IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許7459232直流電圧変換器および直流電圧変換器の動作方法
<>
  • 特許-直流電圧変換器および直流電圧変換器の動作方法 図1
  • 特許-直流電圧変換器および直流電圧変換器の動作方法 図2
  • 特許-直流電圧変換器および直流電圧変換器の動作方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】直流電圧変換器および直流電圧変換器の動作方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022513108
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2020072380
(87)【国際公開番号】W WO2021037542
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】102019213068.2
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】キエンツラー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】エステグラル,ゴラマバス
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/162408(WO,A1)
【文献】特開2005-176567(JP,A)
【文献】特開2011-030343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御量(R1)を、現在の入力電圧の値(U_in)と、現在の入力電流の値(I_in)と、出力電圧の目標値(U_des)とを使用して決定するために設計された第1の制御装置(10)と、
第2の制御量(R2)を、前記出力電圧の目標値(U_des)と、現在の出力電圧の値(U_out)とを使用して決定するために設計された第2の制御装置(20)と、
前記第1の制御量(R1)と前記第2の制御量(R2)とを組み合わせ、かつ目標制御量(R3)として出力するために設計された組合せ部(40)と、
前記目標制御量(R3)の勾配を所定の最小値および/または所定の最大値に制限し、かつ前記制限された目標制御量(R3)を出力制御量(R4)として提供するために設計された第3の制御装置(30)と、
前記出力制御量(R4)を使用して、入力直流電圧(U_in)を出力直流電圧(U_out)に変換するために設計された少なくとも1つの直流電圧変換モジュール(50)とを備え、
前記第3の制御装置(30)が、前記目標制御量(R3)の前記勾配を、前記現在の入力電圧の値(U_in)と、前記現在の出力電圧の値(U_out)とを使用して制限するために設計されている、直流電圧変換器(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの直流電圧変換モジュール(50)がそれぞれ変圧器を含んでおり、かつ前記変圧器が入力端子と出力端子との間に配置されており、ならびに
前記第3の制御装置(30)が、前記目標制御量(R3)の前記勾配を、前記変圧器の変圧比(N)を使用して制限するために設計されている、請求項1に記載の直流電圧変換器(1)。
【請求項3】
前記第3の制御装置(30)が、前記直流電圧変換器(1)内の最大の電流変化を制限するために設計されている、請求項1または2に記載の直流電圧変換器(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの直流電圧変換モジュール(50)が、昇圧コンバータ動作で動作される、請求項1から3のいずれか一項に記載の直流電圧変換器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧変換器および直流電圧変換器の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102016219740号明細書は、複数の並列に接続された直流電圧変換モジュールを備えた直流電圧コンバータを開示している。この場合、すべての直流電圧変換モジュールに対して1つの共通の電圧レギュレータが設けられている。それだけでなく、各直流電圧変換モジュールに対して別々に電流を調整することが企図されている。
【0003】
直流電圧変換器は、入力直流電圧を出力直流電圧に変換するために提供されており、これに関し、入力直流電圧の電圧高さは、出力直流電圧の電圧高さとは相違し得る。直流電圧変換器の出力電圧および出力電流は、調整手段により、設定された目標値に従って調整され得る。
【0004】
本発明は、独立特許請求項の特徴を有する直流電圧変換器および直流電圧変換器の動作方法を開示している。さらなる有利な実施形態は従属特許請求項の対象である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
これに応じて企図されるのは:
第1の制御装置と、第2の制御装置と、組合せ部と、第3の制御装置と、少なくとも1つの直流電圧変換モジュールとを備えた直流電圧変換器である。第1の制御装置は、第1の制御量を決定するために設計されている。第1の制御量は、とりわけ、現在の入力電圧の値と、現在の入力電流の値と、出力電圧の目標値とを使用して決定され得る。第2の制御装置は、第2の制御量を決定するために設計されている。第2の制御量は、とりわけ、出力電圧の目標値と、現在の出力電圧の値とを使用して決定され得る。組合せ部は、第1の制御量と第2の制御量を組み合わせるために設計されている。第1および第2の制御量の組合せが、目標制御量として出力され得る。第3の制御装置は、目標制御量の勾配、つまり第1および第2の制御量の組合せの勾配を、所定の最小値および/または最大値に制限するために設計されている。第3の制御装置によって制限された目標制御量は、出力制御量として提供され得る。少なくとも1つの直流電圧変換モジュールは、出力制御量を使用して、入力直流電圧を出力直流電圧に変換するために設計されている。
【0006】
さらに企図されるのは:
直流電圧変換器の動作方法である。この方法は、現在の入力電圧の値と、現在の入力電流の値と、出力電圧の目標値とを使用して第1の制御量を決定するためのステップを含む。この方法は、出力電圧の目標値と、現在の出力電圧の値とを使用して第2の制御量を決定するためのステップをさらに含む。この方法はそれだけでなく、第1の制御量と第2の制御量を目標制御量へと組み合わせるためのステップおよび目標制御量の勾配を制限するためのステップを含む。とりわけ、目標制御量が所定の最小値および/または所定の最大値に制限され得る。こうして制限された目標制御量は、出力制御量として提供され得る。この方法は最後に、少なくとも1つの直流電圧変換モジュールを制御するためのステップを含むことができ、これに関しては、直流電圧変換モジュールが出力制御量を使用して制御され得る。
【0007】
本発明の基礎になっているのは、直流電圧変換器内の電流は、とりわけ昇圧動作(英語:Boost動作)では、調整挙動に応じて場合によっては非常に急激に上昇または低下し得るという知見である。直流電圧変換器内の電流の上昇または低下のこのような非常に速い変化は、場合によっては直流電圧変換器内の電気部品に非常に強く負荷をかけ得る。これは時には直流電圧変換器内の部品の破壊にまで至り得る。
【0008】
したがって本発明のアイデアは、この知見を顧慮し、かつ直流電圧変換器のための、直流電圧変換器内の電流の過度に強い上昇または低下を伴う動作状態を防止し得る調整を企図することである。このために、直流電圧変換器を制御するための制御量の勾配を制限することが企図されている。この制御量は、例えば直流電圧変換器内のスイッチング素子の制御に関するデューティ比であり得る。すなわち制御量の勾配を制限することにより、直流電圧変換器内の電流の最大の上昇または低下も制限され得る。それだけでなく、電流の上昇または低下に対して設定された限界を守ることで、直流電圧変換器内の部品の過負荷に対する限界を超えることなく、所望の目標電圧または所望の目標電流をできるだけ速く調整することが可能である。
【0009】
一実施形態によれば、第3の制御装置は、目標制御量の勾配を、現在の入力電圧の値と、現在の出力電圧の値とを使用して制限するために設計されている。第3の制御装置は、例えば、現在の動作状態の現在の入力電圧および現在の出力電圧の値から、およびとりわけ直流電圧変換モジュール内の現在に調整されている制御量を確定し得る。これに相応して、現在の制御量と設定された目標制御量との比較から、新たに調整すべき制御量の勾配が確定され得る。この勾配が、設定された限界を超える場合、第3の制御装置は、新たに調整すべき制御量を、設定された限界に従う制御量に制限し得る。
【0010】
一実施形態によれば、少なくとも1つの直流電圧変換モジュールは変圧器を含んでいる。変圧器は、とりわけ直流電圧変換モジュールの入力端子と出力端子の間に設けられ得る。この場合、第3の制御装置は、目標制御量の勾配を、変圧器の変圧比を使用して制限するために設計され得る。変圧比は、とりわけ変圧器の一次コイルと二次コイルの巻数の比を意味し得る。この変圧比は、現在の入力電圧および現在の出力電圧と共に、直流電圧変換器の現在の調整を決定するために参照され得る。
【0011】
一実施形態によれば、第3の制御装置は、直流電圧変換器内の最大の電流変化を制限するために設計されている。この最大の電流変化は、例えば直流電圧変換器の入力電流または出力電流に関し得る。直流電圧変換器内の電流変化の制限、したがって電流勾配の制限により、直流電圧変換器内の部品の過負荷を回避できることが保証され得る。
【0012】
一実施形態によれば、直流電圧変換器の少なくとも1つの直流電圧変換モジュールは、昇圧コンバータ動作(Boost動作)で動作される。とりわけ昇圧コンバータ動作では、ある特定の制御量以降、とりわけある特定のデューティ比以降、電流の強い変化の場合に、部品の損傷にまで至り得る部品の過負荷が発生し得る。制御量の制限、したがって電流の変化の制限により、このような危険な動作状態が防止され得る。
【0013】
上記の形態および変形形態は、有意義であれば、任意に相互に組み合わされ得る。本発明のさらなる形態、変形形態、および実装は、上でまたは以下で例示的実施形態に関連して述べられている本発明の特徴の、明確には挙げられていない組合せも含む。これに関してはとりわけ、当業者は本発明のそれぞれの基本形に対する改善または補充としての個々の態様も付け加えるであろう。
【0014】
以下に、本発明のさらなる特徴および利点を図に基づいて解説する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態による直流電圧変換器のブロック図の概略図である。
図2】一実施形態による直流電圧変換器の制御装置の基礎になっているブロック図の概略図である。
図3】一実施形態による直流電圧変換器の動作方法の基礎になっているフローチャートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、一実施形態による直流電圧変換器1の基礎になっている原理回路図の概略図を示している。直流電圧変換器1は、入力直流電圧U_inを出力電圧U_outに変換する1つまたは複数の直流電圧変換モジュール50を含み得る。図1では1つの直流電圧変換モジュール50しか図示していないのではあるが、原理的には、複数の直流電圧変換モジュール50を並列に動作させることも可能である。出力電圧U_outおよび/または出力電流は、この場合、相応の調整手段によって調整され得る。直流電圧変換器1の出口では、負荷、例えばコンデンサCが接続され得る。
【0017】
直流電圧変換器1、とりわけ直流電圧変換モジュール50を調整するため、例えば第1の制御装置10が設けられ得る。この第1の制御装置10は、例えばプレ制御の枠内で第1の制御量R1を決定し得る。この第1の制御量R1は、例えば直流電圧変換器の入力電圧U_inと、出力電圧の所望の目標値U_desとを根拠として決定され得る。それだけでなく直流電圧変換器内の電流、とりわけ直流電圧変換モジュール50の入口での電流I_inも、第1の制御量R1を決定するために考慮され得る。さらに、場合によっては直流電圧変換モジュール50内の変圧器の変圧比Nも、第1の制御量R1を決定するために考慮され得る。
【0018】
それだけでなく第2の制御装置20により、電圧調整の枠内で第2の制御量R2が決定され得る。第2の制御量R2は、とりわけ直流電圧変換器1の出力電圧の目標値U_desと、直流電圧変換器1の出口での実際の現在の値U_outとを考慮して決定され得る。
【0019】
第1の制御装置10からの第1の制御量R1および第2の制御装置20からの第2の制御量R2は、組合せ機構40内でまとめられ、例えば合計され得る。第1の制御量R1と第2の制御量R2との組合せは、目標制御量R3として組合せ機構40から出力され得る。したがってこの目標制御量R3は、所望の出力電圧U_desを達成するために、現在の出力電圧U_outおよびさらなる基本条件、例えば入力電圧U_in、入力電流I_inなどを考慮して調整された制御量であることが望ましい。この制御量は、例えば直流電圧変換モジュール50内のスイッチング素子を制御するためのデューティ比の設定であり得る。
【0020】
特定の動作条件下、とりわけある特定のデューティ比以降では、制御量の強すぎる変化、とりわけデューティ比の強い変化が、電流の強い変化、したがって高い電流勾配に至り得る。直流電圧変換器1、とりわけ直流電圧変換モジュール50内の部品の損傷を回避するため、制御量R3の勾配、したがって直流電圧変換器1内の電流勾配、つまり電流の変化が、第3の制御装置30によって制限され得る。組合せ機構40からの制御量R3の勾配が設定された最大値を上回る場合または制御量R3の(負の)勾配が最小値を下回る場合、組合せ機構40から出力された制御量R3を制限することができる。このようにして第3の制御装置3は、勾配が(正の)最大値と(負の)最小値の間の設定された窓内で動く出力制御量R4を提供し得る。この制限された制御量R4は、その後、直流電圧変換モジュール50に提供され得る。
【0021】
第3の制御装置30は、例えば現在の動作点R_curを、現在の入力電圧U_inと、直流電圧変換モジュール50内の変圧器の変圧比Nと、現在の出力電圧U_outとから、以下のように計算し得る。
R_cur=1-(U_in×N/(2×U_out))
【0022】
目標制御量R3が現在の動作点R_curより明らかに大きい場合、これは直流電圧変換器内の大きすぎる電流に至り得る。これに対し目標制御量R3が現在の動作点R_curより明らかに小さい場合は電流が流れない。
【0023】
直流電圧変換モジュール50内の変圧器の鉄心飽和の可能性を回避するため、最初に、目標制御量R3の勾配が、ランプ関数f()により、正の勾配d_upと負の勾配d_downの間に制限され得る。
【0024】
それだけでなく電流勾配が例えば最大10%に制限され得る。
-0.1<R4-R_cur<+0.1
この方程式に1.0を加え、かつ現在の動作点に関する式を代入すると、これにより、下の勾配d_minと上の勾配d_maxの間の一般条件として、
d_min<R4+(U_in×N/(2×U_out))<d_max
が生じる。
【0025】
この場合に関し、直流電圧変換モジュール50の制御量の勾配は、ランプ関数f()により、さらに最大勾配d_slowに制限され得る。
【0026】
図2は、上で説明したような、直流電圧変換モジュール50の制御量の勾配を制限するための第3の制御装置30のブロック図の概略図を示している。
【0027】
図2で認識できるように、目標制御量R3、例えば第1の制御量R1と第2の制御量R2の組合せが、直流電圧変換モジュール50を制御するための制御量R4の勾配を制限するために制限され得る。このために、入力直流電圧U_inと、直流電圧変換モジュール50内の変圧器の変圧比と、出力直流電圧U_outとから、現在の動作点が確定され得る。現在の動作点は、その後、限界d_min、d_maxと、最大勾配d_up、d_down、およびd_slowの設定とに相応して制限され得る。その後、勾配が制限された制御量R4が、直流電圧変換モジュール50を制御するために出力され得る。
【0028】
図3は、一実施形態による直流電圧変換器1の動作方法の基礎になっているフローチャートの概略図を示している。
【0029】
ステップS1では、第1の制御量が、現在の入力電圧の値U_inと、現在の入力電流の値I_inと、出力電圧の目標値U_desとを使用して決定される。
ステップS2では、第2の制御量R2が、出力電圧の目標値U_desと、現在の出力電圧の値U_outとを使用して決定される。
ステップS3では、第1の制御量R1と第2の制御量R2が目標制御量R3へと組み合わされる。
【0030】
ステップS4では、目標制御量R4の勾配が所定の最大値および/または所定の最小値に制限され、こうして制限された目標制御量R3が、出力制御量R4として提供される。
【0031】
勾配が制限された出力制御量R4は、その後、ステップS5で1つまたは複数の直流電圧変換モジュール50を制御するために使用され得る。
【0032】
まとめると、本発明は直流電圧変換器の制御に関し、この場合、直流電圧変換器を制御するための制御量の勾配が制限される。直流電圧変換器の場合によっては危険な動作状態を回避するために、制御量の勾配の制限により、直流電圧変換器内の最大の電流変化が制限され得る。
図1
図2
図3