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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】2液硬化性液体シリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240325BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240325BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240325BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240325BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240325BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240325BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240325BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240325BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/013
C08J3/24 Z CFH
B33Y10/00
B29C64/106
B33Y70/00
B33Y80/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021577699
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 US2020040158
(87)【国際公開番号】W WO2021003108
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】62/869,488
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519289224
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・ユーエスエイ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES USA CORP.
【住所又は居所原語表記】Two Tower Center Boulevard,Suite 1601,East Brunswick,NJ 08816 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レミ・ティリア
(72)【発明者】
【氏名】フィランドラ・ゲイザー
(72)【発明者】
【氏名】クリス・カーペン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・プライス
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-074882(JP,A)
【文献】特開2012-207192(JP,A)
【文献】特開2018-104560(JP,A)
【文献】特開2003-253121(JP,A)
【文献】特開2013-082907(JP,A)
【文献】特表2020-519501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
B29C64/00- 64/40
B29C67/00- 73/34
B29D 1/00- 99/00
B33Y10/00- 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2液硬化性液体シリコーンゴム組成物であって、成分(A)、(B)、(C)、(E)、及び(F)を含むが(D)を含まない第1の液体組成物と、成分(A)、(E)、及び(D)を含むが、(B)、(C)、及び(F)を含まない第2の液体組成物とを含み、第1の液体組成物及び第2の液体組成物は別々に保存され、混合すると、硬化性液体シリコーンゴム組成物Xを生成し、これが硬化すると、ASTM D-412に従って測定された場合、少なくとも800%の破断伸び値を有するシリコーンエラストマーZを生成し、前記硬化性液体シリコーンゴム組成物Xは、以下の成分を含み:
(A)分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの100重量部、
(B)少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、
(C)分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤XL、
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D、
(E)少なくとも1つのフィラーEの1~500重量部、及び
(F)少なくとも1つの硬化速度調整剤Fの0~10重量部;
Aは、第1及び第2の液体組成物において同じ又は異なってもよく、Eは、第1及び第2の液体組成物において同じ又は異なってもよく、
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び有機ケイ素架橋剤XLの量は、以下のように決定される、2液硬化性液体シリコーンゴム組成物。
1)比率RHalkの値は1.00<RHalk<1.35である。ここで、RHalk=nH/tAlkであり、そして:
nH=前記液体シリコーンゴム組成物Xのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数;
tAlk=前記液体シリコーンゴム組成物Xのケイ素原子に直接結合したアルケニル基のモル数、
そして、
2)%モル比RHCEは50%≦RHCE<98%の範囲内である。ここで、RHCE=nHCE/(nHCE+nHXL)×100、そして:
a)nHCEは、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数であり;
b)nHXLは有機ケイ素架橋剤XLのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数、
そして:
3)分子あたり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を含む前記有機ケイ素架橋剤XLは、各分子内に10~500個のケイ素原子を含むオルガノヒドロゲンポリシロキサンであり、下記比率αが0.01≦α≦0.957の範囲内であり、下記a)及びb)のいずれかを満たす:
a)比率αは0.20未満であり、%モル比RHCEは86%≦RHCE≦96%の範囲内である。
b)比率αは0.22より大きく、%モル比RHCEは78%≦RHCE≦94%の範囲内である。
α=d/(ΣSi)であり、そして:
d=分子あたりのSi原子に直接結合したH原子の数であり、
ΣSiは、分子あたりのケイ素原子の合計である。
【請求項2】
分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む前記有機ケイ素架橋剤XLは、各分子内に10~500個のケイ素原子を含むオルガノヒドロゲンポリシロキサンであり、前記オルガノヒドロゲンポリシロキサンは0.45~40重量%のSiHを含む、請求項1に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記有機ケイ素架橋剤XLは、以下を含む、請求項1に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物:
(i)同一又は異なり得る、式(XL-1)の少なくとも3つのシロキシ単位:
(H)(Z)eSiO(3-e)/2 (XL-1)
式中:
記号Hは水素原子を表し、
記号Zは、1~8個の炭素原子を含むアルキルを表し、
記号eは0、1、又は2に等しい;
(ii)少なくとも1つの式(XL-2)のシロキシ単位:
(Z)gSiO(4-g)/2 (XL-2)
式中:
記号Zは、1~8個の炭素原子を含むアルキルを表し、
記号gは0、1、2、又は3に等しい;
ここで、XL-1とXL-2におけるZは同じでも異なっていてもよい。
【請求項4】
少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、以下の式(1)のものである、請求項1に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物:
【化1】
式中:
nは1~1000の範囲の整数であり;
Rは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基などのC1~C20のアルキル基であり;
R’は、ビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、又はテトラデセニル基などのC2~C20のアルケニル基であり;
R”は、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基などのC1~C20のアルキル基である。
【請求項5】
さらに以下を含む、請求項1に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物:
(G)少なくとも1つの増粘剤G1又は少なくとも1つのレオロジー調整剤G2の0~2重量部、及び/又は
(H)少なくとも1つの添加剤Hの0~10部。
【請求項6】
ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEは次の式(2)のものである、請求項1に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物:
【化2】
式中:
R及びR”は独立して、C1~C20のアルキル基から選択され;
nは1~500の範囲の整数である。
【請求項7】
触媒Dは白金族金属含有触媒である、請求項1に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
フィラーEは、強化フィラーE1、熱伝導性フィラーE2、導電性フィラーE3、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物。
【請求項9】
硬化速度調整剤Fは、架橋阻害剤F1及び架橋抑制剤F2からなる群から選択される、請求項1に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物。
【請求項10】
%モル比RHCEは、76%≦RHCE≦95%の範囲内である、請求項1に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物。
【請求項11】
比率RHalkの値は1.10≦RHalk<1.25である、請求項1に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物。
【請求項12】
ASTM D-412に従って測定された、少なくとも800%の破断伸び値を有し、請求項1~11のいずれか1項に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物を硬化することによって得られたシリコーンエラストマー。
【請求項13】
請求項12に記載のシリコーンエラストマーであって、以下を含み:
(A)分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの100重量部、
(B)少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、
(C)分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤XL、
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D、
(E)少なくとも1つのフィラーEの1~500重量部、及び
(F)少なくとも1つの硬化速度調整剤Fの0~10重量部;
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び有機ケイ素架橋剤XLの量は、以下のように決定される、シリコーンエラストマー。
1)比率RHalkの値は1.00<RHalk<1.35である。ここで、RHalk=nH/tAlkであり、そして:
nH=前記液体シリコーンゴム組成物Xのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数;
tAlk=前記液体シリコーンゴム組成物Xのケイ素原子に直接結合したアルケニル基のモル数、
そして、
2)%モル比RHCEは50%≦RHCE<98%の範囲内である。ここで、RHCE=nHCE/(nHCE+nHXL)×100、そして:
a)nHCEは、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数であり;
b)nHXLは有機ケイ素架橋剤XLのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数、
そして、
3)分子あたり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を含む前記有機ケイ素架橋剤XLは、各分子内に10~500個のケイ素原子を含むオルガノヒドロゲンポリシロキサンであり、下記比率αが0.01≦α≦0.957の範囲内であり、下記a)及びb)のいずれかを満たす:
a)比率αは0.20未満であり、%モル比RHCEは86%≦RHCE≦96%の範囲内である。
b)比率αは0.22より大きく、%モル比RHCEは78%≦RHCE≦94%の範囲内である。
α=d/(ΣSi)であり、そして:
d=分子あたりのSi原子に直接結合したH原子の数であり、
ΣSiは、分子あたりのケイ素原子の合計である。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物又は請求項12に記載のシリコーンエラストマーの硬化製品を含む医療機器などの物品。
【請求項15】
医療機器又は電子機器などの物品及び/又は製品における、請求項1~11のいずれか1項に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物又は請求項12に記載のシリコーンエラストマーの硬化製品の使用。
【請求項16】
シリコーンエラストマーの製造方法であって、成分(A)、(B)、(C)、(E)、及び(F)を含むが(D)を含まない第1の液体組成物と、成分(A)、(E)、及び(D)を含むが、(B)、(C)、及び(F)を含まない第2の液体組成物とを含む2液硬化性液体シリコーンゴム組成物を混合して、硬化性液体シリコーンゴム組成物Xを生成すること、及び、前記硬化性液体シリコーンゴム組成物Xを硬化させて、ASTM D-412に従って測定された少なくとも800%の破断伸び値を有するシリコーンエラストマーを生成することを含み、
前記硬化性液体シリコーンゴム組成物Xは、以下の成分を含み:
(A)分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの100重量部、
(B)少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、
(C)分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤XL、
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D、
(E)少なくとも1つのフィラーEの1~500重量部、及び
(F)少なくとも1つの硬化速度調整剤Fの0~10重量部;
Aは、第1及び第2の液体組成物において同じ又は異なってもよく、Eは、第1及び第2の液体組成物において同じ又は異なってもよく、
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び有機ケイ素架橋剤XLの量は、以下のように決定される、方法。
1)比率RHalkの値は1.00<RHalk<1.35である。ここで、RHalk=nH/tAlkであり、そして:
nH=前記液体シリコーンゴム組成物Xのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数;
tAlk=前記液体シリコーンゴム組成物Xのケイ素原子に直接結合したアルケニル基のモル数、
そして、
2)%モル比RHCEは50%≦RHCE<98%の範囲内である。ここで、RHCE=nHCE/(nHCE+nHXL)×100、そして:
a)nHCEは、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数であり;
b)nHXLは有機ケイ素架橋剤XLのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数、
そして、
3)分子あたり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を含む前記有機ケイ素架橋剤XLは、各分子内に10~500個のケイ素原子を含むオルガノヒドロゲンポリシロキサンであり、下記比率αが0.01≦α≦0.957の範囲内であり、下記a)及びb)のいずれかを満たす:
a)比率αは0.20未満であり、%モル比RHCEは86%≦RHCE≦96%の範囲内である。
b)比率αは0.22より大きく、%モル比RHCEは78%≦RHCE≦94%の範囲内である。
α=d/(ΣSi)であり、そして:
d=分子あたりのSi原子に直接結合したH原子の数であり、
ΣSiは、分子あたりのケイ素原子の合計である。
【請求項17】
三次元(3D)物品を形成する方法であって、前記方法は以下を含み:
i)第1の熱硬化性シリコーン組成物を3Dプリンターで印刷して層を形成すること;
ii)層を加熱して、少なくとも部分的に硬化した層を形成すること;
iii)次の層を形成するために、3Dプリンターで、少なくとも部分的に硬化した層に第2の熱硬化性シリコーン組成物を印刷すること;
iv)後続の層を加熱して、少なくとも部分的に硬化した後続の層を形成すること;及び
v)任意選択で、任意の追加の層について独立して選択された熱硬化性シリコーン組成物を用いてステップiii)及びiv)を繰り返して、3D物品を形成すること;
第1及び第2の熱硬化性シリコーン組成物は、互いに同一又は異なるものであり、第1及び第2の熱硬化性シリコーン組成物の少なくとも1つは、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性液体シリコーンゴム組成物Xである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月1日に出願された米国仮出願第62/869,488号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する特許協力条約に基づく国際出願である。
【0002】
本発明は、新規の付加硬化性液体シリコーン組成物に関し、これが硬化すると、非常に高い破断伸び特性(800%から2000%以上)及び高い引張強度を示すシリコーンエラストマーを生成する。本発明はまた、新規の付加硬化性液体シリコーン組成物に関し、これが硬化すると、非常に高い破断伸び特性(800%から2000%以上)、高い引張強度、及び高い耐久性を示すシリコーンエラストマーを生成する。
【背景技術】
【0003】
シリコーンエラストマーは、優れた耐熱性、耐寒性、硬度、物理的強度、耐久性、安全性を備えているため、医療材料を含むさまざまな用途に使用されている。近年、ウェアラブルデバイス、フレキシブルディスプレイ、生理学的信号を監視する機器など、日常生活に影響を与える多くの用途ではフレキシブルポリマーがますます重要になっている。
【0004】
特に、医療機器に使用されるシリコーンエラストマーは、より複雑な形状と性能の需要により広がりつつある。確かに、そのような硬化シリコーン材料の物理的特性は、柔軟性と強度だけでなく、複雑な形状に成形され、変形することなく高温と滅菌に耐える能力も必要とする用途に潜在的に適している。
【0005】
大きなひずみ変形に対して弾性応答を提供する伸縮性エレクトロニクス及びオプトエレクトロニクスも出現しており、人工電子皮膚(e-skin)、表皮/生物医学装置(マイクロ流体)、生体レンズ、電子眼、ウェアラブル光起電、スマート衣類、医療診断、スポーツウェア、曲げ可能なディスプレイ、柔軟手術器具、ボディセンサーネットワークなど、多くの新しい用途での使用に大きな関心を集めている。このような機器の指数関数的な応用は、今後10年間で「モノのインターネット」(loT)革命につながると予測されている。このようなloTとウェアラブルの成長により、小型、軽量、機械的に柔軟で低電力の電子機器とセンサーシステムが必要になった。これらのシステムは、その形状に適合し、動作する必要のある環境に耐えることができなければならない。
【0006】
実際、医療用及び電子機器、又はシリコーンエラストマーで作られた使い捨てアクセサリの多くの用途では、部品に周期的な力又は応力がかかる。サイクルの頻度、応力、及びひずみは、使用法と、適用される重量又は負荷によって異なる。医療分野のいくつかの例には、蠕動性薬物デリバリーポンプのチューブ、逆止弁、蘇生器バルブ、及び四肢を取り付けるための横隔膜及びプロテーゼの吸引カップが含まれる。
【0007】
柔軟性の特性は簡単に得られる。一方、伸縮性は、より困難なタイプの力学を表しており、システムは、曲げだけでなく、ねじり、伸縮、圧縮などを含む、通常は任意の形式の大きなひずみ変形に対応する必要がある。
【0008】
破断伸びは、材料が破断する前に達成する長さの増加率である。この数値はパーセンテージで示され、通常、標準の試験方法ASTM D412を使用して測定される。パーセンテージが高いほど、通常、良好な引張強度と組み合わせた場合に、より高品質の材料を意味する。
【0009】
医療用及び電子機器に使用されるシリコーンエラストマーに耐久性があることも有利である。耐久性は、エラストマーを伸ばし、エラストマーが破損することなく伸びに耐えられるかどうかを判断することで決定できる。耐久性は、エラストマーが伸びた後にその形状をどの程度維持するかを測定することによっても決定できる。
【0010】
材料合成と構造設計は、伸縮性デバイス部品の開発の中核である。それらの分子構造のために、前駆体としてポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用するシリコーンエラストマーが広く使用されてきた。二成分シリコーンシステム(ゲル、RTV、LSR、HCR)からシリコーンエラストマーを形成するための方法は、当技術分野で十分に確立されている。「付加」又はヒドロシリル化硬化に基づく典型的な二成分システムは、ビニル官能性ベースポリマー、触媒及び任意選択で強化剤を含む第1の部分と、典型的には同じビニル官能性ベースポリマーと水素化物官能性架橋ポリマーを含む第2の部分からなる。2つの部分が混合されると、架橋反応が始まり、エラストマーが形成される。次に、ポリマーの絡み合いと共有(化学的)架橋を含む3次元(3D)ネットワークが生成される。
【0011】
硬化性シリコーン組成物に任意の種類の架橋剤(Si-アルケニル及び/又はSiH官能基を有する多機能線状ポリマー又は樹脂)を含むと、硬化性シリコーンエラストマーの破断伸びの値を不利に変化させること(より低い伸縮性)は何度も示されている。一般に、デュロメータと引張強度は増加するが、硬化したシリコーン材料はより脆くなり、柔軟性が低下する。
【0012】
Dow Corning Toray(WO2013/137473)は、500%以上の破断伸び、40以上のJIS-A硬度、及び7.0Mpa以上の引張強度を示す付加反応硬化性シリコーンエラストマーを開示している。これらのシリコーンエラストマーは以下を含む:(A1)分子末端にのみ平均2つ以上のシリコーン結合アルケニル基を有するガム状のオルガノポリシロキサン;(A2)末端及び側鎖に平均3つ以上のアルケニル基を有し、0.1重量%未満のアルケニル基含有量を有するガム状のオルガノポリシロキサン;(B)高ビニル含有量(0.5~20重量%)のオルガノポリシロキサン;(C)平均又は2つ以上のシリコーン結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン;(D)無機フィラー;及び(E)付加反応触媒。これらのエラストマーは適度な硬度を示すが、伸縮性は限定的である。
【0013】
Gelest(US9,145,474;US2014/0275406)は、2部分システムを含む線状の段階的成長シロキサンエラストマーを製造する方法を開示している。第1の部分は、単分散テレケリックシロキサン(好ましくは各末端にビニル末端基)及びヒドロシリル化触媒を含み;第2の部分は、第2の単分散テレケリック(好ましくは各末端に水素化物末端基)シロキサンと、2つの異なるポリマー末端(好ましくは水素化物/ビニル)を有する二重官能性線状単分散シロキサンを含む。末端基の1:1の比率を維持する量での2つの部分の反応は重要であり、共有結合による架橋は存在ない。非常に高い破断伸び値(~5000%)が得られたが、これらのエラストマーでは、非標準の二官能性前駆体を使用する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、耐久性及び引張強度を損なうことなくシリコーンエラストマーの破断伸びを増加させるために多くのアプローチが採用されてきたが、高い伸縮性(例えば、800%以上の破断伸び値)を有する耐久性のあるシリコーンエラストマーの必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは鋭意検討の結果、2液硬化性液体シリコーンゴム組成物を使用することにより、上記の問題を解決することが可能であることを見出した。2液硬化性液体シリコーンゴム組成物は、成分(A)、(B)、(C)、(E)、及び(F)を含むが(D)を含まない第1の液体組成物と、成分(A)、(E)、及び(D)を含むが、(B)、(C)、及び(F)を含まない第2の液体組成物とを含み、第1の液体組成物及び第2の液体組成物は別々に保存され、混合すると、硬化性液体シリコーンゴム組成物Xを生成し、これが硬化すると、ASTM D-412に従って測定された場合、少なくとも800%、好ましくは少なくとも1200%の破断伸び値を有する高伸縮性シリコーンエラストマーZを生成する。硬化性液体シリコーンゴム組成物Xは、以下の成分を含む:
(A)分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの100重量部、
(B)少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、
(C)分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤XL、
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D、及び
(E)少なくとも1つのフィラーEの1~500重量部、及び
(F)少なくとも1つの硬化速度調整剤Fの0~10重量部。
【0016】
成分(A)は、第1及び第2の液体組成物において同じであっても異なっていてもよい。成分(E)はまた、第1及び第2の液体組成物において同じであっても異なっていてもよい。
【0017】
硬化性液体シリコーンゴム組成物X中のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び有機ケイ素架橋剤XLの量は、以下のように決定される:
1)比率RHalkの値は1.00<RHalk<1.35である。ここで、RHalk=nH/tAlkであり、そして:
nH=前記液体シリコーンゴム組成物Xのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数;
tAlk=前記液体シリコーンゴム組成物Xのケイ素原子に直接結合したアルケニル基のモル数、
そして、
2)%モル比RHCEは50%≦RHCE<98%の範囲内である。ここで、RHCE=nHCE/(nHCE+nHXL)×100、そして:
a)nHCEは、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数であり;
b)nHXLは有機ケイ素架橋剤XLのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である。
【0018】
いくつかの実施形態では、分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む有機ケイ素架橋剤XLは、各分子内に10~500個のケイ素原子を含むオルガノヒドロゲンポリシロキサンであり、比率αは0.01≦α≦0.957の範囲内である。ここで、α=d/(ΣSi)であり、そして:
d=分子あたりのSi原子に直接結合したH原子の数であり、
ΣSiは、分子あたりのケイ素原子の合計である。
【0019】
いくつかの実施形態では、分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む有機ケイ素架橋剤XLは、各分子内に10~250個のケイ素原子を含むオルガノヒドロゲンポリシロキサンであり、比率αは0.10≦α≦0.75の範囲内である。
【0020】
いくつかの実施形態では、分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む有機ケイ素架橋剤XLは、0.45~40重量%のSiHを含むオルガノヒドロゲンポリシロキサンである。
【0021】
いくつかの実施形態において、有機ケイ素架橋剤XLは、以下を含む:
(i)同一又は異なり得る、式(XL-1)の少なくとも3つのシロキシ単位:
(H)(Z)eSiO(3-e)/2 (XL-1)
式中:
記号Hは水素原子を表し、
記号Zは、1~8個の炭素原子を含むアルキルを表し、
記号eは0、1、又は2に等しく、好ましくは、eは1又は2に等しい;
(ii)少なくとも1つ、好ましくは1~550個の式(XL-2)のシロキシ単位:
(Z)gSiO(4-g)/2 (XL-2)
式中:
記号Zは、1~8個の炭素原子を含むアルキルを表し、
記号gは0、1、2、又は3に等しく、好ましくは、gは2に等しい;
ここで、XL-1とXL-2におけるZは同じでも異なっていてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、有機ケイ素架橋剤XLは、3~60個の式(XL-1)のシロキシ単位及び1~250個の式(XL-2)のシロキシ単位を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、Zは、メチル、エチル、プロピル及び3,3,3-トリフルオロプロピル基、シクロアルキル基、及びアリール基から選択される。いくつかの実施形態において、Zは、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチル基から選択されるシクロアルキル基である。他の実施形態において、Zは、キシリル、トリル、及びフェニル基からなる基から選択されるアリール基である。他の実施形態では、Zはメチル基である。
【0024】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、以下の式(1)のものである:
【化1】
式中:
nは1~1000の範囲の整数であり、好ましくは、nは50~1000の範囲の整数であり;
Rは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基などのC1~C20のアルキル基であり、好ましくは、Rはメチル基であり;
R’は、ビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、又はテトラデセニル基などのC2~C20のアルケニル基であり、好ましくは、R’はビニル基であり;
R”は、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基などのC1~C20のアルキル基であり、好ましくは、R”はメチル基である。
【0025】
いくつかの実施形態において、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEは、以下の式(2)のものである:
【化2】
式中:
R及びR”は独立して、C1~C20のアルキル基から選択され;
nは1~500の範囲の整数であり、好ましくは、nは2~100の範囲の整数であり、より好ましくは、nは3~50の範囲の整数である。
【0026】
いくつかの実施形態において、R及びR”は、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル及びフェニルから独立して選択される。好ましくは、R及びR”はメチルである。
【0027】
いくつかの実施形態において、触媒Dは、白金族金属含有触媒である。
【0028】
いくつかの実施形態において、フィラーEは、強化フィラーE1、熱伝導性フィラーE2、導電性フィラーE3、又はそれらの混合物であり、いくつかの実施形態において、フィラーEは、硬化性液体シリコーンゴム組成物X中に、1~100重量部、1~50重量部、又は1~25重量部の量で存在する。
【0029】
いくつかの実施形態では、硬化速度調整剤Fは、架橋阻害剤F1及び/又は架橋抑制剤F2である。いくつかの実施形態では、硬化速度調整剤Fは、0.001~5重量部、0.005~2重量部、又は0.01~0.5重量部の量で存在する。
【0030】
いくつかの実施形態では、2液硬化性液体シリコーンゴム組成物は、以下の成分をさらに含む:
(G)少なくとも1つの増粘剤G1又は少なくとも1つのレオロジー調整剤G2の0~2重量部、及び/又は
(H)少なくとも1つの添加剤Hの0~10部。
【0031】
いくつかの実施形態では、成分(F)、(G)、及び(H)は、本発明の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物中に存在しない。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物を硬化させることによって得られるシリコーンエラストマーZの破断伸び値は、少なくとも1000%、好ましくは少なくとも1200%である。いくつかの実施形態では、本発明の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物を硬化させることによって得られるシリコーンエラストマーZの破断伸び値は5000%未満である。
【0033】
いくつかの実施形態では、硬化性液体シリコーンゴム組成物Xの%モル比RCHEは、76%≦RHCE<95%の範囲内にある。いくつかの実施形態では、%モル比RCHEは、86≦RHCE≦94%の範囲内にある。
【0034】
架橋剤XLの比率αが0.20未満であり、%モル比RCHEが86%≦RHCE≦96%の範囲内である本発明の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物を硬化することによって得られるシリコーンエラストマーZは、破損することなく伸びに耐えることによって実証されるように、非常に耐久性があることが有利に実証された。
【0035】
同様に、架橋剤XLの比率αが0.22より大きく、%モル比RCHEが78%≦RHCE≦94%の範囲内である本発明の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物を硬化することによって得られるシリコーンエラストマーZは、破損することなく伸びに耐えることによって実証されるように、非常に耐久性がある。
【0036】
いくつかの実施形態では、比率RHalkの値は、1.10≦RHalk<1.25である。他の実施形態では、比率RHalkの値は、1.10≦RHalk≦1.20である。
【0037】
また、ASTM D-412に従って測定された少なくとも800%の破断伸び値を有するシリコーンエラストマーが提供され、これは、本明細書に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物を硬化することによって得られる。
【0038】
特に、ASTM D-412に従って測定された少なくとも800%の破断伸び値を有するシリコーンエラストマーが提供され、以下を含む。
(A)分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの100重量部、
(B)少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、
(C)分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤XL、
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D、及び
(E)少なくとも1つのフィラーEの1~500重量部、
(F)少なくとも1つの硬化速度調整剤Fの0~10重量部。
【0039】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び有機ケイ素架橋剤XLの量は、以下のように決定される:
1)比率RHalkの値は1.00<RHalk<1.35であり、
そして
2)%モル比RHCEが50%≦RHCE<98%の範囲内にある。
【0040】
また、本明細書に記載の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物又はシリコーンエラストマーの硬化製品を含む、医療機器用などの物品も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
主題の開示がさらに説明される前に、特定の実施形態の変形がなされてもなお添付の特許請求の範囲内にあるので、本開示は以下に説明される開示の特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。また、使用される用語は、特定の実施形態を説明することを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。代わりに、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立される。
【0042】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他に明確に指示しない限り、複数形の参照を含む。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「シリコーンゴム」という用語は、任意の架橋可能なシリコーン組成物の架橋生成物を含む。「シリコーンゴム」及び「シリコーンエラストマー」という用語は、交換可能に使用され得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「架橋」及び「硬化」という用語は交換可能に使用され得、2液システムが組み合わされて反応し、硬化シリコーンエラストマーをもたらすときに起こる反応を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つのオレフィン二重結合、より好ましくは単一の二重結合を有する、置換又は非置換の、不飽和の、直鎖又は分岐炭化水素鎖を意味すると理解される。好ましくは、「アルケニル」基は、2~8個、さらに好ましくは2~6個の炭素原子を有する。この炭化水素鎖は、任意選択で、O、N、Sなどの少なくとも1つのヘテロ原子を含む。ホモアリル基、ビニルが特に好ましい。「アルケニル」基の好ましい例は、ビニル、アリル及びホモアリル基であり、ビニルが特に好ましい。
【0046】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、好ましくは1~10個の炭素原子、例えば1~8個の炭素原子、さらに好ましくは1~4個の炭素原子を有する、置換され得る(例えば、1つ以上のアルキルで)、飽和の、直鎖又は分岐炭化水素鎖を意味する。アルキル基の例は、特にメチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、tert-ブチル、イソブチル、n-ブチル、n-ペンチル、イソアミル及び1,1-ジメチルプロピルである。
【0047】
伸縮性の高いシリコーンゴム(すなわち、破断伸び値が少なくとも800%のシリコーンゴム)を得るという目的を達成するために、出願人は、称賛に値するまったく驚くべきかつ予想外なことに、(A)分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、(B)少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサン鎖延長剤CE、及び(C)分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤XLの組み合わせが、1)シリコーンエラストマー内のアルケニル基に対する水素原子のモル比(RHalk)が1.00~1.35であり、2)CEとXLの両方を合わせた、ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数のうち、CEのケイ素原子に直接結合した水素原子のパーセンテージ(RHCE)が50%~98%の間である量となる場合、先行技術によって解決されなかった問題を克服することが可能であることを実証した。
【0048】
好ましくは、本発明の2液硬化性液体シリコーンゴム組成物は、成分(A)、(B)、(C)、(E)、及び(F)を含むが(D)を含まない第1の液体組成物と、成分(A)、(E)、及び(D)を含むが、(B)、(C)、及び(F)を含まない第2の液体組成物とを含み、ここで、これらの成分は以下の通りである:
(A)分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、
(B)少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサン鎖延長剤CE、
(C)分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤XL、
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D、
(E)少なくとも1つのフィラーE、
(F)任意選択で、少なくとも1つの硬化速度調整剤F、
(G)任意選択で、少なくとも1つの増粘剤G1又は少なくとも1つのレオロジー調整剤G2、及び
(H)任意選択で、少なくとも1つの添加剤H。
【0049】
上記のように、2液硬化性液体シリコーンゴム組成物に含まれるA、CE、及びXLの量は、以下となるように選択されることが好ましい:1)シリコーンエラストマー内のアルケニル基に対する水素原子のモル比(RHalk)が1.00~1.35であり、2)CEとXLの両方を合わせた、ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数のうち、CEのケイ素原子に直接結合した水素原子のパーセンテージ(RHCE)が50~98%の間である。
【0050】
第1の液体組成物及び第2の液体組成物は別々に保存され、混合すると、硬化性液体シリコーンゴム組成物Xを生成し、これが硬化すると、ASTM D-412に従って測定された場合、少なくとも800%の破断伸び値を有するシリコーンエラストマーZを生成する。いくつかの実施形態では、第1の液体組成物及び第2の液体組成物は混合すると、硬化性液体シリコーンゴム組成物Xを生成し、これが硬化すると、ASTM D-412に従って測定された場合、少なくとも1000%、少なくとも1100%、少なくとも1200%、少なくとも1300%、少なくとも1400%、少なくとも1500%、少なくとも1600%、少なくとも1700%、少なくとも1800%、少なくとも1900%、又は少なくとも2000%の破断伸び値を有するシリコーンエラストマーZを生成する。
【0051】
ASTM D412は、引張ひずみ下での材料の弾性と、材料に応力がかかっていないときの試験後の挙動を測定する。ASTM D412は多くの異なる特性を測定するが、以下が最も一般的である:
引張強さ:試験片を引き伸ばして破壊するときに加えられる最大引張応力。
所定の伸びでの引張応力:試験片の均一な断面を所定の伸びまで伸ばすのに必要な応力。
極限伸び:継続的な引張応力の適用時に破壊が発生する伸び。
永久伸び:試験片が引き伸ばされ、指定された方法で引っ込められた後に残る伸び。元の長さのパーセンテージとして表される。
【0052】
本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物は、分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAを含む。いくつかの実施形態では、本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物は、分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、2つ以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAを含む。例えば、本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物は、それぞれが分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、2つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA(A1及びA2)を含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、以下を含む:
・2つの式(A-1)のシロキシ単位:
(Alk)(R)2SiO1/2 (A-1)
式中:記号「Alk」は、ビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、又はテトラデセニル基、好ましくはビニル基水素原子などのC2~C20アルケニル基を表し、記号Rは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基、好ましくはメチル基などのC1~C20アルキル基を表す;
・式(A-2)の他のシロキシ単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (A-2)
式中、記号Lは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基、好ましくはメチル基などのC1~C20アルキル基を表し、記号gは0、1、2、又は3に等しく、Lの各実例は同じでも異なってもよい。
【0054】
いくつかの好ましい実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、以下の式(1)のものである:
【化3】
式中:
nは1~1000、好ましくは50~1000の範囲の整数であり、
Rは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基などのC1~C20のアルキル基であり、好ましくはメチル基であり;
R’は、ビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、又はテトラデセニル基などのC2~C20のアルケニル基であり、好ましくはビニル基であり;
R”は、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基などのC1~C20のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
【0055】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、1つ以上のα,ω-ビニルポリジメチルシロキサン、より好ましくは、1つ以上の線状α,ω-ビニルポリジメチルシロキサンである。
【0056】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの粘度は、約50~約100,000mPa・s、好ましくは約1,000~約50,000mPa・s、より好ましくは約2,500~約25,500mPa・sである。いくつかの実施形態において、本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物は、約100~約10,000mPa・sの粘度を有する少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA1と、約5,000~約100,000mPa・sの粘度を有する少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA2を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA1の粘度は、約500~約7,500mPa・sであり、より好ましくは、約1,000~約5,000mPa・sである。好ましい実施形態では、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA2の粘度は、約7,500~約50,000mPa・s、より好ましくは、約10,000~約25,000mPa・sである。
【0057】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの分子量は、約1,000g/モル~約80,000g/モル、好ましくは約10,000g/モル~約70,000g/モル、より好ましくは約20,000g/モル~約60,000g/モルである。いくつかの実施形態において、本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物は、約1,000~約50,000g/モルの分子量を有する少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA1と、約5,000~約80,000g/モルの粘度を有する少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA2を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA1の分子量は、約5,000~約40,000g/モル、より好ましくは約10,000~約30,000g/モルである。好ましい実施形態では、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA2の分子量は、約15,000~約75,000g/モル、より好ましくは約30,000~約60,000g/モルである。
【0058】
少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、好ましくは線状である。
【0059】
本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物は、少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサン鎖延長剤CEをさらに含む。少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサン鎖延長剤CEを、全組成物重量の約0.1%~約20%、好ましくは約0.5%~約15%、好ましくは約0.5%~約10%の量で、硬化性液体シリコーンゴム組成物に含めることができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEは、以下の式(2)のものである:
【化4】
式中:
R及びR”は独立してC1~C20のアルキル基であり、好ましくは、R及びR”は独立して、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル及びアリールからなる群から選択され、最も好ましくは、R及びR”はメチルであり;
nは1~500、好ましくは2~100、より好ましくは3~50の範囲の整数である。
【0061】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEの粘度は、約1~約500mPa・s、好ましくは約2~約100mPa・sの間、より好ましくは約4~約50mPa・s又は約5~約20mPa・sである。
【0062】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEの分子量は、約100~約5,000g/モル、好ましくは約250~約2,500g/モル、より好ましくは約500~約1,000g/モルである。
【0063】
本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物は、分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤XLをさらに含む。いくつかの実施形態では、分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む有機ケイ素架橋剤XLは、各分子内に10~500個のケイ素原子、好ましくは各分子内に10~250個のケイ素原子を含む、オルガノヒドロゲンポリシロキサンである。
【0064】
少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤XLは、硬化性液体シリコーンゴム組成物に、全組成物重量の約0.01%~約5%、好ましくは約0.05%~約2%、好ましくは約0.1%~約1%の量で含まれ得る。
【0065】
有機ケイ素架橋剤XLは、比率α(d/(ΣSi))が0.01≦a≦0.957の範囲内になるように選択される。ここで、d=分子あたりのSi原子に直接結合したH原子の数であり、ΣSiは、分子あたりのケイ素原子の合計である。好ましい実施形態では、比率αは0.10≦α≦0.75の範囲内である。他の好ましい実施形態では、比率αは0.15≦α≦0.30の範囲内である。
【0066】
有機ケイ素架橋剤XLは、好ましくは、0.45~40重量%のSiH、より好ましくは0.5~35重量%のSiH、より好ましくは0.5重量%~15重量%のSiH、又は5重量%~12重量%のSiHを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、有機ケイ素架橋剤XLは、以下を含む:
(i)同一又は異なり得る、式(XL-1)の少なくとも3つのシロキシ単位:
(H)(Z)eSiO(3-e)/2 (XL-1)
式中:
Hは水素原子を表し、
Zは、1~8個の炭素原子を含むアルキルを表し、
eは0、1、又は2に等しい;
及び/又は
(ii)少なくとも1つ、好ましくは1~550個の式(XL-2)のシロキシ単位:
(Z)gSiO(4-g)/2 (XL-2)
式中:
Zは、1~8個の炭素原子を含むアルキルを表し、
gは0、1、2、又は3に等しい。
【0068】
いくつかの実施形態において、XL-1及び/又はXL-2中のZは、メチル、エチル、プロピル及び3,3,3-トリフルオロプロピル基、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル基など)、及びアリール基(キシリル、トリル、及びフェニル基など)から選択される。好ましくは、Zはメチル基である。ただし、XL-1及びXL-2中のZは、同じでも異なってもよい。
【0069】
好ましい実施形態では、XL-1のeは1又は2である。
【0070】
好ましい実施形態では、XL-2のgは2である。
【0071】
好ましい実施形態において、有機ケイ素架橋剤XLは、3~60個の式(XL-1)のシロキシ単位及び1~250個の式(XL-2)のシロキシ単位を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物は、側分子鎖にケイ素結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを含まない。
【0073】
本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物に含まれるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び有機ケイ素架橋剤XLの量は、以下のように決定される:1)シリコーンエラストマー内のアルケニル基に対する水素原子のモル比(RHalk)が1.00~1.35であり、2)CEとXLの両方を合わせた、ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数のうち、CEのケイ素原子に直接結合した水素原子のパーセンテージ(RHCE)が50~98%の間である。
【0074】
水素原子とアルケニル基のモル比(RHalk)は、次の式を使用して決定できる:
RHalk=nH/tAlk
式中:
nH=硬化性液体シリコーンゴム組成物Xの成分のケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数;
tAlk=硬化性液体シリコーンゴム組成物Xの成分のケイ素原子に直接結合したアルケニル基のモル数。
【0075】
本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物中のRHalkの値は、有利には、1.00~1.35である。RHalkの値が1.00以下である場合、得られる硬化した組成物は、構造がゲル状であるとわかった。同様に、RHalkの値が1.35以上の場合、得られる硬化組成物もゲル状の構造になる傾向がある。好ましくは、本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物中のRHalkの値は、1.00<RHalk<1.35である。あるいは、本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物中のRHalkの値は、1.05≦RHalk≦1.30である。別の代替案では、本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物中のRHalkの値は、1.05<RHalk<1.30である。別の代替案では、硬化性液体シリコーンゴム組成物中のRHalkの値は、1.10≦Rhalk≦1.25、好ましくは1.10≦RHalk<1.25、より好ましくは1.10≦RHalk≦1.20である。
【0076】
RHalkの値に加えて、CE及び有機ケイ素架橋剤XLの両方における、ケイ素原子に直接結合した水素原子に対する、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモルパーセンテージ(すなわち、RHCEの値)は、本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物の別の重要な特徴である。
【0077】
モルパーセンテージRHCEは、次の式を使用して決定できる:
RHCE=nHCE/(nHCE+nHXL)×100
式中:
nHCEは、ジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数であり;
nHXLは有機ケイ素架橋剤XLのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である。
【0078】
RHCEの値は、有利には50%≦RHCE<98%の範囲内にある。RHCE値が98%以上である場合、得られる硬化組成物は構造がゲル状であるとわかり、RHCEの値が50%未満である場合、得られる硬化組成物はより脆くなる。いくつかの実施形態では、RHCEの値は、76%≦RHCE<95%の範囲内にある。いくつかの実施形態では、RHCEの値は、86%≦RHCE≦94%の範囲内にある。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは非常に耐久性がある。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、破損することなく伸びに耐え、及び/又は伸び後もそれらの形状を維持する。比率αが0.20未満であり、%モル比RCHEが86%≦RHCE≦96%の範囲内である本発明の2液液体シリコーンゴム組成物を硬化することによって得られる硬化シリコーンエラストマーは、破損することなく伸びに耐えることがわかった。さらに、比率αが0.22より大きく、%モル比RCHEが78%≦RHCE≦94%の範囲内である本発明の2液液体シリコーンゴム組成物を硬化することによって得られるシリコーンエラストマーは、破損することなく伸びに耐えることがわかった。
【0080】
本発明の液体硬化性シリコーンゴム組成物は、少なくとも1つの付加反応触媒Dをさらに含む。付加反応触媒Dは、組成物を硬化させることができる任意の量で含めることができる。例えば、付加反応触媒Dは、触媒D中の白金族金属の量が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの100万重量部当たり、0.01~500重量部である量で含めることができる。
【0081】
触媒Dは、特に白金とロジウムの化合物から選択することができる。特に、米国特許第3,159,601号、米国特許第3,159,602号、米国特許第3,220,972号及び欧州特許EP-A-0057459、EP-A-0118978及びEP-A-0190530に記載される白金錯体及び有機生成物と、米国特許第3,419,593号、米国特許第3,715,334号、米国特許第3,377,432号及び米国特許第3,814,730号に記載される白金及びビニルオルガノシロキサンの錯体を使用することが可能である。好ましい実施形態において、付加反応触媒Dは、白金族金属含有触媒である。
【0082】
液体硬化性シリコーンゴム組成物は、少なくとも1つのフィラーEをさらに含む。いくつかの実施形態では、フィラーEは、強化フィラーE1、熱伝導性フィラーE2、導電性フィラーE3、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態では、強化フィラーE1は、シリカ及び/又はアルミナから選択され、好ましくはシリカから選択される。
【0084】
使用できるシリカとして、フィラーは、多くの場合0.1μm以下の微粒子サイズと、比表面積と重量の比率が高く、一般に1グラムあたり約50平方メートルから1グラムあたり300平方メートル以上の範囲内にあることを特徴とすることが想定される。このタイプのシリカは市販の製品であり、接着性シリコーン組成物の製造の分野でよく知られている。これらのシリカは、コロイダルシリカ、熱発生的に調製されたシリカ(燃焼又はヒュームドシリカと呼ばれるシリカ)、又はこれらのシリカの混合物の湿式法(沈降シリカ)によって調製されたシリカであり得る。
【0085】
フィラーEを形成することができるシリカを調製するための化学的性質及び方法は、シリカが最終接着剤に強化作用を及ぼすことができれば、本発明の目的にとって重要ではない。もちろん、さまざまなシリカのカットも使用できる。
【0086】
これらのシリカ粉末は、平均粒子サイズが一般に0.1mm又はそれに近いものであり、BET比表面積5が50m2/gより大きく、好ましくは50~400m2/g、特には150~350m2/gである。
【0087】
これらのシリカは任意選択で:
少なくとも2つの基準を満たす分子の群から選択される少なくとも1つの相溶化剤の助けで前処理される:
それ自体及び周囲のシリコーンオイルとの水素結合の領域でシリカとの高い相互作用を持つこと:
それ自体、又はそれらの分解生成物は、ガス流中で真空下で加熱することによって最終混合物から容易に除去されること;低分子量の化合物が好ましい;
及び/又は
少なくとも1つの未処理シリカの助けで特定の方法により、
及び/又は前処理で使用することができ、上記で定義したものと同様の性質の少なくとも1つの相溶化剤を使用することによる補完的な方法により、
現場で処理される。
【0088】
シリカフィラーの現場処理は、フィラー及び相溶化剤を、上記で言及された優勢なシリコーンポリマーの少なくとも一部の存在下に置くことを意味すると理解される。
【0089】
相溶化剤は、処理方法(前処理又は現場)に従って選択され、例えば、以下を含む群から選択され得る:
クロロシラン、
オクタメチルシクロシロキサン(D4)などのポリオルガノシクロシロキサン、
シラザン、好ましくはジシラザン、又はそれらの混合物であり、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)が好ましいシラザンであり、これは、ジビニルテトラメチルジシラザンと関連し得る、
分子あたりケイ素に結合した1つ又は複数のヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサン、
アンモニアなどのアミン又はジエチルアミンなどの低分子量のアルキルアミン、
ギ酸や酢酸などの低分子量の有機酸、
及びそれらの混合物。
【0090】
現場処理の場合、相溶化剤は、好ましくは水の存在下で使用される。
【0091】
この点に関する詳細については、例えば特許FR-B-2764894を参照することができる。
【0092】
変形として、シラザンによる早期処理(例えば、FR-A-2320324)又は遅延処理(例えば、EP-A-462032)を提供する従来技術の相溶化方法を使用することが可能であるが、使用されるシリカによれば、それらの使用は、一般に、本発明による2回の処理によって得られる機械的特性、特に伸展性に関して最良の結果を得ることができないことを念頭に置いておく。
【0093】
フィラーEとして使用することができる強化アルミナとして、高分散性アルミナが有利に使用され、公知の方法でドープされてもされなくてもよい。もちろん、さまざまなアルミナのカットを使用することも可能である。そのようなアルミナの非限定的な例として、Baikowski CompanyのアルミナA125、CR125、D65CRを参照することができる。好ましくは、使用される強化フィラーは、単独で、又はアルミナと混合された燃焼シリカである。
【0094】
重量に関しては、組成物のすべての構成要素に基づいて、5~30重量%、好ましくは6~25重量%、より好ましくは7~20重量%の量の強化フィラーE1を使用することが好ましい。
【0095】
本発明によれば、熱伝導性フィラーE2及び/又は導電性フィラーE3などの補充的フィラーの使用が想定され得る。
【0096】
本発明のシリコーンエラストマーはまた、少なくとも1つの硬化速度調整剤Fを含み得る。硬化速度調整剤Fは、例えば、架橋阻害剤F1及び/又は架橋抑制剤F2であり得る。
【0097】
架橋阻害剤もよく知られている。硬化速度調整剤Fとして使用することができる架橋阻害剤F1の例には、以下が含まれる:
ポリオルガノシロキサン、有利には環状であり、少なくとも1つのアルケニル基で置換され、テトラメチルビニルテトラシロキサンが特に好ましい、
ピリジン、
ホスフィン及び有機ホスファイト、
不飽和アミド、
アルキル化マレイン酸塩、
アセチレンアルコール。
【0098】
これらのアセチレンアルコール(FR-B-1528464及びFR-A-2372874を参照)は、ヒドロシリル化反応の好ましい熱ブロッカーの一部を形成し、次の式を有する:
R-(R’)C(OH)----C=CH
式中:
Rは、直鎖又は分岐アルキルラジカル、又はフェニルラジカルであり;
R’はH又は直鎖若しくは分岐アルキルラジカル、又はフェニルラジカルであり;
ラジカルR、R’、及び三重結合のアルファ位置にある炭素原子は、環を形成することが可能であり;
R及びR’に含まれる炭素原子の総数は、少なくとも5、好ましくは9~20である。
【0099】
前記アルコールは、好ましくは、沸点が約250℃のものから選択される。例として、以下を挙げることができる:
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ECH);
メチル-3ドデシン-1オール-3;
トリメチル-3,7,11ドデシン-1オール-3;
ジフェニル-1,1プロピン-2オール-1
エチル-3エチル-6ノニンオール-3;
メチル-3ペンタデシン-1オール-3。
【0100】
これらのα-アセチレンアルコールは市販品である。
【0101】
このような調整剤は、オルガノポリシロキサンA、CE、及びXLの総重量に基づいて、最大2,000ppm、好ましくは20~50ppmの量で存在する。
【0102】
硬化速度調整剤Fとして使用することができる架橋抑制剤F2の例は、架橋反応を制御し、シリコーン組成物のポットライフを延長するためのいわゆる阻害剤を含む。硬化速度調整剤Fとして使用することができる有利な架橋遅延剤F2の例には、例えば、ビニルシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、又はテトラビニル-テトラメチル-テトラシクロシロキサンが含まれる。他の既知の阻害剤、例えば、エチニルシクロヘキサノール、3-メチルブチノール、又はマレイン酸ジメチルを使用することも可能である。
【0103】
本発明の硬化性液体シリコーンゴム組成物はまた、以下の任意成分の1つ以上、少なくとも1つの増粘剤G1又は少なくとも1つのレオロジー調整剤G2、及び/又は本発明の分野で通常使用される少なくとも1つの添加剤Hを含み得る。
【0104】
レオロジー調整剤G2は、レオロジー特性を改善して、より高い流動性と成形品の滑らかな表面を提供する。そのようなレオロジー調整剤G2は、PTFE粉末、酸化ホウ素誘導体、脂肪酸脂肪アルコール誘導体のような流動添加剤、エステル及びその塩又はフルオロアルキル界面活性剤であり得る。
【0105】
使用できる添加剤Hの例には、有機染料又は顔料、熱安定性、熱風、復帰、高温での微量の酸又は水の攻撃下での解重合に対する耐性を改善するためにシリコーンゴムに導入される安定剤が含まれる。反応性アルケニル又はSiH基を含まない、可塑剤、又は放出油、若しくはポリジメチルシロキサン油などの疎水性油。脂肪酸誘導体又は脂肪アルコール誘導体、フルオロアルキルなどの離型剤。ヒドロキシル化シリコーンオイルなどの相溶化剤。有機シランなどの接着促進剤及び接着調整剤。
【0106】
2液システムの第1の液体組成物及び第2の液体組成物を混合すると、硬化性液体シリコーンゴム組成物は、任意の適切な方法によって任意の適切な温度で硬化され得る。例えば、2液システムの第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、室温(約20~25℃)又はより高い温度で硬化させることができる。いくつかの実施形態では、2液システムの第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、50℃以上、80℃以上、100℃以上、120℃以上、150℃以上で硬化することができる。いくつかの実施形態では、第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、混合後室温で硬化される。
【0107】
第1の液体組成物と第2の液体組成物との間の硬化反応は、本発明による適切な硬化シリコーンエラストマーを得るために必要な任意の長さの時間進行し得る。当業者は、反応の長さが、他の変数の中でも特に反応の温度に応じて変化し得ることをすぐに理解するであろう。いくつかの実施形態では、第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、室温で約1日間硬化される。他の実施形態では、第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、≧100℃で約10分間硬化される。
【0108】
硬化すると、本発明のシリコーンゴム組成物は以下の組成物を有する:
(A)分子あたり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、
(B)少なくとも1つのジオルガノヒドロゲンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサン鎖延長剤CE、
(C)分子あたり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤XL、
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D、
(E)少なくとも1つのフィラーE、
(F)任意選択で、少なくとも1つの硬化速度調整剤F。
(G)任意選択で、少なくとも1つの増粘剤G1又は少なくとも1つのレオロジー調整剤G2、及び
(H)任意選択で、少なくとも1つの添加剤H。
ここで、硬化シリコーンエラストマー中のA、CE、及びXLの量は、以下をもたらすように選択されることが好ましい:1)シリコーンエラストマー内のアルケニル基に対する水素原子のモル比(RHalk)が1.00~1.35であり、2)CEとXLの両方を合わせた、ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数のうち、CEのケイ素原子に直接結合した水素原子のパーセンテージ(RHCE)が50~98%の間である。
【0109】
本発明の硬化シリコーンエラストマーは、ASTM D-412などの当技術分野で知られている任意の標準的な試験によって測定される場合、少なくとも800%の破断伸び値を示す。あるいは、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、少なくとも1000%、少なくとも1100%、少なくとも1200%、少なくとも1300%、少なくとも1400%、少なくとも1500%、少なくとも1600%、少なくとも1700%、少なくとも1800%、少なくとも1900%、又は少なくとも2000%の破断伸び値を示す。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、最大5000%の破断伸び値を示す。あるいは、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、最大4000%、最大3000%、最大2500%、又は最大2000%の破断伸び値を示す。
【0111】
いくつかの実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、800%~5000%の破断伸び値を示す。あるいは、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、800%~1200%、800%~1400%、800%~1500%、800%~1600%、800%~2000%、800%~2500%、又は800%~3000%の破断伸び値を示す。他の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、1000%~1400%、1000%~1500%、1000%~1600%、1000%~1700%、1000%~1800%、1000%~2000%、1000%~2500%、1000%~3000%、1000%~4000%、又は1000%~5000%の破断伸び値を示す。他の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、1100%~1400%、1100%~1500%、1100%~1600%、1100%~1700%、1100%~1800%、1100%~2000%、1100%~2500%、1100%~3000%、1100%~4000%、又は1100%~5000%の破断伸び値を示す。他の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、1200%~1400%、1200%~1500%、1200%~1600%、1200%~1700%、1200%~1800%、1200%~2000%、1200%~2500%、1200%~3000%、1200%~4000%、又は1200%~5000%の破断伸び値を示す。他の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、1300%~1400%、1300%~1500%、1300%~1600%、1300%~1700%、1300%~1800%、1300%~2000%、1300%~2500%、1300%~3000%、1300%~4000%、又は1300%~5000%の破断伸び値を示す。他の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、1400%~1500%、1400%~1600%、1400%~1700%、1400%~1800%、1400%~2000%、1400%~2500%、1400%~3000%、1400%~4000%、又は1400%~5000%の破断伸び値を示す。他の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、1500%~2000%、1500%~2500%、1500%~3000%、1500%~4000%、又は1500%~5000%の破断伸び値を示す。他の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、1700%~2000%、1700%~2500%、1700%~3000%、1700%~4000%、又は1700%~5000%の破断伸び値を示す。他の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、1800%~2000%、1800%~2500%、1800%~3000%、1800%~4000%、又は1800%~5000%の破断伸び値を示す。他の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、2000%~2500%、2000%~3000%、2000%~4000%、又は2000%~5000%の破断伸び値を示す。他の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、2500%~3000%、2500%~4000%、又は2500%~5000%の破断伸び値を示す。
【0112】
いくつかの実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、少なくとも約60psi(0.41MPa)、好ましくは少なくとも90psi(0.62MPa)、少なくとも約100psi(0.69MPa)、少なくとも125psi(0.86MPa)、少なくとも約150psi(1.03MPa)、少なくとも約175psi(1.29MPa)、少なくとも約200psi(1.37MPa)、少なくとも約250psi(1.72MPa)、少なくとも約300psi(2.06MPa)、少なくとも約350psi(2.41MPa)、少なくとも約400psi(2.75MPa)、少なくとも約450psi(3.10MPa)、少なくとも約500psi(3.44MPa)、又は少なくとも約550psi(3.79MPa)の引張強度を示す。
【0113】
例えば、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、約60(0.41MPa)~約1300psi(8.96MPa)、約60(0.41MPa)~約1200psi(8.27MPa)、約60(0.41MPa)~約1100psi(7.58MPa)、約60(0.41MPa)~約1000psi(6.89MPa)、約60(0.41MPa)~約900psi(6.21MPa)、約60(0.41MPa)~約800psi(5.52MPa)、約60(0.41MPa)~約700psi(4.83MPa)、約60(0.41MPa)~約600psi(4.13MPa)、約60(0.41MPa)~約550psi(3.79MPa)、約60(0.41MPa)~約500psi(3.44MPa)、約60(0.41MPa)~約450psi(3.10MPa)、約60(0.41MPa)~約400psi(2.75MPa)、約60(0.41MPa)~約350psi(2.41MPa)、約60(0.41MPa)~約300psi(2.06MPa)、約60(0.41MPa)~約250psi(1.72MPa)、約60(0.41MPa)~約200psi(1.37MPa)、約60psi(0.41MPa)~約150psi(1.03MPa)の引張強度を示し得る。あるいは、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、約90(0.62MPa)~約1300psi(8.96MPa)、約90(0.62MPa)~約1200psi(8.27MPa)、約90(0.62MPa)~約1100psi(7.58MPa)、約90(0.62MPa)~約1000psi(6.89MPa)、約90(0.62MPa)~約900psi(6.21MPa)、約90(0.62MPa)~約800psi(5.52MPa)、約90(0.62MPa)~約700psi(4.83MPa)、約90(0.62MPa)~約600psi(4.13MPa)、約90(0.62MPa)~約550psi(3.79MPa)、約90(0.62MPa)~約500psi(3.44MPa)、約90(0.62MPa)~約450psi(3.10MPa)、約90(0.62MPa)~約400psi(2.75MPa)、約90(0.62MPa)~約350psi(2.41MPa)、約90(0.62MPa)~約300psi(2.06MPa)、約90(0.62MPa)~約250psi(1.72MPa)、約90(0.62MPa)~約200psi(1.37MPa)、約90(0.62MPa)~約150psi(1.03MPa)の引張強度を示し得る。別の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、約100(0.69MPa)~約1300psi(8.96MPa)、約100(0.69MPa)~約1200psi(8.27MPa)、約100(0.69MPa)~約1100psi(7.58MPa)、約100(0.69MPa)~約1000psi(6.89MPa)、約100(0.69MPa)~約900psi(6.21MPa)、約100(0.69MPa)~約800psi(5.52MPa)、約100(0.69MPa)~約700psi(4.83MPa)、約100(0.69MPa)~約600psi(4.13MPa)、約100(0.69MPa)~約550psi(3.79MPa)、約100(0.69MPa)~約500psi(3.44MPa)、約100(0.69MPa)~約450psi(3.10MPa)、約100(0.69MPa)~約400psi(2.75MPa)、約100(0.69MPa)~約350psi(2.41MPa)、約100(0.69MPa)~約300psi(2.06MPa)の引張強度を示し得る。別の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、約150(1.03MPa)~約1300psi(8.96MPa)、約150(1.03MPa)~約1200psi(8.27MPa)、約150(1.03MPa)~約1100psi(7.58MPa)、約150(1.03MPa)~約1000psi(6.89MPa)、約150(1.03MPa)~約900psi(6.21MPa)、約150(1.03MPa)~約800psi(5.52MPa)、約150(1.03MPa)~約700psi(4.83MPa)、約150(1.03MPa)~約600psi(4.13MPa)、約200(1.37MPa)~約600psi(4.13MPa)、約250psi(1.72MPa)~約600psi(4.13MPa)、約300psi(2.06MPa)~約600psi(4.13MPa)、約350psi(2.41MPa)~約600psi(4.13MPa)、約400psi(2.75MPa)~約600psi(4.13MPa)、約450psi(3.10MPa)~約600psi(4.13MPa)、約500psi(3.44MPa)~約600psi(4.13MPA)、約550psi(3.79MPa)~約600psi(4.13MPa)の引張強度を示し得る。別の実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、90(0.62MPa)~約100psi(0.69MPa)、90(0.62MPA)~約150psi(1.03MPa)、100(0.69MPa)~約150psi(1.03MPa)、約150psi(1.03MPa)~約200psi(1.37MPa)、約200psi(1.37MPa)~約250psi(1.72MPa)、約250psi(1.72MPa)~約300psi(2.06MPa)、約300psi(2.06MPa)~約350psi(2.41MPa)、約350psi(2.41MPa)~約400psi(2.75MPa)、約400psi(2.75MPa)~約450psi(3.10MPa)、約450psi(3.10MPa)~約500psi(3.44MPa)、約500psi(3.44MPa)~約550psi(3.79MPa)、又は約550psi(3.79MPa~約600psi(4.13MPa)の引張強度を示す。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、伸びた後、元の長さの120%以内、好ましくは伸びた後、元の長さの115%以内、好ましくは元の長さの110%以内、好ましくは元の長さの105%以内に戻る。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、伸びた後15分以内に、元の長さの120%以内、好ましくは伸びた後、元の長さの115%以内、好ましくは元の長さの110%以内、好ましくは元の長さの105%以内に戻る。いくつかの実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、伸びた後5分以内に、元の長さの120%以内、好ましくは伸びた後、元の長さの115%以内、好ましくは元の長さの110%以内、好ましくは元の長さの105%以内に戻る。いくつかの実施形態では、本発明の硬化シリコーンエラストマーは、伸びた後すぐに、元の長さの120%以内、好ましくは伸びた後、元の長さの115%以内、好ましくは元の長さの110%以内、好ましくは元の長さの105%以内に戻る。
【0115】
本発明の硬化シリコーンエラストマーは、電気機器、車両、建設、医療及び食品などの様々な用途に使用することができる。例えば、本発明によるシリコーンエラストマー組成物を含む硬化製品は、以下の目的で使用することができる:リモコン、タイプライター、ワードプロセッサー、コンピューター端末、楽器などのゴム製接点;建設用ガスケット;コピー機ローラー、現像ローラー、転写ローラー、帯電ローラー、紙送りローラーなどのローラー;二輪車等のゴム製防振用絶縁体;バルブ、ホース、チューブ、パッキン、シール、ジョイントなどの配水部品;子供のおもちゃ、食器、調理器具(シリコーンスチーマーを含む)、歯ブラシ、哺乳瓶用乳首、乳児用おしゃぶり、人工乳首、スポーツ用品、ダイビング用水中眼鏡、ダイビング用ゴーグル、車両部品、スケールモデル、ロボット用人工皮膚部品。
【0116】
特に、本発明のシリコーンエラストマーを含む硬化製品は、優れた伸び及び耐久性を示し、弾性医療材料及び/又は機器で使用されるのに適切な硬度及び他の物理的特性を示す。確かに、そのような硬化シリコーン材料の物理的特性は、柔軟性と強度だけでなく、複雑な形状に成形され、変形することなく高温と滅菌に耐える能力も必要とする用途に潜在的に適している。例えば、本発明のシリコーンエラストマーを含む硬化製品は、様々な医療用チューブ、胃カテーテル、医療用バルーン、カテーテルバルーン、人工透析装置、血液透析装置、インプラント部品、化学ストッパー、Oリング、蠕動性薬物デリバリーポンプ、チェックバルブ、蘇生器バルブ、及び透析のチューブ、及び肢を取り付けるためのプロテーゼ吸引カップでの使用に適している。
【0117】
本発明の硬化シリコーンエラストマーは、ウェアラブルデバイス、フレキシブルディスプレイ、及び生理学的信号を監視するための機器にも使用することができる。本発明のシリコーンエラストマーを含む、大きなひずみ変形に対する弾性応答を提供する伸縮可能な電子機器及び光電子機器も提供され、例えば、人工電子皮膚(eスキン)、表皮/生物医学装置(マイクロ流体)、生体レンズ、電子眼、ウェアラブル光起電、スマート衣類、医療診断、スポーツウェア、曲げ可能なディスプレイ、柔軟手術器具、及びボディセンサーネットワーク。本発明の硬化シリコーンエラストマーは、小型、軽量、機械的に柔軟性があり、低電力である電子機器及びセンサーシステムに特によく適している。これらのシステムは、その形状に適合し、動作する必要のある環境に耐えることができなければならない。
【0118】
医療機器又は電子機器などの物品及び/又は製品における本明細書に記載の本発明の硬化シリコーンエラストマーの使用も提供される。
【0119】
本発明の硬化シリコーンエラストマーを製造する方法も提供され、ここで、2液硬化性液体シリコーンゴム組成物は、成分(A)、(B)、(C)、(E)、及び(F)を含むが(D)を含まない第1の液体組成物と、成分(A)、(E)、及び(D)を含むが、(B)、(C)、及び(F)を含まない第2の液体組成物とを含み、これらが混合及び硬化され、硬化シリコーンエラストマーを生成する。
【0120】
あるいは、2液硬化性液体シリコーンゴム組成物は、3D印刷法を使用して処理(又は硬化)され得る。三次元(3D)物品を形成する典型的な方法は、以下のステップを含む:
i)第1の熱硬化性シリコーン組成物を3Dプリンターで印刷して層を形成する;
ii)層を加熱して、少なくとも部分的に硬化した層を形成する;
iii)次の層を形成するために、3Dプリンターで、少なくとも部分的に硬化した層に第2の熱硬化性シリコーン組成物を印刷する;
iv)後続の層を加熱して、少なくとも部分的に硬化した後続の層を形成する;及び
v)任意選択で、任意の追加の層について独立して選択された熱硬化性シリコーン組成物を用いてステップiii)及びiv)を繰り返して、3D物品を形成する;
ここで、第1及び第2の熱硬化性シリコーン組成物は、互いに同一又は異なるものであり、第1及び第2の熱硬化性シリコーン組成物の少なくとも1つは、本発明による上記硬化性液体シリコーンゴム組成物Xである。
【0121】
本発明によって提供される他の利点は、以下の例示的な例から明らかになる。
【実施例
【0122】
材料及び方法
シリコーン組成物の作製
以下の例では、次の成分が使用された:
A1:線状α,ω-ビニルポリジメチルシロキサン(平均粘度3500mPa・s;Mn≒27,000g/モル)
A2:線状α,ω-ビニルポリジメチルシロキサン(平均粘度20000mPa・s;Mn≒49,000g/モル)
B:α,ω-水素化物ポリジメチルシロキサン(H-PDMS-H)(粘度7~10mPa・s;Mn≒750g/モル)
C:両方の分子末端がジメチル基でキャップされた、ジメチルシロキサンとメチルヒドロゲンシロキサンのコポリマー(粘度6~12mPa・s;9.5~11.0重量%のSiH(XL1)
又は
両方の分子末端がジメチルヒドロゲンシロキシ基で部分的にキャップされた、ジメチルシロキサンとメチルヒドロゲンシロキサンのコポリマー(粘度28~32mPa・s;6.4~8.2重量%のSiH(XL2)
D:白金触媒溶液:短い線状α,ω-ビニルポリジメチルシロキサン油で希釈された白金金属(白金中の重量%=10)
E:現場で処理された親水性ヒュームドシリカ(ヘキサメチルジシラザンで処理されたAEROSIL(登録商標)300)
F:ECH(1-エチニル-1-シクロヘキサノール)
【0123】
第1の液体組成物(100gバッチ用)
1.適切な量のLSRベースを容器に添加する。
2.適切な量のビニルポリマーを容器に添加して、成分AとEの混合物を得る。
3.適切な量の成分Bを容器に添加する。
4.成分を2000rpmで20秒間スピードミックスする。
5.適切な量のECH(F)を容器に添加する。
6.適切な量の架橋剤(C)を容器に添加する。
7.成分を2000rpmで20秒間スピードミックスする。
8.15秒間ハンドミックスする。
9.配合物を2000rpmで20秒間スピードミックスする。最終製品は均質な混合物に見える。
10.試験する前に、製品を少なくとも30分間冷却する。
【0124】
第2の液体組成物(100gバッチ用)
1.適切な量のLSRベースを容器に添加する。
2.適切な量のビニルポリマーを容器に添加する。
3.成分を2000rpmで20秒間スピードミックスして、成分AとEの混合物を得る。
4.適量の10%白金触媒溶液(D)を添加する。
5.配合物を2000rpmで20秒間スピードミックスする。
6.材料を15秒間ハンドミックスする。
7.配合物を2000rpmで20秒間スピードミックスする。最終製品は均質な混合物に見える。
8.試験する前に、材料を少なくとも30分間冷却する。
【0125】
シリコーンエラストマーZを得るために、上記第1の液体組成物及び第2の液体組成物を混合し、室温で1日間、あるいは100℃で10分間硬化させた。
【0126】
例A:高い破断伸び値を有するシリコーンエラストマーの製造
以下の例では、成分A、B、C、及びEの量を変化させ、第1及び第2の液体組成物(パーツ番号1及び2)を混合し、室温で1日間硬化させた後、得られた硬化したシリコーンエラストマーZを標準のASTM D-412を使用して試験した。2つの別々の架橋剤(成分(C)を試験した。表1及び2ではXL1が使用され、表3及び4ではXL2が使用された。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
【表4】
【0131】
上記の表に示すように、室温で1日間硬化させた後、RHalkの値が1.00又は1.35のシリコーンエラストマーzはゲル状であったため、破断伸びと引張強度を測定できなかった。ただし、RHalkの値が1.00より大きく1.35未満のシリコーンエラストマーZは、1100%を超える破断伸び値を示したように、高レベルの伸縮性が実証された。
【0132】
RHCEの値が98%のシリコーンエラストマーZもゲル状であった。しかし、RHCEの値が98%未満のシリコーンエラストマーZは、高レベルの伸縮性を示した。RHCEの値が減少する(すなわち、架橋剤の量が増加する)と、伸縮性が減少する傾向があることに留意されたい。ただし、架橋剤XL2を使用するシリコーンエラストマーZは、70%以上のRHCEの値で高度に伸縮性であり、架橋剤XL1を使用するシリコーンエラストマーZは、50%以上のRHCEの値で高度に伸縮性であった。
【0133】
例B:高い破断伸び値と高い耐久性を有するシリコーンエラストマーの製造
例Aで試験された本発明の硬化シリコーンエラストマーZの耐久性を測定するために、2つの追加の機械的特性が測定された。
【0134】
まず、各硬化シリコーンエラストマーが破損することなく伸びに耐えられるかどうかを判断した(すなわち、エラストマーを複数回伸ばすことができる)。架橋剤XL1を使用して製造されたシリコーンエラストマーZのデータを表5に示す。架橋剤XL2を使用して製造されたシリコーンエラストマーZのデータを表6に示す。
【0135】
【表5】
【0136】
【表6】
【0137】
表5及び6に示されるように、本発明のシリコーンエラストマーZは非常に耐久性がある。α値が0.267の架橋剤XL1を使用した場合(表5)、RHCEの値が76%を超えるエラストマーZは、破損することなく伸びに耐えた。α値が0.181の架橋剤XL2をした場合(表6)、RHCEの値が84%を超えるエラストマーZは、破損することなく伸びに耐えた。
【0138】
また、RHalkの値が1.05より大きく1.25未満のシリコーンエラストマーZは、使用した架橋剤(XL1又はXL2)に関係なく、破損することなく伸びに耐えたことが実証された。しかし、架橋剤XL1を使用すると、RHalkの値が1.05より大きく1.35未満のシリコーンエラストマーZは、破損することなく伸びに耐えた。
【0139】
次に、架橋剤XL1を使用して製造されたエラストマーZのいくつかの長さを伸びの前後に測定し、元の長さへの回復率を計算した。試験した各エラストマーZの初期の長さは7.6cmであった。試験したエラストマーZのそれぞれを元の長さの1000%(76cm)まで1回伸ばし、次に各エラストマーzの長さを伸びの直後(0分)、伸びた後5分、及び伸びた後15分で測定した。データを以下の表7に示す。
【0140】
【表7】
【0141】
上に示したように、例2を除いて、試験した各シリコーンエラストマーZは、元の長さの1000%に伸ばした直後に、元の長さの120%以内に戻った。さらに、各シリコーンエラストマーZは、元の長さの1000%まで伸ばした後、15分以内に元の長さの115%以内に戻った。確かに、RCHEの値が90%未満であったシリコーンエラストマーZは、元の長さの1000%に伸ばした後、15分以内に元の長さの105%以内に戻った。
【0142】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参考文献の引用は、出願日の前のその開示のためのものであり、本開示が先行発明のためにそのような参考文献に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0143】
上記要素のそれぞれ、又は2つ以上の集まりが、上記のタイプとは異なる他のタイプの方法においても有用な用途が見出される可能性があることが理解される。さらなる分析なしに、前述のことは、本開示の要旨を完全に明らかにするので、他の者は、現在の知識を適用することにより、先行技術の観点から、添付の特許請求の範囲に記載される本開示の一般的又は特定の態様の本質的な特徴を公正に構成する特徴を省略せずに、それを様々な用途に容易に適合させることができる。前述の実施形態は、例としてのみ提示されている。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。