(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】クローズドジュールサイクルプロセスのための圧力制御
(51)【国際特許分類】
F02C 1/10 20060101AFI20240325BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240325BHJP
F25B 1/10 20060101ALI20240325BHJP
F25B 11/02 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
F02C1/10
F25B1/00 321C
F25B1/00 391
F25B1/10 Z
F25B11/02 A
(21)【出願番号】P 2022520775
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020069988
(87)【国際公開番号】W WO2021089204
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-05-18
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】グレーバー,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ユーレトツェク,ウーヴェ
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225922(WO,A1)
【文献】特開昭59-206617(JP,A)
【文献】特開平09-144558(JP,A)
【文献】特開2000-154733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0053560(US,A1)
【文献】特開平08-068341(JP,A)
【文献】米国特許第05131231(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0088773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/10
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体用の圧縮器(4)と、作動流体の加熱用の第1の熱交換器(5)と、膨張器(6)および作動流体の冷却用の第2の熱交換器(7)とが配置された作動回路(3)を備えたクローズドガスシステム(2)を有する装置(1)において、
第1のガス圧力容器(8)と第1のガス導管(9)とを備え、 前記第1のガス導管(9)が前記圧縮器(4)と前記第1の熱交換器(5)との間で前記作動回路(3)から分岐して前記第1のガス圧力容器(8)に開口し、
さらに第2のガス導管(10)を備え、 前記第2のガス導管(10)が前記第1のガス圧力容器(8)から分岐して前記膨張器(6)と前記第2の熱交換器(7)との間で前記作動回路(3)に開口
し、
第3のガス導管(11)が前記第1のガス圧力容器(8)または前記第2のガス導管(10)から分岐し、前記圧縮器(4)と前記第1の熱交換器(5)との間で前記作動回路(3)に開口する、
ことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
第3の熱交換器(12)が前記第1のガス導管(9)に配置される、請求項
1に記載の装置(1)。
【請求項3】
第1の弁(13)が、前記作動流体の流れ方向において前記第3の熱交換器(12)の下流の前記第1のガス導管(9)内に配置される、請求項
2に記載の装置(1)。
【請求項4】
第1の弁(13)が、前記作動流体の流れ方向において前記第3の熱交換器(12)の上流の前記第1のガス導管(9)内に配置される、請求項
2に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記第2のガス導管(10)に第4の熱交換器(14)が配置されるとともに、前記第3のガス導管(11)に第5の熱交換器(15)が配置される、請求項
1に記載の装置(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの蓄熱器(16)が、切換可能な接続導線(A、B、C)を介して、前記第3の熱交換器(12)に接続される、請求項
2に記載の装置(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの蓄熱器(16)が、切換可能な接続導線(A、B、C)を介して、前記第4の熱交換器(14)または前記第5の熱交換器(15)に接続される、請求項
5に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記膨張器(6)と前記第2の熱交換器(7)との間に作動流体が補給される、請求項1から
7のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの第2のガス圧力容器(19)が前記第1のガス圧力容器(8)と並列に接続され、これらのガス圧力容器(8、19)が異なる圧力レベルで作動することができる、請求項1から
8のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記圧縮器(4)が、少なくとも2つの圧縮器段(17)を備え、第5のガス導管(18)が前記作動回路(3)から2つの圧縮器段(17)の間で分岐するとともに、前記ガス圧力容器(8、19)の少なくとも1つに開口する、請求項
9に記載の装置(1)。
【請求項11】
作動流体が、作動回路(3)において連続して圧縮、加熱、膨張および冷却を繰り返すクローズドガスシステム(2)内の圧力を制御する方法において、
前記ガスシステム(2)内の圧力を制御するために、前記作動回路(3)から作動流体の一部を取り出し貯蔵するか、または貯蔵された量の作動流体を再び前記作動回路(3)に戻し、
前記貯蔵された量の作動流体を、前記作動回路における前記作動流体の膨張と冷却との間で前記作動回路に戻し、
前記作動流体は、少なくとも部分的に圧縮された後に、かつ熱交換によって加熱される前に、前記作動回路(3)から取り出さ
れ、
取り出された前記作動流体は、貯蔵される前に冷却される、
クローズドガスシステム(2)内の圧力を制御する方法。
【請求項12】
前記取り出された前記作動流体は、ジュール-トムソン係数が正であるときには、最初に熱交換によって冷却され、次いで弁(13、20)
を介して膨張され、ガス圧力容器(8、19)に
貯蔵され、
ジュール-トムソン係数が負であるときには、最初に前記弁(13、20)を介して膨張され、次いで、熱交換によって冷却され、次いで、貯蔵される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記作動流体が前記作動回路(3)に戻される前に加熱される、請求項
11または12に記載の方法。
【請求項14】
蓄熱器(16)が、前記作動流体の冷却時に蓄熱され、前記作動流体の加熱時に放熱される、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
異なる圧力で前記作動回路(2)から取り出された作動流体が異なるガス圧力容器(8、19)に供給される、請求項
11から
14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動回路を備えたクローズドガスシステムを含む装置と、クローズドガスシステム内の圧力を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クローズドガスシステムは、システム容積が予め規定されているため温度および/または質量流によって誘発される圧力変動を受けるが、後者の変動は所期のガス供給もしくは搬出によって並びにシステム漏洩による避けられないガス損失によって生じる。クローズドジュールサイクル(英語:Brayton cycles)の場合、これらの圧力変動もしくはその都度設定した高/低のシステム圧力はプロセスの性能に特定の影響を及ぼす。
【0003】
サイクルプロセスは、例えば特許文献1から公知であり、これには、ガスタービンおよび圧縮器に加えて、出力源、種々の熱交換器および貯蔵容器などの他の構成要素を含む熱/電気出力変換器が開示されている。
【0004】
特許文献2はクローズドジュールサイクルガスタービンの出力を制御する装置を開示している。さらに特許文献3は、クローズドサイクルプロセスのモータ駆動方法と、この方法と共に使用するのに適したモータとを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2014/053560号明細書
【文献】特開平08-68341号公報
【文献】米国特許第5131231号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、クローズドジュールサイクルのための改善された部分負荷効率を可能にする装置を提供することである。本発明のさらなる課題は、そのようなクローズドガスシステム内の圧力を制御するための対応する方法を提供することである。
【0007】
クローズドジュールサイクルプロセスは、例えば環境によりまたは凝縮プロセスのために、規定された低いプロセス圧力が無くなることにより、システム設計に特別な要求を課している。したがってこの低いプロセス圧力は、対応するシステム圧力制御オプションを使用して設定する必要がある。これにはプロセス作動温度の変化によって生じる圧力の変化を補償することが重要である。
【0008】
低いプロセス圧力は、高いプロセス圧力側で標準としてみなされるように、サイクルプロセス出力と関係して変圧運転をすべきであろう(部分負荷での絞り損失を避けるための蒸気およびガスタービンでの変圧運転方式)。加えて、循環媒体の価格が高すぎる(例えば、純窒素さらにはヘリウムさえ使用する場合)、または環境への最小限の損失以上を受け入れるには汚染が過度である可能性があるため、システムから環境へのガス放出をできるだけ完全に避けるか、少なくとも可能な限り低く抑えるために、通常は経済的または環境保護的観点からの要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの考察に基づいて、本発明は、作動流体用の圧縮器と、作動流体を加熱するための第1の熱交換器と、膨張器(ガス膨張タービン)と、作動流体を冷却するための第2の熱交換器とが配置された装置において、第1のガス圧力容器と第1のガス導管とが設けられ、第1のガス導管は、圧縮器と第1の熱交換器との間で作動回路から分岐して第1のガス圧力容器に開口するとともに、第2のガス導管が設けられ、この導管が第1のガス圧力容器から分岐して膨張器と第2の熱交換器との間で作動回路に開口することによって、装置に向けられた課題を解決する。
【0010】
したがって本発明によれば、1つの(またはより経済的には場合によっては複数の)ガス圧力容器が設けられ、この圧力容器は高圧側(すなわちクローズドジュールサイクルプロセスの圧縮器の後ろで)作業プロセス時に、容器を充填するため固有のガス導管に接続される。容器は、プロセスの観点から必要であれば(例えば、停止ロスを低減するために停止中にシステム圧力を低下させる場合)、常に充填される。このためジュールサイクルプロセスから部分流が導出される。貯蔵された量のガスを必要に応じてシステムに放出するために、膨張器の後にもう1つのガス導管が作動回路に挿入される。
【0011】
本発明の有利な実施例においては、第3のガス導管がガス圧力容器から、または第2のガス導管から分岐され、圧縮器と第1の熱交換器との間で作動回路に開口する。このさらなる対策は、今回は高圧側で循環媒体の加熱前であるが、始動プロセス中に貯蔵された圧力エネルギーを利用することを可能にする。
【0012】
第1のガス導管に第3の熱交換器を配置すれば有利である。この熱交換器は、例えば周囲の冷えた状態を利用して再冷却される(交換した熱も蓄えることができるであろう)ので、ガスは圧縮後に冷却されてから、第1のガス導管内の対応する第1の弁(この弁はしたがって第3の熱交換器の後の作動媒体の流れ方向に配置される)を介してガス圧力容器に放出されるので有利である。この放出により使用したガスに依存して、ジュールトムソン効果により更なる冷却をもたらす。
【0013】
もしその時のガスのジュールトムソン係数(温度変化の大きさと方向を示す)のために放出によって加熱が起こるならば、第1の弁が第3の熱交換器の前の作動流体の流れ方向に第1のガス導管に配置されると好適である。このような手段はガス密度を増加させるために、したがって所定の容器容積に対して貯蔵されるガス量を増加させるために有効である。
【0014】
本発明の有利な実施例では、第4の熱交換器が第2のガス導管に、第5の熱交換器が第3のガス導管に配置される。第2および第3のガス導管は、第1のガス圧力容器から作動回路へのフィードバック管である。第4および第5の熱交換器は、通常は(例えば、発電所の中間冷却システムからの)廃熱を用いて加熱され、ガスを作動回路に入る前に、すなわち作動回路を加熱する。ガスの加熱は作動回路内にすでに存在するガスに対する冷却効果を減少させ、ガスの補給を介して所望される作動回路内の圧力上昇は、より速くかつより僅かな質量流量で行われる。
【0015】
本発明のさらなる有利な実施例では、少なくとも1つの蓄熱器が切換可能な接続導線を介して第3、第4または第5の熱交換器に接続される。特に電力の出力を大幅に変更しなければならないことが多い発電設備では、このような蓄熱器を設けることが有利である。この蓄熱器は作動ガスが圧力容器に入る前に作動ガスの熱を吸収し、その後作動ガスが回路にフィードバックされる前に再び加熱する。これは、再生器として運転される熱をよく蓄える固体材料を充填した容器を使用することによって達成することができる。接続導線を適切に切り換えることにより、この容器は発熱もしくは吸熱ガスによって、その都度逆方向に貫流される。
【0016】
漏洩損失は避けられないため、作動流体を補給できれば有利である。これは、作業サイクルの低圧側で冷却前に、すなわち膨張器と第2の熱交換器の間で迅速に行われることが望ましい。
【0017】
第1のガス圧力容器に少なくとも1つの第2のガス圧力容器を並列に接続し、これらのガス圧力容器を異なる圧力レベルで運転することができるようにすると有利である。作動ガスをそれぞれ異なる圧力レベルで貯蔵する複数個のガス圧力容器を使用することにより、膨張器の出口圧力が高く、したがって作動回路の出口圧力が高い場合に、比較的小さな圧力容器「HP」を高い圧力で充填することが可能になる。この作動ガスを作動回路から取りだすことにより、圧力は同じように低下する。その後の過程で除去された作動ガスは、より低い圧力レベルで圧力容器「LP」に貯蔵される。これにより全容器のサイズを最適化し、特に運転停止時に作動回路圧力を可能な限り低い過圧まで下げることが可能になる。このできるだけ低い作動回路の過圧は圧縮器もしくは膨張器のリップシールを通る漏れによる停止時の損失をできるだけ低く抑えるため望ましい。
【0018】
作動流体のできるだけ高い圧力増加または圧縮を達成するために、複数の圧縮器段を直列に接続することができる。この関係では、圧縮器が少なくとも2つの圧縮器段と、2つの圧縮器段の間の作動回路から分岐してガス圧力容器の少なくとも1つに開口する第5のガス導管とを備えるようにすると有利である。このようにして、圧縮器の電力需要またはガス圧力容器の寸法/設計が最適化される。
【0019】
方法に関する課題は、作動流体が一つの作動回路において圧縮、加熱、膨張および冷却を順次繰り返されるクローズドガスシステム内の圧力制御のための方法において解決される。本発明によれば、ガスシステム内の圧力を制御するために、作動流体の部分流を作動回路から取り出して貯蔵するか、または貯蔵された量の作動流体を再び作動回路に戻し、その際貯蔵された量の作動流体を作動回路における作動流体の膨張と冷却との間に作動回路に戻すようにされる。
【0020】
この方法の利点は、本発明装置による上述した利点に対応する。
【0021】
有利には、作動流体は、少なくとも部分的に圧縮された後、熱交換によって加熱される前に、クローズドガスシステムから取り出される。
【0022】
また取り出された作動流体は、それが貯蔵される前に冷却されると有利である。
【0023】
作動流体は、ジュールトムソン係数が正であるときにはまず熱交換を介して冷却され、次いで弁によってガス圧力容器に放出され、ジュール-トムソン係数が負であるときには、まず弁を介して放出させ、次いで必要であれば、熱交換を介して冷却され、次いで貯蔵されるようにすると有利である。
【0024】
また、作動流体は作動回路に再び戻される前に加熱されると有利である。
【0025】
有利には、蓄熱器は作動流体の冷却時に蓄熱され、作動流体の加熱時に放熱される。
【0026】
さらに、異なる圧力で作動回路から取り出された作動流体が異なるガス圧力容器に供給されると有利である。
【0027】
本発明によるクローズドサイクルのためのガス圧力維持およびガス圧力制御の構想は、多種多様なクローズドジュールサイクルベースの発電プラントプロセス、例えば、LNG再生ガス発電プラント(LNG:Liqufied Natural Gasの略称)の一部として有利に使用することができる。有効サイクルガス(LNG再生ガス発電プラントの場合:水およびCO2を含まない窒素)の損失が最小化され、同時に部分負荷における作動回路における絞り損失等が回避される。この場合サイクルガスは、比較的低温/中温(すなわち、一定の大量質量-LNG再生ガス発電プラントの場合のようにサイクルガスが比較的低温で圧縮器から出るため、および/または圧力容器に入る前に追加冷却されるため-のいずれか)であり、限られた容器容積内に貯蔵される。適度な温度のために、比較的安価な材料をシステムに使用することもできる。
【0028】
本発明による構想により、第1段階でシステム内の圧力維持が保証される。さらに、既にジュールサイクルプロセスに存在する圧縮器の高圧側の接続部によって(すなわち、この圧縮器は追加的に設ける必要はない)コストの良好な解決策を提供することができる。コスト面では、高圧のタンク構成も有利である。高圧は、一定のバランス量では対応して減少した容積を意味し、これに関連して、減少した容器サイズを意味する。圧縮器からの中間抽出に対応する圧力を選択することにより、常に経済的な理由から最適な圧力を選択することができる(圧力とともに増加する容器壁厚、または選択される材料が容器容積の減少によるコスト低減を過剰に補償する場合)。作動回路への接続を介して容器内の高圧は、圧力制御の迅速な反応時間を可能にする。これにより、低いプロセス圧力での可変圧力運転の圧力制御速度を、高いプロセス圧力での圧力変化速度に同期化させることができる。システム可変圧力運転(低+高プロセス圧力)により、サイクルプロセスの最大効率を期待することができる。というのは、規定された作業機械(圧縮器、膨張器)は、比較的大きな制御介入(すなわち、制御弁またはガイド段の全開)なしに行うことができ、規定された平均プロセス温度は、同様の比率でスライドできるからである。膨張器の上流に供給導管が設けられている場合、解決策の別の利点は、プロセスの起動時に貯蔵された圧力エネルギーを利用できることである。膨張器における対応する容積変更作業は、作動回路内の圧縮器の直接的(膨張器が共通の軸上の圧縮器を駆動する)または間接的(膨張器の発電機が圧縮器のモータにエネルギーを供給する)「キックオフ」を可能にする。
【0029】
制御されていない質量流量による圧力変化(例えば、作業機械のガス漏れなどによる)は、膨張器の背後に追加のガス供給によって補償される。これは、比較的低い圧力で補給が行われるという利点を有し、したがって対応する別個の圧縮器等に対する対応する経費が節約される。この概念は、適用例として先に述べたクローズドジュール発電プラントプロセスに加えて、部分負荷におけるヒートポンプ(相変化なしに作動流体としてガスを使用し、通常の圧縮器に加えて膨張器を有する)の制御にも非常に良く適している。ここでも、利点は、絞り機構がないことと、それに伴う損失が生じないことである。
【0030】
本発明の実施例を、図面を参照しながらより詳細に説明する。図は模式的に示し、縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による圧力制御を備えたクローズドガスシステムの基本構想を示す。
【
図2】
図1の基本構想を種々拡張させたクローズドガスシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は作動回路3を備えたクローズドガスシステム2を具備する装置1を模式的かつ例示的に示し、この装置には、作動流体用の圧縮器4と、作動流体を加熱する第1の熱交換器5と、膨張器6(ガス膨張タービン)と、作動流体を冷却する第2の熱交換器7とが配置されている。
【0033】
図1の実施例において、第1のガス導管9は、圧縮器4と第1の熱交換器5との間で作動回路3から分岐して、第1のガス圧力容器8に開口する。さらに、第2のガス導管10が第1のガス圧力容器8から分岐して、膨張器6と第2の熱交換器7との間で作動回路3に開口する。
【0034】
漏洩は避けられないので、膨張器6と第2の熱交換器7との間に作動流体を補給できるようにされる。補給箇所21、補給導管22および補給ポンプ23を備えた補給装置は、システム内の通常のガス損失を補償するために使用される。
【0035】
図2は
図1に示された基本構想のいくつかの拡張を示しており、これは個々にまたは組み合わせて使用することができる。例えば、第3のガス導管11は、第1のガス圧力容器8から、または第2のガス導管10から分岐して、圧縮器4と第1の熱交換器5との間の作動回路3に開口する。
【0036】
さらに
図2における実施例は、3つのさらなる熱交換器を示す。第1のガス導管9に配置された第3の熱交換器12はガス状の作動流体を冷却し、これに対し第2のガス導管10にある第4の熱交換器14と第3のガス導管11にある第5の熱交換器15は作動流体を加熱する働きをする。
【0037】
第1のガス圧力容器8内への作動流体の供給に関して、
図2は、第1のガス導管9内の第1の弁13を示し、これは第3の熱交換器12の後の作動流体の流れ方向に配置される。これは、作動流体が膨張するにつれて冷却する際の2つの構成要素の相対的な配置である。膨張中に作動流体が加熱される場合には、弁13と第3の熱交換器12の配置が逆になる。これは、
図2において破線の二重矢印で示されている。
【0038】
図1に既に示されている第1のガス圧力容器8に加えて、
図2の実施例では第2のガス圧力容器19が設けられ、これは第1のガス圧力容器8に並列接続される。第2の弁20も
図2に示されている。典型的には、ガス圧力容器8、19は、異なる圧力レベルで作動させることができる。
【0039】
圧縮器の2つの圧縮器段17の存在は、作動流体を異なる圧力で貯蔵するために必須ではないが(第1のガス圧力容器8内への第1の吐出の後、システム圧力が低下し、第2のガス圧力容器19内への第2の吐出がより低い圧力で行われることが想定される)、最適化を容易にする。これは、第5のガス導管18によって補完され、作動回路3から2つの圧縮器段17の間で分岐し、ガス圧力容器8、19のうちの少なくとも1つに開口する。
【0040】
提示された構想に有用な追加は蓄熱器16の設置であり、これは、切換可能な接続導管A、B、Cを介して第3の熱交換器12、第4の熱交換器14または第5の熱交換器15に接続される。
【符号の説明】
【0041】
1 装置
2 クローズドガスシステム
3 作動回路
4 圧縮器
5 第1の熱交換器
6 膨張器
7 第2の熱交換器
8 第1のガス圧力容器
9 第1のガス導管
10 第2のガス導管
11 第3のガス導管
12 第3の熱交換器
13 第1の弁
14 第4の熱交換器
15 第5の熱交換器
16 蓄熱器
17 圧縮器段
18 第5のガス導管
19 第2のガス圧力容器
20 第2の弁
21 補給箇所
22 補給導管
23 補給ポンプ