(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】皮膚疾患を処置するためのブラジキニン(BK)B2受容体アンタゴニストとしての(R)-3-(クロロ-5-フルオロ-2-((4-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリン誘導体および関連化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 413/14 20060101AFI20240325BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240325BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240325BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240325BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240325BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20240325BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20240325BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20240325BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240325BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240325BHJP
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A61P 25/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240325BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240325BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240325BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20240325BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240325BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240325BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240325BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C07D413/14 CSP
A61K31/5377
A61K45/00
A61P1/00
A61P1/02
A61P1/16
A61P1/18
A61P3/00
A61P5/00
A61P7/00
A61P7/10
A61P9/00
A61P11/04
A61P13/02 105
A61P13/12
A61P15/00
A61P17/00
A61P17/02
A61P19/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/04
A61P27/02
A61P27/16
A61P29/00
A61P29/02
A61P31/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/08
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2022516260
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020064379
(87)【国際公開番号】W WO2020234480
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-12-08
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521511184
【氏名又は名称】ファーヴァリス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PHARVARIS GMBH
【住所又は居所原語表記】Grafenauweg 8,6300 Zug,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ザウペ,イェルン
(72)【発明者】
【氏名】アンブローシ,ホルスト-ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ハウシュテット,ラルス オレ
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/116620(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/031589(WO,A1)
【文献】特表2016-514141(JP,A)
【文献】特表2021-504464(JP,A)
【文献】特表2022-533487(JP,A)
【文献】特表2002-537392(JP,A)
【文献】特表2000-509066(JP,A)
【文献】特表平10-507764(JP,A)
【文献】国際公開第98/042672(WO,A1)
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2009年,52(14),4370-4379
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
式中、
Aは、基:
【化2】
を表し、
A
1は、NまたはCHであり;
A
2は、NまたはC-R
A2であり
;
A
3は、NまたはC-R
A3であり;
A
4は、NH、OまたはSであり;
A
5は、N-R
A5であり;
R
A1は、水素原子またはメチル基を表し;
R
A2およびR
A3は、各々、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、OH、CN、NH
2;(C
1-C
3)アルキル、これは、ハロゲン原子、OH、=OおよびNH
2から選択される1つ以上の同一のもしくは異なる基により置換されていてもよい;(C
1-C
3)アルコキシ、これは、ハロゲン原子、OH、=OおよびNH
2から選択される1つ以上の同一のもしくは異なる基により置換されていてもよい;(C
2-C
5)アルコキシアルキル、これは、ハロゲン原子、OH、=OおよびNH
2から選択される1つ以上の同一のもしくは異なる基により置換されていてもよい;C(O)NR
A6R
A7;またはNR
A6R
A7を表し;
R
A5、R
A6およびR
A7は、各々、互いに独立して、水素原子、または(C
1-C
3)アルキル基、これは、ハロゲン原子、OH、=OおよびNH
2から選択される1つ以上の同一のもしくは異なる基により置換されていてもよい、を表し;
R’は、水素原子または重水素原子を表し;
Bは、5員または6員の飽和または部分的に不飽和のヘテロシクロアルキル基を表し、これは、=O、ハロゲン原子、R
B1、OR
B2およびNH
2から選択される1つ以上の同一のもしくは異なる基により置換されていてもよく;
R
B1は、水素原子またはR
B2を表し;
R
B2は、(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
3)ハロアルキル、(C
1-C
3)ヒドロキシアルキル、または(C
1-C
3)ヘテロアルキル基を表し;
Rは、水素原子またはGを表し;
Gは、(C
1-C
6)アルキル基を表し、ここで、1~5個のH原子は、各々の場合において独立して、=O、ハロゲン原子、OR
G1、または1もしくは2個のR
B2で任意に置換されていてもよい5員のヘテロ環式環により置き換えられていてもよく;
R
G1は、水素原子、(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
3)ハロアルキル、(C
1-C
3)ヒドロキシアルキル、または(C
1-C
3)ヘテロアルキル基を表し;ならびに
nは、数0または1を表す、
の化合物またはその塩。
【請求項2】
Aが:
【化3】
を表す、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項3】
Bが、基:
【化4】
を表し、
ここで、
Gは、請求項1において定義されるとおりである、
請求項1または2に記載の化合物または塩。
【請求項4】
Bは:
【化5】
であり;
Gは、-C(O)-R
1であり;
R
1は、-CR
11R
12R
13、または1もしくは2個のR
B2で任意に置換されていてもよい5員のヘテロ環式環を表し;
R
11およびR
12は、各々、互いに独立して、水素原子またはメチル基を表し;
R
13は、水素原子、OHまたはOR
2を表し;ならびに
R
2は、(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
3)ハロアルキル、(C
1-C
3)ヒドロキシアルキル、または(C
1-C
3)ヘテロアルキル基を表す、
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物または塩。
【請求項5】
R
1は、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、チアゾリニル、イミダゾリニル、ジオキソリル、ジオキソラニル、ジヒドロオキサジアゾリル、テトラヒドロフリル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ジヒドロトリアゾリル、およびテトラヒドロトリアゾリルから選択される5員のヘテロ環式環を表し;このヘテロ環式環は、1もしくは2個のR
B2で任意に置換されていてもよい、請求項4に記載の化合物または塩。
【請求項6】
R’が水素原子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物または塩。
【請求項7】
R’が重水素原子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物または塩。
【請求項8】
Gが:
【化6】
から選択される基である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物または塩。
【請求項9】
化合物が、群:
【化7】
から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物または塩。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物ならびに任意に少なくとも1つのキャリア物質、賦形剤および/またはアジュバントを含む、医薬組成物。
【請求項11】
エアロゾル、クリーム、ゲル、丸剤、カプセル、シロップ、溶液、経皮貼付剤または医薬送達デバイスとして処方される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む、組み合わせ調製物。
【請求項13】
医薬としての使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合
物。
【請求項14】
医薬としての使用のための、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬としての使用のための、請求項12に記載の組み合わせ調製物。
【請求項16】
BK B2受容体の調節に対して応答性の状態の処置および/または予防における使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合
物。
【請求項17】
BK B2受容体の調節に対して応答性の状態の処置および/または予防における使用のための、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項18】
BK B2受容体の調節に対して応答性の状態の処置および/または予防における使用のための、請求項12に記載の組み合わせ調製物。
【請求項19】
状態が、皮膚障害;眼疾患;耳疾患;口腔、咽喉および呼吸器の疾患;胃腸管疾患;肝臓、胆嚢および膵臓の疾患;尿路および腎臓の疾患;男性生殖器および女性生殖器の疾患;ホルモン系の疾患;代謝疾患;心血管疾患;血液疾患;リンパ性疾患;中枢神経系の障害;脳障害;筋骨格系疾患;アレルギー障害;疼痛;感染性疾患;炎症性障害;傷害;免疫学障害;がん;遺伝性疾患;または浮腫である、請求項
16に記載の使用のため
の化合物。
【請求項20】
状態が、皮膚障害;眼疾患;耳疾患;口腔、咽喉および呼吸器の疾患;胃腸管疾患;肝臓、胆嚢および膵臓の疾患;尿路および腎臓の疾患;男性生殖器および女性生殖器の疾患;ホルモン系の疾患;代謝疾患;心血管疾患;血液疾患;リンパ性疾患;中枢神経系の障害;脳障害;筋骨格系疾患;アレルギー障害;疼痛;感染性疾患;炎症性障害;傷害;免疫学障害;がん;遺伝性疾患;または浮腫である、請求項17に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
状態が、皮膚障害;眼疾患;耳疾患;口腔、咽喉および呼吸器の疾患;胃腸管疾患;肝臓、胆嚢および膵臓の疾患;尿路および腎臓の疾患;男性生殖器および女性生殖器の疾患;ホルモン系の疾患;代謝疾患;心血管疾患;血液疾患;リンパ性疾患;中枢神経系の障害;脳障害;筋骨格系疾患;アレルギー障害;疼痛;感染性疾患;炎症性障害;傷害;免疫学障害;がん;遺伝性疾患;または浮腫である、請求項18に記載の使用のための組み合わせ調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ブラジキニン(BK)B2受容体アンタゴニストとして作用する一般式(I)による化合物;本発明の化合物のうちの1つ以上を含む医薬組成物;本発明の少なくとも1つの化合物および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む組み合わせ調製物;ならびに医薬としての使用を含む前記化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
BKは、内皮細胞の活性化により炎症性プロセスに関与し、血管拡張、血管の透過性の増大、一酸化窒素の産生およびアラキドン酸の動員をもたらすペプチドホルモンである。BKはまた、感覚神経の終末を刺激し、熱傷感覚異常を引き起こす。したがって、炎症の古典的なパラメーター(例えば、発赤、発熱、腫脹および疼痛)は、全て、BK形成から生じ得る。BKは、カリクレイン-キニン系の短命な構成成分である。循環するBKの濃度は、正常な生理学的条件下においては低レベルに維持され、病理学的状況下においては、キニノーゲンと称される循環する糖タンパク質前駆体の酵素による分解により、迅速に増大し得る。2つの最も強力なキニノーゲン代謝酵素は、トリプシン様セリンプロテアーゼである血漿カリクレインおよび組織カリクレインである。これらの酵素の前駆体は、通常は全ての組織において存在し、生理学的または病態生理学的プロセスにより活性化される用意ができている(Sainz, I. M. et al Thromb. Haemost. 2007, 98, 77-83)。BK B2受容体は、ほとんどの細胞および組織の型において構成的に発現され、BKが血漿または組織において産生された場合、BKの既知の効果のほとんどを媒介する(Regoli, D. et al Pharmacol. Rev. 1980, 32, 1-46)。多数のin vivoでの研究は、BK B2受容体を遮断する剤が、喘息、アレルギー性鼻炎、膵炎、骨関節炎(osteoarthritis)、外傷性脳傷害、アルツハイマー病および血管浮腫などの病理学的状態において治療上の利益を提供することを示している。
【0003】
多数のペプチドおよび非ペプチド性のBK B2受容体のアンタゴニストが、先行技術において記載されている。BK B2受容体アンタゴニストとしての活性を有するキノリン誘導体は、例えば、WO 2014/159637、WO 2010/031589、WO 2008/116620、WO 2006/40004、WO 03/103671、WO 03/87090、WO 00/23439、WO 00/50418、WO 99/64039、WO 97/41104、WO 97/28153、WO 97/07115、WO 96/13485、EP 0 795 547、EP 0 796 848、EP 0 867 432、およびEP 1 213 289において開示される。しかし、これらの化合物は、WO 2014/159637において開示されるとおり、低い代謝安定性、低いバイオアベイラビリティ、グルタチオン付加物の形成および生体内活性化(毒性)を含む、薬物としてのそれらの有用性を損なう多数の欠陥を示した。
【0004】
先行技術の化合物の欠陥、ならびに急性および慢性の両方の病態生理学的レベルのBKに関連する重篤な状態を考慮すると、新たなBK B2受容体アンタゴニストについての必要性はなお存在する。
【発明の概要】
【0005】
発明の要旨および説明
本発明は、上記の先行技術および必要性を考慮してなされ、したがって、本発明の目的は、一般式(I)による新たなBK B2受容体アンタゴニスト、好ましくは、1つ以上の改善された特性、例えば改善された薬物動態学的および/または物理化学的特性(バイオアベイラビリティ、可溶性、代謝安定性、およびLADME(遊離、吸収、分布、代謝および排出)特性を含む)を有するBK B2受容体アンタゴニストを提供することである。本発明の他の目的は、本明細書において記載されるような少なくとも1つのBK B2受容体アンタゴニストを含む医薬組成物;本発明の少なくとも1つの化合物および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む組み合わせ調製物;および本発明の化合物の医薬としての使用を含む使用を提供することである。
これらの目的は、添付の請求の範囲の主題により解決され、これは、以下の説明および定義への参照により明らかとなるであろう。
【0006】
本発明は、以下に関する:
[1]
一般式(I):
【化1】
の化合物またはその塩であって、
式中、
Aは、基:
【化2】
を表し;
A
1は、NまたはCHであり;
A
2は、NまたはC-R
A2であり
;
A
3は、NまたはC-R
A3であり;
A
4は、NH、OまたはSであり;
A
5は、N-R
A5であり;
【0007】
RA1は、水素原子またはメチル基を表し;
RA2およびRA3は、各々、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、OH、CN、NH2;(C1-C3)アルキル、これは、ハロゲン原子、OH、=O、およびNH2から選択される1つ以上の同一のもしくは異なる基により置換されていてもよい;(C1-C3)アルコキシ、これは、ハロゲン原子、OH、=O、およびNH2から選択される1つ以上の同一のもしくは異なる基により置換されていてもよい;(C2-C5)アルコキシアルキル、これは、ハロゲン原子、OH、=O、およびNH2から選択される1つ以上の同一のもしくは異なる基により置換されていてもよい;C(O)NRA6RA7;またはNRA6RA7を表し;
RA5、RA6およびRA7は、各々、互いに独立して、水素原子または(C1-C3)アルキル基、これは、ハロゲン原子、OH、=O、およびNH2から選択される1つ以上の同一のもしくは異なる基により置換されていてもよい、を表し;
【0008】
R’は、水素原子または重水素原子を表し;
Bは、5員または6員の飽和または部分的に不飽和のヘテロシクロアルキル基を表し、これは、=O、ハロゲン原子、RB1、ORB2およびNH2から選択される1つ以上の同一のもしくは異なる基により置換されていてもよく;
RB1は、水素原子またはRB2を表し;
RB2は、(C1-C3)アルキル、(C1-C3)ハロアルキル、(C1-C3)ヒドロキシアルキル、または(C1-C3)ヘテロアルキル基を表し;
【0009】
Rは、水素原子またはGを表し;
Gは、(C1-C6)アルキル基を表し、ここで、1~5個のH原子は、各々の場合において独立して、=O、ハロゲン原子、ORG1、または1もしくは2個のRB2で任意に置換されていてもよい5員のヘテロ環式環により置き換えられていてもよく;
RG1は、水素原子、(C1-C3)アルキル、(C1-C3)ハロアルキル、(C1-C3)ヒドロキシアルキル、または(C1-C3)ヘテロアルキル基を表し;ならびに
nは、数0または1を表す。
【0010】
5員の、飽和または部分的に不飽和のヘテロシクロアルキル基Bの例は、1,3-オキサゾリジン、1,3-オキサゾリンおよびオキサジアゾールを含み;および6員の、飽和または部分的に不飽和のヘテロシクロアルキル基Bの例は、モルホリン、ジヒドロ-1,4-オキサジンおよび1,4-オキサジンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
化合物は、通常は、本明細書において、標準的な命名法または以下に提示される定義を用いて記載される。不斉中心(asymmetric center)を有する化合物について、別段に特定されない限り、光学異性体の全ておよびその混合物が包含されることが、理解されるべきである。2つ以上の不斉元素を有する化合物はまた、ジアステレオマーの混合物として提示することができる。加えて、炭素-炭素二重結合を有する化合物は、Z-またはE-の形態において生じ得、別段に特定されない限り、化合物の全ての異性体形態が、本発明に含まれる。化合物が多様な互変異性体形態において存在する場合、列記される化合物は、任意の1つの特定の互変異性体に限定されず、むしろ全ての互変異性体形態を包含することを意図される。本発明の化合物は、必ずしもではないが、水和物、溶媒和物または非共有結合性の複合体として提示してもよいことが、理解されるであろう。加えて、多様な結晶形態または多型は、本発明の範囲内であり、本発明の化合物のプロドラッグも然りである。列記される化合物は、1つ以上の原子が、同位体、すなわち、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子により置き換えられている化合物を包含することを、さらに意図される。一般例として、限定することなく、水素の同位体は、トリチウムおよび重水素を含み、炭素の同位体は、11C、13Cおよび14Cを含む。
【0012】
本明細書において提供される式による化合物であって、1つ以上の立体中心(stereogenic center)を有するものは、少なくとも50%の鏡像体過剰率を有する。例えば、かかる化合物は、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%または98%の鏡像体過剰率を有していてもよい。化合物のいくつかの態様は、少なくとも99%の鏡像体過剰率を有する。単一の鏡像異性体(光学活性形態)は、光学的に純粋な前駆体からの合成である不斉合成により、またはラセミ体の分割により得ることができることは、明らかであろう。ラセミ体の分割は、例えば、分割剤(resolving agent)の存在下における結晶化、または例えばキラルHPLCカラムを用いてのクロマトグラフィーなどの従来の方法により、達成することができる。
【0013】
本発明による化合物は、本明細書において、例えば、A、A1-A5、B、R、R’、R1-R2、R11-R13、RA1-RA7、RB1-RB2およびRG1などの変数を含む一般式を用いて記載される。別段に特定されない限り、かかる式の中の各々の変数は、任意の他の変数に依存することなく、定義され、式中で1回より多く現れる任意の変数は、各々の場合において独立して定義される。したがって、例えば、ある基が0~2個のR*で置換されることが示される場合、その基は、置換されていなくても、または1または2個の基R*で置換されていてもよく、ここで、各々の場合におけるR*は、独立して、R*の対応する定義から選択される。また、置換基および/または変数の組み合わせは、かかる組み合わせが、安定な化合物、すなわち、単離し、特徴づけ、そして生物学的活性について試験することができる化合物をもたらす場合においてのみ、受入可能である。
【0014】
本明細書において用いられる場合、例えば「1~5」などの長さの範囲の限界を定義する語法は、1~5の任意の整数、すなわち、1、2、3、4および5を意味する。換言すると、明示的に言及される2つの整数により定義される任意の範囲は、前記範囲を定義する任意の整数および前記範囲中に含まれる任意の整数を含み、これを開示することを意図される。例えば、用語「C1-C3」とは、1~3、すなわち、1、2または3個の炭素原子を指し;および用語「C1-C6」とは、1~6、すなわち、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を指す。さらに、接頭辞「(Cx-y)」とは、本明細書において用いられる場合、当該接頭辞の直接的な関連において示される鎖、環、または鎖と環との構造の組み合わせは、全体として、最少でx個および最多でy個の炭素原子(すなわち、x<y)からなるものであってよく、ここで、xおよびyは、鎖の長さ(炭素原子の数)および/または環のサイズ(炭素環原子の数)の限界を定義する整数を表すことを意味する。
【0015】
本明細書において開示される化合物の「薬学的に受入可能な塩」は、当該分野において、過剰の毒性または発がん性を伴うことなく、好ましくは刺激、アレルギー性応答または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、ヒトまたは動物の組織と接触しての使用のために好適であると一般にみなされる、酸または塩基の塩である。かかる薬学的塩として、アミンなどの塩基性残基の鉱酸および有機酸の塩、ならびにカルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機の塩が挙げられる。
【0016】
好適な薬学的塩として、これらに限定されないが、塩酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルスルホン酸、硝酸、安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキシマレイン酸、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、アルカン酸、例えば酢酸、HOOC-(CH2)n-COOH、ここでnは、0~4の任意の整数(すなわち、0、1、2、3または4)である、などの酸の塩が挙げられる。同様に、薬学的に受入可能なカチオンとして、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウムおよびアンモニウムが挙げられる。当業者は、本明細書において提供される化合物についてのさらなる薬学的に受入可能な塩を認識するであろう。一般的に、薬学的に受入可能な酸または塩基の塩は、塩基性または酸性の部分を含む親化合物から、任意の従来の化学的方法により、合成することができる。簡単に述べると、かかる塩は、これらの化合物の遊離の酸または塩基の形態を、化学量論的な量の適切な塩基または酸と、水中で、または有機溶媒中で、または2つの混合物中で接触させることにより、調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性の媒体の使用が好ましい。
【0017】
「置換基」とは、本明細書において用いられる場合、目的の分子中の原子と共有結合する分子の部分を指す。例えば、環上の置換基は、ハロゲン原子、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、シアノ、またはアミノ基などの部分、または、本明細書において記載される任意の他の置換基であって、環員である原子、好ましくは炭素または窒素原子に共有結合するものであってよい。
【0018】
用語「置換された」とは、本明細書において用いられる場合、指定された原子の正常な原子価または基の置換のために可能な部位の数を超過しないこと、および置換が安定な置換が安定な化合物、すなわち、単離し、特徴づけ、そして生物学活性について試験することができる化合物をもたらすことを前提として、指定された原子または基(例えば、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール)上の任意の1つ以上の水素原子が、示される置換基からの選択肢により置き換えられていることを意味する。置換基がオキソ、すなわち、=Oである場合、原子上の2個の水素が置き換えられる。芳香族炭素原子の置換基であるオキソ基-CH-から-C(=O)-への変換をもたらし、芳香族性(aromaticity)の喪失をもたらし得る。例えば、オキソにより置換されたピリジル基は、ピリドンである。置換が、置換のために可能な部位の数を超えることなく、安定な化合物をもたらすことを前提として、一、二、三または四置換されたという指示は、1個(一)、2個(二)、3個(三)または4個(四)の置換基を有する基を表す。例えば、一置換されたイミダゾリル基は、(イミダゾリジン-2-オン)イル基であってよく、二置換されたイソキサゾリル基は、((3,5-ジメチル)イソキサゾリル)基であってよい。
【0019】
本明細書において用いられる場合、「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「含むこと(containing)」、「~により特徴づけられる(characterized by)」、およびそれらの文法的均等物は、付加的な、列挙されていない要素または方法ステップを除外しない、包括的またはオープンエンド的な用語である。しかし、「含むこと(comprising)」などは、それぞれより限定的な用語「から本質的になること(consisting essentially of)」および「からなること(consisting of)」を含むものと解釈されるべきである。
【0020】
本明細書において用いられる場合、「からなること(consisting of)」は、請求項において特定されない任意の要素、ステップまたは材料を除外する。
商品名が用いられる場合、それは、独立して、商品名の製品処方物、後発医薬品、および商品名の製品の活性な医薬材料を含むことが意図される。
一般的に、別段に定義されない限り、本明細書において用いられる技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により共通して理解され、一般的な教科書および辞書と一致するものと同じ意味を有する。
【0021】
アルキルまたはアルキル基という表現は、1~20個の炭素原子、好ましくは1~12個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、または接頭辞において示される炭素原子の数を含む飽和、直鎖状または分枝状の炭化水素基を表す。アルキルが置換されている場合、置換は、互いに独立して、分子の個々の炭素原子の一、二または三置換により起こり得、例えば、1、2、3、4、5、6または7個の水素原子は、各々の場合において独立して、示される置換基からの選択肢により置き換えられていてもよい。前述のことはまた、アルキル基が、ある基、例えばハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、またはアルコキシアルキルの部分を形成する場合に適用される。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、n-ヘキシル、2,2-ジメチルブチル、またはn-オクチルが挙げられ、置換されたアルキル基またはアルキルが基の一部を形成する基の例として、ハロアルキル、例えば、トリフルオロメチルまたはジフルオロメチル基;ヒドロキシアルキル、例えば、ヒドロキシメチルまたは2-ヒドロキシエチル基、およびメトキシメチル基が挙げられる。用語「(C1-6)アルキル」は、例えば、H3C-、H3C-CH2-、H3C-CH2-CH2-、H3C-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH(CH3)-CH2、H3C-C(CH3)2-、H3C-CH2-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH(CH3)-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH2-CH2-、H3C-CH2-C(CH3)2-、H3C-C(CH3)2-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH(CH2CH3)-、-CH2CH2CH2CH2CH2CH3、-CH(CH3)CH2CH2CH2CH3、(H3CH2C)CH(CH2CH2CH3)-、-C(CH3)2(CH2CH2CH3)、-CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3および-CH(CH3)CH2CH(CH3)2を含む。用語「(C1-3)アルキル」は、H3C-、H3C-CH2-、H3C-CH2-CH2-およびH3C-CH(CH3)-を含む。
【0022】
アルコキシまたはアルコキシ基という表現は、酸素に単結合したアルキル基、すなわち、-O-アルキルを指す。用語「(C1-C6)アルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、イソ-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、tert-アミルオキシ-またはn-ヘキシルオキシを含み、したがって、「(C1-C3)アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシまたはイソ-プロポキシを含む。
【0023】
アルコキシアルキルまたはアルコキシアルキル基という表現は、1つ以上のアルコキシ基に単結合したアルキル基、例えば、-アルキル-O-アルキルまたは-アルキル-O-アルキル-O-アルキルを指す。用語「(C2-C5)アルコキシアルキル」は、例えば、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシ-n-プロピル、メトキシ-イソ-プロピル、メトキシ-n-ブチル、メトキシ-sec-ブチル、メトキシ-イソ-ブチル、メトキシ-tert-ブチル、メトキシエトキシメチル、メトキシエトキシエチル、エトキシメトキシメチル、エトキシメトキシエチル、および1-エトキシエチルを含む。
【0024】
ハロアルキルまたはハロアルキル基という表現は、1、2、3または4個以上の水素原子が、互いに独立して、ハロゲン原子により置き換えられているアルキル基を指す。用語「(C1-C3)ハロアルキル」は、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、ヨードメチル、(1-または2-)ハロエチル(例えば、(1-または2-)フルオロエチルまたは(1-または2-)クロロエチル)、(2-または3-)ハロプロピル(例えば、(2-または3-)フルオロプロピルまたは(2-または3-)クロロプロピル)を含む。
【0025】
ヒドロキシアルキルまたはヒドロキシアルキル基という表現は、1、2、3または4個以上の水素原子が、互いに独立して、ヒドロキシ(OH)基により置き換えられているアルキル基を指す。用語「(C1-C3)ヒドロキシアルキル」は、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、およびヒドロキシプロピルを含む。
【0026】
本明細書において用いられる場合、ヘテロアルキルまたはヘテロアルキル基という表現は、上で定義されるように直鎖状または分枝状のアルキル基であって、ここで、1または2個以上、好ましくは1、2、3または4個の炭素原子が、互いに独立して、酸素、窒素、セレン、ケイ素または硫黄原子により、好ましくは酸素、硫黄または窒素原子、C(O)、OC(O)、C(O)O、C(O)NH、NHC(O)、NH、SO、SO2により、またはCH=CH基により置き換えられているものを指し、ここで前記ヘテロアルキル基は、置換されていてもよい。例えば、「(C1-C4)ヘテロアルキル基」は、1~4個、例えば、1、2、3または4個の炭素原子、ならびに酸素、窒素および硫黄(特に酸素および窒素)から選択される1、2、3または4個、好ましくは1、2または3個のヘテロ原子を含む。ヘテロアルキル基の例として、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アシル、アシルアルキル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、カルボキシアルキルアミド、アルコキシカルボニルオキシ、アルキルカルバモイル、アルキルアミド、アルキルカルバモイルアルキル、アルキルアミドアルキル、アルキルカルバモイルオキシアルキル、アルキルウレイドアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、またはアルキルチオ基が挙げられる。アルキルチオまたはアルキルチオ基という表現は、1つ以上の隣接しないCH2基が、硫黄により置き換えられているアルキル基を指しここで、アルキルチオ基のアルキル部分は、置換されていてもよい。ヘテロアルキル基の具体例として、アシル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソ-プロピルオキシ、tert-ブチルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、イソ-プロピルエチルアミノ、メチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジイソプロピルアミノエチル、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、アセチル、プロピオニル、ブチリルオキシ、アセチルオキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチリルアミノ-メチル、N-エチル-N-メチルカルバモイル、N-メチルカルバモイル、シアノ、ニトリル、イソニトリル、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネートおよびアルキルニトリルが挙げられる。
【0027】
シクロアルキルまたはシクロアルキル基という表現は、1個の環を含み、5または6個の環炭素原子を含む飽和炭素環式環基を指す;シクロアルキル基は、置換されていてもよく、環系の全ての好適な位置を介して置換基として結合していてもよい。シクロアルキルの例として、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどの単環式炭化水素環が挙げられる。シクロアルキルが置換されている場合、置換は、互いに独立して、分子の個々の環炭素原子の一または二置換により起こり得、シクロアルキル基は、全体として、置換基の示される選択肢から1、2、3または4個の置換基を担持し得、すなわち、炭素環原子のうちの1、2、3または4個の水素原子は、各々の場合において独立して、示される置換基のリストから選択される置換基により置き換えられて、それにより、一、二、三または四置換されたシクロアルキル基を生じてもよい。シクロアルキルが部分的に不飽和である場合、基は、1つまたは2つの二重結合を含み、例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロペンタジエニル、およびシクロヘキサジエニルを含むシクロアルケニル基などである。
【0028】
ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル基という表現は、上で定義されるように飽和または部分的に不飽和のシクロアルキル基であって、2つ以上、好ましくは2または3個の環炭素原子が、各々互いに独立して、酸素、窒素もしくは硫黄原子、好ましくは酸素または窒素により、またはNO、SOもしくはSO2により置き換えられているものを指す;ヘテロシクロアルキルは、置換されていてもよく、環系の全ての好適な位置を介して置換基として結合していてもよい;少なくとも1つの炭素原子2個の酸素原子の間および2個の硫黄原子の間に、または酸素と硫黄原子との間に存在しなければならない;かつ、環は、全体として、化学的な安定性を有していなければならない。ヘテロシクロアルキル基は、5または6個の環原子を含む1個の環を有する。酸素および窒素原子を含むヘテロシクロアルキルの例として、オキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサジアゾリル、モルホリニル、ジヒドロ-1,4-オキサジニルおよび1,4-オキサジニルが挙げられ、置換ヘテロシクロアルキルの例として、ラクタム、ラクトンおよび環状カルバメート、環状カルバミドならびに環状イミド環系、例えば、オキサゾリジノニルが挙げられる。
【0029】
ヘテロアリールまたはヘテロアリール基という表現は、5個の環原子を含む1個の芳香族環を含み、1個以上の(好ましくは1、2、3または4個の)酸素、窒素、リンまたは硫黄環原子(好ましくはO、SまたはN)を含む芳香族基を指す。ヘテロアリールは、置換されていてもよく、環系の全ての好適な位置を介して置換基として結合していてもよい。置換されていないヘテロアリール基の例として、フラニル、ピロリル、チオフェニル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、オキサトリアゾリル、およびチアトリアゾリルが挙げられる。
【0030】
ヘテロ環式環またはヘテロ環という表現は、上で定義されるヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール環系を含む環系を表し、すなわち、部分的に不飽和なヘテロ環式環は、部分的に不飽和なヘテロシクロアルキルと同義であり、芳香族ヘテロ環は、ヘテロアリールと同義である。ヘテロ環は、置換されていてもよく、環系の全ての好適な位置を介して置換基として結合していてもよい。ヘテロ環式環の例として、上のヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキル(heterocyclalkyl)環、ピロリジニル、ピロリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、テトラヒドロフラニル、2,3-ジヒドロフラニル、2,5-ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、2,5-ジヒドロチオフェニル、ジオキソラニル、オキサチオラニル、2,5-ジヒドロ-1H-ピロリル、スルフォラニル、チアゾリジニル、スクシンイミジル、チアゾリジンジオニル(thiazolidinedionyl)、オキサゾリドニル(oxazolidonyl)、およびヒダントイニル(hydantoinyl)が挙げられる。
【0031】
ハロゲンまたはハロゲン原子という表現は、本明細書において用いられる場合、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
ヘテロ原子という表現は、本明細書において用いられる場合、好ましくは酸素、窒素または硫黄原子、より好ましくは窒素または酸素原子を表す。
【0032】
本発明は、好ましくは以下のうちの1つ以上に関する:
[2]
Aが:
【化3】
を表す、上の[1]に記載の化合物または塩。
【0033】
[3]
Aが:
【化4】
を表す、[1]または[2]に記載の化合物または塩。
[4]
Aが:
【化5】
を表す、[1]~[3]のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【0034】
[5]
Bは、基:
【化6】
を表し、
ここで、
Gは、[1]において定義されるとおりである、
[1]~[4]のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【0035】
[6]
Bが:
【化7】
であり;
Gは、-C(O)-R
1であり(すなわち、Bは:
【化8】
であり);
R
1は、-CR
11R
12R
13、または1もしくは2個のR
B2で任意に置換されていてもよい5員のヘテロ環式環を表し;
R
11およびR
12は、各々、互いに独立して、水素原子またはメチル基を表し;
R
13は、水素原子、OHまたはOR
2を表し;ならびに
R
2は、(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
3)ハロアルキル、(C
1-C
3)ヒドロキシアルキル、または(C
1-C
3)ヘテロアルキル基を表す;
[1]~[5]のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【0036】
[7]
R1が、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、チアゾリニル、イミダゾリニル、ジオキソリル、ジオキソラニル、ジヒドロオキサジアゾリル、テトラヒドロフリル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ジヒドロトリアゾリル、およびテトラヒドロトリアゾリルから選択される5員のヘテロ環式環を表し;ここで、ヘテロ環式環は、1もしくは2個のRB2で任意に置換されていてもよい、[6]に記載の化合物または塩。
【0037】
[8]
R’が、水素原子である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の化合物または塩。
[9]
R’が、重水素原子である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の化合物または塩。
[10]
Gが:
【化9】
から選択される基である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【0038】
[11]
化合物が、群:
【化10】
から選択される、[1]~[10]のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【0039】
一般式(I)による化合物またはその塩の、好ましい態様、すなわち[2]~[10]、の好適な組み合わせを含む化合物が、特に好ましい;例えば、本明細書において開示されるとおりの[1]、[4]、[6]および[10]の組み合わせを含む化合物またはその塩。換言すると、本発明は、上で示されるような[1]~[10]の全ての可能な組み合わせであって、安定な化合物をもたらすものを、特に包含する。
【0040】
本明細書において提供される[1]~[11]のいずれか1つに記載の化合物は、ヒトBK B2受容体に対して高い活性を示し、例えば、以下に述べるアッセイにおいて、BKにより誘導されるBK B2受容体活性の阻害についての阻害定数IC50(最大半量阻害濃度)が、1マイクロモル濃度(μM)以下、例えば、251ナノモル量(nM)~1μMの;好ましくは250nM以下、例えば、51nM~250nMのIC50;なおより好ましくは50nM以下のIC50;さらにより好ましくは約10nM以下、または1nM以下のIC50である.[1]~[11]のいずれか1つに記載の化合物は、ヒトBK B2受容体においてのみならず、ヒト以外の種、例えば、ラット、マウス、スナネズミ、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタまたはカニクイザルのBK B2受容体に対してもまた、高い活性を示すことができる。
【0041】
本発明による化合物の活性およびより具体的にはその生理活性は、当業者に公知の適切なアッセイ、例えば、in vitroまたはin vivoのアッセイを用いて、評価することができる。例えば、B2受容体活性に対する本発明の化合物の阻害効果(IC50値として表される)は、例6において提供されるアッセイなどの細胞内カルシウム動員アッセイを介して決定することができる。これは、したがって、標準的なin vitroの受容体媒介型アッセイの一態様である。[1]~[11]のいずれか1つによる特に好ましい化合物または塩は、標準的なin vitroのBK B2受容体アッセイ;例えば例6において提供されるアッセイにおいて、50nM以下のIC50を示す。
【0042】
一般式(I)の化合物、その薬学的に受入可能な塩、溶媒和物または水和物の治療的使用;およびまたこれを含む処方物または医薬組成物の治療的使用は、本発明の範囲内である。本発明はまた、医薬の調製または製造における活性成分としての一般式(I)の化合物の使用に関する。
【0043】
本発明による医薬組成物は、少なくとも1つの式(I)の化合物またはその薬学的に受入可能な塩、好ましくは[1]~[11]のいずれか1つに記載の化合物またはその塩、および任意に、少なくとも1つの、すなわち1つ以上の、キャリア物質、賦形剤および/またはアジュバントを含む。特に、本発明の医薬組成物は、本発明による1つ以上の化合物、例えば、[1]~[11]のいずれか1つに記載の化合物、ならびに任意に少なくとも1つのキャリア物質、賦形剤および/またはアジュバントを含むことができる。
【0044】
医薬組成物は、例えば、水、緩衝液(例えば、中性緩衝化食塩水またはリン酸緩衝化食塩水)、エタノール、鉱油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、および/または保存剤のうちの1つ以上をさらに含んでもよい。
【0045】
さらに、1つ以上の他の活性成分が、本明細書において提供される医薬組成物において含まれていてもよい(必要ではないが)。例えば、1つ以上の本発明の化合物は、有利に、少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む組み合わせ調製物中に含まれていてもよい。さらなる、または補充の活性剤または活性医薬材料は、好ましくは、皮膚障害;眼疾患;耳疾患;口腔、咽喉および呼吸器の疾患;胃腸管疾患;肝臓、胆嚢および膵臓の疾患;尿路および腎臓の疾患;男性生殖器および女性生殖器の疾患;ホルモン系の疾患;代謝疾患;心血管疾患;血液疾患;リンパ性疾患;中枢神経系の障害;脳障害;筋骨格系疾患;アレルギー障害;疼痛;感染性疾患;炎症性障害;傷害;免疫学障害;がん;遺伝性疾患;および浮腫を含む群から選択される状態を含む、BK B2受容体の調節に対して応答性の1つ以上の状態の予防または処置において有用性を有する活性剤または活性医薬材料である。例えば、本発明の少なくとも1つの化合物または薬学的に受入可能な塩は、有利に、抗生物質、抗真菌剤、または抗ウイルス剤、抗ヒスタミン剤、非ステロイド性抗炎症薬、疾患調節性抗リウマチ薬、細胞分裂阻害薬、平滑筋活性調節活性を有する薬物、抗体、または上述のものの混合物を、さらなる、または補充の活性成分または活性医薬成分として含む、組み合わせ調製物中に含まれていてもよい。
【0046】
本発明の医薬組成物、または組み合わせ調製物は、例えば、局所(例えば、経皮または眼)、口腔、頬側、鼻、膣、直腸または非経口投与を含む、任意の適切な投与の様式のために処方してもよい。非経口という用語は、本明細書において用いられる場合、皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、クモ膜下内、眼内、眼周囲、眼窩内、滑膜内および腹腔内注射、ならびに任意の類似の注射または注入技術を含む。ある態様において、経口の使用のために好適な形態における組成物が好ましい。かかる形態として、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性または油性の懸濁液、分散可能な粉末または顆粒、乳液、硬質または軟質のカプセル、またはシロップまたはエリキシルが挙げられる。さらに他の態様内において、本明細書において提供される組成物は、凍結乾燥物として処方してもよい。特定の状態のために、局所投与のための処方物が好ましい場合がある(例えば、熱傷またはそう痒(itch)などの皮膚の状態の処置において)。簡単にまとめると、医薬組成物ならびに組み合わせ調製物は、例えば、エアロゾル、クリーム、ゲル、丸剤、カプセル、シロップ、溶液、経皮貼付剤または医薬送達デバイスとして処方することができる。
【0047】
BKまたはその類似体により媒介される疾患の予防および/または処置のために、本発明による生理活性化合物の用量は、広い限度の中で変化してもよく、個々の要件に対して調整してもよい。本発明による活性化合物は、一般に、治療有効量において投与される。好ましい用量は、体重1kgあたり1日あたり約0.1mg~約140mg(患者1人あたり1日あたり約0.5mg~約7g)の範囲である。1日の用量は、単一の用量として、または複数の用量において、投与することができる。キャリア材料と組み合わせて単一の投与形態をもたらすことができる活性成分の量は、処置されるホストおよび特定の投与の様式に依存して変化するであろう。投与単位形態は、一般に、約1mg~約500mgの活性成分を含む。
【0048】
しかし、任意の特定の患者のための具体的な用量レベルは、使用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的健康、性別、食事、投与の時間、投与の経路、および排出の速度、薬物の組み合わせ(すなわち、患者を処置するために用いられている他の薬物)、および治療を受けている特定の疾患の重篤度を含む多様な要因に依存するであろうことが、理解されるであろう。
【0049】
本明細書において提供される一般式(I)の化合物はまた、BK B2受容体のアンタゴニストとして、in vitroおよびin vivoの両方の多様な適用において用いることができる。本発明によるBK B2受容体アンタゴニストは、BK B2受容体へのBK B2受容体リガンド(例えばBK)の結合をin vitroまたはin vivoで阻害するために用いてもよい。この使用は、例えば、BK B2受容体の結合をin vitroまたはin vivoで阻害する方法を含み、ここで、前記方法は、BKまたは任意の他の物質のBK B2受容体への結合を検出可能に阻害する条件下において、およびこれのために十分な量において、BK B2受容体を、本発明による、例えば[1]~[11]のいずれか1つによる、少なくとも1つの化合物または塩と接触させることを含む。本明細書において提供されるBK B2受容体アンタゴニストは、好ましくは、経口で、または局所的に、患者(例えばヒト)に投与され、BK B2受容体活性を調節する間、患者の少なくとも1つの体液または組織中に存在する。
【0050】
[1]~[11]のいずれか1つによるBK B2受容体アンタゴニスト、本発明による医薬組成物、または組み合わせ調製物は、医薬として有用である。特に、BK B2受容体アンタゴニスト、本発明による医薬組成物、または組み合わせ調製物は、BK B2受容体の調節に対して応答性の状態または疾患の処置および/または予防(prevention)および/または予防(prophylaxis)において有用である。BK B2受容体の調節に対して応答性である状態または疾患は、皮膚障害;眼疾患, 耳疾患;口腔、咽喉および呼吸器の疾患;胃腸管疾患;肝臓、胆嚢および膵臓の疾患;尿路および腎臓の疾患;男性生殖器および女性生殖器の疾患;ホルモン系の疾患;代謝疾患;心血管疾患;血液疾患;リンパ性疾患;中枢神経系の障害;脳障害;筋骨格系疾患;アレルギー障害;疼痛;感染性疾患;炎症性障害;傷害;免疫学障害;がん;遺伝性疾患;浮腫または毛細管漏出症候群であってよい。以下において、上で示されるBK B2受容体の調節に対して応答性である疾患および状態を、さらに特定する。
【0051】
皮膚障害:本願の中で、用語「皮膚障害」は、これらに限定されないが、皮膚の老化、褥瘡、褥瘡性潰瘍、刺激を受けた、敏感な、および審美的に異常な(dysaesthetic)皮膚、紅斑、発疹(rash)、皮膚の浮腫、乾癬、湿疹、苔癬を含む皮疹(skin efflorescence)、フルンケル、膿瘍、蜂窩織炎、丹毒、毛包炎および膿痂疹、シラミ、疥癬および単純ヘルペスを含む、細菌、ウイルス、真菌および寄生虫により誘発される皮膚感染症、ざ瘡、発疹(exanthema)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎(Scholzen, T.E.; Luger, T.A. Exp Dermatol. 2004; 13 Suppl 4:22-6)、神経性皮膚炎を含む皮膚炎、放射線障害、日焼け、そう痒(pruritus)、そう痒(itching)、蕁麻疹(EP0622361; Frigas, E.; Park, M. Immunol. Allergy Clin. North Am. 2006, 26, 739-51; Luquin, E.; Kaplan, A. P.; Ferrer, M. Clin. Exp. Allergy 2005, 35, 456-60; Kaplan, A. P.; Greaves, M. W. J. Am. Acad. Dermatol. 2005, 53, 373-88; quiz 389-92)、乾癬、真菌症、組織潰瘍化、表皮水疱症、異常創傷治癒を含む創傷、熱傷(Nwariaku, F. E.; Sikes, P. J.; Lightfoot, E.; Mileski, W. J.; Baxter, C. Burns 1996, 22, 324-7; Neely, A. N.; Imwalle, A. R.; Holder, I. A. Burns 1996, 22, 520-3)、凍傷、毒液により引き起こされる皮膚の炎症および浮腫、脱毛症、髪の鱗屑(hair squama)、魚の目、疣贅およびひょう疽(panaris)などの障害を包含する。
【0052】
眼疾患:本願の中で、用語「眼疾患」は、これらに限定されないが、強膜炎、結膜炎、結膜浮腫、虹彩炎、虹彩毛様体炎、ぶどう膜炎、脈絡網膜炎などの炎症性障害、ならびに脈絡網膜循環障害(retinochoroidal circulatory disorder)などの障害、細菌性眼感染症、非特異的な結膜炎および眼の刺激、未熟児網膜症、増殖性硝子体網膜症、黄斑変性(加齢黄斑変性を含み、滲出型および乾燥型の両方を含む)、角膜移植拒絶、角膜傷害、角膜瘢痕、角膜潰瘍、角膜混濁、円錐角膜、緑内障(好ましくは開放隅角緑内障)を含む角膜疾患、近視、高眼圧症、眼の血管の損傷、血管新生、眼の線維症(例えば、前嚢下線維症(anterior subcapsular fibrosis)、後嚢下混濁(posterior subcapsular opacity)、後嚢混濁(posterior capsular opacity)、レーザー手術後の角膜混濁、緑内障手術後の結膜下瘢痕形成)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、麦粒腫および睫毛脱落症を含む細菌性眼感染症を包含する。
【0053】
耳疾患:本願の中で、用語「耳疾患」は、これらに限定されないが、メニエール病、中耳の炎症、外耳道の炎症および急性難聴などの障害を包含する。
【0054】
口腔、咽喉および呼吸器の疾患:本願の中で、用語「口腔、咽喉および呼吸器の疾患」は、これらに限定されないが、アフタおよび口内炎を含む口腔粘膜および歯肉の炎症、歯周炎、喉頭蓋炎、咽頭炎(tonsillitis)、喉頭気管炎、扁桃炎、感冒、急性扁桃炎(angina)、季節性アレルギー性鼻炎または通年性アレルギー性鼻炎を含む鼻炎、鼻漏、あらゆる型、病因学または病態形成の副鼻腔炎、または化膿性または非化膿性の副鼻腔炎、急性および慢性の副鼻腔炎および篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎または蝶形骨洞炎からなる群より選択されるメンバーである副鼻腔炎、喀痰、あらゆる型または起源の塵肺症(例えば、アルミニウム沈着症(aluminosis)、炭粉沈着症、石綿沈着症、石粉沈着症、鉄沈着症、珪肺症、タバコ肺症(tabacosis)、および特に、綿肺症を含む)、気管支炎、咳、気管炎、うっ血、肺炎、好酸球による肺浸潤、慢性好酸球性肺炎、特発性肺線維症および他の線維性肺疾患、処置に関連する線維性肺疾患、例えば、放射線照射、メトトレキサート、化学療法、アミオダロンまたはニトロフラントインに関連するもの、サルコイドーシス、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、気管支収縮、あらゆる型、病因学または病態形成の喘息(Akbary, A. M.; Wirth, K. J.; Scholkens, B. A. Immunopharmacology 1996, 33, 238-42; WO 00/75107 A2)、またはアトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性および非アレルギー性の喘息の群より選択されるメンバーである喘息、環境要因により引き起こされる外因性喘息、病態生理学的障害により引き起こされる内因性喘息、気管支喘息、IgE媒介性喘息、本態性喘息および未知または明らかでない原因の本態性喘息、真性喘息(true asthma)、気腫性喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原生動物またはウイルスによる感染により引き起こされる感染性喘息、初発性喘息、小児喘鳴症候群(wheezy infant syndrome)、気管支過敏症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、不可逆性の進行性の気道閉塞により特徴づけられるCOPD、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および他の薬物治療の結果としての気道過敏の増悪、呼吸困難、過酸素性肺胞傷害、肺気腫、胸膜炎、結核、高い高度への暴露、すなわち、急性高山病および好ましくは高地肺水腫(HAPE)、耐性の咳(resistant cough)、気管支の反応低下などの障害を包含する。
【0055】
胃腸管疾患:本願の中で、用語「胃腸管疾患」は、これらに限定されないが、食道炎、胃炎、過敏性の胃、胃および十二指腸の潰瘍、イレウス、過敏性の結腸、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、腸炎、過敏性の胃および結腸の疾患、大腸炎、腹膜炎、虫垂炎、直腸炎、門脈圧亢進症、側副血行路または充血により引き起こされる胃腸管出血、胃切除後ダンピング症候群、消化の不快、下痢、痔核、寄生虫疾患、腹部疝痛および胃腸管系の部分の疝痛を含む障害を包含する。
【0056】
肝臓、胆嚢および膵臓の疾患(Cugno, M.; Salerno, F.; Nussberger, J.; Bottasso, B.; Lorenzano, E.; Agostoni, A. Clin. Sci. (Lond) 2001, 101, 651-7; WO 01/56995 A1; EP0797997 B1; Wirth, K. J.; Bickel, M.; Hropot, M.; Gunzler, V.; Heitsch, H.; Ruppert, D.; Scholkens, B. A. Eur. J. Pharmacol. 1997, 337, 45-53):本願の中で、用語「肝臓および胆嚢の疾患」は、これらに限定されないが、肝炎、肝臓の硬変、肝臓線維症(例えば、ウイルス(HBV/HCV)感染、トキシン(アルコール)、脂肪肝、胆汁うっ滞、低酸素に起因するもの)、門脈圧亢進症、肝腎症候群、肝性の浮腫、胆管炎、胆嚢炎、急性および慢性の膵炎、ならびに胆石疝痛などの障害を包含する。
【0057】
尿路および腎臓の疾患:本願の中で、用語「尿路および腎臓の疾患」は、これらに限定されないが、急性および慢性の膀胱炎、間質性膀胱炎などの尿路感染症(Campbell, D. J. Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 2001, 28, 1060-5; Meini, S.; Patacchini, R.; Giuliani, S.; Lazzeri, M.; Turini, D.; Maggi, C. A.; Lecci, A. Eur. J. Pharmacol. 2000, 388, 177-82; Zuraw, B. L.; Sugimoto, S.; Parsons, C. L.; Hugli, T.; Lotz, M.; Koziol, J. J. Urol. 1994, 152, 874-8; Rosamilia, A.; Clements, J. A.; Dwyer, P. L.; Kende, M.; Campbell, D. J. J. Urol. 1999, 162, 129-34)、過敏性膀胱、過活動膀胱(WO 2007003411 A2)、ストレス、切迫および反射性の失禁を含むがこれらに限定されない失禁、良性の前立腺過形成(Srinivasan, D.; Kosaka, A.H.; Daniels, D.V.; Ford, A.P.; Bhattacharya, A. Eur J Pharmacol. 2004, 504(3):155-67)、慢性腎臓疾患、尿道炎、糸球体腎炎を含む炎症性の腎臓疾患、腎臓の糸球体疾患、間質性腎炎、腎盂腎炎、多尿、タンパク尿、ナトリウム利尿、カルシウム利尿(calciuresis)、水分平衡の障害、電解質平衡の障害、酸-塩基平衡の障害および腎疝痛、腎線維症、慢性の腎臓同種移植機能障害、造影剤により誘導される腎障害を包含する。
【0058】
男性生殖器および女性生殖器の疾患:本願の中で、用語「男性生殖器および女性生殖器の疾患」とは、これらに限定されないが、精子の機動性の改変、男性不妊、精巣炎、前立腺炎、前立腺亢進、乳腺炎、炎症性骨盤疾患、膣の感染症および疼痛、子宮付属器炎、膣炎、軟性下疳(soft ulcus)、梅毒、淋病および卵巣過剰刺激症候群(Ujioka, T.; Matsuura, K.; Tanaka, N.; Okamura, H. Hum Reprod. 1998 Nov;13(11):3009-15.)を包含する。
【0059】
ホルモン系の疾患:本願の中で、用語「ホルモン系の疾患」は、これらに限定されないが、月経障害および疼痛、更年期障害、嘔吐、早期子宮収縮、早期分娩、子宮内膜症、子宮内膜炎、筋腫、妊娠中毒症を包含する。
【0060】
代謝疾患:本願の中で、用語「代謝疾患」は、これらに限定されないが、非インスリン依存性真性糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病黄斑浮腫を含む糖尿病(Speicher, M. A.; Danis, R. P.; Criswell, M.; Pratt, L. Expert Opin. Emerg. Drugs 2003, 8, 239-50; Gao, B. B.; Clermont, A.; Rook, S.; Fonda, S. J.; Srinivasan, V. J.; Wojtkowski, M.; Fujimoto, J. G.; Avery, R. L.; Arrigg, P. G.; Bursell, S. E.; Aiello, L. P.; Feener, E. P. Nat. Med. 2007, 13, 181-8; Tranos, P. G.; Wickremasinghe, S. S.; Stangos, N. T.; Topouzis, F.; Tsinopoulos, I.; Pavesio, C. E. Surv. Ophthalmol 2004, 49, 470-90)、糖尿病性腎症および糖尿病性神経障害、インスリン耐性および糖尿病性潰瘍、痛風などのタンパク質およびプリンの代謝の疾患および脂質代謝の障害、低血糖などの障害を包含する。
【0061】
心血管疾患:本願の中で、用語「心血管疾患」は、これらに限定されないが、血管透過性、血管拡張、末梢循環障害、大動脈瘤、腹部大動脈瘤、脳大動脈瘤、高血圧症および敗血症に関連する低血圧症、経皮経管冠状動脈形成術後の再狭窄、アテローム硬化性プラーク破裂を含むアテローム動脈硬化症を含む動脈性循環障害(Fernando, A.N.; Fernando, L.P.; Fukuda, Y.; Kaplan, A.P. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2005 Jul;289(1):H251-7)血管腫、血管線維腫、血栓症、静脈瘤様腫脹(varicosity)、静脈炎、血栓性静脈炎、静脈血栓症などの静脈性障害、心疾患、うっ血性心不全、冠動脈心疾患、カルチノイド症候群、狭心症(angina pectoris)、不整脈、心内膜炎、心外膜炎および収縮性心膜炎、心筋炎を含む炎症性心疾患、心筋梗塞、心筋梗塞後症候群、左室拡張、虚血後再灌流傷害、敗血症性、アレルギー性、外傷後および血行動態性のショックを含むショックおよび虚脱、羊水塞栓症(Robillard, J.; Gauvin, F.; Molinaro, G.; Leduc, L.; Adam, A.; Rivard, G.E. Am J Obstet Gynecol. 2005 Oct;193(4):1508-12)、手術中の心肺バイパスにより引き起こされるSIRSを含む全身性炎症反応症候群(SIRS)、心肺バイパス手術中の敗血症ならびに内的および外的な合併症(硫酸プロタミンによるヘパリンの逆転の後の有害な血行動態効果を含むが、これに限定されない)(Pretorius, M.; Scholl, F.G.; McFarlane, J.A.; Murphey, L.J.; Brown, N.J..Clin Pharmacol Ther. 2005 Nov;78(5):477-85)を含む障害を包含する。
【0062】
血液疾患:本願の中で、用語「血液疾患」は、これらに限定されないが、血液凝固、播種性血管内凝固、出血、出血傾向、高コレステロール血症および高脂血症、血液量減少性ショック、発作性夜間ヘモグロビン尿症などの障害を包含する。
【0063】
リンパ性疾患:本願の中で、用語「リンパ性疾患」は、本明細書において用いられる場合は、これらに限定されないが、脾腫、リンパ管炎、リンパ節炎および過形成性の咽頭扁桃を包含する。
【0064】
中枢神経系の障害:本願の中で、用語「中枢神経系の障害」は、これらに限定されないが、脳炎、髄膜炎、脳脊髄炎、髄膜脳炎を含む中枢神経系の炎症性疾患、水頭症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄外傷、脊髄浮腫、神経系の脱髄疾患、多発性硬化症、加齢、アルツハイマー病およびパーキンソン病を含む急性および慢性の神経変性障害、神経炎、および末梢神経障害、うつ、食欲不振、不安および統合失調症、睡眠障害などの障害を包含する。
【0065】
脳障害:本願の中で、用語「脳障害」は、これらに限定されないが、向知性または認知増強、脳アミロイド血管症、脳卒中、頭部および脳の外傷、外傷性脳傷害(Marmarou, A.; Guy, M.; Murphey, L.; Roy, F.; Layani, L.; Combal, J.P.; Marquer, C.; American Brain Injury Consortium J Neurotrauma 2005 Dec;22(12):1444-55)、脳腫瘍、熱による脳の損傷、脳虚血、脳出血、外傷後および虚血後の脳浮腫、一般的な脳浮腫、急性高山病および好ましくは高地脳浮腫(HACE)、細胞傷害性脳浮腫、血管原性脳浮腫、手術後脳浮腫、代謝疾患に関連する脳浮腫、血液脳関門または血液脳腫瘍関門(blood-brain tumor barrier)の透過性の増大を含む障害を包含する。
【0066】
筋骨格系疾患:本願の中で、用語「筋骨格系疾患」は、これらに限定されないが、炎症性筋骨格障害、関節症、変形性関節症(osteoarthrosis)、骨関節炎(osteoarthritis)、関節外傷あるいは半月板もしくは膝蓋骨の損傷または靭帯断裂の後の比較的長期の関節の固定の後の軟骨粗鬆症、急性関節炎を含むあらゆる型、病因学または病態形成の関節リウマチ、急性痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節炎(degenerative arthritis)、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、椎骨関節炎、敗血症性関節炎、乾癬性関節炎、慢性多発性関節炎、リウマチ、シェーグレン症候群、腰痛症、脊椎炎、脊椎関節炎、強直性脊椎炎、骨髄炎、捻挫、腱鞘炎、炎症誘導性骨吸収、骨折など、骨粗鬆症、筋骨格の疼痛および硬化、椎間板症候群(spinal disk syndrome)などの障害を包含する。
【0067】
アレルギー障害:本願の中で、用語「アレルギー障害」は、これらに限定されないが、一般的なアレルギー性反応、食品アレルギー、アナフィラキシーショック、アレルギー性接触過敏症、アレルギー性皮膚反応、アレルギー性喘息、春季カタルおよび季節性または通年性のアレルギー性鼻炎(Summers, C.W.; Pumphrey, R.S.; Woods, C.N.; McDowell, G.; Pemberton, P.W.; Arkwright, P.D. J Allergy Clin Immunol. 2008, 121(3), 632-638)などの障害を包含する。
【0068】
疼痛:本願の中で、用語「疼痛」は、これらに限定されないが、以下を包含する:中枢的におよび末梢的に媒介される疼痛、血管性疼痛、内臓疼痛、炎症媒介性疼痛、神経痛性疼痛、関連通、侵害受容性疼痛、反射性疼痛、心身性疼痛、急性疼痛、例えば、骨、筋肉、組織、軟組織、臓器の急性傷害、外傷または手術により引き起こされるもの、刺虫症後の疼痛、脳卒中後の疼痛症候群、手術後の疼痛、進行性疾患関連疼痛、慢性疼痛、例えば神経障害性疼痛状態により引き起こされるもの(複合性局所疼痛症候群(WO00/75107 A2; Yamaguchi-Sase, S.; Hayashi, I.; Okamoto, H.; Nara, Y.; Matsuzaki, S.; Hoka, S.; Majima, M. Inflamm. Res. 2003, 52, 164-9; Petersen, M.; Eckert, A. S.; Segond von Banchet, G.; Heppelmann, B.; Klusch, A.; Kniffki, K. D. Neuroscience 1998, 83, 949-59; Birklein, F.; Schmelz, M.; Schifter, S.; Weber, M. Neurology 2001, 57, 2179-84; Weber, M.; Birklein, F.; Neundorfer, B.; Schmelz, M. Pain 2001, 91, 251-7)、カウザルギー、ズデック病(morbus sudeck)、反射性交感神経性ジストロフィーを含むがこれらに限定されない)、糖尿病性末梢神経障害、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、がん関連疼痛、関節リウマチに関連する疼痛、変形性関節炎(Bond, A. P.; Lemon, M.; Dieppe, P. A.; Bhoola, K. D. Immunopharmacology 1997, 36, 209-16; Cassim, B.; Naidoo, S.; Ramsaroop, R.; Bhoola, K. D. Immunopharmacology 1997, 36, 121-5; Calixto, J. B.; Cabrini, D. A.; Ferreira, J.; Campos, M. M. Pain 2000, 87, 1-5; Kaneyama, K.; Segami, N.; Sato, J.; Fujimura, K.; Nagao, T.; Yoshimura, H. J. Oral. Maxillofac. Surg. 2007, 65, 242-7)、腱鞘炎、痛風、月経および狭心症(angina)、線維筋痛症、眼の疼痛、背部痛、頭痛、群発頭痛、偏頭痛(Ebersberger, A.; Ringkamp, M.; Reeh, P.W.; Handwerker, H.O. J Neurophysiol. 1997 Jun;77(6):3122-33)、急性炎症または慢性炎症に関連していてもよい炎症性疼痛。炎症性疼痛は、神経障害性疼痛、虚血性疼痛、関節炎により誘導される疼痛、急性または慢性の炎症により誘導される筋痛、急性または慢性の炎症により引き起こされる神経痛、痛覚過敏を含むが、これらに限定されない。また、化学療法により誘導される末梢神経障害、痛覚過敏、オピオイドにより誘導される痛覚過敏および発熱。さらに、本発明の化合物は、全身麻酔およびモニタリングされた麻酔の間の使用のための鎮痛剤として有用である。
【0069】
感染性疾患:本願の中で、用語「感染性疾患」は、これらに限定されないが、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、原虫、プリオンまたはマイコバクテリアによる感染により媒介されるものを含む疾患を包含する。特に、本発明は、Streptococcus、Escherichia、Salmonella、Staphylococcus、Klebsiella、Moracella、HaemophilusおよびYersiniaにより引き起こされる細菌感染の処置のために有用である。本発明の範囲内であることが意図される細菌感染の例として、これらに限定されないが、ペスト、敗血症、発疹チフス、食中毒、破傷風、猩紅熱(scarlet red)、百日咳、ジフテリアなどの疾患が挙げられる。本発明の範囲内であることが意図されるウイルス感染の例として、これらに限定されないが、水痘および帯状疱疹、AIDS、インフルエンザ、天然痘などの疾患、ならびに麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、急性灰白髄炎などの小児疾患が挙げられる。本発明は、Schistosoma mansoni、Dermatofagoides farinae、およびマラリアを含むプラスモジウム属により引き起こされる原虫および寄生虫感染の処置のために有用である。本発明の範囲内であることが意図されるプリオン感染の例として、として、これらに限定されないが、ウシ海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病およびクールー、デング熱、出血熱などの疾患が挙げられる。
【0070】
炎症性障害:本願の中で、用語「炎症性障害」は、これらに限定されないが、急性期反応、局所性および全身性の炎症、ならびにあらゆる型、病因学または病態形成の他の疾患により引き起こされる、および本願の中で特定される炎症性疾患により引き起こされる炎症などの障害を包含する。
【0071】
傷害(injury):本願の中で、用語「傷害」は、これらに限定されないが、多発外傷、頭部外傷、肺傷害、外部、内部および手術の創傷を包含する。
【0072】
免疫学障害:本願の中で、用語「免疫学障害」は、これらに限定されないが、知覚過敏、自己免疫障害、移植における移植片拒絶、移植毒性(transplant toxicity)、肉芽腫性炎症/組織リモデリング、重症筋無力症、免疫抑制、免疫複合体病、抗体の過剰産生および産生不足、血管炎、臓器移植後臓器機能障害、ループスなどの障害を包含する。
【0073】
がん:本願の中で、用語「がん」は、これらに限定されないが、以下を含む固形腫瘍がん:乳癌、肺癌(非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、前立腺癌、口腔および咽頭(口唇、舌、口、咽頭)、食道、胃、小腸、大腸、結腸、直腸、胆嚢および胆道(biliary passage)、膵臓、喉頭、肺、骨、骨肉腫、結合組織のがん、カポジ症候群を含む皮膚のがん、メラノーマおよび皮膚の転移、類表皮癌、基底細胞癌、子宮頸部、子宮内膜(corpus endometrium)、卵巣、精巣、膀胱、尿管および尿道、腎臓、眼、脳および中枢神経系のがん、偽脳腫瘍、肉腫、サルコイド、甲状腺および他の内分泌腺(カルチノイド腫瘍を含むが、これに限定されない)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病ならびにリンパ球性、顆粒球性および単球性のリンパ腫を含むリンパ腫を含む造血器悪性腫瘍、腫瘍浸潤、転移、腹水、腫瘍増殖および血管新生などの障害を包含する。
【0074】
遺伝性疾患:本願の中で、用語「遺伝性疾患」は、これらに限定されないが、遺伝性血管浮腫(Davis, A. E. et al., 3rd Transfus. Apher. Sci. 2003, 29, 195-203; Zuraw, B. L. Immunol. Allergy Clin. North Am. 2006, 26, 691-708; Bas, M. et al. Allergy 2006, 61, 1490-2)および血管神経性浮腫、軟骨石灰化症、ハンチントン病、ムコビシドーシスなどの障害を包含する。
【0075】
浮腫:本願の中で、用語「浮腫」は、これらに限定されないが、一般的な浮腫および炎症により引き起こされる浮腫、第XII因子欠損により誘導される浮腫、他の薬物、例えば、アンギオテンシン変換酵素阻害剤により誘導される血管浮腫を含むがこれに限定されない、薬物により誘導される血管浮腫(Mathelier-Fusade, P. Clin. Rev. Allergy Immunol. 2006, 30, 19-23; Finley, C. J. et al. Am. J. Emerg. Med. 1992, 10, 550-2; Bielory, L. et al. Allergy Proc. 1992, 13, 85-7)、感染症、熱傷、傷害、外傷、凍傷、手術、捻挫(distorsion)、骨折、高い高度への暴露(例えば、高地肺水腫(HAPE)および高地脳浮腫(HACE))、遺伝、自己免疫性ならびに他の疾患および障害、特に、特に、これらに限定されないが、本願において特定される障害、ストレスにより誘導される腸の浮腫(明白な腫脹)を包含する。
【0076】
毛細管漏出症候群:本願の中で、用語「毛細管漏出症候群」は、これらに限定されないが、敗血症における全身性毛細管漏出症候群(Marx, G. Eur J Anaesthesiol. 2003 20(6):429-42; Traber, D.L. Crit Care Med. 2000, 28(3):882-3)、熱傷(Jonkam, C.C.; Enkhbaatar, P.; Nakano, Y.; Boehm, T.; Wang, J.; Nussberger, J. Esechie, A.; Traber, L.D.; Herndon, D.; Traber, D.L.. Shock. 2007 Dec;28(6):704-9)、アレルギー、薬物/トキシン、臓器移植およびIL-2サイトカイン治療により誘導される状態を包含する。
【0077】
本発明による化合物はまた、診断剤として、またはこれの製造のために用いることができる。かかる診断剤は、本発明の化合物により治療および/または予防目的のために取り組まれ得る、本明細書において開示される疾患および状態の診断において特に有用である。本発明による化合物はまた、本明細書において以下に開示されるように、特定の方法および診断において有用性を有する。
【0078】
方法および診断:本発明の化合物は、同位体、蛍光または発光マーカー、抗体または抗体フラグメント、ナノボディ、アプタマー、ペプチドなどのような任意の他のアフィニティー標識、酵素または酵素基質により、標識することができる。これらの標識された本発明の化合物は、ブラジキニン受容体の位置をin vivo、ex vivo、in vitroおよびin situでマッピングするために、生きた対象または他の材料中のそれらの受容体を特徴づけるためのポジトロン断層撮影(PET)イメージング、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)などのための放射性トレーサとして有用である(例えば、組織切片においてオートラジオグラフィーを介して)。
【0079】
本発明はまた、ブラジキニン受容体のシグナル伝達活性をin vitroおよびin vivoで改変するための方法に関する。例えば、本発明の化合物およびその誘導体は、潜在的な医薬がBK B2受容体に結合する能力を決定することにおいて、標準および試薬として用いることができる。
【0080】
本発明はまた、組織、好ましくは組織切片において、BK B2受容体を限局させるかまたはこれを検出するための方法を提供し、該方法は、化合物のBK B2受容体への結合および結合した化合物を検出することを許容する条件下において、BK B2受容体を含む組織試料を、検出可能に標識された本発明による化合物と接触させることを含む。かかる方法およびそれらの対応する条件は、当業者に公知であり、例えば、例6において開示される結合アッセイを含む。
【0081】
本発明は、上述のようなBK B2受容体の調節に対して応答性の状態または疾患を罹患している患者を処置するための方法を、さらに提供する。かかる処置を必要とする対象の処置のための方法は、本発明による、例えば[1]~[11]のいずれか1つによる化合物、その薬学的に受入可能な塩、本明細書において開示されるような医薬組成物、または本明細書において開示されるような組み合わせ調製物の投与を含む。本明細書において用いられる場合、用語「処置」は、疾患を調節する処置および対症的処置の両方を包含し、これらはいずれも、予防的(すなわち、症状の発症前に、症状を予防するか、それを遅延させるか、またはその重篤度を軽減するため)であっても、または治療的(すなわち、症状の発症後に、症状の重篤度を軽減する、および/またはその期間を減少させるため)であってもよい。状態は、BK B2受容体活性の調節が、状態またはその症状の軽減をもたらす場合に、「BK B2受容体の調節に対して応答性」である。患者は、これらに限定されないが、霊長類(特にヒト)、飼育された伴侶動物(イヌ、ネコ、ウマなど)および家畜(ウシ、ブタ、ヒツジなど)を含んでもよく、投与量は、本明細書において記載されるとおりである。
【0082】
本発明による一般式(I)の化合物は、当該分野における最先端において公知のBK B2受容体アンタゴニストと比較した場合に、改善された特性、特に、例えば、バイオアベイラビリティ、代謝安定性、改善された活性/選択性、低い毒性および低い薬物-薬物相互作用を含む1つ以上の改善された薬物動態学的および/または生理化学的特性を有する。したがって、本明細書において開示される化合物(またはその薬学的に受入可能な塩)、医薬組成物、または組み合わせ調製物は、医薬として用いることができる。例えば、本明細書において開示される化合物(またはその薬学的に受入可能な塩)、医薬組成物、または組み合わせ調製物は、例えば上で列記される状態を含むBK B2受容体の調節に対して応答性の状態の処置および/または予防において用いることができる。
【0083】
本発明を、ここで、以下の例によりさらに説明し、これらから、本発明のさらなる特徴、態様および利点をとらえることがことができる。しかし、本発明は、例に限定されるものとして解釈されるべきではなく、請求の範囲において定義される主題を包含する。
【0084】
例
以下の合成例において用いられる略称は、以下のとおりである:
ACNは、アセトニトリル
AIBNは、アゾビスイソブチロニトリル
BuLiは、n-ブチルリチウム
conc.は、濃縮されていること
DCMは、ジクロロメタン
DIBAL-Dは、ジイソブチルアルミニウム重水素化物
DIBAL-Hは、ジイソブチルアルミニウム水素化物
DIPEAは、エチル-ジイソプロピル-アミン
DMFは、N,N-ジメチルホルムアミド
EAは、酢酸エチル
HPLCは、高速液体クロマトグラフィー
MeOHは、メタノール
NBSは、N-ブロモサクシニミド
NMPは、N-メチル-2-ピロリドン
PyBOPは、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
RTは、室温
sat.は、飽和していること
THFは、テトラヒドロフラン
TLCは、薄層クロマトグラフィー
【0085】
式(I)の化合物の調製のための具体例を、以下の例において提供する。別段に特定されない限り、全ての出発材料および試薬は、標準的な商業用等級のものであり、さらに精製することなく用いられるか、または、かかる材料から慣用的な方法により容易に調製される。有機合成の当業者は、出発材料および反応条件は変化し得、これは、本発明により包含される化合物を生成するために使用されるさらなるステップを含むことを、認識するであろう。
【0086】
例1:化合物番号1の調製
【化11】
(R)-1-(3-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリノ)-2-(ジフルオロメトキシ)エタノン
【0087】
ステップA.4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-8-メトキシ-2-メチルキノリンの合成
K2CO3(4.99g、36.1mmol)を、無水NMP(12mL)中の4-クロロ-8-メトキシ-2-メチルキノリン(5.00g、24.0mmol)および4-フルオロ-1H-ピラゾール(3.85g、28.8mmol)の撹拌された混合物に添加した。140℃で48時間にわたり撹拌した後、反応混合物をRTまで冷却し、ろ過した。残渣をDMFでリンスした(13mL)。その後、水(90mL)を、組み合わせたろ過物に添加した。沈殿をろ過除去し、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(DCM/MeOHによる溶離)、表題の化合物を得た。MS(m/z):258.0[M+H+]。
【0088】
ステップB.4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オールの合成
無水トルエン(37.8mL)中の4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-8-メトキシ-2-メチルキノリン(5.51g、21.4mmol)の溶液を、80℃まで加温し、無水トルエン(32.4mL)中のAlCl3(8.58g、64.3mmol)の激しく撹拌された混合物中に滴加した。80℃で8時間にわたり撹拌した後、反応混合物を0℃まで冷却し、水(106mL)および濃縮された水性NH3(27mL)の添加によりクエンチした。RTで一晩撹拌した後、混合物を、遠心分離した。上清を、EAで抽出し(3×200mL)、組み合わせた有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、真空下において濃縮した。残渣を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(DCM/MeOHによる溶離)、表題の化合物を得た。MS(m/z):244.3[M+H+]。
【0089】
ステップC.(R,E)-N-(2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)エチリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィナミドの合成
DCM(70mL)中のチタン(IV)エトキシド(1.65mL、7.85mmol)、2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)アセトアルデヒド(1.36mL、7.14mmol)および(R)-2-メチルプロパン-2-スルフィナミド(0.95g、7.85mmol)の溶液を、窒素の雰囲気下において、RTで3時間にわたり撹拌した。出発材料の完全な消費の後、0℃での水(50mL)の添加により反応をクエンチした。混合物を、セライトのパッド上でろ過し、これを、その後、DCMでリンスした(2×50mL)。水相をDCMで抽出し(50mL)、組み合わせた有機相を、乾燥させ(Na2SO4)、乾燥するまで蒸発させて、表題の化合物を得た。
【0090】
ステップD.3-ブロモ-5-フルオロ-2-メチルアニリンの合成
ジオキサン/水の混合物(4:1、400mL)中の1-ブロモ-5-フルオロ-2-メチル-3-ニトロベンゼン(18.5g、79.mmol)の溶液に、0℃で、亜鉛微粉末(zink dust)(51.7g、790.5mmol)およびNH4Cl(42.3g、790.5mmol)を添加した。反応混合物を、RTで一晩撹拌した。出発材料の完全な消費(TLC)の後、混合物をセライト上でろ過した。EAでリンスした後、ろ過物を水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、乾燥するまで蒸発させて、表題の化合物を生じた。
【0091】
ステップE.1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-メチルベンゼンの合成
濃縮された酢酸(50mL)中の3-ブロモ-5-フルオロ-2-メチルアニリン(14.7g、71.9mmol)の溶液を、半濃縮されたHCl(1.3L)で希釈した。溶液を0℃まで冷却し、NaNO2(6.5g、93.5mmol)を添加した。5分間にわたり撹拌した後、CuCl(14.2g、143.8mmol)を、同じ温度で添加し、1時間にわたり撹拌を続けた。混合物をジエチルエーテルで抽出した。組み合わせた有機相を、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、30℃の槽温度および150mbarより高い圧力において蒸発させて、表題の化合物を得た。
【0092】
ステップF.1-ブロモ-2-(ブロモメチル)-3-クロロ-5-フルオロベンゼンの合成
1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-メチルベンゼン(6.8g、30.4mmol)を、ACN(70mL)中で溶解した。その後、NBSおよびAIBNを添加し、混合物を一晩還流した。出発材料の完全な消費(TLC)の後、混合物を、真空下において濃縮し、残りの残渣を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(ヘプタンによる溶離)、表題の化合物を得た。
【0093】
ステップG.1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンゼンの合成
Cs2CO3(46.3g、142.0mmol)を、ACN(500mL)中の1-ブロモ-2-(ブロモメチル)-3-クロロ-5-フルオロベンゼン(14.3g、47.3mmol)および4-メトキシフェノール(7.6g、61.5mmol)の撹拌された溶液に添加した。RTで一晩撹拌した後、反応混合物をろ過し、真空下において濃縮した。残渣を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(ヘプタン/EAによる溶離)、表題の化合物を得た。
【0094】
ステップH.(R)-N-((R)-2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-メチルプロパン-2-スルフィナミドの合成
AlMe3(トルエン中2M、5.3mL、10.7mmol)を、-78℃で、無水トルエン(10mL)中の(R,E)-N-(2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)エチリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィナミド(2.6g、9.2mmol)の溶液に添加した。溶液を、-78℃で30分間にわたり撹拌した。その後、1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンゼンを、無水トルエン(15mL)中で溶解し、BuLi(ヘキサン中2.5M、4.3mL、10.7mmol)を、-78℃で添加した。-78℃で15分間の後、トルエン中のAlMe3および(R,E)-N-(2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)エチリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィナミドの溶液を、この温度において滴加した。混合物を、一晩撹拌し、RTに到達させた。出発材料の完全な消費の後、反応を、飽和NH4Cl水溶液でクエンチした。混合物をEAで抽出した。組み合わせた有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、真空下において蒸発させた。粗生成物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(EA/ヘプタンによる溶離)、表題の化合物を得た。
【0095】
ステップI.(R)-2-アミノ-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタノールの合成
MeOH(20mL)中の(R)-N-((R)-2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-メチルプロパン-2-スルフィナミド(1.8g、2.3mmol)の溶液を、HCl(MeOH中3M、3.3mL、10.0mmol)で希釈し、RTで一晩撹拌した。出発材料の完全な消費(TLC)の後、混合物を、真空下において濃縮した。残りの残渣を、DCM中で再溶解し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄した。有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、乾燥するまで蒸発させた。残渣を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(DCM/MeOH/NH4OHによる溶離)、表題の化合物を得た。MS(m/z):227.4[M+H+]。
【0096】
ステップJ.(R)-2-クロロ-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)アセタミドの合成
NEt3(42.6μL、0.31mmol)を、無水(dry)THF(700μL)中の(R)-2-アミノ-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタノール(50.0mg、0.15mmol)の溶液に、0℃で添加し、この温度で5分間にわたり撹拌した。その後、クロロアセチルクロリド(15.9μL、0.20mmol)を0℃で滴加した。混合物を、RTで4時間にわたり撹拌した。出発材料の完全な消費の後、反応を飽和NH4Cl水溶液でクエンチした。混合物をEAで抽出した。組み合わせた有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。粗生成物を、さらなる精製なしで用いた。MS(m/z):402.4[M+H+]。
【0097】
ステップK.(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)モルホリン-3-オンの合成
(R)-2-クロロ-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)アセタミドを、2-プロパノールおよびTHF(4:1、10mL)の混合物中で溶解し、0℃まで冷却した。その後、無水(dry)THF(2.5mL)中のKOtBu(215.2mg、1.92mmol)の溶液を、ゆっくりと添加した。混合物を一晩撹拌し、RTに到達させた。反応を水(240μL)および酢酸(112μL)でクエンチした後、混合物を、真空下において濃縮した。残りの残渣を、水中で懸濁した。水相をEAで抽出した。組み合わせた有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、乾燥するまで蒸発させて、表題の化合物を得た。MS(m/z):366.1[M+H+]。
【0098】
ステップL.(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)モルホリン-3-オンの合成
水(200μL)中の硝酸セリウム(IV)アンモニウム(209.7mg、0.38mmol)の溶液を、ACN(1mL)中の(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)モルホリン-3-オン(68.5mg、0.15mmol)の撹拌された溶液に、0℃で添加した。0℃で3時間にわたり撹拌した後、鹹水(1mL)および水(250μL)の添加により、反応をクエンチした。混合物をEAで抽出し、組み合わせた有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、真空下において濃縮した。残渣を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(EA/ヘプタン-->EA-->EA/MeOHによる溶離)、表題の化合物を得た。MS(m/z):260.2[M+H+]。
【0099】
ステップM.(R)-5-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)モルホリン-3-オンの合成
塩化チオニル(14.8μL、0.20mmol)および水(0.4μL)を、DCM(1mL)中の(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)モルホリン-3-オンの撹拌された溶液に添加した。混合物を一晩撹拌した。出発材料の完全な消費の後、混合物を、真空下において濃縮した。粗生成物を、さらなる精製なしで用いた。
【0100】
ステップN.(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリン-3-オンの合成
Cs2CO3(116.3mg、0.36mmol)を、ACN(1mL)中の(R)-5-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)モルホリン-3-オン(33.1mg、0.12mmol)および4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オール(31.8mg、0.13mmol)の撹拌された溶液に添加した。RTで一晩撹拌した後、反応混合物をろ過し、真空下において濃縮した。残渣を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(EA/ヘプタンによる溶離)、表題の化合物を得た。MS(m/z):485.2[M+H+]。
【0101】
ステップO.(R)-3-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリンの合成
NaBH4(54.9mg、1.45mmol)を、窒素の雰囲気下における無水(dry)THF(2mL)中の(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリン-3-オン(93.9mg、0.19mmol)の溶液に添加した。混合物を0℃まで冷却し、無水(dry)THF(500μL)中のヨウ素(51.6mg、0.20mmol)の溶液を滴加した。反応混合物を、2時間にわたり撹拌し、RTに到達させた。次いで、それを、一晩還流した。RTまで冷却した後、混合物を、氷冷MeOH(5mL)中に注入した。溶液を、真空下において濃縮した。残りの残渣を、水性KOH(5M、240μL)中で懸濁し、3時間にわたり還流した。RTまで冷却した後、水性溶液をDCMで抽出した。組み合わせた有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、乾燥するまで蒸発させて、表題の化合物を生じた。MS(m/z):471.1[M+H+]。
【0102】
ステップP.(R)-1-(3-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリノ)-2-(ジフルオロメトキシ)エタノンの合成
PyBOP(37.6mg、72μmol)およびDIPEA(15.3μL、90μmol)を、その後、DMF(2mL)中の(R)-3-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリン(17mg、36μmol)および2-(ジフルオロメトキシ)酢酸(6.8μL、54μmol)の撹拌された溶液に、0℃で添加した。RTで一晩撹拌した後、反応混合物を、真空下において濃縮した。逆相HPLCによる残りの残渣の精製により、表題の化合物を得た。MS(m/z):579.4[M+H+]。
【0103】
例2:化合物番号1Aの調製
【化12】
1-[(3R)-3-[3-クロロ-5-フルオロ-2-({[4-(4-フルオロピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イル]オキシ}メチル)フェニル](3-ジュウテロ)モルホリン-4-イル]-2-(ジフルオロメトキシ)エタノン
【0104】
ステップCにおける2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)アセトアルデヒドの代わりに2-[[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]オキシ]-アセトアルデヒド-1-d1を用いたことを除いて、例1のステップA~Pに従って1-[(3R)-3-[3-クロロ-5-フルオロ-2-({[4-(4-フルオロピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イル]オキシ}メチル)フェニル](3-ジュウテロ)モルホリン-4-イル]-2-(ジフルオロメトキシ)エタノンを合成した。Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids 2009, 28, 761-771における開示に従って、DIBAL-Hの代わりにDIBAL-Dを用いて、2-[[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]オキシ]-アセトアルデヒド-1-d1を合成した。
【0105】
例3:化合物番号2の調製
【化13】
(R)-1-(3-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリノ)-2-(ジフルオロメトキシ)エタノン
【0106】
ステップA.8-メトキシ-2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリンの合成
4-クロロ-8-メトキシ-2-メチルキノリン(5.00g、24.15mmol)、1-メチル-1,2,4-トリアゾール(42.74mL、48.30mmol)、K2CO3(6.67g、48.30mmol)、Pd(OAc)2(0.54g、2.41mmol)、トリシクロヘキシルホスフィンテトラフルオロボレート(1.87g、5.07mmol)、およびトリメチル酢酸(2.47g、24.15mmol)を、無水(dry)キシレン(20mL)中で懸濁した。フラスコを真空化(evacuate)して、その後、窒素を通気した。脱気手順を、2回繰り返した。混合物を18時間にわたり140℃まで加熱した。完全変換後、混合物を蒸発させ、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(DCM/MeOHによる溶離)、表題の化合物を得た。MS(m/z):255.4[M+H+]。
【0107】
ステップB.2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-オールの合成
無水トルエン(25mL)中の8-メトキシ-2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン(3.14g、12.35mmol)の溶液を、80℃まで加温し、無水トルエン(25mL)中のAlCl3(4.94g、37.06mmol)の激しく撹拌された混合物中に滴加した。80℃で8時間にわたり撹拌した後、反応混合物を0℃まで冷却し、水(68mL)の添加によりクエンチし、その後濃縮された水性NH3をpH10(約1.7mL)まで添加した。混合物を、遠心分離した。上清を、EAで抽出し、組み合わせた有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、真空下において濃縮した。残渣を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(DCM/MeOHによる溶離)、表題の化合物を得た。MS(m/z):239.2[M-H+]。
【0108】
ステップC.(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリン-3-オンの合成
(R)-5-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)モルホリン-3-オン(77.3mg、0.28mmol)および2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-オール(73.5mg、0.31mmol)を、(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリン-3-オンの合成に従って反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンによる溶離-->EA-->DCM/MeOH)の後で、表題の化合を得た。MS(m/z):482.5[M+H+]。
【0109】
ステップD.(R)-3-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリンの合成
(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリン-3-オン(63.6mg、0.13mmol)を、(R)-3-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリンの合成に従って、NaBH4(37.4mg、0.99mmol)およびヨウ素(35.2mg、0.28mmol)と反応させて、表題の化合物を得た。MS(m/z):468.4[M+H+]。
【0110】
ステップE.(R)-1-(3-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリノ)-2-(ジフルオロメトキシ)エタノンの合成
(R)-3-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリン(20.0mg、43μmol)を、(R)-1-(3-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリノ)-2-(ジフルオロメトキシ)エタノンの合成に従って、DMF(1mL)中の2-(ジフルオロメトキシ)酢酸(8.1μL、64μmol)、PyBOP(44.6mg、85μmol)およびDIPEA(18.2μL、107μmol)と反応させて、表題の化合物を得た。MS(m/z):577.3[M+H+]。
【0111】
例4:化合物番号3の調製
【化14】
(R)-4-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)-2-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール
【0112】
ステップA.(R)-2-アセタミド-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチルアセテートの合成
(R)-2-アミノ-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタノール(100.0mg、0.31mmol)を、DCMおよびピリジン(4:1、1mL)の混合物中で溶解した。その後、無水酢酸(160.5μL、1.54mmol)を添加し、溶液をRTで一晩撹拌した。出発材料の完全変換の後、混合物を、1MのHCl(1.5mL)および水(1.5mL)で洗浄した。水相を、EA(1mL)で再抽出した。組み合わせた有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた、表題の化合物を得た。MS(m/z):432.1[M+Na+]。
【0113】
ステップB.(R)-2-アセタミド-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチルアセテートの合成
(R)-2-アセタミド-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチルアセテート(125.8mg、0.31mmol)を、(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)モルホリン-3-オンの合成に従って、硝酸セリウム(IV)アンモニウム(420.8mg、0.0.77mmol)と反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンによる溶離)の後で表題の化合を得た。MS(m/z):348.4[M+HCOO-]。
【0114】
ステップC.(R)-2-アセタミド-2-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチルアセテートの合成
(R)-2-アセタミド-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチルアセテート(61.0mg、0.20mmol)を、(R)-5-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)モルホリン-3-オンの合成に従って、塩化チオニル(29.1μL、0.40mmol)と反応させて、表題の化合物を得た。
【0115】
ステップD.(R)-2-アセタミド-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチルアセテートの合成
(R)-2-アセタミド-2-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチルアセテート(64.8mg、0.20mmol)を、(R)-5-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)モルホリン-3-オンの合成に従って、4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オール(53.8mg、0.22mmol)およびCs2CO3(196.5mg、0.60mmol)と反応させて、表題の化合物を得た。MS(m/z):551.2[M+Na+]。
【0116】
ステップE.(R)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)アセタミドの合成
(R)-2-アセタミド-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチルアセテート(68.0mg、0.13mmol)および水酸化リチウム一水和物(8.1mg、0.19mmol)を、THFおよび水(2:1、0.6mL)の混合物中で溶解し、RTで一晩撹拌した。反応混合物を、真空下において濃縮して、表題の化合物を得た。MS(m/z):487.3[M+H+]。
【0117】
ステップF.(R)-4-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)-2-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾールの合成
無水THF(1mL)中の(R)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)アセタミド(26.9mg、55.2μmol)およびメトキシ{[(トリエチルアンモニオ)スルホニル]イミノ}メタノレート(16.0mg、67.1μmol)の溶液を、一晩還流した。出発材料の完全な消費の後、混合物を、真空下において蒸発させ、残渣生成物を、DCM中で溶解した(1mL)。有機相を、水(1.5mL)、飽和NaCl溶液(1.5mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空下において蒸発させた。逆相HPLCによる粗生成物の精製により、表題の化合物を得た。MS(m/z):467.2[M-H+]。
【0118】
例5:化合物番号4~13の調製
以下の表1において示される化合物番号4~13は、本発明の一般式(I)による化合物のさらなる代表例である。これらの化合物は、本明細書において引用される参考文献において開示されるかまたは合成有機化学の分野において公知である合成方法および当業者により理解されるとおりそれらに対するバリエーションと一緒に、上記の方法を用いて合成された。本明細書において引用される参考文献の各々は、例1~4において記載される合成の経路に関して、本明細書により、その全体において、本明細書において参考として援用される。いかなる場合においても、有機合成の当業者は、化合物を生成するための出発材料および反応条件(バリエーションを含む)を認識するであろう。
【0119】
【表1-1】
【表1-2】
#質量:質量分析データ(液体クロマトグラフィー質量分析スペクトルから)が示され(m/z)、プロトン化された分子イオン[M+H
+]についての値を表す。
【0120】
例6:ヒトB2Rに対する試験化合物のアンタゴニスト活性
以下の細胞ベースのヒトブラジキニンB2受容体カルシウム動員(hB2R-CaM)アッセイを用いて、例の化合物番号1~13から選択される化合物の、ヒトブラジキニンB2受容体(hB2R)に対するアンタゴニスト活性を決定した。アッセイは、本明細書において、本発明による化合物、例えば、例1~4において示される化合物のIC50値を決定するために用いることができる、標準的なin vitroの受容体活性アッセイとして定義される。
【0121】
B2 ブラジキニン受容体安定細胞株HTS041C(Eurofins, St. Charles MO)およびFLIPR Calcium 6 Assay Kit(Molecular Devices, Wokingham, UK)をプロバイダーの指示に従って用いるhB2R-CaMアッセイにより、本発明による化合物のアンタゴニスト活性を調べた。CaMアッセイ測定は、化合物(B2Rアンタゴニスト)およびブラジキニン(B2Rアゴニスト)の細胞への正確な添加および隣接した時間依存的なCaMアッセイシグナルの連続記録を可能にする、Flexstation 3 System(Molecular Devices)により行った。
【0122】
細胞培養、播種およびスタベーション:
HTS041C細胞を、10%の熱不活化FBS(PAN Biotech)、10mMのHEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン(200U/mL、200μg/mL)、1×非必須アミノ酸(Lonza)および250μg/mLのG418(Invivogen)を補充した高グルコースDMEM細胞培養培地(Lonza)中で、細胞インキュベーター中で、37℃で、5%CO2雰囲気下において培養した。CaMアッセイ実験の1日前、細胞を、透明底の黒色の96ウェルプレート(ThermoFisher #165305)上で、FBSを減少させ(5%)かつG418を含まない200μLのDMEM細胞培養培地中に播種した。24時間~28時間にわたる70.000細胞/ウェルのインキュベーション(37℃、5%CO2)により、細胞スタベーションを行った。カルシウム色素のローディングの直前に、培地を、注意深く吸引し、細胞を、Ca2+、Mg2+および20mMのHEPESを含み、pH7.4に調整されたハンク平衡塩溶液(HBSS、Gibco)(HBSS+)で洗浄した。
【0123】
細胞のカルシウム色素ローディング:
カルシウム色素のローディングのために、1つのFLIPR 6アッセイのアリコートを、20mLのHBSS+中で溶解した。150μLの色素ローディング溶液を、細胞プレートに添加し、37℃および5%CO2で120分間にわたりインキュベートした。色素ローディングの後、細胞プレートを、すぐに、CaMアッセイのための予め加温された(37℃)Flexstation 3 Systemに移した。
【0124】
細胞内カルシウム動員アッセイ(CaMアッセイ):
非結合性プレート(Costar)中のフレッシュに調製された化合物(B2受容体アンタゴニスト)希釈シリーズ(8pt、n=2)ブラジキニン(B2受容体アゴニスト)溶液を、実験の開始の少し前に、Flexstation System(ソースプレート)に移した。ブラジキニンをn>3の予備実験において8ptの濃度応答曲線(n=8)により決定されたEC80濃度において添加した。Flexstation 3 Systemにより、底面を読む(bottom-read)Flex方式において、ex/em=485nm/525nm、カットオフ(em)=515nmにより、カルシウム感受性色素の蛍光の記録から始めて、CaMアッセイを実行した。20秒後、50μLの4倍濃縮された化合物希釈物を細胞に添加し、これは、細胞プレートにおいて、0.1%の最終DMSO(Sigma)濃度をもたらした。潜在的なアゴニスト活性の検出のために、CaMシグナルを、添加の後80秒間にわたりモニタリングした。ブラジキニン刺激の前に、化合物処置細胞およびビヒクル処置細胞を、Flexstation System内で、37℃で25分間にわたりインキュベートした。次いで、50μLの5倍濃縮されたブラジキニン溶液(HBSS+、0.1%DMSO)を添加して、CaMシグナルを誘導し(読み出し:最大-最小値)、これを、ブラジキニン刺激の後80秒間にわたり測定した。
XLFIT(IDBS)ソフトウェアを用いた、8pt(n=2)の化合物濃度応答曲線の4パラメーターのロジスティックモデル曲線適合により、IC50決定を行った。
【0125】
測定結果:
例の化合物番号1、1A、2、10および11は、ヒトブラジキニンB2受容体(hB2R)に対して、25nMと等しいかまたはこれより低いIC50値を示した。
例の化合物Nos.6、7、8、9、12および13は、ヒトブラジキニンB2受容体(hB2R)に対して、26~500nMのIC50値を示した。
例の化合物番号3、4および5は、ヒトブラジキニンB2受容体(hB2R)に対して、501nM~5000nMのIC50値を示した。
【0126】
試験された化合物はいずれも、細胞ベースの試験系において、いかなる毒性の効果も示さなかった。
本明細書および/または請求の範囲において開示される本発明の特徴は、個別に、およびその任意の組み合わせにおいて、本発明をその多様な形態において実現するための材料であってよい。