(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
F16J15/10 T
(21)【出願番号】P 2022527639
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2021017708
(87)【国際公開番号】W WO2021241186
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2020093590
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】緒方 千代太
(72)【発明者】
【氏名】牛島 慎二
(72)【発明者】
【氏名】三木 陽平
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0191764(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0265523(US,A1)
【文献】国際公開第2019/082499(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線周りに無端状の弾性体により形成されていて、互いに対向する複数の部材が形成する無端状の空間に装着されることにより前記無端状の空間の径方向の一方側と他方側との間の密封を図る密封装置であって、
前記密封装置は、
軸線方向において前記複数の部材に面する本体部と、
前記本体部から前記径方向の前記一方側に突出して前記複数の部材に面する複数の一方側突起部と、
前記本体部から前記径方向の前記他方側に突出して前記複数の部材に面する複数の他方側突起部と、
を備え、
複数の前記他方側突起部それぞれにおける前記他方側への突出量は、複数の前記一方側突起部それぞれにおける前記一方側への突出量よりも大きく、
前記密封装置は、前記一方側に形成される一方側空間と前記他方側に形成される他方側空間との密封を図り、
前記一方側突起部は、前記他方側空間に存する媒体により加わる圧力が作用する方向である前記一方側に突出し、
前記他方側突起部は、前記圧力の作用する方向とは反対方向である前記他方側に突出していて、
前記他方側突起部それぞれにおける前記他方側への突出量をa、前記一方側突起部それぞれにおける前記一方側への突出量をbとすると、
0<b/a<1
であり、
前記無端状の空間の内部において、前記本体部の
全領域において前記径方向の中心線は、前記無端状の空間の前記径方向の中心線よりも前記一方側に位置している、
密封装置。
【請求項2】
前記無端状の空間の前記径方向の中心線と前記無端状の空間の内部における前記本体部の前記径方向の中心線との距離をl、前記無端状の空間の前記径方向の中心線から前記本体部を前記無端状の空間の前記径方向の前記一方側の端部に沿わせた場合における前記本体部の前記径方向の中心線までの距離をl
Oとすると、
0<l/l
O<1
である、
請求項1に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関する。特に低温環境下での使用において高いシール性を発揮する密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水や油等の液体または気体等の流体の漏出を防ぐため、或いは、塵や埃等の夾雑物の侵入を防ぐためのシール材としてガスケットに代表される密封装置が用いられている。このようなガスケットは、互いに対向する複数の部材が形成する無端状の空間である溝部に装着されることにより溝部の内周側と外周側との間で密封を図っている。
【0003】
ガスケットにおいて、複数の部材に面する本体部の断面において、無端の長手方向に垂直な方向(短手方向)に突出して溝部に接する突起を備えている。突起は、ガスケットが溝部の内部で倒れることや溝部から脱落することを防止している。このような突起を備えているガスケットとしては、一方の部材に刻設されている溝部に装着され、この一方の部材と他方の部材とが締結された際に両者の間の密封をなす無端のものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本体部に突起を備えている従来のガスケットは、溝部に装着されている使用状態において、特に低温時などにガスケットに加わる圧力が変化することがある。このような場合、従来のガスケットは、圧力の作用する方向である外周側に突出している突起が変形するため、および突起間の中間位置の本体部分が支持されていないため、本体部も変形し密封性能が変化することが考えられる。このため、ガスケットは、圧力の変化を考慮した密封性能の更なる改善が求められていた。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、密封性能の改善を図ることができる密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る密封装置は、軸線周りに無端状の弾性体により形成されていて、互いに対向する複数の部材が形成する無端状の空間に装着されることにより前記無端状の空間の径方向一方側と他方側との間の密封を図る密封装置であって、前記密封装置は、軸線方向において前記複数の部材に面する本体部と、前記本体部から前記径方向一方側に突出して前記複数の部材に面する一方側突起部と、前記本体部から前記他方側に突出して前記複数の部材に面する他方側突起部と、を備え、前記他方側突起部の前記他方側への突出量は、前記一方側突起部の前記一方側への突出量よりも大きい。
【0008】
本発明の一態様に係る密封装置は、前記一方側に形成される一方側空間と前記他方側に形成される他方側空間との密封を図り、前記一方側突起部は、前記他方側空間に存する媒体により加わる圧力が作用する方向である前記一方側に突出し、前記他方側突起部は、前記圧力の作用する方向とは反対方向である前記他方側に突出している。
【0009】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記他方側突起部の前記他方側への突出量をa、前記一方側突起部の前記一方側への突出量をbとすると、0<b/a<1である。
【0010】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記無端状の空間の内部において、前記本体部の前記径方向の中心線は、前記無端状の空間の前記径方向の中心線よりも前記一方側に位置している。
【0011】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記無端状の空間の前記径方向の中心線と前記無端状の空間の内部における前記本体部の前記径方向の中心線との距離をl、前記無端状の空間の前記径方向の中心線から前記本体部を前記無端状の空間の前記径方向の一方側の端部に沿わせた場合における前記本体部の前記径方向の中心線までの距離をlOとすると、0<l/lO<1である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る密封装置によれば、密封性能の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の密封装置の第1の実施の形態に係るガスケットの概略構成を示すための平面図である。
【
図2】
図1に示すガスケットの(a)断面A-Aにおける断面図、(b)断面B-Bにおける断面図である。
【
図3】
図1に示すガスケットの使用状態を示す断面図である。
【
図4】参考例に係るガスケットの使用状態を示す断面図である。
【
図5】別の参考例に係るガスケットの使用状態を示す断面図である。
【
図6】
図1に示すガスケットの使用状態を示す断面図であり、一方側突起部と他方側突起部の突出量、及び、本体部の径方向の中心線と溝部の径方向の中心線とを示す断面図である。
【
図7】
図1に示すガスケットの使用状態を示す断面図である。
【
図8】
図7に示すガスケットの使用状態を示す断面図であり、一方側突起部と他方側突起部の突出量、及び、本体部の径方向の中心線と溝部の径方向の中心線とを示す断面図である。
【
図9】本発明の密封装置の第2の実施の形態に係るガスケットの断面A-Aにおける断面図である。
【
図10】第2の実施の形態に係るガスケットの断面B-Bにおける断面図である。
【
図11】第2の実施の形態の参考例に係るガスケットの使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の密封装置の第1の実施の形態に係るガスケット1の概略構成を示すための平面図である。
図2は、ガスケット1の(a)断面A-Aにおける断面図、(b)断面B-Bにおける断面図である。
図3は、ガスケット1の使用状態を示す断面図である。
【0016】
以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(
図2,3参照)方向を上側とする。また、軸線x方向において矢印b(
図2,3参照)方向を
下側とする。軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(
図2,3の矢印c方向)を径方向において一方側とする。径方向において一方側は、特に説明しない限り外周側である。また、軸線xに近づく方向(
図2の矢印d方向)を径方向において他方側とする。径方向において他方側は、特に説明しない限り内周側である。以下の説明において、各部材の位置関係や方向を上側または下側として説明するときは、あくまで図面における位置関係や方向を示し、実際の車両等に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0017】
図1乃至
図3に示すように、第1の実施の形態に係るガスケット1は、軸線x周りに無端状の弾性体により形成されている。ガスケット1は、互いに対向する複数の部材100,101が形成する無端状の空間Sに装着されることにより空間Sの径方向一方側cと他方側dとの間の密封を図る。ガスケット1は、軸線x方向において複数の部材100,101に面する本体部11と、本体部11から径方向一方側cに突出して複数の部材100,101に面する一方側突起部13と、本体部11から径方向他方側dに突出して複数の部材100,101に面する他方側突起部14と、を備える。他方側突起部14の径方向他方側dへの突出量は、一方側突起部13の径方向一方側cへの突出量よりも大きい。以下、ガスケット1について具体的に説明する。
【0018】
図1に示すように、ガスケット1は、平面視の形状が、全体として無端状(環状)に形成されている。本体部11は、上述した無端状のガスケット1の概略の形状を形成している。本体部11の外周側cには、任意の間隔で複数の一方側突起部13が設けられている。また、本体部11の内周側dには、一方側突起部13と同様の間隔で複数の他方側突起部14が設けられている。一方側突起部13及び他方側突起部14は、平面視の形状が、例えば半円弧状または略半円弧状に形成されている。なお、本体部11の平面視の形状は、無端状であれば
図1に示す形状に限定されない。また、一方側突起部13及び他方側突起部14の平面視の形状も、上述した形状に限定されない。
【0019】
ガスケット1は、例えば、燃料電池自動車や電気自動車に搭載される電池において多数積層されているセルに装着されている。ガスケット1は、電池の内部で発生する燃料ガスや酸化剤ガス等を密封するためのシール材として用いられる密封装置の一例である。ガスケット1は、互いに対向する複数の部材100,101が形成する無端状の空間Sを形成している溝部103に装着されることにより溝部103の外周側cと内周側dとの間で密封を図っている。つまり、ガスケット1は、外周側cに形成される一方側空間と内周側dに形成される他方側空間との密封を図っている。
【0020】
図3に示すように、具体的には、ガスケット1は、無端状の空間Sに取り付けられて使用状態となる。空間Sは、例えば、部材100と、部材100と上下方向において接合される部材101とによって形成されている軸線x周りに無端状の空間である。部材101の上側aの面には、無端状の溝部103が形成されている。溝部103は、外周壁面103aと、底面部103bと、内周壁面103cとによって画成されている。外周壁面103aは、溝部103の外周側cの端部に設けられている。外周壁面103aは、軸線x方向に無端状に延び、断面形状が軸線xに沿った平面または略平面状である。底面部103bは、外周壁面103aの下側bの端部から内周側dに向かって延びる。また、底面部103bは、軸線xに垂直な方向の平面に平行または略平行な平面である。内周壁面103cは、溝部103の内周側dの端部に設けられている。内周壁面103cは、底面部103bの内周側dの端部から上側aに向かって延びる面である。また、内周壁面103cは、軸線x方向に無端状に延び、断面形状が軸線xに沿った平面または略平面状である。
【0021】
部材100の下側bの接合面部102における、部材101の下側シール面である底面部103bに対向する無端状の平面は、上側シール面となっている。空間Sは、上述の外側シール面である接合面部102と、外周壁面103aと、下側シール面である底面部103bと、内周壁面103cとから画成された環状の空間である。ガスケット1は、この空間Sに取り付けられて、空間Sを密封し、空間Sを隔てた内周側dと外周側cとを密封している。
【0022】
図2(a)、
図2(b)に示すように、本体部11は、径方向の断面形状が、八角形または略八角形に形成されている。本体部11は、一方側面111と、他方側面112と、上面部113と、下面部114と、斜辺部115とを備えている。
【0023】
一方側面111は、ガスケット1の外周側cにおいて、軸線xを中心とした環状に形成されている。一方側面111は、断面形状が軸線xに沿った平面または略平面状である。
図3に示すように、一方側面111は、使用状態において、部材101に形成されている溝部103の外周壁面103aに面する。つまり、一方側面111は、使用状態において環状の空間Sを形成している部材101の外周面である、外周壁面103aに沿った形状を有している。
【0024】
図2(a)、
図2(b)に示すように、他方側面112は、ガスケット1の内周側dにおいて、軸線xを中心とした環状に形成されている。他方側面112は、断面形状が軸線xに沿った平面または略平面状である。
図3に示すように、他方側面112は、使用状態において、部材101に形成されている溝部103の内周壁面103cに面する。つまり、他方側面112は、使用状態において環状の空間Sを形成している部材101の内周面である、内周壁面103cに沿った形状を有している。
【0025】
図2(a)、
図2(b)に示すように、上面部113は、ガスケット1の上側aにおいて、軸線xを中心とした環状に形成されている。上面部113は、断面形状が軸線xに垂直な面に沿った平面または略平面状である。
図3に示すように、上面部113は、使用状態において、部材100に形成されている接合面部102に面する。上面部113は、使用状態において環状の空間Sを形成している部材100の接合面部102に沿った形状を有している。接合面部102は、上側シール面
を形成している。
【0026】
図2(a)、
図2(b)に示すように、下面部114は、ガスケット1の下側bにおいて、軸線xを中心とした環状に形成されている。下面部114は、断面形状が軸線xに垂直な面、つまり、上面部113と平行な面に沿った平面または略平面状である。
図3に示すように、下面部114は、使用状態において、部材101に形成されている溝部103の接合面部102に面する。つまり、上面部113は、使用状態において環状の空間Sを形成している部材101の底面部103bに沿った形状を有している。底面部103bは、下側シール面
を形成している。
【0027】
図2(b)に示すように、一方側突起部13は、他方側空間に存する媒体、例えば、電池の内部で発生する燃料ガスや酸化剤ガス等により加わる圧力が作用する方向である径方向一方側(外周側c)に突出している。一方側突起部13は、ガスケット1の外周側cにおいて、軸線xを中心とした環状に形成されている。一方側突起部13は、側面部131の断面形状が軸線xに沿った平面または略平面状である。
図3に示すように、一方側突起部13は、使用状態において、側面部131が部材101に形成されている溝部103の外周壁面103aに面する。つまり、一方側突起部13の側面部131は、使用状態において環状の空間Sを形成している部材101の外周面である、外周壁面103aに沿った形状を有している。
【0028】
図2(b)に示すように、他方側突起部14は、圧力の作用する方向とは反対方向である径方向他方側(内周側d)に突出している。他方側突起部14は、ガスケット1の内周側dにおいて、軸線xを中心とした環状に形成されている。他方側突起部14は、側面部141の断面形状が軸線xに沿った平面または略平面状である。
図3に示すように、他方側突起部14は、使用状態において、側面部141が部材101に形成されている溝部103の内周壁面103cに面する。つまり、他方側突起部14の側面部141は、使用状態において環状の空間Sを形成している部材101の内周面である、内周壁面103cに沿った形状を有している。
【0029】
次に、ガスケット1における一方側突起部13と他方側突起部14との突出量について説明する。
【0030】
図4は、参考例に係るガスケット2の使用状態を示す断面図である。
図5は、別の参考例に係るガスケット3の使用状態を示す断面図である。
図4に示すように、参考例に係るガスケット2は、一方側突起部23の突出量bと他方側突起部24との突出量aとが等しい点が、ガスケット1と異なる。
図5に示すように、別の参考例のガスケット3は、他方側突起部34のみを有し、ガスケット1,2のように一方側突起部13,23を有していない。
【0031】
図4に示したガスケット2は、溝部103に装着されている使用状態において、特に低温時などにガスケット2に加わる圧力が変化した場合に、矢印Pで示す圧力の作用する方向である外周側
cに突出している一方側突起部23の突出量bが大きいため、一方側突起部23の変形量も大きい。一方側突起部23が変形することで、ガスケット2は、本体部11も変形し、密封性能が変化することが考えられる。
【0032】
図5に示したガスケット3は、ガスケット2のように一方側突起部23を有しておらず、他方側突起部24が設けられている位置においても本体部11の一方側面111が外周壁面103aに面して接触している。このため、ガスケット3は、溝部103に装着されている使用状態において、ガスケット3に加わる圧力が変化した場合であっても、矢印Pで示す圧力の作用する方向である外周側
cに一方側突起部23を有していないため、本体部11の変形が抑制され、密封性能が維持される。
【0033】
ところで、ガスケット2は、溝部103に容易に装着できることを考慮して、中心線S1で示す溝部103の中央部分付近に本体部11の中心線が位置するように設計される。しかしながら、ガスケット3は、外周側に突起が設けられていないため、本体部11の中心線S2が溝部103の中心線S1から距離l
O離れている。このため、ガスケット3は、平面形状が
図1に示すような円形以外の複雑な形状である場合に、装着時の周長が伸びてしまうため、溝部103に適切に装着するのが難しい。つまり、ガスケット3は、溝部103に装着する際の容易性について改善が求められている。
【0034】
ここで、ガスケット2,3において、他方側突起部14の径方向他方側dへの突出量a、及び、一方側突起部の前記一方側への突出量bの関係を整理すると、ガスケット2が以下の式(1)、ガスケット3が式(2)の通りである。
【0035】
b/a=1 …(1)
【0036】
b/a=0 …(2)
【0037】
図6は、ガスケット1の使用状態を示す断面図であり、一方側突起部13の突出量bと他方側突起部14の突出量a、及び、本体部11の径方向の中心線と溝部103の径方向の中心線との距離lを示す断面図である。
【0038】
図6に示すように、ガスケット1は、上述したように本体部11から径方向一方側cに突出する一方側突起部13と、本体部11から径方向他方側dに突出する他方側突起部14と、を備える。他方側突起部14の径方向他方側dへの突出量aは、一方側突起部13の径方向一方側cへの突出量bよりも大きい。
【0039】
上述の式(1),(2)に基づけば、ガスケット1における、他方側突起部14の径方向他方側dへの突出量aと、一方側突起部13の径方向一方側cへの突出量bとの関係は、以下の式(3)を満たせばよい。
【0040】
0<b/a<1 …(3)
【0041】
次に、ガスケット1における、溝部103の内部における本体部11の径方向の位置について説明する。
【0042】
ガスケット1,2,3における、溝部103の径方向の中心線S1と、溝部103の内部における本体部11の径方向の中心線S2との距離をlとする。また、ガスケット3における、溝部103の径方向の中心線S1と、溝部103の内部における本体部11の径方向の中心線S2との距離をlOとする。lOは、ガスケット1において、溝部103の中心線S1から本体部11を溝部103の径方向の一方側の端部である外周壁面103aに沿わせた場合における本体部11の径方向の中心線S2までの距離に等しい。
【0043】
なお、lOは、ガスケット1における、溝部103の径方向の中心線S1と溝部103の内部における本体部11の径方向の中心線S2との距離と、前記一方側突起部の径方向一方側への突出量bとの和と同様である。
【0044】
図4に示したように、ガスケット2は、一方側突起部23の突出量bと他方側突起部24との突出量aとが等しいため、中心線S1で示す溝部103の中央部分付近に本体部11の中心線S2が位置している。つまり、ガスケット2は、距離lと距離l
Oとの関係が、下記の式(4)の通りである。
【0045】
l/l
O=0 …(4)
また、
図5に示したように、ガスケット3は、本体部11の中心線S2が溝部103の中心線S1から距離l
O離れている。ガスケット3は、一方側に突起部を有していないため、距離lと距離l
Oとが等しい。このため、ガスケット3は、距離lと距離l
Oとの関係が、下記の式(5)の通りである。
【0046】
l/lO=1 …(5)
【0047】
一方、ガスケット1は、溝部103の内部において、本体部11の径方向の中心線S2が、溝部103の径方向の中心線S1よりも径方向一方側cに位置している。ガスケット1において、中心線S2は、他方側突起部14の径方向他方側への突出量aと一方側突起部13の突出量bとの差だけ、径方向一方側cに位置している。
【0048】
上述の式(4),(5)に基づけば、ガスケット1における、距離lと距離lOとの関係は、以下の式(6)を満たせばよい。
【0049】
0<l/lO<1 …(6)
【0050】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係るガスケット1によれば、他方側突起部14の径方向他方側dへの突出量が、一方側突起部13の径方向一方側cへの突出量よりも大きい。このように構成されていることにより、ガスケット1は、溝部103に装着されている使用状態において、圧力の作用する方向に突出している一方側突起部13の変形が抑制されることで、本体部11の変形が抑制され、密封性能が維持することができる。
【0051】
また、ガスケット1は、一方側突起部13と他方側突起部14とが設けられていることにより、平面形状が
図1に示すような円形以外の複雑な形状であっても、溝部103に適切に装着することができる。このため、ガスケット1は、溝部103に装着する際の容易性を改善することができる。
【0052】
図7は、変形例のガスケット1Aの使用状態を示す断面図である。
図8は、ガスケット1Aの使用状態を示す断面図であり、一方側突起部13Aと他方側突起部14Aの突出量、及び、本体部11の径方向の中心線と溝部103の径方向の中心線とを示す断面図である。
【0053】
本発明に係る密封装置において、一方側突起部と他方側突起部の突出量、及び、本体部の径方向の中心線と溝部の径方向の中心線との関係は、上述したガスケット1に限定されず、
図7及び
図8に示すような関係であってもよい。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るガスケット1Bについて説明する。以下、上述の第1の実施の形態に係るガスケット1と同一のまたは類似する機能を有する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0054】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るガスケット1Bの断面A-Aにおける断面図である。また、
図10は、ガスケット1Bの断面B-Bにおける断面図である。さらに、
図11は、第2の実施の形態の参考例に係るガスケット2Bの使用状態を示す断面図である。
【0055】
図9及び
図10に示すように、ガスケット1Bは、本体部11Bの断面形状が、先に説明したガスケット1と異なり、円形または略円形状である。本発明に係る密封装置において、本体部の断面形状は限定されない。ガスケット1Bは、
図11に示す参考例のガスケット2Bの一方側突起部23B及び他方側突起部24Bと異なり、一方側突起部13Bの突出量よりも他方側突起部14Bの突出量が大きい。
【0056】
そして、第2の実施の形態に係るガスケット1Bによれば、先に説明したガスケット1と同様に、溝部103に装着されている使用状態において、圧力Pの作用する方向に突出している一方側突起部13の変形が抑制されることで、本体部11の変形が抑制され、密封性能が維持することができる。
【0057】
また、ガスケット1Bは、ガスケット1と同様に、一方側突起部13Bと他方側突起部14Bとが設けられていることにより、平面形状が
図1に示すような円形以外の複雑な形状であっても、溝部103に適切に装着することができる。このため、ガスケット1は、溝部103に装着する際の容易性を改善することができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0059】
例えば、以上説明したガスケット1,1A,1B,2,3において、径方向における一方側が外周側、他方側が内周側であるものとして説明した。しかしながら、本発明に係る密封装置においてはこれに限定されず、一方側突起部が、他方側空間に存する媒体により加わる圧力が作用する方向に突出し、他方側突起部が、圧力の作用する方向とは反対方向に突出していればよい。つまり、密封装置において、一方側が内周側、他方側が外周側であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B,2,3…密封装置(ガスケット)、11,11B…本体部、13,13A,23…一方側突起部、14,14A,24,34…他方側突起部、100,101…部材、102…接合面部、103…溝部、103a…外周壁面、103b…底面部、103c…内周壁面、111…一方側面、112…他方側面、113…上面部、114…下面部、115…斜辺部、131、141…側面部、S…空間、S1,S2…中心線