3-ヒドロキシ酪酸に還元される。3-オキソ酪酸ラジカルと3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの両方または3-ヒドロキシ酪酸の存在により、有効成分3-ヒドロキシ酪酸の入手または放出の異なる速度が存在する。その結果として、本発明の反応生成物は遅延効果を示す。全体として、本発明による任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、これによって、異なる分解速度を有する2つのケト体を示す。
【0053】
また、ケト体はポリオールエステルの形態であり、活性成分3-ヒドロキシ酪酸を遊離の形で放出するとともにポリオールからのアセト酢酸開裂も行わなければならなりことから、付加的なまたはさらなる遅れも生じる。全体として、有効成分である3-ヒドロキシ酪酸およびアセト酢酸は、遅延効果を有する多段階分解によって、任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルから放出される。
【0054】
また、出発原料を適切に選択することで、本方法をエナンチオ選択的に実行することも可能である。例えば、本発明によれば、製造方法は、生物学的に関連する形態、すなわち(R)-エナンチオマーを、経口投与した際に患者の腎臓系に負担をかけないように濃縮しまたは得ることができる(すなわち、腎臓を介した排泄)。しかし、原理的には、(S)-エナンチオマーを濃縮または得るために、特定の条件下で使用されることが好ましい。
【0055】
本発明による製造方法は、通常、結果として、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の異なるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの混合物、すなわち少なくとも2つ、特に少なくとも3つの異なるアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの混合物を生じる。得られた生の反応生成物または生の混合物は、既知の方法、特に残存する出発化合物および/または存在する副生成物を除去することによって精製することができ、さらに-所望により-公知の方法により、特に蒸留および/またはクロマトグラフィーによって分離することができる(いわゆる個々のポリオールエステル、すなわちアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸のモノ-、ジ-、トリ-等のポリオールエステルへの分画または個体等の、濃縮され且つ枯渇された部分を有する画分への分画)。
【0056】
さらに、本発明による製造方法は、任意のさらなる処理または精製工程を含めて、経済的に運用することができ、また大規模に実行することができる。
【0057】
特に、本発明の製造方法は、入手しやすい出発化合物を使用し、さらに大規模に実行する場合でも、比較的簡単なプロセス管理が可能である。
【0058】
それにもかかわらず、本発明によって優れた収率が達成され、副生成物の形成が最小化される(有意な量の副生成物がない)か、または回避される。さらに、使用される反応物はそれ自体生理学的に適合性があり、薬学的に活性でさえあるため、まだ存在する反応物は反応生成物中に残ることができ、精製工程は全くまたはほとんど必要とされない。しかし、原理的には、特に有機的な特性に関する特定の条件下において反応生成物から反応物を除去することを可能にし、好都合であることが好ましい。
【0059】
従来の先行技術の製造方法とは対照的に、本発明による製造方法は、複雑な反応物を使用せず、1つの工程のみを使用するものである。それにもかかわらず、本発明によって優れた収率が達成され、そこで副生成物の形成が最小化にされまたは回避される。
【0060】
また、本発明方法は、簡便で経済的な方法である。特に、本発明による方法は、通常、溶媒の非存在下および/または無溶媒で(すなわち、質量での反応または物質での反応、いわゆるバルク反応として)行われる。その結果、得られた反応生成物は溶媒で汚染されておらず、方法または反応を実施した後に、コストとエネルギーを要する方法で溶媒を除去して廃棄またはリサイクルする必要がない。さらに、有毒な副生成物も形成されない。
【0061】
本発明においては、一般式(I)の化合物がラセミ形態または(R)-エナンチオマーの形態で使用される場合が好ましい。ここで、(R)構成とは、一般式(I)の化合物の3位にあるキラル炭素原子を指す。
【0062】
本発明によれば、一般式(I)においてラジカルRがエチルを表す場合が好ましい。
【0063】
すなわち、一般式(I)の化合物として、式CH-CH(OR)-CH-C(O)OC(ここで、ラジカルRが上記に定義される意味を有する)の3-アセチルアセト酪酸エチルエステル(3-アセチルアセト酪酸エチル)が使用されると本発明によれば好ましい。これは、特に効率的な方法制御と、最小化されまたは抑制された副生成物の形成を有する高収率を可能にする。
【0064】
特に、本発明方法においては、溶媒の非存在下および/または無溶媒で反応させる。つまり、質量での反応、あるいは物質での反応、いわゆるバルク反応として行われる。これは、得られた反応生成物が溶媒で汚染されておらず、方法または反応の実施後に溶媒を除去して廃棄したり、コストとエネルギーを要する方法でリサイクルしたりする必要がないという利点を有する。驚くべきことに、この方法または反応は、それにもかかわらず、高い転化率と収率で進行し、少なくとも本質的に重大な副生成物の形成がない。
【0065】
本発明の特定の実施形態によれば、反応は、触媒、特に酵素および/または金属含有触媒および/または金属系触媒、酸性触媒または塩基性触媒の存在下で実行されることが可能である。この特定の実施形態において、触媒は、反応後にリサイクルされる場合が好ましい。
【0066】
前述したように、本発明製造方法の特定の実施形態によれば、反応は、触媒としての酵素の存在下で実行されることができる。
【0067】
これに関して、酵素は、特にシンテターゼ(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼおよびそれらの組み合わせから選択されることができる。本発明によれば、シンテターゼ(同義語でリガーゼ)は、特にリガーゼのクラスの酵素であり、リガーゼは、共有結合によって2つ以上の分子を橋架する酵素である。本発明の意味でのカタラーゼは、特に、過酸化水素を酸素と水に変換する能力を有する酵素である。エステラーゼとは、特にエステルをアルコールと酸に加水分解(鹸化)する能力を持つ酵素のことである。このように、これらは特にヒドロラーゼであり、脂肪分解エステラーゼはリパーゼとも呼ばれる。本発明の意味でのリパーゼは、特にグリセリドなどの脂質から遊離脂肪酸を分解する(脂肪分解)能力を有する酵素をいう。
【0068】
本発明の範囲内において、触媒として使用される酵素は、カンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)、サーモミセスラヌギノサス、カンジダルゴサ、アスペルギルスオリザエ、シュードモナスセパシア、シュードモナスフルオレセンス、リゾープスデレマおよびシュードモナス属細菌およびそれらの組み合わせ、好ましくはカンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)およびサーモミセスラヌギノサスに由来するものである。
【0069】
特定の実施形態によれば、酵素は、固定化形態において使用され、担体上の、好ましくは高分子担体上の、より好ましくは疎水性特性を有する高分子有機担体上に固定化され、さらに好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂系担体に固定化されることができる。
【0070】
一般に触媒の使用に関して上記に説明したように、酵素を触媒として使用する場合、酵素は、反応後にリサイクルされることが好ましい。
【0071】
本発明の製造方法の範囲内において、反応は、触媒としての酵素の存在下で実行される場合、10℃~80℃の範囲内、特に20℃~80℃の範囲内、好ましくは25℃~75℃の範囲内、より好ましくは45℃~75℃の範囲内、更に好ましくは50℃~70℃の範囲内の温度で実行されることが好ましい。
【0072】
触媒として酵素を使用する場合、酵素の使用量は広い範囲で変化させることができる。特に、酵素は、出発化合物(I)および(II)の総量を基準として、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲内の量で使用される。それにもかかわらず、個々の場合または特定の用途において、本発明の範囲を離れることなく、上記の量から逸脱することが必要である場合がある。
【0073】
本発明の特定の実施形態によれば、反応が触媒としての酵素の存在下で行われる場合、加えられる圧力範囲も広い範囲内で変動することができる。特に、反応が触媒としての酵素の存在下で実行される場合、反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で実行される。
【0074】
本発明の代替的な実施形態によれば、反応は、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行される。
【0075】
反応が金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行される本発明のこの代替実施形態によれば、触媒は、特に(i)塩基性触媒、特にアルカリまたはアルカリ土類水酸化物およびアルカリまたはアルカリ土類アルコール塩、例えばNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、NaOMe、KOMeおよびNa(OBu-tert.)、(ii)酸性触媒、特に鉱酸、および有機酸、例えば硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびカルボン酸、(iii)ルイス酸、特にチタン、錫、亜鉛およびアルミニウム化合物をベースとするルイス酸、例えば、チタンテトラブチレート、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム、アルミニウムトリイソプロピル、および(iv)不均一系触媒、特に鉱物ケイ酸塩、ゲルマン酸塩、炭酸塩およびアルミニウム酸化物に基づく、ゼオライト、モンモリロナイト、モルデナイト、ヒドロタルサイトおよびアルミナ、ならびにこれらの組み合わせから選択されるものである。
【0076】
本実施形態によれば、特にアルカリまたはアルカリ土類アルコール酸塩を触媒として使用されることができる。
【0077】
特に、本実施形態によれば、金属含有触媒および/または金属系触媒、酸性触媒または塩基性触媒に基づく触媒が、反応後にリサイクルされる場合も好ましい。
【0078】
本発明のこの特定の実施形態によれば、反応が金属含有および/または金属ベース、酸性または塩基性触媒の存在下で実行される場合、温度は広い範囲内で変化させることができる。特に、反応は、20℃~150℃の範囲内、特に50℃~140℃の範囲内、好ましくは70℃~130℃の範囲内、より好ましくは80℃~125℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~120℃の範囲の温度で、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行されることが好ましい。
【0079】
さらに、この実施形態によれば、触媒(いわゆる金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒)は、広い量範囲内で変化されることが好ましい。例えば、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒に基づく触媒は、出発化合物(I)および(II)の合計量に基づいて、0.01~30重量%の範囲内、特に0.05~15重量%の範囲内、好ましくは0.1~15重量%の範囲内、より好ましくは0.2~10重量%の範囲内の量で使用されることが好ましい。それにもかかわらず、本発明の範囲を離れることなく、特定の用途または個々の場合について、言及された量から逸脱することが可能である。
【0080】
本発明のこの特定の実施形態によれば、金属含有および/または金属ベース、酸性または塩基性触媒の存在下で反応を行う場合、圧力範囲は広い範囲内で同様に変化させることができる。特に、反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行されることが好ましい。
【0081】
出発材料または出発化合物の量に関しても、広い範囲で変化させることができる。
【0082】
特に副生成物の最小化に関して、プロセスの経済性および方法の経過の最適化を考慮すると、ポリオール(II)、特にポリグリセロールのヒドロキシル基に基づく一般式(I)の化合物が、等モル量~200モル%超過までの範囲内、特に等モル量~150モル%超過までの範囲内、好ましくは等モル量~100モル%超過までの範囲内のモル量において使用される場合に有利である。
【0083】
同様に、特に副産物の最小化に関して、プロセスの経済性と方法の経過の最適化を考慮すると、一般式(I)の化合物とポリオール(II)、特にポリグリセロールは、1.1:1~10:1の範囲内、特に1.5:1~9:1の範囲内、好ましくは2:1~8:1の範囲内、より好ましくは3:1~6:1の範囲内の一般式(I)の化合物/ポリオール(II)のモル比において使用される場合が、有利である。
【0084】
本発明による方法に使用できる一般式(I)の化合物に関して、出発化合物として使用される一般式(I)の化合物は、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルである場合が、特に好ましい。
【0085】
本発明の特定の実施形態によれば、出発化合物として使用される一般式(I)の化合物、特にアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸が、
ラジカルRが水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチルである一般式(IV)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (IV)
の化合物と、
ラジカルRが、C-C-アルキル、特にメチルまたはエチル、好ましくはエチルを表す一般式(V)
CH-C(O)-CH-C(O)OR (V)
の少なくとも1つの化合物との反応によって取得可能でありおよび/または得られる。
【0086】
特に、上記で定義した一般式(IV)の化合物と上記で定義した一般式(V)の化合物との反応は、溶媒の非存在下および/または無溶媒で実行される。これは、質量での反応、物質での反応、いわゆるバルク反応として行われることを意味する。このため、得られた反応生成物が溶媒で汚染されることがなく、方法または反応を実行した後に、コストとエネルギーを要する方法で溶媒を除去して廃棄またはリサイクルする必要がないという利点がある。驚くべきことに、この方法または反応は、それにもかかわらず、高い転化率と収率で進行し、少なくとも本質的に重大な副生成物の形成がない。
【0087】
本発明の特定の実施形態によれば、上記で定義した一般式(IV)の化合物と上記で定義した一般式(V)の化合物との反応は、触媒、特に酵素および/または金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒、好ましくは酵素の存在下で実行される。これにより、特に副生成物の生成が抑制または低減され、さらに、転化率が向上するという利点がある。本実施形態によれば、反応後に触媒がリサイクルされることが好ましい。
【0088】
プロセス経済性および方法の過程の最適化、特に副生成物の最小化に関して考慮すると、一般式(V)の化合物と一般式(IV)の化合物は、一般式(V)の化合物/一般式(IV)の化合物のモル比が、1:1~10:1の範囲内、特に1.5:1~9:1の範囲内、好ましくは2:1~8:1の範囲内、より好ましくは3:1~6:1の範囲内で使用される場合が有利である。このようにして、副生成物形成、特に二量体3-ヒドロキシ酪酸およびそのアシルキャップされた誘導体の形成が効率的に妨げられる。
【0089】
本発明による方法で使用することができるポリオール(II)に関して、ポリオール(II)は、一般式(IIa)
(HO)-(X)-(OH) (IIa)
に相当することが特に意図されることが好ましい。
ここで、一般式(IIa)において、
・ Xは、有機ラジカル、特に3個~21個の炭素原子、好ましくは4個~21個の炭素原子を具備するとともに1個~9個の酸素原子を具備し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC-C21-アルキルラジカル、好ましくはC-C21-アルキルラジカル、または、C-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される好ましくは飽和有機ラジカルを表し、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立したもので、1~10の整数を表すものである。
【0090】
特に、本発明に関して、ポリオール(II)のヒドロキシル基が、ラジカルXの任意の位置にある場合、好ましくは少なくとも1つのヒドロキシル基が末端(すなわち、第1級ヒドロキシル基である)である場合が好ましい。特に、これは、水酸基が有機ラジカルXの任意の位置に配置または提供されてもよいことを意味する(ただし、好ましくは少なくとも1つの水酸基が末端であり、および/または第1級水酸基であることを条件とする)。
【0091】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、ポリオール(II)は、一般式(IIb)
HO-CH-CH(OH)-CH-[O-CH-CH(OH)-CH-OH (IIb)
のポリグリセロールであることが好ましい。
ここで、一般式(IIb)において、変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1である。
【0092】
本発明による方法の更なる特定の実施形態によれば、ポリオール(II)は、一般式(IIc)
HO-CH-CH(OH)-CH-O-CH-CH(OH)-CH-OH (IIc)
のジグリセロールであることが好ましい。
【0093】
本発明方法の好ましい実施形態によれば、ポリオール(II)は、プロパン-1,2,3-トリオールではない;すなわち、ポリオール(II)は、グリセロールではない。
【0094】
本発明方法の代替的な好ましい実施形態によれば、ポリオール(II)は、プロパン-1,2,3-トリオール;すなわち、ポリオール(II)は、グリセロールである。
【0095】
本発明による方法の更なる特定の実施形態によれば、ポリオール(II)は、アルカンジオール、特にC-C21-アルカンジオール、好ましくはC-C21-アルカンジオール、好ましくは直鎖または分枝状アルカンジオール、より好ましくは直鎖または分枝状C-C21-アルカンジオール、好ましくはC-C21-アルカンジオール、さらに好ましくは直鎖状C-C21-アルカンジオール、好ましくはC-C21-アルカンジオール、さらに好ましくは少なくとも1つの末端および/または第1級水酸基を有する直鎖状C-C21-アルカンジオール、好ましくはC-C21-アルカンジオール、さらに好ましくはペンタンジオール、特に1,2-ペンタンジオールから選択されることが好ましい。
【0096】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のこの態様に係る発明は、特に上記に定義されるように、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造する方法に関するものであり、
ラジカルRがエチルを表し、且つ、ラジカルRがラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表す一般式(I)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの化合物が、少なくとも2つ、特に少なくとも3つのヒドロキシル基(OH基)、特にポリグリセロールを有する少なくとも1つのポリオール(II)と反応し、
ここで、前記ポリオール(II)は、
変数pが、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2,より好ましくは1を表す一般式(IIb)
HO-CH-CH(OH)-CH-[O-CH-CH(OH)-CH]-OH (IIb)
のポリグリセロールから選択され、
これによって、反応生成物として、1つ以上のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られるものである。
【0097】
本発明による特に好ましいアプローチは、以下の反応または合成スキームによって例示される(「EtOH」=エタノールとする)(ここで、反応制御に応じて、個々のエステルまたはその2以上の混合物のいずれかが得られる):
【0098】
【化1】
【0099】
本発明による方法では、反応中に、一般式(VI)
-OH (VI)
による化合物が同時に形成され、ここで、一般式(VI)において、ラジカルRが、水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、好ましくはエチルを表す。
【0100】
特に、これに関して、一般式(VI)による化合物が、反応から除去され、特に連続的に除去され、特に蒸留による好ましくは連続的な除去によって取り出されることが好ましい。この方法において、反応平衡が効率的に反応生成物の側にシフトする。また、この方法において、副生成物の形成も最小限に抑えられるか、または防止される。
【0101】
本発明による製造方法の範囲内において、反応生成物、特に反応生成物の組成物、特に種々のおよび/または異なるアシルキャップされた3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの存在および混合物の場合のそれらの比率は、反応条件によって、特に反応温度(変換温度)を選択することによって、および/または、反応圧力(変換圧力)を選択することによって、および/または、触媒を提供することによって、および、その触媒の種類および/または量に関して触媒を選択することによって、および/または、出発化合物(反応物)の量を選択することによって、および/または、上記に定義された一般式(VI)による化合物の除去を提供することによって、制御および/または調節されることができる。
【0102】
反応後、得られた反応生成物は、さらに従来のまたはそれ自体既知の精製または検査工程に付すことができる。
【0103】
この際、得られた反応生成物は、反応が行われた後に分留されるものであり、特に蒸留によって分留されるものである。
【0104】
また、未反応の出発化合物(I)および/または(II)は、反応生成物から分離され、その後リサイクルされることができる。このため、特に経済的な方法制御が可能となる。
【0105】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、本発明のこの態様に係る発明は、特に上記に定義したような方法に関するものであり、
(a) 第1の方法段階において、
ラジカルRが、水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、好ましくはエチルを表す一般式(IV)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (IV)
の少なくとも1つの化合物が、
ラジカルRがC-C-アルキル、特にメチルまたはエチル、好ましくはエチルを表す一般式(V)
CH-CH(OH)-CH-C(O)OR (V)
の少なくとも1つの化合物と反応し、
これによって、
ラジカルRが上記に定義される意味を有し且つラジカルRがラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表す一般式(I)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (I)
の化合物が形成される;それに続いて、
(b)第2の方法段階において、上記に定義されるようなこの方法によって取得される一般式(I)の化合物が、上記に定義されるような少なくとも2つ、特に少なくとも3つのヒドロキシル基(OH基)、特にポリグリセロールを有する少なくとも1つのポリオール(II)と反応し、
これによって、反応生成物として、少なくとも1つのアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られる。
【0106】
アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸エステル合成とそれに続くジグリセロールとの反応からなる本発明による特に好ましい手順は、以下の反応または合成スキームによって示される(ここで、反応制御に応じて、個々のエステルまたはその2以上の混合物のいずれかを得ることができる):
【0107】
【化2】
【0108】
本発明による製造方法の特定の実施形態によれば、反応が起こった後に反応生成物中に依然として存在するヒドロキシル基が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、官能化され、特にエステル化されるように進めることが、特に可能である。
【0109】
言い換えれば、本発明による特定の実施形態によれば、反応の後に、まだ存在するヒドロキシル基の部分的な、特に完全な官能化、特にエステル化を行うことが可能である。
【0110】
本発明による方法のこの特定の実施形態では、特に、反応が起こった後に反応生成物にまだ存在するヒドロキシル基の官能化、特にエステル化は、
一般式(VII)
-O-R (VII)
の少なくとも1つのカルボン酸無水物で実行することができる。
ここで、一般式(VII)において、ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すものであること。
【0111】
本発明による方法のこの特定の実施形態では、一般式(VII)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、脂肪酸ラジカル、特にC-C34-脂肪酸ラジカル、好ましくはC-C34-脂肪酸ラジカルであることが好ましい。
【0112】
さらに、本発明による方法のこの特定の実施形態において、一般式(VII)のカルボン酸無水物が、脂肪酸無水物、特にC-C34-脂肪酸無水物、好ましくはC-C34-脂肪酸無水物である場合が好ましい。
【0113】
特に、一般式(VII)のカルボン酸無水物として、化合物は、ラジカルRが同一であることで使用される場合が好ましい。すなわち、一般式(VII)のカルボン酸無水物としては、対称的なカルボン酸無水物が用いられる。
【0114】
代替実施形態によれば、一般式(VII)のカルボン酸無水物として、化合物は、ラジカルRがお互いに異なるものにおいて使用されると好ましい。すなわち、一般式(VII)のカルボン酸無水物として、非対称カルボン酸無水物が使用される。
【0115】
本発明によれば、一般式(VII)の少なくとも1つのカルボン酸無水物との反応が行われた後の反応生成物中にまだ存在するヒドロキシル基の官能化は、60~150℃の範囲内、特に70~120℃の範囲内、好ましくは80~100℃の範囲内の温度で実行されることができる。
【0116】
一般式(VII)の少なくとも1つのカルボン酸無水物との反応が行われた後の反応生成物中に依然として存在するヒドロキシル基の本発明の官能化は、特に0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、さらに好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに約1バールの圧力で実行されることが好ましい。
【0117】
特に、一般式(VII)の少なくとも1つのカルボン酸無水物との反応が行われた後に反応生成物中にまだ存在するヒドロキシル基の官能化が、溶媒の非存在下および/または無溶媒で実行される場合が好ましい。すなわち、このようにして、質量での反応、あるいは物質での反応、いわゆるバルク反応として行われるのである。このため、得られた反応生成物が溶媒で汚染されることがなく、方法または反応が実行された後に、コストとエネルギーを要する方法で、溶媒を除去して廃棄またはリサイクルする必要がないという利点がある。驚くべきことに、この方法または反応は、それにもかかわらず、高い変換率および収率で、少なくとも実質的に有意な副生成物の生成なしに進行する。
【0118】
一般式(VII)の少なくとも1つのカルボン酸無水物との反応が行われた後の反応生成物にまだ存在する水酸基の本発明官能化の間、
ラジカルRが上記に定義にされるような意味を有する一般式(VIII)
-OH (VIII)
による化合物が同時に形成される。
【0119】
特に、これに関して、一般式(VIII)による化合物を反応中または反応後に、特に反応が起こった後に、好ましくは蒸留により引き出されることが好ましい。
【0120】
一般式(VII)の少なくとも1つのカルボン酸無水物との反応が行われた後に反応生成物中にまだ存在するヒドロキシル基の本発明による官能化の後、得られた生成物は、さらなる従来のまたはそれ自体公知の精製または精密検査工程に付すことが可能である。
【0121】
これに関して、官能基化の後に蒸留および/またはクロマトグラフィー、好ましくは蒸留が行われる。特に、まだ存在する反応物および反応副生成物、特に一般式(VIII)による化合物は、蒸留除去される。
【0122】
本発明による官能化に関して、一般式(VII)におけるラジカルRがお互いに異なる場合、および/または、一般式(VII)におけるラジカルRがそれぞれ2以上の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す場合、
一般式(VII)のカルボン酸無水物が、無水酢酸と一般式(VIII)
-OH (VIII)
の少なくとも一つのカルボン酸、特に脂肪酸を反応させることによって、取得可能および/または取得されることを提供するものである。
【0123】
これに関連して、無水酢酸と一般式(VIII)の少なくとも1つのカルボン酸、特に脂肪酸との反応は、下記の反応式によって実行される。
【0124】
【化3】
【0125】
ここで、ラジカルRは、上記に定義された意味を有するが、ただし、ラジカルRがお互いに異なること、および/または、ラジカルRが、それぞれお互いに独立したものであり、2個以上の炭素原子を有するアルキルラジカルを表すことを条件とするものである。
【0126】
本発明によるこの方法の特定の実施形態によれば、一般式(VII)の対称的なカルボン酸無水物が製造される。すなわち、一般式(VII)において、Rラジカルは同一であり、2個以上の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す。
【0127】
本発明によるこの方法の代替的な特定の実施形態によれば、一般式(VII)の非対称カルボン酸無水物が製造される。したがって、一般式(VII)において、Rラジカルはお互いに異なり、好ましくは一般式(VII)において、Rラジカルはそれぞれ2個以上の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す。
【0128】
反応に続いて(完全にまたは部分的に)存在するヒドロキシル基の官能化、特にエステル化を提供する本発明による特に好ましい手順は、以下の反応または合成スキームによって示される(ここで、反応の間の反応手順によって、個々のエステルまたはその2以上の混合物が得られ、以下の反応または合成スキームにおいて、ラジカルRが水素または式CH-(CHX=0-28-C(O)-のラジカルを示す)。
【0129】
【化4】
【0130】
反応が起こった後に反応生成物にまだ存在するヒドロキシル基の官能化、特にエステル化の代替実施形態によれば、官能化は、一般式(IX)
-O-R (IX)
の少なくとも1つのカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとの反応によって実行されることができる。
ここで、一般式(IX)において、
・ ラジカルRは、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表し、
・ラジカルRが、水素またはC-C-アルキル、特にメチルまたはエチル、好ましくは水素を表す。
【0131】
これに関連して、一般式(IX)のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルが、脂肪酸および/または脂肪酸エステル、特にC-C34-脂肪酸および/またはC-C34-脂肪酸エステル、好ましくはC-C34-脂肪酸および/またはC-C34-脂肪酸エステルを表す場合が特に好ましい。
【0132】
特に、一般式(IX)の少なくとも1つのカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとの反応が行われた後に反応生成物にまだ存在するヒドロキシル基の官能化の本発明によるこの実施形態は、溶媒の非存在下および/または無溶媒で実行される。すなわち、このようにして、質量での反応、および/または、物質での反応、および/または、いわゆるバルク反応として実行される。このため、得られた反応生成物が溶媒で汚染されることがなく、方法または反応が実行された後に、コストとエネルギーを要する方法で溶媒を除去して廃棄またはリサイクルする必要がないという利点がある。驚くべきことに、この方法または反応は、それにもかかわらず、高い変換率および収率で、少なくとも実質的に有意な副生成物の生成なしに進行する。
【0133】
好ましい実施形態によれば、一般式(IX)の少なくとも1つのカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとの反応が行われた後に反応生成物にまだ存在するヒドロキシル基の官能化は、触媒、特に酵素および/または金属含有および/または金属ベースの酸性触媒または塩基触媒の存在下に実行される。
【0134】
その際、反応後に触媒がリサイクルされることが特に好ましい。
【0135】
先に述べたように、好ましい実施形態によれば、一般式(IX)の少なくとも1つのカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとの反応が行われた後の反応生成物に依然として存在するヒドロキシル基の官能化は、触媒として酵素の存在下で行われてもよい。
【0136】
特に、酵素は、シンテターゼ(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼおよびそれらの組み合わせから選択することができる。本発明によれば、シンテターゼ(同義語でリガーゼ)は、特にリガーゼのクラスからの酵素であり、リガーゼは、共有結合によって2つ以上の分子の橋架を引き起こす酵素である。本発明でいうカタラーゼとは、特に過酸化水素を酸素と水に変換する能力を有する酵素のことである。エステラーゼとは、特にエステルをアルコールと酸に加水分解(鹸化)する能力を持つ酵素のことである;このように、これらは特にヒドロラーゼであり、脂肪分解エステラーゼはリパーゼとも呼ばれる。本発明の意味でのリパーゼは、特にグリセリドなどの脂質から遊離脂肪酸を分解する(脂肪分解)能力を有する酵素をいう。
【0137】
本発明の範囲内において、触媒として使用される酵素は、カンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)、サーモミセスラヌギノサス、カンジダルゴサ、アスペルギルスオリザエ、シュードモナスセパシア、シュードモナスフルオレセンス、リゾープスデレマおよびシュードモナス属細菌およびそれらの組み合わせ、好ましくはカンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)およびサーモミセスラヌギノサスに由来するものである。
【0138】
特定の実施形態によれば、前記酵素は、特に担体上の、好ましくはポリマー担体上の、より好ましくは疎水性を有するポリマー有機担体の固定化形態において、より好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂系担体に固定化されて使用されることができる。
【0139】
触媒一般に関連して既に述べたように、酵素は反応後にリサイクルされることが好ましい。
【0140】
反応が起こった後に反応生成物中にまだ存在するヒドロキシル基の本発明の官能化は、触媒として酵素の存在下において、少なくとも1つのカルボン酸および/または一般式(IX)のカルボン酸エステルを用いて行われる限りにおいて、反応は、10℃~80℃の範囲内、特に20℃~80℃の範囲内、好ましくは25℃~75℃の範囲内、より好ましくは45℃~75℃の範囲内、さらに好ましくは50℃~70℃の範囲内の温度で行われる場合が好ましい。
【0141】
触媒として酵素を用いる場合、酵素の使用量は広い範囲で変化させることができる。特に、酵素は、出発化合物の総量を基準にして、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、より好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲内の量で使用することが好ましい。それにもかかわらず、本発明の範囲を離れることなく、個別または用途に応じて前述の量から逸脱することが必要である場合がある。これに関連して、出発化合物は、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)と、一般式(IX)のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとのことである。
【0142】
本発明の特定の実施形態によれば、反応が起こった後の反応生成物中にまだ存在するヒドロキシル基の官能基化が、触媒としての酵素の存在下で、一般式(IX)の少なくとも1つのカルボン酸および/またはカルボン酸エステルで行われる場合、用いられる圧力範囲も広い範囲で変動し得る。特に、反応が触媒としての酵素の存在下に行われる場合、反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で行われることが可能である。
【0143】
一般式(IX)の少なくとも1つのカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとの反応が行われた後に反応生成物にまだ存在するヒドロキシル基の本発明の官能化の代替実施形態によれば、官能化は、金属含有および/または金属ベースの酸性触媒または塩基触媒の存在下で実行されることが好ましい。
【0144】
官能化が金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行される本発明による官能化のこの代替実施形態によれば、触媒は、特に(i)塩基性触媒、特にアルカリまたはアルカリ土類水酸化物およびアルカリまたはアルカリ土類アルコール塩、例えばNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、NaOMe、KOMeおよびNa(OBu-tert.)、(ii)酸性触媒、特に鉱酸、および有機酸、例えば硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびカルボン酸、(iii)ルイス酸、特にチタン、錫、亜鉛およびアルミニウム化合物をベースとするルイス酸、例えば、チタンテトラブチレート、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム、アルミニウムトリイソプロピル、および(iv)不均一系触媒、特に鉱物ケイ酸塩、ゲルマン酸塩、炭酸塩およびアルミニウム酸化物に基づく、ゼオライト、モンモリロナイト、モルデナイト、ヒドロタルサイトおよびアルミナ、ならびにこれらの組み合わせなどから選択されることが好ましい。
【0145】
本実施形態において、触媒は、特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコラートであることが好ましい。
【0146】
特に、本実施形態の官能化では、金属含有触媒および/または金属系酸性触媒または塩基性触媒に基づく触媒が、反応後にリサイクルされることが好ましい。
【0147】
本発明のこの特定の実施形態によれば、一般式(IX)の少なくとも1つのカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとの反応が行われた後に反応生成物中にまだ存在するヒドロキシル基の官能化が、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で行われる場合、温度は広い範囲内で変化させることが可能である。特に、反応は、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下において、20℃~150℃の範囲内、特に50℃~140℃の範囲内、好ましくは70℃~130℃の範囲内、より好ましくは80℃~125℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~120℃の範囲内の温度で実行されることができる。
【0148】
さらに、本実施形態においても、触媒(すなわち、金属含有触媒および/または金属系触媒、酸性触媒または塩基性触媒)は、広い量範囲内で変化させることが可能である。したがって、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒に基づく触媒は、出発化合物の総量を基準にして、0.01重量%~30重量%の範囲内、特に0.05重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、より好ましくは0.2重量%~10重量%の量で使用されることが可能である。しかしながら、用途や個々のケースに応じて、本発明の範囲を逸脱することなく、上記の量から逸脱することは可能である。ここでいう出発化合物とは、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)と、一般式(IX)のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとのことである。
【0149】
本発明のこの特定の実施形態によれば、一般式(IX)の少なくとも1つのカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとの反応が行われた後の反応生成物中に依然として存在するヒドロキシル基の官能化が、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で行われる場合、圧力範囲は同様に広い範囲内で変動し得る。特に、反応は、金属含有および/または金属ベースの、酸性または塩基性触媒の存在下において、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で、実行されることが好ましい。
【0150】
一般式(IX)の少なくとも1つのカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとの反応後に反応生成物にまだ存在するヒドロキシル基の官能化のこの特定の実施形態では、ラジカルRが上記に定義された意味を有する一般式(XI)
-OH (XI)
の化合物が同時に形成される。
【0151】
特に、これに関して、一般式(XI)の化合物は、反応が実行される間または後に、特に反応中に、好ましくは蒸留によって引き出されることが好ましい。この方法において、反応平衡が効率よく反応生成物側にシフトする。また、副生成物の形成を最小限に抑えるあるいは防止することができる。
【0152】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、上記に記載の方法によって反応生成物(III)中に導入されたエステル基は、上記に定義した一般式(IX)の化合物によって部分的にエステル交換されるものである。すなわち、上記に記載の方法によって反応生成物(III)に導入されたエステル基は、上記に定義された意味を有するラジカルRによるエステル交換化によって部分的に交換される。
【0153】
これに関連して、本発明のこの特定の実施形態によるエステル交換化は、反応が、少なくとも1つのカルボン酸および/またはカルボン酸エステルによって実行された後に、反応生成物にまだ存在するヒドロキシル基の本発明による官能化に関して上記に記載されているような反応条件下で実行されることが好ましい。
【0154】
さらに、本発明は、本発明の第2の態様によれば、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)の官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化された、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを生産する方法に関するものであり、
(A) (第1の)合成経路(A)によれば、第1の方法段階において最初に、
ラジカルRが水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチルを表し、ラジカルRがラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表す一般式(I)
CH-CH(OR)-CH-C(O)OR (I)
の少なくとも1つの化合物が、特に関連する従属請求項のいずれか1つに記載されるような少なくとも2つ、特に少なくとも3つのヒドロキシル基(OH基)を有する少なくとも1つのポリオール(II)と反応すること、
それに続く第2の方法段階において、第2の方法段階が、
(i) 少なくとも1つの脂肪酸および/またはそのエステル若しくは無水物による、特に少なくとも1つのC-C34-脂肪酸および/またはそのエステル若しくは無水物による、好ましくは少なくとも1つのC-C34-脂肪酸および/またはそのエステル若しくは無水物による、まだ存在するヒドロキシル基の少なくとも部分的な官能化、特に少なくとも部分的なエステル化、および/または、
(ii) 少なくとも1つの脂肪酸および/またはそのエステルによる、特に少なくとも1つのC-C34-脂肪酸および/またはそのエステルによる、好ましくは少なくとも1つのC-C34-脂肪酸および/またはそのエステルによる、第1の方法段階に導入されたエステル基の部分的なエステル交換化;を有するものであること;
または、
(B) ((A)に代わる第2の)合成経路(B)によれば、先ず第1の方法段階において、特に関連した従属請求項のいずれか1つに記載したような、少なくとも2つ、特に少なくとも3つのヒドロキシル基(OH基)を有する少なくとも1つのポリオール(II)が、
少なくとも1つの脂肪酸および/またはそのエステル若しくは水和物による、特に少なくとも1つのC-C34-脂肪酸および/またはそのエステル若しくは水和物による、好ましくは少なくとも1つのC-C34-脂肪酸および/またはそのエステル若しくは無水物と反応すること、
これに続く第2の方法段階において、前記第2の方法段階が、
(i) 上記に定義されるような一般式(I)の化合物による、まだ存在するヒドロキシル基の少なくとも部分的なエステル化、および/または、
(ii) 上記に定義されるような一般式(I)の化合物による、第1の方法段階において導入されたエステル基の部分的なエステル交換化;を有するものであり、
これによって、反応生成物として、それぞれの場合において、1つ以上の官能化され、特にC-C34-脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されたアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)、好ましくは1つ以上の官能化され、特にC-C34-脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されたアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが、得られるものである。
【0155】
特に、合成経路(A)による本発明の製造方法は、上記に記載の本発明の方法によって実行されることができる。
【0156】
合成経路(B)による本発明による方法で使用することができる脂肪酸および/または脂肪酸エステルに関して、脂肪酸および/または脂肪酸エステルは、上記に定義されるような一般式(IX)のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルである場合が、特に好ましい。
【0157】
さらに、合成経路(B)によれば、本発明による方法で使用することができる脂肪酸無水物に関して、脂肪酸無水物が、上記に定義されるような一般式(VII)のカルボン酸無水物である場合が、特に好ましい。
【0158】
特に、本発明方法において、合成経路(B)によれば、第1の方法段階において、反応は、溶媒の非存在下および/または無溶媒で実行される。前述したように、これは、質量での反応として、あるいは物質での反応として、いわゆるバルク反応として行われることを意味する。このため、得られた反応生成物が溶媒で汚染されることがなく、方法または反応を実施した後に、コストとエネルギーを消費する方法で溶媒を除去して廃棄または再利用する必要がないという利点がある。驚くべきことに、この方法または反応は、それにもかかわらず、高い変換率および収率で、少なくとも実質的に有意な副生成物の生成なしに進行する。
【0159】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、合成経路(B)によれば、第1の方法段階において、出発材料として脂肪酸および/またはそのエステルを用いる場合、反応は、触媒、特に金属含有および/または金属ベースの酸性触媒または塩基性触媒の存在下で実行される。
【0160】
これに関連して、触媒は反応後にリサイクルされることが特に好ましい。
【0161】
この特定の実施形態に代えて、合成経路(B)によれば、出発材料として脂肪酸無水物を用いる場合、反応は、触媒の非存在下および/または無触媒で行われる。
【0162】
前述したように、本発明製造方法の特定の実施形態によれば、合成経路(B)によれば、第1の方法段階において、出発材料として脂肪酸および/またはそのエステルを用いる場合、反応は、金属含有および/または金属系、酸性または塩基性触媒の存在下で行われる。
【0163】
触媒は、(i)塩基性触媒、特にアルカリまたはアルカリ土類水酸化物およびアルカリまたはアルカリ土類アルコール塩、例えばNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、NaOMe、KOMeおよびNa(OBu-tert.)、(ii)酸性触媒、特に鉱酸、および有機酸、例えば硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびカルボン酸、(iii)ルイス酸、特にチタン、錫、亜鉛およびアルミニウム化合物をベースとするルイス酸、例えば、チタンテトラブチレート、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム、アルミニウムトリイソプロピル、および(iv)不均一系触媒、特に鉱物ケイ酸塩、ゲルマン酸塩、炭酸塩およびアルミニウム酸化物に基づく、ゼオライト、モンモリロナイト、モルデナイト、ヒドロタルサイトおよびアルミナ、ならびにこれらの組み合わせなどから選択されるものである。
【0164】
本実施形態によれば、特にアルカリまたはアルカリ土類アルコラートが触媒として使用されることができる。
【0165】
特に、これに関連して、前述のように、触媒は、反応後にリサイクルされることが好ましい。
【0166】
特定の実施形態によれば、反応が金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で行われる場合、反応は、20℃~150℃の範囲内、特に50℃~140℃の範囲内、好ましくは70℃~130℃の範囲内、より好ましくは80℃~125℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~120℃の範囲内の温度で行われることが好ましい。
【0167】
特に、この実施形態によれば、触媒は、出発化合物の総量に基づいて、0.01重量%~30重量%の範囲内、特に0.05重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.2重量%~10重量%の範囲内の量で使用される場合が好ましい。
【0168】
さらに、この実施形態によれば、反応が、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下において、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で実行される場合が好ましい。
【0169】
本発明の製造方法の範囲内において、合成経路(B)によれば、反応の出発材料として脂肪酸および/またはそのエステルを使用する場合、上記に定義した一般式(XI)の化合物が同時に形成される。
【0170】
これに関連して、一般式(XI)の化合物は、反応中または反応後に、特に反応中に、好ましくは蒸留により、取り出されることが特に好ましい。
【0171】
本発明の製造方法において、合成経路(B)によれば、反応の出発材料として脂肪酸無水物を使用する場合、上記に定義するような一般式(VIII)の化合物が同時に形成される。
【0172】
特に、一般式(VIII)の化合物は、反応中または反応後に、好ましくは蒸留により取り出されることが好ましい。
【0173】
特に、本発明に係る方法において、合成経路(B)によれば、第2の方法段階は、溶媒の非存在下および/または無溶媒で実行されることも可能である。
【0174】
さらに、本発明による方法において、合成経路(B)によれば、第2の方法段階は、触媒、特に上記に定義されるような金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下でも実行される。
【0175】
また、これに関連して、触媒は反応後にリサイクルされることが好ましい。
【0176】
本発明方法のこの特定の実施形態では、合成ルート(B)によれば、第2の方法段階において、一般式(X)
-O-R (X)
の化合物が同時に形成される。ここで、一般式(X)において、
・ ラジカルRが、水素またはC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、好ましくはエチルを表し、
・ ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素または上記に定義されたラジカルRを表すものである。
【0177】
これに関連して、一般式(X)の化合物が、反応が行われている間または後に、好ましくは蒸留によって取り出されることが特に意図されている。
【0178】
本発明によれば、特に遊離形態でまたはそのエステル若しくは無水物の形態の脂肪酸、特にC-C34-脂肪酸、好ましくはC-C34-脂肪酸は、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘネイコサン酸、ベヘン酸、リグノセライド、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラセリン酸、ゲルジ酸、ウンデシル酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、マーガレイン酸、ペトロセル酸、オレイン酸、エライジン酸、バセン酸、ガドール酸、セトレン酸、エルカ酸、ニュルンボン酸、リノール酸。リノレン酸、カレンデュラ酸、プニック酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサジエノ酸、ドコサテトラエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサヘキサエン酸ならびにこれらの混合物の群から選択されることが特に意図されている。
【0179】
本発明の特定の実施形態によれば、特に遊離形態またはそのエステルもしくは無水物の形態の脂肪酸、特にC-C34-脂肪酸、好ましくはC-C34-脂肪酸は、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミトレイン酸、セトレン酸、オレイン酸、ガドレイン酸セトレン酸、エルシン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサジエノ酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサヘキサエン酸ならびにこれらの混合物の群から選択され、好ましくはエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸ならびにこれらの混合物の群から選択されることが好ましい。
【0180】
さらなる特定の実施形態によれば、特に遊離形態またはそのエステルもしくは無水物の形態の脂肪酸、好ましくはC-C34-脂肪酸、好ましくはC-C34-脂肪酸は、魚油に基づく脂肪酸および/または魚油中に存在する脂肪酸、特にエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸およびテトラコサヘキサエン酸ならびにこれらの混合物の群から選択され、好ましくはエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸ならびにこれらの混合物の群から選択される。
【0181】
本発明による方法では、反応生成物として、1つ以上の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、特に任意にC-C34-脂肪酸で官能化されたアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシブチ酸ポリオールエステル(III”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られることが好ましい。
【0182】
さらに、本発明方法においては、反応生成物として、1つ以上のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られることができる。
【0183】
さらに、本発明方法においては、反応生成物として、1つ以上の官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で能化されたアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルが得られるものである。
【0184】
本発明の第3の態様によれば、本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得られる反応生成物、または、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、または、それらの混合物である。
【0185】
特に、本発明の方法によって得られる反応生成物、特に(化学)生成物または生成物混合物は、一般式(IIIa”)
(RO)-(X)-(OR (IIIa”)
の1つ以上の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されたアシルキャップされた(アシルブロック)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIa”)において、
・ Xは、有機ラジカル、特に3個~21個の炭素原子、好ましくは4個~21個の炭素原子を有するとともに任意に1個~9個の酸素原子を有し、アルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC-C21-アルキルラジカル、特にC-C21-アルキルラジカル、またはC-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、より好ましくはC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される好ましくは飽和有機ラジカルを表し、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立した、1~10の整数を表し、
・ ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものであり;
特に、基RO-が、ラジカルXの任意の位置にあり、好ましくは少なくとも1つの基RO-が末端であること。
【0186】
本発明の特定の実施形態によれば、前記反応生成物は、一般式(IIIb”)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIb”)
の1つ以上の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されたアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIb”)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表し、
・ ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0187】
本発明の特定の実施形態によれば、前記反応生成物は、一般式(IIIc”)
O-CH-CH(OR)-CH-O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc”)
の1つ以上の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されたアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIc”)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0188】
本発明の特定の実施形態によれば、前記反応生成物は、一般式(IIId”)
O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIId”)
の1つ以上の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されたアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIId”)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、特に(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0189】
本発明の特定の実施形態によれば、前記反応生成物は、特に、上記に定義するような少なくとも2つの異なる任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC-C34-脂肪酸官能化されたアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの混合物を有することが好ましい。
【0190】
本発明の特定の実施形態によれば、反応生成物は、特に、少なくとも3つの異なる任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC-C34-脂肪酸官能化されたアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル、特に上記に定義するようなポリグリセロールエステルの混合物を有することが好ましい。
【0191】
特に、本発明方法に従って得られる反応生成物(すなわち、(化学)生成物または生成物混合物)または本発明の反応生成物は、一般式(IIIa)
(RO)-(X)-(OR (IIIa)
の1つ以上のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIa)において、
・ Xは、有機ラジカル、3個~21個の炭素原子、特に4個~21個の炭素原子を有するとともに1個~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される好ましくは飽和有機ラジカルを表し、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立した1~10の整数を表し、
・ ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないことを条件とするものであり;
特に、基RO-がラジカルXの任意の位置にあり、好ましくは少なくとも1つの基RO-が端末であること。
【0192】
特に、前記反応生成物は、一般式(IIIb)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIb)
の1つ以上のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIb)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表し、
・ ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないことを条件とするものである。
【0193】
本発明の特別な実施形態によれば、前記反応生成物は、一般式(IIIc)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc)
の1つ以上のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIc)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないことを条件とするものである。
【0194】
あるいは、本発明方法に従って得られる反応生成物(すなわち(化学)生成物または生成物混合物)または本発明の反応生成物は、一般式(IIId)
O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIId)
の1つまたは複数のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有するものであり、
ここで、一般式(IIId)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないことを条件とするものである。
【0195】
特定の実施形態によれば、前記反応生成物は、特に上記に定義されるような少なくとも2つの異なるアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物を有することが好ましい。
【0196】
特定の実施形態によれば、反応生成物は、特に上記に定義されるような少なくとも3つの異なるアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物を有することが好ましい。
【0197】
特に、本発明方法に従って得られる反応生成物(すなわち化学生成物または生成物混合物)または本発明の反応生成物は、一般式(IIIa’)
(RO)-(X)-(OR (IIIa’)
の1つ以上の官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIa’)において、
・ Xは、有機ラジカル、3個~21個の炭素原子、特に4個~21個の炭素原子を有するとともに任意に1個~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル。特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC-C21-アルキルラジカル、好ましくはC-C21-アルキルラジカル、または、C-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される飽和有機ラジカルを表し、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立したものであり、1~10の整数を表し、
・ ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すが、ただし、少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものであり;
特に、基RO-がラジカルXの任意の位置にあり、好ましくは少なくとも1つの基RO-が末端であること。
【0198】
特に、一般式(IIIa’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、上記に定義されるようなラジカルR2または上記に定義されるようなラジカルRを表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルR2を表すものであること、および、少なくとも1つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0199】
特に、一般式(IIIa’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0200】
特に、前記反応生成物は、、一般式(IIIb’)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIb’)
の1つ以上の官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIb’)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表し、
・ ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すものであるが、ただし、少なくとも2つのラジカルRが水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0201】
特に、一般式(IIIb’)において、ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、上記に定義されるようなラジカルRまたは上記に定義されるようなラジカルRを表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルRが上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0202】
特に、一般式(IIIb’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0203】
本発明の特別な実施形態によれば、前記反応生成物は、一般式(IIIc’)
O-CH-CH(OR)-CH-O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc’)
の1つ以上の官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されたのアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIIc’)において、ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すものであるが、ただし、少なくとも2つのラジカルRが水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0204】
特に、一般式(IIIc’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、上記に定義されるようなラジカルRまたは上記に定義されるようなラジカルRを表すことが好ましいものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルRが上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0205】
特に、一般式(IIIc’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0206】
本発明の特別な実施形態によれば、前記反応生成物は、一般式(IIId’)
O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc’)
の1つ以上の官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されたのアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
ここで、一般式(IIId’)において、ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すものであるが、ただし、少なくとも2つのラジカルRが水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0207】
特に、一般式(IIId’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、上記に定義されるようなラジカルRまたは上記に定義されるようなラジカルRを表すことが好ましいものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルRが上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0208】
一般式(IIId’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが特に好ましい。
【0209】
特定の実施形態によれば、前記反応生成物は、特に上記に定義されるような少なくとも2つの異なる官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステルの混合物(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物を有することが特に好ましい。
【0210】
特定の実施形態によれば、前記反応生成物は、特に上記に定義されるような少なくとも3つの異なる官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステルの混合物(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物を有することが特に好ましい。
【0211】
本発明の主題は、また、一般式(IIIa”)
(RO)-(X)-(OR (IIIa”)
の任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルである。
ここで、一般式(IIIa”)において、
・ Xは、有機ラジカル、3個~21個の炭素原子、特に4個~21個の炭素原子を有するとともに任意に1個~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル。特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC-C21-アルキルラジカル、好ましくはC-C21-アルキルラジカル、または、C-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される飽和有機ラジカルを表し、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立したものであり、1~10の整数を表し、
・ ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものであり;
特に、基RO-がラジカルXの任意の位置にあり、好ましくは少なくとも1つの基RO-が末端であること。
【0212】
本発明のさらなる主題は、上記に記載されたような任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III”)であり、
ここで、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(IIIb”)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIb”)
に対応する。
ここで、一般式(IIIb”)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表し、
・ ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0213】
また、本発明のさらなる主題は、上記に記載されたような任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III”)であり、
ここで、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(IIIc”)
O-CH-CH(OR)-CH-O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc”)
に対応する。
ここで、一般式(IIIc”)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0214】
また、本発明のさらなる主題は、上記に記載されたような任意に官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III”)であり、
ここで、任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(IIId”)
O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIId”)
に対応する。
ここで、一般式(IIId”)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0215】
本発明のこの態様による更なる主題は、特定の実施形態によれば、上記に定義されるような少なくとも2つの異なる任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有する混合物である。
【0216】
本発明のこの態様による更なる主題は、特定の実施形態によれば、上記に定義されるような少なくとも3つの異なる任意に官能化され、特に任意に脂肪酸で官能化され、好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくは任意にC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III”)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有する混合物である。
【0217】
さらなる実施形態によれば、本発明の主題は、一般式(IIIa)
(RO)-(X)-(OR (IIIa)
のアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルであり、
ここで、一般式(IIIa)において、
・ Xは、有機ラジカル、3個~21個の炭素原子、特に4個~21個の炭素原子を有するとともに任意に1個~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル。特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC-C21-アルキルラジカル、好ましくはC-C21-アルキルラジカル、または、C-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される飽和有機ラジカルを表し、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立したものであり、1~10の整数を表し、
・ ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないことを表すことを条件とするものであり;
特に、基RO-がラジカルXの任意の位置にあり、好ましくは少なくとも1つの基RO-が末端であること。
【0218】
この実施形態によれば、本発明の別の主題は、上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステルであり、
ここで、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(IIIb)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIb)
に対応する。
ここで、一般式(IIIb)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2,より好ましくは1を表し、
・ ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここで、ラジカルRがラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないことを条件とするものである。
【0219】
この実施形態によれば、本発明のさらなる主題は、上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステルであり、
ここで、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(IIIc)
O-CH-CH(OR)-CH-O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc)
に対応する。
ここで、一般式(IIIc)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここで、ラジカルRがラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないことを条件とするものである。
【0220】
この実施形態によれば、本発明のさらなる主題は、上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステルであり、
ここで、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(IIId)
O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIId)
に対応する。
ここで、一般式(IIId)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここで、ラジカルRがラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-を表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないことを条件とするものである。
【0221】
さらに特別な実施形態に基づく本発明の様相による本発明の別の主題は、上記に定義されるような少なくとも2つの異なるアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有する混合物である。
【0222】
さらに特別な実施形態に基づく本発明の様相による本発明の別の主題は、上記に定義されるような少なくとも3つの異なるアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルを有する混合物である。
【0223】
さらに別の実施形態によれば、
本発明の主題は、また、一般式(IIIa’)
(RO)-(X)-(OR (IIIa’)
の官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルである。
ここで、一般式(IIIa’)において、
・ Xは、有機ラジカル、3個~21個の炭素原子、特に4個~21個の炭素原子を有するとともに任意に1個~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル。特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC-C21-アルキルラジカル、好ましくはC-C21-アルキルラジカル、または、C-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカル、好ましくはC-C21-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される飽和有機ラジカルを表し、
・ 変数mおよびnは、それぞれお互いに独立したものであり、1~10の整数を表し、
・ ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものであり;
特に、基RO-がラジカルXの任意の位置にあり、好ましくは少なくとも1つの基RO-が末端であること。
【0224】
特に、一般式(IIIa’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、上記に定義されるようなラジカルRまたは上記に定義されるようなラジカルRを表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0225】
この特定の実施形態では、一般式(IIIa’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが有利である。
【0226】
この特別な実施形態によれば、本発明の別の主題は、上記に定義されるような官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)であり、
ここで、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(IIIb’)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIb’)
に対応する。
ここで、一般式(IIIb’)において、
・ 変数pは、0~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1または2、より好ましくは1を表し、
・ ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すものであるが、ただし、少なくとも2つのラジカルRが水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0227】
特に、一般式(IIIb’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、上記に定義されるようなラジカルRまたは上記に定義されるようなラジカルRを表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0228】
この特定の実施形態では、一般式(IIIb’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであるが、水素を表さないことが好ましい。
【0229】
この特別な実施形態によれば、本発明の別の主題は、上記に定義されるような官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)であり、
ここで、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(IIIc’)
O-CH-CH(OR)-CH-O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc’)
に対応する。
ここで、一般式(IIIc’)において、ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すものであるが、ただし、少なくとも2つのラジカルRが水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0230】
特に、一般式(IIIc’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、上記に定義されるようなラジカルRまたは上記に定義されるようなラジカルRを表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルRが上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0231】
この特定の実施形態では、一般式(IIIc’)において、ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0232】
この特別な実施形態によれば、本発明の別の主題は、上記に定義されるような官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)であり、
ここで、官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルは、一般式(IIId’)
O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIId’)
に対応する。
ここで、一般式(IIId’)において、ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、ラジカルCH-C(O)-CH-C(O)-またはラジカルRを表し、ここでラジカルRが、線形(直鎖)または分枝状、飽和またはモノ-若しくはポリ不飽和タイプの(C-C33-アルキル)-C(O)-、(C-C33-アルキル)-C(O)-、好ましくは(C-C33-アルキル)-C(O)-のラジカルを表すものであるが、ただし、少なくとも2つのラジカルRが水素を表さないこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0233】
特に、一般式(IIId’)において、ラジカルRは、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、上記に定義されるようなラジカルRまたは上記に定義されるようなラジカルRを表すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されるようなラジカルRを表すこと、および、少なくとも1つのラジカルRが上記に定義されるようなラジカルRを表すことを条件とするものである。
【0234】
この特定の実施形態では、一般式(IIId’)において、ラジカルRが、それぞれお互いに独立した同一または異なるものであり、水素を表さないことが好ましい。
【0235】
本発明のこの様相による本発明のさらなる主題は、さらに特別な実施形態によれば、上記に定義されるような少なくとも2つの官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物である。
【0236】
本発明のこの様相による本発明のさらなる主題は、さらに特別な実施形態によれば、上記に定義されるような少なくとも3つの官能化され、特に脂肪酸で官能化され、好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化され、より好ましくはC-C34-脂肪酸で官能化されアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸ポリオールエステル(III’)、特に3-ヒドロキシ酪酸ポリグリセロールエステルの混合物である。
【0237】
出願人は驚くべきことを見いだしたように、本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されたような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3ーヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されたようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物は、一方で、それは、生理学的に、特に消化管内でケト体3-ヒドロキシ酪酸と3-オキソ酪酸(=アセト酢酸またはアセト酢酸塩)に変換され、生理学的に最終的に3-ヒドロキシ酪酸またはその塩に変換・還元されることから、他方で、同時に、良好な生理学的適合性または忍容性、特に非毒性および許容可能な有機食品特性を有していることから、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の前駆体または代謝物として好適である。特に、消化管内での生理学的活性物質の持続的な放出は、活性物質である3-ヒドロキシ酪酸を長時間利用できるためケトーシス療法が可能になり、医療分野において有利である。
【0238】
本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されたような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3ーヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されたようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物は、特に人体または動物体の生理的代謝において、生理学的に3-ヒドロキシ酪酸またはその塩およびアセト酢酸(したがって生理的には3-ヒドロキシ酪酸またはその塩)に直接または間接的にアクセスする有効な前駆物質または代謝物として好適である。
【0239】
このように、胃および/または腸における生理学的な開裂の間、本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されたような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3ーヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されたようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物は、ケト化合物の3-ヒドロキシ酪酸と3-オキソ酪酸(それぞれアセト酢酸とアセト酢酸塩)に開裂し、さらに身体によって3-ヒドロキシ酪酸に還元される。
【0240】
3-オキソ酪酸ラジカルと3-ヒドロキシ酪酸ラジカルの両方または3-ヒドロキシ酪酸の存在により、有効成分3-ヒドロキシ酪酸の利用率または放出率に違いがある。その結果、本発明の反応生成物は、本質的に、さらに差別化された遅延効果を有する。なぜなら、全体として、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはエステルの本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、分解速度の異なる2つのケト体を示すからである。また、ケト体はポリオールエステルの形で存在するため、遊離型の有効成分である3-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸もポリオールから分離しなければならないため、さらなる遅れが生じる。全体として、有効成分である3-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸は、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルから遅延効果を伴う多段階分解によって放出される。
【0241】
したがって、本発明の方法は、それ自体既知であり、市販されており、とりわけ生理学的に無害な成分または反応物(出発化合物)から、アシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の無毒で任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを初めて提供できるようにするものである。得られたアシルキャップされた3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、生理学的に、特に胃および/または腸で開裂され、有効成分または活性成分として標的分子「3-ヒドロキシ酪酸」またはその塩を放出または生成することが可能である。同時に、さらなるケト体アセト酢酸も、3-ヒドロキシ酪酸のアシルキャップから生理学的に解放される(その後、さらに3-ヒドロキシ酪酸に還元される)。
【0242】
さらに、本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物は、合成ベースで大規模に、さらに商業規模で、且つ、必要な医薬または薬学の品質を有して、容易に入手または入手可能である。
【0243】
本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物は、必要に応じて、エナンチオマー的に純粋な形態でまたはエナンチオマー的に濃縮された形態で提供されることができる。
【0244】
本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物は、これによって、人体や動物体のケト体治療に関して、効率的な薬理学的医薬ターゲットを表す。
【0245】
以下、本発明の残りの態様について、さらに詳しく説明し、解説する。
【0246】
本発明の第4の態様によれば、本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物を有する医薬品組成物、特に薬剤または医薬品である。
【0247】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、予防的および/または治療的処置のための、または、人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置における使用のための医薬組成物に関する。これは特に、エネルギー代謝、特にケト体代謝の障害を伴う疾患、例えば特に脳梗塞、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞などの循環器疾患、リフィーディング症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、糖輸送体欠損(GLUT1欠損)などの脂肪代謝性疾患、VL-FAOD、ミトコンドリアチオラーゼ欠損などのミトコンドリア病、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、尿道炎などのリュウマチ性疾患。慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用に関連する疾患に関することが好ましい。
【0248】
本発明の第5の態様によれば、本発明のさらなる主題は、特に、エネルギー代謝、特にケト体代謝の障害を伴う疾患、例えば特に脳梗塞、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞などの循環器疾患、リフィーディング症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、糖輸送体欠損(GLUT1欠損)などの脂肪代謝性疾患、VL-FAOD、ミトコンドリアチオラーゼ欠損などのミトコンドリア病、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、尿道炎などのリュウマチ性疾患。慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用に関連する疾患に関する予防的および/または治療的処置のための、または、人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置における使用のための、本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物である。
【0249】
同様に、本発明の第7の態様によれば、本発明のさらなる主題は、エネルギー代謝、特にケト体代謝の障害を伴う疾患、例えば特に脳梗塞、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞などの循環器疾患、リフィーディング症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、糖輸送体欠損(GLUT1欠損)などの脂肪代謝性疾患、VL-FAOD、ミトコンドリアチオラーゼ欠損などのミトコンドリア病、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、尿道炎などのリュウマチ性疾患。慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響や副作用に関連する疾患に関する予防的および/または治療的処置のための、または、人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のために医薬組成物を製造するための使用のための、上記に定義されるような反応生成物の使用、および/または、任意に官能化されたポリオールエーテル、特にポリグリセロールエーテルの使用、および/または、上記に定義されるような混合物の使用である。
【0250】
同様に、本発明の第7の態様によれば、本発明のさらなる主題は、予防的および/または治療的処置のための、または空腹、ダイエットまたは低炭水化物栄養のような異化代謝状態への適用のための医薬品の製造のための、本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物の使用、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの使用、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0251】
本発明の第8の態様によれば、本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物を有する食品および/または食品生成物である。
【0252】
特定の実施形態によれば、食品および/または食品生成物は、本質的に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、または筋力および/または耐久スポーツサプリメントであってもよい。
【0253】
最後に、本発明の第9の態様によれば、本発明の別の主題は、食品および/または食品生成物における、本発明の方法によって取得可能な反応生成物または上記に定義されるような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって取得可能なアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記に定義されるようなアシルキャップされた(アシルブロックされた)3-ヒドロキシ酪酸の本発明の任意に官能化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物または上記に定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0254】
本発明のこの態様によれば、食品および/または食品生成物は、特に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、または筋力および/または耐久スポーツ補助食品であってよい。
【0255】
本発明のさらなる実施形態、修正および変形は、本発明の範囲を離れることなく、本明細書を読んだ当業者によって容易に認識または実現可能なものである。
【発明を実施するための形態】
【0256】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、これらは本発明を何ら限定するものではなく、本発明の例示的かつ非限定的な実施および構成を説明するためのものに過ぎない。
【実施例
【0257】
使用した略語
・ 3-BHB=3-ヒドロキシ酪酸または3-ヒドロキシ酪酸ラジカル(3-ヒドロキシ酪酸塩ラジカル)
・ 3-BHB-FS=3-ヒドロキシ酪酸(遊離酸)
・ PG(2)=ジグリセロール:HO-CH-CH(OH)-CH-O-CHCH(OH)-CH-OH
・ PG(3)=ポリグリセリン:HO-CH-CH(OH)-CH-[O-CHCH(OH)-CH]-OH
・ 3-BHB-ダイマーエチルエステル=3-BHBエチルエステルの2量体
・ 3-アセチルアセト-BHBエチルエステル=アセト酢酸エチルでキャップされた3-BHBエチルエステルの2量体
【0258】
製造例
以下の実施例により、本発明の製造方法を説明する。なお、関連する一般的な反応スキームは、一般的な説明部分に示して説明する。
【0259】
3-アセチルアセト酪酸ジグリセロールエステル混合物の製造
デフレゲーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた100mLマルチネックフラスコに、89gの3-アセチルアセト酪酸エチルエステル(3-アセチルアセト-BHB-エチルエステル)、3.5gのジグリセロールおよび0.9gの固定化酵素(カンジダアンタルクチカ、例えばNovozym(登録商標)435由来のポリマー支持体のCALBリパーゼ)が提供される。
【0260】
反応混合物を真空下、50℃~70℃で、6時間撹拌しながら反応させ、生成したエタノールを連続的に蒸留除去する。その後、酵素を濾過し、過剰の3-アセチルアセト酪酸エチルエステルを真空下で蒸留除去する。3-アセチルアセト酪酸のモノ-、ジ-、トリ-およびテトラジグリセロールエステルの混合物が得られる。特性評価は、ガスクロマトグラフィー(GC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)およびGC-MS分析(質量分析カップリング付きガスクロマトグラフィー)により行われる。
【0261】
精製の過程において、まだ存在する反応物や反応副生成物を除去し、純粋な混合物を得ることができる。混合物の一部をクロマトグラフィーで分離し、各種ジグリセロールエステルを純物質として得る(すなわち、純3-アセチルアセト酪酸モノジグリセロールエステル、純3-アセチルアセト酪酸ジジグリセロールエステル、純3-アセチルアセト酪酸トリジグリセロールエステルおよび純3-アセチルアセト酪酸テトラジグリセロールエステル)であった。混合物の別の一部は、分留分離に供される。
【0262】
3-アセチルアセト酪酸ジグリセロールエステルのさらなる製造について
デフレゲーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた100mLマルチネックフラスコに、178gの3-アセチルアセト酪酸エチルエステル(3-アセチルアセト-BHB-エチルエステル)と29gのジグリセロールを提供する。
【0263】
100℃の温度で、1.4gの30%メタノールNaOMe溶液が、攪拌しながら添加される。生成したエタノールは連続的に蒸留除去する。反応時間5時間後、反応混合物を冷却し、NaCl水溶液で洗浄する。粗エステル混合物を乾燥させ、過剰の3-アセチルアセト酪酸エチルエステルを真空下で蒸留除去する。
【0264】
反応生成物は、以下の組成を有する3-アセチルアセト酪酸ジグリセロールエステル混合物である;3-アセチルアセト酪酸モノジグリセロールエステル、3-アセチルアセト酪酸ジジグリセロールエステル、3-アセチルアセト酪酸トリジグリセロールエステル、3-アセチルアセト酪酸テトラジグリセロールエステルでである。特性評価は、GC、GPCおよびGC-MSで行う。
【0265】
精製の過程で、反応物や反応副生成物が除去され、純粋な混合物が得られる。この混合物の一部は、クロマトグラフィーで分離され、各種ジグリセリンエステルを純物質として得る(すなわち、純3-アセチルアセト酪酸モノジグリセリンエステル、純3-アセチルアセト酪酸ジグリセリンエステル、純3-アセチルアセト酪酸トリジグリセリンエール、等)。この混合物の別の一部は、分別蒸留による分離に供される。
【0266】
アシル基含有3-BHB-ポリオールエステルのさらなる製造方法
前記の実験は、それぞれ異なるポリオール(すなわちグリセロール、ポリグリセリンPG(3)および1,2-ペンタンジオール)を用いて(酵素を用いておよび触媒としてNaOMeを用いて)繰り返された。同様の結果が得られた。精製と分画は同じ方法で行われる。
【0267】
またより多くの生産事例
多価アルコール(ポリオール)に基づく各種ポリオール成分は、3-アセチルアセト酪酸エチルエステルと酵素的に反応される。
【0268】
ポリオールとしては、1,2-ペンタンジオールおよびジグリセロールPG(2)が選択される。それぞれのポリオールは、固定化酵素(例えばシグマ-アルドリッヒまたはメルク社製のNovozym(登録商標)435またはストレムケミカル社製のLipozym(登録商標)435のカンジダアンタルクチカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ)と70℃の温度おいて24時間反応させる(それぞれ場合において1重量%の酵素およびそれぞれの場合に40モル%過剰の3-アセチルアセト酪酸エチルエステル)。
【0269】
前述のポリオール1,2-ペンタンジオールとジグリセロールPG(2)は、前述の酵素で効率的に反応され、目的の生成物を得ることができる。これまでの実験と同様の結果が得られる。精製および分離または分画も同様に行われる。
【0270】
実験は、酵素の代わりにメタノール酸ナトリウム(NaOMe)を触媒として用い、100℃~120℃の間の温度で繰り返された。同等の結果が得られる。精製と分離または分画も同様に行われる。
【0271】
特に3-アセチルアセト酪酸PG(2)エステルは、わずかに苦味を感じるだけなので、特に治療用途に有効な製品群であると言える。したがって、ポリオールとして酵素とジグリセロールPG(2)を用いた先の実験は、より大きなスケール(2~4kg)で実行される。
【0272】
まず、これまでの実験の化学量論的反応条件を2kgのスケールで適用する(40モル%過剰の3-アセチルアセト酪酸エチルエステル、1重量%の酵素)。15時間後、反応混合物の一部(約200g)は取り出され、さらに分析される。これは、モノ/ジ-PG(2)エステル混合物である。次に、さらに約1kgの3-アセチルアセト酪酸エチルエステルが加えられる。目的は完全なエステルを生成することである。約20~30時間後に一定のジPG(2)-エステル含量が得られ、モノPG(2)-エステル含量は減少し、トリPG(2)-エステル含量は増加することが分かる。さらに分析(GPC)すると、テトラPG(2)-エステルも形成されていることがわかる。
【0273】
過剰3-アセチルアセト酪酸エチルエステルを蒸留除去した後、最初に得られた(低沸点)モノ/ジ-PG(2)エステル混合物は、わずかに苦味を示すだけであるが、より高い(高沸点)ジ/トリ/テトラPG(2)エステル混合物は、やや多くの苦味を示す。しかし、どちらの混合物も有機的に受け入れられ、適合性がある。
【0274】
残留する反応物や反応副生成物を除去してさらに精製すると、有機的な特性が著しく改善された純粋な混合物が得られる。
【0275】
官能化の試み
1. 無水物の製造
デフレゲーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた2000mLのマルチネックフラスコに、860gのヘプタン酸を供給し、445gの無水酢酸が、攪拌下、90℃で添加される。反応混合物は、還流下130℃で6時間撹拌される。結果として得られた酢酸および過剰の無水酢酸は、真空下で蒸留除去される。以下の組成のヘプタン酸/ヘプタン酸無水物混合物が得られる;15%のヘプタン酸、85%のヘプタン酸無水物。特性評価は、GCおよびGC-MSによって行われる。
【0276】
2.官能化
デフレゲーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた10mL-マルチネックフラスコに、25gのヘプタン酸無水物と5gの本発明によって生成された3-アセチルアセト-BHB-モノ、ジ、トリ、テトラ-ジグリセロール混合物が提供される。反応混合物は、70℃で24時間撹拌される。その後、過剰のヘプタン酸無水物および結果として得られたヘプタン酸は、ショートパス蒸留により蒸留除去される。3-アセチルアセト-BHB/ヘプタン酸ジグリセロールエステル混合物が得られる(すなわち、言い換えれば、遊離OH基で官能化またはエステル化された3-アセチルアセト-BHB-ジグリセロールエステル混合ヘプタン酸が得られる)。
【0277】
比較可能な官能化実験は、また脂肪酸および代替的に脂肪酸無水物および再び代替的に脂肪酸エステル(それぞれ、一方でエイコサペンタエン酸/ドコサヘキサエン酸混合物とその無水物およびエステル、他方でオレイン酸とその無水物およびエステル)で行われ、対応する分析により確認されるように、それぞれ同様の結果(すなわち、遊離OH基のエステル化)を生じる。
【0278】
この実験から、カルボン酸および代替的にカルボン酸無水物、さらに代替的にカルボン酸エステルとの反応による意図した官能化(エステル化)は、対応する分析により確認されるように、望ましい生成物(すなわち、遊離OH基のエステル化)につながることが示された。
【0279】
官能化3-アセチルアセト-BHBポリオールエステルのさらなる合成
使用するポリオールは、1,2-ペンタンジオールとジグリセロールPG(2)である。それぞれのポリオールは、まず、触媒としてメタノール酸ナトリウム(NaOMe)を用い、100~120℃の温度で、脂肪酸および代替的に脂肪酸無水物および再び代替的に脂肪酸エステル(それぞれエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸およびオレイン酸ならびにそれらの無水物とエステル)と反応させる;対応する脂肪酸エステル化ポリオールが得られ、これはさらにそれに続く第2の方法段階において、3-アセチルアセトBHBエチルエステルと反応させる。対応する3-アセチルアセト-BHB/脂肪酸ポリオールエステル混合物が得られる。逆の手順(すなわち、最初にポリオールを3-オキソ酪酸エチルエステルと反応させ、その後、前述の脂肪酸またはその無水物およびエステルとさらに反応させる)でも、同等の結果が得られる。
【0280】
3-アセチルアセト-BHBエチルエステル(=反応物)の製造
52gの3-オキソ酪酸エチル(アセト酢酸エチルまたはアセト酢酸エステル)と26gの3-ヒドロキシ酪酸エチルを、デフレグレーター(部分凝縮器)および蒸留ブリッジを備えた100mLのマルチネックフラスコに提供する。
【0281】
50℃の温度で、真空下において、0.8gの固定化酵素(例えばNovozym(登録商標)435のカンジダアンタルクチカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ)が、添加される。反応混合物は、攪拌下において6時間反応させる。反応中に生成したエタノールは連続的に蒸留される。その後、酵素は濾過され、過剰な3-オキソ酪酸エチルエステルおよび過剰な3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルが真空下で蒸留除去してリサイクルされる。
【0282】
得られた反応生成物は、3-アセチルアセト酪酸エチルエステル(3-アセチルアセト-BHBエチルエステル)であり、分析検査の結果、以下の組成である:90%以上の3-アセチルアセト-BHBエチルエステル(反応副生成物;5%未満の3-BHBダイマーエチルエステルおよび5%未満のアセチルアセト-BHBダイマーエチルエステル)。蒸留精製は、純粋な3-アセチルアセト酪酸エチルエステル(純度99.9%以上)が得られる。特性評価は、GCおよびGC-MSで行う。
【0283】
3-アセチルアセト-BHB-エチルエステル(=反応物)のさらなる製造
30gの3-オキソ酪酸エチル(アセト酢酸エチルまたはアセト酢酸エステル)と15.25gの3-ヒドロキシ酪酸エチル(3-BHBエチルエステル)は、脱気装置(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた100mLのマルチネックフラスコに提供される。
【0284】
50℃の温度で、真空下において、0.46gの固定化酵素(例えばNovozym(登録商標)435のカンジダアンタルクチカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ)が添加される。反応混合物は、攪拌下、6時間反応される。反応中に生成したエタノールを連続的に蒸留除去する。その後、酵素を濾過し、過剰の3-オキソ酪酸エチルおよび過剰の3-ヒドロキシ酪酸エチルを真空下で蒸留除去し、リサイクルする。特性評価はGCおよびGC-MSによって行われる。
【0285】
また3-アセチルアセト-BHB-エチルエステル(=反応物)のさらなる製造例
さらに一連の実験において、副生成物の生成に関して出発化合物のモル比の影響を調べた(2つの副生成物「3-BHBダイマーエチルエステル」と「アセチルアセト-BHBエチルエステル」を用いて分析的に検討した)。
【0286】
他の反応物3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHBエチルエステル)に対する3-オキソ酪酸エチルエステル(アセト酢酸エチルまたはアセト酢酸エステル)のモル過剰は、副生成物の生成を抑制できることが示された。
【0287】
第1の一連の調査では、1.5:1~9:1の範囲内でのアセト酢酸エステル/3-BHBエチルエステルのモル比は、副生成物の形成に関して特に効率的であり、かつプロセス経済的であることが示された。特に良好な結果は、アセト酢酸エステル/3-BHBエチルエステルモル比が2:1~8:1の範囲内に関する第2一連の調査において観察された。
【0288】
生理学的応用試験:体外消化試験
本発明のアシルキャップされた3-ヒドロキシ酪酸PG(2)エステル混合物の消化実験(分裂または開裂実験)
開裂実験により、本発明に従って調製されたアシルキャップされた3-ヒドロキシ酪酸PG(2)エステルまたはその混合物ならびに反応副生成物を含むそれらの官能化誘導体(すなわち、3つのOH基でエステル化されたもの)が、ヒトの胃腸管で開裂し得ることが示された。
【0289】
使用される出発混合物は、一方で、本発明による方法によって得られた3-アセチルアセト-BHBモノ-ジグリセロールエステル、3-アセチルアセト-BHBジ-ジグリセロールエステル、3-アセチルアセト-BHBトリ-ジグリセロールエステルおよび3-アセチルアセト-BHBテトラ-ジグリセロールエステルの純粋化された混合物、他方で、本発明による方法(ヘプタン酸またはオレイン酸またはエイコサペンタエン酸/ドコサヘキサエン酸混合物による官能化)によって得られた官能化された3-アセチルアセト-BHBモノ-ジグリセロールエステル、官能化された3-アセチルアセト-BHBジ-ジグリセロールエステルおよび官能化された3-アセチルアセト-BHBトリ-ジグリセロールエステルの純粋化された混合物である。
【0290】
疑似人体での切断実験では、2種類の媒体を検討した。
・ 胃を模擬したFaSSGF
・ 腸管を模擬したFaSSIF
どちらの培地も、イギリスのバイオレリバント社製である。一部の実験ではブタの膵臓を添加している(アレルガン社製Panzytrat(登録商標)40,000)。
【0291】
Pazytrat(登録商標)の有り無しのFaSSGFまたはFaSSIF培地における開裂実験の結果(いずれも35℃、24時間)は、サンプルがPnazytrat(登録商標)の有り無しのFaSSGF条件下で加水分解されることを示している;これは、主に培地の低いpH値(pH=1.6)によるものである。FaSSIF条件下では、Panzytrat(登録商標)を使用したより低い変換が行われる。
【0292】
この実験により、3-アセチルアセト-BHBジグリセロールエステルおよびその官能化誘導体は、それぞれケト体3-ヒドロキシ酪酸およびアセト酢酸(そして最終的には再び3-ヒドロキシ酪酸)の生理学的前駆体となり、対応するケト体療法に使用できることが証明された。
【0293】
本発明のアシルキャップされた3-ヒドロキシ酪酸PG(2)エステル混合物のさらなる消化実験(開裂実験)
パンクレアチンを用いた開裂実験
一方で、3.5gの、上記に記載されたように調製されたそれぞれ3-アセチルアセト-BHB-モノ-ジグリセロールエステル、3-アセチルアセト-BHB-ジ-ジグリセロールエステル、3-アセチルアセト-BHBトリ-ジグリセロールエステルおよび3-アセチルアセト-BHBテトラ-ジグリセロールエステルと、他方で、本発明の方法によって得られた官能化された3-アセチルアセト-BHBモノ-ジグリセロールエステル、官能化された3-アセチルアセト-BHBジ-ジグリセロールエステルおよび官能化された3-アセチルアセト-BHBトリ-ジグリセロールエステルの混合物とは、50gの水に溶解させ、これに0.5g(1重量%)のパンクレアチンと混合される。パンクレアチンは、アラガン社から商業的に入手可能な製品「Panzytrat(登録商標)40,000」の形で使用される。混合物全体を50℃のホットプレート上で攪拌する。反応の経過は、酸価を経時的に連続記録することで決定される。観察期間中に酸価が上昇する(3-アセチルアセト-BHB-ジグリセロールエステル混合物から遊離3-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸に開裂し、それぞれ生理的に3-BHBまたは3-ヒドロキシ酪酸に還元できる)。パンクレアチンによる本発明によるエステルの水性開裂の変換/時間経過は、経時的な酸価の増加を含み、反応物または反応物混合物の遊離酸への所望の分解を証明する。このことは、対応する分析によって確認された。この実験は、本発明による3-アセチルアセト-BHBジグリセロールエステルおよび官能化誘導体の両方が、対応するケト体療法のための3-ヒドロキシ酪酸の適切な生理学的前駆体であることを証明するものである。各エステルを純粋な状態で用いて実験を繰り返し、検証した。すなわち、3-アセチルアセト-BHBジグリセロールエステルおよび官能基化誘導体は、それぞれパンクレアチンによって開裂されるという同等の結果が得られた。
【0294】
先に述べた開裂実験は、アシルキャップされた3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが、特にその意図する効果に関して、生理的に許容されるかまたは生理的に適合する形態で存在する遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であることを証明するものである。
【0295】
さらなる本発明の3-アセチルアセト-BHBポリオールエステル混合物の消化実験(開裂実験)について
さらに、本発明に従って調製された3-アセチルアセト酪酸の他のポリオールエステル混合物も、上記のように適切な方法で消化実験に供され、類似の結果をもたらす。
【0296】
また、切断実験により、3-アセチルアセト酪酸の残りのポリオールエステルは、対応するケト体療法で使用するためのケト体3-ヒドロキシ酪酸およびアセト酢酸の効率的な前駆体または代謝物であり、特にその意図する効果に関しても生理的に許容できるまたは生理的に適合する形態で存在することが実証された。