(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】リポペプチドを含有する植物活力剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 61/00 20060101AFI20240325BHJP
A01N 63/22 20200101ALI20240325BHJP
A01N 43/713 20060101ALI20240325BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20240325BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A01N61/00 D
A01N63/22
A01N43/713
A01P21/00
A01G7/06 A
(21)【出願番号】P 2022114241
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2019556746の分割
【原出願日】2017-12-29
【審査請求日】2022-07-22
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519237797
【氏名又は名称】リポファブリック
【氏名又は名称原語表記】LIPOFABRIK
【住所又は居所原語表記】Universite Lille 1,Batiment Polytech Lille,Avenue Paul Langegin,59655 Villeneuve D’Ascq,France
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】クーテ,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ドラクロワ,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】エル ガズワニ,アヴドゥルナーセル
(72)【発明者】
【氏名】ジャック,フィリップ
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103011978(CN,A)
【文献】国際公開第2016/109395(WO,A1)
【文献】特表2014-518878(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物成長用の植物活力剤としての少なくとも1つのリポペプチドの使用であって、該少なくとも1つのリポペプチドそれ自身が植物成長促進作用を有し、植物活力剤として活性であり、イツリンA
、ミコサブチリン
およびフェンギシンA、
Bからなる群より選択さ
れることを特徴とする使用。
【請求項2】
前記少なくとも1つのリポペプチドは、枯草菌、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニホルミス、パエニバシラス・ポリミキサ、バチルス・プミルス、バチルス・チューリンゲンシス、バチルス・コアグランス、バチルス・ミコイデス、バチルス・スフェリカス、バチルス・ベレンツェンシス、バチルス・フィルムス、バチルス・メチロトロフィカス、バチルス・メガテリウム、およびバチルス・バリスモルティスからなる群より選択される菌株から得られる、請求項
1に記載の使用。
【請求項3】
前記少なくとも1つのリポペプチドは、バチルス種の少なくとも1つの菌株の上清から得られる、請求項
2に記載の使用。
【請求項4】
前記菌株は、ATCC6633
株、ATCC21332
株、168
株、ATCC9943
株およびNCIB3610
株から選択される枯草菌株であるか、またはFZB42
株およびLMG S-29032
株から選択されるバチルス・アミロリケファシエンス菌株である、請求項
2または
3に記載の使用。
【請求項5】
葉処理および/または根処理および/または種子処理および/または観賞用球根の処理によって前記少なくとも1つのリポペプチドを施用することを含む、請求項1から
4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
根のサイズが増加する、請求項
5に記載の使用。
【請求項7】
水分ストレスの場合に、気孔コンダクタンスが増加する、請求項
5に記載の使用。
【請求項8】
植物活力剤組成物として使用するとき、前記少なくとも1つのリポペプチドの濃度は、少なくとも20mg/L(0.002%)である請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長を促進するために農業に使用される植物活力剤の分野に関する。特に、本発明は、植物成長用の植物活力剤としてのリポペプチドの使用、およびリポペプチドを含有する植物活力剤組成物、そのような組成物を得る方法およびこの組成物を施用することによって植物材料の収穫を促進する方法に関する。植物活力剤組成物で被覆された種子もまた本発明の一部である。
【背景技術】
【0002】
世界人口の継続的な増加による食料需要の増加は、将来の真の課題である。植物活力剤は、この課題に効率的に貢献することができ、世界の農業生産においてますます使用が増加している。
【0003】
植物の根が栄養素に到達する速度は、通常、最初の数週間での植物の初期発生と成長の成功における重要なパラメータである。植物活力剤は、天然物に基づく栄養素を植物に提供することにより、またはそれらの栄養素に植物がアクセスするのを助けることにより植物の成長を促進することができる。
【0004】
植物活力剤は、種子発芽から植物成熟まで作物の全ライフサイクルを通して植物の発生と生長を促進し、植物の代謝効率を高めて収穫の増大と品質向上を導く。植物活力剤は、非生物的ストレスに対する植物耐性を高めて、非生物的ストレスから回復する能力を高める。植物活力剤は栄養素の同化、通過、および使用を促進する。植物活力剤は、糖度、色および果実の大きさを含む農産物の品質を改善する。加えて植物活力剤は、植物の含水量を調整し、改善する。最終的に植物活力剤は、土壌のある種の物理化学的性質を高めて、農地内の微生物の成長を促進する。
【0005】
植物の成長促進に微生物または微生物カクテルを使用することは良く知られている。これらの方法は、生成された微生物、または微生物の混合物を含んでいる組成物、特にバチルス属の菌株を含有する組成物を施用することを基本とする。
【0006】
文献に記載されている植物成長植物活力剤組成物は、精製されたバチルス属の菌株単独、または他の成分との組み合わせを含んでいる。例えば、国際公開第2016/109332号パンフレットは、バチルス種の生物学的に純粋な培養物、D747菌株(FERM BP-8234として出願)を含む組成物を記載している。国際公開第2016/108976号パンフレットは、単独でまたは化学製品または他の微生物製剤、または双方と組み合わせて施用でき、植物成長を促進させて植物の病気に対して保護および/または制御を提供する、生物学的に純粋なバチルス・プミルスrti 菌株279(Bacillus pumilus rti strain279)(ATCC受託番号PTA―121164の後で寄託)を含有する組成物を記載している。
しかしながら、そのような組成物には欠点がある。組成物が活性であるためには、微生物が生きていてその植物において増殖できることが望ましいが、これらの条件は制御することが難しい。加えて、生態学的解決策が推進される農業の状況においては、遺伝子組み換え微生物を使用することは問題がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、この問題に対する解決策を提供する。
【0008】
事実、本発明者らは、リポペプチドを含む組成物が植物の生長を促進するために使用できることを見出して驚いている。リポペプチドに基づく調整剤、またはリポペプチドを含むが上清を製造するバチルス属の菌株を含まないバチルス属培養液の上清に基づく調整剤は、植物活力剤分子の現場生産を必要とせずに遺伝子組み換えなしで(GMO-free)それ自体が活性であるという二重の利点を有する。先行文献のいずれも植物成長を促進するためのリポペプチドを含むそのような調整剤の使用は記載していない。
【0009】
従って、本発明は、植物の成長促進に対する革新的なアプローチを提供する。
【0010】
(本発明の詳細な説明)
【0011】
本発明の第1の目的は、植物成長用の植物活力剤(biostimulant)としての少なくとも1つのリポペプチドの使用に関する。
【0012】
事実、本発明者らは、初めて、精製リポペプチド調整剤の成長促進効果を示すことにより植物成長に対するリポペプチドの植物成長促進効果を実証した。従って、発明者らは植物活力剤としてのリポペプチドの使用を提案する。植物活力剤は、バチルス種の少なくとも1つの菌株の上清から得られた組成物、濃縮リポペプチド組成物、精製リポペプチドを含む組成物であってもよい。
【0013】
従って、本発明の第2の目的は、少なくとも1つのリポペプチドを含むことを特徴とする植物成長を促進する組成物に関する。リポペプチドは、精製、濃縮されてもよく、またはバチルス種の上清に含まれてもよい。好ましい実施形態においては、植物活力剤組成物は濃縮リポペプチド組成物または精製リポペプチド組成物に対応する。
【0014】
本明細書で使用される用語「上清」とは、バチルス種の少なくとも1つの菌株の上清または上清抽出物をいう。
本明細書で使用される用語「濃縮リポペプチド組成物」とは、バチルス種の少なくとも1つの菌株の培養上清を濃縮することにより得られる溶液または組成物をいう。
本明細書で使用される用語「精製リポペプチドを含む組成物」とは、バチルス種の少なくとも1つの菌株の培養上清などのリポペプチドを含む溶液、または濃縮リポペプチド組成物からリポペプチドを精製して得られた溶液または組成物をいう。
これらの異なる組成物においては、リポペプチドの性質、量および純度は変わりうる。
【0015】
本明細書で定義されるように、「植物活力剤組成物(biostimulant composition)」は、植物成長を増進できる組成物(または溶液または調整剤)である。適用可能な成長評価基準は複数あり、幾つかの基準は実施例に記載している。これは、例えば、植物活力剤組成物の施用に起因する発芽時間、根の大きさ、バイオマスまたは植物の高さに関する利得の評価が含まれる。そのような調整剤が植物成長促進特性を有するかを立証するために、前記上清は、植物の上部および/または根のレベルへの散水および/または給水、または種子の被覆/浸漬に施用される。
【0016】
バチルス種の菌株はリポペプチドを生成する能力でよく知られている。本発明において使用可能なバチルス属の菌株は、天然の菌株または遺伝子改変された菌株である。
【0017】
特定の実施形態においては、バチルス種の菌株は、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、パエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymixa)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・スフェリカス(Bacillus sphaericus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ミコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス・ベレンツェンシス(Bacillus velenzensis)およびバチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・メチロトロフィカス(Bacillus methylotrophicus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・バリスモルティス(Bacillus vallismortis)から選択される。
好ましくは、バチルス属の菌株は、枯草菌およびバチルス・アミロリケファシエンス(最近ではバチルス・ベレンツェンシスとして認識される)から選択される。好ましい実施形態においては、枯草菌株は、ATCC6633、ATCC21332,168、ATCC9943およびNCIB3610およびそれらの誘導体から選択される。バチルス・アミロリケファシエンス菌株は、FZB42およびLMG S-29032(GA1としても知られる)およびそれらの誘導体から選択される。
【0018】
別の特定の実施形態においては、植物活力剤組成物は上清を濃縮することにより得られる。従って、濃縮組成物の濃縮率は、収集された上清に対して少なくとも2倍、さらには5倍または10倍、さらに好ましくは少なくとも20倍、さらにより好ましくは少なくとも50倍の濃縮率に対応する。植物活力剤組成物は、上清に含まれるリポペプチドを精製することによっても得られる。従って、定性的(存在するリポペプチドの性質)にも定量的にも、所定の組成物を有する植物活力剤溶液を提案することが可能である。
【0019】
本発明による植物活力剤組成物は、そのリポペプチド含有量によっても定義することができる。従って、好ましい実施形態においては、本発明によるリポペプチド調整剤は、少なくとも10mg/L(0.001%)、20mg/L、50mg/L、100mg/L(0.01%)、200mg/L、500mg/L、1g/L(0.1%)、2g/L、5g/L(0.5%)、10g/L(1%)、20g/L、50g/L、好ましくは1%~7%の間、特に、1%、2%、3%、4%、5%、6%または7%であり、さらに好ましくは少なくとも10%、または少なくとも20%である。1%溶液は10g/Lに相当することを理解して頂きたい。
濃縮リポペプチド組成物または精製リポペプチドを含む組成物は、0.002%~15%のリポペプチドを含有してもよく、その純度は変わりうる。特に、そのような組成物は、10%以上、好ましくは15%、20%、30%、40%、または50%以上のリポペプチド純度を有してもよい。特に好ましい実施形態においては、それらの組成物は、60%以上、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%に等しい、またはそれ以上のリポペプチド純度、100%にもなる。
【0020】
植物成長のための成長促進特性を有するリポペプチドの中で、イツリン(iturins)、サーファクチン(surfactins)、フェンギシン(fengycins)、クルスタキン(kurstakins)およびロシロマイシン(locillomycins)ファミリーのリポペプチドは、本発明に関連して特に興味深い。
【0021】
好ましい実施形態においては、植物活力剤組成物は、イツリンファミリーに属する分子および/またはサーファクチンファミリーに属する分子および/またはフェンギシンファミリーに属する分子および/またはクルスタキンファミリーに属する分子および/またはロシロマイシンファミリーに属する分子の分子量によって定義される(
図1の表を参照)。
【0022】
「イツリンファミリーに属する分子」は、イツリンA、モヤベンシン(mojavensin)、ミコサブチリン(mycosubtilin)、およびバシロマイシン(bacillomycins)A、B、C、D、F、Lを意味する。
「サーファクチンファミリーに属する分子」とは、サーファクチンA、B、C、リケニシン(lichenysin)およびプミラシジン(pumilacidin)を意味する。
「フェンギシンファミリーに属する分子」とは、フェンギシンAおよびB、プリパスタチン(plipastatins)AおよびB、およびアグラスタチン(agrastatin)を意味する。
【0023】
従って、例えば、本発明による植物活力剤組成物は、0.002%~25%のリポペプチド、特に1~15%のリポペプチドを含んでもよい。
第1の実施形態においては、この組成物は、イツリンファミリー、サーファクチンファミリー、フェンギシンファミリーからなる0.002~25%のリポペプチドを含み、各ファミリーは、イツリンファミリーに属する分子10~90%、サーファクチンファミリーに属する分子10~90%、フェンギシンファミリーに属する分子0~50%の比率で含まれる。
第2の実施形態においては、この組成物は、0.002~25%のリポペプチドを以下の比率で含む:0~100%イツリンファミリーに属する分子、0~100%サーファクチンファミリーに属する分子、0~100%フェンギシンファミリーに属する分子。
【0024】
本発明による別の植物活力剤組成物は、0.002~25%のリポペプチド、好ましくは1~15%のリポペプチドを含み、各成分は下記比率であってもよい。
-100%サーファクチン。
-100%フェンギシン。
-100%イツリン、特にミコサブチリン。
-イツリンとサーファクチンの混合物。
-ミコサブチリンとサーファクチンの混合物。
-イツリンとフェンギシンの混合物。
-ミコサブチリンとフェンギシンの混合物。
-サーファクチンとフェンギシンの混合物。
-ミコサブチリンを含むイツリン、サーファクチンおよびフェンギシンの混合物。
【0025】
本発明による組成物は、また、アセトイン(acetoin)、2-3ブタンジオール(butanediol)、オーキシン(auxin)前駆体および/またはリン酸可溶化酵素などの前記菌株によって産生される一次代謝物を含んでもよい。
【0026】
本発明による組成物の例を実施例に記載する。
濃縮リポペプチド組成物は実施例2に記載する。これらは培養上清の濃縮によって得られた組成物であり、以下を含有する:175mg/Lのイツリン、特にイツリン、特にミコサブチリンおよび75mg/LのサーファクチンA、または700mg/Lのイツリン、特にミコサブチリンおよび300mg/LのサーファクチンA。これらの組成物は、トマトの大きさおよびそのような植物の地上部における新鮮なバイオマスの量を有意に増加させる。これら2つの組成物は、また、コムギの地上部および根部における新鮮なバイオマスの量を有意に増加させる。350mg/Lのイツリン、特にミコサブチリン、および150mg/LのサーファクチンAを含む別の組成物は、コムギの地上部および根部の新鮮なバイオマスの量およびコムギの地上部の葉緑素含有量を有意に増加させる。
【0027】
本発明による精製リポペプチド組成物は、実施例3および4に記載する。精製ミコサブチリン(99%)を含む精製イツリン、または精製フェンギシン(99%)、またはミコサブチリンを含むイツリンとサーファクチン(79%)の混合物は、特にトマトの種子の処理後に根の成長に著しい効果を及ぼす(実施例3を参照)。
【0028】
イツリン特にミコサブチリン80%、およびサーファクチン20%の相対比率で30~99%の間で精製されたリポペプチドを含む組成物は、特にトマトの水分ストレスに対する耐性を向上させる。組成物のこれら成長促進効果は、水分ストレスの始めと終わりの間にトマトの高さの増加、より良い光合成効率およびより良い気孔コンダクタンスをもたらす(実施例4を参照)。
【0029】
植物内への調整剤の浸透を容易にするために、本発明による組成物はアジュバントを含んでもよい。アジュバントは、有益には植物活力剤組成物の植物内への浸透を促進する。アジュバントの選択は所望の効果によって導かれる。例えば、潤滑剤は植物活力剤材料を広げることにより、葉と小滴との間の接触表面を増加させて、表皮上の植物活力剤の保持を確実にする。油は植物のエピクチクラワックス層の障壁を「破壊する」ことにより植物活力剤物質の浸透を促進する。油が栽培植物の表皮上に同様に作用して病原菌に対するその天然の防御を弱めることが知られている場合には、このことは欠点になる。浸透剤などの他のアバジュバントは、それらの一体性を尊重しながらワックス状表皮にしみこませる潤滑剤である。塩は、特に空気中から湿気を吸収して乾燥に対抗させるアジュバントとしても使用できる。最後に、接着剤は、葉に植物活力剤物質を固定して浸出と揮発を制限する。アジュバントは従って、植物活力剤物質の作用様式(根、接触、全身的または浸透的)、製品構成物(product formulations)の種類、対象植物の種類(無毛または有毛の葉、表皮厚さ、植物段階(plant stages)、気孔位置など)に適合させなければならない。
好ましくは、アジュバントは、荷電されたまたは非荷電の高分子界面活性剤、アルキルポリグルコキシド(alkylpolyglucosides)、およびアルキルポリグルコシキドエステル(alkylpolyglucosides esters)、ナフタレンスルホン酸(naphthalene sulfonate)誘導体、セルロース誘導体、天然多糖類、シリコーン系エマルジョンなどから選択される。
【0030】
本発明による植物活力剤組成物は、別の実施形態においては、上清を産生した特定の菌株または特定の複数の菌株に対応しないという条件で細胞を含んでもよい。調整剤に添加された細胞は、上清調整剤の成長促進作用または抗真菌性特性を含む追加的特性を増大する特定の性質を有してもよい。従って、そのような細胞はバチルス種の菌株から選択することができる。上清を製造するために使用されたものとは異なり、特に、枯草菌、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニホルミス、パエニバシラス・ポリミキサ、バチルス・プミルス、バチルス・チューリンゲンシス、バチルス・スフェリカス、バチルス・コアグランス、バチルス・ミコイデス、バチルス・フィルムス、バチルス・ベレンツェンシス、バチルス・メチロトロフィカス、バチルス・メガテリウム、バチルス・バリスモルティスの菌株から選択される。そのような細胞は、バチルス・タイプの菌株ではなく、ペニバチルス種(Paenibacillus sp.)、シュードモナス種(Pseudomonas sp.)(好気性ブドウ糖非発酵菌(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chioraphis)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae))、ストレプトマイセス種(Streptomyces sp.)(ストレプトマイセス・グリセオビリティス(Streptomyces griseoviridis)、ストレプトマイセス・リディカス(Streptomyces lydicus))であってもよい。そのような細胞は、また、酵母(yeasts)、菌根菌(mycorrhizal fungi)またはトリコデルマ種(Trichoderma sp)またはピシウム種(Pythium sp)などでも可能である。
【0031】
本発明の第3の目的は、植物成長用の植物活力剤調整剤を得る方法に関する。本方法は、(i)バチルス種の少なくとも1つの菌株を培養するステップと、(ii)上清中の分子の分泌に適した培地中で培養するステップと、(iii)その上清を採取するステップを含む。本方法においては、上清または上清の抽出物を植物活力剤として直接使用することができる。
培養時間および培地は、培養する菌株に応じて選択される。当業者であれば、これらのパラメータを適合させることができるだろう。
【0032】
特定の実施形態においては、この方法で使用されるバチルス属の菌株は、好ましくはバチルス種から選択される、つまり、枯草菌、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニホルミス、パエニバシラス・ポリミキサ、バチルス・プミルス、バチルス・チューリンゲンシス、バチルス・コアグランス、バチルス・ミコイデス、バチルス・スフェリカス、バチルス・ベレンツェンシス、バチルス・フィルムス、バチルス・メチロトロフィカス、バチルス・メガテリウム、バチルス・バリスモルティスから選択され、好ましくは枯草菌またはバチルス・アミロリケファシエンスの菌株から選択される。好ましい実施形態においては、枯草菌株は、ATCC6633、ATCC21332,168、ATCC9943およびNCIB3610およびそれらの誘導体から選択される。バチルス・アミロリケファシエンスは、FZB42およびLMG S-29032およびそれらの誘導体から選択される。
【0033】
加えて、本方法は、上清を濃縮するステップを含んでもよい。調整剤の濃縮は、当業者が良く知っている技術の一つを用いて得ることができる。例えば、調整剤は、限外濾過膜、蒸発、物理化学的沈殿または抽出のいずれかによって濃縮することができる。
代わりに、本方法は、リポペプチドの精製ステップを含んでもよい。精製ステップは、1つのタイプのリポペプチドしか含まない溶液を製造するため、または異なるリポペプチドの組み合わせを含有する溶液を製造するために、精製リポペプチドを製造する。リポペプチドの精製は、当業者に周知の技術の一つを用いて達成可能である。例えば、限外濾過、透析濾過、およびメタノール、エタノール、ブタノール、酢酸エチルおよびクロロホルムなどの有機溶媒を単独でまたは組み合わせて使用する最終精製工程の連続的なシーケンスを述べることができる。代わりに、リポペプチドの精製は、酸沈殿によって、または(例えばアンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム塩などの)一価または二価のカチオン塩を使用することによって行うことができる。
【0034】
植物活力剤組成物は、従って、その保存、貯蔵および輸送を容易にするために粉末の形態に脱水することができる。従って、上述のように定義された植物活力剤組成物は、目的の分子、特にリポペプチドにおいて所望の濃度を得るために上清粉末を溶解することにより得ることが出来る。
【0035】
本発明の第4の目的は、植物成長を促進するために植物の一部または全部に上記で定義されたような植物活力剤組成物を施用する成長促進方法に関する。好ましい実施形態においては、植物活力剤組成物は精製リポペプチドを含む組成物である。
【0036】
特定の実施形態においては、植物活力剤調整剤は、葉および/または根および/または果実および/または野菜および/または穀物の著しい増産を得るために葉面散布に施用してもよい。この散布は、例えば、植物活力剤組成物を噴霧することにより行うことができる。
【0037】
別の特定の実施形態においては、植物活力剤組成物は、葉および/または根および/または果実および/または野菜および/または穀物の著しい増産を得るために根に施してもよい。この施肥は、例えば、植物活力剤組成物を散水することにより施用することができる。
【0038】
別の実施形態においては、植物活力剤組成物は、葉および/または根および/または果実および/または野菜および/または穀物の著しい増産を得るために種子の処理に施用してもよい。この処理は、例えば、植物活力剤組成物で被覆することにより行うことができる。
【0039】
本発明の別の主題は、葉物質の顕著な増産を得ることを目的とする本発明により定義された植物活力剤組成物で処理された観賞用球根(ornamental bulbs)に関する。
【0040】
本発明の別の主題は、本発明において定義された植物活力剤組成物で被覆された種子に関する。
植物種子の被覆は、特に植物の初期成長を改善することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】バチルス種により産生される主要なリポペプチドの分子量の説明表である。
【
図2】バチルス種由来の濃縮組成物を施用した後のトマトの高さの測定値のグラフである。
【
図3】バチルス種の培養上清由来の濃縮組成物の施用後のトマトの地上部の新鮮なバイオマスの重量の測定値のグラフである。
【
図4】バチルス種の培養上清由来の濃縮組成物の施用後のコムギの湿分および根の増加の測定値のグラフである。
【
図5】バチルス種由来の濃縮組成物の施用後のコムギの葉緑素含有量の増加の測定値のグラフである。
【
図6】精製リポペプチドを含む組成物を用いて浸漬/被覆処理されたトマトの種子の根の長さの測定値のグラフである。
【
図7】水分ストレス期間の始めと終わりの精製リポペプチドを含む組成物で処理されたトマトの生育増加の測定値のグラフである。
【
図8】水分ストレス期間の始めと終わりの精製リポペプチドを含む組成物で処理されたトマトの光合成効率の測定値のグラフである。
【
図9】水分ストレス期間の始めと終わりの精製リポペプチドを含む組成物で処理されたトマトの気孔コンダクタンスの測定値のグラフである。
【0042】
(図面の説明)
図1はバチルス種により産生される主要なリポペプチドの分子量の説明表である。
図2はバチルス種由来の濃縮組成物を施用した後のトマトの高さの測定値のグラフである。植物の高さは、以下のものを含む組成物を施用した後に測定された。
(様式1)施用のための最終濃度90mg/LイツリンA、100mg/LフェンギシンAおよびB、および60mg/LサーファクチンAを含むバチルス・アミロリケファシエンス上清由来の組成物。
(様式2)施用のための最終濃度175mg/Lミコサブチリンおよび75mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物。
(様式3)施用のための最終濃度700mg/Lミコサブチリンおよび300mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物。
解析により、植物高さに対する有意な効果(P=0.0029)が明らかになった。
統計グループは、文字aおよびbによって図に表示される。
【0043】
図3は、バチルス種の培養上清由来の濃縮組成物の施用後のトマトの地上部の新鮮なバイオマスの重量の測定値のグラフである。トマトの地上部の新鮮なバイオマスの重量は、以下のものを含む組成物を施用した後に測定された。
(様式1)施用のための最終濃度90mg/LイツリンA、100mg/LフェンギシンAおよびB、および60mg/LサーファクチンAを含むバチルス・アミロリケファシエンス上清由来の組成物。
(様式2)施用のための最終濃度175mg/Lミコサブチリンおよび75mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物。
(様式3)施用のための最終濃度700mg/Lミコサブチリンおよび300mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物。
解析により、植物高さに対する有意な効果(P=0.0029)が明らかになった。
統計グループは、文字a、b、およびcによって図に表示される。
【0044】
図4は、バチルス種の培養上清由来の濃縮組成物の施用後のコムギの湿分(wet matter)および根の増加の測定値のグラフである。コムギの地上部および根の部分の新鮮なバイオマスの重量は、以下のものを含む組成物を、根のみに(R)または根と葉に(R+F)施用した後に測定された。
(様式1)施用のための最終濃度90mg/LイツリンA、100mg/LフェンギシンAおよびB、および60mg/LサーファクチンAを含むバチルス・アミロリケファシエンス上清由来の組成物。
(様式2)施用のための最終濃度175mg/Lミコサブチリンおよび75mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物。
(様式4)施用のための最終濃度350mg/Lミコサブチリンおよび150mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物。
統計グループは、コムギの地上部への植物成長促進効果に対して文字AおよびBで図に示され、コムギの根部に対する成長促進効果に対して文字a、bにより図に表示される。
【0045】
図5は、バチルス種由来の濃縮組成物の施用後のコムギの葉緑素含有量の増加の測定値のグラフである。コムギの地上部の葉緑素含有量は、以下のものを含む組成物を、根のみに(R)または根と葉に(R+F)施用した後に測定された。
(様式1)施用のための最終濃度90mg/LイツリンA、100mg/LフェンギシンAおよびB、および60mg/LサーファクチンAを含むバチルス・アミロリケファシエンス上清由来の組成物。
(様式4)施用のための最終濃度350mg/Lミコサブチリンおよび150mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物。
統計グループは、文字a、b、およびcによって図に表示される。
【0046】
図6は、精製リポペプチドを含む組成物を用いて浸漬/被覆処理されたトマト種子の根の長さの測定値のグラフである。トマト種子の組成物の根の長さは、以下のものを含む組成物を施用した後に測定された。
(様式1)99%ミコサブチリンを含む枯草菌培養物の濃縮精製上清。
(様式2)99%サーファクチンを含む枯草菌培養物の濃縮精製上清。
(様式3)99%フェンギシンを含む枯草菌培養物の濃縮精製上清。
(様式4)ミコサブチリンとサーファクチンの79%混合物を含む枯草菌培養物の濃縮精製上清。
各様式は、同量の0.1%ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液で処理した対照に対応する対照条件と比較される。統計グループは、文字a、bによって図に表示される。
【0047】
図7は、水分ストレス期間の始めと終わりの精製リポペプチドを含む組成物で処理されたトマトの生育増加の測定値のグラフである。トマトの大きさは水分ストレス期間の終わりに測定し、以下を含む組成物施用後の増加を見積もるために期間の始めに測定した大きさと比較した。
(様式1)濃縮されて純度30%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を75g/haのリポペプチドの割合で施用する。
(様式2)濃縮されて純度30%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を150g/haのリポペプチドの割合で施用する。
(様式3)濃縮されて純度99%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を150g/haのリポペプチドの割合で施用する。
各様式は、同量の蒸留水溶液で処理された対照に対応する対照条件と比較される。
統計グループは、文字a、bおよびcによって図に表示される。
【0048】
図8は、水分ストレス期間の始めと終わりの精製リポペプチドを含む組成物で処理されたトマトの光合成効率の測定値のグラフである。光合成効率は、以下を含む組成物を適応した後で水分ストレス期間の始めと終わりでPAM蛍光測定によって測定された。
(様式1)濃縮されて純度30%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を75g/haのリポペプチドの割合で施用する。
(様式2)濃縮されて純度30%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を150g/haのリポペプチドの割合で施用する。
(様式3)濃縮されて純度99%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を150g/haのリポペプチドの割合で施用する。
各様式は、同量の蒸留水溶液で処理された対照に対応する対照条件と比較される。
図Aは、水分ストレスの始めの時期の測定に相当し、
図Bは、水分ストレスの終わりの時期の測定に相当する。
統計グループは、文字a、bおよびcによって図に表示される。
【0049】
図9は、水分ストレス期間の始めと終わりの精製リポペプチドを含む組成物で処理されたトマトの気孔コンダクタンスの測定値のグラフである。気孔コンダクタンスは、以下のものを含有する組成物を施用後に、ポロメータを用いて水分ストレスの始めと終わりの葉の気孔を通過する一酸化炭素(CO)または水蒸気の流量を測定することにより解析される。
(様式1)濃縮されて純度30%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を75g/haのリポペプチドの割合で施用する。
(様式2)濃縮されて純度30%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を150g/haのリポペプチドの割合で施用する。
(様式3)濃縮されて純度99%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を150g/haのリポペプチドの割合で施用する。
各様式は、同量の蒸留水溶液で処理された対照に対応する対照条件と比較される。
図Aは、水分ストレスの始めの時期の測定に相当し、
図Bは、水分ストレスの終わりの時期の測定に相当する。
統計グループは、文字a、bによって図に表示される。
【実施例】
【0050】
実施例1:植物活力剤組成物の調整剤
【0051】
1.a 培養上清の準備
培養上清は、枯草菌ATCC6633菌株または、バチルス・アミロリケファシエンスLMG S-29032菌株に由来するバチルス属の菌株の好気性発酵プロセスから得られる。培養は、炭素源(ぶどう糖、蔗糖など)、窒素源(硫酸アンモニウム、ペプトンなど)および微量元素を含有する攪拌培地中で30℃で行われる。pHは、7に維持される。培養物は48~72時間後に収穫される。その後、遠心分離または濾過して細胞を除去する。培養上清は濃縮する準備ができている。この段階のリポペプチドのパーセンテージは、0.05~0.5%(重量/容量)の範囲内にある。
【0052】
1.b 濃縮された植物活力剤調整剤の準備
-接線濾過による
例えば、1.aに示された調整剤を介して得られた培養上清は、カットオフ閾値が1KDaから100KDaの膜を使用する接線限外濾過を介して濃縮される。例えば、上述のようにして得られた1000Lの培養上清を膜を濾過させることで、10~100Lの量の残余分を得る。
-酸性pHでの沈殿による
濃縮された植物活力剤調整剤の準備の第2の実施例は、リポペプチドを沈殿させるためのpHの低下である。濃硫酸が、例えば1.aに示された調整剤から得られた上清に対して追加される。約1の最終pHが得られた後で溶液を2~12時間攪拌する。遠心分離により、リポペプチドを含む材料のペレットを取り戻すことができる。このペレットは、その後、水およびナトリウム化合物を加えて、pH値7~8.5を得るように溶解される。例えば1000Lの培養上清からペレットが得られる場合、このペレットは合計量10~100Lで使用することができる。
調整剤のこれら2実施例のうちの1つの実施例の終わりのリポペプチドの割合は、1~15%(重量/容量)である。
【0053】
実施例2:バチルス培養上清から得られた組成物の植物成長に対する成長促進効果
【0054】
2.a 上清中に存在する化合物の分析
植物活力剤組成物として使用される組成物の能力は、分析方法を使用して検証することができる。組成物中のバチルス属培養由来のリポペプチド、一次代謝産物または酵素の存在は、当業者に知られている種々の方法、特に質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィ(またはLC-MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定することができる。
【0055】
2.b 植物に対する成長促進効果の評価方法
組成物の植物成長促進効果は、成長パラメータを分析することにより植物を直接的に評価できる。この目的のために、培養上清またはそれに由来する組成物は、散水によって植物の上部部分へ、根の部分へ、または種子を浸すことで施用することができる。これらの様式はまた、組み合わせることができる。植物成長促進効果は成長期の後で評価される。
以下の基準のうちの少なくとも1つを満たせば、植物成長促進効果が得られる。
-植物サイズの増加(高さまたは厚さ)。
-植物果実の新鮮さおよび/または乾燥バイオマスの増加。
-植物の地上部の新鮮さおよび/または乾燥バイオマスの増加。
-植物の根の新鮮さおよび/または乾燥バイオマスの増加。
-節の数、穀物作物の穂の数の増加。
-植物根系の長さの増加。
-穀物、野菜および/または果物の収穫量の増加。
-葉緑素含有量の増加。
-非生物ストレスに対する耐性の増加、例えば水分ストレスの間の光合成効率、気孔コンダクタンスなどの増加。
【0056】
2.c トマトの高さの増加に対するリポペプチド含有組成物の効果
装置および方法
試験は、温度および日光の半制御された条件を確保するために栽培用温室で行われる。
-気温:日中25℃、夜間20℃
-日長:日中14時間、夜間10時間
温室は、最低の明るさが175W/m2に調節されている。この明るさを下回ると、照明がオンになり、明るさの値を補う。日よけは500W/m2の明るさを超えると広がり、450W/m2で縮まる。
【0057】
各様式は、事前に砂地農地に双葉の段階で移植された5つのトマトで評価される。初期施肥は、トマト当たり0.2gの割合で提供されるハカフォスレッド(Hakaphos red)8-12-24の溶液を用いて移植の2日前に行う。
この植物活力剤有効性試験での試験様式は、トマト移植時の植物の基部(foot)への製品の寄与、および、および散布量200L/haを考慮した葉面散布栽培の3週間後での製品の寄与に相当する。
【0058】
試験した組成物を以下に示す。
-バチルス・アミロリケファシエンス培養上清を20倍に濃縮し、40倍に希釈して50g/haの濃度のリポペプチドを得た。その相対比率はイツリンファミリー(ここではイツリンA)について36%およびサーファクチンファミリー(ここではサーファクチンA)について24%、およびフェンギシンファミリー(ここではフェンギシンAおよびB)について40%である(様式1)。
-枯草菌培養上清を20倍に濃縮し、40倍に希釈して50g/haの濃度のリポペプチドを得た。その相対比率はイツリンファミリー(ここではミコサブチリン)について70%およびサーファクチンファミリー(ここではサーファクチンA)について30%である(様式2)。
-枯草菌培養上清を20倍に濃縮し、10倍に希釈して200g/haの濃度のリポペプチドを得た。その相対比率はイツリンファミリー(ここではミコサブチリン)について70%およびサーファクチンファミリー(ここではサーファクチンA)について30%である(様式3)。
-同量の蒸留水で処理した対照(対照様式)
【0059】
その後、植物の高さおよび地上部分の新鮮なバイオマスを6週間の培養後に測定する。有意な効果を強調するために、データを分散分析(ANOVA、95%の信頼水準、すなわち、危険閾値5%でのLSD法)で処理する。試験は、統計グラフィックセンチュリオンXV(STATGRAPHICS Centurion XV)バージョン15.2.06ソフトウエアを用いて行われる。
【0060】
結果
実験プロトコルは、トマトが到達する高さに対するバチルス属の菌株の培養上清に由来する異なる組成物の植物成長促進効果を比較することを可能にする。結果を
図2に示す。統計分析は、このパラメータ(P=0.0029)に対する処理の有意な効果を示す。統計グループは、文字aおよびbによって図に表示するが、全ての様式は対照と比較して有意な植物成長促進効果を有する。
図2に表した結果は、施用のための最終濃度175mg/Lミコサブチリンおよび75mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物(様式2)、および施用のための最終濃度700mg/Lミコサブチリンおよび300mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物(様式3)が、未施用の様式(対照様式)に比べて6週間経過後のトマトのサイズを有意に増加させることを示している。施用のための最終濃度90mg/LイツリンA、100mg/LフェンギシンAおよびB、および60mg/LサーファクチンAを含むバチルス・アミロリケファシエンス上清からの様式1の植物成長促進効果は、未施用の対照よりもはるかに大きいが、対照を含む2つの統計グループに属する。
【0061】
2.d トマトの地上部の新鮮なバイオマスの増加に対するリポペプチド組成物の効果
装置および方法
実験プロトコルは、上述の2.cに記載したものと同一である。
【0062】
結果
実験プロトコルは、トマトの地上部分の新鮮なバイオマスの重量に対するバチルス属の菌株の培養上清に由来する異なる組成物の成長促進効果を比較することを可能にする。結果を
図3に示す。統計分析は、このパラメータ(P=0.0029)に対する施用の有意な効果を示す。統計グループは、文字a、bおよびcによって図に表示する。
図3に表した結果は、施用のための最終濃度175mg/Lミコサブチリンおよび75mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物(様式2)、および施用のための最終濃度700mg/Lミコサブチリンおよび300mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物(様式3)が、未施用の様式(対照様式)に比べて地上部分の新鮮なバイオマスが有意に増加することを認めている。施用のための最終濃度90mg/LイツリンA、100mg/LフェンギシンAおよびB、および60mg/LサーファクチンAを含むバチルス・アミロリケファシエンス上清からの様式1の植物成長促進効果は、未施用の対照よりもはるかに大きいが、対照を含む2つの統計グループに属する。
【0063】
2.e コムギからの湿った材料(wet material)およびコムギの根からの湿った材料(wet material)の生産の増加に対するリポペプチド組成物の効果
装置および方法
Tybalt種のコムギ種子は、不活性基質上に播種された。根は液体培地で発育した。コムギが、単葉~双葉段階にあるときに、植物は、砂質粘土質土で鉢植えされた。鉢は16時間日中で温度19℃で培養室に保たれた。
各作物および処理あたり20本が栽培された。10本の植物が根へ施肥され、(
図4と
図5でRとして注記される)10本の植物は未施肥であった。その後、根へ施肥された10本の植物中、5本の植物は、次に葉面へ施肥され(
図4および5でR+Fで注記される)、5本の植物は未施肥であった。(
図4と
図5でRとして注記される)。
コムギの根は、種々の製品溶液に浸漬することで処理され、処理の直後に砂の鉢植えの土で鉢に植えられた。葉への施用は、成長は植え付けの4週間後に200L/haで行われた。最終測定は9週間の成長後に行われる。
得られたデータは、SAS7を用いて統計的に分析した。正規性は、コルモゴロフ-スミルノフ(Kolmogorov-Smirnov)を用いて検定し、等分散は、レベンの検定により検定した。正規分布された等分散性変数は、事後検定としてのTukeyを用いた双方法の一元配置分散分析(bidirectional one-way Anova)をされた。
【0064】
試験された組成物を以下に示す。
-バチルス・アミロリケファシエンス培養上清を20倍に濃縮し、40倍に希釈して50g/haの濃度のリポペプチドを得た。その相対比率はイツリンファミリー(ここではイツリンA)について36%およびサーファクチンファミリー(ここではサーファクチンA)について24%、およびフェンギシンファミリー(ここではフェンギシンAおよびB)について40%である(様式1)。
-枯草菌培養上清を20倍に濃縮し、40倍に希釈して50g/haの濃度のリポペプチドを得た。その相対比率はイツリンファミリー(ここではミコサブチリン)について70%およびサーファクチンファミリー(ここではサーファクチンA)について30%である(様式2)。
-枯草菌培養上清を20倍に濃縮し、20倍に希釈して100g/haの濃度のリポペプチドを得た。その相対比率はイツリンファミリー(ここではミコサブチリン)について70%およびサーファクチンファミリー(ここではサーファクチンA)について30%である(様式4)。
-同量の蒸留水で処理した対照(対照様式)
【0065】
結果
実験プロトコルは、コムギの地上部分の新鮮なバイオマス(MF植物)および根の新鮮なバイオマス(MF根)の重量に対するバチルス属の菌株の培養上清に由来する異なる組成物の成長促進効果を比較することを可能にする。結果を
図4に示す。統計グループは、地上部分を文字AおよびBで、根の部分を文字aおよびbで示す。
【0066】
-コムギの地上部分の新鮮なバイオマスに対する効果
図4に示す結果は、施用のための最終濃度175mg/Lミコサブチリンおよび75mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物(様式2)の根および葉への施用(R+F)、および施用のための最終濃度350mg/Lミコサブチリンおよび150mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物(様式4)の根への施用(R)が、未施用の様式(対照様式)と比較して地上部の新鮮なバイオマスの有意な増加を可能にすることを示している。
図4に示す結果は、施用のための最終濃度90mg/LイツリンA、100mg/LフェンギシンAおよびB、および60mg/LサーファクチンAを含むバチルス・アミロリケファシエンス上清由来の組成物(様式1)の根のみへの施用(R)または根および葉への施用(R+F)は、新鮮なバイオマスの量が未施用対照よりもはるかに大きいが、対照の新鮮なバイオマスの量も含む2つの統計グループに属することを示している。同様な結果は、様式4の根および葉への施用(R+F)に対しても観察されている。
【0067】
-コムギの根の部分の新鮮なバイオマスに対する効果
図4に示す結果は、施用のための最終濃度175mg/Lミコサブチリンおよび75mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物(様式2)の根および葉への施用(R+F)、および施用のための最終濃度350mg/Lミコサブチリンおよび150mg/LサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物(様式4)の根への施用(R)が、未施用の様式(対照様式)と比較して根の部分の新鮮なバイオマスの有意な増加を可能にすることを示している。
図4に示す結果は、施用のための最終濃度90mg/LイツリンA、100mg/LフェンギシンAおよびB、および60mg/LサーファクチンAを含むバチルス・アミロリケファシエンス上清由来の組成物(様式1)の根および葉への施用(R+F)は、新鮮なバイオマスの量が未処理対照よりもはるかに大きいが、対照の新鮮なバイオマスの量も含む2つの統計グループに属することを示している。同様な結果は、様式2の根(R)への施用、様式4の根および葉(R+F)への施用に対しても観察されている。
【0068】
2.f コムギ中の葉緑素含有量の増加に対するリポペプチド組成物の効果
装置および方法
実験プロトコルは、上述の2.eに記載したものと同一である。
【0069】
結果
実験プロトコルは、コムギの地上部分の葉緑素含有量に対するバチルス属の菌株の培養上清に由来する異なる組成物の成長促進効果を比較することを可能にする。結果を
図5に示す。統計グループは文字a、bおよびcで示す。
【0070】
図5に示す結果は、根および葉(R+F)に施用された最終濃度350mg/Lのミコサブチリンおよび150mg/LのサーファクチンAを含む枯草菌上清由来の組成物(様式4)の施用が、未施用の様式(対照様式)と比較して地上部の葉緑素含有量の有意な増加を可能にすることを示している。
これらの結果は、根(R)または根と葉(R+F)に施用された最終濃度90mg/LのイツリンA、100mg/LのフェンギシンAおよびB、および60mg/LのサーファクチンAを含むバチルス・アミロリケファシエンス上清由来の組成物(様式1)の施用は、地上部分の葉緑素含有量が、未施用様式(対照様式)のそれと比較して有意な増加を可能にすることを示している。
【0071】
実施例3:浸漬/被覆処理後のトマト種子の根の大きさに対する異なるリポペプチド組成物の効果
【0072】
装置と方法
試験は、MONEYMAKER(商標)のトマト種子で行われた。トマト種子は、あらかじめ、75/25v/vのエタノール/水溶液で2分間、その後、5%漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)+トゥイーン(0.1%)に30分間浸漬し、最後に泡が完全に消えるまで水ですすいで殺菌した。
種子は、その後、異なる純度および濃度のリポペプチド溶液に1時間浸漬された。
リポペプチド溶液は濃縮された(方法1bを参照)後で接線濾過により精製された。
溶液は、その後、様式1に対して50および100μM、様式2に対して5、20および100μM、様式3に対して5、20および100μM、様式4に対して5、20および100μMの濃度のリポペプチドを得るために、0.1%のジメチルスロホキシド(DMSO)で希釈された。
種子はペトリ皿に垂直に置かれ、発芽を標準化するために一夜、冷蔵された。その後、箱を16時間の光周期で22℃のオーブンの中に配置した。
蒸留水中の0.1%のDMSO溶液が実験用の対照として使用された。
各様式は、ペトリ皿中で5回繰り返された。
【0073】
試験された組成物を以下に示す。
-99%ミコサブチリンを含む枯草菌培養物の濃縮精製上清(様式1)。
-99%サーファクチンを含む枯草菌培養物の濃縮精製上清(様式2)。
-99%フェンギシンを含む枯草菌培養物の濃縮精製上清(様式3)。
-ミコサブチリン40%とサーファクチン60%の相対比率を有する混合物79%を含む枯草菌培養物の濃縮精製上清(様式4)。
-同量の0.1%DMSO溶液で処理した対照(対照)。
【0074】
根の長さは箱での7日間の培養後に測定された。正規性はコルモゴロフ-スミルノフ(Kolmogorov-Smirnov)検定で検定し、分散の均等性はブラウンフォーサイス(Brown-Forsythe)検定またはクラスカル-ウォリス(Kruskal-Wallis)検定で検定した。次に、変数をP=0.05(95%信頼性水準または5%の危険閾値)で事後のスチューデント-ニューマン-クルーズ(Student-Newman-Keuls)検定で分散分析を行い、有意な効果を強調した。検定はシグマプロット(SigmaPlot)14.0ソフトウエアを用いて行った。統計グループは、aおよびbで示される。
【0075】
結果
実験プロトコルは、トマト種子の根の長さに対する種々の精製リポペプチド組成物の成長促進効果を比較することを可能にする。
図6に示す結果は、枯草菌上清由来の組成物が、様式2を除いてトマト種子の根の成長に対して有意な効果を有することを示している。統計グループは、文字aおよびbにより図に示される。結果に基づいて、根の長さに対する様式1(ミコサブチリン)による処理の有意な効果が、50μM濃度で観察できる(P=0.028)。しかしながら、根の長さに対する20μMおよび100μM濃度の様式2(サーファクチン)の効果は観察されるが、対照からは統計的には異ならない。根の長さに対する成長促進効果は、様式3(フェンギシン)から(P=0.05)、および様式4(ミコサブチリンおよびサーファクチンの混合物)の5μMから観察された(P=0.009)。
【0076】
実施例4:水分ストレス条件下での、トマトの成長、光合成効率および気孔コンダクタンスに対する異なる精製リポペプチド組成物の効果
【0077】
この試験の目的は、水分ストレス条件下での、トマトの成長、光合成効率および気孔コンダクタンスに対する、濃縮および精製の異なる枯草菌上清から得られたリポペプチド組成物の効果を研究することである。研究される組成物は、異なる純度および異なる濃度のリポペプチドを含む。
【0078】
装置および方法
植物材料
試験は、ファンダンゴ(FANDANGO)F1(商標)のトマト種子で行われる。種子は、苗のパッチ(Klasmann Peat)に植えられている。発芽中、湿度は飽和状態に近く保たれる(水はサブ灌漑と散水により供給される)。(3週間後)双葉が広がった段階で、小植物は試験のために土のポット内に移植された。移植の際に、根に付着している泥炭は、植えなおす前に水に浸漬することで取り除かれる。
【0079】
土壌と栽培ポットの準備
試験土壌は、既知の組成を有する砂質の農業用土壌である。試験前に土壌を10mmのふるいにかけて、次に乾燥物質および保水容量が測定される。試験の開始時に、各鉢は、土壌の最大保水容量(CRmax)の70%で給水された3.5kgの生の土壌を含んでいる。最大保水容量の70%に対応する目標重量を得るために、5鉢の平均重量を計算する。水分ストレスがない期間中に、鉢は、植え替え土の水の最大保水容量の70%に相当する設定重量で水やりする。加えて、ハカフォスレッド(Hakaphos red)(商品名)8-12-24の2g/L溶液の初期肥料投入量100mLである。この溶液50mLはまた、水分ストレスの前に提供される。水分ストレスの際に、KNO3およびMgSO4の溶液が加えられる。
【0080】
水分ストレス
3週間の水分ストレス期間中に、鉢は1週間は水を与えられず、その後1週間は最大保水容量の30%で維持され、次の1週間は最大保水容量の50%で維持される。
【0081】
試験環境
温度と日光が半制御された状態を確保するために、試験は栽培用温室内で行われる。
-温度: 日中25℃/夜間20℃
-日長: 日光14時間/夜間10時間
温室の最低の明るさは175W/m2に調整されている。この明るさを下回ると、照明スイッチがONになり、明るさの値を補正する。日よけは500W/m2の明るさを超えると広がり、450W/m2で縮まる。
【0082】
試験された様式
異なる組成物が3回作られる。各施用に対して組成物10mLが鉢ごとに与えられる。最初の施用は植え替え時になされ、これは土壌に対して施用される。別の施用は葉への散布によってなされる。第2の施用は、3週間の培養後および水分ストレスの開始の2日前になされる。第3の施用は、水分ストレスの10日後になされる。対照様式は、同量の蒸留水によって施用される。
試験方法は以下の通りであり、各様式は6鉢の繰り返しを含む。
【0083】
試験された組成物を以下に示す。
-同量の蒸留水で処理した対照(対照)
-濃縮されて純度30%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を75g/haのリポペプチドの割合で施用する(様式1)。
-濃縮されて純度30%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を150g/haのリポペプチドの割合で施用する(様式2)。
-濃縮されて純度99%(リポペプチド質量/全乾燥質量)に精製された枯草菌培養上清であって、その相対比率はミコサブチリン80%とサーファクチン20%である。この組成物を150g/haのリポペプチドの割合で施用する(様式3)。
【0084】
水分ストレスの開始時と終了時の間の植物の高さの増加、水分ストレスの開始時および終了時での光合成効率、および水分ストレスの開始時および終了時での気孔コンダクタンスを測定し、対照様式と比較する。次に変数をP=0.05(95%信頼水準または5%危険閾値)で分散分析およびクラスカル-ウォリス(Kruskal-Wallis)検定にかけて、有意な効果を強調する。試験は、統計グラフィックセンチュリオンXV(STATGRAPHICS Centurion XV)バージョン15.2.06ソフトウエアを用いて行われる。統計グループは、文字a、bおよびcで示される。
【0085】
結果
水分ストレスの開始時と終了時の間のトマトの高さの増加
水分ストレス期間の終了時にトマトの高さを水分ストレス期間前の初期の高さと比較して高さの増加を
図7に示す。様式1は、統計的には対照様式と変わらない(P値=0.432)。より良い成長は様式2で観察されたが、これも統計的には対照様式と変わらない(P値=0.124)。対照様式と比べた有意な増加は、様式3で観察された(P値=0.008)。
【0086】
PAM蛍光測定法による光合成効率
水分ストレスの開始時と終了時での光合成効率が、PAM蛍光測定により測定された。ストレス下では、Φ値(PSII)が減少し、非光化学プロセスが増加し(熱放散およびクロロフィル蛍光)光合成が損なわれる。
図8Aにおいては、Φ値(PSII)の僅かな増加が様式3で観察されるが、この効果は統計的には有意ではない(P値=0.4932)。
図8Bにおいては、Φ値(PSII)の増加が様式2(統計的に有意な効果)および様式3(統計的に有意な効果)(P値=0.0070)が観察されており、これらの様式では対照様式よりもより少ないストレスである。様式1は、対照様式より低いΦ値(PSII)を有する(統計的に有意ではない)。
【0087】
気孔コンダクタンス
気孔コンダクタンス測定はポロメータで行われた。この装置は、葉の気孔コンダクタンスを測定するために用いられる。気孔コンダクタンスは、葉の気孔を通る二酸化炭素(CO
2)または水蒸気の流速の測定値である。気孔は、葉の上下にある小さな孔であり、COと水分とを外気に出し入れする役目を果たす。測定値の単位は、1平方メートル・毎秒あたりのミリモル(mmol/m
2s)である。
水分ストレス開始時での
図9Aにおいては、様式1および様式3は、最大の気孔コンダクタンス値を有しており、気孔のより良い開口部および従ってこれらの様式ではより少ないストレスを示唆しているが、この効果は統計的には有意ではない(P値=0.0544)。水分ストレス終了時での
図9Bにおいては、様式2および様式3は、対照様式および様式1(統計的に有意な効果、P値=0.000)よりも低い値である。
これらの様式2および3は、気孔は閉鎖されており、植物はより良く水を保持し、干ばつに対してより抵抗力がある。
【0088】
これらの試験は、枯草菌濃縮上清中に含まれるリポペプチドの植物活力剤、特に水分ストレスに対する耐性を改善する作用メカニズムの一つを特定することを可能にする。前記上清のリポペプチド純度に無関係に、150g/ha以上から得られる有意な効果も観察された。