(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】電波放射器及びアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/24 20060101AFI20240325BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20240325BHJP
H01Q 13/06 20060101ALI20240325BHJP
H01Q 13/02 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
H01Q21/24
H01Q3/26 Z
H01Q13/06
H01Q13/02
(21)【出願番号】P 2022177012
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊見本 和馬
(72)【発明者】
【氏名】山口 良
(72)【発明者】
【氏名】宮下 真行
(72)【発明者】
【氏名】保前 俊稀
(72)【発明者】
【氏名】福迫 武
(72)【発明者】
【氏名】久世 竜司
(72)【発明者】
【氏名】バヤルサイハン プレブツェレン
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-064854(JP,A)
【文献】特開2009-049608(JP,A)
【文献】特開昭55-085109(JP,A)
【文献】特開2018-198349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/24
H01Q 3/26
H01Q 13/06
H01Q 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直偏波の電波を発生させる第1発振器が配置される第1導波管と、
水平偏波の電波を発生させる第2発振器が配置される第2導波管と、
垂直偏波の電波を発生させる第3発振器が配置される第3導波管と、
水平偏波の電波を発生させる第4発振器が配置される第4導波管と、
前記第1導波管から放射された前記電波が、前記第2導波管、前記第3導波管、及び、前記第4導波管を通過することを阻止する第1阻止壁と、前記第2導波管から放射された前記電波が、前記第1導波管、前記第3導波管、及び、前記第4導波管を通過することを阻止する第2阻止壁と、前記第3導波管から放射された前記電波が、前記第1導波管、前記第2導波管、及び、前記第4導波管を通過することを阻止する第3阻止壁と、前記第4導波管から放射された前記電波が、前記第1導波管、前記第2導波管、及び、前記第3導波管を通過することを阻止する第4阻止壁とを有する阻止体と
を備え、
前記第1導波管及び前記第3導波管は、垂直偏波の電波の偏波方向に平行な第1軸に沿って配置され、
前記第2導波管及び前記第4導波管は、水平偏波の電波の偏波方向に平行な第2軸に沿って配置され、
前記阻止体は、前記第1導波管、前記第2導波管、前記第3導波管、及び、前記第4導波管で囲まれた領域から、電波の伝搬方向に向かって突出している、
電波放射器。
【請求項2】
前記第1導波管の開口端の中心は、前記第1阻止壁の中心に対して、前記第2軸に沿って予め定められたオフセット距離だけオフセットされ、
前記第2導波管の開口端の中心は、前記第2阻止壁の中心に対して、前記第1軸に沿って前記オフセット距離だけオフセットされ、
前記第3導波管の開口端の中心は、前記第3阻止壁の中心に対して、前記第2軸に沿って、且つ、前記第1導波管の前記開口端の前記中心がオフセットされている方向とは反対方向に前記オフセット距離だけオフセットされ、
前記第4導波管の開口端の中心は、前記第4阻止壁の中心に対して、前記第1軸に沿って、且つ、前記第2導波管の前記開口端の前記中心がオフセットされている方向とは反対方向に前記オフセット距離だけオフセットされる、
請求項1に記載の電波放射器。
【請求項3】
前記第1阻止壁の前記第2軸に沿った長さは、前記第1導波管の前記開口端の前記第2軸に沿った長さより短く、
前記第2阻止壁の前記第1軸に沿った長さは、前記第2導波管の前記開口端の前記第1軸に沿った長さより短く、
前記第3阻止壁の前記第2軸に沿った長さは、前記第3導波管の前記開口端の前記第2軸に沿った長さより短く、
前記第4阻止壁の前記第1軸に沿った長さは、前記第4導波管の前記開口端の前記第1軸に沿った長さより短い、
請求項2に記載の電波放射器。
【請求項4】
前記阻止体は、前記第1阻止壁、前記第2阻止壁、前記第3阻止壁、及び、前記第4阻止壁を側面とする金属ブロックである、請求項1に記載の電波放射器。
【請求項5】
前記第1導波管、前記第2導波管、前記第3導波管、及び、前記第4導波管は、28GHzを含む予め定められた範囲の周波数帯域の電波を放射可能である、請求項1に記載の電波放射器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電波放射器と、
前記電波放射器によって放射される電波を調整する電波調整部と
を備える、アンテナ装置。
【請求項7】
前記電波調整部は、前記第1導波管から放射される前記電波の電波強度に対する前記第3導波管から放射される前記電波の電波強度の割合が予め定められた割合となるように、前記第1導波管から放射される前記電波の前記電波強度及び前記第3導波管から放射される前記電波の前記電波強度の少なくとも一方を調整する、又は、前記第2導波管から放射される前記電波の電波強度に対する前記第4導波管から放射される前記電波の電波強度の割合が予め定められた割合となるように、前記第2導波管から放射される前記電波の前記電波強度及び前記第4導波管から放射される前記電波の前記電波強度の少なくとも一方を調整する、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記電波調整部は、前記第1導波管から放射される前記電波の位相と前記第3導波管から放射される前記電波の位相との間の位相差が予め定められた位相差となるように、前記第1導波管から放射される前記電波の前記位相及び前記第3導波管から放射される前記電波の前記位相の少なくとも一方を調整する、又は、前記第2導波管から放射される前記電波の位相と前記第4導波管から放射される前記電波の位相との間の位相差が予め定められた位相差となるように、前記第2導波管から放射される前記電波の前記位相及び前記第4導波管から放射される前記電波の前記位相の少なくとも一方を調整する、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記電波の前記伝搬方向に向かって広がって開口しているホーン部
をさらに備える、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記電波放射器が放射した前記電波を反射して外部に向けて出力する反射部と、
前記反射部を調整することによって前記電波の外部への出力方向を変更する出力方向変更部と
をさらに備え、
前記電波調整部は、前記出力方向変更部による前記反射部の調整に応じて、前記電波放射器によって放射される前記電波を調整する、
請求項6に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波放射器及びアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マイクロ波、ミリ波、及びテラヘルツ波を用いたアンテナについて記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2018-198349号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施態様によれば、電波放射器が提供される。電波放射器は、垂直偏波の電波を発生させる第1発振器が配置される第1導波管を備えてよい。電波放射器は、水平偏波の電波を発生させる第2発振器が配置される第2導波管を備えてよい。電波放射器は、垂直偏波の電波を発生させる第3発振器が配置される第3導波管を備えてよい。電波放射器は、水平偏波の電波を発生させる第4発振器が配置される第4導波管を備えてよい。電波放射器は、前記第1導波管から放射された前記電波が、前記第2導波管、前記第3導波管、及び、前記第4導波管を通過することを阻止する第1阻止壁と、前記第2導波管から放射された前記電波が、前記第1導波管、前記第3導波管、及び、前記第4導波管を通過することを阻止する第2阻止壁と、前記第3導波管から放射された前記電波が、前記第1導波管、前記第2導波管、及び、前記第4導波管を通過することを阻止する第3阻止壁と、前記第4導波管から放射された前記電波が、前記第1導波管、前記第2導波管、及び、前記第3導波管を通過することを阻止する第4阻止壁とを有する阻止体を備えてよい。前記第1導波管及び前記第3導波管は、垂直偏波の電波の偏波方向に平行な第1軸に沿って配置されてよい。前記第2導波管及び前記第4導波管は、水平偏波の電波の偏波方向に平行な第2軸に沿って配置されてよい。前記阻止体は、前記第1導波管、前記第2導波管、前記第3導波管、及び、前記第4導波管で囲まれた領域から、電波の伝搬方向に向かって突出してよい。
【0004】
前記第1導波管の開口端の中心は、前記第1阻止壁の中心に対して、前記第2軸に沿って予め定められたオフセット距離だけオフセットされてよく、前記第2導波管の開口端の中心は、前記第2阻止壁の中心に対して、前記第1軸に沿って前記オフセット距離だけオフセットされてよく。前記第3導波管の開口端の中心は、前記第3阻止壁の中心に対して、前記第2軸に沿って、且つ、前記第1導波管の前記開口端の前記中心がオフセットされている方向とは反対方向に前記オフセット距離だけオフセットされてよく、前記第4導波管の開口端の中心は、前記第4阻止壁の中心に対して、前記第1軸に沿って、且つ、前記第2導波管の前記開口端の前記中心がオフセットされている方向とは反対方向に前記オフセット距離だけオフセットされてよい。
【0005】
前記いずれかの電波放射器において、前記第1阻止壁の前記第2軸に沿った長さは、前記第1導波管の前記開口端の前記第2軸に沿った長さより短くてよく、前記第2阻止壁の前記第1軸に沿った長さは、前記第2導波管の前記開口端の前記第1軸に沿った長さより短くてよく、前記第3阻止壁の前記第2軸に沿った長さは、前記第3導波管の前記開口端の前記第2軸に沿った長さより短くてよく、前記第4阻止壁の前記第1軸に沿った長さは、前記第4導波管の前記開口端の前記第1軸に沿った長さより短くてよい。
【0006】
前記いずれかの電波放射器において、前記阻止体は、前記第1阻止壁、前記第2阻止壁、前記第3阻止壁、及び、前記第4阻止壁を側面とする金属ブロックであってよい。
【0007】
前記いずれかの電波放射器において、前記第1導波管、前記第2導波管、前記第3導波管、及び、前記第4導波管は、28GHzを含む予め定められた範囲の周波数帯域の電波を放射可能であってよい。
【0008】
本発明の一実施態様によれば、アンテナ装置が提供される。アンテナ装置は、前記電波放射器を備えてよい。アンテナ装置は、前記電波放射器によって放射される電波を調整する電波調整部を備えてよい。
【0009】
前記電波調整部は、前記第1導波管から放射される前記電波の電波強度に対する前記第3導波管から放射される前記電波の電波強度の割合が予め定められた割合となるように、前記第1導波管から放射される前記電波の前記電波強度及び前記第3導波管から放射される前記電波の前記電波強度の少なくとも一方を調整してよい、又は、前記第2導波管から放射される前記電波の電波強度に対する前記第4導波管から放射される前記電波の電波強度の割合が予め定められた割合となるように、前記第2導波管から放射される前記電波の前記電波強度及び前記第4導波管から放射される前記電波の前記電波強度の少なくとも一方を調整してよい。
【0010】
前記いずれかのアンテナ装置において、前記電波調整部は、前記第1導波管から放射される前記電波の位相と前記第3導波管から放射される前記電波の位相との間の位相差が予め定められた位相差となるように、前記第1導波管から放射される前記電波の前記位相及び前記第3導波管から放射される前記電波の前記位相の少なくとも一方を調整してよい、又は、前記第2導波管から放射される前記電波の位相と前記第4導波管から放射される前記電波の位相との間の位相差が予め定められた位相差となるように、前記第2導波管から放射される前記電波の前記位相及び前記第4導波管から放射される前記電波の前記位相の少なくとも一方を調整してよい。
【0011】
前記いずれかのアンテナ装置は、前記電波の前記伝搬方向に向かって広がって開口しているホーン部をさらに備えてよい。
【0012】
前記いずれかのアンテナ装置は、前記電波放射器が放射した前記電波を反射して外部に向けて出力する反射部と、前記反射部を調整することによって前記電波の外部への出力方向を変更する出力方向変更部とをさらに備えてよく、前記電波調整部は、前記出力方向変更部による前記反射部の調整に応じて、前記電波放射器によって放射される前記電波を調整してよい。
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】電波放射器100を備えるアンテナ装置10の一例を概略的に示す。
【
図3】電波放射器のSパラメータのシミュレーション結果を例示する。
【
図4】電波放射器100のSパラメータのシミュレーション結果を例示する。
【
図5】電波放射器によって放射される電波の放射パターンのシミュレーション結果を例示する。
【
図6】電波放射器100の利得特性のシミュレーション結果及び測定結果を例示する。
【
図7】電波放射器100によって放射される電波の放射パターンのシミュレーション結果及び測定結果を例示する。
【
図8】電波放射器100を備えるアンテナ装置10の他の一例を概略的に示す。
【
図9】
図8に示すアンテナ装置10が外部に向けて出力する出力電波45を例示する。
【
図10】
図8に示すアンテナ装置10が外部に向けて出力する出力電波45を例示する。
【
図11】制御装置50の機能構成の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
反射鏡を機械的に回転させることによって、ビーム走査が可能なアンテナの研究が行われている。研究対象のアンテナは、反射鏡の回転に伴って出力電波の偏波方向が変化するという課題がある。そこで、出力電波の偏波方向を一定にするために出力電波の振幅及び位相の制御が可能で、相互結合及び交差偏波を低減したアンテナが求められる。また、高SHF(Super High Frequency)帯を用いて前後車両間で通信のやり取りを行う車車間通信(Vehicle to Vehicle;V2V)通信では、伝搬損失を補償するために高利得特性を有し、且つ、偏波共用が可能なアンテナが求められる。以上より、偏波共用が可能で、相互結合及び交差偏波を低減したアンテナが求められている。本実施形態に係る電波放射器100は、一つのホーンアンテナ内に複数の導波管の開口を順次回転配置させた構造となっており、放射電波の振幅及び位相の制御を行うために複数のポート有する。さらに、電波放射器100は、ポート間に金属壁を配置することによって、ポート間の相互結合を抑制でき、交差偏波の低減も可能である。
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、電波放射器100の一例を概略的に示す。電波放射器100は、本体102及び阻止体120を備える。本体102は、4つの導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118を有する。
【0018】
電波放射器100は、例えば、直線偏波の電波を放射する。
図1では、電波の伝搬方向がZ軸の正の方向となるように、電波放射器100が図示されている。
【0019】
直線偏波の電波は、例えば、垂直偏波の電波を含む。垂直偏波の電波は、電波の伝搬方向に対して垂直な方向に電界が振動している電波である。垂直偏波の電波は、例えば、地面に対して垂直な方向に電界が振動している電波である。
図1において、垂直偏波の電波の偏波方向は、Y軸に平行な方向である。
【0020】
直線偏波の電波は、例えば、水平偏波の電波を含む。水平偏波の電波は、電波の伝搬方向及び垂直偏波の電波の偏波方向に対して垂直な方向に電界が振動している電波である。水平偏波の電波は、例えば、地面に対して水平な方向に電界が振動している電波である。
図1において、水平偏波の電波の偏波方向は、X軸に平行な方向である。
【0021】
本体102は、例えば、金属で形成される。本体102は、例えば、アルミニウムで形成される。本体102は、銅や銀等のその他の金属で形成されてもよい。
【0022】
導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118は、直線偏波を放射可能な導波管であれば、どのような導波管であってよい。導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118は、例えば、方形導波管である。導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118は、その他の任意の形状の導波管であってもよい。
【0023】
導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118は、例えば、予め定められた範囲の周波数帯域の電波を放射可能である。周波数帯域は、例えば、28GHzを含む。周波数帯域は、その他の任意の特定の周波数を含んでもよい。周波数帯域は、電波放射器100の用途に応じて定められてよい。
【0024】
例えば、導波管112が放射可能な電波の周波数帯域と、導波管116が放射可能な電波の周波数帯域とが、同一であってよい。例えば、導波管114が放射可能な電波の周波数帯域と、導波管118が放射可能な電波の周波数帯域とが、同一であってよい。例えば、導波管112が放射可能な電波の周波数帯域と、導波管114が放射可能な電波の周波数帯域と、導波管116が放射可能な電波の周波数帯域と、導波管118が放射可能な電波の周波数帯域とが、同一であってよい。
【0025】
導波管112には、例えば、垂直偏波の電波を発生させる発振器が配置されている。導波管112は、第1導波管の一例であってよい。
【0026】
導波管114には、例えば、水平偏波の電波を発生させる発振器が配置されている。導波管114は、第2導波管の一例であってよい。
【0027】
導波管116には、例えば、垂直偏波の電波を発生させる発振器が配置されている。導波管116は、第3導波管の一例であってよい。
【0028】
導波管118には、例えば、水平偏波の電波を発生させる発振器が配置されている。導波管118は、第4導波管の一例であってよい。
【0029】
導波管112及び導波管116は、例えば、垂直偏波の電波の偏波方向に平行な第1軸に沿って配置されている。
図1において、導波管112及び導波管116は、Y軸に沿って配置されている。Y軸は、第1軸の一例であってよい。
【0030】
導波管114及び導波管118は、例えば、水平偏波の電波の偏波方向に平行な第2軸に沿って配置されている。
図1において、導波管114及び導波管118は、X軸方向に沿って配置されている。X軸は、第2軸の一例であってよい。
【0031】
阻止体120は、一の導波管から放射された電波が他の導波管を通過することを阻止する。阻止体120は、例えば、一の導波管から放射された電波が他の導波管を通過することを阻止する複数の阻止壁を有する。
【0032】
阻止体120は、例えば、一の導波管から放射された電波を反射することによって、一の導波管から放射された電波が他の導波管を通過することを阻止する。阻止体120は、一の導波管から放射された電波を吸収することによって、一の導波管から放射された電波が他の導波管を通過することを阻止してもよい。
【0033】
阻止体120は、例えば、導波管112から放射された電波が、導波管114、導波管116、及び、導波管118を通過することを阻止する第1阻止壁を有する。阻止体120は、例えば、導波管114から放射された電波が、導波管112、導波管116、及び、導波管118を通過することを阻止する第2阻止壁を有する。阻止体120は、例えば、導波管116から放射された電波が、導波管112、導波管114、及び、導波管118を通過することを阻止する第3阻止壁を有する。阻止体120は、例えば、導波管118から放射された電波が、導波管112、導波管114、及び、導波管116を通過することを阻止する第4阻止壁を有する。
図1では、導波管116から放射された電波が、導波管112、導波管114、及び、導波管118を通過することを阻止する阻止壁126、並びに、導波管118から放射された電波が、導波管112、導波管114、及び、導波管116を通過することを阻止する阻止壁128の2つの阻止壁が視認できるように、電波放射器100が図示されている。
【0034】
阻止体120は、例えば、導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118で囲まれた領域から、電波の伝搬方向に向かって突出している。
図1において、阻止体120は、Z軸の正の方向に突出している。
【0035】
阻止体120は、一の導波管から放射された電波が他の導波管を通過することを阻止するものであれば、どのような形状であってもよい。阻止体120は、例えば、第1阻止壁、第2阻止壁、第3阻止壁、及び、第4阻止壁を側面とするブロックである。ブロックは、例えば、直方体である。ブロックは、例えば、立方体である。阻止体120は、第1阻止壁、第2阻止壁、第3阻止壁、及び、第4阻止壁を外面とし、長方形や正方形の断面を有する中空の角筒であってもよい。
【0036】
阻止体120は、少なくとも一面に阻止壁を有する4枚の板で形成されてもよい。阻止体120が少なくとも一面に阻止壁を有する4枚の板で形成される場合、阻止体120が、4枚の板のそれぞれの阻止壁を外面とし、長方形や正方形を断面とする角筒形状になるように、4枚の板が配置されてよい。
【0037】
阻止体120は、表面及び裏面の両面に阻止壁を有する2枚の板で形成されてもよい。例えば、2枚の板のうちの一方の板の表面で導波管112から放射された電波が導波管114、導波管116、及び、導波管118を通過することを、当該板の裏面で導波管116から放射された電波が導波管112、導波管114、及び、導波管118を通過することをそれぞれ阻止し、2枚の板のうちの他方の板の表面で導波管114から放射された電波が導波管112、導波管116、及び、導波管118を通過することを、当該板の裏面で導波管118から放射された電波が導波管112、導波管114、及び、導波管116を通過することをそれぞれ阻止してよい。阻止体120が両面に阻止壁を有する2枚の板で形成される場合、阻止体120がL字形状や十字形状になるように、2枚の板が配置されてよい。
【0038】
阻止体120は、一の導波管から放射された電波が他の導波管を通過することを阻止するものであれば、どのような材質で形成されてもよい。阻止体120は、例えば、金属で形成される。阻止体120は、例えば、アルミニウムで形成される。阻止体120は、銅や銀等のその他の金属で形成されてもよい。阻止体120は、ガラス等の非金属で形成されてもよい。この場合、一の導波管から放射された電波が他の導波管を通過することをより阻止すべく、阻止体120の表面にコーティングが施されてよい。
図1では、阻止体120が第1阻止壁、第2阻止壁、第3阻止壁、及び、第4阻止壁を側面とする金属ブロックである場合の電波放射器100が図示されている。
【0039】
導波管112の開口端の中心は、例えば、第1阻止壁の中心に対して、X軸に沿って予め定められたオフセット距離だけオフセットされている。
図1において、導波管112の開口端の中心は、第1阻止壁の中心に対して、X軸の負の方向にオフセットされている。導波管112の開口端の中心のX座標がX
OE1であり、第1阻止壁の中心のX座標がX
RS1であり、オフセット距離がr
OFF1である場合、X
OE1=X
RS1-r
OFF1の関係が成立する。導波管112の開口端の中心は、第1阻止壁の中心に対してオフセットされていなくてもよい。
【0040】
導波管114の開口端の中心は、例えば、第2阻止壁の中心に対して、Y軸に沿って予め定められたオフセット距離だけオフセットされている。
図1において、導波管114の開口端の中心は、第2阻止壁の中心に対して、Y軸の正の方向にオフセットされている。導波管114の開口端の中心のY座標がY
OE2であり、第2阻止壁の中心のY座標がY
RS2であり、オフセット距離がr
OFF2である場合、Y
OE2=Y
RS2+r
OFF2の関係が成立する。導波管114の開口端の中心は、第2阻止壁の中心に対してオフセットされていなくてもよい。
【0041】
導波管116の開口端の中心は、例えば、第3阻止壁の中心に対して、X軸に沿って、且つ、導波管112の開口端の中心がオフセットされている方向とは反対方向に予め定められたオフセット距離だけオフセットされている。
図1において、導波管116の開口端の中心は、阻止壁126の中心に対して、X軸の正の方向にオフセットされている。導波管116の開口端の中心のX座標がX
OE3であり、阻止壁126の中心のX座標がX
RS3であり、オフセット距離がr
OFF3である場合、X
OE3=X
RS3+r
OFF3の関係が成立する。導波管116の開口端の中心は、第3阻止壁の中心に対してオフセットされていなくてもよい。
【0042】
導波管118の開口端の中心は、例えば、第4阻止壁の中心に対して、Y軸に沿って、且つ、導波管114の開口端の中心がオフセットされている方向とは反対方向に予め定められたオフセット距離だけオフセットされている。
図1において、導波管118の開口端の中心は、阻止壁128の中心に対して、Y軸の負の方向にオフセットされている。導波管118の開口端の中心のY座標がY
OE4であり、阻止壁128の中心のY座標がY
RS4であり、オフセット距離がr
OFF4である場合、Y
OE4=Y
RS4-r
OFF4の関係が成立する。導波管118の開口端の中心は、第4阻止壁の中心に対してオフセットされていなくてもよい。
【0043】
例えば、rOFF1=rOFF3である。例えば、rOFF2=rOFF4である。例えば、rOFF1=rOFF2=rOFF3=rOFF4である。
【0044】
第1阻止壁のX軸に沿った長さaは、例えば、導波管112の開口端のX軸に沿った長さlOE1より短い。a及びlOE1は同一の長さであってもよく、aはlOE1より長くてもよい。
【0045】
第2阻止壁のY軸に沿った長さbは、例えば、導波管114の開口端のY軸に沿った長さlOE2より短い。b及びlOE2は同一の長さであってもよく、bはlOE2より長くてもよい。
【0046】
第3阻止壁のX軸に沿った長さaは、例えば、導波管116の開口端のX軸に沿った長さlOE3より短い。a及びlOE3は同一の長さであってもよく、aはlOE3より長くてもよい。
【0047】
第4阻止壁のY軸に沿った長さbは、例えば、導波管118の開口端のY軸に沿った長さlOE4より短い。b及びlOE4は同一の長さであってもよく、bはlOE4より長くてもよい。
【0048】
電波放射器100は、垂直偏波の電波を放射する導波管112及び導波管116と、水平偏波の電波を放射する導波管114及び導波管118とを備える。したがって、電波放射器100は、垂直偏波及び垂直偏波の偏波共用が可能である。
【0049】
電波放射器100は、例えば、移動体通信システムのアンテナに用いられる。電波放射器100は、例えば、5G(5th Generation)移動体通信システムのアンテナに用いられる。電波放射器100は、例えば、Beyond 5G移動体通信システムのアンテナに用いられる。電波放射器100は、6G移動体通信システム以降の移動体通信システムのアンテナに用いられてもよい。電波放射器100は、3G(3rd Generation)移動体通信システムのアンテナやLTE(Long Term Evolution)通信システムのアンテナに用いられてもよい。
【0050】
電波放射器100は、V2V通信のアンテナに用いられてもよい。電波放射器100は、隊列走行用のヌルフィルアンテナに用いられてもよい。電波放射器100は、MIMO(Mutiple Input Mutiple Output)のアンテナに用いられてもよい。電波放射器100は、ダイバーシチアンテナに用いられてもよい。電波放射器100は、電子走査アンテナに用いられてもよい。
【0051】
図2は、電波放射器100を備えるアンテナ装置10の一例を概略的に示す。
図2の(a)は、アンテナ装置10の等角図である。
図2の(a)に示されるように、アンテナ装置10は、電波放射器100の他に、電波放射器100を収容する筐体70と、電波の伝搬方向に向かって広がって開口しているホーン部80とを備える。
【0052】
ホーン部80は、例えば、導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118のそれぞれの開口端で発生する開口端反射を抑制するために用いられる。ホーン部80は、例えば、金属で形成される。ホーン部80は、例えば、銅で形成される。ホーン部80は、アルミニウムや銀等のその他の金属で形成されてもよい。
【0053】
図2の(b)は、アンテナ装置10の平面図である。
図2の(b)に示されるように、電波放射器100は、ホーン部80の中央部分に位置し、導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118には、発振器132、発振器134、発振器136、及び、発振器138がそれぞれ配置されている。発振器132、発振器134、発振器136、及び、発振器138はそれぞれ、電波放射器100の第1ポート、第2ポート、第3ポート、及び、第4ポートとして機能してよい。
【0054】
図3は、電波放射器のSパラメータのシミュレーション結果を例示する。
図3において、開口端の長手方向の長さ=6.5mm、開口端の短手方向の長さ=3.25mmである4つの方形導波管と、a=3.2mm、b=3.2mm、d=3.2mmの金属ブロックである阻止体120とを有する電波放射器100、及び、阻止体120が配置されていない点以外、当該電波放射器100と同一の構造を有する電波放射器(「比較対象の電波放射器」と称する場合がある)を、シミュレーション対象の電波放射器とする。
【0055】
Sパラメータは、反射損失Siiと、通過損失Sij(i≠j)とを含む。Siiは、第iポートから放射した電波に対する第iポートで反射する電波の割合を示す。Sijは、第jポートから放射した電波に対する第iポートを通過する電波の割合を示す。よって、Sijは、第jポートと第iポートとの間の相互結合に起因する損失であるといえる。
【0056】
図3の(a)は、第1ポートの反射損失S
11のシミュレーション結果を示すグラフである。
図3の(a)のグラフの横軸は、周波数(GHz)である。
図3の(a)のグラフの縦軸は、反射損失(dB)である。
【0057】
4つの導波管を有する電波放射器が良好な動作特性を有するために反射損失S
ii(i=1、2、3、又は、4)が満たさなければならない反射損失条件は、S
ii≦-10dBである。
図3の(a)に示されるように、電波放射器100においてS
11≦-10dBを満たす周波数帯域は、比較対象の電波放射器においてS
11≦-10dBを満たす周波数帯域より帯域幅が広い。したがって、本実施形態に係る電波放射器100は、導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118で囲まれた領域に阻止体120を配置することによって、比較対象の電波放射器と比較して反射損失条件を満たす周波数帯域の帯域幅を広くすることができる。
【0058】
図3の(b)は、第1ポートの通過損失S
21、S
31、S
41のシミュレーション結果を示すグラフである。
図3の(b)のグラフの横軸は、周波数(GHz)である。
図3の(b)のグラフの縦軸は、通過損失(dB)である。
【0059】
4つの導波管を有する電波放射器が良好な動作特性を有するために通過損失S
ij(i=1、2、3、又は、4;j=1、2、3、又、は4;i≠j)が満たさなければならない通過損失条件は、S
ij≦-20dBである。
図3の(b)に示されるように、比較対象の電波放射器は、反射損失条件を満たす周波数領域において、S
31>-20dBとなる。よって、比較対象の電波放射器は、反射損失条件を満たす周波数領域において通過損失条件を満たさない。一方で、
図3の(b)に示されるように、電波放射器100は、反射損失条件を満たす周波数領域の全域において、S
21≦-20dB、S
31≦-20dB、S
41≦-20dBとなる。したがって、本実施形態に係る電波放射器100は、導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118で囲まれた領域に阻止体120を配置することによって、反射損失条件を満たす周波数領域の全域において通過損失条件を満たすことができる。
【0060】
阻止壁を有する金属ブロックや板等である阻止体120は簡易な構成を有する。したがって、本実施形態に係る電波放射器100は、簡易な構成で良好な動作特性を有する電波放射器を実現する。
【0061】
図4は、電波放射器100のSパラメータのシミュレーション結果を例示する。
図4において、開口端の長手方向の長さ=6.5mm、開口端の短手方向の長さ=3.25mmである4つの方形導波管と、a=3.2mm、b=3.2mm、d=1.6mmの金属ブロックである阻止体120とを有する電波放射器100(「第1電波放射器」と称する場合がある)、d=3.2mmである点以外、第1電波放射器と同一の構造を有する電波放射器100(「第2電波放射器」と称する場合がある)、及び、d=4.8mmである点以外、第1電波放射器と同一の構造を有する電波放射器100(「第3電波放射器」と称する場合がある)を、シミュレーション対象の電波放射器100とする。
【0062】
図4の(a)は、第1電波放射器、第2電波放射器、及び、第3電波放射器のそれぞれの第1ポートの反射損失S
11のシミュレーション結果を示すグラフである。
図4の(a)のグラフの横軸は、周波数(GHz)である。
図4の(a)のグラフの縦軸は、反射損失(dB)である。
図4の(a)に示されるように、第2電波放射器において反射損失条件(S
11≦-10dB)を満たす周波数帯域の帯域幅、及び、第3電波放射器において反射損失条件を満たす周波数帯域の帯域幅は、第1電波放射器において反射損失条件を満たす周波数帯域の帯域幅より長い。
【0063】
図4の(b)は、第1電波放射器の第1ポートの通過損失S
21、S
31、S
41のシミュレーション結果を示すグラフである。
図4の(b)のグラフの横軸は、周波数(GHz)である。
図4の(b)のグラフの縦軸は、通過損失(dB)である。
図4の(b)に示されるように、第1電波放射器は、反射損失条件を満たす周波数領域において、S
31>-20dBとなる周波数領域を含む。
【0064】
図4の(c)は、第2電波放射器の第1ポートの通過損失S
21、S
31、S
41のシミュレーション結果を示すグラフである。
図4の(c)のグラフの横軸は、周波数(GHz)である。
図4の(c)のグラフの縦軸は、通過損失(dB)である。
図4の(c)に示されるように、第2電波放射器は、反射損失条件を満たす周波数領域において、S
21≦-20dB、S
31≦-20dB、S
41≦-20dBとなる。
【0065】
図4の(d)は、第3電波放射器の第1ポートの通過損失S
21、S
31、S
41のシミュレーション結果を示すグラフである。
図4の(d)のグラフの横軸は、周波数(GHz)である。
図4の(d)のグラフの縦軸は、通過損失(dB)である。
図4の(d)に示されるように、第3電波放射器は、反射損失条件を満たす周波数領域において、S
21≦-20dB、S
31≦-20dB、S
41≦-20dBとなる。
【0066】
図4の(a)~
図4の(d)によれば、第2電波放射器及び第3電波放射器は、反射損失条件を満たす周波数領域の全域において、通過損失条件を満たすことができる。そして、第2電波放射器の阻止体120のdが3.2mmであり、第3電波放射器の阻止体120のdが4.8mmであるので、第2電波放射器は、第3電波放射器より小型である。以上より、装置の良好な動作特性及び装置の小型化の両方の観点から、第2電波放射器が最も良好な電波放射器であるといえる。
【0067】
図5は、電波放射器によって放射される電波の放射パターンのシミュレーション結果を例示する。
図5において、開口端の長手方向の長さ=6.5mm、開口端の短手方向の長さ=3.25mmである4つの方形導波管と、a=3.2mm、b=3.2mm、d=3.2mmの金属ブロックである阻止体120とを有する電波放射器100、及び、阻止体120が配置されていない点以外、当該電波放射器100と同一の構造を有する電波放射器(「比較対象の電波放射器」と称する場合がある)を、シミュレーション対象の電波放射器とする。
【0068】
図5は、垂直偏波の電波を放射する第1ポート及び第3ポートから電波を放射し、水平偏波の電波を放射する第2ポート及び第4ポートを50Ω抵抗で終端した場合における、電波の放射パターンのシミュレーション結果である。第3ポートから放射される電波の電波強度は第1ポートから放射される電波の電波強度と同一であり、第3ポートから放射される電波の位相は第1ポートから放射される電波の位相と180度異なるものとする。
【0069】
図5の(a)は、電波放射器によって放射される電波の周波数が28GHzである場合の電波の放射パターンのシミュレーション結果のグラフである。
図5の(b)は、電波放射器によって放射される電波の周波数が28.5GHzである場合の電波の放射パターンのシミュレーション結果のグラフである。
【0070】
図5の(a)のグラフ及び
図5の(b)のグラフのXZ平面は、
図1のXZ平面に対応する。
図5の(a)のグラフ及び
図5の(b)のグラフのθ=0°の方向は、
図1のZ軸の正の方向に対応する。
図5の(a)のグラフ及び
図5の(b)のグラフの主偏波(Co-Polarization;Co-Pol)の電波の偏波方向は垂直偏波の電波の偏波方向であり、
図1のY軸に平行な方向に対応する。
図5の(a)のグラフ及び
図5の(b)のグラフの交差偏波(cross polarization;X-Pol)の電波の偏波方向は水平偏波の電波の偏波方向であり、
図1のX軸に平行な方向に対応する。
【0071】
図5の(a)のグラフ及び
図5の(b)のグラフにそれぞれ示されるように、電波の放射パターンのピーク方向(θ=0°)周辺の方向において、電波放射器100の交差偏波の電波の絶対利得(dBi)が比較対象の電波放射器の交差偏波の電波の絶対利得より小さく、電波放射器100の主偏波の電波の絶対利得が比較対象の電波放射器の主偏波の電波の絶対利得より大きい。これは、ピーク方向周辺の方向の交差偏波の電波の絶対利得の低減が、ピーク方向周辺の方向の主偏波の電波の絶対利得の向上に寄与しているといえる。したがって、本実施形態に係る電波放射器100は、導波管112、導波管114、導波管116、及び、導波管118で囲まれた領域に阻止体120を配置することによって、比較対象の電波放射器と比較対象の電波のピーク方向周辺の利得特性を高めることができる。
【0072】
下記の表は、電波放射器100及び比較対象の電波放射器のピーク方向(θ=0°)における交差偏波識別度(XPD:Cross Polarization Discrimination)のシミュレーション結果を示す。尚、交差偏波識別度とは、主偏波の電波及び交差偏波の電波を識別できる度合を表す。
【0073】
【0074】
図6は、電波放射器100の利得特性のシミュレーション結果及び測定結果を例示する。
図6及び以下の
図7では、開口端の長手方向の長さ=6.5mm、開口端の短手方向の長さ=3.25mmである4つの方形導波管と、a=3.2mm、b=3.2mm、d=3.2mmの金属ブロックである阻止体120とを有する電波放射器100を製作し、当該電波放射器100のシミュレーション結果及び測定結果を取得したものとして、説明を続ける。
【0075】
図6のグラフの横軸は、周波数(GHz)である。
図6のグラフの縦軸は、第1ポート及び第3ポートから垂直偏波の電波を放射し、第2ポート及び第4ポートを50Ω抵抗で終端した場合における、電波の放射パターンのピーク方向(θ=0°)の主偏波の絶対利得(dBi)である。第3ポートから放射される電波の電波強度は第1ポートから放射される電波の電波強度と同一であり、第3ポートから放射される電波の位相は第1ポートから放射される電波の位相と180度異なるものとする。
図6に示されるように、電波放射器100の利得特性のシミュレーション結果及び測定結果は、概ね一致する。
【0076】
図7は、電波放射器100によって放射される電波の放射パターンのシミュレーション結果及び測定結果を例示する。
図7は、第1ポート及び第3ポートから垂直偏波の電波を放射し、第2ポート及び第4ポートを50Ω抵抗で終端した場合における、電波の放射パターンのシミュレーション結果及び測定結果である。第3ポートから放射される電波の電波強度は第1ポートから放射される電波の電波強度と同一であり、第3ポートから放射される電波の位相は第1ポートから放射される電波の位相と180度異なるものとする。
【0077】
図7の(a)は、電波放射器100によって放射される電波の周波数が28GHzである場合の電波の放射パターンのシミュレーション結果及び測定結果のグラフである。
図7の(b)は、電波放射器100によって放射される電波の周波数が28.5GHzである場合の電波の放射パターンのシミュレーション結果及び測定結果のグラフである。
【0078】
図7の(a)のグラフ及び
図7の(b)のグラフのXZ平面は、
図1のXZ平面に対応する。
図7の(a)のグラフ及び
図7の(b)のグラフのθ=0°の方向は、
図1のZ軸の正の方向に対応する。
図7の(a)のグラフ及び
図7の(b)のグラフの主偏波の電波の偏波方向は垂直偏波の電波の偏波方向であり、
図1のY軸に平行な方向に対応する。
図7の(a)のグラフ及び
図7の(b)のグラフの交差偏波の電波の偏波方向は水平偏波の電波の偏波方向であり、
図1のX軸に平行な方向に対応する。
【0079】
図7の(a)のグラフ及び
図7の(b)のグラフにそれぞれ示されるように、電波放射器100の電波の放射パターンのシミュレーション結果及び測定結果は、概ね一致する。下記の表は、電波放射器100のピーク方向(θ=0°)における交差偏波識別度のシミュレーション結果及び測定結果を示す。
【0080】
【0081】
図8は、電波放射器100を備えるアンテナ装置10の他の一例を概略的に示す。
図8に例示する電波放射器100は、電波放射器100の他に、台座20、支持部30、反射部40、制御装置50、筐体70、及び、ホーン部80を備える。
【0082】
制御装置50は、各種制御を実行する。例えば、制御装置50は、送信データを出力すべく、筐体70に収容されている電波放射器100から電波を放射させる。電波放射器100から放射された電波は、台座20に固定された支持部30に支持されている反射部40によって反射されて、外部に向けて出力される。
【0083】
反射部40は、反射板であってよい。反射部40の形状は、電波放射器100によって放射される電波を反射することができれば、どのような形状であってもよい。反射部40は、例えば、パラボラ形状である。反射部40は、板状であってもよい。
【0084】
制御装置50は、例えば、反射部40を調整することによって、電波の外部への出力方向を変更する。制御装置50は、例えば、モータによって台座20を回転させることによって、反射部40を電波放射器100に対して回転移動させ、電波の出力方向を変化させる。
【0085】
制御装置50は、例えば、反射部40を、一定の速度で連続的に回転移動させる。制御装置50は、反射部40を、一定の速度ではなく連続的に回転移動させてもよい。制御装置50は、反射部40を、非連続的に回転移動させてもよい。例えば、制御装置50は、外部から受け付けた指示に応じて、指示された位置に反射部40を回転移動させてもよい。
【0086】
制御装置50は、例えば、台座20を回転させるモータの制御量によって、反射部40の回転位置を把握する。制御装置50は、センサを用いて、反射部40の回転位置を把握してもよい。
【0087】
センサは、反射部40の回転位置を特定可能であれば、どのようなものであってもよい。例えば、センサは、台座20の回転量を直接計測可能なセンサであってよい。また、例えば、センサは、台座20を撮像したり、反射部40を撮像したりすることによって、反射部40の回転位置を特定可能なセンサであってもよい。
【0088】
図9及び
図10は、
図8に示すアンテナ装置10が外部に向けて出力する出力電波45を例示する。
図9及び
図10に示す例において、アンテナ装置10は、信号生成器52と、信号生成器54とを備える。
【0089】
信号生成器52は、電波放射器100の第1ポート及び第3ポートに垂直偏波の電波を発生させるための電気信号を生成する。信号生成器54は、電波放射器100の第2ポート及び第4ポートに水平偏波の電波を発生させるための電気信号を生成する。
【0090】
例えば、アンテナ装置10は、信号生成器52を用いて第1ポート及び第3ポートに垂直偏波の電波を発生させることによって、電波放射器100に垂直偏波の電波を放射させる。また、例えば、アンテナ装置10は、信号生成器54を用いて第2ポート及び第4ポートに水平偏波の電波を発生させることによって、電波放射器100に水平偏波の電波を放射させる。アンテナ装置10は、水平偏波の電波及び垂直偏波の電波の割合を調整することによって、電波放射器100から反射部40に向かう電波の偏波方向を調整できる。
【0091】
アンテナ装置10は、例えば、出力電波45の偏波方向が変化しないように、第1ポート及び第3ポートに発生させる垂直偏波、並びに、第2ポート及び第4ポートに発生させる水平偏波の割合を変更する。
図9及び
図10に示す例では、反射部40の偏波方向が垂直偏波のまま変化しないように、アンテナ装置10は、反射部40が
図9に示す角度のときには、第1ポート及び第3ポートのみに垂直偏波の電波を発生させ、反射部40が
図10に示す角度のときには、第2ポート及び第4ポートのみに水平偏波の電波を発生させる。
【0092】
図11は、制御装置50の機能構成の一例を概略的に示す。制御装置50は、信号生成器52、信号生成器54、及びアンテナ制御部60を備えてよい。尚、制御装置50がこれらの全ての構成を備えることが必須とは限らない。
【0093】
アンテナ制御部60は、出力方向変更部62、電波調整部64、及び、回転位置判定部66を有する。出力方向変更部62は、反射部40を調整することによって電波の外部への出力方向を変更する。出力方向変更部62は、例えば、反射部40を電波放射器100に対して回転移動することによって電波の外部への出力方向を変更する。出力方向変更部62は、モータを制御することによって、反射部40を電波放射器100に対して回転移動させてよい。
【0094】
電波調整部64は、電波放射器100によって放射される電波を調整する。電波調整部64は、例えば、信号生成器52を用いて、電波放射器100によって放射される垂直偏波の電波を調整する。電波調整部64は、例えば、信号生成器54を用いて、電波放射器100によって放射される水平偏波の電波を調整する。電波調整部64は、例えば、電波放射器100によって放射される垂直偏波の電波及び水平偏波の電波を調整する。
【0095】
電波調整部64は、例えば、電波放射器100によって放射される電波の電波強度を調整する。電波調整部64は、例えば、電波放射器100によって放射される垂直偏波の電波の電波強度を調整する。電波調整部64は、例えば、第1導波管から放射される電波の電波強度に対する第3導波管から放射される電波の電波強度の割合が予め定められた割合となるように、第1導波管から放射される電波の電波強度及び第3導波管から放射される電波の電波強度の少なくとも一方を調整する。
【0096】
電波調整部64は、例えば、電波放射器100によって放射される水平偏波の電波強度を調整する。電波調整部64は、例えば、第2導波管から放射される電波の電波強度に対する第4導波管から放射される電波の電波強度の割合が予め定められた割合となるように、第2導波管から放射される電波の電波強度及び第4導波管から放射される電波の電波強度の少なくとも一方を調整する。
【0097】
電波調整部64は、例えば、電波放射器100によって放射される電波の位相を調整する。電波調整部64は、例えば、電波放射器100によって放射される垂直偏波の電波の位相を調整する。電波調整部64は、例えば、第1導波管から放射される電波の位相と第3導波管から放射される電波の位相との間の位相差が予め定められた位相差となるように、第1導波管から放射される電波の位相及び第3導波管から放射される電波の位相の少なくとも一方を調整する。
【0098】
電波調整部64は、例えば、電波放射器100によって放射される水平偏波の電波の位相を調整する。電波調整部64は、例えば、第2導波管から放射される電波の位相と第4導波管から放射される電波の位相との間の位相差が予め定められた位相差となるように、第2導波管から放射される電波の位相及び第4導波管から放射される電波の位相の少なくとも一方を調整する。
【0099】
電波調整部64は、例えば、出力方向変更部62による反射部40の調整に応じて、電波放射器100によって放射される電波を調整する。電波調整部64は、例えば、外部に出力される電波の偏波方向が変化しないように、出力方向変更部62による反射部40の調整に応じて電波放射器100によって放射される電波を調整する。電波調整部64は、例えば、出力方向変更部62から反射部40の調整量を取得して、反射部40の調整量に合わせて電波放射器100によって放射される電波を調整する。
【0100】
電波調整部64は、例えば、電波放射器100によって放射される垂直偏波の電波及び垂直偏波の電波の割合を調整することによって、電波放射器100によって放射される電波の偏波方向を調整する。電波調整部64は、例えば、電波放射器100に対する反射部40の角度に応じて、電波放射器100によって放射される垂直偏波の電波及び垂直偏波の電波の割合を調整する。
【0101】
電波調整部64は、例えば、電波放射器100によって放射される垂直偏波の電波及び垂直偏波の電波の割合を、電波放射器100に対する反射部40の角度に対応する割合とする。反射部40の角度に対応する、電波放射器100によって放射される垂直偏波の電波及び垂直偏波の電波の割合は、出力電波の偏波方向毎に、予め登録されていてよい。
【0102】
例えば、出力電波の偏波方向が垂直偏波のまま変化しないようにするための、反射部40の角度毎の、電波放射器100によって放射される垂直偏波の電波及び垂直偏波の電波の割合が予め登録される。また、例えば、出力電波の偏波方向が水平偏波のまま変化しないようにするための、反射部40の角度毎の、電波放射器100によって放射される垂直偏波の電波及び垂直偏波の電波の割合が予め登録される。
【0103】
回転位置判定部66、電波放射器100に対する反射部40の回転位置を判定する。回転位置判定部66は、例えば、センサを用いて、電波放射器100に対する反射部40の回転位置を判定する。電波調整部64は、回転位置判定部66によって判定された反射部40の回転位置に応じて、電波放射器100によって放射される電波を調整してよい。
【0104】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0105】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0106】
10 アンテナ装置、20 台座、30 支持部、40 反射部、45 出力電波、50 制御装置、52 信号生成器、54 信号生成器、60 アンテナ制御部、 62 出力方向変更部、64 電波調整部、66 回転位置判定部、70 筐体、80 ホーン部、100 電波放射器、102 本体、112 導波管、114 導波管、116 導波管、118 導波管、120 阻止体、126 阻止壁、128 阻止壁、132 発振器、134 発振器、136 発振器、138 発振器
【要約】 (修正有)
【課題】簡単な構成で回転ビーム走査が可能な、電波放射器及びホーンアンテナ装置を提供する。
【解決手段】電波放射器、それを収容する及び筐体ホーン部を備えるアンテナ装置において、電波放射器100は、垂直偏波の電波を発生させる第1発振器が配置される第1導波管112と、水平偏波の電波を発生させる第2発振器が配置される第2導波管114と、垂直偏波の電波を発生させる第3発振器が配置される第3導波管116と、水平偏波の電波を発生させる第4発振器が配置される第4導波管118と、一の導波管から放射された電波が他の導波管を通過することを阻止する阻止体120と、を備える。第1導波管及び第3導波管は、垂直偏波の電波の偏波方向に平行な第1軸に沿って配置される。第2導波管及び第4導波管は、水平偏波の電波の偏波方向に平行な第2軸に沿って配置される。阻止体は、導波管で囲まれた領域から、電波の伝搬方向に向かって突出している。
【選択図】
図1