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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】トップシール用食品容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/42 20060101AFI20240325BHJP
   B65D 1/36 20060101ALI20240325BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20240325BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
B65D1/42
B65D1/36
B65D1/00 110
B65D77/20 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022156987
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000239138
【氏名又は名称】株式会社エフピコ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】籏江 佳吾
(72)【発明者】
【氏名】福元 諒
(72)【発明者】
【氏名】當間 章弘
(72)【発明者】
【氏名】板崎 圭
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-112011(JP,U)
【文献】特許第6975007(JP,B2)
【文献】特開2008-207471(JP,A)
【文献】特開2021-037748(JP,A)
【文献】特開2021-024634(JP,A)
【文献】実開平05-026810(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/42
B65D 1/36
B65D 1/00
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口する平面視矩形状のトップシール用食品容器であって、底部と、底部外縁から上方に延びる壁面部と、該壁面部上端から段差部を経て外方へ膨出する第二壁部と、該第二壁部上端よりトップシール可能な平坦面を持つフランジ部とを具備し、かつ、前記壁面部の相対する位置にある少なくとも2カ所のコーナー部において、前記壁面よりも内容物側から見て外側へ膨出しており、その下端が容器全体の高さの半分以下の位置で前記壁面に接合し、かつ、上端がフランジ根元に接合する膨出部を有し、
前記膨出部の正面視形状は、前記膨出部の下端を頂点とする円弧状乃至U字状であり、
前記膨出部の断面形状は、下から上に向けて拡開する円弧状のスロープ形状であり、
前記膨出部の膨出量は、前記段差部の水平方向幅を超えないように形成されたことを特徴とするトップシール用食品容器。
【請求項2】
前記第二壁部の周方向における前記膨出部が設けられていない箇所に、内側に突出するスタック用リブが形成されている請求項記載のトップシール用食品容器。
【請求項3】
前記膨出部の断面形状の曲率半径は、20mm~50mmであり、
前記膨出部のコーナー部における幅は、平面視の直線長さにおいて20~120mmであり、
前記膨出部下端から前記第二壁部までの垂直長さは、10~30mmであり、
前記壁面部の下端から前記膨出部下端までの垂直長さは、5~20mmである、請求項1又は2記載のトップシール用食品容器。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤を含有する樹脂組成物から構成される請求項1又は2記載のトップシール用食品容器。
【請求項5】
前記無機充填剤が、平均粒子径(D50)が2~8μm、アスペクト比が30~50の範囲のタルクである請求項記載のトップシール用食品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トップシール用食品容器に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーやコンビニエンスストアで販売される、お弁当やお惣菜を販売するための食品用包装容器は、近年、環境負荷軽減の観点からプラスチック製容器使用量の削減が社会的な要請となっており、更に食品の賞味期限を延ばし食品ロス削減のニーズが高まっていること、また、収容する食品鮮度を高く保持できる点から、所謂トップシール方式の蓋材を用い、容器本体に食品を収容後、容器本体のフランジに該蓋材をヒートシールするタイプの成形容器が広く用いられるようになってきている。
【0003】
かかる成形容器は、通常、運搬時や保管時には複数積み重ねた状態とされるが、その際、上下に積み重ねた容器同士が密着して取り外し難くなることを回避するために、容器壁面上部にスタックリブと言われる突起状の部位を設けるのが多く、例えば、特許文献1には、容器本体壁面の上端部近傍に一回り大きい壁面部とその下面に平坦部を設け、かつ、その壁面の一部を内側に突出させた凸部を設けることにより、該凸部をスタックリブとして機能させる技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、フランジ根元近くに全周に亘って外方へ膨出させる膨出壁面を形成し、その一部を内側に突出させてスタックリブを形成する手段は、スタック性を発現させる点においては有効な手段であるもの、内容物を収容し、トップフィルムをシールする際には、容器本体をバケットに嵌め込む際には、前記膨出壁面がバケット上面に引っかかり、バケット内に綺麗に嵌め込むのが困難であり、都度、人手でバケットに嵌めなおさなければならない、という煩わしさがあり、作業性、生産性に劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6975007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、トップシール用食品容器においてヒートシール時のバケットへの嵌まり込みが良好なトップシール用食品容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、トップシール用食品容器の側面形状に着目し、壁面下方乃至上方の任意の位置からフランジ根元に至るまで、容器本体の相対する2カ所以上の位置において、側壁面よりも外方へ膨出した膨出形状をスロープ状に形成することにより、所謂スタックリブを設けながらも、ほぼ完全にバケットに嵌まり込むことが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、上部に開口するトップシール用食品容器であって、底部と、底部外縁から上方に延びる壁面部と、該壁面部上端から段差部を経て外方へ膨出する第二壁部と、該第二壁部上端よりトップシール可能な平坦面を持つフランジ部とを具備し、かつ、前記壁面部の相対する位置にある少なくとも2カ所において、壁面よりも内容物側から見て外側へ膨出しており、その下端が壁面に接合し、かつ、上端がフランジ根元に接合する膨出部を有することを特徴とするトップシール用食品容器に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トップシール用食品容器においてヒートシール時のバケットへの嵌まり込みが良好なトップシール用食品容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のトップシール用食品容器の斜視図である。
図2図2は、本発明のトップシール用食品容器の平面図である。
図3図3は、図2におけるA-A端面図である。
図4図4は、図2におけるB-B端面図である。
図5図5は、本発明のトップシール用食品容器を、図2における下から上に向かって見た正面図である。
図6図6は、実施例におけるバケット嵌め込み試験の成功例を示す図である。
図7図7は、比較例におけるバケット嵌め込み試験の失敗例を示す図である。
図8図8は、本発明のトップシール用食品容器のもう一つの実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のトップシール用食品容器は、前記した通り、上部に開口するトップシール用食品容器であって、底部と、底部外縁から上方に延びる壁面部と、該壁面部上端から段差部を経て外方へ膨出する第二壁部と、該第二壁部上端よりトップシール可能な平坦面を持つフランジ部とを具備し、かつ、前記壁面部の相対する位置にある少なくとも2カ所において、壁面よりも内容物側から見て外側へ膨出しており、その下端が壁面に接合し、かつ、上端がフランジ根元に接合する膨出部を有することを特徴としている。本発明では、このように容器本体の壁面に、該壁面より外方に膨出する膨出部を持つことから、内容物を収容後、フィルム状蓋体を熱溶着させる際にバケットへの嵌まり込みが良好となり、トップシールの作業性が格段に改善されることとなる。ここで、前記膨出部は、断面視スロープ状又は略円弧状スロープ状に下側から上に向けて拡開するように形成され、その上端がフランジ内縁端に接合していることが好ましい。
【0012】
また、本発明のトップシール用食品容器は、平面視で円形、楕円形、矩形の何れであってもよいが、とりわけ平面視矩形は、これまでバケット嵌め込みエラーが生じ易かったことから、本発明による改善効果が良好なものなる点から好ましい。斯かる平面視矩形のトップシール用食品容器の場合、相対する2つのコーナー部に配設されてれいることが好ましく、特に全てのコーナー部に膨出部を有することが好ましい。例えば、平面視四角形の場合、4つのコーナー部に夫々膨出部を有することが好ましい。
【0013】
とりわけスムーズなバケットへの嵌め込みを行うことができる点から、前記し例えば、図1に示す様に、平面視四角形の容器であって、各4コーナー部及び各4辺に設けられていることが好ましい。
【0014】
更に、容器本体の壁面部には、該壁面部と前記フランジ平面部の内縁端との間に、内容物側から外方に膨出する第二壁部が、周方向に形成されており、かつ、前記壁面部と第二壁面部とは段差を介して接合している。ここで、本発明では、該第二壁部の一部が内側に突出してスタック用リブを形成するものが好ましい。本発明では、このような壁面部上端とフランジ平面部の内縁端との間に段差部を介して第二壁面部を設け、かつ、該第二壁面部の一部を内側に突出させた構造のスタックリブを形成した場合であっても、バケット嵌め込み時に前記段差部が引っかかることを防止できる。かかる効果がより良好なものとなりスムーズなバケットへの嵌め込みが可能となる点から、前記膨出部の上端が、前記第二壁部の壁部と同一平面を成すように構成されていることが好ましい。
【0015】
前記膨出部の形状は、特に限定されるものではないが、正面視で円弧状乃至U字状形状、又は、正面視で頂点を下にする三角形状、四角形状、台形状のものが挙げられるが、図5の膨出部12に示すように正面乃至側面視で円弧状乃至U字状形状のものが、膨出部の実効幅を広く確保出る点から好ましい。
【0016】
具体的には、例えば、図5に示すように膨出部が円弧状に形成され、第二壁部(図1及び図5における第二壁部14)へシームレスに連接されて、かつ、該第二壁部の一部において内側に突出してスタック用リブ(例えば、図1及び図5におけるスタック用リブ15)を有するように構成されていることが好ましい。
【0017】
前記膨出部は、その位置によってその幅は、デザイン性も考慮し適宜選択することができるが、コーナー部における幅は、平面視の直線長さ(例えば、図2における幅w12)の最大値が20~120mmの範囲であることが好ましい。なお、当該コーナー部の幅の最大値の範囲は少なくとも1カ所のコーナー部において充たしていればよいが、とりわけ各コーナー部が当該範囲を充足することが好ましい。本発明では、バケットへの嵌め込み性の点から、このコーナー部において膨出部を有していることが極めて重要である。
【0018】
一方、容器の長辺又は短辺における、膨出部の幅(例えば図5における幅w11)は、特に限定されるものではないが、上端における第二壁部との接合部間の長さが10~80mmの範囲であることが好ましい。また、図1に示す様に、仕切り16及び仕切り17を有する場合、前記膨出部は、当該仕切りを構成する壁面に連通しつつ、当該壁面内にシームレスに一体化する形状であることが好ましい。この場合、平面視で仕切り壁面まで膨出部が形成され、円弧状又は半U字状であることが好ましい。
【0019】
また、膨出部の下端部は、壁面部に複数形成された場合、それらの下端部が全て同じ高さに位置することがバケットへの嵌め込み易さの点から好ましい。
【0020】
前記膨出部の膨出量は、前記膨出部12の膨出量は、第二壁部の下端に形成された段差部(例えば、図4における段差部18)の水平方向幅(例えば、図4における水平方向幅S)がその最大値となり、具体的には、1.5~4mmであることが好ましい。また、膨出部の断面形状は、下から上に向けて拡開するスロープ形状であることがバケットへの嵌め込みがより確実なものとなる点から好ましい。また、このスロープ形状は、直線的なものであってもよいが、図3に示す様にやや丸みを帯びたスロープ形状であることが好ましい。この断面視円弧状のスロープ形状は曲率半径が20~50mmであることが好ましい。
【0021】
更に、前記膨出部の上下方向の長さは、特に制限されるものではないが、該膨出部下端から、前記第二壁部までの垂直長さ(例えば、図5における高さH3)が10~30mmであることが、バケット内への誘導がスムーズなものとなる点から好ましい。更に、本発明では、側壁に対して十分に膨出部の垂直長さを確保することにより、位置ずれや嵌め込みエラーを回避し易くなる。よって、該膨出部は容器本体の全体高さの半分以下の位置にその下端部が存在していることが好ましい。具体的には壁面部の下端から膨出部下端までの垂直高さ(例えば、図3における高さH2)が5~20mmであって、かつ、膨出部下端から、フランジ部の水平部外端までの垂直高さ(例えば、図3における高さH1)が15~40mmであり、かつ、H2<H1であることが好ましい。
【0022】
また、前記スタック用リブの大きさは、適宜設定することができるが、例えば、その突出幅(例えば、図4における高さw2)が、2~4mmであることが、スタック性が良好なものとなる点から好ましい。
【0023】
更に、第二壁部の高さ、例えば図4における高さh1は、3~10mmであることが好ましい。前記第二壁部14の上段から外方に向けて形成されているフランジ部(図1図3におけるフランジ部13)は、トップシール可能な平坦部が確保されているものであればよい。平坦部の幅は、例えば図3図4に示される水平方向の幅w1は広い方がヒートシールする幅の選択によりシール強度を調整し易い点から、4mm以上であること、なかでも6~12mmであることが好ましい。
【0024】
更に、フランジ部の平坦部は、図4に示す様に外に向けて下方に傾くように所定の角度を持って形成されていることが、トップシール時に食品やゴミの噛み込みを防止できる点から好ましく、具体的には2~6度の傾きを有していることが好ましい。また、平坦部の外縁端からは下方にスカートを有し、該スカート下端より外方に向けて水平端部が形成されていることが、フランジ部自体の剛性が高まる点から好ましい。
【0025】
また、本発明のトップシール用食品容器は、図1に示すような、仕切りが設けられた複数の収容部をもつ容器であってもよいし、図8に示すような仕切りのない容器であってもよい。
【0026】
以上詳述した本発明のトップシール用食品容器は、発泡容器であってもよいし、非発泡の容器であってもよいが、とりわけ耐寒性容器容器として冷熱環境下での強度に優れる点から、無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂から構成される非発泡の容器であることが好ましい。
【0027】
具体的には、ポリオレフィン樹脂と、該樹脂をマトリックスとして無機充填剤が分散した複合シートを所定形状に賦形したものが好ましく、ここで、無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、マイカ、酸化亜鉛、ドロマイト、シリカ、二酸化ケイ素、ベントナイト、クレー、及びゼオライトなどが挙げられる。これらのなかでも、ポリオレフィンとして分散性が良好であり強度向上の効果が顕著なものとなる点からタルクが好ましい。
【0028】
更に、本発明では、前記タルクのなかでも平均粒子径(D50)が2~8μm、アスペクト比が30~50の範囲のものであることが、成形品強度が良好なものとなり、容器の薄肉化を図ることができる点から好ましい。ここで、通常、タルクは扁平形状を有しており、粒子径が小さくなるに従い、扁平割合を示すアスペクト比も小さくなる傾向があるが、上記の平均粒子径及びアスペクト比を持つものは、比較的平均粒子径が小さい割に高いアスペクト比を有するものとなる。このような特異な粒子径及びアスペクト比を持つタルクを分散フィラーとして用いることにより熱成形した後の容器の強度が劇的に改善させることができる。
【0029】
ここで、平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法によるメジアン径(D50)であり、具体的にはJIS Z8824に準拠し、必要により超音波処理して一次粒子分散体を得、次いでJIS Z8825に準拠して測定された値である。本発明では該平均粒子径(D50)が、とりわけ3~7μm、特に4~6μmのものが前記した効果が顕著に現れる点から好ましい。
【0030】
また、アスペクト比は、タルクの粒子を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(製品名「S-4800」日立製作所製)にて3万~10万倍で観察し、断面の観察が可能な粒子を任意で10個選び出し、それぞれの断面の厚みと長さを測定した上で各アスペクト比(長さ/厚み)を計算し、さらにその算術平均値を算出することができる。
【0031】
前記タルクは、更に、マトリックスを構成する樹脂成分との濡れ性が良好となる点から比表面積(BET)が7~10m/gの範囲であることが好ましい。
【0032】
また、成形容器から使用タルクの性状を確認するには、例えば、80mm×80mmの範囲で容器底面から切り出し、試験片をデカリンなどの高沸点溶媒に高温で溶解させ、タルクを抽出・乾燥させて前記方法にて測定することができる。
【0033】
以上詳述したタルクは、樹脂中に分散させるにあたり、濡れ性を高めるためにシランカップリング剤で処理したものを用いることもできる。
【0034】
次に、マトリックスを構成する、オレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体が挙げられるが、本発明ではポリプロピレン系樹脂と、高密度ポリエチレンとの混合樹脂として用いることが耐寒性及び耐熱性に優れた性能を発現させることができる点から好ましい。
【0035】
ここでポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクティクポリプロピレン、シンジオタクティクポリプロピレン、アタックティクポリプロピレンなどのポリプロピレン、エチレン-プロピレンランダムポリマー、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレンブテンー共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体、プロピレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、ポリエチレン又はポリプロピレンの不飽和カルボン酸(例えば無水マレイン酸)変性物が挙げられる。
【0036】
これらのなかでも特にエチレン-プロピレンブロック共重合体(以下、「ブロックポリプロピレン(A)」と略記することがある。)が、プロピレン相中にポリエチレンが島状に分散する海島構造を持ち、海島の界面に存在するゴム相により優れた耐衝撃性が発現される点から好ましい。
【0037】
また、ブロックポリプロピレン(A)を用いる場合、該ブロックポリプロピレン(A)に高密度ポリエチレン(以下、「高密度ポリエチレン(B)」と記載することがある)を混合して用いることが好ましい。ここで高密度ポリエチレン(B)は、密度が0.942~0.970のポリエチレンであり、本発明ではこの高密度ポリエチレン(B)を比較的多く用いることにより、形成品にしたときにより硬く剛性の高いものとなる。
【0038】
ブロックポリプロピレン(A)と高密度ポリエチレン(B)とタルクとの配合割合(含有比率)は、質量基準で、[(A)/(B)/タルク]が、20/60/20~35/30/35となる割合であることが、成形品にした際の落下や、積層、重荷重を受けた際の割れや歪みを効果的に防止することができ、冷凍環境下での耐衝撃性が飛躍的に高まる点から好ましい。とりわけ複合シート中にブロックポリプロピレン(A)が25~35質量%、高密度ポリエチレン(B)が35~50質量%、タルクが25~35質量%であることが、これら各種の効果がより顕著なものとなる点から好ましい。このように高密度ポリエチレン(B)や、特異的なサイズ・形状のタルクを比較的多く用いることによりブロックポリプロピレン(A)の持つ衝撃強度を損なうことなく剛性が高められる他、超低温での衝撃強度も発現される点は特筆すべき点である。
【0039】
前記複合シートには、必要に応じて各種添加剤、例えば酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤などを含有させてもよい。
【0040】
前記複合シートは、以上詳述したシートを基材層(2)として、その一方の表面に第一の表層(3)、更にその反対側の表面に第二の表層(3’)を設けた積層シートとすることが、最終的に得られる成形品外観の光沢が良好なものとなる点から好ましい。
【0041】
この様に基材層(2)の両表面に表層(3)、表層(3’)を積層する場合、所謂2種3層構造のシートとなる。ここで表層(3)、表層(3’)はポリオレフィン系樹脂から構成されていることが好ましく、特にプロピレン単独重合体であることが基材層との密着性に優れる点、及び成形品にした際の光沢に優れる点から好ましい。
【0042】
前記複合シートの厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、基材層と表層とを含む全厚で200~600μmの範囲から選択することができる。ここで、前記した通り、本発明では容器にした際に優れた機械的強度を発現させることができる点から、平均粒子径(D50)が10~20μm、アスペクト比20~25程度の通常のタルクを使用した場合に比べ、シート厚みを薄くすることができ、具体的には、従来型と同等の強度を得ようする場合に全厚でシート厚みを5~8%薄くすることが可能となる。
【0043】
以上の観点から基材層の厚みは180~590mmの範囲であることが好ましく、表層の厚みは、表両面の層厚の合計がシート全厚の1~10%の範囲であることが好ましい。
【0044】
上記した複合シートを製造するには、例えば、基材層を構成する上記した各成分を溶融混合してマスターバッチを調整し、これを用いて溶融混錬、Tダイより押出し無延伸で製膜する方法が挙げられる。また、基材層の両面に表層を有する場合は、所謂共押出法により所定厚みに製膜することができる。
【0045】
以上詳述した複合シートから、真空成型又は圧空成型などの常法により所望の形状に熱成形して本発明のトップシール用食品容器とすることができる。
【0046】
次に、本発明のトップシール用食品容器として用いる場合に使用されるトップフィルムとしては、界面剥離タイプ、層間剥離タイプ、凝集剥離タイプの何れであってもよい。なかでも容器表面との密着性、密閉性に優れる点から層間剥離タイプ、凝集剥離タイプであることが好ましい。
【0047】
かかる層間剥離タイプ、凝集剥離タイプのトップフィルムは、具体的は、基材フィルム上に凝集剥離層又は層間剥離層を有するものであればよく、少なくとも2層以上の多層構造であればよい。なかでも基材フィルム/支持フィルム/凝集剥離層(又は層間剥離層)の順に積層された多層フィルムであることが好ましい。
【0048】
ここで、基材フィルムとしては各種のスチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂を使用することができるが、とりわけ剛性の点からナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。基材フィルムの厚さは、例えば、5~20μmの範囲である。
【0049】
前記支持フィルムとしては、凝集剥離層又は層間剥離層との親和性の高い樹脂材料を適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。斯かる支持フィルムの厚さは、1層で用いる場合は20~60μm、2層で用いる場合は合計で20~60μmとなる範囲であることが好ましい。
【0050】
本発明では、前記したトップシールされた製品を、更にピロー包装によって包んで食品商品としてもよい。
【0051】
以下、本発明のトップシール用食品容器についての実施態様を図面に基づき説明する。
【0052】
<実施態様1>
本実施態様は、図1における容器本体1で表されるものであり、底部10と、底部外縁から上方に延びる壁面部11と、該壁面部上端から段差部18(図4参照)を経て外方へ膨出する第二壁部14と、該第二壁部上端よりトップシール可能な平坦面を持つフランジ部13とを具備し、かつ、該容器本体1の4つの各コーナー部及び四辺中央部に壁面11よりも内容物側から見て外側へ膨出しており、その下端が壁面に接合し、かつ、上端がフランジ根元に接合する膨出部12を有している。
【0053】
ここで、前記膨出部12は、図3に示すように断面視にて略円弧状にスロープ状に下側から上に向けて拡開するように形成され、その上端がフランジ部13の内縁端に接合している。本実施態様におけるトップシール用食品容器は、平面視で四角形状である。前記した通り、平面視矩形状のトップシール容器は、これまでバケット嵌め込みエラーが生じ易かったことから、本発明における膨出部12を採用することによる改善効果は顕著なものとなる。
【0054】
更に、容器本体の壁面部11と、前記フランジ部13の内縁端との間には第二壁部14が周方向に形成されており、該第二壁部14は段差部18を介して壁面部11に繋がっている。また、第二壁部14の一部は内側に突出してスタック用リブを形成している。従来、スタックリブを設けたときにバケットに嵌まり難いという問題があったが、本発明では、この問題をほぼ解消できる。前記膨出部の形状は、本実施形態では、正面視で円弧状形状である。
【0055】
ここで、本実施形態では、該膨出部12は、その上部において第二壁部14へシームレスに連接されている。
【0056】
前記膨出部12は、更に具合的には、コーナー部における幅w12(図2における平面視の直線長さの最大値)は33mmであり、長辺又は短辺における幅(第二壁部との接合部間の長さ。図5における幅w11)は、は58mmである。
【0057】
また、膨出部12の下端部は、それらの下端部が全て同じ高さに位置している。前記膨出部12の膨出量は、図4に示される第二壁部の段差部18の水平方向幅Sが2.6mmとなる厚みであり、この断面視円弧状のスロープ形状の曲率半径は36mmである。
【0058】
更に、前記膨出部12の上下方向の長さは、該膨出部下端から、前記第二壁部14までの垂直長さである、図5における高さH3は18.5mmであり、壁面部11の下端から膨出部下端12までの垂直高さ(図3における高さH2)が9.5mmであって、かつ、膨出部12下端から、フランジ部の水平部外端までの垂直高さ(図3における高さH1)が25.5mmである。
【0059】
また、第二壁部14の高さ、具体的には図4における高さh1は7mmであり、前記スタック用リブ15は、その突出幅(図4における高さw2)が、3.4mmである。
【0060】
更に、前記第二壁部14の上段から外方に向けて形成されているフランジ部13は、トップシール可能な平坦部を有しており、本実施形態では、その平坦部の幅w1は8mmであり、水平から下方へ角度αが4度となる傾きで構成されている。更に、平坦部の外縁端からは下方にスカートを有し、該スカート下端より外方に向けて水平端部が形成されている。
【0061】
更に、本実施形態では、図1に示すような、仕切り16、及び仕切り17によって区画された複数の収容部をもつ容器である。
【0062】
また、他の実施形態としては、図8に示すような仕切りのない容器が挙げられる。仕切りの有無、数は、用途に応じて適宜選択することができる。
【実施例
【0063】
実施例1
下記表1の配合に従い基材層(2)のマスターバッチ、及び表層(3)(3’)のマスターバッチを用意し、基材層(2)用マスターバッチ及び表層(3)用マスターバッチをそれぞれ押し出し機に供給し、Tダイから押出し、二種三層の無延伸積層シートを得た。
得られたシートについて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
<引張試験(引張弾性率)>
実施例1で得たシートのMD,TD方向に試験片を採取し、室温で引張試験[試験速度:1(mm/分)]を行い、引張弾性率を求めた。
【0065】
<曲げ試験(曲げ弾性率)>
実施例1で得たシートのMD,TD方向に試験片を採取し、室温で曲げ試験[試験速度:100(mm/分)]を行い、曲げ弾性率を求めた。
【0066】
<耐寒耐衝撃性(-30℃デュポン衝撃試験)>
実施例1で得たシートから試験片を採取し、―30℃環境下にてデュポン式衝撃試験[撃芯径:12.689(mm)]を行い、50%破壊エネルギーを求めた。
【0067】
【表1】
【0068】
ここで、実施例1で使用したタルクは、日本タルク社製の下記表記載のタルクを用い、マスターバッチはスターフィールド社にて調整したものを使用した。
【0069】
【表2】
【0070】
次に、実施例1で得られた無延伸積層シートを、前記本発明の実施形態に示したトップシール用食品容器Aを成形した。
【0071】
比較例1
比較例用として、膨出部を各四辺及び各コーナー部に膨出部を有しない他は、トップシール用容器Aと同一寸法のトップシール用食品容器B(全周に段差部及びスタック用突起部を有する形状)を成形した。
【0072】
実施例2
斯かるトップシール用食品容器Aを用いて、下記の試験方法にてバケット嵌め込み試験を実施した。結果を表3に示す。
(試験方法)
図6に示す、土台部上にバケットを載せ、更にその上にバケットまでの高さが50mmとなる発泡スチロール製の引き抜き台を載せ、その上に容器Aのフランジ部を載置し、左右の発泡スチロール台を同時に引き抜いた。
これを100回実施し、バケット上に適切に嵌まった回数をカウントした。
【0073】
実施例3
トップシール用食品容器Aを、バケットの開口部の四辺に対して平面視で右方向に10度回転させた状態で発泡スチロール製の引き抜き台に載置し、実施例2と同様にしてバケット嵌め込み試験を実施した。
【0074】
比較例2
トップシール用食品容器Bを用いる他は、実施例2と同様に容器Bを引き抜き台上に載置し、左右の発泡スチロール台を同時に引き抜いた。
これを100回実施し、バケット上に適切に嵌まった回数をカウントした。
【0075】
比較例3
トップシール用食品容器Bを用いる他は、実施例3と同様に容器Bを引き抜き台上に載置し、左右の発泡スチロール台を同時に引き抜いた。
これを100回実施し、バケット上に適切に嵌まった回数をカウントした。
【0076】
【表3】
なお、成功した状態を図6に、失敗した状態を図7に模式的に示す。
【符号の説明】
【0077】
1・・・トップシール用食品容器
11・・・壁面部
12・・・膨出部
13・・・フランジ部
14・・・第二壁部
15・・・スタック用リブ
16・・・仕切り
17・・・仕切り
18・・・段差部
21・・土台
22・・バケット
23・・引き抜き用台


【要約】
【課題】ヒートシール時のバケットへの嵌まり込みが良好なトップシール用食品容器を提供する。
【解決手段】底部10と、その外縁から上方に延びる壁面部11と、該壁面部上端から段差部18を介して外方へ膨出する第二壁部14と、その上端より外方へ延出するフランジ部13とを具備し、かつ、前記壁面部11の相対する位置にある少なくとも2カ所において、膨出部12を有し、かつ、該第二壁部の一部において内側に突出するスタック用リブ15が形成されている。
【選択図】 図1


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8