(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】(メタ)アクリルポリマーを含む架橋性組成物及び架橋組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20240325BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20240325BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20240325BHJP
C09J 133/10 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C08F2/50
C08L33/06
C09J133/08
C09J133/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022120128
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2019522862の分割
【原出願日】2017-10-17
【審査請求日】2022-08-26
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シジン
(72)【発明者】
【氏名】イエ,ション
(72)【発明者】
【氏名】ヤルッソ,デヴィッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シア,ジアンフイ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-212521(JP,A)
【文献】米国特許第04069123(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/50
C08L 33/06
C09J 133/08
C09J 133/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性組成物であって、
(メタ)アクリレートポリマーと、
以下の式(I)、(II)、又は(III):
【化1】
[式中、
R
1及びR
2は、アルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル置換ヘテロ芳香族基から独立して選択され、R
1及びR
2は一緒になって、最大7個の炭素の環を形成してもよく、
R
3及びR
4は、H、ハロゲン、アルキル基、及びカルボキシル基から独立して選択され、
R
5及びR
6は、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル又は塩素置換ヘテロ芳香族基、及び式(IV)から独立して選択され、
【化2】
式中、
R
7はハロゲンであり、
R
8はHであり、
R
9はヘテロアリールであり、
R
10はHであり、
R
11はハロゲンである]
のうちの1つの可視光吸収化合物と、を含み、
前記(メタ)アクリレートポリマー及びその残留モノマーによってもたらされる炭素-炭素二重結合の量は、前記(メタ)アクリレートポリマー及びその残留モノマーに含まれる全ての炭素-炭素結合の
量の2%以下
である、架橋性組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリレートポリマーを含む感圧性接着剤を含む、請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項3】
前記2%以下の炭素-炭素二重結合は、(メタ)アクリレートポリマー主鎖結合、(メタ)アクリレートポリマーペンダント基結合、又は(メタ)アクリレートモノマー結合のうちの少なくとも1つを含む、請求項1
又は2に記載の架橋性組成物。
【請求項4】
前記可視光吸収化合物は、400nm~500nmの間にピーク吸収を有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートポリマーは、連鎖移動剤、極性モノマー、
少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート
、及び紫外線吸収化合物を含む重合性組成物の反応生成物を含む
か、前記(メタ)アクリレートポリマーは少なくとも1つの紫外線吸収官能基を含むか、又はその両方である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の架橋性組成物を得ることと、
前記架橋性組成物を400nm以上の波長を有する放射線に晒すこととを含む、架橋組成物を製造する方法。
【請求項7】
前記放射線は400nm以上のピーク波長を有する発光ダイオードによってもたらされる、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記架橋性組成物を前記放射線に晒す間に、UV吸収及び可視光透過ポリマー又はガラスの層が、前記架橋性組成物と前記放射線との間に配置される、請求項
6又は7に記載の方法。
【請求項9】
架橋組成物を製造する方法であって、
(メタ)アクリレートポリマーと、紫外線吸収
化合物と、以下の式(I)、(II)、又は(III):
【化3】
[式中、
R
1及びR
2は、アルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル置換ヘテロ芳香族基から独立して選択され、R
1及びR
2は一緒になって最大7個の炭素の環を形成してもよく、
R
3及びR
4は、H、ハロゲン、アルキル基、及びカルボキシル基から独立して選択され、
R
5及びR
6は、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル又は塩素置換ヘテロ芳香族基、及び式(IV)から独立して選択され、
【化4】
式中、
R
7はハロゲンであり、
R
8はHであり、
R
9はヘテロアリールであり、
R
10はHであり、
R
11はハロゲンである]
のうちの1つの可視光吸収化合物を含む架橋性組成物であって、
前記(メタ)アクリレートポリマー及びその残留モノマーによってもたらされる炭素-炭素二重結合の量は、前記(メタ)アクリレートポリマー及びその残留モノマーに含まれる全ての炭素-炭素結合の
量の2%以下である、架橋性組成物を得ることと、
前記架橋性組成物を第1の放射線に晒して、部分的に架橋された架橋性組成物を形成することと、
前記部分的に架橋された架橋性組成物を第2の放射線に晒すこと、を含み、
前記第1の放射線と前記第2の放射線とは異なり、前記第1の放射線及び前記第2の一方は、400nm以上の波長を有し、他方は400nm未満の波長を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、架橋性ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
短い硬化時間及び一液型組成物に対する必要性のため、紫外線(UV)照射を用いた硬化が開発され、それは、インク、シーリング材、及び接着剤などの材料として商業利用に拡大している。しかし、紫外線に対して脆弱である、UV安定化されている、かつ/又は多層構造を含むある材料(例えば光学的応用など)は、UV照射による硬化にあまり適していない。これは、紫外線による硬化/後硬化を必要とする接着剤を用いてこのような材料を接着するときの課題を示している。
【発明の概要】
【0003】
本開示によって架橋性組成物及び架橋組成物の製造方法が提供される。
【0004】
第1の態様では、架橋性組成物が提供される。架橋性組成物は、(メタ)アクリレートポリマーと、以下の式(I)、(II)、又は(III):
【化1】
【0005】
[式中
【0006】
R1及びR2は、アルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル置換ヘテロ芳香族基から独立して選択され、R1及びR2は一緒になって、最大7個の炭素の環を形成してもよく、
【0007】
R3及びR4は、H、ハロゲン、アルキル基、及びカルボキシル基から独立して選択され、
【0008】
R
5及びR
6は、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル又は塩素置換ヘテロ芳香族基、及び式(IV)から独立して選択され、
【化2】
【0009】
式中
【0010】
R7はハロゲンであり、
【0011】
R8はHであり、
【0012】
R9はヘテロアリールであり、
【0013】
R10はHであり、
【0014】
R11はハロゲンである]
のうちの1つの可視光吸収化合物と、を含み、
【0015】
架橋性組成物中の任意の炭素-炭素結合の2%以下は二重結合である。
【0016】
第2の態様では、架橋組成物の製造方法が提供される。本方法は、第1の態様による架橋性組成物を得ることと、架橋性組成物を400nm以上の波長を有する放射線に晒すこととを含む。
【0017】
第3の態様では、架橋組成物の別の製造方法が提供される。本方法は、第1の態様による(メタ)アクリレートポリマーと、紫外線吸収架橋剤化合物と、式(I)、(II)、又は(III)のうちの1つの可視光吸収化合物を含む架橋性組成物を得ることであって、架橋性組成物中の任意の炭素-炭素結合の2%以下が二重結合である、架橋性組成物を得ることを含む。本方法は更に、架橋性組成物を第1の放射線に晒して、部分的に架橋された架橋性組成物を形成することと、部分的に架橋された架橋性組成物を第2の放射線に晒すこと、を含む。第1の放射線と第2の放射線とは異なっている。第1の放射線及び第2の一方は、400nm以上の波長を有し、他方は400nm未満の波長を有する。
【0018】
本開示の特徴及び利点は、詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を考慮することにより更に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
用語解説
【0020】
本明細書で使用する場合、
【0021】
「(メタ)アクリレート」又は「アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの組み合わせを指す略記であり、「(メタ)アクリルの」又は「アクリルの」は、アクリルの、メタクリルの、又はこれらの組み合わせを指す略記であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル、メタクリロイル、又はこれらの組み合わせを指す略記である。
【0022】
「アルキル」は、直鎖、分枝鎖、及びシクロアルキル基を含み、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を含む。特に指示がない限り、アルキル基は、典型的には1~20個の炭素原子を含有する。本明細書で使用される「アルキル」の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、n-オクチル、n-ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル及びノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。別途記載のない限り、アルキル基は、一価であっても多価であってもよく、すなわち、一価アルキルであっても多価アルキレンであってもよい。
【0023】
「ヘテロアルキル」は、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方と共にS、O及びNから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子を有する直鎖、分枝鎖、及び環状アルキル基をいずれも含む。特に指示がない限り、ヘテロアルキル基は、典型的には、1~20個の炭素原子を含有する。本明細書で使用するとき、「ヘテロアルキル」の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、3,6-ジオキサヘプチル、3-(トリメチルシリル)-プロピル、及び4-ジメチルアミノブチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。別途記載のない限り、ヘテロアルキル基は一価であっても多価であってもよく、すなわち、一価ヘテロアルキルであっても多価ヘテロアルキレンであってもよい。
【0024】
「カルボキシル」は-COOH基を意味し、このような基は、その中性(-COOH)形態で存在できるか、又はその脱プロトン(-COO)化体で存在できると理解される。
【0025】
ハロゲンは、F、Cl、Br及びIを含む。
【0026】
「アリール」は、5~18個の環原子を含有する芳香族基であり、任意の縮合環を含有してもよく、これは、飽和であっても、不飽和であっても、芳香族であってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、及びアントラシルが挙げられる。ヘテロアリールは、窒素、酸素、又は硫黄等の1~3個のヘテロ原子を含有するアリールであり、縮合環を含有してもよい。ヘテロアリール基のいくつかの例は、ピリジル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、及びベンゾチアゾリル(benzthiazolyl)である。別
途記載のない限り、アリール基及びヘテロアリール基は、一価又は多価、すなわち、一価アリール又は多価アリーレンであってもよい。
【0027】
「ヘテロ芳香族」は、窒素、酸素、又は硫黄等の1~3個のへテロ原子を含有する芳香族基であり、置換フェニル基といった縮合環を含有してもよい。
【0028】
「アクリロイル」は一般的な意味で用いられ、アクリル酸の誘導体だけなくアミン誘導体及びアルコール誘導体もそれぞれ意味する。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイル基の両方を含み、すなわち、エステル及びアミドの両方を含む。
【0029】
本開示は、可視光開始剤に基づいた架橋技術を提供する。それは、架橋されることになるポリマー中(又はポリマーを調製した後に残存する任意の残留モノマー中)に存在する何らかの不飽和官能性も必要としない。市販されているほとんどの可視光開始剤は、タイプIIの開始剤であり、単分子開裂以外の水素引き抜きを通じてラジカルを発生させる。したがって、エネルギーをあまり必要としない。それらはアクリレート及びメタクリレートモノマーをフリーラジカル重合するのに用いることができ、一般的に、アミン及びヨードニウム塩共開始剤などのパートナーが必要である。架橋剤として、このような可視光開始剤を用いて、ポリマー(例えば、感圧性接着剤(PSA)ポリマー)を架橋できることは、予想外の発見であった。理論に束縛されるものではないが、これらの開始剤はポリマー主鎖からの可視光水素引き抜きによってトリガーされ、そして開始剤で架橋する、ということが仮定される。
【0030】
第1の態様では、架橋性組成物が提供される。架橋性組成物は、(メタ)アクリレートポリマーと、以下の式(I)、(II)、又は(III):
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
[式中
【0035】
R1及びR2は、アルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル置換ヘテロ芳香族基から独立して選択され、R1及びR2は一緒になって、最大7個の炭素の環を形成してもよく、
【0036】
R3及びR4は、H、ハロゲン、アルキル基、及びカルボキシル基から独立して選択され、
【0037】
R5及びR6は、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル又は塩素置換ヘテロ芳香族基、及び式(IV)から独立して選択され、
【0038】
【0039】
式中、R7はハロゲンであり、
【0040】
R8はHであり、
【0041】
R9はヘテロアリールであり、
【0042】
R10はHであり、
【0043】
R11はハロゲンである]
【0044】
のうちの1つの可視光吸収化合物と、を含み、架橋性組成物中の任意の炭素-炭素結合の2%以下は二重結合である。
【0045】
第2の態様では、架橋組成物の製造方法が提供される。本方法は、第1の態様による架橋性組成物を得ることと、架橋性組成物を400nm以上の波長を有する放射線に晒すこととを含む。
【0046】
下記の開示は、第1の態様及び第2の態様の両方に関する。
【0047】
多くの実施形態において、架橋性組成物は感圧性接着剤(PSA)及び/又はホットメルト接着剤として有用である。したがって、架橋性組成物は(メタ)アクリレートポリマーを含む感圧性接着剤を任意に含む。感圧テープ協議会(Pressure-Sensitive Tape Council)によると、感圧性接着剤(PSA)は以下に挙げられる特性を有することが知られている。すなわち、(1)アグレッシブで永続的な粘着性、(2)指圧以下での接着性、(3)被着体への充分な保持力及び(4)被着体からきれいに除去するのに十分な凝集力が挙げられる。PSAとして良好に機能することが判明している材料としては、必要な粘弾性特性を呈し、粘着、剥離接着性及び剪断保持力の所望のバランスをもたらすように設計及び配合されたポリマーが挙げられる。PSAは、室温(例えば、20℃)で通常の粘着性があることを特徴とする。PSAは。それらが表面に粘着又は接着するという理由だけで、組成物を包含しない。これらの要求は一般的に、A.V.Pocius in Adhesion and Adhesives Technology:An Introduction,2nd Ed.,Hanser Gardner Publication,Cincinnati,OH,2002.に記載されているように、粘着性、接着性(剥離強度)、及び凝集性(剪断保持力)を個別に測定するようにデザインされている試験によって評価される。これらの測定値は総合的に、PSAの特徴付けに使用されることが多い特性のバランスを構成する。
【0048】
(メタ)アクリレートポリマーを調製する方法は特に限定されない。(メタ)アクリレートポリマーは、当業者に知られているように、溶液重合、エマルション重合、懸濁重合、又はバルク重合によって形成されてもよい。したがって、重合性組成物から(メタ)アクリレートポリマーを重合する典型的な開始方法は、紫外線開始反応及び熱開始反応の(メタ)アクリレートポリマーの重合を含む。(メタ)アクリレートポリマーの重合がある量のポリマーの架橋をもたらすこと、又はそれが(例えば熱的及び/又は光化学的に)ある程度まで意図的に架橋されることが可能である。したがって、架橋性組成物のいくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーが部分的に架橋される。他の実施形態では、架橋性組成物中の(メタ)アクリレートポリマーは架橋されていない。
【0049】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、連鎖移動剤、極性モノマー、及び少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の反応生成物を含む。好適かつ代表的な連鎖移動剤、極性モノマー、及びアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、それぞれ下記で詳細に説明する。
【0050】
前述したように、本開示の少なくともある実施形態による可視光開始剤は、ポリマーが架橋を受けるためにポリマー中に存在する何らかの不飽和官能性を必要としない。かなりの少量のポリマーは、炭素-炭素二重結合(例えばエチレン性不飽和結合など)が含んでもよく、これは重合性組成物の不完全な重合に起因することが多い。したがって、炭素-炭素二重結合は、任意の残留モノマーと組み合わせた、(メタ)アクリレートポリマーによってもたらされてもよい。例えば、通常、2%以下の炭素-炭素二重結合は、(メタ)アクリレートポリマー主鎖結合、(メタ)アクリレートポリマーペンダント基結合、又は(メタ)アクリレートモノマー結合のうちの少なくとも1つを含む。(メタ)アクリレートポリマー、架橋性組成物、又は架橋組成物の炭素-炭素二重結合の量は、分析技術である1H-NMR分光法、13C-NMR分光法、又は赤外分光法、最も好ましくは、1H-NMR分光法を用いて容易に測定される。
【0051】
可視光の利用は、高い光透過性、安全性、及び低コストといった様々な利点をもたらす。より詳細には、高い光透過性によって、半透明から不透明材料への接着剤と樹脂と混合したフィラーを使用することができる。より短い波長を有する光と比べて、可視光の長波長のため、可視光はこのような材料により深く浸透する。安全性に関して、より短い波長(例えばUV照射など)に晒されることによって引き起こされうる皮膚への悪影響と異なり、可視光は人体の皮膚に対して安全である。更に、可視光照射の使用は安価であり、容易に市販のものを利用することができる。好適な可視光照射源は何年も利用することができ、それはハロゲンランプ、レーザーダイオード、水銀ランプ、エキシマランプ、及び可視光発光ダイオード(LED)を含む。ハロゲンランプ及び水銀ランプと比べて、LED可視光照射源がはるかに狭い波長範囲で可視光を発生させることができるので、それらが特に適している。ある実施形態では、放射線は、発光ダイオード、水銀ランプ、エキシマランプ、又はこれらの組み合わせによってもたらされる。
【0052】
可視光照射の実施により、架橋性組成物を放射線に晒す間に、架橋性組成物と放射線との間に配置されるUV吸収(更に、可視光透過)ポリマー又はガラスの層を更に使用することができる。例えば、UV吸収及び可視光透過ポリマーは、ポリエチレン及びそのコポリマーといったポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、又はポリカーボネートを含むことができるが、これに限定されるものではない。可視光照射をポリマー又はガラスの中を通過させる機能は、特に多層構造中に存在するポリマーを架橋するときに、都合のよいものになりうる。
【0053】
ある紫外線放射源は、いくつかの可視光照射を含む放射スペクトルを有し、本開示の架橋性組成物の少なくともある実施形態を架橋するのに有用でありうる。しかし、このような可視光照射の強度が低いため、所望の量の架橋を実現するために必要とされる時間が大きくかかることがあることに留意されたい。いくつかの実施形態では、可視光は、400ナノメートル(nm)以上、420nm以上、430nm以上の出力波長、かつ560nm以下、540nm以下、520nm以下、又は500nm以下の出力波長を有する放射線源によってもたらされる。別の言い方をすれば、可視光は、400nm~560nm、400nm~500nm、又は430nm~500nmの範囲の出力波長を有する放射線源によってもたらされてもよい。
【0054】
ある可視光吸収化合物の実施形態では、化合物は式(I):
【0055】
【0056】
[式中、R1及びR2は、アルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル置換ヘテロ芳香族基から独立して選択され、R1及びR2は、一緒になって最大7個の炭素の環を形成してもよい]のものである。任意に、R1及びR2は、アルキル基及びフェニル基から独立して選択され、R1及びR2は、一緒になって最大7個の炭素の環を形成してもよい。式(I)に包含される好適な可視光吸収化合物の例としては、例えばカンファーキノン、フェナントレンキノン、及びベンジルが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
ある可視光吸収化合物の実施形態では、化合物は式(II):
【0058】
【0059】
[式中、R3及びR4は、H、ハロゲン、アルキル基、及びカルボキシル基から独立して選択される]のものである。任意に、R3及びR4はH及びハロゲンから独立して選択される。式(II)に包含される好適な可視光吸収化合物の例としては、2,4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン(例えば、商品名KAYACURE DETXでNippon Kayaku Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)より入手可能)、2,4-ジメチルチオキサントン(例えば、商品名KAYACURE RTXでNippon Kayaku Co.,Ltd.より入手可能)、2,4-ジイソプロピルチオキサントン(例えば、商品名KAYACURE DITXでNippon Kayaku Co.,Ltd.より入手可能)、2-クロロチオキサントン(例えば、商品名KAYACURE CTXでNippon Kayaku Co.,Ltd.より入手可能)、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン(例えば、商品名SPEEDCURE CPTXでLambson Ltd.(West Yorkshire,United Kingdom)より入手可能)、及び1,3-エチルチオキサントンカルボキシレートが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
ある可視光吸収化合物の実施形態では、化合物は式(III):
【0061】
【0062】
[式中、R5及びR6は、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル又は塩素置換ヘテロ芳香族基、及び式(IV)から独立して選択され、
【0063】
【0064】
式中、R7はハロゲンであり、
【0065】
R8はHであり、
【0066】
R9はヘテロアリールであり、
【0067】
R10はHであり、
【0068】
R11はハロゲンである]のものである。任意に、R5及びR6はそれぞれ式(IV)のものである。式(III)に包含される好適な可視光吸収化合物としては、例えば、ビス(h5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]-チタン(例えば、商品名IRGACURE 784でBASF Corporation(Florham Park,NJ)より入手可能)が挙げられる。
【0069】
可視光吸収化合物は、可視光照射に晒されると、少なくとも1種の反応種(例えば、フリーラジカル、カチオンなど)を発生させることができる。有利な点として、多くの実施形態において、可視光吸収化合物はポリマーの架橋を開始することができる。いくつかの実施形態では、可視光吸収化合物は可視光活性化光開始剤を含む。可視光活性化光開始剤もまた、可視光照射に晒されると、少なくとも1種の反応種を発生させることができる(かつ、架橋を開始する化)。例えば、タイプI及びタイプIIの光開始剤について、以下の実施形態で説明する。選択した実施形態では、可視光吸収化合物は、カンファーキノン、フェナントレンキノン、又は2-クロロチオキサントンを含む。通常、可視光吸収化合物は、(メタ)アクリレートポリマーの全乾燥重量を基準として5部未満の量で存在する。より具体的には、可視光吸収化合物は、使用される100部の全(メタ)アクリレートポリマーを基準として、0.01~5部、好ましくは0.05~1部の量で存在してもよい。ある実施形態では、可視光吸収化合物は、400nm~500nmの間にピーク吸収を有する。
【0070】
重合性組成物に好適なアルキル(メタ)アクリレートモノマーの例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、teri-ブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
好適な非酸性官能性極性モノマーの代表的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリルアミド、モノ-又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含むポリ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリレート、ビニルメチルエーテルを含むアルキルビニルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい極性モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びN-ビニルピロリリジノンからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0072】
好適な酸性官能性極性モノマーの代表的な例としては、酸官能基はカルボン酸などの酸そのものか、又は一部がアルカリ金属カルボン酸塩などの塩であってもよいモノマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。有用な酸性官能性極性モノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和ホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されたものが含まれるが、これらに限定されるものではない。このような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0073】
入手が容易であることから、酸性官能性極性モノマーは(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸から選択されるのが一般的である。更により強い酸が要求される場合は、エチレン性不飽和スルホン酸及びエチレン性不飽和ホスホン酸を含む酸極性モノマー使用してもよい。酸性官能性極性モノマーは一般的に、100重量部の全モノマーを基準として、1~15重量部、好ましくは1~10重量部の量で使用される。
【0074】
モノマー混合物には、50~99重量部のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、1~50重量部の極性モノマー(酸性官能性極性モノマーを含む)とが含まれていてもよく、ここでのモノマーの合計は100重量部となる。
【0075】
更に、重合性組成物は、生じた(メタ)アクリレートポリマーの分子量を制御するために、連鎖移動剤を任意に含んでもよい。有用な連鎖移動剤の例としては、四臭化炭素、アルコール、メルカプタン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。存在する場合、好ましい連鎖移動剤は、(例えば、Evans Chemetics LP(Teaneck,NJ)より市販)イソオクチルメルカプトアセテート及び四臭化炭素である。重合性組成物は、100重量部の全モノマー混合物を基準として、最大約0.5重量部の連鎖移動剤、典型的には約0.01~約0.5重量部、もし用いるならば、好ましくは約0.05重量部~約0.2重量部の連鎖移動剤を更に含んでもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、重合性組成物は1つ以上の紫外線吸収化合物を更に含む。同様に、結果として得られる(メタ)アクリレートポリマーは、任意に、重合中にポリマーに組み込まれた少なくとも1つの紫外線吸収官能基を含む。1つ以上の紫外線吸収化合物は、紫外線に対する安定剤として、紫外線架橋剤として、又はその両方として機能することができる。更に、紫外線吸収官能基は、以後の紫外線から、ポリマーの安定剤として機能を果たすことができる。
【0077】
任意の紫外線吸収化合物としては、ベンゾトリアゾール、ベンザトリアジン、ベンゾフェノン、又はこれらの組み合わせを含んでもよく、又は米国特許第6,613,819号(Johnson et al.)、第6,974,850号(McMann et al.)、及び第7,153,588号(McMann et al.)に記載されているもののいずれかであってもよい。それらが含む全てについて、参照により本明細書に全て組み込まれる。いくつかの特定の例としては、CGL 139、CGL 777、及びTINUVIN 327、460、479、480、777、900、及び928が含まれ、全てBASF Corporation(Florham Park,NJ)製である。紫外線吸収化合物はまた、UV吸収剤の組み合わせたもの、例えば、CGL 479とCGL 777と組み合わせたものを含んでいてもよい。
【0078】
ある実施形態では、紫外線吸収化合物又は官能基は、ベンゾフェノン又はベンゾフェノン誘導体を含む。多官能性ベンゾフェノンの具体例としては、1,5-ビス(4-ベンゾイルフェノキシ)ペンタン、1,9-ビス(4-ベンゾイルフェノキシ)ノナン、及び1,11-ビス(4-ベンゾイルフェノキシ)ウンデカンが挙げられる。単官能性ベンゾフェノンの具体例としては、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-(2-ヒドロキシエチルチオ)-ベンゾフェノン、及び4-(4-トリルチオ)-ベンゾフェノンが挙げられる。共重合性ベンゾフェノンの具体例としては、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン(ABP)、パラ-アクリロキシエトキシベンゾフェノン(AEBP)、パラ-N-(メチルアクリロキシエチル)-カルバモイルエトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシジエトキシ-4-クロロベンゾフェノン、パラ-アクリロキシアセトフェノン、及びオルト-アクリルアミドアセトフェノンが挙げられる。他の有用なベンゾフェノン発色団は米国特許第6,235,922号(Heilmann et al)に記載されている。
【0079】
更に有用な紫外線吸収化合物としては、米国特許第9,260,638号(Krepski et al)に記載されているトリアジン架橋結合剤といったトリアジンが挙げられる。
【0080】
安定剤として使用するのに好適な紫外線吸収化合物の典型的な例としては、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-α-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾチアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2(-4,6-ジフェニル-1-3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ-フェノール、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0081】
安定剤として使用するのに好適な更なる紫外線吸収化合物としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)が挙げられる。HALSは、吸収剤ではなく光安定剤であり、ニトロキシルラジカルの生産によってラジカルを除去する。いくつかの典型的なHALSには、例えば、環状アミン、第二級、第三級、アセチル化、N-ヒドロカルビルオキシ置換、ヒドロキシ置換N-ヒドロカルビルオキシ置換、又は他の置換環状アミンが挙げられる。そして、それは、一般的にはアミン官能基に隣接する炭素原子上の脂肪族基の置換の結果、立体障害の程度によって更に特徴付けられる。例えば、HALSは2,2,6,6,-テトラメチルピペリジンの誘導体であってもよい。様々な好適であるHALSは、TINUVIN 152、123、144、及び292の商品名でBASF Corporation(Florham Park,NJ)より市販されている。
【0082】
ある実施形態では、溶液重合を用いて(メタ)アクリレートポリマーを形成したときなどに、架橋性組成物は溶媒を更に含む。好適な溶媒としては、例えば、メタノール、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアセテート、エチルアセテート、トルエン、キシレン、及びエチレングリコールアルキルエーテルが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの溶媒は単独で、又はこれらの混合物として使用してもよい。
【0083】
架橋性組成物として、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル、ポリカーボネート)、顔料、染料、フィラー、及びUV安定剤(例えば酸化防止剤)といった任意の成分を更に挙げることができる。
【0084】
場合によっては、多段階のプロセスで架橋性組成物を架橋することが望ましい(例えば、製造業者からの輸送中など、組成物がある形状を維持する必要があり、その後、それが生成物に取り入れられる必要がある際)。したがって、放射線を用いて架橋性組成物を部分的に架橋することができ、その後に、放射線を用いて更に架橋することができる。より詳しくは、第3の態様では、架橋組成物の製造方法が提供される。この方法は、
【0085】
(メタ)アクリレートポリマーと、紫外線吸収架橋剤化合物と、以下の式(I)、(II)、又は(III):
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
[式中、
【0090】
R1及びR2は、アルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル置換ヘテロ芳香族基から独立して選択され、R1及びR2は一緒になって最大7個の炭素の環を形成してもよく、
【0091】
R3及びR4は、H、ハロゲン、アルキル基、及びカルボキシル基から独立して選択され、
【0092】
R5及びR6は、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル又は塩素置換ヘテロ芳香族基、及び式(IV)から独立して選択され、
【0093】
【0094】
式中、
【0095】
R7はハロゲンであり、
【0096】
R8はHであり、
【0097】
R9はヘテロアリールであり、
【0098】
R10はHであり、
【0099】
R11はハロゲンである]
【0100】
のうちの1つの可視光吸収化合物を含む架橋性組成物であって、架橋性組成物中の任意の炭素-炭素結合の2%以下は二重結合である、架橋性組成物を得ることと、
【0101】
架橋性組成物を第1の放射線に晒して、部分的に架橋された架橋性組成物を形成することと、
【0102】
部分的に架橋された架橋性組成物を第2の放射線に晒すこと、を含み、
【0103】
第1の放射線と第2の放射線とは異なり、第1の放射線及び第2の一方が、400nm以上の波長を有し、他方が400nm未満の波長を有する、方法である。
【0104】
可視光吸収化合物、(メタ)アクリレートポリマー、架橋性組成物の他の任意の成分、放射線源、及び400nm以上の波長を有する放射線はそれぞれ、第1及び第2の態様に関して上記で詳細に記載したとおりである。また、紫外線吸収架橋剤化合物は通常、第1及び第2の態様に関して前述した紫外線吸収化合物のうちの1つ以上を含む。ある実施形態では、紫外線吸収架橋剤化合物は、ベンゾトリアゾール、ベンザトリアジン、ベンゾフェノン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、400nm未満の波長を有する放射線は、200nm以上、250nm以上、275nm以上、300nm以上、又は325nm以上、及び399nm以下、395nm以下、390nm以下、380nm以下、370nm以下、又は360nm以下の波長を含む。言い換えれば、400nm未満の波長を有する放射線は、通常、200nm~395nmの間にピーク波長を有する放射線、又は300nm~395nmの間にピーク波長を有する放射線を含む。
【0106】
ある実施形態では、第1の放射線は400nm未満の波長を有し、第2の放射線は400nm以上の波長を有するが、他の実施形態では、第1の放射線は400nm以上の波長を有し、第2の放射線は400nm未満の波長を有する。上記で説明したように、任意に、架橋性組成物を400nm以上の波長有する放射線に晒す間に、UV吸収及び可視光透過ガラス又はポリマーの層が、架橋性組成物と放射線との間に配置される。
【0107】
実施形態
【0108】
実施形態1は、架橋性組成物であって、(メタ)アクリレートポリマーと、以下の式(I)、(II)、又は(III):
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
[式中、
【0113】
R1及びR2は、アルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル置換ヘテロ芳香族基から独立して選択され、R1及びR2は一緒になって、最大7個の炭素の環を形成してもよく、
【0114】
R3及びR4は、H、ハロゲン、アルキル基、及びカルボキシル基から独立して選択され、
【0115】
R5及びR6は、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル又は塩素置換ヘテロ芳香族基、及び式(IV)から独立して選択され、
【0116】
【0117】
式中、R7はハロゲンであり、R8はHであり、R9はヘテロアリールであり、R10はHであり、R11はハロゲンである]のうちの1つの可視光吸収化合物と、を含み、架橋性組成物中の炭素-炭素結合の2%以下が二重結合である、架橋性組成物である。
【0118】
実施形態2は、(メタ)アクリレートポリマーを含む感圧性接着剤を含む、実施形態1に記載の架橋性組成物である。
【0119】
実施形態3は、(メタ)アクリレートポリマーが部分的に架橋されている、実施形態1又は実施形態2に記載の架橋性組成物である。
【0120】
実施形態4は、(メタ)アクリレートポリマーが架橋されていない、実施形態1又は実施形態2に記載の架橋性組成物である。
【0121】
実施形態5は、溶媒を更に含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の架橋性組成物である。
【0122】
実施形態6は、2%以下のエチレン性不飽和結合が、(メタ)アクリレートポリマー主鎖結合、(メタ)アクリレートポリマーペンダント基結合、又は(メタ)アクリレートモノマー結合のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の架橋性組成物である。
【0123】
実施形態7は、可視光吸収化合物が400nm~500nmの間にピーク吸収を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の架橋性組成物である。
【0124】
実施形態8は、R1及びR2がアルキル基及びフェニル基から独立して選択され、R1及びR2は、一緒になって、最大7個の炭素の環を形成してもよい、実施形態1~7のいずれか1つに記載の架橋性組成物である。
【0125】
実施形態9は、R3及びR4がH及びハロゲンから独立して選択される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の架橋性組成物である。
【0126】
実施形態10は、R5及びR6がそれぞれ式(IV)のものである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の架橋性組成物である。
【0127】
実施形態11は、可視光吸収化合物がカンファーキノン、フェナントレンキノン、又は2-クロロチオキサントンを含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の架橋性組成物である。
【0128】
実施形態12は、(メタ)アクリレートポリマーが、連鎖移動剤、極性モノマー、及び少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の反応生成物を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の架橋性組成物である。
【0129】
実施形態13は、重合性組成物が紫外線吸収化合物を更に含む、実施形態12に記載の架橋性組成物である。
【0130】
実施形態14は、(メタ)アクリレートポリマーが少なくとも1つの紫外線吸収官能基を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の架橋性組成物である。
【0131】
実施形態15は、紫外線吸収化合物又は官能基がベンゾフェノン又はベンゾフェノン誘導体を含む、実施形態13又は実施形態14に記載の架橋性組成物である。
【0132】
実施形態16は、架橋組成物を製造する方法であって、方法は請求項1に記載の架橋性組成物を得ることと、架橋性組成物を400nm以上の波長を有する放射線に晒すこととを含む。
【0133】
実施形態17は、(メタ)アクリレートポリマーが溶液重合、エマルション重合、懸濁重合、又はバルク重合によって形成される、実施形態16に記載の方法である。
【0134】
実施形態18は、紫外線開始反応の(メタ)アクリレートポリマーの重合を含む、実施形態16又は実施形態17に記載の方法である。
【0135】
実施形態19は、熱開始反応の(メタ)アクリレートポリマーの重合を含む、実施形態16又は実施形態17に記載の方法である。
【0136】
実施形態20は、放射線が発光ダイオード、水銀ランプ、エキシマランプ、又はこれらの組み合わせによってもたらされる、実施形態16~19のいずれか1つに記載の方法である。
【0137】
実施形態21は、放射線が400nm以上のピーク波長を有する発光ダイオードによってもたらされる、実施形態20に記載の方法である。
【0138】
実施形態22は、架橋性組成物を放射線に晒す間に、UV吸収及び可視光透過ポリマーの層が、架橋性組成物と放射線との間に配置される、実施形態16~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0139】
実施形態23は、UV吸収及び可視光透過ポリマーがポリエチレンテレフタレートを含む、実施形態22に記載の方法である。
【0140】
実施形態24は、架橋性組成物が(メタ)アクリレートポリマーを含む感圧性接着剤を含む、実施形態16~23のいずれか1つに記載の方法である。
【0141】
実施形態25は、(メタ)アクリレートポリマーが部分的に架橋されている、実施形態16~24のいずれか1つに記載の方法である。
【0142】
実施形態26は、(メタ)アクリレートポリマーが架橋されていない、実施形態16~24のいずれか1つに記載の方法である。
【0143】
実施形態27は、架橋性組成物が溶媒を更に含む、実施形態16~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0144】
実施形態28は、二重結合である、架橋性組成物中の2%以下の炭素-炭素結合が、(メタ)アクリレートポリマー主鎖結合、(メタ)アクリレートポリマーペンダント基結合、又は(メタ)アクリレートモノマー結合のうちの少なくとも1つを含む、実施形態16~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0145】
実施形態29は、可視光吸収化合物が400nm~500nmの間にピーク吸収を有する、実施形態16~28のいずれか1つに記載の方法である。
【0146】
実施形態30は、R1及びR2がアルキル基及びフェニル基から独立して選択され、R1及びR2は、一緒になって、最大7個の炭素の環を形成してもよい、実施形態16~29のいずれか1つに記載の方法である。
【0147】
実施形態31は、R3及びR4がH及びハロゲンから独立して選択される、実施形態16~30のいずれか1つに記載の方法である。
【0148】
実施形態32は、R5及びR6がそれぞれ式(IV)のものである、実施形態16~31のいずれか1つに記載の方法である。
【0149】
実施形態33は、可視光吸収化合物がカンファーキノン、フェナントレンキノン、又は2-クロロチオキサントンを含む、実施形態16~32のいずれか1つに記載の方法である。
【0150】
実施形態34は、(メタ)アクリレートポリマーが、連鎖移動剤、極性モノマー、及び少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の反応生成物を含む、実施形態16~33のいずれか1つに記載の方法である。
【0151】
実施形態35は、重合性組成物が紫外線吸収化合物を更に含む、実施形態34に記載の方法である。
【0152】
実施形態36は、(メタ)アクリレートポリマーが少なくとも1つの紫外線吸収官能基を含む、実施形態16~35のいずれか1つに記載の方法である。
【0153】
実施形態37は、紫外線吸収化合物又は官能基がベンゾフェノン又はベンゾフェノン誘導体を含む、実施形態35又は実施形態36に記載の方法である。
【0154】
実施形態38は、架橋組成物を製造する方法であって、
【0155】
(メタ)アクリレートポリマーと、紫外線吸収架橋剤化合物と、以下の(I)、(II)、又は(III):
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
[式中、
【0160】
R1及びR2は、アルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル置換ヘテロ芳香族基から独立して選択され、R1及びR2は一緒になって、最大7個の炭素の環を形成してもよく、
【0161】
R3及びR4は、H、ハロゲン、アルキル基、及びカルボキシル基から独立して選択され、
【0162】
R5及びR6は、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ヘテロ芳香族基、アルキル又は塩素置換ヘテロ芳香族基及び式(IV)から独立して選択され、
【0163】
【0164】
式中、R7はハロゲンであり、R8はHであり、R9はヘテロアリールであり、R10はHであり、R11はハロゲンである]のうちの1つの可視光吸収化合物を含む架橋性組成物であって、架橋性組成物中の炭素-炭素結合の2%以下が二重結合である、架橋性組成物を得ることと、
【0165】
架橋性組成物を第1の放射線に晒して、部分的に架橋された架橋性組成物を形成することと、
【0166】
部分的に架橋された架橋性組成物を第2の放射線に晒すこと、を含み、第1の放射線と第2の放射線とは異なり、第1の放射線及び第2の一方が、400nm以上の波長を有し、他方が400nm未満であるの波長を有する、方法である。
【0167】
実施形態39は、紫外線吸収架橋剤化合物が、ベンゾトリアゾール、ベンザトリアジン、ベンゾフェノン、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態38に記載の方法である。
【0168】
実施形態40は、400nm未満の波長を有する放射線が、200nm~395nmの間にピーク波長を有する放射線を含む、実施形態38又は実施形態39に記載の方法である。
【0169】
実施形態41は、400nm未満の波長を有する放射線が、300nm~395nmの間にピーク波長を有する放射線を含む、実施形態38~40のいずれか1つに記載の方法である。
【0170】
実施形態42は、第1の放射線が400nm未満の波長を有する、実施形態38~41のいずれか1つに記載の方法である。
【0171】
実施形態43は、第1の放射線が400nm以上の波長を有する、実施形態38~41のいずれか1つに記載の方法である。
【0172】
実施形態44は、第2の放射線が400nm以上の波長を有する、実施形態38~42のいずれか1つに記載の方法である。
【0173】
実施形態45は、第2の放射線が400nm未満の波長を有する、実施形態38~41又は43のいずれか1つに記載の方法である。
【0174】
実施形態46は、第1の放射線、第2の放射線、又は両方が、発光ダイオード、水銀ランプ、エキシマランプ、又はこれらの組み合わせによってもたらされる、実施形態38~45のいずれか1つに記載の方法である。
【0175】
実施形態47は、第1の放射線、第2の放射線、又は両方が、400nm以上のピーク波長を有する発光ダイオードによってもたらされる、実施形態46に記載の方法である。
【0176】
実施形態48は、架橋性組成物を第1の放射線に晒す間に、UV吸収及び可視光透過ポリマー又はガラスの層が、架橋性組成物と放射線との間に配置される、実施形態38~47のいずれか1つに記載の方法である。
【0177】
実施形態49は、部分的に架橋された架橋性組成物を第2の放射線に晒す間に、UV吸収及び可視光透過ポリマー又はガラスの層が、架橋性組成物と放射線との間に配置される、実施形態38~47のいずれか1つに記載の方法である。
【0178】
実施形態50は、UV吸収及び可視光透過ポリマーがポリエチレンテレフタレートを含む、実施形態48又は実施形態49に記載の方法である。
【0179】
実施形態51は、架橋性組成物が(メタ)アクリレートポリマーを含む感圧性接着剤を含む、実施形態38~50のいずれか1つに記載の方法である。
【0180】
実施形態52は、架橋性組成物が溶媒を更に含む、実施形態38~51のいずれか1つに記載の方法である。
【0181】
実施形態53は、二重結合である、架橋性組成物中の2%以下の炭素-炭素結合が、(メタ)アクリレートポリマー主鎖結合、(メタ)アクリレートポリマーペンダント基結合、又は(メタ)アクリレートモノマー結合のうちの少なくとも1つを含む、実施形態38~52のいずれか1つに記載の方法である。
【0182】
実施形態54は、可視光吸収化合物が400nm~500nmの間にピーク吸収を有する、実施形態38~53のいずれか1つに記載の方法である。
【0183】
実施形態55は、R1及びR2がアルキル基及びフェニル基から独立して選択され、R1及びR2は、一緒になって、最大7個の炭素の環を形成してもよい、実施形態38~54のいずれか1つに記載の方法である。
【0184】
実施形態56は、R3及びR4がH及びハロゲンから独立して選択される、実施形態38~55のいずれか1つに記載の方法である。
【0185】
実施形態57は、R5及びR6がそれぞれ式(IV)のものである、実施形態38~56のいずれか1つに記載の方法である。
【0186】
実施形態58は、可視光吸収化合物がカンファーキノン、フェナントレンキノン、又は2-クロロチオキサントンを含む、実施形態38~57のいずれか1つに記載の方法である。
【0187】
実施形態59は、(メタ)アクリレートポリマーが、連鎖移動剤、極性モノマー、及び少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の反応生成物を含む、実施形態38~58のいずれか1つに記載の方法である。
[実施例]
【表1】
【0188】
試験方法
剪断接着強度
下記のASTM名称:D 3654/D 3654M-06:「感圧テープの剪断接着力(Shear Adhesion of Pressure-Sensitive Tapes)」に従って、0.5インチ(1.27センチメートル(cm))幅のストリップの接着剤を(4.5ポンド(2.04キログラム(kg))のローラを、各方向に2回用いて)ステンレス鋼パネル上に積層して、パネルの0.5インチ×1.0インチ(1.27cm×2.54cm)の領域を覆った。15分間の放置時間後に、試験サンプルを、制御された温度及び湿度の部屋(23℃及び50%相対湿度に)内の自動計時装置(automated timing apparatus)上に垂直に配置して、静荷重として1キログラムの重りを適用した。損傷までの時間を測定して、分単位で記録した。目標値は10,000分間であった。各試験片に関して、2つのサンプルを測定した。「10000+」という記録時間は、接着剤が10,000分後に損傷しなかったことを示す。サンプルが10,000分未満で損傷した場合、損傷モードは凝集力があった。
【0189】
架橋度
レオロジー解析を行い、照射されたサンプルの架橋度を測定した。-60℃から175℃の温度ランプで、パラレルプレート幾何学的配置(parallel plate geometry)の状態の2枚の8ミリメートル(mm)のステンレス鋼プレートを用いて、1ラジアン/秒の角周波数で、モデルAR2000レオメーター(TA Instrument(New Castle,DE))を振動モードで使用した。データを取得して、レオメーターに備え付けられたTRIOSアプリケーションソフトウェアを用いて分析した。125℃におけるタンデルタ値を架橋度の測定値として扱った。低い値側のタンデルタは大きい架橋度を示し、高い値側のタンデルタは小さい架橋度を示した。
【0190】
アクリルベースポリマー1~3の調製
アクリルベースポリマーを含有するパウチを、一般的にUS5804610の実施例23に記載されているとおりに、下記の表2に示すような組成を用いて調整した。モノマー量は重量%で報告され、他の材料の量は100部モノマー当たりの部(pph)として報告される。イソオクチルアクリレート(IOA)又は2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)のいずれかとのアクリル酸(AA)の既知の化学重合に基づいて、結果として得られるアクリルベースポリマーは、ポリマー主鎖内に又はペンダント基として、何らかの炭素-炭素二重結合も含有しないこともある。更に、この技術による重合は1重量%未満の残留モノマーとなることが知られている。
【0191】
【0192】
積層体の調製
10の加熱ゾーン、25ミリメートルのスクリュー直径、46のL/D(長さ/直径)比、及び300rpmのスクリュー速度を有する二軸押出成形機(TSE)で、アクリルベースポリマー及び、場合によっては、可視光活性化光開始剤のパウチを混合した。1ロット当たり、パージ用に140グラム、コーティング用に140グラムを含む280グラムのサンプルを用いた。全ての材料をTSEのバレル1に供給した。押出機とコーティングダイとの間で、ポリマー融解物は加熱したホース(140℃で)を通してギアポンプ(140℃で)によって計量した。そして、それは押出機とコーティングダイとの間に接合点(140℃で)を形成する。各ポリマー配合物を3分間混合して、シリコーンコーティングしたポリエステルテレフタレート(PET)剥離ライナーの剥離コーティング側上に0.003インチ(76.2マイクロメートル)の厚さでコーティングした。これを剥離ライナー1(RL1)とし、「高剥離」力を有していた。次に、第2の剥離ライナー(RL2)の剥離コーティングがポリマーと接触させるように、片面にシリコーン剥離コーティングを有する0.002インチ(50.8マイクロメートル)の厚さのPETフィルムをポリマー層の晒された面に積層した。RL2はRL1と比べて「低剥離」力を有していた。このようにして、いくつかの可視光活性化光開始剤を含む積層体と、いくつかの可視光活性化光開始剤を含まない積層体を得た。
【0193】
実施例1~4
ポリマー1及び可視光活性化光開始剤CPQを含有する積層体を、積層体にUV又は可視光源を照射することによって調製した。場合によっては、照射前にRL2を取り除いた。RL1及びRL2の両方が存在した場合、サンプルを「被覆面(closed face)」と呼び、RL1のみが存在した場合、サンプルを「開口面(open face)」と呼び、光源を開口面の上方に配置した。
【0194】
250ミリジュール/平方センチメートルの総UVBエネルギーをもたらすために、UV照射に関して、Dバルブを備え付けた、1分当たり50フィート(1分当たり15.24メートル)の速度で操作される、UVチャンバー(Fusion UV Systems,Incorporated(Gaithersburg,MD)製のモデルLIGHT HAMMER 10)を使用した。ポリマー1のABP成分は、UVB光範囲において活性化された。
【0195】
可視光照射に関して、コントローラ電源(Clearstone Technologies,Incorporated(Hopkins,MN)より入手可能な、部品番号CT2000k Two)を備え付けた、ロイヤルブルー高出力LEDランプアレイ(Clearstone Technologies,Incorporated(Hopkins,MN)より入手可能な、440~460ナノメートルの間にピーク波長、183平方センチメートルの照射面積を有する、部品番号AW 240-455F-792)を使用した。照射の波長を420ナノメートル~480ナノメートルの範囲にわたって測定し、ピーク波長が約445ナノメートルに見出された。照射源とサンプルとの間の距離は1インチ(2.54センチメートル)であった。50%の出力で1分間の可視光照射の後に、総エネルギーは、UV POWER PUCK HIGH ENERGY INTEGRATING RADIOMETERのUVVチャネル(EIT Incorporated(Sterling,VA)より入手可能)での測定した時、12ジュール/平方センチメートルであることが分かった。
【0196】
結果として得られる照射されたポリマーを前述の試験方法による剪断接着強度について評価し、結果を下記の表2に示す。
【0197】
比較例1~4
CPQを含有してない比較例1~4を、実施例1~4に記載されるように調製して、剪断接着強度について評価した。
【0198】
【0199】
実施例1及び2に関する剪断強度の結果は、開口面構成を実施した時、UV照射の方がより効果的であったことを示す。これは、用いたポリエステル剥離ライナーフィルムのUV吸収特性に起因する。この同様な効果が比較例1及び2に関して見られる。
【0200】
しかし、可視光照射を実施した時、実施例3及び4で示すように、開放及び被覆面構成の両方は、10,000分間を超える剪断強度を実現することができた。これは、可視光が著しく吸収されずにポリエステル剥離ライナーフィルムを通過し、それによって可視光活性化光開始剤CPQが活性化することができるためである。
【0201】
比較例3及び4に示すように、可視光活性化光開始剤がない場合には、可視光を有する照射は効果的ではなかった。
【0202】
実施例5
ポリマー2とCPQを含有する積層体に、実施例1~4に記載されるように、可視光源で照射した。照射は「被覆面」に行った。結果として得られる照射されたポリマーの架橋度を、前述の試験方法にて評価した。結果を下記の表3に示す。
【0203】
比較例5
CPQを含有してない比較例5を、実施例5に記載されるように調製して、架橋度について評価した。
【0204】
【0205】
表3の結果は、実施例5も比較例5もベースポリマー(ポリマー2)にABPを含有していなかったにもかかわらず、架橋が起こることを示す。これは、可視光吸収光開始剤CPQがそれだけで架橋を生じさせるためである。
【0206】
異なる光吸収のピーク波長を有するいくつかの可視光吸収光開始剤、並びに異なる報告がされている架橋メカニズムを比較した。
【0207】
アセトン中の0.3重量%溶液の光開始剤を用いて、445ナノメートルにおける様々な可視光活性化光開始剤の光吸収を測定して、UV/可視分光光度計を用いて、23℃で200から800ナノメートルまでスキャンした。
【0208】
開始ラジカルが形成されるメカニズムに基づいて、光開始剤を一般的に2つのクラスに分ける。
【0209】
タイプIの光開始剤は、照射の際に単分子結合開裂(unimolecular bond cleavage)を受けて、フリーラジカルを発生させる。
【0210】
タイプIIの光開始剤は、励起状態の光開始剤が第2の分子(共開始剤)と相互に作用する二分子反応を受けて、フリーラジカルを発生させる。
【0211】
これらの光開始剤を含有する照射された積層体に対して、架橋度も測定した。
【0212】
実施例6~9
ポリマー3と様々な可視光活性化光開始剤を含有する積層体に、実施例1~4に記載されるように、可視光源で照射した。照射は「被覆面」に行った。表4に、使用した光開始剤と量を、445ナノメートルでの光吸収、架橋メカニズムのタイプ、及び架橋度のそれぞれの結果とともに示す。
【0213】
比較例6
ポリマー3のみを含有し可視光活性化光開始剤を含有しない積層体に、実施例1~4に記載されるように可視光源で照射した。照射は「被覆面」に行った。照射された積層体の架橋度を、表4に報告する。
【0214】
比較例7
ポリマー3及びI819を含有する積層体に、実施例1~4に記載されるように可視光源で照射した。照射は「被覆面」に行った。使用したI819の量を、445ナノメートルでの光吸収、架橋メカニズムのタイプ、及び架橋度とともに表4に報告する。
【0215】
下記の表4のデータから、光吸収、架橋メカニズム、及び化学構造が、得られた架橋度に全て関与する因子であることが分かる。
【0216】